説明

パリソン長測定方法及び装置

【課題】本発明は、クロスヘッドの下方位置に、動作機構を介して複数の非接触型のセンサを直線移動させ、パリソン長、ドローダウン量、パリソンスウェルの観測を行うことを目的とする。
【解決手段】本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、パリソン(3)の下方に複数の非接触型のセンサ(92)が動作機構(91)を介してラジアル方向(A,B)に直線移動可能に配設され、パリソン(3)の最下部(3a)と各センサ(92)との距離を演算部(94)で演算し、パリソン長、ドローダウン量、パリソンスウェルの観測を行う方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パリソン長測定方法及び装置に関し、特に、クロスヘッドの底面の下方位置で、動作機構を介して複数の非接触型のセンサをラジアル方向に直線移動させ、パリソン長、ドローダウン量、パリソンスウェルの観測を行うための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種のパリソン長測定方法としては、例えば、特許文献1及び2に開示されている第1、第2従来方法を図5及び図6に示すことができる。
すなわち、図5の第1従来例において、ダイス10の下方の所定位置には、複数のパリソンセンサ60a〜60nが上下方向に1列に配置してある。これらのパリソンセンサ60a〜60nは、例えは光電管からなっており、図示しない金型又は金型が固定してあるプラテンに、一定の間隔(例えば3cm間隔)で取り付けてある。そして、各パリソンセンサ60a〜60nの検出信号は、パリソン補正部62の2次回帰曲線演算器64に入力するようにしてある。
【0003】
パリソン補正部62は、パリソンセンササ60a〜60nの検出信号に基づいて2次回帰曲線を求める2次回帰曲線演算器64、この2次回帰曲線演算器64の出力信号が入力する加速度演算器66、最適加速度演算器68、加速度演算器66と最適加速度演算器68との出力信号が入力する比較部70、比較部70の出力信号に基づいて後述する補正値を演算する補正値演算器72とから構成してある。そして、2次回帰曲線演算器64には、機械サイクル制御部26からパリソン22の射出完了信号が入力するようになっており、最適加速度演算器68には機械サイクル制御部26から射出開始信号が入力するようになっている。
【0004】
一方、ダイスギャップ20を制御するパリソン肉厚制御部80には、射出シリンダ18の射出位置に応じてダイスギャップ20の開度を変化させるためのダイスギャップ信号を出力するプログラム信号発生器40、このプログラム信号発生器40の出力信号にパリソン補正部62の補正値演算器72が求めた補正値を加える加算器84、加算器84の出力信号とギャップ検出器48の検出信号とを比較するキャップ比較部82、ギャップ比較部82の出力信号を増幅するサーボアンプ42とから構成してある。そして、プログラム信号発生器40には、機械サイクル制御部26から信号出力命令が入力すると共に、位置検出器24が検出した射出シリンダ18の位置信号が入力するようになっている。
【0005】
また、図6の第2従来例において、符号1はクロスヘッド、2は押出機のダイ、3は降下しつつある溶融パリソン、4は溶融パリソンの降下状況を撮影するためのカメラ、5はカメラ4にノイズとなる有害光が入射するのを防止するための黒色のバックボード、6は画像処理装置、7はモニターテレビ、8はプリンターである。まず、押出機より溶融パリソンを押出し、定常的に押出される状態になった時点で、溶融パリソンをダイ出口の位置で切り離す。引続き押出しを続行し、溶融パリソンの先端が計測開始点を通過した時点からカメラを作動させて、溶融パリソンを撮影し且つその撮影時刻を記憶する。撮影は溶融パリソンの先端が計測終了点を通過するまで続行する。
【0006】
なお、上述の如く、通常は溶融パリソンがダイ出口から一定距離だけ降下した位置から撮影を開始するが、溶融パリソンがダイ出口に出現した時点から計測を開始してもよい。カメラにより得られた画像は、画像処理装置7で処理して、各撮影時点における溶融パリソンの長さ又は先端位置を求める。この撮影時点とその時点での溶融パリソンの長さ又は先端位置のデータに基づいて、溶融パリソンの各時点における降下速度及び降下の加速度を算出すると、ドローダウンがどの時点で発生し、かつどように進行するかを正確に把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−338510号公報
