説明

パン類の製造方法

【課題】 パン類の製造において、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が同時に存在する複合食感のパン類を提供する。
【解決手段】 原料粉に、α化澱粉および/又はα化穀粉の粒状物を1〜50重量%配合してパン類を製造するに際して、該粒状物が、馬鈴薯、タピオカ及び糯種穀物又はそれらに由来する澱粉又は穀粉の少なくとも一種以上を加熱処理し、水分が20%以下かつ粒度が目開き15mmの篩を通過し目開き3mmの篩を通過しない範囲に入るように調製してなることを特徴とするパン類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が同時に存在する複合食感のパン類に関する。
【背景技術】
【0002】
食感は食品の美味しさにおいて最も重要な要素の一つであり、パン類においてもサックリ、ソフト、しっとり、もちもち等様々な食感バラエティが存在する。これらの食感を一つのパンに同時に存在させることで新たな美味しさを生むこともできる。
そのようなパン類の例としては、パン生地にビスケット生地を被せて作られるメロンパン、パン生地に餡を包んで作られるあんぱん、パン生地にレーズンを練り込んで作られるレーズンパン等があり、最近では大きさが1mm〜15mmであるこんにゃく片を含むパン(特許文献1)なども提案されているが、特に日本人の嗜好に合うとされるもちもちとした食感を組み合わせたものは、これまでのところ知られていない。
【0003】
一方、パン類の食感を改良するために、原料粉中にα化澱粉/穀粉を配合する方法も種々提案されている。
そのような澱粉/穀粉としては、例えば、水分含有量10〜40重量%のでんぷん及び/又はでんぷん含有量の多い穀粉を、融点50℃以上の脂肪酸及び/又は脂肪酸を結合してなる乳化剤及び必要に応じナトリウムイオン、カルシウムイオン及びカリウムイオンから選ばれた1種以上の存在下に品温55℃以上の温度で加熱混練して、でんぷん質をα化したもの(特許文献2)、澱粉並びに澱粉を含む穀粉、或いはこれらの混合粉に3%以上の乳化剤を加え、エクストルーダーで高温高圧処理したもの(特許文献3)、加熱溶解度が8%以下であって、60メッシュを通過しない区分が5%以下の粒子状を有し、冷水膨潤度(Sc)と加熱膨潤度(Sh)の比が1.2≧Sc/Sh≧0.8の関係にあり、且つ冷水
膨潤度が4〜15である加工澱粉(特許文献4)、ヒドロキシプロピル澱粉及び/又はアセチル澱粉にアルファ化澱粉質を混合したもの(特許文献5)等が知られている。しかし、これらはパン類の全ての部位において均一な食感を得るためのものであり、複合食感を得るには不十分である。
【0004】
最近では、小麦粉と、道明寺粉と、イーストとを少なくとも含む原料に水を加えて生地を調製し、この生地を発酵させた後、所定形状のシートに成形し、このシートをフライすることを特徴とするピザクラストの製造方法(特許文献6)も提案されているが、複合食感を得るためには粒径が小さく、パンの食感は均一のものとなる。また、本発明者らはパン生地にもち破片を練り込むことで、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が混在するパンを得ることができることを見出している(非特許文献1)。しかし、もち破片は水分が高いことから黴が生え易いという問題がある。
このようにパン類の製造において、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が同時に存在する複合食感を得る方法は未だ確立されていないのが実状である。
【0005】
【特許文献1】特開2004−229638号公報
【特許文献2】特開昭61−47162号公報
【特許文献3】特開平5−23123号公報
【特許文献4】特開平5−15296号公報
【特許文献5】特開平10−295253号公報
【特許文献6】特開平11−243845号公報
【非特許文献1】Pain 3, 51, P.11 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はパン類の製造における上記の問題を解決し、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が同時に存在する複合食感のパン類製品を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成せんと鋭意検討を重ねた結果、馬鈴薯、タピオカ及び糯種穀物に由来する澱粉又は穀粉の少なくとも一種以上を原料とする所定性状のα化澱粉/α化穀物粉粒の粒状物を、原料粉中に所定量配合することにより、やわらかい食感の部位ともちもちとした食感の部位が同時に存在する複合食感のパン類製品を製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、パン類の原料粉に、澱粉及び/又は穀物等粉粒をα化してなる粒状物を1〜50重量%配合してパン類を製造するに際して、該粒状物が、1)馬鈴薯又は馬鈴薯澱粉、2)タピオカ澱粉、3)糯種穀物又はそれに由来する澱粉から選ばれる少なくとも一種以上を加熱処理し、水分が20%以下かつ粒度が目開き15mmの篩を通過し目開き3mmの篩を通過しない範囲に入るものであることを特徴とするパン類の製造方法である。
本発明についての以下の説明において、「穀物」との記載には馬鈴薯の粉粒物が含まれる場合があるものとする。
【発明の効果】
【0008】
