説明

ヒアルロン酸誘導体からなる術後癒着予防用生体適合材料

【課題】外科分野用(具体的には術後癒着防止用)の新規生体適合材料を提供する。
【解決手段】本質的にヒアルロン酸のエステル誘導体又はヒアルロン酸の架橋型誘導体からなる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本質的にヒアルロン酸のエステル化誘導体またはヒアルロン酸の架橋誘導体からなる、外科用(具体的には術後癒着予防用)の新しい生体適合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
術後の癒着形成は腹部または下腹部手術に共通する合併症であり、本質的な病的状態につながりうる。多くの因子が癒着の発生に影響を及ぼしうる。物理的外傷、化学薬品、血液と結合した漿膜の乾燥、虚血、感染および外来物質はすべて、癒着の形成を増大させることが知られている。その他の原因は、腹腔内炎症性疾患と先天性異常である。病態生理学的機構はまだ不明であるが、腹膜繊維素溶解が重要な役割を果たす中心的な共通経路が提唱されている。
組識の外科的外傷は漿液血液状の滲出物の放出を引き起こし、それが、細胞増殖が起こる数日の間存続する繊維素橋を形成する。この期間内にその滲出物が吸収または溶解されない場合、それは内生の繊維芽細胞となり、続いて起こるコラーゲン沈着が、隣接した2つの表面を連結する永続的な瘢痕の形成(癒着と呼ばれる)をもたらす。結論として、癒着形成は炎症性反応の結果であると思われる。
この場合、非吸収性材料が引き起こす問題(感染、移植物の石灰化、瘢痕形成など)を回避するために、主として、生体内残留時間が短く、治癒が起こるまで癒着形成に対する障壁として作用する生体吸収性材料の探索に、研究が集中してきた。
特に有望なポリマーの一つは、人体のいたるところに認められる細胞外マトリックスの成分、ヒアルロン酸(HA)である。ヒアルロン酸溶液は、腹部手術後(Urman, B.ら, Effect of Hyaluronic Acid on Postoperative Intraperitoneal Adhesions Formation in the Rat Model(ラットモデルにおける術後腹腔内癒着形成に対するヒアルロン酸の効果)Fertil. Steril. 1991; 56:563; Shushan A.ら, Hyaluronic Acid for Preventing Experimental Postoperative-intraperitoneal Adhesions(実験的術後腹腔内癒着を予防するためのヒアルロン酸)J. Reprod. Med. 1994; 39:398) と整形手術後(Hagberg, L., Gerdin, B., Sodium Hyaluronate as an adjunctive in adhesion prevention after flexor tendon surgery in rabbits(ウサギにおける屈筋腱手術後の癒着予防における補助剤としてのヒアルロン酸ナトリウム)J. Hand. Surg. 1992; 17A:935)の術後癒着形成を軽減することが示されている。
Fidia Advanced Biopolymers社は、HAとは異なる物理化学特性を示す(すなわち滞留時間が長く、それを使って装置を製造することができるが、元の生体高分子に特有の寛容性と生物適合性を持つ)ヒアルロン酸の化学誘導体、すなわち内部エステル(ACPシリーズ)および非活性アルコールとのエステル(HYAFFシリーズ)を開発した[Rastrelli, A.ら, Hyaluronic Acid Esters, A New Class of Semisynthetic Biopolymers: Chemical and Physico-chemical Properties (新しい種類の半合成生体高分子ヒアルロン酸エステル:化学特性と物理化学特性), Clinical Implant Materials(臨床移植材料), Advanced in Biomaterials(G.Heinrike, V. SollzおよびAJC Lee編, Elsevier, アムステルダム 1990) 9:199-205]。また、これらの誘導体は、化学的、毒理学的観点からも特徴づけられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ACPゲルの癒着予防効果を評価する試みとして、種々のACPゲルを開発することであった。
【0004】
手術後に外傷または虚血に冒された隣接する組識間で生成する癒着または繊維塊の発生は、未だに、数多くの外科手術における最も深刻な合併症の一つである。この合併症を回避するために数多くの方法が提案されているが、この問題は今もほとんど未解決である。
【0005】
提案された方法の一つは、手術後に腹腔内に注射されるデキストラン懸濁液の使用である(diZerega G.S., "Contemporary adhesion prevention (最新の癒着予防)" Fertility and Sterility, 第61巻, 第2号, 94年2月)。このようなデキストラン溶液の使用の臨床結果は、著しく整合性を欠いている。また、デキストラン溶液の使用はしばしば、浮腫、腹痛および呼吸困難を含む合併症を伴った。
損傷を受けた器官の間に設置される、規定された構造(例えばメッシュ、膜)(diZerega G. S., "最新の癒着予防" Fertility and Sterility, 第61巻, 第2号, 94年2月)または粘性ゲル(Genzyme, 米国特許第4,937,270号 - 米国特許第5,017,229号)の形態にある障壁の使用も提案されている。しかし、これらの障壁は、外来物質の存在による虚血反応または炎症反応を刺激するので、一般に無効であることがわかった。現在臨床的使用が認可されている唯一の材料は、酸化型再生セルロース(Interceed(登録商標))に基づく障壁と、ポリテトラフッ化エチレン(e-PTFE)(Goretex(登録商標) - 米国特許第4,478,665号および同第4,482,516号)またはポリエチレンまたはポリプロピレンに基づく障壁である。
【0006】
このような障壁の効力に関する臨床研究が著しく整合性を欠く結果をもたらしているという事実に加えて、上述の材料が共に、重大な禁忌を伴うことにも留意しなければならない。e-PTFEまたはポリエチレンまたはポリプロピレン製の障壁膜の使用は、人体にとって異質でありかつ生物分解性でなく、また、望ましくない炎症型反応ゆえにその障壁膜を除去または転位するための第2の外科手術を必要としうる合成材料の移植を伴う。
【0007】
前臨床モデルと臨床モデルでは、酸化型再生セルロースに基づくメッシュは、癒着の形成の予防に有効であるが、それは、完全な止血後にそれらを適用した場合に限られることが明らかになっている。
【0008】
したがって、癒着を予防する際の補助として、高分子量ヒアルロン酸(HA)の粘性溶液の使用が提案されている[Grainger D.A.ら, "The use of hyaluronic acid polymers to reduce postoperative adhesions (術後癒着を軽減するためのヒアルロン酸ポリマーの使用)", J. of Gynecol. Surg., 第7巻, 第2号, 1991; Hurman B.ら, "Effect of hyaluronic acid on postoperative intraperitoneal adhesion formation in the rat model (ラットモデルにおける術後腹腔内癒着形成に対するヒアルロン酸の効果)", Fertility and Sterility, 第56巻, 第3号, 1991年9月; Shushan A.ら, "Hyaluronic acid for preventing experimental postoperative intraperitoneal adhesions (実験的術後腹腔内癒着を防止するためのヒアルロン酸)", J. of Reproductive Med., 第39巻, 第5号, 1994年5月; Mitchell J.D.ら,"Reduction in experimental pericardial adhesions using a hyaluronic acid bioabsorbable membranes (ヒアルロン酸生物吸収性膜を用いた実験的心膜癒着の減少)", Eur. J. Cardio-thorac. Surg., 8, 149-152, 1994]。しかしヒアルロン酸そのものは極めて迅速な吸収時間を特徴とし、これは癒着を予防するのに必要な滞留時間とは相容れない。また、天然のヒアルロン酸は加工することができず、そのままでは生体適合材料に変形させることができない。分解時間を伸ばし、種々の外科分野で使用される様々な物理形状に加工できるようにするために、ヒアルロン酸のエステルとヒアルロン酸の架橋誘導体が開発された。カルボキシ基の全てまたは一部がエステル化されたヒアルロン酸エステルの製造、カルボキシ基の一部が架橋されたヒアルロン酸架橋誘導体の製造と、それらの医薬分野、化粧品分野、外科分野、生物分解性プラスチック材料の分野における使用は、米国特許第4,851,521号と同第4,956,353号、EP 0 216 453およびEP 0 341 745に記述されている。
【特許文献1】米国特許第4,851,521号
【特許文献2】同第4,956,353号
【特許文献3】EP 0 216 453
【特許文献4】EP 0 341 745
【非特許文献1】Eur. J. Cardio-thorac. Surg., 8, 149-152, 1994
【非特許文献2】J. of Reproductive Med., 第39巻, 第5号, 1994年5月
【非特許文献3】Fertility and Sterility, 第56巻, 第3号, 1991年9月
【非特許文献4】J. of Gynecol. Surg., 第7巻, 第2号, 1991
