パレット
【課題】本発明は、最前列にある板状体に当接する当接部材と、板状体の側面を支持するサイドストッパとを備えたパレットであって、パレットに収納された板状体を一枚ずつ良好に搬出することができるパレットを提供する。
【解決手段】本発明のパレット10によれば、パレット10が輸送先に輸送されると、積層体14の前面位置にあるセンターバー18の下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。これにより、センターバー18がアーム20、20を介して、積層体14の前面位置から上方位置に揺動する。このアーム20の揺動動作に連動して連動機構74が動作し、この連動機構74によってサイドストッパ28が、積層体14の側面から退避移動する。
【解決手段】本発明のパレット10によれば、パレット10が輸送先に輸送されると、積層体14の前面位置にあるセンターバー18の下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。これにより、センターバー18がアーム20、20を介して、積層体14の前面位置から上方位置に揺動する。このアーム20の揺動動作に連動して連動機構74が動作し、この連動機構74によってサイドストッパ28が、積層体14の側面から退避移動する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパレットに関し、特にガラス板等の板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス板を縦置きに複数枚積層して収容するパレットが開示されている。このパレットは、ガラス板の底部が載置される載置台と、ガラス板の背面を傾斜支持する背面支持体とから構成されている。また、この背面支持体には、積層されたガラス板の側面に沿ってガラス板の前面位置と背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結されている。このアームの先端部には、積層されたガラス板の最前列にあるガラス板の前面略中央部に当接されるセンターバーが設けられている。すなわち、特許文献1には、センターバー(当接部材に相当)を備えたパレットが開示されている。
【0003】
また、特許文献2にも同様に、ガラス板を縦置きに複数枚積層して収容するパレットが開示されている。このパレットには、積層されたガラス板の両側面に当接されてガラス板の横ずれを防止する側方押え板(サイドストッパに相当)が備えられている。
【0004】
ところで、ガラス板が収容されたパレットは、輸送車両に搭載されて輸送され、そして、輸送先においてガラス板は、ロボットによってパレットから一枚ずつ取り出されて搬出される。
【0005】
特許文献1のパレットによるガラス板の搬出方法は、輸送先のロボットによって、まず、センターバーが取り払われてガラス板の搬出を開始する。すなわち、ガラス板の前面位置にあるセンターバーの下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。これにより、センターバーがアームを介して、ガラス板の前面位置から背面支持体の上方位置に揺動する。これにより、センターバーによるガラス板の押さえ付けが解消されるので、積層されたガラス板を一枚ずつロボットアームによって搬出することができる。この際、ロボットアームに設けられている吸着部によって最前列に位置するガラス板を吸着し、このガラス板をパレットから搬出するが、この際にロボットは、吸着したガラス板を次のガラス板から剥離させるために左右に揺さぶって取り出すことがある。
【特許文献1】特開2006−315759号公報
【特許文献2】特開2005−298062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパレットは、センターバーを有してはいるものの、特許文献2に開示された側方押え板を有していないため、輸送車両による輸送時にガラス板がパレットに対して横ずれするという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のパレットは、側方押え板を有してはいるものの、ガラス板を左右に揺さぶって取り出す際に、ガラス板の側面が側方押え板に衝突し、良好に揺さぶることができず、また、ガラス板の側面が側方押え板に衝突してガラス板の側面が損傷するという問題があった。特許文献2の側方押え板は、ねじによってパレットに固定されたものなので、パレットから容易に取り外すことができず、よって、ガラス板の搬出に手間取るという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、センターバーに相当する当接部材と、側方押え板に相当するサイドストッパとを備えたパレットであって、パレットに収納された板状体を一枚ずつ良好に搬出することができるパレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットにおいて、前記パレットは、板状体の底部が載置される載置台と、板状体の背面を傾斜支持する背面支持体と、板状体の両側面に当接されるサイドストッパとによって構成され、前記背面支持体には、積層された板状体の側面に沿って板状体の前面位置と前記背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結され、前記アームの先端には、積層された板状体の最前列の板状体の前面に当接される当接部材が設けられ、前記アームとサイドストッパとは連動機構を介して連結され、前記連動機構は、前記アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパを、積層された板状体の側面から退避する方向に移動させることを特徴とするパレットを提供する。
【0010】
本発明によれば、輸送先のロボットアームによってパレットのアームを、板状体の前面位置から背面支持体の上方位置へ揺動させると、そのアームの揺動動作に連動してサイドストッパが、積層された板状体の側面から退避移動する。これにより、アームの前記揺動によって当接部材による板状体の押さえ付けが解消され、これと同時にサイドストッパによる板状体の側面支持も解消されるので、最前列の板状体をロボットアームで吸着保持して搬出する際に、吸着した板状体を左右に微少量揺さぶっても、板状体の側面がサイドストッパに衝突することはない。したがって、本発明のパレットによれば、当接部材とサイドストッパとを備えたパレットであっても、パレットに収納された板状体を、サイドストッパを外す等の余分の作業を経ることなく一枚ずつ良好に搬出することができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記連動機構は、前記サイドストッパを前記板状体の側面から退避する方向に付勢する付勢手段と、前記サイドストッパを前記付勢手段の付勢力に抗して前記板状体の側面に当接させる位置に位置決めする位置と該位置決めする位置から退避する位置とに移動自在な位置決め部材と、前記位置決め部材と前記アームとを連結し、アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に追従させて、位置決め部材を前記位置決めする位置から退避した位置に移動させる駆動部材と、を備えたことが好ましい。
【0012】
本発明の連動機構によれば、位置決め部材によってサイドストッパは、付勢手段の付勢力に抗して板状体の側面に当接される位置(以下「当接位置」)に位置決めされている。そして、アームが板状体の前面位置から背面支持体の上方位置へ揺動すると、それに追従して位置決め部材が駆動部材によって、サイドストッパを当接位置に位置決めする位置から退避移動される。これにより、サイドストッパは、位置決め部材による移動規制が解除されるので、付勢手段の付勢力によって、板状体の側面から退避した位置(以下「退避位置」)に移動する。これにより、簡単な構造の連動機構を提供できる。なお、駆動部材としてワイヤを使用した場合は、背面支持体及び載置台を構成する鋼材の凹状溝に沿ってワイヤを配設することが好ましい。これにより、ワイヤがパレット周りで引き回されることはなく、ワイヤが邪魔になることはない。
【0013】
また、駆動部材による位置決め部材の動作形態は、ワイヤのような牽引動作でもよく、ロッドを使用した場合の押し込み動作であってもよい。更に、サイドストッパの退避形態は、回動、直線移動の他、退避する形態であれば如何なる形態でもよい。
【0014】
また、本発明によれば、前記載置台には、該載置台における前記サイドストッパの取付位置を調整する位置調整部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、載置台に対するサイドストッパの位置を位置調整部材によって適宜調整することができる。位置調整部材として、例えば載置台に形成された複数のピン孔と、サイドストッパに設けられたピンとから構成し、複数のピン孔のうち、サイドストッパ取付用として最適な位置のピン孔を選択し、そのピン孔にピンを嵌合することにより、サイドストッパを載置台の最適な位置に取り付けることができる。また、載置台上にテーブルを敷設し、このテーブルに沿ってサイドストッパをスライド自在に設け、テーブルに形成された複数のピン孔のうち最適なピン孔を利用してサイドストッパをピンによって固定してもよい。このテーブルは、載置台に載置される板状体の幅方向に敷設される。これにより、板状体の幅寸法に応じた最適な位置にサイドストッパを取り付けることができる。
【0016】
また、本発明によれば、前記背面支持体には、前記板状体を収容した前記パレット全体を覆うシートカバーを支持するカバー支持部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、背面支持体に設けたカバー支持部材によって埃避け用のシートカバーを支持することにより、板状体を収容したパレット全体をシートカバーによって覆うことができる。カバー支持部材は、背面支持体の上部に取り付けられるとともに、板状体の側面に沿った方向に揺動自在に設けられることが好ましい。すなわち、シートカバーを掛ける場合には、カバー支持部材を揺動させて水平位置に位置させ、その上方から、底部が開放された立方体形状のシートカバーをパレットに被せる。これにより、シートカバーは、その上面がカバー支持部材に支持されてパレット全体を覆う。また、シート支持部材は、シートカバーが取り外された後に水平位置にあると板状体の搬出時、及び空のパレットの段積み時に邪魔になるので、上方に揺動させて背面支持体から退避した位置に位置させることが好ましい。