本発明による製造法を用いると、パン生地由来のやわらかい食感の部位と、α化澱粉/α化穀物の粒状物に由来するもちもちとした食感の部位が混在する複合食感のパン類が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のα化澱粉/穀物粉粒の粒状物の原料に用いられる主原料としての澱粉及び穀物、馬鈴薯は、馬鈴薯、タピオカ及び糯種穀物に由来する澱粉又は穀粉、穀物粒並びに馬鈴薯であり、糯種穀物としては、糯種とうもろこし、糯種小麦及び糯種米等が挙げられる。糯種穀物は、粉、そのままの粒状物、破砕等した粒状物等の形で使用でき、馬鈴薯はフレーク状物、粉状物、スライスチップ、粒状物等として用いられる。これら澱粉及び馬鈴薯、穀物粉粒(以下穀物と記す。)は未変性のまま用いても加工処理をしてから用いても良い。加工処理方法としては、エステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、湿熱処理、α化処理、さらにこれらを組み合わせた加工等がある。これらの変性、未変性の澱粉又は穀物は単独又は併用して使用できる。好ましくはタピオカ加工澱粉、ワキシーコーンスターチ、餅種米粉砕物である。
本発明のα化澱粉/穀物等粒状物の製造に際しては、生産性、食感の向上を目的として、主原料に加えて油脂、澱粉、穀粉、糖類、多糖類、蛋白質、乳化剤等を副原料として使用することができる。
【0010】
本発明において、α化処理は、当業界において行われている方法、例えば、ドラムドライ、スプレードライ、ジェットクッカー、エクストルーダーなどいずれでもよいが、粒状物を得るためにはエクストルーダー、特に副原料の混合が容易で安定して処理ができる2軸エクストルーダーを使用することが好ましい。粒度調整は、エクストルーダーを使用する場合は出口孔(ダイ)の大きさとカットスピードにより容易に調整可能であるし、また必要に応じてロールミル、衝撃式粉砕機、せん断式粗砕機などの粉砕機で粉砕・整粒したり、造粒物又は粉砕物を篩分機や分級機を用いて分級しても構わない。また、エクストルーダー以外のα化処理を用いた場合は、流動層造粒機、ブリケッティングマシン、コンパクティングマシンなどを用いて所定の粒度に造粒する方法もあるが、コスト面からはエクストルーダーを用いる前者が好ましい。穀物粒の場合は、穀物を所要の粒度に粉砕・分級
して用いることもできる。
【0011】
本発明において副原料として使用できる油脂は食用に供されるものであれば特に制限はなく、大豆油、ナタネ油、ひまわり油、オリーブ油、ハイオレイックナタネ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、ハイリノールサフラワー油、ハイオレイックサフラワー油、綿実油等の植物油や牛脂、豚脂、魚油、乳脂等の動物油、さらにこれらの油脂に水素添加(硬化)、エステル交換、分別等の物理的または化学的処理をしたものが挙げられる。さらにはモノグリセリド、ジグリセリド等の油脂類似物質、油脂の構成成分である脂肪酸およびその誘導体も本発明の油脂に代えて使用できる。又、これらの油脂はバター、マーガリン、ショートニング、粉末油脂等の形態で使用しても良い。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。これらの油脂の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.1〜20重量部であり、そのうち0.1〜10重量部が望ましい。
【0012】
本発明において副原料として使用できる澱粉は、コーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、小麦澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、エンドウ豆澱粉、及びこれらにエステル化処理、エーテル化処理、架橋処理、酸処理、酸化処理、湿熱処理、α化等の物理的又は化学的処理を単独で、または組み合わせて施した加工澱粉を挙げることができる。これら各種澱粉の中でも、ハイアミロースコーンスターチが好ましい。これらの澱粉の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.1〜30重量部であり、そのうち1〜20重量部が望ましい。
本発明において副原料として使用できる穀粉は、餅種米、米、小麦、とうもろこしなどの穀粉砕物が使用でき、これらを単独または2種以上を併用して使用することができる。これらの穀粉の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.1〜30重量部であり、そのうち1〜20重量部が望ましい。
【0013】
本発明において副原料として使用できる糖類は、食品に供し得るものであれば特に限定されるものではなく、グルコース、スクロース、フルクトース、マルトース、アラビノース、キシロース、リボース、ガラクトース、ガラクツロン酸、ウロン酸、ラムノース、フコース、マンノース、又はこれらを構成成分とする還元糖を有する物質や混合物である水あめ等がある。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら糖の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.1〜100重量部、好まし
くは0.5〜20重量部である。
