説明

パルスマスク試験機能を備えた伝送システム

【課題】接続線路等の外的要因を考慮して波形整形できるとともに、自局装置と対向局装置が双方向接続されない場合でもパルスマスク試験を行うことを可能にする。
【解決手段】自局装置2は、送信線6a、6bにパルスマスク信号を送出するパルスマスク信号送信部6と、対向局装置3から送信される調整情報に基づいてパルスマスク信号の出力レベルを調整するパルスマスク信号調整部13と、送信線6b又はパルスマスク信号調整部13を第2の接続線路5に選択的に接続するスイッチ部11とを備える。対向局装置3は、受信線21a、21bを介してパルスマスク信号を受信するパルスマスク信号受信部21と、受信したパルスマスク信号をマスクデータと照合するパルスマスク照合部26と、パルスマスク信号の出力レベルの調整量を演算する演算部27と、受信線21b又は演算部27を第2の接続線路5に選択的に接続するスイッチ部30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスマスク信号とマスクデータを照合して出力調整を行うパルスマスク試験機能を備えた伝送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通信装置間の通信品質を一定以上に保つべく、パルスマスクと呼ばれるテンプレート波形を準備し、通信装置間で送受する試験信号がパルスマスクに適合するか否かを判定して伝送信号のレベル(送信信号のレベル)の適否を判断することが行われている。
【0003】
パルスマスク試験装置の一例として、例えば、特許文献1には、通信装置から出力されるパルスを測定するパルス測定部と、マスクデータ(パルスマスクのデータ)を記憶するマスクデータ記憶部と、パルス測定部の測定結果とマスクデータ記憶部のマスクデータとを比較してマスク判定を行うマスク判定部と、パルス測定部の測定結果がマスクデータ内に収まるように、通信装置のトランシーバの出力レベルを調整するレジスタ設定値を算出する整形演算部とを備えた試験装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、同軸ケーブルを介して通信装置(自局装置)と対向局装置を接続し、DS3インタフェース規格に準じて信号を送受するシステムにおいて、対向局装置側の通信設定を、自局装置からの信号を折り返して自局装置にループバックするように設定し、その上で、自局装置が、レベルを徐々に変化させながら信号を出力し、戻ってきた信号の状態を見て送信信号のレベルを自動調整するパルスマスク試験装置が記載されている。この装置では、送信信号に含まれる特定の符号(イエローアラーム又はファーエンドアラームコントロール)の値に基づいて、送信信号のレベルの適否を判定し、レベル調整を行うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−194028号公報
【特許文献2】特開平9−18523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のパルスマスク試験装置においては、通信装置(送信装置)とパルスマスク試験装置を接続して二者間で試験を行い、通信装置のトランシーバで波形整形を行うため、対向局装置との接続に使用する信号線路や対向局装置側の温度等の外的要因が考慮されずにパルス信号の波形整形が行われる。このため、実際に通信装置(自局装置)と対向局装置を接続した際に、試験通りの結果が得られるとは限らず、通信装置から不適切なレベルで送信信号が出力される虞がある。
【0007】
一方、特許文献2に記載のパルスマスク試験装置では、実際の線路を用いて通信装置(自局装置)と対向局装置を接続し、その状態で試験を行うため、特許文献1のパルスマスク試験装置で生じる上記の問題を回避することができる。但し、特許文献2のパルスマスク試験装置は、自局装置と対向局装置がTx信号線及びRx信号線を介して接続され、自局装置(送信機器)から送出した信号を対向局装置(受信機器)で折り返して自局装置に返送可能であることが前提となっており、自局装置と対向局装置を双方向接続で繋いだ場合にしか使用できない。
【0008】
