パーキン蛋白の新規糖化因子
【課題】本発明は、パーキン蛋白を修飾しうる新規修飾因子を提供することを課題とする。また、新規修飾因子によるパーキン蛋白の機能増強剤を提供することであり、さらにはパーキン蛋白の機能を増強させることによる、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤を提供することを課題とする。
【解決手段】ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質がパーキン蛋白を糖化しうる。パーキン蛋白の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮しうる。
【解決手段】ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質がパーキン蛋白を糖化しうる。パーキン蛋白の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮しうる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキン蛋白を糖化しうる新規糖化因子に関し、さらには該新規糖化因子によるパーキン蛋白の機能増強剤に関し、具体的にはミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤に関する。より具体的には、弧発性及び家族性パーキンソン病、ミトコンドリア病、アルツハイマー病等々のミトコンドリア機能障害をきたす種々の変性疾患の改善剤(治療薬及び/又は予防製剤)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、静止時振戦、筋強剛、動作緩慢ないしは無動、及び姿勢反射障害を4主徴とする神経変性疾患であり、世界での有病率は1000人に約1例(WHO年報2003年)である。本邦での総患者数は約14万例であり、アルツハイマー病のそれ(約9万人)を超え、厚生労働省統計2002年10月現在、難病(特定疾患)にランクされている。この疾患は弧発性と家族性(遺伝性)に大別され、患者数は前者が主流である。尚、後者の家族性はまれであり、現在、世界で数10家系が発見されている程度ではあるが、欧米を中心に拡大しつつあり、疫学だけではなく、基礎及び臨床医学上非常に重要な遺伝性疾患である。
【0003】
弧発性パーキンソン病では、黒質緻密層のドーパミン産生細胞の選択的変性が、病態の基幹となっている。このドーパミン産生細胞の機能障害は、そこに存在するミトコンドリア遺伝子の欠失が加齢と共に増加するにつれ、進行することが知られている。そのため、ミトコンドリア機能は、この疾患の発症機転に重要な役割を担うと考えられている。
【0004】
他方、家族性(遺伝性)の常染色体劣性若年性パーキンソニズム(以下「AR−JP」と略記する;また、「家族性パーキンソン病」と表記することがある)においては、その原因としてパーキン遺伝子が発見された(非特許文献1)。この遺伝子の発現産物であるパーキン蛋白はユビキチンリガーゼ活性を有し(非特許文献2)、該遺伝子の変異がもたらす上記酵素活性の変調の結果、ある種の基質のユビキチン化が障害されることにより、AR−JPが発症するという機序が報告されている(非特許文献3)。尚、かかる知見の利用に関しては、パーキン遺伝子を用いる診断や治療(特許文献1)、ユビキチンリガーゼとしてのパーキンの利用(特許文献2)、パーキンの基質としてのパエル受容体を用いる治療薬のスクリーニング(特許文献3)等の技術が既に公知である。
更に最近、パーキン結合タンパク質として、HSP70とそのコ・シャペロンCHIPが報告された(非特許文献3)。この報告によれば、これ等の両タンパク質は、パーキンと共同し、ERストレス下で蓄積するパエル受容体をユビキチン化することにより、これを分解する。
【0005】
若年性パーキソニズムの原因遺伝子としてパーキン(parkin:PARK2)遺伝子が挙げられる。当該パーキン遺伝子から、アミノ酸465個より構成されるパーキン蛋白が生産される。このパーキン蛋白は、N末端にユビキチン様領域(Ub1)が存在し、ユビキチンリガーゼ(E3)の一つといわれる。E3は、ユビキチンプロテアソーム蛋白分解系(UPS)に関わる酵素であり、基質蛋白をユビキチン化し、プロテアソームで分解し、処理する。プロテアソームでは、細胞内(脳内)で不要になった基質蛋白を、分解処理するが、E3であるパーキン蛋白が異常をきたすと、プロテアソームで分解処理されるべき基質蛋白が、分解処理されず、神経細胞内に蓄積するといわれている。孤発性パーキンソン病患者の脳では、パーキン蛋白は、ニトロ化修飾(酸化的修飾)されている。パーキン蛋白の酸化修飾などによりパーキン蛋白のE3としての活性が低下すると、プロテアソームでは、不要になった基質蛋白を分解処理できず、細胞内に蓄積し、黒質のドーパミン神経細胞機能障害などが起こるといわれている(非特許文献4)。
【0006】
パーキン結合性新規蛋白質について、報告がある。パーキン結合性蛋白質(PBP)として、Klokin1及び2が報告されており、これらの蛋白質がパーキンと結合することで、パーキンのミトコンドリアへの移行を助けることが報告されており、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節を行っていることから、Klokin1やKlokin2の発現が、家族性及び孤発性パーキンソン病、ミトコンドリア病、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病等、ミトコンドリア機能障害をきたす種々の変性疾患に係る治療に重要な意味をもたらすことが報告されている(特許文献4)。
【0007】
Klokin1及び2は、ミトコンドリアへの移行シグナルを有し、細胞内で発現させると単独でミトコンドリアに移行して同部に局在する。さらに通常の増殖状態にある細胞では、パーキンと結合した後、パーキンPBP複合体の形でミトコンドリア内部まで移行する。パーキンはミトコンドリアの転写・複製ならびに電子伝達系の機能を促進するが、パーキン単独ではミトコンドリアに移行できないことから、パーキンのミトコンドリアにおける機能発現にはKlokinが不可欠である。以上の知見に基づき、Klokinによる増殖期細胞内パーキンのミトコンドリアへの移行のモデルが示された。つまり、細胞増殖期においては、Klokin1が出現し、Klokinと結合したパーキンはミトコンドリアに移行の後、ミトコンドア内膜内に侵入し、ミトコンドリア機能を促進する。他方、Klokinと結合できなかったパーキンはミトコンドリアに移行できず、細胞内で分解されるか、あるいはゴルジ複合体に局在し、ユビキチンリガーゼとして機能すると考えられる。尚、細胞分化期にはKlokinの発現が少ないため、パーキンはほとんどがゴルジ複合体あるいは細胞質に存在する(特許文献4)。ここで、Klokin1のアミノ酸配列は、GenBank Accession No. AK026331に開示されている。Klokin1及び2を構成するアミノ酸配列及びこれらの蛋白質をコードする遺伝子の配列も開示がある(特許文献4)。
【0008】
パーキン蛋白のグリコシル化(糖化)について報告がある。ここでは、培養細胞内において、パーキン蛋白が通常よりも大きな分子量を有するものが存在しており、精製パーキン蛋白が52kDa/58kDaの2種の分子量を有することを確認したことが報告されている。さらに、58kDaパーキン蛋白は、52kDaと比べて容易にミトコンドリアへ移行したことも報告されている(非特許文献5)。
【0009】
しかしながら、パーキン蛋白を糖化しうる物質については、何ら報告がない。さらに、58kDaパーキン蛋白が、容易にミトコンドリアへ移行する作用機序についても全く報告されていない。
【特許文献1】国際公開WO99/040191号パンフレット
【特許文献2】特開2001−316290号公報
【特許文献3】特開2003−18992号公報
【特許文献4】特開2006−115835号公報
【非特許文献1】Nature, 392(6676), 605-608, 1998April9.
【非特許文献2】Cell,102, 549-552, 2000.
【非特許文献3】Journal of Neurology, 250[Supplment 3], III/25-III/29, 2003.
