説明

パンチとリテーナでなる加工冶具

【課題】従来、パンチを移動するには、リテーナに、締付け孔・ガイド孔を開設する際に、パンチの移動距離を見越して、大きめの取付け面積を取って、パンチ・ダイ側母材の締付け孔・ガイド孔に対応する位置に、被締付け孔・被ガイド孔を開設する。パンチ側母材に、数回、この被締付け孔・被ガイド孔を開設すると、このパンチ側母材が脆弱となり、使用不可能となる。パンチ側母材(資源)の無駄と、メンテナンスの複雑化を招来する。
【構成】パンチ側母材に設けたパンチとリテーナに、方形状又は環状の台座孔と、この台座孔に連通する方形状の貫通孔を開設し、台座孔及び貫通孔に、隙間を介して、方形状又は環状の台座と方形状の軸杆を備えたパンチを挿入し、隙間に一枚、二枚のシム板を挿入し、シム板を、リテーナ側面から螺入するパンチ押えボルトで緊締固止するパンチとリテーナでなる加工冶具。パンチの移動ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、樹脂製品の取付孔の開設に使用するパンチとリテーナでなる回り留めを兼ねた加工冶具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の展開成型した樹脂製品の取付孔を開設(穿孔)するに際して、樹脂成型の特徴から、取付孔を開設する目印の位置に誤差が発生することは間々あり得る。例えば、大型の樹脂製品で、成型段階での温度差による収縮の見込み違い(見込み違いによる公差)、また孔穿け位置の見込み違い(見込み違いによる公差)で、その誤差が発生する確立が高く、その都度、パンチの取付け位置を変更する(パンチを移動する)必要があり、従来の新作の場合、次のような方法を利用して行っていた。その一例を説明すると、リテーナに、締付け孔及び/又はガイド孔を開設する際には、パンチの移動距離を見越して大きめに面積を取り、この移動距離に合わせて、パンチ側母材の前記締付け孔及び/又はガイド孔に対応する位置に、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を、大きめに開設する方法である。しかし、パンチ側・ダイ側に、数回、この被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設すると、このパンチ側・ダイ側が脆弱となり、使用不可能となることと、これに伴って、パンチ側・ダイ側母材(資源)の無駄と、メンテナンスの複雑化を招来する等の問題が発生していた。
【0003】
そして、従来のパンチの移動に対する、楕円パンチとリテーナでなる加工冶具の問題点を示した図6−1と、図6−2において、例えば、パンチ側母材では、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設するのが困難な場合には、例えば、ダイボタン等の他のパンチ側母材を充填する等の補完加工をした後に、再度、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設する。一方、ダイ側母材では、パンチ側母材及び/又はパンチの位置の移動に対応して、このダイ側母材の孔の周辺に、肉盛加工を行い、その後にパンチ用の孔を開設する。以上のような従来のパンチ側・ダイ側母材の修正方法では、大変な手間と作業を介して補完することになり、大変であること、また効率が悪いこと等の問題を抱えている。(この図6−1と、図6−2には、名称を記入した。)
また、従来のパンチの移動に対する、このパンチとリテーナでなる加工冶具の問題点を示した図7−1〜図7−4に示した例では、元のパンチ側母材では、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設するのが困難な場合には、例えば、この被締付け孔及び/又は被ガイド孔を大きく開設する、図7−1の如く、開設作業を行なった後に、図7−2の如く、端面ボルトを、各開設孔にそれぞれねじ込み、図7−3の如く、平坦加工をする。その後に、図7−4に示した如く、新しい被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設することで、パンチの移動に対応する大掛かりな修正方法もあり得る。尚、図示及び/又は説明は省略するが、ダイ側母材でも同様である。(この図7−1〜図7−4には、名称を記入した。)
上記の問題を改良することと、この改良に適した先行文献を挙げると、次のような文献(1)と、文献(2)が、開示されている。
【0004】
文献(1)は、特開2005−6375の「ハイブリット型ステッピングモータの回転子の製造方法」である。この発明は、パンチの基部を四角柱状に形成し、パンチプレートにはパンチの基部を挿入する断面正方形の支持孔を形成し、このパンチの基部と支持孔の内側面との間に隙間が形成され、この隙間に差込むシム板の枚数を調節することにより、パンチプレートに対して、パンチの取付け位置を、X−Y方向の任意の方向に調節できる構造であり、従来の問題点であった、加工精度が要求される場合に、実際のプレス金型を用いて加工した状態をチェックしながらパンチの取付け位置を微調整する必要がなくなり、作業の簡易化と、効率化、並びにスピーディな取扱ができる特徴がある。
【0005】
しかし、この発明は、ハイブリッド型ステッピングモータの回転子の製造方法であり、他の加工装置には採用できない、またこの図9に示されているシム板の挿入方法では、このシム板が脱抜し、構造的に問題を残していると考えられる。
