説明

パンクシーリング剤

【課題】保存安定性に優れたパンクシーリング剤を提供する。
【解決手段】少なくとも、合成ゴムラテックスと、水溶性の液劣化防止剤と、を含有するパンクシーリング剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクしたタイヤをシールする際に使用されるパンクシーリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のパンク修理用のパンクシーリング剤を市場で入手することができる。これらのパンクシーリング剤は液状であり、一般的には車内またはトランクルーム等に備えられ、万が一のパンク発生時にのみ使用されるものである。このため、実際に使用されるまでの間、液の劣化を抑制するために、パンクシーリング剤の老化防止、劣化防止を行う必要がある。
【0003】
パンクシーリング剤の劣化を抑制するためには、劣化防止剤を添加する方法が考えられる。しかし、通常の劣化防止剤は、例えば固化したゴム等の完成物の劣化を防止するために、原料成分のエマルション等に添加されるものであり(例えば、非特許文献1参照)、前記シーリング剤そのものの劣化を防止するためのものではなかった。即ち、完成物に用いられるエマルションは、通常完成物を製造する直前に作製されるものであり、このようなエマルションの劣化は考慮の対象ではなかった。
【0004】
一方、パンクシーリング剤は、その保存期間中液状で保存されるものであるので、その液劣化を防止することが重要である。すなわち、長期間保存しても凝固せず、パンクシール速度などのパンクシール性も低下しないことが望まれる。
特に、ゴムラテックスを含む前記パンクシーリング剤の保存性に関しては、パンクシーリング剤を樹脂製のボトルに入れて保存することが多い。しかし、この場合原因は明らかでないが、長期保存後パンクシーリング性が低下してしまう場合があった。
【0005】
上記問題に対して、合成ゴムラテックスと液劣化防止剤とを用いたパンクシーリング剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2008/142967号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】国沢新太郎、「エマルション・ラテックスハンドブック」、初版(1982)、大成社、p.425
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、液劣化防止剤は適用する系に均一に分散させることが必要であるが、パンクシーリング剤はゴムラテックスを含む液状物であるため、酸化防止剤等の液劣化防止剤をパンクシーリング剤中に分散させることは困難である。これに対し、前記パンクシーリング剤は、合成ゴムラッテクスを構成する分散媒質中に、界面活性剤等の乳化剤を用いて液劣化防止剤を安定的に分散させることで、パンクシーリング剤の酸素存在下での保存においても酸化防止効果等を発揮させている。しかし、前記パンクシーリング剤は、非水溶性の液劣化防止剤を用いるため、パンクシーリング剤に液劣化防止剤を分散させるためには、予め乳化剤と共に合成ゴムラテックスに配合する必要があり製造に工数を要していた。
【0009】
以上から、本発明は、保存安定性に優れたパンクシーリング剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
<1> 少なくとも、合成ゴムラテックスと、水溶性の液劣化防止剤と、を含有するパンクシーリング剤。
【0011】
本発明のパンクシーリング剤は、水溶性の液劣化防止剤を含み、当該液劣化防止剤は合成ゴムラテックス中の分散媒質中に溶解している。このため、前記分散媒中の酸素分子による合成ゴムの酸化を効果的に抑制することができる。これにより、保存時におけるパンクシーリング剤の酸化による経時劣化が防止されるため、本発明のパンクシーリング剤は、優れた保存安定性を発揮することができる。
【0012】
<2> 前記液劣化防止剤が、25℃(または20℃)・1気圧下において水100gに0.1g以上溶解する前記<1>のパンクシーリング剤である。
【0013】
本発明のパンクシーリング剤は、25℃(または20℃)・1気圧下において水100gに0.1g以上溶解する液劣化防止剤を用いることで、液劣化防止剤が合成ゴムラテックス中の分散媒質中に溶解しやすくすることができる。
【0014】
<3> 前記液劣化防止剤が、カテキン、亜硫酸塩およびエリソルビン酸塩の少なくとも1種を含む前記<1>または<2>のパンクシーリング剤である。
【0015】
本発明のパンクシーリング剤は、前記液劣化防止剤として、カテキン、亜硫酸塩およびエリソルビン酸塩の少なくとも1種を用いることで、効果的に液劣化防止剤の保存安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、保存安定性に優れたパンクシーリング剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のパンクシーリング剤は、少なくとも、合成ゴムラテックスと、水溶性の液劣化防止剤とを含有する。
