説明

ヒトカテプシンGのためのDNAに基づくアプタマー

本研究は、選択性の高いレベルによって特徴づけられるカテプシンGの非ペプチド性阻害剤の識別に向けられ、そしてこれは炎症発生及び凝血促進性状態の治療及び予防において効果的に使用されうる。本発明に従うカテプシンG-阻害アプタマーは、少なくとも60ヌクレオチドの鎖長を有し且つ効率的な塩基対化に実質的にふされていない直鎖DNA又はポリヌクレオチド配列からなる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カテプシンGは、好中球及び単球のアズール顆粒中に一般に見られるセリンプロテアーゼである。それは、エラスターゼ及びプロテイナーゼ3と一緒にキモトリプシンファミリーに属し、及び動物において広範な肺組織損傷を生じる細胞外マトリックスタンパク質、例えば、エラスチン、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンを開裂する。
【0002】
カテプシンGはまた、血液凝固において役割を果たす;事実、それは、凝固の白血球イニシエーションの代替経路に関与し、及び凝固X因子及びV因子を活性化することによって、それはトロンビン受容体を開裂し且つ潜在的に調節することができ、及びそれはイン ビトロ(in vitro)で血小板を活性化しうる。それはまた、アンギオテンシンIをアンギオテンシンンIIに転化することができて、小さい開裂のみが分子のどこかで生じる。
【0003】
カテプシンGは細菌及び真菌を殺すが、この特性はその活性に関係しないことが示され、事実、その開裂から得られたペプチドが直接の抗菌性特性を示した。それはまた、壊死の組織を減成することができ、それ故に肺気腫、気管支炎、嚢胞性線維症及び乾癬のような幾つかの炎症性疾病に関連する。
【0004】
カテプシンGの酵素活性は、2つのタイプのタンパク質プロテイナーゼ阻害剤、所謂「標準の(canonical)」阻害剤及びセルピン(serpin)、によって調節される。前者は、比較的小さなタンパク質(29〜190アミノ酸)であり且つタイトバインデング(強く結合する)可逆的阻害剤である;それらのうちに、粘液プロテイナーゼ阻害剤(MPI)、エグリンC(eglin c)及びアプロチニンがある。セルピンは、カテプシンGの触媒部位とそれらの反応部位ループとの間の非加水分解性アシル結合の形成により、それらの同族タンパク質と不可逆性複合体(complex)を形成する、より大きなタンパク質(400〜450残基)である。セルピンのうちで、1-アンチキモトリプシンが最も重要である:このファミリーの阻害剤は選択的でない。何故ならば、それらは、他のキモトリプシンに結合し且つ阻害しうるからである。その上、イン ビボ(in vivo)でのそれらの安定性及び分布は、それらのペプチドの性質によって影響される。
【0005】
幾つかの合成阻害剤は、1,2,5-チアジアゾリジン-3-オン-1,1-ジオキシド又は1,3-ジアゼチジン-2,4-ジオンを含むペプチド模倣的足場(peptidomimetic scaffolds)から出発して見つけられ、そしてそれらのうちの幾つか(特に、芳香側鎖を有するそれら)が、カテプシンGについて著しく特異的活性を示した。しかしながら、それらは、酵素と非可逆性アシル複合体を形成する。
【0006】
最近、完全長及び開裂した染色体DNAの両方が、イン ビトロ(in vitro)及びイン ビボ(in vivo)でカテプシンGを結合し且つ阻害しうることが示された。30 bpDNAフラグメントは、生理学的条件でカテプシンGを堅く結合し、及びその減少するカチオン性特徴に従い、プロテイナーゼ3と比較して、ヒト好中球エラスターゼへの親和性のオーダーの減少を示した。
【0007】
特に、欧州公開特許公報775745号は、約40ヌクレオチドの鎖長を有し(且つどんな場合も55ヌクレオチドよりも少ない)且つ炎症発生及び凝血促進性状態(procoagulant condition)の治療及び予防において有益であるG-対繰り返し単位を含むオリゴヌクレオチドカテプシンG-阻害アプタマーを記載する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本研究は、選択性の高いレベルによって特徴づけられるカテプシンGの非ペプチド性阻害剤の識別に主に向けられ、すなわちこれは上記状態の治療及び予防において及びまた遺伝病、変性疾患、DNA損傷、腫瘍形成及び/又は皮膚病のそれにおいて、より効果的に使用されうる。
【0009】
