パルス信号発生装置、及びそのための係数設定装置
【課題】出力信号の立ち上がりと立ち下がりが極めて短時間(例えば1マイクロ秒以内)で滑らかに振幅制御され、スプリアスやレンジサイドローブが抑圧され且つ遅延や歪みが低減されたパルス信号を発生すること。
【解決手段】周波数が中心周波数ωを中心として上側ω+Ω及び下側ω−Ωに対称に異なり、振幅が一定のディジタルシンセサイザの信号を、中心周波数、上側周波数、下側周波数を重み付けして、複数合成することによって振幅制御された信号を得る。
【解決手段】周波数が中心周波数ωを中心として上側ω+Ω及び下側ω−Ωに対称に異なり、振幅が一定のディジタルシンセサイザの信号を、中心周波数、上側周波数、下側周波数を重み付けして、複数合成することによって振幅制御された信号を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーダ装置で使用される送信パルス等の振幅が制御されたパルス信号を発生するパルス信号発生装置、及びそのパルス信号発生装置の係数を設定するための係数設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーダ装置では、送信機から、高周波の送信周波数信号が短い時間幅のパルス状に変調された送信パルス信号が発生され、その送信パルス信号をアンテナを介して外部へ送信し、外部の物標などからの反射信号をアンテナで受信して、物標の距離、方位、移動速度などを測定する。
【0003】
この送信パルス信号等のパルス信号の作成方法としてディジタルシンセサイザを使用することが行われている。ディジタルシンセサイザは、ディジタル生成される位相信号から高周波数信号波形を生成する方式を用いているから、信号波形の位相を容易に制御でき, 位相情報を必要とする信号処理システムで使用されている。
【0004】
ディジタルシンセサイザは、基本構成を示す図14のように瞬時位相から波形関数に変換することによって信号を生成する仕組みになっている(非特許文献1)。図14において、ある定められた周期にて、位相の増分がディジタルの形態で加算器11に入力される。その入力に同期して、位相レジスタ12の値に位相増分を加算することによって位相レジスタの値を更新し、その時点での瞬時位相を得る。その瞬時位相の値を用いて、メモリに格納された波形テーブル14から波形関数の瞬時値を得て、波形関数変換器15から波形関数を出力する。
【0005】
波形テーブル14は、与えられた位相から波形関数の瞬時値を得るためのメモリ領域であり、通常は、正弦関数の値が格納されている。この波形テーブル14と波形関数変換器15による波形生成は、位相レジスタ12の値即ち瞬時位相を波形テーブル(ROMなど)14のアドレスとして与え、当該アドレスから値を読み出すことによって正弦波を得る。勿論、通常の波形生成と同様に、出力される正弦波の位相が一巡すると、位相レジスタ12の値が指定するアドレスはリセットされる。
【0006】
波形テーブル14を参照して得られた、ディジタルの波形関数値はDA変換器18で参照電圧に基づいてアナログ信号に変換される。変換されたアナログ信号は、図14のように階段状信号であるので、低域通過フィルタ19に通して平滑化することによって所望のアナログ波形の出力波形関数(出力信号)を得る。この出力信号を、所定期間Tだけ連続して発生させることによって、パルス幅Tのパルス信号を生成する。
【0007】
入力する位相増分の値は、生成するパルス信号の周波数を定義する量である。例えば、図14の信号例では、位相増分を一定値にしているため、出力信号は一定周波数をもつ正弦波である。これに対し、位相増分が時間に対して線形増加、もしくは、線形減少するように入力すれば、FM−CWレーダ等で使用される線形周波数変調波を得ることができる。
【0008】
また、ディジタルシンセサイザを用いて位相変調波を生成することができる。図15は、図14の位相レジスタ12と出力側に加算器13を設けて、位相レジスタ12の瞬時位相にディジタル変調信号を加算してその加算器13の出力を新たな瞬時位相とするものである。このディジタル変調信号として、例えば2値信号、4値信号などを用いて瞬時位相を不連続に切り替えることによりディジタル位相変調を実現することもできる。
【0009】
以上に述べたように、基本的なディジタルシンセサイザは瞬時位相から波形を生成する構成のため、信号周波数を自由に制御することができるが、出力信号の信号振幅は常に一定である。ところが、図16のようにDA変換器18の参照電圧を制御することによって、ディジタルシンセサイザの出力信号を振幅変調をすることができる。図16は、図14,図15のDA変換器18の参照電圧Vrefを、オペアンプOP1と抵抗器からなる反転回路と、オペアンプOP2と抵抗器から構成され、反転された参照電圧に変調信号Vmを加算する加算回路によって、アナログ信号の形態で入力される変調信号Vmを参照電圧Vrefに重畳させて、変調参照電圧(Vref−Vm)を得ている。変調参照電圧は、DA変換器の変換スケールを制御する電圧であるので、同一の波形関数値が入力されたとしても、変調参照電圧に比例して、出力信号の電圧値が変化することになる。すなわち、入力されたアナログ信号Vmによって、ディジタルシンセサイザの出力信号が振幅変調を受けることになる。
【非特許文献1】EDN Japan “DDSを駆使、高精度・高純度の正弦波発振器を実現する”、[online]、Reed Electronics Group、「平成19年2月27日検索」、インターネット〈URL:http://www.ednjapan.com/content/issue/2005/09/content03.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ディジタルシンセサイザによって発生される出力信号は、その位相が制御できるから、位相信号を取り扱う応用例が比較的容易に実施できるようになってきている。パルスレーダ装置においてもパルス信号内の位相情報を使用することによって、パルス圧縮や位相信号を用いた積分処理によって信号対雑音比を向上し、より遠方の物標が探知可能になる、といった利点がある。
【0011】
一方、立ち上がりが速いパルス信号は、周波数領域で見たとき、サイドローブの減衰が小さいためスプリアスを生じやすい。また、速い立ち上がりは、電力増幅器などで歪んでしまうため、パルス圧縮レーダではパルスの立ち上がりと立ち下りの部分で、相関ずれを起こしやすいためレンジサイドローブが現れてしまう。レーダ装置の送信パルス幅は数マイクロ秒より短いものがあるため、スプリアスやレンジサイドローブに関する問題を解決するためには、ディジタルシンセサイザで生成する信号を例えば1マイクロ秒以内の短時間で安定して振幅変調することが必要となる。
【0012】
図16の回路構成によって、振幅変調した出力信号をディジタルシンセサイザから得ることは一応可能である。しかし、パルスレーダ装置などで扱う数マイクロ秒以下の幅狭のパルス信号を得る場合に、図16の回路構成を用いた出力信号に対する振幅制御では、参照電圧を極めて短時間 (例えば、1マイクロ秒以内)で大きく変更する(高レベルから低レベルへ、あるいは低レベルから高レベルへ)ことになるから、DA変換器などで比較的大きな遅延や歪みが生じて、予定された波形のパルス信号を得ることは困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、ディジタルシンセサイザによって発生される出力信号の位相が制御できる利点を生かしつつ、その出力信号の立ち上がりと立ち下がりが極めて短時間(例えば1マイクロ秒以内)で滑らかに振幅制御され、スプリアスやレンジサイドローブが抑圧され且つ遅延や歪みが低減されたパルス信号を発生するパルス信号発生装置を提供することを目的とする。また、そのパルス信号発生装置の係数を設定するための係数設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載のパルス信号発生装置は、所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数foから前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数fo−i/Tに対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foに前記第i周波数を加算した第i上側周波数fo+i/Tに対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記第i下側周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の係数設定装置は、請求項1に記載の所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置のための、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅Tに対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段と、
該複素フーリエ変換手段で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタと、
前記複素フーリエ変換手段で計算された位相を格納し、それら位相を前記第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタと、
前記所定出力周波数foと前記所定時間幅Tの逆数に比例した値i/Tから得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパルス信号発生装置によれば、一定振幅の信号を生成するディジタルシンセサイザの出力信号をディジタル合成またはアナログ合成することによってパルス信号の振幅を滑らかに制御することができる。各シンセサイザが参照する波形テーブルは、振幅制御のための特別のテーブルを作成する必要はなく、位相を正弦関数に変換する普通のテーブルを流用するだけでよい。
【0017】