【非特許文献4】Science, Vol. 304. no. 5675, pp. 1328 - 1331, 2004
【非特許文献5】日本神経学会総会プログラム抄録集, Vol. 4th, pp. 317, 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、パーキン蛋白を修飾しうる新規修飾因子を提供することを課題とする。また、新規修飾因子によるパーキン蛋白の機能増強剤を提供することであり、さらにはパーキン蛋白の機能を増強させることによる、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らはパーキン結合タンパク質に着目して鋭意研究を重ねた結果、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質がパーキン蛋白を糖化しうることを見出した。さらに、糖化したパーキン蛋白の挙動を確認することに成功した。パーキン蛋白の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮すること確認し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.パーキン蛋白の新規糖化因子。
2.パーキン蛋白の新規糖化因子が、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質である前項1に記載の新規糖化因子。
3.ChPF由来の物質が、糖転移酵素活性を有する領域を含む、前項2に記載の新規糖化因子。
4.ChPF由来の物質が、ChPF由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種である、前項2又は3に記載の新規糖化因子。
5.ChPF由来の物質が、以下に示すいずれかのアミノ酸配列を含む物質であり、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有することを特徴とする、前項2〜4のいずれかに記載の新規糖化因子:
1)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列;
2)上記1)に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列。
6.前項5に示すアミノ酸配列を含む物質のアミノ酸配列が、配列表の配列番号3又は配列番号4に示すアミノ酸配列である、前項5に記載の新規糖化因子。
7.前項1〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤。
8.前項4〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む薬剤。
9.さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含む、前項7又は8に記載の薬剤。
10さらにKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む前項9に記載の薬剤。
11.薬剤が、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤である、前項7〜10のいずれか1に記載の薬剤。
12.前項11に記載の薬剤を含む、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤。
13.ミトコンドリア機能障害が、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病である、前項12に記載の改善剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規糖化因子によりパーキン蛋白が糖化し、パーキン蛋白をミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア機能を増強する。該新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮する。これらの薬剤は、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患では、例えば、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病等々の治療及び予防のために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、パーキン蛋白の新規糖化因子とは、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有する因子であればよく、蛋白質、ペプチド、低分子化合物などのいずれであってもよい。具体的には、糖転移活性を有する領域を含む構造であるのが好適である。本発明の新規糖化因子は、その構造において、パーキン蛋白をより効果的に糖化させるために、少なくとも2箇所に糖転移酵素活性の全体又は部分を含んでいることが好適である。糖転移酵素として、例えばグルクロン酸糖転移酵素(1,3GlcA-T)及びガラクトース糖転移酵素(1,4GalNAc-T)が挙げられる。
【0015】
パーキン蛋白の新規糖化因子が、蛋白又はペプチドの場合は、N末端部分が正電荷豊富なアミノ酸であることが好適であり、特に好適には構成する全アミノ酸のうち10〜20%が正電荷豊富なアミノ酸であることが好適である。このようなアミノ酸として、例えばアルギニンが挙げられる。このようなアミノ酸を含む糖化因子が、パーキン蛋白と結合した場合、ミトコンドリアへのパーキン蛋白の移行作用がより効果的に進むことが考えられる。
【0016】
本発明の新規糖化因子として、具体的にはChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質が挙げられる。ChPF蛋白は、2種のガラクトース転移酵素(Gal-Tと略す)が繋がった蛋白である(図5参照)。ChPFはコンドロイチン硫酸重合因子の略称である。コンドロイチン硫酸 (CS)は、GlcA とGalNAc の二糖が数十回繰り返し重合した構造からなる直鎖上の硫酸化糖鎖で、コアタンパク質に結合し、プロテオグリカンとして存在する。本発明の新規糖化因子としてのChPF由来の物質は、ChPFのORF(蛋白質コード領域)由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種であり、具体的には図5aに示すChPF遺伝子から合成される蛋白の全体又は部分であり、ChPF(ORF)、ChPF△996及びKlokin1から選択されるいずれかの蛋白又はペプチドを含むものであれば良い。ChPFを合成しうる遺伝子は、配列表の配列番号1に示される。本遺伝子より合成されるChPF(ORF)は、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列よりなる。本発明の新規糖化因子は、少なくとも、配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を含む配列からなる蛋白又はペプチドであって、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有するものであればよい。このようなアミノ酸配列を含む蛋白又はペプチドの具体例として、配列番号4又は配列番号2に示すアミノ酸配列が挙げられる。具体的には、配列表の配列番号2で示される蛋白質はChPFであり、配列番号3で示される蛋白質はKlokin1であり、配列番号4で示される蛋白質はChPF△996である。ここで、ChPFおよびChPF△996を構成するアミノ酸配列中に、Klokin1を構成するアミノ酸配列が包含される。以下、ChPF蛋白については、単にChPFと記載する。
【0017】
パーキン蛋白は、上記背景技術の欄で説明したとおりであるが、本発明において、パーキン蛋白に関し、新たに検討した内容について、以下説明する。
【0018】
大腸菌(E.Coli)及び哺乳類系細胞に導入したパーキン蛋白を分析したところ、大腸菌においては分子量約52kDaの部分に、哺乳類系細胞であるヒト骨格筋由来RD細胞については、約52kDaの部分と、52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaの範囲でパーキン分子が検出され、58kDaのものが最も多く検出される。RD細胞において52kDaと58kDaのパーキンが検出された結果を代表として図1に示した。これにより、哺乳類系細胞では分子量の異なるパーキン分子が存在しうることが確認された。
【0019】
これらの分子量の異なるパーキン蛋白をグリコシダーゼなどの糖分解酵素を用いて、分子量の変化を検討したところ、O-グリコシダーゼ及びシアリダーゼで処理したものは、分子量約52kDaとなり、糖分解酵素を作用させない場合、O-グリコシダーゼ単独処理、N-グリコシダーゼ単独処理の場合は分子量約58kDaであった(図2参照)。これにより、パーキン蛋白の分子量の違いは、糖鎖の有無によることが考えられた。
【0020】
分子量の異なるパーキン分子の分布について確認した。内膜のマーカー蛋白ANT1、外膜及び内膜のマーカー蛋白Cyc、並びに外膜のマーカー蛋白VDAC1と同条件で、分子量約58kDaと約52kDaのパーキン分子の挙動を経時的に調べたところ、約58kDaのパーキン分子は内膜マーカー蛋白と同様の挙動を示し、約52kDaのパーキン分子は外膜蛋白と同様の挙動を示した(図3)。このことから、約58kDaのパーキン分子は、内膜に存在しうることが推定された。
【0021】
ミトコンドリアに対するパーキン蛋白の導入を調べた。パーキン分子をプロテイナーゼKを用いて消化し、ミトコンドリア内の存在を調べたところ、約58kDaのパーキン分子はミトコンドリア内で確認されたのに対して、約52kDaのパーキン分子は殆どミトコンドリア内では認められなかった(図4)。このことから、約58kDaのパーキン分子、即ち糖鎖を含むパーキン分子がミトコンドリア内に導入されることが確認された。
【0022】