抗体のように、DNA分子は、それらの配列に依存して様々な三次元構造を取りうる。これらのうちの幾つが、標的に結合することに関連しうる。本研究において、我々は、カテプシンGへの高い親和性を示すssDNA又はRNA分子(アプタマーと呼ばれる)を選択し且つ識別するために、SELEX(Systematic evolution of ligands by exponential enrichment)と呼ばれる方法を適用した。
【0010】
アプタマー技術は、オリゴヌクレオチドのランダムプールにおける巨大な構造的多様性を生成する能力を、選択された配列を増幅するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の能力と組み合わせる。この技術は、オリゴヌクレオチドの大きな、ランダム配列プールのスクリーニングを含み、及びそれらが多くの三次構造を取り、そのうちの幾つかは、標的分子に対して望ましい結合又は触媒能力を有しうるという事実に基づく。
【0011】
阻害は該選択によって要求されないけれども、多くの場合、これらリガンドは、標的とされるタンパク質の生物学的機能を直接的に阻害する。これらの場合、リガンドの阻害機能はおそらく、それらの結合部位とタンパク質の機能的領域とのオーバーラップによる。
【0012】
我々の研究の結果は、我々に選択性の特に高いレベルを有するカテプシンG-阻害アプタマーの新しいクラスを定義することをもたらした。本発明の新しいカテプシンG-阻害アプタマーは、少なくとも60ヌクレオチド、好ましくは少なくとも70の鎖長を有し且つ分子間及び/又は分子内塩基対化に実質的にふされていないことによって特徴付けられるシングル若しくはダブルストランド直鎖DNA又はポリヌクレオチド配列である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の最良の実施態様によれば、DNA配列は、70〜120ヌクレオチド、好ましくは70〜100ヌクレオチド、さらにより好ましくは80〜100ヌクレオチドの鎖長を有しうる。本発明に従う該配列はシングル又はダブルストランドでありうるけれども、シングルストランド配列が好ましい。好ましくは、本発明に従う該配列はまた、約25〜50%、好ましくは35〜45%のグアニンモル含量を有する及び/又は約1.0〜2.0、好ましくは1.2〜1.8のAG/TCモル比を有することによって特徴付けられる(本発明の目的のために、AGは、配列のA及びGヌクレオチドの総数を意味し、一方TCは、配列のT及びCヌクレオチドの総数を意味する)。
【0014】
本発明の好ましい実施態様は、
・nが35〜60、好ましくは40〜50の範囲にあるところの(GT)n又は(AC)nオリゴポリマー;
・nが70〜120、好ましくは80〜100の範囲にあるところの(T)n又は(G)n又は(A)n又は(C)n又は(イノシン)n
である。
【0015】
本発明の語において、表現「分子間及び/又は分子内塩基対化に実質的にふされていない」は、DNA又はポリヌクレオチド配列が、ストリンジェント条件及び非ストリンジェント条件の両方下で、分子間及び/又は分子内塩基対化を、20%よりも、好ましくは10%よりも、さらにより好ましくは5%よりも高くまで受けないことを意味する。そのような結果はそれらの構造の直接の結果である。なぜならば、
・1.0〜2.0のAG/TCモル比を有する;又は
・nが30よりも大きいところの(GT)n又は(AC)nオリゴポリマーである;又は
・nが60よりも大きいところの(T)n又は(G)n又は(A)n又は(C)n又は(イノシン)nオモポリマー(omopolymer)である
という事実は、どんな種類のハイブリダイゼーションをも事実上防止するからである。
【0016】
下記の議論から明らかなように、本発明に従うアプタマーは、カテプシンGを選択的に且つ有効的に阻害し、その結果それらは、炎症発生、凝血促進性状態、遺伝病、変性疾患、DNA損傷、腫瘍形成及び/又は皮膚病の治療及び予防のための医薬品の製造において使用されることができ、それ故にこれは本発明の目的を表す。本発明のさらなる目的はまた、慣用の賦形剤及び/又はアジュバントと一緒に、本発明のカテプシンG-阻害アプタマーを含む医薬品組成物によって表される。本発明の他の目的は、配列表において報告されるそれら(すなわち、SEQ ID NO: 1〜SEQ ID NO: 18)から選択されるカテプシンG-阻害アプタマーによって表わされうる。
【0017】
実験の部
材料
