パルス光源およびパルス光源の制御方法
【課題】 入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ったパルス光源およびパルス光源の制御方法を提供する。
【解決手段】 パルス光源300Aは、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生するパルス発生器301と、光パルス発生器301から出力される光パルス列の各光パルスを光増幅する光ファイバ増幅器302と、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮器303と、光ファイバ増幅器302の励起を制御する励起制御部304とを備える。光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、光ファイバ増幅器302の励起を制御する。
【解決手段】 パルス光源300Aは、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生するパルス発生器301と、光パルス発生器301から出力される光パルス列の各光パルスを光増幅する光ファイバ増幅器302と、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮器303と、光ファイバ増幅器302の励起を制御する励起制御部304とを備える。光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、光ファイバ増幅器302の励起を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの非線形効果を利用して入力光パルスをパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源およびパルス光源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いたピコ秒、フェムト秒領域の超短パルスを発生するパルス光源の開発が、小型で低コスト、安定性の観点から、超高速光通信や光計測技術、材料加工、バイオ用光エレクトロニクス、物理学などの分野で注目を集めている。
【0003】
従来、超短パルスを発生するパルス光源として、光伝送システムに用いる光パルス列発生装置がある(特許文献1参照)。この光パルス列発生装置は、2モードビート光発生部と、ソリトン変換部と、ソリトン圧縮部とを備え、ソリトン圧縮部で2モードビート信号光の断熱ソリトン圧縮を行う前に、2モードビート信号光をソリトン変換部でsin型波形からソリトン波形へ変換する。この光パルス列発生装置により、ソリトン断熱圧縮の圧縮効率を大きく向上させることが可能となり、100GHz以上の繰り返し周波数及びサブピコ秒領域の時間幅を有する超高純度ソリトン列の発生が可能となる。
【0004】
また、超短パルスを発生するパルス光源や、光伝送システムには、入力光パルスを光増幅する光増幅器が使用される。光増幅器の制御方法として、光増幅器の励起光を制御するAPC(Automatic Current Control)、光出力を一定レベルに保つALC制御(Automatic Level Control)、利得を一定に制御するAGC制御(Automatic Gain Control)などが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】WO 2004/049054 A1
【特許文献2】特開2005−150435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の光増幅器の制御方法は、レベルが一定な連続光や光パルス列の繰り返し周波数が固定されているパルス列に対しては有効である。また、上記特許文献1に記載されているようなパルス光源では、利便性を向上させるなどの目的で光パルス列の繰り返し周波数を変えられるようにした構成が望まれている。このように光パルス列の繰り返し周波数を可変にしたパルス光源に上記従来の光増幅器の制御方法を適用した場合、繰り返し周波数が変わると、超短パルスの出力特性(パルスエネルギーとパルス幅)が変わってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目して為されたもので、その目的は、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ったパルス光源およびパルス光源の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段と、前記光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段と、前記光増幅手段で光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段と、前記光増幅手段の励起を制御する励起制御手段と、を備え、前記励起制御手段は、前記光増幅手段により光増幅された前記光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源である。
【0008】
ここで「平均パルスエネルギー」は、光増幅手段の出力側で各光パルスの平均パワーをモニターし、その平均パワーを光パルス列の繰り返し周波数で割った値である(式(1)参照)。
【0009】
この構成では、光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源において、光パルスのエネルギーを光増幅する際に、光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、光増幅手段の励起を制御する。この構成によれば、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルス幅が繰り返し周波数が変わることで変わっても、光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるようにすることで、非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。
【0010】
したがって、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0011】
第1の態様において、前記励起制御手段は、前記光増幅手段を励起する半導体レーザと、前記光増幅手段による光増幅後における前記光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段と、前記半導体レーザを制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記光増幅手段に入力される前記光パルスの繰り返し周波数を取得し、該取得した繰り返し周波数に応じた前記半導体レーザの電流制御初期値を設定するとともに、前記光パワー検出手段で検出した前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルスの繰り返し周波数を取得し、取得した繰り返し周波数に応じた半導体レーザの電流制御初期値を設定し、平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザを制御する。これにより、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルスエネルギーが繰り返し周波数に応じて調整されるので、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルス幅が繰り返し周波数が変わることで変わっても、非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。したがって、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0013】
第1の態様において、前記光パルス圧縮手段は、高非線形ファイバと単一モードファイバのペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器を備え、該ファイバ圧縮器により、前記光増幅手段で光増幅された前記光パルスを圧縮することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、高非線形ファイバ(Higly Nonlinear fiber: HNLF) と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器により、光増幅手段で光増幅された各光パルスを圧縮する。このファイバ圧縮器では、分散だけでなく非線形定数もある形状のプロファイル、例えばコム状(くし状)のプロファイルを持つ。また、非線形媒質として分散値が小さく非線形定数が大きい光ファイバを用いるため、理想的な非線形媒質を得ることができるとともに、ファイバ圧縮器の短尺化を図ることができる。また、分散値の大きく異なる光ファイバを多段接続しているため、誘導ブリルアン散乱の抑制にも優れている。さらに、ファイバ圧縮器は、分散プロファイルを柔軟に設計できるため、製造上の観点で優れている。
【0015】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能と、前記繰り返し周波数を表すデジタル信号を前記制御ユニットへ出力する機能とを有する光パルス発生器であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルス発生器から出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数を取得することができる。
【0017】
第1の態様において、前記パルス発生手段は、分布帰還型半導体レーザと、電気パルスを出力して前記分布帰還型半導体レーザを利得スイッチ駆動する電気パルス発生器とを備え、前記電気パルス発生器は繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する機能を有し、前記分布帰還型半導体レーザは、前記電気パルス発生器から出力される電気パルスの注入により、利得スイッチ発振を起こして繰り返し周波数が可変の光パルスを発生し、前記電気パルス発生器は、前記光パルスの繰り返し周波数を表すデジタル値を直接、前記制御ユニットへ出力するようになっていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電気パルス発生器から出力される電気パルスの繰り返し周波数を変えることで、分布帰還型半導体レーザから繰り返し周波数が可変の光パルスを発生させることができる。また、制御ユニットは、電気パルス発生器から直接出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数を取得することができる。
【0019】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能を有する光パルス発生器であり、前記励起制御手段は、前記光パルス発生手段から出力される前記光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段をさらに含み、前記制御ユニットは、前記光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して前記光パルス列の繰り返し周波数を求めることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数を求めるので、光パルス発生器との間で、繰り返し周波数を取得するためのインターフェイスが不要になる。
【0021】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は、前記分布帰還型半導体レーザが利得スイッチ駆動されて該半導体レーザから出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバをさらに含み、前記光パルス圧縮手段は、前記光増幅手段としての正常分散光増幅器と、前記正常分散光増幅器の出力側に接続された前記ファイバ圧縮器と、前記ファイバ圧縮器の出力側に接続された正常分散光増幅器および単一モードファイバとを含むことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、正常分散光増幅器によりチャープ補償された光パルス列をパルス発生手段から出力させることができる。また、ファイバ圧縮器によるパルス圧縮と、正常分散光増幅器と単一モードファイバによるパルス圧縮とを行うことで、超短パルスのパルス幅をさらに小さくすることができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生し、前記光パルス列の各光パルスを光増幅手段により光増幅し、光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源の制御方法であって、光増幅された前記光パルス列の平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源の制御方法である。
【0024】
この構成によれば、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0025】
第2の態様において、前記光増幅手段に入力される前記光パルス列の繰り返し周波数を取得するステップと、前記光増幅手段へ励起光を出力する半導体レーザの電流制御初期値を、取得した前記繰り返し周波数に応じて設定するステップと、前記光増幅手段の出力側で前記光パルスの平均パワーを検出するステップと、前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルスエネルギーが繰り返し周波数に応じて調整されるので、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の各実施形態を図面に基いて説明する。なお、各実施形態の説明において、同様の部位には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るパルス光源300Aを示している。
【0028】
このパルス光源300Aは、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段としてのパルス発生器301と、光パルス発生器301から出力される光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段としての光ファイバ増幅器302とを備えている。さらに、パルス光源300Aは、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段としての光パルス圧縮器303と、光ファイバ増幅器302の励起を制御する励起制御手段としての励起制御部304とを備えている。
【0029】
パルス発生器301は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を光ファイバ増幅器302へ出力する機能と、繰り返し周波数を表すデジタル信号を励起制御部304の制御ユニット305へ出力する機能とを有する光パルス発生器(Optical Pulse Source: OPS)306である。この光パルス発生器306は、光パルス列を発生する光回路(図示省略)と電気回路(図示省略)を備え、図示を省略した周波数切替えスイッチを手動で切り替えることで、光パルス列の繰り返し周波数を変えられるようになっている。例えば、光パルス発生器306は、図2(a)〜(f)に示すように、光パルス列の繰り返し周波数を、500MHzから1000MHzまで100MHz間隔で6段階に変えられるようになっている。なお、図2(a)〜(f)のグラフは、横軸は波長[nm]を、縦軸は光パワー[10dB/div.]をそれぞれ示している。
【0030】
光ファイバ増幅器302として、エルビウムドープ光ファイバ増幅器(Erbium Dopped Fiber Amplifier: EDFA)が使用されている。図3において符号400は、光ファイバ増幅器302に入力される増幅前の光パルスを示しており、また、符号401は光ファイバ増幅器302による増幅後の光パルスを示している。図3で、Tは光パルス400の周期(T=1/f)であり、Δtoutは光パルス401のパルス幅である。
【0031】
