説明

パネル落下防止用ワイヤー挿通具

【課題】遮音パネルを複数段に取り付けてなる遮音壁の任意の一つのパネルを落下防止用ワイヤーから簡単に取外しできるパネル落下防止用ワイヤー挿通具を提供する。
【解決手段】所定間隔おきに立設された横断面H形支柱間に、遮音パネルPが上下複数段に取り付けられてなる遮音壁の各遮音パネルPに取り付けて、パネル落下防止用ワイヤーWを挿通するためのパネル落下防止用ワイヤー挿通具K1であり、略C字形状の本体と、このC字形状本体の開口部を開閉する開閉部材とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路や鉄道等の車両走行に伴う騒音公害を防止する遮音壁に使用されるパネル落下防止用ワイヤー挿通具に関するもので、詳しくは、所定間隔おきに立設された横断面H形支柱間に遮音パネルが上下複数段に取り付けられてなる遮音壁の各遮音パネルに取り付けて、パネル落下防止用ワイヤーを挿通するためのパネル落下防止用ワイヤー挿通具関する。
【背景技術】
【0002】
図6の(a) は、従来のパネル落下防止用ワイヤー挿通具30を取り付けた遮音パネルPの縦断面図、(b) は同遮音パネルPの概略横断面図である。この遮音パネルPは、(a) に示すように、表面板31と背面板32との間に吸音材33を配置し、この吸音材33と背面板32との間に空気層34を設けたものである。そして、この遮音パネルPの左右側サイドに夫々設けられた側枠35の上端部側に、アイボルトからなるパネル落下防止用ワイヤー挿通具30が取り付けられている。
【0003】
しかして、各遮音パネルPのパネル落下防止用ワイヤー挿通具30には、横断面H形支柱の上端部から垂下されたパネル落下防止用ワイヤーが挿通され、それにより、例えば高架高速道路を走行中の車が遮音パネルPにぶつかってもパネルPが高架下に落下するのを防止するようになっている。
【0004】
ところで、従来のパネル落下防止用ワイヤー挿通具は、上記のようにアイボルトからなるため、支柱間に遮音パネルを上下複数段に取り付けて構築される遮音壁において、例えば遮音パネルの一つが破損したためそのパネルを取り換える時には、上下複数段ある遮音パネルの全てをパネル落下防止用ワイヤーから取り外す必要があり、したがってその取外し作業が非常に面倒で、遮音パネルの取り換え作業に困難を来していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、遮音パネルを上下複数段に取り付けて構築された遮音壁の任意の一つの遮音パネルを容易に取り換え可能なパネル落下防止用ワイヤー挿通具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、所定間隔おきに立設された横断面H形支柱1,1間に遮音パネルが上下複数段に取り付けられてなる遮音壁の各遮音パネルに取り付けて、パネル落下防止用ワイヤーWを挿通するためのパネル落下防止用ワイヤー挿通具であって、略C字形状の本体36と、このC字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材37,38とからなり、前記開口部36oから遮音パネルPの所要部とパネル落下防止用ワイヤーWを着脱するようにしてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2は、請求項1に記載のパネル落下防止用ワイヤー挿通具において、前記C字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材はコイルバネ37からなり、該コイルバネ37は、その両端部37a,37bがC字形状本体36の両端部36a,36bに嵌まるように配置されると共に、その一端部37aがC字形状本体36の一端部36aに取り付けられてなることを特徴とする。
【0008】
請求項3は、請求項1に記載のパネル落下防止用ワイヤー挿通具において、前記C字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材はリング状部材38からなり、該リング状部材38は、その一端部38aがC字形状本体36の一端部36aに、常時C字形状本体36の開口部36oをその内側から閉じるべくバネ付勢力を生ぜしめるように取り付けられてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、遮音パネルの一つが破損したためにその遮音パネルを取り換える時に、パネル落下防止用ワイヤーWを挿通した状態でワイヤーWを容易に取外し、また新しい遮音パネルPにワイヤーWを容易に取り付けることができる。