カテプシンGは、Europa Bioproductsから又はCalbiochemから購入された。全てのオリゴヌクレオチドは、Eurogentec Bel SA(ベルギー)から得られ、そして使用前にPAGEによって精製された。PAGEによって既に精製された幾つかのオリゴヌクレオチドが、Gibco BRL Custom Primersから得られた。TaqポリメラーゼはPharmacia Amersham Biotechからであり、一方dNTPはBoehringer Mannheimからナトリウム塩として購入された。T4-ポリヌクレオチドキナーゼ、リガーゼ及び制限酵素は、Gibco Life Technologiesからだった。Qiagenキットは、プラスミドミニプレップ精製のために使用され、及び配列決定は、T7 Sequenase(Pharmacia Amersham Biotech)及び[ガンマ-33P]dATP(Nen Life Sciences)を使用して実行された。
【0018】
ssDNAライブラリー
合成されたランダムプールは96塩基長であり、分子の中央部分は、増幅、クローニング及び配列決定のための2つの定常領域によって挟まれるランダム化された領域を有する;その配列は、5'-CGTACGGAATTCGCTAGC(N)60GGATCCGAGCTCCACGTG-3'である。下線を引かれた配列は、夫々EcoRI及びBamHI酵素のための制限部位をいう。
【0019】
該プールは、ssDNAを得るために、プライマーII-アップ(up)(該配列は5'-CGTACGGAATTCGCTAGC-3'である)及びストレプトアビジンカラムに結合するために5'末端でビオチニル化されるプライマーIII-ダウン(Down)5'Biot-CACGTCGAGCTCGGATCC-3'を使用してPCRによって増幅された。
【0020】
選択プロトコル
開始ランダムプールは、32Pで放射能ラベル付けされ、高温で変性され、そして生理学的条件に近いインキュベーションバッファー (バッファーIB: 30 mM Tris HCl、pH 7.5、150 mM NaCl、5mM KCl及び5 mM MgCl2)中でカテプシンGとインキュベーションされた。
【0021】
インキュベーションは氷中で90分間行われ、次に該サンプルルはバッファーIBで膨潤され且つ平衡化されたセファロースSP(Amersham Pharmacia Biotech)を充填されたアフィニティクロマトグラフィーミニカラム内にロードされた。ssDNA/タンパク質溶液は、30分間、4℃で樹脂とインキュベーションされた。結合されていないオリゴヌクレオチド分子はバッファーIBで洗い流され、一方保持された、より選択的なものは、高イオン力溶出バッファー(バッファーEB: 0.8 M NaCl、50 mM トリス、pH 7.8)でカラムから溶出された。
【0022】
洗浄体積は、ストリンジェンシー並びに最初のサイクルでタンパク質の2倍だったDNA濃度を増加させるために、選択の間に修正されたが、それは次第に減少された。
【0023】
画分が計測され、そしてSelexサイクルの収量が総放射能のパーセントとして表された。通過液(flow through)及びEB洗浄の最初の2画分が集められ、そして増幅された。
【0024】
ポリメラーゼ連鎖反応
ポリメラーゼ連鎖反応は、制作者によって示されたバッファー中で0.3〜0.5u/50μlの濃度でTaqポリメラーゼを使用して行われた。サイクルの数は、すべての異なる選択後に調節された。
【0025】
クローニングのためのプラスミドベクターにおける挿入前に、DNAは平滑末端を得るためにポリッシング(polishing)反応にふされた:正常なPCR反応の分取は、30分間、72℃で、提案されたバッファー中で2.5u/μlのPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene)とインキュベーションされた。
【0026】
ssDNAの生成
増幅されたdsDNAからssDNAを得るために、我々はアルカリ変性プロトコルを用いた。DNAは、ビオチニル化されたDown-IIプライマーを使用して増幅され、そしてストレプタビジンセファロース(Pierce)を充填されたクロマトグラフィーカラムに結合された。30分間のインキュベーション後に、結合されていないdsDNAがバッファー50 mM NaCl、100 mM トリス/HCl、10 mM EDTA(SBB-ストレプタビジンバインディングバッファ)で洗い流され、一方残留物は0.15 N NaOHで変性され且つ洗浄された。次に、それは選択サイクルのために沈殿され、そして集められた。
【0027】
クローニング及び配列決定
増幅されたdsDNA及びベクターpUC19(Amersham-Pharmacia Biotech)の両方が、2.5ユニットのEcoRIで処理され、一方プラスミドのみが、平滑末端を与えるSmaIで処理された。
【0028】
沈殿後、3 pmolのdsDNA及び0.6 pmolのpUC19が、提案されたバッファー中でT4リガーゼで処理された。
