説明

パノラマ映像作成方法と作成装置

【課題】 特別な画像処理を施す必要なく簡易な方法で移動方向に伸びるとともに周方向に拡がるパノラマ映像を作成することが可能な技術を提供する。
【解決手段】 複数のラインカメラを移動体に対し、主点同士が移動方向に所定距離Xだけオフセットされ、視野面同士は平行であり、移動方向から見た場合に各カメラの視野が連続するという関係を満たして固定し、移動体で移動しながら、移動距離を測定し、所定距離を移動する毎に各カメラで撮影し、撮影データを移動距離と関連付けて記憶する工程を実施し、その後に前方側にあるラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側にあるラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像を、前記基準線からの角度に基づいて特定される位置関係の下で同一直線上に配置する工程と、直線状に配置された映像を移動方向に並列配置する工程を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパノラマ映像作成方法と作成装置に関する。詳しくは、視野角が所定視野角に制約されているラインカメラの複数台を移動体に搭載し、移動体で移動しながら各ラインカメラで撮影を繰返すことによって、移動方向に長く伸びるとともに各ラインカメラの視野角以上に広く拡がるパノラマ映像を作成する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路、法面、トンネル、橋梁などの大型構造物を維持管理するために、それらの表面を観察し、微小な欠陥やひび割れの有無などを確認したいという要望が存在する。
【0003】
本出願人は、上記の要望に応えるために、ラインカメラを搭載した移動体を用いて広範囲な道路面を撮影する技術を提案している。特許文献1の技術では、道路を走行する車両にラインカメラを搭載し、車両で走行しながら逐次ラインカメラを用いて道路面を撮影することによって、長距離に亘る路面映像を撮影する技術を提案している。長距離に亘る路面映像が撮影できると、作業者による巡回調査が不要となり、道路面の欠陥やひび割れの有無等を調査するのに必要な時間と労力を劇的に低減することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−54911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表面を詳細に調査するためには、ラインカメラの分解能を上げる必要がある。ラインカメラの分解能を上げると、ラインカメラの視野角が狭くなり、1台のラインカメラで撮影可能な範囲は狭くなる。このため、調査対象表面が移動方向に長いだけでなく、その垂直方向(周方向)にも広く拡がっている場合、撮影対象面を分割してそれぞれ別個に撮影し、撮影された複数の映像を繋ぎ合せて1枚のパノラマ映像を作成する必要がある。
複数の映像を繋ぎ合わせてパノラマ映像を作成するためには、各映像を同一の主点で撮影しておく必要がある。ラインカメラの主点が一致しない場合、繋ぎ目に不整合が生じ、良好なパノラマ映像を作成することができない。ラインカメラの主点が一致しない2枚の映像を繋ぎ合わせるためには、繋ぎ合わせる前の映像について特殊な画像処理をしておくことが必要となる。従って、複数の映像を繋ぎ合わせてパノラマ映像を作成するためには、各映像を同一の主点で撮影することが望ましい。
しかしながら、ラインカメラ同士が物理的に干渉してしまうために、主点を一致させた状態で複数台のラインカメラを配置することは難しい。1台のラインカメラを利用し、主点を中心にしてラインカメラを回転させると、同一主点で複数方向を撮影することができるが、移動体で移動しながら撮影する方法と組合せて用いると、一時停車してラインカメラを回転させて複数方向を撮影してから移動して再度停車する作業を繰返して実施しなければならず、現実的でない。
本発明は上記の課題を解決する。本発明は、移動体で移動しながら撮影することによって同一主点で複数方向を撮影した撮影データを取得し、特別の画像処理をしないで単に繋ぎ合わせるだけで、移動方向に長く伸びるとともに周方向に広く拡がるパノラマ映像を作成することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、視野角が所定視野角に制約されているラインカメラの複数台を移動体に搭載し、移動体で移動しながら各ラインカメラで撮影を繰返すことによって、移動方向に伸びるとともに前記所定視野角以上に拡がるパノラマ映像を作成する方法である。
本発明の方法では、まず前記複数のラインカメラを移動体に対して、
(1) ラインカメラの主点同士は、移動方向に所定距離Xだけオフセットされており、
