説明

パンク修理キット

【課題】コンプレッサ装置の圧力計の表示圧力と、実際のタイヤ内圧との差を低減する。
【解決手段】コンプレッサ装置2とボトルユニット3とを直接接続する。キャップ6は、パンクシーリング剤がコンプレッサ装置側に逆流するのを防止する一方弁14を有する。コンプレッサ装置2のシリンダ12は、ポンプ室11からの圧縮空気を受け取る分岐室21を有し、該分岐室21にボトルユニット3側にのびる空気送給路39と、圧力計22と、リリーフバルブ23とを接続した。前記リリーフバルブ23は、バルブケース70の中心孔70Hに収容される弁軸72を具え、かつこの弁軸72の分岐室側の端部に、前記中心孔70Hの軸心Hiと直角な平面をなし圧縮空気の圧力を受ける受圧面80Sを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクしたタイヤにパンクシーリング剤と圧縮空気とを順次注入してパンクを応急的に修理するタイヤのパンク修理キットに関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
パンクを応急的に修理するパンク修理キットとして、パンクしたタイヤにパンクシーリング剤と圧縮空気とを順次注入してポンプアップし、その後、この状態でタイヤを走行させることにより、パンクシーリング剤がタイヤ内腔面を全周に亘って被覆しパンク穴を応急的にシールするものが、例えば特許文献1などに提案されている。
【0003】
この種の修理キットは、図13に示すように、圧縮空気を発生させるコンプレッサ装置a、及びパンクシーリング剤を収容したボトル容器bの口部にキャップcを取り付けたボトルユニットdを具える。又前記キャップcには、圧縮空気をボトル容器内へ送り込む空気取入れ口部c1と、この圧縮空気の送り込みによりボトル容器bからパンクシーリング剤と圧縮空気とを順次取り出すシーリング剤・圧縮空気取出し口部c2とが形成されるとともに、前記空気取入れ口部c1には、コンプレッサ装置aからのホースe1が接続され、かつシーリング剤・圧縮空気取出し口部c2には、一端にタイヤTの空気バルブTvに接続可能な接続金具が取り付くホースe2の他端が接続される。
【0004】
この修理キットの場合、2本のホースe1、e2が必要となるため、誤配管しやすく、又ボトルユニットdの安定性が悪いため、作業中にボトルユニットdが転倒して、必要量のパンクシーリング剤が注入できなくなるという問題がある。
【0005】
そこで本発明者は、ボトルユニットdの空気取入れ口部c1を、コンプレッサ装置aに直接接続可能に構成することを提案した。これにより、ボトルユニットdとコンプレッサ装置aとが一体化してその重心を低く下げることができ、安定性を増して転倒を抑制しうるとともに、空気取入れ側のホースe1が不要となるため、誤配管の恐れを無くすことができる。なお図12(A)は、その時の内部構造の一部を示す概念図であり、図中の符号fは、圧縮空気を発生させるポンプ室、gはそのピストン、hはリリーフバルブ、iは圧力計、jはボトル容器bからのパンクシーリング剤がコンプレッサ装置a側に逆流するのを防止する一方弁、kはポンプ室fの出口f1から一方弁jに至る通路を示す。
【0006】
しかし、ボトルユニットdとコンプレッサ装置aとを直接接続した場合、例えば図12(B)に示すようにコンプレッサ装置aを停止させた時に圧力計iが表示する圧縮空気の表示圧力Piと、この圧縮空気によって充填されたタイヤTの実際の内圧Ptとの間に乖離Gが生じてしまうことが判明した。即ち、コンプレッサ装置aのスイッチを入れっぱなしにし、パンク修理したタイヤをリリーフバルブhのリリーフ圧までポンプアップしようとした場合、実際のタイヤの内圧Ptは、コンプレッサ装置aを停止させた時の圧力計iの表示圧力Piよりも、例えば30kPa程度高くなってしまうという問題がある。このとき、コンプレッサ装置aの能力以上には、タイヤに圧力がかからないため、安全上の問題はないものの、使用者に不信感や不安感を与える恐れを招く。