【0006】
文献(2)は、特開2003−33641の「超高圧発生装置」である。この発明は、上ベースブロックの挿入ブロックの下面には、加圧ブロックのベースが取付けられ、このベースは、下端に頂点を有する円錐状であり、この下端には、圧縮媒体を加圧するための上アンビルが取付けられている。この上アンビルとベースの間には、シム(シム板)が設けられているので、このシムの厚さを変えて、上アンビルとベースの間の間隔を調整できる。従って、このシムの厚さを変えれば上アンビルの下面と挿入ブロックの下面の間との距離を変え得る。同様に、加圧ブロックにおいて、シムの厚さを変えることによって、下アンビルの上面と下ベースブロックの挿入ブロックの上面の間の距離を変えることができる。また他の加圧ブロックにおいて、シムの厚さを変えることによって、サイドアンビルの前面とスライディングブロックの後四角錐部分の前面との間の距離を変えることができる構造であり、上下のガイドブロック、上下のベースブロック及び各スライディングブロックのいずれかの製造誤差が、設計段階における許容誤差よりも大きくなっても、各加圧ブロックのシムの厚さを変えれば、各サイドアンビルの面間距離、及び上下のアンビルの面間距離を許容誤差内に収まるように調整できる特徴がある。
【0007】
しかし、この発明は、四方向(左右側と、底部)の加圧ブロックと、スライディングブロックと、並びに四方向のアンビルとで構成した金型であり、この金型の加圧ブロックとアンビルとの隙間に、シムを設けて、アンビルの位置を変更する構造であり、全てのアンビルのサポートを均一にできるが、構造が複雑であること、四方向であり、その相互間の位置合せに、経験と、時間を要する課題が考えられる。またシムの締付けに関する機構の開示がなく、前記文献(1)と同様に問題を残していると考えられる。
【0008】
【特許文献1】特開2005−6375
【特許文献1】特開2003−33641
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した、文献(1)、(2)は、シムの取付け、締付けに関する問題を残しており、その改良が望まれる処である。そこで、本発明は、「1」 シム板を確実に取付けること、またシム板の脱抜防止が図れる構造を提案すること、さらには前後左右方向への位置の移動のみならず、対角線方向への移動も可能とするパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案すること等を意図する。また、本発明は、「2」 樹脂製品の取付孔の開設に使用し、樹脂製品の伸縮公差と、孔位置の見込み違いによる公差、又は製品の他の寸法公差をカバーすることが可能なパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案することを意図する。さらに、本発明は、「3」 異形パンチにおける回り留めが、確実にできるパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案することを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、前述の「1」、「2」に示した特徴を発揮することを意図する。
【0011】
請求項1は、パンチ側母材に締付けボルトで螺着される、パンチとリテーナでなる加工冶具において、
この方形状、又は環状の台座孔を開設するとともに、この台座孔に連通する方形状の貫通孔を開設し、この台座孔及び貫通孔に、隙間を介して、方形状、又は環状の台座と、方形状の軸杆を備えたパンチを挿入し、前記隙間に一枚〜二枚のシム板を挿入可能とし、このシム板を、前記リテーナの側面から螺入するパンチ押えボルトで、前記パンチの側面に緊締固止する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の目的を達成し、この目的を達成するのに最適な加工冶具の活用対象製品の提示をすること、また、本発明の加工冶具の効果を最も発揮でき、かつ仕上がりの精度が確保できる加工冶具の活用対象製品を提示すること等を意図する。
【0013】
請求項2は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記加工冶具は、樹脂・金属製品の取付孔の開設に使用し、樹脂・金属製品の伸縮公差と、又は孔位置の見込み違いによる公差、製品の他の寸法公差をカバーする構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1の目的を達成し、この目的を達成するのに最適な加工冶具の軸杆とシム板の構造と、その取扱いと、安全性が確保できる加工冶具の軸杆とシム板の構造を提示すること等を意図する。
【0015】
請求項3は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記パンチの方形状の軸杆に、シム板の脱落防止を図る溝を形成し、この溝に係合する突部を、シム板に突設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1の目的を達成し、この目的を達成するのに最適な加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、その取扱いと、安全性、並びに耐久性・強度等が確保できる加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造を提示すること等を意図する。