(2) ラインカメラの視野面同士は、平行であり、
(3) 移動方向から見た場合に、一方のラインカメラの時計回り終端側の視野限界線の基準線からの時計回転方向の角度をaとし、他方のラインカメラの時計回り始端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をbとしたときに、b≦aであるという関係を満たして固定し、移動体で移動しながら、
(1) 移動距離を測定し、
(2) 所定距離を移動する毎に各ラインカメラで撮影し、撮影データを移動距離と関連付けて記憶する工程を実施し、
その後に、前方側にあるラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側にあるラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像を、前記基準線からの角度に基づいて特定される位置関係の下で、同一直線上に配置する工程と、前記直線上に配置された映像を移動方向に並列配置する工程を実行する。
本明細書でいうラインカメラとは、周囲の景色の中から直線的に伸びる視野範囲内の映像を得る装置のことであって、一般的には撮像素子が直線状に配列されたラインセンサカメラのことをいう。図6に示すように、ラインカメラ102は主点104から光軸108をはさんで伸びる視野限界線106と110の間の視野面S1,S2にはさまれた領域A内の景色を、直線状の映像として撮影する。ここで視野角とは、一方の視野限界線106と他方の視野限界線110が成す角のことをいう。視野面S1とS2まではほぼ平行であり、ラインカメラ102から景色までのX1方向距離に長短があっても、視野AのX2方向の幅Bはほとんど変化しない。
従ってラインカメラ102をX2方向に距離Bだけ移動して撮影する処理を繰返すと、視野限界線106と110の間をX2方向に伸びる領域を、連続的に撮影したパノラマ映像を作成することができる。ラインカメラ102を移動させることによってエリアカメラとすることができる。ラインカメラ102を移動させる方式によって撮影すると、X2方向の移動距離から映像内の対象点のX2座標を知ることができ、対象点を撮影したラインセンサのセル番号から対象点のX3座標を知ることができる。ラインカメラ102を移動させる方式によって撮影すると、撮影対象点のX2座標とX3座標を特定可能な状態で、景色を撮影することができる。
【0007】
本発明では、周方向に広く拡がる(1台のラインカメラの視野角以上に広く拡がる)パノラマ映像を作成するために、複数のラインカメラを移動体に搭載する。このとき、移動体に搭載するラインカメラの主点同士を、移動方向と平行にオフセットさせることによって、ラインカメラ同士が物理的に干渉するのを防止する。またラインカメラの視野面同士を、互いに平行とする。視野面は、移動体の進行方向に垂直であることが好ましいが、垂直である必要はなく、移動体の進行方向に対して傾いた面を視野面としてもよい。
周方向に広く拡がる(1台のラインカメラの視野角以上に広く拡がる)パノラマ映像を作成するために、移動方向から見た各ラインカメラの撮影方向を、互いに異ならせることによって広い範囲を撮影する。移動方向から見た場合に、一方のラインカメラの時計回り終端側の視野限界線の基準線(例えば鉛直下方を向く線)からの時計回転方向の角度をaとし、他方のラインカメラの時計回り始端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をbとしたとき、b=aであれば、2台のラインカメラの視野は移動方向から見て、隙間もなければ重複もない関係で連続している。またb<aであれば、2台のラインカメラの視野は一部が重複する関係で連続している。いずれにしても、2台のラインカメラの視野は移動方向から見て連続している。
【0008】
複数のラインカメラの主点の移動方向のオフセット距離がXとすると、前方側のラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側のラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像は、同一の主点で、図6のX2座標が等しい直線的範囲を撮影した映像となる。複数のラインカメラの視野面は平行であり、移動方向から見て両者の視野は隙間なく連続している。
そこで、同一の主点で、直線的に長く伸びる範囲を撮影した2枚の映像を同一直線上に配置することによって、各ラインカメラの視野角以上に拡がるパノラマ映像を作成することができる。このとき、前記基準線(例えば鉛直下方を向く線)からの角度に基づく位置関係の下で、同一直線上に配置すると、前記映像が直線的に伸びる方向に連続するパノラマ映像を作成することができる。
