説明

パネルドア

【課題】パイロットドアに設けるクリップ機構の連動ロッドや締付レバーの構造強度を高め、更に耐久性を向上させる。
【解決手段】パネル板12と平行に移動する連動ロッド111と、この連動ロッド111を移動させる油圧シリンダ117と、前記連動ロッド111の移動に従ってパネル板12と平行に回転する締付レバー113とからなるクリップ機構11をこのパネル板12に設け、前記パネル板12をパネル開口13の縁部に締め付けるパイロットドア1であり、連動ロッド111は連動ブロックを自転自在に設け、締付レバー113はこの連動ブロックの挿通孔にこの締付レバー113の一端側1132を挿入し、連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバー113の一端側1132の挿入位置を変化させることにより、油圧シリンダ117により移動する連動ロッド111に従って締付レバー113を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
パネル板と平行に移動する連動ロッドと、この連動ロッドを移動させるロッド移動手段と、前記連動ロッドの移動に従ってパネル板と平行に回転する締付レバーとからなるクリップ機構をパネル板に設け、前記パネル板をパネル開口の縁部に締め付けるパネルドアに関する。
【背景技術】
【0002】
船舶の船体壁や通路区画を閉鎖するパネルドア(「クリップドア」と呼ばれる。)は、クリップ機構を設けたパネル板をパネル開口の縁部に締め付ける。これは、前記パネルドアに、海水の浸入を防ぐ確実かつ高い水密性が要求されるためである。これから、パネルドアは、例えば特許文献1に見られるように、パネル板と平行に移動する連動ロッドと前記パネル板と平行に回転する操作レバー及び締付レバーとからなるクリップ機構を設けている。このクリップ機構を設けたパネルドアは、締付レバーとパネル板とによりパネル開口の縁部を挟持してパネル板をパネル開口の縁部に締め付け、このパネル開口の縁部とパネル板との間に介装するシールを確実に圧潰して、高い水密性を実現する。
【0003】
特許文献1のパネルドアは、締付レバーの一端側(レバー10)に長孔(ガイド面14)を設けると共に、前記長孔に係合させるブッシュ(連結部材15、特許文献1[0025]参照)を連動ロッドに設け、連動ロッドの移動により長孔に対するブッシュの係合位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる(特許文献1請求項1「おいて書き」以降参照)。クリップ機構を構成する連動ロッド、操作レバー及び締付レバーはそれぞれ金属製の板材を用いる構成が例示されている(特許文献1図1及び図2参照)。
【0004】
特許文献1は、クリップ機構における締付レバーに対するブッシュの係合位置を変化させることにより、締付レバーの他端側がパネル開口の縁部に係合する方向に回転するにつれて、操作レバーから伝達される操作力を増大させている。これにより、締付レバーの他端側がパネル開口の縁部に係合する際の摩擦力は増加するが、この摩擦力が増大する区間が短いため、結果として操作レバーの他端側の回転操作で大きな操作力を要する区間が短くて済み、操作性が改善される利点があると延べている(特許文献1[0011]参照)。これは、パネル板をパネル開口に締め付けた締付レバーの他端側がパネル開口の縁部から解除する方向に回転しにくい利点にもなっている(特許文献1[0012])。
【0005】
【特許文献1】特許第3305788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のパネルドアは、クリップ機構における締付レバーと連動ロッドとの係合位置を変化させることによる利点が認められるものの、前記利点を実現するクリップ機構に、構造強度や耐久性の問題がある。すなわち、特許文献1が採用するクリップ機構は、連動ロッドに設けたブッシュを係合させる長孔を締付レバーの一端側に設けることから、締付レバーの一端側の構造強度が低下する虞がある。加えて、長孔に沿ってブッシュが移動することから、構造強度が低下した締付レバーの一端側に負荷が掛かり、耐久性も低下していると考えられる。
【0007】
ここで、締付レバーの構造強度を高めるため、特許文献1が例示する金属製の板材を厚くすることも考えられるが、この場合、長孔が深くなり、係合するブッシュによる負荷が偏って締付レバーの一端側に加わる虞が生まれ、耐久性の向上は望めない。また、締付レバーの構造強度のみを高めただけでは、金属製の板材からなる連動ロッドの構造強度が相対的に低下するため、連動ロッドも厚くする必要が生ずるが、この場合、重なり合う関係にある連動ロッド及び締付レバーにより、クリップ機構全体が大きくなり、かさばる問題が発生する。
【0008】