光パルス圧縮器303は、高非線形ファイバ(Higly Nonlinear fiber: HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器としてのコム状ファイバ(comb-like profiled fiber: CPF)圧縮器310を備え、このコム状ファイバ圧縮器310により、光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスを圧縮するようになっている。図3において、符号402は、光増幅後の光パルス401がコム状ファイバ圧縮器310により圧縮された後の光パルス(出力光)である。
【0032】
励起制御部304は、光ファイバ増幅器302を励起する2つの半導体レーザ311,312と、光ファイバ増幅器302による光増幅後における光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段としてのフォトダイオード313と、半導体レーザ311,312を制御する制御ユニット305とを備える。半導体レーザ311,312にはそれぞれ、制御ユニット305からの制御信号に応じた駆動電流を各半導体レーザに供給する駆動回路314,315が設けられている。
【0033】
本実施形態のパルス光源300Aでは、光ファイバ増幅器302の励起方式を双方向励起方式としている。つまり、光ファイバ増幅器302の励起に使用する光(励起光)を被増幅光(信号光)である光パルスの進行方向と同方向に光ファイバ増幅器302に入射させる前方励起と、その進行方向と逆方向に励起光を光ファイバ増幅器302に入射させる後方励起とを同時に利用する構成になっている。
【0034】
そのため、パルス光源300Aには、励起光を光パルスの進行方向に光ファイバ増幅器302に入射させる励起用の半導体レーザ311と、その逆方向に励起光を光ファイバ増幅器302に入射させる励起用の半導体レーザ312とが設けられている。光パルス発生器306から出力される光パルスを光ファイバ増幅器302に伝搬する光ファイバ320には、その光パルスをフォトダイオード321へ分岐する光分岐器322と、その光パルスと半導体レーザ311からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ323とが設けられている。
【0035】
光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスは、光ファイバ324を伝搬してコム状ファイバ圧縮器310に入り、この圧縮器で圧縮された光パルスは光ファイバ325を伝搬して光パルス圧縮器303から出力されるようになっている。光ファイバ324には、半導体レーザ312からの励起光を光ファイバ増幅器302へ入射させるWDN光ファイバカップラ326と、光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスをフォトダイオード313へ分岐する光分岐器327とが設けられている。
【0036】
励起制御部304の制御ユニット305は、各種の演算処理を行うCPU330、ROM331、RAM332、図示を省略したD/A変換器、A/D変換器などを備える。
【0037】
CPU330は、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを光パルス発生器306へ一定時間ごとに出力するようになっている。光パルス発生器306は、その指令Aを受けると、繰り返し周波数を表すデジタル信号Bを制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0038】
また、CPU330は、光ファイバ増幅器302へ励起光を出力する半導体レーザ311,312の電流制御初期値を、取得した繰り返し周波数fに応じて設定するとともに、設定した電流制御初期値に応じた駆動信号を駆動回路314,315へ出力して半導体レーザ311,312の駆動制御を開始するようになっている。この開始後、CPU330は、フォトダイオード313で検出した光増幅後における光パルスのパワーから、平均パワーを算出し、この平均パワーを繰り返し周波数fで割った値である平均パルスエネルギーを算出する(1式参照)。そして、この算出した平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザ311,312をフィードバック制御するようになっている。
【0039】
Eout=Pout/f・・・(1式)
ここで、Eoutは平均パルスエネルギーであり、Poutは平均パワーである。
【0040】
ところで、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの平均パワーは、繰り返し周波数fが大きくなるほど大きくなる。光ファイバ増幅器302で増幅される光パルスの平均パワーの利得は一定にしなくてはならないので、光パルスの平均パワーが大きくなるほど、半導体レーザ311,312から光ファイバ増幅器302へ出力される励起光に必要な光パワーも大きくする必要がある。各半導体レーザ311,312の入力電流値に対する励起光パワー出力値の特性(I−L特性)は固有である。したがって、半導体レーザ311,312の電流制御初期値は各半導体レーザ311,312単体ごとに予め実験的に測定した上で、繰り返し周波数fに応じた最適値を例えばRAM332にデータテーブルとして記憶させておく。この場合、CPU330は、そのデータテーブルを参照して繰り返し周波数fに応じた電流制御初期値を設定する。なお、このデータテーブルには、繰り返し周波数が可変である全ての周波数f1〜fnにそれぞれ対応する電流制御初期値が含まれている。
【0041】
このように、本実施形態では、光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レー311,312を制御するが、この制御をAEC(Auto Energy Control)制御と呼ぶことにする。
【0042】
次に、制御ユニット305のCPU330が実行するAEC制御の処理手順を図4に示すフローチャートに基いて説明する。
【0043】
図4に示すAEC制御の処理は、パルス光源300Aの電源が投入されると、一定時間ごとに繰り返し実行される。
【0044】
まず、ステップS1では、指令Aを光パルス発生器306へ一定時間ごとに出力して、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの繰り返し周波数fを取得する。このとき、光パルス発生器306は、その指令Aを受けると、繰り返し周波数fを表すデジタル信号Bを制御ユニット305へ出力する。CPU330は、そのデジタル信号Bにより繰り返し周波数fを取得する。
【0045】
次に、ステップS2に進み、光ファイバ増幅器302へ励起光を出力する半導体レーザ311,312の電流制御初期値を、取得した繰り返し周波数fに応じて設定する。
【0046】
次に、ステップS3に進み、ステップS2で設定した電流制御初期値で半導体レーザ311,312の駆動する。このとき、ステップS2で設定した電流制御初期値に応じた駆動信号を駆動回路314,315へ出力して半導体レーザ311,312の駆動制御を開始する。
【0047】
次に、ステップS4に進み、光ファイバ増幅器302の出力側で光増幅後の光パルスの平均パワーを検出する。ここでは、フォトダイオード313の光電出力に基き、フォトダイオード313で検出した光増幅後における光パルスのパワーから、上記1式における平均パワーを算出する。
【0048】
次に、ステップS5で検出した平均パワーを繰り返し周波数fで割った値である平均パルスエネルギーを、上記1式により算出する。
【0049】
次に、ステップS5で算出した平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザ311,312をそれぞれフィードバック制御する。
【0050】
この後、図4に示す処理を一旦終了する。
【0051】
このようなAEC制御を行うことにより、パルス光源300Aで発生する超短パルスの光出力例を図5(a)、(b)に示してある。図5(a)は出力光パルスの自己相関波形を示すグラフであり、(b)は出力光パルスの光スペクトルを示すグラフである。
【0052】
また、このパルス光源300Aにおける、パルス幅とパルスエネルギーの繰り返し周波数依存性を図6に示してある。図6において、黒丸と黒四角は、繰り返し周波数fが500MHz、600MHz、700MHz、800MHz、900MHzおよび1000MHzのときの出力光パルスのパルスエネルギとパルス幅をそれぞれ示している。図6から、入力する光パルス列400の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができることが分かる。
【0053】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0054】
・上記AEC制御により、光パルス400(図3参照)のエネルギーを光ファイバ増幅器302により光増幅する際に、光増幅された光パルス401(図3参照)の平均パルスエネルギーが一定になるように、光ファイバ増幅器302の励起を制御する。これにより、光パルス圧縮器303に入力される光パルス401のパルス幅Δtout
が繰り返し周波数fが変わることで変わっても、光パルス圧縮器303における非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。したがって、入力する光パルス列400の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0055】
・断熱ソリトン圧縮技術の一つとして、コム状分散プロファイルファイバ(comb-like disprsion profiled fiber:CDPF)を用いる方法が知られている。このCDPFは、非線形媒質としてゼロ分散シフトファイバ(dispersion sifted-fiber: DSF)を、分散媒質として単一モードファイバ(single mode fiber: SMF)を用いて、それらを融着接続して作製される。本実施形態では、高非線形ファイバ(HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるコム状ファイバ(CPF)圧縮器310により、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを圧縮する。このコム状ファイバ圧縮器310では、DSFの代わりにHLNFを用いるため、分散だけでなく非線形定数もコム状(くし状)のプロファイルを持つ。また、非線形媒質として分散値が小さく非線形定数が大きい光ファイバを用いるため、理想的な非線形媒質を得ることができるとともに、コム状ファイバ圧縮器310の短尺化を図ることができる。また、ステップ状分散プロファイルファイバ(step-like disprsion profiled fiber:SDPF)と同じように分散値の大きく異なる光ファイバを多段接続しているため、誘導ブリルアン散乱の抑制にも優れている。さらに、コム状ファイバ圧縮器310は、分散プロファイルを柔軟に設計できるため、製造上の観点で優れている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るパルス光源300Bを図7に基いて説明する。
【0056】
このパルス光源300Bは、パルス発生手段としてのパルス発生器301は、分布帰還型半導体レーザ(distributted feedback laser diode: DFB-LD)500と、電気パルスを出力して分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動する電気パルス発生器(electric pulse sourse; EPS)501とを備える。
【0057】
電気パルス発生器501は、繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する電気パルス発生器(pulse pattern generator: PPG)と、その電気パルスを増幅する増幅器とを備える。
【0058】
このパルス発生器301は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス発生器501により電気パルス変調をかけて、繰り返し周波数fが可変の光パルス列を分布帰還型半導体レーザ500から出力させるようになっている。つまり、パルス発生器301から出力される光パルス列の繰り返し周波数fは、電気パルス発生器501から出力され、分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動するための電気パルスの繰り返し周波数により制御されるようになっている。
【0059】
また、このパルス光源300Bでは、電気パルス発生器501は、制御ユニット305のCPU330から光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを受けると、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器501から直接、制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0060】
パルス光源300Bのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0061】
以上説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0062】
・電気パルス発生器501から分布帰還型半導体レーザ500へ出力される電気パルスの繰り返し周波数を変えることで、分布帰還型半導体レーザ500から繰り返し周波数fが可変の光パルスを発生させることができる。
【0063】
・制御ユニット305は、電気パルス発生器501から直接出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数fを取得することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るパルス光源300Cを図8に基いて説明する。
【0064】
前記励起制御手段としての励起制御部305は、光パルス発生器306から出力される繰り返し周波数fが可変の光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段としての前記フォトダイオード321を含む。
【0065】
また、制御ユニット305は、フォトダイオード321で受光した各パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数fを求めるように構成されている。
【0066】
パルス光源300Cのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0067】
以上説明した第3実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0068】
・制御ユニット305は、フォトダイオード321で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数fを求めるので、光パルス発生器306との間で、繰り返し周波数fを取得するためのインターフェイスが不要になる。つまり、制御ユニット305のCPU330からパルス発生器306へ光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを送る信号線と、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器501から制御ユニット305へ送る信号線などが不要になり、その分コストの低減を図れる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るパルス光源300Dを図9に基いて説明する。
【0069】
このパルス光源300Dでは、パルス発生器301は、分布帰還型半導体レーザ500と、電気パルスを出力して分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動する電気パルス発生器502と、分布帰還型半導体レーザ500から出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバ(dispersion compensating fiber: DCF)510とを備える。
【0070】
電気パルス発生器502は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス変調(強度変調)をかけて繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する電気パルス発生器(pulse pattern generator: PPG)を備える。
【0071】