【0007】
そこで発明者が研究した結果、前記乖離Gは、
(a) 前記リリーフバルブhが開閉する時に生じる圧縮空気の圧力変動;
(b) ボトル容器bからのパンクシーリング剤がコンプレッサ装置a側に逆流するのを防止する前記一方弁j;及び
(c) 前記直接接続したことによる、前記通路kの容積低下;
が原因していることが判明した。
【0008】
即ち、リリーフバルブhにおいて「開」→「閉」の作動が遅いと、その間にリリーフバルブhから圧縮空気が多量に排出されるため、その分、通路k内の圧力が低下するが、前記直接接続によって通路kの容積が小さくなるため、この通路k内の圧力低下(圧力変動)は、いっそう大きなものとなる。他方、前記一方弁jの形成により、大きくなった前記圧力変動のうち、高圧側の圧縮空気が一方弁jを通過してタイヤ側に流れるためタイヤの内圧Ptは高くなる。これに対して、コンプレッサ装置aが停止したとき、圧力計iは、通路k内に残された低圧側の圧縮空気において、その圧力変動が収まった状態の圧力を表示するため表示圧力Piが低くなり、前記乖離Gが発生すると考えられる。
【0009】
従って、この乖離Gを低減するためには、リリーフバルブhの応答性を高め、このリリーフバルブhの開閉によって生じる圧縮空気の圧力変動をできるだけ小さく抑えることが有効である。なお前記一方弁jが形成されない場合には、このような乖離Gは生じないが、直接接続の場合、通路kが短いため、パンクシーリング剤がボトル容器bから逆流してコンプレッサ装置aを損傷させるという恐れを招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−108215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで本発明は、リリーフバルブにおける弁軸の端部に、弁軸が収容される中心孔の軸心と直角な平面をなす受圧面を設けることを基本として、リリーフバルブの応答性を高めてその開閉によって生じる圧力変動を小さく抑えることができ、コンプレッサ装置の圧力計の表示圧力と、実際のタイヤ内圧との差を低減しうるパンク修理キットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本願請求項1の発明は、圧縮空気を吐出させる圧縮空気吐出口部を具えるコンプレッサ装置と、パンクシーリング剤を収容したボトル容器の口部にキャップを取り付けたボトルユニットとを具えるパンク修理キットであって、
前記キャップは、前記圧縮空気吐出口部に直接接続できかつ該圧縮空気吐出口部からの圧縮空気をボトル容器内へ第1の流路をへて送り込む空気取入れ口部と、この圧縮空気の送り込みにより前記ボトル容器からパンクシーリング剤と圧縮空気とを第2の流路をへて順次取り出すシーリング剤・圧縮空気取出し口部とを具え、
かつ前記第1の流路に、パンクシーリング剤がコンプレッサ装置側に逆流するのを防止する一方弁を配するとともに、
前記コンプレッサ装置は、ピストンの往復運動により空気を圧縮させるポンプ室と、このポンプ室からの圧縮空気を受け取る分岐室とを有するシリンダを具え、
しかも前記分岐室に、該分岐室から圧縮空気を前記圧縮空気吐出口部に送り出す空気送給路と、圧縮空気の圧力を測定する圧力計と、リリーフバルブとを接続させるとともに、
前記リリーフバルブは、前記シリンダから突出する円筒状をなしかつその中心孔に分岐室に向かって先細コーン状に傾斜する弁座面を有する弁座部を設けたバルブケースと、前記中心孔内に配されかつ前記弁座面と離接することにより前記弁座部を開閉しうる弁軸と、前記弁軸を弁座面に向かって付勢するバネ手段とを具え、
しかも前記弁軸は、分岐室側の端部に、前記中心孔の軸心と直角な平面をなし前記分岐室内の圧縮空気の圧力を受ける受圧面を設けたことを特徴としている。
【0013】
又請求項2の発明では、前記弁軸は、前記受圧面を有する弁軸本体と、この弁軸本体に保持されかつ前記弁座面に接触して前記弁座部を閉じるOリングとを具えるとともに、前記受圧面の直径は、前記Oリングの外径の45%以上であることを特徴としている。