本発明において副原料として使用できる多糖類としては、食品に供するものであれば特に限定されるものではなく、デキストリンや、ガム類としてはキサンタンガム、グァーガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、カラギーナン、ペクチン、グルコマンナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カードラン、アラビアガム、ジェランガム、プルラン、キチン、キトサンなどのガム類、小麦、大麦、ライ麦、コーン、豆類等から得られる食物繊維、市販のセルロース類などがある。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら多糖類の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜10重量部である。
【0014】
本発明において副原料として使用できる蛋白質としては、食品に供するものであれば特に限定されるものではなく、卵白、卵黄、鶏卵(全卵)、ホエー蛋白、カゼイン、カゼインナトリウム、全脂肪乳、脱脂粉乳、コラーゲン、ゼラチン、血漿蛋白、小麦蛋白、大豆蛋白、エンドウ豆蛋白等である。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら蛋白質の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは1〜20重量部である。
本発明において副原料として使用できる乳化剤としては、食品に供するものであれば特
に限定されるものではなく、モノグリセリン脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチンが挙げられ、このうちで最も好ましいのはモノグリセリン脂肪酸エステルである。これらはいずれも単独で又は2種以上を混合して使用できる。これら乳化剤の添加量は主原料である澱粉又は穀物100重量部に対して0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0015】
本発明のα化澱粉/穀粉粒状物の水分は20%以下が望ましい。好ましくは15%以下である。水分が20%を超えるとパン類に使用した際に黴が生えやすくなる。
本発明のα化澱粉/穀粉粒状物の粒度は、目開き15mmの篩を通過し目開き3mmの篩を通過しない範囲である。好ましくは目開き12mmの篩を通過し目開き4mmの篩を通過しない範囲である。目開き15mmの篩を通過しない粒度だと製パン性が悪化し、目開き3mmの篩を通過する粒度だともちもちとした食感が得られたパン類の全部位に広がってしまい複合食感とは言い難くなる。
本発明のα化澱粉/穀粉粒状物は、パン類の原料粉中に1〜50重量%配合してパン類を作製する。好ましくは5〜30重量%である。
1重量%より少ないと複合食感としての効果が得られず、50重量%より多いと製パン適性が著しく低下するとともに、本来のパンの風味が損なわれる。
本発明においてパン類とは小麦粉を主原料とし、イースト、食塩、水、イーストフードの他、必要な副材料を加えてドウを形成し、これを発酵膨化させた後、焼成、フライ、蒸しなどの加熱処理を行ったもので、具体的にはプルマン、イギリス食パンなどの食パン類、バゲット、パリジャンなどのフランスパン、スイートロール、バンズ、テーブルロールなどの各種ロール類の他、イーストドーナツ、中華まんなどと一般的に称されているものを指称する。尚、ここでいう副材料の中には、乳化剤、多糖類、酵素、卵、乳製品、油脂類、香辛料、洋酒類、香料、人工甘味料、食物繊維、活性グルテン、ココアパウダー、野菜粉末等があり、これらは必要に応じて単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【実施例】
【0016】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明は、これらの例に限られるものではない。
I.α化澱粉/穀粉粒状物の調製
下記に示す方法によりα化澱粉/穀粉粒状物を調製した。
<試験例1>
もち米粉砕物99部、グリセリン脂肪酸エステル1部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm2、スクリュー回転250rpm、ダイ孔3mmの条件でエクスト
ルーダー処理した膨化物を乾燥して、水分が8%で粒度が目開き3mm〜5.6mmの篩区分内となるようなα(アルファ)化もち米粒状物を得た。
<試験例2>
ワキシーコーンスターチ80部、小麦粉20部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力30kg/cm2、スクリュー回転250rpm、ダイ孔5mmの条件でエクストルーダ
ー処理した膨化物を乾燥して、ロール粉砕機により粉砕して篩い分けし、水分が10%で粒度が目開き3mm〜5.6mmの篩区分内となるようなα化ワキシーコーンスターチ粒状物を得た。
<試験例3>
タピオカ澱粉80部、小麦蛋白17部、サイリウムシードガム1部、グリセリン脂肪酸エステル2部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力30kg/cm2、スクリュー回転250rpm、ダイ孔5mmの条件でエクストルーダー処理した膨化物を乾燥して、ロール粉砕機により粉砕して篩い分けし、水分が10%で粒度が目開き3mm〜5.6mmの篩区分内となるようなα化タピオカ澱粉粒状物を得た。
【0017】
<試験例4>
もち米粉砕物99部、グリセリン脂肪酸エステル1部を、温度150℃、水分25%、ダイ圧力40kg/cm2、スクリュー回転250rpm、ダイ孔3mmの条件でエクスト