【特許文献2】特開平9−234783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のパリソン長測定方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、前述の図5の従来構成1の場合、クロスヘッドの下方で、かつ、パリソンの外周の外側に複数のセンサが高さ方向に沿って配設されていたため、パリソンの膨張状態を示すパリソンスウェルの状況は全く測定することはできなかった。
【0009】
また、前述の図6の従来構成2の場合、パリソンの全長をカメラで撮影しているため、パリソン長に加えて、パリソンスウェルの状況も観測できるが、例えば、肉厚制御が入った場合に、パリソンの部位によってパリソンスウェルの形状が変化するが、カメラで一方の平面しか撮影できていないので、肉厚制御の方法によりパリソン外周上の部位によって異なるパリソンスウェルの変化には対応できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるパリソン長測定方法は、クロスヘッドのダイギャップから押出されたパリソンの少なくともパリソン長を複数の非接触型のセンサにより測定するようにしたパリソン長測定方法において、前記各センサは前記パリソンの最下部の下方に配設され、前記各センサを前記クロスヘッドの底面に対し動作機構を介してラジアル方向に直線移動させ、前記各センサから得られる前記パリソンの最下部と各センサとの距離を演算部で演算処理することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量の測定及びパリソンスウェルの観測を行う方法であり、また、前記パリソンスウェルを測定するための前記センサの設置位置は、少なくとも前記パリソンを成形後の製品の状態が正常でないと判断された時、あらかじめ前記パリソンの肉厚制御をかける場合に制御をかける部位の状態が検出される時、前記パリソンの肉厚制御をかける部分とかけない部分のパリソンスウェルの比較が行われる時、の何れかの時に基づいて決められる方法であり、また、本発明によるパリソン長測定装置は、クロスヘッドのダイギャップから押出されたパリソンの少なくともパリソン長を複数の非接触型のセンサにより測定するようにしたパリソン長測定装置において、前記各センサは前記パリソンの最下部の下方に配設され、前記各センサを前記クロスヘッドの底面に対し動作機構を介してラジアル方向に直線移動させ、前記各センサから得られる前記パリソンの最下部と各センサとの距離を演算部で演算処理することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量の測定及びパリソンスウェルの観測を行う構成であり、また、前記パリソンスウェルを測定するための前記センサの設置位置は、少なくとも前記パリソンを成形後の製品の状態が正常でないと判断された時、あらかじめ前記パリソンの肉厚制御をかける場合に制御をかける部位の状態が検出される時、前記パリソンの肉厚制御をかける部分とかけない部分のパリソンスウェルの比較が行われる時、の何れかの時に基づいて決められるようにした構成である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、クロスヘッドのダイギャップから押出されたパリソンの少なくともパリソン長を複数の非接触型のセンサにより測定するようにしたパリソン長測定方法及び装置において、前記各センサは前記パリソンの最下部の下方に配設され、前記各センサを前記クロスヘッドの底面に対し動作機構を介してラジアル方向に直線移動させ、前記各センサから得られる前記パリソンの最下部と各センサとの距離を演算部で演算処理することにより、前記パリソンのパリソン長、ドローダウン量の測定及びパリソンスウェルの観測を行うことができる。また、このパリソンスウェルは検査の際に、吐出されたパリソンを切り出し、人が測定していた。但し、この場合、切り出したパリソンが長時間常温にさらされることにより収縮してしまい、スウェル測定の精度に若干の誤差が生じていたが、前述のセンサを用いることにより、パリソン吐出直後にスウェルの観測を行うことができ、従来方法と比較することにより、精度の向上を図れる。更には、実際の成形中においてもパリソンスウェルの状態をリアルタイムで観測できるので、形状が正常でなければ不良品と見なして破棄する等の制御もでき、品質の向上にもつながる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明によるパリソン長測定方法及び装置を示す構成図である。
