説明

パンチユニット

【課題】ロータリ式パンチユニットでは、穿孔開始時と穿孔終了時に穿孔トルクのピークを生じ、厚紙等では穿孔不能となると共に、パンチ孔の品位も低下する。
【解決手段】パンチ13の刃先面13aを、前端A側が高く後端C側が低い傾斜角θ=5°〜15°(好ましくは10°)の範囲の傾斜面とする。ダイのダイス面22aを、シャフトの回転軸芯Oを中心とした円弧面とする。穿孔トルクのピークを減少すると共に、パンチ孔を高品位に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置に付設され、記録シート等に孔をあけるパンチユニットに係り、詳しくはロータリ式のパンチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに平行して配置され、それぞれ複数のパンチ及びダイを有するパンチシャフト及びダイシャフトを回転させることにより、パンチシャフトのパンチとダイシャフトのダイとを係合させて、シートにパンチ孔をあけるロータリ式のパンチユニットが存在する。
【0003】
一般に、上記ロータリ式パンチユニットは、図8(b)に示すように、パンチ13’及びダイ22’の先端面(刃先面及びダイス面)がシャフトの回転軸芯Oを通る半径方向線rに直交する平面からなり、パンチ刃先面13’a及びダイス面22’aの前端縁で係合を開始し(穿孔開始)、両シャフトの同期回転及びシートの搬送が相俟って、刃先面13’a及びダイス面22’aの係合が進行し(穿孔中)、上記刃先面及びダイス面の後端縁が係合することにより、シートの穿孔行程が終了する(穿孔終了)。上記一連の穿孔行程は、同期回転するパンチ及びダイシャフトの回転角αによりシートの打抜き(穿孔)トルクTが図8(a)に示すように変化するが、該穿孔トルクTは、穿孔開始直後(切り始め)及び穿孔終了直前(切り終り)に大きなピークがある。
【0004】
従来、上記ピークトルクを低減する装置として、下記の特許文献1に記載のものが提案されている。このものは、パンチの刃先面を、回転方向の前後が回転中心側に傾斜した凸面形状とし、その前部が後部よりも緩やかな傾斜面にて構成している。上記パンチの凸面形状により嵌合開始直後のパンチ刃先面とダイのダイス面との相対角度(剪断角)が上記パンチ刃先面を平面としたものよりも平行に近いので、係合開始から穿孔行程の中間までの単位回転角度あたりの切断長さが増加し、かつ穿孔行程の後半部においては切断長さが短縮される。これにより、パンチとダイとの係合開始時から完全係合時における単位回転角度あたりのパンチ孔切断長さを平均化して、上記穿孔トルクのピークを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3257405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1記載のものは、穿孔トルクのピークを低減することにより、パンチ及びダイの駆動トルクを小さくし、かつパンチ及びダイシャフトの剛性を低くして、駆動機構の小型化を図ることが可能であるが、パンチ刃先面の形状が複雑となり、ダイとの係合に際してのクリアランスが影響して、穿孔トルク、特に切り終り時のトルクを充分に低減することは困難である。
【0007】
近時、軽印刷及び製本を行う大型、高機能の複写機が現出しており、該複写機にあっては、表面がコーティングされた硬い紙からなるカラー紙並びに表紙、背表紙用に厚紙が用いられることがあり、複写機の電源容量やコスト面から、パンチユニットのモータや剛性を高めることにも制限があり、上記カラー紙及び厚紙に孔をあけることは、上述したパンチユニットでは困難である。
【0008】
また、パンチの刃先面が凸面形状からなる上記パンチユニットは、ダイとのクリアランスを大きくとる必要があり、その結果切れ味が低下して、切り口に毛羽が発生し、孔の品位が低下する問題点もある。
【0009】
そこで、本発明は、比較的簡単な形状でもって、高い精度でパンチ及びダイを製造でき、パンチとダイとの係合の全体に亘って、その係合クリアランスを最適に保持して、パンチ孔を高品位に保つことが可能となると共に、穿孔トルクのピークを大幅に低減して、上述した課題を解決したパンチユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、外周面にパンチ(13)を設けたパンチシャフト(10)と、
