説明

パネル構造物及び水分検知方法

【課題】基板表面の水分のみを測定できるパネル構造物及び水分検知方法を提供する。
【解決手段】本実施例に係るパネル構造物10Aは、ガラス基板11と、ガラス基板11上に設置される電池膜12と、ガラス基板11と電池膜12との外表面を被覆する封止材13とからなるパネル構造物であって、ガラス基板11の外表面に設けられ、ガラス基板11の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置14Aを備えてなる。水分検知装置14Aは、ガラス基板11の表面に設けられる第一の導電部21と、第一の導電部21の上部に設けられる絶縁部22と、この絶縁部22の上部に設けられる第二の導電部23とを有する。水分25がガラス基板11と封止材13との隙間から侵入することで、第一の導電部21と第二の導電部23との間に水膜が形成され、腐食電流が発生する。この腐食電流を検知することでガラス基板11の表面に付着した水分25のみを検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の水分侵入を検知するパネル構造物及び水分検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、屋外等に設置される種々のパネル構造物では、パネル構造物の外表面はシール剤や封止材等により被覆され保護されているが、シール剤や塗料などの封止材は水分を透過する性質があり、経時変化によってパネル構造物の外表面と封止材との間から基板表面に水分が侵入し、腐食が発生しパネル構造物の性能が劣化するという問題がある。さらに、パネル構造物が太陽電池パネルである場合、基板表面に浸入した水分が発電膜までに水路を形成し、発電に伴って陰極側で、水の電気分解が発生し、水素とアルカリ成分が発生する。この電気分解反応によりシール剤や封止材、発電膜(パネル構造物本体)に腐食、変質といった問題が発生し、パネル構造物の性能の劣化が懸念されている。そのため、こうした屋外等に設置されるパネル構造物の密閉空間における基板表面に、水分が侵入しているか否かを検知する必要がある。
【0003】
パネル構造物の表面を非接触、かつオンラインで連続して分析することが可能な水分検知方法として、例えば反射赤外吸収分光法、ラマン散乱分光法などがある。また、その他の水分検知方法としては、原子力プラントの炉内環境に貴金属(金属)を注入し、その注入された貴金属、金属が構造物にどの程度付着するかを定量的にモニタリングするセンサを用いて水質管理を行う方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−139889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、パネル構造物の表面の水分の侵入を検知する際、シール剤や封止材は水分を透過し易いため、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)、塗料などの封止材、シール剤中の水分を測定しているのか、あるいはガラス面あるいは金属面等の基板表面の水分を測定しているのか判別することができなかった。そのため、従来から用いられている水分検知方法では、封止材で覆われているパネル構造物の基板表面の水分のみを検知することができなかった、という問題がある。
【0006】
本発明は、前記問題に鑑み、基板表面の水分のみを測定することが可能なパネル構造物及び水分検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、基板と、該基板上に設置される機能性材料と、前記基板と前記機能性材料との外表面を被覆する封止材とからなるパネル構造物であって、前記基板の外表面に設けられ、前記基板の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置を備えてなり、前記水分検知装置が、前記基板の表面に設けられる第一の導電部と、該第一の導電部の上部に設けられる絶縁部と、該絶縁部の上部に設けられる第二の導電部とを有し、前記基板の表面の水分を検知することを特徴とするパネル構造物にある。
【0008】
第2の発明は、第1の発明において、前記基板が前記第一の導電部として用いられることを特徴とするパネル構造物にある。
【0009】
第3の発明は、第2の発明において、前記絶縁部が前記第一の導電部の表面に絶縁層として形成され、前記絶縁部の外表面に前記第一の導電部まで貫通した窪み部を少なくとも一つ有し、前記第二の導電部が、前記窪み部同士の間に形成される前記絶縁部の上部に形成されることを特徴とするパネル構造物にある。
【0010】
第4の発明は、第1の発明において、前記絶縁部が前記基板及び前記第一の導電部の表面を覆うように設けられる絶縁層であり、前記第一の導電部上に積層される絶縁部の外表面に前記第一の導電部まで貫通した窪み部を少なくとも一つ有し、前記第二の導電部が、前記窪み部同士の間に形成される前記絶縁部の上部に形成されることを特徴とするパネル構造物にある。