このパルス発生器301は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス発生器501により電気パルス変調をかけて、繰り返し周波数fが可変の光パルス列を分布帰還型半導体レーザ500から出力させるようになっている。つまり、パルス発生器301から出力される光パルス列の繰り返し周波数fは、電気パルス発生器502から出力され、分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動するための電気パルスの繰り返し周波数により制御されるようになっている。
【0072】
また、パルス光源300Bでは、電気パルス発生器502は、制御ユニット305のCPU330から光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを受けると、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器502から直接、制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0073】
また、パルス光源300Dの光パルス圧縮器303は、光増幅手段として、上記第1実施形態で用いているエルビウムドープ光ファイバ増幅器302に代えて、正常分散光増幅器(ND-EDFA)340を用いている。この光パルス圧縮器303では、パルス発生器301から出力されるチャープ補償された光パルス列の各光パルスのパルスエネルギーが、正常分散光増幅器340によりCPF圧縮に最適なパルスエネルギーまで増幅された後、コム状ファイバ圧縮器310に入力されるようになっている。
【0074】
この光パルス圧縮器303はさらに、コム状ファイバ圧縮器310の出力側に接続された正常分散光増幅器350、351と、単一モードファイバ352とを備えている。つまり、光パルス圧縮器303では、コム状ファイバ圧縮器310によるパルス圧縮と、2つの正常分散光増幅器350、351と単一モードファイバ352によるパルス圧縮とを行うようになっている。正常分散光増幅器350、351はそれぞれ、半導体レーザ600、601により励起されるようになっている。図9において、符号602、603は、制御ユニット305からの制御信号に応じた駆動電流を各半導体レーザ600、601に供給する駆動回路である。
【0075】
そして、コム状ファイバ圧縮器310と正常分散光増幅器350を接続する光ファイバ610には、半導体レーザ600からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ701が設けられている。正常分散光増幅器350と正常分散光増幅器351を接続する光ファイバ611には、半導体レーザ601からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ702が設けられている。正常分散光増幅器351と単一モードファイバ352は光ファイバ612により接続されている。
【0076】
パルス光源300Dのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0077】
以上説明した第4実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0078】
・正常分散光増幅器340によりチャープ補償された光パルス列をパルス発生器301から出力させることができる。
【0079】
・光パルス圧縮器303では、コム状ファイバ圧縮器310によるパルス圧縮と、2つの正常分散光増幅器350、351と単一モードファイバ352によるパルス圧縮とを行うことで、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aよりもパルス幅の小さい超短パルスを発生することができる。
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態による超短パルス光源を用いたシステムの構成を概略的に示すブロック図である。図10において、要素番号1は電気パルス列を出力する電気パルス源または電子装置であり、要素番号2は、要素1からの電気パルス列を受信して、対応する光パルスを出力するパルス光源であり、要素番号3は、パルス光源2からの光パルスを受信し、パルス幅を圧縮する光パルス圧縮装置である。パルス光源2と光パルス圧縮装置3とを一体に形成し、全体として超短パルス光源4としてもよい。また、電気パルス源または電子装置1が専ら超短パルス発生のための電気パルスを出力する回路であり、超短パルス光源4に統合した形で形成された場合、図10全体を超短パルス光源と見なすべきである。
【0080】
光パルス圧縮装置3は、基本的には、パルス光源2からの光パルスを受信して増幅する
エルビウム添加ファイバ(erbium-doped fiber:EDF)32を用いた光増幅器30、および光増幅器30(または、EDF32)の出力と光ファイバを介して直列に接続された櫛形分散配置ファイバ(comb-like dispersion profiled fiber:CDPF)34から構成される。このEDF32とCDPF34との組み合わせにより、パルス光源2からの光パルスは、当業者には周知のごとく、EDF32により増幅され、CDPF34により非線形効果と分散補償を繰り返し受けることにより、パルス幅が圧縮される。EDF32としては、例えば、正常分散EDF(ND(normal dispersion)‐EDF)を使用することができる。
【0081】
第5実施形態によれば、光パルス圧縮装置3は、さらにEDF32の直前に挿入されたWDM(波長分割多重)カプラ42、42a、カプラ42の合波用端子に接続されたレーザダイオード(LD)44、レーザダイオード44の他端に接続されたLD駆動回路46,カブラ42aに接続され、レーザダイオード44の発する光りをモニタできるように配置されたフォトダイオード(PD)48、フォトダイオード48の他端に接続された駆動パワー検出器50,EDF32の出力側に挿入された光分波器52,光分波器52の分波出力端子と光学的に結合された平均出力パワー測定器54,およびLD駆動回路46の制御入力端子と駆動パワー検出器50の出力端子と平均出力パワー測定器54の出力端子とが接続されたコントローラ60から構成される。
【0082】
電気パルス源または電子装置1は、制御部12を含み、制御部12は、要素1が出力する電気パルスの繰り返し周波数fを出力する。特に、繰り返し周波数が変化する場合、電気パルス源または電子装置1は、この変化に追随して頻繁に周波数fを出力することが好ましい。この出力fは、コントローラ60に供給される。
【0083】
電気パルス源または電子装置1は、電気パルス列を出力するものであれば、種々のパルス発生器、パルスパタン発生器、またはその他の電子装置など何でもよい。パルス光源2は、入力される電気パルスに応じて光パルスは発生するものであれば何でもよく、例えば、利得スイッチ駆動した分布帰還型半導体レーザ(distributed-feed back laser diode:DFB−LD)などで構成される。平均出力パワー測定器54は、当分野では周知のようにEDF32の出力から分岐した光パルス信号を光電変換して得た光電変換信号から平均パルス電力Eaを求めてコントローラ60に渡す。
【0084】
コントローラ60は、周知のように図示しないCPU(中央情報処理装置)の他、制御に必要なプログラム64およびデータを格納する不揮発性メモリ62などを備える。不揮発性メモリ62には、起動時に駆動パワー検出器50からの駆動パワーPdの制御目標値となる初期値P、および稼働中にEDF32から出力される各光パルスのパルスエネルギーの制御目標値Etを繰り返し周波数fに対応づけて収容するデータテーブル62を格納するものとする。
【0085】
図11は、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納されるデータテーブル66の構造例とこれに関連するデータの流れを示す図である。図11に示したデータテーブル66は、パルスエネルギーとして予め3つの設定値Etα、ETβおよびETγが用意されている場合の例である。利用者またはホストシステムは、これらの1つを選択したり、あるいは所望のパルスエネルギー値を入力することにより、パルスエネルギーを設定することができるものとする。データテーブル66は、繰り返し周波数f1,f2,...の各々に対するレコードからなる。各レコードfi(i=1,2,...)は、起動時に駆動パワー検出器50からの駆動パワーPdの制御目標値となる初期値Pi、選択可能なパルスエネルギー目標値Etαi、ETβiおよびETγiから構成される。
【0086】
このように、目標とする1つのパルスエネルギーEtαに対し、繰り返し周波数f1,f2,...の各々に対応した制御目標値Etα1,Etα2,...が必要となる。このようにする必要があるのは、パルス光源2からの入力パルスのパルスエネルギーが例えば0.1pJでパルス幅が10psの場合、これを光パルス圧縮装置3で圧縮して、例えばパルスエネルギーが1pJでパルス幅が1psの超短パルスを得る場合を考えると、繰り返し周波数fが500MHzであれば、EDF32は50μWの入力電力を500μWの出力電力に増幅するためにレーザダイオード44に100nAの電流を流す必要があるが、fが1GHzであれば、EDF32は100μWの入力電力を1000μWの出力電力まで増幅するためにレーザダイオード44に200nAの電流を流す必要があるからである。
【0087】
また、コントローラ60の図示しないRAM(random access memory)には、上述のように電気パルス源または電子装置1などの外部装置から供給される繰り返し周波数f(繰り返し周波数の受信値fと称する)を格納する記憶箇所682,ホストシステムまたは利用者から送られるパルスエネルギーの設定目標値Etを格納する記憶箇所684、記憶箇所682の繰り返し周波数受信値fのコピーを繰り返し周波数の現在値fcとして格納する記憶箇所682a、および記憶箇所684のパルスエネルギーの設定目標値Etのコピーを現在の設定目標値として格納する記憶箇所684aが含まれる。
【0088】
以上のように構成された光パルス圧縮装置3の動作を図11および図12を参照しながら説明する。図12〜図15のフローチャートは、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納されるプログラム64の処理の流れを表すものである。
【0089】
図12は、コントローラ60が、図10の超短パルス光源4または光パルス圧縮装置3を含むホストシステムから供給されるパルスエネルギー制御目標値(設定目標値)Etを受信した際に実行するパルスエネルギー目標値受信割り込み処理ルーチンのフローチャートである。図12において、コントローラ60は、設定目標値Etを受信すると、ステップ102において、受信した設定目標値Etを所定の記憶箇所684に記憶し、後述のメインプログラム(図14)に戻る。
【0090】
図13は、図10のコントローラ60が、繰り返し周波数f(受信値)を取得した際に、呼び出して実行する繰り返し周波数受信割り込み処理ルーチンのフローチャートである。図13において、コントローラ60は、繰り返し周波数fを取得する(図10の例では、電気パルス源または電子装置1から受け取る)と、取得した繰り返し周波数受信値fを記憶箇所682に記憶し、図14のメインプログラムに戻る。
【0091】
図14は、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納された増幅器制御プログラム64のメインプログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図14のプログラムは、システム起動と同時に呼び出されて実行される。
【0092】
図14において、コントローラ60は、まず初期化処理の一部として、ステップ110において、設定目標値Etが格納される記憶箇所684をクリアする。次に、判断ステップ112において、繰り返し周波数受信値fを格納場所682から読み出し(以降、単に「繰り返し周波数受信値f682を読み出す」という具合に記す)、受信値fがテーブル66にあるか否かを判断する(図11)。受信値fがテーブル66にある場合、ステップ114において受信値f(この場合、fi(i=1,2,...))に対応する、レーザダイオード44駆動制御(この制御は、LD駆動回路46、レーザダイオード44、フォトダイオード48、駆動パワー検出器50およびコントローラ60の閉ループで行われる)の目標値の初期値Piを該当する初期値Pとして読み出す。
【0093】
このとき、記憶箇所682の受信値fを繰り返し周波数の現在値fcとして記憶箇所682aに記憶することが望ましい。これにより、以降の処理において記憶箇所682と682aを比較することにより、新たな受信値fを受け取ったか否かを判定することができる。
【0094】
判断ステップ112において、受信値fに一致するfiがない場合、受信値fに最も近い2つの初期値fiとfi+1(i+1は添え字である)を用いて補完し、この補完値を該当の初期値Pとする。そして、この初期値Pを目標値として起動時の帰還制御を行うために、ステップ118において、LD駆動回路46の設定値Vを所定の初期値(例えば、バイアス値)から単位量ずつ増加させながら、目標値の初期値Pと駆動パワー検出器50から送られる駆動パワーPdとを比較し、ステップ120において、駆動パワーPdが初期値Pに所定の範囲THpまで近づいたかどうか、即ち、P−Pd≦THpかどうか判断する。P−Pd≦THとなるまで、ステップ118を行い、P−Pd≦THpとなった場合、LD駆動回路46の初期設定が完了したことになるので、次のステップ122に進み、稼働状態となる。
【0095】
ステップ122において、使用者またはホストシステムにより設定されるパルスエネルギー目標値Etの格納場所684を読み出して、目標値Etが設定されたか否かを判断する。これは、記憶箇所684にステップ110のクリア値が残っているか否かで判断できる。
【0096】
目標値Etが設定されていない場合、ステップ123において、繰り返し周波数fの受信に対応する処理を行う。即ち、記憶箇所682と682aとを比較することにより、新たな繰り返し周波数fを受信したかどうかを判断し、受信していなか、ステップ112の時と同じ値を受信した場合は何もせずステップ123を終えるが、新たな繰り返し周波数fを受信している場合、ステップ114または116と同じ要領で該当する初期値Pを決定し、レーザダイオード44の駆動パワーPdがこの初期値Pに収束するように帰還制御を行い、|P−Pd|≦THp(現在の初期値Pが以前の値より小さい場合もあるので、P−Pdの正負によって増減を行う)となった場合、ステップ123を終了する。新たな繰り返し周波数f受信したか否かに関わらず、ステップ123の終了後はステップ122に戻る。
【0097】
以上のように、本発明によれば、EDF32または光増幅器30から出力される各パルスのエネルギー(パルスエネルギー)の目標値が設定されていない起動の直後は、繰り返し周波数に応じた初期値Pをデフォルトの目標値としてレーザダイオード44の駆動制御を行い、設定目標値が設定されるまで、繰り返し周波数受信値fが変更されるたびに最適な初期値Pに更新されるので、EDF32または光増幅器30から出力される光パルスのエネルギーが周波数に依らず一定に保持される。
【0098】
ステップ122において、記憶箇所684に設定目標値が設定されている場合、判断ステップ124に進む。ステップ124において、繰り返し周波数受信値f682および設定目標値Et684を読み出し、これらがデータテーブル66にあるか否かを判断する。両方ともデータテーブル66にある場合、ステップ126において、データテーブル66から該当する目標値Etj,i(j=α,β,γ、i=1,2,...)を「現在の目標値Eta」として読み出し、このときの記憶箇所682および694の値(即ち、繰り返し周波数受信値fおよび設定目標値Et)を対応する記憶箇所682aおよび684aにそれぞれコピーする。
【0099】
一方、判断ステップ124において、繰り返し周波数受信値f682、設定目標値Et684またはこれらの両方がデータテーブル66にない場合、ステップ128において、データテーブル66の補間を行う。すなわち、設定目標値Etのみが対応するEtj(j=α,β,γ)がある場合、繰り返し周波数受信値fに最も近い2つの繰り返し周波数fiおよびfi+1のレコードのEtjフィールドの目標値Etj,iおよびEtj,i+1を用いて補間値を求める。繰り返し周波数受信値fのみが対応するfi(i=1,2,...)がある場合、設定目標値Etに最も近い2つの設定目標値EtjおよびEtj+1のフィールドのfiレコードの目標値Etj,iおよびEtj+1,iを用いて補間値を求める。同様に、繰り返し周波数受信値fと設定目標値Etの両方ともデータテーブル66にない場合、上述の補間を組み合わせることにより、4つの目標値Etj,i,Etj,i+1,Etj+1,iおよびEtj+1,i+1を用いて補間を行い、補間値を求める。このようにして求めた補間値を現在の目標値Etaとする。