【0014】
又請求項3の発明では、前記弁軸は、前記受圧面を有する弁軸本体と、この弁軸本体に保持されかつ前記弁座面に接触して前記弁座部を閉じるOリングとを具えるとともに、前記弁軸本体を合成樹脂で形成することによりその質量を減じたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明は叙上の如く、リリーフバルブは、弁軸の分岐室側の端部に、この弁軸が収容される中心孔の軸心と直角な平面をなす受圧面を設けている。そのため、圧縮空気から受ける圧力を、ロスなく弁軸の作動方向に作用させることができ、リリーフバルブの開閉の応答性を向上させうる。即ち、リリーフバルブの開閉によって生じる圧力差を小さく抑えることができ、コンプレッサ装置の圧力計の表示圧力と、タイヤの実際の内圧との差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のパンク修理キットを用いてパンク修理を行う場合を示する斜視図である。
【図2】ボトルユニットを示す断面図である。
【図3】ボトルユニットとコンプレッサ装置との接続前の状態を示す部分断面図である。
【図4】キャップの内部構造を分解して示す断面図である。
【図5】(A)、(B)は、弁座ケースを示す側面図及び斜視図である。
【図6】コンプレッサ装置の内部構造を示す平面図である。
【図7】コンプレッサ本体を示す分解斜視図である。
【図8】その主要部を示す部分断面図である。
【図9】リリーフバルブを示す断面図である。
【図10】リリーフバルブの開状態を拡大して示す部分断面図である。
【図11】表1の従来例で用いた従来のリーフバルブを示す断面図である。
【図12】(A)はボトルユニットとコンプレッサ装置とを直接接続した修理キットの内部構造の一部を示す概念図、(B)はその時の問題点を示す表示圧力Piとタイヤ内圧Ptとのグラフである。
【図13】従来のパンク修理キットを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のパンク修理キット1は、コンプレッサ装置2とボトルユニット3とを具えるとともに、前記ボトルユニット3は、パンクシーリング剤を収容したボトル容器4と、その口部5(図3に示す)に取り付くキャップ6とから構成される。前記コンプレッサ装置2とボトルユニット3とは、パンク修理現場において、ホース類を介在させることなく直接接続されるとともに、前記ボトルユニット3に設けるシーリング剤・圧縮空気取出し口部7には、一端がタイヤTの空気バルブTvに接続される送給ホース29の他端が連結されている。この送給ホース29は、保管時には、前記シーリング剤・圧縮空気取出し口部7に連結された状態で、前記キャップ6の周囲に巻き付けられている。
【0018】
前記ボトル容器4は、図2に示すように、胴部30の下端に、パンクシーリング剤を出し入れしうる小径円筒状の口部5を突出している。
【0019】
又前記キャップ6は、前記圧縮空気吐出口部8に直接接続できかつ該圧縮空気吐出口部8からの圧縮空気をボトル容器4内へ送り込む空気取入れ口部27と、この圧縮空気の送り込みにより前記ボトル容器4からパンクシーリング剤と圧縮空気とを順次取り出すシーリング剤・圧縮空気取出し口部7とを具える。
【0020】
具体的には、前記キャップ6は、底面をなす底板部分31と、前記ボトル容器4の口部5を取り付けるボトル取付部分32と、その間に配されるくびれ部分33とを一体に具えるキャップ本体6Aを有する。又このキャップ本体6A内には、前記空気取入れ口部27からボトル容器4の前記口部5内にのびる第1の流路35と、シーリング剤・圧縮空気取出し口部7からボトル容器4の前記口部5内にのびる第2の流路36とが形成される。
【0021】
