説明

パネル材

【課題】本発明は、紫外線等による変色や熱による収縮が少なく、和紙に限りなく近い質感を呈するパネル材を提供することを目的とする。
【解決手段】バサルト繊維及び無機繊維を含むスラリーを抄造して成形されたシート基材に熱硬化性樹脂を含浸させ硬化したパネル材であって、シート基材と熱硬化性樹脂とによって和紙模様が形成されているパネル材である。このパネル材において、バサルト繊維は、バサルト繊維及び無機繊維の合計に対して、15質量%〜65質量%含まれることが好ましい。本発明のパネル材は、照明器具に好適に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、和紙は和紙独特の外観のため、和風の照明器具のフード、室内の壁部、天井部の明かり取り等に用いられている。しかし、和紙だけでは破れやすい、変色しやすい、熱に弱い等の問題があるため、和紙の表裏両面を樹脂でコーティングすることが行われている。ところが、樹脂を透過した紫外線等により和紙が変色してしまったり、照明器具からの熱により樹脂が収縮してしまうといった問題があった。
そこで、上記のような問題を改善するため、ガラス繊維層の表裏両面にポリメタクリル酸メチル樹脂層を形成した建築用パネル材が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−271447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のパネル材では紫外線等による変色や熱による収縮は改善されるものの、和紙のような質感が十分に得られないという問題があった。
従って、本発明は、紫外線等による変色や熱による収縮が少なく、和紙に限りなく近い質感を呈するパネル材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、バサルト繊維及び無機繊維を繊維材料として含むスラリーを抄造し、これを成形して得られたシート基材を芯材とし、それに熱硬化性樹脂をマトリックスとして含浸させ硬化したパネル材が上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、バサルト繊維及び無機繊維を含むスラリーを抄造して成形されたシート基材に熱硬化性樹脂を含浸させ硬化したパネル材であって、シート基材と熱硬化性樹脂とによって和紙模様が形成されていることを特徴とするパネル材である。
バサルト繊維は、バサルト繊維及び無機繊維の合計に対して、15質量%〜65質量%含まれることが好ましい。
本発明のパネル材は、照明器具に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紫外線等による変色や熱による収縮が少なく、和紙に限りなく近い質感を呈する装飾模様のあるパネル材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明によるパネル材は、バサルト繊維及び無機繊維を含むスラリーを抄造して成形されたシート基材に熱硬化性樹脂を含浸し硬化させたものである。そして、このパネル材は、シート基材と熱硬化性樹脂とによって和紙模様を呈する。即ち、シート基材を構成するバサルト繊維及び無機繊維と熱硬化性樹脂との色彩や光沢が混ざり合って和紙のような繊維感及び混色感を有し、かつ和紙のような奥深い色彩を有するように構成されている。また、このパネル材は、バサルト繊維及び無機繊維からなるシート基材を芯材として用いているので、紫外線等による変色や熱による収縮が少ないという利点を有している。
本発明に用いられるバサルト繊維は、玄武岩を主原料とする暗色の繊維である。バサルト繊維は、一般に、玄武岩を砂状に粉砕した後、これを高温で溶融紡糸することにより製造される。
【0008】
また、バサルト繊維をシランカップリング剤、チタネートカップリング剤等で表面処理したものも使用可能である。バサルト繊維をカップリング剤で表面処理することで、バサルト繊維と熱硬化性樹脂との間の親和性が増大され、バサルト繊維と熱硬化性樹脂とが衝撃により剥離するのを防止することができる。このような表面処理に用いられるシランカップリング剤としては、例えば、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプルトリメトキシシラン等が挙げられる。チタネートカップリング剤としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。表面処理方法としては、乾式法、湿式法、スプレー方式等の当該分野において公知であるものを採用することができる。カップリング剤の使用量は、バサルト繊維の形状によっても異なるが、薄く均一に表面をコーティングできる量であればよい。
【0009】
バサルト繊維の含有割合は、バサルト繊維及び無機繊維の合計に対して、好ましくは15〜65質量%である。バサルト繊維の含有割合が15質量%〜65質量%であれば、パネル材の質感を和紙により近いものとすることができるため好ましい。
