説明

ヒアルロン酸産生促進作用およびヒアルロン酸分解抑制作用を有する、アガリクスのエタノール抽出物及びこれを含む組成物

【課題】本発明の目的は、より効果的にヒアルロン酸の産生を促進し、かつヒアルロン酸の分解を抑制するアガリクス抽出物及びそれを含む組成物を提供することである。
【解決手段】乾燥アガリクスを95.0容量%以上エタノールで抽出して得られる、ヒアルロン酸産生促進活性および分解抑制活性を有するアガリクス抽出物を含む、関節可動性障害を治療または予防するための医薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進作用およびヒアルロン酸分解抑制作用を有する、アガリクスのエタノール抽出物及びこれを含む組成物(ヒアルロン酸産生促進および分解抑制剤)に関する。
【背景技術】
【0002】
老化(加齢)、変形性関節症や関節リウマチでは、関節液中のヒアルロン酸濃度が低下することで関節の可動性不良・不全が起こる。また、関節腔へのヒアルロン酸製剤(例:アルツ(登録商標)、スベニール(登録商標))の注射により関節液のヒアルロン酸濃度を高め、関節の可動性改善に起因した関節疾患の補助治療が行われている。すなわち、関節におけるヒアルロン酸は潤滑剤様物質として機能し、その産生促進および分解抑制は生理的な関節機能維持のみならず、関節疾患の予防・治療に繋がる。
【0003】
アガリクスは抗腫瘍効果をはじめ様々な薬理作用が期待される食品である(非特許文献1)。その作用の主成分はβグルカンを含む水溶性化合物であり、熱水抽出法等により成分抽出が行われる(非特許文献2)。したがって、抽出後の残渣は、産業廃棄物として処分されているのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Hetland G, Johnson E, Lyberg T, Bernardshaw S, Tryggestad AM, Grinde B. Effects of the medicinal mushroom Agaricus blazei Murill on immunity, infection and cancer. (2008) Scand J Immunol 68:363-370.
【非特許文献2】Nandan CK, Patra P, Bhanja SK, Adhikari B, Sarkar R, Mandal S, Islam SS. Structural characterization of a water-soluble β-(1-6)-linked D-glucan isolated from the hot water extract of an edible mushroom, Agaricus bitorquis. Carbohydr Res. (2008) 343:3120-3122.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ヒアルロン酸産生促進作用およびヒアルロン酸分解抑制作用を有する、アガリクスのエタノール抽出物及びそれを含む組成物(ヒアルロン酸産生促進および分解抑制剤)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、アガリクスのエタノール抽出物(単に、エタノール抽出物またはアガリクス抽出物とも呼ぶ)が、関節滑膜細胞において、優れたヒアルロン酸産生促進作用およびヒアルロン酸分解抑制作用を有することを初めて見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)乾燥アガリクスを95.0容量%以上エタノールで抽出して得られる、ヒアルロン酸産生促進活性および分解抑制活性を有するアガリクス抽出物を含む、関節可動性障害を治療または予防するための医薬;
(2)乾燥アガリクスの水分含量が10重量%以下である、(1)記載の医薬、
(3)乾燥アガリクスが、アガリクスを1気圧で10℃〜100℃の水または加圧下で100℃以上の水で処理した後の菌体である、(1)または(2)記載の医薬。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ヒアルロン酸の産生を効果的に促進することができ、かつヒアルロン酸の分解を効果的に抑制することができるので、ヒアルロン酸量の減少を伴う、関節の障害;皮膚の障害;または、眼の障害を効果的に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ヒト関節滑膜細胞をアガリクスのエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の50〜200μg/mlにて24時間培養した後、回収した培養液中のヒアルロン酸量を定量した。その結果、アガリクス抽出物は濃度依存的にヒアルロン酸産生を促進することが判明した。*および*** vs. 未処理細胞(Cont) (p<0.05および0.001)。
【図2】ヒト関節滑膜細胞をアガリクスのエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の200μg/mlにて24および48時間培養した後、回収した培養液中のヒアルロン酸量を定量した。その結果、アガリクス抽出物によるヒアルロン酸産生促進作用は処理後24時間で最大に達し、その産生量は48時間まで維持されることが判明した。*** vs.未処理細胞(p<0.001)。
【図3】ヒト関節滑膜細胞をアガリクスのエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の100および200μg/mlにて24時間処理した。A: 細胞よりRNAを抽出してリアルタイムPCR法によりヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2) mRNA発現量を解析した。その結果、アガリクス抽出物は恒常的に発現するHAS-2 mRNAレベルを濃度依存的に促進した。B: 細胞溶解液(50μgタンパク質)を用いて、ウエスタンブロット法によりHAS-2産生を解析した。その結果、アガリクス抽出物はHAS-2産生を促進した。**および*** vs. 未処理細胞(Cont) (p<0.01および0.001)。