【0011】
第5の発明は、第1の発明において、前記基板の表面を覆うように導電層を設け、前記導電層の表面の一部に前記基板まで貫通した窪み部を形成し、前記窪み部の内壁に絶縁部を設け、前記窪み部内の前記基板上に前記第一の導電部を形成すると共に、前記窪み部内の前記第一の導電部の上部に更に所定間隔で絶縁部を設け、前記絶縁部の上部に前記第二の導電部が形成されることを特徴とするパネル構造物にある。
【0012】
第6の発明は、第1乃至5の何れか一つの発明において、前記機能性材料が、太陽の光を電気に変える太陽電池であることを特徴とするパネル構造物にある。
【0013】
第7の発明は、第1乃至6の何れか一つの発明において、前記第一の導電部を形成する材料として、Fe、Zn、Al、ステンレス鋼の何れかが用いられることを特徴とするパネル構造物にある。
【0014】
第8の発明は、第1乃至7の何れか一つの発明において、前記第二の導電部を形成する材料として、Au、Pt、Ag又はグラファイトが用いられることを特徴とするパネル構造物にある。
【0015】
第9の発明は、基板と、該基板上に設置される機能性材料と、前記基板と前記機能性材料との外表面を被覆する封止材と、前記基板の外表面に設けられ、前記基板の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置とを備え、前記基板の表面の水分を検知する水分検知方法であって、前記水分検知装置が、前記基板の表面に設けられる第一の導電部と、該第一の導電部の上部に設けられる絶縁部と、該絶縁部の上部に設けられる第二の導電部とを有し、前記封止材から前記基板の表面に侵入した水分が、前記第一の導電部同士の間の隙間に水膜を形成し、発生する腐食電流を検知することを特徴とする水分検知方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板表面に侵入した水分が基板表面に設けた一対の導電部同士の間に水膜を形成し、この水膜が形成された際に発生する腐食電流を検知することにより、基板表面に水分が侵入したのを検知することができる。これにより、封止材の劣化を判断することができると共に、機能性材料の劣化を抑制することができるため、封止材、パネル構造物の取替えの評価を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、実施例1に係るパネル構造物の構成を簡略に示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係るパネル構造物の全体の構成を簡略に示す平面図である。
【図3】図3は、図2の部分拡大図である。
【図4】図4は、図1の部分拡大図である。
【図5】図5は、実施例2に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
【図6】図6は、実施例3に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
【図7】図7は、実施例4に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
【図8】図8は、実施例5に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0019】
本発明による実施例1に係るパネル構造物について、図面を参照して説明する。
図1は、実施例1に係るパネル構造物の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Aは、ガラス基板11と、ガラス基板11上に設置される機能性材料である電池膜12と、ガラス基板11と電池膜12との外表面を被覆する封止材13とからなるパネル構造物であって、ガラス基板11の外表面に設けられ、ガラス基板11の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置14Aを備えてなるものである。電池膜12と水分検知装置14Aとを被覆する封止材13の上には、バックシート15が設けられている。また、ガラス基板11、封止材13、バックシート15の各々の端部側の上部は、シール剤16でシールされている。
【0020】
封止材13は、ガラス基板11、水分検知装置14Aの外表面を被覆し、ガラス基板11と水分検知装置14Aとを外気環境から保護するものである。封止材13としては、例えばエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA:Ethylene-Vinyl Acetate)を用いるのが好ましいが、封止材13はEVAに限定されるものではなく、ガラス基板11と水分検知装置14Aとを外気環境から保護できるものであれば他の材料を用いてもよい。
【0021】
