説明

ヒトサイトカインの生物活性をブロッキングするヒト抗体を高収率で産生する方法

【課題】ヒトサイトカインの生物活性をブロッキングするヒト抗体の高収率な産生方法。
【解決方法】VEGF、IFNα、IL−4、TNFα、TGFβの中から選択されるヒトサイトカインの活性を中和するIgGアイソタイプのヒト天然抗体を活性成分として含み、この中和抗体が0.006〜0.05ngの量のサイトカインによってインビトロで誘発される最大生物活性を少なくとも50%抑制する医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイトカインの生物活性を抑制する中和抗体を含む組成物と、その製造方法と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サイトカイン(cytokines)は多くの細胞、例えばリンパ球、単球、樹状細胞、マスト細胞、線維芽細胞によって産生される、多くの組織に自己分泌効果、パラ分泌効果および内分泌効果を与える蛋白である。サイトカインは細胞の生存、増殖、分化および移動に影響する。
【0003】
サイトカインはその活性によって大きく分類することができ、いくつかのサイトカインは直接または間接的な効果によって細胞障害性リンパ球またはNK細胞(IFN−γ、TNF、IL−2、IL−15)の世代を介した細胞死の誘発において重要である。他のサイトカイン、例えばIL−3、IL−4、IL−5、IL−9およびIL−13はアレルギー反応に関与し、いくつかのサイトカインは抗体産生の調節に必須であり(IL−4、IL−5、IL−6、IL−9、IL−10およびIL−13)、他のサイトカインは炎症誘発性作用がある(IL−1、TNFα、IFN−γ、ケモカイン)。さらに他のサイトカインは抗炎症性特性を有する(TGF−β、IL−4、IL−10)。
しかし、この分類は重要な重複性と多面発現とによって特徴付けられるサイトカインとその標的細胞との間の相互作用の複雑性を反映しておらず、アゴニストおよびアンタゴニスト効果を考慮していない。免疫系、特にサイトカインのこうした特徴はサイトカインをその機構、例えばブロックする抗体の介在等が全ての干渉にインビボで重要な効果を有することを示している。
【0004】
これまでのワクチン療法戦略は抗原アグレッサー(微生物、細胞またはアレルゲン)にのみ焦点を合わせたもので、サイトカインの調節解除(deregulation)を克服しようとしたものではなかった。しかし、免疫防御から逃げる現象や炎症現象に関与するサイトカインの重要な役割等を考慮すると、サイトカインの活性またはその産生に作用して患者の体内でサイトカインを不活性化することが今日の目標であり、生物体はこれらサイトカインを効率的に相殺できる天然のアンタゴニストを有していないのでこの目標はなおさら求められている。抗サイトカイン抗体等は知られているが、この抗体はこの抗体を産生するB細胞が眠らされるため力価が低いことがわかっている。しかも、この天然抗体は低親和性(faible affinite)であり、対応するサイトカインの活性を中和しない。
【0005】
特に、インシチュ(in situ)麻痺を誘発する宿主の細胞性免疫防御から逃れる現象は多くの癌で用いる戦略であり、生存に必要なものである。個体は感染等の攻撃に対して身を守ることができるので、この免疫抑制状態は最初は腫瘍位置に留まっているが、後期になると免疫抑制が拡大し、一般化し、転移の拡大し、癌患者の感染に対する脆弱性が高まり、化学療法や放射治療による効果が無くなる。すなわち、癌細胞の免疫系制御からの逃げは免疫系の麻痺(免疫抑制)に起因し、それによって正常に機能しなくなるためである。この免疫抑制は癌細胞またはその周囲の細胞によって産生される麻痺ファクター(サイトカインを含む)の役目をする。免疫系によるこの細胞の局所麻痺すなわち免疫抑制は癌細胞の主要な武器となり、それを用いて癌細胞は宿主の免疫系から逃げることができる。
【0006】
インシチュ(in situ)麻痺を誘発して宿主の細胞免疫防御から逃げる上記の現象はHIVによっても用いられる戦略である。AIDSで観察される一般化された免疫抑制は抗原提示細胞、特に2型の樹状細胞(DC2)によるIFNα過剰産生によって特徴付けられる。IFNαの免疫抑制活性は調節T細胞(抑制T細胞)によってIL−10サイトカインの産生を誘発する能力によるものである。
【0007】
サイトカインの生物活性を抑制するための第1の戦略は患者に免疫原構成物を注射することからなる。B細胞による関連抗原、例えばサイトカインの認識を誘導するために種々の免疫原構成(constructions immunogenes)が開発されてきた。この免疫原構成法の第1の形は補助Tリンパ球(「ヘルパーT」細胞)によって認識される構造を有する担体分子上に関連抗原を共有結合させ、それに組織適合性主複合体(MHC、Complexe Majeur d'Histocompatibilite)のクラスII分子と組み合わせ、補助Tリンパ球を活性化し、それによって種々のサイトカイン、特にIl−2を産生し、このサイトカインによって関連抗原の特異B細胞クローンを活性化させるものである。活性化された関連抗原の特異B細胞は増殖し、関連抗原の特異抗体を産生する。この特異抗体が目的物である。この形の免疫原構成法では一般に関連抗原と担体分子との間に共有化学結合を構成し、精製し、未結合の産物を除去する工程後に、構造が定義された最終産物となる。
【0008】
しかし、この免疫原構成法にはいくつか欠点がある。例えば、この免疫原構成物は注射の時間間隔が長く、標的にしたサイトカインに対する免疫応答が現れる。さらに、サイトカインが変質して免疫応答の強度または品質を損な場合には患者に抗サイトカイン免疫原構成物を効率的にワクチン接種することが不可能になる場合がある。すなわち、大規模な免疫抑制が認められる癌やAIDSの場合には免疫原性組成物の投与は疾患の初期、特に免疫抑制が過度に大きくなる前に行わなければ効果がない。
【0009】
従って、当技術分野では免疫系が壊れた患者を治療できる抗サイトカイン抗体が要望されている。この抗体は免疫抑制、さらには炎症過程に関与するサイトカインに直接作用するものである。抗サイトカイン抗体による治療は免疫応答を少なくとも一時的に回復でき、従って、免疫原性組成物の投与前に用いることができる。
【0010】
こうした抗サイトカイン抗体は既に知られている。例えば、下記文献には多くの細胞型によって産生されるサイトカインで且つ自己免疫疾患、感染または移植片拒絶におけるその役割が知られるTNFαに特異的に結合するヒト抗体、特にヒト組換え抗体が開示されている。
【特許文献1】欧州特許出願第1,825,930号公報
【特許文献2】米国特許第6,509,015号明細書
【0011】
下記文献にはヒトIL−2に特異的に結合し且つそのインビボおよびインビトロ活性を中和するヒト抗体、好ましくは組換え体が開示されている。
【特許文献3】国際特許出願第WO 00/56772号公報
【0012】
下記文献にはγインターフェロンに結合する薬剤、特に、γインターフェロンに選択的に結合し且つ関節リウマチまたはループスのような炎症疾患または自己免疫疾患の予防または治療に用いることができる抗体と抗原とに結合するドメインが開示されている。
【特許文献4】米国特許出願第2003/0099647号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
サイトカインの上記の重要な役割から考えて、関連サイトカインに結合し且つその生物活性を少なくとも部分的に中和することができる新規な抗体組成物が強い要望がある。そうした組成物は高価でなく、製造が容易で、しかも、再現可能に合成できなくてはならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の対象は、VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択されるヒトサイトカインの生物活性を中和するヒト抗体を高収率で得る方法にある。本発明方法は下記(i)と(ii):
(i)個体の血清に含まれる免疫グロブリン、または、
(ii)個体のB細胞によって産生される免疫グロブリン
を精製する少なくとも(a)段階を含み、個体は、(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される抗原蛋白分子と(ii)担体蛋白分子とを組み合わせたもので構成される免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物で予めサイトカインに対して免疫化され、上記抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合していることを特徴とする。
【0015】
本発明の他の対象は、免疫原構成で従来技術が直面している上記課題を解決することができ且つ公知の抗サイトカイン抗体組成物の代替物となる、抗サイトカインヒト天然抗体を活性成分として含む新規組成物にある。