【0018】
また、本発明によれば、前記載置台の底部には凹部が形成され、複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された前記凹部に収容されることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、空のパレットを段積みして輸送する際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された凹部に収容されるため、段積み高さを抑えることができ、また、高さが制限された荷台において段積み台数を増やすことができるので、空のパレットの輸送効率を上げることができる。
【0020】
また、本発明によれば、前記背面支持体には、板状体を傾斜支持する傾斜支持体が背面支持体に沿って設けられるとともに、該傾斜支持体の背面側には凹部が形成され、複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットの前記傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された前記凹部に収容されることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、空のパレットを段積みして輸送する際に、下段のパレットの傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された凹部に収容されるため、パレットを側面(板状体の側面)から見たときの段積み幅が小さくなる。これにより、段積みされた複数台のパレットからなる段積みパレットをコンパクト化することができ、よって、空のパレットの輸送効率が上がる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明に係るパレットによれば、当接部材とサイドストッパとを備えたパレットであっても、パレットに収納された板状体を一枚ずつ良好に搬出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に係るパレットの好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、実施の形態のパレット10を示した全体斜視図であり、同図には透明の埃避けのシートカバー12がパレット10全体を覆うようにパレット10に被せられた図が示されている。また、図2には、パレット10からシートカバー12が取り外されたパレット10の全体斜視図が示されている。
【0025】
このパレット10は、板状体であるガラス板を複数枚縦置きに積層させた積層体14を支持するパレットであり、積層体14の最前列にあるガラス板の前面に緩衝部材56、56を介して当接されるセンターバー(当接部材)18と、センターバー18の両端部を支持するアーム20、20と、シートカバー12を支持するカバー支持部材22とから構成されている。以下、パレット10の説明において、パレット10の正面側を前方とし、パレット10の背面側を後方とし、パレット10の両側方向を左右方向として説明する。
【0026】
また、パレット10は、積層体14の底部が載置される載置台24と、積層体14の背面を支持する背面支持体26と、積層体14の両側面に当接されるサイドストッパ28、28とを有している。
【0027】
載置台24は、多数本の鋼材を組み付けて平面視矩形状に構成され、その上面に積層体14を傾斜して載置する長尺状の傾斜載置板30、30…が所定の間隔をもって3枚平行に固定されている。この傾斜載置板30は、傾斜した基台32と、基台32の上面に貼り付けられたゴム等からなる緩衝部材34とから構成され、緩衝部材34上に積層体14が載置されることにより、輸送車両の振動が積層体14に直接伝達されるのを防止している。
【0028】
また、載置台24の底部には図3に示すように立方状の凹状空間36が形成される。この凹状空間36は、パレットを段積する場合の下方のパレットにおけるサイドストッパ28、28と傾斜載置板30、30…とを収容するための凹部として利用される。すなわち、図4の如く空のパレット10、10…を上下に段積みして輸送する際に、下段のパレット10のサイドストッパ28、28と傾斜載置板30、30…とが、上段のパレット10の凹状空間36に収容される。これにより、パレット10の段積み高さを抑えることができ、また、高さが制限された輸送車両の荷台において段積み台数を増やすことができるので、空のパレットの輸送効率を上げることができる。
【0029】
サイドストッパ28、28は、図1、図2の如く載置台24の上面でその左右両側に取り付けられている。このサイドストッパ28、28は積層体14の左右両側面に当接されて載置台24上に対する積層体14の横ずれを防止するものである。このサイドストッパ28については後述する。
【0030】
背面支持体26は、載置台24の後方に立設された3本の傾斜支持体38、38…を有し、これらの傾斜支持体38、38…に積層体14の背面が傾斜して支持されている。なお、図1、図2では、積層体14の背面を、スペーサ40を介して支持しているが、積層体14の背面を傾斜支持体38、38…に直接当接して傾斜支持してもよい。また、傾斜支持体38、38…と傾斜載置板30、30…とのなす角度が90度に設定され、これにより、立方体形状の積層体14が安定して傾斜支持されるようになっている。この傾斜支持体38も傾斜した基台42と、基台42の前面に貼り付けられたゴム等からなる緩衝部材44とから構成され、緩衝部材44に積層体14の背面が当接されることにより、輸送車両の振動が積層体14に直接伝達されるのを防止している。
【0031】
載置台24の後方両側には、傾斜支持体38、38…を支持する支柱46、46が立設されている。これらの支柱46、46は、その上端部においてパイプ材48を介して連結されて補強されている。また、両支柱46、46の間であって、傾斜支持体38、38…の後方(背面側)には、パレット10の背面を半ばくり抜いたような凹状空間(凹部)50が形成される。この凹状空間50はパレットを段積する場合の下方のパレットにおける傾斜支持体38、38…を収容するための凹部として利用される。すなわち、図4の如く空のパレット10、10…を上下段積みして輸送する際に、下段のパレット10の傾斜支持体38、38…が、上段のパレット10の凹状空間50に収容される。これにより、パレット10を側面(積層体14の側面)から見たときのパレット10の段積み幅が小さくなる。よって、段積みされた複数台のパレット10、10…からなる段積みパレットをコンパクト化することができるので、空のパレット10の輸送効率が上がる。なお、支柱46も背面支持体26を構成している。
【0032】
アーム20は、図5に示すように支柱46の上部に設けられた軸52にその基端部が回動自在に支持され、積層体14の側面に沿って積層体14の前面位置(図5の二点鎖線で示す位置)と背面支持体26の上方位置(図5の実線で示す位置)との間で揺動される。また、アーム20は背面支持体26の上方位置に位置されると、ストッパ機構(不図示)によってその位置に保持されるとともに、前記ストッパ機構による保持を解除することにより、揺動可能となっている。ストッパ機構としては、例えば支柱46からアーム20の揺動範囲にストッパピンを突出させ、このストッパピンにアーム20を当接させてアーム20の揺動を規制する機構、又は、軸52にラチェット機構を設けて傾倒する方向の揺動を規制する周知の機構を例示することができる。
【0033】
アーム20の先端には、センターバー18が軸54を介して揺動自在に設けられている。また、センターバー18の積層体14側の面にゴム等の緩衝部材56、56が取り付けられている。すなわち、センターバー18が揺動自在に設けられていることにより、緩衝部材56の当接面56Aが積層体14の傾斜した前面に追従し、当接面56A全面が積層体14の前面に当接される。このように緩衝部材56、56の当接面56A、56Aが積層体14の前面略中央部に当接されることにより、積層体14がセンターバー18と背面支持体26とによって保持される。
【0034】
また、センターバー18による積層体14の保持力を上げるために、図6に示すような張設装置58をパレット10に設けてもよい。この張設装置58は、一対のワイヤ60、62と、これらのワイヤ60、62に連結されて少なくとも1本のワイヤ60(及び/又はワイヤ62)を手動で巻き取る巻取部64とから構成される。すなわち、ワイヤ60をセンターバー18に連結するとともに、ワイヤ62を載置台24に連結し、巻取部64によってワイヤ60を巻き取ると、ワイヤ60、62の張力が高くなることにより、センターバー18がワイヤ60、62の張力によって下方に押し下げられる。これにより、センターバー18による積層体14の保持力を上げることができる。なお、センターバー18と緩衝部材56とによって本発明の当接部材を構成しているが、この当接部材の積層体14に対する当接位置は、積層体14を安定して支持する観点から積層体14の前面略中央部が好ましい。しかしながら、この位置に限定されるものではなく、例えば、当接部材が2つある場合には、前面の両端部でも機能は発揮でき、また、当接部材が3つある場合には、中央と両端部の場合でも機能は発揮する。
【0035】
張設装置58に代えて図11に示す自動荷固め機構120を用いてもよい。
【0036】
この自動荷固め機構120は、両アーム20の下方に略L字形状のアーム122を備えており、このアーム122は基部のコーナー部がピン124を介して揺動自在に設けられている。また、アーム122の先端部には長孔126が形成され、この長孔126にピン128を介してアーム20の先端部が着脱自在に係合されている。すなわち、アーム20はピン128を取り外すことによって独立して揺動される。
