説明

パン用生地配合材及びパン用生地

【課題】 複雑で手間のかかる工程を必要とせず且つ大量生産する場合でもラインに新しく機械を導入することなくパンの内相に模様をつけることができ、またパン類に配合材による空洞が生じることがなく、食感もよいパン類を製造できるパン用生地配合材及び該配合材を配合したパン用生地を提供すること。
【解決手段】 小麦粉、油脂及び水を必須成分とする積層生地からなるパン用生地配合材であって、形状が薄片状であることを特徴とするパン用生地配合材、及びパン生地に該配合材を配合したパン用生地。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複雑で手間のかかる工程を必要とせずにパンの内相に模様をつけることのできるパン用生地配合材及び該配合材を配合したパン用生地に関する。
【0002】
【従来の技術】内相に模様のついたパンを製造する方法としては、フラワーペーストやジャム等を使用して、パン生地を圧延し、その上にフラワーペーストやジャム等を重ねたり塗布したりする、ロールイン工程や巻き込み工程を経て製造する方法が一般的に行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、フラワーペーストやジャム等を使用してパン類を製造する場合、上記のようなロールイン工程や巻き込み工程が必要であるため、手間がかかり、またこれらの工程のため機械を組み入れたりしなければならなかった。また、フラワーペーストやジャムを使用した場合、フラワーペーストやジャムの周辺のパン生地が生った食感となったり、非常に重い食感のパンとなってしまったり、パン生地の延びとフラワーペーストやジャムの延びが異なるため、パン生地とフラワーペーストやジャムとの間に空洞ができてしまうことがよく見られた。特開平7−184530号公報には油脂層と小麦粉を主体としたドウ層が交互に積層した製パン用生地配合材について記載されているが、この配合材はパン生地に配合し焼成した後もパン中に配合材の形状及び層構造がそのまま残るように設計されたものであり、食感等の点で難点がある。
【0004】従って、本発明の目的は、複雑で手間のかかる工程を必要とせず且つ大量生産する場合でもラインに新しく機械を導入することなくパンの内相に模様をつけることができ、またパン類に配合材による空洞が生じることがなく、食感もよいパン類を製造できるパン用生地配合材及び該配合材を配合したパン用生地を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を、小麦粉、油脂及び水を必須成分とする積層生地からなるパン用生地配合材であって、形状が薄片状であることを特徴とするパン用生地配合材、及び該配合材を配合したパン用生地を提供することにより達成したものである。
【0006】以下、本発明のパン用生地配合材について説明する。本発明のパン用生地配合材の大きさは具体的には、幅10〜60mm、長さ60〜100mm、厚さ2〜10mmである。好ましくは幅20〜50mm、長さ70〜90mm、厚さ2〜7mm、より好ましくは幅20〜40mm、長さ70〜90mm、厚さ3〜5mmである。上記の範囲より大きいと、パン生地に配合材を配合したときに、均一に分散しないため配合材の塊ができてしまうので好ましくなく、小さいとパン生地に配合材が練り込まれてしまうので好ましくない。
【0007】また、本発明のパン用生地配合材は、小麦粉と油脂と水を必須成分とした積層生地からなるものである。上記小麦粉としては、一般に使用されている小麦粉であればどのようなものでも使用できる。また、上記油脂としては、一般にロールイン用油脂とされているものであればどのようなものでも構わない。例えばシート状油脂、チップ状油脂、サイコロ状油脂、ストロー状油脂等を挙げることができる。この油脂の配合量は、ドウ(小麦粉+水)100重量部に対し5〜50重量部が好ましい。また、上記水は、小麦粉100重量部に対し55〜80重量部配合することが好ましいが、この水の配合量は、副材料として添加する糖類や呈味物質の種類や配合量により異なるものである。
【0008】さらに必要であれば、パン用生地配合材に糖類、食塩、甘味料、脱脂粉乳、チーズ、抹茶、チョコ粉末、ココア粉末、コーヒー粉末、カカオパウダー、フレーバー等の呈味成分やいちご、レモン、りんご、オレンジ等の果実類、ナッツやアーモンド類、イースト、グルテン、化学膨張剤、着色料、糊料、でんぷん類等を配合してもよい。本発明のパン生地用配合材は、必要であれば、冷凍し、保存してもよい。この際、冷凍状態のまま、あるいは解凍しても使用できる。
【0009】次に本発明のパン用生地配合材の製造方法について説明する。1つめの方法としては、小麦粉と水を練り合わせて作ったドウにシート状のロールイン用油脂を重ね合わせて延展し、この延展物を折りたたんで、油脂層とドウ層とが交互に積層した積層物を作り、この積層物を上記大きさの範囲(幅10〜60mm、長さ60〜100mm、厚さ2〜10mm)に切断することにより本発明のパン用生地配合材を製造する方法が挙げられる。