【0029】
次に、プラスミドが、大腸菌パルサー(pulser)(Biorad)を使用するエレクトロポレーション法によって大腸菌コンピテント細胞(SURE strain Stratagene)内に接種され、そして(ブルー(blue)/ホワイト(white)スクリーニングのために)アンピシリン、X-Gal及びIPTGの存在下で、固体LB培地に播かれた。50個の白い異なるコロニーが取られ、液体LBブロス中で別々に成長され、そして収穫された。プラスミドはアルカリ溶解によって精製され、そしてそれらの質が、アガロースゲル電気泳動によって各回試験された。アプタマーの配列は、サンガー法で、[ガンマ33P]dATPでラベル付けされ、そして2つの異なるプライマー EleA457:5'-ACG-CCA-AGC-TTG-CAT-3'(センス)及びEle S:5'-GGG-TTT-TCC-CAG-TCA-CGA-3'(アンチセンス)を用いて、決定された。
【0030】
Kd及びKi決定
オリゴヌクレオチドの親和性は、選択において実行されるようにアフィニティクロマトグラフィーによって決定された。各オリゴヌクレオチドの異なる分取が、氷中の15μgのカテプシンGで予めインキュベーションされた。次に、該溶液は、選択のために使用されるmin-クロマトグラフィーカラムにロードされ、そして15体積のバッファーIBで洗浄された。1時間インキュベーション後、それは6体積のバッファーEBで洗浄された。同体積の画分が集められ、そして計測された。
【0031】
表面プラズモン共鳴(SPR)実験
HBS EPバッファー、pH 7.40(Biacore)中に溶解された、ヒト好中球からのカテプシンGが、Biacoreによって提案された手順に従い及びBiacoreアミンカップリングキットを使用して、CM 5研究等級センサーチップフローセルの表面上に固定化された。ブランクフローセルは、上記試薬の全て(カテプシンG以外)を使用して調整された。フローセルの表面上で固定化されたカテプシンGの量は、5178.91±129.63 RUだった。
【0032】
アプタマー[Poly GT (鎖長:20,30,40,60,80及び100)及びPoly AC(鎖長:20,40及び80)]が、30 mM Tris-HClバッファー、pH 7.50、150 mM NaCl、5 mM KCl、及び5 mM MgCl2中に溶解され、そしてカテプシンG表面又はブランク表面上に注入された。3セットの実験が実行された。第1は500 nMの濃度で、全てのアプタマーについて、第2は6595μg/Lの濃度で、全てのアプタマーについて、及び第3は試験されたアプタマーに従い、15.6〜8000 nMの範囲の濃度で行われた。全ての上記実験は、ランニングバッファーとして、Biacore HBS EP Buffer、pH 7.40を使用して、25℃で実行された。カテプシンG表面は、2M NaClの2回の注入によって再生された。ブランクセンサーグラム(sensorgram)が、各サンプルセンサーグラムから引かれ、そして結合応答が評価された。第3セットの実験において生成された結合応答が、濃度−効果曲線を得るためにログ(Log)濃度(nM)の関数としてプロットされて、ヒト好中球からのカテプシンGを結合する際のアプタマーの相対能力を見出した。
【0033】
結果
アプタマーの選択及び識別
我々は、PCR反応のための保存配列及び下記のクローニングステップのための制限部位を有する2つの領域によって隣接される60ヌクレオチドのランダム化領域を有するDNAプールから出発して、カテプシンGのためのアプタマーを選択した(上記を参照)。
【0034】
我々は、選択方法として、樹脂にタンパク質を結合するアフィニティクロマトグラフィーを選択した。これは最も簡単なプロトコルのように見える。なぜならば、生理学的条件(理論的な等電点11)で正に荷電するカテプシンGはイオン交換樹脂に堅く結合することができ、一方DNA分子の樹脂への非特異的な結合がおおいに減少される故である。事実、タンパク質を認識するDNA分子のみがカラム上に残り、一方結合されていない物質が洗い流される。我々は、バインディングバッファー中に塩化カリウム及び塩化マグネシウム5 mMを含めること、すなわちバッファー中のイオン強度を増加させ、そしてオリゴヌクレオチドフォールディング(folding)を安定化させるによって、ラベル付けされたssDNA及びタンパク質の間での結合プロセスをより選択的にすることを試みた。
【0035】