【0018】
通常、パンクシーリング剤は、ゴムラテックスと各種配合剤とを混合して作製された後、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂製のボトル中で保存されることが多い。しかしこの場合、前記樹脂製のボトルは酸素を透過するため、ボトル中でパンクシーリング剤が数ヶ月保存されるとゴム成分が酸化・変質したり、パンクシーリング剤が劣化等してゲル化してしまうことが判明した。この場合、原因は明らかでないが、パンクシーリング性が低下することから、十分な保存安定性が確保することが困難であった。
【0019】
本願発明者は、特にパンクシーリング剤のゴム成分の酸化・変質がパンクシーリング剤の液体成分中に溶解している酸素分子がゴム成分の酸化・変質の原因の一つであることを見出した。係る観点からすると、液劣化防止剤はパンクシーリング剤中に均一に存在していることが好ましくなるが、従来の非水溶性の液劣化防止剤を用いた場合には、乳化剤等を用いて分散させる必要があり、製造工程が煩雑になる一因となっている。
【0020】
これに対し、本発明のパンクシーリング剤は、水溶性の液劣化防止剤を含むことにより、合成ゴムラテックスの分散媒質等に溶解させることができるため、容易に液劣化防止剤をパンクシーリング剤中に均一に存在させることができる。このため、乳化剤を用いて液劣化防止剤を安定的に分散させるよりも容易にパンクシーリング剤の全域にわたって効果的に合成ゴムの酸化を防止することができる。このように合成ゴムの酸化が抑制されると合成ゴムの柔らかさが維持され、保存後においてもシール性能の低下を抑制することができるため、本発明のパンクシーリング剤は優れた保存安定性を発揮することができる。
【0021】
また、パンクシーリング剤に含まれる合成ゴムラテックスを構成する分散媒質中に、界面活性剤等の乳化剤を用いて液劣化防止剤を安定的に分散させた場合、液劣化防止剤として通常の固体状態のゴムや樹脂等に対して使用する量の酸化防止剤等を添加すると、ゴムラテックスの貯蔵安定性等が低下する傾向が見られた。この原因は明らかではないが、ゴムラテックス粒子形成にも界面活性剤を用いているため、乳化状態の液劣化防止剤とラテックス粒子との間で、界面活性剤の交換が起こり、これによりラテックス粒子同士の反発力が低下し凝集、硬化等が発生しているものと考えられる。
【0022】
しかし、本発明のパンクシーリング剤は界面活性剤を用いて液劣化防止剤を分散させる必要がないことから、乳化状態の液劣化防止剤とラテックス粒子との間で、界面活性剤の交換が起こり、これによりラテックス粒子同士の反発力が低下して、凝集、硬化等が発生することがない。
【0023】
以下、本発明のパンクシーリング剤を構成に沿って説明する。
(合成ゴムラテックス)
本発明のパンクシーリング剤は合成ゴムラテックスを含有する。合成ゴムラテックスとしては、種々のラテックスを使用することができるが、より良好なシール性を確保する観点から、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)ラテックス、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)ラテックス、MBR(ブタジエン・メタクリル酸共重合ゴム)ラテックス、BR(ブタジエンゴム)ラテックス、カルボキシル変性NBRラテックス、およびカルボキシル変性SBRラテックスからなる群より選択される少なくとも1種とすることが好ましい。合成ゴムラテックスは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
合成ゴムラテックスは、一般に乳化重合により得られ、分散媒質中に分散するポリマー粒子に加え、これらを分散させる分散剤や、乳化剤、安定剤、増粘剤等を含む。
なお、前記分散媒質は基本的に水性媒体であり、該水性媒体は、水を含む溶液である。ここで「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。
【0025】
パンクシーリング剤の全量に対する合成ゴムラテックスの含有量は特に限定されないが、良好なパンクシーリングを保つ観点から、パンクシーリング剤全量に対して、例えば、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%が更に好ましい。
【0026】
(水溶性の液劣化防止剤)
