ヒトインフルエンザウイルスおよびトリインフルエンザウイルスを検出するための核酸プライマーおよびプローブ
ヒトおよび動物対象におけるインフルエンザウイルスを検出するための動力学的ポリメラーゼ連鎖反応(kPCR)アッセイに使用されるプライマーおよびプローブを調製するために使用される核酸配列を提供する。kPCRアッセイ用の出発物質はDNAまたはRNAのことがあり、このアッセイは、単一のインフルエンザウイルスを検出するためのシングルプレックスアッセイまたは複数のインフルエンザウイルスを検出するためのマルチプレックスアッセイで行うことができる。このプライマーおよびプローブは、インフルエンザウイルスA型およびB型(それぞれINFAおよびINFB)の検出および定量化に有用性を有し、全ての公知のINFA亜型、すなわちH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8およびH9の検出および定量化に有効であることが示された。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき2006年4月28日に出願された米国仮特許出願第60/795,785号の優先権を主張し、この仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、広くはヒトインフルエンザウイルスおよびトリインフルエンザウイルスを検出するための診断アッセイに有用な核酸配列に関する。さらに具体的には、本発明は、トリインフルエンザA型(「INFA」)ウイルスの亜型ならびにヒトINFAウイルスおよびB型インフルエンザ(「INFB」)ウイルスの株の同定に特異的なプライマーおよびプローブに関する。これらの配列は、試料中のインフルエンザウイルスを検出するためのシングルプレックスアッセイに使用することもできるし、試料中のインフルエンザウイルスを他の呼吸器疾患と共に検出するマルチプレックスアッセイに使用することもできる。
【0003】
発明の背景
インフルエンザウイルスにはINFA、INFBおよびインフルエンザC型(「INFC」)の3種類がある。最も毒性のインフルエンザウイルスはインフルエンザウイルスA型であり、このウイルスは、ヒト、トリ、ブタ、ウマ、アザラシ、クジラ他の動物に感染することができる。自然宿主として野鳥を使用するインフルエンザウイルスは、トリインフルエンザウイルスと呼ばれ、自然宿主としてヒトを使用するインフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスと呼ばれる。シチメンチョウやニワトリなどの家禽は、トリインフルエンザウイルスから致死的疾病を発生し、他の動物およびヒトも同様に、感染した家禽と接触することによりトリインフルエンザウイルスに感染した。家禽は、感染した野鳥もしくは感染した他の動物との直接接触、ウイルスが住みつく表面との接触、または汚染された食物もしくは水を介してトリインフルエンザウイルスに感染するおそれがある。今までのところ、種を超えヒトに感染したトリインフルエンザウイルスが、最近のヒトインフルエンザの世界的大流行の原因である。通常はヒトにだけ感染するインフルエンザB型ウイルスおよびインフルエンザC型ウイルスは、インフルエンザA型ほど毒性ではない。インフルエンザB型は、インフルエンザの地域的流行の原因であったが、広範なインフルエンザの世界的大流行の原因になったことはない。最も低毒性のインフルエンザC型ウイルスは、これまでに一度も広範なヒトインフルエンザの流行を導いたことはない。
【0004】
インフルエンザウイルスは、ゲノムが8個の一本鎖マイナスセンスRNAセグメントを含有するエンベロープウイルスである。ウイルスエンベロープは、ウイルスの付着の原因となるタンパク質である二つの主要な表面ウイルス糖タンパク質:ヘマグルチニン(「HA」)およびノイラミニダーゼ(「NA」)を有する宿主由来脂質二重層をもつ。エンベロープ内では、マトリックスタンパク質M1および核タンパク質(「NP」)がウイルスRNAを保護している。インフルエンザウイルスのA、BおよびC型という名称は、M1マトリックスタンパク質およびNPの抗原的特徴に基づく。8個のRNAセグメントは、少なくとも10個のウイルスタンパク質をコードし、すなわちセグメント1、2および3は、3個のウイルスポリメラーゼタンパク質をコードし、セグメント4はHAをコードし、セグメント5はNPをコードし、セグメント6はNAをコードし、セグメント7はM1およびM2マトリックスタンパク質をコードし(前者はイオンチャネル活性を有し、ウイルスエンベロープに埋まっている)、そしてセグメント8は非構造タンパク質NS1およびNS2をコードする(前者はホスト抗ウイルス応答をブロックし、後者はウイルス粒子の集合に関与する)。
【0005】
INFAウイルスは、ウイルス表面のHAおよびNAタンパク質の亜型により同定される。INFAウイルスは、16個の異なるHA亜型および9個の異なるNA亜型を有し、その全てが多数の異なる組合せでウイルス表面に存在しうることから、H5N1ウイルスは、HA5タンパク質およびNA1タンパク質をその表面に有する。全ての亜型のINFAウイルスは鳥類に見られる。ヒトに通常見られるINFA亜型は、H1、H2およびH3亜型であり(H2亜型は現在循環していない)、H5、H7およびH9亜型もまたヒトに感染することが知られてきた。鳥類に見られるINFA亜型ウイルスの中で、H5およびH7亜型が最も毒性が高く、H5およびH7亜型の株は、さらに低病原性トリインフルエンザ(「LPAI」)または強病原性トリインフルエンザ(「HPAI」)のいずれかに分類される。HPAIは、細胞区画および器官系に広く分布する無数の細胞性プロテアーゼによる切断に高度に感受性なHAを特徴とするが、対照的にLPAIは、呼吸部位および腸部位の内腔に限定されるトリプシンなどの特異的活性細胞外プロテアーゼを切断に必要とする。HPAI H5またはH7ウイルスに感染した家禽のうち、90%から100%のトリが死亡するものである。LPAI H5およびH7ウイルスはHPAI H5およびH7ウイルスにそれぞれ進化しうることから、家禽集団におけるLPAI H5およびH7ウイルスの激増はしっかりとモニターしなければならない。動物とヒトとの間を循環しているトリインフルエンザウイルスの亜型には、ウマに疾病を引き起こすH7N7およびH3N8ウイルスならびに一般にヒトに循環しているH1N1、H1N2およびH3N2ウイルスが挙げられる。INFBおよびINFCウイルスは、亜型によって分類されない。
【0006】
1997年以来、以前は鳥類への感染に限られたINFAウイルスが、致命的転帰を伴ってヒトに感染してきた。トリインフルエンザウイルスの激増の確認が、結果として生じる数例のヒトの死と共に1997年(H5N1、香港)、1999年(H9N2、中国および香港)、2002年(H7N2、米国バージニア州)、2003年(H5N1、中国および香港;H7N7、オランダ;H9N2、香港;H7N2、米国ニューヨーク州);2004年(H5N1、タイおよびベトナム;H7N3、カナダ);および2005年(H5N1、タイおよびベトナム)に報告された。
【0007】
トリINFAウイルスが渡り鳥を介して全世界に運ばれ、このウイルスが抗原ドリフトおよび抗原シフトならびに遺伝的ドリフトの結果として急速に変化することが知られていることから、トリインフルエンザウイルスのサーベイランスに使用される方法は、抗原的および遺伝的に多様なインフルエンザ株の検出を可能にするために十分な特異性を有さねばならない。
【0008】
トリINFAを検出する伝統的な方法には、培養強化酵素結合免疫吸着アッセイ(「CE−ELISA」)などのプラークアッセイおよび孵化鶏卵を用いたウイルス単離が挙げられる。ウイルスのヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼの亜型分けは、血清学的方法による検出後に実施される。伝統的な方法は十分に高感度であることが示されているが、このプロセスには時間がかかり、例えば孵化鶏卵を用いたウイルス単離は、結果を得るために1から2週間かかる。
【0009】
トリINFAを検出する伝統的な方法の時間およびコストの欠点を克服するために、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(「リアルタイムRT−PCR」)(動力学的(kinetic)RT−PCR(「kRT−PCR」)とも呼ばれる)として知られる技法を使用した診断法が開発された。このようなアッセイは、INFAおよびINFBのマトリックスおよび核タンパク質の遺伝子から得られる配列を使用してINFAおよびINFBを検出する。Stone et al., J. VIROL. METH. 117:103-112 (2003);Smith et al., J. CLIN. VIR. 28:51-58 (2003);Ward et al., J. CLIN. VIR. 29:179-188 (2004)。INFA H5およびH7のHA亜型に対するそれらのアッセイについて、アッセイの結果は、HA亜型についての伝統的な血清型分類に勝るとは見出されていない。Spackman et al., J. CLIN. MICROBIOL. 40(9):3256-3260 (2002); Munch et al., ARCH. VIROL. 146:87-97 (2001); Lee & Suarez, J. VIROL. METH. 119:151-158 (2004)。
【0010】
ヒトおよび動物におけるINFAおよびINFBウイルスを検出および処置できるためには、当技術分野において全てのINFAおよびINFBの株および亜型を検出できる高感度アッセイが依然として必要である。
【0011】
発明の概要
本発明は、INFAおよびINFBの全ての株ならびにINFAの全ての亜型を包含するように設計された増幅プライマーおよび検出プローブのセットを提供することによって、ヒトまたは動物対象から全てのINFAおよびINFBの株および亜型を検出することができる高感度アッセイの当技術分野における必要性を克服する。トリINFAの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、様々なトリ種の間で保存されているHA遺伝子のH5亜型の核酸配列を検出する(表1)。ヒトINFAの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、多数のヒト試料の間で保存されているマトリックス(M1)遺伝子の核酸配列を検出する(表2)。ヒトINFBの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、複数のヒト試料の間で保存されている非構造(NS1およびNS2)遺伝子の核酸配列を検出する(表3)。本明細書に記載された方法が、(任意の種についての)インフルエンザウイルスの任意のセグメントに発現される任意の遺伝子についての保存された核酸配列を検出するプライマーおよびプローブを開発するために使用することができることから、本発明の方法は、本明細書に記載されるトリおよびヒトのプライマーおよびプローブのセットに限定されないことが了解される。
【0012】
本発明の一態様では、試料中のインフルエンザウイルスを検出および定量化する方法が提供され、その方法は、配列番号1〜11から調製されたプライマーおよびプローブを用いて実行された動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行うことを含む。
【0013】
本発明の別の態様では、インフルエンザウイルスはトリインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブは、配列番号1〜5から調製され、トリINFAの亜型H5の両方の系統が検出および定量化される。トリインフルエンザA/H5ウイルスには、ユーラシア系統およびアメリカ系統の2系統がある。これら2系統由来のウイルスは遺伝的に異なる。全ての公知のヒトインフルエンザH5感染は、ユーラシア系統由来の高病原性ウイルスにより起こってきた。
【0014】
本発明のさらなる態様では、インフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブは、ヒトINFAのマトリックス遺伝子を検出および定量化するために配列番号6〜8から調製される。
【0015】
本発明のなお別の態様では、インフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスB型(INFB)であり、プライマーおよびプローブは、ヒトINFBの非構造遺伝子を検出および定量化するために配列番号9〜11から調製される。
【0016】
本発明のなおさらなる態様では、プライマーおよびプローブは、インフルエンザウイルスを検出および定量化するために動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイ(「kPCR」)で使用される。kPCRアッセイのために、試料は、ヒトまたは動物対象から得られたDNA試料のこともあるし、ヒトまたは動物対象から得られたRNA試料のこともある。出発試料がRNAである場合には、kPCRアッセイは動力学的逆転写酵素PCR(kRT−PCR)アッセイである。
【0017】
本発明の追加的な局面、長所および特徴は、部分的には以下の説明に示されるであろうし、部分的には以下を検討するときに、または本発明を実施するときに当業者に明らかになるであろう。
【0018】
発明の詳細な説明
定義:
下に提供される定義は、開示および請求された本発明の理解を助けるためにのみ示されるものであり、これらの定義および命名は限定を意図しない。
【0019】
状況が明らかに別のことを命じない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「a」、「an」および「the」という単数形には、複数の参照対象が含まれる。
【0020】
本明細書に使用する用語「流行」は、急速に広がり、ある地方または集団中の多数の固体を同時に冒すインフルエンザの激増を表す。
【0021】
本明細書に使用する用語「世界的大流行」は、広い地理的地域に広がり、集団の大部分を冒すインフルエンザの流行を表す。
【0022】
用語「抗原ドリフト」は、時間的に継続して起こるウイルスにおける小さな変化を表す。インフルエンザウイルスに関連して、抗原ドリフトは、初期のインフルエンザ株に対する抗体によって認識されることのできない新しいトリインフルエンザウイルス株を産生する。抗原ドリフトは、トリインフルエンザウイルスによく発生する。
【0023】
用語「抗原シフト」は、新しいウイルスを産生する、ウイルスにおける急激で主要な変化を表す。インフルエンザウイルスの状況内では、抗原シフトは新しいインフルエンザウイルス亜型を生じる。抗原ドリフトとは異なり、抗原シフトはめったに起こらない。
【0024】
用語「遺伝的ドリフト」は、小さな孤立した集団における遺伝子の出現頻度における、自然淘汰の結果ではないランダムなゆらぎを表す。
【0025】
用語「突然変異」は、ゲノムDNAの配列における任意の変化を表す。
【0026】
用語「相同性」は、以前のある時点における特徴の独特な遺伝可能な改変に起因する遺伝的関係を表す。この用語は、同一の起源を有する共通の祖先に由来するDNA、遺伝子または他の性質を表すために使用される。
【0027】
用語「保存された」は、配列、構造または機能における類似性を表すために使用される。
【0028】
用語「アライメント」は、系統学的分析のために相同な分子配列を並べるための任意に連なった技法を表す。
【0029】
用語「コンセンサス配列」は、相同配列の共通な特徴を規定する、通常はギャップおよび幾分の縮重を有する直鎖状に連なるヌクレオチドを表す。コンセンサス配列は、各位置が、多数の実際の配列を比べた場合に最も頻繁に見出される塩基(ヌクレオチド)を表す理想化された配列である。
【0030】
用語「ターゲット」は、インフルエンザA型ウイルスの核酸配列を表す。
【0031】