次に、選択された分子が、高イオン性強度バッファー(バッファーEB)を使用して、結合タンパク質と一緒に、カラムから効率的に取り除かれ、次に、放射能により計測された。次に、最初の2画分及びフロー溶出が集められ、PCRによって増幅され、そして次のサイクルのために使用するためにシングルストランド分子へとされた(詳細についての方法の部を参照)。
【0036】
我々は、9サイクルの選択を実行した:4サイクル後に、収量の有意な増加が観察された。しかし、SELEXは、プール親和性におけるさらなる増加が3回に亘って観察されないとき終了し、42%の最終収量を達成した(表1)。選択のストリンジェンーは、洗浄の回数及び体積を変化して増加された。第5及び7サイクル後に、アプタマーの樹脂への非特異的な結合を避けるために、プレカラムサイクルが実行された:前のサイクルから来るプールは、タンパク質無しでカラム内にロードされた:次に、該カラムから溶出された第1の画分が増幅され、そして次のサイクルのために使用された。
【0037】
【表1】

【0038】
配列分析
選択された分子は、実験の部に記載されるように、大腸菌細胞内にクローニングされ、そして配列決定された。我々は、50個のクローンのうち19個の異なる配列を見つけた。我々は、2つの配列アラインメントプログラム、Clustal W及びFastA-align、を使用し、繰り返しコンセンサスモチーフ(a repeated consensus motif)を検索した。しかし、分子多様性が、配列決定された分子のサブセット内でさえ良いアラインメントを与えるには、あまりにも高かった。更なる分析は、GTモチーフが14個の配列において明らかに繰り返されることを示した。その上、これら分子での詳細な調査は、それらが分子間及び分子内塩基対化を判る程度まで受ける傾向がないこと、またそれらはGカルテットの様なより複雑な3次元構造を形成しないことを示した。該選択は、荷電−荷電相互作用の故に正のタンパク質に堅く結合しうる非構造的な、線状の且つフレキシブルな分子をもたらしたように見えた。この仮説を確認するために、我々は、選択されたアプタマーのうちの一つ、60mer CG51、の親和性を、非対化配列を有する他のオリゴヌクレオチド、例えばオリゴGT又はAC構造と比較した。最後の選択サイクル由来のオリゴヌクレオチドの配列が、以下に報告される;各自は、異なる数(CG51及びCG43は同じである)でマーク付けされる。
【0039】
上記配列は、配列リストにおいて以下の対応を有する:

【0040】

【0041】
我々は、該選択方法と同様にアフィニティクロマトグラフィーによってカテプシンGに結合するオリゴヌクレオチドを評価した。アプタマーCG51の親和性は、述べられたようにワトソン−クリック塩基対又はGカルテット形成によって特徴付けられる何らかの構造内へとたたまれることが明らかにできない同じ長さのAC及びGTオリゴヌクレオチドと最初に比較された。CG51の相補配列(cmpCG51と呼ばれる)は、対照として含まれた。その上、オリゴヌクレオチド長がタンパク質への結合の際に重要な要素であるかどうかを示すために、60ヌクレオチドよりも長い及び短いAC及びGTオリゴヌクレオチドの親和性が、測定された。
【0042】
SELEXの高収量から予想されるように、選択されたCG51は、カテプシンGへの高い親和性(Kd 0.9 nM)を示した。その上、そのKdは、同じ長さのAC及びGTオリゴヌクレオチド(夫々、Kd 0.8 nM及び1 nM)と、及びcmpCG51(Kd 0.6 nM)と同等だった(図1)。これらデータは、非構造的な且つフレキシブルな分子による堅い結合に関する我々の仮説が正しかったことを示す。
【0043】
(AC)60及び(GT)40(これは、夫々120mer及び80merである)のように60merよりも長い分子は、1.2 nMの親和性を示した。一方、より短い分子であるより短い(GT)20及び(GT)10は、夫々1.5 nM及び2 nMのKdを有し、選択されたオリゴヌクレオチドの長さが効率的な結合を与えるために重要であることを示唆する。
【0044】
トロンビンに対して選択されたアプタマーTHRはまた、オリゴヌクレオチド構造がカテプシン結合にとって重要だったかどうかを証明するために対照として含まれていた。このアプタマーは、安定なGカルテットを形成すると知られている。この場合に見つけられた低いKd(4 nM)は、この種の構造が有効な認識モチーフを表わさないだろうことを示す。
【0045】
興味深いことに、シングルストランドCG 51が数多くの荷電した基を有するとしても、ダブルストランドCG 51はシングルストランドよりも低い親和性を示した。確かに、ダブルストランドオリゴヌクレオチドは、よりかさばり且つより堅く、故にタンパク質を最適に結合することができない。
【0046】
表面プラズモン共鳴(SPR)実験