【0100】
このように、本発明によれば、繰り返し周波数および設定目標値に予め用意されたデータがない場合も、補完を行うことにより、用意されたデータから補完可能な範囲であれば、目標値が無段階に設定することができる。したがって、パルスエネルギーまたはパルス幅の設定の自由度が増すので、広い用途に対応することができる。なお、補完には、内挿法にみならず、外挿法もあり得るので、補完可能な範囲には、用意されたデータから外挿法で補完可能な範囲も含まれると考えるべきである。
【0101】
なお、ステップ126および128の何れの場合も、目標値を決定した場合、図2に示すように、記憶箇所682および694の値(即ち、繰り返し周波数受信値fおよび設定目標値Et)を対応する記憶箇所682aおよび684aにそれぞれコピーする。ステップ126または128の終了後、ステップ130に進む。
【0102】
ステップ130以降において、LD駆動装置46、レーザダイオード44、EDF32
、平均出力パワー測定器54、およびコントローラ60からなる閉ループにより帰還制御を行う。この場合、平均出力パワー測定器54から受信した平均出力パワーEaを繰り返し周波数fで割った商(即ち、光パルス当たりのエネルギー)Eをパルスエネルギーとして求め、このパルスエネルギーEに基づいて帰還制御を行う。
【0103】
即ち、判断ステップ130において、現在の目標値EtaとパルスエネルギーEとを比較し、EtaとEとの差が所定の閾値THe以下であるか否か、即ち|Eta−E|≦THeか否かを判断する。判断結果がYESである場合、後述の入力チェック(ステップ134)を行う。判断ステップ130において、EtaとEとの差が所定の閾値THeを超える場合(NOの場合)、ステップ132において、Eta−Eが正であるか否かを判断し、YESの場合(即ち、Eta−EがTHeを超えている場合)、ステップ136において、LD駆動装置46の制御値Vを単位量だけ大きくする。ステップ132において、判断結果がNOの場合(E−EtaがTHeを超えている場合)、LD駆動装置46の制御値Vを単位量だけ大きくする。判断ステップ130の結果がYESの場合、およびステップ136または138の終了した場合、何れも入力チェックステップ134に進む。
【0104】
図15は、図14の入力チェックステップ134の詳細を示すフローチャートである。図15では、判断ステップ140において、記憶箇所682aに格納されている繰り返し周波数の現在値fcは、対応する記憶箇所682に格納されている繰り返し周波数受信値fと同じかどうか判断する。同じなら、更なる判断ステップ142において、記憶箇所684aに格納されている現在の設定目標値Etcは、対応する記憶箇所684に格納されている受信した設定目標値Etと同じかどうか判断する。同じならば、設定値に変化はないので、何もせず図3Cのステップ130へ戻る。
【0105】
判断ステップ140または142においてNOの場合、即ち、何れかの設定値に変更があった場合、図14のステップ124へ戻る。
【0106】
以降、ステップ124以降の処理を繰り返すことにより、光増幅器30またはEDF32から出力される光パルスの平均エネルギーEaではなく、光増幅器30またはEDF32から出力される光パルスのパルス当たりのパルスエネルギーE(=Ea/f)にもと図いて、繰り返し周波数fに関わりなくパルスエネルギーEが一定になるように制御を行う。パルスエネルギーEが一定であるからパルス幅も一定であることは言うまでもない。
<第5実施形態の変形例>
第5実施形態では、繰り返し周波数fの情報を電気パルス源または電子装置1から得ていたが、外部から繰り返し周波数fを取得する別の形態も考えられる。
【0107】
例えば、図16は、図10のパルス光源2の別の形態を示すブロック図である。同図に示すように、パルス光源2が制御部22を備え、自分が出力する光パルスの繰り返し周波数fを制御部22が出力するように構成してもよい。
【0108】
また、図17は、図10の電気パルス源または電子装置1とパルス光源2との組み合わせに代えて、使用可能な電子光学装置の構成例を示すブロック図である。図17に示すように、電子光学装置1aが、パルス光源2を含み、制御部12aが繰り返し周波数fを出力するような構成もあり得る。
(第6実施形態)
以上述べた第5の実施形態およびその変形例では、超短パルス光源4の光パルス圧縮装置3の光増幅器30の増幅制御部40のコントローラ60が繰り返し周波数fを外部から受信していたが、増幅制御部40の内部で繰り返し周波数fを得ることが可能である。図18は、本発明の第6の実施形態により繰り返し周波数fを演算により求める光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図である。図18の増幅制御部40aは、平均出力パワー測定器54で得た光電変換信号Seの出力をコントローラ60aに伝える導線200を備え、不揮発性メモリ64aのプログラム64aが繰り返し周波数f算出ルーチン202を備えたことを除けば、図10の増幅制御部40と同一である。この相違にともない、図18では、光パルス圧縮装置を3から3aに、光増幅器を30から30aに変更してある。繰り返し周波数f算出ルーチン202は、当御者には周知のように、EDF32の出力光パルスに対応する光電変換信号Seを高速フーリエ変換(first Fourier transform:FFT)することにより、光パルスの繰り返し周波数fを求める。
<第6実施形態の変形例>
しかし、繰り返し周波数fが急激に変化し、その変化に充分追随して出力光パルスのパルスエネルギーを一定に保つには、ソフトウェア演算で繰り返し周波数fを算出したのでは間に合わない場合もある。そのよう場合、繰り返し周波数の算出をソフトウェアではなく、ハードウェアで行うことが好ましい。この場合、には、f演算ルーチン202を設ける代わりに、繰り返し周波数算出処理の一部(例えば、FFT演算)または全部をFFT演算部(図示せず)または繰り返し周波数演算部(図示せず)として導線200に挿入すればよい。
(第7実施形態)
以上述べた、第5及び第6実施形態とそれらの変形例では、光パルス圧縮装置3は光増幅器30を1しか備えていない。しかし、光パルス圧縮装置は、複数の光増幅器を用いて種々の形態で実現可能である。
【0109】
図19は、本発明の第7実施形態により複数の光増幅器を用いた光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図である。図19において、光パルス圧縮装置3bは、図10の光パルス圧縮装置3に2つのEDF32とその後段に配置されたシングルモードファイバ(SMF)36を追加した構成である。このような場合、本発明の増幅制御部40または40aを各EDF32ごとに備えればよい。これにより、EDF32による光増幅器ごとに、出力光パルスのパルスエネルギーEまたはパルス幅を一定に保つことが可能となる。
【0110】
以上は、本発明の説明のために実施の形態の例を掲げたに過ぎない。したがって、本発明の技術思想または原理に沿って上述の実施の形態に種々の変更、修正または追加を行うことは、当業者には容易である。
【0111】
例えば、図18に示す実施形態において繰り返し周波数fをEDF32の出力光パルスを光電変換した電気信号から求めたが、EDF32の入力光パルスを光電変換して求めることも可能である。
【0112】
(変形例)
なお、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
【0113】
・上記第2、第4実施形態のパルス発生器301では、電気パルス発生器501、502により、分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス変調(直接強度変調)をかけて繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生するようになっている。このような直接強度変調方式に代えて、LN(LinbO3)強度変調器等の外部変調器により光源からの連続光を変調する外部変調方式を用いても良い。
【0114】
・上記第1、第3実施形態において、パルス発生器(OPS)306は、上記第2、第4実施形態のパルス発生器301のような直接強度変調方式と、上記外部変調方式のいずれにより構成しても良い。
【0115】
・上記第1、第2および第4実施形態では、CPU330は、メモリに記憶されたデータテーブルを参照して繰り返し周波数fに応じた電流制御初期値を設定するようになっている。これらの各実施形態において、光ファイバ増幅器302、340の各出力(利得)特性も半導体レーザと同様に固有であるので、繰り返し周波数fと使用する光ファイバ増幅器の特性とに応じた電流制御初期値をデータテーブルを参照して読み出すように構成しても良い。
【0116】
・上記第1〜第4実施形態では、高非線形ファイバ(HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器として、分散だけでなく非線形定数もコム状のプロファイルを持つコム状ファイバ圧縮器310を用いているが、本発明はこれに限定されない。コム状ファイバ圧縮器310に代えて、分散と非線形定数のプロファイルがコム状以外の形状のファイバ圧縮器を使用する場合にも本発明は適用される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図2】(a)〜(f)は繰り返し周波数の異なる入力光パルスの光スペクトルをそれぞれ示すグラフ、(g)〜(l)は繰り返し周波数の異なる入力光パルスの自己相関波形をそれぞれ示すグラフ。
【図3】入力光パルスが増幅されてパルス圧縮される様子を示す説明図。
【図4】制御ユニットで実行するAEC制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】(a)は出力光パルスの自己相関波形を示すグラフ、(b)は出力光パルスの光スペクトルを示すグラフ。
【図6】出力光パルスの出力特性の繰り返し周波数依存性を示すグラフ。
【図7】本発明の第2実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第5実施形態による超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図11】図10の不揮発性メモリに格納されるデータテーブルの構造例とこれに関連するデータの流れを示す図。
【図12】ホストシステムから供給されるパルスエネルギー制御目標値(設定目標値)の受信時に実行される割り込み処理ルーチンのフローチャート。
【図13】コントローラが繰り返し周波数(受信値)を取得した際に実行する繰り返し周波数受信割り込み処理ルーチンのフローチャート。
【図14】図10のコントローラの不揮発性メモリに格納された増幅器制御プログラムのメインプログラムの処理の流れを示すフローチャート。
【図15】図14の入力チェックステップの詳細を示すフローチャート。
【図16】図10のパルス光源の別の形態を示すブロック図。
【図17】図10の電気パルス源または電子装置とパルス光源との組み合わせに代えて、使用可能な電子光学装置の構成例を示すブロック図。
【図18】本発明の第6実施形態により繰り返し周波数を演算により求める光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図。
【図19】本発明の第7実施形態より複数の光増幅器を用いた光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0118】
300A、300B,300C,300D…パルス光源300A、301…パルス発生器、302,340…光ファイバ増幅器、303…光パルス圧縮器、304…励起制御部、305…制御ユニット、306…光パルス発生器、310…コム状ファイバ圧縮器、311,312…半導体レーザ、312,313…フォトダイオード、350,351…正常分散光増幅器、352…単一モードファイバ、500…分布帰還型半導体レーザ、501,502…電気パルス発生器、510…分散補償ファイバ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの非線形効果を利用して入力光パルスをパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源およびパルス光源の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いたピコ秒、フェムト秒領域の超短パルスを発生するパルス光源の開発が、小型で低コスト、安定性の観点から、超高速光通信や光計測技術、材料加工、バイオ用光エレクトロニクス、物理学などの分野で注目を集めている。
【0003】
従来、超短パルスを発生するパルス光源として、光伝送システムに用いる光パルス列発生装置がある(特許文献1参照)。この光パルス列発生装置は、2モードビート光発生部と、ソリトン変換部と、ソリトン圧縮部とを備え、ソリトン圧縮部で2モードビート信号光の断熱ソリトン圧縮を行う前に、2モードビート信号光をソリトン変換部でsin型波形からソリトン波形へ変換する。この光パルス列発生装置により、ソリトン断熱圧縮の圧縮効率を大きく向上させることが可能となり、100GHz以上の繰り返し周波数及びサブピコ秒領域の時間幅を有する超高純度ソリトン列の発生が可能となる。
【0004】
また、超短パルスを発生するパルス光源や、光伝送システムには、入力光パルスを光増幅する光増幅器が使用される。光増幅器の制御方法として、光増幅器の励起光を制御するAPC(Automatic Current Control)、光出力を一定レベルに保つALC制御(Automatic Level Control)、利得を一定に制御するAGC制御(Automatic Gain Control)などが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】WO 2004/049054 A1
【特許文献2】特開2005−150435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の光増幅器の制御方法は、レベルが一定な連続光や光パルス列の繰り返し周波数が固定されているパルス列に対しては有効である。また、上記特許文献1に記載されているようなパルス光源では、利便性を向上させるなどの目的で光パルス列の繰り返し周波数を変えられるようにした構成が望まれている。このように光パルス列の繰り返し周波数を可変にしたパルス光源に上記従来の光増幅器の制御方法を適用した場合、繰り返し周波数が変わると、超短パルスの出力特性(パルスエネルギーとパルス幅)が変わってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に着目して為されたもので、その目的は、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ったパルス光源およびパルス光源の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段と、前記光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段と、前記光増幅手段で光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段と、前記光増幅手段の励起を制御する励起制御手段と、を備え、前記励起制御手段は、前記光増幅手段により光増幅された前記光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源である。
【0008】
ここで「平均パルスエネルギー」は、光増幅手段の出力側で各光パルスの平均パワーをモニターし、その平均パワーを光パルス列の繰り返し周波数で割った値である(式(1)参照)。
【0009】
この構成では、光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源において、光パルスのエネルギーを光増幅する際に、光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、光増幅手段の励起を制御する。この構成によれば、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルス幅が繰り返し周波数が変わることで変わっても、光増幅された光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるようにすることで、非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。