しかし、自局装置と対向局装置は、必ずしも双方向接続されるとは限らず、自局装置(送信機器)から対向局装置(受信機器)への一方通行の通信(片方向接続)で使用される場合も多く、特許文献2に記載の装置では必ずしも十分とは言えない。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、自局装置と対向局装置の接続に使用する信号線路等の外的要因を考慮して波形整形できるとともに、自局装置と対向局装置が双方向接続される場合に限らず、パルスマスク試験を行うことが可能な伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、平衡信号を送信するための第1及び第2の接続線路を介して送信機器と受信機器が接続され、該送信機器から該受信機器に向けてパルスマスク試験用の平衡信号を送信してパルスマスク試験を行う伝送システムであって、前記送信機器は、一方が前記第1の接続線路に接続された一対の送信線を出力側に有し、該一対の送信線に前記パルスマスク試験用の平衡信号を送出するパルスマスク信号送信部と、前記受信機器から送信される調整情報に基づいて前記パルスマスク信号送信部が出力するパルスマスク試験用の平衡信号の出力レベルを調整するパルスマスク信号調整部と、前記パルスマスク信号送信部の前記一対の送信線の他方と前記パルスマスク信号調整部の入力との何れかを前記第2の接続線路に選択的に接続する第1のスイッチ部とを備え、前記受信機器は、一方が前記第1の接続線路に接続された一対の受信線を入力側に有し、該一対の受信線を介して前記パルスマスク信号送信部から出力された前記パルスマスク試験用の平衡信号を受信するパルスマスク信号受信部と、該パルスマスク信号受信部によって受信した前記パルスマスク試験用の平衡信号をマスクデータと照合するパルスマスク照合部と、該パルスマスク照合部の照合結果に基づいて前記パルスマスク試験用の平衡信号の出力レベルの調整量を演算し、前記調整情報として出力する演算部と、前記パルスマスク信号受信部の前記一対の受信線の他方と前記演算部の出力との何れかを前記第2の接続線路に選択的に接続する第2のスイッチ部とを備えることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明によれば、平衡信号を送信するための実際の線路(第1及び第2の接続線路)を用いて送信機器と受信機器を接続し、その状態で試験を行うことができるため、自局装置と対向局装置の接続に使用する信号線路等の外的要因を考慮して波形整形を行うことができる。また、パルスマスク信号送信部の一対の送信線の他方とパルスマスク信号調整部の入力との何れかを第2の接続線路に選択的に接続する第1のスイッチ部を送信機器に設けるとともに、パルスマスク信号受信部の一対の受信線の他方と演算部の出力との何れかを第2の接続線路に選択的に接続する第2のスイッチ部を受信機器に設けるため、第1及び第2のスイッチ部の接続状態を切り替えれば、第2の接続線路を一時的に返送路(パルスマスク試験の試験結果を受信機器から送信機器に返送する伝送路)として利用することが可能になる。このため、自局装置と対向局装置が片方向接続される場合であっても、試験結果を自局装置にフィードバックすることができ、自局装置と対向局装置が双方向接続されていなくてもパルスマスク試験を行うことが可能になる。
【0012】
上記パルスマスク試験機能を備えた伝送システムにおいて、前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、前記第1のスイッチ部が、前記一対の送信線の他方を前記第2の接続線路に接続するとともに、前記第2のスイッチ部が、前記一対の受信線の他方を前記第2の接続線路に接続し、前記演算部の前記調整情報を前記受信機器から前記送信機器に送信する際に、前記第1のスイッチ部が、前記パルスマスク信号調整部の入力を前記第2の接続線路に接続するとともに、前記第2のスイッチ部が、前記演算部の出力を前記第2の接続線路に接続することができる。
【0013】
上記パルスマスク試験機能を備えた伝送システムにおいて、前記第2の接続線路が、前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、該送信機器から該受信機器に向かう方向に信号を伝送し、前記演算部の前記調整情報を前記受信機器から前記送信機器に送信する際に、該受信機器から該送信機器に向かう方向に信号を伝送することができる。
【0014】