前記パンチに対応する位置にダイ(22)を設けたダイシャフト(20)と、を備え、
前記パンチシャフト(10)及びダイシャフト(20)とを同期してかつ反対方向に回転させ、前記パンチ(13)と前記ダイ(22)とを係合させてシートにパンチ孔をあけるパンチユニット(1)において、
前記パンチの刃先面(13a)及び前記ダイのダイス面(22a,22a)のいずれか一方は、回転方向の前端縁(A)側が高くかつ後端縁(C)側が低くなる方向で傾斜角(θ)が5°〜15°の範囲の傾斜面からなる、
ことを特徴とするパンチユニットにある。
【0011】
また、前記パンチの刃先面(13a)及び前記ダイのダイス面(22a)のいずれか他方は、回転方向の中央部分が高くなる中高形状の円弧面からなる。
【0012】
好ましくは、前記パンチの刃先面(13a)が前記傾斜面からなり、前記ダイのダイス面(22a)が前記円弧面からなる。
【0013】
例えば、図3(c)に示すように、前記パンチ(13)の刃先面(13a)が前記傾斜面からなり、かつ該傾斜面の中央部分が凹部(13d)からなる。
【0014】
前記傾斜角(θ)が10°である。
【0015】
前記円弧面(22a)が、前記ダイシャフト又は前記パンチシャフトの回転軸芯(O)を中心とした円弧面である。
【0016】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これにより特許請求の範囲に記載の構成に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る本発明によると、互に係合するパンチの刃先面及びダイのダイス面の一方が、前端縁側が高く後端縁側が低い傾斜面からなるので、シート穿孔時の穿孔トルクのピークを低減することができ、比較的小さいトルク容量のモータを用いて、例えばカラー紙や表紙、裏表紙となる厚紙であってもパンチ孔をあけることが可能となる。
【0018】
また、パンチの刃先面又はダイのダイス面を一定角の傾斜面にする比較的簡単な構成からなり、容易にかつ高い精度で製造することができ、刃先面及びダイス面の係合に際してのクリアランスを適正に保持でき、パンチ孔の品位を向上することができる。
【0019】
前記傾斜面の傾斜角は、5°以下であると、穿孔トルクのピークの低減効果が充分でなく、スペース等による規定範囲でのモータによる厚紙等の穿孔を正確かつ確実に行うことができず、上記傾斜角が15°以上であると、穿孔状態にあるシャフトの回転角が大きくなり過ぎ、パンチ及びダイの干渉を防止するためのクリアランスが大きくなり、パンチ孔を高品位に保つことが困難となり、前記傾斜角が5°〜15°の範囲にあって、穿孔トルクのピークの低減による厚紙等への孔あけ及びパンチ孔の品位の向上を両立することができる。
【0020】
請求項2に係る本発明によると、パンチの刃先面又はダイのダイス面の他方が、中高形状の円弧面からなるので、パンチ及びダイの係合に際して、シートの剪断を円弧面に沿って進行し、穿孔トルクのピークを更に減少すると共に、穿孔状態でのシャフトの回転角を小さくして、パンチ及びダイの回転に伴う穿孔時の干渉を防止するために必須となるクリアランスを減少して、最大穿孔トルクの減少によるパンチユニットの小型化と、パンチ孔を高品位に保持することの両立を図ることができる。
【0021】
請求項3に係る本発明によると、パンチの刃先面に傾斜面を形成し、かつダイのダイス面を円弧面とすることが、製造、穿孔トルク及びパンチ孔の品位において最適な組合せとなる。
【0022】
請求項4に係る本発明によると、パンチ刃先面の傾斜面の中央部分に凹部を形成したので、ダイス面と係合するパンチ刃先面を鋭利とすると共に、パンチ先端の軽量化を図って、パンチ孔を高速に形成することが可能となり、複写機等の高速化に対応することが容易となる。
【0023】
請求項5に係る本発明によると、前記傾斜面の傾斜角が10°であることが最適であり、穿孔トルクのピークを減少して、小型のモータにて厚紙等の穿孔を可能とすると共に、高品位のパンチを正確かつ確実に穿孔して、信頼性を向上する。