また、本発明のパルス信号発生装置によればパルス信号の立ち上がりと立下りを滑らかにするように振幅を制御することによってスプリアスの抑圧が可能である。さらに、パルス圧縮レーダの信号生成器として応用すれば、電力増幅器での歪みが小さくなるようなパルス信号を生成できるため、装置内歪みが原因で生じるレンジサイドローブを抑制することができる。
【0018】
本発明の係数設定装置によれば、計算される位相増分入力, 振幅レジスタの設定値, 位相レジスタの初期値等をレジスタに書き込むようにして、任意の包絡線形状を実現するための自動設定をすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のパルス信号発生装置及びそのための係数設定装置の実施例について説明する。
【0020】
本発明のパルス信号発生装置は、図14のような基本的なディジタルシンセサイザを複数個使用し、それぞれの出力信号をディジタルまたはアナログで合成することによって振幅制御されたパルス信号を得る。
【0021】
まず、振幅制御されたパルス信号の生成方法について、図1を参照して、各ディジタルシンセサイザが生成する信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する例について説明する。
【0022】
例示として例えば、3つのシンセサイザ1〜3によって、それぞれ角周波数ω+Ω(周波数11.0MHz)で振幅0.25の出力信号f1、角周波数ω(周波数10.0MHz)で振幅0.5の出力信号f2、及び角周波数ω−Ω(周波数9.0MHz)で振幅0.25)の出力信号f3を同時に生成した場合を考える。各シンセサイザ1〜3の出力信号を数式1で表して、それらを合成すると数式2となる。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
得られた合成信号、即ち振幅制御されたパルス信号は、数式2で表現されるように、角周波数ωの正弦波を包絡線(1−cosΩt)/2によって振幅制御した信号である。ここで、パルス信号の時間幅(送信時間)をTとしたとき、Ω=2π/Tとなるように各シンセサイザ1〜3の周波数を設定すれば、このパルス信号の包絡線はハニング窓の関数形状になっている。すなわち、周波数が中心周波数ωを中心として上側ω+Ω及び下側ω−Ωに対称に異なり、振幅が一定の信号を中心周波数を1/2、上側周波数を1/4、下側周波数を1/4のように対称に重み付けして、複数合成することによって振幅制御された信号を得ることができる。この図1の例では、シンセサイザ1〜3の出力信号を加算回路4で合成した合成信号は、10MHzで時間幅Tのハニング窓関数となる。図1の各波形図の横軸は時刻(μs)で、縦軸は振幅値である(なお、図3でも同様である)。
【0026】
この図1の所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置は、次のように表現できる。
一定周期にて前記所定出力周波数ωに対応した出力周波数用位相増分を入力する出力周波数用位相増分入力手段と、前記出力周波数用位相増分を出力周波数用初期位相値を初期値とする出力周波数用位相レジスタに順次加算することによって出力周波数用瞬時位相を計算する出力周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記出力周波数用瞬時位相を出力周波数用波形関数値に変換する出力周波数用波形関数変換手段と、を含む出力周波数用ディジタルシンセサイザ2と、
前記一定周期にて前記所定出力周波数ωから前記所定時間幅Tの逆数に比例した第1周波数を減算した第1下側周波数ω−2π/Tに対応した第1下側周波数用位相増分を入力する第1下側周波数用位相増分入力手段と、前記第1下側周波数用位相増分を第1下側周波数用初期位相値を初期値とする第1下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第1下側周波数用瞬時位相を計算する第1下側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第1下側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第1下側周波数用波形関数値に変換する第1下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第1下側周波数用ディジタルシンセサイザ3と、
前記一定周期にて前記所定出力周波数ωに前記第1周波数を加算した第1上側周波数ω+2π/Tに対応した第1上側周波数用位相増分を入力する第1上側周波数用位相増分入力手段と、前記第1上側周波数用位相増分を第1上側周波数用初期位相値を初期値とする第1上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第1上側周波数用瞬時位相を計算する第1上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第1上側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第1上側周波数用波形関数値に変換する第1上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第1上側周波数用ディジタルシンセサイザ1と、
前記出力周波数用波形関数値に出力周波数用重み値を掛けた出力周波数用出力信号と、前記第1下側周波数用波形関数値に第1周波数用重み値を掛けた第1下側周波数用出力信号と、前記第1上側周波数用波形関数値に前記第1周波数用重み値を掛けた第1上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを備える。
【0027】
ハニング窓のように、立ち上がりと立下りが滑らかになる振幅制御をすることによって、信号の不連続性がなくなるため、このパルス信号を電力増幅器等で増幅した場合の歪みも少なくなる。また、窓関数を掛けたことによって、主帯域以外の周波数成分を抑圧できるため、不要周波数成分 (スプリアス) を低減することができる。
【0028】
信号合成による振幅制御信号の生成は, 一定周波数以外の信号においても同様に実現することができる。つまり、図1の説明における各周波数ωは、定数でなくても問題はない。
【0029】
例えば、図2に示すように、時間の経過とともに周波数が線形増加する出力信号(例、チャープ信号)を複数個用意し、それぞれの出力信号が同一の周波数増加速度をもち、互いに規定の周波数だけずれるように設定された出力信号を、図3のように合成することによって、振幅制御されたパルス信号を生成することができる。例えば、周波数偏移幅が20MHz、中心周波数がそれぞれ11MHz、10MHz、9MHzで、時間軸上の幅が1マイクロ秒のパルス状の出力信号を合成すると、図3に示すようなハニング窓関数に相当する振幅制御を受けた線形周波数変調信号を得ることができる。線形周波数変調信号によるパルスはパルス圧縮方式のレーダ装置で使用されており、本発明を用いて振幅制御することによって、電力増幅器等によって増幅した信号にも歪みが少なくなり、レンジサイドローブの小さなパルス圧縮を実現できるようになる。
【0030】
信号合成によって振幅制御を実現する場合、所望の包絡線形状から合成する各シンセサイザの出力信号の振幅と位相を算出することができる。その算出結果にしたがって各出力信号を合成する加算回路4を構成すれば、任意の形状の包絡線でパルス信号の振幅制御を実現することができる。
【0031】
パルス信号(以下、送信パルス、とも言う)を送信する時刻を時刻0から時刻Tの時間帯に限定する。このとき、0≦t≦Tなる時刻tに対して、送信パルスの包絡線がa(t)となるような、即ち、送信パルスがf(t)=a(t)・cosωt、となる関数形で表現されるような振幅制御は以下のように実現できる。
【0032】
手順1:以下の数式3で表される複素係数cnを計算する。この複素係数cnは包絡線a(t)の複素フーリエ変換である。ここで、iは虚数単位、nは任意の整数、さらに、Ω=2π/T、である。また、以降の記述では、便宜上、添え字nを−∞から∞の範囲としているが、実装においては適当な範囲、例えば−5から5、に切り詰めるものとする。
【0033】
【数3】
【0034】
手順2:数式3で計算した複素係数cnを用いると、振幅が制御された所望の振幅変調信号f(t)は数式4で表される。ここで, 複素数cnの絶対値とは、cnの実部と虚部の自乗和の平方根であり、arg(cn)はcnの位相角、すなわち、arg(cn)=tan−1(Im(cn)/Re(cn))である。つまり、所望の包絡線a(t)の複素フーリエ変換cnの絶対値が角周波数ω+nΩ成分の振幅、位相角arg(cn)を初期位相として生成した各信号を合成すれば、所望の振幅変調信号を得ることができる。
【0035】
【数4】
【0036】
この手順1,2からなる手法により、所望の振幅制御が得られることを発明者が検証実験をしているので図4に例を示す。図4は、送信時間幅3マイクロ秒の線形周波数変調波パルスを、図4(a)の台形状の包絡線へ振幅制御する例を示している。図4(b)の表は、包絡線のフーリエ変換によって算出した各周波数成分の振幅と位相を示している。ここでは所望の振幅制御を得るために添え字を −5から5までとっている。合成した結果は、図4(c)の合成信号となり、所望の周波数制御ができていることが確認できる。
【0037】
本発明のパルス信号発生装置の具体例を、複数の正弦波信号をディジタル合成する例を図5に、アナログ合成する例を図6に、それぞれ示している。
【0038】
ディジタル合成する図5では、n個のシンセサイザ(図1,図3では、3個,図4では、11個)がクロック同期されている。シンセサイザの各構成要素は、従来の図14−16に用いられるものと同様のものであるので再度の説明は省略する。
【0039】