上記パルスマスク試験機能を備えた伝送システムにおいて、前記送信機器が、前記第1の接続線路の線路長を測定するための線路長測定信号を出力する線路長測定信号送信部と、前記パルスマスク信号送信部の前記一対の送信線の一方と前記線路長測定信号送信部の出力との何れかを前記第1の接続線路に選択的に接続する第3のスイッチ部とを備え、前記受信機器が、前記線路長測定部から出力された前記線路長測定信号を受信する線路長測定信号受信部と、前記パルスマスク信号受信部の前記一対の送信線の一方と前記線路長測定信号受信部の入力との何れかを前記第1の接続線路に選択的に接続する第4のスイッチ部とを備え、前記受信機器の前記演算部が、前記線路長測定信号受信部で受信した線路長測定信号の減衰量に基づき、前記第1の接続線路の線路長を算出することができる。
【0015】
上記パルスマスク試験機能を備えた伝送システムにおいて、前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、前記第3のスイッチ部が、前記一対の送信線の一方を前記第1の接続線路に接続するとともに、前記第4のスイッチ部が、前記一対の受信線の一方を前記第1の接続線路に接続し、前記第1の接続線路の線路長を測定する際に、前記第3のスイッチ部が、前記線路長測定信号送信部の出力を前記第1の接続線路に接続するとともに、前記線路長測定信号受信部の入力を前記第1の接続線路に接続することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、自局装置と対向局装置の接続に使用する信号線路等の外的要因を考慮して波形整形できるとともに、自局装置と対向局装置が双方向接続される場合に限らず、パルスマスク試験を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるパルスマスク試験機能を備えた伝送システムの第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】図1の全体の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】「自局装置と対向局装置の間の伝送距離の測定処理」及び「出力レベルLBOの決定処理」(図2のステップS1、S2)の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】「自局装置と対向局装置の間の伝送距離の測定処理」及び「出力レベルLBOの決定処理」を実施する際の接続構成を示す図である。
【図5】「パルスマスク照合処理」及び「パルスマスク調整処理」(図2のステップS3、S4)の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】「パルスマスク照合処理」を実施する際の接続構成を示す図である。
【図7】「パルスマスク照合処理」及び「パルスマスク調整処理」の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】「照合結果の送信」及び「パルスマスク調整処理」を実施する際の接続構成を示す図である。
【図9】「パルスマスク照合処理」及び「パルスマスク調整処理」の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】出力増加係数を導くためのテーブルの一例を示す図である。
【図11】図1の伝送システムの変更例を示す構成図である。
【図12】本発明にかかるパルスマスク試験機能を備えた伝送システムの第2の実施形態を示す構成図である。
【図13】図12の伝送システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明にかかるパルスマスク試験機能を備えた伝送システムの第1の実施形態を示し、この伝送システム1は、第1の接続線路(Tx Tip)4及び第2の接続線路(Tx Ring)5を介して接続された自局装置2及び対向局装置3から構成される。以下においては、自局装置2を送信機器、対向局装置3を受信機器として機能させる場合を例にとって説明する。
【0020】
第1の接続線路(Tx Tip)4及び第2の接続線路(Tx Ring)5は、長さの等しいペアバランス信号線であり、これらは、パルスマスク信号(局性が相反する試験用の平衡信号)を送信する接続線として使用される他、通常時は、本来の伝送信号(平衡信号)を送信するTx信号線として使用される。
【0021】