【図4】ヒト関節滑膜細胞をアガリクスのエタノール抽出物(アガリクス抽出物)200μg/mlにて24時間培養した後、図3と同様の方法にてHAS-3の遺伝子発現(A)およびその産生を解析した。その結果、アガリクス抽出物はヒアルロン酸合成酵素3 (HAS-3)のmRNA発現および産生には影響を及ぼさないことが判明した。
【図5】ヒト関節滑膜細胞をエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の100および200μg/mlにて24時間培養した後、細胞よりRNAを抽出してリアルタイムPCR法によりヒアルロン酸分解酵素(HYAL)-1、-2および-3の mRNA発現量を解析した。その結果、アガリクス抽出物はこれら全てのHYAL mRNA発現を抑制することが判明した。*および** vs. 未処理細胞(Cont) (p<0.05および0.01)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるアガリクスは、ハラタケ科(Agaricaceae)ハラタケ属(Agaricus) のきのこをいい、Agaricus subrufescens、Agaricus blazei、Agaricus braziliensis、Agaricus sylvaticus、Agaricus rufotegulis、Agaricus bisporus、Agaricus campestris、Agaricus arvensis、Agaricus abruptibulbus等が例示できる。本発明におけるアガリクスは、好ましくはAgaricus subrufescens、Agaricus blazeiである。アガリクスは、傘、柄、子実体、菌糸体及び菌核のいずれでもよいが、子実体が好ましい。
【0011】
アガリクスは、キノコ(協和エンジニアリング株式会社、有限会社岐阜アガリクスファーム、株式会社大愛製品等)又は紛体(協和エンジニアリング株式会社の「協和のアガリクス茸 仙生露」顆粒タイプ等)の形態で市販されている。また、アガリクスの熱水抽出物が市販されている(例えば、協和エンジニアリング株式会社の「協和のアガリクス茸 仙生露」エキスタイプ、オリヒロプランディ株式会社の「水溶性アガリクス」等)。熱水抽出物の製造において、熱水抽出後のアガリクス菌体は、残渣として廃棄されている。また、不要部分または不要成分が除かれるので、アガリクスは、熱水抽出後のアガリクスが好ましい。
【0012】
熱水抽出とは、熱水、例えば、加熱還流または沸騰水中でアガリクスを煮て、水溶性成分を得ることをいい、βグルカンなどの水溶性成分を効率的に抽出するための操作を意味する。ただし、熱水抽出は、水溶性成分を得ることを目的としない単なる熱水処理(前処理)であってもよい。水溶性成分を効率よく抽出できる条件であれば、特に、水の温度、処理時間、アガリクスの重量に対する水の重量の比などの抽出条件は特に限定されない。よって、水溶性成分を抽出できるのであれば、低温で長時間抽出してもよい。1気圧において、10℃〜100℃、好ましくは30℃〜100℃、より好ましくは50℃〜100℃、さらに好ましくは70℃〜100℃の水で抽出されてもよい。加圧(1気圧を超える気圧)下で、100℃以上、好ましくは100℃〜200℃で抽出されても良い。
【0013】
乾燥アガリクスの乾燥度は、限定されないが、好ましくは10重量%以下の水分含量を有するアガリクス、より好ましくは8重量%以下、さらに好ましくは7重量%以下の水分含量を有する。乾燥アガリクスは、生アガリクスを任意の方法(例えば、天日乾燥、加熱乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等)により脱水することにより得ることができる。乾燥アガリクスは、粉末の形態にあるものが好ましい。
【0014】
本発明における95.0容量%以上のエタノールは、15℃で95.0容量%以上のエタノールを有する水性エタノールを意味する。好ましくは、96.0容量%以上、より好ましくは97.0容量%以上、さらに好ましくは98.0容量%以上、特に好ましくは99.0容量%以上のエタノールである。本発明において用いるエタノールは、特に容量%の記載がない限り、95.0容量%以上のエタノールを意味する。
【0015】
乾燥アガリクスのエタノールによる抽出は、乾燥アガリクスにエタノールを加えた後、常温で又は加熱下で、一定時間攪拌することにより行う。加熱温度は、通常エタノールの沸点以下の温度であるが、密閉容器中では120℃以下の温度とすることもできる。好ましい抽出温度は、常温(室温または18℃〜28℃)である。抽出時間は、特に限定されないが、例えば5分〜24時間程度である。抽出は、1回又は2回以上行うことができる。
【0016】
抽出における乾燥アガリクスに対するエタノールの使用量は、限定されないが、乾燥アガリクス100重量部に対して、エタノールを50重量部以上、好ましくは、100重量部以上、より好ましくは100〜5000重量部、さらに好ましくは200〜1000重量部、特に好ましくは300〜700重量部である。
【0017】
また、抽出における乾燥アガリクスとエタノールを混合した混合物中の水分含量が、10重量%以下、好ましくは8重量%以下、より好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。例えば、水分含量10重量%の乾燥アガリクス100gを95容量%エタノール100ml(15℃の95容量%エタノール密度0.816)で抽出する場合、抽出時の水分含量(%)は、[アガリクス中の水分重量10g+エタノール中の水分重量5g]/[アガリクスの重量100g+エタノールの重量81.6g]×100=7.5%と計算される。
【0018】
