説明

パネル型スピーカ

【課題】低音域の音響特性に優れるパネル型スピーカを提供する。
【解決手段】本願発明のパネル型スピーカは、電子機器の内部に取付けられる縦長形状のフレーム(11)と、このフレーム(11)に長手方向の両端部が弾性的に支持される縦長形状の振動板(12,12a)と、前記フレーム(11)に長手方向の両端部が弾性的に保持され前記振動板(12a)に対してほぼ一定の間隔を保って平行に延長される縦長形状の支持板(14,14a)と、後端部が前記支持板(14a)に支持されかつ先端部が前記振動板(12a)の裏面に接着固定される可動線輪型のアクチュエータ(13a,13b)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーソナル・コンピュータや液晶表示装着などの電子機器の内部に取付けられるパネル型スピーカに関するものであり、特に、低音域の音響特性に優れた良好な音質のパネル型スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナル・コンピュータや液晶表示装着などの電子機器への内蔵用として、小型かつ薄型のパネル型スピーカが開発されてきた。このパネルスピーカは、細長形状の振動板の裏側に、可動線輪型のアクチュエータを取付け、この振動板に良好な音質の撓み振動を励振する構造となっている。振動板にアクチュエータを取り付ける方法としては、アクチュエータの先端部分を振動板の裏側に接着固定することにより、アクチュエータを宙づりにする方法がある(特許文献1)。
【0003】
一般に、上述の宙づり構造のパネル型スピーカには、接着剤が経年劣化した状態で、衝撃力などが加わると接着層の剥離する恐れがある。そこで、長期にわたる耐久性をさらに高めるために、アクチュエータの後端部分を、振動板を支持するための大きな剛性のフレームの底板や、電子機器の筐体などに直接、あるいは柔らかな弾性体を介在させながら固定するという構造が採用されてきた(特許文献2)。
【特許文献1】 特開2006−121325号公報
【特許文献2】 特開2007−243851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のパネル型スピーカにおいて、アクチュエータの後端部分を、振動板支持用の大きな剛性のフレームの底板や、電子機器の筐体などに直接あるいは柔らかな弾性体を介在させながら固定する構造では、低音域の特性が十分でないという音響特性上の問題があった。
【0005】
従って、本発明の一つの目的は、低音域の特性が十分な、良好な音響特性のパネル型スピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来技術の課題を解決する本発明のパネル型スピーカは、パーソナル・コンピュータや液晶表示装着などの電子機器に取付けられる細長形状のフレームと、このフレームに縦方向の両端部が弾性的に保持される細長形状の振動板と、前記フレームに長手方向の両端部が弾性的に保持され前記振動板に対してほぼ一定の間隔を保って平行に延長される細長形状の支持板と、後端部が前記支持板に支持されかつ先端部が前記振動板の裏面に接着固定される可動線輪型のアクチュエータとを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパネル型スピーカによれば、可動線輪型のアクチュエータの先端部は振動板の裏面に接着固定されると共に、後端部が支持板に支持される。さらに、このアクチュエータの後端部を支持する支持板が、振動板と同様に前後方向へのアクチュエータの振動を可能にする細長形状の柔らかな構造であるため、低音域の音響特性が改善された良好な音質のパネル型スピーカを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の最良の形態の一つによれば、前記支持板は、複数の開口が一定の間隔で形成されることにより、アクチュエータの支持に必要な厚みを保ったまま剛性の調整が可能な板状体から成ることにより、低音域の撓み振動に最適な剛性を容易に実現できる。
【0009】
本発明の最良の形態の他の一つによれば、上記細長形状の振動板が、アルミニュウム合金を素材とするハニカム構造の芯材と、この芯材の表裏両面に貼着されたクラフト紙材とから成ることにより、良好な音質のパネル型スピーカを実現することができる。
【0010】
本発明の最良の形態のさらに他の一つによれば、上記ハネカム構造の振動板の表面に冠着されるアルミニュウム合金を素材とする薄肉の矩形状の筐体を更に備えることにより、更に良好な音質のパネル型スピーカを実現することができる。
