説明

パワーモジュール

【課題】半導体素子の寄生容量と、半導体素子同士を接続するワイヤのインダクタンスとの間の共振で発生するノイズを低減し得るパワーモジュールを提供する。
【解決手段】複数の半導体素子(11、12)と、複数の半導体素子(11、12)を接続するワイヤ(36、37、39)と、ループコイル(52)及び磁性体(53)からなるノイズ吸収体(51)とを有し、このノイズ吸収体(51)を複数の半導体素子(11、12)の少なくとも1つの近傍に配置すると共に、ループコイル(52)のループ面を、複数の半導体素子(11、12)を接続するワイヤのうちノイズが発生するワイヤ(36、37)の少なくとも1つに沿わせて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパワーモジュール(電力変換器)の電磁両立性に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュールからの放射ノイズを低減するため、半導体素子から引き出された電極を個別のノイズ吸収体で囲み、かつ、ノイズ吸収体を半導体素子保護用のゲル質の封止材中に埋設する技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−207432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パワーモジュール内で複数の半導体素子を接続する構成においては、半導体素子の寄生容量と、半導体素子同士を接続するワイヤのインダクタンスとの間の共振でノイズが発生する。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、このノイズに対して、ノイズを低減する効果がないという問題点がある。
【0006】
そこで本発明は、半導体素子の寄生容量と、半導体素子同士を接続するワイヤのインダクタンスとの間の共振で発生するノイズを低減し得るパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパワーモジュールは、複数の半導体素子と、これら複数の半導体素子を接続するワイヤと、ループコイル及び磁性体からなるノイズ吸収体とを有している。そして、このノイズ吸収体を前記複数の半導体素子の少なくとも1つの近傍に配置すると共に、前記ループコイルのループ面を、前記複数の半導体素子を接続するワイヤのうちノイズが発生するワイヤの少なくとも1つに沿わせて配置している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ループコイルはノイズ源となる共振回路(複数の半導体素子の寄生容量と、半導体素子同士を接続するワイヤインダクタンスとからなる回路)に磁気的に結合し、磁性体の抵抗分によってノイズ成分を減衰することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態のモータ駆動用3相インバータの回路図である。
【図2】第1実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での概略断面図である。
【図3】第1実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図である。
【図4】1つのパワーモジュールの回路動作図である。
【図5】パワーモジュール内部でのノイズの発生を説明するためのタイミングチャートである。
【図6】ノイズ源となる共振回路の等価回路図である。
【図7】第2実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での概略断面図である。
【図8】第2実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図である。
【図9】第3実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での概略断面図である。
【図10】第3実施形態の1つのパワーモジュールの一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係るパワーモジュール10を備えたモータ駆動用3相インバータ14の回路図である。図1に示すように、1つのパワーモジュール10は、スイッチング素子としてのIGBT(Insuated Gate Bipolar Transistor)11及び整流素子としての還流ダイオード12を有し、各還流ダイオード12は、各IGBT11と逆並列に接続されている。このパワーモジュール10は、交流モータ13を駆動するための3相インバータ14の1相分(1アーム分)である。直流電源15の電力は、平滑用のコンデンサ16と3個のパワーモジュール10により、自動車用の交流モータ13を駆動する3相交流電力に変換される。