【0037】
更に、アーム122の折曲部122Aの近傍の支柱46には、上下方向に長孔130が形成されており、この長孔130に錘である金属製の棒体132が挿入され、この棒体132は折曲部122Aの辺部に自身の重さで当接されている。したがって、棒体132の重さによってアーム122は、ピン124を中心として図中反時計周り方向に付勢される。そして、アーム122と長孔126でピン128により連結されているアーム20が、アーム122の付勢力によって、ピン50を中心に反時計周り方向に付勢されている。すなわち、アーム20は、棒体132の重さにより、積層体14を支柱46に向けて押え付ける方向に常に付勢されている。
【0038】
よって、このように構成された自動荷固め機構120によれば、アーム20によって積層体14が支柱46に向けて常時押え付けられているため、積層体14のガラス板同士の間に、例えば輸送時の振動により隙間が生じた場合でも、アーム20が反時計周り方向に揺動し、その隙間が自動的にキャンセルされる。
【0039】
なお、自動荷固め機構は、図11に示した自動荷固め機構120の構成に限定されるものではない。例えば、他の自動荷固め機構として、図11に示したアーム122に相当するアームの基端部を、スライド機構を介して支柱46に上下方向にスライド自在に取り付けるとともにスライド機構に回動自在に支持させる。そして、前記アームの先端部をアーム20の略中央部に回動自在に係合させる。この自動荷固め機構によれば、積層体14のガラス板同士の間に隙間がある場合には、両アームが自身の自重により前記隙間を詰める方向に回動するので、その隙間を自動的にキャンセルすることができる。
【0040】
一方、カバー支持部材22は図1、図2に示すようにコ字状に折曲されたパイプ部材によって構成され、その両端が図5、図6に示すように軸66を介して支柱46の上端に揺動自在に連結されている。このカバー支持部材22は、アーム20と同様に積層体14の側面に沿って揺動自在に設けられている。すなわち、図1の如くシートカバー12を掛ける場合には、カバー支持部材22を揺動させて水平位置に位置させ、その上方から、底部が開放された立方体形状のシートカバー12をパレット10に被せる。
【0041】
これにより、シートカバー12は、その上面がカバー支持部材22に支持されてパレット10全体を覆う。また、カバー支持部材22は、シートカバー12が取り外された後に水平位置にあると積層体14であるガラス板の搬出時、及び図4に示した空のパレット10、10…の段積み時に邪魔になるので、上方に揺動させて傾斜支持体38から退避した位置に位置させることが好ましい。なお、軸66には、カバー支持部材22の揺動停止位置を前記水平位置と前記上方の退避した位置とに設定する不図示のストッパが設けられている。
【0042】
次に、サイドストッパ28について説明する。
【0043】
サイドストッパ28は、図7(A)に示すように積層体14の側面に当接される当接位置と、図7(B)で示すように積層体14の側面から退避した退避位置との間で移動される。
【0044】
サイドストッパ28は図1、図2に示すように、積層体14の側面下部を全長にわたって支持する長尺状のストッパ本体70を有し、このストッパ本体70の内側に、図7の如く積層体14の側面に実際に当接する緩衝部材72が取り付けられている。
【0045】
サイドストッパ28は、連動機構74を介してアーム20に連結されている。この連動機構74は、図5の二点鎖線で示したアーム20の前面位置から実線で示した上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパ28を積層体14の側面から退避する方向に移動させる機構である。
【0046】
連動機構74の一例について説明すると、サイドストッパ28のストッパ本体70には、図7に示す軸76がストッパ本体70と平行に取り付けられており、この軸76は図8に示す筒状の軸受78に挿入されるとともに回動自在に支持されている。軸受78は、その下方のベース板80に固定され、軸受78の両端から突出した軸76にブラケット82、82を介してストッパ本体70が連結されている。
【0047】
一方、ストッパ本体70に形成された一対のフック84、84と軸受78に形成された一対のフック86、86とには各々スプリング(付勢手段)88、88が掛けられている。このスプリング88、88によってストッパ本体70が図7(B)で示した退避位置に付勢されている。なお、スプリング88、88は、サイドストッパ28の位置を調整するピン90の両側に配置されている。
【0048】
また、ストッパ本体70の下部で軸76の内側(積層体14側)には、四角形状の板材からなるブラケット92が設けられている。このブラケット92も図9の如くピン90の両側に一対配置されている。更に、ブラケット92、92の間には、四角形状の板材からなるブラケット94、94が設けられる。このブラケット94、94はベース板80の端部を折曲することにより形成されるとともにピン90の両側に配置されている。
【0049】
ブラケット92には図7(B)で示すように貫通孔(位置決め部材)96が形成され、同様にブラケット94にも貫通孔(位置決め部材)98が形成される。これらの貫通孔96、98は、図7(A)の位置において合致し、これらの貫通孔96、98に、ストッパピン(位置決め部材)100が嵌合される。これにより、ストッパ本体70は、貫通孔96、98とストッパピン100との位置決め作用により図7(A)の位置、すなわち、積層体14の側面に当接される位置に保持される。また、ストッパピン100を貫通孔96、98から抜き去ることにより、貫通孔96、98とストッパピン100による回動規制が解除されるので、ストッパ本体70がスプリング88、88の付勢力により図7(B)の位置、すなわち、積層体14の側面に当接される位置から退避される。
【0050】
ストッパピン100は、図9に示すようにストッパ本体70の下部に形成されたハウジング102の水平方向にスライド自在に配置されるとともに、その先端部が貫通孔96、98に挿入されている。また、ストッパピン100は、ハウジング102内においてスプリング104に挿入されている。このスプリング104は、図9の左端部がリング状の連結部材106を介してストッパピン100に固定され、右端部がハウジング102の右壁部に当接されている。図9に示した状態において、ストッパピン100は、スプリング104の付勢力により図9の左方向、すなわち、ストッパピン100が貫通孔96、98に挿入される方向に付勢されている。
【0051】
ハウジング102の右壁部に形成された開口部から突出されたストッパピン100の右端部100Aにはワイヤ(駆動部材)108の下端部108Aが連結されている。このワイヤ108は、ストッパピン100の軸方向に延設されるとともに、図5の如く支柱46の下部に取り付けられた軸110に掛けられて上方に向けて延設される。そして、ワイヤ108の上端部108Bは、アーム20の基端部近傍に取り付けられたフック112に連結されている。
【0052】
また、ワイヤ108の長さは、アーム20が前面位置から上方位置へ揺動した際に、ストッパピン100を図9に示した貫通孔96、96、98、98から抜き去ることのできる長さに設定されている。
【0053】
したがって、上記の如く構成された連動機構74によれば、まず、図7(A)の如く、位置決め部材を構成する貫通孔96、96、98、98にストッパピン100が挿入されていることによってサイドストッパ28は、スプリング88、88の付勢力に抗して積層体14の側面に当接される位置(以下「当接位置」)に位置決めされている。そして、図5の如くアーム20が積層体14の前面位置から上方位置へ揺動すると、ワイヤ108が上方(図5の矢印A方向)に引っ張られ、この動作に連動してワイヤ108がストッパピン100を牽引し、ストッパピン100をスプリング104の付勢力に抗して貫通孔96、96、98、98から引き抜く。これにより、サイドストッパ28は、貫通孔96、98とストッパピン100とによる移動規制が解除されるので、スプリング88、88の付勢力によって、図7(B)の如く積層体14の側面から退避した位置(以下「退避位置」)に移動する。このような構成により、簡単な構造の連動機構74を提供できる。
【0054】
なお、図5ではワイヤ108を露出して示したが、ワイヤ108は載置台24及び支柱46を構成する鋼材の凹状溝に沿って配設することが好ましい。これにより、ワイヤ108がパレット10周りで引き回されることはなく、ワイヤ108が邪魔になることはない。
【0055】
上記実施例では、ストッパピン100をワイヤ108によって牽引することで、サイドストッパ28を退避位置に移動させる機構であるが、牽引動作ではなく、押し込み動作によってサイドストッパ28を退避位置に移動させる機構であってもよい。
【0056】
その一例について図12を参照して説明すると、この押し込み動作による機構は、アーム20にワイヤ(ロッドでもよい)140の上端部が固定され、ワイヤ140の下端部が二股形状のコマ142に一方端に固定されている。コマ142は、その中央部が支柱46(図5等参照)にピン144を介して回動自在に連結されており、コマ142の他端部にロッド146が連結されている。このロッド146は、連動機構74に向けて延設されている。
【0057】
この連動機構74は、L字形状のストッパ148と、サイドストッパ28と一体的に構成されたブラケット150とを備えている。ストッパ148は、載置台24側にピン152を介して水平方向に回動自在に取り付けられており、その一端部148Aに、図13の(A)の如くロッド146の先端部が近接されている。また、図12の如く、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150に当接されてブラケット150を含むサイドストッパ28の傾動が規制されている。更に、このストッパ148はスプリング154の付勢力により前記傾動を規制する方向に付勢されている。
【0058】