【0024】
請求項6に係る本発明によると、円弧面を、シャフトの回転軸芯を中心とした円弧面とし、パンチ及びダイとの係合が、該円弧面を転がるように進行するので、パンチ刃先面とダイス面との間のなす剪断角を常に維持して、滑らかにシートの穿孔を進行して、穿孔トルクのピークを減少すると共に、高い品位によるパンチ孔を常に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用し得るパンチユニットの実施形態を示す正面図。
【図2】本発明によるパンチとダイによる穿孔を示すそれぞれ異なる状態の図。
【図3】(a)は、本発明によるパンチ及びダイを示す拡大した概略図、(b)は、パンチの刃先面を示す模式図、(c)は、異なる実施の形態によるパンチ刃先面を示す断面図。
【図4】従来のパンチユニットと本発明のパンチユニットとの違いを説明する図で、(a)は、切り始めの切断長さSを示す図、(b)は、切り終り時のシャフト回転角αを示す図、(c)は、シャフト回転角αと切断位置(回転角)βを説明する図。
【図5】シャフトの回転角αに対する穿孔トルク曲線を示す図。
【図6】ダイのダイス面を平面とした実施の形態による図2と同様な図。
【図7】ダイのダイス面を示す拡大した模式図。
【図8】従来のパンチユニットを示す図で、(a)は、穿孔トルク曲線を示し、(b)は、パンチ及びダイを示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。パンチユニット1は、図1に示すように、プリンタ、複写機等の画像形成装置(後処理装置を含む)のフレームに固定される台座6を有しており、該台座6には複数の脚部5を介して底板4がボルトにより固定されている。該底板4の左右端には左右の側板3L,3Rが固定されており、これら一体の底板4及び側板3L,3Rによりフレーム2が構成されている。そして、上記側板3L,3Rにはパンチシャフト10及びダイシャフト20がその両端を回転自在に支持されて平行に配置されており、これらパンチシャフト10及びダイシャフト20が上記フレーム2と相俟って、パンチユニット1の構造部材(強度メンバー)となっている。なお、上記パンチシャフト10及びダイシャフト20は、所定の間隙Wを存して上記側板3L,3Rに支持されており、該間隙Wがシートを通過する係合クリアランスを形成している。
【0027】
上記パンチシャフト10は、アルミ合金などの軽合金製の中空円筒部材からなるパンチシャフト本体11と、その両側端部に設けられたパンチ軸部とから構成されており、該パンチシャフト本体11の軸芯方向(図1矢印A,B方向)複数箇所、例えば3箇所には、パンチ13が円筒内側の中空部11aにおいて抜止めされて外周面から突出して設けられている。
【0028】
また、パンチ軸部は、パンチシャフト本体11側部の開口を閉塞するように取付けられ、ベアリング14を介して側板3L,3Rに回転自在に軸支されている。図1矢印B方向(以下、図1矢印A方向を左方向、図1矢印B方向を右方向とする)のパンチ軸部にはパンチシャフト10へと駆動力を伝達するパンチ歯車15が固設されていると共に、該パンチ歯車15に隣接してかつ位相を調整してバックラッシュ取り歯車16が取付けられており、該歯車16には、孔あけ位置検出装置60を構成する検出板61が取付けられている。
【0029】
上記孔あけ位置検出装置60は、検出板61と、フォトセンサからなる孔あけ位置検出センサ62とからなり、該孔あけ位置検出センサ62は右側板3R上部に固設されたL字状のブラケット63に取付けられている。上記検出板61が孔あけ位置検出センサ62間を通過することによって、パンチ13が孔あけ位置にあることが検出される。
【0030】
一方、上記ダイシャフト20もパンチシャフト10と同様にアルミ合金などの軽合金から形成され、中空円筒部材からなるダイシャフト本体21を有している。該ダイシャフト本体21には、軸芯方向(図1矢印A,B方向)3箇所に上記パンチシャフト10のパンチ13と対応してダイ22がその外周に設けられており、該ダイ22は、ダイシャフト本体21の外周面から中空部21aまで径方向に貫通したダイ孔(孔)22dを有する。
【0031】