パネル板が小さい場合、連動ロッドや締付レバーに要求される構造強度が比較的小さくて済むため、耐久性の低下もあまり問題にならないが、パネル板が大きくなるにつれて、見過ごせない問題となる。そこで、特許文献1が示す連動ロッドと締付レバーの一端側との係合位置が変化することによる利点を活かしつつ、特許文献1では問題となる連動ロッドや締付レバーの構造強度を高め、更に耐久性を向上させる新たなクリップ機構を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
検討の結果、パネル板と平行に移動する連動ロッドと、この連動ロッドを移動させるロッド移動手段と、前記連動ロッドの移動に従ってパネル板と平行に回転する締付レバーとからなるクリップ機構をこのパネル板に設け、前記パネル板をパネル開口の縁部に締め付けるパネルドアにおいて、連動ロッドは挿通孔のある連動ブロックを前記挿通孔の貫通方向中心線上に自転中心のある自転軸により自転自在に設け、締付レバーはこの連動ブロックの挿通孔にこの締付レバーの一端側を挿入し、連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることにより、ロッド移動手段により移動する連動ロッドに従って締付レバーを回転させるパネルドアを開発した。
【0010】
本発明は、特許文献1同様、クリップ機構における締付レバーと連動ロッドとの係合位置を変化させるが、特許文献1のパネルドアが締付レバーの一端側に対する連動ロッドのブッシュの係合位置を変化させるのに対し、本発明のパネルドアは連動ロッドの連動ブロックに対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させる点で異なる。このため、本発明の締付レバーは、長孔を設ける必要がなく、構造強度の低下を招かずに済む。また、連動ロッドは連動ブロックを内蔵する範囲(例えば30mm〜50mm)で厚くすることができ、締付レバーは一端側を連動ブロックに挿入する範囲(例えば20mm〜40mm)で厚くできる。クリップ機構は、前記連動ロッドの厚みの範囲で構成できるため、クリップ機構としての厚みを増やすことなく、締付レバー及び連動ロッドの構造強度まで高めることができる。
【0011】
本発明のパネルドアは、例えば次のように構成できる。すなわち、本発明のパネルドアにおけるロッド移動手段は伸縮ロッドを備えたシリンダであり、このシリンダは伸縮ロッドの先端側を連動ロッドに連結して、この伸縮ロッドの伸縮操作により連動ロッドを移動させ、締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる構成である。
【0012】
また、本発明のパネルドアは、従来同様に構成できる。すなわち、本発明のパネルドアにおけるロッド移動手段はパネル板と平行に回転する操作レバーであり、この操作レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、操作レバーの一端側を連動ロッドに回転自在に取り付けて、この操作レバーの他端側の回転操作により前記操作レバーの一端側を移動させて連動ロッドを移動させ、締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる構成である。
【0013】
更に、従来同様の上記パネルドアの場合、操作レバーに本発明の締付レバー同様の連動ブロックを適用してもよい。すなわち、本発明のパネルドアにおけるロッド移動手段はパネル板と平行に回転する操作レバーであり、この操作レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、操作レバーの一端側を連動ブロックの挿通孔に挿入して、この操作レバーの他端側の回転操作により前記連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する操作レバーの一端側の挿入位置を変化させることにより前記操作レバーの一端側を移動させて連動ロッドを移動させ、締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる構成である。
【0014】
実際のパネルドアは、複数の締付レバーを用いるため、連動ブロックは各締付レバーに対応して複数用いる。また、パネル開口の縁部全周にわたって均等にパネル板を締め付ける場合、クリップ機構は、パネル板と平行に回転するロッカーアームを介してこのパネル板と平行かつ連動ロッドと交差する方向に移動する補助連動ロッドと、パネル板と平行に回転する補助締付レバーとを追加して、補助締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、補助締付レバーの一端側を補助連動ロッドに回転自在に取り付けて、連動ロッドに連動する補助連動ロッドの移動により前記補助締付レバーの一端側を移動させてこの補助締付レバーを回転させ、この補助締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる構成にする。
