説明

パンチリテーナ

【課題】プレス機械の大規模な変更を行うこと無く、ワークの穴開け位置の容易な変更を実現する。
【解決手段】パンチホルダ102には、厚さ方向Dに延び、パンチPが挿入されるパンチ孔107が形成されている。保持台103には、ホルダ保持孔104が形成されている。パンチホルダ102は、ホルダ保持孔104に内在され、厚さ方向Dと交差する長手方向Lや短手方向Sに移動自在となっている。位置調整部151は、長手方向Lや短手方向Sに沿ってパンチホルダ102を動かし、パンチ孔107に挿入されたパンチ孔107を所望の位置に位置付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状のワークをプレス加工するプレス機械の可動型に装着され、この可動型の上下方向の動きや寄方向の動きによってワークに穴開けをするために用いられるパンチリテーナに関する。
【背景技術】
【0002】
パンチリテーナは、板状のワークをプレス加工するプレス機械の可動型に装着され、この可動型の上下方向の動きや寄方向の動きによってワークに穴開けをするために用いられる。
【0003】
パンチリテーナの一例には、特許文献1の図12や図13に示されるような、平面視において三角形状に見えるパンチリテーナーaがある。このパンチリテーナーaでは、平面視における三角形状の一角の近傍にパンチ孔bが形成され、この一角の対辺の近傍に回止め用のピン穴cが形成され、さらに、このパンチ孔bとピン穴cとを挟む対称な二箇所に取付けボルト孔d,dが形成されている。パンチ孔bには、パンチ(例えば、特許文献1の図10や図11に示されるパンチ36)が挿入される。パンチの一方の端部は先細りになっていて、パンチがパンチ孔bに挿入されたとき、この一方の端部はパンチリテーナーaから突出する。また、パンチの他方の端面にはこのパンチの端面に開口するノックピン穴が形成されていて、パンチがパンチ孔bに挿入されたとき、この他方の端面はパンチリテーナーaの外面と面一に並んだり、パンチリテーナーaの外面よりも没した位置に位置付けられたりする(例えば、特許文献1の図2、図3、図6及び図9を参照)。
【0004】
このようなパンチリテーナは、ボルト孔に通されたボルト18を用いてプレス機械の可動型に取付けられる。そして、パンチリテーナのパンチ孔に通されたパンチのノックピン穴にノックピンを装着し、このノックピンをプレス機械の可動型に設けられた位置決め孔に嵌入することで、パンチによるワークへの正確な位置での穴開けがなされる(以上、特許文献1の図2及び図3を参照)。また、パンチリテーナの厚さ方向に貫通する貫通穴を形成し、この貫通穴にノックピンを装着して、パンチによるワークへの正確な位置での穴開けを実現することもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−244328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ワークへの穴開け位置の位置精度を修正する場合、パンチを通すためのパンチ孔やノックピンを装着するための貫通穴の僅かな位置変更(例えば、位置を0.5mm程度ずらす程度の変更)であってもプレス機械の大規模な改造を余儀なくされる。例えば、プレス機械の可動型に設けられているボルト孔やノック孔を埋めなおして新たな箇所に開け直すことになり、多大なコストや手間を要することになる。
【0007】
本発明の目的は、プレス機械の大規模な変更を行うこと無く、ワークの穴開け位置の容易な変更を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のパンチリテーナは、パンチが挿入されるパンチ孔を形成するパンチホルダと、前記パンチ孔の延びる方向と交差する面の方向に移動自在に前記パンチホルダを内在させる保持台と、前記面に沿って前記パンチホルダを動かし前記パンチ孔に挿入されたパンチを所望の位置に位置付ける位置調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、保持台に対してパンチホルダを所望の箇所に位置決めしてパンチの位置を所望に設定することができ、したがって、プレス機械の大規模な変更を行うこと無く、ワークの穴開け位置の容易な変更が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】パンチリテーナの平面図である。
【図2】一部を破断させて示すパンチリテーナの斜視図である。