次に、ChPF由来物質について説明する。ChPF由来物質の生体内の分布について、ヒト末梢血単核球(PMBC)、ヒト骨格筋由来RD細胞及び神経芽細胞腫由来SH−SY5Y細胞を、抗ChPF抗体を用いてインムノブロット法で調べたところ、いずれの細胞についても、ChPF、 ChPF△996及びKlokin1の存在が認められた(図6参照)。このことから、ChPF△996及びKlokin1は、ChPFのスプライシング変異体であることが確認された。
【0023】
以降本明細書において、ChPF由来物質を、「ChPFファミリー蛋白」と称する場合がある。以下、ChPFファミリー蛋白が、本発明のパーキン蛋白の新規糖化因子となりうる点について、詳細に説明する。パーキン蛋白と、ChPFファミリーの各蛋白であるChPF、ChPF△996又はKlokin1を混合したものについて、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の挙動と糖鎖との関係を調べた。各々について、ミトコンドリアにおけるパーキン蛋白の存在と糖鎖の有無を、抗パーキン抗体及びレクチンアフィニティーにより確認した。その結果、ChPFファミリー蛋白を含まない系では、パーキン蛋白に糖鎖は付加しておらず、ミトコンドリア内でのパーキン量も低いものであった。一方、ChPF又はChPF△996を含む場合では、ミトコンドリアでパーキン蛋白の存在が確認され、糖鎖も付加することが確認された。また、Klokin1を含む場合も、ChPF又はChPF△996に比べてやや低いものの、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の存在が確認され、糖鎖も付加していることが確認された(図11)。
【0024】
パーキン蛋白と、ChPFファミリーの各蛋白であるChPF、ChPF△996又はKlokin1を混合したものについて、ミトコンドリア内でのパーキンの発現量を確認した。ChPFファミリー蛋白を含まない系でのパーキン発現量を1としたとき、Kiokin1を含む系では2.5、ChPF△996を含む系では5、及びChPFを含む系では4.1程度であり、パーキン蛋白にChPFファミリーの各蛋白を加えた系では、加えない系に比べて、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の発現量が2.5〜5倍に増加した(図15)。
【0025】
本発明は、上述のパーキン蛋白の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤にも及ぶ。新規糖化因子が蛋白質又はペプチドの場合は、新規糖化因子をコードするDNA又はその断片であっても良い。該DNA又はペプチドを含む薬剤を用いて、新規糖化因子を発現させることで、生体内のパーキン蛋白を効果的に糖化させることができると考えられるからである。さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含んでいても良く、あるいはKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含んでいてもよい。Klokin1及び/又はKlokin2は、特許文献4にも記載するように、パーキン結合蛋白として機能しうるものであり、本発明のミトコンドリア機能を増強させうる因子であるからである。
【0026】
本発明の新規糖化因子は、パーキン蛋白をミトコンドリアへ移行させうることから、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節をおこなうことができる。更に、Klokin1及びKlokin2の細胞内発現を促進する薬物により、ミトコンドリア機能をさらに増強させうる。
【0027】
上記の薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤として作用する他、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としても機能しうる。具体的には、本発明の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤として使用することができる。特に、ミトコンドリア機能障害の改善剤として使用する場合は、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病の改善剤として使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明のパーキン蛋白の新規糖化因子について、開発の経緯を具体的に説明する参考例及び本発明の糖化因子を説明する実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
【0029】
(参考例1)パーキン蛋白について
1)2種の分子量からなるパーキン分子
His-タグパーキン蛋白を哺乳類の細胞系(ヒト骨格筋由来RD)に導入し、これを精製したところ、約52kDaと、52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaの範囲でパーキン分子が検出され、58kDaのものが最も多く検出された。RD細胞において52kDaと58kDaのパーキンが検出された結果を代表として図1に示した。同様に大腸菌にも導入したところ、大腸菌からは約52kDaのパーキン分子のみが認められた(図1)。
【0030】
分子量の異なる2種のパーキン分子の陰イオン交換カラムに対する親和性を比較した。Ni2+-Chelating SepharoseTM FF(Ni2+-キレーティングセファロースTM FF)カラムから溶出後、Q-SepharoseTM(Q-セファロースTM)カラムを通したとき、約52kDaのパーキン分子は150〜200mMのNaClで、58kDaのパーキン分子は400mMのNaClで溶出された。これにより、約58kDaのパーキン分子は何らかの修飾を受けていると考えられた。
【0031】
そこで、パーキン分子の修飾を解析するために、約58kDaのパーキン分子をN-グリコシダーゼ、シアリダーゼ AとO-グリコシダーゼで処理した。その結果、シアリダーゼ AとO-グリコシダーゼによる処置は約58kDaのパーキン分子を約52kDaのパーキン分子に消化した(図2)。これより約58kDaのパーキン分子がO-グリコシル化(糖化)されたものであることが判明した。58kDa分子以外に52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaでもパーキン分子が検出される場合があり、このことから52kDaより大きい分子量のパーキンは、糖化パーキン分子であると考えられた。
【0032】
2)パーキン蛋白の分布
次に分子量の異なる2種のパーキン分子の分布を検討した。約58kDaのパーキン分子のバンドは、ミトコンドリア内膜のマーカーであるANT1と類似していたが、約52kDaのパーキンはプロテイナーゼK処理で速やかに分解された(図3)。さらに、パーキン分子のミトコンドリアに対する導入実験(import study)を行ったところ、約58kDaのパーキン分子は約52kDaのパーキン分子に比べ、ミトコンドリアに容易に移行しうることが判明した(図4)。
【0033】
(参考例2)パーキン結合蛋白の確認
酵母2-ハイブリッドによりパーキン蛋白と結合する蛋白を探索し、Klokin1と名付けたクローンを得た(特許文献4、GenBank Accession No. AK026331)。GenBankデータベースのBlast分析で、Klokin1とホモロジーを有する遺伝子を検索したところ、コンドロイチン重合因子(ChPF、GenBank Accession No. AB095813)(図5a)の3'末端と完全に一致することを確認した。さらにChPF△996と名付けた蛋白の配列も確認した(GenBank Accession No. AL136814)。Klokin1とChPF△996は、ChPFに存在する膜貫通領域が存在しなかった。一方、Klokin1はChPFがスプライシングされた結果、N末端に正電荷をもつアミノ酸であるアルギニン(Rと略す)が多くなった。図5bにKlokin1のN末端領域の部分の塩基配列(atg以後の領域が相当)(配列番号5)と、これに相当するアミノ酸配列(配列番号6)を示す。具体的には初めの30アミノ酸の中で5個のアルギニン(R)が含まれており(約16%)、この領域がミトコンドリアのターゲティング・シグナルを構成していると考えられた。
【0034】
(実施例1)ChPFファミリー蛋白について
1)ChPFファミリーの各蛋白のアミノ酸配列
上記で得られたKlokin1とChPF△996について、ヒト脳RACE cDNAライブラリー(Clontech社)から、それぞれの蛋白質の全長を検出した。各々のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2(ChPF:GenBank Accession No. AB095813参照)、配列番号3(Klokin1:GenBank Accession No. AK026331参照)、配列番号4(ChPF△996:GenBank Accession No. AL136814参照)に示される。
【0035】
さらにウサギで作製した抗Klokin1抗体を用いてイムノブロットを行ったところ、Klokin1、ChPF△996、ChPFに相当するバンドを末梢血リンパ球(PBMC)、ヒト骨格筋由来RD細胞及びヒト神経芽細胞腫由来SH−SY5Y細胞から検出した(図6)。このことから、Klokin1とChPF△996がChPFのスプライシング変異体であると考えられた。以下、ChPFファミリー蛋白は、Klokin1、ChPF△996及び/又はChPFを含む蛋白群を意味し、単にChPFという場合は、ChPFファミリー蛋白のうちのChPF(ORF)であることを意味する。
【0036】
2)ChPFファミリーの各蛋白の分布
ChPFファミリーの各蛋白が、細胞内のどの部位に局在するかを確認した。His-タグKlokin1をCOS1細胞(ミドリザル腎由来)に導入し、抗His抗体を用いてミトコンドリア、細胞質及び核内における局在を調べたところ、Klokin1は主にミトコンドリアに存在し、ごく一部は核にも検出された。ChPFとChPF△996は、主に細胞質(cytosol)分画で検出され、一部はミトコンドリア分画にも認められた(図7、8)。
【0037】