バックシート15は、長期間の屋外使用に耐えられる耐久性、電気絶縁性、封止材13との接着性などを有していることが必要である。バックシート15としては、例えばEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)、ポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene Terephthalate)とアルミニウム(Al)とPETとを積層した構造物で構成されるものを用いるのが好ましい。
【0022】
シール剤16は、水や空気の侵入を遮断するものである。シール剤16としては、例えばブチルゴム系、発泡ウレタンゴム、シリコンゴム系などのゴムで形成される弾性部材を用いるのが好ましいが、シール剤16は弾性部材に限定されるものではなく、水や空気の侵入を遮断することができるものであれば他の材料を用いてもよい。
【0023】
また、電池膜12は、非晶質系シリコン、結晶質系シリコン、SiGe系、非晶質系と結晶質系のタンデムやトリプル構造、あるいはCIS系やCIGS系、CdTe系等の薄膜型太陽電池により形成される。なお、結晶質系には、多結晶や単結晶の他に、非晶質と結晶質とが混在した微結晶も含まれる。また、電池膜12は太陽の光を電気に変える太陽電池に限定されるものではなく、他に電池として機能するのであれば用いることができる。
【0024】
また、水分検知装置14Aは、ガラス基板11の外表面に設けられる第一の導電部21と、この第一の導電部21の上部に設けられる絶縁部22と、この絶縁部22の上部に更に設けられる第二の導電部23とを有するものである。また、ガラス基板11上には第一の導電部21を一つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス基板11の端から電池膜12までの距離、ガラス基板11の設置面積等に応じて第一の導電部21を複数設けるようにしてもよい。また、第一の導電部21上に絶縁部22及び第二の導電部23を四つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス基板11上の第一の導電部21の設置面積等に応じて絶縁部22及び第二の導電部23を設ける数は適宜変更するようにしてもよい。
【0025】
また、図2は、実施例1に係るパネル構造物の全体の構成を簡略に示す平面図であり、図3は、図2の部分拡大図である。尚、図2、3では、ガラス基板上に設けた本実施例の水分検知装置の構成を明らかにするため、封止材、シール剤、バックシートは省略し、ガラス基板、水分検知装置、電池膜の構成のみを示す。
図2に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Aにおいて、ガラス基板11に設けた電池膜12の周囲を囲うように水分検知装置14Aが設けられている。即ち、電池膜12の周囲を囲うように第一の導電部21が設けられ、この第一の導電部21上に四つの絶縁部22及び第二の導電部23がほぼ等間隔で設けられている。また、第一の導電部21と四つの第二の導電部23とは、各々、電流計24に接続されている。また、第一の導電部21上に設けられる隣接する絶縁部22及び第二の導電部23同士の間隔は等間隔に限定されるものではなく、隣接する絶縁部22及び第二の導電部23同士の間隔を適宜変更し、異なるようにしてもよい。
【0026】
本実施例に係るパネル構造物10Aの封止材13、シール剤16は水分を透過し易い性質がある上、ガラス基板11を構成する成分中に含まれるナトリウム(Na)が表面に析出し、封止材13、シール剤16が劣化し易い。そのため、本実施例に係るパネル構造物10Aが外気に晒されると、図1に示すように、腐食性因子として雨水等の水分25がガラス基板11と封止材13、シール剤16との隙間から侵入することで、封止材13、シール剤16とガラス基板11との界面に水膜通路26が形成される。水分検知装置14Aを備えていない場合には水膜通路26が電池膜12まで伸び、電池膜12の発電により、電池膜12と水膜通路26とに電圧が印加され、水の電気分解反応が生じ、電池膜12で水素とアルカリ成分を発生し、電池膜12を劣化させてしまう。本実施例の水分検知装置14Aを用いることで上述のような問題を抑制することができる。
【0027】
図1の部分拡大図を図4に示す。即ち、水分検知装置14Aは、図4に示すように、ガラス基板11の表面に設けた第一の導電部21と第二の導電部23との間に形成された水膜27によりガルバニック対の腐食電流が流れる。この発生したガルバニック対の腐食電流を電流計24(図2、3参照)で検知することにより、ガラス基板11の表面に水分25が侵入したことを検知することができる。
【0028】
また、ガルバニック対の腐食電流としては、例えば湿度が70%以上100%以下の範囲の時の腐食電流値を予め求めておく。電流計24(図2、3参照)により水分検知装置14Aで測定されたガルバニック対の腐食電流の電流値が、湿度が70%以上100%以下の範囲内で予め求めた腐食電流値以上の場合には、ガラス基板11の表面に水分25が侵入したと判断する。
【0029】