【図3】一部を破断させて示すパンチリテーナの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の一形態を、図1ないし図3に基づいて説明する。図1は、パンチリテーナ101の平面図である。図2は、一部を破断させて示すパンチリテーナ101の斜視図である。図3は、一部を破断させて示すパンチリテーナ101の分解斜視図である。
【0012】
パンチリテーナ101は、パンチホルダ102と保持台103とを備え、厚みを持ったプレート状をなし、平面視において矩形状をなす。平面視で見たパンチリテーナ101の短手方向Sは、特許請求の範囲でいうところの「第1方向」に対応する。また、平面視で見たパンチリテーナ101の長手方向Lは、特許請求の範囲でいうところの「第2方向」に対応する。また、平面視で見たパンチリテーナ101の四隅は、面取りされている。
【0013】
保持台103は、パンチホルダ102に対して外側に位置する。保持台103の長手方向Lの中央には、ホルダ保持孔104が形成される。ホルダ保持孔104は、長手方向Lに平行な二辺と短手方向Sに平行な二辺とを有する略矩形状に開口し、長手方向L及び短手方向Sのいずれにも直交する方向(厚さ方向D)に保持台103の上面103aから下面103bまで貫通している。ホルダ保持孔104には、パンチホルダ102が挿入される。ホルダ保持孔104に挿入されたパンチホルダ102は、ホルダ保持孔104内で短手方向Sに動けず長手方向Lに移動できる状態で、保持台103に保持される。
【0014】
保持台103の上面103aには、位置決めノック穴105とザグリ穴106とが設けられる。ザグリ穴106の内壁は雌ネジが形成され、ワーク(図示せず)を加工するためのプレス機械(図示せず)の金型(図示せず)にボルト取り付けするために用いられる。ザグリ穴106は、この金型に形成された位置決め穴(図示せず)に挿入される位置決めピン(図示せず)が装着される。
【0015】
パンチホルダ102は、パンチ孔107が形成されている第1台108と、第1台108を内在させホルダ保持孔104に内接する第2台109とにより構成される。パンチ孔107は、厚さ方向Dに延びている。パンチ孔107には、パンチPが挿通される。パンチPは、ワーク(図示せず)に孔を形成するための先端部P0が上方に突出するように、パンチ孔107の下方から挿通される。
【0016】
第2台109において長手方向Lの中央かつ短手方向Sの中央なる箇所には、長手方向Lに平行な二辺と短手方向Sに平行な二辺とを有する略矩形状に開口し、厚さ方向Dに貫通する第1台保持孔110が形成される。第1台保持孔110には、第1台108が下方から挿入される。第1台保持孔110に挿入された第1台108は、第1台保持孔110内で長手方向Lに動けず短手方向Sに移動できる状態で、第2台109に保持される。ここで、第1台108の外壁面には、短手方向Sに延びる段部111が形成されている。段部111は、第2台109の第1台保持孔110の内壁面に形成された抜止部112に接触し、これによって第1台108が上方へ抜けることが防止され、第1台108が第2台109に対して短手方向Sにスライドできるようになっている。
【0017】
パンチリテーナ101は、パンチホルダ102を動かして、パンチ孔107に挿入されたパンチPを所望の位置に位置付けるための位置調整部151を備えている。この位置調整部151について、以下に説明する。
【0018】
位置調整部151は、第1ボルト152と第2ボルト153とを備える。第1ボルト152は、短手方向Sに延びていて、保持台103を貫通し、さらに第2台109と第1台108とを螺合する。第1ボルト152を螺合させるために、第2台109や第1台108には、ネジ孔155,156が形成されている。第1ボルト152を締め付けたり緩めたりすると、第1台108は、第2台109に対して相対的に短手方向Sに動く。
【0019】
一方、第2ボルト153は、長手方向Lに延びていて、保持台103と第2台109とを螺合する。第2ボルト153を挿通させるために、保持台103にも、ネジ孔157が形成されている。第2ボルト153を締め付けたり緩めたりすると、第2台109は、保持台103に対して相対的に長手方向Lに動く。
【0020】
ここで、第1ボルト152を挿通させるために保持台103に形成されるボルト挿通孔154は、長手方向Lに長い長円形状をなしており、第1ボルト152には螺合しない。このために、第2ボルト153を締め付けたり緩めたりすると、第1ボルト152自体が長手方向Lに動くことができる。
【0021】
第1ボルト152の先端部は、パンチ孔107に挿入されたパンチPに螺合する。このために、パンチPの側面には、第1ボルト152の先端部が入り込み螺合するためのネジ孔P1が設けられている。
【0022】
第2ボルト153の先端部は、第2台109の外側面に螺合する。このために、第2台109の外側面には、第2ボルト153の先端部が入り込み螺合するためのネジ孔158が設けられている。