自局装置2は、パルスマスク信号を生成し、これを一対の送信線6a、6bを通じて出力するパルスマスク信号送信部6と、第1の接続線路(Tx Tip)4の線路長を測定するための線路長測定信号を出力する線路長測定信号送信部7と、パルスマスク信号送信部6の一方の送信線6aと線路長測定信号送信部7の何れかを第1の接続線路(Tx Tip)4に選択的に接続するスイッチ部8と、スイッチ部8の接続切替を制御するSW制御部9と、対向局装置3から送信される演算結果を受信する演算結果受信部10と、パルスマスク信号送信部6の他方の送信線6bと演算結果受信部10の何れかを第2の接続線路(Tx Ring)5に選択的に接続するスイッチ部11と、スイッチ部11の接続切替を制御するSW制御部12と、演算結果受信部10で受信した演算結果に基づき、パルスマスク信号送信部6のパルスマスク信号を調整するパルスマスク信号調整部13とを備える。
【0022】
一方、対向局装置3は、自局装置2から送信されるパルスマスク信号を一対の受信線21a、21bを通じて受信するパルスマスク信号受信部21と、自局装置2から送信される線路長測定信号を受信する線路長測定信号受信部22と、第1の接続線路(Tx Tip)4をパルスマスク信号受信部21の一方の受信線21aと線路長測定信号受信部22の何れかに選択的に接続するスイッチ部23と、スイッチ部23の接続切替を制御するSW制御部24と、マスクデータ(パルスマスク試験用のテンプレート波形)を記憶するマスクデータ記憶部25と、パルスマスク信号受信部21で受信したパルスマスク信号とマスクデータ記憶部25から読み出したマスクデータとを照合するパルスマスク照合部26と、線路長測定信号受信部22及びパルスマスク照合部26の出力に基づき、各種の演算処理を行う演算部27と、線路長測定信号受信部22で受信した線路長測定信号に基づいて求めた線路長を記憶する線路長記憶部28と、演算部27の演算結果を送信する演算結果送信部29と、第2の接続線路(Tx Ring)5をパルスマスク信号受信部21の他方の受信線21bと演算結果送信部29の何れかに選択的に接続するスイッチ部30と、スイッチ部30の接続切替を制御するSW制御部31とを備える。
【0023】
尚、上記構成において、第1の接続線路(Tx Tip)4は、自局装置2から対向局装置3に向かう方向にのみ信号を伝送し、パルスマスク信号や通常信号(本来の伝送信号)を伝送するための線路として機能する。一方、第2の接続線路(Tx Ring)5は、通常時では、自局装置2から対向局装置3に向かう方向に信号を伝送し、パルスマスク信号や通常信号を伝送するための線路として機能するが、対向局装置3の演算結果を自局装置2に送信する場合に限り、逆方向に信号を伝送し、演算結果を伝送するための逆方向線路として機能する。
【0024】
次に、上記構成を有する伝送システム1の動作について説明する。ここでは、先ず、図2を中心に参照しながら全体の動作手順について説明する。
【0025】
パルスマスク試験にあたっては、先ず、自局装置2と対向局装置3の間の伝送距離(第1の接続線路(Tx Tip)4の線路長)を測定するとともに(ステップS1)、自局装置2から出力する伝送信号の出力レベルLBO(Line Build Out)を決定する(ステップS2)。
【0026】
次いで、ステップS2で決定した出力レベルLBOで、自局装置2から対向局装置3にパルスマスク信号を送信し、パルスマスク信号とマスクデータを照合する(ステップS3)。照合の結果、パルスマスク信号がマスクデータ内に収まっていなければ、自局装置2でパルスマスク信号の出力レベルを調整し(ステップS4)、以後、パルスマスク信号がマスクデータ内に収まるまで、ステップS3、S4の処理を繰り返す。
【0027】
次に、図2に示す各ステップの詳細な動作について、順に説明する。先ず、「自局装置2と対向局装置3の間の伝送距離の測定処理」及び「出力レベルLBOの決定処理」(図2のステップS1、S2)について、図3及び図4を参照しながら説明する。
【0028】
図3に示すように、自局装置2において、スイッチ部8の導通接点を線路長測定信号送信部7側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部23の導通接点を線路長測定信号受信部22側に切り替える(ステップS11、S12)。
【0029】