よって、ガラス基板11の表面に付着した水分25のみを検知することができ、封止材13、シール剤16の劣化を判断することができると共に、水分25の浸入の有無を判断することで機能性材料である電池膜12の劣化を抑制することができる。
【0030】
また、第一の導電部21を形成する材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、ステンレス鋼などを用いるのが好ましい。また、第二の導電部23を形成する材料としては、例えば、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、グラファイトなどの炭素材料などを用いるのが好ましい。
【0031】
また、絶縁部22を形成する材料としては、例えば、SiOなどを用いることができる。
【0032】
このように、本実施例に係るパネル構造物10Aによれば、ガラス基板11上に水分検知装置14Aを設けることで、ガラス基板11の表面に付着した水分25のみを検知し、測定することができる。これにより、パネル構造体10Aを構成する封止材13、シール剤16の劣化具合を判断しつつ、電池膜12の劣化を抑制することができるため、封止材13、シール剤16、パネル構造物の取替えの評価を容易に行うことができる。
【0033】
また、本実施例に係るパネル構造物10Aは、電池膜12を太陽の光を電気に変える太陽電池として用い、太陽電池パネルとして用いることができる。太陽電池パネルは、通常、太陽からの光を効率良く取り入れるため、外気に斜めに傾けた状態で設置される。そのため、太陽電池パネルが雨水等に晒されると、雨水等は太陽電池パネルの上端側から下端側に向けて流れるため、太陽電池パネルの下端側に溜り易い。そのため、太陽電池パネルの下端側が最も雨水等の水分が浸入し易いという問題がある。これに対し、本実施例に係るパネル構造物10Aを用いれば、ガラス基板11上に設けた太陽電池の周囲に水分検知装置14Aを設けているため、ガラス基板11の下端側から水分25が侵入した際、ガラス基板11の下端側から侵入したガラス基板11表面に付着した水分25のみを検知することができる。
【0034】
また、本実施例に係るパネル構造物10Aにおいては、機能性材料として太陽電池のような電池膜12を用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、機能性材料として水分25から保護する必要のある材料であれば用いることができる。
【0035】
本実施例に係るパネル構造物10Aにおいては、電池膜12を太陽の光を電気に変える太陽電池として用い、本実施例に係るパネル構造物10Aは太陽電池パネルとして用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電装置のタワー外壁、橋梁設備、車両、船舶等の移動体等など外気環境に晒されるものであれば適用することができる。
【実施例2】
【0036】
本発明による実施例2に係るパネル構造物について、図面を参照して説明する。
本発明による実施例2に係るパネル構造物の全体の構成は、図1〜図3に示す実施例1に係るパネル構造物の構成と同様であるため、本実施例においては、パネル構造物の一部の構成のみを簡略に示す図を用いて説明する。
図5は、実施例2に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
図5に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Bは、図1に示す実施例1に係るパネル構造物10Aのガラス基板11を水分検知装置14Bの第一の導電部(第一の導電板)31として用いてなるものである。
即ち、本実施例に係るパネル構造物10Bの水分検知装置14Bは、基板として用いられる第一の導電板31の上に所定間隔をおいて設けられる4つの絶縁部22と、この絶縁部22の上部に設けられる第二の導電部23とで構成されている。
【0037】
実施例に係るパネル構造物10Bが外気に晒されることで、雨水等の水分25が第一の導電板31と封止材13、シール剤16との隙間から侵入することで、封止材13、シール剤16と第一の導電板31との界面に水膜通路26を形成し、第一の導電板31と第二の導電部23との間に水膜27が形成され、この形成された水膜27によりガルバニック対の腐食電流が流れる。第一の導電板31と第二の導電部23との各々の一部を電流計24(図2、3参照)と連結し、発生したガルバニック対の腐食電流を電流計24(図2、3参照)で検知することにより、第一の導電板31の表面に水分25が侵入したことを検知し、第一の導電板31の表面に付着した水分25のみを検知することができる。
【0038】
よって、本実施例に係るパネル構造物10Bに備える水分検知装置14Bを用いることで、第一の導電板31の表面に付着した水分25のみを検知し、測定することができる。また、第一の導電板31を水分検知装置14Bの対極として用いることができるため、パネル構造物10Bの構成の簡素化を図ることができると共に、水分検知装置14Bの層厚を薄くすることができる。
【0039】