抽出処理後、濾紙又は濾布による濾過又は遠心分離などの分離手段によりエタノール抽出液を得ることができる。
【0019】
本発明におけるアガリクスのエタノール抽出物は、上記のエタノール抽出液の状態であってもよい。あるいは、エタノール抽出物は、抽出液から常法によりエタノールを全面的に又は部分的に除去した形態であってもよい。すなわち、エタノールを実質的に含まない粉末又はエタノールを1〜50重量%含む形態でもよい。10〜15重量%のエタノールを含む形態は、保存性がよいことから、好ましい態様である。エタノール抽出物中の有効成分は不明であるが、エタノール抽出物は、脂質、特にリン脂質、植物性ステロイドが含まれている。
【0020】
本発明は、上記抽出物を含むヒアルロン酸産生を促進およびヒアルロン酸分解を抑制するための組成物(ヒアルロン酸産生促進および分解抑制剤)を包含する。
【0021】
ヒアルロン酸は、グリコサミノグリカン(ムコ多糖)の一種で、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸が結合した二糖が繰り返す構造をしており、次式:
【化1】


(式中、nは、1以上の整数である)
で表すことができる。また、ヒアルロン酸は、ヒアルロナンとも呼ばれる。
【0022】
本発明におけるアガリクス抽出物は、ヒアルロン酸産生を促進およびヒアルロン酸分解を抑制するので、ヒアルロン酸量の減少を伴う関節可動性障害において、ヒアルロン酸量の減少を防ぎ、ヒアルロン酸量を増加させることができる。よって、本発明におけるアガリクス抽出物は、関節におけるヒアルロン酸による潤滑作用を回復または維持することができ、関節機能低下に対して改善効果を発揮できる。
【0023】
また、ヒアルロン酸の減少を伴う眼の障害などの眼機能低下に対して改善効果を発揮できる。
【0024】
また、ヒアルロン酸の減少を伴う皮膚障害に対して改善効果を発揮できる。
【0025】
したがって、本発明は、上記ヒアルロン酸の減少を伴う障害を治療または予防するための、医薬の形態にある組成物を包含する。
【0026】
ヒアルロン酸の減少を伴う関節可動性障害には、変形性関節症、関節リウマチ、感染性関節炎、外傷などが挙げられる。好ましくは、変形性関節症や関節リウマチである。
【0027】
ヒアルロン酸の減少を伴う眼障害には、角膜上皮障害、眼精疲労やドライアイなどが挙げられる。好ましくは、ドライアイである。ドライアイとは、涙が不足したり、涙の成分が変化することで目の表面に障害が生じる状態を意味し、涙液分泌減少症や乾性角膜結膜炎が含まれる。
【0028】
ヒアルロン酸の減少を伴う皮膚障害には、乾皮症(乾燥肌)、魚鱗癬、光老化、乾癬、アトピー性皮膚炎、褥瘡(床ずれ)や火傷による皮膚機能不全症などが挙げられる。好ましくは、光老化、乾癬、アトピー性皮膚炎、褥瘡(床ずれ)や火傷による皮膚機能不全症である。
【0029】
本発明で用いられる、治療や予防の対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、犬、猫等の愛玩動物、ウシ、ブタ、ニワトリ等の家畜動物であるが、特にヒトであることが望ましい。
【0030】
医薬の形態にある本発明の組成物は、医薬に配合される慣用の担体、賦形剤、添加物等を含み得る。医薬の剤形は、たとえば、クリーム、舌下剤、マッサジ油、溶液、懸濁液、ローション、軟膏、ゲル、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤等を挙げることができる。
【0031】
これらの医薬に、アガリクス抽出物(エタノールを実質的に含まない状態)を有効量、例えば0.1〜99.9重量%、好ましくは1〜99%配合する。残りの部分には、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等を配合する。
【0032】
配合される慣用の担体、賦形剤、または添加剤等には、溶媒、植物油(例えば、アーモンド油、ヒマシ油、カカオ脂、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、オリーブ油、パーム油、落花生油、ケシの実油、菜種油、ゴマ油、ダイズ油、ヒマワリ油、および茶の実油などの食用油)、鉱油、脂肪油、流動パラフィン、緩衝剤、保存剤、湿潤剤、キレート剤、抗酸化剤、安定化剤、乳化剤、懸濁化剤、ゲル形成剤、軟膏基剤、坐剤基剤、浸透促進剤、芳香剤、および皮膚保護剤などが挙げられる。
【0033】
溶媒には、水、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、液体ポリアルキルシロキサンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0034】
緩衝剤には、クエン酸、酢酸、酒石酸、乳酸、リン酸水素、ジエチルアミンンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0035】
湿潤剤には、グリセリン、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ソルビトール、乳酸、尿素、BG(1,3-ブチレングリコール)、ダイズステロールおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0036】
キレート剤には、EDTAナトリウム、クエン酸およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0037】
抗酸化剤には、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、アスコルビン酸およびその誘導体、トコフェロールおよびその誘導体、システイン、ならびにそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0038】