入力される位相増分1から位相増分nは、各シンセサイザが生成する信号の周波数に比例する値である。一定周波数の信号を生成するのなら、位相増分には常に一定の値を入力すればよい。線形周波数変調波を生成する場合には、位相増分は時間とともに線形的に変化するような値を入力すればよい。また、位相レジスタ12から位相レジスタn2は、信号を生成する前に初期位相が格納されているものとする。位相増分の入力クロックごとに位相レジスタは積算され、波形テーブルから現在の位相に対応する波形関数値を取り出す。波形テーブルは図5のように、すべてのシンセサイザが共有している。複数のシンセサイザが同一の波形テーブルを同時アクセスすることが困難であれば、波形テーブルをシンセサイザが1つずつもつ構成をとってもよい。生成された信号は乗算器16〜n6によって重み1〜重みnを掛けられ、加算器17,27等でディジタル加算された後、アナログに変換される。なお、加算器は、n個のシンセサイザの信号を同時に加算する多入力型の加算回路を用いることがよい。また、乗算する値(重み1〜重みn)を、設定レジスタとして随時書き換え可能な形態にして記憶する構成としていれば、乗算する値(重み1〜重みn)を書き換えて、使用する目的に対応して柔軟に包絡線形状を変更することが可能になる。
【0040】
アナログ合成する図6では、クロック同期されたn個のシンセサイザの信号を、DA変換器18〜n8でアナログ変換し、低域通過フィルタ19〜n9で平滑した後、演算増幅器OP3と抵抗器R,R1〜Rnを用いた加算回路で合成している。例えば、n個のシンセサイザのアナログ信号を、それぞれv1,v2,・・・vnとすると、図6における合成出力信号vは、数式5となるので、各アナログ信号の出力に接続された抵抗R1〜Rnの逆数によって各信号が重み付けできる。
【0041】
【数5】
【0042】
この図6の例においても、抵抗R1〜Rnが可変抵抗であれば、その抵抗値を変えることによって包絡線形状を変化させることが可能である。
【0043】
なお、図5,図6において、各位相増分、各初期位相、各重みなどを格納するレジスタをそれぞれ設けて、例えば係数自動設定装置から供給される数値を格納することがよい。
【0044】
これらのディジタル合成とアナログ合成の具体例を比較すると、例えば、ハニング窓のように信号の立ち上がりと立下りを滑らかにするような振幅制御をする場合には、ディジタル合成をする図5のほうが、DA変換器や後続の低域通過フィルタでの歪みがほとんど発生しないため、理想的な信号を得ることができる。よって、ディジタル合成のほうが理想的な振幅制御信号を得やすい。
【0045】
それに対して、アナログ合成する図6では、振幅制御前の信号をDA変換する段階または後続の低域フィルタの段階で、信号の立ち上がりと立ち下がりで歪みが生じ易いので、ディジタル合成をする図5ほど高品質の振幅制御とはならない。しかしながら、図6のアナログ合成では、市販のディジタルシンセサイザのアナログ出力をアナログ合成することによって実現できることを意味しているので、手軽な実施例であり、安価なシステム向きである。
【0046】
図7は、レジスタ設定の自動化を行う係数設定装置の構成を示す図である。任意の包絡線形状を実現するための振幅レジスタの設定および位相レジスタの初期値の設定に関しても、前述のようにその生成方法が明らかになっているので、これらのレジスタの自動設定システムを図7の構成によって実現できる。
【0047】
図7の係数設定装置は、所定出力周波数(信号周波数)fo、所定時間幅(パルス幅)Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置のための、出力周波数用位相増分、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、出力周波数用初期位相値、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、出力周波数用重み値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)は、前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した周波数であり、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅Tに対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段55と、
該複素フーリエ変換手段55で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記出力周波数用重み値、第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタ56と、
前記複素フーリエ変換手段55で計算された位相を格納し、それら位相を前記出力周波数用初期位相値、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタ57と、
前記所定出力周波数foと前記所定時間幅Tの逆数に比例した値から得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記出力周波数用位相増分、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタ53とを含む。
【0048】
逆数手段51はパルス幅Tからその逆数を得るものであり、加算器52は信号周波数f0にパルス幅Tの逆数を順次加算もしくは減算するものであり、初期位相加算器58は位相レジスタ57の位相と信号の初期位相φ0とを加算するものであり、また、初期位相レジスタ59は初期位相加算器58の出力を格納し位相レジスタ初期値として出力するものである。また、54は、包絡線形状入力手段である。
【0049】
この自動設定システムは、与えられたパルス生成条件から、信号生成に用いるディジタルシンセサイザk(但し、k=−n,−n+1,・・・,−1,0,1,・・・,n−1,n) に対する設定値を生成するように構成されている。ここで、‘i’と‘k’との対応関係について説明すると、k=1と−1がi=1に対応し、k=2と−2がi=2に対応し、同様にk=nと−nがi=nに対応する。また、k=0は、周波数で言うと出力周波数に対応する。
【0050】
まず、信号周波数f0と送信パルス幅Tから、各シンセサイザが生成する信号の周波数fkを規定する。具体的には、fk=f0+k/T、という関係で各々の設定値が決まる。これらの周波数 (または, これらの値に何らかの定数を乗じた値) が各シンセサイザに入力されるそれぞれの位相増分となる。
【0051】
包絡線の定義に関しては、あらかじめ与えられたいくつかのパターンから選択する方法や描画ツールなどにより包絡線の形状を可視的に定義する方法などが考えられる。時間軸上に等間隔に並ぶM個の離散時刻に対する関数形として、包絡線形状が定義されたとする。これを複素フーリエ変換すると、M個の周波数成分cp(p=0,1,・・・,M−1) が得られる。時刻mにおける包絡線の関数値をamとすると、周波数成分cpは数式6で表される。
【0052】
【数6】
【0053】
なお、包絡線形状を定義するための隣り合う離散時刻の間隔は、シンセサイザに入力するクロック周期と異なっていてもよい。また、離散時刻の数Mが2のべき乗になるように選ばれていれば、高速フーリエ変換(FFT)を使用することもできる。このとき, 各シンセサイザに設定する振幅レジスタの値Akは次の数式7のようになる。
【0054】
【数7】
【0055】
このフーリエ変換の結果から、初期位相設定が生成される。フーリエ変換結果の周波数成分cpの位相角をarg(cp)とすると、シンセサイザkに対する位相設定θkは、数式8で表される。さらに、送信する信号自体に初期位相φ0を設定する場合、φk=θk+φ0、をシンセサイザkの位相レジスタの初期値とすればよい。
【0056】
【数8】
【0057】
さらに、包絡線の関数値が実数関数であることを利用すると、振幅レジスタの値Ak及び位相設定θkは、もう少し簡単な表記ができる。実数関数をフーリエ変換することによって得られる周波数成分(複素数)ckは、c*M-k と等しいという関係がある。ここで、右肩のアスタリスク(*)は、複素共役を意味する。この事実を利用すると、振幅レジスタの値Ak及び位相設定θkは、数式9で表される。即ち、レジスタ設定のために、値cM+kを読み込む必要がなくなるから、簡素化できる。
【0058】
【数9】
【0059】
以上のように計算される位相増分入力、振幅レジスタの設定値、位相レジスタの初期値を通信などの伝送手段によって、図5,図6内部のレジスタに書き込むように構成すれば、任意の包絡線形状を実現するための係数を自動設定することが可能になる。ここで、計算したレジスタ設定を書き込むための通信手段としては、シリアル回線やイーサネット(登録商標)回線のような外部機器インタフェースであってもよいし、同一装置内におけるデータバスによるインタフェースであってもよい。
【0060】
さて、図7に記載した係数設定装置の構成によっても、包絡線形状によっては適切にパルス信号の振幅制御ができない場合がある。例えば、図8(a)に示すような時刻0から時刻Tまで単調に増加する包絡線の場合、図8(b)のように振幅と位相が算出されるが、これによるパルス信号の波形は図8(c)に示すように、パルス開始時の波形が変な形(ノイズ状の波形が生じる)になり、正常な送信パルス波形が得られない。
【0061】
このようにパルス信号の形状に異常が生じるのは、包絡線に不連続点があることによる。即ち、図8(a)の包絡線形状の開始時t=0と終了時t=Tとで、包絡線の値a(t)が異なることによる。ここでは、包絡線形状a(t)について、その両端でa(0)≠a(T)であるので、この包絡線はt=0,Tにおいて不連続である。
【0062】
そこで、図9(a)のように、送信していない時間(即ち、パルス信号を発生させない時間;T−2T)まで包絡線を拡張し、図7,図8と同様の処理によって波形を生成する。この包絡線拡張によって、a(0)=a(2T)となるので、不連続点のない包絡線形状を定義したことになる。この拡張された包絡線形状は、時刻Tにおいて元の包絡線形状a(t)を線対称に拡張したものとなる。
【0063】
拡張された包絡線形状に対して、前述した方法に従って振幅と位相を計算する。ただし、この場合には、計算上の送信時間は2Tであるので、シンセサイザkから出力する信号の周波数はfk=f0+k/2Tとなる。このとき算出された振幅と位相は図9(b)に示されるようになる。計算された振幅と位相を対応するレジスタに設定し、時刻t=0から時刻Tの期間だけパルスを発生する。時刻t=Tから2Tの期間はパルスを発生しない。すると、図9(c)のような良好な波形が生成される。