また、本実施例に係るパネル構造物10Bにおいては、第一の導電板31上に絶縁部22及び第二の導電部23が四つ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一の導電板31の端から電池膜12までの距離等に応じて第一の導電板31上に設ける絶縁部22及び第二の導電部23の数は適宜変更するようにしてもよい。
【0040】
本実施例に係るパネル構造物10Bにおいては、電池膜12を太陽の光を電気に変える太陽電池として用い、本実施例に係るパネル構造物10Bは太陽電池パネルとして用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電装置のタワー外壁、橋梁設備、車両、船舶等の移動体等など外気環境に晒されるものであれば適用することができる。
【実施例3】
【0041】
本発明による実施例3に係るパネル構造物について、図面を参照して説明する。
本発明による実施例3に係るパネル構造物の全体の構成は、図1、2に示す実施例1に係るパネル構造物の構成と同様であるため、本実施例においては、パネル構造物の一部の構成のみを簡略に示す図を用いて説明する。
図6は、実施例3に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
図6に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Cは、図5に示す実施例2に係るパネル構造物10Bの絶縁部22を第一の導電板31の表面に絶縁層32として形成したものであり、絶縁層32の外表面に第一の導電板31まで貫通した窪み部33を4つ有し、第二の導電部23が、窪み部33同士の間に形成される絶縁層32の上部に形成されてなるものである。
即ち、本実施例に係るパネル構造物10Cの水分検知装置14Cは、基板として用いられる第一の導電板31の上に、窪み部33同士の間の絶縁層32の上部に第二の導電部23が設けられてなるものである。
【0042】
雨水等の水分25が絶縁層32と封止材13、シール剤16との隙間から侵入することで、封止材13、シール剤16と絶縁層32との界面に水膜通路26を形成し、第一の導電部31と第二の導電部23との間に水膜27が形成され、この形成された水膜27によりガルバニック対の腐食電流が流れる。第一の導電部31と第二の導電部23との各々の一部を電流計24(図2、3参照)と連結し、発生したガルバニック対の腐食電流を電流計24(図2、3参照)で検知することにより、絶縁層32の表面に水分25が侵入したことを検知し、絶縁層32の表面に付着した水分25のみを検知することができる。
【0043】
よって、本実施例に係るパネル構造物10Cに備える水分検知装置14Cを用いることで、絶縁層32の表面に付着した水分のみを検知し、測定することができる。また、第一の導電板31を水分検知装置14Bの対極として用いると共に、コーティング材として用いている絶縁層32を絶縁部として用いているため、更にパネル構造物10Cの簡素化を図ることができると共に、水分検知装置14Cの層厚を更に薄くすることができる。
【0044】
また、本実施例に係るパネル構造物10Cにおいては、窪み部33が四つ設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第一の導電部31の端から電池膜12までの距離等に応じて窪み部33を設ける数は適宜変更するようにしてもよい。
【0045】
本実施例に係るパネル構造物10Cは、例えば、橋梁設備などに用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電装置のタワー外壁、車両、船舶等の移動体等など外気環境に晒されるものであれば適用することができる。
【実施例4】
【0046】
本発明による実施例4に係るパネル構造物について、図面を参照して説明する。
本発明による実施例4に係るパネル構造物の全体の構成は、図1〜図3に示す実施例1に係るパネル構造物の構成と同様であるため、本実施例においては、パネル構造物の一部の構成のみを簡略に示す図を用いて説明する。
図7は、実施例4に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
図7に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Dは、図1に示す実施例1に係るパネル構造物10Aの絶縁部22をガラス基板11及び第一の導電部21の表面を覆うように設けられる絶縁層34とし、第一の導電部21上に積層される絶縁部22の外表面に第一の導電部21まで貫通した窪み部35を3つ有し、第二の導電部23が、窪み部35同士の間に形成される絶縁層34の上部に形成されてなるものである。
即ち、本実施例に係るパネル構造物10Dの水分検知装置14Dは、ガラス基板11の上に、第一の導電部21、第一の導電部21上の窪み部35同士の間に形成される絶縁層34と、この絶縁層34の上部に設けられる第二の導電部23とで構成されている。
【0047】