前記基準線からの角度に基づく位置関係としては、例えば映像内の点とある基準点との距離が、前記基準線からの角度に比例するという関係としてもよい。基準線(例えば鉛直下方を向く線)からの角度と基準点からの距離が比例するという関係は、比較的簡単に得ることができる。b=aの場合は、前方側のラインカメラによって得られる映像と、後方側のラインカメラによって得られる映像は連続しており、重複する映像は存在しない。従って、前方側のラインカメラで得られる映像と、後方側のラインカメラで得られる映像を、そのまま繋ぎ合わせればよい。b<aの場合には、前方側のラインカメラによって得られる映像と、後方側のラインカメラによって得られる映像には、重複する映像範囲が存在する。基準線(例えば鉛直下方を向く線)からの角度と基準点からの距離が比例するという関係を維持すると、重複問題が解消する。重複部については一方のラインカメラで得られた映像のみを使用してもよいし、両者の映像から平均化された映像を使用してもよい。
上記のようにして得られる直線状に配置された映像を移動方向に並列配置することで、移動方向に伸びるとともにラインカメラの視野角以上に拡がるパノラマ映像を作成することができる。
【0009】
上記のパノラマ映像作成方法は、下記のような装置を用いることによって好適に実施することができる。本発明のパノラマ映像作成装置は、移動体と、複数のラインカメラと、移動距離を測定する手段と、移動体が所定距離を移動する毎に各ラインカメラで撮影する手段と、撮影した撮影データを移動距離と関連付けて記憶する手段と、前方側にあるラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側にあるラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像を、移動方向から見た場合の基準線からの角度に基づいて特定される位置関係の下で、同一直線上に配置する手段と、前記直線上に配置された映像を移動方向に並列配置する手段と
を備え、前記複数のラインカメラは移動体に対して、
(1) ラインカメラの主点同士は、移動方向に所定距離Xだけオフセットされており、
(2) ラインカメラの視野面同士は、平行であり、
(3) 移動方向から見た場合に、一方のラインカメラの時計回り終端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をaとし、他方のラインカメラの時計回り始端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をbとしたときに、b≦aであるという関係を満たして固定されている。
【0010】
本発明のパノラマ映像作成方法と装置によると、移動体で移動しながら撮影することによって同一主点で複数方向を撮影した撮影データを取得し、特別の画像処理をしないで単に繋ぎ合わせるだけで、移動方向に長く伸びるとともに周方向に広く拡がるパノラマ映像を作成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具現化した実施例について図面を参照して説明する。最初に実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1): 移動体は、路面を走行する車両である。
(形態2): 車両の移動距離は、ロータリーエンコーダによって計測する。
(形態3): ラインカメラの主点同士を結ぶ直線は、移動体の進行方向に平行である。移動体に搭載するラインカメラの主点同士は、移動方向に所定距離Xだけオフセットされており、その垂直方向にはオフセットされていない。
(形態4): ラインカメラの視野面は、互いに平行であり、鉛直面内にあって、移動体の進行方向に対して傾いている。
【実施例】
【0012】
(第1実施例)
本発明を具現化したパノラマ映像作成装置2を、図を参照しながら説明する。図1は、本発明のパノラマ映像作成装置2を模式的に示す側面図であり、図2はパノラマ映像作成装置2を図1の視点II方向から見た平面図であり、図3はパノラマ映像作成装置2を図1の視点III方向から見た正面図である。
【0013】
図1に明示されているように、パノラマ映像作成装置2は、測定車18、撮影部20、ロータリーエンコーダ12、制御装置14、記憶装置10を備えている。測定車18(移動体に相当する)は、マイクロバスを測定用に改造したものである。
撮影部20は、測定車18の上部に配置され、測定車18の側方に向けて張り出した架台8を備え、架台8の上の雲台に搭載された2台のラインカメラ4と6を備えている。
ラインカメラ4と6は、光入力を電気信号に変換する多数の撮像素子が縦一列に配列されており、その前面に光信号を集めるレンズを設けている。ラインカメラ4と6は、制御装置14からの指示によって、レンズを透過して入力された映像をCMOS、CCD等の撮像素子で撮影する。このラインカメラ4と6は、それぞれ4096個の撮像素子を持つ。ラインカメラ4と6の視野角は、それぞれ70°であり、各撮像素子は、レンズから3m離れた被写体について「1mm×1mm」の区画を撮像可能である。