さらにChPFファミリーの各蛋白がミトコンドリアのどこに局在するのかを、プロテイナーゼK及びトリプシンを用いた部分消化法で検討した。His-タグChPF、His-タグChPF△996及びHis-タグKlokin1を導入したCOS1細胞から、細胞分画法でミトコンドリアを採取し、プロテイナーゼKで部分的に消化したのち、抗His抗体によりイムノブロット解析を行った。その結果、ChPFとChPF△996は主にミトコンドリア外膜のマーカーであるANT1とパターンが一致するのに対し、Klokin1の免疫反応性パターンは内膜のマーカーであるVDAC1のそれと類似していた(図9)。
すなわちKlokin1は、ChPFやChPF△996とは異なり、ミトコンドリア内膜内に局在することが判明した。同様の結果は、トリプシン処理のミトコンドリアでも得られた。
【0038】
次にChPFファミリーの各蛋白をレポーター蛋白を含むGFP変異体を作製してCOS1細胞に導入し、蛍光顕微鏡で細胞内分布を調べた。パーキン-GFP及びKlokin1-GFPは正確にミトコンドリアに特異的なプローブであるMitotracker Redのシグナル(赤)に一致したが、ChPF-GFPとChPF△996-GFPは、主にミトコンドリアの外で検出された。これらは、細胞分画法の結果と一致した(図10)。
【0039】
(実施例2)パーキン蛋白糖化因子
ChPFファミリーの各蛋白のパーキン蛋白へ及ぼす影響を確認した。
1)Klokin1とパーキン蛋白との関係
His-タグパーキン蛋白とHA-タグKlokin1をCOS1細胞へ導入し、抗HA抗体及びレクチンを用いて免疫共沈降法で解析した。その結果、抗HA抗体で沈降した分画は抗His抗体(図11a、左のレーン)とレクチン混合物(図11a、右レーン)と反応することを確認した。抗HA抗体で沈降した分画をGlycine-HCl(pH 2.5)で処理した後、再び抗パーキン抗体で沈降したところ、その画分はレクチンに反応し、約58kDaのパーキン蛋白のバンドとして検出された(図11b)。このことより、Klokin1がo-グリコシル化(糖化)されたパーキン蛋白と結合していることが明らかになった。
【0040】
2)ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白との関係
ChPFがパーキン蛋白の糖化に関与しているか否かを確認した。精製したパーキン蛋白とChPFにUDP-Gal, UDP-GalNAc, UDP-Glc, UDP-GlcNAcの4種類の単糖を添加し、パーキン蛋白に各糖が付加されるか否かをレクチンブロットにより確認した。その結果、これらの単糖は程度の違いはあるものの、すべてパーキンに付加することが確認された(図12)。つまり、ChPFはパーキン蛋白を基質としてこれらの単糖を転移させる機能を有することが明らかとなった。
【0041】
ChPFファミリー各蛋白及びパーキン蛋白をCOS1細胞に導入し、レクチンブロッティングにより検討したところ、特にChPF蛋白及びChPF△996含む系では、パーキン蛋白はレクチンと反応し、糖鎖が付加していることが確認された。すなわち、ChPFファミリー蛋白により、培養細胞内においてパーキンの糖化が促進されていることが確認された(図13、最下段)。
【0042】
一方、培養細胞にChPFファミリー各蛋白をCOS1細胞に導入したとき、パーキン蛋白のユビキチンリガーゼ(E3)活性がどのように変化するかをユビキチンアッセイにより調べたところ、ChPF蛋白をCOS1細胞に導入した場合にはE3活性が抑制されていた。ユビキチンアッセイの方法は、例えば、 Nature Genet. 25: 302-305. (2000)を参照することができるが、具体的には以下の方法により検討した。
COS1細胞にChPFファミリーとともにHA-ユビキチンを共導入したのち、プロテオゾーム阻害剤であるMG132を添加し、その後抗パーキン抗体で免疫沈降し、抗HA抗体を用いてイムノブロットを行った(図14参照)。パーキンはユビキチンリガーゼ(E3)活性を持つためパーキンとともに沈降する種々の蛋白がユビキチン化されている。しかし、ChPF、ChPF△996が導入され、パーキンが糖化された場合にはその機能が低下するため、パーキンとともに沈降するユビキチンの付加した蛋白が減少していることを示している。本結果は細胞を用いた実験系で行ったものであるが、無細胞系のin vitro ユビキチンアッセイでも同様の結果が得られた。
【0043】
さらに、ChPFファミリー各蛋白をCOS1細胞に導入した場合には、パーキン蛋白は糖化されるのみならず、ミトコンドリアにおけるパーキン蛋白の発現が明らかに増加した。このことは図13の上から2段目のイムノブロット法による成績から明らかであったが、このデータをデンシトメーターで定量化し、同様の実験を合計8回繰り返し、データを集計したものが図15である。ChPFファミリーを含まない系でのパーキン発現量を1としたときに、Kiokin1を含む系では2.5、ChPF△996を含む系では5、及びChPFを含む系では4.1程度であった。このことから、パーキン蛋白にChPFファミリーの各蛋白を加えた系では、加えない系に比べて、ミトコンドリア内での発現量が大きく、定量すると2.5〜5倍に増加することが確認された(図15)。
【0044】
(実施例3)ChPFのアポトーシス抑制作用
ChPFファミリー各蛋白が、細胞のアポトーシスに対して抑制作用を示すか否かを検討した。COS1細胞にミトコンドリア電子伝達系複合体1の阻害剤であるロテノン(rotenone)(0.4μM)を添加し、初期アポトーシスのマーカーであるアネキシンVを用いてフローサイトメーターで測定した。ChPFファミリー各蛋白を含まないコントロールに比べ、3つのChPFファミリー各蛋白を導入した細胞では明らかにアポトーシスが抑制された(図16)。
【0045】
以上の結果より、パーキン蛋白が、ゴルジ複合体においてChPF又はChPF△996により糖化された場合には、さらにKlokin1と結合し、ミトコンドリア内に運搬されるが、ChPF、ChPF△996による糖化が行われないパーキンは、ゴルジ複合体でE3として機能するものと考えられた(図17)。パーキン蛋白のもつ抗アポトーシス作用、活性酸素の産生抑制作用はミトコンドリア機能に関連するものと考えられている。ChPFファミリー蛋白の存在によりパーキン蛋白はミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア内で機能しうることから、ChPFファミリー蛋白がパーキンソン病の治療ターゲットとなりうるものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳述したように、パーキン蛋白が本発明の新規糖化因子により糖化された場合には、さらにKlokin1と結合し、ミトコンドリア内に運搬され、ミトコンドリア機能を増強するものと考えられる。これにより、本発明の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤となり得、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤となりうる。ミトコンドリア機能障害の例として、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】大腸菌及び哺乳類由来細胞におけるパーキン蛋白の分子量を確認した図である。(参考例1)
【図2】各分子量のパーキン分子に各種糖分解酵素を作用させたときの分子量を示す図である。(参考例1)
【図3】各分子量のパーキン分子の膜分布を示す図である。(参考例1)
【図4】各分子量のパーキン分子のミトコンドリア分布を示す図である。(参考例1)
【図5】ChPFファミリー蛋白の構造を示す図である。(参考例2)
【図6】ChPF、ChPF△996、Klokin1が、スプライシング変異体であることを示す図である。(実施例1)
【図7】Klokin1の分布を示す図である。(実施例1)
【図8】ChPFファミリー蛋白の分布を示す図である。(実施例1)
【図9】ChPFファミリー蛋白の膜分布を示す図である。(実施例1)
【図10】ChPFファミリー蛋白のミトコンドリア外内分布を示す図である。(実施例1)
【図11】Klokin1とパーキン蛋白との関係を示す図である。(実施例2)
【図12】ChPFのパーキン蛋白の糖化に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図13】ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白の糖化に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図14】ChPFファミリー蛋白のユビキチンリガーゼ活性に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図15】ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白のミトコンドリア内発現に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図16】ChPFファミリー蛋白のアポトーシスに及ぼす影響を示す図である。(実施例3)
【図17】細胞内でのパーキン蛋白の作用を概念的に示す図である。パーキン蛋白に対する新規糖化因子の効果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキン蛋白を糖化しうる新規糖化因子に関し、さらには該新規糖化因子によるパーキン蛋白の機能増強剤に関し、具体的にはミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤に関する。より具体的には、弧発性及び家族性パーキンソン病、ミトコンドリア病、アルツハイマー病等々のミトコンドリア機能障害をきたす種々の変性疾患の改善剤(治療薬及び/又は予防製剤)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パーキンソン病は、静止時振戦、筋強剛、動作緩慢ないしは無動、及び姿勢反射障害を4主徴とする神経変性疾患であり、世界での有病率は1000人に約1例(WHO年報2003年)である。本邦での総患者数は約14万例であり、アルツハイマー病のそれ(約9万人)を超え、厚生労働省統計2002年10月現在、難病(特定疾患)にランクされている。この疾患は弧発性と家族性(遺伝性)に大別され、患者数は前者が主流である。尚、後者の家族性はまれであり、現在、世界で数10家系が発見されている程度ではあるが、欧米を中心に拡大しつつあり、疫学だけではなく、基礎及び臨床医学上非常に重要な遺伝性疾患である。