また、自局装置2において、スイッチ部11の導通接点を演算結果受信部10側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部30の導通接点を演算結果送信部29側に切り替える(ステップS13、S14)。
【0030】
これらの処理により、図4に示すように、自局装置2の線路長測定信号送信部7と対向局装置3の線路長測定信号受信部22とを接続するとともに、自局装置2のパルスマスク信号調整部13と対向局装置3の演算部27とを接続する。
【0031】
次いで、図3に示すように、自局装置2の線路長測定信号送信部7から予め定めた所定の出力レベルで線路長測定信号を送信し(ステップS15)、これを対向局装置3の線路長測定信号受信部22で受信する(ステップS16)。次に、演算部27において、線路長測定信号受信部22の受信信号のレベルを参照し、第1の接続線路(Tx Tip)4を通過した線路長測定信号の減衰量を求める(ステップS17)。
【0032】
次いで、求めた減衰量に基づいて、自局装置2及び対向局装置3間の伝送距離(第1の接続線路(Tx Tip)4の線路長)を算出するとともに(ステップS18)、自局装置2から出力する伝送信号の出力レベルLBOを決定する(ステップS19)。
【0033】
次に、ステップS18で算出した伝送距離を線路長記憶部28に記憶するとともに(ステップS20)、ステップS19で定めた出力レベルLBOを、演算結果送信部29、第2の接続線路(Tx Ring)5及び演算結果受信部10を経由して、自局装置2のパルスマスク信号調整部13に送信する(ステップS21)。
【0034】
次に、「パルスマスク照合処理」及び「パルスマスク調整処理」(図2のステップS3、S4)について、図5〜図7を参照しながら説明する。
【0035】
パルスマスク照合処理にあたっては、図5に示すように、自局装置2において、スイッチ部8の導通接点をパルスマスク信号送信部6の一方の送信線6a側に切り替えるとともに、スイッチ部11の導通接点をパルスマスク信号送信部6の他方の送信線6b側に切り替える(ステップS31、S32)。
【0036】
また、対向局装置3において、スイッチ部23の導通接点をパルスマスク信号受信部21の一方の受信線21a側に切り替えるとともに、スイッチ部30の導通接点をパルスマスク信号受信部21の他方の受信線21b側に切り替える(ステップS33、S34)。
【0037】
これらの切替処理により、図6に示すように、自局装置2のパルスマスク信号送信部6と対向局装置3のパルスマスク信号受信部21とを接続する。
【0038】
次いで、図5に示すように、自局装置2のパルスマスク信号調整部13において、パルスマスク信号送信部6から出力されるパルスマスク信号の出力レベルを、先の図3のステップS21で対向局装置3から送信された出力レベルLBOに設定する(ステップS35)。そして、パルスマスク信号送信部6からパルスマスク信号を出力し、第1の接続線路(Tx Tip)4及び第2の接続線路(Tx Ring)5を介して、対向局装置3のパルスマスク信号受信部21に送信する(ステップS36、S37)。
【0039】
次に、対向局装置3のパルスマスク照合部26において、マスクデータ記憶部25からマスクデータを読み出すとともに、読み出したマスクデータと、パルスマスク信号受信部21で受信したパルスマスク信号とを照合する(ステップS38)。
【0040】
照合の結果、パルスマスク信号がマスクデータ内に収まっている場合には(ステップS39:Y)、図7に示すように、自局装置2において、スイッチ部11の導通接点を演算結果受信部10側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部30の導通接点を演算結果送信部29側に切り替える(ステップS41、S42)。
【0041】
こうして、図8に示すように、対向局装置3の演算部27と自局装置2のパルスマスク信号調整部13とを接続し、第2の接続線路(Tx Ring)5を介して、パルスマスク信号がマスクデータ内に収まっている旨(OK判定)を自局装置2のパルスマスク信号調整部13に送信する(ステップS43)。
【0042】