ルーダー処理した膨化物を乾燥した後、ピンミルを用いて微粉砕し、目開き3mmの篩を通過するα化もち米粉砕物を得た。本粉砕物の水分は10%であった。
<試験例5>
小麦粉99部、グリセリン脂肪酸エステル1部を、温度140℃、水分30%、ダイ圧力30kg/cm2、スクリュー回転数250rpm、ダイ孔3mmの条件でエクストル
ーダー処理した膨化物を乾燥して、水分が8%で目開き3mm〜5.6mmの篩区分内となるようなα化小麦粉粒状物を得た。
<試験例6>
市販の切もちを購入して目開き15mmの篩を通過し目開き1mmの篩を通過しない範囲に入るようおよそ4mm角に切断してもち粒状物とした。本もち粒状物の水分を測定したところ45%であった。
<試験例7>
市販の道明寺粉を購入して、粒度を測定したところ目開き3mmの篩を通過し、水分は5%であった。
【0018】
II.パン類の製造
(実施例1)
以下に示す配合により、所定の作業方法で食パンを得た。
「配合」
(中種)
強力小麦粉 70重量部
生イースト 2重量部
イーストフード 0.1重量部
水 40重量部
(本捏)
試験例1のα化穀粉粒状物 15重量部
強力小麦粉 30重量部
上白糖 5重量部
食塩 2重量部
脱脂粉乳 2重量部
油脂 6重量部
水 30重量部
【0019】
「作業方法」
ミキシング 低速3分 中速1分
発酵 4時間
ミキシング 低速3分 中速2分 高速1分(油脂投入)低速2分 中速2分 高速4
分(α化穀粉粒状物投入)低速1分
フロアタイム 30分
分割 220g
ベンチタイム 20分
成形 モルダー
ホイロ 60分 38℃ 80%
焼成 50分 上火190℃ 下火220℃
【0020】
(実施例2)
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例2のα化澱粉粒状物15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈実施例3〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例3のα化澱粉粒状物15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈比較例1〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例4のα化穀粉粉状物15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈比較例2〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例5のα化穀粉粒状物15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈比較例3〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例6の切り餅15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈比較例4〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例7の道明寺粉15重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
〈比較例5〉
試験例1のα化穀粉粒状物15重量部を試験例1のα化穀粉粒状物60重量部で置き換えた他は実施例1と同様にして、パンを製造した。
【0021】
上記の実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
作成したベーカリー製品について、出来立ての食感と、製パン適正及び25℃で一週間保存後の黴の生え具合を調べた。専門パネル20人が食すことにより比較し評価した。評価項目は、複合食感であるか否かでおこなった。また、製パン適正については、適正なものを○、生地の出来が著しく劣るものを×とした。さらに、黴の生え具合については、一週間保存後に黴が生えていないものを○、黴が生えていたものを×とした。最後に総合評価として、食感が複合食感であり、製パン適正及び25℃で一週間保存後の黴の生え具合が○のものを○、一つでも違うものを×と評価した。
実施例1〜3のように規定のパラメーターのα化穀粉粒状物を、規定の量にて配合したものは、やわらかい食感ともちもちとした食感が混在する複合食感を呈していた。比較例1〜5のように規定外のパラメーターのα化穀粉粒状物を、規定の量にて配合したものは、食感が均一化するか製パン適正に劣るか黴が生えやすかった。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料粉に、澱粉及び/又は穀物等粉粒をα化してなる粒状物を1〜50重量%配合してパン類を製造するに際して、該粒状物が、馬鈴薯又は馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、及び糯種穀物又はそれに由来する澱粉から選ばれる少なくとも一種以上を加熱処理し、水分が20%以下かつ粒度が目開き15mmの篩を通過し目開き3mmの篩を通過しない範囲に入るものであることを特徴とするパン類の製造方法。
【請求項2】
加熱処理が、エクストルーダーによることを特徴とする請求項1に記載のパン類の製造
方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法を用いてなるパン類。