乳化剤には、天然ゴム(例えば、アカシアゴム)、トラガカントゴム、キサンタンガム;天然ホスファチド(例えば、ダイズレシチン);モノオレイン酸ソルビタン誘導体;羊毛脂;羊毛アルコール;ソルビタンエステル;モノグリセリド;脂肪アルコール(例えばベヘニルアルコール);脂肪酸エステル(例えばトリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)のような脂肪酸のトリグリセリド);およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0039】
懸濁化剤には、セルロースおよびその誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、カラゲナン、アカシアゴム、アラビアゴム、トラガカントおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0040】
ゲル基剤および増粘成分には、流動パラフィン、ポリエチレン、脂肪油、コロイドシリカまたはアルミニウム、亜鉛セッケン、グリセロール、プロピレングリコール、トラガカント、カルボキシビニルポリマー、ケイ酸マグネシウム-アルミニウム、親水性ポリマー(例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよび他のセルロース誘導体などのセルロース誘導体)、水膨潤性親水コロイド、カラゲナン、ヒアルロン酸塩(例えば、塩化ナトリウムを選択的に含むヒアルロン酸ゲル)、アルギン酸エステル(例えば、アルギン酸プロピレングリコール)およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0041】
軟膏基剤には、蜜蝋、パラフィン、セタノール、パルミチン酸セチル、セテアリルアルコール ステアリン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸、ステアリン酸PEG-150、植物油、脂肪酸のソルビタンエステル、ポリエチレングリコール、脂肪酸のソルビタンエステルと酸化エチレンとの間の縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)およびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0042】
疎水性軟膏基剤には、パラフィン、植物油、動物脂、合成グリセリド、ろう、ラノリン、液体ポリアルキルシロキサンおよびそれらの混合物などが挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0043】
親水性軟膏基剤には、固体マクロゴール(ポリエチレングリコール)などが挙げられるが、これに限定されることはない。さらに、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等には、スクワラン、レシチン、水添レシチン、テトラへキシルデカン酸アスコルビル、アラントイン、グリチルリチン酸2K、グリコシルトレハロース、加水分解水添デンプン 加水分解コラーゲン、バラエキス、ジメチコン、カプリリルグリコール、ベタイン、ステアロイルグルタミン酸Na、ノバラ油、バチルアルコール、ハイドロプロキシプロリンなどが挙げられる。
【0044】
本発明の医薬組成物は、さらにヒアルロン酸の減少を伴う障害の治療または予防ための他の薬剤を含んでもよい。
【0045】
本発明で用いられる、ヒアルロン酸の減少を伴う障害を治療または予防するために有効な投与量は、障害の程度、投与方法によって異なり、ヒアルロン酸産生を促進かつヒアルロン酸分解を抑制するために有効な量であれば限定されないが、アガリクス抽出物(エタノールを実質的に含まない形態)の量が、0.1〜1000mg/体重kg・日、好ましくは1〜500mg/体重kg・日、より好ましくは10〜100mg/体重kg・日である。
【0046】
本発明で用いられる、投与は、全身投与、局所投与であってよく、全身投与、局所投与は、経皮投与、舌下投与、経口投与、関節腔内投与、経腸投与、筋肉内投与、皮下投与、静脈投与、経鼻投与、点眼などいずれの投与形態であってもよい。好ましくは、経口投与、関節腔内投与、経皮投与、点眼である。
【0047】
したがって、本発明は、上記医薬組成物の製造方法に関するものである。また、本発明は、上記の医薬組成物を製造するための、アガリクス抽出物の使用に関するものである。また、本発明は、上記の医薬組成物を哺乳動物に投与することを含む、ヒアルロン酸産生を促進またはヒアルロン酸分解を抑制することによるヒアルロン酸の減少を伴う障害を治療または予防するための方法にも関するものである。
【0048】
また、本発明の組成物はヒアルロン酸産生を促進およびヒアルロン酸分解を抑制するため、皮膚の保湿性を保ち、皮膚に潤いや柔軟性及び弾力性を与えることができ、また、紫外線による表皮の損傷防御や修復、さらに皮膚再生をも惹起することができる。
【0049】
したがって、本発明は、化粧料の形態にある、上記抽出物を含むヒアルロン酸産生を促進およびヒアルロン酸分解を抑制するための組成物を包含する。
【0050】
化粧料の形態にある本発明の組成物は、化粧料に配合される慣用の担体、賦形剤、添加物等を含み得る。肌荒れ防止用、肌のきめの改善用、肌の柔軟性の改善用、肌の弾力性の改善用、肌のシワやたるみの改善用、肌の保湿性の改善用等の化粧料として使用することができる。
【0051】
化粧料の剤形としては、洗顔用(洗顔クリーム・フォーム・ジェル化粧料など)、整肌用(ローション・美容液など)、保護用(ミルク・モイスチャークリームなど)、パック・オイル・マッサージ化粧料、ベースメイク用(ファンデーション・白粉などサンスクリーン・日焼け化粧料など)、ポイントメイク用(口紅・アイシャドウ・アイライナーなど)、浴用(ソープ・ボディシャンプー・入浴用化粧料など)、サンケア用(サンスクリーン・日焼け化粧料など)、育毛・養毛用(育毛料・ヘアトニックなど)が挙げられる。
【0052】
これらの化粧料にアガリクス抽出物を有効量、例えば抽出物(エタノールを実質的に含まない状態)換算で0.1〜99.9重量%、好ましくは1〜99重量%配合する。残りの部分には、慣用の担体、賦形剤、または添加剤等を配合する。