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、術後癒着予防用の生体適合材料を提供する。この生体適合材料は、ヒアルロン酸のベンジルエステルおよび/またはヒアルロン酸の架橋誘導体を含んでなり、ゲル、膜、織込ティシュー(woven tissue)またはメッシュおよび不織ティシュー(nonwoven tissue)の形態をとりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
したがって本発明は、生体適合性が高く、手術(腹腔鏡手術を含む)における様々な用途に適した物理形状に変形できることを特徴とする、単独で又は互いに混合されて使用されるヒアルロン酸のベンジルエステルまたはヒアルロン酸の架橋誘導体に基づく健康管理および外科用品の製造を記述する。これらの材料は完全に生物分解性でもあり、適用部位から除去する必要がないので、第2の外科手術が避けられる。ゲルの形態に調製すると、架橋誘導体は非修飾ポリマーより有意に高い粘性と可変的な分解時間とを持つ材料を与える。また、本発明のベンジルエステル系材料と架橋誘導体系材料は共に、膜、織込ティシューまたはメッシュおよび不織ティシュー(U.S.4,851,521; U.S.4,956,353; WO93/11804; WO93/11803; WO94/17837およびEP 0 341 745に記載の方法に従って調製されるもの)の形態をとることができ、次の技術的仕様を特徴とする:
- 膜は10μm〜1.5mm(特に20〜50μm)の範囲の厚さを持つ;
- ティシューまたはメッシュは200μm〜1.5mmの範囲の厚さを持つ;
- 不織ティシューは本質的に、20g/m〜500g/mの範囲の連量と0.2mm〜5mm(特に<1mm)の厚さを特徴とする。
【0011】
これらの材料は単独で使用することもできるし、互いに組み合わせて、または合成ポリマーからなる他の材料と組み合わせて、使用することもできる(例:架橋型ヒアルロン酸+ポリプロピレンに基づくゲル、本質的にHAのエステル化誘導体+ポリプロピレンからなる膜、あるいは自己架橋型(auto-crosslinked)HAのゲルでコーティングされた、HAのエステル誘導体からなる膜)。
【0012】
実際、本発明は、本質的にメッシュまたは膜または不織ティシューの形態にあるe-PTFE、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル(Dacron(登録商標))などの非生物分解性材料と組み合わされたヒアルロン酸のベンジルエステルまたは架橋誘導体により本質的に構成される、ゲル(架橋誘導体の場合)、膜、織込ティシューまたは不織ティシューの形態の複合材料の使用にも関する。したがって本発明は、術後癒着の形成を防止するために外科分野で使用される新しい種類の健康管理および外科用品に関する。
材料
【0013】
上述のように、本発明は、ヒアルロン酸の誘導体、特にベンジルエステル誘導体と内部架橋誘導体からなる材料を特徴とする。
【0014】
「ヒアルロン酸」(以下「HA」ともいう)という用語は、細胞表面中、脊椎動物の結合組識の基本的細胞外物質中、関節の滑液中、眼の硝子液中、ヒト臍帯の組識中および雄鶏のとさか中に天然に存在するD-グルクロン酸とN-アセチル-D-グルコサミンの残基からなる様々な分子量の酸性多糖を表わすために、文献で用いられる用語である。
【0015】
ヒアルロン酸は、生物において、第一に、皮膚、腱、筋および軟骨などの多くの組識の細胞の物理的支持体として重要な役割を果たし、それゆえに細胞外マトリックスの主要成分である。しかしヒアルロン酸はその他にも、組識の水和、潤滑、細胞移動、細胞機能および細胞分化などの生物学的過程においても機能を果たす(例えば、A. Balazsら, Cosmetics & Toiletries, No. 5/84, 8-17頁を参照のこと)。ヒアルロン酸は、雄鶏のとさかなどの上記天然組識から抽出することができ、また一定の細菌から抽出することもできる。現在、ヒアルロン酸は微生物学的方法でも製造できる。抽出によって得られる全ヒアルロン酸の分子量は800万〜1300万の範囲にある。しかし、この多糖の分子鎖は、例えば機械的作用や、照射、加水分解、酸化または酵素剤の作用などといった種々の物理的、化学的因子の作用で、極めて容易に分解しうる。そのため、元の抽出物を通常に精製処理すると、しばしば、より低い分子量を持つ分解画分が得られる(前掲のBalazsらを参照)。ヒアルロン酸、その分子画分およびそれぞれの塩は既に薬に使用されており、それらの化粧品への使用も提案されている(例えば前掲のBalazsらの論文やフランス特許第2478468号を参照のこと)。
【0016】
以上のことからわかるように、「ヒアルロン酸」という用語は一般に、D-グルクロン酸残基とN-アセチル-D-グルコサミン残基を交互に持つ様々な分子量の一連の多糖全体、さらにはその分解画分を指す、不適切な意味で用いられており、複数形の「ヒアルロン酸類」という用語の方が適切だと思われるが、本明細書における議論では、その分子画分を含めた様々な形態のヒアルロン酸を指すのに単数形を使い続けることとし、この集合的な用語を表わすのに「HA」という略号をもしばしば使用する。
【0017】
1.ベンジルエステル誘導体
第1の本発明の好ましい材料は、ヒアルロン酸のベンジルエステル、具体的にはHAカルボキシル基の80%〜100%がエステル化された80〜100%エステルに基づく。HAカルボキシル基の80〜99%がベンジル基でエステル化されたベンジルエステルは、カルボキシル基の一部分のみがエステル化されており、残りのカルボキシル基は遊離であるか、ナトリウム、カルシウムまたはカリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属で塩化されているので、これを「部分エステル」という。
【0018】
本発明の生体適合材料に最も好ましいものは、HAカルボキシ基のすべてがエステル化されたいわゆる「完全」ベンジルエステルである。これらの完全エステルでは、HAカルボキシ基のすべてがベンジル基でエステル化されている場合(HYAFF11ともいう)もあるし、一部(75〜99%)がベンジル基でエステル化され、かつ、残りのカルボキシル基のすべてがC10〜20脂肪族アルコールの脂質鎖/アルキル残基でエステル化されて、いわゆる「混成」エステルと呼ばれるものになっている場合もある。これらの脂肪族アルコールのなかでは、パルミチルアルコール(palmitic alcohol;C16-ヘキサデシル)とステアリルアルコール(stearic alcohol;C10オクタデシル)が最も好ましい。これらの混成エステルは、部分エステル、すなわちカルボキシル基の一部(75〜99%)がベンジル基でエステル化され、残りのカルボキシル基のいくらか(ただし全部ではない)がC10〜C20脂肪族アルコールでエステル化されている誘導体の形態をもとりうる。これらのなかでは、少なくとも75%がベンジルエステル化され、少なくとも5%がC10〜C20脂肪族アルコールでエステル化されたものが最も好ましい。
【0019】
本発明のヒアルロン酸ベンジルエステルは、それ自体は既知のカルボン酸エステル化法によって、例えば遊離ヒアルロン酸を強無機酸または酸性型イオン交換体などの触媒物質の存在下にアルコール(ベンジルおよび/またはC10〜C20アルコール)で処理するか、無機または有機塩基の存在下に所望のアルコール残基を導入することができるエーテル化試薬で処理することによって、製造することができる。
【0020】
しかし、EP 0 216 453に記載の特別な方法でベンジルヒアルロン酸エステルを作ると有利であろう。この方法は、ヒアルロン酸の四級アンモニウム塩を、好ましくは有機溶媒中で、エーテル化試薬で処理することからなる。
【0021】
ベンジルエステルの製造には、例えば上記の天然出発物質(例えば雄鶏のとさか)から抽出した酸など、任意の起源のヒアルロン酸を使用することができる。このような酸の製造は文献に記述されており、好ましくは精製したヒアルロン酸を使用する。本発明では特に、広範囲にわたる分子量(例えば1300万の分子量を持つ完全な酸の約90〜80%(M=1170万〜1040万)から0.2%(M=30,000)まで(好ましくは5%〜0.2%)の分子量)を持つ有機物質の抽出によって直接得られる完全な酸の分子画分からなるヒアルロン酸を使用する。このような画分は、例えば加水分解、酸化、酵素処理、あるいは機械処理や照射処理のような物理操作を行なうことなどによる、文献に記載された種々の手法で得ることができる。したがって、元の抽出物はしばしばこれらの精製操作そのものの間に形成される(例えば上に引用した"Cosmetics & Toiletries"のBalazsらの論文を参照のこと)。得られた分子画分の分離と精製は、例えば分子濾過などの既知の技術によって行われる。
【0022】
本発明での使用に適した精製HYの一画分は、例えばBalazsが小冊子「"Healon"− A guide to its use in Ophthalmic Surgery ("ヒーロン"−眼科手術におけるその使用指針)」, D. MillerおよびR. Stegmann編, John Wiley & Sons(ニューヨーク)81983: 5頁に記載した「非炎症性-NIF-NaHAヒアルロン酸ナトリウムとして知られるものである。
【0023】
ベンジルエステルの出発物質として特に重要なものは、ヒアルロン酸から得ることができる2つの精製画分、例えば雄鶏のとさかから抽出される「ヒアラスチン(Hyalastine)」および「ヒアレクチン(Hyalectine)」として知られるものである。ヒアラスチン画分は約50,000〜100,000の平均分子量を持ち、ヒアレクチン画分は約500,000〜約730,000の平均分子量を持つ。これら2つの画分の複合画分も単離されており、約250,000〜約350,000の平均分子量を持つと特徴づけられている。この複合画分はその出発物質中に利用できる全ヒアルロン酸の80%の収率で得ることができ、一方、ヒアレクチン画分は出発HYの30%の収率で、ヒアラスチンは出発HYの50%の収率で得ることができる。これらの画分の調製は、EP 0 138 572に記述されている。
HAのベンジルエステル類の製造を、以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0024】
実施例1−ヒアルロン酸(HY)のベンジルエステルの製造