【0011】
本発明の最良の形態のさらに他の一つによれば、前記支持板はアルミニュウム合金を素材とし、この支持板は、アクチュエータの磁気回路から放出される熱の放熱機能を兼ねることにより、アクチュエータの温度変化幅を低減し、音響特性の温度変化を防止することが可能になる。
【実施例】
【0012】
図1,図2および図3は、本発明の一実施例のパネル型スピーカ10の構成を示す断面図、拡大部分断面図および分解斜視図である。各図において、11はフレーム、12は振動板アセンブリ、13はアクチュエータ、14は支持板アセンブリである。
【0013】
この実施例のパネル型スピーカは、パーソナル・コンピュータや液晶表示装置などの据え置き型電子機器の内部に設置されている。モールド樹脂を素材とする細長形状のフレーム11は、射出成形により一体に形成されている。このフレーム11の長手方向の両端部には、この実施例のパネル型スピーカのフレーム11を電子機器に取付けるためのフランジ部11aが形成されている。さらに、このフレーム11には、振動板の過大な振動を防止するストッパ14cが長手方向の4箇所にわたって形成されている。
【0014】
据え置き型の電子機器の筐体1には、この筐体1と一体に形成される樹脂製の円柱ポスト2aと、この円柱ポストに嵌合せしめられる軟質ゴム製のグロメット2bとから成るパネル型スピーカの固定機構2が形成されている。フレーム11は、その両端部に形成されたフランジ部11aが固定機構2のグロメット2bに嵌合せられることにより、固定機構2を介して電子機器の筐体1に取付けられる。グロメット2bを軟質ゴム製とする構成であるから、このパネル型スピーカで発生された音がこの固定機構2によって吸収され、筐体1から不要な共振音の発生される事態が有効に回避される。
【0015】
このフレーム11には、振動板アセンブリ12と、支持板アセンブリ14が取付けられる。支持板アセンブリ14の支持板14aが、その表面に接着固定された軟質ゴムやスポンジの弾性体14bを介在させながら、フレーム11の裏面に接着剤によって固定されている。支持板14aの長手方向の中央部分には、2個のアクチュエータ13a,13bが支持されている。このアクチュエータの支持は、支持板14aに形成された開口内に、各アクチュエータ13a,13bの後端部の磁気回路を圧入することによって行われる。
【0016】
アクチュエータ13a,13bのそれぞれの先端部分には、図3の分解斜視図に示すように、4個の円板状の突起が円周方向に等間隔を保って形成されている。アクチュエータ13a,13bは、それぞれの先端部分に形成された4個の円板形状の樹脂製の突起を介して振動板12aの裏面に接着固定されている。この4個の突起は、それぞれの間にボイスコイル内の空気の逃げ道を形成する機能を果たす。
【0017】
振動板アセンブリ12の振動板12aは、アルミニュウム合金を素材とするハネカム構造の芯材の表裏両面に、クラフト紙材が貼着されたサンドイッチ構造となっている。この振動板12aの表面側には、薄手のアルミニウム合金を素材とする筐体12bが、その開放端部を下向きにして冠着されている。この振動板12aは、その長手方向の両端部分のそれぞれにおいて、樋形状に湾曲されたウレタン、軟質ゴムまたはポロンを素材とする弾力性のエッジ12cと、最外郭の枠部12dとを介在させながら、フレーム11に弾性的に支持されている。筐体12bの付加によって高音域の音響特性が改善される。
【0018】
柔らか目の樹脂を素材とする支持板14aには適宜な直径の円形の開口が、長手方向と横幅方向に一定間隔を保ちながら形成されている。この開口の寸法と個数とを調整することによって、アクチュエータ13a,13bの保持に適したある程度の厚みを保持したまま、支持板14aの撓み振動に対する適宜な剛性と、重量の調整が行われる。アクチュエータ13a,13bの後端部が、支持板14aが有する適宜な大きさの剛性と、弾性体14bが有する適宜な弾性とを介在させながらフレーム11に保持される構造であるから、アクチュエータ13a,13bが低音域の上下振動を発生し易くなり、振動板12aに低音域の撓み振動が高効率で励振できる。
【0019】
図4は、上記実施例のパネル型スピーカの音響特性を、従来のパネル型スピーカの音響特性と比較して示す実験データである。横軸は周波数、縦軸は音圧(dB)である。曲線Aは図1〜3に示した本発明の実施例の音響特性、Bはアクチュエータを電子機器の筐体に直接固定した従来のパネル型スピーカの音響特性である。本実施例のパネル型スピーカの特性は、高域の特性は従来のものとほぼ同じあるが、300Hz以下の低域側の特性は従来のものよりも、改善されていることが分かる。