本発明のパンクシーリング剤には水溶性の液劣化防止剤が含まれる。前記液劣化防止剤は水溶性であれば、特に制限されず、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤などを用いることができるが、特に酸化防止剤を用いることが好適である。ここで、本発明における「液劣化防止剤」とは、パンクシーリング剤(液)の劣化(パンクシーリング材中の合成ゴムの変質)を抑制することのできる老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤などを意味する。また「水溶性」とは、水に可溶なことを意味し、好ましくは25℃(または20℃)・1気圧下において水100gに0.1g以上溶解することを意味し、更に25℃(または20℃)・1気圧下において水100gに1g以上溶解することが好ましく、10g以上溶解することが特に好ましい。また、水溶性の液劣化防止剤として酸化防止剤を例に挙げて説明する。
【0027】
水溶性の酸化防止剤としては、水溶性を有し、合成ゴムラテックスの酸化による変質を防止できるものであれば特に限定はないが、このような酸化防止剤としては、公知の水溶性酸化防止剤を適用できる。好適な水溶性酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸またはアスコルビン酸誘導体またはそれらの塩;エリソルビン酸またはエリソルビン酸塩、または、ポリフェノール類(フラボノイド類(例えば、カテキン、アントシアニン、フラボン配糖体、イソフラボン配糖体、フラバン配糖体、フラバノン、ルチン配糖体)、フェノール酸類(クロロゲン酸、エラグ酸、没食子酸、没食子酸プロピル)、リグナン配糖体類、クルクミン配糖体類、クマリン類、等が挙げられる。)、亜硫酸塩を挙げることができる。
本発明における水溶性酸化防止剤としては、カテキン、亜硫酸塩、エリソルビン酸塩が、酸化防止効果が大きいことから好ましい。
【0028】
前記カテキンとしては、水溶性を付加したカテキン類(例えば、配糖体にしたもの、デキストリンで包埋したもの)等を用いることができる。カテキンは、茶抽出物の成分であり、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートが挙げられるが、本発明においては、何れのカテキンを使用してもよい。本発明においては、茶抽出物より単離したカテキンを使用することができるが、カテキンを含有する茶抽出物を使用することもできる。前記水溶性のカテキンとしては、例えば、市販品のエピカテキン(和光純薬工業(株)製)を用いることができる。例えば前記エピカテキンの水への溶解度は1.6g/100ml(25℃)である。
【0029】
前記亜硫酸塩としては、水溶性の亜硫酸塩を用いることができ、例えば、アンモニウム分子や一価の金属原子を含む亜硫酸塩を挙げることができる。本発明における水溶性の亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸アンモニウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素リチウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム等が挙げることができ、酸化防止能や取り扱い性の観点から、亜硫酸ナトリウムが好ましい。例えば、亜硫酸ナトリウムの水への溶解度は22g/100ml(20℃)である。
【0030】
エリソルビン酸塩としては、水溶性のエリソルビン酸を用いることができる。このようなエリソルビン酸塩としては、例えば、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム、エリソルビン酸カルシウム等が挙げられ、エリソルビン酸ナトリウムが好ましい。例えば、エリソルビン酸ナトリウムの水への溶解度は16g/100ml(25℃)である。
【0031】
前記水溶性の液劣化防止剤、さらに必要に応じて添加される成分との組み合わせを、合成ゴムラテックスに混入することは、公知の方法により行うことができる。また、これらの成分を例えば一定以上の濃度で含むマスターバッチの状態で添加しても良い。更に、前記液劣化防止剤を、パンクシーリング剤中の水系成分に溶解してから、有機系の材料を混入していくことが好ましい。
【0032】
水溶性の液劣化防止剤のパンクシーリング剤中の全量に対する含有量は、製造工程に要する時間、保存安定性、および、パンクシーリング剤のシール性の観点から、0.01〜12質量%の範囲とすることが好ましく、2〜10質量%の範囲とすることがより好ましく、5〜8質量%の範囲とすることがさらに好ましい。
【0033】
(凍結防止剤)
本発明のパンクシーリング剤は、凍結防止剤を含有することが好ましい。凍結防止剤としては、特に限定されず、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類を用いることがこのましい。このような凍結防止剤の含有量は、パンクシーリング剤全量に対して、10〜50質量%の範囲であることが好ましい。凍結防止剤の含有量が以上の範囲内であると、低温での凍結防止性に優れ、ゴムラテックス量に対してグリコール量が適量であり、パンク補修時のシール特性を向上させることができる。