用語「試料」は、インフルエンザウイルスまたは他の呼吸障害もしくは呼吸疾患などの一つまたは複数の疾患状態の存在について試験することができる、任意の対象からの生物学的試料を表す。このような試料には、皮膚または任意の器官、血液、血漿、粘液、唾液など由来の組織試料が含まれることがある。
【0032】
用語「対象」は、試料を得ることができる生物学的生物を表す。本発明の状況内では、対象は通常ヒト患者であろうが、対象には、ブタ、ウマもしくは海洋哺乳動物などの任意の哺乳動物、または野鳥もしくは家禽などの非哺乳動物もまた含まれることがある。
【0033】
用語「増幅プライマー」は、cDNAまたはRNAターゲット分子に相補的なオリゴヌクレオチドであって、基質の3’−OH末端を提供するオリゴヌクレオチドを表し、その3’末端に任意のDNAポリメラーゼがこれから伸長するDNA鎖のヌクレオシドを5’から3’方向に付加することができる。
【0034】
用語「プローブ」は、増幅したターゲット核酸に適切な条件で選択的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを表す。プローブ配列は、コード鎖またはセンス鎖に対するセンス(すなわち相補的)配列(+)またはアンチセンス(すなわち逆相補的)配列(−)のいずれかとして確認される。動力学的PCR形式では、検出プローブは、5’−レポーター色素(R)および3’−クエンチャー色素(Q)を有するオリゴヌクレオチドからなることがある。蛍光レポーター色素(すなわちFAM(6−カルボキシフルオレセイン)など)は、典型的には3’−末端に局在する。検出プローブは、増幅および検出プロセスの間にTAQMAN(登録商標)プローブとして作用する。
【0035】
本明細書に使用する用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)および適切な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを表す。この用語には、等価物としてヌクレオチドアナログから作られたRNAまたはDNAのアナログと、記載中の態様に適用できる一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドとが含まれることもまた了解すべきである。発現配列タグ(「EST」、すなわち発現された遺伝子の一端または両端のいずれかを配列決定することによって発生した、通常は200から500ヌクレオチド長の小さなDNA配列片)、染色体、cDNA、mRNAおよびrRNAは、核酸と呼ぶことができる分子の代表例である。
【0036】
本明細書に使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有)、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドである他の任意の種類のポリヌクレオチド、および非ヌクレオチド主鎖(例えばタンパク質核酸およびNEUGENE(商標)ポリマーとしてAnti−Gene Development Group(Corvallis, Oregon)から市販されている合成の配列特異的核酸ポリマー)または非標準結合を含有する他のポリマー(但し、このポリマーはDNAおよびRNAに見られるように塩基対形成および塩基のスタッキングを可能にするコンフィギュレーションの核酸塩基を含有する)を包含する。したがって、本明細書における「オリゴヌクレオチド」には、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNA、ならびにDNA:RNAハイブリッドが含まれ、公知の種類の改変オリゴヌクレオチド、例えば一つまたは複数の天然ヌクレオチドがアナログに置換されたオリゴヌクレオチド;ヌクレオチド間改変を含有するオリゴヌクレオチド、例えば非荷電結合を有するもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、陰性荷電した結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、および陽性荷電した結合(例えばアミノアルキルホスホルアミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)、ペンダント部分を含有するもの、例えばタンパク質など(ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなどを含む)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、およびアルキル化剤を含有するものなどもまた含まれる。用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」との間に長さの意図された区別はなく、これらの用語は相互交換可能に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを表す。本明細書に使用する、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関する記号は、IUPAC−IUBMB生化学命名合同委員会(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/jcbnを参照されたい)に準拠する。
【0037】
オリゴヌクレオチドは、公知の方法により合成することができる。広くオリゴヌクレオチドを合成するための方法に関する、背景となる参考文献には、β−シアノエチルホスフェート保護基の使用に基づく5’−から3’−合成に関するものが挙げられる。例えば、de Napoli et al., GAZZ CHIM ITAL 114:65 (1984);Rosenthal et al., TETRAHEDRON LETT 24:1691 (1983);Belagaje and Brush, NUC ACIDS RES 10:6295 (1977)を参照されたく、溶液相の5’−から3’−合成を記載している参考文献には、Hayatsu and Khorana, J AM CHEM SOC 89:3880 (1957);Gait and Sheppard, NUC ACIDS RES 4: 1135 (1977);Cramer and Koster, ANGEW CHEM INT ED ENGL 7:473 (1968);およびBlackburn et al., J CHEM SOC PART C, 2438 (1967)が挙げられる。追加的に、Matteucci and Caruthers, J AM CHEM SOC 103:3185-91 (1981)は、オリゴヌクレオチドの調製へのホスホクロリダイトの使用を記載し;Beaucage and Caruthers, TETRAHEDRON LETT 22:1859-62 (1981)およびCaruthersらの米国特許第4,415,732号は、オリゴヌクレオチドの調製のためのホスホルアミダイトの使用を記載している。Smith, AM BIOTECH LAB, pp.15-24 (December 1983)は、自動固相オリゴデオキシリボヌクレオチド合成を記載しており、T. Horn and M.S. Urdea, DNA 5:421-25 (1986)は、ビス(シアノエトキシ)−N,N−ジイソプロピルアミノホスフィンを用いた固体支持DNAフラグメントのリン酸化を記載している。Smith、上記;Warner et al., DNA 3:401-11 (1984);およびT. Horn and M.S. Urdea, TETRAHEDRON LETT 27:4705-08 (1986)に引用された参考文献もまた参照されたい。
【0038】
用語「ヌクレオチド」および「ヌクレオシド」は、四つの天然DNAヌクレオチド塩基、すなわちプリン塩基であるグアニン(G)およびアデニン(A)ならびにピリミジン塩基であるシトシン(C)およびチミン(T)だけでなく、RNAプリン塩基であるウラシル(U)、非天然ヌクレオチド塩基であるイソ−Gおよびイソ−C、ユニバーサル塩基、縮重塩基、ならびに他の改変ヌクレオチドおよびヌクレオシドを含有するヌクレオシドおよびヌクレオチドを表す。縮重塩基は、オリゴヌクレオチドに導入するとGまたはAのいずれかと塩基対形成する二重縮重ピリミジン誘導体6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オン(P)と、オリゴヌクレオチドに導入するとCまたはTのいずれかと塩基対形成する二重縮重プリン誘導体N6−メトキシ−2,6,−ジアミノプリン(K)とからなる。ユニバーサル塩基は、オリゴヌクレオチド二本鎖の融解挙動またはオリゴヌクレオチドの機能的生化学的有用性のどちらにもあまり影響せずに四つの通常の塩基のうち任意のものに置き換わる能力を示す塩基である。ユニバーサル塩基の例には、3−ニトロピロール、ならびに4−、5−および6−ニトロインドール、ならびに2−デオキシイノシン(dI)が挙げられ、この後者は、唯一の「天然」ユニバーサル塩基とみなされる。dIは全ての天然塩基に理論的に結合することができるが、dIは主にGとしてコードされる。
【0039】
ヌクレオチドおよびヌクレオシドに加える改変には、非限定的にプリンまたはピリミジン部分のメチル化またはアシル化、ピリミジン環から、またはプリン環系における一つもしくは複数の環から異なる複素環構造への置換、および例えばアセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイルなどの保護基を使用した一つまたは複数の官能基の保護が含まれる。改変ヌクレオシドおよび改変ヌクレオチドには、例えば一つまたは複数のヒドロキシル基がハライドおよび/もしくはヒドロカルビル置換基(後者の場合、典型的には脂肪族基)に置き換わるか、またはエーテル、アミンなどとして官能化された、糖部分への改変もまた含まれる。改変ヌクレオチドおよび改変ヌクレオシドの例には、非限定的に1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチル−アデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、8−ブロモ−グアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチル−アミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、1−メチルプソイドウラシル、キューオシン(queosine)、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。
【0040】
用語「相補的」および「実質的に相補的」は、ヌクレオチドまたは核酸間の、例えば二本鎖DNA分子の二つの鎖間の、またはオリゴヌクレオチドプライマーと、配列決定または増幅される一本鎖核酸上のプライマー結合部位との間の塩基対形成を表す。相補的ヌクレオチドは、一般にAおよびT(またはAおよびU)、ならびにGおよびCである。本発明の状況内で、記載した特異的配列長は例示的であって限定するものではないこと、および同一のマップ位置にわたる配列であって、わずかに多少のある塩基数を有する配列は、記載した配列とターゲット上で同じ位置にハイブリダイゼーションするならば配列の同等物とみなされ、本発明の範囲内に属することを了解されたい。核酸がハイブリダイゼーションするために完全な相補性は必要ないことが了解されていることから、本明細書に開示するプローブおよびプライマーの配列は、特異的プライマーおよびプローブとして有用性を失うことなくある程度改変することができる。全般に、80%以上の相同性を有する配列が本発明の範囲内に属する。当技術分野で公知のように、相補的核酸配列および部分相補的核酸配列のハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件を調整してストリンジェンシーを増加または減少させることにより、すなわちハイブリダイゼーション温度または緩衝液の塩含量を調整することにより得ることができる。開示された配列の特異性を維持するためのこのような小さな改変およびハイブリダイゼーション条件の任意の必要な調整は、日常的な実験のみを必要とし、当技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0041】
用語「ハイブリダイゼーション条件」は、相補的配列の少なくとも一部に相互にアニーリングさせるために十分な時間、温度、およびpH、ならびに反応物および試薬の必要量および濃度の条件を意味することを意図する。当技術分野に周知であるように、ハイブリダイゼーションを達成するために必要な時間、温度およびpH条件は、ハイブリダイゼーションされるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーのサイズ、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーとターゲットとの間の相補度、およびハイブリダイゼーション反応混合物中の他の物質の存在に依存する。各ハイブリダイゼーション段階に必要な実際の条件は、当技術分野において周知であるか、または過度に実験せずに決定することができる。ハイブリダイゼーション条件には、プライマー、プローブ、および他の構成要素に関して適合性の緩衝液、すなわち化学的に不活性な緩衝液であって、それでもなお相補的塩基対の間のハイブリダイゼーションを可能にする緩衝液もまた含まれ、これを使用することができる。このような緩衝液の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0042】
試料からのDNAおよびRNAターゲット配列の単離に、異なるハイブリダイゼーション条件が必要なことは、当業者に了解されている。例えば、試料が当初アルカリ緩衝液中で崩壊されるならば、二本鎖DNAが変性し、RNAは破壊される。対照的に、試料がSDSおよびプロテイナーゼKを有する中性緩衝液中で収集されるならば、DNAは二本鎖のままで、プライマーおよび/またはプローブとハイブリダイゼーションすることができず、RNAは分解から保護される。
【0043】
用語「支持体」および「基質」は、オリゴヌクレオチドプローブもしくはプライマー、分析物分子、または他の化学的実体をアンカーすることのできる任意の固体表面または半固体表面を表すために相互交換可能に使用される。適切な支持体物質には、非限定的に、典型的には固相化学合成に使用される支持体が含まれ、例えばビーズ、シートおよびマイクロタイターウェルもしくはマイクロタイタープレートに使用するためのポリマー物質およびプラスチック(例には、非限定的にポリスチレン、ポリスチレンラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびジビニルベンゼン−スチレン系ポリマーが含まれる);ポリマーゲル;SEPHAROSE(登録商標)などのアガロース;SEPHADEX(登録商標)などのデキストラン);ニトロセルロースなどのセルロース;セルロースポリマー;多糖;シリカおよびシリカ系物質;ガラス(特に制御孔ガラス(controlled pore glass))および機能性ガラス;セラミック、ならびに金属が含まれる。
【0044】
本明細書に使用する用語「ラベル」は、検出可能な(好ましくは定量化可能な)シグナルを提供するために使用することできる任意の原子または分子であって、共有結合または非共有相互作用により(例えばイオン結合もしくは水素結合を介して、または固定化、吸着などにより)核酸またはタンパク質に結びつくことができる任意の原子または分子を表す。ラベルは、広くは蛍光、化学発光、放射能、比色分析、質量分析、X線回折または吸収、磁気、酵素活性などにより検出可能なシグナルを提供する。ラベルの例には、発蛍光団、発色団、放射性原子(特に32Pおよび125I)、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが含まれる。酵素は、典型的にはその活性により検出される。
【0045】