【0012】
詳細には、インバータには、交流モータ13とインバータ14を接続する外部バスバー(出力側)21、直流電源15とインバータ14を接続する外部バスバー(P側)22及び外部バスバー(N側)23を備えている。1つのパワーモジュール10には、外部バスバー(出力側)21と接続する出力電極24、外部バスバー(P側)22と接続するP型電極25及び外部バスバー(N側)23と接続するN型電極26を備えている。
【0013】
図2は1つのパワーモジュール10の一部の実装状態での概略断面図、図3は1つのパワーモジュール10の一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図である。図1には3つのパワーモジュール10が示されているが、各パワーモジュール10の構成は3つとも同じである。図2においては上方が鉛直上方であるとする。従って、全体として平板状のパワーモジュール10は水平な位置に置かれている。なお、図3においては、図2に示した封止材40及び樹脂蓋41を取り去った状態を示している。
【0014】
図1の回路図においては1つのパワーモジュール10について、IGBT11と還流ダイオード12とを逆並列に接続した複数の半導体素子(この複数の半導体素子を以下「複数半導体素子」という。)が上下に2つ並んでいる。一方、図3に示す実装状態では、図1に示した上下2つの複数半導体素子の一方(1つのパワーモジュール10の一部)について、3つのIGBT11a〜11cと、3つの還流ダイオード12a〜12cとが用いられている。すなわち、図3において3つの複数半導体素子を縦方向にほぼ等間隔で並べ、これら3つの複数半導体素子を電気的に並列接続している。図示しないが、図3の下方(あるいは上方)には図1に示した上下2つの複数半導体素子の他方について、3つのIGBTと3つの還流ダイオードとが用いられている。このように、複数半導体素子を3つ並列接続している理由は、パワーモジュール10の電流容量をアップするためである。並列接続する複数半導体の数は3つに限定されるものでない。
【0015】
図2に示す実装状態では、1つのIGBT11及び1つの還流ダイオード12だけが見えている。図2において「複数半導体素子」といった場合、図3の上段に位置する複数半導体素子11a、12a、中段に位置する複数半導体素子11b、12b、下段に位置する複数半導体素子11c、12cの3つのうちのいずれか1つを意味している。図2において他の部材(36、37、38、39)及び後述するノイズ吸収体51についても同様である。
【0016】
図2から説明する。1つのパワーモジュール10は、ベースプレート31、出力電極、P型電極及びN型電極を有するセラミック基板32、樹脂ケース33、セラミック基板32の鉛直上部に配置(実装)される複数半導体素子11、12などから構成される。これら複数半導体素子11、12を冷却する目的で冷却器(図示しない)も備えられている。
【0017】
IGBT11のコレクタ端子及び還流ダイオード12のカソード端子は、その鉛直下端が図示しないハンダによってセラミック基板32の出力電極に電気的に導通可能に接合される。また、IGBT11のエミッタ端子はボンディングワイヤ36によりセラミック基板32のN型電極に接合される。還流ダイオード12のアノード端子もボンディングワイヤ37によりセラミック基板32のN型電極に電気的に導通可能に接合される。さらにベースプレート31の外周に立設されている樹脂ケース33に外部端子38が固定され、この外部端子38とIGBT11のベース端子とがボンディングワイヤ39により接続されている。以下、ボンディングワイヤ36を「エミッタ接続ワイヤ」ともいう。ボンディングワイヤ37を「アノード接続ワイヤ」ともいう。
【0018】
複数半導体素子11、12の表面が空気中の湿気や酸素に触れて酸化したり腐食したりしないように、ゲル状の樹脂である封止材40によって樹脂ケース33内部が封止され、樹脂蓋41によって鉛直上部が蓋をされている。
【0019】
このように、インバータ14の主回路を構成する複数半導体素子11、12を配置し、ボンディングワイヤ36、37、39によって接続端子への配線を施し樹脂材等で封止したものがパワーモジュール10である。このパワーモジュール10を複数組合せてインバータ14を構成する。外部バスバー(出力側)21に流れる電流をIGBT11でスイッチングして、インバータ14が出力する電流をコントロールする。
【0020】