【0010】この方法を更に詳しく述べると、油脂の塊をシート状に延ばし、好ましくは3〜10mmの厚さのシート状油脂を用意する。一方、小麦粉と水を練り合わせてドウを作り、このドウを5〜10mmの厚さのシートにする。このシート状のドウの上に上記シート状油脂をのせ、シート状油脂をドウで包み込み、圧延、折りたたみ操作を行い、最終的に層数が4〜256層となるように、好ましくは16〜128層になるように操作する。そして積層物を上記大きさの範囲に切断することにより形状が薄片状の本発明のパン用生地配合材を製造する。
【0011】他の方法としては、小麦粉と水を練り合わせて作ったドウにチップ、サイコロ、ストロー等の形状をした油脂の塊を分散させた配合物を作り、これを延展、折りたたんで、積層物を作り、この積層物を上記大きさの範囲に切断することにより本発明のパン用生地配合材を製造する方法がある。
【0012】この方法を更に詳しく述べると、まず小麦粉と水を練り合わせてドウを作る。このドウに対して、例えば一辺が0.5〜2cmのサイコロ状の油脂を、該油脂の形状が残るように配合し、圧延、折りたたみ操作を行い、最終的に層数が4〜256層となるように、好ましくは16〜128層になるように操作する。そして積層物を上記大きさの範囲に切断することにより形状が薄片状の本発明のパン用生地配合材を製造する。
【0013】次に上記の本発明のパン用生地配合材をパン生地に配合した本発明のパン用生地について説明する。本発明のパン用生地配合材を配合するパン生地としては、食パン、菓子パン、デニッシュペストリー、クロワッサン、フランスパン、蒸しパン、ドーナツ等のパン生地が挙げられる。このパン生地の製法は、通常の方法であればどのような方法でもよく、中種法でもストレート法でも構わない。
【0014】上記パン生地に上記の本発明のパン用生地配合材を配合するには、パン生地材料を混ぜ、練り、パン生地のドウを製造する際、このパン生地のドウのミキシングの最終段階でパン用生地配合材を投入し、パン用生地配合材の形状が残るように混ぜ合わせることが好ましい。この時のパン用生地配合材の配合割合は、パン生地100重量部に対し好ましくは5〜50重量部、より好ましくは10〜30重量部である。5重量部より少ないと、パン用生地配合材の量が少なすぎ、模様を形成しない箇所が出来てしまう。50重量部より多いとパン生地が配合材を保持しきれなくなり、パンが小さくなる等の弊害が生じる。
【0015】また、パン用生地配合材とパン生地の色を異なるものにしておくと、模様がはっきりとした、見栄えのよいものが得られる。このようにして得られたパン用生地をさらに通常の発酵、分割、丸め、成形の工程を経て、焼成することによりパン類が得られる。この際、モルダーを用いて成形を行うと、焼成したパンの内相がうずをまいた形状の見栄えの良いパン類を得ることができ、また手成形で行うと、焼成したパンの内相がマーブル状模様の見栄えの良いパン類を得ることができる。
【0016】
【実施例】以下に実施例と比較例を挙げて本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらの実施前に限定されるものではない。
【0017】〔実施例1〕強力粉100重量部、食塩1重量部、ココアパウダー15重量部、上白糖40重量部、脱脂粉乳2重量部、チョコレートフレーバー0.4重量部、及び水60重量部を混合し、練り合わせてドウを作成し、このドウを延展機を用いてシート状に伸ばし、縦30cm、横60cm、厚さ10mmのシート状のドウを作る。一方、上記シート状のドウ100重量部に対して10重量部の融点35℃のマーガリンを延展機を用いてシート状に伸ばし、縦及び横が30cm、厚さが10mmのシート状マーガリンを作る。このシート状マーガリンを上記シート状のドウで挟み、さらにこの3層構造の厚さ30mmの積層物を延展機にかけ、厚さ10mmに伸ばす。これを繰り返して64層の油脂層が存在する厚さ10mmの積層物にする。さらにこの積層物を延展機にて厚さを2mmとし、幅30mm、長さ80mmに切断し、本発明のパン用生地配合材を製造した。一方、小麦粉100重量部、イースト2.2重量部、イーストフード0.1重量部、食塩1.8重量部、上白糖8重量部、脱脂粉乳2重量部、油脂5重量部、及び水59重量部を配合して食パン生地を作成した。この食パン生地100重量部に上記配合材10重量部を軽く混ぜ合わせて本発明のパン用生地を作成し、モルダーを用いて成型し、次いで焼成して食パンを作成した。この食パンを10mmの厚さに切断した。どの切断面にもチョコレート色の配合材がパン生地中でうずまき状模様となっており、またパン生地と配合材の間に空洞が存在しなかった。