【図2】図1のパリソンを下から見たパリソンと各センサとの位置関係を示す構成図である。
【図3】図1及び図2の各センサの直線移動分のセンサ出力を示す特性図である。
【図4】図1の構成により測定されたパリソン長変化曲線を示す特性図である。
【図5】第1従来例のパリソン長を測定する装置を示す構成図である。
【図6】第2従来例のパリソン長を示す装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、クロスヘッドの底面の下方位置で、動作機構を介して複数の非接触型のセンサを直線移動させ、パリソン長、ドローダウン量、パリソンスウェルの観測を行うことができるようにしたパリソン長測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明によるパリソン長測定方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、図6の従来例と同一又は同等部分には同一符号を付して説明する。
図1において、符号1で示されるものは、図示しない押出機に接続されたクロスヘッドであり、このクロスヘッド1のダイコア2のダイギャップ90からは、円筒状のパリソン3が押し出されて下方へ垂下するように構成されている。
【0015】
前記クロスヘッド1及びパリソン3の下方位置には、クロスヘッド1の底面1aに対応するように、動作機構91に設けられた非接触型のセンサ92が矢印A,Bで示される方向に沿ってラジアル方向に往復直線移動できるように構成されている。
【0016】
前記各センサ92からのセンサ出力92aは、制御部93の演算部94に入力されて演算されると共に、処理部95に送られて所要のデータに加工される。
前記各センサ92は、周知のレーザ型、赤外線型、長音波型等の非接触型のセンサで構成され、パリソン3の最下部3aとの距離をリアルタイムで測定することができるように構成されている。
【0017】
前記動作機構91は、具体的には図示していないが、例えば、周知のラックとピニオンとモータの組み合わせ、各種のリニアアクチュエータの何れかから構成され、この動作機構91の上部に設けられた各センサ92は、パリソン3を下からみた状態と組み合わせると、図2の構成となり、パリソン3に対して複数配設され、各センサ92は、平面的には、パリソン3の内側から外側へ向けてラジアル方向に、a,b,cで示される位置に沿って往復直線移動することができるように構成されている。また、各センサ92は、ラジアル方向以外にパリソン3の周方向に沿って移動するようにレール等を用いて構成することができる。
【0018】
まず、本発明の動作機構の前に、パリソン3の肉厚制御を行うことを前提とした場合、バックデータとして最低限、肉厚調整1ポイントに対してデータを1回は取らなければならず、1ショット時間に対して肉厚調整ポイント数の比にて、次の数1の(1)式のように、1直線移動時間が算出される。
【0019】
【数1】

【0020】
従って、前述の1直線移動時間(S)内に内側から外側、もしくは、外側から内側のように、センサ92を1直線移動させてデータを取れば、全ての肉厚調整ポイントに対してのデータを反映させることができる。そのため、各センサ92を直線移動させる最低速度(m/s)は次の数2の(2)式のように表すことができる。
【0021】
【数2】

【0022】
尚、測定精度を上げるためには、肉厚調整1ポイントにつき、各センサ92を複数回直線移動させる必要があるため、各センサ92の直線移動速度は前述の速度よりも速く設定させる必要がある。
【0023】
次に、本発明のパリソン長測定方法について記述する。前述の各センサ92の直線移動運動を繰返す過程の中でセンサ92の内側→外側の1直線移動分の出力をグラフ化したものが図3である。図3に示すように、1直線移動間で得られたセンサ92の出力92aの中で、最もLが小さな値を検出した部分がパリソンの最下部aであり、それによってパリソン長が測定できる。また、図1に示すように各センサ92が内→外の1直線移動、又は外→内の1直線移動運動をした時、ダイギャップ90から吐出された直後のパリソン3の状態を図3のグラフの曲線(b部)を観測することでパリソンスウェルbの状態を把握することができ、異形な場合は不良品と判断し破棄するなどにより品質の向上にもつながることができる。
【0024】