【0016】
活性成分として選択される中和ヒト天然抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり、ポリクローナル抗体は下記の中から選択するのが好ましい:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体の血清から精製した抗体の全画分、
(ii)サイトカインの活性を中和する単一特異性ポリクローナル抗体の精製画分、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片
【0017】
モノクローナル抗体は下記の中から選択するのが好ましい:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体からのB細胞(a)と、骨髄腫のような細胞系譜を産生する抗体からの細胞(b)との間の細胞融合で得られる細胞によって産生される抗体、
(ii)免疫化によって誘発され且つ免疫化した患者の血清中に存在する抗体を再現する免疫グロブリンをコード化するDNAでトランスフェクトまたはトランスフォームした細胞によって産生される抗体であって、このDNAがサイトカインに対して免疫化したヒトのB細胞のDNAから予め単離される抗体、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片、
(iv)ScFv断片。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明者は、サイトカインに対してヒト個体を免疫化することによって、従来技術が直面している細胞のスクリーニングおよび複雑な精製段階を必要としない、ヒトサイトカインの活性を中和する高い能力を有する新規なヒト抗体を産生できるということを見出した。ここで、サイトカインに対して免疫化されていない個体は自然にはサイトカインの活性を中和する抗体を有していないということを明確に理解しておく必要がある。
【0019】
上記の抗サイトカイン抗体はサイトカインが関与する種々の病理学的状況で有用である。例えば、感染、自己免疫疾患、移植片拒絶およびアレルギーのような炎症反応に関連するほぼ全ての疾患が挙げられる。従って、本発明の抗体および抗体を含む組成物はこの種の障害を克服するのに有用であり、しかも、容易に得ることができる。
【0020】
本発明の方法は、VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択されるヒトサイトカインの生物活性を中和するヒト抗体を高収率で得る方法であって、下記(i)または(ii):
(i)個体の血清に含まれる免疫グロブリン、または、
(ii)個体のB細胞によって産生される免疫グロブリン
を精製する少なくとも(a)段階を含み、個体は、下記特許に開示された免疫原性産物で予めサイトカインに対して免疫化されている。
【特許文献5】フランス国特許出願第0211455号(2002年9月16日出願)
【0021】
上記免疫原性産物は(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される抗原蛋白分子と、(ii)担体蛋白分子とをくみあわせたもので構成され、抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合した免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物である。
【0022】
以下の説明ではVEGF(血管内皮成長因子)、IL−4(インターロイキン4)、IFNα(インターフェロンα)、TNFα(腫瘍壊死因子α)およびTGFβ(トランスフォーミング成長因子)を同じ用語「関連サイトカイン」でよぶことがある。
【0023】
上記抗体は「中和」抗体または「ブロッキング」抗体からなるのが好ましい。「中和」抗体または「ブロッキング」抗体とは、抗体が向けられるサイトカインが宿主生物にとって有害な生物活性を有する場合に、標的サイトカインと結合してこのようなサイトカインの生物活性をブロッキングする抗体、本発明が求める主たる対象と定義される。
【0024】
本発明では、実施例に示すように、免疫化した個体における抗サイトカイン抗体の高い血清レベルによって関連サイトカインに対して個体が予め免疫化されていることを検出する。本発明では免疫化された全ての個体において関連サイトカインの有害な活性を中和するヒト天然抗体が得られたことが確認されている。
【0025】
本発明の対象である抗サイトカインヒト天然抗体は高親和性抗体からなると本出願人は考えるが、この理論に縛られるものではない。換言すれば、本発明者によると、上記抗体とこの抗体が向けられる上記サイトカインとの間に形成された複合体は解離しないか、ほとんど解離せず、本明細書に定義された抗体を投与した個体における遊離サイトカインの血中濃度は大幅に低下する。
【0026】
サイトカインに対する個体の免疫化は当業者に周知な任意の方法で行うことができる。配合、カルボキシアミド化、マレイミン化、酸素発泡による酸化のような物理的および/または化学的処理、または、遺伝子組換え、あるいは、アジュバントコンディショニングによって生物活性を予め70%、90%、さらには95%に不活性化したサイトカインを個体に投与するのが好ましい。この処置はサイトカインを中和またはブロックする抗体を発生するのに十分な免疫原性特性を維持している。
【0027】
上記特許文献5(フランス国特許出願第0211455号、2002年9月16日出願)に開示の免疫原性産物で免疫化したヒトから得られる抗体を産生するヒト血清またはヒトB細胞がさらに好ましい。この産物は(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される抗原蛋白分子と(ii)担体蛋白分子とで構成され、抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合している免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物である。
「抗原蛋白」とは本明細書では必要に応じて化学的に不活性化されたサイトカイン、または、長さが少なくとも10個のアミノ酸残基のサイトカイン断片を意味し、これはヒトまたは動物、特に任意の哺乳類の宿主生物体からのBリンパ球によって発現される抗原受容体によって特異的に認識することができ、この抗原蛋白は免疫原性産物に含まれた時にサイトカインを認識する抗体の産生を刺激する。
【0028】
関連抗原蛋白は天然サイトカインのホモオリゴマーまたはホモポリマーおよび天然サイトカインのペプチド断片のホモオリゴマーまたはホモポリマーで構成することができる。関連抗原蛋白はさらに、天然サイトカイン中に初めから存在する複数の異なるペプチド断片を組み合わせたヘテロオリゴマーまたはヘテロポリマーにすることもできる。
【0029】
本発明の免疫原性産物中に含まれる「担体蛋白分子」とは、アミノ酸の配列とは無関係に、鎖長が少なくとも15のアミノ酸で且つ本発明の免疫原性産物を構成するヘテロ蛋白複合体を形成するために関連抗原の分子と一部が共有結合で結合されたときに関連抗原の多数の分子をBリンパ球に与えることができる任意の蛋白またはペプチドを意味する。担体蛋白分子はKLH(キーホールリンペットヘモシアニン)型であるのが好ましい。
【0030】
免疫原性産物は関連サイトカインの活性を中和する抗体の産生を促進することができるCpGオリゴデオキシヌクレオチドをアジュバントとしてさらに含むのが好ましい。免疫応答を高めるために免疫原性組成物中でCpGオリゴデオキシヌクレオチドをアジュバント化合物として用いることは下記の文献に記載されている。
【非特許文献1】McCluskie MJ et al.2000
【非特許文献2】Gallichan WS et al.2001
【非特許文献3】Eastcott JW et al.2001
【0031】
免疫化を誘発するための効率的なヘテロ複合体を含む安定な免疫原性産物の例としては、蛋白担体分子KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)と、ヒトインターフェロンα分子とを組み合わせたものが挙げられる。このようなヘテロ複合産物は以下、インターフェロンαKLHとよぶ。本発明の好ましい免疫原性産物は、抗原蛋白(i)および蛋白担体分子(ii)がそれぞれ下記であるa)〜e)のヘテロ複合体を含む免疫原性産物の中から選択される:
a)(i)VEGF、(ii)KLH、
b)(i)インターフェロンα、(ii)KLH、
c)(i)IL−4、(ii)KLH、
d)(i)TNFα、(ii)KLH、
e)(i)TGFβ、(ii)KLH。
【0032】
本発明の免疫原性産物で共有結合によって結合された担体蛋白分子と関連抗原蛋白の割合(比率)は当業者が容易に確認できる。