単量体単位20ミリ当量に相当する分子量170,000のHYテトラブチルアンモニウム塩12.4gを25℃でジメチルスルホキシド620mlに可溶化し、臭化ベンジル4.5g(25ミリ当量)とヨウ化テトラブチルアンモニウム0.2gを加え、その溶液を30℃で12時間保持する。
【0025】
得られた混合物を一定に攪拌しながら酢酸エチル3,500mlにゆっくりと注ぐ。生成する沈澱を濾過し、酢酸エチル500mlで4回洗浄し、最後に30℃で24時間真空乾燥する。
【0026】
標題のベンジルエステル生成物9gが得られる。Siggia S.およびHann J.G. "Quantitative organic analysis via functional groups(官能基による定量的有機分析)" 第4版(John Wiley and Sons)の169〜172頁に記載の方法に従って、エステル基の定量的測定を行なう。
実施例2−ヒアルロン酸(HY)のベンジルエステルの製造
162,000の分子量を持つHYのカリウム塩3gをジメチルスルホキシド200mlに懸濁し、ヨウ化テトラアンモニウム120mgと臭化ベンジル2.4gを加える。
この懸濁液を30℃で48時間攪拌し続ける。得られた混合物を一定に攪拌しながら酢酸エチル1,000mlにゆっくりと注ぐ。生成する沈澱を濾過し、酢酸エチル150mlで4回洗浄し、最後に30℃で24時間真空乾燥する。
【0027】
標題のベンジルエステル生成物3.1gが得られる。Siggia S.およびHann J.G. "Quantitative organic analysis via functional groups" 第4版(John Wiley and Sons)の1698〜172頁に記載の方法に従って、エステル基の定量的測定を行なう。
実施例3−カルボキシル官能基の75%がベンジルアルコールでエステル化され、残りの25%がオクタデシルアルコール(ステアリルアルコール, CH-(CH)16-CH-OH)でエステル化されたヒアルロン酸誘導体の製造
【0028】
180,000ダルトンの分子量を持つヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩6.21g(10ミリ当量)を室温でジメチルスルホキシド(DMSO)248mlに可溶化する。
【0029】
この溶液に臭化ベンジル0.89ml(7.5ミリ当量)を加え、その溶液を30℃で12時間放置する。次に、その溶液を室温に冷却し、臭化オクタデシル(2.5ミリ当量)を加える。その溶液を30℃に24時間加熱する。次にNaClの2.5%水溶液(w/w)を加え、得られた混合物を攪拌しながらアセトン750mlに注ぐ。生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン/水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄した後、30℃で24時間高真空下に乾燥する。これにより、所望の生成物5.1gが得られる。アルカリ加水分解の後、ベンジルアルコールとヘキサデシルアルコールの定量的測定をガスクロマトグラフィーで行なう。エステル基の総含量は、"Quantitative organic analysis via functional groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法に従って定量する。
【0030】
実施例4−カルボキシル官能基の75%がベンジルアルコールでエステル化され、残りの25%がヘキサデシルアルコール(セチル パルミチルアルコール, CH-(CH)14-CH-OH)でエステル化されたヒアルロン酸誘導体の製造
180,000ダルトンの分子量を持つヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩6.21g(10ミリ当量)を室温でジメチルスルホキシド(DMSO)248ml中に可溶化する。
【0031】
この溶液に臭化ベンジル0.89ml(7.5ミリ当量)を加え、その溶液を30℃で12時間放置する。次に、その溶液を室温に冷却し、臭化ヘキサデシル(2.5ミリ当量)を加える。その溶液を30℃に24時間加熱する。次にNaClの2.5%水溶液(w/w)を加え、得られた混合物を攪拌しながらアセトン750mlに注ぐ。生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン/水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄した後、30℃で24時間高真空下に乾燥する。これにより、所望の生成物5gが得られる。アルカリ加水分解の後、ベンジルアルコールとヘキサデシルアルコールの定量的測定をガスクロマトグラフィーで行なう。エステル基の総含量は、"Quantitative organic analysis via functional groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法に従って定量する。
2. 内部架橋型ヒアルロン酸誘導体
本発明の材料に使用される架橋型ヒアルロン酸誘導体は、EP 0 341 745に記述されている。これらの架橋誘導体は、カルボキシ基の一部が同じヒアルロン酸分子および/または異なるヒアルロン酸分子のヒドロキシル基でエステル化されてラクトンまたは分子間エステル結合を形成している、ヒアルロン酸の分子間および/または分子内エステルである。他のアルコール類のOH基が介入していないこれらの「内部」エステルは、一分子または多分子架橋の形成が上述の内部エステル化の結果であるので、「自己架橋型ヒアルロン酸」と定義づけることもできる。「架橋(型)」という形容詞は、ヒアルロン酸分子のカルボキシルとヒドロキシルの間の交差結合を意味する。
【0032】
これらの自己架橋型生成物は、とりわけ、「架橋」率が好ましくはヒアルロン酸中のカルボキシ基数の0.5〜20%(特に4.5/5.0%)の範囲にある部分的内部エステルである。その製造工程では、HA分子のカルボキシ基を、その活性化を誘導しうる物質の添加によって活性化する。その活性化反応によって生じる不安定中間体生成物は、触媒の添加後および/または温度の上昇後に自発的に分離し、同じヒアルロン酸分子または他のヒアルロン酸分子のヒドロキシルと上述の内部エステル結合を形成する。所望の内部エステル化の程度に応じて、カルボキシ官能基の全てまたは一部を活性化する(約数は過剰の活性化物質を使用するか、適当な添加法によって得られる)。
【0033】
内部エステル基に変換すべきカルボキシ基は、遊離のカルボキシ基を含有するヒアルロン酸、また好ましくは、塩化したカルボキシ基を含有するHA(例えば金属塩、好ましくはアルカリ金属またはアルカリ土類金属、またなかんずく後述するような四級アンモニウム塩)から出発して活性化することができる。しかし、アミン類などの有機塩基との塩も出発物質として使用することができる。
【0034】
遊離のカルボキシ基または塩化したカルボキシ基の活性化法自体は、とりわけペプチド合成の分野で知られており、当業者はどの方法が最も適しているか、特に、遊離型または塩化型の出発物質を使用すべきかどうかを容易に決定することができる。ペプチド合成法として知られていて、本発明の製造法に有用な活性化法自体は、例えばBodanszky, M., In search of new methods in peptide synthesis (ペプチド合成における新しい方法の研究), Int. J. Peptide Protein Res. 25, 1985, 449-474やGross, E.ら, The Peptides, Analysis Synthesis, Biology (ペプチド、分析・合成、生物学)(Academic Press, Inc., 1979)の 第1巻、第2章に記述されている。それらの方法に従って、カルボキシル成分は活性化(すなわち反応型に変換)される。通例、このような活性化では、次式に従って、酸とカルボキシル成分を反応させる:
R-COOH → R-C(=O)-X
[式中、Xは電子吸引部分である]。
したがってカルボン酸の活性誘導体の大半は、広い意味で、活性化試薬としてのアジ化水素酸およびHClの混成無水物とみなすことができる酸アジドや酸クロリドを含む、混成無水物である。また、カルボキシル成分の活性化は中間体「活性エステル」の形成によっても行なうことができる。これらの「活性エステル」は様々なタイプのものでありうるが、ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-ニトロフェニルエステル類、トリクロロフェニルエステル類、ペンタクロロフェニルエステル類、およびヒドロキシルアミン類のO-アシル誘導体(とりわけN-ヒドロキスクシンイミドのエステル)を使用して製造されるものは特に有用な「活性エステル」である。
【0035】
これらの様々なタイプの活性化法はすべて、本発明の架橋型HAの製造に有用である。なぜなら、これらの方法は全て、活性化試薬とカルボキシル基との反応を伴い、それが本質的に、ヒドロキシル基と容易に反応して本発明の生成物に特有な内部エステル結合を容易に形成する置換基の生成をもたらし、内部エステルに変換されるカルボキシ官能基の数は活性カルボキシ官能基の数に比例し、その数は使用する活性化試薬の特性に依存すると特徴づけることができるからである。
【0036】
したがって架橋型HAの好ましい製造法は、遊離のカルボキシ基または塩化されたカルボキシ基を持つHAを、そのカルボキシ官能基を活性化する試薬で、場合によっては中間活性誘導体の形成に有利な補助試薬および/または三級有機塩基または無機塩基の存在下に処理し、その混合物を加熱または照射(具体的にはUV光の照射)にさらし、所望であれば、遊離カルボキシ基を塩化するか、塩化されたカルボキシ基を遊離にすること特徴とする。カルボキシ基を活性化できる物質のうち、文献に記載された従来のもの、例えばペプチドの合成に通常使用されるものを使用することができるが、出発HAの分子構造を改変または破壊する効果を持つもの、例えばハロゲン化カルボキシルの形成に使用されるものなどは除く。活性エステルの形成をもたらす好ましい物質は、例えばカルボジイミド、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ベンジルイソプロピルカルボジイミド、ベンジル-エチル-カルボジイミド;エトキシアセチレン;ウッドワード試薬(N-エチル-5-フェニルイソオキサゾリウム-3-スルホネート)、あるいは脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素もしくは複素環式化合物とハロゲンから得られるハロゲン誘導体であって、1またはそれ以上の活性基が存在するために反応性(mobile)になっているもの、例えばクロロアセトニトリル(chloroacetonitryl)や、とりわけ2-クロロ-N-アルキルピリジンの塩、例えば2-クロロ-N-メチル-ピリジンの塩化物、または下級アルキル基(6炭素原子までのものなど)を持つ他のアルキル誘導体の塩化物などである。塩化物誘導体の代わりに、臭化物誘導体のような他のハロゲン誘導体を使用することも、もちろん可能である。