この場合に、複数半導体素子11、12に寄生する容量(寄生容量)と、複数半導体素子11、12を接続するボンディングワイヤ36、37のインダクタンスとで共振する回路(この回路網を、以下「共振回路」という。)が存在する。このため、IGBT11がスイッチングすると、複数半導体素子11、12の寄生容量とボンディングワイヤ36、37のインダクタンスと間の共振でノイズが発生し、周囲に放射される。放射ノイズが発生すると、パワーモジュール10を組み合わせて構成されるインバータ14が電気自動車やハイブリッド車のモータ駆動用に用いられているときには、電子機器(車載環境ではラジオ)に悪影響を与えることが懸念される。
【0021】
この問題に対処するため、半導体素子から引き出された電極を個別のノイズ吸収体で囲み、かつノイズ吸収体を半導体素子素子保護用のゲル質の封止材中に埋設することで、放射ノイズを低減させる従来技術がある。
【0022】
しかしながら、従来技術を本実施形態のパワーモジュール10に適用しても、複数半導体素子11、12の寄生容量と、複数半導体素子11、12を接続するボンディングワイヤの36、37のインダクタンスとの間の共振で発生するノイズを低減する効果が無い。なぜなら、従来技術の場合、複数半導体素子11、12から引き出された電極を個別のノイズ吸収体で囲んだとしても、複数半導体素子11、12を接続するボンディングワイヤ36、37は、前記電極を経由しないので、ノイズ低減効果がないためである。
【0023】
そこで本発明の第1実施形態では、ノイズ吸収体51をループコイル52とフェライトビーズ53(磁性体)から構成する。このノイズ吸収体51をIGBT11と還流ダイオード12の少なくとも一方の近傍に配置する。さらに、ループコイル52のループ面を、複数半導体素子11、12を接続するワイヤのうちノイズが発生するボンディングワイヤ36、37の少なくとも一方に沿わせて配置する。
【0024】
具体的に説明する。複数半導体素子11、12を接続するボンディングワイヤのうちノイズが発生するボンディングワイヤは、IGBT11のエミッタ接続ワイヤ36、還流ダイオード12のアノード接続ワイヤ37の2つある。いずれのワイヤ36、37とも5本ずつあり、図2に示したように鉛直上方に向けて凸の曲線を描いているため、これら5本ずつのエミッタ接続ワイヤ36及びアノード接続ワイヤ37よりノイズが周囲に放射される。
【0025】
図3においては3つの複数半導体素子が並列接続されているので、3つのエミッタ接続ワイヤ36a、36b、36c及び3つのアノード接続ワイヤ37a、37b、37cより、IGBT11のスイッチング動作に伴ってノイズが周囲に放射される。このため、図3において上方に位置する第1IGBT11aのエミッタ接続ワイヤ36aと、中央に位置する第2IGBT11bのエミッタ接続ワイヤ36bとの間であってセラミック基板32上に、第1のノイズ吸収体51aを配置する。図3において第2IGBT11bのエミッタ接続ワイヤ36bと下方に位置する第3IGBT11cのエミッタ接続ワイヤ36cとの間であってセラミック基板32上に、第2のノイズ吸収体51bを配置する。第1、第2の2つのノイズ吸収体51a、51bの構成は同じである。このように複数半導体素子11、12を隣り合うように3つ配置している場合には、ノイズ吸収体を隣り合う2つのIGBT(エミッタ接続ワイヤ)の間に配置することで、隣り合うエミッタ接続ワイヤから発生するノイズを共に効率よく減衰させることができる。
【0026】
次に、ループコイル52のループ面を、IGBT11のエミッタ接続ワイヤ36に沿わせて配置する。ここで、「ループコイル」とは、導線が複数回螺旋状に巻かれているものではなく、導線が1つの輪縄状になっているものをいう。ループコイルの「ループ面」とは、1つの輪縄状の導線によって形成される面のことをいう。ここでのループ面は円形状に形成されているが、ループ面の形状が円形状に限定されるものではない。
【0027】
ループ面をエミッタ接続ワイヤに「沿わせて」とは、ループ面の一方の端(例えば図2で右端)とエミッタ接続ワイヤとの最短距離と、ループ面の他方の端(例えば図2で左端)とエミッタ接続ワイヤとの最短距離とがほぼ同じになるようにすることである。このため、図3においては、ループコイル52a、52bのループ面は隣り合う各エミッタ接続ワイヤ36a〜36cと平行な位置関係にある。
【0028】
ループコイル52は、ノイズ源となる共振回路に磁気結合を促すことと、フェライトビーズ53の両端を短絡し、フェライトビーズ53の抵抗分によってノイズ成分を熱に変換して減衰させることを目的として設けている。なお、フェライトビーズ53の両端(図2で左右端)には入出力端子(図示しない)を有している。
【0029】