例えば、本発明の免疫原性産物で共有結合によって担体蛋白分子と結合された関連抗原分子の比率は実施例10に記載のプロトコルを用いて決定できる。
既に説明したように、蛋白担体分子KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)とヒトインターフェロンα分子との間にヘテロ複合体を含む免疫原性産物では、3%のインターフェロンα分子しか担体蛋白分子KLHと共有結合していない。
【0033】
上記定義の免疫原性ヘテロ複合体を含む免疫原性産物は下記の段階に従って調製できる:
a)抗原蛋白(i)と担体分子(ii)とを化学結合剤の存在下で(i):(ii)のモル比を5:1〜50:1にして培養し、
b)段階a)で得られた免疫原性ヘテロ複合体を含む免疫原性産物を回収する。
【0034】
化学結合剤はグルタルアルデヒドであるのが好ましい。
本発明方法は段階a)の後かつヘテロ複合体の回収段階b)の前に、ホルムアルデヒドによる免疫原性ヘテロ複合体の安定化段階を含むのがさらに好ましい。
化学結合剤としてグルタルアルデヒドを用いるときは、グルタルアルデヒドがカップリング反応媒体中に最終濃度で0.002M〜0.03M、好ましくは0.026Mの濃度で存在する。
【0035】
グルタルアルデヒドとのカップリング反応は20〜25℃の温度で20〜60分、好ましくは30分行うのが有利である。
カップリング段階後、過剰グルタルアルデヒドを例えばカットオフ閾値が3kDaである透析膜を用いた透析によって除去する。透析段階はpH7.6に調整された4℃の緩衝液中で行うのが有利である。
【0036】
段階a)で調製した蛋白ヘテロ複合体を含む産物を安定化させるために、産物をホルムアルデヒド、例えば最終濃度が3mMのホルムアルデヒドによって溶液中で処理することができる。安定化反応は12〜48時間、好ましくは20〜30時間、さらに好ましくは24時間行うのが有利である。ホルムアルデヒドを用いる安定化反応はグリシン、好ましくは0.1M濃度のグリシンを20〜25℃の温度で1時間添加して止めるのが有利である。
【0037】
過剰グルタルアルデヒドを除去する段階の後にCpGオリゴデオキシヌクレオチドを添加するのが好ましい。
上記定義の免疫原性ヘテロ複合体を含む免疫原性産物の調製方法は実施例1、2、3、4に示してある。
実施例には示されていないが、ヘテロ複合体TGFβ−KLHの調製は実施例1〜4に記載のプロトコルと同様なプロトコルに従って行うことができる。
【0038】
一般に、本発明の中和ヒト天然抗体はインビトロで関連サイトカインの最大生物活性を少なくとも50%中和する。
例えば、本発明者は一般に10-3μg〜10-2μgの量の中和ヒト天然抗体で関連サイトカインの最大生物活性の少なくとも50%のインビトロ抑制が得られることを見出した。
【0039】
インビトロでの関連サイトカインの最大生物活性は下記(i)〜(v)によってそれぞれ誘発するのが好ましい:
(i)ヒト臍静脈内皮細胞の最大増殖を引き起こす最小量のVEGF、
(ii)水疱性口内炎ウイルス(VSV)によるMDBK細胞系譜からの細胞溶解の最大抑制を引き起こす最小量のIFNα、
(iii)IL−4依存性のTF−1細胞系譜の最大増殖を引き起こす最小量のIL−4、
(iv)TNFα依存性のL929細胞系譜の最大増殖を引き起こす最小量のTNFα、
(v)TGFβ依存性のNRK49F細胞系譜の最大増殖を引き起こす最小量のTGFβ。
【0040】
VEGF、ヒトIFNα、IL−4およびTNFαにおける生物活性アッセイは実施例5、6、7、8に記載の各プロトコルに従って行うことができる。TGFβ生物活性評価は、NRK49F線維芽細胞系譜を用いて上記のプロトコルと同様な方法で行うか、または、当業者に周知な方法に従って行うことができる。
【0041】
上記の方法は(a)段階の最後に得られる免疫グロブリン画分からGアイソタイプ免疫グロブリンを精製する(b)段階を含むのが好ましい。
本発明方法は高レベルの抗体応答を得ることができ、さらに、関連サイトカインの活性を中和する抗体を産生するB細胞の高い循環比を得ることができるので特に有利である。
【0042】
単離したBリンパ球の集団を直接用いることができる。例えばこれらのBリンパ球を骨髄腫細胞と融合して抗サイトカインヒト天然抗体を産生することができ、複雑な精製プロセスを避けることができる。
本発明の方法によって、例えばB細胞の精製方法、例えばパニング、ナイロン結合抗体を入れたカラムによるフィルタリングまたはフローサイトメトリーソーティング(FACS、登録商標)の使用を避けることができる。
【0043】
免疫化した個体からB細胞を得ることは簡単である。第1の方法は多糖ポリマー(Ficoll、登録商標)とメトリザミドとの混合物、ヨウ素を含む密度の高い化合物から成る密度勾配遠心分離によって末梢血からBリンパ球を単離する方法である。界面に赤血球から分離された大部分が多核細胞であるBリンパ球集団が得られる。
【0044】
免疫化した個体からB細胞を得るための別の方法は、Bリンパ球を組織、特に脾臓、胸腺、骨髄、リンパ節などのリンパ器官または口蓋扁桃のような粘膜に関連するリンパ組織から単離する方法である。
本発明方法は必要に応じてサイトカインの生物活性を中和するモノ特異性ポリクローナル抗体を得るための追加の段階をさらに含むことができる。
【0045】
本発明方法はサイトカインの生物活性を中和するF(ab)またはF(ab)’2断片を得るための追加の段階をさらに含むことができる。
本発明方法はさらに、下記の追加の段階を含むことができる:
i)ハイブリドーマ系譜を得るために、a)段階の最後に得られるB細胞を骨髄腫からの細胞と融合させる段階、および
ii)これらのハイブリドーマによって産生された抗体を回収する段階。
以下、全ての段階を医薬組成物と関連づけながら詳細に説明する。
【0046】
本発明の別の対象は、VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択されるヒトサイトカインの活性を中和するヒト天然抗体のIgGアイソタイプを活性成分として含み、この中和抗体がインビトロで上記サイトカインによって誘発される最大生物活性を少なくとも50%抑制する医薬組成物にある。
【0047】
上記のように、上記医薬組成物中に含まれる上記定義のヒト抗体は関連サイトカインに対して予め免疫化した個体から得られる血清またはB細胞である。
一般に、本発明のヒト天然抗体は0.006〜0.5ngの量の関連サイトカインによって誘発される生物活性の少なくとも50%をインビトロで抑制する。
【0048】
例えば、サイトカインを上記の所定量で用いた場合に、関連サイトカインの最大生物活性の少なくとも50%のインビトロ抑制が、10-3μg〜10-2μgの量の中和抗サイトカインヒト天然抗体で一般に得られることを本発明者は見出した。
【0049】
サイトカインに対する個体の免疫化は当業者に周知な任意の方法で行うことができる。特に、IFNαの場合は、実施例9.1に記載の条件下でジメチルホルムアミドによって予め不活性化されたIFNαの注射によるか、本発明の方法に関連して記載した技術と同じ技術によって行うことができる。
【0050】
中和ヒト天然抗体は(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される各抗原蛋白分子と(ii)担体蛋白分子とで構成され、抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合している免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物で免疫化した個体からの血清またはB細胞から得るのが好ましい。
【0051】
「天然抗体、anticorps naturels」とは、本明細書では、関連サイトカインに対して特異的に免疫化した個体によって自然に産生される抗体を意味し、この天然抗体は個体の血清に含まれるか、個体の活性化されたB細胞によって免疫化後に産生される。
ヘテロ複合体の定義、その獲得方法、抗原蛋白と担体蛋白との間の共有結合の割合の決定方法は本発明方法に関して記載した上記技術と同じ技術に従って行うことができる。
【0052】
インビトロでのサイトカインの最大生物活性はそれぞれ下記によって誘発されるのが好ましい:
(i)0.5ngのVEGF
(ii)0.006ngのIFNα
(iii)0.5ngのIL−4
【0053】
本発明の中和抗サイトカインヒト天然抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体からなる。
ポリクローナル抗体は下記の中から選択されるのが好ましい:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体の血清から精製した抗体の全画分、
(ii)サイトカインの活性を中和する単一特異性ポリクローナル抗体の精製画分、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片。
【0054】