【0064】
さらに、図10(a)のような正弦波状の包絡線a(t)を考える。まず、包絡線拡張をせずに波形生成をした場合、図10(c)のような波形を得る。不連続点のない包絡線形状なので、生成された波形は良好な形状となる。ここで、図10(b)に示される生成された振幅と位相に注目すると、周波数f0−5/Tからf0+5/Tの全ての周波数が、すべてゼロ以外の振幅をもっている。
【0065】
そこで、図11(a)のように包絡線拡張をする。図9の例では、時刻Tを中心に線対称になるように包絡線を拡張したが、この図11(a)では時刻Tを中心に点対称となるように包絡線を拡張する。すると、拡張された包絡線は1周期の正弦波となる。
【0066】
この図11(a)の点対称に拡張された包絡線に対して、振幅と位相を計算し、波形を生成すると図11(c)のようになり、生成された波形は包絡線拡張しない場合(図10(c))とほぼ同じであるが、算出された振幅と位相は異なる。図11(b)をみると、点対称の包絡線拡張によって周波数f0±1/2T以外の周波数では振幅がほぼゼロになっている。振幅がゼロになっている周波数についてはシンセサイザを割り当てる必要がないので回路規模を小さくできる。このように、包絡線形状によっては包絡線拡張をうまく利用することによって回路規模を小さくすることが可能である。
【0067】
包絡線形状から各シンセサイザ出力の振幅と位相を計算するにあたり、包絡線拡張が有効であるが、この包絡線拡張を実現するに当たり、包絡線拡張を例示的に5つのタイプに分類する。
【0068】
タイプ0は、図12(a)のa(0)=a(T)=0で、拡張なし。
タイプ1は、図12(b)のa(0)=a(T)=0で、点対称の包絡線拡張を行う。
タイプ2は、図12(c)のa(0)=0、a(T)≠0で、線対称の包絡線拡張を行う。
タイプ3は、図12(d)のa(0)≠0、a(T)=0で、点対称拡張−線対称拡張の2段階包絡線拡張を行う。
タイプ4は、図12(e)のa(0)=0、a(T)≠0で、線対称拡張−点対称拡張の2段階包絡線拡張を行う。
【0069】
どのタイプの包絡線拡張を選ぶかについては、包絡線の形状が関わってくる。例えば、包絡線関数がa(T)≠0である場合には、タイプ1を選んでしまうと不連続点をつくってしまうので、少なくともタイプ1は有効ではないことがわかる。パルスレーダ用のパルスとしては、振幅制御をするならば、時刻t=0,Tにおける包絡線がa(t)=0となるような包絡線形状を選ぶであろうから、タイプ0、または、タイプ1を選択することになる。
【0070】
包絡線拡張を取り入れたレジスタ設定の自動化を行う係数設定装置の構成が図13に示されている。図13では、図7の係数設定装置に対して、所定包絡線形状と包絡線拡張タイプ番号とに基づいて点対称及び又は線対称に拡幅された拡張包絡線形状を作成する包絡線拡張手段を設け、その拡張包絡線形状を複素フーリエ変換手段でフーリエ変換するとともに、包絡線拡張タイプ番号を受けて、その包絡線拡張タイプ番号に応じて所定時間幅Tを拡張包絡線形状への拡幅に応じて拡大する。
【0071】
図13では、包絡線拡張手段62に、包絡線拡張タイプ0〜4のいずれかのタイプと、包絡線形状入力手段61からの包絡線形状が入力される。包絡線形状入力手段61では、包絡線拡張タイプ0〜4に応じて入力された包絡線形状を拡張し、拡張された包絡線形状を拡張包絡線入力手段54Aから、離散フーリエ変換手段55に入力する。また、包絡線拡張タイプ0〜4は倍率セレクタ63に供給されて、拡張タイプ0〜4に応じた倍率を出力して、パルス幅Tをパルス幅拡大用乗算器64で拡大する。その他の構成は、図7の係数自動設定装置と同様である。
【0072】
包絡線拡張タイプという入力信号は、この自動設定システムを使用する操作員がその都度入力するなどして、包絡線拡張のタイプ0〜4を指定する。その入力された包絡線拡張タイプによる拡張の結果としての各係数値(重みや位相など)を参照して、最も適した包絡線拡張タイプを選択することになる。
【0073】
なお、本発明のパルス信号発生装置を、次のように構成することができる。
所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数foに対応した出力周波数用位相増分を入力する出力周波数用位相増分入力手段と、前記出力周波数用位相増分を出力周波数用初期位相値を初期値とする出力周波数用位相レジスタに順次加算することによって出力周波数用瞬時位相を計算する出力周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記出力周波数用瞬時位相を出力周波数用波形関数値に変換する出力周波数用波形関数変換手段と、を含む出力周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foから前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数fo−i/Tに対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foに前記第i周波数を加算した第i上側周波数fo+i/Tに対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記出力周波数用波形関数値に出力周波数用重み値を掛けた出力周波数用出力信号と、前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とするパルス信号発生装置。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ディジタルシンセサイザが生成する信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する図
【図2】線形周波数変調信号にハニング窓で変調する周波数の例を示す図
【図3】ディジタルシンセサイザが生成する線形周波数変調信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する図
【図4】任意形状の包絡線への振幅変調の例を示す図
【図5】ディジタルシンセサイザが生成する信号をディジタル合成する図
【図6】ディジタルシンセサイザが生成する信号をアナログ合成する図
【図7】係数自動設定装置の構成を示す図
【図8】良好に振幅制御ができない包絡線形状の例を示す図
【図9】図8の包絡線を拡張した例を示す図
【図10】半波の正弦波状包絡線形状の例を示す図
【図11】図10の包絡線形状を拡張した例を示す図
【図12】包絡線拡張のタイプを示す図
【図13】包絡線拡張を考慮した係数自動設定装置の構成を示す図
【図14】ディジタルシンセサイザの基本構成を示す図
【図15】ディジタルシンセサイザを用いて位相変調波を生成する図
【図16】参照電圧によるディジタルシンセサイザ出力の振幅変調を行う図
【符号の説明】
【0075】
1,2,3・・シンセサイザ、4・・合成手段(加算回路)、11〜n1・・加算器、12〜n2・・位相レジスタ、13〜n3・・加算器、14・・波形テーブル、15〜n5・・波形関数変換器、16〜n6・・乗算器、17,27・・加算器、18〜n8・・DA変換器、19〜n9・・低域通過フィルタ、OP1〜OP3・・オペアンプ、51・・逆数手段、52・・加算器群、53・・位相増分レジスタ、54,61・・包絡線形状入力手段、55・・離散フーリエ変換手段、56・・振幅レジスタ、57・・位相レジスタ、58・・加算器群、59・・初期位相レジスタ、62・・包絡線拡張手段、63・・倍率セレクタ、54A・・拡張包絡線入力手段、64・・乗算器
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスレーダ装置で使用される送信パルス等の振幅が制御されたパルス信号を発生するパルス信号発生装置、及びそのパルス信号発生装置の係数を設定するための係数設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パルスレーダ装置では、送信機から、高周波の送信周波数信号が短い時間幅のパルス状に変調された送信パルス信号が発生され、その送信パルス信号をアンテナを介して外部へ送信し、外部の物標などからの反射信号をアンテナで受信して、物標の距離、方位、移動速度などを測定する。
【0003】
この送信パルス信号等のパルス信号の作成方法としてディジタルシンセサイザを使用することが行われている。ディジタルシンセサイザは、ディジタル生成される位相信号から高周波数信号波形を生成する方式を用いているから、信号波形の位相を容易に制御でき, 位相情報を必要とする信号処理システムで使用されている。
【0004】
ディジタルシンセサイザは、基本構成を示す図14のように瞬時位相から波形関数に変換することによって信号を生成する仕組みになっている(非特許文献1)。図14において、ある定められた周期にて、位相の増分がディジタルの形態で加算器11に入力される。その入力に同期して、位相レジスタ12の値に位相増分を加算することによって位相レジスタの値を更新し、その時点での瞬時位相を得る。その瞬時位相の値を用いて、メモリに格納された波形テーブル14から波形関数の瞬時値を得て、波形関数変換器15から波形関数を出力する。
【0005】
波形テーブル14は、与えられた位相から波形関数の瞬時値を得るためのメモリ領域であり、通常は、正弦関数の値が格納されている。この波形テーブル14と波形関数変換器15による波形生成は、位相レジスタ12の値即ち瞬時位相を波形テーブル(ROMなど)14のアドレスとして与え、当該アドレスから値を読み出すことによって正弦波を得る。勿論、通常の波形生成と同様に、出力される正弦波の位相が一巡すると、位相レジスタ12の値が指定するアドレスはリセットされる。
【0006】
波形テーブル14を参照して得られた、ディジタルの波形関数値はDA変換器18で参照電圧に基づいてアナログ信号に変換される。変換されたアナログ信号は、図14のように階段状信号であるので、低域通過フィルタ19に通して平滑化することによって所望のアナログ波形の出力波形関数(出力信号)を得る。この出力信号を、所定期間Tだけ連続して発生させることによって、パルス幅Tのパルス信号を生成する。