このように構成された押し込み動作による機構は、アーム20が上方に揺動されると、コマ142がピン144を中心に時計周り方向に回動する。この動作により、ロッド146がストッパ148に向けて進出移動し、図13(B)の如く、ロッド146の先端部がストッパ148の一端部148Aに当接して、ストッパ148を、ピン152を中心に時計周り方向に回動させる。
【0059】
これにより、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150から退避するので、ブラケット150を含むサイドストッパ28がスプリング88の付勢力により退避位置に位置する。以上により、ロッド146の押し込み動作によってもサイドストッパ28を退避位置に位置させることができる。
【0060】
なお、軸76と軸受78との間の摩擦抵抗がスプリング88の付勢力に勝った場合には、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150から退避移動してもサイドストッパ28が円滑に退避移動しない場合がある。このような不具合を想定して、この機構では、ロッド146を押し込んだ際に、図13(B)の如く、ストッパ148の一端部148Aをブラケット150に押し付けて、ブラケット150を強制的に退避方向に回動させるようにしている。これにより、前記摩擦抵抗による不具合を解消することができる。また、押し込み動作による連動機構は、図12、図13に示した形態に限定されるものではない。
【0061】
更に、サイドストッパ28の退避形態は、実施の形態で示した回動の他、直線移動(スライド移動)して退避する形態であっても構わない。
【0062】
ところで、図1に示した載置台24には、載置台24におけるサイドストッパ28の取付位置を調整する位置調整部材114が設けられている。
【0063】
位置調整部材114は、図7及び図10に示すテーブル116と前述したピン90とから構成される。テーブル116は、積層体14の幅方向に沿うように載置台24に固定され、テーブル116の表面には所定の間隔をもって複数のピン孔118、118…が積層体14の幅方向に沿って形成されている。また、テーブル116には、サイドストッパ28に軸76を介して連結されたベース板80がスライド移動自在に搭載されている。
【0064】
したがって、この位置調整部材114によれば、テーブル116の複数のピン孔118、118…のうち、サイドストッパ取付用として最適な位置のピン孔118を選択し、そのピン孔118上にベース板80をスライド移動し、そのピン孔118に、ベース板80に形成された不図示の貫通孔を介してピン90の先端部90Aを嵌合する。これにより、サイドストッパ28を載置台24の最適な位置に取り付けることができる。また、テーブル116は、載置台24に載置される積層体14の幅方向に敷設されているため、積層体14の幅寸法に応じた最適な位置にサイドストッパ28を取り付けることができる。
【0065】
なお、実施の形態では、テーブル116にピン孔118を形成したが、テーブル116を設けることなく載置台24にピン孔118を直接形成してもよい。また、ピン孔118、118…の配列方向は、積層体14の幅方向に限定されるものではなく、積層体14の側面方向であってもよい。これにより、積層体14の側面に対するサイドストッパ28の位置を調整することができる。更に、積層体14の幅方向及び/又は積層体14の側面方向のスリットをテーブル116に形成し、このスリットに沿ってサイドストッパ28を、例えばボルトを介してスライド移動させ、所望の位置に位置した際に、ボルトにナットを締結することにより、サイドストッパ28をテーブル116に固定することもできる。これにより、サイドストッパ28の位置を微調整することができる。サイドストッパ28の位置調整に伴い、必要に応じて傾斜載置板30の位置を移動させる。ただし、ガラス板の種々のサイズに応じて、サイドストッパ28の位置を広範囲に調整する必要がある場合は、前記した駆動部材をワイヤにした方が全体構造が相対的に簡単になる。
【0066】
次に、前記の如く構成されたパレット10の作用について説明する。
【0067】
パレット10が輸送先に輸送されると、輸送先のロボットアーム(不図示)によって、まず、センターバー18が取り払われてガラス板の搬出を開始する。すなわち、積層体14の前面位置にあるセンターバー18の下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。そうすると、センターバー18がアーム20、20を介して、積層体14の前面位置から上方位置に揺動する。このアーム20の揺動動作に連動して連動機構74が前述の如く動作し、サイドストッパ28が、図7(B)の如く積層体14の側面から退避移動する。
【0068】
これにより、アーム20の前記揺動によってセンターバー18による積層体14の押さえ付けが解消され、これと同時にサイドストッパ28による積層体14の側面支持も解消される。この状態で、積層体14の最前列にあるガラス板をロボットアームで吸着保持して搬出する際に、吸着したガラス板を左右に微少量揺さぶっても、ガラス板の側面がサイドストッパ28、28に衝突することはない。
【0069】
したがって、実施の形態のパレット10によれば、センターバー18とサイドストッパ28とを備えたパレット10であっても、パレット10に収納されたガラス板を一枚ずつ良好に搬出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の利用例としてガラス板を例示したが、ガラス板のみならず、板状体であれば、樹脂板、金属板等の板状体についても本発明のパレットを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】シートカバーが被せられた実施の形態のパレットの全体斜視図
【図2】シートカバーが取り外された実施の形態のパレットの全体斜視図
【図3】実施の形態のパレットの載置台の底部を示した斜視図
【図4】段積みされた実施の形態のパレットの側面図
【図5】実施の形態のパレットの側面図
【図6】実施の形態のパレットの側面図であって張設装置を付加した側面図
【図7】サイドストッパの動作説明図であり、(A)は積層体を位置決めする位置にサイドストッパが位置決めされた図、(B)は積層体から退避した位置にサイドストッパが回動した図
【図8】退避した位置にあるサイドストッパの拡大斜視図
【図9】サイドストッパと連動機構の構成を示した側面図
【図10】サイドストッパと連動機構の構成を示した平面図
【図11】自動荷固め機構の構成を示した側面図
【図12】押し込み動作によってサイドストッパを退避位置に移動させる機構を示した説明図
【図13】図12に示した機構の要部動作説明図
【符号の説明】
【0072】
10…パレット、12…シートカバー、14…積層体、18…センターバー、20…アーム、22…カバー支持部材、24…載置台、26…背面支持体、28…サイドストッパ、30…傾斜載置板、32…基台、34…緩衝部材、36…凹状空間、38…傾斜支持体、40…スペーサ、42…基台、44…緩衝部材、46…支柱、48…パイプ材、50…凹状空間、52…軸、54…軸、56…緩衝部材、56A…当接面、58…張設装置、60…ワイヤ、62…ワイヤ、64…巻取部、66…軸、70…ストッパ本体、72…緩衝部材、74…連動機構、76…軸、78…軸受、80…ベース板、82…ブラケット、84…フック、86…フック、90…ピン、92…ブラケット、94…ブラケット、96…貫通孔、98…貫通孔、100…ストッパピン、102…ハウジング、104…スプリング、106…連結部材、108…ワイヤ、110…軸、112…フック、114…位置調整部材、116…テーブル、118…ピン孔
【技術分野】
【0001】
本発明はパレットに関し、特にガラス板等の板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガラス板を縦置きに複数枚積層して収容するパレットが開示されている。このパレットは、ガラス板の底部が載置される載置台と、ガラス板の背面を傾斜支持する背面支持体とから構成されている。また、この背面支持体には、積層されたガラス板の側面に沿ってガラス板の前面位置と背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結されている。このアームの先端部には、積層されたガラス板の最前列にあるガラス板の前面略中央部に当接されるセンターバーが設けられている。すなわち、特許文献1には、センターバー(当接部材に相当)を備えたパレットが開示されている。
【0003】
また、特許文献2にも同様に、ガラス板を縦置きに複数枚積層して収容するパレットが開示されている。このパレットには、積層されたガラス板の両側面に当接されてガラス板の横ずれを防止する側方押え板(サイドストッパに相当)が備えられている。
【0004】
ところで、ガラス板が収容されたパレットは、輸送車両に搭載されて輸送され、そして、輸送先においてガラス板は、ロボットによってパレットから一枚ずつ取り出されて搬出される。
【0005】
特許文献1のパレットによるガラス板の搬出方法は、輸送先のロボットによって、まず、センターバーが取り払われてガラス板の搬出を開始する。すなわち、ガラス板の前面位置にあるセンターバーの下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。これにより、センターバーがアームを介して、ガラス板の前面位置から背面支持体の上方位置に揺動する。これにより、センターバーによるガラス板の押さえ付けが解消されるので、積層されたガラス板を一枚ずつロボットアームによって搬出することができる。この際、ロボットアームに設けられている吸着部によって最前列に位置するガラス板を吸着し、このガラス板をパレットから搬出するが、この際にロボットは、吸着したガラス板を次のガラス板から剥離させるために左右に揺さぶって取り出すことがある。
【特許文献1】特開2006−315759号公報