第1セットの実験(各アプタマー500 nMで)において生成されたデータは、GTアプタマーの例では、60を超える鎖長を増加させることが結合における増加をもたらすが、この増加は範囲30〜60中におけるそれよりもそれほど急激ではないという第1の証拠を与えた。該結合は、範囲20〜30において乏しい。ACアプタマーの例では、それら結合が、GT アプタマーのそれよりもより明らかでなかった。SPR共鳴は、(本例のアプタマーにおける)分析物の表面質量濃度における変化に関連し、それ故にそれは、(本例におけるカテプシンGから作成された)表面上の結合部位の数に関連して分析物の分子量に依存する。明らかなアプタマー結合がアプタマー量に依存しないが、単にアプタマー構造的特徴に依存するという疑いを取り除くために、第2セットの実験が同じ質量濃度(各アプタマー6595 μg/Lで)で実行された。結果は、第1セットの実験で得られたそれと同じだった(データは簡潔さのために示されない)。図2では、GT及びACアプタマーのログ濃度−効果曲線がまとめられている。この図において、線形回帰が得られた濃度範囲をいう、その各アプタマー応答が報告される。GT 100は最も有力なアプタマーであり、それは1の能力(相対的な標準)を任意的に割り当てられた。GT 80は約0.32、GT 60は約0.144、AC 80は約0.017、GT 40は約0.016、AC 40は約0.0047及びGT 30は約0.0020の相対的能力を有する。GT 20及びAC 20はそれらの貧弱な結合のために評価されなかった。およそ、アプタマーは3組のファミリーに分けられうる(図2);第1のファミリー:GT 100、GT 80及びGT 60;第2のファミリー:AC 80、GT 40、AC 40及びGT 30;第3のファミリー:AC 20及びGT 20。
【0047】
図3では、PolyTアプタマーのログ濃度−効果曲線がまとめられている。それが評価されうるように、PolyT100及びPolyT80、すなわち夫々配列(T)100及び(T)80を有するアプタマーは、PolyT60よりもはるかにより有力である。
【0048】
検討
選択の4サイクルのみの後に、タンパク質に結合される分子のパーセントの大きな増加が見られ、9サイクルで、42%の収量に対応し、プールをさらに豊化にすることは可能でなかった。しかしながら、選択されたアプタマーの配列分析は、それらの間で繰り返された共通のコンセンサスモチーフのための証拠を示さなかった。より密に見たところ、これら分子の多数がGT/C欠損であり、それ故に、対化を受けていること及びGカルテットへとたたまれることはありそうもなかったことが見出された。おそらく、シングルストランドDNA分子(負及びフレキシブル)は、この正に荷電されたタンパク質に最も良く結合する。SELEXバッファー中の塩化ナトリウム及び塩化マグネシウムの有意な量の存在下でさえ、標的及びタンパク質の間の結合がまだ、荷電した相互作用によって主に支配されえた。特有の「コンセンサス」原理の仮説を確認するために、選択されたアプタマーのうちの1つ、CG51、の親和性が、幾つかのAC及びGTのオリゴヌクレオチドと比較された。我々は、CG51がナノモル範囲のKdでカテプシンGへの著しく高い親和性を有し、該選択が効率的なバインダーのプールを有効にもたらしたことを示す事実を証明した。CG51の同じ長さ(及び全体的な構造特徴)を有する(AC)30、(GT)30及びcmpCG51の解離定数が同等であり、一方より短い分子はより低い親和性を示した。ダブルストランドCG51は、カテプシンGへのより低い親和性を示した:30 bpの平均長を有する染色体DNAがこのタンパク質に結合しうることが証明されたことを考慮すると、これは非常に興味深い。
【0049】
少なくとも60、好ましくは70〜80よりも多い長さを有する、直鎖の且つフレキシブルなシングルストランドDNA鎖は、染色体の対応物よりもカテプシンGを結合する際により有効であり、及びまた、より短いDNA鎖よりもより有効であることを我々が示した。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】試験されたオリゴヌクレオチドのKdを示すグラフである。
【図2】ヒト好中球からのカテプシンGに結合するGT及びACアプタマーを記述する濃度−効果曲線を示すグラフである。
【図3】ヒト好中球からのカテプシンGに結合するPolyTアプタマーを記述する濃度−効果曲線を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも60ヌクレオチドの鎖長を有し且つ分子間及び/又は分子内塩基対化を20%未満まで受けている直鎖DNA又はポリヌクレオチド配列から成るカテプシンG-阻害アプタマーであって、前記配列が、