【0015】
補助締付レバーも、締付レバー及び連動ブロックの組み合せを利用できる。すなわち、クリップ機構は、パネル板と平行に回転するロッカーアームを介してこのパネル板と平行かつ連動ロッドと交差する方向に移動する補助ロッドと、パネル板と平行に回転する補助締付レバーとを追加して、補助連動ロッドは挿通孔のある補助連動ブロックを前記挿通孔の貫通方向中心線上に自転中心のある自転軸により自転自在に設け、補助締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、補助締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドに連動する補助連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する補助締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの補助締付レバーを回転させ、前記回転により移動するこの補助締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパネルドアは、クリップ機構を構成する連動ロッド及び締付レバーの構造強度を高くすることができ、それぞれの耐久性をも向上させる効果がある。これは、締付レバーについて長孔を設ける必要がないこと、そして締付レバーは連動ブロックに挿入する範囲で、また連動ロッドは連動ブロックを内蔵する範囲でそれぞれ厚くできることによる効果である。この場合、クリップ機構として厚みがそれほど増すことがない点が、本発明の利点である。この結果、連動ロッド及び締付レバーの剛性を高めることができ、連動ロッド又は締付レバーの撓みをなくし、両者の円滑な連動を確保できる効果が得られ、シリンダをロッド移動手段として用いても、安定かつ確実なパネル板の締め付けが実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明を適用したパイロットドア1を表す正面図、図2は本発明に係るクリップ機構11を表す部分正面図(要部ほか図示略)、図3はクリップ機構11の締付レバー113付近を表す図2中A矢視部拡大正面図、図4はクリップ機構11の締付レバー113付近を表す分解斜視図、図5はパイロットドア1を閉じた状態における締付レバー113付近を表す部分破断斜視図、図6はパイロットドア1を解除し始めた状態の締付レバー113付近を表す図2相当部分正面図、図7はパイロットドア1を解除し始めた状態の締付レバー113付近を表す図5相当部分破断斜視図、図8はパイロットドア1を完全に解除した状態の締付レバー113付近を表す図2相当部分正面図であり、図9はパイロットドア1を完全に解除した状態の締付レバー113付近を表す図5相当部分破断斜視図である。
【0018】
本例のパイロットドア1は、図1に見られるように、パネル開口13に対して図面直交方向に屈曲する左右一対のパネル板12,15から構成される。本発明が適用されたクリップ機構11は、左のパネル板12に設けている。前記クリップ機構11は、図2に見られるように、パネル板12と平行かつ上下方向に移動する連動ロッド111と、この連動ロッド111を移動させるロッド移動手段である油圧シリンダ117と、前記連動ロッド111の移動に従ってパネル板12と平行に回転する3基の締付レバー113とから構成される。油圧シリンダ117は、連動ロッド111の側面から張り出した連結レバー1111に、伸縮ロッド1171の先端側を揺動自在に連結し、基部1172をパネル板12に対して揺動自在に取り付けている。
【0019】
また、本例のクリップ機構11は、パネル板12と平行に回転する上下のロッカーアーム114を介してこのパネル板12と平行かつ左右方向に移動する上下の補助連動ロッド115,115と、前記各補助ロッドそれぞれへ回転自在に取り付け、パネル板12と平行に回転する上下の補助締付レバー116,116とを追加している。これにより、本例のクリップ機構11は、左のパネル板12を3基の締付レバー113によりパネル開口13の側縁部131に、そして左のパネル板12を各1基の補助締付レバー116によりパネル開口13の上縁部132及び下縁部133に、それぞれ締め付ける。このほか、本例のパイロットドア1は、右のパネル板15にも補助締付レバー141を供えたクリップ機構14が設けられており、右のパネル板15を各1基の補助締付レバー141でパネル開口13の上縁部132及び下縁部133に締め付ける。
【0020】