これに対し、図5のステップS38、S39の照合処理でパルスマスク信号がマスクデータ内に収まっていなかった場合には(ステップS39:N)、図9に示すように、対向局装置3の演算部27において、パルスマスク信号の調整が必要な箇所(例えば、パルスマスク信号のどの部分がマスクデータ内に収まっておらず、また、そのはみ出しがどの程度なのかなど)を導く。そして、導出した情報に基づき、パルスマスク信号の調整部分及び調整量(例えば、振幅をどれだけ変更すべきなのか、波形をどのように整形すべきなのかなど)を求める(ステップS51)。
【0043】
次いで、自局装置2において、スイッチ部11の導通接点を演算結果受信部10側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部30の導通接点を演算結果送信部29側に切り替え(ステップS52、S53)、図8に示すように、対向局装置3の演算部27と自局装置2のパルスマスク信号調整部13とを接続する。
【0044】
次に、図9に示すように、対向局装置3の演算部27において、図3のステップS20で記憶した伝送距離を線路長記憶部28から読み出し(ステップS54)、距離に対応する出力増加係数を導く(ステップS55)。
【0045】
演算部27には、図10に示すように、伝送距離と対応付けて複数の出力係数が設定されたテーブル27aが設けられており、演算部27は、線路長記憶部28から読み出した伝送距離とテーブル27a内の伝送距離とを照合し、測定した伝送距離に対応する出力係数を取り出す。尚、出力増加係数は、伝送距離が長くなるほど大きな値となるように設定される。
【0046】
次いで、図9に示すように、上記のようにして導いた出力増加係数を先のステップS51で求めた調整項目とともに自局装置2のパルスマスク信号調整部13に送信する(ステップS56、S57)。そして、パルスマスク信号調整部13において、対向局装置3の演算部27から送られた調整項目に基づいて、パルスマスク信号送信部6から出力するパルスマスク信号の出力レベル等を調整する(ステップS58)。
【0047】
また、上記の際、出力増加係数も加味して出力レベルの調整を行う。このため、例えば、調整項目で指定される出力増加量が同じX値であっても、伝送距離が異なればパルスマスク信号の出力レベルの増大量に差異が生じ、伝送距離が長くなるほどパルスマスク信号の出力レベルの増大量が大きくなる。
【0048】
次に、自局装置2において、スイッチ部11の導通接点をパルスマスク信号送信部6の他方の送信線6b側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部30の導通接点をパルスマスク信号受信部21の他方の受信線21b側に切り替え(ステップS59、S60)、再度、図6に示すように、自局装置2のパルスマスク信号送信部6と対向局装置3のパルスマスク信号受信部21とを接続する。
【0049】
次いで、図5に示すように、調整後のパルスマスク信号をパルスマスク信号送信部6から出力し(ステップS36)、改めてパルスマスク照合を行う(ステップS36〜S39)。以後、調整後のパルスマスク信号がマスクデータ内に収まるようになるまでステップS36〜S60の処理を繰り返し、パルスマスク信号を最適な状態に調整する。
【0050】
以上のように、本実施の形態によれば、実際の線路(第1の接続線路(Tx Tip)4と第2の接続線路(Tx Ring)5)を用いて自局装置2と対向局装置3を接続し、その状態で試験を行うことができるため、自局装置2と対向局装置3の接続に使用する信号線路等の外的要因を考慮して波形整形を行うことができる。
【0051】
また、自局装置2及び対向局装置3の各々において、伝送信号(平衡信号)を送信するための第1及び第2の接続線路(Tx Tip)4、(Tx Ring)5の両端にスイッチ部8、11、23、30を設け、パルスマスク試験の実行時にスイッチ部8〜30の接続状態を切り替えて、第2の接続線路(Tx Ring)5(送信用の平衡線路の片方)を、一時的に返送路(パルスマスク試験の試験結果を対向局装置3から自局装置2に返送する伝送路)として機能させるように構成したため、自局装置2と対向局装置3が片方向接続される場合であっても、試験結果を自局装置2にフィードバックすることができ、自局装置2と対向局装置3が双方向接続されていなくてもパルスマスク試験を行うことが可能になる。
【0052】
さらに、本実施の形態によれば、自局装置2に線路長測定信号送信部7を設けるとともに、対向局装置3に線路長測定信号受信部22を設け、第1の接続線路(Tx Tip)4の線路長を測定し、それをパルスマスク信号の調整に加味するようにしたため、伝送距離の長さに即した出力レベルの調整を行うことができ、より適切な調整を行うことが可能になる。