【0010】
したがって、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0011】
第1の態様において、前記励起制御手段は、前記光増幅手段を励起する半導体レーザと、前記光増幅手段による光増幅後における前記光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段と、前記半導体レーザを制御する制御ユニットとを備え、前記制御ユニットは、前記光増幅手段に入力される前記光パルスの繰り返し周波数を取得し、該取得した繰り返し周波数に応じた前記半導体レーザの電流制御初期値を設定するとともに、前記光パワー検出手段で検出した前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御することを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルスの繰り返し周波数を取得し、取得した繰り返し周波数に応じた半導体レーザの電流制御初期値を設定し、平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザを制御する。これにより、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルスエネルギーが繰り返し周波数に応じて調整されるので、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルス幅が繰り返し周波数が変わることで変わっても、非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。したがって、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0013】
第1の態様において、前記光パルス圧縮手段は、高非線形ファイバと単一モードファイバのペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器を備え、該ファイバ圧縮器により、前記光増幅手段で光増幅された前記光パルスを圧縮することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、高非線形ファイバ(Higly Nonlinear fiber: HNLF) と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器により、光増幅手段で光増幅された各光パルスを圧縮する。このファイバ圧縮器では、分散だけでなく非線形定数もある形状のプロファイル、例えばコム状(くし状)のプロファイルを持つ。また、非線形媒質として分散値が小さく非線形定数が大きい光ファイバを用いるため、理想的な非線形媒質を得ることができるとともに、ファイバ圧縮器の短尺化を図ることができる。また、分散値の大きく異なる光ファイバを多段接続しているため、誘導ブリルアン散乱の抑制にも優れている。さらに、ファイバ圧縮器は、分散プロファイルを柔軟に設計できるため、製造上の観点で優れている。
【0015】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能と、前記繰り返し周波数を表すデジタル信号を前記制御ユニットへ出力する機能とを有する光パルス発生器であることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルス発生器から出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数を取得することができる。
【0017】
第1の態様において、前記パルス発生手段は、分布帰還型半導体レーザと、電気パルスを出力して前記分布帰還型半導体レーザを利得スイッチ駆動する電気パルス発生器とを備え、前記電気パルス発生器は繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する機能を有し、前記分布帰還型半導体レーザは、前記電気パルス発生器から出力される電気パルスの注入により、利得スイッチ発振を起こして繰り返し周波数が可変の光パルスを発生し、前記電気パルス発生器は、前記光パルスの繰り返し周波数を表すデジタル値を直接、前記制御ユニットへ出力するようになっていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、電気パルス発生器から出力される電気パルスの繰り返し周波数を変えることで、分布帰還型半導体レーザから繰り返し周波数が可変の光パルスを発生させることができる。また、制御ユニットは、電気パルス発生器から直接出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数を取得することができる。
【0019】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能を有する光パルス発生器であり、前記励起制御手段は、前記光パルス発生手段から出力される前記光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段をさらに含み、前記制御ユニットは、前記光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して前記光パルス列の繰り返し周波数を求めることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、制御ユニットは、光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数を求めるので、光パルス発生器との間で、繰り返し周波数を取得するためのインターフェイスが不要になる。
【0021】
第1の態様において、前記光パルス発生手段は、前記分布帰還型半導体レーザが利得スイッチ駆動されて該半導体レーザから出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバをさらに含み、前記光パルス圧縮手段は、前記光増幅手段としての正常分散光増幅器と、前記正常分散光増幅器の出力側に接続された前記ファイバ圧縮器と、前記ファイバ圧縮器の出力側に接続された正常分散光増幅器および単一モードファイバとを含むことを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、正常分散光増幅器によりチャープ補償された光パルス列をパルス発生手段から出力させることができる。また、ファイバ圧縮器によるパルス圧縮と、正常分散光増幅器と単一モードファイバによるパルス圧縮とを行うことで、超短パルスのパルス幅をさらに小さくすることができる。
【0023】
本発明の第2の態様は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生し、前記光パルス列の各光パルスを光増幅手段により光増幅し、光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源の制御方法であって、光増幅された前記光パルス列の平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源の制御方法である。
【0024】
この構成によれば、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0025】
第2の態様において、前記光増幅手段に入力される前記光パルス列の繰り返し周波数を取得するステップと、前記光増幅手段へ励起光を出力する半導体レーザの電流制御初期値を、取得した前記繰り返し周波数に応じて設定するステップと、前記光増幅手段の出力側で前記光パルスの平均パワーを検出するステップと、前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御するステップと、を備えることを特徴とする。
【0026】
この構成によれば、光パルス圧縮手段に入力される光パルスのパルスエネルギーが繰り返し周波数に応じて調整されるので、入力する光パルス列の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の各実施形態を図面に基いて説明する。なお、各実施形態の説明において、同様の部位には同一の符号を付して重複した説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は第1実施形態に係るパルス光源300Aを示している。
【0028】
このパルス光源300Aは、繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段としてのパルス発生器301と、光パルス発生器301から出力される光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段としての光ファイバ増幅器302とを備えている。さらに、パルス光源300Aは、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段としての光パルス圧縮器303と、光ファイバ増幅器302の励起を制御する励起制御手段としての励起制御部304とを備えている。
【0029】
パルス発生器301は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を光ファイバ増幅器302へ出力する機能と、繰り返し周波数を表すデジタル信号を励起制御部304の制御ユニット305へ出力する機能とを有する光パルス発生器(Optical Pulse Source: OPS)306である。この光パルス発生器306は、光パルス列を発生する光回路(図示省略)と電気回路(図示省略)を備え、図示を省略した周波数切替えスイッチを手動で切り替えることで、光パルス列の繰り返し周波数を変えられるようになっている。例えば、光パルス発生器306は、図2(a)〜(f)に示すように、光パルス列の繰り返し周波数を、500MHzから1000MHzまで100MHz間隔で6段階に変えられるようになっている。なお、図2(a)〜(f)のグラフは、横軸は波長[nm]を、縦軸は光パワー[10dB/div.]をそれぞれ示している。
【0030】
光ファイバ増幅器302として、エルビウムドープ光ファイバ増幅器(Erbium Dopped Fiber Amplifier: EDFA)が使用されている。図3において符号400は、光ファイバ増幅器302に入力される増幅前の光パルスを示しており、また、符号401は光ファイバ増幅器302による増幅後の光パルスを示している。図3で、Tは光パルス400の周期(T=1/f)であり、Δtoutは光パルス401のパルス幅である。
【0031】
光パルス圧縮器303は、高非線形ファイバ(Higly Nonlinear fiber: HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器としてのコム状ファイバ(comb-like profiled fiber: CPF)圧縮器310を備え、このコム状ファイバ圧縮器310により、光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスを圧縮するようになっている。図3において、符号402は、光増幅後の光パルス401がコム状ファイバ圧縮器310により圧縮された後の光パルス(出力光)である。
【0032】
励起制御部304は、光ファイバ増幅器302を励起する2つの半導体レーザ311,312と、光ファイバ増幅器302による光増幅後における光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段としてのフォトダイオード313と、半導体レーザ311,312を制御する制御ユニット305とを備える。半導体レーザ311,312にはそれぞれ、制御ユニット305からの制御信号に応じた駆動電流を各半導体レーザに供給する駆動回路314,315が設けられている。
【0033】
本実施形態のパルス光源300Aでは、光ファイバ増幅器302の励起方式を双方向励起方式としている。つまり、光ファイバ増幅器302の励起に使用する光(励起光)を被増幅光(信号光)である光パルスの進行方向と同方向に光ファイバ増幅器302に入射させる前方励起と、その進行方向と逆方向に励起光を光ファイバ増幅器302に入射させる後方励起とを同時に利用する構成になっている。
【0034】
そのため、パルス光源300Aには、励起光を光パルスの進行方向に光ファイバ増幅器302に入射させる励起用の半導体レーザ311と、その逆方向に励起光を光ファイバ増幅器302に入射させる励起用の半導体レーザ312とが設けられている。光パルス発生器306から出力される光パルスを光ファイバ増幅器302に伝搬する光ファイバ320には、その光パルスをフォトダイオード321へ分岐する光分岐器322と、その光パルスと半導体レーザ311からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ323とが設けられている。
【0035】
光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスは、光ファイバ324を伝搬してコム状ファイバ圧縮器310に入り、この圧縮器で圧縮された光パルスは光ファイバ325を伝搬して光パルス圧縮器303から出力されるようになっている。光ファイバ324には、半導体レーザ312からの励起光を光ファイバ増幅器302へ入射させるWDN光ファイバカップラ326と、光ファイバ増幅器302で光増幅された光パルスをフォトダイオード313へ分岐する光分岐器327とが設けられている。
【0036】
励起制御部304の制御ユニット305は、各種の演算処理を行うCPU330、ROM331、RAM332、図示を省略したD/A変換器、A/D変換器などを備える。
【0037】
CPU330は、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを光パルス発生器306へ一定時間ごとに出力するようになっている。光パルス発生器306は、その指令Aを受けると、繰り返し周波数を表すデジタル信号Bを制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0038】
また、CPU330は、光ファイバ増幅器302へ励起光を出力する半導体レーザ311,312の電流制御初期値を、取得した繰り返し周波数fに応じて設定するとともに、設定した電流制御初期値に応じた駆動信号を駆動回路314,315へ出力して半導体レーザ311,312の駆動制御を開始するようになっている。この開始後、CPU330は、フォトダイオード313で検出した光増幅後における光パルスのパワーから、平均パワーを算出し、この平均パワーを繰り返し周波数fで割った値である平均パルスエネルギーを算出する(1式参照)。そして、この算出した平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザ311,312をフィードバック制御するようになっている。
【0039】
Eout=Pout/f・・・(1式)
ここで、Eoutは平均パルスエネルギーであり、Poutは平均パワーである。
【0040】
ところで、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの平均パワーは、繰り返し周波数fが大きくなるほど大きくなる。光ファイバ増幅器302で増幅される光パルスの平均パワーの利得は一定にしなくてはならないので、光パルスの平均パワーが大きくなるほど、半導体レーザ311,312から光ファイバ増幅器302へ出力される励起光に必要な光パワーも大きくする必要がある。各半導体レーザ311,312の入力電流値に対する励起光パワー出力値の特性(I−L特性)は固有である。したがって、半導体レーザ311,312の電流制御初期値は各半導体レーザ311,312単体ごとに予め実験的に測定した上で、繰り返し周波数fに応じた最適値を例えばRAM332にデータテーブルとして記憶させておく。この場合、CPU330は、そのデータテーブルを参照して繰り返し周波数fに応じた電流制御初期値を設定する。なお、このデータテーブルには、繰り返し周波数が可変である全ての周波数f1〜fnにそれぞれ対応する電流制御初期値が含まれている。
【0041】
このように、本実施形態では、光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レー311,312を制御するが、この制御をAEC(Auto Energy Control)制御と呼ぶことにする。