【0034】
本発明のパンクシーリング剤では、希薄化のために、水を含有させることができる。さらにパンクシーリング剤に、通常の分散剤、乳化剤、発泡安定剤、またはアンモニア、苛性ソーダ等のpH調整剤を添加してもよい。
【0035】
(樹脂系エマルション)
また、本発明のパンクシーリング剤は、シール性を向上させるために、樹脂系エマルションを含有することが好ましい。樹脂系エマルションとしては、植物由来の樹脂を用いたもの(例えば、ロジン酸エステル樹脂、トール油エステル樹脂、テルペンフェノール等のテルペン樹脂など)や、変性フェノール樹脂、石油樹脂などの合成樹脂を用いたものなどを使用することができる。
【0036】
この中でも、特に、ロジン系樹脂またはフェノール系樹脂を用いたエマルションが、強度向上効果が大きいため好適に用いることができる。これらの樹脂系エマルションは安定性の面からノニオン系の界面活性剤を乳化剤として用いたものが好ましい。アニオン系界面活性剤やカチオン系界面活性剤を主乳化剤として用いた場合、凍結防止剤の混合により不安定化しエマルションが壊れてしまうことがある。
【0037】
前記樹脂エマルションまたはフェノール樹脂エマルションは、シール性の観点から、パンクシーリング剤中に固形分で1〜15質量%含有させることが好ましく、2〜12質量%含有させることがより好ましく、3〜9質量%含有させることがさらに好ましい。
【0038】
(未変性SBR)
本発明のパンクシーリング剤は、さらに、シール性や液安定性(ゲル化防止)の観点から、未変性SBRを5〜40質量%含むことが好ましく、8〜35質量%含むことがより好ましく、10〜30質量%含むことがさらに好ましい。
【0039】
(パンクシーリング剤の物性)
本発明のパンクシーリング剤の粘度は、実際の使用条件として想定される条件(60℃〜−30℃)において、3〜6000mPa・sの範囲であること好ましい。
3mPa・s未満では、粘度が低すぎてバルブへの注入時に液漏れが発生することがある。6000mPa・sを超えると、注入時の抵抗が強くなって注入容易性が低下する場合があり、また、タイヤ内面への広がりも十分でなく、高いシール性が得られない場合がある。なお、当該粘度は、B型粘度計等により測定することができる。
【0040】
以上のようなパンクシーリング剤によるパンクの修理方法としては、公知の方法を適用することができる。すなわち、まず、パンクシーリング剤が充填された容器をタイヤのバルブ口に差し込み、適量を注入する。その後、パンクシーリング剤がタイヤ内面に広がりパンク穴をシールできるようにタイヤを回転させればよい。
【0041】
また、本発明のパンクシーリング剤は、種々の空気入りタイヤのパンク修理に適用することができる。例えば、自動車用タイヤ、二輪車用タイヤ、一輪車用タイヤ、車いす用タイヤ、農地作業や庭園作業に使用する車両用タイヤ等が挙げられる。
【0042】
以上の本発明のパンクシーリング剤そのものは、種々のポンプアップ装置、例えば燃料ガスとしてプロパン・ブタン混合ガスを含むスプレー缶を用いてタイヤの内部に導入されてタイヤを再膨張させうる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
<実施例1>
(パンクシーリング剤の作製)
下記(1)〜(4)の各成分を混合し、パンクシーリング剤を調製した。尚、混合順は(1)に対して、(4)、(3)および(2)の順で加え、残量は(5)蒸留水で調整した。
【0044】
(1)SBRラテックス(固形分量:15質量%)
(2)プロピレングリコール:45質量%
(3)ロジン酸エステル樹脂エマルション(固形分:5質量%)
(4)酸化防止剤としてカテキン(シーリング剤中の酸化防止剤:0.005質量%)
【0045】
<実施例2〜12>
実施例1のパンクシーリング剤の作製において、酸化防止剤を、表1に示した酸化防止剤とし、各々表中の配合量用いた以外は、同様にしてパンクシーリング剤を作製し、同様の評価を行なった。
【0046】
<比較例1>
(パンクシーリング剤の作製)
水100質量部に対し、酸化防止剤としてモノフェノール系酸化防止剤B(スチレン化フェノール)30質量部、および界面活性剤としてオレイン酸ナトリウム:3質量部を配合し、ホモジナイザーにより分散して、乳化酸化防止剤1を調製した。
【0047】
次に、下記(1)、(2)、(3)に示す各成分を混合し、これに(4)の乳化酸化防止剤を加えて、パンクシーリング剤を作製した。なお、混合順は、(1)に対して(3)、(2)、(4)の順で加え、残量は蒸留水にて調整した。
【0048】
(1)SBRラテックス(固形分量:15質量%)
(2)プロピレングリコール:45質量%
(3)ロジン酸エステル樹脂エマルジョン(固形分:5質量%)