【0010】
即ち本発明によれば、遮音パネルを取り換える時に、遮音パネルに取り付けてあるワイヤー挿通具のC字形本体36の開口部36oを開閉する開閉部材を開放操作することによって、C字形本体36をパネル落下防止用ワイヤーW及び遮音パネルから外すことにより、これによって破損した遮音パネルのみを取り外すことができ、また新しい遮音パネルをワイヤーWに挿通させる作業も前記開閉部材を操作することによって容易に行なえ、従って遮音パネルの取り換え作業を簡単容易に行なうことができる。又、構造が簡単であるから、安価に提供できる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記C字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材はコイルバネ37からなり、該コイルバネ37は、その両端部37a,37bがC字形状本体36の両端部36a,36bに嵌まるように配置されると共に、その一端部37aがC字形状本体36の一端部36aに取り付けられてなるものであって、常時は図4の(a) に示すようにバネ付勢力で開口部36oを閉じており、図4の(b) に示すようにバネ37の他端部37bを押して圧縮することで開口部36oを開いた状態で、C字形状本体36の端部36b側を図4の(c) に示すように遮音パネルPに設けた取付孔28に挿入することにより、C字形状本体36を遮音パネルPに取り付けることができ、そしてこの状態でバネ37の一端部37bを押して開口部36oを開くことにより、パネル落下防止用ワイヤーWの取付け・取外しを極めて容易に行なうことができる。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記C字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材はリング状部材38からなり、該リング状部材38は、その一端部38aがC字形状本体36の一端部36aに、常時C字形状本体36の開口部36oをその内側から閉じるべくバネ付勢力を生ぜしめるように取り付けられてなり、図5の(b) に示すように、リング状部材38の他端部38b側をバネ付勢力に抗して内側へ押して開口部36oを開いた状態で、C字形状本体36の端部36b側を図5の(c) に示すように遮音パネルPの取付孔28に挿入することにより、C字形状本体36を遮音パネルPに取り付けることができ、そしてこの状態でリング状部材38の端部38bを押して開口部36oを開くことによって、パネル落下防止用ワイヤーWの取付け・取外しを極めて容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施形態について図面に基づき説明すると、図1の(a) は本発明に係るパネル落下防止用ワイヤー挿通具が使用される遮音壁の正面図、(b) は左側面図、(c) は水平概略断面図ある。先ず、この遮音壁について説明すると、この遮音壁は、所定間隔おきに立設された横断面H形支柱1と、隣り合う支柱1,1間における騒音発生側に面する前面側に上下複数段に取り付けられた遮音パネルPである前面遮音パネル2と、その背面側に上下複数段に取り付けられた同じく遮音パネルPである背面遮音パネル3と、これら前面遮音パネル2と背面遮音パネル3との間に形成される空気層4と、前面遮音パネル2と背面遮音パネル3との上端部を覆う上カバー5と、その下端部を塞ぐ下カバー6とから構成される。支柱1は、ウエブ1aと両側のフランジ部1b,1cからなるH形鋼よりなるもので、ウエブ1aが道路の長手方向と直交するように配置される。
【0014】
前面遮音パネル2は、図2に示すように、縦断面下向きコ字形の上枠7と、縦断面上向きコ字形の下枠8と、夫々横断面外向きコ字形の左右側枠9,9とからなる周枠10内の表面側に、パンチングメタルよりなる表面板11を配置し、その裏側に、ロックウールやグラスウール等からなる吸音材13を配置することによって形成されるもので、左右各側枠9が支柱1の前面側フランジ部1bにボルト止めされる。
【0015】