【0003】
弧発性パーキンソン病では、黒質緻密層のドーパミン産生細胞の選択的変性が、病態の基幹となっている。このドーパミン産生細胞の機能障害は、そこに存在するミトコンドリア遺伝子の欠失が加齢と共に増加するにつれ、進行することが知られている。そのため、ミトコンドリア機能は、この疾患の発症機転に重要な役割を担うと考えられている。
【0004】
他方、家族性(遺伝性)の常染色体劣性若年性パーキンソニズム(以下「AR−JP」と略記する;また、「家族性パーキンソン病」と表記することがある)においては、その原因としてパーキン遺伝子が発見された(非特許文献1)。この遺伝子の発現産物であるパーキン蛋白はユビキチンリガーゼ活性を有し(非特許文献2)、該遺伝子の変異がもたらす上記酵素活性の変調の結果、ある種の基質のユビキチン化が障害されることにより、AR−JPが発症するという機序が報告されている(非特許文献3)。尚、かかる知見の利用に関しては、パーキン遺伝子を用いる診断や治療(特許文献1)、ユビキチンリガーゼとしてのパーキンの利用(特許文献2)、パーキンの基質としてのパエル受容体を用いる治療薬のスクリーニング(特許文献3)等の技術が既に公知である。
更に最近、パーキン結合タンパク質として、HSP70とそのコ・シャペロンCHIPが報告された(非特許文献3)。この報告によれば、これ等の両タンパク質は、パーキンと共同し、ERストレス下で蓄積するパエル受容体をユビキチン化することにより、これを分解する。
【0005】
若年性パーキソニズムの原因遺伝子としてパーキン(parkin:PARK2)遺伝子が挙げられる。当該パーキン遺伝子から、アミノ酸465個より構成されるパーキン蛋白が生産される。このパーキン蛋白は、N末端にユビキチン様領域(Ub1)が存在し、ユビキチンリガーゼ(E3)の一つといわれる。E3は、ユビキチンプロテアソーム蛋白分解系(UPS)に関わる酵素であり、基質蛋白をユビキチン化し、プロテアソームで分解し、処理する。プロテアソームでは、細胞内(脳内)で不要になった基質蛋白を、分解処理するが、E3であるパーキン蛋白が異常をきたすと、プロテアソームで分解処理されるべき基質蛋白が、分解処理されず、神経細胞内に蓄積するといわれている。孤発性パーキンソン病患者の脳では、パーキン蛋白は、ニトロ化修飾(酸化的修飾)されている。パーキン蛋白の酸化修飾などによりパーキン蛋白のE3としての活性が低下すると、プロテアソームでは、不要になった基質蛋白を分解処理できず、細胞内に蓄積し、黒質のドーパミン神経細胞機能障害などが起こるといわれている(非特許文献4)。
【0006】
パーキン結合性新規蛋白質について、報告がある。パーキン結合性蛋白質(PBP)として、Klokin1及び2が報告されており、これらの蛋白質がパーキンと結合することで、パーキンのミトコンドリアへの移行を助けることが報告されており、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節を行っていることから、Klokin1やKlokin2の発現が、家族性及び孤発性パーキンソン病、ミトコンドリア病、糖尿病、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病等、ミトコンドリア機能障害をきたす種々の変性疾患に係る治療に重要な意味をもたらすことが報告されている(特許文献4)。
【0007】
Klokin1及び2は、ミトコンドリアへの移行シグナルを有し、細胞内で発現させると単独でミトコンドリアに移行して同部に局在する。さらに通常の増殖状態にある細胞では、パーキンと結合した後、パーキンPBP複合体の形でミトコンドリア内部まで移行する。パーキンはミトコンドリアの転写・複製ならびに電子伝達系の機能を促進するが、パーキン単独ではミトコンドリアに移行できないことから、パーキンのミトコンドリアにおける機能発現にはKlokinが不可欠である。以上の知見に基づき、Klokinによる増殖期細胞内パーキンのミトコンドリアへの移行のモデルが示された。つまり、細胞増殖期においては、Klokin1が出現し、Klokinと結合したパーキンはミトコンドリアに移行の後、ミトコンドア内膜内に侵入し、ミトコンドリア機能を促進する。他方、Klokinと結合できなかったパーキンはミトコンドリアに移行できず、細胞内で分解されるか、あるいはゴルジ複合体に局在し、ユビキチンリガーゼとして機能すると考えられる。尚、細胞分化期にはKlokinの発現が少ないため、パーキンはほとんどがゴルジ複合体あるいは細胞質に存在する(特許文献4)。ここで、Klokin1のアミノ酸配列は、GenBank Accession No. AK026331に開示されている。Klokin1及び2を構成するアミノ酸配列及びこれらの蛋白質をコードする遺伝子の配列も開示がある(特許文献4)。
【0008】
パーキン蛋白のグリコシル化(糖化)について報告がある。ここでは、培養細胞内において、パーキン蛋白が通常よりも大きな分子量を有するものが存在しており、精製パーキン蛋白が52kDa/58kDaの2種の分子量を有することを確認したことが報告されている。さらに、58kDaパーキン蛋白は、52kDaと比べて容易にミトコンドリアへ移行したことも報告されている(非特許文献5)。
【0009】
しかしながら、パーキン蛋白を糖化しうる物質については、何ら報告がない。さらに、58kDaパーキン蛋白が、容易にミトコンドリアへ移行する作用機序についても全く報告されていない。
【特許文献1】国際公開WO99/040191号パンフレット
【特許文献2】特開2001−316290号公報
【特許文献3】特開2003−18992号公報
【特許文献4】特開2006−115835号公報
【非特許文献1】Nature, 392(6676), 605-608, 1998April9.
【非特許文献2】Cell,102, 549-552, 2000.
【非特許文献3】Journal of Neurology, 250[Supplment 3], III/25-III/29, 2003.
【非特許文献4】Science, Vol. 304. no. 5675, pp. 1328 - 1331, 2004
【非特許文献5】日本神経学会総会プログラム抄録集, Vol. 4th, pp. 317, 2007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、パーキン蛋白を修飾しうる新規修飾因子を提供することを課題とする。また、新規修飾因子によるパーキン蛋白の機能増強剤を提供することであり、さらにはパーキン蛋白の機能を増強させることによる、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らはパーキン結合タンパク質に着目して鋭意研究を重ねた結果、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質がパーキン蛋白を糖化しうることを見出した。さらに、糖化したパーキン蛋白の挙動を確認することに成功した。パーキン蛋白の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮すること確認し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち本発明は、以下よりなる。
1.パーキン蛋白の新規糖化因子。
2.パーキン蛋白の新規糖化因子が、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質である前項1に記載の新規糖化因子。
3.ChPF由来の物質が、糖転移酵素活性を有する領域を含む、前項2に記載の新規糖化因子。
4.ChPF由来の物質が、ChPF由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種である、前項2又は3に記載の新規糖化因子。
5.ChPF由来の物質が、以下に示すいずれかのアミノ酸配列を含む物質であり、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有することを特徴とする、前項2〜4のいずれかに記載の新規糖化因子:
1)配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列;
2)上記1)に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列。
6.前項5に示すアミノ酸配列を含む物質のアミノ酸配列が、配列表の配列番号3又は配列番号4に示すアミノ酸配列である、前項5に記載の新規糖化因子。
7.前項1〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤。
8.前項4〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む薬剤。
9.さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含む、前項7又は8に記載の薬剤。
10さらにKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む前項9に記載の薬剤。
11.薬剤が、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤である、前項7〜10のいずれか1に記載の薬剤。
12.前項11に記載の薬剤を含む、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤。
13.ミトコンドリア機能障害が、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病である、前項12に記載の改善剤。
【発明の効果】
【0013】