ラインカメラ4は、撮像素子が車両の上下方向に一列となるように設置されている。図2と図3に示すように、ラインカメラ4は、光軸32が測定車18の進行方向に対して垂直で、水平面から35°上方に向いた方向となるように設置角度を調整されている。
ラインカメラ6は、撮像素子が車両の上下方向に一列となるように設置されている。図1と図3に示すように、ラインカメラ6は、光軸34が測定車18の進行方向に対して垂直で、水平面から35°下方に向いた方向となるように設置角度を調整されている。すなわち、ラインカメラ4とラインカメラ6は、視野面が互いに平行である。
図1と図2に示すように、ラインカメラ6は、ラインカメラ4より500mm後方に配置され、ラインカメラ4の主点と、ラインカメラ6の主点を結ぶ線は、測定車18の進行方向とほぼ平行となるように、設置位置を調整されている。
すなわち、ラインカメラ4とラインカメラ6は主点同士が測定車18の進行方向に500mmオフセットされて搭載されている。また、図3に明示されるように、測定車18の進行方向から見た場合に、ラインカメラ4の視野とラインカメラ6の視野は連続している。すなわち、測定車18の進行方向から見た場合に、ラインカメラ4の時計回り終端側の視野限界線82の鉛直軸86からの時計回転方向の角度aと、ラインカメラ6の時計回り始端側の視野限界線84の鉛直軸86からの時計回転方向の角度bは等しい。
【0014】
図1に示すように、ロータリーエンコーダ12(移動距離を測定する手段に相当する)は道路面に接触して回転する。ロータリーエンコーダ12は、測定車18が1mm走行する毎にパルスを出力する。
制御装置14には、ラインカメラ4と6、ロータリーエンコーダ12、記憶装置10が接続されている。制御装置14は、CPU、ROM、RAM、入出力装置等を備えるコンピュータである。制御装置14は、ロータリーエンコーダ12から入力されるパルス信号を用いて、ROMに格納されている制御プログラムを実行して、測定車18が1mm走行する毎にラインカメラ4と6に撮影を行わせる。車両側方3mの点に垂直壁があれば、ラインカメラ4と6によって1mm×1mmの画素を垂直方向に4096個配列したライン映像が得られる。
制御装置14は、ロータリーエンコーダ12から入力されるパルス信号に基づいて、撮影を開始してからの測定車18の走行距離を把握している。そして、制御装置14は、撮影したライン映像と、撮影を開始してからの測定車18の走行距離とを対応付けて、記憶装置10に記憶させる。制御装置14は、撮影され記憶されたライン映像を繋ぎ合わせてパノラマ映像を作成する。
記憶装置10は、制御装置14から入力されるデータを、複数のハードディスクに分散して記憶する。
【0015】
図4を用いて、パノラマ映像作成装置2の動作を説明する。
ステップS20で動作が開始されると、パノラマ映像作成装置2はステップS22で測定車18を走行させ、測定車18の周囲の撮影を開始する。
ステップS24で、制御装置10は測定車18が所定距離を走行するごとにラインカメラ4と6にライン映像を撮影させる。本実施例では、測定車18が1mm走行するごとに、ラインカメラ4と6は撮影を実施する。測定車18から側方に3m離れた場所に壁面があれば、ラインカメラ4によって壁面上の1mm幅の視野内が撮影される。この場合、ラインカメラ6によっても、壁面上の1mm幅の視野内が撮影される。
ステップS26では、ラインカメラ4と6で撮影された映像データを、走行距離と関連付けて記憶装置12へ記憶する。
ステップS28では、撮影範囲をすべて撮影したかどうかを判断する。まだすべての撮影範囲を撮影していない場合(NOの場合)、ステップS24、ステップS26を繰返し実施する。すべての撮影範囲について撮影が終了した場合(YESの場合)、パノラマ映像作成装置2はステップS30へ進み、測定車18の走行を停止して、撮影を終了する。
【0016】
ステップS32では、記憶装置12に記憶された映像データを、測定車18の走行方向に繋ぎ合わせて、パノラマ映像を作成する。
ラインカメラ4で撮影されたライン映像は、その映像が撮影され記憶された時点での測定車18の走行距離が関連付けられて記憶されている。これらの映像を測定車18の走行方向に繋ぎ合わせていくことで、図5に示すパノラマ映像52が得られる。パノラマ映像52は、ラインカメラ4によって撮影されるライン映像から得られる。
同様にして、ラインカメラ6で撮影されたライン映像を繋ぎ合わせていき、パノラマ映像54を作成する。
ラインカメラ4と6それぞれについて、パノラマ映像52と54が作成されると、ステップS34へ進む。
【0017】