【特許文献2】特開2005−298062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパレットは、センターバーを有してはいるものの、特許文献2に開示された側方押え板を有していないため、輸送車両による輸送時にガラス板がパレットに対して横ずれするという問題があった。
【0007】
また、特許文献2のパレットは、側方押え板を有してはいるものの、ガラス板を左右に揺さぶって取り出す際に、ガラス板の側面が側方押え板に衝突し、良好に揺さぶることができず、また、ガラス板の側面が側方押え板に衝突してガラス板の側面が損傷するという問題があった。特許文献2の側方押え板は、ねじによってパレットに固定されたものなので、パレットから容易に取り外すことができず、よって、ガラス板の搬出に手間取るという問題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、センターバーに相当する当接部材と、側方押え板に相当するサイドストッパとを備えたパレットであって、パレットに収納された板状体を一枚ずつ良好に搬出することができるパレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットにおいて、前記パレットは、板状体の底部が載置される載置台と、板状体の背面を傾斜支持する背面支持体と、板状体の両側面に当接されるサイドストッパとによって構成され、前記背面支持体には、積層された板状体の側面に沿って板状体の前面位置と前記背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結され、前記アームの先端には、積層された板状体の最前列の板状体の前面に当接される当接部材が設けられ、前記アームとサイドストッパとは連動機構を介して連結され、前記連動機構は、前記アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパを、積層された板状体の側面から退避する方向に移動させることを特徴とするパレットを提供する。
【0010】
本発明によれば、輸送先のロボットアームによってパレットのアームを、板状体の前面位置から背面支持体の上方位置へ揺動させると、そのアームの揺動動作に連動してサイドストッパが、積層された板状体の側面から退避移動する。これにより、アームの前記揺動によって当接部材による板状体の押さえ付けが解消され、これと同時にサイドストッパによる板状体の側面支持も解消されるので、最前列の板状体をロボットアームで吸着保持して搬出する際に、吸着した板状体を左右に微少量揺さぶっても、板状体の側面がサイドストッパに衝突することはない。したがって、本発明のパレットによれば、当接部材とサイドストッパとを備えたパレットであっても、パレットに収納された板状体を、サイドストッパを外す等の余分の作業を経ることなく一枚ずつ良好に搬出することができる。
【0011】
また、本発明によれば、前記連動機構は、前記サイドストッパを前記板状体の側面から退避する方向に付勢する付勢手段と、前記サイドストッパを前記付勢手段の付勢力に抗して前記板状体の側面に当接させる位置に位置決めする位置と該位置決めする位置から退避する位置とに移動自在な位置決め部材と、前記位置決め部材と前記アームとを連結し、アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に追従させて、位置決め部材を前記位置決めする位置から退避した位置に移動させる駆動部材と、を備えたことが好ましい。
【0012】
本発明の連動機構によれば、位置決め部材によってサイドストッパは、付勢手段の付勢力に抗して板状体の側面に当接される位置(以下「当接位置」)に位置決めされている。そして、アームが板状体の前面位置から背面支持体の上方位置へ揺動すると、それに追従して位置決め部材が駆動部材によって、サイドストッパを当接位置に位置決めする位置から退避移動される。これにより、サイドストッパは、位置決め部材による移動規制が解除されるので、付勢手段の付勢力によって、板状体の側面から退避した位置(以下「退避位置」)に移動する。これにより、簡単な構造の連動機構を提供できる。なお、駆動部材としてワイヤを使用した場合は、背面支持体及び載置台を構成する鋼材の凹状溝に沿ってワイヤを配設することが好ましい。これにより、ワイヤがパレット周りで引き回されることはなく、ワイヤが邪魔になることはない。
【0013】
また、駆動部材による位置決め部材の動作形態は、ワイヤのような牽引動作でもよく、ロッドを使用した場合の押し込み動作であってもよい。更に、サイドストッパの退避形態は、回動、直線移動の他、退避する形態であれば如何なる形態でもよい。
【0014】
また、本発明によれば、前記載置台には、該載置台における前記サイドストッパの取付位置を調整する位置調整部材が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、載置台に対するサイドストッパの位置を位置調整部材によって適宜調整することができる。位置調整部材として、例えば載置台に形成された複数のピン孔と、サイドストッパに設けられたピンとから構成し、複数のピン孔のうち、サイドストッパ取付用として最適な位置のピン孔を選択し、そのピン孔にピンを嵌合することにより、サイドストッパを載置台の最適な位置に取り付けることができる。また、載置台上にテーブルを敷設し、このテーブルに沿ってサイドストッパをスライド自在に設け、テーブルに形成された複数のピン孔のうち最適なピン孔を利用してサイドストッパをピンによって固定してもよい。このテーブルは、載置台に載置される板状体の幅方向に敷設される。これにより、板状体の幅寸法に応じた最適な位置にサイドストッパを取り付けることができる。
【0016】
また、本発明によれば、前記背面支持体には、前記板状体を収容した前記パレット全体を覆うシートカバーを支持するカバー支持部材が設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、背面支持体に設けたカバー支持部材によって埃避け用のシートカバーを支持することにより、板状体を収容したパレット全体をシートカバーによって覆うことができる。カバー支持部材は、背面支持体の上部に取り付けられるとともに、板状体の側面に沿った方向に揺動自在に設けられることが好ましい。すなわち、シートカバーを掛ける場合には、カバー支持部材を揺動させて水平位置に位置させ、その上方から、底部が開放された立方体形状のシートカバーをパレットに被せる。これにより、シートカバーは、その上面がカバー支持部材に支持されてパレット全体を覆う。また、シート支持部材は、シートカバーが取り外された後に水平位置にあると板状体の搬出時、及び空のパレットの段積み時に邪魔になるので、上方に揺動させて背面支持体から退避した位置に位置させることが好ましい。
【0018】
また、本発明によれば、前記載置台の底部には凹部が形成され、複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された前記凹部に収容されることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、空のパレットを段積みして輸送する際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された凹部に収容されるため、段積み高さを抑えることができ、また、高さが制限された荷台において段積み台数を増やすことができるので、空のパレットの輸送効率を上げることができる。
【0020】
また、本発明によれば、前記背面支持体には、板状体を傾斜支持する傾斜支持体が背面支持体に沿って設けられるとともに、該傾斜支持体の背面側には凹部が形成され、複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットの前記傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された前記凹部に収容されることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、空のパレットを段積みして輸送する際に、下段のパレットの傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された凹部に収容されるため、パレットを側面(板状体の側面)から見たときの段積み幅が小さくなる。これにより、段積みされた複数台のパレットからなる段積みパレットをコンパクト化することができ、よって、空のパレットの輸送効率が上がる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明に係るパレットによれば、当接部材とサイドストッパとを備えたパレットであっても、パレットに収納された板状体を一枚ずつ良好に搬出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明に係るパレットの好ましい実施の形態について説明する。
【0024】
図1は、実施の形態のパレット10を示した全体斜視図であり、同図には透明の埃避けのシートカバー12がパレット10全体を覆うようにパレット10に被せられた図が示されている。また、図2には、パレット10からシートカバー12が取り外されたパレット10の全体斜視図が示されている。
【0025】
このパレット10は、板状体であるガラス板を複数枚縦置きに積層させた積層体14を支持するパレットであり、積層体14の最前列にあるガラス板の前面に緩衝部材56、56を介して当接されるセンターバー(当接部材)18と、センターバー18の両端部を支持するアーム20、20と、シートカバー12を支持するカバー支持部材22とから構成されている。以下、パレット10の説明において、パレット10の正面側を前方とし、パレット10の背面側を後方とし、パレット10の両側方向を左右方向として説明する。
【0026】
また、パレット10は、積層体14の底部が載置される載置台24と、積層体14の背面を支持する背面支持体26と、積層体14の両側面に当接されるサイドストッパ28、28とを有している。
【0027】