本明細書に使用する用語「ターゲット増幅」は、核酸ターゲットの数十億のコピーを産生することができる酵素介在性手順を表す。当技術分野において公知の酵素介在性ターゲット増幅の例には、PCR、「NASBA」(nucleic acid-sequence based amplification)、「TMA」(transcription-mediated amplification)、「SDA」(strand displacement amplification)、および「LCR」(ligase chain reaction)が挙げられる。
【0046】
最も広く使用されているターゲット増幅手順はPCRであり、これは、DNAの増幅についてMullinsらによって米国特許第4,683,195号に、そしてMullisによって米国特許第4,683,202号に最初に記載された。PCR手順は、当業者に周知である。PCR技法では、DNAの試料は、DNA二本鎖の各鎖の3’末端に相補的なように調製されたモル過剰の二つのオリゴヌクレオチドプライマー(それぞれ10〜30塩基対);モル過剰の未結合ヌクレオチド塩基(すなわちdNTP);およびオリゴヌクレオチドプライマーおよびdNTPからのDNA形成を触媒するDNAポリメラーゼ(好ましくは熱に安定なTaqポリメラーゼ)を有する溶液中で混合される。二つのプライマーのうち一方は、変性したDNA分析物の一方の鎖の3’末端に5’→3’方向に結合するフォラードプライマーであり、もう一方は、変性したDNA分析物のもう一方の鎖の3’末端に3’→5’方向に結合するリバースプライマーである。二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性させるために、この溶液は94〜96℃に加熱される。この溶液を冷却すると、プライマーは分離された鎖に結合し、DNAポリメラーゼは、dNTPをプライマーに繋げることによって分析物の新しい鎖を触媒する。このプロセスを繰り返し、プライマーから合成された伸長産物をその相補体から分離すると、各伸長産物は、もう一方のプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。言い換えると、フォワードプライマーから合成された伸長産物が分離されると、リバースプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。同様に、リバースプライマーから合成された伸長産物が分離されると、フォワードプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。このように、プライマー間のDNA領域は、プロセスを繰り返す度に選択的に複製される。増幅中の配列がサイクルが終わる度に倍増することから、プロセスを数時間繰り返した後で10億コピーの理論的増幅を実現することができ、その結果、PCRを用いてごく少量のDNAを比較的短時間で増幅することができる。
【0047】
用語「増幅配列」、「増幅産物」および「アンプリコン」は相互交換可能に使用され、PCRの最終産物である一本鎖配列を表す。
【0048】
PCR用の出発物質がRNAである場合に、相補的DNA(「cDNA」)は逆転写によってRNAから作られる。次いで、結果として得られたcDNAは、上記PCRプロトコールを用いて増幅される。逆転写酵素は、レトロウイルスに見出される、例えばテンプレートとしてのmRNAまたはssRNA配列などのRNA配列からDNAの相補的一本鎖を合成することのできる酵素として当業者に知られている。この酵素は、遺伝子工学に使用され、RNA(すなわち例えばmRNAまたはssRNA)の精製調製物から特異的cDNA分子が産生される。RNA産物を増幅するために使用されるPCRは、逆転写酵素PCRまたは「RT−PCR」と呼ばれる。
【0049】
用語「動力学的PCR(kPCR)または「動力学的RT−PCR」(kRT−PCR)は、それぞれ「リアルタイムPCR」および「リアルタイムRT−PCR」とも呼ばれるが、同一または異なるオリゴヌクレオチド基質への蛍光色素分子およびクエンチャー部分の連結により発生する蛍光シグナルによるPCR産物の検出を表す。kPCRおよびkRT−PCRに使用されるなじみ深いプローブの例には、以下のプローブが挙げられる:TAQMAN(登録商標)プローブ、分子ビーコンプローブ、SCORPION(登録商標)プローブ、およびSYBR(登録商標)Greenプローブ。簡潔には、TAQMAN(登録商標)プローブ、分子ビーコン、およびSCORPION(登録商標)プローブは、それぞれプローブの5’末端に結びついた蛍光レポーター色素(「フルオル(fluor)とも呼ばれる)と、プローブの3’末端に連結したクエンチャー部分とを有する。ハイブリダイゼーションしていない状態では、フルオルおよびクエンチ分子が近接していることから、プローブからの蛍光シグナルの検出が阻害され、プローブが結合しているテンプレートをポリメラーゼが複製するPCRの間には、ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性がプローブを切断することによって、複製サイクルの度に蛍光が増加する。SYBR(登録商標)Greenプローブは、二本鎖DNAに結合し、励起する際に発光することから、PCR産物が蓄積するにしたがって蛍光が増加する。
【0050】
用語「シングルプレックス」は、任意の他のアッセイと同時に実施されない単一アッセイを表す。シングルプレックスアッセイには、連続的に実施される個別のアッセイが含まれる。
【0051】
用語「マルチプレックス」は、同時に実施される複数のアッセイを表し、このアッセイでは検出ステップおよび分析ステップは広くは平行して実行される。本発明の状況内で、マルチプレックスアッセイにはプライマーおよびプローブを単独で、または追加のプライマーおよびプローブと共に使用して、例えばインフルエンザウイルスを一つまたは複数の追加のウイルスと共に同定することが含まれるものである。本発明の状況内では、内部対照および/または追加の呼吸器ウイルスのためのプライマーおよびプローブをINFAならびにINFAのプライマーおよびプローブと一緒に1回のマルチプレックスアッセイで使用することができることが了解されている。
【0052】
以下は、請求された本発明のいくつかの好ましい態様および実施例の説明である。追加的な態様、および開示された態様の機能、目的または構造における改変は、本出願の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0053】
本発明のトリおよびヒトINFAならびにヒトINFBの増幅プライマーおよび検出プローブは、INFAおよびINFB配列の間に見出される高い縮重を説明するために複数の配列をアライメントすることによって、そして適切であれば、その配列に縮重プローブおよび/またはユニバーサルプローブを組み込むことによって得られるコンセンサス配列である。
【0054】
トリインフルエンザA型のプライマーおよびプローブセット
本発明の一態様では、トリINFAのH5亜型を増幅および検出するトリINFAの増幅プライマーおよび検出プローブが提供される。H5プライマーおよびプローブは、55個のトリおよびヒトINFA H5配列のアライメントに基づき設計された(表1)。H5亜型を選択したのは、これらのトリ亜型がブタなどの中間宿主内で再編成せずに、種を飛び越えヒトに感染する能力が原因である。HA遺伝子配列の最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、HA領域を通じて見出される高い縮重を適応させるようにトリH5のプライマーおよびプローブセットを設計した。本発明のH5プライマーおよびプローブの特異性は高い特異性を有し、H5トリINFA HA亜型を残りの16個のトリINFA HA亜型から区別することができる。
【0055】
ヒトインフルエンザA型のプライマーおよびプローブセット:
本発明の別の態様では、ヒトINFAのM1マトリックス遺伝子配列を増幅および検出するヒトINFA増幅プライマーおよび検出プローブが提供される。INFAマトリックスプライマーおよびプローブは、ヒトINFAの13亜型からの414個のヒトマトリックスタンパク質遺伝子配列のアライメントに基づき設計された。マトリックスの最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、ヒトINFAゲノムを通じて見出される高い縮重を適応させるようにヒトINFAプライマーおよびプローブセットを設計した。プライマーおよびプローブをそのようなものとして設計することによって、本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブは、公知のヒトINFA亜型の全てを検出することができる。ヒトINFAマトリックス配列をトリINFAマトリックス配列とアライメントすることによって、ヒトINFAのプライマーおよびプローブを使用して、トリINFAも同様に増幅および検出することができる。
【0056】
実施例4に、kRT−PCRを使用したINFAマトリックスアッセイに本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブを使用して、組織培養抽出液をH1N1およびH5N2について試験することを説明する。全ての公知のヒトINFA亜型を検出および増幅するためにINFAマトリックスアッセイを使用することができることから、実施例4はINFA亜型を検出するためにINFAマトリックスアッセイを使用することを単に例示しているだけであり、H1N1およびH5N2亜型のみを検出するためにこのアッセイを使用することに全く限定されないと解されるであろう。図2(a)から2(h)(実施例6)にもまた、インフルエンザH1、H3、H4、H6、H7、H8およびH9亜型を検出するために本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブを使用することを説明する。
【0057】
ヒトインフルエンザB型のプライマーおよびプローブのセット:
本発明のさらなる態様では、ヒトINFBの非構造遺伝子(NS1およびNS2)を増幅および検出するヒトINFB増幅プライマーおよびプローブが提供される。INFB構造遺伝子のプライマーおよびプローブは、117個のヒトセグメント8(NS1およびNS2)遺伝子配列のアライメントに基づき設計された(表3)。上記のトリおよびヒトINFAのプライマーおよびプローブのように、非構造遺伝子配列の最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、INFB Bゲノムを通じて見出される高い縮重を適応させるようにヒトINFBのプライマーおよびプローブのセットを設計した。
【0058】
用途
本発明のプライマーおよびプローブは、トリであれヒトであれ対象がINFAまたはINFBの特定の株または亜型に感染しているかどうかを判定するための診断アッセイに有用である。このようなアッセイには、臨床試料に使用するための任意の核酸増幅試験(NAATS)が含まれ、この試験には、非限定的にPCR、RT−PCR、kPCR、kRT−PCR、サザンブロット分析およびリニア増幅法などのNAATが含まれる。本発明の好ましい態様では、このプライマーおよびプローブは、任意のヒトまたは動物対象からINFAおよびINFBを検出するためのkPCRアッセイに使用される。
【0059】
本発明のプライマーおよびプローブは、単一のINFAまたは単一のINFBを検出するために単一の試料を試験するためのシングルプレックスアッセイに使用することができるし(実施例4は、INFAを検出および定量化するためのシングルプレックスアッセイに本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す)、これらは、一つまたは複数のINFAおよびINFBについてヒト試料を試験するマルチプレックスアッセイに使用することができる(実施例5、表7はINFAおよびINFAを検出および定量化するマルチプレックス形式に本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す)。INFAおよび/またはINFBのプライマーおよびプローブは、他の増幅プライマーおよび検出プローブと共にマルチプレックスアッセイに使用して、パラインフルエンザ1、2、3および4、RSV AおよびRSV B、メタニューモウイルス、アデノウイルス、クラミジアニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、マイコプラズマニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ならびにレジオネラニューモフィリア(Legionella pneumophilia)などの他の呼吸器生物と一緒にINFAおよび/またはINFBの同時検出に供することができる(実施例5、表8に、INFAおよびINFBを平行して検出および定量化するためのマルチプレックス形式に本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す。ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス(paraflu)、および呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)などの追加的なウイルスの存在は、本発明のプライマーおよびプローブの特異性に変化をもたらさなかった。
【0060】
本発明のプライマーおよびプローブには、臨床家によって、インフルエンザの症状に苦しむ患者からヒトおよびトリインフルエンザウイルスを検出するために使用されるキットもまた含まれることがある。このようなキットには、トリINFA、ヒトINFAまたはヒトINFBを検出するための一つまたは複数のプライマーおよびプローブセットが含まれるものである。
【0061】
上に言及したように、本明細書に開示されたプライマーおよびプローブは、対象がINFAまたはINFBに感染しているかどうかを判定するために設計されうるプライマーおよびプローブを例示することから、本発明の別の態様では、インフルエンザの複数の株および亜型から得られるコンセンサス配列を含む、インフルエンザウイルスの検出用のプライマーおよびプローブを調製し、適切ならばその配列に縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を組み込むための方法を提供する。
【0062】
本発明を、その好ましい特定の態様と共に説明したが、前述の説明および以下の実施例は、例示を意図し、本発明の範囲を限定するものではないことを了解されたい。他の局面、利点および本発明の範囲内の改変は、本発明が属する技術分野の技術者に明らかなものである。
【0063】
本明細書に言及される全ての特許および刊行物は、その全体が参照により組み入れられる。
【0064】
以下の例は、本発明の組成物をどのように作製および使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために出されたものである。この実施例は、本発明の非限定的な例として意図される。
【0065】
実験の部
本発明の実施は、別に示さない限り当技術分野の技術の範囲内の分子生物学、生化学、微生物学などの通常の技法を使用するものである。このような技法は、文献に十分に解説されている。例えば、Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed. (1989);OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS (M. J. Gait, ed., 1984);THE PRACTICE OF PEPTIDE SYNTHESIS (M. Bodanszky and A. Bodanszky, 2nd ed., Springer-Verlag, New York, NY, 1994);NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION (B. D. Haines & S. J. Higgins, eds., 1984);およびMETHODS IN ENZYMOLOGY (Elsevier, Inc., Burlington, MA)を参照されたい。