ステップS34では、ステップS32で作成された2つのパノラマ映像52と54を繋ぎ合わせて、1つのパノラマ映像を作成する。
図5に示すように、パノラマ映像52は測定車18の走行距離がL1、L2、L3、・・・の時点でラインカメラ4によって撮影されたライン映像62、64、66、・・・を、測定車18の走行する方向に繋ぎ合わせて作成されている。また、パノラマ映像54は測定車18の走行距離がL1、L2、L3、・・・の時点でラインカメラ4によって撮影されたライン映像72、74、76、・・・を、測定車18の走行する方向に繋ぎ合わせて作成されている。各ライン映像は、測定車18が1mm走行する度に撮影されている。また、1つのライン映像の幅は1mmである。
制御装置10は、パノラマ映像54をパノラマ映像52に対して、縦方向にΔZ、横方向にΔLだけオフセットさせ、両者を繋ぎ合わせる。
【0018】
上記のΔLは、ラインカメラ4とラインカメラ6の設置間隔であり、本実施例では500mmである。ラインカメラ6はラインカメラ4よりも測定車18の後方側に配置されており、測定車18が500mm走行した後にラインカメラ4があった場所に到達する。従って、パノラマ映像52に対して、図5の左方向に500mmオフセットさせる。パノラマ映像Bを横方向にΔLオフセットさせてパノラマ映像Aと繋ぎ合わせると、上下に並ぶライン映像を撮影した時点におけるラインカメラ4の位置とラインカメラ6の位置とは一致する。図5に明示されているように、上記のように配置すると、測定車18の走行距離がL1の時点でラインカメラ4で撮影した映像62と、測定車18の走行距離がL1+ΔLの時点でラインカメラ6で撮影した映像78とが、同一直線上に配置されている。同様にして、測定車18の走行距離がL2の時点でラインカメラ4で撮影した映像64は、測定車18の走行距離がL2+ΔLの時点でラインカメラ6で撮影した映像80と、測定車18の走行距離がL3の時点でラインカメラ4で撮影した映像66は、測定車18の走行距離がL3+ΔLの時点でラインカメラ6で撮影した映像82と、それぞれ同一直線上に配置されている。
【0019】
上記のΔZは、ラインカメラ4とラインカメラ6の光軸の成す角を映像上の長さに換算した数値である。本実施例では、ラインカメラ4とラインカメラ6の光軸の成す角は70°であり、1台のラインカメラが撮影できる視野角に一致する。従って、例えばライン映像56を撮影した時点でのラインカメラ4の視野と、ライン映像58を撮影した時点でのラインカメラ6の視野は、互いに隣接しており、視野が重複したり、視野間に間隙を有したりすることがない。この場合には、ΔZとしてパノラマ映像52の縦方向(ライン映像の伸びる方向、図5の上下方向)の長さをとればよい。
上記の例では、ラインカメラ4とラインカメラ6の視野が、測定車18の前方から見て重複していない場合を説明した。ラインカメラ4とラインカメラ6の視野が、測定車18の前方から見て重複する場合は、ラインカメラ4とラインカメラ6の光軸同士が成す角度に比例して、ΔZを決定すればよい。例えば、ラインカメラ4とラインカメラ6の光軸同士が成す角度が35°の場合、35°はラインカメラ4の視野角の半分に相当するため、ΔZとしてパノラマ映像52の縦方向(ライン映像の伸びる方向、図5の上下方向)の半分の長さをとればよい。この場合、パノラマ映像52とパノラマ映像54には、重複する部位が存在する。
パノラマ映像52とパノラマ映像54に重複する部分がある場合は、その重複部分について一方の映像(例えばパノラマ映像52)をそのまま用いてもよいし、両方の映像を平均化した映像を用いてもよい。
【0020】
上記のようにパノラマ映像52とパノラマ映像54を繋ぎ合わせることによって、パノラマ映像52とパノラマ映像54に特別な画像処理を施す必要なく、互いの映像における対応点を探索する必要なく、簡易な方法で移動方向に伸びるとともに周方向に拡がるパノラマ映像を作成することができる。
【0021】
上記の実施例では、各ラインカメラで撮影された映像から、まず個別に移動方向に伸びるパノラマ映像を作成し、作成されたパノラマ映像同士を結合して周方向にも拡がるパノラマ映像を作成している。この順序を変更して、各ラインカメラで撮影された映像を、まず周方向(図5の上下方向)に結合してライン状の映像を作成し、作成されたライン状の映像から、移動方向に伸びるパノラマ映像を作成してもよい。
【0022】
上記の実施例では、ラインカメラとして可視光を撮影する一般的なラインセンサカメラを用いる例を説明したが、ラインカメラとしてはこれに限らず、例えば赤外線撮像素子を備える赤外線カメラを使用してもよい。赤外線カメラを使用すると、サーモグラフィー法によって構造物の内部に存在する欠陥を検出することが可能となる。このような場合にも、本発明の計測方法を用いることによって、移動方向に伸びるとともに周方向に拡がるパノラマ映像を容易に取得することができ、構造物の内部欠陥の検出が容易となる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明のパノラマ映像作成装置2を模式的に示す図である。