この前面遮音パネル2を形成する上枠7の上面は、水平面ではなく、後端から前端側へ向かって上り傾斜状に形成されている。下枠8の下面も、水平面ではなく、後端から前端側へ向かって上り傾斜状に形成されている。そして、この下枠8の背面側には、隣り合う支柱1,1間に上下複数段に取り付けられる際に下段側前面遮音パネル2の上枠7の背面に接するように差し込まれる差込支持片15が突設されている。
【0016】
背面遮音パネル3は、図3に示すように、略々波形状のパネル本体16と、このパネル本体16の内面側左右両端部に夫々取り付けられた側枠17とからなるもので、パネル本体16の下端部には、前面遮音パネル2と同様に、隣り合う支柱1,1間に背面遮音パネル3が上下複数段に取り付けられる際に下段側背面遮音パネル3の上端部背面に接するように差し込まれる差込支持片18が突設されている。側枠17は、前面板部17aと、これの一側縁から直角に折曲されてパネル本体16の断面形状に対応するように形成された端板部17bと、これの先端縁部から直角に折曲された取付片部17cとからなるもので、前面板部17aの上下両端部をパネル本体16の上下両端部に固着し、端板部17bをパネル本体16の内面に添わせた状態で取付片部17cをパネル本体16に取付け固定している。
【0017】
図4の(a) 〜(c) は、本発明に係る他の落下防止用ワイヤー挿通具K1を示す。この落下防止用ワイヤー挿通具K1は、略C字形状の本体36と、このC字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材としてのコイルバネ37とからなるもので、コイルバネ37は、その両端部37a,37bがC字形状本体36の両端部36a,36bに嵌まるように配置されると共に、その一端部37aがC字形状本体36の一端部36aに取り付けてあって、常時は(a) に示すようにバネ付勢力で開口部36oを閉じており、(b) に示すようにバネ37の他端部37bを押して圧縮することで開口部36oを開く。
【0018】
この落下防止用ワイヤー挿通具K1の使用にあたっては、図4の(b) に示すように開口部36oを開いた状態で、C字形状本体36の端部36b側を(c) に示すように遮音パネルPに設けた取付孔28に挿入することにより、C字形状本体36を遮音パネルPに取り付けることができ、そしてこの状態でバネ37の一端部37bを押して開口部36oを開くことにより、パネル落下防止用ワイヤーWの取付け・取外しを行なうことができる。
【0019】
図5の(a) 〜(c) は、更に他の落下防止用ワイヤー挿通具K2を示す。この落下防止用ワイヤー挿通具K2は、略C字形状の本体36と、このC字形状本体36の開口部36oを開閉する開閉部材としてのリング状部材38とからなるもので、リング状部材38は、その一端部38aがC字形状本体36の一端部36aに、常時C字形状本体36の開口部36oをその内側から閉じるべくバネ付勢力を生ぜしめるように取り付けられている。
【0020】
しかして、使用にあたっては、図5の(b) に示すように、リング状部材38の他端部38b側をバネ付勢力に抗して内側へ押して開口部36oを開いた状態で、C字形状本体36の端部36b側を(c) に示すように遮音パネルPの取付孔28に挿入することにより、C字形状本体36を遮音パネルPに取り付けることができ、そしてこの状態でリング状部材38の端部38bを押して開口部36oを開くことによって、パネル落下防止用ワイヤーWの取付け・取外しを行なうことができる。
【0021】
遮音壁の施工にあたっては、所定間隔おきに立設された横断面H形支柱1における隣り合う支柱1,1間の床F面側に下カバー6を配して、その両端部を支柱1のフランジ部1b,1c間に嵌合する(図示参照)。尚、各支柱1の上端部からは所要本数のパネル落下防止用ワイヤーWが垂下され、各ワイヤーWは、図示しないが、支柱1の中間所要部に設けてあるワイヤー通し孔に適宜に通されている。
【0022】
こうして遮音パネルPを、隣り合う支柱1,1間の前面側と背面側とに夫々所要数段に取り付けると共に、各遮音パネルPに取り付けたワイヤー挿通具K1に夫々ワイヤーWを挿通させた後、図1の(a) 及び(b) に示すように、最上段の前面遮音パネル2及び背面遮音パネル3の上端部間を上カバー5で覆い、また隣り合う上カバー5,5の端部どうしを連結用上カバー5oで覆って夫々ボルトで固定し、遮音壁の施工を完了する。