磁性体としてのフェライトビーズ53は、ノイズ源から発生する磁界を集約させることを目的として、それに加えてループコイル12によって磁気結合したノイズ成分を、それ自体が持つ抵抗分により減衰させることを目的として設けている。減衰させたい放射ノイズの周波数帯域において抵抗成分が増大するものを選択(設定)することにより、その周波数帯域のノイズを減衰させる。例えば、減衰させたい放射ノイズの周波数帯が100MHz近傍にあれば、100MHz近傍において損失(抵抗成分)が増大するフェライトビーズを選定する。第1実施形態では、磁性体としてフェライトビーズを採用しているが、フェライトビーズに類似する特性の磁性体であればかまわない。フェライトビーズの形状を四角柱状としているが、四角柱状に限られない。
【0030】
なお、複数半導体素子11、12、エミッタ接続ワイヤ36、アノード接続ワイヤ37等は40Vを超える高電圧が印加する部位つまり強電部位である。このため、ノイズ吸収体51は、強電部位との必要な絶縁距離を確保した上で配置すると共に、必要な絶縁耐圧を有する被覆等で処理したうえで実装する。ここで、強電部位との必要な絶縁距離は要求仕様により予め定まっている。また、ノイズ吸収体51に求められる必要な絶縁耐圧も要求仕様により予め定まっている。
【0031】
図4、図5を用いて一つのパワーモジュール10内部でノイズが発生するインバータ回路動作とそのタイミングを説明する。図4はインバータ14のうちから1つのパワーモジュール10(1アーム分)を抜き出した回路動作図である。パワーモジュール10では、P側IGBT11AにP側還流ダイオード12Aが、N側IGBT11BにN側還流ダイオード12Bがそれぞれ逆並列に接続されている。出力端子55にはモータ等の誘導性負荷が接続されている。P端子56およびN端子57の間には平滑コンデンサ16が接続されており、P端子56及びN端子57間の電圧は例えば一定値Vdcとなっている。
【0032】
図5に示したように、上下2つのIGBT11A、11Bが共にオフ期間(上下2つのIGBT11A、11Bの短絡防止期間)にP側還流ダイオード12Aに電流Iが環流している状態から、t1のタイミングでN側IGBT11BがOFFからONに切換わる。このt1の切換タイミングより少し遅れたt2のタイミングでP側還流ダイオード12Aを流れる電流Ifが正より負となったあと、t3のタイミングでゼロへと戻る。つまり、図5に点線で囲んであるリカバリ電流が発生するタイミングで放射ノイズが発生する。
【0033】
図6にこのときのノイズ源となる共振回路の等価回路を示す。ノイズ源は、IGBT11A及び還流ダイオード12Aを接続しているボンディングワイヤ36、37のインダクタンス成分L、IGBT11のコレクタ−エミッタ間の寄生容量C、P側還流ダイオード12Aの電圧変化(電圧源)Vの直列結合で表される。ノイズ吸収体51は、ノイズ源となる共振回路に磁気結合して抵抗分が直列に挿入されたものとなるので、共振回路に対して振動を減衰させる働きをする。
【0034】
第1実施形態では、ノイズ吸収体51をIGBT11の近傍に配置し、ループコイル52のループ面をエミッタ接続ワイヤ36に沿わせて配置したが、ノイズ吸収体51を還流ダイオード12の近傍に配置し、ループコイル52のループ面をアノード接続ワイヤ37に沿わせて配置してもかまわない。
【0035】
ここで、本実施形態の作用効果を説明する。
【0036】
本実施形態によれば、複数半導体素子11、12(複数の半導体素子)と、これら複数半導体素子11、12を接続するワイヤ36、37、39と、ループコイル52及びフェライトビーズ53(磁性体)からなるノイズ吸収体51とを有し、このノイズ吸収体51をIGBT11(複数の半導体素子の少なくとも1つ)の近傍に配置すると共に、ループコイル52のループ面を、エミッタ接続ワイヤ36(複数の半導体素子を接続するワイヤのうちノイズが発生するワイヤの少なくとも1つ)に沿わせて配置するので、ループコイル52がノイズ源となる共振回路(複数の半導体素子11、12の寄生容量と、半導体素子同士を接続するワイヤ36、37のインダクタンスとからなる回路)に磁気的に結合し、フェライトビーズ53(磁性体)の抵抗分によってノイズ成分を減衰することができる。
【0037】
発生するノイズが低減されるのであれば、IGBT11のスイッチングスピードを緩める必要がなく、これによって半導体素子(11)の損失を増大させることがないので、パワーモジュール10の効率、出力性能が高まる。パワーモジュール10を組み合わせて構成されるインバータ14が電気自動車やハイブリッド車のモータ駆動用に用いられているときには、発生するノイズが低減されるので、車載ラジオの聴感を改善できる。
【0038】
本実施形態によれば、ループコイル52とフェライトビーズ53(磁性体)を直列に接続する、つまりフェライトビーズ53(磁性体)の両端を短絡するので、フェライトビーズ53(磁性体)の抵抗分によってノイズ成分を減衰することができる。
【0039】