【0053】
したがって、本発明は、上記の化粧料を製造するための、アガリクス抽出物の使用を含む。
【0054】
さらに、本発明の組成物は、食品、特にヒアルロン酸産生を促進およびヒアルロン酸分解を抑制するための食品の形態を含んでもよい。
【0055】
以下、実施例等により本発明を説明するが、本発明はこれの限定されるものではない。
【実施例1】
【0056】
熱水処理アガリクスからのエタノール抽出物の調製
株式会社協和ウェルネスより購入したアガリクス(Agaricus blazei Murill)の熱水抽出後の乾燥粉末(水分含量:6重量%)1000gに99容量%エタノール5000mLを加え、室温(20℃)の温度にて18時間にわたり攪拌しながら抽出した。抽出液をろ紙に通し、透明ろ液を36〜38℃で減圧濃縮して、エタノール抽出物167.6gを得た。
【0057】
熱水処理アガリクスの調製
熱水処理後アガリクスは、株式会社協和ウェルネスより購入する代わりに次のように調製してもよい。乾燥アガリクス子実体(Agaricus blazei Murill)300g(協和のアガリクス茸、水分含量:6重量%、協和エンジニアリング株式会社)を粉砕し、蒸留水2Lを加え、常圧(1気圧)下において2時間加熱還流を行った。これをろ紙でろ液(熱水抽出液)と残査に分け、残査に再び蒸留水2Lを加え、常圧下において2時間加熱還流して熱水抽出を行った。もう一度、残査を回収し、同様に熱水抽出を行い、残渣を回収後、乾燥し粉砕して熱水処理アガリクス乾燥粉末を得た。
【実施例2】
【0058】
ヒト関節滑膜細胞におけるアガリクス抽出物によるヒアルロン酸産生促進作用
正常ヒト関節滑膜細胞(大日本住友製薬(株)、CS-ABI-479)を10%仔ウシ血清(SAFCバイオサイエンス社製)含有Dulbecco's modified Eagle's medium (DMEM) (インビトロジェン社製)を用いて48 well-multiplate (AGCテクノグラス(株))に1 x 104 cells/wellの細胞数で播種した。細胞が接着・増殖し、well当りの細胞占有率が約>80%に達した時点で、アガリクスエタノール抽出物(アガリクス抽出物)(50〜200μg/ml)を含むDMEM(0.5 ml/well)にて細胞を24時間処理した。処理後、回収した培養液中のヒアルロン酸量をヒアルロン酸ELISAキット(生化学バイオビジネス(株))を用いて添付文書の指示に従い定量した。その結果、図1に示すとおり、アガリクス抽出物は濃度依存的にヒアルロン酸産生を促進することが判明した。
【0059】
HA定量
培養液中のHA量は、HA ELISAキット(生化学バイオビジネス(株))により添付の操作法に従って定量した。すなわち、回収した各処理ごとの培養液中のHAを購入キットに添付のマイクロプレート上に固相化されたヒアルロン酸結合タンパク質(HABP)に結合させた後、ペルオキシダーゼ結合HABPを添加して反応させた。次に、tetramethylbenzidineおよび過酸化水素を加え、450 nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(インフィニットF200、テカンジャパン製)測定した。HA量は、標準HA溶液(50-800 ng/ml)を用いて同時に作成した検量線より算出した。
【実施例3】
【0060】
24および48時間におけるヒアルロン酸産生促進作用
実施例2と同様に、正常ヒト関節滑膜細胞をアガリクスエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の200μg/mlを含むDMEMにて24および48時間処理した後、回収した培養液中のヒアルロン酸量を定量した。その結果、図2に示すとおり、アガリクス抽出物によるヒアルロン酸産生促進作用は処理後24時間で最大に達し、その産生量は48時間まで維持されることが判明した。
【実施例4】
【0061】
ヒト関節滑膜細胞におけるヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2) 遺伝子発現およびその産生に対するアガリクス抽出物の促進作用
実施例2と同様に、正常ヒト関節滑膜細胞をアガリクスエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の100および200μg/mlを含むDMEMにて24時間処理した。
【0062】
(A)細胞より抽出したRNAを用いて37℃で1時間逆転写反応を行い、一本鎖cDNAを合成した。このcDNAを用いてreal-time PCR装置(Thermal Cycler DiceTM Real Time System、タカラバイオ社製)により45 サイクル(1サイクル:95℃で5秒;60℃で30秒)のPCRを行うことで、ヒアルロン酸合成酵素2 (HAS-2) mRNA発現量を解析した。その結果、図3(A)に示すとおり、アガリクス抽出物は恒常的に発現するHAS-2 mRNAレベルを濃度依存的に促進した。
【0063】
細胞からの全RNAの抽出は、Isogen(ニッポンジーンより購入)を用いて添付の操作法に従い行った。すなわち、培養した細胞にIsogen(0.8 ml)を添加して細胞を溶解し、その溶解液にクロロホルム(0.16 ml)を添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上層の水層画分を回収し、さらに回収した水層と同容量のイソプロパノールを添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上清を除去して沈殿したRNAを回収した。回収したRNAをさらに75容量%のエタノール(0.8 ml)を添加して混和した。遠心分離(10000回転/分、10分間)後、上清を完全に除去してRNAを風乾させた。抽出した全RNAは核酸分解酵素不含滅菌蒸留水に溶解し、260 nmにおけるその吸光度を分光光度計(UV-1600、島津製作所社製)を用いて測定することにより定量した。