ヒトサイトカインに対して免疫化したヒト個体の血清から精製した全画分(i)の獲得は下記の段階を含むのが好ましい:
a)免疫原性組成物、好ましくは上記のような免疫原性組成物をヒト個体に注射する段階、
b)投与した抗原の活性を中和する抗体を含むヒト個体の免疫血清を回収する段階、
c)免疫血清から抗体画分を精製する段階。
【0055】
上記方法の各段階について以下に詳細に示す。免疫血清の回収は当業者に周知の方法、例えば遠心分離による全血液サンプルからの血清の分離、免疫化した患者の免疫血清からの抗体画分の例えば親和クロマトグラフィーによる精製、硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換クロマトグラフィ、ゲル濾過、A/G蛋白カラムを用いるクロマトグラフィ、親和クロマトグラフィ、または、免疫親和クロマトグラフィで行われる。
【0056】
本発明に特に適した抗体精製の追加の段階は下記文献に開示されている。
【特許文献6】欧州特許出願第662,480号公報
【0057】
この精製方法によって抗体混合物、特に(b)段階で得られた免疫血清中の抗担体分子抗体を除去することができる。関連サイトカインの活性を中和するモノ特異性ポリクローナル抗体(ii)の精製画分は、関連サイトカイン上の抗原パターンをカラムに結合することによって、ヒトサイトカインに対して免疫化したヒト個体の免疫血清から精製された全抗体画分(i)から親和クロマトグラフィによって得ることができる。
【0058】
上記のポリクローナル抗体から、または、免疫血清または血漿からのN(ab)’2断片の精製は下記文献に開示された方法に従って行うことができる。
【特許文献7】米国特許出願第2002/0164327号明細書
【0059】
この方法は血漿または血清をペプシンで消化する段階と、アルブミン、完全抗体を欠き、且つ、発熱物質をほぼ欠いたF(ab)’2断片を得るまで精製および分離する段階とを含む。
F(ab)およびF(ab’)2画分の単離によって、免疫系からの他のエフェクタ分子と相互作用せずに関連サイトカインに結合できる等の特殊な利点を得ることができる。
F(ab)断片も同様な方法で得ることができ、この方法は関連サイトカインに対して免疫化したヒト個体から得られる免疫血清、血漿またはポリクローナル抗体精製画分(i)、(ii)、(iii)のパパインによる消化からなる。
【0060】
変形例では抗体はモノクローナルであり、下記の中から選択される:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体からのB細胞(a)と、骨髄腫のような細胞系譜を産生する抗体の細胞(b)との間の細胞融合から生じる細胞によって産生される抗体、
(ii)免疫化によって誘発され且つ免疫化した患者の血清中に存在する免疫グロブリンをコード化するDNAでトランスフェクトまたはトランスフォームした細胞によって産生される抗体であって、DNAがサイトカインに対して免疫化したヒトのB細胞から得られるDNAから予め単離されている抗体、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片
(iv)ScFv断片
【0061】
モノクローナル抗体(i)は下記の方法に従って得ることができる:
第1段階はヒトサイトカインに対するヒト個体からBリンパ球を単離することからなる。第1の方法では多糖ポリマー(Ficoll、登録商標)とメトリザミドとの混合物、ヨウ素を含む密度の高い化合物から成る密度勾配遠心分離によって末梢血からBリンパ球を単離する。界面に赤血球から分離された単核細胞と、大部分を占める多核細胞との集団が得られる。次いでBリンパ球集団は骨髄腫細胞と融合させることができ、また、パニング方法(すなわち、抗体で被覆された基質に結合してBリンパ球の特異的接着を可能にする)によって任意段階として補足的に精製できる。この細胞はスチールウールを被覆したナイロン結合抗体を入れた、Bリンパ球を含む種々の細胞集団の溶離を可能にするカラムでフィルタリングすることもできる。
【0062】
これらの技術は高純度の細胞集団を供給するFACS(登録商標)によるソーティングの前の予備段階となる。
別の方法はBリンパ球を組織、特に脾臓、胸腺、骨髄、リンパ節などのリンパ器官または口蓋扁桃のような粘膜に関連するリンパ組織から単離することからなる。
【0063】
局所免疫応答の場合には、リンパ球を免疫反応の部位で単離することができる。
こうして単離されたリンパ球を次いで菌糸細胞と融合し、次いで雑種細胞またはハイブリドーマをそれらの関連サイトカインとの親和性に従って選択する。次いで、所望の特異性を有する抗体を産生するハイブリドーマを同定し、継代培養によってクローン化する。関連サイトカインに対して高親和性抗体を産生するこのハイブリドーマによって産生された抗体はモノクローナル抗体画分(i)からなる。
【0064】
特定のタイプのBリンパ球は限界希釈培養によって単離することもでき、骨髄腫細胞と融合する前に、関連サイトカインに結合するように産生される抗体の能力に従って選択される。
【0065】
次いで、サイトカインに対する高親和性抗体を産生する能力によって選択されたBリンパ球またはハイブリドーマから得られるDNAを単離することができ、上記抗体のためのDNA配列コードを分子生物学で一般的な技術に従って増幅することができる。こうして増幅されたDNAを次いで細胞に挿入することによって、選択されたBリンパ球抗体の発現が可能になる。こうして産生された抗体は画分(ii)からなる。
【0066】
F(ab)またはF’(ab)’2断片(iii)はポリクローナル抗体で説明したものと同じ酵素方法に従って単離できる。
scFv断片(iv)または「一本鎖可変断片」は下記方法に従って合成できる。
【0067】
重鎖の可変ドメインおよび軽鎖の可変ドメインのためのDNAコード配列は、Bリンパ球または上記のハイブリドーマから得られるDNAから選択される。この選択は分子生物学で一般的な技術に従って特異プライマーを選択することによって行うことができる。次いで、このようなDNA配列を全体が可変ドメインに結合する合成ペプチドをコード化する配列で、発現ベクター内でクローン化する。
【0068】
上記の発現ベクターを次いで宿主細胞に挿入する。抗体および抗体断片を発現するのに適した発現ベクターおよび宿主細胞の例を以下に挙げる。
scFv断片の合成に極めて適した宿主細胞の例としては、下記文献に開示されているようなミラビリス変形菌からのL型細胞が挙げられる。
【非特許文献4】Rippmann et al.(1998)
【0069】
scFv断片の合成によって、上記断片の寸法が小さいことによる特殊な利点、すなわち組織中に容易に拡散することができるという利点を得ることができる。
さらに、F(ab)およびF(ab)’2断片をscFv断片で説明した方法に従って合成することもできる。
【0070】
本発明の好ましい実施例ではないが、本発明の中和抗サイトカインヒト天然抗体を組換え抗体にすることができる。この実施例では、上記方法に従って選択されたBリンパ球またはハイブリドーマから得られるDNA断片を修飾する。特に、これらの断片の関連サイトカインとの親和性を高めるために、上記抗体の可変ドメインのためのDNAコード、特に重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変ドメインのためのDNAコードをランダムに突然変異させることができる。可変ドメインは、自然免疫応答中の抗体の親和性の成熟の原因である体細胞突然変異に類似の方法に従ってCDR3領域で突然変異させることもできる。インビトロでの親和性の成熟は、VLおよびVHドメインを増幅して突然変異させるためにランダム突然変異を示すCDR3領域の相補プライマーを用いて、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)によって、VLおよびVHドメインをコード化する配列を増幅することによって行うことができる。これらのドメインを次いで、関連サイトカインに結合する能力に従って新たに選別し、サイトカインとの親和性が最も強いドメインを選択する。次いで、VLおよびVHドメインをコード化するDNAを、これらの配列が得られる抗体の定常部をコード化する配列または他の任意の免疫グロブリンの定常部をコード化する配列に再挿入する。
【0071】
こうして得られたDNA配列は完全組換え抗体またはscFv断片またはVHまたはVドメインのためのコード配列であり、次いで、以下に例を挙げる発現ベクターおよび宿主細胞に導入される。
【0072】
本発明の定義に含まれるその他の抗体は、VLおよびVHドメインのためのcDNAコードを用いて調製できる、発現ファージライブラリを用いたスクリーニングによって得ることができる。これらのcDNAはヒトリンパ球から得られるmRNAから調製される。これらのライブラリの調製方法はそれ自体公知である。このような発現ファージライブラリの例としては、Pharmaciaから市販の「組換えファージ抗体系」が挙げられる。発現ファージライブラリの獲得およびスクリーニングの例は下記文献に記載されている。