前記ボトル取付部分32は、前記口部5を固定する取付け凹部32Aと、この取付け凹部32Aの底面から隆起するボス部32Bとを有する。前記取付け凹部32Aは、その内壁面に設ける内ネジにより前記口部5を螺着しうる。又前記ボス部32Bの上面では、前記第1の流路35の上端をなす第1流路上開口部37と、前記第2の流路36の上端をなす第2の流路上開口部38とがそれぞれ開口している。
【0022】
そして前記第1の流路35には、パンクシーリング剤がコンプレッサ側に逆流するのを防止する一方弁14が配される。
【0023】
前記第1の流路35は、前記第1流路上開口部37から下方にのびる縦流路部35Aと、前記空気取入れ口部27から横向きにのびる横流路部35Bと、その間を継ぐL字状の継ぎ流路部35Cとから構成される。図4に示すように、前記キャップ6には、前記第1流路上開口部37から下方に向かって内径を段階的に増加させた段付き状の縦孔50が形成される。この縦孔50は、前記第1流路上開口部37から下方にのびる第1の縦孔部50Aと、この第1の縦孔部50Aに第1の段差面S1を介して連なる第2の縦孔部50Bと、この第2の縦孔部50Bに第2の段差面S2を介して連なる第3の縦孔部50Cと、この第3の縦孔部50Cに第3の段差面S3を介して連なりかつ下端がキャップ本体6Aの底面で開口するととも下端側に周方向にのびる係止溝51を設けた第4の縦孔部50Dとを含んで形成される。
【0024】
そして前記第1〜3の縦孔部50A〜50Cによって、前記縦流路部35Aが形成される。又前記第4の縦孔部50D内には、弁座ケース52が該第4の縦孔部50Dの下端から挿入されて保持される。
【0025】
前記弁座ケース52は、前記第4の縦孔部50D内に挿入される円柱状の基部53を有し、該基部53の上端には、弁座63を取り付ける弁座取付凹部53aが凹設される。又基部53の下端側には、前記係止溝51と係合して第4の縦孔部50Dからの抜け留めを行う抜け留め手段54が設けられる。前記弁座63は、弁孔63Hを有するリング状体からなる。この弁座63は、本例では硬質のゴム弾性体からなり、前記第3の段差面S3と弁座取付凹部53aの底面との間で挟まれて保持される。
【0026】
又前記基部53には、前記継ぎ流路部35Cが形成される。この継ぎ流路部35Cは、前記弁座取付凹部53aの底面で開口し前記弁孔63Hを介して前記縦流路部35Aと導通する縦の継ぎ流路部分35Caと、その下端で折れ曲がりかつ前記基部53の外周面上で開口するとともに前記横流路部35Bと導通する横の継ぎ流路部分35Cbとからなる。又基部53の周囲には、前記横の継ぎ流路部分35Cbの開口部よりも上側及び下側の各位置に、それぞれ前記基部53と第4の縦孔部50Dとの間をシールするOリング55を取り付ける断面半円弧状のOリング取付溝53b、53bが形成される。これにより、横流路部35Bと継ぎ流路部35Cとが密に接続される。
【0027】
又前記抜け留め手段54は、図5に示すように、前記基部53の下端から軸心に沿って上方にのびる中心孔部56と、この中心孔部56によってその周囲に形成される環状の周壁部53cを周方向の複数の扇状片53c1に分割しうる小巾の複数本のスリット57と、各前記扇状片53c1の外周面に突設され前記係止溝51と係合しうる周方向の係止リブ58とを具える。
【0028】
前記中心孔部56は、前記継ぎ流路部35Cよりも下方で終端する。又前記スリット57は、前記基部53の下端から上方に向かって放射状にのび、これにより前記周壁部53cを半径方向内外に弾性変形可能な複数の扇状片53c1に分割している。又、本例の抜け留め手段54は、前記中心孔部56に嵌着される嵌入軸59を含む。この嵌入軸59は、前記扇状片53c1の半径方向内方への弾性変形を阻止し、前記係止溝51からの係止リブ58の係合外れを防止する。又前記弁座ケース52は、前記基部53の外周面から突出する例えばレバー状の突起60により廻り止めされ、弁座ケース52を縦孔50に挿入する際の、横流路部35Bの開口と、横の継ぎ流路部分35Cbの開口との位置合わせが行われる。
【0029】