本実施形態によれば、磁性体として、減衰させたいノイズの周波数帯域において抵抗成分が増大するフェライトビーズ53(磁性体)を選定するので、減衰させたいノイズを減衰させることができる。
【0040】
本実施形態によれば、複数半導体素子11、12(複数の半導体素子)を並列接続して隣り合うように配置する場合に、ノイズ吸収体51を隣り合う複数半導体素子11、12の間に配置するので、隣り合うエミッタ接続ワイヤ36から発生するノイズを共に効率よく減衰させることができる。
【0041】
本実施形態によれば、ノイズ吸収体51を、必要な絶縁距離を確保したうえで配置するので、強電部位との絶縁性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態によれば、ノイズ吸収体51を、必要な絶縁耐圧を有する被覆処理をしたうえで実装するので、必要な絶縁耐圧を得ることができる。
【0043】
(第2実施形態)
図7は第2実施形態の1つのパワーモジュール10の一部の実装状態での概略断面図、図8は1つのパワーモジュールの一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図で、第1実施形態の図2、図3と置き換わるものである。図2、図3と同一部分には同一の符号を付している。ここでも、図7において上方が鉛直上方であるとする。図8においては、図7に示した封止材40及び樹脂蓋41を取り去った状態で示している。
【0044】
第1実施形態で複数半導体素子11、12、エミッタ接続ワイヤ36、アノード接続ワイヤ37等は高電圧印加部位(強電部位)なので、ノイズ吸収体51は強電部位との必要な絶縁距離を確保した上で配置すると述べた。しかしながら、必要な絶縁距離が相対的に大きい要求仕様の場合に、ノイズ吸収体51を樹脂蓋41下方の封止材40内に配置したのでは、強電部位との必要な絶縁距離を確保できないことがある。
【0045】
そこで、第2実施形態は、必要な絶縁距離が相対的に大きい要求仕様の場合においても、強電部位との必要な絶縁距離を確保するため、パワーモジュール10の外部にノイズ吸収体51を配置するものである。すなわち、図7に示したようにIGBT11のエミッタ接続ワイヤ36の鉛直上方であって樹脂蓋41上にノイズ吸収体51を配置する。ノイズ吸収体51を樹脂蓋41上に配置したときには、ノイズ吸収体51に対してノイズが鉛直下方から放射されるので、ループコイル52のループ面は水平方向に位置するように配置する。
【0046】
図8に示す実装状態では、第1IGBT11aのエミッタ接続ワイヤ36aの鉛直上方であって樹脂蓋41上に第1のノイズ吸収体51aを配置する。同様に、第2IGBT11bのエミッタ接続ワイヤ36bの鉛直上方であって樹脂蓋41上に第2のノイズ吸収体51bを、第3IGBT11cのエミッタ接続ワイヤ36cの鉛直上方であって樹脂蓋41上に第3のノイズ吸収体51cを配置する。各ループコイル52a、52b、52cのループ面は水平方向に位置するように配置する。
【0047】
第2実施形態によれば、ノイズ吸収体51をパワーモジュール10の外部に配置するので、必要な絶縁距離が相対的に大きい要求仕様の場合においても、強電部位との絶縁性を向上させることができる。
【0048】
(第3実施形態)
図9は第3実施形態の1つのパワーモジュール10の一部の実装状態での概略断面図、図10は1つのパワーモジュールの一部の実装状態での素子配置を示す概略平面図で、第1実施形態の図2、図3と置き換わるものである。図2、図3と同一部分には同一の符号を付している。ここでも、図9において上方が鉛直上方であるとする。図10においては、図9に示した封止材40及び樹脂蓋41を取り去った状態で示している。
【0049】
第3実施形態は、ノイズ吸収体51のうちループコイル52を第1実施形態と同様の位置に配置しつつ、フェライトビーズ53をパワーモジュール10の外部に配置したものである。すなわち、図10に示す実装状態では第1IGBT11aのエミッタ接続ワイヤ36aと、第2IGBT11bのエミッタ接続ワイヤ36bとの間であって樹脂蓋41上に、第1のフェライトビーズ53aを配置する。また、第2IGBT11bのエミッタ接続ワイヤ36bと第3IGBT11cのエミッタ接続ワイヤ36cとの間であって樹脂蓋41上に、第2のフェライトビーズ53bを配置する。次に、ループコイル52a、52bのループ面を、第1、第2、第3のIGBT11a、11b、11cのエミッタ接続ワイヤ36a、36b、36cに沿わせて配置する。
【0050】
かつ、図9に示したように、フェライトビーズ53(53a、53b)から、ループコイル52(52a、52b)が鉛直下方に垂れ下がり、ループコイル52(52a、52b)の下端がセラミック基板32の近くまで届くようにする。第1、第2の2つのノイズ吸収体51a、51bの構成は同じである。