【0053】
尚、上記実施の形態においては、対向局装置3で第1の接続線路(Tx Tip)の線路長を測定し、その結果を自局装置2に返送してパルスマスク信号の調整に利用するように構成したが、第1の接続線路(Tx Tip)の線路長の測定処理は省略してもよい。この場合の伝送システムの構成は、図11に示すように、線路長測定信号送信部7、スイッチ部8、SW制御部9、線路長測定信号受信部22、スイッチ部23、SW制御部24及び線路長記憶部28を設けないものとすることができる。
【0054】
また、上記実施の形態においては、対向局装置3の演算部27にテーブル27aを保持し、演算部27が出力増加係数を求めるように構成したが、自局装置2のパルスマスク信号調整部13がテーブル27aを保持し、演算部27から伝送距離を受け取って出力増加係数を求めるようにしてもよい。
【0055】
次に、本発明にかかるパルスマスク試験機能を備えた伝送システムの第2の実施形態について、図12及び図13を参照しながら説明する。
【0056】
本実施の形態にかかる伝送システム40は、線路長測定信号送信部7から出力する線路長測定信号をループバック試験用の試験信号として利用し、第1の実施形態にかかる伝送システム1の構成を用いてループバック試験を行うものである。尚、伝送システム40の機能構成は、図1に示す伝送システム1と同様である。
【0057】
図13に示すように、自局装置2において、スイッチ部8の導通接点を線路長測定信号送信部7側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部23の導通接点を線路長測定信号受信部22側に切り替える(ステップS61、S62)。
【0058】
また、自局装置2において、スイッチ部11の導通接点を演算結果受信部10側に切り替えるとともに、対向局装置3において、スイッチ部30の導通接点を演算結果送信部29側に切り替える(ステップS63、S64)。
【0059】
これらの処理により、図12に示すように、自局装置2の線路長測定信号送信部7と対向局装置3の線路長測定信号受信部22とを接続するとともに、自局装置2の演算結果受信部10と対向局装置3の演算部27とを接続する。
【0060】
次いで、図13に示すように、自局装置2の線路長測定信号送信部7から線路長測定信号を送信する(ステップS65、S66)。この際、対向局装置3の線路長測定信号受信部22で線路長測定信号を受信することになるが、演算部27において、伝送距離の測定を行わず、そのまま通過させる(ステップS67)。そして、通過させた線路長測定信号を演算結果送信部29に出力し、第2の接続線路(Tx Ring)5を介して自局装置2の演算結果受信部10に送信する(ステップS68)。
【0061】
これにより、線路長測定信号のループバックを成立させることができ(ステップS69)、従来では、ループバック信号を行う際、双方向通信していることが前提であったが、これを片方向通信でも実現することが可能になる。
【符号の説明】
【0062】
1 伝送システム
2 自局装置
3 対向局装置
4 第1の接続線路(Tx Tip)
5 第2の接続線路(Tx Ring)
6 パルスマスク信号送信部
6a 一方の送信線
6b 他方の送信線
7 線路長測定信号送信部
8 スイッチ部
9 SW制御部
10 演算結果受信部
11 スイッチ部
12 SW制御部
13 パルスマスク信号調整部
21 パルスマスク信号受信部
21a 一方の受信線
21b 他方の受信線
22 線路長測定信号受信部
23 スイッチ部
24 SW制御部
25 マスクデータ記憶部
26 パルスマスク照合部
27 演算部
28 線路長記憶部
29 演算結果送信部
30 スイッチ部
31 SW制御部
40 伝送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平衡信号を送信するための第1及び第2の接続線路を介して送信機器と受信機器が接続され、該送信機器から該受信機器に向けてパルスマスク試験用の平衡信号を送信してパルスマスク試験を行う伝送システムであって、
前記送信機器は、
一方が前記第1の接続線路に接続された一対の送信線を出力側に有し、該一対の送信線に前記パルスマスク試験用の平衡信号を送出するパルスマスク信号送信部と、