本発明の新規糖化因子によりパーキン蛋白が糖化し、パーキン蛋白をミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア機能を増強する。該新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としての機能を発揮する。これらの薬剤は、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患では、例えば、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、糖尿病等々の治療及び予防のために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、パーキン蛋白の新規糖化因子とは、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有する因子であればよく、蛋白質、ペプチド、低分子化合物などのいずれであってもよい。具体的には、糖転移活性を有する領域を含む構造であるのが好適である。本発明の新規糖化因子は、その構造において、パーキン蛋白をより効果的に糖化させるために、少なくとも2箇所に糖転移酵素活性の全体又は部分を含んでいることが好適である。糖転移酵素として、例えばグルクロン酸糖転移酵素(1,3GlcA-T)及びガラクトース糖転移酵素(1,4GalNAc-T)が挙げられる。
【0015】
パーキン蛋白の新規糖化因子が、蛋白又はペプチドの場合は、N末端部分が正電荷豊富なアミノ酸であることが好適であり、特に好適には構成する全アミノ酸のうち10〜20%が正電荷豊富なアミノ酸であることが好適である。このようなアミノ酸として、例えばアルギニンが挙げられる。このようなアミノ酸を含む糖化因子が、パーキン蛋白と結合した場合、ミトコンドリアへのパーキン蛋白の移行作用がより効果的に進むことが考えられる。
【0016】
本発明の新規糖化因子として、具体的にはChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質が挙げられる。ChPF蛋白は、2種のガラクトース転移酵素(Gal-Tと略す)が繋がった蛋白である(図5参照)。ChPFはコンドロイチン硫酸重合因子の略称である。コンドロイチン硫酸 (CS)は、GlcA とGalNAc の二糖が数十回繰り返し重合した構造からなる直鎖上の硫酸化糖鎖で、コアタンパク質に結合し、プロテオグリカンとして存在する。本発明の新規糖化因子としてのChPF由来の物質は、ChPFのORF(蛋白質コード領域)由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種であり、具体的には図5aに示すChPF遺伝子から合成される蛋白の全体又は部分であり、ChPF(ORF)、ChPF△996及びKlokin1から選択されるいずれかの蛋白又はペプチドを含むものであれば良い。ChPFを合成しうる遺伝子は、配列表の配列番号1に示される。本遺伝子より合成されるChPF(ORF)は、配列表の配列番号2に示すアミノ酸配列よりなる。本発明の新規糖化因子は、少なくとも、配列表の配列番号3に示されるアミノ酸配列若しくは配列番号3に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列を含む配列からなる蛋白又はペプチドであって、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有するものであればよい。このようなアミノ酸配列を含む蛋白又はペプチドの具体例として、配列番号4又は配列番号2に示すアミノ酸配列が挙げられる。具体的には、配列表の配列番号2で示される蛋白質はChPFであり、配列番号3で示される蛋白質はKlokin1であり、配列番号4で示される蛋白質はChPF△996である。ここで、ChPFおよびChPF△996を構成するアミノ酸配列中に、Klokin1を構成するアミノ酸配列が包含される。以下、ChPF蛋白については、単にChPFと記載する。
【0017】
パーキン蛋白は、上記背景技術の欄で説明したとおりであるが、本発明において、パーキン蛋白に関し、新たに検討した内容について、以下説明する。
【0018】
大腸菌(E.Coli)及び哺乳類系細胞に導入したパーキン蛋白を分析したところ、大腸菌においては分子量約52kDaの部分に、哺乳類系細胞であるヒト骨格筋由来RD細胞については、約52kDaの部分と、52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaの範囲でパーキン分子が検出され、58kDaのものが最も多く検出される。RD細胞において52kDaと58kDaのパーキンが検出された結果を代表として図1に示した。これにより、哺乳類系細胞では分子量の異なるパーキン分子が存在しうることが確認された。
【0019】
これらの分子量の異なるパーキン蛋白をグリコシダーゼなどの糖分解酵素を用いて、分子量の変化を検討したところ、O-グリコシダーゼ及びシアリダーゼで処理したものは、分子量約52kDaとなり、糖分解酵素を作用させない場合、O-グリコシダーゼ単独処理、N-グリコシダーゼ単独処理の場合は分子量約58kDaであった(図2参照)。これにより、パーキン蛋白の分子量の違いは、糖鎖の有無によることが考えられた。
【0020】
分子量の異なるパーキン分子の分布について確認した。内膜のマーカー蛋白ANT1、外膜及び内膜のマーカー蛋白Cyc、並びに外膜のマーカー蛋白VDAC1と同条件で、分子量約58kDaと約52kDaのパーキン分子の挙動を経時的に調べたところ、約58kDaのパーキン分子は内膜マーカー蛋白と同様の挙動を示し、約52kDaのパーキン分子は外膜蛋白と同様の挙動を示した(図3)。このことから、約58kDaのパーキン分子は、内膜に存在しうることが推定された。
【0021】
ミトコンドリアに対するパーキン蛋白の導入を調べた。パーキン分子をプロテイナーゼKを用いて消化し、ミトコンドリア内の存在を調べたところ、約58kDaのパーキン分子はミトコンドリア内で確認されたのに対して、約52kDaのパーキン分子は殆どミトコンドリア内では認められなかった(図4)。このことから、約58kDaのパーキン分子、即ち糖鎖を含むパーキン分子がミトコンドリア内に導入されることが確認された。
【0022】
次に、ChPF由来物質について説明する。ChPF由来物質の生体内の分布について、ヒト末梢血単核球(PMBC)、ヒト骨格筋由来RD細胞及び神経芽細胞腫由来SH−SY5Y細胞を、抗ChPF抗体を用いてインムノブロット法で調べたところ、いずれの細胞についても、ChPF、 ChPF△996及びKlokin1の存在が認められた(図6参照)。このことから、ChPF△996及びKlokin1は、ChPFのスプライシング変異体であることが確認された。
【0023】
以降本明細書において、ChPF由来物質を、「ChPFファミリー蛋白」と称する場合がある。以下、ChPFファミリー蛋白が、本発明のパーキン蛋白の新規糖化因子となりうる点について、詳細に説明する。パーキン蛋白と、ChPFファミリーの各蛋白であるChPF、ChPF△996又はKlokin1を混合したものについて、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の挙動と糖鎖との関係を調べた。各々について、ミトコンドリアにおけるパーキン蛋白の存在と糖鎖の有無を、抗パーキン抗体及びレクチンアフィニティーにより確認した。その結果、ChPFファミリー蛋白を含まない系では、パーキン蛋白に糖鎖は付加しておらず、ミトコンドリア内でのパーキン量も低いものであった。一方、ChPF又はChPF△996を含む場合では、ミトコンドリアでパーキン蛋白の存在が確認され、糖鎖も付加することが確認された。また、Klokin1を含む場合も、ChPF又はChPF△996に比べてやや低いものの、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の存在が確認され、糖鎖も付加していることが確認された(図11)。
【0024】
パーキン蛋白と、ChPFファミリーの各蛋白であるChPF、ChPF△996又はKlokin1を混合したものについて、ミトコンドリア内でのパーキンの発現量を確認した。ChPFファミリー蛋白を含まない系でのパーキン発現量を1としたとき、Kiokin1を含む系では2.5、ChPF△996を含む系では5、及びChPFを含む系では4.1程度であり、パーキン蛋白にChPFファミリーの各蛋白を加えた系では、加えない系に比べて、ミトコンドリア内でのパーキン蛋白の発現量が2.5〜5倍に増加した(図15)。
【0025】
本発明は、上述のパーキン蛋白の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤にも及ぶ。新規糖化因子が蛋白質又はペプチドの場合は、新規糖化因子をコードするDNA又はその断片であっても良い。該DNA又はペプチドを含む薬剤を用いて、新規糖化因子を発現させることで、生体内のパーキン蛋白を効果的に糖化させることができると考えられるからである。さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含んでいても良く、あるいはKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含んでいてもよい。Klokin1及び/又はKlokin2は、特許文献4にも記載するように、パーキン結合蛋白として機能しうるものであり、本発明のミトコンドリア機能を増強させうる因子であるからである。
【0026】
本発明の新規糖化因子は、パーキン蛋白をミトコンドリアへ移行させうることから、ミトコンドリアの転写調節や機能発現の調節をおこなうことができる。更に、Klokin1及びKlokin2の細胞内発現を促進する薬物により、ミトコンドリア機能をさらに増強させうる。
【0027】
上記の薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤として作用する他、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤としても機能しうる。具体的には、本発明の新規糖化因子を含む薬剤は、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤として使用することができる。特に、ミトコンドリア機能障害の改善剤として使用する場合は、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病の改善剤として使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に、本発明のパーキン蛋白の新規糖化因子について、開発の経緯を具体的に説明する参考例及び本発明の糖化因子を説明する実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではないことは明らかである。