上記ダイシャフト本体21は、その右ダイ軸部がベアリングを介して右側板3Rに回転自在に支持されていると共に、その左ダイ軸部がベアリングを介して左側板3Lに回転自在に支持されている。上記右ダイ軸部は、ダイ歯車24のボス部24aからなり、該ダイ歯車24は上記パンチ歯車15及びバックラッシュ取り歯車16と噛合している。また、右側板3Rの下端部には、両軸型の電動モータ50が取付けられており、該モータの一方の出力軸にはピニオン51が固定されていると共に、他方の出力軸にはピックアップセンサ55の検出体54が固定されている。ピックアップセンサ55は底板4に固定されたブラケット56に取付けられており、電動モータ50の回転数を検出し得る。右側板3Rには2枚の中間歯車70,71を支持する中間軸70が取付けられており、一方の中間歯車71は上記ピニオン51に、他方の中間歯車72が上記ダイ歯車24に噛合している。
【0032】
前記ダイシャフト本体21の中空部21aには屑排出スクリュー板30が嵌挿されており、該スクリュー板30は、その一端が右側板3Rに固定されており、その他端が左側板3L部分において上記ダイシャフト21の開口部21cに臨むように配置されている。該スクリュー板30は、板状部材を捩ってスクリュー状に形成されており、回転するダイシャフト20に対して相対的に回転し、ダイ22から導入されるパンチ屑を、上記相対回転に基づき中空部21a内を矢印A方向に搬送して、開口部21cから中空部21a外に排出する。
【0033】
本パンチユニット1は、以上のような構成からなり、例えば大型の複写機に取付けられる。該複写機の画像形成済シートの搬送に合せるように、電動モータ50が駆動され、該モータの回転は、ピニオン51、中間歯車71,72及びダイ歯車24を介して、ダイシャフト20に伝達されると共に、パンチ歯車15及びバックラッシュ取り歯車16を更に介してパンチシャフト10に伝達される。これにより、ダイシャフト20及びパンチシャフト10は、シートの搬送に合せたタイミングで、かつ両シャフトが正確に同期された位相にて逆方向に回転し、パンチ13及びダイ22によりシートの所定箇所に孔をあける。
【0034】
ついで、本発明の要部であるパンチ及びダイの形状について、図2,図3に沿って説明する。パンチシャフト10に取付けられているパンチ13は、その先端面からなる刃先面13aがシャフト10の回転方向接線(半径方向線rに直交する線)に対して所定の傾斜角θの傾斜面からなる。上記傾斜面は、回転方向の前端縁A側が高くかつ後端縁C側が低くなるように傾斜しており(OA>OC)、その傾斜角θは、5°〜15°の範囲、好ましくは10°に設定されている。
【0035】
具体的には、パンチシャフト10及びダイシャフト20の回転軸芯O−O間の距離2Rが32[mm](R=16[mm])であり、上記傾斜角(刃先角)θ=10°でパンチ径d=8[mm]の場合、パンチシャフトの回転軸芯Oから刃先前端縁Aまでの長さRが、従来のもの(13’a)が約16.5[mm]であるのに対し、本発明のもの(13a)が約17.4[mm]であり、回転軸芯Oから刃先後端縁Cまでの長さRが、約16.0[mm]である(従来のものは約16.5[mm])。
【0036】
また、パンチ13は、ダイ22のエッジ(ダイス面)22aとの干渉を防止すべく、刃先面13aに沿って半円状の凹溝13bが全周に亘って形成されている。
【0037】
ダイシャフト20に取付けられているダイ22は、その先端面からなるダイス面が前端縁D及び後端縁Eが低く中央部分が高い中高形状の円弧面22aからなり、かつパンチの刃先面13aが所定のクリアランスをもって嵌合する円筒形状からなる。該ダイの刃先からなるダイス面は、図2,図3に示すように、ダイシャフト20の回転軸芯Oを中心とする円筒状の円弧面22aにて形成される。
【0038】
パンチ13及びダイ22は、図2の待機位置に示すように、互に離れた位置に待機している。この状態で、複写機等から画像形成済の紙(シート)Pがパンチユニット1に搬送されると、それとタイミングを合せて、パンチシャフト10及びダイシャフト20が同じ位相で互に反対方向に回転する。パンチ13の刃先面13a及びダイ22のダイス面22aの前端縁A,D同士が紙を挟んで互に係合を開始すると、紙の所定位置での穿孔が開始され、そして両シャフト10,20が更に回転することにより、パンチの刃先面13aとダイのダイス面22aの嵌合位置が紙の搬送に合せて後方に移動し、穿孔が進行する(穿孔中)。パンチ刃先面13aの後端縁Cがダイス面(エッジ)22aの後端縁Eに嵌合した状態で、紙の所定位置に丸孔があけられ、そして両後端縁C,Eが互に離れることにより、穿孔が終了する。紙にあけられたパンチ孔のパンチ屑は、ダイ孔22dを通ってダイシャフト20の中空部21aに送られ、また紙は、そのまま搬送されて、次の製本等の工程に運ばれる。