【0066】
以下の実施例において、数(例えば量、温度など)に関する正確さを確実にするために努力されてきたが、説明された実験を行うときは実験誤差および偏差を考慮すべきである。別に示さない限り、部は重量部であり、温度はセ氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近であり、全ての実験成分は市販の入手源から得られる。
【0067】
本発明のプライマーおよびプローブのコンセンサス配列を決定するために使用される配列は、Influenza Sequence Databaseから得られた。インターネットのwww.flu.lanl.govから入手できるMacken et al., OPTIONS FOR THE CONTROL OF INFLUENZA IV, pp. 103-106 (A.D.M.E. Osterhaus, N. Cox & A.W. Hampson (eds.) Amsterdam: Elsevier Science, 2001)である。Vector NTI AlignXソフトウェア(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を相同配列のアライメントに使用した。
【0068】
以下の表記法を実施例に使用する:「AV」はトリを表し;「INFA」はインフルエンザA型を表し;「INFB」はインフルエンザB型を表し;「H5」はトリINFAのH5亜型を表し;「M」はマトリックスタンパク質遺伝子(M1およびM2)を表し;「Seg8」は非構造タンパク質遺伝子(NS1およびNS2)を表し;「Fw」はフォワードプライマーを表し;「Rv」はリバースプライマーを表し;「P」はプローブを表し;「S」はセンス鎖を表し;かつ「AS」はアンチセンス鎖を表し;かつ「Ct」はサイクル閾値(バックグラウンドを超えて有意に増大した蛍光が最初に検出されるサイクル数)を表す。
【0069】
以下の実施例に使用されるkRT−PCRアッセイは、MX3000P(商標)Real−Time PCR System(Stratagene, La Jolla, CA)で最大90試料について約2.4時間かかる運転時間で行われた。各kRT−PCRの運転物は、陽性および陰性対照ならびに定量化されたINFA RNAウイルス培養抽出物を系列希釈したものからなる定量用標準を含有した。被験領域(例えば、どのアッセイが行われるかに応じて、トリH5領域、トリもしくはヒトマトリックス遺伝子領域、またはヒトセグメント8領域)からクローニングされたフラグメントから発生した定量化されたRNA転写物を用いて、標準に値を割り付けた。値を割り付けられたウイルス抽出物標準を使用して、各アッセイについて実現されたサイクル閾値(Ct)を比較した。各アッセイ物は内部対照(IC)を含有し、内部対照を抽出中に試料に添加し、阻害剤の効率および存在についてアッセイ手順を評定した。アッセイの特異性は、INFA亜型のパネル、一般的なヒト呼吸器病原体のパネル、ならびに正常なヒト呼吸器組織および呼吸液を試験することによって確認した。
【0070】
実施例1
トリインフルエンザH5亜型
増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表1は、トリINFAのH5亜型のHA遺伝子配列を増幅および検出するように設計された増幅プライマーおよび検出プローブセットを確認するものである。マップ上の位置は、アクセッションナンバーAJ867074を参照し、配列の設計は、55個のトリおよびヒトINFA H5配列のアライメントに基づく。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例2
ヒトインフルエンザA型M1マトリックス遺伝子の増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表2に、ヒトおよびトリINFAのM1遺伝子配列を増幅および検出するために設計された増幅プライマーおよび検出プローブを確認する。マップ上の位置はアクセッションナンバーAY340090を参照し、配列の設計は414個のトリおよびヒトINFAマトリックス配列のアライメントに基づく。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例3
ヒトインフルエンザB型セグメント8の増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表3に、ヒトINFBのセグメント8(NS1およびNS2)遺伝子配列を増幅および検出するために設計された増幅プライマーおよび検出プローブを確認する。マップはアクセッションナンバーAB120439を参照し、配列の設計はヒトINFB NS1およびNS2配列117個のアライメントに基づく。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例4
INFAのシングルプレックスマトリックスアッセイ
シングルプレックスアッセイでウイルスRNA抽出物の試料からH1N1およびH5N2を検出および増幅するために、実施例2のINFAマトリックス遺伝子のプライマーおよびプローブをkRT−PCRアッセイに使用した。H1N1についてのINFAマトリックスアッセイの結果を表4に示し、H5N2についてのINFAマトリックスアッセイの結果を表5に示す。表4および5に示すINFAマトリックスアッセイの結果は、このプライマーおよびプローブが非常に小さなコピー数の試料からH1N1およびH5N2をうまく検出および増幅したことを実証している。
【0077】
表6に、異なるコピー数を有する試料に関するINFAマトリックスアッセイについての精度および直線性の計算を概要する。表6に示すように、特定のINFA亜型のコピーを100個以上有する試料についての検出率は100%である。INFAマトリックスアッセイについての検出プロファイルは、図1にグラフで示す。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
実施例5
マルチプレックスアッセイ
表7に、INFAおよびINFBについてスクリーニングするマルチプレックスアッセイの結果を示し、表8に、INFAおよびINFBについてスクリーニングするマルチプレックスアッセイの結果を示し、特に表8に、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスおよびRSVなどの追加のウイルスの存在が本発明のインフルエンザのプライマーおよびプローブの特異性に変化をもたらさないことを示す。以前に注記したように、全てのアッセイは陰性対照および陽性対照と同時に実行される。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
実施例6
ウイルス原液に関するトリINFAアッセイの比較分析
本発明のINFAトリH5アッセイおよびマトリックスアッセイ(実施例1、2および4)を、USDA−ARSにより標準化されたトリH5アッセイおよびマトリックスアッセイと比較した。INFAアッセイは、同じトリウイルス原液セットに関して二つのアッセイ形式で行った:(1)INFA亜型パネルから単離された核酸の一連の10倍希釈物(ヘマグルチニンH1、H3、H4、H5、H6、H7、H8およびH9亜型からの十分に特徴付けされたウイルス単離物を含有した)を用いた汎INFAアッセイ形式;ならびに(2)定量化された標準(H5N2単離物由来ウイルス抽出物の希釈物から作製した)を用いたH5特異的アッセイ形式。
【0085】
本発明のINFAマトリックスアッセイおよびH5特異的アッセイは、実施例1の前の考察に上記したように行った。汎INFAマトリックスアッセイは、マトリックス遺伝子の約202bp(塩基対)領域をターゲティングし、H5特異的アッセイは、ヘマグルチニン遺伝子由来の約180bpのフラグメントをターゲティングした。以前に言及したように、本発明のINFAマトリックスのプライマーおよびプローブは、現在公知の全てのINFA亜型配列を検出するように設計されている。
【0086】
USDA−ARSのINFAマトリックスアッセイおよびH5特異的アッセイは、以下のサーモサイクラーでワンステップkRT−PCRアッセイを使用して行った:INFAマトリックスアッセイにはBio−Rad Chromo4(商標)(Hercules, CA)およびH5特異的アッセイにはCepheid SMARTCYCLER(登録商標)(Sunnyvale, CA)(Spackman et al., J. CLIN. MICROBIOL. 40(9):3256-3260を参照されたい)。
【0087】
本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより検出された最低レベルのウイルスRNA(LoD)を、以下のメンバー、すなわちH1、H3、H4、H5、H6、H7、H8およびH9を含めたINFA亜型パネルから高力価のウイルス原液の系列希釈物を試験することによって決定した。H5トリINFAアッセイの相対感度は、H5N2インフルエンザ単離物の高力価ウイルス原液を1.6×106から30コピーまで系列希釈したものを定量化することによって決定した。H5N2標準には、クローニングしたマトリックスフラグメントからのRNA転写物に対比して値を割り付けた。
【0088】
汎INFAマトリックスアッセイの結果を図2(a)〜2(h)にグラフで示し、各回のアッセイの終点感度の結果を表9に示す(本発明のアッセイは、「Bayer」アッセイとして図から確認され、Bayerは、本発明の譲受け人である)。図2(a)〜2(h)に、表9のデータが獲得された系列希釈物を示す(図2(e)はH6N2亜型についての実行の1回だけを示す)。実行された10回のアッセイのうち8回で、具体的にはH1N1、H3、H5N2、H7、H8、H9N2のアッセイ、および3回のH6N2アッセイのうち2回で、本発明のINFAマトリックスアッセイが、USDA−ARS INFAマトリックスアッセイよりも高い感度(すなわち低いLoD)を示したことを、表9は明らかに示している。全般的に、本発明の汎INFAマトリックスアッセイは、亜型パネルの希釈系列を通じて最低のLoDを有した(1から30倍の改善)。加えて、本発明の汎INFAマトリックスアッセイがUSDA−ARS汎INFAマトリックスアッセイよりも約50から100倍高い希釈でウイルスのレベルを定量化したH1亜型を例外として、大部分の亜型の定量化は類似していた。
【0089】
【表9】
【0090】
H5特異的アッセイの結果を図3および図4に示す。本発明のH5トリINFAアッセイが反応1回あたり30コピーまで検出および定量化したのに対して、USDA−ARSのH5−トリINFAアッセイは反応1回あたり80コピーまで定量化したことを図3に示すが、これは、本発明のH5−トリINFAアッセイが、USDA−ARSのH5−トリINFAアッセイよりも低いCt値でH5N2(アメリカ系統)を検出できることを示す。図4に、アーマード(armored)RNAユーラシア系統配列に関してH5−トリINFAアッセイおよびUSDA−ARS H5−トリINFAアッセイを比較したときに、本発明のH5−トリINFAアッセイが104および103コピー数の希釈物を検出したが、USDA−ARSのH5トリINFAアッセイはこれらの希釈を検出しなかったことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のINFAマトリックスアッセイについての検出プロファイルを示す図である。
【図2(a)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(b)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(c)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(d)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(e)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(f)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(g)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(h)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図3】本発明のトリH5特異的アッセイおよびUSDA−ARSにより使用されたトリH5特異的アッセイを用いた、H5N2亜型(アメリカ系統)についてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析を示す図である。
【図4】本発明のトリH5特異的アッセイおよびUSDA−ARSによるトリH5特異的アッセイを用いた、同じアーマードRNA(ユーラシア系統)の比較分析の結果を示す図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)項に基づき2006年4月28日に出願された米国仮特許出願第60/795,785号の優先権を主張し、この仮特許出願の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
技術分野
本発明は、広くはヒトインフルエンザウイルスおよびトリインフルエンザウイルスを検出するための診断アッセイに有用な核酸配列に関する。さらに具体的には、本発明は、トリインフルエンザA型(「INFA」)ウイルスの亜型ならびにヒトINFAウイルスおよびB型インフルエンザ(「INFB」)ウイルスの株の同定に特異的なプライマーおよびプローブに関する。これらの配列は、試料中のインフルエンザウイルスを検出するためのシングルプレックスアッセイに使用することもできるし、試料中のインフルエンザウイルスを他の呼吸器疾患と共に検出するマルチプレックスアッセイに使用することもできる。
【0003】
発明の背景
インフルエンザウイルスにはINFA、INFBおよびインフルエンザC型(「INFC」)の3種類がある。最も毒性のインフルエンザウイルスはインフルエンザウイルスA型であり、このウイルスは、ヒト、トリ、ブタ、ウマ、アザラシ、クジラ他の動物に感染することができる。自然宿主として野鳥を使用するインフルエンザウイルスは、トリインフルエンザウイルスと呼ばれ、自然宿主としてヒトを使用するインフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスと呼ばれる。シチメンチョウやニワトリなどの家禽は、トリインフルエンザウイルスから致死的疾病を発生し、他の動物およびヒトも同様に、感染した家禽と接触することによりトリインフルエンザウイルスに感染した。家禽は、感染した野鳥もしくは感染した他の動物との直接接触、ウイルスが住みつく表面との接触、または汚染された食物もしくは水を介してトリインフルエンザウイルスに感染するおそれがある。今までのところ、種を超えヒトに感染したトリインフルエンザウイルスが、最近のヒトインフルエンザの世界的大流行の原因である。通常はヒトにだけ感染するインフルエンザB型ウイルスおよびインフルエンザC型ウイルスは、インフルエンザA型ほど毒性ではない。インフルエンザB型は、インフルエンザの地域的流行の原因であったが、広範なインフルエンザの世界的大流行の原因になったことはない。最も低毒性のインフルエンザC型ウイルスは、これまでに一度も広範なヒトインフルエンザの流行を導いたことはない。
【0004】