【0051】
なお、樹脂蓋41にはループコイル52(52a、52b)が貫通する孔(図示しない)を開けてある。第3実施形態ではループコイル52a、52bのループ面を四角形状としたが、これに限定されるものでない。
【0052】
第3実施形態によれば、ループコイル52をパワーモジュール10内に残しつつ、フェライトビーズ53(磁性体)をパワーモジュール10の外部に配置するので、パワーモジュール10の外部から、放射ノイズの強さ、周波数帯域に応じてフェライトビーズ53を調整することができる。例えばエミッタ接続ワイヤ36やアノード接続ワイヤ37から発生する放射ノイズが相対的に強ければ、その強くなった分だけフェライトビーズ53の個数を増やすことで、放射ノイズが相対的に強い場合にも、ノイズを抑制することができる。放射ノイズの発生する周波数帯域が相違すれば、その相違する周波数帯域で発生するノイズを減衰できるフェライトビーズの種類に変更することで、放射ノイズの発生する周波数帯域が相違する場合にも、ノイズを抑制することができる。
【0053】
実施形態ではIGBTで説明したが、パワーMOSFET(Nch型、Pch型)やパワートランジスタ(NPN型、PNP型)である場合に対しても本発明の適用があることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0054】
10 パワーモジュール
11 IGBT(半導体素子)
12 還流ダイオード(半導体素子)
32 セラミック基板
51 ノイズ吸収体
52 ループコイル
53 フェライトビーズ(磁性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半導体素子と、
これら複数の半導体素子を接続するワイヤと、
ループコイル及び磁性体からなるノイズ吸収体と
を有し、
このノイズ吸収体を前記複数の半導体素子の少なくとも1つの近傍に配置すると共に、前記ループコイルのループ面を、前記複数の半導体素子を接続するワイヤのうちノイズが発生するワイヤの少なくとも1つに沿わせて配置することを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記ループコイルと磁性体を直列に接続することを特徴とする請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記磁性体として、減衰させたいノイズの周波数帯域において抵抗成分が増大する磁性体を選定することを特徴とする請求項1または2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
前記半導体素子がNPN形トランジスタである場合に、前記ループコイルのループ面をこのNPN形トランジスタのエミッタ接続ワイヤに沿わせて配置することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項5】
前記半導体素子が還流ダイオードである場合に、前記ループコイルのループ面を還流ダイオードのアノード接続ワイヤに沿わせて配置することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項6】
前記複数の半導体素子を並列接続して隣り合うように配置する場合に、前記ノイズ吸収体を隣り合う複数の半導体素子の間に配置することを特徴とする請求項1から5までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記ノイズ吸収体をパワーモジュールの外部に配置することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記磁性体のみをパワーモジュールの外部に配置することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記ノイズ吸収体を、必要な絶縁距離を確保したうえで配置することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記ノイズ吸収体を、必要な絶縁耐圧を有する被覆処理をしたうえで実装することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一つに記載のパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−199466(P2012−199466A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63676(P2011−63676)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)