【0037】
この活性化反応は有機溶媒中、特にジアルキルスルホキシド類、ジアルキルカルボキシルアミド類、例えば具体的には低級アルキルジアルキルスルホキシド類、特にジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシドのようなポリメチレンスルホキシド類、ジアルキルスルホン類、テトラメチレンスルホンのようポリメチレンスルホン類、スルホラン類、およびアルキル基が最大6個の炭素原子を持つ低級脂肪族酸の低級アルキルジアルキルアミド類、例えばジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドまたはジエチルアセトアミドなどの非プロトン溶媒中で行なうことができる。しかし、他の溶媒も使用することができ、それらは、アルコール類、エーテル類、ケトン類、エステル類、例えばジメトキシエタンのような低級脂肪族ジアルキルオキシヒドロカーバイド類、具体的には低沸点の脂肪族または複素環式アルコール類およびケトン類、例えばN-メチルピロリドンやN-エチルピロリドンのような低級N-アルキル-ピロリドン類、ヘキサフルオロイソプロパノールおよびトリフルオロエタノールなどのように、必ずしも非プロトン性である必要はない。ハロゲン誘導体を特に上述の2-クロロ-N-メチルピリジニウム塩化物のような塩の形態でカルボキシル活性化物質として使用する場合は、出発多糖の金属塩または有機塩基の塩、特にテトラブチルアンモニウム塩のような後述の四級アンモニウム塩を使用した方がよい。これらの塩は、上記有機溶媒中で溶解性が高く、それらの溶媒中では架橋反応が最もうまく達成されるので、優れた収率が約束されるという特別な利点を持つ。混合物には酸を除去することができる物質、例えば有機塩基、炭酸塩、重炭酸塩、酢酸アルカリ金属、酢酸アルカリ土類金属、または有機塩基、特に三級アミン、例えばピリジンとその同族体(例えばコリジン)、トリエチルアミンやN-メチル-ピペラジンのような脂肪族アミン塩基などを加えることが望ましい。
【0038】
四級アンモニウム塩の使用は、特に有利な方法である。このようなアンモニウム塩はよく知られており、他の既知の塩と同じ方法で製造される。これらは、好ましくは1〜6個の炭素原子を持つアルキルから誘導される。テトラブチルアンモニウム塩を使用することが好ましい。四級アンモニウム塩を使用する方法の一つは、アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩またはカリウム塩を、触媒量の四級アンモニウム塩(例えばヨウ化テトラブチルアンモニウム)の存在に反応させることからなる。
【0039】
活性化試薬に加えられるカルボキシ基の活性化を触媒する物質は、文献に報告されており、これらも上述のような塩基であることが好ましい。したがって、例えばカルボキシ基をイソチアゾリン塩で活性化する場合、その反応混合物にはいくらかのトリエチルアミンを加えることが好ましい。
【0040】
とりわけエステル類のような活性中間体の形成反応は、文献に推奨されている温度で行われるが、その温度は必要に応じて当業者が容易に決定できる温度に変えてもよい。内部エステル結合の形成は、かなり広い温度範囲(例えば0℃〜150℃、好ましくは室温か、それより僅かに高い温度(例えば20℃〜75℃))で起こりうる。温度の上昇や適当な波長(紫外線など)の照射は、内部エステル結合の形成に有利である。
【0041】
ヒアルロン酸の基質はどのような起源のものであってもよく、上述の様々なタイプのものでありうる。好ましいHA出発物質は、平均分子量が150,000〜730,000、具体的には150,000〜450,000ダルトンのものである。
【0042】
また、内部架橋の量は様々でありうるが、好ましい本発明材料では、カルボキシル基の4.5〜5.0%程度に架橋されたHAを使用する。
以下の実施例に、本発明の材料の作成に有用な架橋型HY生成物の製造を記述する。
実施例5−1%架橋型ヒアルロン酸(HY)の製造
生成物の説明:
カルボキシ基の1%が内部エステル化に使用されている。
カルボキシ基の99%がナトリウムで塩化されている。
単量体単位10ミリ当量に相当する分子量170,000のHYテトラブチルアンモニウム塩6.21gを25℃でDMSO 248mlに可溶化し、トリエチルアミン0.01g(0.1ミリ当量)を加える。
実施例6−5%架橋型ヒアルロン酸の製造
生成物の説明:
カルボキシ基の5%が内部エステル化に使用されている。
カルボキシ基の95%がナトリウムで塩化されている。
単量体単位10ミリ当量に相当する分子量85,000のHYテトラブチルアンモニウム塩5.21gを25℃でDMSO 248mlに可溶化し、トリエチルアミン0.051g(0.5ミリ等量)を加え、得られた溶液を30分間攪拌する。
【0043】
2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨウ化物0.128g(0.5ミリ当量)のDMSO 60ml溶液を1時間かけてゆっくりと滴下し、その混合物を30℃で15時間保持する。
【0044】
次に、水100mlと塩化ナトリウム2.5gからなる溶液を加えた後、得られた混合物を攪拌し続けながらアセトン750mlにゆっくりと注ぐ。次に、生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン 水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄し、最後に30℃で24時間真空乾燥する。
標題の化合物3.95gが得られる。 "Quantitative organic analysis via functional groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法に従って、エステル基の定量的測定を行なう。
【0045】
実施例7:10%架橋型ヒアルロン酸(HY)の製造
生成物の説明:
カルボキシ基の10%が内部エステル化に使用されている。
カルボキシ基の90%がナトリウムで塩化されている。
単量体単位10ミリ当量に相当する分子量620,000のHYテトラブチルアンモニウム塩6.21gを25℃でDMSO 248mlに可溶化し、トリエチルアミン0.101g(1.0ミリ当量)を加え、得られた溶液を30分間攪拌する。
2-クロロ-1-メチル-ピリジニウムヨウ化物0.255g(1.0ミリ当量)のDMSO 60ml溶液を1時間かけてゆっくりと滴下し、その混合物を30℃で15時間保持する。
水100mlと塩化ナトリウム2.5gからなる溶液を加えた後、得られた混合物を攪拌し続けながらアセトン750mlにゆっくりと注ぐ。次に、生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン 水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄し、最後に30℃で24時間真空乾燥する。
標題の化合物3.93gが得られる。 "Quantitative Organic Analysis Via Functional Groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法に従って、エステル基の定量的測定を行なう。
実施例8:10%架橋型ヒアルロン酸(HY)の製造
生成物の説明:
カルボキシ基の10%が内部エステル化に使用されている。
カルボキシ基の90%がナトリウムで塩化されている。
単量体単位10ミリ当量に相当する分子量170,000のHYテトラブチルアンモニウム塩6.21gを25℃でDMSO 248mlに可溶化し、ピリジン塩化物0.118g(1ミリ当量)を加え、得られた溶液を30分間攪拌する。
【0046】
N-ベンジル-N-エチルカルボジイミド0.16g(ミリ当量)のDMSO 20ml溶液を1時間かけてゆっくりと滴下し、その混合物を30℃の温度で45時間保持する。
水100mlと塩化ナトリウム2.5gからなる溶液を加えた後、得られた混合物を攪拌し続けながらアセトン750mlにゆっくりと注ぐ。次に、生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン/水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄し、最後に30℃の温度で24時間真空乾燥する。
標題の化合物3.9gが得られる。 "Quantitative Organic Analysis Via Functional Groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法に従って、全エステル基の定量的測定を行なう。
【0047】
3. 生体適合材料の製造
以下の実施例では、HAの完全ベンジルエステル又は自己架橋型HA誘導体もしくはそれらの組み合せからなる本発明の外科/健康管理製品の製造を説明する。上述のように、膜、織込ティシュー、織込メッシュ、不織ティシューの製造法は、U.S. 4,851,521; U.S. 4,956,353, WO 93/11804; WO 93/11803; WO 94/17837およびEP 0 341 745に記述されている。
【0048】
実施例9−HYAFF11+ポリプロピレンメッシュに基づく製品の製造
HYAFF11のDMSO溶液を調製する(110mg/ml)。可溶化が完了したら、その溶液を20μmフィルター布で濾過し、それを減圧下に2時間放置することにより脱気する。その溶液5mlを硝子板に注いで広げた後、ポリプロピレンメッシュ(好ましくは6×11cm)を上に載せ、さらに10mlの上記溶液をその上に注ぐ。これをメッシュの上に均等に広げ、過剰分を取り除く。