【0029】
(参考例1)パーキン蛋白について
1)2種の分子量からなるパーキン分子
His-タグパーキン蛋白を哺乳類の細胞系(ヒト骨格筋由来RD)に導入し、これを精製したところ、約52kDaと、52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaの範囲でパーキン分子が検出され、58kDaのものが最も多く検出された。RD細胞において52kDaと58kDaのパーキンが検出された結果を代表として図1に示した。同様に大腸菌にも導入したところ、大腸菌からは約52kDaのパーキン分子のみが認められた(図1)。
【0030】
分子量の異なる2種のパーキン分子の陰イオン交換カラムに対する親和性を比較した。Ni2+-Chelating SepharoseTM FF(Ni2+-キレーティングセファロースTM FF)カラムから溶出後、Q-SepharoseTM(Q-セファロースTM)カラムを通したとき、約52kDaのパーキン分子は150〜200mMのNaClで、58kDaのパーキン分子は400mMのNaClで溶出された。これにより、約58kDaのパーキン分子は何らかの修飾を受けていると考えられた。
【0031】
そこで、パーキン分子の修飾を解析するために、約58kDaのパーキン分子をN-グリコシダーゼ、シアリダーゼ AとO-グリコシダーゼで処理した。その結果、シアリダーゼ AとO-グリコシダーゼによる処置は約58kDaのパーキン分子を約52kDaのパーキン分子に消化した(図2)。これより約58kDaのパーキン分子がO-グリコシル化(糖化)されたものであることが判明した。58kDa分子以外に52kDaより大きい分子量、例えば55〜65kDaでもパーキン分子が検出される場合があり、このことから52kDaより大きい分子量のパーキンは、糖化パーキン分子であると考えられた。
【0032】
2)パーキン蛋白の分布
次に分子量の異なる2種のパーキン分子の分布を検討した。約58kDaのパーキン分子のバンドは、ミトコンドリア内膜のマーカーであるANT1と類似していたが、約52kDaのパーキンはプロテイナーゼK処理で速やかに分解された(図3)。さらに、パーキン分子のミトコンドリアに対する導入実験(import study)を行ったところ、約58kDaのパーキン分子は約52kDaのパーキン分子に比べ、ミトコンドリアに容易に移行しうることが判明した(図4)。
【0033】
(参考例2)パーキン結合蛋白の確認
酵母2-ハイブリッドによりパーキン蛋白と結合する蛋白を探索し、Klokin1と名付けたクローンを得た(特許文献4、GenBank Accession No. AK026331)。GenBankデータベースのBlast分析で、Klokin1とホモロジーを有する遺伝子を検索したところ、コンドロイチン重合因子(ChPF、GenBank Accession No. AB095813)(図5a)の3'末端と完全に一致することを確認した。さらにChPF△996と名付けた蛋白の配列も確認した(GenBank Accession No. AL136814)。Klokin1とChPF△996は、ChPFに存在する膜貫通領域が存在しなかった。一方、Klokin1はChPFがスプライシングされた結果、N末端に正電荷をもつアミノ酸であるアルギニン(Rと略す)が多くなった。図5bにKlokin1のN末端領域の部分の塩基配列(atg以後の領域が相当)(配列番号5)と、これに相当するアミノ酸配列(配列番号6)を示す。具体的には初めの30アミノ酸の中で5個のアルギニン(R)が含まれており(約16%)、この領域がミトコンドリアのターゲティング・シグナルを構成していると考えられた。
【0034】
(実施例1)ChPFファミリー蛋白について
1)ChPFファミリーの各蛋白のアミノ酸配列
上記で得られたKlokin1とChPF△996について、ヒト脳RACE cDNAライブラリー(Clontech社)から、それぞれの蛋白質の全長を検出した。各々のアミノ酸配列は、配列表の配列番号2(ChPF:GenBank Accession No. AB095813参照)、配列番号3(Klokin1:GenBank Accession No. AK026331参照)、配列番号4(ChPF△996:GenBank Accession No. AL136814参照)に示される。
【0035】
さらにウサギで作製した抗Klokin1抗体を用いてイムノブロットを行ったところ、Klokin1、ChPF△996、ChPFに相当するバンドを末梢血リンパ球(PBMC)、ヒト骨格筋由来RD細胞及びヒト神経芽細胞腫由来SH−SY5Y細胞から検出した(図6)。このことから、Klokin1とChPF△996がChPFのスプライシング変異体であると考えられた。以下、ChPFファミリー蛋白は、Klokin1、ChPF△996及び/又はChPFを含む蛋白群を意味し、単にChPFという場合は、ChPFファミリー蛋白のうちのChPF(ORF)であることを意味する。
【0036】
2)ChPFファミリーの各蛋白の分布
ChPFファミリーの各蛋白が、細胞内のどの部位に局在するかを確認した。His-タグKlokin1をCOS1細胞(ミドリザル腎由来)に導入し、抗His抗体を用いてミトコンドリア、細胞質及び核内における局在を調べたところ、Klokin1は主にミトコンドリアに存在し、ごく一部は核にも検出された。ChPFとChPF△996は、主に細胞質(cytosol)分画で検出され、一部はミトコンドリア分画にも認められた(図7、8)。
【0037】
さらにChPFファミリーの各蛋白がミトコンドリアのどこに局在するのかを、プロテイナーゼK及びトリプシンを用いた部分消化法で検討した。His-タグChPF、His-タグChPF△996及びHis-タグKlokin1を導入したCOS1細胞から、細胞分画法でミトコンドリアを採取し、プロテイナーゼKで部分的に消化したのち、抗His抗体によりイムノブロット解析を行った。その結果、ChPFとChPF△996は主にミトコンドリア外膜のマーカーであるANT1とパターンが一致するのに対し、Klokin1の免疫反応性パターンは内膜のマーカーであるVDAC1のそれと類似していた(図9)。
すなわちKlokin1は、ChPFやChPF△996とは異なり、ミトコンドリア内膜内に局在することが判明した。同様の結果は、トリプシン処理のミトコンドリアでも得られた。
【0038】
次にChPFファミリーの各蛋白をレポーター蛋白を含むGFP変異体を作製してCOS1細胞に導入し、蛍光顕微鏡で細胞内分布を調べた。パーキン-GFP及びKlokin1-GFPは正確にミトコンドリアに特異的なプローブであるMitotracker Redのシグナル(赤)に一致したが、ChPF-GFPとChPF△996-GFPは、主にミトコンドリアの外で検出された。これらは、細胞分画法の結果と一致した(図10)。
【0039】
(実施例2)パーキン蛋白糖化因子
ChPFファミリーの各蛋白のパーキン蛋白へ及ぼす影響を確認した。
1)Klokin1とパーキン蛋白との関係
His-タグパーキン蛋白とHA-タグKlokin1をCOS1細胞へ導入し、抗HA抗体及びレクチンを用いて免疫共沈降法で解析した。その結果、抗HA抗体で沈降した分画は抗His抗体(図11a、左のレーン)とレクチン混合物(図11a、右レーン)と反応することを確認した。抗HA抗体で沈降した分画をGlycine-HCl(pH 2.5)で処理した後、再び抗パーキン抗体で沈降したところ、その画分はレクチンに反応し、約58kDaのパーキン蛋白のバンドとして検出された(図11b)。このことより、Klokin1がo-グリコシル化(糖化)されたパーキン蛋白と結合していることが明らかになった。
【0040】
2)ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白との関係
ChPFがパーキン蛋白の糖化に関与しているか否かを確認した。精製したパーキン蛋白とChPFにUDP-Gal, UDP-GalNAc, UDP-Glc, UDP-GlcNAcの4種類の単糖を添加し、パーキン蛋白に各糖が付加されるか否かをレクチンブロットにより確認した。その結果、これらの単糖は程度の違いはあるものの、すべてパーキンに付加することが確認された(図12)。つまり、ChPFはパーキン蛋白を基質としてこれらの単糖を転移させる機能を有することが明らかとなった。
【0041】
ChPFファミリー各蛋白及びパーキン蛋白をCOS1細胞に導入し、レクチンブロッティングにより検討したところ、特にChPF蛋白及びChPF△996含む系では、パーキン蛋白はレクチンと反応し、糖鎖が付加していることが確認された。すなわち、ChPFファミリー蛋白により、培養細胞内においてパーキンの糖化が促進されていることが確認された(図13、最下段)。
【0042】
一方、培養細胞にChPFファミリー各蛋白をCOS1細胞に導入したとき、パーキン蛋白のユビキチンリガーゼ(E3)活性がどのように変化するかをユビキチンアッセイにより調べたところ、ChPF蛋白をCOS1細胞に導入した場合にはE3活性が抑制されていた。ユビキチンアッセイの方法は、例えば、 Nature Genet. 25: 302-305. (2000)を参照することができるが、具体的には以下の方法により検討した。
COS1細胞にChPFファミリーとともにHA-ユビキチンを共導入したのち、プロテオゾーム阻害剤であるMG132を添加し、その後抗パーキン抗体で免疫沈降し、抗HA抗体を用いてイムノブロットを行った(図14参照)。パーキンはユビキチンリガーゼ(E3)活性を持つためパーキンとともに沈降する種々の蛋白がユビキチン化されている。しかし、ChPF、ChPF△996が導入され、パーキンが糖化された場合にはその機能が低下するため、パーキンとともに沈降するユビキチンの付加した蛋白が減少していることを示している。本結果は細胞を用いた実験系で行ったものであるが、無細胞系のin vitro ユビキチンアッセイでも同様の結果が得られた。