【0007】
入力する位相増分の値は、生成するパルス信号の周波数を定義する量である。例えば、図14の信号例では、位相増分を一定値にしているため、出力信号は一定周波数をもつ正弦波である。これに対し、位相増分が時間に対して線形増加、もしくは、線形減少するように入力すれば、FM−CWレーダ等で使用される線形周波数変調波を得ることができる。
【0008】
また、ディジタルシンセサイザを用いて位相変調波を生成することができる。図15は、図14の位相レジスタ12と出力側に加算器13を設けて、位相レジスタ12の瞬時位相にディジタル変調信号を加算してその加算器13の出力を新たな瞬時位相とするものである。このディジタル変調信号として、例えば2値信号、4値信号などを用いて瞬時位相を不連続に切り替えることによりディジタル位相変調を実現することもできる。
【0009】
以上に述べたように、基本的なディジタルシンセサイザは瞬時位相から波形を生成する構成のため、信号周波数を自由に制御することができるが、出力信号の信号振幅は常に一定である。ところが、図16のようにDA変換器18の参照電圧を制御することによって、ディジタルシンセサイザの出力信号を振幅変調をすることができる。図16は、図14,図15のDA変換器18の参照電圧Vrefを、オペアンプOP1と抵抗器からなる反転回路と、オペアンプOP2と抵抗器から構成され、反転された参照電圧に変調信号Vmを加算する加算回路によって、アナログ信号の形態で入力される変調信号Vmを参照電圧Vrefに重畳させて、変調参照電圧(Vref−Vm)を得ている。変調参照電圧は、DA変換器の変換スケールを制御する電圧であるので、同一の波形関数値が入力されたとしても、変調参照電圧に比例して、出力信号の電圧値が変化することになる。すなわち、入力されたアナログ信号Vmによって、ディジタルシンセサイザの出力信号が振幅変調を受けることになる。
【非特許文献1】EDN Japan “DDSを駆使、高精度・高純度の正弦波発振器を実現する”、[online]、Reed Electronics Group、「平成19年2月27日検索」、インターネット〈URL:http://www.ednjapan.com/content/issue/2005/09/content03.html〉
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ディジタルシンセサイザによって発生される出力信号は、その位相が制御できるから、位相信号を取り扱う応用例が比較的容易に実施できるようになってきている。パルスレーダ装置においてもパルス信号内の位相情報を使用することによって、パルス圧縮や位相信号を用いた積分処理によって信号対雑音比を向上し、より遠方の物標が探知可能になる、といった利点がある。
【0011】
一方、立ち上がりが速いパルス信号は、周波数領域で見たとき、サイドローブの減衰が小さいためスプリアスを生じやすい。また、速い立ち上がりは、電力増幅器などで歪んでしまうため、パルス圧縮レーダではパルスの立ち上がりと立ち下りの部分で、相関ずれを起こしやすいためレンジサイドローブが現れてしまう。レーダ装置の送信パルス幅は数マイクロ秒より短いものがあるため、スプリアスやレンジサイドローブに関する問題を解決するためには、ディジタルシンセサイザで生成する信号を例えば1マイクロ秒以内の短時間で安定して振幅変調することが必要となる。
【0012】
図16の回路構成によって、振幅変調した出力信号をディジタルシンセサイザから得ることは一応可能である。しかし、パルスレーダ装置などで扱う数マイクロ秒以下の幅狭のパルス信号を得る場合に、図16の回路構成を用いた出力信号に対する振幅制御では、参照電圧を極めて短時間 (例えば、1マイクロ秒以内)で大きく変更する(高レベルから低レベルへ、あるいは低レベルから高レベルへ)ことになるから、DA変換器などで比較的大きな遅延や歪みが生じて、予定された波形のパルス信号を得ることは困難であった。
【0013】
そこで、本発明は、ディジタルシンセサイザによって発生される出力信号の位相が制御できる利点を生かしつつ、その出力信号の立ち上がりと立ち下がりが極めて短時間(例えば1マイクロ秒以内)で滑らかに振幅制御され、スプリアスやレンジサイドローブが抑圧され且つ遅延や歪みが低減されたパルス信号を発生するパルス信号発生装置を提供することを目的とする。また、そのパルス信号発生装置の係数を設定するための係数設定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に記載のパルス信号発生装置は、所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数foから前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数fo−i/Tに対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foに前記第i周波数を加算した第i上側周波数fo+i/Tに対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記第i下側周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とする。
【0015】
請求項2に記載の係数設定装置は、請求項1に記載の所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置のための、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅Tに対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段と、
該複素フーリエ変換手段で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタと、
前記複素フーリエ変換手段で計算された位相を格納し、それら位相を前記第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタと、
前記所定出力周波数foと前記所定時間幅Tの逆数に比例した値i/Tから得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明のパルス信号発生装置によれば、一定振幅の信号を生成するディジタルシンセサイザの出力信号をディジタル合成またはアナログ合成することによってパルス信号の振幅を滑らかに制御することができる。各シンセサイザが参照する波形テーブルは、振幅制御のための特別のテーブルを作成する必要はなく、位相を正弦関数に変換する普通のテーブルを流用するだけでよい。
【0017】
また、本発明のパルス信号発生装置によればパルス信号の立ち上がりと立下りを滑らかにするように振幅を制御することによってスプリアスの抑圧が可能である。さらに、パルス圧縮レーダの信号生成器として応用すれば、電力増幅器での歪みが小さくなるようなパルス信号を生成できるため、装置内歪みが原因で生じるレンジサイドローブを抑制することができる。
【0018】
本発明の係数設定装置によれば、計算される位相増分入力, 振幅レジスタの設定値, 位相レジスタの初期値等をレジスタに書き込むようにして、任意の包絡線形状を実現するための自動設定をすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明のパルス信号発生装置及びそのための係数設定装置の実施例について説明する。
【0020】
本発明のパルス信号発生装置は、図14のような基本的なディジタルシンセサイザを複数個使用し、それぞれの出力信号をディジタルまたはアナログで合成することによって振幅制御されたパルス信号を得る。
【0021】
まず、振幅制御されたパルス信号の生成方法について、図1を参照して、各ディジタルシンセサイザが生成する信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する例について説明する。
【0022】
例示として例えば、3つのシンセサイザ1〜3によって、それぞれ角周波数ω+Ω(周波数11.0MHz)で振幅0.25の出力信号f1、角周波数ω(周波数10.0MHz)で振幅0.5の出力信号f2、及び角周波数ω−Ω(周波数9.0MHz)で振幅0.25)の出力信号f3を同時に生成した場合を考える。各シンセサイザ1〜3の出力信号を数式1で表して、それらを合成すると数式2となる。
【0023】
【数1】
【0024】
【数2】
【0025】
得られた合成信号、即ち振幅制御されたパルス信号は、数式2で表現されるように、角周波数ωの正弦波を包絡線(1−cosΩt)/2によって振幅制御した信号である。ここで、パルス信号の時間幅(送信時間)をTとしたとき、Ω=2π/Tとなるように各シンセサイザ1〜3の周波数を設定すれば、このパルス信号の包絡線はハニング窓の関数形状になっている。すなわち、周波数が中心周波数ωを中心として上側ω+Ω及び下側ω−Ωに対称に異なり、振幅が一定の信号を中心周波数を1/2、上側周波数を1/4、下側周波数を1/4のように対称に重み付けして、複数合成することによって振幅制御された信号を得ることができる。この図1の例では、シンセサイザ1〜3の出力信号を加算回路4で合成した合成信号は、10MHzで時間幅Tのハニング窓関数となる。図1の各波形図の横軸は時刻(μs)で、縦軸は振幅値である(なお、図3でも同様である)。
【0026】
この図1の所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置は、次のように表現できる。
一定周期にて前記所定出力周波数ωに対応した出力周波数用位相増分を入力する出力周波数用位相増分入力手段と、前記出力周波数用位相増分を出力周波数用初期位相値を初期値とする出力周波数用位相レジスタに順次加算することによって出力周波数用瞬時位相を計算する出力周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記出力周波数用瞬時位相を出力周波数用波形関数値に変換する出力周波数用波形関数変換手段と、を含む出力周波数用ディジタルシンセサイザ2と、