インフルエンザウイルスは、ゲノムが8個の一本鎖マイナスセンスRNAセグメントを含有するエンベロープウイルスである。ウイルスエンベロープは、ウイルスの付着の原因となるタンパク質である二つの主要な表面ウイルス糖タンパク質:ヘマグルチニン(「HA」)およびノイラミニダーゼ(「NA」)を有する宿主由来脂質二重層をもつ。エンベロープ内では、マトリックスタンパク質M1および核タンパク質(「NP」)がウイルスRNAを保護している。インフルエンザウイルスのA、BおよびC型という名称は、M1マトリックスタンパク質およびNPの抗原的特徴に基づく。8個のRNAセグメントは、少なくとも10個のウイルスタンパク質をコードし、すなわちセグメント1、2および3は、3個のウイルスポリメラーゼタンパク質をコードし、セグメント4はHAをコードし、セグメント5はNPをコードし、セグメント6はNAをコードし、セグメント7はM1およびM2マトリックスタンパク質をコードし(前者はイオンチャネル活性を有し、ウイルスエンベロープに埋まっている)、そしてセグメント8は非構造タンパク質NS1およびNS2をコードする(前者はホスト抗ウイルス応答をブロックし、後者はウイルス粒子の集合に関与する)。
【0005】
INFAウイルスは、ウイルス表面のHAおよびNAタンパク質の亜型により同定される。INFAウイルスは、16個の異なるHA亜型および9個の異なるNA亜型を有し、その全てが多数の異なる組合せでウイルス表面に存在しうることから、H5N1ウイルスは、HA5タンパク質およびNA1タンパク質をその表面に有する。全ての亜型のINFAウイルスは鳥類に見られる。ヒトに通常見られるINFA亜型は、H1、H2およびH3亜型であり(H2亜型は現在循環していない)、H5、H7およびH9亜型もまたヒトに感染することが知られてきた。鳥類に見られるINFA亜型ウイルスの中で、H5およびH7亜型が最も毒性が高く、H5およびH7亜型の株は、さらに低病原性トリインフルエンザ(「LPAI」)または強病原性トリインフルエンザ(「HPAI」)のいずれかに分類される。HPAIは、細胞区画および器官系に広く分布する無数の細胞性プロテアーゼによる切断に高度に感受性なHAを特徴とするが、対照的にLPAIは、呼吸部位および腸部位の内腔に限定されるトリプシンなどの特異的活性細胞外プロテアーゼを切断に必要とする。HPAI H5またはH7ウイルスに感染した家禽のうち、90%から100%のトリが死亡するものである。LPAI H5およびH7ウイルスはHPAI H5およびH7ウイルスにそれぞれ進化しうることから、家禽集団におけるLPAI H5およびH7ウイルスの激増はしっかりとモニターしなければならない。動物とヒトとの間を循環しているトリインフルエンザウイルスの亜型には、ウマに疾病を引き起こすH7N7およびH3N8ウイルスならびに一般にヒトに循環しているH1N1、H1N2およびH3N2ウイルスが挙げられる。INFBおよびINFCウイルスは、亜型によって分類されない。
【0006】
1997年以来、以前は鳥類への感染に限られたINFAウイルスが、致命的転帰を伴ってヒトに感染してきた。トリインフルエンザウイルスの激増の確認が、結果として生じる数例のヒトの死と共に1997年(H5N1、香港)、1999年(H9N2、中国および香港)、2002年(H7N2、米国バージニア州)、2003年(H5N1、中国および香港;H7N7、オランダ;H9N2、香港;H7N2、米国ニューヨーク州);2004年(H5N1、タイおよびベトナム;H7N3、カナダ);および2005年(H5N1、タイおよびベトナム)に報告された。
【0007】
トリINFAウイルスが渡り鳥を介して全世界に運ばれ、このウイルスが抗原ドリフトおよび抗原シフトならびに遺伝的ドリフトの結果として急速に変化することが知られていることから、トリインフルエンザウイルスのサーベイランスに使用される方法は、抗原的および遺伝的に多様なインフルエンザ株の検出を可能にするために十分な特異性を有さねばならない。
【0008】
トリINFAを検出する伝統的な方法には、培養強化酵素結合免疫吸着アッセイ(「CE−ELISA」)などのプラークアッセイおよび孵化鶏卵を用いたウイルス単離が挙げられる。ウイルスのヘマグルチニンおよびノイラミニダーゼの亜型分けは、血清学的方法による検出後に実施される。伝統的な方法は十分に高感度であることが示されているが、このプロセスには時間がかかり、例えば孵化鶏卵を用いたウイルス単離は、結果を得るために1から2週間かかる。
【0009】
トリINFAを検出する伝統的な方法の時間およびコストの欠点を克服するために、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(「リアルタイムRT−PCR」)(動力学的(kinetic)RT−PCR(「kRT−PCR」)とも呼ばれる)として知られる技法を使用した診断法が開発された。このようなアッセイは、INFAおよびINFBのマトリックスおよび核タンパク質の遺伝子から得られる配列を使用してINFAおよびINFBを検出する。Stone et al., J. VIROL. METH. 117:103-112 (2003);Smith et al., J. CLIN. VIR. 28:51-58 (2003);Ward et al., J. CLIN. VIR. 29:179-188 (2004)。INFA H5およびH7のHA亜型に対するそれらのアッセイについて、アッセイの結果は、HA亜型についての伝統的な血清型分類に勝るとは見出されていない。Spackman et al., J. CLIN. MICROBIOL. 40(9):3256-3260 (2002); Munch et al., ARCH. VIROL. 146:87-97 (2001); Lee & Suarez, J. VIROL. METH. 119:151-158 (2004)。
【0010】
ヒトおよび動物におけるINFAおよびINFBウイルスを検出および処置できるためには、当技術分野において全てのINFAおよびINFBの株および亜型を検出できる高感度アッセイが依然として必要である。
【0011】
発明の概要
本発明は、INFAおよびINFBの全ての株ならびにINFAの全ての亜型を包含するように設計された増幅プライマーおよび検出プローブのセットを提供することによって、ヒトまたは動物対象から全てのINFAおよびINFBの株および亜型を検出することができる高感度アッセイの当技術分野における必要性を克服する。トリINFAの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、様々なトリ種の間で保存されているHA遺伝子のH5亜型の核酸配列を検出する(表1)。ヒトINFAの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、多数のヒト試料の間で保存されているマトリックス(M1)遺伝子の核酸配列を検出する(表2)。ヒトINFBの検出のために、本発明のプライマーおよびプローブのセットは、複数のヒト試料の間で保存されている非構造(NS1およびNS2)遺伝子の核酸配列を検出する(表3)。本明細書に記載された方法が、(任意の種についての)インフルエンザウイルスの任意のセグメントに発現される任意の遺伝子についての保存された核酸配列を検出するプライマーおよびプローブを開発するために使用することができることから、本発明の方法は、本明細書に記載されるトリおよびヒトのプライマーおよびプローブのセットに限定されないことが了解される。
【0012】
本発明の一態様では、試料中のインフルエンザウイルスを検出および定量化する方法が提供され、その方法は、配列番号1〜11から調製されたプライマーおよびプローブを用いて実行された動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行うことを含む。
【0013】
本発明の別の態様では、インフルエンザウイルスはトリインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブは、配列番号1〜5から調製され、トリINFAの亜型H5の両方の系統が検出および定量化される。トリインフルエンザA/H5ウイルスには、ユーラシア系統およびアメリカ系統の2系統がある。これら2系統由来のウイルスは遺伝的に異なる。全ての公知のヒトインフルエンザH5感染は、ユーラシア系統由来の高病原性ウイルスにより起こってきた。
【0014】
本発明のさらなる態様では、インフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブは、ヒトINFAのマトリックス遺伝子を検出および定量化するために配列番号6〜8から調製される。
【0015】
本発明のなお別の態様では、インフルエンザウイルスはヒトインフルエンザウイルスB型(INFB)であり、プライマーおよびプローブは、ヒトINFBの非構造遺伝子を検出および定量化するために配列番号9〜11から調製される。
【0016】
本発明のなおさらなる態様では、プライマーおよびプローブは、インフルエンザウイルスを検出および定量化するために動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイ(「kPCR」)で使用される。kPCRアッセイのために、試料は、ヒトまたは動物対象から得られたDNA試料のこともあるし、ヒトまたは動物対象から得られたRNA試料のこともある。出発試料がRNAである場合には、kPCRアッセイは動力学的逆転写酵素PCR(kRT−PCR)アッセイである。
【0017】
本発明の追加的な局面、長所および特徴は、部分的には以下の説明に示されるであろうし、部分的には以下を検討するときに、または本発明を実施するときに当業者に明らかになるであろう。
【0018】
発明の詳細な説明
定義:
下に提供される定義は、開示および請求された本発明の理解を助けるためにのみ示されるものであり、これらの定義および命名は限定を意図しない。
【0019】
状況が明らかに別のことを命じない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に使用する「a」、「an」および「the」という単数形には、複数の参照対象が含まれる。
【0020】
本明細書に使用する用語「流行」は、急速に広がり、ある地方または集団中の多数の固体を同時に冒すインフルエンザの激増を表す。
【0021】
本明細書に使用する用語「世界的大流行」は、広い地理的地域に広がり、集団の大部分を冒すインフルエンザの流行を表す。
【0022】
用語「抗原ドリフト」は、時間的に継続して起こるウイルスにおける小さな変化を表す。インフルエンザウイルスに関連して、抗原ドリフトは、初期のインフルエンザ株に対する抗体によって認識されることのできない新しいトリインフルエンザウイルス株を産生する。抗原ドリフトは、トリインフルエンザウイルスによく発生する。
【0023】
用語「抗原シフト」は、新しいウイルスを産生する、ウイルスにおける急激で主要な変化を表す。インフルエンザウイルスの状況内では、抗原シフトは新しいインフルエンザウイルス亜型を生じる。抗原ドリフトとは異なり、抗原シフトはめったに起こらない。
【0024】
用語「遺伝的ドリフト」は、小さな孤立した集団における遺伝子の出現頻度における、自然淘汰の結果ではないランダムなゆらぎを表す。
【0025】
用語「突然変異」は、ゲノムDNAの配列における任意の変化を表す。
【0026】
用語「相同性」は、以前のある時点における特徴の独特な遺伝可能な改変に起因する遺伝的関係を表す。この用語は、同一の起源を有する共通の祖先に由来するDNA、遺伝子または他の性質を表すために使用される。
【0027】
用語「保存された」は、配列、構造または機能における類似性を表すために使用される。
【0028】
用語「アライメント」は、系統学的分析のために相同な分子配列を並べるための任意に連なった技法を表す。
【0029】
用語「コンセンサス配列」は、相同配列の共通な特徴を規定する、通常はギャップおよび幾分の縮重を有する直鎖状に連なるヌクレオチドを表す。コンセンサス配列は、各位置が、多数の実際の配列を比べた場合に最も頻繁に見出される塩基(ヌクレオチド)を表す理想化された配列である。
【0030】
用語「ターゲット」は、インフルエンザA型ウイルスの核酸配列を表す。
【0031】
用語「試料」は、インフルエンザウイルスまたは他の呼吸障害もしくは呼吸疾患などの一つまたは複数の疾患状態の存在について試験することができる、任意の対象からの生物学的試料を表す。このような試料には、皮膚または任意の器官、血液、血漿、粘液、唾液など由来の組織試料が含まれることがある。
【0032】
用語「対象」は、試料を得ることができる生物学的生物を表す。本発明の状況内では、対象は通常ヒト患者であろうが、対象には、ブタ、ウマもしくは海洋哺乳動物などの任意の哺乳動物、または野鳥もしくは家禽などの非哺乳動物もまた含まれることがある。
【0033】
用語「増幅プライマー」は、cDNAまたはRNAターゲット分子に相補的なオリゴヌクレオチドであって、基質の3’−OH末端を提供するオリゴヌクレオチドを表し、その3’末端に任意のDNAポリメラーゼがこれから伸長するDNA鎖のヌクレオシドを5’から3’方向に付加することができる。
【0034】
用語「プローブ」は、増幅したターゲット核酸に適切な条件で選択的にハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを表す。プローブ配列は、コード鎖またはセンス鎖に対するセンス(すなわち相補的)配列(+)またはアンチセンス(すなわち逆相補的)配列(−)のいずれかとして確認される。動力学的PCR形式では、検出プローブは、5’−レポーター色素(R)および3’−クエンチャー色素(Q)を有するオリゴヌクレオチドからなることがある。蛍光レポーター色素(すなわちFAM(6−カルボキシフルオレセイン)など)は、典型的には3’−末端に局在する。検出プローブは、増幅および検出プロセスの間にTAQMAN(登録商標)プローブとして作用する。
【0035】
本明細書に使用する用語「核酸」は、デオキシリボ核酸(DNA)および適切な場合にはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチドを表す。この用語には、等価物としてヌクレオチドアナログから作られたRNAまたはDNAのアナログと、記載中の態様に適用できる一本鎖(センスまたはアンチセンス)および二本鎖ポリヌクレオチドとが含まれることもまた了解すべきである。発現配列タグ(「EST」、すなわち発現された遺伝子の一端または両端のいずれかを配列決定することによって発生した、通常は200から500ヌクレオチド長の小さなDNA配列片)、染色体、cDNA、mRNAおよびrRNAは、核酸と呼ぶことができる分子の代表例である。
【0036】
本明細書に使用する用語「オリゴヌクレオチド」は、ポリデオキシリボヌクレオチド(2−デオキシ−D−リボースを含有)、ポリリボヌクレオチド(D−リボースを含有)、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドである他の任意の種類のポリヌクレオチド、および非ヌクレオチド主鎖(例えばタンパク質核酸およびNEUGENE(商標)ポリマーとしてAnti−Gene Development Group(Corvallis, Oregon)から市販されている合成の配列特異的核酸ポリマー)または非標準結合を含有する他のポリマー(但し、このポリマーはDNAおよびRNAに見られるように塩基対形成および塩基のスタッキングを可能にするコンフィギュレーションの核酸塩基を含有する)を包含する。したがって、本明細書における「オリゴヌクレオチド」には、二本鎖および一本鎖DNA、ならびに二本鎖および一本鎖RNA、ならびにDNA:RNAハイブリッドが含まれ、公知の種類の改変オリゴヌクレオチド、例えば一つまたは複数の天然ヌクレオチドがアナログに置換されたオリゴヌクレオチド;ヌクレオチド間改変を含有するオリゴヌクレオチド、例えば非荷電結合を有するもの(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)、陰性荷電した結合(例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、および陽性荷電した結合(例えばアミノアルキルホスホルアミデート、アミノアルキルホスホトリエステル)、ペンダント部分を含有するもの、例えばタンパク質など(ヌクレアーゼ、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リシンなどを含む)、挿入剤(例えばアクリジン、ソラレンなど)を有するもの、キレート剤(例えば金属、放射性金属、ホウ素、酸化金属など)を含有するもの、およびアルキル化剤を含有するものなどもまた含まれる。用語「ポリヌクレオチド」と「オリゴヌクレオチド」との間に長さの意図された区別はなく、これらの用語は相互交換可能に使用される。これらの用語は、分子の一次構造のみを表す。本明細書に使用する、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関する記号は、IUPAC−IUBMB生化学命名合同委員会(http://www.chem.qmul.ac.uk/iupac/jcbnを参照されたい)に準拠する。