【0042】
次に、制御ユニット305のCPU330が実行するAEC制御の処理手順を図4に示すフローチャートに基いて説明する。
【0043】
図4に示すAEC制御の処理は、パルス光源300Aの電源が投入されると、一定時間ごとに繰り返し実行される。
【0044】
まず、ステップS1では、指令Aを光パルス発生器306へ一定時間ごとに出力して、光ファイバ増幅器302に入力される光パルスの繰り返し周波数fを取得する。このとき、光パルス発生器306は、その指令Aを受けると、繰り返し周波数fを表すデジタル信号Bを制御ユニット305へ出力する。CPU330は、そのデジタル信号Bにより繰り返し周波数fを取得する。
【0045】
次に、ステップS2に進み、光ファイバ増幅器302へ励起光を出力する半導体レーザ311,312の電流制御初期値を、取得した繰り返し周波数fに応じて設定する。
【0046】
次に、ステップS3に進み、ステップS2で設定した電流制御初期値で半導体レーザ311,312の駆動する。このとき、ステップS2で設定した電流制御初期値に応じた駆動信号を駆動回路314,315へ出力して半導体レーザ311,312の駆動制御を開始する。
【0047】
次に、ステップS4に進み、光ファイバ増幅器302の出力側で光増幅後の光パルスの平均パワーを検出する。ここでは、フォトダイオード313の光電出力に基き、フォトダイオード313で検出した光増幅後における光パルスのパワーから、上記1式における平均パワーを算出する。
【0048】
次に、ステップS5で検出した平均パワーを繰り返し周波数fで割った値である平均パルスエネルギーを、上記1式により算出する。
【0049】
次に、ステップS5で算出した平均パルスエネルギーが一定になるように半導体レーザ311,312をそれぞれフィードバック制御する。
【0050】
この後、図4に示す処理を一旦終了する。
【0051】
このようなAEC制御を行うことにより、パルス光源300Aで発生する超短パルスの光出力例を図5(a)、(b)に示してある。図5(a)は出力光パルスの自己相関波形を示すグラフであり、(b)は出力光パルスの光スペクトルを示すグラフである。
【0052】
また、このパルス光源300Aにおける、パルス幅とパルスエネルギーの繰り返し周波数依存性を図6に示してある。図6において、黒丸と黒四角は、繰り返し周波数fが500MHz、600MHz、700MHz、800MHz、900MHzおよび1000MHzのときの出力光パルスのパルスエネルギとパルス幅をそれぞれ示している。図6から、入力する光パルス列400の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができることが分かる。
【0053】
以上説明した第1実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0054】
・上記AEC制御により、光パルス400(図3参照)のエネルギーを光ファイバ増幅器302により光増幅する際に、光増幅された光パルス401(図3参照)の平均パルスエネルギーが一定になるように、光ファイバ増幅器302の励起を制御する。これにより、光パルス圧縮器303に入力される光パルス401のパルス幅Δtout
が繰り返し周波数fが変わることで変わっても、光パルス圧縮器303における非線形効果を利用したパルス圧縮の効果が光パルス列の繰り返し周波数に依存しないで一定になる。したがって、入力する光パルス列400の繰り返し周波数を変えても、出力パルス特性(パルスエネルギーとパルス幅)が一定の超短パルスを発生することができ、利便性の向上を図ることができる。
【0055】
・断熱ソリトン圧縮技術の一つとして、コム状分散プロファイルファイバ(comb-like disprsion profiled fiber:CDPF)を用いる方法が知られている。このCDPFは、非線形媒質としてゼロ分散シフトファイバ(dispersion sifted-fiber: DSF)を、分散媒質として単一モードファイバ(single mode fiber: SMF)を用いて、それらを融着接続して作製される。本実施形態では、高非線形ファイバ(HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるコム状ファイバ(CPF)圧縮器310により、光ファイバ増幅器302で光増幅された各光パルスを圧縮する。このコム状ファイバ圧縮器310では、DSFの代わりにHLNFを用いるため、分散だけでなく非線形定数もコム状(くし状)のプロファイルを持つ。また、非線形媒質として分散値が小さく非線形定数が大きい光ファイバを用いるため、理想的な非線形媒質を得ることができるとともに、コム状ファイバ圧縮器310の短尺化を図ることができる。また、ステップ状分散プロファイルファイバ(step-like disprsion profiled fiber:SDPF)と同じように分散値の大きく異なる光ファイバを多段接続しているため、誘導ブリルアン散乱の抑制にも優れている。さらに、コム状ファイバ圧縮器310は、分散プロファイルを柔軟に設計できるため、製造上の観点で優れている。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るパルス光源300Bを図7に基いて説明する。
【0056】
このパルス光源300Bは、パルス発生手段としてのパルス発生器301は、分布帰還型半導体レーザ(distributted feedback laser diode: DFB-LD)500と、電気パルスを出力して分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動する電気パルス発生器(electric pulse sourse; EPS)501とを備える。
【0057】
電気パルス発生器501は、繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する電気パルス発生器(pulse pattern generator: PPG)と、その電気パルスを増幅する増幅器とを備える。
【0058】
このパルス発生器301は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス発生器501により電気パルス変調をかけて、繰り返し周波数fが可変の光パルス列を分布帰還型半導体レーザ500から出力させるようになっている。つまり、パルス発生器301から出力される光パルス列の繰り返し周波数fは、電気パルス発生器501から出力され、分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動するための電気パルスの繰り返し周波数により制御されるようになっている。
【0059】
また、このパルス光源300Bでは、電気パルス発生器501は、制御ユニット305のCPU330から光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを受けると、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器501から直接、制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0060】
パルス光源300Bのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0061】
以上説明した第2実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0062】
・電気パルス発生器501から分布帰還型半導体レーザ500へ出力される電気パルスの繰り返し周波数を変えることで、分布帰還型半導体レーザ500から繰り返し周波数fが可変の光パルスを発生させることができる。
【0063】
・制御ユニット305は、電気パルス発生器501から直接出力されるデジタル信号により光パルスの繰り返し周波数fを取得することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係るパルス光源300Cを図8に基いて説明する。
【0064】
前記励起制御手段としての励起制御部305は、光パルス発生器306から出力される繰り返し周波数fが可変の光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段としての前記フォトダイオード321を含む。
【0065】
また、制御ユニット305は、フォトダイオード321で受光した各パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数fを求めるように構成されている。
【0066】
パルス光源300Cのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0067】
以上説明した第3実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0068】
・制御ユニット305は、フォトダイオード321で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して光パルス列の繰り返し周波数fを求めるので、光パルス発生器306との間で、繰り返し周波数fを取得するためのインターフェイスが不要になる。つまり、制御ユニット305のCPU330からパルス発生器306へ光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを送る信号線と、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器501から制御ユニット305へ送る信号線などが不要になり、その分コストの低減を図れる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係るパルス光源300Dを図9に基いて説明する。
【0069】
このパルス光源300Dでは、パルス発生器301は、分布帰還型半導体レーザ500と、電気パルスを出力して分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動する電気パルス発生器502と、分布帰還型半導体レーザ500から出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバ(dispersion compensating fiber: DCF)510とを備える。
【0070】
電気パルス発生器502は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス変調(強度変調)をかけて繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する電気パルス発生器(pulse pattern generator: PPG)を備える。
【0071】
このパルス発生器301は、光源である分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス発生器501により電気パルス変調をかけて、繰り返し周波数fが可変の光パルス列を分布帰還型半導体レーザ500から出力させるようになっている。つまり、パルス発生器301から出力される光パルス列の繰り返し周波数fは、電気パルス発生器502から出力され、分布帰還型半導体レーザ500を利得スイッチ駆動するための電気パルスの繰り返し周波数により制御されるようになっている。
【0072】
また、パルス光源300Bでは、電気パルス発生器502は、制御ユニット305のCPU330から光パルスの繰り返し周波数fを取得するための指令Aを受けると、その繰り返し周波数fを表すデジタル信号を電気パルス発生器502から直接、制御ユニット305へ出力するようになっている。
【0073】
また、パルス光源300Dの光パルス圧縮器303は、光増幅手段として、上記第1実施形態で用いているエルビウムドープ光ファイバ増幅器302に代えて、正常分散光増幅器(ND-EDFA)340を用いている。この光パルス圧縮器303では、パルス発生器301から出力されるチャープ補償された光パルス列の各光パルスのパルスエネルギーが、正常分散光増幅器340によりCPF圧縮に最適なパルスエネルギーまで増幅された後、コム状ファイバ圧縮器310に入力されるようになっている。
【0074】
この光パルス圧縮器303はさらに、コム状ファイバ圧縮器310の出力側に接続された正常分散光増幅器350、351と、単一モードファイバ352とを備えている。つまり、光パルス圧縮器303では、コム状ファイバ圧縮器310によるパルス圧縮と、2つの正常分散光増幅器350、351と単一モードファイバ352によるパルス圧縮とを行うようになっている。正常分散光増幅器350、351はそれぞれ、半導体レーザ600、601により励起されるようになっている。図9において、符号602、603は、制御ユニット305からの制御信号に応じた駆動電流を各半導体レーザ600、601に供給する駆動回路である。
【0075】
そして、コム状ファイバ圧縮器310と正常分散光増幅器350を接続する光ファイバ610には、半導体レーザ600からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ701が設けられている。正常分散光増幅器350と正常分散光増幅器351を接続する光ファイバ611には、半導体レーザ601からの励起光を合波するWDN光ファイバカップラ702が設けられている。正常分散光増幅器351と単一モードファイバ352は光ファイバ612により接続されている。
【0076】
パルス光源300Dのその他の構成は、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aと同様である。
【0077】
以上説明した第4実施形態によれば、上記第1実施形態の奏する作用効果に加えて、以下の作用効果を奏する。
【0078】
・正常分散光増幅器340によりチャープ補償された光パルス列をパルス発生器301から出力させることができる。
【0079】
・光パルス圧縮器303では、コム状ファイバ圧縮器310によるパルス圧縮と、2つの正常分散光増幅器350、351と単一モードファイバ352によるパルス圧縮とを行うことで、上記第1実施形態に係るパルス光源300Aよりもパルス幅の小さい超短パルスを発生することができる。
(第5実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態による超短パルス光源を用いたシステムの構成を概略的に示すブロック図である。図10において、要素番号1は電気パルス列を出力する電気パルス源または電子装置であり、要素番号2は、要素1からの電気パルス列を受信して、対応する光パルスを出力するパルス光源であり、要素番号3は、パルス光源2からの光パルスを受信し、パルス幅を圧縮する光パルス圧縮装置である。パルス光源2と光パルス圧縮装置3とを一体に形成し、全体として超短パルス光源4としてもよい。また、電気パルス源または電子装置1が専ら超短パルス発生のための電気パルスを出力する回路であり、超短パルス光源4に統合した形で形成された場合、図10全体を超短パルス光源と見なすべきである。
【0080】
光パルス圧縮装置3は、基本的には、パルス光源2からの光パルスを受信して増幅する
エルビウム添加ファイバ(erbium-doped fiber:EDF)32を用いた光増幅器30、および光増幅器30(または、EDF32)の出力と光ファイバを介して直列に接続された櫛形分散配置ファイバ(comb-like dispersion profiled fiber:CDPF)34から構成される。このEDF32とCDPF34との組み合わせにより、パルス光源2からの光パルスは、当業者には周知のごとく、EDF32により増幅され、CDPF34により非線形効果と分散補償を繰り返し受けることにより、パルス幅が圧縮される。EDF32としては、例えば、正常分散EDF(ND(normal dispersion)‐EDF)を使用することができる。
【0081】
第5実施形態によれば、光パルス圧縮装置3は、さらにEDF32の直前に挿入されたWDM(波長分割多重)カプラ42、42a、カプラ42の合波用端子に接続されたレーザダイオード(LD)44、レーザダイオード44の他端に接続されたLD駆動回路46,カブラ42aに接続され、レーザダイオード44の発する光りをモニタできるように配置されたフォトダイオード(PD)48、フォトダイオード48の他端に接続された駆動パワー検出器50,EDF32の出力側に挿入された光分波器52,光分波器52の分波出力端子と光学的に結合された平均出力パワー測定器54,およびLD駆動回路46の制御入力端子と駆動パワー検出器50の出力端子と平均出力パワー測定器54の出力端子とが接続されたコントローラ60から構成される。