【0023】
パンチリテーナ101は、第1台108のパンチ孔107の下方からパンチPを挿通し、この状態で第2台109の第1台保持孔110の下方から第1台108を嵌め込み、さらにこの状態で保持台103のホルダ保持孔104の下方から第2台109を嵌め込み、第2ボルト153をネジ孔157に嵌め込んで第2台109のネジ孔158に螺合し、第1ボルト152をボルト挿通孔154とネジ孔155,156とに嵌め込んでパンチPのネジ孔P1に螺合して構成される。
【0024】
ところで、図3に示すように、第2台109においてネジ孔155が設けられる側面でネジ孔155の高さ位置には、段部113が設けられている。また、保持台103のホルダ保持孔104でボルト挿通孔154の高さ位置には、ホルダ保持孔104の内壁側に突出する抜止部114が設けられている。ここで、上記のようにパンチリテーナ101が構成され、段部113が抜止部114に接触することにより、第2台109が上方へ抜けることが防止され、第2台109が保持台103に対して長手方向Lにスライドできるようになっている。
【0025】
パンチPを動かす場合、第1ボルト152及び第2ボルト153の少なくとも一方を緩め、第1台108や第2台109を短手方向Sや長手方向Lに動かし、緩めておいた第1ボルト152や第2ボルト153を締め直す。ここで、保持台103の上面103aやパンチホルダ102(第1台108、第2台109)の上面には目盛115が記載されていて、パンチPの正確な位置決めが実現される。
【0026】
このように、本実施の形態のパンチリテーナ101では、保持台103に対してパンチホルダ102の第1台108や第2台109を所望の箇所に位置決めしてパンチPの位置を所望に設定することができ、したがって、プレス機械の大規模な変更を行うこと無く、ワークの穴開け位置の容易な変更が実現される。さらに、本実施の形態では、パンチホルダ102を短手方向Sと長手方向Lとにそれぞれ独立に動かすことができ、パンチPの位置調整が容易である。そして、このようなパンチホルダ102の位置調整は、第1ボルト152や第2ボルト153の締め付けや緩めによりなされるので、さらにパンチPの位置調整が容易となる。加えて、第1ボルト152の先端部はパンチPに螺合するので、パンチPがパンチリテーナ101から外れてしまうこともない。なお、第1ボルト152の先端部に代えて、第2ボルト153の先端部をパンチPに螺合させてもよい。
【符号の説明】
【0027】
101 パンチリテーナ
102 パンチホルダ
103 保持台
107 パンチ孔
108 第1台
109 第2台
151 位置調整部
152 第1ボルト
153 第2ボルト
D 厚さ方向(パンチ孔が延びる方向)
S 短手方向(第1方向)
L 長手方向(第2方向)
P パンチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチが挿入されるパンチ孔を形成するパンチホルダと、
前記パンチ孔の延びる方向と交差する面の方向に移動自在に前記パンチホルダを内在させる保持台と、
前記面に沿って前記パンチホルダを動かし前記パンチ孔に挿入されたパンチを所望の位置に位置付ける位置調整部と、
を備えるパンチリテーナ。
【請求項2】
前記位置調整部は、前記面を規定する第1方向と第2方向との二方向にそれぞれ独立に前記パンチホルダを動かす、
請求項1記載のパンチリテーナ。
【請求項3】
前記パンチホルダは、
前記パンチ孔が設けられる第1台と、
前記第1台を前記第1方向に移動自在に内在し、前記保持台に前記第2方向に移動自在に保持される第2台と、
を含む、請求項2記載のパンチリテーナ。
【請求項4】
前記位置調整部は、
前記保持台を貫通し且つ前記第2台と前記第1台とを螺合する、前記第2台に対し相対的に前記第1台を前記第1方向に動かすための第1ボルトと、
前記保持台と前記第2台とを螺合する、前記保持台に対し相対的に前記第2台を前記第2方向に動かすための第2ボルトと、
を含む、請求項3記載のパンチリテーナ。
【請求項5】
前記第1ボルト及び前記第2ボルトの少なくとも一方は、前記パンチ孔に挿入されたパンチに螺合する、
請求項4記載のパンチリテーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−143792(P2012−143792A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4365(P2011−4365)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】