本例の連動ロッド111は、図4に見られるように、上下方向に延在する一対の前面板1112及び後面板1113に一対の支持孔1115を設け、各支持孔1115に連動ブロック112の自転軸1122を回転自在に嵌合し、前記連動ブロック112を自転自在に保持した構成である。前面板1112及び後面板1113(本例ではそれぞれ12mm厚)は、連動ブロック112から自転軸1122を差し引いた厚み(本例では40mm)に相当する介装ブロック1114を挟持して、両者の間隔を維持している。前面板1112、後面板1113及び介装ブロック1114相互は、溶接により一体化したり、ボルト(図示略)で一体に結合する。連動ロッド111は、連動ブロック112を自転自在に設けることができればよいので、例えば前面板1112又は後面板1113に代えて連動ブロック112相当の切欠を設けた削り出し部材と、前記切欠へ自転自在に取り付けた連動ブロック112を挟んで切欠を塞ぐ蓋部材とから構成してもよい。いずれの場合も、連動ロッド111は厚くして、構造強度や剛性を高めることができる。
【0021】
連動ブロック112は、円柱外形である自転本体1121の上面及び底面にそれぞれ自転軸1122を設けた構造(図示されない底面側にも自転軸1122はある)で、自転本体1121の側面に開口する挿通孔1123(本例では幅27mm)を貫通して設けている。連動ブロック112は挿通孔1123を有して自転すればよく、必ずしも円柱外形でなくてもよい。しかし、連動ブロック112は自転することから、例えば介装ブロック1114にひっかからないようにするため、自転本体1121は自転軸1122からの突出が自転方向に均等な断面円形、すなわち円柱外形が好ましい。挿通孔1123は、図3に見られるように、自転軸1122の自転中心Cを貫通方向中心線L上に一致させ、締付レバー113の一端側1132をがたつくことなく挿入する断面長方形の貫通孔である。
【0022】
締付レバー113は、中間の回転軸1131をパネル板12に固定し、前記回転軸1131から連動ロッド111に向けて一端側1132を延ばして上記連動ブロック112の挿通孔1123に挿入し、前記回転軸1131から一端側1132と反対側へ伸ばした他端側1133をパネル開口13の側縁部131に対して係合又は解除するレバー部材で、本例の一端側1132及び他端側1133は上向きに凸で屈曲した関係にある。図3から明らかなように、この締付レバー113は、連動ブロック112の挿通孔1123相当の厚み(本例では25mm)を有し、構造強度や剛性が高められている、この締付レバー113は、連動ブロック112の挿通孔1123に一端側1132を挿入しており、回転軸1131と連動ブロック112との位置関係により、締付レバー113の姿勢が決定される。すなわち、連動ロッド111に従って連動ブロック112が上下方向に移動すると、締付レバー113の一端側1132が連動ブロック112に対する挿入位置を変化させながらこの連動ブロック112を自転させ、締付レバー113を回転させる。これにより、締付レバー113の他端側1133が回転し、パネル開口13の側縁部131に対して係合又は解除する。
【0023】
補助締付レバー116は、中間の回転軸をパネル板12に固定し、前記回転軸1161から補助連動ロッド115に向けて一端側1162を延ばして回転自在に取り付け、前記回転軸1161から一端側1162と反対側へ延ばした他端側1163をパネル開口13の上縁部132又は下縁部133に対して係合又は解除するレバー部材で、前記一端側1162及び他端側1163は締付レバー113と相似かつ左向き又は右向きに凸で屈曲した関係にある。ロッカーアーム114は、連動ロッド111の移動を補助連動ロッド115の移動に変換するアーム部材で、連動ロッド111の上下方向における移動量と補助連動ロッド115の左右方向における移動量は等しい。これから、締付レバー113及び補助締付レバー116を相似にしておくと、両者の回転が等価となり、パネル開口13の側縁部131、上縁部132又は下縁部133に対する各他端側1133,1163の係合及び解除が連動する。
【0024】
パネル開口13の側縁部131に係合した締付レバー113を解除する手順について説明する。パイロットドア1を閉めた状態では、図2及び図4に見られるように、油圧シリンダ117が伸縮ロッド1171を縮めて連動ロッド111を下降させている。これにより、締付レバー113は、連動ロッド111の各連動ブロック112に対して相対的に回転軸1131が高くなることから、前記連動ロッド111の挿通孔1123に挿入した一端側1132を下げ、パネル開口13の側縁部131に対して他端側1133を係合させる。締付レバー113は、一端側1132を連動ブロック112の挿通孔1123に挿入しているだけで何ら結合していないが、回転軸1131と連動ブロック112との位置関係により、姿勢が一義的に決定されるため、連動ロッド111が位置固定されている限り、不用意に動く虞はない。
【0025】