【0039】
穿孔トルクTと、パンチ刃先面の切断長さS及びパンチの切断位置βとの間に、T∝(S×sinβ)なる関係を有する。ここで、図4に示すように、αは、パンチ13の中心線の回転角、即ちパンチシャフト10の回転角であり、上記切断位置βは、パンチ刃先面(傾斜面)13aとダイス面(円弧面)22aと紙(シート)の下面と交点Xの両シャフトの回転軸芯O−Oに対する角度である。図4(a)に示すように、切り始め(穿孔開始)では、刃先角θを有する本発明のパンチ刃先面13a(AC)による切断長さSが、接線からなる従来のパンチ刃先面13’a(A’C’)による切断長さS’より小さい(S<S’)。図4(b)に示すように、切り終り(穿孔終了)では、本発明のパンチ及びダイによる切断位置βは、従来のものによる切断位置β’より進んで小さくなり、従ってsinβの方が、sinβ’より小さくなる(sinβ<sinβ’)。その結果、切り始めと切り終りの両方において、打抜きトルクTのピークを低減することが可能となる。
【0040】
また、切り始めにおいて、パンチシャフトの回転軸芯Oからパンチ刃先面13aの前端縁Aまでの長さは、刃先角θを有する本発明(OA)が、接線からなる従来のもの(OA’)よりも長く(OA>OA’)、従って本発明の刃先面13aが従来のもの13a’に比して穿孔開始が早くなる(切断回転角βが大きくなる;図2の穿孔開始参照)。また、切り終りにおいて、パンチシャフトの回転軸芯Oからパンチ刃先面の後端縁Cまでの長さは、刃先角θを有する本発明(OC)が、接線からなる従来のもの(OC’)より短く(OC<OC’)、従って本発明の刃先面13aが従来のもの13’aに比して穿孔終了が遅くなる(回転角βが小さくなる;図2の穿孔終了参照)。この結果、穿孔に関与する時間が長くなり、つまりパンチシャフトの回転角β−βが大きくなり、その分単位角度当たりの切断長さも小さくなり(平均化される)、上記穿孔(打抜き)トルクTのピークを低減することが可能となる。
【0041】
具体的には、両シャフト10,20の中心距離2Rが32[mm]、パンチ径が8φ[mm]であり、かつ上述した傾斜角θ=10°のパンチ刃先面を用いる場合、穿孔開始の回転角(<OOA)βは、従来のものが9.84°であるのに対し、本発明では16.02°であり、穿孔終了時の回転角(<OOC)βは、従来のものが9.84°であるのに対し、本発明では3.08°となる。
【0042】
図5は、両シャフト10,20の回転軸芯O−Oの距離2R=32[mm]、パンチ径8[mm]で、パンチ刃先面が接線(θ=0)からなる従来のものと、刃先角θ=10°のパンチ刃先面を用いた本発明とを、各種の紙で穿孔した状態をシミュレートした図である。なお、本シミュレーションにあっては、ダイ22は、ダイス面が円弧面22aからなるものを用いている(図2参照)。
【0043】
図5から解るように、各種の紙(310g、200g、80g)すべてにおいて、穿孔トルク(打抜きトルク)のピークが減少していると共に、回転角αが大きくなっている。特に、表紙及び背表紙に用いられる厚紙310g紙にあっては、従来の刃先角θ=0のパンチを用いた場合、229[kgfmm]となり、パンチユニットに適合し得る小型のモータであっては孔あけ不能であったが、本発明では、118[kgfmm]となり、パンチユニットのスペースに納まる小型のモータを適用して穿孔可能となる。
【0044】
ダイ22のダイス面22aが、図3(a)に示すように円弧面(円筒面)からなるので、ダイシャフト20の回転による穿孔中、パンチ13の刃先面13aとの係合が転がるように、滑らかに進行する。即ち、穿孔開始から穿孔終了までのすべての回転角αにあって、刃先角θを有するパンチ刃先面13aと円弧面からなるダイス面22aとからなる剪断角を維持し、各回転角αにおける切断長さSを分散して、S×sinβに比例する穿孔(打抜き)トルクTのピークを減少する。