【特許文献8】米国特許第5,223,409号明細書
【特許文献9】国際特許出願第WO92/20791号公報
【0073】
本発明の好ましい実施例では、上記のような抗サイトカインヒトモノクローナル抗体は、類似のサイトカインに結合する特性を有するVHおよびVLドメインを選択するのに用いられる。この選択は例えばエピトープインプリンティング法または下記文献に開示された方法で行われる。この方法に従って用いられる抗体ライブラリはscFvライブラリであるのが好ましい。
【特許文献10】国際特許出願第WO93/06213号公報
【0074】
VHおよびVLドメインを選択した後、これらを混合し、次いで、選択されたサイトカインに結合するそれらの能力に従って選別する。VHおよびVLドメイン対をコード化するDNA配列を、選択されたサイトカインとの親和性を高めるために、次いで、ランダムに突然変異させることができる。自然免疫応答中の抗体の親和性の成熟の原因である体細胞突然変異に類似の方法に従ってCDR3領域でVHおよびVLドメイン対を突然変異させることもできる。
【0075】
インビトロ親和性の成熟はサイトカインに結合するその能力によって選択されたBリンパ球のDNAに関して以下で説明する方法に従って行うことができる。次いで、選択されたVHおよびVLドメインのアミノ酸配列は、例えば第1スクリーニング中に用いられたライブラリの型によって配列に差が生じるので、これらを生殖系列の対応するアミノ酸配列と比較することができる。この場合には、初期のアミノ酸配列を見つけるために、対応するDNA配列において復帰突然変異を行うのが有用である。
【0076】
このような復帰突然変異は分子生物学で一般的な方法に従って行うことができ、それによって部位特異的突然変異誘発のような特異的突然変異を導入することができる。
このような選択の後で、関連抗原をコード化する核酸を通常の技術に従って発現ベクター中でクローン化することができる。核酸は本発明の定義に含まれる他の抗体を発生させることからなる追加の段階を行うこともできる。この段階は例えば、追加の定常部のような追加の免疫グロブリンドメインのためのコード配列の追加にすることができる。
【0077】
組換え抗体または抗体画分をコード化するDNA配列、特にVHおよびVLドメインを、関連サイトカインに結合するその能力によって選択される組換え抗体を産生するために、適当な細胞系譜、例えばハイブリドーマの調製に用いられる骨髄腫細胞を産生する非抗体に導入することができる。
このDNA配列は以下で説明するような哺乳類の宿主細胞に導入される組換え発現ベクター中でクローン化することもできる。
【0078】
好ましい宿主細胞はCHO細胞(チャイニーズハムスター卵巣)、骨髄腫細胞NSO、COS細胞およびSP2細胞である。これらの抗体をコード化する配列を含む発現ベクター、組換え抗体、および、抗体断片が宿主細胞に導入されると、これらの細胞はこれらの抗体またはこれらの断片が宿主細胞中で産生され、好ましくは宿主細胞が位置する培地に放出されるのに十分な長さの時間の間、培養される。次いで、標準蛋白精製法によって抗体を回収する。
【0079】
医薬組成物および投与
本発明の組成物は抗体断片を含む上記抗サイトカインヒト天然抗体を中和する医薬組成物であるのが好ましい。特に、本発明の組成物は少なくとも一種の生理学的に許容される賦形剤をさらに含む。
【0080】
「生理学的に許容される賦形剤」とは例えば溶媒、分散媒、抗菌剤、抗真菌剤または等張に達することができる希釈剤である。本発明のこれら賦形剤の中では水、リン酸緩衝液、ブドウ糖、グリセロール、エタノールおよびこれらの化合物が挙げられる。この組成物には糖、多価アルコール、例えばマンニトールまたはソルビトールまたは塩化ナトリウムのような等張剤をさらに添加するのが好ましいことが多い。この組成物は効率を高める乳化剤、防腐剤または緩衝液のような補助剤をさらに含んだり、本発明の組成物の使用時間を長くすることができる。
【0081】
本発明組成物は種々の形態にすることができ、例えば、注射前に注入することを目的として液体または固体または半固体の投与量の形にすることができる。その他の形態としては例えば懸濁液、分散体、錠剤、粉末、リポソームまたは坐薬が考えられる。好ましい組成物は本明細書に開示した抗体以外の抗体をヒト受動ワクチン接種するためにある注射液と類似の注射液の形態で存在する。これらの組成物の好ましい投与方法は非経口経路(例えば皮下または筋肉内経路)または静脈内経路である。
【0082】
本発明の組成物は通常の製造/保存条件で無菌且つ安定でなければならない。本発明組成物は溶液、 マイクロエマルジョン、分散体、リポソームやその他の構造にすることができる。無菌の注射用組成物の調製は活性成分、すなわち抗体または抗体断片を適当な量の溶媒やその他の上記の賦形剤に取り込み、次いで、濾過による滅菌によって行うことができる。
【0083】
場合によって、本発明の組成物はサイトカインの活性を中和する上記のような第1のタイプの抗体と、例えばサイトカインの周知の受容体または標的に対する第2のタイプの抗体とを含むことも考えられる。
サイトカインの多面的な役割、特に炎症反応および感染反応での役割を考慮すると、本発明の組成物を炎症、感染、喘息または移植片拒絶あるいは自己免疫疾患の克服に関与する追加の活性成分と組み合わせるのが有利であろう。
【0084】
本発明の抗体と組み合わせて用いることができる炎症を克服するための治療薬の例は下記の通り:
ブデソニド、副腎皮質ステロイド、シクロスポリン、スルファサラジン、アミノサリチル酸塩、6−メルカプトプリン、アザチオプリン、メトロニダゾール、リポキシゲナーゼ抑制剤、メサラミン、オルサラジン、バルサラジド、抗酸化化合物、トロンボサン抑制剤Il−10受容体アンタゴニスト、抗IL−1βモノクローナル抗体、抗IL−6モノクローナル抗体、エラスターゼ抑制剤、可溶な形態の1型補体受容体等。
【0085】
本発明の抗体と組み合わせて用いることができる感染を克服するための治療薬の例は抗生物質、鉄キレート剤、脂質で再構成されたアポリポ蛋白1、ヒドロキサム酸(合成抗菌剤)である。
【0086】
本発明の医薬組成物は「医薬上効率的な量」の本発明の抗体または抗体断片を含むことができる。「医薬上効率的な量」とは求められる治療結果に至ることができる投与量および十分な時間での効率的な量を意味する。この量は種々の要因、例えば治療患者の病理学的状態、性別、体重および年齢並びに患者に効果をもたらす上記抗体の能力によって変化する。このような量によって本発明の組成物での治療がもたらす利益よりも、副作用または毒作用が低くなる。
投与量は最適な応答が得られるように適合させることができる。例えば、医薬組成物は単一投与量または一定時間ごとに投与する複数投与量で投与できる。
【0087】
本発明の使用
本発明組成物に含まれる抗体のサイトカインへの結合能力から、本発明抗体は親和クロマトグラフィ、「エリザ(ELISA)」型技術(酵素結合免疫吸着検定法)または「RIA」(ラジオイムノアッセイ)のような通常の技術を用いてサイトカインをインビトロで検出するのに用いることができる。
【0088】
従って、本発明はサンプル中のサイトカインを検出する方法に関する。この方法は本発明の上記組成物を分析すべきサンプルと接触させる段階と、抗体とサイトカインとの間に形成される複合物を検出する段階とを含む。
複合体の検出を容易にするために、検出可能な物質、例えば西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼのような酵素、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンのような補欠分子団、ウンベリフェロン、フルオレッセイン、ローダミン、フィコエリトリンのような蛍光分子、または、125I、131I、35S、または3Hのような放射性分子によって上記抗体を標識化することができる。
【0089】
本発明はさらに、競合阻害を介した滴定によって未知の成分のサンプルにおけるサイトカインの存在および量を検出する方法に関する。この方法では本発明抗体と標識化した関連サイトカインとを用いる。
この定量方法では生物サンプル、本発明の標識化関連サイトカインおよび抗体を組み合わせ、次いで、抗体と結合する関連サイトカインの量を求める。サンプル中のサイトカインの量は本発明抗体と結合する関連サイトカインの量と逆相関である。
【0090】
本発明はさらに、下記に関するものである:
(1)癌治療用医薬組成物の製造での抗VEGF抗体の使用。
(2)免疫抑制状態を治療するための医薬組成物の製造での抗IFNα抗体の使用。
(3)アレルギー治療用医薬組成物の製造での抗IL−4抗体の使用。
(4)免疫抑制状態を治療するための医薬組成物の製造での抗TNFα抗体の使用。
(5)レトロウイルスによる感染の治療または大腸癌、乳癌および前立腺癌から成る群の中から選択される癌の治療のための医薬組成物の製造での抗TGFβ抗体の使用。