前記一定周期にて前記所定出力周波数ωから前記所定時間幅Tの逆数に比例した第1周波数を減算した第1下側周波数ω−2π/Tに対応した第1下側周波数用位相増分を入力する第1下側周波数用位相増分入力手段と、前記第1下側周波数用位相増分を第1下側周波数用初期位相値を初期値とする第1下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第1下側周波数用瞬時位相を計算する第1下側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第1下側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第1下側周波数用波形関数値に変換する第1下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第1下側周波数用ディジタルシンセサイザ3と、
前記一定周期にて前記所定出力周波数ωに前記第1周波数を加算した第1上側周波数ω+2π/Tに対応した第1上側周波数用位相増分を入力する第1上側周波数用位相増分入力手段と、前記第1上側周波数用位相増分を第1上側周波数用初期位相値を初期値とする第1上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第1上側周波数用瞬時位相を計算する第1上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第1上側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第1上側周波数用波形関数値に変換する第1上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第1上側周波数用ディジタルシンセサイザ1と、
前記出力周波数用波形関数値に出力周波数用重み値を掛けた出力周波数用出力信号と、前記第1下側周波数用波形関数値に第1周波数用重み値を掛けた第1下側周波数用出力信号と、前記第1上側周波数用波形関数値に前記第1周波数用重み値を掛けた第1上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを備える。
【0027】
ハニング窓のように、立ち上がりと立下りが滑らかになる振幅制御をすることによって、信号の不連続性がなくなるため、このパルス信号を電力増幅器等で増幅した場合の歪みも少なくなる。また、窓関数を掛けたことによって、主帯域以外の周波数成分を抑圧できるため、不要周波数成分 (スプリアス) を低減することができる。
【0028】
信号合成による振幅制御信号の生成は, 一定周波数以外の信号においても同様に実現することができる。つまり、図1の説明における各周波数ωは、定数でなくても問題はない。
【0029】
例えば、図2に示すように、時間の経過とともに周波数が線形増加する出力信号(例、チャープ信号)を複数個用意し、それぞれの出力信号が同一の周波数増加速度をもち、互いに規定の周波数だけずれるように設定された出力信号を、図3のように合成することによって、振幅制御されたパルス信号を生成することができる。例えば、周波数偏移幅が20MHz、中心周波数がそれぞれ11MHz、10MHz、9MHzで、時間軸上の幅が1マイクロ秒のパルス状の出力信号を合成すると、図3に示すようなハニング窓関数に相当する振幅制御を受けた線形周波数変調信号を得ることができる。線形周波数変調信号によるパルスはパルス圧縮方式のレーダ装置で使用されており、本発明を用いて振幅制御することによって、電力増幅器等によって増幅した信号にも歪みが少なくなり、レンジサイドローブの小さなパルス圧縮を実現できるようになる。
【0030】
信号合成によって振幅制御を実現する場合、所望の包絡線形状から合成する各シンセサイザの出力信号の振幅と位相を算出することができる。その算出結果にしたがって各出力信号を合成する加算回路4を構成すれば、任意の形状の包絡線でパルス信号の振幅制御を実現することができる。
【0031】
パルス信号(以下、送信パルス、とも言う)を送信する時刻を時刻0から時刻Tの時間帯に限定する。このとき、0≦t≦Tなる時刻tに対して、送信パルスの包絡線がa(t)となるような、即ち、送信パルスがf(t)=a(t)・cosωt、となる関数形で表現されるような振幅制御は以下のように実現できる。
【0032】
手順1:以下の数式3で表される複素係数cnを計算する。この複素係数cnは包絡線a(t)の複素フーリエ変換である。ここで、iは虚数単位、nは任意の整数、さらに、Ω=2π/T、である。また、以降の記述では、便宜上、添え字nを−∞から∞の範囲としているが、実装においては適当な範囲、例えば−5から5、に切り詰めるものとする。
【0033】
【数3】
【0034】
手順2:数式3で計算した複素係数cnを用いると、振幅が制御された所望の振幅変調信号f(t)は数式4で表される。ここで, 複素数cnの絶対値とは、cnの実部と虚部の自乗和の平方根であり、arg(cn)はcnの位相角、すなわち、arg(cn)=tan−1(Im(cn)/Re(cn))である。つまり、所望の包絡線a(t)の複素フーリエ変換cnの絶対値が角周波数ω+nΩ成分の振幅、位相角arg(cn)を初期位相として生成した各信号を合成すれば、所望の振幅変調信号を得ることができる。
【0035】
【数4】
【0036】
この手順1,2からなる手法により、所望の振幅制御が得られることを発明者が検証実験をしているので図4に例を示す。図4は、送信時間幅3マイクロ秒の線形周波数変調波パルスを、図4(a)の台形状の包絡線へ振幅制御する例を示している。図4(b)の表は、包絡線のフーリエ変換によって算出した各周波数成分の振幅と位相を示している。ここでは所望の振幅制御を得るために添え字を −5から5までとっている。合成した結果は、図4(c)の合成信号となり、所望の周波数制御ができていることが確認できる。
【0037】
本発明のパルス信号発生装置の具体例を、複数の正弦波信号をディジタル合成する例を図5に、アナログ合成する例を図6に、それぞれ示している。
【0038】
ディジタル合成する図5では、n個のシンセサイザ(図1,図3では、3個,図4では、11個)がクロック同期されている。シンセサイザの各構成要素は、従来の図14−16に用いられるものと同様のものであるので再度の説明は省略する。
【0039】
入力される位相増分1から位相増分nは、各シンセサイザが生成する信号の周波数に比例する値である。一定周波数の信号を生成するのなら、位相増分には常に一定の値を入力すればよい。線形周波数変調波を生成する場合には、位相増分は時間とともに線形的に変化するような値を入力すればよい。また、位相レジスタ12から位相レジスタn2は、信号を生成する前に初期位相が格納されているものとする。位相増分の入力クロックごとに位相レジスタは積算され、波形テーブルから現在の位相に対応する波形関数値を取り出す。波形テーブルは図5のように、すべてのシンセサイザが共有している。複数のシンセサイザが同一の波形テーブルを同時アクセスすることが困難であれば、波形テーブルをシンセサイザが1つずつもつ構成をとってもよい。生成された信号は乗算器16〜n6によって重み1〜重みnを掛けられ、加算器17,27等でディジタル加算された後、アナログに変換される。なお、加算器は、n個のシンセサイザの信号を同時に加算する多入力型の加算回路を用いることがよい。また、乗算する値(重み1〜重みn)を、設定レジスタとして随時書き換え可能な形態にして記憶する構成としていれば、乗算する値(重み1〜重みn)を書き換えて、使用する目的に対応して柔軟に包絡線形状を変更することが可能になる。
【0040】
アナログ合成する図6では、クロック同期されたn個のシンセサイザの信号を、DA変換器18〜n8でアナログ変換し、低域通過フィルタ19〜n9で平滑した後、演算増幅器OP3と抵抗器R,R1〜Rnを用いた加算回路で合成している。例えば、n個のシンセサイザのアナログ信号を、それぞれv1,v2,・・・vnとすると、図6における合成出力信号vは、数式5となるので、各アナログ信号の出力に接続された抵抗R1〜Rnの逆数によって各信号が重み付けできる。
【0041】
【数5】
【0042】
この図6の例においても、抵抗R1〜Rnが可変抵抗であれば、その抵抗値を変えることによって包絡線形状を変化させることが可能である。
【0043】
なお、図5,図6において、各位相増分、各初期位相、各重みなどを格納するレジスタをそれぞれ設けて、例えば係数自動設定装置から供給される数値を格納することがよい。
【0044】
これらのディジタル合成とアナログ合成の具体例を比較すると、例えば、ハニング窓のように信号の立ち上がりと立下りを滑らかにするような振幅制御をする場合には、ディジタル合成をする図5のほうが、DA変換器や後続の低域通過フィルタでの歪みがほとんど発生しないため、理想的な信号を得ることができる。よって、ディジタル合成のほうが理想的な振幅制御信号を得やすい。
【0045】
それに対して、アナログ合成する図6では、振幅制御前の信号をDA変換する段階または後続の低域フィルタの段階で、信号の立ち上がりと立ち下がりで歪みが生じ易いので、ディジタル合成をする図5ほど高品質の振幅制御とはならない。しかしながら、図6のアナログ合成では、市販のディジタルシンセサイザのアナログ出力をアナログ合成することによって実現できることを意味しているので、手軽な実施例であり、安価なシステム向きである。
【0046】
図7は、レジスタ設定の自動化を行う係数設定装置の構成を示す図である。任意の包絡線形状を実現するための振幅レジスタの設定および位相レジスタの初期値の設定に関しても、前述のようにその生成方法が明らかになっているので、これらのレジスタの自動設定システムを図7の構成によって実現できる。
【0047】