(4)乳化酸化防止剤1(シーリング剤中の酸化防止剤の固形分量:2質量%)
【0049】
<比較例2〜5>
比較例1のパンクシーリング剤の作製において、酸化防止剤としてモノフェノール系酸化防止剤Bの代わりに、表2に示した酸化防止剤を各々表中の配合量として用いた以外は、同様にしてパンクシーリング剤を作製し、同様の評価を行なった。
【0050】
なお、表中の各酸化防止剤としては、以下のものを用いた。
・モノフェノール系酸化防止剤B:スチレン化フェノール(三光株式会社製TSP)
・ビスフェノール系酸化防止剤C:BBMTBP(川口化学工業株式会社製)
・チオビスフェノール系酸化防止剤F:TBMTBP(川口化学工業株式会社製)
・有機イオウ系酸化防止剤G:DLTDP(川口化学工業株式会社製)
・アミン系酸化防止剤H:DDA(川口化学工業株式会社製)
・カテキン:エピカテキン(和光純薬工業(株)製)
(水への溶解度は1.6g/100ml(25℃))
・亜硫酸ナトリウム:亜硫酸ナトリウム(関東化学(株)製)
(水への溶解度は22g/100ml(20℃))
・エリソルビン酸ナトリウム:エリソルビン酸ナトリウム一水和物(関東化学(株)製)
(水への溶解度は16g/100ml(25℃))
【0051】
(評価)
作製したパンクシーリング剤について、下記の評価項目の評価を行った。
【0052】
・製造時間
比較例1においてパンクシーリング剤の調製に要した時間を100とし、これに対する指数として各実施例および比較例のパンクシーリング剤の調製に要した時間を示した。数値が小さい程パンクシーリング剤の調製に要する時間が短いことを示す。
【0053】
・保存性:
作製したパンクシーリング剤をポリプロピレン製のボトルに入れ、雰囲気温度80℃にて保存した。保存後、ゲル化物が存在するか目視し、ゲル化物が発生したときの日数から、以下のランク基準により保存性を評価した。
【0054】
6:101日以上安定していた。
5:91〜100日でゲル化が認められた。
4:81〜90日でゲル化が認められた。
3:61〜80日でゲル化が認められた。
2:41〜60日でゲル化が認められた。
1:40日以内にゲル化が認められた。
【0055】
・パンクシール性:
205/55R16のタイヤに直径2.3mmのドリル穴をあけ、作製したパンクシーリング剤を450ml注入して、タイヤ内圧0.2MPaまで昇圧して車に装着した。その後、60km/h以下で車を走行させ、以下の基準によりパンクシール性を判断した。
【0056】
A:10km未満走行で内圧低下が0になり完全硬化したもの。
B:10km以上走行後に内圧低下が0になり完全硬化した。
C:10km以上走行後でも内圧が低下し、修理部分から空気漏れがあると判断される。
以上の評価を、パンクシーリング剤作製直後(初期)と、前記保存性確認後(保存後)のものについて行った。
以上の結果を表1にまとめて示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
表1〜2の結果に示すように、実施例1〜12および比較例1〜5のパンクシーリング剤は、初期および放置後でもパンクシール性および保存性のいずれも良好な結果が得られた。一方、同量の酸化防止剤を用いた実施例2,6および10と比較例1〜5とを比較すると、水溶性の液劣化防止剤(酸化防止剤)を用いた実施例はいずれも保存性に優れていた。また、実施例のシール性(保存後)の結果に着目すると水溶性の液劣化防止剤の総添加量が7質量%付近において特に優れた効果を発揮していることがわかる。
更に、製造時間に関しては、乳化剤を用いて酸化防止剤を分散させた比較例に対し、実施例のパンクシーリング剤の製造時間は2割以上短縮されていた。これは、本願における液劣化防止剤(酸化防止剤)が水溶性であることから、乳化によってパンクシーリング剤中に分散させる必要がなく、単にパンクシーリング剤中に溶解させればよいためである。しかし、実施例のパンクシーリング剤は、製造時間が短縮されていても比較例と同等以上の効果を奏していることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、合成ゴムラテックスと、水溶性の液劣化防止剤と、を含有するパンクシーリング剤。
【請求項2】
前記液劣化防止剤が、25℃(または20℃)・1気圧下において水100gに0.1g以上溶解する請求項1に記載のパンクシーリング剤。
【請求項3】
前記液劣化防止剤が、カテキン、亜硫酸塩およびエリソルビン酸塩の少なくとも1種を含む請求項1または2に記載のパンクシーリング剤。

【公開番号】特開2012−172115(P2012−172115A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37548(P2011−37548)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】