載置台24は、多数本の鋼材を組み付けて平面視矩形状に構成され、その上面に積層体14を傾斜して載置する長尺状の傾斜載置板30、30…が所定の間隔をもって3枚平行に固定されている。この傾斜載置板30は、傾斜した基台32と、基台32の上面に貼り付けられたゴム等からなる緩衝部材34とから構成され、緩衝部材34上に積層体14が載置されることにより、輸送車両の振動が積層体14に直接伝達されるのを防止している。
【0028】
また、載置台24の底部には図3に示すように立方状の凹状空間36が形成される。この凹状空間36は、パレットを段積する場合の下方のパレットにおけるサイドストッパ28、28と傾斜載置板30、30…とを収容するための凹部として利用される。すなわち、図4の如く空のパレット10、10…を上下に段積みして輸送する際に、下段のパレット10のサイドストッパ28、28と傾斜載置板30、30…とが、上段のパレット10の凹状空間36に収容される。これにより、パレット10の段積み高さを抑えることができ、また、高さが制限された輸送車両の荷台において段積み台数を増やすことができるので、空のパレットの輸送効率を上げることができる。
【0029】
サイドストッパ28、28は、図1、図2の如く載置台24の上面でその左右両側に取り付けられている。このサイドストッパ28、28は積層体14の左右両側面に当接されて載置台24上に対する積層体14の横ずれを防止するものである。このサイドストッパ28については後述する。
【0030】
背面支持体26は、載置台24の後方に立設された3本の傾斜支持体38、38…を有し、これらの傾斜支持体38、38…に積層体14の背面が傾斜して支持されている。なお、図1、図2では、積層体14の背面を、スペーサ40を介して支持しているが、積層体14の背面を傾斜支持体38、38…に直接当接して傾斜支持してもよい。また、傾斜支持体38、38…と傾斜載置板30、30…とのなす角度が90度に設定され、これにより、立方体形状の積層体14が安定して傾斜支持されるようになっている。この傾斜支持体38も傾斜した基台42と、基台42の前面に貼り付けられたゴム等からなる緩衝部材44とから構成され、緩衝部材44に積層体14の背面が当接されることにより、輸送車両の振動が積層体14に直接伝達されるのを防止している。
【0031】
載置台24の後方両側には、傾斜支持体38、38…を支持する支柱46、46が立設されている。これらの支柱46、46は、その上端部においてパイプ材48を介して連結されて補強されている。また、両支柱46、46の間であって、傾斜支持体38、38…の後方(背面側)には、パレット10の背面を半ばくり抜いたような凹状空間(凹部)50が形成される。この凹状空間50はパレットを段積する場合の下方のパレットにおける傾斜支持体38、38…を収容するための凹部として利用される。すなわち、図4の如く空のパレット10、10…を上下段積みして輸送する際に、下段のパレット10の傾斜支持体38、38…が、上段のパレット10の凹状空間50に収容される。これにより、パレット10を側面(積層体14の側面)から見たときのパレット10の段積み幅が小さくなる。よって、段積みされた複数台のパレット10、10…からなる段積みパレットをコンパクト化することができるので、空のパレット10の輸送効率が上がる。なお、支柱46も背面支持体26を構成している。
【0032】
アーム20は、図5に示すように支柱46の上部に設けられた軸52にその基端部が回動自在に支持され、積層体14の側面に沿って積層体14の前面位置(図5の二点鎖線で示す位置)と背面支持体26の上方位置(図5の実線で示す位置)との間で揺動される。また、アーム20は背面支持体26の上方位置に位置されると、ストッパ機構(不図示)によってその位置に保持されるとともに、前記ストッパ機構による保持を解除することにより、揺動可能となっている。ストッパ機構としては、例えば支柱46からアーム20の揺動範囲にストッパピンを突出させ、このストッパピンにアーム20を当接させてアーム20の揺動を規制する機構、又は、軸52にラチェット機構を設けて傾倒する方向の揺動を規制する周知の機構を例示することができる。
【0033】
アーム20の先端には、センターバー18が軸54を介して揺動自在に設けられている。また、センターバー18の積層体14側の面にゴム等の緩衝部材56、56が取り付けられている。すなわち、センターバー18が揺動自在に設けられていることにより、緩衝部材56の当接面56Aが積層体14の傾斜した前面に追従し、当接面56A全面が積層体14の前面に当接される。このように緩衝部材56、56の当接面56A、56Aが積層体14の前面略中央部に当接されることにより、積層体14がセンターバー18と背面支持体26とによって保持される。
【0034】
また、センターバー18による積層体14の保持力を上げるために、図6に示すような張設装置58をパレット10に設けてもよい。この張設装置58は、一対のワイヤ60、62と、これらのワイヤ60、62に連結されて少なくとも1本のワイヤ60(及び/又はワイヤ62)を手動で巻き取る巻取部64とから構成される。すなわち、ワイヤ60をセンターバー18に連結するとともに、ワイヤ62を載置台24に連結し、巻取部64によってワイヤ60を巻き取ると、ワイヤ60、62の張力が高くなることにより、センターバー18がワイヤ60、62の張力によって下方に押し下げられる。これにより、センターバー18による積層体14の保持力を上げることができる。なお、センターバー18と緩衝部材56とによって本発明の当接部材を構成しているが、この当接部材の積層体14に対する当接位置は、積層体14を安定して支持する観点から積層体14の前面略中央部が好ましい。しかしながら、この位置に限定されるものではなく、例えば、当接部材が2つある場合には、前面の両端部でも機能は発揮でき、また、当接部材が3つある場合には、中央と両端部の場合でも機能は発揮する。
【0035】
張設装置58に代えて図11に示す自動荷固め機構120を用いてもよい。
【0036】
この自動荷固め機構120は、両アーム20の下方に略L字形状のアーム122を備えており、このアーム122は基部のコーナー部がピン124を介して揺動自在に設けられている。また、アーム122の先端部には長孔126が形成され、この長孔126にピン128を介してアーム20の先端部が着脱自在に係合されている。すなわち、アーム20はピン128を取り外すことによって独立して揺動される。
【0037】
更に、アーム122の折曲部122Aの近傍の支柱46には、上下方向に長孔130が形成されており、この長孔130に錘である金属製の棒体132が挿入され、この棒体132は折曲部122Aの辺部に自身の重さで当接されている。したがって、棒体132の重さによってアーム122は、ピン124を中心として図中反時計周り方向に付勢される。そして、アーム122と長孔126でピン128により連結されているアーム20が、アーム122の付勢力によって、ピン50を中心に反時計周り方向に付勢されている。すなわち、アーム20は、棒体132の重さにより、積層体14を支柱46に向けて押え付ける方向に常に付勢されている。
【0038】
よって、このように構成された自動荷固め機構120によれば、アーム20によって積層体14が支柱46に向けて常時押え付けられているため、積層体14のガラス板同士の間に、例えば輸送時の振動により隙間が生じた場合でも、アーム20が反時計周り方向に揺動し、その隙間が自動的にキャンセルされる。
【0039】
なお、自動荷固め機構は、図11に示した自動荷固め機構120の構成に限定されるものではない。例えば、他の自動荷固め機構として、図11に示したアーム122に相当するアームの基端部を、スライド機構を介して支柱46に上下方向にスライド自在に取り付けるとともにスライド機構に回動自在に支持させる。そして、前記アームの先端部をアーム20の略中央部に回動自在に係合させる。この自動荷固め機構によれば、積層体14のガラス板同士の間に隙間がある場合には、両アームが自身の自重により前記隙間を詰める方向に回動するので、その隙間を自動的にキャンセルすることができる。
【0040】
一方、カバー支持部材22は図1、図2に示すようにコ字状に折曲されたパイプ部材によって構成され、その両端が図5、図6に示すように軸66を介して支柱46の上端に揺動自在に連結されている。このカバー支持部材22は、アーム20と同様に積層体14の側面に沿って揺動自在に設けられている。すなわち、図1の如くシートカバー12を掛ける場合には、カバー支持部材22を揺動させて水平位置に位置させ、その上方から、底部が開放された立方体形状のシートカバー12をパレット10に被せる。
【0041】
これにより、シートカバー12は、その上面がカバー支持部材22に支持されてパレット10全体を覆う。また、カバー支持部材22は、シートカバー12が取り外された後に水平位置にあると積層体14であるガラス板の搬出時、及び図4に示した空のパレット10、10…の段積み時に邪魔になるので、上方に揺動させて傾斜支持体38から退避した位置に位置させることが好ましい。なお、軸66には、カバー支持部材22の揺動停止位置を前記水平位置と前記上方の退避した位置とに設定する不図示のストッパが設けられている。
【0042】
次に、サイドストッパ28について説明する。
【0043】
サイドストッパ28は、図7(A)に示すように積層体14の側面に当接される当接位置と、図7(B)で示すように積層体14の側面から退避した退避位置との間で移動される。
【0044】
サイドストッパ28は図1、図2に示すように、積層体14の側面下部を全長にわたって支持する長尺状のストッパ本体70を有し、このストッパ本体70の内側に、図7の如く積層体14の側面に実際に当接する緩衝部材72が取り付けられている。
【0045】
サイドストッパ28は、連動機構74を介してアーム20に連結されている。この連動機構74は、図5の二点鎖線で示したアーム20の前面位置から実線で示した上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパ28を積層体14の側面から退避する方向に移動させる機構である。
【0046】