【0082】
電気パルス源または電子装置1は、制御部12を含み、制御部12は、要素1が出力する電気パルスの繰り返し周波数fを出力する。特に、繰り返し周波数が変化する場合、電気パルス源または電子装置1は、この変化に追随して頻繁に周波数fを出力することが好ましい。この出力fは、コントローラ60に供給される。
【0083】
電気パルス源または電子装置1は、電気パルス列を出力するものであれば、種々のパルス発生器、パルスパタン発生器、またはその他の電子装置など何でもよい。パルス光源2は、入力される電気パルスに応じて光パルスは発生するものであれば何でもよく、例えば、利得スイッチ駆動した分布帰還型半導体レーザ(distributed-feed back laser diode:DFB−LD)などで構成される。平均出力パワー測定器54は、当分野では周知のようにEDF32の出力から分岐した光パルス信号を光電変換して得た光電変換信号から平均パルス電力Eaを求めてコントローラ60に渡す。
【0084】
コントローラ60は、周知のように図示しないCPU(中央情報処理装置)の他、制御に必要なプログラム64およびデータを格納する不揮発性メモリ62などを備える。不揮発性メモリ62には、起動時に駆動パワー検出器50からの駆動パワーPdの制御目標値となる初期値P、および稼働中にEDF32から出力される各光パルスのパルスエネルギーの制御目標値Etを繰り返し周波数fに対応づけて収容するデータテーブル62を格納するものとする。
【0085】
図11は、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納されるデータテーブル66の構造例とこれに関連するデータの流れを示す図である。図11に示したデータテーブル66は、パルスエネルギーとして予め3つの設定値Etα、ETβおよびETγが用意されている場合の例である。利用者またはホストシステムは、これらの1つを選択したり、あるいは所望のパルスエネルギー値を入力することにより、パルスエネルギーを設定することができるものとする。データテーブル66は、繰り返し周波数f1,f2,...の各々に対するレコードからなる。各レコードfi(i=1,2,...)は、起動時に駆動パワー検出器50からの駆動パワーPdの制御目標値となる初期値Pi、選択可能なパルスエネルギー目標値Etαi、ETβiおよびETγiから構成される。
【0086】
このように、目標とする1つのパルスエネルギーEtαに対し、繰り返し周波数f1,f2,...の各々に対応した制御目標値Etα1,Etα2,...が必要となる。このようにする必要があるのは、パルス光源2からの入力パルスのパルスエネルギーが例えば0.1pJでパルス幅が10psの場合、これを光パルス圧縮装置3で圧縮して、例えばパルスエネルギーが1pJでパルス幅が1psの超短パルスを得る場合を考えると、繰り返し周波数fが500MHzであれば、EDF32は50μWの入力電力を500μWの出力電力に増幅するためにレーザダイオード44に100nAの電流を流す必要があるが、fが1GHzであれば、EDF32は100μWの入力電力を1000μWの出力電力まで増幅するためにレーザダイオード44に200nAの電流を流す必要があるからである。
【0087】
また、コントローラ60の図示しないRAM(random access memory)には、上述のように電気パルス源または電子装置1などの外部装置から供給される繰り返し周波数f(繰り返し周波数の受信値fと称する)を格納する記憶箇所682,ホストシステムまたは利用者から送られるパルスエネルギーの設定目標値Etを格納する記憶箇所684、記憶箇所682の繰り返し周波数受信値fのコピーを繰り返し周波数の現在値fcとして格納する記憶箇所682a、および記憶箇所684のパルスエネルギーの設定目標値Etのコピーを現在の設定目標値として格納する記憶箇所684aが含まれる。
【0088】
以上のように構成された光パルス圧縮装置3の動作を図11および図12を参照しながら説明する。図12〜図15のフローチャートは、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納されるプログラム64の処理の流れを表すものである。
【0089】
図12は、コントローラ60が、図10の超短パルス光源4または光パルス圧縮装置3を含むホストシステムから供給されるパルスエネルギー制御目標値(設定目標値)Etを受信した際に実行するパルスエネルギー目標値受信割り込み処理ルーチンのフローチャートである。図12において、コントローラ60は、設定目標値Etを受信すると、ステップ102において、受信した設定目標値Etを所定の記憶箇所684に記憶し、後述のメインプログラム(図14)に戻る。
【0090】
図13は、図10のコントローラ60が、繰り返し周波数f(受信値)を取得した際に、呼び出して実行する繰り返し周波数受信割り込み処理ルーチンのフローチャートである。図13において、コントローラ60は、繰り返し周波数fを取得する(図10の例では、電気パルス源または電子装置1から受け取る)と、取得した繰り返し周波数受信値fを記憶箇所682に記憶し、図14のメインプログラムに戻る。
【0091】
図14は、図10のコントローラ60の不揮発性メモリ62に格納された増幅器制御プログラム64のメインプログラムの処理の流れを示すフローチャートである。図14のプログラムは、システム起動と同時に呼び出されて実行される。
【0092】
図14において、コントローラ60は、まず初期化処理の一部として、ステップ110において、設定目標値Etが格納される記憶箇所684をクリアする。次に、判断ステップ112において、繰り返し周波数受信値fを格納場所682から読み出し(以降、単に「繰り返し周波数受信値f682を読み出す」という具合に記す)、受信値fがテーブル66にあるか否かを判断する(図11)。受信値fがテーブル66にある場合、ステップ114において受信値f(この場合、fi(i=1,2,...))に対応する、レーザダイオード44駆動制御(この制御は、LD駆動回路46、レーザダイオード44、フォトダイオード48、駆動パワー検出器50およびコントローラ60の閉ループで行われる)の目標値の初期値Piを該当する初期値Pとして読み出す。
【0093】
このとき、記憶箇所682の受信値fを繰り返し周波数の現在値fcとして記憶箇所682aに記憶することが望ましい。これにより、以降の処理において記憶箇所682と682aを比較することにより、新たな受信値fを受け取ったか否かを判定することができる。
【0094】
判断ステップ112において、受信値fに一致するfiがない場合、受信値fに最も近い2つの初期値fiとfi+1(i+1は添え字である)を用いて補完し、この補完値を該当の初期値Pとする。そして、この初期値Pを目標値として起動時の帰還制御を行うために、ステップ118において、LD駆動回路46の設定値Vを所定の初期値(例えば、バイアス値)から単位量ずつ増加させながら、目標値の初期値Pと駆動パワー検出器50から送られる駆動パワーPdとを比較し、ステップ120において、駆動パワーPdが初期値Pに所定の範囲THpまで近づいたかどうか、即ち、P−Pd≦THpかどうか判断する。P−Pd≦THとなるまで、ステップ118を行い、P−Pd≦THpとなった場合、LD駆動回路46の初期設定が完了したことになるので、次のステップ122に進み、稼働状態となる。
【0095】
ステップ122において、使用者またはホストシステムにより設定されるパルスエネルギー目標値Etの格納場所684を読み出して、目標値Etが設定されたか否かを判断する。これは、記憶箇所684にステップ110のクリア値が残っているか否かで判断できる。
【0096】
目標値Etが設定されていない場合、ステップ123において、繰り返し周波数fの受信に対応する処理を行う。即ち、記憶箇所682と682aとを比較することにより、新たな繰り返し周波数fを受信したかどうかを判断し、受信していなか、ステップ112の時と同じ値を受信した場合は何もせずステップ123を終えるが、新たな繰り返し周波数fを受信している場合、ステップ114または116と同じ要領で該当する初期値Pを決定し、レーザダイオード44の駆動パワーPdがこの初期値Pに収束するように帰還制御を行い、|P−Pd|≦THp(現在の初期値Pが以前の値より小さい場合もあるので、P−Pdの正負によって増減を行う)となった場合、ステップ123を終了する。新たな繰り返し周波数f受信したか否かに関わらず、ステップ123の終了後はステップ122に戻る。
【0097】
以上のように、本発明によれば、EDF32または光増幅器30から出力される各パルスのエネルギー(パルスエネルギー)の目標値が設定されていない起動の直後は、繰り返し周波数に応じた初期値Pをデフォルトの目標値としてレーザダイオード44の駆動制御を行い、設定目標値が設定されるまで、繰り返し周波数受信値fが変更されるたびに最適な初期値Pに更新されるので、EDF32または光増幅器30から出力される光パルスのエネルギーが周波数に依らず一定に保持される。
【0098】
ステップ122において、記憶箇所684に設定目標値が設定されている場合、判断ステップ124に進む。ステップ124において、繰り返し周波数受信値f682および設定目標値Et684を読み出し、これらがデータテーブル66にあるか否かを判断する。両方ともデータテーブル66にある場合、ステップ126において、データテーブル66から該当する目標値Etj,i(j=α,β,γ、i=1,2,...)を「現在の目標値Eta」として読み出し、このときの記憶箇所682および694の値(即ち、繰り返し周波数受信値fおよび設定目標値Et)を対応する記憶箇所682aおよび684aにそれぞれコピーする。
【0099】
一方、判断ステップ124において、繰り返し周波数受信値f682、設定目標値Et684またはこれらの両方がデータテーブル66にない場合、ステップ128において、データテーブル66の補間を行う。すなわち、設定目標値Etのみが対応するEtj(j=α,β,γ)がある場合、繰り返し周波数受信値fに最も近い2つの繰り返し周波数fiおよびfi+1のレコードのEtjフィールドの目標値Etj,iおよびEtj,i+1を用いて補間値を求める。繰り返し周波数受信値fのみが対応するfi(i=1,2,...)がある場合、設定目標値Etに最も近い2つの設定目標値EtjおよびEtj+1のフィールドのfiレコードの目標値Etj,iおよびEtj+1,iを用いて補間値を求める。同様に、繰り返し周波数受信値fと設定目標値Etの両方ともデータテーブル66にない場合、上述の補間を組み合わせることにより、4つの目標値Etj,i,Etj,i+1,Etj+1,iおよびEtj+1,i+1を用いて補間を行い、補間値を求める。このようにして求めた補間値を現在の目標値Etaとする。
【0100】
このように、本発明によれば、繰り返し周波数および設定目標値に予め用意されたデータがない場合も、補完を行うことにより、用意されたデータから補完可能な範囲であれば、目標値が無段階に設定することができる。したがって、パルスエネルギーまたはパルス幅の設定の自由度が増すので、広い用途に対応することができる。なお、補完には、内挿法にみならず、外挿法もあり得るので、補完可能な範囲には、用意されたデータから外挿法で補完可能な範囲も含まれると考えるべきである。
【0101】
なお、ステップ126および128の何れの場合も、目標値を決定した場合、図2に示すように、記憶箇所682および694の値(即ち、繰り返し周波数受信値fおよび設定目標値Et)を対応する記憶箇所682aおよび684aにそれぞれコピーする。ステップ126または128の終了後、ステップ130に進む。
【0102】
ステップ130以降において、LD駆動装置46、レーザダイオード44、EDF32
、平均出力パワー測定器54、およびコントローラ60からなる閉ループにより帰還制御を行う。この場合、平均出力パワー測定器54から受信した平均出力パワーEaを繰り返し周波数fで割った商(即ち、光パルス当たりのエネルギー)Eをパルスエネルギーとして求め、このパルスエネルギーEに基づいて帰還制御を行う。
【0103】
即ち、判断ステップ130において、現在の目標値EtaとパルスエネルギーEとを比較し、EtaとEとの差が所定の閾値THe以下であるか否か、即ち|Eta−E|≦THeか否かを判断する。判断結果がYESである場合、後述の入力チェック(ステップ134)を行う。判断ステップ130において、EtaとEとの差が所定の閾値THeを超える場合(NOの場合)、ステップ132において、Eta−Eが正であるか否かを判断し、YESの場合(即ち、Eta−EがTHeを超えている場合)、ステップ136において、LD駆動装置46の制御値Vを単位量だけ大きくする。ステップ132において、判断結果がNOの場合(E−EtaがTHeを超えている場合)、LD駆動装置46の制御値Vを単位量だけ大きくする。判断ステップ130の結果がYESの場合、およびステップ136または138の終了した場合、何れも入力チェックステップ134に進む。
【0104】
図15は、図14の入力チェックステップ134の詳細を示すフローチャートである。図15では、判断ステップ140において、記憶箇所682aに格納されている繰り返し周波数の現在値fcは、対応する記憶箇所682に格納されている繰り返し周波数受信値fと同じかどうか判断する。同じなら、更なる判断ステップ142において、記憶箇所684aに格納されている現在の設定目標値Etcは、対応する記憶箇所684に格納されている受信した設定目標値Etと同じかどうか判断する。同じならば、設定値に変化はないので、何もせず図3Cのステップ130へ戻る。
【0105】
判断ステップ140または142においてNOの場合、即ち、何れかの設定値に変更があった場合、図14のステップ124へ戻る。
【0106】
以降、ステップ124以降の処理を繰り返すことにより、光増幅器30またはEDF32から出力される光パルスの平均エネルギーEaではなく、光増幅器30またはEDF32から出力される光パルスのパルス当たりのパルスエネルギーE(=Ea/f)にもと図いて、繰り返し周波数fに関わりなくパルスエネルギーEが一定になるように制御を行う。パルスエネルギーEが一定であるからパルス幅も一定であることは言うまでもない。
<第5実施形態の変形例>
第5実施形態では、繰り返し周波数fの情報を電気パルス源または電子装置1から得ていたが、外部から繰り返し周波数fを取得する別の形態も考えられる。
【0107】
例えば、図16は、図10のパルス光源2の別の形態を示すブロック図である。同図に示すように、パルス光源2が制御部22を備え、自分が出力する光パルスの繰り返し周波数fを制御部22が出力するように構成してもよい。
【0108】
また、図17は、図10の電気パルス源または電子装置1とパルス光源2との組み合わせに代えて、使用可能な電子光学装置の構成例を示すブロック図である。図17に示すように、電子光学装置1aが、パルス光源2を含み、制御部12aが繰り返し周波数fを出力するような構成もあり得る。
(第6実施形態)
以上述べた第5の実施形態およびその変形例では、超短パルス光源4の光パルス圧縮装置3の光増幅器30の増幅制御部40のコントローラ60が繰り返し周波数fを外部から受信していたが、増幅制御部40の内部で繰り返し周波数fを得ることが可能である。図18は、本発明の第6の実施形態により繰り返し周波数fを演算により求める光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図である。図18の増幅制御部40aは、平均出力パワー測定器54で得た光電変換信号Seの出力をコントローラ60aに伝える導線200を備え、不揮発性メモリ64aのプログラム64aが繰り返し周波数f算出ルーチン202を備えたことを除けば、図10の増幅制御部40と同一である。この相違にともない、図18では、光パルス圧縮装置を3から3aに、光増幅器を30から30aに変更してある。繰り返し周波数f算出ルーチン202は、当御者には周知のように、EDF32の出力光パルスに対応する光電変換信号Seを高速フーリエ変換(first Fourier transform:FFT)することにより、光パルスの繰り返し周波数fを求める。
<第6実施形態の変形例>
しかし、繰り返し周波数fが急激に変化し、その変化に充分追随して出力光パルスのパルスエネルギーを一定に保つには、ソフトウェア演算で繰り返し周波数fを算出したのでは間に合わない場合もある。そのよう場合、繰り返し周波数の算出をソフトウェアではなく、ハードウェアで行うことが好ましい。この場合、には、f演算ルーチン202を設ける代わりに、繰り返し周波数算出処理の一部(例えば、FFT演算)または全部をFFT演算部(図示せず)または繰り返し周波数演算部(図示せず)として導線200に挿入すればよい。