又一方弁14は、前記図4の如く、前記弁座63と、前記第3の縦孔部50C内に遊挿されかつ前記弁座63の弁孔63Hを開閉しうるボール状の球体弁64と、前記第2の縦孔部50Bに配されかつ前記球体弁64を弁座63に向かって付勢する付勢バネ65とを具える。
【0030】
次に、前記空気取入れ口部27は、前記図2の如く、本例では、前記くびれ部分33から前記圧縮空気吐出口部8に向かって突出する接続ノズル41であって、この接続ノズル41が前記圧縮空気吐出口部8である嵌合凹部28に嵌り合うことにより直接接続される。
【0031】
前記接続ノズル41は、図3に示すように、外径一定のノズル本体41Aの先端側に、先細コーン状のテーパ面部41Bを具えるとともに、前記ノズル本体41Aの外周には、嵌合凹部28の内周面との間をシールするOリング43が装着される。なお消耗品である前記Oリング43を、ボトルユニット3側に配することで、コンプレッサ装置2をメンテナンスすることなく繰り返し使用することが可能となる。
【0032】
又本例のパンク修理キット1では、パンク修理中に、前記圧縮空気吐出口部8と空気取入れ口部27との接続が外れてパンクシーリング剤が周囲を汚損するのを防止するための固定手段34が設けられる。
【0033】
この固定手段34は、前記キャップ6に形成される係止手段34Aと、前記コンプレッサ装置2に形成される抜け留め手段34Bとからなる。前記係止手段34Aは、本例では、前記接続ノズル41の両側(本例では上下)で、コンプレッサ装置2に向かって突出するとともに先端に直角三角形状のフック部を設けた一対の係止爪45からなる。又抜け留め手段34Bは、本例では、前記係止爪45と向き合う位置に配され、かつ前記係止爪45と係合して抜け止めしうる爪係合穴46を有する。
【0034】
次に、前記コンプレッサ装置2は、図6に示すように、収納ケース9に、モータMと、該モータMに連結されるピストン10との間でポンプ室11を形成するシリンダ12とを有するコンプレッサ本体13を少なくとも収納している。
【0035】
前記図1に示す如く、前記収納ケース9は、小高さの偏平略直方体状の箱体をなし、上下のケース部に分解可能に形成されている。又前記モータMとしては、自動車の12V直流電源で作動する市販の種々のDCモータが採用できる。このモータMには、自動車のシガーライターソケットに接続可能な電源プラグ15を先端に設けた電源コードが、前記収納ケース9の上板部に取り付く電源スイッチを介して接続されている。なお電源プラグ15は、前記下板部に設ける凹所(図示しない)内に取り出し自在に収納される。
【0036】
又前記コンプレッサ本体13は、図7、8に示すように、前記モータMにクランク機構17を介して連結されるピストン10と、このピストン10を往復運動可能に収容するとともに前記ピストン10との間で空気を圧縮するポンプ室11を形成するシリンダ12とを具える。前記ピストン10には、このピストン10をその軸芯方向に貫通してのびる吸気孔19Aと、この吸気孔19Aをポンプ室側からバネ性を有して閉じる、例えばゴム、合成樹脂、金属等の弾性体などの弁19Bとを用いた吸気弁19が形成される。
【0037】
前記シリンダ12は、前記ポンプ室11を形成する円筒状のシリンダ本体12Aの端部に、前記ポンプ室11からの圧縮空気を受け取る分岐室21を形成するシリンダ副部12Bを一体に具える。前記ポンプ室11と分岐室21とは、小孔12hを介して導通される。なお小孔12hには、一方弁(図示しない。)を設けてもよい。
【0038】
そして、前記分岐室21には、この分岐室21から圧縮空気を前記圧縮空気吐出口部8に送り出す空気送給路39と、圧縮空気の圧力を測定する周知の圧力計22と、圧縮空気の過圧を逃がすリリーフバルブ23とが接続される。
【0039】