【図2】図2は本発明のパノラマ映像作成装置2の平面図である。
【図3】図3は本発明のパノラマ映像作成装置2の側面図である。
【図4】図4はパノラマ映像作成装置2の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は本発明で作成されるパノラマ映像を示す図である。
【図6】図6はラインカメラの視野について説明する図である。
【符号の説明】
【0025】
2・・・パノラマ映像作成装置
4・・・ラインカメラ
6・・・ラインカメラ
8・・・架台
10・・・記憶装置
12・・・ロータリーエンコーダ
14・・・制御装置
18・・・測定車
20・・・撮影部
32・・・光軸
34・・・光軸
52・・・パノラマ映像
54・・・パノラマ映像
56・・・ライン映像
58・・・ライン映像
62、64、66・・・ライン映像
72、74、76・・・ライン映像
82・・・視野限界線
84・・・視野限界線
86・・・鉛直軸
102・・・ラインカメラ
104・・・主点
106・・・視野限界線
108・・・光軸
110・・・視野限界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視野角が所定視野角に制約されているラインカメラの複数台を移動体に搭載し、移動体で移動しながら各ラインカメラで撮影を繰返すことによって、移動方向に伸びるとともに前記所定視野角以上に拡がるパノラマ映像を作成する方法であり、
前記複数のラインカメラを移動体に対して、
(1) ラインカメラの主点同士は、移動方向に所定距離Xだけオフセットされており、
(2) ラインカメラの視野面同士は、平行であり、
(3) 移動方向から見た場合に、一方のラインカメラの時計回り終端側の視野限界線の基準線からの時計回転方向の角度をaとし、他方のラインカメラの時計回り始端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をbとしたときに、b≦aであるという関係を満たして固定し、
移動体で移動しながら、
(1) 移動距離を測定し、
(2) 所定距離を移動する毎に各ラインカメラで撮影し、撮影データを移動距離と関連付けて記憶する工程を実施し、
その後に、
前方側にあるラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側にあるラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像を、前記基準線からの角度に基づいて特定される位置関係の下で、同一直線上に配置する工程と、
前記直線上に配置された映像を移動方向に並列配置する工程
を少なくとも実行することによって前記パノラマ映像を作成する方法。
【請求項2】
移動体と、
複数のラインカメラと、
移動距離を測定する手段と、
移動体が所定距離を移動する毎に各ラインカメラで撮影する手段と、
撮影した撮影データを移動距離と関連付けて記憶する手段と、
前方側にあるラインカメラで移動距離がYであるときに撮影した撮影データから再現される映像と、後方側にあるラインカメラで移動距離がX+Yであるときに撮影した撮影データから再現される映像を、移動方向から見た場合の基準線からの角度に基づいて特定される位置関係の下で、同一直線上に配置する手段と、
前記直線上に配置された映像を移動方向に並列配置する手段と
を備え、
前記複数のラインカメラは移動体に対して、
(1) ラインカメラの主点同士は、移動方向に所定距離Xだけオフセットされており、
(2) ラインカメラの視野面同士は、平行であり、
(3) 移動方向から見た場合に、一方のラインカメラの時計回り終端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をaとし、他方のラインカメラの時計回り始端側の視野限界線の前記基準線からの時計回転方向の角度をbとしたときに、b≦aであるという関係を満たして固定されている
ことを特徴とするパノラマ映像を作成する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−217222(P2006−217222A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27468(P2005−27468)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(591270556)名古屋市 (77)
【出願人】(599137828)株式会社 サンウェイブレックス (15)
【Fターム(参考)】