・1.0〜2.0のAG/TCモル比を有すること;又は
・nが30よりも多いところの(GT)n又は(AC)nオリゴポリマーであること;又は
・nが60よりも多いところの(T)n又は(G)n又は(A)n又は(C)n又は(イノシン)nオモポリマーであること
によって特徴付けられる、カテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項2】
60〜120ヌクレオチドの鎖長を有することによって特徴付けられる、請求項1に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項3】
70〜110ヌクレオチドの鎖長を有することによって特徴付けられる、請求項2に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項4】
80〜100ヌクレオチドの鎖長を有することによって特徴付けられる、請求項3に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項5】
シングルストランド配列であることによって特徴付けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項6】
1.2〜1.8のAG/TCモル比を有することによって特徴付けられる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項7】
25〜50%のグアニンモル含量を有することによって特徴付けられる、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項8】
35〜45%のグアニンモル含量を有することによって特徴付けられる、請求項7に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項9】
nが30〜60の範囲にあるところの(GT)n又は(AC)nオリゴポリマーであることによって特徴付けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項10】
nが35〜60、好ましくは40〜50の範囲にあるところの(GT)n又は(AC)nオリゴポリマーであることによって特徴付けられる、請求項9に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項11】
nが60〜120の範囲にあるところの(T)n又は(G)n又は(A)n又は(C)n又は(イノシン)nオモポリマーであることによって特徴付けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項12】
nが70〜120、好ましくは80〜100の範囲にあるところの(T)n又は(G)n又は(A)n又は(C)n又は(イノシン)nオモポリマーであることによって特徴付けられる、請求項11に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項13】
分子間及び/又は分子内塩基対化を10%未満まで受けていることによって特徴付けられる、請求項12に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項14】
分子間及び/又は分子内塩基対化を5%未満まで受けていることによって特徴付けられる、請求項13に記載のカテプシンG-阻害アプタマー。
【請求項15】
炎症発生、凝血促進性状態、遺伝病、変性疾患、DNA損傷、腫瘍形成及び/又は皮膚病の治療及び予防のための医薬品の製造のために、請求項1〜14のいずれか一項に記載のカテプシンG-阻害アプタマーを使用する方法。
【請求項16】
慣用の賦形剤及び/又はアジュバントと一緒に、請求項1〜14のいずれか一項に記載の少なくとも1つのカテプシンG-阻害アプタマーを含む医薬品組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−506413(P2007−506413A)
【公表日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518010(P2006−518010)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006599
【国際公開番号】WO2005/003347
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(506004610)
【Fターム(参考)】