【0037】
オリゴヌクレオチドは、公知の方法により合成することができる。広くオリゴヌクレオチドを合成するための方法に関する、背景となる参考文献には、β−シアノエチルホスフェート保護基の使用に基づく5’−から3’−合成に関するものが挙げられる。例えば、de Napoli et al., GAZZ CHIM ITAL 114:65 (1984);Rosenthal et al., TETRAHEDRON LETT 24:1691 (1983);Belagaje and Brush, NUC ACIDS RES 10:6295 (1977)を参照されたく、溶液相の5’−から3’−合成を記載している参考文献には、Hayatsu and Khorana, J AM CHEM SOC 89:3880 (1957);Gait and Sheppard, NUC ACIDS RES 4: 1135 (1977);Cramer and Koster, ANGEW CHEM INT ED ENGL 7:473 (1968);およびBlackburn et al., J CHEM SOC PART C, 2438 (1967)が挙げられる。追加的に、Matteucci and Caruthers, J AM CHEM SOC 103:3185-91 (1981)は、オリゴヌクレオチドの調製へのホスホクロリダイトの使用を記載し;Beaucage and Caruthers, TETRAHEDRON LETT 22:1859-62 (1981)およびCaruthersらの米国特許第4,415,732号は、オリゴヌクレオチドの調製のためのホスホルアミダイトの使用を記載している。Smith, AM BIOTECH LAB, pp.15-24 (December 1983)は、自動固相オリゴデオキシリボヌクレオチド合成を記載しており、T. Horn and M.S. Urdea, DNA 5:421-25 (1986)は、ビス(シアノエトキシ)−N,N−ジイソプロピルアミノホスフィンを用いた固体支持DNAフラグメントのリン酸化を記載している。Smith、上記;Warner et al., DNA 3:401-11 (1984);およびT. Horn and M.S. Urdea, TETRAHEDRON LETT 27:4705-08 (1986)に引用された参考文献もまた参照されたい。
【0038】
用語「ヌクレオチド」および「ヌクレオシド」は、四つの天然DNAヌクレオチド塩基、すなわちプリン塩基であるグアニン(G)およびアデニン(A)ならびにピリミジン塩基であるシトシン(C)およびチミン(T)だけでなく、RNAプリン塩基であるウラシル(U)、非天然ヌクレオチド塩基であるイソ−Gおよびイソ−C、ユニバーサル塩基、縮重塩基、ならびに他の改変ヌクレオチドおよびヌクレオシドを含有するヌクレオシドおよびヌクレオチドを表す。縮重塩基は、オリゴヌクレオチドに導入するとGまたはAのいずれかと塩基対形成する二重縮重ピリミジン誘導体6H,8H−3,4−ジヒドロピリミド[4,5−c][1,2]オキサジン−7−オン(P)と、オリゴヌクレオチドに導入するとCまたはTのいずれかと塩基対形成する二重縮重プリン誘導体N6−メトキシ−2,6,−ジアミノプリン(K)とからなる。ユニバーサル塩基は、オリゴヌクレオチド二本鎖の融解挙動またはオリゴヌクレオチドの機能的生化学的有用性のどちらにもあまり影響せずに四つの通常の塩基のうち任意のものに置き換わる能力を示す塩基である。ユニバーサル塩基の例には、3−ニトロピロール、ならびに4−、5−および6−ニトロインドール、ならびに2−デオキシイノシン(dI)が挙げられ、この後者は、唯一の「天然」ユニバーサル塩基とみなされる。dIは全ての天然塩基に理論的に結合することができるが、dIは主にGとしてコードされる。
【0039】
ヌクレオチドおよびヌクレオシドに加える改変には、非限定的にプリンまたはピリミジン部分のメチル化またはアシル化、ピリミジン環から、またはプリン環系における一つもしくは複数の環から異なる複素環構造への置換、および例えばアセチル、ジフルオロアセチル、トリフルオロアセチル、イソブチリル、ベンゾイルなどの保護基を使用した一つまたは複数の官能基の保護が含まれる。改変ヌクレオシドおよび改変ヌクレオチドには、例えば一つまたは複数のヒドロキシル基がハライドおよび/もしくはヒドロカルビル置換基(後者の場合、典型的には脂肪族基)に置き換わるか、またはエーテル、アミンなどとして官能化された、糖部分への改変もまた含まれる。改変ヌクレオチドおよび改変ヌクレオシドの例には、非限定的に1−メチルアデニン、2−メチルアデニン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチル−アデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンチルアデニン、N,N−ジメチルアデニン、8−ブロモアデニン、2−チオシトシン、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、5−エチルシトシン、4−アセチルシトシン、1−メチルグアニン、2−メチルグアニン、7−メチルグアニン、2,2−ジメチルグアニン、8−ブロモ−グアニン、8−クロログアニン、8−アミノグアニン、8−メチルグアニン、8−チオグアニン、5−フルオロ−ウラシル、5−ブロモウラシル、5−クロロウラシル、5−ヨードウラシル、5−エチルウラシル、5−プロピルウラシル、5−メトキシウラシル、5−ヒドロキシメチルウラシル、5−(カルボキシヒドロキシメチル)ウラシル、5−(メチル−アミノメチル)ウラシル、5−(カルボキシメチルアミノメチル)−ウラシル、2−チオウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−(2−ブロモビニル)ウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、プソイドウラシル、1−メチルプソイドウラシル、キューオシン(queosine)、イノシン、1−メチルイノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、2−アミノプリン、6−ヒドロキシアミノプリン、6−チオプリン、および2,6−ジアミノプリンが挙げられる。
【0040】
用語「相補的」および「実質的に相補的」は、ヌクレオチドまたは核酸間の、例えば二本鎖DNA分子の二つの鎖間の、またはオリゴヌクレオチドプライマーと、配列決定または増幅される一本鎖核酸上のプライマー結合部位との間の塩基対形成を表す。相補的ヌクレオチドは、一般にAおよびT(またはAおよびU)、ならびにGおよびCである。本発明の状況内で、記載した特異的配列長は例示的であって限定するものではないこと、および同一のマップ位置にわたる配列であって、わずかに多少のある塩基数を有する配列は、記載した配列とターゲット上で同じ位置にハイブリダイゼーションするならば配列の同等物とみなされ、本発明の範囲内に属することを了解されたい。核酸がハイブリダイゼーションするために完全な相補性は必要ないことが了解されていることから、本明細書に開示するプローブおよびプライマーの配列は、特異的プライマーおよびプローブとして有用性を失うことなくある程度改変することができる。全般に、80%以上の相同性を有する配列が本発明の範囲内に属する。当技術分野で公知のように、相補的核酸配列および部分相補的核酸配列のハイブリダイゼーションは、ハイブリダイゼーション条件を調整してストリンジェンシーを増加または減少させることにより、すなわちハイブリダイゼーション温度または緩衝液の塩含量を調整することにより得ることができる。開示された配列の特異性を維持するためのこのような小さな改変およびハイブリダイゼーション条件の任意の必要な調整は、日常的な実験のみを必要とし、当技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0041】
用語「ハイブリダイゼーション条件」は、相補的配列の少なくとも一部に相互にアニーリングさせるために十分な時間、温度、およびpH、ならびに反応物および試薬の必要量および濃度の条件を意味することを意図する。当技術分野に周知であるように、ハイブリダイゼーションを達成するために必要な時間、温度およびpH条件は、ハイブリダイゼーションされるオリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーのサイズ、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーとターゲットとの間の相補度、およびハイブリダイゼーション反応混合物中の他の物質の存在に依存する。各ハイブリダイゼーション段階に必要な実際の条件は、当技術分野において周知であるか、または過度に実験せずに決定することができる。ハイブリダイゼーション条件には、プライマー、プローブ、および他の構成要素に関して適合性の緩衝液、すなわち化学的に不活性な緩衝液であって、それでもなお相補的塩基対の間のハイブリダイゼーションを可能にする緩衝液もまた含まれ、これを使用することができる。このような緩衝液の選択は、当業者の知識の範囲内である。
【0042】
試料からのDNAおよびRNAターゲット配列の単離に、異なるハイブリダイゼーション条件が必要なことは、当業者に了解されている。例えば、試料が当初アルカリ緩衝液中で崩壊されるならば、二本鎖DNAが変性し、RNAは破壊される。対照的に、試料がSDSおよびプロテイナーゼKを有する中性緩衝液中で収集されるならば、DNAは二本鎖のままで、プライマーおよび/またはプローブとハイブリダイゼーションすることができず、RNAは分解から保護される。
【0043】
用語「支持体」および「基質」は、オリゴヌクレオチドプローブもしくはプライマー、分析物分子、または他の化学的実体をアンカーすることのできる任意の固体表面または半固体表面を表すために相互交換可能に使用される。適切な支持体物質には、非限定的に、典型的には固相化学合成に使用される支持体が含まれ、例えばビーズ、シートおよびマイクロタイターウェルもしくはマイクロタイタープレートに使用するためのポリマー物質およびプラスチック(例には、非限定的にポリスチレン、ポリスチレンラテックス、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートおよびジビニルベンゼン−スチレン系ポリマーが含まれる);ポリマーゲル;SEPHAROSE(登録商標)などのアガロース;SEPHADEX(登録商標)などのデキストラン);ニトロセルロースなどのセルロース;セルロースポリマー;多糖;シリカおよびシリカ系物質;ガラス(特に制御孔ガラス(controlled pore glass))および機能性ガラス;セラミック、ならびに金属が含まれる。
【0044】
本明細書に使用する用語「ラベル」は、検出可能な(好ましくは定量化可能な)シグナルを提供するために使用することできる任意の原子または分子であって、共有結合または非共有相互作用により(例えばイオン結合もしくは水素結合を介して、または固定化、吸着などにより)核酸またはタンパク質に結びつくことができる任意の原子または分子を表す。ラベルは、広くは蛍光、化学発光、放射能、比色分析、質量分析、X線回折または吸収、磁気、酵素活性などにより検出可能なシグナルを提供する。ラベルの例には、発蛍光団、発色団、放射性原子(特に32Pおよび125I)、高電子密度試薬、酵素、および特異的結合パートナーを有するリガンドが含まれる。酵素は、典型的にはその活性により検出される。
【0045】
本明細書に使用する用語「ターゲット増幅」は、核酸ターゲットの数十億のコピーを産生することができる酵素介在性手順を表す。当技術分野において公知の酵素介在性ターゲット増幅の例には、PCR、「NASBA」(nucleic acid-sequence based amplification)、「TMA」(transcription-mediated amplification)、「SDA」(strand displacement amplification)、および「LCR」(ligase chain reaction)が挙げられる。
【0046】
最も広く使用されているターゲット増幅手順はPCRであり、これは、DNAの増幅についてMullinsらによって米国特許第4,683,195号に、そしてMullisによって米国特許第4,683,202号に最初に記載された。PCR手順は、当業者に周知である。PCR技法では、DNAの試料は、DNA二本鎖の各鎖の3’末端に相補的なように調製されたモル過剰の二つのオリゴヌクレオチドプライマー(それぞれ10〜30塩基対);モル過剰の未結合ヌクレオチド塩基(すなわちdNTP);およびオリゴヌクレオチドプライマーおよびdNTPからのDNA形成を触媒するDNAポリメラーゼ(好ましくは熱に安定なTaqポリメラーゼ)を有する溶液中で混合される。二つのプライマーのうち一方は、変性したDNA分析物の一方の鎖の3’末端に5’→3’方向に結合するフォラードプライマーであり、もう一方は、変性したDNA分析物のもう一方の鎖の3’末端に3’→5’方向に結合するリバースプライマーである。二本鎖DNAを一本鎖DNAに変性させるために、この溶液は94〜96℃に加熱される。この溶液を冷却すると、プライマーは分離された鎖に結合し、DNAポリメラーゼは、dNTPをプライマーに繋げることによって分析物の新しい鎖を触媒する。このプロセスを繰り返し、プライマーから合成された伸長産物をその相補体から分離すると、各伸長産物は、もう一方のプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。言い換えると、フォワードプライマーから合成された伸長産物が分離されると、リバースプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。同様に、リバースプライマーから合成された伸長産物が分離されると、フォワードプライマーから合成された相補的伸長産物のためのテンプレートとして作用する。このように、プライマー間のDNA領域は、プロセスを繰り返す度に選択的に複製される。増幅中の配列がサイクルが終わる度に倍増することから、プロセスを数時間繰り返した後で10億コピーの理論的増幅を実現することができ、その結果、PCRを用いてごく少量のDNAを比較的短時間で増幅することができる。
【0047】
用語「増幅配列」、「増幅産物」および「アンプリコン」は相互交換可能に使用され、PCRの最終産物である一本鎖配列を表す。
【0048】
PCR用の出発物質がRNAである場合に、相補的DNA(「cDNA」)は逆転写によってRNAから作られる。次いで、結果として得られたcDNAは、上記PCRプロトコールを用いて増幅される。逆転写酵素は、レトロウイルスに見出される、例えばテンプレートとしてのmRNAまたはssRNA配列などのRNA配列からDNAの相補的一本鎖を合成することのできる酵素として当業者に知られている。この酵素は、遺伝子工学に使用され、RNA(すなわち例えばmRNAまたはssRNA)の精製調製物から特異的cDNA分子が産生される。RNA産物を増幅するために使用されるPCRは、逆転写酵素PCRまたは「RT−PCR」と呼ばれる。