連動機構74の一例について説明すると、サイドストッパ28のストッパ本体70には、図7に示す軸76がストッパ本体70と平行に取り付けられており、この軸76は図8に示す筒状の軸受78に挿入されるとともに回動自在に支持されている。軸受78は、その下方のベース板80に固定され、軸受78の両端から突出した軸76にブラケット82、82を介してストッパ本体70が連結されている。
【0047】
一方、ストッパ本体70に形成された一対のフック84、84と軸受78に形成された一対のフック86、86とには各々スプリング(付勢手段)88、88が掛けられている。このスプリング88、88によってストッパ本体70が図7(B)で示した退避位置に付勢されている。なお、スプリング88、88は、サイドストッパ28の位置を調整するピン90の両側に配置されている。
【0048】
また、ストッパ本体70の下部で軸76の内側(積層体14側)には、四角形状の板材からなるブラケット92が設けられている。このブラケット92も図9の如くピン90の両側に一対配置されている。更に、ブラケット92、92の間には、四角形状の板材からなるブラケット94、94が設けられる。このブラケット94、94はベース板80の端部を折曲することにより形成されるとともにピン90の両側に配置されている。
【0049】
ブラケット92には図7(B)で示すように貫通孔(位置決め部材)96が形成され、同様にブラケット94にも貫通孔(位置決め部材)98が形成される。これらの貫通孔96、98は、図7(A)の位置において合致し、これらの貫通孔96、98に、ストッパピン(位置決め部材)100が嵌合される。これにより、ストッパ本体70は、貫通孔96、98とストッパピン100との位置決め作用により図7(A)の位置、すなわち、積層体14の側面に当接される位置に保持される。また、ストッパピン100を貫通孔96、98から抜き去ることにより、貫通孔96、98とストッパピン100による回動規制が解除されるので、ストッパ本体70がスプリング88、88の付勢力により図7(B)の位置、すなわち、積層体14の側面に当接される位置から退避される。
【0050】
ストッパピン100は、図9に示すようにストッパ本体70の下部に形成されたハウジング102の水平方向にスライド自在に配置されるとともに、その先端部が貫通孔96、98に挿入されている。また、ストッパピン100は、ハウジング102内においてスプリング104に挿入されている。このスプリング104は、図9の左端部がリング状の連結部材106を介してストッパピン100に固定され、右端部がハウジング102の右壁部に当接されている。図9に示した状態において、ストッパピン100は、スプリング104の付勢力により図9の左方向、すなわち、ストッパピン100が貫通孔96、98に挿入される方向に付勢されている。
【0051】
ハウジング102の右壁部に形成された開口部から突出されたストッパピン100の右端部100Aにはワイヤ(駆動部材)108の下端部108Aが連結されている。このワイヤ108は、ストッパピン100の軸方向に延設されるとともに、図5の如く支柱46の下部に取り付けられた軸110に掛けられて上方に向けて延設される。そして、ワイヤ108の上端部108Bは、アーム20の基端部近傍に取り付けられたフック112に連結されている。
【0052】
また、ワイヤ108の長さは、アーム20が前面位置から上方位置へ揺動した際に、ストッパピン100を図9に示した貫通孔96、96、98、98から抜き去ることのできる長さに設定されている。
【0053】
したがって、上記の如く構成された連動機構74によれば、まず、図7(A)の如く、位置決め部材を構成する貫通孔96、96、98、98にストッパピン100が挿入されていることによってサイドストッパ28は、スプリング88、88の付勢力に抗して積層体14の側面に当接される位置(以下「当接位置」)に位置決めされている。そして、図5の如くアーム20が積層体14の前面位置から上方位置へ揺動すると、ワイヤ108が上方(図5の矢印A方向)に引っ張られ、この動作に連動してワイヤ108がストッパピン100を牽引し、ストッパピン100をスプリング104の付勢力に抗して貫通孔96、96、98、98から引き抜く。これにより、サイドストッパ28は、貫通孔96、98とストッパピン100とによる移動規制が解除されるので、スプリング88、88の付勢力によって、図7(B)の如く積層体14の側面から退避した位置(以下「退避位置」)に移動する。このような構成により、簡単な構造の連動機構74を提供できる。
【0054】
なお、図5ではワイヤ108を露出して示したが、ワイヤ108は載置台24及び支柱46を構成する鋼材の凹状溝に沿って配設することが好ましい。これにより、ワイヤ108がパレット10周りで引き回されることはなく、ワイヤ108が邪魔になることはない。
【0055】
上記実施例では、ストッパピン100をワイヤ108によって牽引することで、サイドストッパ28を退避位置に移動させる機構であるが、牽引動作ではなく、押し込み動作によってサイドストッパ28を退避位置に移動させる機構であってもよい。
【0056】
その一例について図12を参照して説明すると、この押し込み動作による機構は、アーム20にワイヤ(ロッドでもよい)140の上端部が固定され、ワイヤ140の下端部が二股形状のコマ142に一方端に固定されている。コマ142は、その中央部が支柱46(図5等参照)にピン144を介して回動自在に連結されており、コマ142の他端部にロッド146が連結されている。このロッド146は、連動機構74に向けて延設されている。
【0057】
この連動機構74は、L字形状のストッパ148と、サイドストッパ28と一体的に構成されたブラケット150とを備えている。ストッパ148は、載置台24側にピン152を介して水平方向に回動自在に取り付けられており、その一端部148Aに、図13の(A)の如くロッド146の先端部が近接されている。また、図12の如く、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150に当接されてブラケット150を含むサイドストッパ28の傾動が規制されている。更に、このストッパ148はスプリング154の付勢力により前記傾動を規制する方向に付勢されている。
【0058】
このように構成された押し込み動作による機構は、アーム20が上方に揺動されると、コマ142がピン144を中心に時計周り方向に回動する。この動作により、ロッド146がストッパ148に向けて進出移動し、図13(B)の如く、ロッド146の先端部がストッパ148の一端部148Aに当接して、ストッパ148を、ピン152を中心に時計周り方向に回動させる。
【0059】
これにより、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150から退避するので、ブラケット150を含むサイドストッパ28がスプリング88の付勢力により退避位置に位置する。以上により、ロッド146の押し込み動作によってもサイドストッパ28を退避位置に位置させることができる。
【0060】
なお、軸76と軸受78との間の摩擦抵抗がスプリング88の付勢力に勝った場合には、ストッパ148の他端部148Bがブラケット150から退避移動してもサイドストッパ28が円滑に退避移動しない場合がある。このような不具合を想定して、この機構では、ロッド146を押し込んだ際に、図13(B)の如く、ストッパ148の一端部148Aをブラケット150に押し付けて、ブラケット150を強制的に退避方向に回動させるようにしている。これにより、前記摩擦抵抗による不具合を解消することができる。また、押し込み動作による連動機構は、図12、図13に示した形態に限定されるものではない。
【0061】
更に、サイドストッパ28の退避形態は、実施の形態で示した回動の他、直線移動(スライド移動)して退避する形態であっても構わない。
【0062】
ところで、図1に示した載置台24には、載置台24におけるサイドストッパ28の取付位置を調整する位置調整部材114が設けられている。
【0063】
位置調整部材114は、図7及び図10に示すテーブル116と前述したピン90とから構成される。テーブル116は、積層体14の幅方向に沿うように載置台24に固定され、テーブル116の表面には所定の間隔をもって複数のピン孔118、118…が積層体14の幅方向に沿って形成されている。また、テーブル116には、サイドストッパ28に軸76を介して連結されたベース板80がスライド移動自在に搭載されている。
【0064】
したがって、この位置調整部材114によれば、テーブル116の複数のピン孔118、118…のうち、サイドストッパ取付用として最適な位置のピン孔118を選択し、そのピン孔118上にベース板80をスライド移動し、そのピン孔118に、ベース板80に形成された不図示の貫通孔を介してピン90の先端部90Aを嵌合する。これにより、サイドストッパ28を載置台24の最適な位置に取り付けることができる。また、テーブル116は、載置台24に載置される積層体14の幅方向に敷設されているため、積層体14の幅寸法に応じた最適な位置にサイドストッパ28を取り付けることができる。
【0065】
なお、実施の形態では、テーブル116にピン孔118を形成したが、テーブル116を設けることなく載置台24にピン孔118を直接形成してもよい。また、ピン孔118、118…の配列方向は、積層体14の幅方向に限定されるものではなく、積層体14の側面方向であってもよい。これにより、積層体14の側面に対するサイドストッパ28の位置を調整することができる。更に、積層体14の幅方向及び/又は積層体14の側面方向のスリットをテーブル116に形成し、このスリットに沿ってサイドストッパ28を、例えばボルトを介してスライド移動させ、所望の位置に位置した際に、ボルトにナットを締結することにより、サイドストッパ28をテーブル116に固定することもできる。これにより、サイドストッパ28の位置を微調整することができる。サイドストッパ28の位置調整に伴い、必要に応じて傾斜載置板30の位置を移動させる。ただし、ガラス板の種々のサイズに応じて、サイドストッパ28の位置を広範囲に調整する必要がある場合は、前記した駆動部材をワイヤにした方が全体構造が相対的に簡単になる。
【0066】
次に、前記の如く構成されたパレット10の作用について説明する。