【0091】
本発明による治療方法
本発明組成物は抗サイトカインワクチン接種の枠組みの中で、通常のワクチン接種の予備段階として好ましく用いることができる。ストローマの免疫毒性作用を中和またはブロックすることと、抗原アグレッサーに対して適合された免疫反応を正常に展開できるようにすることが目標である。
【0092】
従って、本発明のさらに他の対象は少なくとも下記の段階を含む治療方法にある:
(i)本発明の組成物を患者に投与する段階、
(ii)抗原または抗原の化合物に対して求められる免疫応答を誘発する抗原または抗原の化合物を含む免疫原性組成物をこの患者に投与する段階。
上記の2つの段階によって患者の免疫応答を再構築することができ、その後、免疫崩壊の原因となる剤に対するワクチンを患者に接種する。
【実施例】
【0093】
実施例1
KLH−ヒト−VEGFヘテロ複合体
このヘテロ複合体の主目的はヒトVEGFを中和する抗体の産生をワクチン接種患者の体内で誘発することにある。
0.58mgのKLH蛋白を0.5mlのpH8.5の10mM燐酸緩衝液に溶解する。この溶液に同じ緩衝液1mlに1mgのヒトVEGFを溶解したものを添加する。こうして得られた混合物をグルタルアルデヒドを用いて最終濃度が0.026Mとなるように室温で30分間処理する。次いで、過剰グルタルアルデヒドを2時間の透析を3回続けて除去する。各透析は透析膜中で4℃でカットオフ閾値3kDaにしてpH7.6の10mM燐酸緩衝液200mlに対して行う。次に、混合物をホルムアルデヒドを用いて33mMの最終濃度で24時間処理した後、最後に0.1Mのグリセリンを室温で1時間添加して反応を止める。混合物を前回行った透析と同じ条件下で透析する。
【0094】
実施例2
KLH-IFNαヘテロ複合体の調製
このコンジュゲートの主目的はヒトIFNαを中和する抗体の産生をワクチン接種個体中で誘発することにある。
0.625mgのKLH蛋白を0.6mlのpH8.5の10mM燐酸緩衝液に溶解する。この溶液に、同じ緩衝液1mlに1mgのヒトIFNαを溶解したものを添加する。こうして得られた蛋白混合物をグルタルアルデヒドを用いて0.026Mの最終濃度で室温で30分間処理する。次いで、過剰グルタルアルデヒドを2時間の透析を3回続けて除去する。各透析は透析膜中で、pH7.6の10mM燐酸緩衝液200mlに対して、カットオフ閾値3kDa、4℃で行う。次に、混合物をホルムアルデヒドを用いて33mMの最終濃度で48時間処理した後、最終0.1Mのグリセリンを室温で1時間添加して反応を止める。最後に、前回行った透析と同じ条件下で混合物を透析する。
【0095】
実施例3
ヒトKLH-IL−4ヘテロ複合体の調製
このヘテロ複合体の主目的はヒトIL−4を中和する抗体の産生をワクチン接種個体中で誘発することにある。
1mgのKLH蛋白を1mlのpH 8.5の10 mM燐酸緩衝液に溶解する。この溶液に、同じ緩衝液1mlに1mgのマウスIL−4を溶解したものを添加する。こうして得られた蛋白混合物をグルタルアルデヒドを用いて0.026 Mの最終濃度で室温で30分間処理する。次いで、過剰グルタルアルデヒドを2時間の透析を3回続けて除去する。各透析は透析膜中で、pH 7.6の10 mM燐酸緩衝液200 mlに対して、カットオフ閾値3 kDa、4°Cで行う。次に、混合物をホルムアルデヒドを用いて33mMの最終濃度で24時間処理した後、最終0.1 Mのグリセリンを室温で1時間添加して反応を止める。最後に、前回行った透析と同じ条件下で混合物を透析する。
【0096】
実施例4
マウスKLH-TNFαヘテロ複合体の調製
このコンジュゲートの主目的はマウスTNFαを中和する抗体の産生をワクチン接種個体中で誘発することにある。
0.625mgのKLH蛋白を0.6mlのpH8.5の10mM硼酸緩衝液、150mM NaClに溶解する。この溶液に、同じ緩衝液1mlに1mgのヒトIFNαを溶解したものを添加する。こうして得られた蛋白混合物をグルタルアルデヒドを用いて0.026Mの最終濃度で室温で45分間処理する。過剰グルタルアルデヒドを次いで4時間の透析を3回続けて除去する。各透析は透析膜中で、pH7.6の10mM 150mM NaClリン酸緩衝液200mlに対して、カットオフ閾値3kDa、4℃で行う。次いで、混合物をホルムアルデヒドを用いて33mMの最終濃度で48時間処理した後、最終0.1Mのグリセリンを室温で1時間添加して反応を止める。最後に、前回行った透析と同じ条件下で混合物を透析する。
【0097】
実施例5
VEGF生物活性アッセイ
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)をミクロ培養プレートの平底ウエルで3000細胞/ウエルの細胞密度で培養した。次いで、培養した内皮細胞に抗体の各希釈液を加える。細胞培養は5%CO2を含む湿った雰囲気中で37℃で3日間連続して行った。培養終了18時間前に0.5μCiのトリチウムチミジン/ウエルを加える。
中和した抗体はマウスVEGFが内皮細胞の増殖を誘発するのを防止し、中和していない抗体はこのような細胞の増殖を許す。
【0098】
実施例6
ヒトIFNα生物活性アッセイ
MDBK細胞をミクロ培養プレートの丸底ウエルで350,000細胞/ウエルの密度で培養した。次いで、MDBK細胞にIFNαの各希釈液を加える。5%CO2を含む湿った雰囲気中で37℃で20時間細胞培養した後、希釈液を除去し、細胞を洗浄し、次いで、100LD50(50%致死量)を含むVSVウイルス100μlを加える。ウイルス添加から18時間後にウイルスの溶解作用を測定する。中和した抗体はVSVが細胞を溶解するの可能にするが、中和していない抗体はこのような溶解を阻止する。
【0099】
実施例7
ヒトIL−4生物活性アッセイ
このアッセイはヒトIL−4に依存して成長するヒト細胞系譜であるTF−1細胞を用いる(下記文献参照)。
【非特許文献5】Kitamura,T.et al.,1989.J.CellPhysiol.140:323−34
【0100】
TF−1細胞はミクロ培養プレートの丸底ウエルで10000細胞/ウエルの細胞密度で培養した。次いで、TF−1細胞に各希釈液を加える。細胞培養は5%CO2を含む湿った雰囲気中で37℃で3日間連続して行った。培養終了4時間前に0.5μCiのトリチウムチミジン/ウエルを加える。
中和した抗体はヒトIL−4がTF-1細胞の増殖を誘発するのを防止し、中和していない抗体はこのような細胞の増殖を許す。
【0101】
実施例8
TNFα生物活性アッセイ
L929細胞はミクロ培養プレートの平底ウエルで培養した。次いで、この細胞にTNFαの各希釈液を加える。細胞培養は5%CO2を含む湿った雰囲気中で37℃で3日間連続して行った。培養終了4時間前に5mg/mlのMTTを加える(MTTはSIGMA Chemical、St−Louis、Mo社で入手可能である)。
中和した抗体はTNFαが内皮細胞の死を誘発するのを防止し、中和していない抗体に関してはその逆である。
【0102】
実施例9
本発明の抗体の生物活性と市販の中和抗体との比較
実施例9.1:ヒトにおける抗インターフェロンαポリクローナル抗体の産生
ジメチルホルムアミドによる化学処理で不活性化したヒトインターフェロンαを筋肉内径路で投与することによって志願者の個体群を免疫化した。各志願者個体に0、7、14、21日および42日に710gの不活性化IFNαを注射した。
抗インターフェロンα抗体の産生曲線を時間の関数で求める。産生ピーク時(こうして発生した抗IFNα IgGアイソタイプ免疫グロブリンのレベルが約9.5μg/mlであるとき)に、各ワクチン接種個体から20mlの血液サンプルを採取し、血清プールを調製した。血清プールの抗インターフェロンαの活性をELISAで求めると、抗体力価は128,000であることがわかった(0日が0.300である希釈液の逆)。
35%飽和で硫酸アンモニウム沈殿((NH42SO4)によって血清プールの一部からIgG画分を単離した。透析後、こうして得られた収率80%のIFNα活性を中和するIgG抗体を含む溶液が示したELISAの結果は512,000であった。
抗インターフェロンα血清全体、および、この血清から得られるIgGの中和効力(1 UIのヒトインターフェロンαの生物活性を50%抑制できる抗体の量)はそれぞれ、0.004μgおよび0.001μgであった。
【0103】
【表1】

【0104】
[表1]は上述のように産生した抗インターフェロンαポリクローナル抗体の中和効力と、市販の抗体の中和効力とを比較したものである。上述のように産生した抗体で得られる中和効力はマウスモノクローナル抗体で得られる力価の約200倍である。
【0105】
(1)IFNαに対するウサギポリクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から参照番号N゜31100−1で入手可能)