【0017】
請求項4は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記パンチ、又はリテーナの側面から螺入されるパンチ押えボルト用の螺孔を、このパンチ、又はリテーナの四方向から、このパンチの各側面に向って、それぞれ開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0018】
請求項5の発明は、請求項4の目的を達成し、この目的を達成するのに最適な加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、その取扱いと、安全性、並びに耐久性・強度等が確保できる加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、またリテーナにパンチプレートの締付け孔、及びノック用のガイド孔を複数開設した加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造を提示すること等を意図する。
【0019】
請求項5は、請求項4に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記リテーナに、パンチ側母材に取付けるための締付け孔を複数開設し、この締付け孔の軸芯と、同じ軸芯方向にノック用のガイド孔を複数開設する構成とし、この締付け孔及び/又はガイド孔の間に、前記パンチ押えボルト用の螺孔を開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0020】
請求項6の発明は、請求項1の目的を達成すること、この目的を達成するために、確実な回り留めができる構造を提示すること等を意図する。
【0021】
請求項6は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記方形状の軸杆を設けたパンチは、方形状、又は楕円形状等の異形パンチとし、この異形パンチを、前記方形状の軸杆と、方形状の貫通孔を介して、回り留め構造としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明は、パンチ側母材に締付けボルトで螺着される、パンチとリテーナでなる加工冶具において、
方形状、又は環状の台座孔を開設するとともに、台座孔に連通する方形状の貫通孔を開設し、台座孔及び貫通孔に、隙間を介して、方形状、又は環状の台座と、方形状の軸杆を備えたパンチを挿入し、隙間に一枚〜二枚のシム板を挿入可能とし、シム板を、リテーナの側面から螺入するパンチ押えボルトで、パンチの側面に緊締固止する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0023】
従って、請求項1は、下記の特徴を有する。
「1」 シム板を確実に取付けできること、またシム板の脱抜防止が図れる構造を提案すること、さらには前後左右方向への位置の移動のみならず、対角線方向への移動も可能とするパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案できる。
「2」 樹脂製品の取付孔の開設に使用し、樹脂製品の伸縮公差と、孔位置の見込み違いによる公差、又は製品の他の寸法公差をカバーすることが可能なパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案できる。
「3」 異形パンチにおける回り留めが、確実にできるパンチとリテーナでなる加工冶具の構造を提案できる。
【0024】
請求項2の発明は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
加工冶具は、樹脂・金属製品の取付孔の開設に使用し、樹脂・金属製品の伸縮公差と、又は孔位置の見込み違いによる公差、製品の他の寸法公差をカバーする構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0025】
従って、請求項2は、請求項1の目的を達成でき、かつこの目的を達成するのに最適な加工冶具の活用対象製品の提示ができること、また、本発明の加工冶具の効果を最も発揮でき、かつ仕上がりの精度が確保できる加工冶具の活用対象製品を提示できること等の特徴を有する。
【0026】
請求項3の発明は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
パンチの方形状の軸杆に、シム板の脱落防止を図る溝を形成し、溝に係合する突部を、シム板に突設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0027】
従って、請求項3は、請求項1の目的を達成でき、かつこの目的を達成するのに最適な加工冶具の軸杆とシム板の構造と、その取扱いと、安全性が確保できる加工冶具の軸杆とシム板の構造を提示できること等の特徴を有する。
【0028】
請求項4の発明は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
パンチ、又はリテーナの側面から螺入されるパンチ押えボルト用の螺孔を、パンチ、又はリテーナの四方向から、パンチの各側面に向って、それぞれ開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0029】