【0067】
パレット10が輸送先に輸送されると、輸送先のロボットアーム(不図示)によって、まず、センターバー18が取り払われてガラス板の搬出を開始する。すなわち、積層体14の前面位置にあるセンターバー18の下部に、ロボットアームの先端部を当接させた後、ロボットアームを上昇させる。そうすると、センターバー18がアーム20、20を介して、積層体14の前面位置から上方位置に揺動する。このアーム20の揺動動作に連動して連動機構74が前述の如く動作し、サイドストッパ28が、図7(B)の如く積層体14の側面から退避移動する。
【0068】
これにより、アーム20の前記揺動によってセンターバー18による積層体14の押さえ付けが解消され、これと同時にサイドストッパ28による積層体14の側面支持も解消される。この状態で、積層体14の最前列にあるガラス板をロボットアームで吸着保持して搬出する際に、吸着したガラス板を左右に微少量揺さぶっても、ガラス板の側面がサイドストッパ28、28に衝突することはない。
【0069】
したがって、実施の形態のパレット10によれば、センターバー18とサイドストッパ28とを備えたパレット10であっても、パレット10に収納されたガラス板を一枚ずつ良好に搬出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の利用例としてガラス板を例示したが、ガラス板のみならず、板状体であれば、樹脂板、金属板等の板状体についても本発明のパレットを適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】シートカバーが被せられた実施の形態のパレットの全体斜視図
【図2】シートカバーが取り外された実施の形態のパレットの全体斜視図
【図3】実施の形態のパレットの載置台の底部を示した斜視図
【図4】段積みされた実施の形態のパレットの側面図
【図5】実施の形態のパレットの側面図
【図6】実施の形態のパレットの側面図であって張設装置を付加した側面図
【図7】サイドストッパの動作説明図であり、(A)は積層体を位置決めする位置にサイドストッパが位置決めされた図、(B)は積層体から退避した位置にサイドストッパが回動した図
【図8】退避した位置にあるサイドストッパの拡大斜視図
【図9】サイドストッパと連動機構の構成を示した側面図
【図10】サイドストッパと連動機構の構成を示した平面図
【図11】自動荷固め機構の構成を示した側面図
【図12】押し込み動作によってサイドストッパを退避位置に移動させる機構を示した説明図
【図13】図12に示した機構の要部動作説明図
【符号の説明】
【0072】
10…パレット、12…シートカバー、14…積層体、18…センターバー、20…アーム、22…カバー支持部材、24…載置台、26…背面支持体、28…サイドストッパ、30…傾斜載置板、32…基台、34…緩衝部材、36…凹状空間、38…傾斜支持体、40…スペーサ、42…基台、44…緩衝部材、46…支柱、48…パイプ材、50…凹状空間、52…軸、54…軸、56…緩衝部材、56A…当接面、58…張設装置、60…ワイヤ、62…ワイヤ、64…巻取部、66…軸、70…ストッパ本体、72…緩衝部材、74…連動機構、76…軸、78…軸受、80…ベース板、82…ブラケット、84…フック、86…フック、90…ピン、92…ブラケット、94…ブラケット、96…貫通孔、98…貫通孔、100…ストッパピン、102…ハウジング、104…スプリング、106…連結部材、108…ワイヤ、110…軸、112…フック、114…位置調整部材、116…テーブル、118…ピン孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットにおいて、
前記パレットは、板状体の底部が載置される載置台と、板状体の背面を傾斜支持する背面支持体と、板状体の両側面に当接されるサイドストッパとによって構成され、
前記背面支持体には、積層された板状体の側面に沿って板状体の前面位置と前記背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結され、
前記アームの先端には、積層された板状体の最前列の板状体の前面に当接される当接部材が設けられ、
前記アームとサイドストッパとは連動機構を介して連結され、
前記連動機構は、前記アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパを、積層された板状体の側面から退避する方向に移動させることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記連動機構は、
前記サイドストッパを前記板状体の側面から退避する方向に付勢する付勢手段と、
前記サイドストッパを前記付勢手段の付勢力に抗して前記板状体の側面に当接させる位置に位置決めする位置と該位置決めする位置から退避する位置とに移動自在な位置決め部材と、
前記位置決め部材と前記アームとを連結し、アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に追従させて、位置決め部材を前記位置決めする位置から退避した位置に移動させる駆動部材と、
を備えた請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記駆動部材が、前記位置決め部材の牽引手段からなる請求項2に記載のパレット。
【請求項4】
前記駆動部材が、前記位置決め部材の押し込み手段からなる請求項2に記載のパレット。
【請求項5】
前記載置台には、該載置台における前記サイドストッパの取付位置を調整する位置調整部材が設けられている請求項1、2、3又は4に記載のパレット。
【請求項6】
前記背面支持体には、前記板状体を収容した前記パレット全体を覆うシートカバーを支持するカバー支持部材が設けられている請求項1、2、3、4又は5に記載のパレット。
【請求項7】
前記載置台の底部には凹部が形成され、
複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された前記凹部に収容される請求項1、2、3、4、5又は6に記載のパレット。
【請求項8】
前記背面支持体には、板状体を傾斜支持する傾斜支持体が背面支持体に沿って設けられるとともに、該傾斜支持体の背面側には凹部が形成され、
複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットの前記傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された前記凹部に収容される請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のパレット。
【請求項1】
板状体を縦置きに複数枚積層して収容するパレットにおいて、
前記パレットは、板状体の底部が載置される載置台と、板状体の背面を傾斜支持する背面支持体と、板状体の両側面に当接されるサイドストッパとによって構成され、
前記背面支持体には、積層された板状体の側面に沿って板状体の前面位置と前記背面支持体の上方位置との間で揺動するアームが揺動自在に連結され、
前記アームの先端には、積層された板状体の最前列の板状体の前面に当接される当接部材が設けられ、
前記アームとサイドストッパとは連動機構を介して連結され、
前記連動機構は、前記アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に連動してサイドストッパを、積層された板状体の側面から退避する方向に移動させることを特徴とするパレット。
【請求項2】
前記連動機構は、
前記サイドストッパを前記板状体の側面から退避する方向に付勢する付勢手段と、
前記サイドストッパを前記付勢手段の付勢力に抗して前記板状体の側面に当接させる位置に位置決めする位置と該位置決めする位置から退避する位置とに移動自在な位置決め部材と、
前記位置決め部材と前記アームとを連結し、アームの前記前面位置から前記背面支持体の上方位置への揺動動作に追従させて、位置決め部材を前記位置決めする位置から退避した位置に移動させる駆動部材と、
を備えた請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記駆動部材が、前記位置決め部材の牽引手段からなる請求項2に記載のパレット。
【請求項4】
前記駆動部材が、前記位置決め部材の押し込み手段からなる請求項2に記載のパレット。
【請求項5】
前記載置台には、該載置台における前記サイドストッパの取付位置を調整する位置調整部材が設けられている請求項1、2、3又は4に記載のパレット。
【請求項6】
前記背面支持体には、前記板状体を収容した前記パレット全体を覆うシートカバーを支持するカバー支持部材が設けられている請求項1、2、3、4又は5に記載のパレット。
【請求項7】
前記載置台の底部には凹部が形成され、
複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットのサイドストッパが上段のパレットの底部に形成された前記凹部に収容される請求項1、2、3、4、5又は6に記載のパレット。
【請求項8】
前記背面支持体には、板状体を傾斜支持する傾斜支持体が背面支持体に沿って設けられるとともに、該傾斜支持体の背面側には凹部が形成され、
複数の前記パレットを段積みする際に、下段のパレットの前記傾斜支持体が上段のパレットの背面支持体に形成された前記凹部に収容される請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載のパレット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−149885(P2010−149885A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328403(P2008−328403)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】
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