【0043】
さらに、ChPFファミリー各蛋白をCOS1細胞に導入した場合には、パーキン蛋白は糖化されるのみならず、ミトコンドリアにおけるパーキン蛋白の発現が明らかに増加した。このことは図13の上から2段目のイムノブロット法による成績から明らかであったが、このデータをデンシトメーターで定量化し、同様の実験を合計8回繰り返し、データを集計したものが図15である。ChPFファミリーを含まない系でのパーキン発現量を1としたときに、Kiokin1を含む系では2.5、ChPF△996を含む系では5、及びChPFを含む系では4.1程度であった。このことから、パーキン蛋白にChPFファミリーの各蛋白を加えた系では、加えない系に比べて、ミトコンドリア内での発現量が大きく、定量すると2.5〜5倍に増加することが確認された(図15)。
【0044】
(実施例3)ChPFのアポトーシス抑制作用
ChPFファミリー各蛋白が、細胞のアポトーシスに対して抑制作用を示すか否かを検討した。COS1細胞にミトコンドリア電子伝達系複合体1の阻害剤であるロテノン(rotenone)(0.4μM)を添加し、初期アポトーシスのマーカーであるアネキシンVを用いてフローサイトメーターで測定した。ChPFファミリー各蛋白を含まないコントロールに比べ、3つのChPFファミリー各蛋白を導入した細胞では明らかにアポトーシスが抑制された(図16)。
【0045】
以上の結果より、パーキン蛋白が、ゴルジ複合体においてChPF又はChPF△996により糖化された場合には、さらにKlokin1と結合し、ミトコンドリア内に運搬されるが、ChPF、ChPF△996による糖化が行われないパーキンは、ゴルジ複合体でE3として機能するものと考えられた(図17)。パーキン蛋白のもつ抗アポトーシス作用、活性酸素の産生抑制作用はミトコンドリア機能に関連するものと考えられている。ChPFファミリー蛋白の存在によりパーキン蛋白はミトコンドリアに移行し、ミトコンドリア内で機能しうることから、ChPFファミリー蛋白がパーキンソン病の治療ターゲットとなりうるものと考えられた。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上詳述したように、パーキン蛋白が本発明の新規糖化因子により糖化された場合には、さらにKlokin1と結合し、ミトコンドリア内に運搬され、ミトコンドリア機能を増強するものと考えられる。これにより、本発明の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤は、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤となり得、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤となりうる。ミトコンドリア機能障害の例として、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】大腸菌及び哺乳類由来細胞におけるパーキン蛋白の分子量を確認した図である。(参考例1)
【図2】各分子量のパーキン分子に各種糖分解酵素を作用させたときの分子量を示す図である。(参考例1)
【図3】各分子量のパーキン分子の膜分布を示す図である。(参考例1)
【図4】各分子量のパーキン分子のミトコンドリア分布を示す図である。(参考例1)
【図5】ChPFファミリー蛋白の構造を示す図である。(参考例2)
【図6】ChPF、ChPF△996、Klokin1が、スプライシング変異体であることを示す図である。(実施例1)
【図7】Klokin1の分布を示す図である。(実施例1)
【図8】ChPFファミリー蛋白の分布を示す図である。(実施例1)
【図9】ChPFファミリー蛋白の膜分布を示す図である。(実施例1)
【図10】ChPFファミリー蛋白のミトコンドリア外内分布を示す図である。(実施例1)
【図11】Klokin1とパーキン蛋白との関係を示す図である。(実施例2)
【図12】ChPFのパーキン蛋白の糖化に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図13】ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白の糖化に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図14】ChPFファミリー蛋白のユビキチンリガーゼ活性に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図15】ChPFファミリー蛋白のパーキン蛋白のミトコンドリア内発現に及ぼす影響を示す図である。(実施例2)
【図16】ChPFファミリー蛋白のアポトーシスに及ぼす影響を示す図である。(実施例3)
【図17】細胞内でのパーキン蛋白の作用を概念的に示す図である。パーキン蛋白に対する新規糖化因子の効果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキン蛋白の新規糖化因子。
【請求項2】
パーキン蛋白の新規糖化因子が、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質である請求項1に記載の新規糖化因子。
【請求項3】
ChPF由来の物質が、糖転移酵素活性を有する領域を含む、請求項2に記載の新規糖化因子。
【請求項4】
ChPF由来の物質が、ChPF由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の新規糖化因子。
【請求項5】
ChPF由来の物質が、以下に示すいずれかのアミノ酸配列を含む物質であり、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の新規糖化因子:
1)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列;
2)上記1)に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列。
【請求項6】
請求項5に示すアミノ酸配列を含む物質のアミノ酸配列が、配列表の配列番号2又は配列番号4に示すアミノ酸配列である、請求項5に記載の新規糖化因子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む薬剤。
【請求項9】
さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含む、請求項7又は8に記載の薬剤。
【請求項10】
さらにKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
薬剤が、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤である、請求項7〜10のいずれか1に記載の薬剤。
【請求項12】
請求項11に記載の薬剤を含む、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤。
【請求項13】
ミトコンドリア機能障害が、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病である、請求項12に記載の改善剤。
【請求項1】
パーキン蛋白の新規糖化因子。
【請求項2】
パーキン蛋白の新規糖化因子が、ChPF(chondroitin polymerizing factor)由来の物質である請求項1に記載の新規糖化因子。
【請求項3】
ChPF由来の物質が、糖転移酵素活性を有する領域を含む、請求項2に記載の新規糖化因子。
【請求項4】
ChPF由来の物質が、ChPF由来蛋白及びそのスプライシング変異体から選択される少なくとも1種である、請求項2又は3に記載の新規糖化因子。
【請求項5】
ChPF由来の物質が、以下に示すいずれかのアミノ酸配列を含む物質であり、パーキン蛋白を糖化しうる機能を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の新規糖化因子:
1)配列表の配列番号3に示すアミノ酸配列;
2)上記1)に示すアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列。
【請求項6】
請求項5に示すアミノ酸配列を含む物質のアミノ酸配列が、配列表の配列番号2又は配列番号4に示すアミノ酸配列である、請求項5に記載の新規糖化因子。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子を有効成分として含む薬剤。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれか1に記載の新規糖化因子をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む薬剤。
【請求項9】
さらに、Klokin1及び/又はKlokin2を有効成分として含む、請求項7又は8に記載の薬剤。
【請求項10】
さらにKlokin1及び/又はKlokin2をコードするDNA又はその断片を有効成分として含む請求項9に記載の薬剤。
【請求項11】
薬剤が、ミトコンドリア機能増強剤、抗酸化ストレス剤又はアポトーシス抑制剤である、請求項7〜10のいずれか1に記載の薬剤。
【請求項12】
請求項11に記載の薬剤を含む、ミトコンドリア機能障害をきたす変性疾患、酸化ストレスによる傷害又はアポトーシスによる傷害の改善剤。
【請求項13】
ミトコンドリア機能障害が、弧発性パーキンソン病、家族性パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症及び/又は糖尿病である、請求項12に記載の改善剤。
【図5】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−240173(P2009−240173A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87534(P2008−87534)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【Fターム(参考)】
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