【0010】
本発明に用いられるバサルト繊維以外の無機繊維としては、当該技術分野において公知の無色透明または白色の無機繊維を制限なく用いることができ、例えば、ガラス繊維、アルミナシリカ繊維、アルミナ繊維、ムライト繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、硫酸カルシウム繊維、ウォラストナイト、炭素繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、上記無機繊維以外に有機繊維を用いることもできる。このような有機繊維としては、例えば、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、アラミド繊維、ナイロン繊維、レーヨン繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし或いは二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0012】
本発明で用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウレタンアクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。これらの中でも、収縮が少ないこと、耐熱性が高いこと及び透明でパネル材の質感を和紙により近いものとすることができることから、不飽和ポリエステル樹脂及びエポキシ樹脂がより好ましい。
また、パネル材に対する熱硬化性樹脂の含有割合(含浸量)は、好ましくは25〜40質量%である。
【0013】
次に、本発明によるパネル材の製造方法について説明する。
本発明では、まず、バサルト繊維、無機繊維(使用する場合、有機繊維)及び水を所定の割合で混合してスラリーを調製し、このスラリーを例えば、長網、短網もしくは円網を備えた抄紙機で、シート基材を成形する。次いで、例えばTダイから溶融押し出しされた熱硬化性樹脂(硬化剤等を含む)をシート基材上に供給し、シート基材中に熱硬化性樹脂を含浸させる。この時の押し出し量及び熱硬化性樹脂の溶融粘度(加熱温度)を調整することにより、熱硬化性樹脂の含浸量を適宜調整することができる。最後に、熱硬化性樹脂が含浸されたシート基材を加熱し、熱硬化性樹脂を硬化させることによって、本発明のパネル材を得ることができる。
【実施例】
【0014】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、それらは例示であって、本発明を限定するものではない。
(実施例1)
20質量部のバサルト繊維(繊維長6mm)、20質量部のガラス繊維及び60質量部の水を混合して固形分濃度40質量%のスラリーを調製し、このスラリーを抄造機の網状ベルト上に供給し、網状ベルトの裏側から吸引して抄造することにより、シート基材を成形した。得られたシート基材を120℃で30分間乾燥させて水分を蒸発させた。次いで、不飽和ポリエステル樹脂(ベンジルパーオキサイドを含む)をTダイから65℃で押し出してシート基材に含浸させた。この時の不飽和ポリエステル樹脂の含浸量は30質量%であった。次に、不飽和ポリエステル樹脂が含浸されたシート基材を120℃で50分間加熱することにより不飽和ポリエステル樹脂を硬化させ、実施例1のパネル材を得た。このパネル材の表面を顕微鏡により観察した結果を図1に示した。
実施例1のパネル材は、バサルト繊維及びガラス繊維からなるシート基材を芯材として用いているので、紫外線等による変色や熱による収縮が少なく、また、図1に示されるように和紙に限りなく近い質感を呈していた。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施例1で得られたパネル材表面の顕微鏡画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バサルト繊維及び無機繊維を含むスラリーを抄造して成形されたシート基材に熱硬化性樹脂を含浸させ硬化したパネル材であって、シート基材と熱硬化性樹脂とによって和紙模様が形成されていることを特徴とするパネル材。
【請求項2】
前記バサルト繊維及び前記無機繊維の合計に対して、前記バサルト繊維が15質量%〜65質量%含まれることを特徴とする請求項1に記載のパネル材。
【請求項3】
照明器具用であることを特徴とする請求項1又は2に記載のパネル材。

【図1】
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【公開番号】特開2008−174863(P2008−174863A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9287(P2007−9287)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】