その硝子板をエタノール/HO(90:10)の入った槽に5時間浸漬することにより、その調製品を凝固させ、板を剥離させる。次に、その調製品を無水エタノールの槽に16時間浸漬する。次いで、それを板上で、真空下に63℃で30分間乾燥する。
【0049】
実施例10:HYAFF11のフィルムで覆われたHYAFF11の織込ティシューに基づく製品の製造
HYAFF11のDMSO溶液を調製する(110μg/ml)。可溶化が完了したら、その溶液を20μmフィルター布でろ過し、それを減圧下に2時間放置することにより脱気する。その溶液5mlを硝子板に注いで広げた後、しわや気泡が入らずに付着するよう気を付けながら、HYAFF11ガーゼ(10×20cm)を上に載せ、さらに10mlの上記溶液をその上に注ぐ。これをガーゼの上に均等に広げ、過剰分を取り除く。
その硝子板をエタノールの入った槽に30分間浸漬することにより、その調製品を凝固させ、板を剥離させる。次に、その調製品をエタノール中に16時間放置し、それを板上で、真空下に63℃で30分間乾燥する。
【0050】
実施例11−HYAFF7で補強したHYAFF11の膜
ヒアルロン酸エチルエステルHYAFF7(すなわちエタノールで100%エステル化されたヒアルロン酸)からなるメッシュ補強材を伴うヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11(すなわちベンジルアルコールで100%エステル化されたヒアルロン酸)からなる複合膜(連量14mg/cm、厚さ0.25mm、乾燥時の切断時最小引張り強さと伸びはそれぞれ400Kg/cmと7%、湿潤時の最小引張り強さと伸びはそれぞれ50Kg/cmと55%、乾燥時の引き裂き強度(tear strength)90Kg/cm、湿潤時の引き裂き強度50Kg/cm)を、次の手法に従って製造した。
【0051】
濃度125mg/mlのHYAFF7ジメチルスルホキシド溶液から出発してHYAFF7メッシュを得た。この溶液を、それぞれ直径65ミクロンの100個の穴からなる湿式押出し成形用紡糸口金に、ギア式計量ポンプで供給する。
【0052】
押出された複合糸(multiple thread)を無水エタノールの入った凝固槽に通した後、輸送ローラーを通して、やはり無水エタノールを含む3つの連続したすすぎ槽中に移動させる。第3ローラー(III)の速度と第1ローラー(I)の速度の比は牽引比(drafting ratio)と呼ばれ、1.05の値を持ち、各ローラーの速度は23rpm(ローラーI)、24rpm(ローラーIIおよびIII)、25rpm(ローラーIV)である。複合糸がこれらのすすぎ槽を通過し終えたら、温度45℃の温風で乾燥し、繰返し機(8)上に巻き取る。この糸は237デニールである。次に、その複合糸を1メートルあたり135回撚り、織機で14ゲージの平滑な織物に織込む。その織物を織機からカレンダーに送り込み、そのカレンダーでその織物を薄くする。図2は、この工程で得られるメッシュを示している。
そのポリマー基盤を、濃度40mg/mlのHYAFF11のジメチルスルホキシド溶液を吹き付ける2つのエアブラシにかける。このようにスプレーしたメッシュを無水エタノールを含む凝固槽、純粋な蒸留水を含むすすぎ室、および温度50℃の特殊な乾燥室(17)に通す。
【0053】
実施例12−HYAFF11からなる不織布
ヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11からなる重さ40g/mq、厚さ0.5mmの不織布を、次の手法で製造した。
濃度135mg/mlのHYAFF11のジメチルスルホキシド溶液をタンク中に調製し、それを、それぞれ65ミクロンの3000個の穴からなる湿式押出し成形用の紡糸口金に、ギア式計量ポンプで供給する。
押出された糸塊は無水エタノールを含む凝固槽中を通過する。次に、輸送ローラーを通して、無水エタノールを含有する2つの連続的なすすぎ槽に移動させる。第1ローラーの牽引比をゼロに設定し、他のローラー間の牽引比を1.05に設定する。すすぎ槽を通過し終えたら、その糸束を45℃〜50℃の熱風で送風乾燥し、ローラーカッターで40mm繊維に切断する。
このようにして得た繊維塊は、梳毛/クロスラッピング装置につながるシュートに入れられ、その装置から厚さ1mm、重さ40mg/mqの布(web)として出てくる。次に、この布に80mg/mlのHYAFF11のジメチルスルホキシド溶液を噴霧し、エタノール凝固槽とすすぎ室に入れ、最後に乾燥室に入れる。
この材料の最終的な厚さは0.5mmである。
【0054】
実施例13−HYAFF11とHYAFF7からなる不織布
等量のヒアルロン酸のエチルエステルHYAFF7とヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11との混合物からなる重さ200g/mq、厚さ1.5mmの不織布を、次の方法で得た。
実施例10に記載の紡績工程で得た長さ3mmのHYAFF7とHYAFF11の繊維をスパイラルミキサー(spiral mixer)で完全に混合した。その繊維混合物をカーディング機に入れ、そこから重さ200g/mq、厚さ1.8mmの布(web)として出した。
その布を針穿孔機(needle punching machine)に通すことにより、2つの素材が完全に混ざり合った厚さ1.5mm、重さ200g/mqの不織布に変えた。
【0055】
実施例14−部分ベンジルエステルと完全ベンジルエステルの不織布
同じ割合のヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11とヒアルロン酸の部分(75%)ベンジルエステルHYAFF11p75との混合物からなる重さ40g/mq、厚さ0.5mmの不織布を、次の方法で製造した。
HYAFF11p75は次のように調製する。16.1ナノモルに相当する分子量620.76のヒアルロン酸テトラブチルアンモニウム塩10gを、N-メチルピロリドン/HOの90/10混合物に2.5重量%の濃度で可溶化して400mlの溶液を得る。その溶液を10℃に冷却した後、そこに精製Nを30分間吹き込む。次に、これを1.49ml(12.54ミリモルに相当)の臭化ベンジルでエステル化する。その溶液を15〜20℃で60時間、穏やかに振とうする。
その後の精製は、飽和塩化ナトリウム溶液を添加した後、酢酸エチル中で沈澱させ、さらに酢酸エチル/無水エタノールの80/20混合物で洗浄することによって達成する。固相を濾過によって分離し、無水アセトンで処理する。これにより6.8gの生成物が得られ、これは収率約95%に相当する。
実施例1に記載の工程によって得た長さ40mmのHYAFF11とHYAFF11p75の繊維をスパイラルミキサーで完全に混合した。
その混合繊維をカーディング機に入れ、そこから厚さ1mm、重さ40mg/mqの布として出した。次いで、その布に80mg/mlのHYAFF11のジメチルスルホキシド溶液を噴霧し、エタノール凝固槽に入れた後、水または水とエタノールの混合物(10〜95%エタノール)を含むすすぎ室に入れ、最後に乾燥室に入れた。
この素材は最終的な厚さが0.5mmで、HYAFF11とHYAFF11p75の繊維が完全に混合し、互いに付着し合っている。
【0056】
実施例15−HYAFF11に基づく多層不織ティシュー
ヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11の層と不織ビスコース(ORSA製Jettex2005)の層からなる、連量80g/mq、厚さ2mm、水吸収率560重量%の多層不織ティシューを、次の方法で得た。
皮膚と接触する層は、湿式紡績技術によって30g/mqシートの形態に製造したHYAFF11の繊維からなる。繊維をシート状にした。
この層を、30g/mqの連量を持つ不織ビスコースティシューの第2層に縫い付けた。
したがって最終不織製品は、総合連量80g/mq、厚さ2mm、水吸収率560重量%の2つの完全に接着した層からなる。
【0057】
実施例16−HYAFF11に基づく多層不織ティシュー
比率1:1のヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11とアルギン酸カルシウムの混合層およびポリプロピレンの補強不織ティシュー(NEUBERGER製のスパンボンデッド不織基盤、50g/mq)からなる多層不織ティシュー、連量70g/mq、厚さ1.5mmおよび水吸収率450重量%を、次の方法で得た。
【0058】
従来の湿式紡績技術で得た長さ40mmのHYAFF11とアルギン酸カルシウムの繊維を混合して、20g/mqシートにし、連量50g/mqのスパンボンデッド不織ティシューに縫い付けた。
得られた素材は、総合連量70g/mq、厚さ1.5mmおよび水吸収率450重量%の2層の不織ティシューからなる。
【0059】
実施例17−HYAFF11に基づく多層不織ティシュー
ヒアルロン酸ベンジルエステルHYAFF11の層と、LYOBEND(DELCON製)のようなポリウレタンフォームの層からなる、連量100g/mq、厚さ6mmおよび水吸収率860重量%の多層不織ティシューを、次の方法で得た。
皮膚に接触する層は、湿式紡績技術によって製造し、45g/mqシートにしたHYAFF11の繊維からなり、これをポリウレタンフォームの第2層に縫い付ける。
得られた不織製品は、総合連量100g/mq、厚さ6mmおよび水吸収率860重量%の完全に付着した2層からなる。
【0060】
実施例18−カルボキシ官能基の80%がベンジルアルコール(CH-CH-OH)でエステル化され、カルボキシ官能基の10%が分子内エステル結合の形成に関与しており、残りの10%がナトリウムで塩化されているヒアルロン酸の誘導体からなる膜の製造
180,000ダルトンの分子量を持つヒアルロン酸のテトラブチルアンモニウム塩6.21g(10ミリ当量)を、室温で、ジメチルスルホキシド(DMSO)248mlに可溶化する。この溶液に臭化ベンジル0.951ml(8.0ミリ当量)を加え、その溶液を30℃で12時間放置する。トリエチルアミン0.101g(1.0ミリ当量)を加え、その溶液を30分間攪拌する。2-クロロ-1-メチルピリジンヨウ化物0.255g(1.0ミリ当量)のDMSO 60ml溶液を加え、その混合物を30℃で15時間放置する。