なお前記空気送給路39は、図3に示すように、シリンダ副部12Bから収納ケース9を貫通してのびる円筒状部25の中心孔として形成されるとともに、その開口端側に、圧縮空気吐出口部8である嵌合凹部28を形成している。この嵌合凹部28は、内径一定の平行孔部28Aの前後に、シリンダ副部12Bに向かって先細コーン状をなす前後のテーパ面部28B、28Cを連設している。前記後のテーパ面部28Cは、前記接続ノズル41先端のテーパ面部41Bとほぼ同傾斜をなし、直接接続、前記テーパ面部41Bと当接することにより接続ノズル41と嵌合凹部28とを同心かつ正確な位置に位置決めしうる。なお前記前のテーパ面部28Bは、接続ノズル41を挿入する際のガイドとして機能する。
【0040】
次に、前記リリーフバルブ23は、図9、10に示すように、前記シリンダ12から突出する円筒状をなしかつその中心孔70Hに弁座部71を形成したバルブケース70と、前記中心孔70H内に配されかつ前記弁座部71を開閉しうる弁軸72と、前記弁軸72を弁座部71に圧接させるバネ手段73とを具える。
【0041】
具体的には、前記バルブケース70の中心孔70Hは、前記分岐室21に向かって先細コーン状に傾斜する弁座面71Sを有する前記弁座部71を具え、これにより前記中心孔70Hを、弁座部71よりも分岐室側の小径な内の孔部70Haと、弁座部71よりも突出端側の大径な外の孔部70Hbとに区分している。なお、要求により内の孔部70Haを排除する、即ち前記弁座部71を中心孔70Hの突出端側の端部に形成することもできる。又外の孔部70Hbには、突出端側に、調整ネジ74を螺着するネジ部75が形成される。
【0042】
前記弁軸72は、前記中心孔70Hの軸心Hiと同心に配される弁軸本体76と、この弁軸本体76に一体に保持されかつ前記弁座面71Sに接触して前記弁座部71を閉じるOリング77とを具える。
【0043】
又前記弁軸本体76は、前記Oリング77を嵌着する周溝状の取付凹部78を具えるとともに、この取付凹部78の突出端側には、前記調整ネジ74と当接することにより前記弁軸72の突出端側への後退移動を制限する軸部79を突出している。なお前記軸部79には、前記バネ手段73の一端を同心に保持するバネ保持部79aが設けられるとともに、このバネ手段73の他端は、前記調整ネジ74に同心に保持される。
【0044】
又前記取付凹部78の分岐室側には、偏平な頭部80が形成されるとともに、この頭部80の分岐室側の端部には、前記軸心Hiと直角な平面をなし前記分岐室21内の圧縮空気の圧力を受ける受圧面80Sが形成される。
【0045】
このような弁軸72は、前記受圧面80Sを軸心Hiと直角な平面としているため、圧縮空気の圧力をロスなく弁軸72の作動方向に作用させることができ、リリーフバルブ23の開閉の応答性を向上させることができる。即ち、リリーフバルブ23の「開」→「閉」の作動を早めることができ、その間にリリーフバルブ23から排出される空気量を減じ、分岐室21内の圧力変動を低く抑えうる。これにより、圧力計22の表示圧力Piと、実際のタイヤ内圧Ptとの差を低減することができる。
【0046】
特に応答性の向上効果を高く発揮させるためには、前記受圧面80Sの直径D1を、前記Oリング77の外径D2の45%以上、さらには50%以上とするのが好ましく、40%を下回ると、応答性の向上効果が充分に発揮されなくなる。なお直径D1の上限は、前記弁座面71Sと当接しない範囲で適宜設定できる。本例では、受圧面80Sの直径D1を、前記内の孔部70Haの直径D3の80%以上とするのも好ましい。
【0047】
前記応答性を向上させるためには、前記弁軸72の質量を減じることも効果的であり、そのために、前記弁軸本体76を、金属製に代えて合成樹脂で形成している。又同目的で、前記頭部80の厚さtを1.0mm以下に減じている。
【0048】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0049】