従って、請求項4は、請求項1の目的を達成でき、かつこの目的を達成するのに最適な加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、その取扱いと、安全性、並びに耐久性・強度等が確保できる加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造を提示すること等を意図する。
【0030】
請求項5の発明は、請求項4に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
リテーナに、パンチ側母材に取付けるための締付け孔を複数開設し、締付け孔の軸芯と、同じ軸芯方向にノック用のガイド孔を複数開設する構成とし、締付け孔及び/又はガイド孔の間に、パンチ押えボルト用の螺孔を開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0031】
従って、請求項5は、請求項4の目的を達成でき、この目的を達成するのに最適な加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、その取扱いと、安全性、並びに耐久性・強度等が確保できる加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造と、またリテーナにパンチプレートの締付け孔、及びノック用のガイド孔を複数開設した加工冶具のパンチ、又はリテーナの構造を提示できること等の特徴を有する。
【0032】
請求項6の発明は、請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
方形状の軸杆を設けたパンチは、方形状、又は楕円形状等の異形パンチとし、異形パンチを、方形状の軸杆と、方形状の貫通孔を介して、回り留め構造としたパンチとリテーナでなる加工冶具である。
【0033】
従って、請求項6は、請求項1の目的を達成できること、この目的を達成するために、確実な回り留めができる構造を提供できること等の特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一例を説明する。
【0035】
図面の説明をすると、図1は楕円形状又は方形状の加工部を供えたパンチ(以下、パンチとする。)とリテーナでなる加工冶具の斜視図、図2は図1の分解斜視図、図3はパンチとリテーナでなる加工冶具の断面図、図4はパンチとリテーナでなる加工冶具の平面図、図5はパンチとリテーナでなる加工冶具で、各種の取付け用の孔(取付孔)を開設する樹脂製品を示した概念図である。また、図6−1は従来の楕円パンチとリテーナでなる加工冶具と、パンチ側母材との関係を説明する断面図、図6−2はダイ側母材に孔を開設し、この孔にダイボタンを打込み加工する断面図、図6−3は従来の楕円パンチとリテーナでなる加工冶具の平面図、図7は、従来の回り留め構造の一例を示した断面模式図、そして、図7−1はパンチ側母材に被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設するのが困難な場合、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を大きく開設する開設作業を行なった状態の模式図、図7−2は、図7−1において開設した孔に、端面ボルトをそれぞれねじ込んだ状態の模式図、図7−3は、図7−2において、ねじ込んだ端面ボルトを平坦に加工した開設した状態の模式図、図7−4は、新しい被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設した状態の模式図である。そして、図8は従来の回り留め構造の一例を示した断面模式図である。
【0036】
以下、好ましい一実施例を説明する。
【0037】
図中、1は略方形状のリテーナで、このリテーナ1は、締付け孔に挿入される締付けボルト(締付け具)と、ガイド孔に挿入されるノック(ノックピン)を介して、パンチホルダー(図示せず)に設けたパンチプレート2(パンチ側母材)に、着脱自在に設けられる。そして、このリテーナ1とパンチプレート2には、締付け孔100(被締付け孔200)を、複数、かつ間隔をおいて開設し、またこの締付け孔100(被締付け孔200)に併設して、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)を、複数、かつ間隔をおいて開設する。従って、リテーナ1はパンチプレート2に、締付け孔100(被締付け孔200)への締付けボルト(図示せず)と、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)へのノック(図示せず)を介して、緊締固止(螺着)される。そして、この締付け孔100(被締付け孔200)と、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)との間の板部1aには、パンチ押えボルト12a〜12d用の螺孔5a〜5dを開設する。
【0038】
そして、このリテーナ1には、取付け側1bに方形状、又は環状の台座孔3(環状の場合は、加工が容易となるが、方形状とすることも可能である)を開設するとともに、この台座孔3に連通し、またこの台座孔3より小径で、かつ方形状の貫通孔4を開設し、またこの貫通孔4に向って、リテーナ1の各側面1c(四辺)からパンチ押えボルト12a〜12d用の螺孔5a〜5dを開設する。この螺孔5a〜5dが、貫通孔4に連通している。