(2)IFNαに対するヒツジポリクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から製造番号N゜31130−1で入手可能)
(3)IFNαに対するマウスモノクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から製造番号N゜21105−1で入手可能)
【0106】
実施例9.2
ヒト個体中での抗IL−4ポリクローナル抗体の産生
KLH−ヒトIL−4コンジュゲートを筋肉内投与することによって被験志願者を免疫化した。
ジメチルホルムアミドで化学的に不活性化した120μgのヒトIL−4を各被験者に0、21、60日に注射した。
抗IL−抗体の産生曲線を時間の関数で求めた。抗体合成のピーク時(こうして発生した抗IL−4 IgGアイソタイプ免疫グロブリンのレベルが約12μg/mlであるとき)に、血液サンプルを採取し、抗IL−4血清を収集した。血清活性をELISAで測定すると、抗体力価は512,000であることがわかった(ELISA測定値が0.300である血清希釈液の逆)。抗IL−4抗体を含むIgG画分を分離した後で、この画分をペプシンで消化し、且つ、F(ab’)2抗体断片を収率60%で収集した。ELISA活性を求めると、測定値は310,000であった。抗IL−4血清全体の中和効力(0.5ngのインターロイキン−4の活性を50%抑制できる抗体の量)は0.02μgになるように、且つ、F(ab’)2は0.1μgになるように設定した。
【0107】
【表2】

【0108】
[表2]は上述のように産生した抗IL−4ポリクローナル抗体の中和効力と、市販の抗体の中和効力とを比較したものである。上述のように産生した抗体で得られる抗体力価はマウスモノクローナル抗体で得られる抗体力価の約50倍である。
【0109】
(1)IL−4に対するヤギポリクローナル抗体(R&D社から参照番号N゜AF−204−NAで入手可能)
(2)IL−4に対するウサギポリクローナル抗体(Peprotech社から参照番号N゜500−P24で入手可能)
(3)IL−4に対するマウスポリクローナル抗体(R&D社から参照番号N゜MAB204で入手可能)
【0110】
実施例9.3
マウスにおける抗マウスVEGFポリクローナル抗体の産生
実施例7.1および7.2で述べた方法と同じ方法を用いた。KLH−マウスVEGFヘテロ複合体を投与することによって20匹のマウス群を免疫化した。ジメチルホルムアミドで化学的に活性化した20μgのVEGFを各マウスに0、7、14、21日および42日に注射した。
抗VEGF抗体の産生曲線に関しては、応答のピーク時に全てのマウスから血液サンプルを採取し、抗VEGF血清のプールを調製した。
35%飽和で(NH42SO4を用いた沈殿によってIgG画分を単離した。ELISA活性を求めると、256,000であり、IgG画分の中和活性(0.5ngのマウスVEGFの活性を50%抑制できる抗体の量)は0.012μgであった。
【0111】
【表3】

【0112】
[表3]は上述のように産生した抗マウスVEGFポリクローナル抗体の中和効力と、市販の抗VEGF抗体の中和効力とを比較したものである。
(1)VEGFに対するヤギポリクローナル抗体(R&D社から参照番号AF−293−NAで入手可能)
(2)VEGFに対するウサギポリクローナル抗体(Peprotech社から製造番号N゜500−P10で入手可能)
(3)VEGFに対するマウスポリクローナル抗体(R&D社から参照番号N゜MAB293で入手可能)
【0113】
実施例9.4
ヒトIFNαに対する組換えモノクローナル抗体の産生
原料
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)は化学的に活性化されたヒトIFNαで免疫化した被験者から得られる。
B95−8細胞系譜の培養上澄みからエプスタイン・バーウイルス(EBV)を調製し、105TD50/mlの濃度で用いた。
【0114】
培養
ヒトPBMCをフィコール密度勾配で精製し、次いで、ウイルスに感染させた。EBVによってトランスフォームした細胞を次いで丸底の96ウェルの培養プレート上で、20%のウシ胎児血清SVF(Gibco BRL、Life Technologies)を添加したRPMI1640(培地)(GIBCO BRL、Life Technologies)を用いて5×103−104/mlの細胞濃度で培養した。培地を4日ごとに交換した。4〜6週の細胞培養後に、細胞を24ウエルのプレートに移し、次いで、6ウエルの培養プレートに移した。次いで、培養上澄みをELISA技術で分析する。
【0115】
クローンを産生する抗IFNαモノクローナル抗体の選択
抗IFNα抗体を産生するクローンを選択し、細胞大量培養する。モノクローナル抗体をセファロース蛋白Aカラム上で吸着することによって培養上澄みから精製した。こうして産生したモノクローナル抗体を吸着によって精製した。精製された抗IFNαモノクローナル抗体を含む溶液はモノクローナル抗体中の含有量が1mg/mlであり、中和活性(1 UIのIFNαの活性を50%抑制できる能力)すなわちND50が少なくとも0.7μgである。
抗体を産生するこれらのクローンは、本明細書に開示された当業者に周知なファージディスプレイ技術を用いることによって、ヒトIFNαに対するヒトモノクローナル抗体を産生するための高親和性の高収率細胞原料である。
【0116】
【表4】

【0117】
[表4]は上述のように産生したIFNαモノクローナル抗体の中和効力と、市販の抗体の中和効力とを比較したものである。
上述のように産生した抗体で得られる抗体力価はマウスモノクローナル抗体で得られる抗体力価の約50倍である。
【0118】
(1)IFNαに対するウサギポリクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から参照番号N゜31100−1で入手可能)
(2)IFNαに対するヒツジポリクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から参照番号N゜31130−1で入手可能)
(3)IFNαに対するマウスモノクローナル抗体(PBL Biomedical Pharmaceutical社から製造番号N゜21105−1で入手可能)
【0119】
実施例10
担体蛋白分子(KLH)と結合したサイトカインの割合の二重サンドイッチELISA技術による測定
担体蛋白分子(KLH)と結合したサイトカインの割合を、担体蛋白に対して特異的な捕獲蛋白を用いた二重サンドイッチELISA技術によって決定した。
10mM燐酸緩衝液、pH7.3の150mM NaCl(PBS)に希釈されたKLH(1mg/ml)に対して産生された100μlのウマポリクローナル抗体をミクロタイタープレート(結合性が高いCostar)のウェル中で37℃で2時間結合させる。PBS/0.1%Tween20(PBST)中で3回洗浄した後、2%のPBSを含むPBSでウェルを飽和する。
【0120】
1時間30分飽和した後、ウェルをPBSTで3回洗浄し、次に、全く同一に2つずつ製造したへテロ複合体の希釈液(10、5、2.5、1.25、0.625、0.312および0.156μg/ml)をウェル中に添加する(100μl/ウェル)。
2時間培養した後、ウェルをPBSTで3回洗浄する。洗浄緩衝液中に存在する解離剤のTweenで捕獲抗体に特異的に結合されたKLHと共有結合で連結されていない分子を全て除去する。
次に、両方のヘテロ複合体希釈液を2つの異なる方法で処理する:
a) 第1セットはKLHに対する抗体と一緒に培養する。
b) 第2セットはサイトカインに対する抗体と一緒に培養する。
【0121】
37℃で1時間30分培養後、ウェルを前回と同様に洗浄し、次に、第1の抗体の初期動物種に対する、ペルオキシダーゼと結合した二次抗体と一緒に培養する。37℃で1時間30分培養後、抗体を再度洗浄する。次いで、ペルオキシダーゼ、すなわちオルト−フェニレンジアミン(OPD)の支持体を添加して捕獲抗体に結合されたKLHの存在およびKLHに共有結合で連結されたサイトカインの存在を検出する。
捕獲抗体に結合されたKLHの量、次いで、KLHに共有結合で連結されたサイトカインの量をELISAで作成した較正曲線によって計算する。
こうしてKLHに共有結合で連結されたサイトカインの割合が決定される。
【0122】
書誌参照
1) Eastcott JW, Holmberg CJ, Dewhirst FE, Esch TR, Smith DJ,Taubman MA. (2001) Oligonucleotide containing CpG motifs enhances immune response to mucosally or systemically administered tetanus toxoid. Vaccine. 2001 Feb 8;19(13-14):1636-42.