【0049】
用語「動力学的PCR(kPCR)または「動力学的RT−PCR」(kRT−PCR)は、それぞれ「リアルタイムPCR」および「リアルタイムRT−PCR」とも呼ばれるが、同一または異なるオリゴヌクレオチド基質への蛍光色素分子およびクエンチャー部分の連結により発生する蛍光シグナルによるPCR産物の検出を表す。kPCRおよびkRT−PCRに使用されるなじみ深いプローブの例には、以下のプローブが挙げられる:TAQMAN(登録商標)プローブ、分子ビーコンプローブ、SCORPION(登録商標)プローブ、およびSYBR(登録商標)Greenプローブ。簡潔には、TAQMAN(登録商標)プローブ、分子ビーコン、およびSCORPION(登録商標)プローブは、それぞれプローブの5’末端に結びついた蛍光レポーター色素(「フルオル(fluor)とも呼ばれる)と、プローブの3’末端に連結したクエンチャー部分とを有する。ハイブリダイゼーションしていない状態では、フルオルおよびクエンチ分子が近接していることから、プローブからの蛍光シグナルの検出が阻害され、プローブが結合しているテンプレートをポリメラーゼが複製するPCRの間には、ポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性がプローブを切断することによって、複製サイクルの度に蛍光が増加する。SYBR(登録商標)Greenプローブは、二本鎖DNAに結合し、励起する際に発光することから、PCR産物が蓄積するにしたがって蛍光が増加する。
【0050】
用語「シングルプレックス」は、任意の他のアッセイと同時に実施されない単一アッセイを表す。シングルプレックスアッセイには、連続的に実施される個別のアッセイが含まれる。
【0051】
用語「マルチプレックス」は、同時に実施される複数のアッセイを表し、このアッセイでは検出ステップおよび分析ステップは広くは平行して実行される。本発明の状況内で、マルチプレックスアッセイにはプライマーおよびプローブを単独で、または追加のプライマーおよびプローブと共に使用して、例えばインフルエンザウイルスを一つまたは複数の追加のウイルスと共に同定することが含まれるものである。本発明の状況内では、内部対照および/または追加の呼吸器ウイルスのためのプライマーおよびプローブをINFAならびにINFAのプライマーおよびプローブと一緒に1回のマルチプレックスアッセイで使用することができることが了解されている。
【0052】
以下は、請求された本発明のいくつかの好ましい態様および実施例の説明である。追加的な態様、および開示された態様の機能、目的または構造における改変は、本出願の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0053】
本発明のトリおよびヒトINFAならびにヒトINFBの増幅プライマーおよび検出プローブは、INFAおよびINFB配列の間に見出される高い縮重を説明するために複数の配列をアライメントすることによって、そして適切であれば、その配列に縮重プローブおよび/またはユニバーサルプローブを組み込むことによって得られるコンセンサス配列である。
【0054】
トリインフルエンザA型のプライマーおよびプローブセット
本発明の一態様では、トリINFAのH5亜型を増幅および検出するトリINFAの増幅プライマーおよび検出プローブが提供される。H5プライマーおよびプローブは、55個のトリおよびヒトINFA H5配列のアライメントに基づき設計された(表1)。H5亜型を選択したのは、これらのトリ亜型がブタなどの中間宿主内で再編成せずに、種を飛び越えヒトに感染する能力が原因である。HA遺伝子配列の最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、HA領域を通じて見出される高い縮重を適応させるようにトリH5のプライマーおよびプローブセットを設計した。本発明のH5プライマーおよびプローブの特異性は高い特異性を有し、H5トリINFA HA亜型を残りの16個のトリINFA HA亜型から区別することができる。
【0055】
ヒトインフルエンザA型のプライマーおよびプローブセット:
本発明の別の態様では、ヒトINFAのM1マトリックス遺伝子配列を増幅および検出するヒトINFA増幅プライマーおよび検出プローブが提供される。INFAマトリックスプライマーおよびプローブは、ヒトINFAの13亜型からの414個のヒトマトリックスタンパク質遺伝子配列のアライメントに基づき設計された。マトリックスの最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、ヒトINFAゲノムを通じて見出される高い縮重を適応させるようにヒトINFAプライマーおよびプローブセットを設計した。プライマーおよびプローブをそのようなものとして設計することによって、本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブは、公知のヒトINFA亜型の全てを検出することができる。ヒトINFAマトリックス配列をトリINFAマトリックス配列とアライメントすることによって、ヒトINFAのプライマーおよびプローブを使用して、トリINFAも同様に増幅および検出することができる。
【0056】
実施例4に、kRT−PCRを使用したINFAマトリックスアッセイに本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブを使用して、組織培養抽出液をH1N1およびH5N2について試験することを説明する。全ての公知のヒトINFA亜型を検出および増幅するためにINFAマトリックスアッセイを使用することができることから、実施例4はINFA亜型を検出するためにINFAマトリックスアッセイを使用することを単に例示しているだけであり、H1N1およびH5N2亜型のみを検出するためにこのアッセイを使用することに全く限定されないと解されるであろう。図2(a)から2(h)(実施例6)にもまた、インフルエンザH1、H3、H4、H6、H7、H8およびH9亜型を検出するために本発明のヒトINFAマトリックスプライマーおよびプローブを使用することを説明する。
【0057】
ヒトインフルエンザB型のプライマーおよびプローブのセット:
本発明のさらなる態様では、ヒトINFBの非構造遺伝子(NS1およびNS2)を増幅および検出するヒトINFB増幅プライマーおよびプローブが提供される。INFB構造遺伝子のプライマーおよびプローブは、117個のヒトセグメント8(NS1およびNS2)遺伝子配列のアライメントに基づき設計された(表3)。上記のトリおよびヒトINFAのプライマーおよびプローブのように、非構造遺伝子配列の最も高度に保存された領域を選択することによって、そして適切であれば縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を含めることによって、INFB Bゲノムを通じて見出される高い縮重を適応させるようにヒトINFBのプライマーおよびプローブのセットを設計した。
【0058】
用途
本発明のプライマーおよびプローブは、トリであれヒトであれ対象がINFAまたはINFBの特定の株または亜型に感染しているかどうかを判定するための診断アッセイに有用である。このようなアッセイには、臨床試料に使用するための任意の核酸増幅試験(NAATS)が含まれ、この試験には、非限定的にPCR、RT−PCR、kPCR、kRT−PCR、サザンブロット分析およびリニア増幅法などのNAATが含まれる。本発明の好ましい態様では、このプライマーおよびプローブは、任意のヒトまたは動物対象からINFAおよびINFBを検出するためのkPCRアッセイに使用される。
【0059】
本発明のプライマーおよびプローブは、単一のINFAまたは単一のINFBを検出するために単一の試料を試験するためのシングルプレックスアッセイに使用することができるし(実施例4は、INFAを検出および定量化するためのシングルプレックスアッセイに本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す)、これらは、一つまたは複数のINFAおよびINFBについてヒト試料を試験するマルチプレックスアッセイに使用することができる(実施例5、表7はINFAおよびINFAを検出および定量化するマルチプレックス形式に本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す)。INFAおよび/またはINFBのプライマーおよびプローブは、他の増幅プライマーおよび検出プローブと共にマルチプレックスアッセイに使用して、パラインフルエンザ1、2、3および4、RSV AおよびRSV B、メタニューモウイルス、アデノウイルス、クラミジアニューモニエ(Chlamydia pneumoniae)、マイコプラズマニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、ならびにレジオネラニューモフィリア(Legionella pneumophilia)などの他の呼吸器生物と一緒にINFAおよび/またはINFBの同時検出に供することができる(実施例5、表8に、INFAおよびINFBを平行して検出および定量化するためのマルチプレックス形式に本発明のプライマーおよびプローブを使用することを示す。ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス(paraflu)、および呼吸器合胞体ウイルス(「RSV」)などの追加的なウイルスの存在は、本発明のプライマーおよびプローブの特異性に変化をもたらさなかった。
【0060】
本発明のプライマーおよびプローブには、臨床家によって、インフルエンザの症状に苦しむ患者からヒトおよびトリインフルエンザウイルスを検出するために使用されるキットもまた含まれることがある。このようなキットには、トリINFA、ヒトINFAまたはヒトINFBを検出するための一つまたは複数のプライマーおよびプローブセットが含まれるものである。
【0061】
上に言及したように、本明細書に開示されたプライマーおよびプローブは、対象がINFAまたはINFBに感染しているかどうかを判定するために設計されうるプライマーおよびプローブを例示することから、本発明の別の態様では、インフルエンザの複数の株および亜型から得られるコンセンサス配列を含む、インフルエンザウイルスの検出用のプライマーおよびプローブを調製し、適切ならばその配列に縮重塩基および/またはユニバーサル塩基を組み込むための方法を提供する。
【0062】
本発明を、その好ましい特定の態様と共に説明したが、前述の説明および以下の実施例は、例示を意図し、本発明の範囲を限定するものではないことを了解されたい。他の局面、利点および本発明の範囲内の改変は、本発明が属する技術分野の技術者に明らかなものである。
【0063】
本明細書に言及される全ての特許および刊行物は、その全体が参照により組み入れられる。
【0064】
以下の例は、本発明の組成物をどのように作製および使用するかの完全な開示および説明を当業者に提供するために出されたものである。この実施例は、本発明の非限定的な例として意図される。
【0065】
実験の部
本発明の実施は、別に示さない限り当技術分野の技術の範囲内の分子生物学、生化学、微生物学などの通常の技法を使用するものである。このような技法は、文献に十分に解説されている。例えば、Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd ed. (1989);OLIGONUCLEOTIDE SYNTHESIS (M. J. Gait, ed., 1984);THE PRACTICE OF PEPTIDE SYNTHESIS (M. Bodanszky and A. Bodanszky, 2nd ed., Springer-Verlag, New York, NY, 1994);NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION (B. D. Haines & S. J. Higgins, eds., 1984);およびMETHODS IN ENZYMOLOGY (Elsevier, Inc., Burlington, MA)を参照されたい。
【0066】
以下の実施例において、数(例えば量、温度など)に関する正確さを確実にするために努力されてきたが、説明された実験を行うときは実験誤差および偏差を考慮すべきである。別に示さない限り、部は重量部であり、温度はセ氏であり、圧力は大気圧または大気圧付近であり、全ての実験成分は市販の入手源から得られる。
【0067】
本発明のプライマーおよびプローブのコンセンサス配列を決定するために使用される配列は、Influenza Sequence Databaseから得られた。インターネットのwww.flu.lanl.govから入手できるMacken et al., OPTIONS FOR THE CONTROL OF INFLUENZA IV, pp. 103-106 (A.D.M.E. Osterhaus, N. Cox & A.W. Hampson (eds.) Amsterdam: Elsevier Science, 2001)である。Vector NTI AlignXソフトウェア(Invitrogen Corp., Carlsbad, CA)を相同配列のアライメントに使用した。
【0068】
以下の表記法を実施例に使用する:「AV」はトリを表し;「INFA」はインフルエンザA型を表し;「INFB」はインフルエンザB型を表し;「H5」はトリINFAのH5亜型を表し;「M」はマトリックスタンパク質遺伝子(M1およびM2)を表し;「Seg8」は非構造タンパク質遺伝子(NS1およびNS2)を表し;「Fw」はフォワードプライマーを表し;「Rv」はリバースプライマーを表し;「P」はプローブを表し;「S」はセンス鎖を表し;かつ「AS」はアンチセンス鎖を表し;かつ「Ct」はサイクル閾値(バックグラウンドを超えて有意に増大した蛍光が最初に検出されるサイクル数)を表す。
【0069】
以下の実施例に使用されるkRT−PCRアッセイは、MX3000P(商標)Real−Time PCR System(Stratagene, La Jolla, CA)で最大90試料について約2.4時間かかる運転時間で行われた。各kRT−PCRの運転物は、陽性および陰性対照ならびに定量化されたINFA RNAウイルス培養抽出物を系列希釈したものからなる定量用標準を含有した。被験領域(例えば、どのアッセイが行われるかに応じて、トリH5領域、トリもしくはヒトマトリックス遺伝子領域、またはヒトセグメント8領域)からクローニングされたフラグメントから発生した定量化されたRNA転写物を用いて、標準に値を割り付けた。値を割り付けられたウイルス抽出物標準を使用して、各アッセイについて実現されたサイクル閾値(Ct)を比較した。各アッセイ物は内部対照(IC)を含有し、内部対照を抽出中に試料に添加し、阻害剤の効率および存在についてアッセイ手順を評定した。アッセイの特異性は、INFA亜型のパネル、一般的なヒト呼吸器病原体のパネル、ならびに正常なヒト呼吸器組織および呼吸液を試験することによって確認した。
【0070】
実施例1
トリインフルエンザH5亜型
増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表1は、トリINFAのH5亜型のHA遺伝子配列を増幅および検出するように設計された増幅プライマーおよび検出プローブセットを確認するものである。マップ上の位置は、アクセッションナンバーAJ867074を参照し、配列の設計は、55個のトリおよびヒトINFA H5配列のアライメントに基づく。
【0071】
【表1】
【0072】
実施例2