【0064】
逆転写酵素反応は、QuantiTectR Reverse Transcription Kit(QIAGENより購入)を用い、添付の操作法に従った。すなわち、全RNA(1 μg)に7 x gDNA Wipeout Bufferを加えて総量を14 μlとし、42℃で2分間ゲノムDNA除去反応を行った。続いて、このゲノムDNA除去反応液全量に5 x Quantiscript RT Buffer、RT Primer MixおよびQuantiscript Reverse Transcriptase(RT)を加えて総量を20 μlとし、37℃で1時間逆転写反応を行った。次に、95℃、3分間の熱処理にて反応を停止させ、一本鎖cDNAを合成した。
【0065】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、RT反応により合成した一本鎖cDNAを鋳型とし、ヒトヒアルロン酸合成酵素2(HAS2)またはヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)に特異的なプライマーを用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を行った。すなわち、RT反応溶液を滅菌蒸留水にて40倍希釈し、その希釈液2 μlに滅菌蒸留水を3 μl、SYBR(登録商標)Premix Ex TaqTM II(タカラバイオより購入)を6.25 μl、HAS2プライマーを1.25 μlを添加し全量を12.5 μlとして、Thermal Cycler Dice(登録商標)Real Time System(タカラバイオ製)を用いて45サイクル(1サイクル:94℃で5秒間; 60℃で30秒間)のPCR反応を行った。
【0066】
ヒトHAS2(Accession No. NM_005328.2)センスプライマー(配列番号1):5'-GACAGGCATCTCACGAACCG-3'
ヒトHAS2(Accession No. NM_005328.2)アンチセンスプライマー(配列番号2):5'-CAACGGGTCTGCTGGTTTAGC-3'
ヒトGAPDHを内標準遺伝子として用いた。
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)センスプライマー(配列番号3):5'-CATCCCTGCCTCTACTGGCG-3'、および、
ヒトGAPDH(Accession No. NM_002046.3)アンチセンスプライマー(配列番号4):5'-AGCTTCCCGTTCAGCTCAGG-3'
これらのプライマーは、オペロンバイオテクノロジー株式会社に合成依頼して作製した。
【0067】
HAS-2 mRNA発現量は、未処理細胞におけるHAS-2 mRNA発現量(測定値)に対する処理細胞におけるHAS-2 mRNA発現量(測定値)の相対値として表わされる。なお、HAS-2 mRNA発現量(測定値)は、内標準遺伝子に基づいて校正した値である。
【0068】
(B)細胞を細胞溶解液(1% Nonidant P-40/0.1% SDS/phosphate-buffered saline)を用いて回収し、その溶液を氷冷下、4℃で15,000 xgにおいて20分間遠心分離し、得られた上清を試料とした。なお、試料中のタンパク質はBCATMProtein kit(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて定量した。細胞溶解液(50 μgタンパク質)を用いて、ウエスタンブロット法によりHAS-2産生を解析した。その結果、図3(B)に示すとおり、アガリクス抽出物はHAS-2産生を促進した。
【0069】
ウエスタンブロットを次のように行った。24時間培養後から回収した細胞培養液に最終濃度3.3% (w/v)のtrichloroacetic acidを添加して一晩4℃にて静置し、タンパク質を不溶化させた。不溶性タンパク質を遠心分離(10,000回転/分、10分)により沈殿させた後、1% (v/v) 2-mercaptoethanolを含むSDS-PAGE sample bufferに沈殿物を溶解させ、12.5% (w/v)ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを行った。泳動終了後、ゲル中のタンパク質をニトロセルロース膜に転写し、定法に従いニトロセルロース膜をブロッキング溶液 [5% (w/v) fatty-free dry milk/80 mM Na2HPO4/100 mM NaCl/0.1% (v/v) Tween-20 (pH 7.5)]に浸し、1時間のブロッキングを行った。蒸留水およびPBS-T buffer [80 mM Na2HPO4/100 mM NaCl/0.1% (v/v) Tween-20 (pH 7.5)]にてそれぞれ2〜3回洗浄後、1% (w/v) BSA/PBS(-)で希釈した一次抗体[rabbit anti-(HAS-2)IgG (オペロンバイオテクノロジー株式会社による受託作製)またはanti-βアクチンIgG(Medical & Biological Laboratories社製)]溶液に浸し室温で8時間以上緩やかに振とうした。一次抗体結合後、蒸留水およびPBS-T bufferにてそれぞれ2〜3回洗浄し、1% (w/v) BSA/PBS(-)で希釈した二次抗体[horseradish peroxidase (HRP)-conjugated goat anti-(rabbit IgG)IgG (Sigma Chemicals社製)]溶液に室温で1時間浸した。二次抗体結合後、ECL-Western Blotting Detection kitのECL-Western Blotting Detection Reagents (Amersham Biosciences社より購入)に浸して正確に1分間反応させた。反応終了後、HSA2量をルミノ・イメージアナライザーLAS-1000 plus (富士フィルム社製)により定量した。