更に、前述の直線移動を繰り返し行うことによって、「センサ92−パリソンの最下部3a」間の距離を継続的に測定していく。このようにして得られた各々のパリソンの最下部3aのデータを制御装置93で処理することによって加速度、ドローダウン量を求めることができる。また図4のようにデータ数値をプロットしていき、パリソン長変化曲線を形成することで他データと比較しやすくなる。
以上のようなデータをバックアップしていくことで、成形条件が容易に出せること、及び新規ダイコア製作の際に重要なデータとなる。
また、前記パリソンスウェルを測定するための前記センサ92の設置位置は、少なくとも前記パリソン3を成形後の製品の状態が正常でないと判断される時、あらかじめ前記パリソン3の肉厚調整制御をかける場合に制御をかける部位の状態が検出される時、前記パリソン3の肉厚制御をかける部分とかけない部分のパリソンスウェルの比較が行われる時、の何れかの時に基づいて決めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるパリソン長測定方法及び装置は、パリソン径の大小に拘わらず適用することができ、新規及び既存の各種中空成形機のパリソン長を正確に測定することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 クロスヘッド
1a 底面
2 ダイコア
3 パリソン
3a 最下部
90 ダイギャップ
91 動作機構
92 センサ
92a センサ出力
93 制御部
94 演算部
95 処理部
A,B ラジアル方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッド(1)のダイギャップ(90)から押出されたパリソン(3)の少なくともパリソン長を複数の非接触型のセンサ(92)により測定するようにしたパリソン長測定方法において、
前記各センサ(92)は前記パリソン(3)の最下部(3a)の下方に配設され、前記各センサ(92)を前記クロスヘッド(1)の底面(1a)に対し動作機構(91)を介してラジアル方向(A,B)に直線移動させ、前記各センサ(92)から得られる前記パリソン(3)の最下部(3a)と各センサ(92)との距離を演算部(94)で演算処理することにより、前記パリソン(3)のパリソン長、ドローダウン量の測定及びパリソンスウェルの観測を行うことを特徴とするパリソン長測定方法。
【請求項2】
前記パリソンスウェルを測定するための前記センサ(92)の設置位置は、少なくとも前記パリソン(3)を成形後の製品の状態が正常でないと判断された時、あらかじめ前記パリソン(3)の肉厚調整制御をかける場合に制御をかける部位の状態が検出される時、前記パリソン(3)の肉厚制御をかける部分とかけない部分のパリソンスウェルの比較が行われる時、の何れかの時に基づいて決められることを特徴とする請求項1記載のパリソン長測定方法。
【請求項3】
クロスヘッド(1)のダイギャップ(90)から押出されたパリソン(3)の少なくともパリソン長を複数の非接触型のセンサ(92)により測定するようにしたパリソン長測定装置において、
前記各センサ(92)は前記パリソン(3)の最下部(3a)の下方に配設され、前記各センサ(92)を前記クロスヘッド(1)の底面(1a)に対し動作機構(91)を介してラジアル方向(A,B)に直線移動させ、前記各センサ(92)から得られる前記パリソン(3)の最下部(3a)と各センサ(92)との距離を演算部(94)で演算処理することにより、前記パリソン(3)のパリソン長、ドローダウン量の測定及びパリソンスウェルの観測を行うことを特徴とするパリソン長測定装置。
【請求項4】
前記パリソンスウェルを測定するための前記センサ(92)の設置位置は、少なくとも前記パリソン(3)を成形後の製品の状態が正常でないと判断された時、あらかじめ前記パリソン(3)の肉厚調整制御をかける場合に制御をかける部位の状態が検出される時、前記パリソン(3)の肉厚制御をかける部分とかけない部分のパリソンスウェルの比較が行われる時、の何れかの時に基づいて決められることを特徴とする請求項3記載のパリソン長測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−40716(P2012−40716A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182240(P2010−182240)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】