2) Gallichan WS, Woolstencroft RN, Guarasci 1, McCluskie MJ, Davis HL, Rosenthal KL. (2001) Intranasal immunization with CpG oligodeoxynucleotides as an adjuvant dramatically increases IgA and protection against herpes simplex virus-2 in the genital tract. J lmmunol.
2001 Mar 1;166(5):3451-7.
3) Kitamura T, Tange T, Terasawa T, Chiba 5, Kuwaki T, Miyagawa K, Piao YF, Miyazono K, Urabe A, Takaku F.. (1989) Establishment and characterization of a unique human cell line that proliferates dependently on GM-CSF, IL-3, or erythropoietin. J Cell Physiol Aug;140(2):323-34.
4) McCluskie MJ, Weeratna RD, Davis HL (2000) Intranasal immunization of mice with CpG DNA induces strong systemic and mucosal responses that are influenced by other mucosal adjuvants and antigen distribution. Mol Med. Oct;6(10):867-77.
5) Rippmann JF, Klein M, Hoischen C, Brocks B, Rettig WJ, Gumpert J, Pfizenmaier K, Mattes R, Moosmayer D. (1998) Procaryotic expression of single-chain variable-fragment (scFv) antibodies: secretion in L-form cells of Proteus mirabilis leads to active product and overcomes the limitations of periplasmic expression in Escherichia coli. AppI Environ Microbiol. 1998 Dec;64(12):4862-9.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択されるヒトサイトカインの活性を中和するIgGアイソタイプのヒト天然抗体を活性成分として含み、この中和抗体がインビトロで上記サイトカインによって誘発される生物活性の最大値の少なくとも50%を抑制する医薬組成物。
【請求項2】
上記中和ヒト抗体が、(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される抗原蛋白分子と、(ii)担体蛋白分子とで構成され、抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合している免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物で免疫化した個体からの血清またはB細胞から得たものである請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
インビトロでのサイトカインの最大生物活性がそれぞれ下記によって誘発される請求項1または2に記載の医薬組成物:
(i)0.5ngのVEGF
(ii)0.006ngのIFNα
(iii)0.5ngのIL−4
【請求項4】
中和抗体がポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の中から選択される請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリクローナル抗体が下記の中から選択される請求項4に記載の組成物:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体の血清から精製した抗体の全画分、
(ii)サイトカインの活性を中和する単一特異性ポリクローナル抗体の精製画分、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片。
【請求項6】
モノクローナル抗体が下記の中から選択される請求項4に記載の組成物:
(i)ヒトサイトカインに対して免疫化したヒトの個体からのB細胞(a)と、骨髄腫のような細胞系譜を産生する抗体の細胞(b)との間の細胞融合から生じる細胞によって産生される抗体、
(ii)免疫化によって誘発され且つ免疫化した患者の血清中に存在する抗体を再現する免疫グロブリンをコード化するDNAでトランスフェクトまたはトランスフォームした細胞によって産生される抗体であって、このDNAはサイトカインに対して免疫化したヒトのB細胞のDNAから予め単離されている抗体、
(iii)上記ポリクローナル抗体(i)および(ii)から調製されたFabまたはF(ab)’2断片
(iv)ScFv断片。
【請求項7】
少なくとも一つの生理学的に許容される賦形剤をさらに含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
VEGF、IFNα、IL−4およびTGFβの中から選択されるヒトサイトカインの生物活性を中和するヒト抗体を高収率に得る方法であって、
下記(i)と(ii):
(i)個体の血清に含まれる免疫グロブリン、または、
(ii)個体のB細胞によって産生される免疫グロブリン
を精製する少なくとも(a)段階を含み、個体は、(i)VEGF、IFNα、IL−4、TNFαおよびTGFβの中から選択される抗原蛋白分子と、(ii)担体蛋白分子とを組み合わせたもので構成される免疫原性蛋白ヘテロ複合体からなる安定な免疫原性産物で予めサイトカインに対して免疫化され、上記抗原蛋白(i)の40%以下が担体蛋白分子(ii)に共有結合で結合していることを特徴とする方法。
【請求項9】
上記(a)段階の最後に得られる免疫グロブリン画分からGアイソタイプ免疫グロブリンを精製する(b)段階をさらに含む請求項8に記載の方法。
【請求項10】
サイトカインの生物活性を中和するモノ特異性ポリクローナル抗体を得る追加の段階をさらに含む請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
サイトカインの生物活性を中和するF(ab)またはF(ab)’2断片を得る追加の段階をさらに含む請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
下記の追加の段階をさらに含む請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法:
i)ハイブリドーマ系譜を得るために(a)段階の最後に得られるB細胞を骨髄腫からの細胞と融合させる段階と、
ii)これらのハイブリドーマによって産生された抗体を回収する段階。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗VEGF抗体の癌治療用医薬組成物の製造での使用。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗IFNα抗体の免疫抑制状態の治療用の医薬組成物の製造での使用。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗IL−4抗体のアレルギー治療用医薬組成物の製造での使用。
【請求項16】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗TNFα抗体の免疫抑制状態の治療用医薬組成物の製造での使用。
【請求項17】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の抗TGFβ抗体の、レトロウイルスによる感染の治療用または大腸癌、乳癌および前立腺癌の中から選択される癌の治療用医薬組成物の製造での使用。

【公表番号】特表2007−533622(P2007−533622A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526669(P2006−526669)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050436
【国際公開番号】WO2005/028513
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504053287)
【Fターム(参考)】