【0020】
以上、支持板14を樹脂で一体成形する構成を例示した。しかしながら、この振動板の素材をアルミニュウム合金とし、アクチュエータの後端部の磁気回廊の発熱に対する放熱板を兼ねる構成としてもよい。
【0022】
また、固定機構2のグロメット2bを軟質ゴムで構成する構造を例示した。しかしながら、このグロメット2bを樹脂製とし、ポスト1bとの間に軟質ゴムの層を介在させながら、これをポスト11bに嵌合させる構造とすることもできる。このようすれば、このパネル型スピーカで発生された音を、固定機構2によって吸収することができる。この目的から、ポスト2aと筐体1との間にゴム製のマットを介在させる構造とすることにより、パネル型スピーカで発生された音を固定機構2で有効に吸収し、筐体1から不要な共振音が発生される事態を回避できる。
【0023】
さらに、この発明のパネル型スピーカをパソンコンや液晶表示装置などの据え置き型の電子機器内に内蔵する構成を例示した。しかしながら、低音域の特性が良好である点を活かすために、過大な衝撃力への耐性が要求される携帯電話機に内蔵することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本発明の一実施例のパネル型スピーカの構成を示す断面図である。
【図2】 上記実施例のパネル型スピーカの構成を示す拡大部分断面図である。
【図3】 上記実施例のパネル型スピーカの構成を示す分解斜視図である。
【図4】 上記実施例のパネル型スピーカの音響特性を従来のものと比較しながら示す実験データである。
【符号の説明】
【0025】
1 携帯電話機の筐体
2 筐体1へのパネル型スピーカ固定機構
2a ポスト
2b グロメット
10 パネル型スピーカ
11 フレーム
12 振動板アセンブリ
13a,13b 可動線輪型のアクチュエータ
14 支持板アセンブリ
14a 支持板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の内部に取付けられる細長形状のフレームと、
このフレームに長手方向の両端部が弾性的に支持される細長形状の振動板と、
前記フレームに長手方向の両端部が弾性的に保持され、前記振動板に対してほぼ一定の間隔を保って平行に延長される細長形状の支持板と、
後端部が前記支持板に支持され、かつ先端部が前記振動板の裏面に接着固定される可動線輪型のアクチュエータと
を備えたことを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項2】
請求項1において、
前記支持板は、複数の開口が一定の間隔で形成されることにより、アクチュエータの支持に必要な厚みを保ったまま剛性の調整が可能な板状体から成ることを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかにおいて、
前記振動板は、アルミニュウム合金を素材とするハニカム構造の芯材と、この芯材の表裏両面に貼着されたクラフト紙材とから成ることを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記振動板の表面に冠着されるアルミニュウム合金を素材とする薄肉の矩形状の筺体を更に備えたことを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記支持板はアルミニュウム合金を素材とし、この支持板は、アクチュエータの磁気回路から放出される熱の放熱機能を兼ねたことを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記フレームは、前記電子機器の内部に緩衝材を介在させながら取付けられることを特徴とするパネル型スピーカ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかにおいて、
前記電子機器は、携帯型電子機器であることを特徴とするパネル型スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−114866(P2010−114866A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310244(P2008−310244)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(595077418)株式会社オーセンティック (25)
【Fターム(参考)】