2.5% (w.v) NaCl水溶液を加え、得られた混合物をアセトン750mlに攪拌しながら注ぐ。生成する沈澱を濾過し、100mlのアセトン/水 5:1中で3回、アセトン100mlで3回洗浄し、最後に30℃で24時間真空乾燥する。これにより、所望の生成物4.5gが得られる。ベンジルアルコール含量の定量的測定を、アルカリ加水分解後に、ガスクロマトグラフィーで行なう。全エステル基含量は、"Quantitative organic analysis via functional groups" 第4版(John Wiley and Sons Publication)の169〜172頁に記載の鹸化法で測定する。
このように製造したエステル誘導体を150mg/mlの濃度で30℃のDMSOに可溶化する。可溶化したその誘導体を20ミクロンメッシュを通して濾過し、厚さ<1mmのフィルム押出し成型機に連結した押出し反応器に入れる。DMSOを生成物から抽出することができる溶媒(例えばエタノール)が入った凝固槽に生成物を押出し、フィルム押出し成型機から出てきた素材を、膜を乾燥するための送風機を装着した一連のロールに巻き取る。
【0061】
前臨床試験
下記の試験例では、術後癒着の予防における本発明製品の有効性と、従来の製品と比較した本発明製品の改善点とを示す結果を報告する。
【0062】
試験例1
この試験例では、HA製の健康管理および外科用品の癒着形成予防作用を比較するための陽性対照として樹立した、ラット肝臓に起こした損傷のモデルで観測される、手術に起因する癒着形成の高い発生率を実証する。
これらの実験には、体重275〜300gのスプレーグ・ドーリーラットを使用した。21匹の動物を損傷を与えた。
無菌状態で調製したケタミン(100mg/Kg)とキシラジン(11mg/Kg)の希釈液を筋肉内経路で注射することによって、各動物を麻酔した後、側腹部切開(laparotomy)によって開腹した。
肝臓を確認し、露出させた。滅菌した止血栓で血液が出るまでわずかな圧力をかけることにより、下葉に擦傷を作った。損傷した表面の止血後、サイズ3.0絹縫合糸で開腹部を閉じた。それらの動物を7〜21日後に犠牲にした。
葉の隣接する表面(上部および下部)を外科用ピンセットで分離する際の容易さにより、次の尺度で癒着を評価した:
0 癒着なし−2つの表面を分離することができる
1 軽度〜中度の癒着、表面をピンセットで引き離すことにより分離することができる
2 2つの表面間の顕著な癒着、それらを分離しようとすると組識が裂ける。
この動物モデルでは、2と評価される癒着を臨床的に有意であるとみなした。
この陽性対照群(癒着形成)では、21匹中17匹(80.9%)が評点2の癒着形成を示した。
【0063】
試験例2
この試験例では、架橋型ヒアルロン酸(ACP)製のゲルを単独で用いた場合、あるいは同ゲルを止血薬SurgicelTMおよびヘパリン50 IU/mlと組み合わせて用いた場合の癒着の形成の有意な減少を例証する。ACPゲルを処置すべき表面上に広げた。
実施例1に記載の手術法を動物モデルとして使用することにより、癒着形成を誘発した。
左肝葉の隣合う2つの表面間の癒着形成の有意な減少を表1に示す。
【表1】


これら遅生物従属性(slowly biodependable)の生物適合材料を、隣合う2つの表面間で炎症細胞に対する不浸透性の障壁として使用すると、実施例1に記載の対照群に認められる80.9%の癒着と比べて、癒着の形成が減少することが明白である。
【0064】
試験例3
この実施例では、本発明のHA誘導体からなる健康管理用品(HYAFF11+ポリプロピレンメッシュ)の癒着形成予防作用と比較するための陽性対照として確立した、ラットの腹壁(abdominal wall)に起こした外科損傷のモデルで観測される、手術に起因する癒着形成の高い発生率を示す。
合計24匹(対照12匹、試験12匹)に損傷を加えた。
無菌条件下で調製したケタミン(100mg/kg)とキシラジン(11mg/kg)の希釈液を筋肉内経路で注射することによって各動物を麻酔した後、側腹部切開により開腹した。
腹壁を露出させるために、切開の左側の皮膚弁を2つの外科用ピンセットで持ち上げた。外科用はさみを用いて、腹膜表面の1.5cm×1.5cmの領域を、筋束を除去しないように滲出物が現われるまで除去した。対照群では、腹壁の引張り抵抗を保証するために、ポリプロピレンメッシュ(損傷領域の2倍)をサイズ6.0生物吸収性Vycil縫合糸で損傷した表面上に縫い付ける必要があった。材料を適用する前に、損傷した表面が完全に止血している必要があった。
実施例1に記載の期間の中間時点である14日目に犠牲にした後、癒着を次の尺度で評価した:
0 癒着なし;
1 脈管化を伴わないわずかな癒着、容易に分離できる;
2 脈管化を伴わない中度の癒着、手で引き離すことができる;
3 不透明で脈管化した強固な癒着、分離が困難で外科用メスの使用が必要;
4 厚く、不透明で脈管化した極めて強固な癒着、外科用はさみで組識の破壊を伴って切断分離することしかできない。
2より大きい評点を持つ癒着を有意であると見なした。
陽性対照群(癒着形成)では、12匹中12匹(100%)が2より大きい評点を持つ癒着形成を示したが、本発明の製品を使用した場合は、表2に示すように、腹壁と内部器官の間の癒着形成の発生が有意に減少した。
【表2】


損傷した内表面(腹壁)と隣接する器官との間の障壁として本発明の上記HYAFF11材料を使用すると、ポリプロピレンメッシュのみで処置した対照群における100%の癒着と比べて、癒着の形成が減少することが明白である。
【0065】
試験例4
この試験例では、ゲル状であって、コーティングとして使用される自己架橋型ヒアルロン酸(ACP)が、ラットの盲腸に起こした損傷のモデルで、手術に起因する癒着形成を減少させうることを例証する。
後述するように、このタイプの損傷は、手術後に塩水洗浄と止血のみで処置した場合は、癒着の形成を誘発する。
実施例1と同様に、体重275〜300gのスプレーグ・ドーリーラットを使用した。無菌条件下で調製したケタミン(100mg/Kg)とキシラジン(11mg/Kg)の希釈液で各動物を麻酔した後、側腹部切開により開腹した。盲腸を確認し、露出させた。電気的に69.5℃の温度に設定したはんだ取付け具に連結した直径1cmの銅盤を用いて、頑丈な腸の表面に熱損傷を起こした。これを腸表面に15秒間接触させた。滲出物を伴う明確な損傷が得られた。その損傷領域を塩水で洗浄し、SurgicelTMで止血を行なった後、サイズ3.0絹縫合糸で開腹部を閉じた。
実施例1に記載の期間の中間時点である14日目に犠牲にした後、次の尺度に従って癒着を評価した:
0 癒着なし;
1 脈管化を伴わないわずかな癒着、容易に分離できる;
2 脈管化を伴わない中度の癒着、手で引き離すことができる;
3 不透明で脈管化した強固な癒着、分離が困難で外科用メスの使用が必要;
4 厚く、不透明で脈管化した極めて強固な癒着、外科用はさみで組識の破壊を伴って切断分離することしかできない。
この動物モデルでは、2より大きい評点を持つ癒着を有意であると見なした。
APCゲルを障壁として使用すると、塩水洗浄と止血のみで処置した対照と比較して、癒着の形成が顕著に減少する(表3)。
【表3】


障壁として上記材料を使用すると、塩水洗浄と止血のみの対照処置と比べて、癒着の形成が有意に減少することが明白である。
【0066】
試験例5−ラットの肝臓損傷モデルにおけるヒアルロン酸誘導体HYAFF-7とHYAFF11p75の術後癒着予防効果
動物モデル:
体重250gの雄のハーランSDラット。
損傷のタイプ:
腹部をヨウ素溶液で完全に浄化した後、約3cmの側腹部切開を行なって肝臓を露出させた。下右肝葉を擦傷によって傷つけ、滅菌した木製スパチュラで出血するまで損傷を作った。
試験材料:
実験1:ガーゼ状および不織ティシュー状のHYAFF11p75(ヒアルロン酸の75%部分ベンジルエステル)
実験2:ガーゼ状および不織ティシュー状のHYAFF7(ヒアルロン酸の完全エチルエステル)。
− 材料の適用:従来の止血薬で注意深く止血した後、試験材料と対照材料を、縫合糸を使わずに、下肝葉(損傷領域)と上肝葉(隣接表面)の間に、障壁効果を形成して癒着が予防されるように設置した。
【0067】
評価と観察
観察は手術後7日から21日の間に行なった。形成した癒着は次の視覚評点に基づいて評価した:
0=癒着なし
1=軽微な癒着
2=癒着が顕著に存在
癒着評点による評価に加えて、組識学的試料をヘマトキシリン/エオシンおよびマロリー三重染色で染色することにより、炎症の程度も顕微鏡観察によって評価した(材料の適用に対する組識反応)。
【0068】
結果
実験1:
実験1では、HYAFF11p75(ヒアルロン酸の部分ベンジルエステル)に基づく材料を単独で、Surgicel止血薬と組み合わせて、あるいは該止血薬およびヘパリン浸潤(1000Uml)と組み合わせて試験した。これらの操作は一般的な外科処置である。
図1は単独で使用した場合の生体適合材料の効力を示すグラフである。HYAFF11p75とInterceedに基づく生体適合材料の場合は癒着予防に対する効果が認められず、後者の場合、有意な相違ではないにせよ改善の傾向が認められたものの、肝葉は完全に癒着し、かなりの炎症反応が認められた。同じことが生検の組識学的観察でも認められ、炎症細胞(好中球とマクロファージ)と成熟したコラーゲン繊維が顕著に認められた。
図2と図3では、材料をSurgicelと、あるいはSrugicel+ヘパリンと組み合わせて使用した。HYAFF11p75に基づく材料では図1に認められた傾向が確認されたが、ヘパリンを浸透させたInterceedはより良い効果を与えるようだった。この状況は組識学的観察でも確認された。
結論として、HYAFF11p75に基づく材料は、この製品の極めて短い分解時間から考えて、その炎症作用がおそらくは低分子量ヒアルロン酸のオリゴマーの放出によると思われるので、術後癒着の予防には使用できない。
【0069】
実験2
実験2では、HYAFF7(ヒアルロン酸のエチルエステル)に基づく生物適合材料をSurgicelあるいはSurgicel+ヘパリンと組み合わせて試験した。どちらの場合も、術後癒着の予防に対する効果は認められなかった。Surgicel+ヘパリンと共に使用したInterceedは、より陽性の効果を持つようだった(図4)。