前記受信機器から送信される調整情報に基づいて前記パルスマスク信号送信部が出力するパルスマスク試験用の平衡信号の出力レベルを調整するパルスマスク信号調整部と、
前記パルスマスク信号送信部の前記一対の送信線の他方と前記パルスマスク信号調整部の入力との何れかを前記第2の接続線路に選択的に接続する第1のスイッチ部とを備え、
前記受信機器は、
一方が前記第1の接続線路に接続された一対の受信線を入力側に有し、該一対の受信線を介して前記パルスマスク信号送信部から出力された前記パルスマスク試験用の平衡信号を受信するパルスマスク信号受信部と、
該パルスマスク信号受信部によって受信した前記パルスマスク試験用の平衡信号をマスクデータと照合するパルスマスク照合部と、
該パルスマスク照合部の照合結果に基づいて前記パルスマスク試験用の平衡信号の出力レベルの調整量を演算し、前記調整情報として出力する演算部と、
前記パルスマスク信号受信部の前記一対の受信線の他方と前記演算部の出力との何れかを前記第2の接続線路に選択的に接続する第2のスイッチ部とを備えることを特徴とするパルスマスク試験機能を備えた伝送システム。
【請求項2】
前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、前記第1のスイッチ部が、前記一対の送信線の他方を前記第2の接続線路に接続するとともに、前記第2のスイッチ部が、前記一対の受信線の他方を前記第2の接続線路に接続し、
前記演算部の前記調整情報を前記受信機器から前記送信機器に送信する際に、前記第1のスイッチ部が、前記パルスマスク信号調整部の入力を前記第2の接続線路に接続するとともに、前記第2のスイッチ部が、前記演算部の出力を前記第2の接続線路に接続することを特徴とする請求項1に記載のパルスマスク試験機能を備えた伝送システム。
【請求項3】
前記第2の接続線路は、前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、該送信機器から該受信機器に向かう方向に信号を伝送し、前記演算部の前記調整情報を前記受信機器から前記送信機器に送信する際に、該受信機器から該送信機器に向かう方向に信号を伝送することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスマスク試験機能を備えた伝送システム。
【請求項4】
前記送信機器は、
前記第1の接続線路の線路長を測定するための線路長測定信号を出力する線路長測定信号送信部と、
前記パルスマスク信号送信部の前記一対の送信線の一方と前記線路長測定信号送信部の出力との何れかを前記第1の接続線路に選択的に接続する第3のスイッチ部とを備え、
前記受信機器は、
前記線路長測定部から出力された前記線路長測定信号を受信する線路長測定信号受信部と、
前記パルスマスク信号受信部の前記一対の送信線の一方と前記線路長測定信号受信部の入力との何れかを前記第1の接続線路に選択的に接続する第4のスイッチ部とを備え、
前記受信機器の前記演算部は、前記線路長測定信号受信部で受信した線路長測定信号の減衰量に基づき、前記第1の接続線路の線路長を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルスマスク試験機能を備えた伝送システム。
【請求項5】
前記パルスマスク試験用の平衡信号を前記送信機器から前記受信機器に送信する際に、前記第3のスイッチ部が、前記一対の送信線の一方を前記第1の接続線路に接続するとともに、前記第4のスイッチ部が、前記一対の受信線の一方を前記第1の接続線路に接続し、
前記第1の接続線路の線路長を測定する際に、前記第3のスイッチ部が、前記線路長測定信号送信部の出力を前記第1の接続線路に接続するとともに、前記線路長測定信号受信部の入力を前記第1の接続線路に接続することを特徴とする請求項4に記載のパルスマスク試験機能を備えた伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−70204(P2012−70204A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213011(P2010−213011)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【Fターム(参考)】