【実施例5】
【0070】
ヒト関節滑膜細胞におけるヒアルロン酸合成酵素3 (HAS-3) 遺伝子発現およびその産生に対するアガリクス抽出物の作用
実施例2と同様に、正常ヒト関節滑膜細胞をアガリクスエタノール抽出物(アガリクス抽出物)200μg/mlを含むDMEMにて24時間処理した後、実施例4と同様の方法にてHAS-3の遺伝子発現(A)およびその産生(B)を解析した。その結果、図4に示すとおりアガリクス抽出物はヒアルロン酸合成酵素3 (HAS-3)のmRNA発現および産生には影響を及ぼさないことが判明した。
【0071】
ヒトHAS3(Accession No. NM_005329.2)センスプライマー(配列番号5):5'-CCCCACTAAGTACCTCCG-3'
ヒトHAS3(Accession No. NM_005329.2)アンチセンスプライマー(配列番号6):5'-GAGCCACTCCCGGAAGTAAGA-3'
HAS-3 mRNA発現量は、未処理細胞におけるHAS-3 mRNA発現量(測定値)に対する処理細胞におけるHAS-3 mRNA発現量(測定値)の相対値として表わされる。なお、HAS-3 mRNA発現量(測定値)は、内標準遺伝子に基づいて校正した値である。
【0072】
ウエスタンブロットにおける1次抗体はrabbit anti-(HAS-3)IgG (オペロンバイオテクノロジー(株)による受託作製)、2次抗体はHRP-conjugated goat anti-(rabbit IgG)IgGを使用した。
【0073】
ヒトにおけるヒアルロン酸合成酵素(HAS)として、HAS-1、HAS-2およびHAS-3が同定されており、中でもHAS-2は様々な組織におけるヒアルロン酸(HA)生合成における中心的役割を担っている (Camenisch TD, Spicer AP, Brehm-Gibson T, Biesterfeldt J, Augustine ML, Calabro A Jr, Kubalak S, Klewer SE, McDonald JA. Disruption of hyaluronan synthase-2 abrogates normal cardiac morphogenesis and hyaluronan-mediated transformation of epithelium to mesenchyme. (2000) J Clin Invest106:349-360.)。
【0074】
また、HASの発現は組織特異的に調節されており、関節においては主にHAS-2が高発現しており、逆にHAS-3の発現が低いことが知られている(Hiscock DR, Caterson B, Flannery CR. Expression of hyaluronan synthases in articular cartilage. (2000) Osteoarthritis Cartilage 8:120-126.およびRecklies AD, White C, Melching L, Roughley PJ. Differential regulation and expression of hyaluronan synthases in human articular chondrocytes, synovial cells and osteosarcoma cells. (2001) Biochem J 354:17-24.)。
【0075】
HAS-1およびHAS-2は高分子HA (平均2x106Da)を、HAS-3は低分子HA (平均2x105 Da)を合成する (Itano N, Sawai T, Yoshida M, Lenas P, Yamada Y, Imagawa M, Shinomura T, Hamaguchi M, Yoshida Y, Ohnuki Y, Miyauchi S, Spicer AP, McDonald JA, Kimata K. Three isoforms of mammalian hyaluronan synthases have distinct enzymatic properties. (1999) J Biol Chem 274:25085-25092.)。
【0076】
関節の可動性調節には高分子ヒアルロン酸が必須であることから、関節におけるアガリクス抽出物によるHAS-2依存的なHAの生合成促進は関節可動性機能の維持・改善に繋がる。
【実施例6】
【0077】
ヒト関節滑膜細胞におけるヒアルロン酸分解酵素(HYAL)-1、-2および-3の遺伝子発現に対するアガリクス抽出物の抑制作用
実施例2と同様に、正常ヒト関節滑膜細胞をアガリクスエタノール抽出物(アガリクス抽出物)の100および200μg/mlを含むDMEMにて24時間処理した後、細胞より回収したRNAを用いて実施例4と同様にreal-time PCR法によりヒアルロン酸分解酵素(HYAL)-1、-2および-3の mRNA発現量を解析した。その結果、図5に示すとおり、アガリクス抽出物はこれら全てのHYAL mRNA発現を抑制することが判明した。
【0078】
ヒトHYAL-1(Accession No. NM_007312.3)センスプライマー(配列番号7):5'-AGCCCCAACTACACCG-3'
ヒトHYAL-1(Accession No. NM_007312.3)アンチセンスプライマー(配列番号8):5'-CAGCACTGCGGGCATGTAG-3'
ヒトHYAL-2(Accession No. NM_003773.4)センスプライマー(配列番号9):5'-TCTACCATTGGCGAGAGTGC-3'
ヒトHYAL-2(Accession No. NM_003773.4)アンチセンスプライマー(配列番号10):5'-AGGTACTGGCAGGTCTCCG-3'
ヒトHYAL-3(Accession No. NM_003549.2)センスプライマー(配列番号11):5'-GTCCTGGCCTATGTCCG-3'