実施例に係るパネル構造物10Dが外気に晒されることで、雨水等の水分25が絶縁層34と封止材13、シール剤16との隙間から侵入することで、封止材13、シール剤16と絶縁層34との界面に水膜通路26を形成し、第一の導電部21と第二の導電部23との間に水膜27が形成され、この形成された水膜27によりガルバニック対の腐食電流が流れる。第一の導電部21と第二の導電部23との各々の一部を電流計24(図2、3参照)と連結し、発生したガルバニック対の腐食電流を電流計24(図2、3参照)で検知することにより、絶縁層34の表面に水分25が侵入したことを検知し、絶縁層34の表面に付着した水分25のみを検知することができる。
【0048】
よって、本実施例に係るパネル構造物10Dに備える水分検知装置14Dを用いることで、絶縁層34の表面に付着した水分のみを検知し、測定することができる。また、コーティング材として用いている絶縁層34を絶縁部として用いているため、更にパネル構造物10Dの簡素化を図ることができると共に、水分検知装置14Dの層厚を更に薄くすることができる。
【0049】
また、本実施例に係るパネル構造物10Dにおいては、窪み部33を三つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス基板11の端から電池膜12までの距離等に応じて窪み部35を設ける数は適宜変更するようにしてもよい。
【0050】
本実施例に係るパネル構造物10Dにおいては、電池膜12を太陽の光を電気に変える太陽電池として用い、本実施例に係るパネル構造物10Dは太陽電池パネルとして用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電装置のタワー外壁、橋梁設備、車両、船舶等の移動体等など外気環境に晒されるものであれば適用することができる。
【実施例5】
【0051】
本発明による実施例5に係るパネル構造物について、図面を参照して説明する。
本発明による実施例5に係るパネル構造物の全体の構成は、図1〜図3に示す実施例1に係るパネル構造物の構成と同様であるため、本実施例においては、パネル構造物の一部の構成のみを簡略に示す図を用いて説明する。
図8は、実施例5に係るパネル構造物の構成を示す概略図である。
図8に示すように、本実施例に係るパネル構造物10Eは、図1に示す実施例1に係るパネル構造物10Aのガラス基板11の表面を覆うように導電層36を設け、導電層36の表面の一部にガラス基板11まで貫通した窪み部37を形成する。窪み部37の内壁37aに所定の膜厚を有する絶縁部38を設け、窪み部37内のガラス基板11上に導電層36と同一の材料で構成される第一の導電部39を形成する。また、窪み部37内の第一の導電部39の上部に更に所定間隔で絶縁部22を設け、絶縁部22の上部に第二の導電部23を形成する。
即ち、本実施例に係るパネル構造物10Eの水分検知装置14Eは、導電層36の窪み部37の内壁37aに設けた絶縁部38で仕切られたガラス基板11の上に第一の導電部39を設け、この第一の導電部39の上に所定間隔で絶縁部22を形成し、この絶縁部22の上部に更に第二の導電部23が設けられてなるものである。
【0052】
雨水等の水分25が導電層36と封止材13、シール剤16との隙間から侵入することで、封止材13、シール剤16と導電層36との界面に水膜通路26を形成し、第一の導電部39と第二の導電部23との間に水膜27が形成され、この形成された水膜27によりガルバニック対の腐食電流が流れる。第一の導電部39と第二の導電部23との各々の一部を電流計24(図2、3参照)と連結し、発生したガルバニック対の腐食電流を電流計24(図2、3参照)で検知することにより、導電層36の表面に水分25が侵入したことを検知し、導電層36の表面に付着した水分25のみを検知することができる。
【0053】
よって、本実施例に係るパネル構造物10Eに備える水分検知装置14Eを用いることで、導電層36の表面に付着した水分のみを検知し、測定することができる。また、コーティング材として用いている導電層36と同一の材料で構成される第一の導電部39を水分検知装置14Eの対極として用いているため、パネル構造物10Eの簡素化を図ることができると共に、水分検知装置14Eの層厚を薄くすることができる。
【0054】
また、第一の導電部39は、導電層36と同一の材料からなるものを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、導電層36とは異なる他の材料を用いるようにしてもよい。
【0055】
また、本実施例に係るパネル構造物10Eにおいては、第一の導電部36B上に絶縁部22及び第二の導電部23を三つ設けるようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガラス基板11の端から電池膜12までの距離等に応じて窪み部37の領域を適宜変更し、窪み部37内の領域に応じて第一の導電部36B上に設ける絶縁部22及び第二の導電部23の数は適宜変更するようにしてもよい。
【0056】