【0045】
図6は、ダイ22のダイス面がダイシャフト20の半径方向線rと直交する平面(接線)22aからなる実施の形態を示す。該平面からなるダイス面22aは、前端縁D及び後端縁Eが先の円弧面からなるもの(22a)に比して、若干長くなっている。図7は、ダイ22のダイス面が平面からなるもの22a(破線)と、円弧面からなるもの22a(実線)との比較を示す図であり、ダイシャフトの回転軸芯Oとダイス面の前端縁D,D1及び後端縁E,Eとの長さは、円弧面の方(OD)(OE)が平面(OD)(OE)より短く(OD<OD)(OE<OE)、従って穿孔開始時の回転角αが小さくなると共に、穿孔終了時の回転角αも小さくなり(下死点α=0に近づく)、パンチとダイによる穿孔回転角αが小さくなる。これにより、パンチとダイとの干渉を防止するために必要とするクリアランスを減少して、パンチ孔の精度を向上する。
【0046】
なお、上記穿孔回転角αを小さくすることは、穿孔トルクTの分散化と逆方向となるが、上述した刃先角θを有するパンチ13の刃先13aと円弧面からなるダイス面22aとが相俟って、穿孔トルクのピーク、特に切り終り時のピークトルクを小さくすることが可能となる。これにより、パンチユニットの最大駆動トルクを減少することによるユニットの小型化及び310g紙等の厚紙への孔あけを可能とすることに加えて、高いパンチ孔品位を保持することが可能となる。
【0047】
図3(c)は、異なる実施の形態によるパンチの刃先面を示す図である。傾斜面からなる刃先面の中央部分に、凹部13dが形成されている。該凹部13dによりパンチ刃先面13aは、ダイス面22a,22aと鋭利な関係で係合し、かつパンチ先端部の重量の軽減化が可能となる。これにより、高速化した複写機のシート搬出タイミングに合せて、パンチユニットを高速で回転し、かつ高い品位のパンチ孔を穿孔することが可能となる。
【0048】
なお、上述した説明は、パンチ13の刃先面13aに所定刃先角θを有し、ダイ22のダイス面22aを円弧面(又は平面22a)としているが、これは、ダイス面が所定傾斜面からなり、またパンチの刃先面が円弧面(又は平面)からなるものでもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 パンチユニット
10 パンチシャフト
13 パンチ
13a 刃先面(傾斜面)
20 ダイシャフト
22 ダイ
22a ダイス面(円弧面)
22a ダイス面(平面)
α 回転角
θ 傾斜角(刃先角)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にパンチを設けたパンチシャフトと、
前記パンチに対応する位置にダイを設けたダイシャフトと、を備え、
前記パンチシャフト及びダイシャフトとを同期してかつ反対方向に回転させ、前記パンチと前記ダイとを係合させてシートにパンチ孔をあけるパンチユニットにおいて、
前記パンチの刃先面及び前記ダイのダイス面のいずれか一方は、回転方向の前端縁側が高くかつ後端縁側が低くなる方向で傾斜角が5°〜15°の範囲の傾斜面からなる、
ことを特徴とするパンチユニット。
【請求項2】
前記パンチの刃先面及び前記ダイのダイス面のいずれか他方は、回転方向の中央部分が高くなる中高形状の円弧面からなる、
請求項1記載のパンチユニット。
【請求項3】
前記パンチの刃先面が前記傾斜面からなり、前記ダイのダイス面が前記円弧面からなる、
請求項2記載のパンチユニット。
【請求項4】
前記パンチの刃先面が前記傾斜面からなり、かつ該傾斜面の中央部分が凹部からなる、
請求項1ないし3のいずれか記載のパンチユニット。
【請求項5】
前記傾斜角が10°である、
請求項1ないし4のいずれか記載のパンチユニット。
【請求項6】
前記円弧面が、前記ダイシャフト又は前記パンチシャフトの回転軸芯を中心とした円弧面である、
請求項2記載のパンチユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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