【0039】
また図中7は方形状、又は環状の台座8(台座8が環状の場合は、加工が容易となる。また、台座8を方形状とすることも可能であり、この方形状の場合は、台座孔3への固定が強固に図れ、安定性に優れる)と、この台座8より小径で、かつ方形状の軸杆10を備えたパンチ(シム板13の押圧固止を図るため、このパンチ7は、少なくとも軸杆10を方形状とする。)で、このパンチ7は、前記リテーナ1に開設した台座孔3と、方形状の貫通孔4に挿入される。この挿入時に、方形状、又は環状の台座孔3及び方形状の貫通孔4と、方形状、又は環状の台座8及び方形状の軸杆10との間には、全体視して方形状の隙間11a〜11dが形成される。尚、方形状の貫通孔4と、方形状の軸杆10との間に形成される各隙間11a〜11dは、パンチ7の移動時のスペース空間であり、後述するシム板13の差込み枚数の調整を可能とする。
【0040】
この各隙間11a〜11dにシム板13を一枚〜複数枚挿入し、前記螺孔5a〜5dから、それぞれパンチ押えボルト12a〜12dを螺入することで、シム板13の押圧を介在して、リテーナ1にパンチ7を取付ける。即ち、パンチ押えボルト12a〜12dにより、前記パンチ7の各側面7a(一辺〜四辺)に、シム板13を押圧固止する構造である。尚、実際の作業では、シム板13は通常一枚又は二枚で、パンチ7の位置の調整ができる。
【0041】
このように、各隙間11a〜11dに挿入されるシム板13の枚数を、適宜変更することで、パンチ7の位置を、前後左右(矢印「イ」、「ロ」)を始めとして、対角線状(矢印「ハ」)に移動できる特徴がある。これにより、例えば、パンチ7の移動を介して、樹脂製品の歪み、又は公差に対応できる特徴がある。尚、図中1dは、リテーナ1の板部1aであって、締付け孔100の周囲に設けた目盛であり、また、図中7bは、パンチ7の各側面7aに設けた目盛である。この目盛1d・7bを介して、リテーナ1にパンチ7を正確に前後左右(矢印「イ」、「ロ」)方向の位置決めを行うことができる。
【0042】
そして、本発明では、リテーナ1の各側面1c(四方向)から、螺孔5a〜5dを開設することから、前記締付け孔100(被締付け孔200)と、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)を開設する箇所を決定する必要がある。この例では、前述の如く、螺孔5dを、締付け孔100(被締付け孔200)と、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)との間に形成される板部1aに開設し、貫通孔4を挟んだ、この螺孔5dの延長線上の板部1aに螺孔5cを開設する。また螺孔5a、5bは、締付け孔100(被締付け孔200)と、ノック用のガイド孔101(被ガイド孔201)より離間した板部1aに開設する構造とする。
【0043】
また、この螺孔5a、5bを対峙関係の構造とし、また螺孔5c、5dを対峙関係の構造とすることで、パンチ7に対して、クロス形状に締付けが図れることから、例えば、締付け強度の向上と、均一な締付けが図れる特徴がある。またシム板13を複数枚利用しても、確実かつ強固な締付けが可能となり、有益である。このようにパンチ7をリテーナ1へ強固に締付けることによって、特にこのパンチ7の加工部7c(孔の開設を行う部分)が楕円形状又は方形状である場合でも、ずれることなく、成形品(樹脂製品W)に正確に取り付け孔を開設することが可能である。この加工部7aが丸形状の場合でも、もちろん同様である。
【0044】
尚、このシム板13には、突部1300を形成し、軸杆10の外周面に設けた窪み溝1000に嵌合することで、脱落防止に役立つこと、作業の簡略化が図れること等の特徴がある。そして、このシム板13に設けた突部1300の裏側に、窪み溝1301を設ければ、複数のシム板13の裏側の窪み溝1301と、他のシム板13の突部1300とによる抜け防止が図れと、より強固な緊締固止が可能となる。
【0045】
そして、図5−1は、本発明の加工冶具を使用するに最適な樹脂製品Wを示したものであり、この樹脂製品Wは、その大きさ及び/又は形状等の関係から、成型されることから、その各箇所W1、W2を、図示しない車体本体に取付ける必要がある。この箇所W1〜W2において、その位置が、樹脂特有の伸縮でずれる場合が間々発生するので、パンチ7の位置を変更する必要性がある。このような場合に、瞬時かつ簡易に位置の変更ができるのが、本発明の特徴である。そして、箇所W1〜W2の規定の位置に取付孔W3を、それぞれ開設することが可能となり、かつこの各取付孔W3が、車体本体に取付け孔に整合されることから、車輌の所定の箇所W1〜W2及び/又は孔(図示せず)に、この樹脂製品Wの取付けが可能となる特徴があり、図示しない車輌の規格に適応できる実用性がある。
【0046】
尚、従来の一例である図8に示した、リテーナと異形パンチとの回り留め構造では、リテーナに切欠き部を形成するとともに、丸パンチの台座に切欠き部を形成し、この両切欠き部の端面を接合し、異形パンチの回り留めを図る。しかし、本発明を採用することで、このような切欠き部を設ける必要がなく、簡便であり、また強度の低下を防止できる特徴がある。そして、従来の一例の如く、回り留め用の切欠き部を設けた、リテーナ及び/又は異形パンチでは、台座が円板形状のリテーナ及び/又は異形パンチを使用できないので、不便であり、作業性が劣る。しかし、本発明では、このような弊害が発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、パンチとリテーナでなる加工冶具の加工冶具の斜視図