パイロットドア1を閉めた状態から油圧シリンダ117が伸縮ロッド1171を伸ばし始めると、図6及び図7に見られるように、伸縮ロッド1171の伸長に合わせて連動ロッド111が上昇を始める。これにより、連動ブロック112の挿通孔1123に一端側1132を挿入した締付レバー113は、前記挿通孔1123に対する一端側1132の挿入位置を回転軸1131へ接近する方向に変化させながら左回転する。このとき、連動ロッド111は上下のロッカーアーム114の右回転により左方向にも平行移動し、連動ブロック112は締付レバー113の姿勢の変化に応じて回転軸1131に接近していく。また、上のロッカーアーム114に押された補助連動ロッド115が上の補助締付レバー116を左回転させ、下のロッカーアーム114に引かれた補助連動ロッド115が下の補助締付レバー116を左回転させる。
【0026】
油圧シリンダ117が伸縮ロッド1171を伸ばすと更に連動ロッド111が上昇し、図8及び図9に見られるように、上下のロッカーアーム114の姿勢が上下で入れ替わることで連動ロッド111は再び右方向へ平行移動し、最初の位置から真上に上昇した位置に移動する。これから、連動ブロック112の挿通孔1123に一端側1132を挿入した締付レバー113は、前記挿通孔1123に対する一端側1132の挿入位置を回転軸1131から遠ざける方向に変化させながら左回転する。また、上のロッカーアーム114に押された補助連動ロッド115が上の補助締付レバー116を左回転させ、下のロッカーアーム114に引かれた補助連動ロッド115が下の補助締付レバー116を左回転させる。これにより、締付レバー113及び補助締付レバー116の各他端側1133,1163がパネル開口13の側縁部131、上縁部132及び下縁部133それぞれから外れ、パイロットドア1が解除状態になる。パイロットドア1を閉める手順は、これまで説明した手順の逆であるから、説明は省略する。
【0027】
図10〜図12は別例の補助締付レバー163付近を表す部分正面図で、図10はパイロットドア1を閉じた状態における補助締付レバー163付近を表す部分正面図、図11はパイロットドア1を解除し始めた状態の補助締付レバー163付近を表す図10相当部分正面図、図12はパイロットドア1を完全に解除した状態の補助締付レバー163付近を表す図10相当部分正面図である。本発明のクリップ機構11における締付レバー113及び連動ロッド111の組付関係は、補助締付レバー163及び補助連動ロッド161の組付関係にも適用できる。この場合、補助連動ロッド161は挿通孔1621のある補助連動ブロック162を自転自在に設け、補助締付レバー163は中間の回転軸1631をパネル板12に回転自在に取り付け、一端側1632を前記連動ブロックの挿通孔1621に挿入する構成となる。
【0028】
図9に見られるように、補助締付レバー163の他端側1633がパネル開口13の上縁部132に係合している状態から、油圧シリンダ117が伸縮ロッド1171を伸ばして連動ロッド111を上昇させる(図5参照)と、図11に見られるように、ロッカーアーム114に押された補助連動ロッド161が右方向に移動しながら上昇し、補助締付レバー163は補助連動ブロック162に対する挿入位置を回転軸1631に接近させながら前記補助連動ブロック162を自転させ、自身の回転も始める。そして、ロッカーアーム114の姿勢が上下で入れ替わるまで連動ロッド111が上昇すると、図12に見られるように、ロッカーアーム114に押された補助連動ロッド161が右方向に移動しながら下降し、回転した補助締付レバー163の他端側1633がパネル開口13の上縁部132から外れ、パイロットドア1が解除される。
【0029】
本発明は、上記パイロットドア1以外、例えば水密扉2にも適用される。図13は本発明を適用した水密扉2を表す正面図、図14はクリップ機構21の締付レバー213付近を表す分解斜視図であり、図15は別例の操作レバー263付近を表す部分正面図である。本例の水密扉2は、上記例示のパイロットドア1と異なり、パネル板22をパネル開口23の側縁部231、上縁部232及び下縁部233に締め付けるのに必要な力が小さくて済むことから、ロッド移動手段として操作レバー217を採用している。以下、上記例示のパイロットドア1との相違点について、本例の水密扉2について説明する。
【0030】
ロッド移動手段である操作レバー217は、図13に見られるように、中間の回転軸2171をパネル板22に固定し、前記回転軸2171から連動ロッド211に向けて伸ばした一端側2172を前記連動ロッド211へ回転自在に連結し、前記回転軸2171から一端側2172と反対側へ伸ばした他端側2173を作業者が手に持って回転操作するレバー部材で、前記一端側2172及び他端側2173は下向きに凸で屈曲した関係にある。本例の操作レバー217は、パネル板22に設けた始端突起221及び終端突起222に当接する回転範囲で回転操作できる。本例のクリップ機構21もロッカーアーム214,214を介して補助連動ロッド215,215を移動させ、補助締付レバー216,216を回転させる。既述したように、連動ロッド211の移動は上下のロッカーアーム214により規制されるため、連動ロッド211に連結する操作レバー217の一端側2172の回転半径は、ロッカーアーム214の回転半径に一致させている。