顕微鏡観察でもこれらのデータが確認され、HYAFF7による処置の場合は、注目に値する量の炎症細胞とコラーゲン繊維が見つかった。この場合、上の実験と同様に、生物内へのエタノールの累進的な放出があると思われるので、HYAFF7に基づく生体適合材料は術後癒着の予防には使用できない。
【0070】
試験例6−動物中に起こした2種類の損傷モデル:1)ラットの肝内擦傷;2)ラットの腹壁の損傷におけるHYAFF11系生体適合材料の術後癒着予防効果
動物モデル1
腹部をヨウ素とエタノールで消毒してから、中央(medial)切開を施して肝臓を露出させた。
この動物モデルでは、下肝葉の内表面を滲出物が出始めるまでこすった。その擦傷をTabotamp(Ethicon)で慎重に止血した。この製品は粘液付着性が高いので、縫合することなく、傷ついた表面に材料をのせた。
2つのHYAFF11系製品(共に市販版の20μm厚の連続膜で、TransprocessおよびHyalobarrier20と呼ばれている)を試験した。癒着の定義に上述の評価法を用いて、手術の14日後に肉眼による評価を行なった。また、癒着評点=2(有意な癒着)を持つ動物の割合(%)をも評価した。
【0071】
結果
図5はこの実験で得た癒着評点を表わすグラフである。Hyalobarrier20は、非処置対照ならびに高分子量ヒアルロン酸および低分子量ヒアルロン酸による2つの処置と比較して、癒着の発生率を減少させる。もう1つのHYAFF11系材料Transprocessの場合も、統計学的な有意差はないものの、同様の傾向が記録された。図6は、各処置群における癒着評点=2(外科的に有意な癒着)の症例の割合(%)を示す。先のグラフ(図1)で認められた傾向は、癒着評点=2の減少(Hyalobarrier20処置とTransprocess処置の場合、50%未満の割合)と共に、この場合にも確認された。
【0072】
動物モデル2
腹部をヨウ素とエタノールで消毒した後、長さ約5cmの中央開腹を行なって腹壁と腹膜を露出させた。
2cm×2cmの切開を外科用メスで施した後、腹膜と筋肉層を除去した。このタイプの手術では、腹膜壁の崩壊を裂けるために、十分な引張り強さを保証しながら、傷ついた領域に組識増殖に有利な材料を縫合する必要がある。一般的には、ポリプロピレン、ポリエステルまたは発泡ポリテトラフルオロエチレンのメッシュなどといった、ポリマー基盤を持つ非分解性材料が使用される。しかし、このような材料を単独で使用しても、腸係蹄への癒着の形成を避けるには十分でなく、腸閉塞と慢性の痛みが起こる。
手術の14日後に、0から4までの癒着評点を当てはめることによって、肉眼による評価を行なった。また、2より大きい癒着評点(有意な癒着)を持つ動物の割合も評価した。
【0073】
結果
この実験は、合成プロレン(Prolene)メッシュ(腹部手術で広く使用されているポリプロピレンメッシュ)上のHYAFF11のコーティングと、縫合によって取り付けたプロレンメッシュ上のHYAFF11のシートが、術後癒着の形成を減少させうることを立証している。図7は、Hyalobarrier Plusと呼ばれる複合製品(プロレン上に広げて凝固させたHYAFF11)と、プロレン上のHyalobarrierフィルム縫合が、プロレンメッシュのみと比べて癒着を有意に減少させうることを示している。この傾向は図8でも確認され、HYAFF11による処置後は、2を超える癒着の割合が、プロレンメッシュのみによる処置後に観測されるものより低くなっている。
【0074】
試験例7−ラット肝臓損傷モデルとラット腸損傷モデルにおけるACPゲル生体適合材料の術後癒着形成予防効果
この試験例の目的は、ACPゲル系生物適合材料が術後癒着形成を軽減または予防する効力を評価することであった。試験材料の効力を、腹部下腹部の手術および婦人科の手術で癒着形成を予防するために使用されている市販の生体適合材料酸化型再生セルロース(TC7 Interceed)およびヒアルロン酸高分子量と比較して評価した。
ラット肝臓損傷モデルとラット腸火傷モデルは、実験的癒着誘発の特徴的なモデルであるから、これらを使用した。術後癒着の予防に関する試験材料と対照材料の効果は、損傷の部位を肉眼で観察して、癒着評点を当てはめることにより評価した。
ラット肝臓損傷モデル(実験1)とラット腸損傷モデル(実験2)は、実験的癒着誘発の規格化された再現性のあるモデルであるので、これらを使用した。損傷後に、ACP系生物適合材料を、肝葉(epatic lobe)と内部器官の隣接する表面間の障壁として使用した。
どちらの実験でも、ACPゲルの効力を、癒着形成を予防または軽減するそれらの能力について、TC Interceed(臨床的に広く使用されている吸収性の酸化型セルロース癒着障壁)、コポリマー溶液「Thermogel」(高分子量ヒアルロン酸の溶液)および非処置動物群(擬似手術)と比較して評価した。
【表4】

【0075】
ACPゲルを60mg/mlの濃度で水に懸濁した。試験材料は、オートクレーブで滅菌して5mlシリンジで供給され、滅菌条件下で操作した。Tabotomp(登録商標)で止血した後、すりむいた肝葉表面をコーティングするようにACPゲルを適用した。各動物には、損傷した領域を完全に覆うに足る量(約2ml)を手術時に一回の投与で与えた。
【表5】

【0076】
Interceedは滅菌操作条件下に切断し、単独で、あるいはヘパリン(500 U/ml)に浸した後、肝葉の隣合う2つの表面を離しておくように、傷ついた領域の縁から数mmはみ出すサイズで適用した。HYALヒアルロン酸高分子量(水に10mg/mlの濃度で可溶化したもの)とThermogelは、滅菌シリンジ入りのものを購入した。
Interceedは外科的縫合なしで直接適用した。HYALヒアルロン酸とThermogelは、止血後に、損傷した表面にシリンジで適用(コーティング)した。各動物には、損傷した領域を完全にコーティングまたはカバーするに足る量を、手術時に一回の投与で与えた。
【0077】
実験計画
この実験にはスプレーグ・ドーリーラット(275〜300g)を使用した。過去の実験で得た経験から、この動物モデルで癒着形成を評価するには、14日の期間が妥当な時点であると考えた。この試験に必要な動物の数を考えて、連続する日に動物を準備した。
次の計画に従って、合計78匹の動物を使用した:

【0078】
動物の準備:
動物をケタミン(Gellini Pharmaceitical)/キシラジン(Bayer)の筋肉内注射によって麻酔し、剃毛した後、ヨウ素溶液とエタノールで消毒した。左側の側腹部切開の後、左肝葉を上向きに折り返し、左肝葉と中肝葉の内表面を、木製の塗布具で出血または漿液滲出の形跡が得られるまで優しくこすることによってすりむいた。
材料の投与:
Surgicel(登録商標)またはTabotampTMで止血した後、試験材料と対照材料を、2つの葉の表面間に、擦傷した全領域が覆われ、かつ、葉の間に障壁が作られるように設置した。
手術部位を3.0絹縫合糸で二層に閉じた。
手術の最後に、抗生物質(Procacillina皮下30,000 I.U./ラット)と鎮痛剤(Temgesic筋肉内0.05mg/Kg)を4日間投与した。
癒着度
手術の14日後に、動物をCOで安楽死させた。
癒着度を肉眼による観察で評価した。次の癒着評点を適用した:
0=癒着なし
1=低〜中度の癒着。2つの肝葉(epatic lobes)を鉗子による機械的牽引で外科的に分離した。
2=著しい癒着。2つの肝葉(epatic lobes)は完全に固着しており、分離しようとすると組識が砕けた。
材料の再吸収性を、材料の存在を視覚的に評価することによって評価した。また、処置した部位を写真撮影した。
肉眼による観察を行なった後、肝臓全体を外科的に摘出し、10%緩衝ホルマリンに48時間漬けた。固定後、擦傷した領域を含む2.0mm断片を、解剖ナイフを用いて肝臓から取り出した。そのようにして得た標本を組識学的分析にかけた。
【0079】
組識の分析
組識学的分析
標本を10%の中性緩衝ホルマリン中で固定した後、一般的技術で脱水し、パラフィンに包埋した。8μm切片をマッソン三色(Masson's Trichnome)(組識炎症反応用)と、必要ならばトルイジンブルー(残存材料用)で染色した。
【0080】
実験2−ラット腸火傷
【表6】


ACP 5%ゲル高分子量バッチ3/94を20mg/mlの濃度で水に懸濁し、ACP 5%バッチ101/94を50mg/mlの濃度で懸濁した。すべての試験材料は、オートクレーブで滅菌して5mlシリンジで供給され、滅菌条件下に操作した。Tabotamp(登録商標)による止血の後、火傷を負った腸表面を覆うようにACPゲルを適用した。各動物には、損傷した領域を完全に覆うに足る量(約2ml)を手術時に一回の投与で与えた。
【表7】

【0081】
Interceedは滅菌操作条件下に切断し、単独で、あるいはヘパリン(500 U/ml)に浸した後、肝葉の隣合う2つの表面を離しておくように、傷ついた領域の縁から数mmはみ出すサイズで適用した。HYALヒアルロン酸高分子量(水に10mg/mlの濃度で可溶化したもの)とThermogelは、滅菌シリンジ入りのものを購入した。
Interceedは外科的縫合なしで直接適用した。ヒアルロン酸とThermogelは、止血後に、損傷した表面にシリンジで適用(コーティング)した。各動物には、損傷した領域を完全にコーティングまたはカバーするに足る量を、手術時に一回の投与で与えた。
【0082】
実験計画
この実験にはスプレーグ・ドーリーラット(275〜300g)を使用した。過去の実験で得た経験から、この動物モデルで癒着形成を評価するには、14日の期間が妥当な時点であると考えた。
この試験に必要な動物の数を考えて、連続する日に動物を準備した。
次の計画に従って、合計59匹の動物を使用した:
【表8】

【0083】
動物の準備
動物をケタミン(Gellini Pharmaceitical)/キシラジン(Bayer)の筋肉内注射によって麻酔し、剃毛した後、ヨウ素溶液とエタノールで消毒した。腸が露出するように、皮膚組識と筋肉組識を通して正中腹部切開を行なった。盲腸表面に電気制御した加熱銅盤(直径1cm)を華氏158度(68.3℃)で15秒間、標準圧力(standard pressure)で適用することにより、火傷を作った。
【0084】
材料の投与:
Surgicel(登録商標)またはTabotampTMで止血した後、試験材料と対照材料を、火傷を負った領域全体が覆われ、かつ、腹膜と内部器官の間に障壁ができるように、縫合せずに腸表面に置いた。