図7の係数設定装置は、所定出力周波数(信号周波数)fo、所定時間幅(パルス幅)Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置のための、出力周波数用位相増分、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、出力周波数用初期位相値、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、出力周波数用重み値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)は、前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した周波数であり、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅Tに対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段55と、
該複素フーリエ変換手段55で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記出力周波数用重み値、第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタ56と、
前記複素フーリエ変換手段55で計算された位相を格納し、それら位相を前記出力周波数用初期位相値、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタ57と、
前記所定出力周波数foと前記所定時間幅Tの逆数に比例した値から得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記出力周波数用位相増分、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタ53とを含む。
【0048】
逆数手段51はパルス幅Tからその逆数を得るものであり、加算器52は信号周波数f0にパルス幅Tの逆数を順次加算もしくは減算するものであり、初期位相加算器58は位相レジスタ57の位相と信号の初期位相φ0とを加算するものであり、また、初期位相レジスタ59は初期位相加算器58の出力を格納し位相レジスタ初期値として出力するものである。また、54は、包絡線形状入力手段である。
【0049】
この自動設定システムは、与えられたパルス生成条件から、信号生成に用いるディジタルシンセサイザk(但し、k=−n,−n+1,・・・,−1,0,1,・・・,n−1,n) に対する設定値を生成するように構成されている。ここで、‘i’と‘k’との対応関係について説明すると、k=1と−1がi=1に対応し、k=2と−2がi=2に対応し、同様にk=nと−nがi=nに対応する。また、k=0は、周波数で言うと出力周波数に対応する。
【0050】
まず、信号周波数f0と送信パルス幅Tから、各シンセサイザが生成する信号の周波数fkを規定する。具体的には、fk=f0+k/T、という関係で各々の設定値が決まる。これらの周波数 (または, これらの値に何らかの定数を乗じた値) が各シンセサイザに入力されるそれぞれの位相増分となる。
【0051】
包絡線の定義に関しては、あらかじめ与えられたいくつかのパターンから選択する方法や描画ツールなどにより包絡線の形状を可視的に定義する方法などが考えられる。時間軸上に等間隔に並ぶM個の離散時刻に対する関数形として、包絡線形状が定義されたとする。これを複素フーリエ変換すると、M個の周波数成分cp(p=0,1,・・・,M−1) が得られる。時刻mにおける包絡線の関数値をamとすると、周波数成分cpは数式6で表される。
【0052】
【数6】
【0053】
なお、包絡線形状を定義するための隣り合う離散時刻の間隔は、シンセサイザに入力するクロック周期と異なっていてもよい。また、離散時刻の数Mが2のべき乗になるように選ばれていれば、高速フーリエ変換(FFT)を使用することもできる。このとき, 各シンセサイザに設定する振幅レジスタの値Akは次の数式7のようになる。
【0054】
【数7】
【0055】
このフーリエ変換の結果から、初期位相設定が生成される。フーリエ変換結果の周波数成分cpの位相角をarg(cp)とすると、シンセサイザkに対する位相設定θkは、数式8で表される。さらに、送信する信号自体に初期位相φ0を設定する場合、φk=θk+φ0、をシンセサイザkの位相レジスタの初期値とすればよい。
【0056】
【数8】
【0057】
さらに、包絡線の関数値が実数関数であることを利用すると、振幅レジスタの値Ak及び位相設定θkは、もう少し簡単な表記ができる。実数関数をフーリエ変換することによって得られる周波数成分(複素数)ckは、c*M-k と等しいという関係がある。ここで、右肩のアスタリスク(*)は、複素共役を意味する。この事実を利用すると、振幅レジスタの値Ak及び位相設定θkは、数式9で表される。即ち、レジスタ設定のために、値cM+kを読み込む必要がなくなるから、簡素化できる。
【0058】
【数9】
【0059】
以上のように計算される位相増分入力、振幅レジスタの設定値、位相レジスタの初期値を通信などの伝送手段によって、図5,図6内部のレジスタに書き込むように構成すれば、任意の包絡線形状を実現するための係数を自動設定することが可能になる。ここで、計算したレジスタ設定を書き込むための通信手段としては、シリアル回線やイーサネット(登録商標)回線のような外部機器インタフェースであってもよいし、同一装置内におけるデータバスによるインタフェースであってもよい。
【0060】
さて、図7に記載した係数設定装置の構成によっても、包絡線形状によっては適切にパルス信号の振幅制御ができない場合がある。例えば、図8(a)に示すような時刻0から時刻Tまで単調に増加する包絡線の場合、図8(b)のように振幅と位相が算出されるが、これによるパルス信号の波形は図8(c)に示すように、パルス開始時の波形が変な形(ノイズ状の波形が生じる)になり、正常な送信パルス波形が得られない。
【0061】
このようにパルス信号の形状に異常が生じるのは、包絡線に不連続点があることによる。即ち、図8(a)の包絡線形状の開始時t=0と終了時t=Tとで、包絡線の値a(t)が異なることによる。ここでは、包絡線形状a(t)について、その両端でa(0)≠a(T)であるので、この包絡線はt=0,Tにおいて不連続である。
【0062】
そこで、図9(a)のように、送信していない時間(即ち、パルス信号を発生させない時間;T−2T)まで包絡線を拡張し、図7,図8と同様の処理によって波形を生成する。この包絡線拡張によって、a(0)=a(2T)となるので、不連続点のない包絡線形状を定義したことになる。この拡張された包絡線形状は、時刻Tにおいて元の包絡線形状a(t)を線対称に拡張したものとなる。
【0063】
拡張された包絡線形状に対して、前述した方法に従って振幅と位相を計算する。ただし、この場合には、計算上の送信時間は2Tであるので、シンセサイザkから出力する信号の周波数はfk=f0+k/2Tとなる。このとき算出された振幅と位相は図9(b)に示されるようになる。計算された振幅と位相を対応するレジスタに設定し、時刻t=0から時刻Tの期間だけパルスを発生する。時刻t=Tから2Tの期間はパルスを発生しない。すると、図9(c)のような良好な波形が生成される。
【0064】
さらに、図10(a)のような正弦波状の包絡線a(t)を考える。まず、包絡線拡張をせずに波形生成をした場合、図10(c)のような波形を得る。不連続点のない包絡線形状なので、生成された波形は良好な形状となる。ここで、図10(b)に示される生成された振幅と位相に注目すると、周波数f0−5/Tからf0+5/Tの全ての周波数が、すべてゼロ以外の振幅をもっている。
【0065】
そこで、図11(a)のように包絡線拡張をする。図9の例では、時刻Tを中心に線対称になるように包絡線を拡張したが、この図11(a)では時刻Tを中心に点対称となるように包絡線を拡張する。すると、拡張された包絡線は1周期の正弦波となる。
【0066】
この図11(a)の点対称に拡張された包絡線に対して、振幅と位相を計算し、波形を生成すると図11(c)のようになり、生成された波形は包絡線拡張しない場合(図10(c))とほぼ同じであるが、算出された振幅と位相は異なる。図11(b)をみると、点対称の包絡線拡張によって周波数f0±1/2T以外の周波数では振幅がほぼゼロになっている。振幅がゼロになっている周波数についてはシンセサイザを割り当てる必要がないので回路規模を小さくできる。このように、包絡線形状によっては包絡線拡張をうまく利用することによって回路規模を小さくすることが可能である。
【0067】
包絡線形状から各シンセサイザ出力の振幅と位相を計算するにあたり、包絡線拡張が有効であるが、この包絡線拡張を実現するに当たり、包絡線拡張を例示的に5つのタイプに分類する。
【0068】
タイプ0は、図12(a)のa(0)=a(T)=0で、拡張なし。
タイプ1は、図12(b)のa(0)=a(T)=0で、点対称の包絡線拡張を行う。
タイプ2は、図12(c)のa(0)=0、a(T)≠0で、線対称の包絡線拡張を行う。
タイプ3は、図12(d)のa(0)≠0、a(T)=0で、点対称拡張−線対称拡張の2段階包絡線拡張を行う。
タイプ4は、図12(e)のa(0)=0、a(T)≠0で、線対称拡張−点対称拡張の2段階包絡線拡張を行う。
【0069】
どのタイプの包絡線拡張を選ぶかについては、包絡線の形状が関わってくる。例えば、包絡線関数がa(T)≠0である場合には、タイプ1を選んでしまうと不連続点をつくってしまうので、少なくともタイプ1は有効ではないことがわかる。パルスレーダ用のパルスとしては、振幅制御をするならば、時刻t=0,Tにおける包絡線がa(t)=0となるような包絡線形状を選ぶであろうから、タイプ0、または、タイプ1を選択することになる。
【0070】
包絡線拡張を取り入れたレジスタ設定の自動化を行う係数設定装置の構成が図13に示されている。図13では、図7の係数設定装置に対して、所定包絡線形状と包絡線拡張タイプ番号とに基づいて点対称及び又は線対称に拡幅された拡張包絡線形状を作成する包絡線拡張手段を設け、その拡張包絡線形状を複素フーリエ変換手段でフーリエ変換するとともに、包絡線拡張タイプ番号を受けて、その包絡線拡張タイプ番号に応じて所定時間幅Tを拡張包絡線形状への拡幅に応じて拡大する。
【0071】