【0031】
本例の締付レバー213やこの締付レバー213の一端側2132を挿入する連動ブロック212は、上述のパイロットドア1と同じ構成であるが、それほど高い剛性が要求されない本例の連動ロッド211は簡素な構成を採用している。すなわち、本例の連動ロッド211は、図14に見られるように、上下方向に延在する前面板2112に側面視門型の保持ブロック2113をボルト2114で固定する構造で、前記前面板2112及び保持ブロック2113それぞれに一対の支持孔2115を設け、この支持孔2115に連動ブロック212の自転軸2122を回転自在に嵌合する。保持ブロック2113は、上下方向に短尺な保持板2116の上下にボルト孔2117を設けた介装ブロック2118を固定した構造で、連動ブロック212を自転自在に保持する働きを有する。
【0032】
本例の水密扉2は、次の手順で解除する。作業者が操作レバー217の他端側2173を手に持って回転させ始めると、操作レバー217の回転に合わせて連動ロッド211が下降を始める。ここで、操作レバー217の一端側2172と上下の各ロッカーアーム214はそれぞれ回転運動をするため、連動ロッド211は図13中右方向へ平行移動しながら同時に下降する。そして、締付レバー213は、連動ブロック212の挿通孔2123に対する一端側2132の挿入位置を回転軸2131へ接近する方向に変化させながら左回転し、最終的にパネル開口23の側縁部231に対する他端側2133の係合を解除する。同様に、上のロッカーアーム214に引かれた補助連動ロッド211が上の補助締付レバー216を左回転させ、下のロッカーアーム214に押された補助連動ロッド215が下の補助締付レバー216を左回転させて、最終的にパネル開口23の上縁部232又は下縁部233に対する他端側2163,2163の係合を解除する。
【0033】
本例の水密扉2における操作レバー263にも、上記連動ロッド211及び締付レバー213の組付関係を適用できる。すなわち、図15に見られるように、別例のクリップ機構26における操作レバー263は、中間の回転軸2631をパネル板22に回転自在に取り付け、操作レバー263の一端側2632を連動ロッド261へ自転自在に取り付けた連動ブロック262の挿通孔2621に挿入し、この操作レバー263の他端側2633の回転操作により前記連動ブロック262を自転させながらこの連動ブロック262の挿通孔2621に対する操作レバー263の一端側2632の挿入位置を変化させることにより、連動ロッド261を移動させるレバー部材とすることもできる。この場合でも、連動ロッド261の移動は上下のロッカーアーム214に規制されるため、連動ロッド261、締付レバー213及び補助締付レバー216の動きは変わらない(図13参照)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用したパイロットドアを表す正面図である。
【図2】本発明に係るクリップ機構を表す部分正面図である。
【図3】クリップ機構の締付レバー付近を表す図2中A矢視部拡大正面図である。
【図4】クリップ機構の締付レバー付近を表す分解斜視図である。
【図5】パイロットドアを閉じた状態における締付レバー付近を表す部分破断斜視図である。
【図6】パイロットドアを解除し始めた状態の締付レバー付近を表す図2相当部分正面図である。
【図7】パイロットドアを解除し始めた状態の締付レバー付近を表す図5相当部分破断斜視図である。
【図8】パイロットドアを完全に解除した状態の締付レバー付近を表す図2相当部分正面図である。
【図9】パイロットドアを完全に解除した状態の締付レバー付近を表す図5相当部分破断斜視図である。
【図10】パイロットドアを閉じた状態における補助締付レバー付近を表す部分正面図である。
【図11】パイロットドアを解除し始めた状態の補助締付レバー付近を表す図10相当部分正面図である。
【図12】パイロットドアを完全に解除した状態の補助締付レバー付近を表す図10相当部分正面図である。
【図13】本発明を適用した水密扉を表す正面図である。
【図14】クリップ機構の締付レバー付近を表す分解斜視図である。
【図15】別例の操作レバー付近を表す部分正面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 パイロットドア
11 クリップ機構
111 連動ロッド
1111 連結レバー
112 連動ブロック
1123 挿通孔
113 締付レバー
1131 回転軸
1132 一端側
1133 他端側
116 補助締付レバー
1161 回転軸
1162 一端側
1163 他端側
117 油圧シリンダ
12 パネル板
13 パネル開口
2 水密扉
21 クリップ機構
211 連動ロッド
212 連動ブロック
2123 挿通孔
213 締付レバー
2131 回転軸
2132 一端側
2133 他端側
216 補助締付レバー
217 操作レバー