【0023】
上記のようにして施工された遮音壁において、例えば遮音パネルPの一つが破損したためにその遮音パネルPを取り換える時には、その遮音パネルPに取り付けてあるワイヤー挿通具K1の開放操作することによって、開閉手段37,38を開放して、パネル落下防止用ワイヤーWから外すことにより、破損した遮音パネルPのみを取り外すことができ、また新しい遮音パネルPをワイヤーWに挿通させる作業もワイヤー挿通具K1によって容易に行なえ、したがって遮音パネルPの取り換え作業を簡単容易に行なうことができる。
【0024】
以上説明した実施形態では、このワイヤー挿通具Kは、図6に示されるパネル単体型の遮音パネルPに取り付ける構成について説明したが、当然のことながら、図1〜図3に示すように、互いに離間して配置される前面遮音パネル2と背面遮音パネル3とによって構成される遮音パネルの前面遮音パネル及び背面遮音パネルに夫々取り付けることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a) は本発明に係るパネル落下防止用ワイヤー挿通具が使用される遮音壁の正面図、(b) は左側面図、(c) は水平概略断面図ある。
【図2】前面遮音パネルの要部を示す斜視図である。
【図3】背面遮音パネルの要部を示す斜視図である。
【図4】パネル落下防止用ワイヤー挿通具の一実施形態を示すもので、(a) は同挿通具の側面図で、開口部が閉じた状態を示し、(b) は開口部が開いた状態の側面図である。(c)は同使用状態を示す図である。
【図5】パネル落下防止用ワイヤー挿通具の他の実施形態を示すもので、(a) は同挿通具の斜視図で、開口部が閉じた状態を示し、(b) は開口部が開いた状態の側面図である。(c)は同使用状態を示す図である。
【図6】(a) は従来のパネル落下防止用ワイヤー挿通具を取り付けた遮音パネルの縦断面図、(b) は同遮音パネルの概略横断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 横断面H形支柱
2 前面遮音パネル(遮音パネル)
3 背面遮音パネル(遮音パネル)
P 遮音パネル
W パネル落下防止用ワイヤー
K1,K2 パネル落下防止用ワイヤー挿通具
36 C字形状の本体
36o 開口部
37 コイルバネ(開閉部材)
38 リング状部材(開閉部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔おきに立設された横断面H形支柱間に遮音パネルが上下複数段に取り付けられてなる遮音壁の各遮音パネルに取り付けて、パネル落下防止用ワイヤーを挿通するためのパネル落下防止用ワイヤー挿通具であって、略C字形状の本体と、このC字形状本体の開口部を開閉する開閉部材とからなり、前記開口部から遮音パネルの所要部とパネル落下防止用ワイヤーを着脱するようにしてなるパネル落下防止用ワイヤー挿通具。
【請求項2】
前記C字形状本体の開口部を開閉する開閉部材はコイルバネからなり、該コイルバネは、その両端部がC字形状本体の両端部に嵌まるように配置されると共に、その一端部がC字形状本体の一端部に取り付けられてなる請求項1に記載のパネル落下防止用ワイヤー挿通具。
【請求項3】
前記C字形状本体の開口部を開閉する開閉部材はリング状部材からなり、該リング状部材は、その一端部がC字形状本体の一端部に、常時C字形状本体の開口部をその内側から閉じるべくバネ付勢力を生ぜしめるように取り付けられてなる請求項1に記載のパネル落下防止用ワイヤー挿通具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−140869(P2011−140869A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40694(P2011−40694)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【分割の表示】特願2005−322113(P2005−322113)の分割
【原出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(505413200)田島スチール株式会社 (4)
【出願人】(591161759)大東金属株式会社 (7)
【Fターム(参考)】