本発明の効果を確認するため、図9に示す構造をなすリリーフバルブを表1の仕様で試作するとともに、そのリリーフバルブを本発明に係わる図1〜8に示す構造のパンク修理キットに採用した。そして、コンプレッサ装置のスイッチを入れっぱなしにし、パンク修理したタイヤをリリーフバルブのリリーフ圧までポンプアップした。その時の、実際のタイヤ内圧Ptと、コンプレッサ装置を停止させたときに圧力計が示す表示圧力Piとを計測し、その圧力差Pi−Ptを求めた。表1には、10回テストを行ったときの圧力差の平均値を記載してる。比較のために、図11に示す構造をなすリリーフバルブを用いたパンク修理キットを従来例として、同様のテストを行った。実施例、比較例及び従来例は、リリーフバルブの弁軸のみ相違し、その他の仕様は実質的に同仕様としている。
【0050】
【表1】

【0051】
表の如く、実施例はリリーフバルブの応答性が高まり、圧力計の表示圧力と実際のタイヤ内圧との差を低減しうるのが確認できる。
【符号の説明】
【0052】
1 パンク修理キット
2 コンプレッサ装置
3 ボトルユニット
4 ボトル容器
5 口部
6 キャップ
7 シーリング剤・圧縮空気取出し口部
8 圧縮空気吐出口部
10 ピストン
11 ポンプ室
12 シリンダ
14 一方弁
21 分岐室
22 圧力計
23 リリーフバルブ
27 空気取入れ口部
35 第1の流路
36 第2の流路
39 空気送給路
70 バルブケース
70H 中心孔
71 弁座部
71S 弁座面
72 弁軸
73 バネ手段
76 弁軸本体
77 Oリング
80S 受圧面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を吐出させる圧縮空気吐出口部を具えるコンプレッサ装置と、パンクシーリング剤を収容したボトル容器の口部にキャップを取り付けたボトルユニットとを具えるパンク修理キットであって、
前記キャップは、前記圧縮空気吐出口部に直接接続できかつ該圧縮空気吐出口部からの圧縮空気をボトル容器内へ第1の流路をへて送り込む空気取入れ口部と、この圧縮空気の送り込みにより前記ボトル容器からパンクシーリング剤と圧縮空気とを第2の流路をへて順次取り出すシーリング剤・圧縮空気取出し口部とを具え、
かつ前記第1の流路に、パンクシーリング剤がコンプレッサ装置側に逆流するのを防止する一方弁を配するとともに、
前記コンプレッサ装置は、ピストンの往復運動により空気を圧縮させるポンプ室と、このポンプ室からの圧縮空気を受け取る分岐室とを有するシリンダを具え、
しかも前記分岐室に、該分岐室から圧縮空気を前記圧縮空気吐出口部に送り出す空気送給路と、圧縮空気の圧力を測定する圧力計と、リリーフバルブとを接続させるとともに、
前記リリーフバルブは、前記シリンダから突出する円筒状をなしかつその中心孔に分岐室に向かって先細コーン状に傾斜する弁座面を有する弁座部を設けたバルブケースと、前記中心孔内に配されかつ前記弁座面と離接することにより前記弁座部を開閉しうる弁軸と、前記弁軸を弁座面に向かって付勢するバネ手段とを具え、
しかも前記弁軸は、分岐室側の端部に、前記中心孔の軸心と直角な平面をなし前記分岐室内の圧縮空気の圧力を受ける受圧面を設けたことを特徴とするパンク修理キット。
【請求項2】
前記弁軸は、前記受圧面を有する弁軸本体と、この弁軸本体に保持されかつ前記弁座面に接触して前記弁座部を閉じるOリングとを具えるとともに、前記受圧面の直径は、前記Oリングの外径の45%以上であることを特徴とする請求項1記載のパンク修理キット。
【請求項3】
前記弁軸は、前記受圧面を有する弁軸本体と、この弁軸本体に保持されかつ前記弁座面に接触して前記弁座部を閉じるOリングとを具えるとともに、前記弁軸本体を合成樹脂で形成することによりその質量を減じたことを特徴とする請求項1又は2記載のパンク修理キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−101450(P2012−101450A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252122(P2010−252122)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】