2171 回転軸
2172 一端側
2173 他端側
22 パネル板
23 パネル開口
C 自転中心
L 貫通方向中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル板と平行に移動する連動ロッドと、この連動ロッドを移動させるロッド移動手段と、前記連動ロッドの移動に従ってパネル板と平行に回転する締付レバーとからなるクリップ機構をこのパネル板に設け、前記パネル板をパネル開口の縁部に締め付けるパネルドアにおいて、連動ロッドは挿通孔のある連動ブロックを前記挿通孔の貫通方向中心線上に自転中心のある自転軸により自転自在に設けてなり、締付レバーはこの連動ブロックの挿通孔にこの締付レバーの一端側を挿入し、連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることにより、ロッド移動手段により移動する連動ロッドに従って締付レバーを回転させることを特徴とするパネルドア。
【請求項2】
ロッド移動手段は伸縮ロッドを備えたシリンダであり、このシリンダは伸縮ロッドの先端側を連動ロッドに連結して、この伸縮ロッドの伸縮操作により連動ロッドを移動させ、
締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる請求項1記載のパネルドア。
【請求項3】
ロッド移動手段はパネル板と平行に回転する操作レバーであり、この操作レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、操作レバーの一端側を連動ロッドに回転自在に取り付けて、この操作レバーの他端側の回転操作により前記操作レバーの一端側を移動させて連動ロッドを移動させ、
締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる請求項1記載のパネルドア。
【請求項4】
ロッド移動手段はパネル板と平行に回転する操作レバーであり、この操作レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、操作レバーの一端側を連動ブロックの挿通孔に挿入して、この操作レバーの他端側の回転操作により前記連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する操作レバーの一端側の挿入位置を変化させることにより前記操作レバーの一端側を移動させて連動ロッドを移動させ、
締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの締付レバーを回転させ、この締付レバーの回転により移動するこの締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる請求項1記載のパネルドア。
【請求項5】
クリップ機構は、パネル板と平行に回転するロッカーアームを介してこのパネル板と平行かつ連動ロッドと交差する方向に移動する補助連動ロッドと、パネル板と平行に回転する補助締付レバーとを追加してなり、補助締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、補助締付レバーの一端側を補助連動ロッドに回転自在に取り付けて、連動ロッドに連動する補助連動ロッドの移動により前記補助締付レバーの一端側を移動させてこの補助締付レバーを回転させ、この補助締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる請求項1〜4いずれか記載のパネルドア。
【請求項6】
クリップ機構は、パネル板と平行に回転するロッカーアームを介してこのパネル板と平行かつ連動ロッドと交差する方向に移動する補助ロッドと、パネル板と平行に回転する補助締付レバーとを追加してなり、補助連動ロッドは挿通孔のある補助連動ブロックを前記挿通孔の貫通方向中心線上に自転中心のある自転軸により自転自在に設け、補助締付レバーは中間をパネル板に回転自在に取り付け、補助締付レバーの一端側を前記連動ブロックの挿通孔に挿入して、連動ロッドに連動する補助連動ロッドの移動により連動ブロックを自転させながらこの連動ブロックの挿通孔に対する補助締付レバーの一端側の挿入位置を変化させることによりこの補助締付レバーを回転させ、この補助締付レバーの回転により移動するこの補助締付レバーの他端側をパネル開口の縁部に係合又は解除させる請求項1〜4いずれか記載のパネルドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−182718(P2007−182718A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2035(P2006−2035)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(506009774)株式会社聖美 (2)