筋腹膜層を連続した3-0絹縫合糸で閉じ、皮膚層を皮膚用ステープルと3-0絹断続縫合糸で閉じた。
手術の最後に、抗生物質(Procacillina皮下30,000 I.U./ラット)と鎮痛剤(Temgesic筋肉内0.05mg/Kg)を4日間投与した。
【0085】
観察と測定
癒着度:
手術の14日後に、動物をCOで安楽死させた。
癒着度を肉眼による観察で評価した。次の癒着評点を適用した:
0=癒着なし
1=低度、無血管、容易にわかれる
2=中度、無血管、連続的、手でわかれる
3=不透明、血管、分断が困難で、手術用メスによる分離が必要
4=緻密、不透明、血管、外科用はさみでのみ分断され、組識が傷つく
材料の再吸収性を、材料の存在を視覚的に評価することによって評価した。また、処置した部位を写真撮影した。
【0086】
結果
実験1
一匹は麻酔薬投与中に死亡したが、生体適合材料の設置は容易に行なうことができた。材料が下肝葉(lower epatic lobe)の組識に付着するように留意した。ACPで処理した動物では、手術後に疾患や苦痛の臨床的兆候は認められなかった。
ヒアルロン酸で処置した動物の2匹は、手術後2日で死亡した。検死では内出血が認められた。
癒着形成の評価:組識損傷後に肝葉(epatic lobe)の隣合う2つの表面間に形成する癒着を、14日目に評価した。いずれの処置も観察時点で低下していた。ACP 5%(バッチ104/96)生体適合材料で処置した動物における癒着評点(図9)は、対照材料と非処置対照のどれよりも有意に低かった。ACP 5%(バッチ101/96)処置群では、癒着の減少がヘパリン浸漬TC7 Interceedよりも優れていたが、統計学的な有意差は認められなかった。それでも対照群および非処置群と比較すると、両処置群は有意差(p<0.05)を示した。
組識形態学的観察:手術14日後の顕微鏡観察では、ACP処置が高度に生体適合性であることがわかり、観測された炎症反応は極めて低かった。具体的には、好中球や巨大細胞などの炎症細胞はほとんど存在せず、2つの葉の間の間隙内部へのこれら細胞の移動や、当該間隙内部でのこれら細胞の増大は認められなかった。TC7 Interceed〓は組識反応を示し、その結果多くの場合、肝表面(epatic surfaces)が一部固着した。また、顕微鏡観察では、組織化したコラーゲンフィブリルの存在が目立ち、ヘパリン溶液を浸漬してこの処置を行なうと、炎症反応が減少するようである。スライドの大半では、生体適合材料が完全に生分解されているようだった。非処置対照群は、中〜高度の炎症反応を示した。
実験2
合計2匹の動物が麻酔薬投与中に死亡したが、生体適合材料の設置は容易に行なうことができ、設置後にそれらが移動することはなかった。ACP処置群動物には、手術後に疾患や苦痛の臨床的兆候は認められなかった。
ヒアルロン酸分子量1.2×10で処置した動物の4匹と、Thermogelで処置した動物の3匹は、手術後2〜5日で死亡した。検死では、全ての動物に内出血が認められた。
癒着形成の評価:この実験では手術の14日後(図10)に、ACP 5%ゲル101/94と3/94が、ヒアルロン酸分子量1.2×10または非処置対照と比較して術後癒着形成の減少を示した。APCゲルの効力はヘパリン浸漬Interceed Barrierの効力と同等であり、これらの処置群と非処置対照群の間には統計学的な差(P<0.05)が認められた。全ての処置材と対照材は完全に吸収された。
組識形態学的観察:14日目の顕微鏡観察では、ACP処置群が低い組識炎症反応を示し、
肉芽組織の厚さは極めて低く、隣接する腹膜表面に対する癒着のような不都合な反応は、腸には認められなかった。フィブリルコラーゲンが組織化し始め、治癒過程が完了した。ヒアルロン酸処置群では、炎症反応が認められ、癒着を誘発するコラーゲン繊維がかなり存在し、厚い肉芽組識が認められた。非処置対照群でも同じ組識形態学的外見が認められた。
【0087】
考察
癒着形成は、腹部下腹部手術後の術後罹患率の主要な原因の一つであり、しばしば小腸閉塞や他の重大な病状につながる。下腹部内臓が関与する場合、これらの癒着は生理機能を損ない、不妊症をもたらす可能性がある。術後の癒着形成と再構成(reformation)の機構はまだよくわかっていない。実験的証拠が示唆するところによると、2つの組識修復部位を1つの治癒部位に統合し、隣合う2つの表面間を癒着させた方が効率がよいので、手術で傷つけられた、もともと近接している2つの表面間に、治癒過程で癒着が生じるらしい。
【0088】
このスクリーニングでは、手術に従来の外科用止血剤(Surgicel(登録商標))を使用し、続いて生物分解性ヒアルロン酸誘導体障壁を設置すると、癒着の形成が予防されることがわかった。また、これらの材料は繊維素溶解剤と同時に使用してもよい。この癒着の減少は、酸化型再生セルロースTC7 Interceedの場合と比較して有利である。
【0089】
HYAFF(登録商標)11生体適合材料は良好な生物適合性と極めて低い炎症を示した。試験したFAB生体適合材料の分解速度は、処置材の物理形状が異なると、それに依存して異なった。HYAFF11(登録商標)生体適合材料は数週間持続した。これらのヒアルロン酸誘導体で達成することができる制御された分解速度の範囲は、解剖学的に異なる部位および異なる応用(婦人科や、腹部下腹部など)での術後癒着の予防に有効利用することができる。
これらの結果は、ヒアルロン酸誘導体(HYAFF(登録商標)11ガーゼおよび膜)が手術後の癒着形成の予防に役立つことを示唆している。
以上のように本発明を記述したが、本発明に様々な形の変更を施しうることは明らかだろう。それらの変更は、本発明の思想と範囲からの逸脱であるとみなすべきでなく、当業者には明らかだろうが、それらの変更はすべて以下の請求の範囲に含まれるものとする。

【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図2】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図3】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図4】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図5】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図6】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図7】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図8】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図9】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。
【図10】ラット動物モデルで研究した癒着の結果を表わすグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む方法により製造される組織の手術癒着を防止するための生体材料であって、その方法は
(a)(i)ヒアルロン酸のカルボキシル基の75〜99%がベンジルラジカルでエステルされカルボキシル基の25%までがC10〜C20脂肪族アルコールのアルキルラジカルでエステル化されている(ただしカルボキシル基の少なくとも80%はエステル化されている)ヒアルロン酸のベンジルエステルを含むヒアルロン酸誘導体よりなる第1のポリマー;および
(ii)第2のポリマー
を混合するか;または
(b)ヒアルロン酸のカルボキシル基の0.5〜20%が該複合材料中で同じ、または異なるヒアルロン酸分子のヒドロキシル基に架橋しているヒアルロン酸の自己架橋型誘導体;
を含んでなり、ゲル、平面膜、メッシュ、織または不織組織、またはその組合せの形の複合体を作り。該複合材料は(a)の第1および第2または(b)の自己架橋ヒアルロン酸の相互貫入ネットワーク(IPN)を含まない複合生体材料。
【請求項2】
該誘導体が、カルボキシル基の80%がベンジル基でエステル化されているベンジルエステルである、請求項1(a)の複合生体材料。
【請求項3】
該誘導体が、カルボキシル基の75%がベンジル基でエステル化されており、残りの25%のカルボキシル基がC10〜20脂肪族アルコールの脂肪族残基でエステル化されているベンジルエステルである、請求項1(a)の複合材料。
【請求項4】
該アルコールがステアリルアルコールまたはパルミチル(palmitic)アルコールである請求項3の複合材料。
【請求項5】
該自己架橋型誘導体が、4.5〜5.0%の架橋ヒアルロン酸分子のカルボキシル基を有する請求項1(b)の材料。
【請求項6】
さらに非生物分解性合成ポリマーを含む請求項1〜5のいずれかの複合材料。
【請求項7】
該合成ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステルおよびポリテトラフルオロエチレンからなる群より選択される請求項6の複合材料。
【請求項8】
第2のポリマーがヒアルロン酸誘導体である請求項1〜7の複合材料。
【請求項9】
膜、メッシュ、または織組織、若しくは不織組織の形態にある請求項1〜8いずれかの複合材料。
【請求項10】
ゲルの形態にある請求項1(b)または5の複合生体材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−302235(P2008−302235A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184052(P2008−184052)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【分割の表示】特願平9−509858の分割
【原出願日】平成8年8月29日(1996.8.29)
【出願人】(500047170)フィディア・アドバンスト・バイオポリマーズ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (5)
【氏名又は名称原語表記】FIDIA ADVANCED BIOPOLYMERS,S.r.L.
【Fターム(参考)】