【0018】〔実施例2〕強力粉90重量部、薄力粉10重量部、食塩1重量部、上白糖40重量部、脱脂粉乳2重量部、ココアパウダー15重量部、チョコレートフレーバー0.4重量部、及び水60重量部を混合し、練り合わせてドウを作成する。このドウ100重量部に1cm角のチップ状に刻んだ融点35℃のマーガリン30重量部を、マーガリンが粒状に残るように混ぜ合わせて、これを延展機で、厚さが10mmのシート状に伸ばして48層相当の油脂層が残るような積層物とし、最後に3mmの厚さに延展し、幅40mm、長さ70mmに切断し、本発明のパン用生地配合材を製造し、これを冷凍した。冷凍した上記の本発明のパン用生地配合材15重量部を実施例1の場合と同様にして作成した食パン生地100重量部に軽く混ぜ合わせて本発明のパン用生地を作成し、手成形し、次いで焼成して食パンを作成した。この食パンを10mmの厚さに切断した。どの切断面にもチョコレート色の配合材がパン生地中でマーブル状模様となっており、またパン生地と配合材の間に空洞が存在しなかった。
【0019】〔実施例3〕強力粉100重量部、食塩1重量部、脱脂粉乳2重量部、チーズパウダー15重量部、上白糖40重量部、及び水70重量部を混合し、練り合わせてドウを作成し、このドウを延展機を用いてシート状に伸ばし、縦30cm、横60cm、厚さ10mmのシート状のドウを作る。一方、上記シート状のドウ100重量部に対して50重量部の融点35℃のマーガリンを延展機を用いてシート状に伸ばし、縦及び横が30cm、厚さが10mmのシート状マーガリンを作る。このシート状マーガリンを上記シート状のドウで挟み、さらにこの3層構造の厚さ30mmの積層物を延展機にかけ、厚さ10mmに伸ばす。これを繰り返して96層の油脂層が存在する厚さ10mmの積層物にする。さらにこの積層物を延展機にて厚さを4mmとし、幅40mm、長さ85mmに切断し、本発明のパン用生地配合材を製造した。一方、小麦粉100重量部、イースト3.5重量部、イーストフード0.1重量部、全卵10重量部、食塩1重量部、上白糖20重量部、脱脂粉乳2重量部、油脂7重量部及び水45重量部を配合して菓子パン生地を作成した。この菓子パン生地100重量部に上記配合材25重量部を軽く混ぜ合わせて本発明のパン用生地を作成し、手成形し、次いで焼成して菓子パンを作成した。この菓子パンを10mmの厚さに切断した。どの切断面にもチョコレート色の配合材がパン生地中でマーブル状模様となっており、またパン生地と配合材の間に空洞が存在しなかった。
【0020】〔比較例1〕パン用生地配合材の形状(大きさ)を生地片10mmのサイコロ状とした他は実施例1と同様の方法にて食パンを作成した。この食パンを10mmの厚さに切断したところ、切断面により配合材の塊が存在している部分と、配合材が存在していない部分があり、さらに配合材とパン生地の間に空洞が存在していた。
【0021】〔比較例2〕パン用生地配合材の形状(大きさ)を幅70mm×長さ120mm×厚さ12mmとした他は実施例1と同様の方法にて食パンを作成した。この食パンを10mmの厚さに切断したところ、配合材の存在している部分と存在していない部分があり、配合材は厚い断片状の塊となり、中心部は生っていた。さらに配合材とパン生地の間に空洞が存在していた。
【0022】〔比較例3〕パン用生地配合材の形状(大きさ)を幅8mm×長さ50mm×厚さ1mmとした他は実施例1と同様の方法にて食パンを作成した。この食パンを10mmの厚さに切断したところ、配合材がパン生地に練り込まれてしまっており、食パンの内相が薄く黒ずんだ色調となっていた。
【0023】
【発明の効果】本発明のパン用生地配合材を用いてパン類を製造すると、従来フラワーペーストを用いなければ出来なかったパンの内相に模様をつけることができる。また、パン類の製造工程についてもフラワーペーストを使用するときのようなロールイン工程を必要とせず、簡単である。また、本発明のパン用生地配合材を用いて得られたパン類は、パン用生地配合材とパン生地との間に空洞ができず、火通りが良いので食感が軽いものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 小麦粉、油脂及び水を必須成分とする積層生地からなるパン用生地配合材であって、形状が薄片状であることを特徴とするパン用生地配合材。
【請求項2】 大きさが幅10〜60mm、長さ60〜100mm、厚さ2〜10mmであることを特徴とする請求項1に記載のパン用生地配合材。
【請求項3】 小麦粉と水を練り合わせたドウにシート状のロールイン用油脂を重ね合わせて延展し、この延展物を折りたたんで、油脂層とドウ層とが交互に積層した積層物を作り、この積層物を切断して請求項1又は2に記載のパン用生地配合材を製造することを特徴とするパン用生地配合材の製造方法。
【請求項4】 小麦粉と水を練り合わせたドウに塊状の油脂を分散させた配合物を作り、これを延展、折りたたんで、積層物を作り、この積層物を切断して請求項1又は2に記載のパン用生地配合材を製造することを特徴とするパン用生地配合材の製造方法。
【請求項5】 パン生地に請求項1又は2に記載のパン用生地配合材を配合したことを特徴とするパン用生地。