(第7実施形態)
以上述べた、第5及び第6実施形態とそれらの変形例では、光パルス圧縮装置3は光増幅器30を1しか備えていない。しかし、光パルス圧縮装置は、複数の光増幅器を用いて種々の形態で実現可能である。
【0109】
図19は、本発明の第7実施形態により複数の光増幅器を用いた光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図である。図19において、光パルス圧縮装置3bは、図10の光パルス圧縮装置3に2つのEDF32とその後段に配置されたシングルモードファイバ(SMF)36を追加した構成である。このような場合、本発明の増幅制御部40または40aを各EDF32ごとに備えればよい。これにより、EDF32による光増幅器ごとに、出力光パルスのパルスエネルギーEまたはパルス幅を一定に保つことが可能となる。
【0110】
以上は、本発明の説明のために実施の形態の例を掲げたに過ぎない。したがって、本発明の技術思想または原理に沿って上述の実施の形態に種々の変更、修正または追加を行うことは、当業者には容易である。
【0111】
例えば、図18に示す実施形態において繰り返し周波数fをEDF32の出力光パルスを光電変換した電気信号から求めたが、EDF32の入力光パルスを光電変換して求めることも可能である。
【0112】
(変形例)
なお、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
【0113】
・上記第2、第4実施形態のパルス発生器301では、電気パルス発生器501、502により、分布帰還型半導体レーザ500に電気パルス変調(直接強度変調)をかけて繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生するようになっている。このような直接強度変調方式に代えて、LN(LinbO3)強度変調器等の外部変調器により光源からの連続光を変調する外部変調方式を用いても良い。
【0114】
・上記第1、第3実施形態において、パルス発生器(OPS)306は、上記第2、第4実施形態のパルス発生器301のような直接強度変調方式と、上記外部変調方式のいずれにより構成しても良い。
【0115】
・上記第1、第2および第4実施形態では、CPU330は、メモリに記憶されたデータテーブルを参照して繰り返し周波数fに応じた電流制御初期値を設定するようになっている。これらの各実施形態において、光ファイバ増幅器302、340の各出力(利得)特性も半導体レーザと同様に固有であるので、繰り返し周波数fと使用する光ファイバ増幅器の特性とに応じた電流制御初期値をデータテーブルを参照して読み出すように構成しても良い。
【0116】
・上記第1〜第4実施形態では、高非線形ファイバ(HNLF)と単一モードファイバ(SMF)のペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器として、分散だけでなく非線形定数もコム状のプロファイルを持つコム状ファイバ圧縮器310を用いているが、本発明はこれに限定されない。コム状ファイバ圧縮器310に代えて、分散と非線形定数のプロファイルがコム状以外の形状のファイバ圧縮器を使用する場合にも本発明は適用される。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図2】(a)〜(f)は繰り返し周波数の異なる入力光パルスの光スペクトルをそれぞれ示すグラフ、(g)〜(l)は繰り返し周波数の異なる入力光パルスの自己相関波形をそれぞれ示すグラフ。
【図3】入力光パルスが増幅されてパルス圧縮される様子を示す説明図。
【図4】制御ユニットで実行するAEC制御の処理手順を示すフローチャート。
【図5】(a)は出力光パルスの自己相関波形を示すグラフ、(b)は出力光パルスの光スペクトルを示すグラフ。
【図6】出力光パルスの出力特性の繰り返し周波数依存性を示すグラフ。
【図7】本発明の第2実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図8】本発明の第3実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図9】本発明の第4実施形態に係る超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図10】本発明の第5実施形態による超短パルス光源の構成を示すブロック図。
【図11】図10の不揮発性メモリに格納されるデータテーブルの構造例とこれに関連するデータの流れを示す図。
【図12】ホストシステムから供給されるパルスエネルギー制御目標値(設定目標値)の受信時に実行される割り込み処理ルーチンのフローチャート。
【図13】コントローラが繰り返し周波数(受信値)を取得した際に実行する繰り返し周波数受信割り込み処理ルーチンのフローチャート。
【図14】図10のコントローラの不揮発性メモリに格納された増幅器制御プログラムのメインプログラムの処理の流れを示すフローチャート。
【図15】図14の入力チェックステップの詳細を示すフローチャート。
【図16】図10のパルス光源の別の形態を示すブロック図。
【図17】図10の電気パルス源または電子装置とパルス光源との組み合わせに代えて、使用可能な電子光学装置の構成例を示すブロック図。
【図18】本発明の第6実施形態により繰り返し周波数を演算により求める光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図。
【図19】本発明の第7実施形態より複数の光増幅器を用いた光パルス圧縮装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0118】
300A、300B,300C,300D…パルス光源300A、301…パルス発生器、302,340…光ファイバ増幅器、303…光パルス圧縮器、304…励起制御部、305…制御ユニット、306…光パルス発生器、310…コム状ファイバ圧縮器、311,312…半導体レーザ、312,313…フォトダイオード、350,351…正常分散光増幅器、352…単一モードファイバ、500…分布帰還型半導体レーザ、501,502…電気パルス発生器、510…分散補償ファイバ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段と、
前記光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段と、
前記光増幅手段で光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段と、
前記光増幅手段の励起を制御する励起制御手段と、を備え、
前記励起制御手段は、前記光増幅手段により光増幅された前記光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源。
【請求項2】
前記励起制御手段は、前記光増幅手段を励起する半導体レーザと、前記光増幅手段による光増幅後における前記光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段と、前記半導体レーザを制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記光増幅手段に入力される前記光パルスの繰り返し周波数を取得し、該取得した繰り返し周波数に応じた前記半導体レーザの電流制御初期値を設定するとともに、前記光パワー検出手段で検出した前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御することを特徴とする請求項1に記載のパルス光源。
【請求項3】
前記光パルス圧縮手段は、高非線形ファイバと単一モードファイバのペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器を備え、該ファイバ圧縮器により、前記光増幅手段で光増幅された前記光パルスを圧縮することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルス光源。
【請求項4】
前記光パルス発生手段は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能と、前記繰り返し周波数を表すデジタル信号を前記制御ユニットへ出力する機能とを有する光パルス発生器であることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項5】
前記パルス発生手段は、分布帰還型半導体レーザと、電気パルスを出力して前記分布帰還型半導体レーザを利得スイッチ駆動する電気パルス発生器とを備え、
前記電気パルス発生器は繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する機能を有し、
前記分布帰還型半導体レーザは、前記電気パルス発生器から出力される電気パルスの注入により、利得スイッチ発振を起こして繰り返し周波数が可変の光パルスを発生し、
前記電気パルス発生器は、前記光パルスの繰り返し周波数を表すデジタル値を直接、前記制御ユニットへ出力するようになっていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項6】
前記光パルス発生手段は繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能を有する光パルス発生器であり、
前記励起制御手段は、前記光パルス発生手段から出力される前記光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段をさらに含み、
前記制御ユニットは、前記光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して前記光パルス列の繰り返し周波数を求めることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項7】
前記光パルス発生手段は、前記分布帰還型半導体レーザが利得スイッチ駆動されて該半導体レーザから出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバをさらに含み、
前記光パルス圧縮手段は、前記光増幅手段としての正常分散光増幅器と、前記正常分散光増幅器の出力側に接続された前記ファイバ圧縮器と、前記ファイバ圧縮器の出力側に接続された正常分散光増幅器および単一モードファイバとを含むことを特徴とする請求項5に記載のパルス光源。
【請求項8】
繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生し、前記光パルス列の各光パルスを光増幅手段により光増幅し、光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源の制御方法であって、
光増幅された前記光パルス列の平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源の制御方法。
【請求項9】
前記光増幅手段に入力される前記光パルス列の繰り返し周波数を取得するステップと、
前記光増幅手段へ励起光を出力する半導体レーザの電流制御初期値を、取得した前記繰り返し周波数に応じて設定するステップと、
前記光増幅手段の出力側で前記光パルスの平均パワーを検出するステップと、
前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御するステップと、を備えることを特徴とする請求項8に記載のパルス光源の制御方法。
【請求項1】
繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生する光パルス発生手段と、
前記光パルス列の各光パルスを光増幅する光増幅手段と、
前記光増幅手段で光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用して圧縮する光パルス圧縮手段と、
前記光増幅手段の励起を制御する励起制御手段と、を備え、
前記励起制御手段は、前記光増幅手段により光増幅された前記光パルスの平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源。
【請求項2】
前記励起制御手段は、前記光増幅手段を励起する半導体レーザと、前記光増幅手段による光増幅後における前記光パルスの平均パワーを検出する光パワー検出手段と、前記半導体レーザを制御する制御ユニットとを備え、
前記制御ユニットは、前記光増幅手段に入力される前記光パルスの繰り返し周波数を取得し、該取得した繰り返し周波数に応じた前記半導体レーザの電流制御初期値を設定するとともに、前記光パワー検出手段で検出した前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御することを特徴とする請求項1に記載のパルス光源。
【請求項3】
前記光パルス圧縮手段は、高非線形ファイバと単一モードファイバのペアを多段に接続してなるファイバ圧縮器を備え、該ファイバ圧縮器により、前記光増幅手段で光増幅された前記光パルスを圧縮することを特徴とする請求項1又は2に記載のパルス光源。
【請求項4】
前記光パルス発生手段は、繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能と、前記繰り返し周波数を表すデジタル信号を前記制御ユニットへ出力する機能とを有する光パルス発生器であることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項5】
前記パルス発生手段は、分布帰還型半導体レーザと、電気パルスを出力して前記分布帰還型半導体レーザを利得スイッチ駆動する電気パルス発生器とを備え、
前記電気パルス発生器は繰り返し周波数が可変の電気パルスを発生する機能を有し、
前記分布帰還型半導体レーザは、前記電気パルス発生器から出力される電気パルスの注入により、利得スイッチ発振を起こして繰り返し周波数が可変の光パルスを発生し、
前記電気パルス発生器は、前記光パルスの繰り返し周波数を表すデジタル値を直接、前記制御ユニットへ出力するようになっていることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項6】
前記光パルス発生手段は繰り返し周波数が可変の光パルス列を前記光増幅器へ出力する機能を有する光パルス発生器であり、
前記励起制御手段は、前記光パルス発生手段から出力される前記光パルス列の各光パルスを受光する光パルス検出手段をさらに含み、
前記制御ユニットは、前記光パルス検出手段で受光した各光パルスの時間データを高速フーリエ変換して前記光パルス列の繰り返し周波数を求めることを特徴とする請求項2又は3に記載のパルス光源。
【請求項7】
前記光パルス発生手段は、前記分布帰還型半導体レーザが利得スイッチ駆動されて該半導体レーザから出力される光パルスのチャープ補償をする分散補償ファイバをさらに含み、
前記光パルス圧縮手段は、前記光増幅手段としての正常分散光増幅器と、前記正常分散光増幅器の出力側に接続された前記ファイバ圧縮器と、前記ファイバ圧縮器の出力側に接続された正常分散光増幅器および単一モードファイバとを含むことを特徴とする請求項5に記載のパルス光源。
【請求項8】
繰り返し周波数が可変の光パルス列を発生し、前記光パルス列の各光パルスを光増幅手段により光増幅し、光増幅された前記各光パルスを光ファイバの非線形効果を利用してパルス圧縮して超短パルスを発生するパルス光源の制御方法であって、
光増幅された前記光パルス列の平均パルスエネルギーが一定になるように、前記光増幅手段の励起を制御することを特徴とするパルス光源の制御方法。
【請求項9】
前記光増幅手段に入力される前記光パルス列の繰り返し周波数を取得するステップと、
前記光増幅手段へ励起光を出力する半導体レーザの電流制御初期値を、取得した前記繰り返し周波数に応じて設定するステップと、
前記光増幅手段の出力側で前記光パルスの平均パワーを検出するステップと、
前記平均パワーを前記繰り返し周波数で割った値である平均パルスエネルギーが一定になるように前記半導体レーザを制御するステップと、を備えることを特徴とする請求項8に記載のパルス光源の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−309215(P2006−309215A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−99992(P2006−99992)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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