【図2】図2は、図1の分解斜視図
【図3】図3は、パンチとリテーナでなる加工冶具の断面図
【図4】図4は、パンチとリテーナでなる加工冶具の平面図
【図5】図5は、パンチとリテーナでなる加工冶具で、各種の取付け用の孔(取付孔)を開設する樹脂製品を示した概念図
【図6−1】図6−1は、従来の楕円パンチとリテーナでなる加工冶具と、パンチ側母材との関係を説明する断面図
【図6−2】図6−2は、ダイ側母材に孔を開設し、この孔にダイボタンを打込み加工する断面図
【図6−3】図6−3は、従来の楕円パンチとリテーナでなる加工冶具の平面図
【図7−1】図7−1は、パンチ側母材に被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設するのが困難な場合、被締付け孔及び/又は被ガイド孔を大きく開設する開設作業を行なった状態の模式図
【図7−2】図7−2は、図7−1において開設した孔に、端面ボルトをそれぞれねじ込んだ状態の模式図
【図7−3】図7−3は、図7−2において、ねじ込んだ端面ボルトを平坦に加工した開設した状態の模式図
【図7−4】図7−4は、新しい被締付け孔及び/又は被ガイド孔を開設した状態の模式図
【図8】図8は、従来の回り留め構造の一例を示した断面模式図
【符号の説明】
【0048】
1 リテーナ
1a 板部
1b 取付け側
1c 側面
1d 目盛
100 締付け孔
101 ガイド孔
2 パンチプレート
200 被締付け孔
201 被ガイド孔
3 台座孔
4 貫通孔
5a〜5d 螺孔
7 パンチ
7a 側面
7b 目盛
7c 加工部
8 台座
10 軸杆
1000 窪み溝
12a〜12d パンチ押えボルト
13 シム板
1300 突部
1301 窪み溝
11a〜11d 隙間
W 樹脂製品
W1 箇所
W2 箇所
W3 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチ側母材に締付けボルトで螺着される、パンチとリテーナでなる加工冶具において、
このリテーナの取付け側に方形状、又は環状の台座孔を開設するとともに、この台座孔に連通する方形状の貫通孔を開設し、この台座孔及び貫通孔に、隙間を介して、方形状、又は環状の台座と、方形状の軸杆を備えたパンチを挿入し、前記隙間に一枚〜二枚のシム板を挿入可能とし、このシム板を、前記リテーナの側面から螺入するパンチ押えボルトで、前記パンチの側面に緊締固止する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具。
【請求項2】
請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記加工冶具は、樹脂・金属製品の取付孔の開設に使用し、樹脂・金属製品の伸縮公差と、又は孔位置の見込み違いによる公差、製品の他の寸法公差をカバーする構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具。
【請求項3】
請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記パンチの方形状の軸杆に、シム板の脱落防止を図る溝を形成し、この溝に係合する突部を、シム板に突設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具。
【請求項4】
請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記パンチ、又はリテーナの側面から螺入されるパンチ押えボルト用の螺孔を、このパンチ、又はリテーナの四方向から、このパンチの各側面に向って、それぞれ開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具。
【請求項5】
請求項4に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記リテーナに、パンチ側母材に取付けるための締付け孔を複数開設し、この締付け孔の軸芯と、同じ軸芯方向に複数のノック用のガイド孔を複数開設する構成とし、この締付け孔及び/又はガイド孔の間に、前記パンチ押えボルト用の螺孔を開設する構成としたパンチとリテーナでなる加工冶具。
【請求項6】
請求項1に記載のパンチとリテーナでなる加工冶具であって、
前記方形状の軸杆を設けたパンチは、方形状、又は楕円形状等の異形パンチとし、この異形パンチを、前記方形状の軸杆と、方形状の貫通孔を介して、回り留め構造としたパンチとリテーナでなる加工冶具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図6−3】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図7−4】
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【図8】
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