本実施例に係るパネル構造物10Eは、例えば、橋梁設備などに用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではなく、風力発電装置のタワー外壁、車両、船舶等の移動体等など外気環境に晒されるものであれば適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明に係るパネル構造物は、基板表面に侵入した水分のみを検知することができ、例えば太陽電池パネルや外気環境に晒されるものの水分侵入の検知用に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0058】
10A〜10E パネル構造物
11 ガラス基板
12 電池膜
13 エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)
14A〜14E 水分検知装置
15 バックシート
16 シール剤
21、39 第一の導電部
22、35、37、38 絶縁部
23 第二の導電部
24 電流計
25 水分
26 水膜通路
27 水膜
31 第一の導電板(第一の導電部)
32、34 絶縁層
33、35、37 窪み部
36 第一の導電層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、該基板上に設置される機能性材料と、前記基板と前記機能性材料との外表面を被覆する封止材とからなるパネル構造物であって、
前記基板の外表面に設けられ、前記基板の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置を備えてなり、
前記水分検知装置が、
前記基板の表面に設けられる第一の導電部と、
該第一の導電部の上部に設けられる絶縁部と、
該絶縁部の上部に設けられる第二の導電部とを有し、
前記基板の表面の水分を検知することを特徴とするパネル構造物。
【請求項2】
請求項1において、
前記基板が前記第一の導電部として用いられることを特徴とするパネル構造物。
【請求項3】
請求項2において、
前記絶縁部が前記第一の導電部の表面に絶縁層として形成され、
前記絶縁部の外表面に前記第一の導電部まで貫通した窪み部を少なくとも一つ有し、
前記第二の導電部が、前記窪み部同士の間に形成される前記絶縁部の上部に形成されることを特徴とするパネル構造物。
【請求項4】
請求項1において、
前記絶縁部が前記基板及び前記第一の導電部の表面を覆うように設けられる絶縁層であり、
前記第一の導電部上に積層される絶縁部の外表面に前記第一の導電部まで貫通した窪み部を少なくとも一つ有し、
前記第二の導電部が、前記窪み部同士の間に形成される前記絶縁部の上部に形成されることを特徴とするパネル構造物。
【請求項5】
請求項1において、
前記基板の表面を覆うように導電層を設け、
前記導電層の表面の一部に前記基板まで貫通した窪み部を形成し、
前記窪み部の内壁に絶縁部を設け、前記窪み部内の前記基板上に前記第一の導電部を形成すると共に、前記窪み部内の前記第一の導電部の上部に更に所定間隔で絶縁部を設け、
前記絶縁部の上部に前記第二の導電部が形成されることを特徴とするパネル構造物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一つにおいて、
前記機能性材料が、太陽の光を電気に変える太陽電池であることを特徴とするパネル構造物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つにおいて、
前記第一の導電部を形成する材料として、Fe、Zn、Al、ステンレス鋼の何れかが用いられることを特徴とするパネル構造物。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一つにおいて、
前記第二の導電部を形成する材料として、Au、Pt、Ag又はグラファイトが用いられることを特徴とするパネル構造物。
【請求項9】
基板と、該基板上に設置される機能性材料と、前記基板と前記機能性材料との外表面を被覆する封止材と、前記基板の外表面に設けられ前記基板の外表面の腐食電流を検知する水分検知装置とを備え、前記基板の表面の水分を検知する水分検知方法であって、
前記水分検知装置が、前記基板の表面に設けられる第一の導電部と、該第一の導電部の上部に設けられる絶縁部と、該絶縁部の上部に設けられる第二の導電部とを有し、
前記封止材から前記基板の表面に侵入した水分が、前記第一の導電部同士の間の隙間に水膜を形成し、発生する腐食電流を検知することを特徴とする水分検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−271132(P2010−271132A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122204(P2009−122204)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】