ヒトHYAL-3(Accession No. NM_003549.2)アンチセンスプライマー(配列番号12):5'-GCTGCACTCACACCAATGGA-3'
HYAL-1、-2および-3 mRNA発現量は、未処理細胞におけるHYAL-1、-2および-3 mRNA発現量(測定値)に対する処理細胞におけるHYAL-1、-2および-3発現量(測定値)の相対値として表わされる。なお、HYAL-1、-2および-3 mRNA発現量(測定値)は、内標準遺伝子に基づいて校正した値である。
【0079】
ヒトにおけるヒアルロン酸分解酵素(HYAL)のうち、種々の組織や血清、尿中に存在するHYAL-1およびHYAL-2がHA分解における中心的役割を担っている(Bastow ER, Byers S, Golub SB, Clarkin CE, Pitsillides AA, Fosang AJ.Hyaluronan synthesis and degradation in cartilage and bone. (2008) Cell Mol Life Sci 65:395-413.)。
【0080】
中でもHYAL-2は高分子HAの分解によりHA断片(平均2x104Da)を生成し、この断片が関節破壊酵素群、例えばアグリカネースやマトリックスメタロプロテアーゼ13/コラゲナーゼ3の産生を促進することで関節機能障害を引き起こす(Knudson W, Casey B, Nishida Y, Eger W, Kuettner KE, Knudson CB. Hyaluronan oligosaccharides perturb cartilage matrix homeostasis and induce chondrocytic chondrolysis. (2000) Arthritis Rheum 43:1165-1174.およびOhno S, Im HJ, Knudson CB, Knudson W. Hyaluronan oligosaccharides induce matrix metalloproteinase 13 via transcriptional activation of NFκB and p38 MAP kinase in articular chondrocytes. (2006) J Biol Chem 281:17952-17960.)。
【0081】
また、関節リウマチや変形性関節症患者由来関節組織においてHYAL-2の発現が高進していることが知られている(Yoshida M, Sai S, Marumo K, Tanaka T, Itano N, Kimata K, Fujii K. Expression analysis of three isoforms of hyaluronan synthase and hyaluronidase in the synovium of knees in osteoarthritis and rheumatoid arthritis by quantitative real-time reverse transcriptase polymerase chain reaction. (2004) Arthritis Res Ther 6:R514-520.)。
【0082】
すなわち、アガリクス抽出物はHYAL-2のみならずHYAL-1およびHYAL-3の発現を抑制し、その結果、関節疾患におけるHA分解を抑制することで関節可動性機能改善作用を発揮するものと期待される。
【実施例7】
【0083】
以下の配合でアガリクス抽出物を含有する医薬用クリームを作製した。
成分名 配合量(重量%)
アガリクス抽出物 10.0
オリーブ油 10.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 10.0
トコフェロール 1.0
精製水 69.0
合計 100.0
【実施例8】
【0084】
以下の配合でアガリクス抽出物を含有する化粧用クリームを作製した。
成分名 配合量(重量%)
アガリクス抽出物 2.0
オリーブ油 10.0
トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 10.0
トコフェロール 1.0
精製水 77.0
合計 100.0
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、産業廃棄物として処分されているアガリクス熱水抽出後の残渣の再利用法を確立した。本発明の抽出物によりヒアルロン酸産生が促進され、かつヒアルロン酸分解が抑制されるので、本発明の抽出物を含む食品、化粧料または医薬は、ヒアルロン酸の減少による老化、変形性関節症や関節リウマチにおける関節機能低下の予防または改善に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥アガリクスを95.0容量%以上エタノールで抽出して得られる、ヒアルロン酸産生促進活性および分解抑制活性を有するアガリクス抽出物を含む、関節可動性障害を治療または予防するための医薬。
【請求項2】
乾燥アガリクスの水分含量が10重量%以下である、請求項1記載の医薬。
【請求項3】
乾燥アガリクスが、アガリクスを1気圧で10℃〜100℃の水または加圧下で100℃以上の水で処理した後の菌体である、請求項1または2記載の医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35835(P2013−35835A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−157614(P2012−157614)
【出願日】平成24年7月13日(2012.7.13)
【出願人】(500452385)株式会社ハイマート (4)
【出願人】(506190267)
【出願人】(506189582)
【出願人】(506188611)
【出願人】(511172184)
【Fターム(参考)】