ヒトインフルエンザA型M1マトリックス遺伝子の増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表2に、ヒトおよびトリINFAのM1遺伝子配列を増幅および検出するために設計された増幅プライマーおよび検出プローブを確認する。マップ上の位置はアクセッションナンバーAY340090を参照し、配列の設計は414個のトリおよびヒトINFAマトリックス配列のアライメントに基づく。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例3
ヒトインフルエンザB型セグメント8の増幅プライマーおよび検出プローブの配列
表3に、ヒトINFBのセグメント8(NS1およびNS2)遺伝子配列を増幅および検出するために設計された増幅プライマーおよび検出プローブを確認する。マップはアクセッションナンバーAB120439を参照し、配列の設計はヒトINFB NS1およびNS2配列117個のアライメントに基づく。
【0075】
【表3】
【0076】
実施例4
INFAのシングルプレックスマトリックスアッセイ
シングルプレックスアッセイでウイルスRNA抽出物の試料からH1N1およびH5N2を検出および増幅するために、実施例2のINFAマトリックス遺伝子のプライマーおよびプローブをkRT−PCRアッセイに使用した。H1N1についてのINFAマトリックスアッセイの結果を表4に示し、H5N2についてのINFAマトリックスアッセイの結果を表5に示す。表4および5に示すINFAマトリックスアッセイの結果は、このプライマーおよびプローブが非常に小さなコピー数の試料からH1N1およびH5N2をうまく検出および増幅したことを実証している。
【0077】
表6に、異なるコピー数を有する試料に関するINFAマトリックスアッセイについての精度および直線性の計算を概要する。表6に示すように、特定のINFA亜型のコピーを100個以上有する試料についての検出率は100%である。INFAマトリックスアッセイについての検出プロファイルは、図1にグラフで示す。
【0078】
【表4】
【0079】
【表5】
【0080】
【表6】
【0081】
実施例5
マルチプレックスアッセイ
表7に、INFAおよびINFBについてスクリーニングするマルチプレックスアッセイの結果を示し、表8に、INFAおよびINFBについてスクリーニングするマルチプレックスアッセイの結果を示し、特に表8に、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルスおよびRSVなどの追加のウイルスの存在が本発明のインフルエンザのプライマーおよびプローブの特異性に変化をもたらさないことを示す。以前に注記したように、全てのアッセイは陰性対照および陽性対照と同時に実行される。
【0082】
【表7】
【0083】
【表8】
【0084】
実施例6
ウイルス原液に関するトリINFAアッセイの比較分析
本発明のINFAトリH5アッセイおよびマトリックスアッセイ(実施例1、2および4)を、USDA−ARSにより標準化されたトリH5アッセイおよびマトリックスアッセイと比較した。INFAアッセイは、同じトリウイルス原液セットに関して二つのアッセイ形式で行った:(1)INFA亜型パネルから単離された核酸の一連の10倍希釈物(ヘマグルチニンH1、H3、H4、H5、H6、H7、H8およびH9亜型からの十分に特徴付けされたウイルス単離物を含有した)を用いた汎INFAアッセイ形式;ならびに(2)定量化された標準(H5N2単離物由来ウイルス抽出物の希釈物から作製した)を用いたH5特異的アッセイ形式。
【0085】
本発明のINFAマトリックスアッセイおよびH5特異的アッセイは、実施例1の前の考察に上記したように行った。汎INFAマトリックスアッセイは、マトリックス遺伝子の約202bp(塩基対)領域をターゲティングし、H5特異的アッセイは、ヘマグルチニン遺伝子由来の約180bpのフラグメントをターゲティングした。以前に言及したように、本発明のINFAマトリックスのプライマーおよびプローブは、現在公知の全てのINFA亜型配列を検出するように設計されている。
【0086】
USDA−ARSのINFAマトリックスアッセイおよびH5特異的アッセイは、以下のサーモサイクラーでワンステップkRT−PCRアッセイを使用して行った:INFAマトリックスアッセイにはBio−Rad Chromo4(商標)(Hercules, CA)およびH5特異的アッセイにはCepheid SMARTCYCLER(登録商標)(Sunnyvale, CA)(Spackman et al., J. CLIN. MICROBIOL. 40(9):3256-3260を参照されたい)。
【0087】
本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより検出された最低レベルのウイルスRNA(LoD)を、以下のメンバー、すなわちH1、H3、H4、H5、H6、H7、H8およびH9を含めたINFA亜型パネルから高力価のウイルス原液の系列希釈物を試験することによって決定した。H5トリINFAアッセイの相対感度は、H5N2インフルエンザ単離物の高力価ウイルス原液を1.6×106から30コピーまで系列希釈したものを定量化することによって決定した。H5N2標準には、クローニングしたマトリックスフラグメントからのRNA転写物に対比して値を割り付けた。
【0088】
汎INFAマトリックスアッセイの結果を図2(a)〜2(h)にグラフで示し、各回のアッセイの終点感度の結果を表9に示す(本発明のアッセイは、「Bayer」アッセイとして図から確認され、Bayerは、本発明の譲受け人である)。図2(a)〜2(h)に、表9のデータが獲得された系列希釈物を示す(図2(e)はH6N2亜型についての実行の1回だけを示す)。実行された10回のアッセイのうち8回で、具体的にはH1N1、H3、H5N2、H7、H8、H9N2のアッセイ、および3回のH6N2アッセイのうち2回で、本発明のINFAマトリックスアッセイが、USDA−ARS INFAマトリックスアッセイよりも高い感度(すなわち低いLoD)を示したことを、表9は明らかに示している。全般的に、本発明の汎INFAマトリックスアッセイは、亜型パネルの希釈系列を通じて最低のLoDを有した(1から30倍の改善)。加えて、本発明の汎INFAマトリックスアッセイがUSDA−ARS汎INFAマトリックスアッセイよりも約50から100倍高い希釈でウイルスのレベルを定量化したH1亜型を例外として、大部分の亜型の定量化は類似していた。
【0089】
【表9】
【0090】
H5特異的アッセイの結果を図3および図4に示す。本発明のH5トリINFAアッセイが反応1回あたり30コピーまで検出および定量化したのに対して、USDA−ARSのH5−トリINFAアッセイは反応1回あたり80コピーまで定量化したことを図3に示すが、これは、本発明のH5−トリINFAアッセイが、USDA−ARSのH5−トリINFAアッセイよりも低いCt値でH5N2(アメリカ系統)を検出できることを示す。図4に、アーマード(armored)RNAユーラシア系統配列に関してH5−トリINFAアッセイおよびUSDA−ARS H5−トリINFAアッセイを比較したときに、本発明のH5−トリINFAアッセイが104および103コピー数の希釈物を検出したが、USDA−ARSのH5トリINFAアッセイはこれらの希釈を検出しなかったことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のINFAマトリックスアッセイについての検出プロファイルを示す図である。
【図2(a)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(b)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(c)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(d)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(e)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(f)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(g)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図2(h)】本発明の汎INFAマトリックスアッセイおよびUSDA−ARSにより使用された汎INFAマトリックスアッセイを用いてINFA亜型のパネルについてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析の結果を示す図である。
【図3】本発明のトリH5特異的アッセイおよびUSDA−ARSにより使用されたトリH5特異的アッセイを用いた、H5N2亜型(アメリカ系統)についてスクリーニングされた同じトリウイルス原液の比較分析を示す図である。
【図4】本発明のトリH5特異的アッセイおよびUSDA−ARSによるトリH5特異的アッセイを用いた、同じアーマードRNA(ユーラシア系統)の比較分析の結果を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜11から調製されるプライマーおよびプローブを用いて実行される動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行うことを含む、試料中のインフルエンザウイルスを検出および定量化する方法。
【請求項2】
インフルエンザウイルスが、トリインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号1〜5から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プライマーおよびプローブが、トリINFAの亜型H5を検出および定量化する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
インフルエンザウイルスが、ヒトインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号6〜8から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プライマーおよびプローブが、ヒトINFAのマトリックス遺伝子を検出および定量化する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
インフルエンザウイルスが、ヒトインフルエンザウイルスB型(INFB)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号9〜11から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
プライマーおよびプローブが、ヒトINFBの非構造遺伝子を検出および定量化する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
プライマーおよびプローブが、インフルエンザウイルスを検出および定量化するための動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイ(kPCR)に使用される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
試料が、ヒトまたは動物対象から得られたDNA試料である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
試料が、ヒトまたは動物対象から得られたRNA試料である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
kPCRアッセイが、動力学的逆転写酵素PCR(kRT−PCR)アッセイである、請求項10記載の方法。
【請求項1】
配列番号1〜11から調製されるプライマーおよびプローブを用いて実行される動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイを行うことを含む、試料中のインフルエンザウイルスを検出および定量化する方法。
【請求項2】
インフルエンザウイルスが、トリインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号1〜5から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
プライマーおよびプローブが、トリINFAの亜型H5を検出および定量化する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
インフルエンザウイルスが、ヒトインフルエンザウイルスA型(INFA)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号6〜8から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
プライマーおよびプローブが、ヒトINFAのマトリックス遺伝子を検出および定量化する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
インフルエンザウイルスが、ヒトインフルエンザウイルスB型(INFB)であり、プライマーおよびプローブが、配列番号9〜11から調製される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
プライマーおよびプローブが、ヒトINFBの非構造遺伝子を検出および定量化する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
プライマーおよびプローブが、インフルエンザウイルスを検出および定量化するための動力学的ポリメラーゼ連鎖反応アッセイ(kPCR)に使用される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
試料が、ヒトまたは動物対象から得られたDNA試料である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
試料が、ヒトまたは動物対象から得られたRNA試料である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
kPCRアッセイが、動力学的逆転写酵素PCR(kRT−PCR)アッセイである、請求項10記載の方法。
【図1】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図2(e)】
【図2(f)】
【図2(g)】
【図2(h)】
【図3】
【図4】
【図2(a)】
【図2(b)】
【図2(c)】
【図2(d)】
【図2(e)】
【図2(f)】
【図2(g)】
【図2(h)】
【図3】
【図4】
【公表番号】特表2009−535068(P2009−535068A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514440(P2009−514440)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/067153
【国際公開番号】WO2008/140513
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/067153
【国際公開番号】WO2008/140513
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507269175)シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレーテッド (39)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS HEALTHCARE DIAGNOSTICS INC.
【Fターム(参考)】
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