図13では、包絡線拡張手段62に、包絡線拡張タイプ0〜4のいずれかのタイプと、包絡線形状入力手段61からの包絡線形状が入力される。包絡線形状入力手段61では、包絡線拡張タイプ0〜4に応じて入力された包絡線形状を拡張し、拡張された包絡線形状を拡張包絡線入力手段54Aから、離散フーリエ変換手段55に入力する。また、包絡線拡張タイプ0〜4は倍率セレクタ63に供給されて、拡張タイプ0〜4に応じた倍率を出力して、パルス幅Tをパルス幅拡大用乗算器64で拡大する。その他の構成は、図7の係数自動設定装置と同様である。
【0072】
包絡線拡張タイプという入力信号は、この自動設定システムを使用する操作員がその都度入力するなどして、包絡線拡張のタイプ0〜4を指定する。その入力された包絡線拡張タイプによる拡張の結果としての各係数値(重みや位相など)を参照して、最も適した包絡線拡張タイプを選択することになる。
【0073】
なお、本発明のパルス信号発生装置を、次のように構成することができる。
所定出力周波数fo、所定時間幅Tで所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数foに対応した出力周波数用位相増分を入力する出力周波数用位相増分入力手段と、前記出力周波数用位相増分を出力周波数用初期位相値を初期値とする出力周波数用位相レジスタに順次加算することによって出力周波数用瞬時位相を計算する出力周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記出力周波数用瞬時位相を出力周波数用波形関数値に変換する出力周波数用波形関数変換手段と、を含む出力周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foから前記所定時間幅Tで任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数fo−i/Tに対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数foに前記第i周波数を加算した第i上側周波数fo+i/Tに対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記出力周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記出力周波数用波形関数値に出力周波数用重み値を掛けた出力周波数用出力信号と、前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とするパルス信号発生装置。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ディジタルシンセサイザが生成する信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する図
【図2】線形周波数変調信号にハニング窓で変調する周波数の例を示す図
【図3】ディジタルシンセサイザが生成する線形周波数変調信号を合成して、ハニング窓関数に相当する振幅制御を実現する図
【図4】任意形状の包絡線への振幅変調の例を示す図
【図5】ディジタルシンセサイザが生成する信号をディジタル合成する図
【図6】ディジタルシンセサイザが生成する信号をアナログ合成する図
【図7】係数自動設定装置の構成を示す図
【図8】良好に振幅制御ができない包絡線形状の例を示す図
【図9】図8の包絡線を拡張した例を示す図
【図10】半波の正弦波状包絡線形状の例を示す図
【図11】図10の包絡線形状を拡張した例を示す図
【図12】包絡線拡張のタイプを示す図
【図13】包絡線拡張を考慮した係数自動設定装置の構成を示す図
【図14】ディジタルシンセサイザの基本構成を示す図
【図15】ディジタルシンセサイザを用いて位相変調波を生成する図
【図16】参照電圧によるディジタルシンセサイザ出力の振幅変調を行う図
【符号の説明】
【0075】
1,2,3・・シンセサイザ、4・・合成手段(加算回路)、11〜n1・・加算器、12〜n2・・位相レジスタ、13〜n3・・加算器、14・・波形テーブル、15〜n5・・波形関数変換器、16〜n6・・乗算器、17,27・・加算器、18〜n8・・DA変換器、19〜n9・・低域通過フィルタ、OP1〜OP3・・オペアンプ、51・・逆数手段、52・・加算器群、53・・位相増分レジスタ、54,61・・包絡線形状入力手段、55・・離散フーリエ変換手段、56・・振幅レジスタ、57・・位相レジスタ、58・・加算器群、59・・初期位相レジスタ、62・・包絡線拡張手段、63・・倍率セレクタ、54A・・拡張包絡線入力手段、64・・乗算器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定出力周波数、所定時間幅で所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数から前記所定時間幅で任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数に対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数に前記第i周波数を加算した第i上側周波数に対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記第i下側周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とする、パルス信号発生装置。
【請求項2】
所定出力周波数、所定時間幅で所定包絡線形状を持つパルス信号を発生する請求項1に記載のパルス信号発生装置のための、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅に対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段と、
該複素フーリエ変換手段で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタと、
前記複素フーリエ変換手段で計算された位相を格納し、それら位相を前記第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタと、
前記所定出力周波数と前記所定時間幅の逆数に比例した値から得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタとを含むことを特徴とする、係数設定装置。
【請求項1】
所定出力周波数、所定時間幅で所定包絡線形状を持つパルス信号を発生するパルス信号発生装置において、
一定周期にて前記所定出力周波数から前記所定時間幅で任意数iを除した値に比例した第i周波数(但し、iは、1,2,・・・,n、nは1を含む任意の整数、以下同じ)を減算した第i下側周波数に対応した第i下側周波数用位相増分を入力する第i下側周波数用位相増分入力手段と、前記第i下側周波数用位相増分を第i下側周波数用初期位相値を初期値とする第i下側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i下側周波数用瞬時位相を計算する第i下側周波数用瞬時位相計算手段と、メモリ内に予め用意された波形テーブルを参照することによって前記第i下側周波数用瞬時位相を第i下側周波数用波形関数値に変換する第i下側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i下側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記一定周期にて前記所定出力周波数に前記第i周波数を加算した第i上側周波数に対応した第i上側周波数用位相増分を入力する第i上側周波数用位相増分入力手段と、前記第i上側周波数用位相増分を第i上側周波数用初期位相値を初期値とする第i上側周波数用位相レジスタに順次加算することによって第i上側周波数用瞬時位相を計算する第i上側周波数用瞬時位相計算手段と、前記波形テーブルを参照することによって前記第i上側周波数用瞬時位相を、前記第i下側周波数用波形関数値による波高値と同波高値の第i上側周波数用波形関数値に変換する第i上側周波数用波形関数変換手段と、を含む第i上側周波数用ディジタルシンセサイザと、
前記第i下側周波数用波形関数値に第i周波数用重み値を掛けた第i下側周波数用出力信号と、前記第i上側周波数用波形関数値に前記第i周波数用重み値を掛けた第i上側周波数用出力信号とを合成して、前記パルス信号を出力するための合成手段とを含むことを特徴とする、パルス信号発生装置。
【請求項2】
所定出力周波数、所定時間幅で所定包絡線形状を持つパルス信号を発生する請求項1に記載のパルス信号発生装置のための、第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分、第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値、第i周波数用重み値を含む係数を設定するための係数設定装置であって、
与えられた前記所定包絡線形状を前記所定時間幅に対応する時間範囲で、送信パルス幅から決定される離散的な周波数のそれぞれに対する振幅と初期位相を計算する複素フーリエ変換手段と、
該複素フーリエ変換手段で計算された振幅を格納し、それら振幅を前記第i周波数用重み値として設定するための振幅レジスタと、
前記複素フーリエ変換手段で計算された位相を格納し、それら位相を前記第i下側周波数用初期位相値、第i上側周波数用初期位相値として設定するための位相レジスタと、
前記所定出力周波数と前記所定時間幅の逆数に比例した値から得た位相増分を格納し、それら位相増分を前記第i下側周波数用位相増分、第i上側周波数用位相増分として設定するための位相増分レジスタとを含むことを特徴とする、係数設定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−224377(P2008−224377A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62063(P2007−62063)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】
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