説明

ヒトパピローマウイルスmRNAを検出するための方法

【課題】子宮頸癌を発症するその危険性を評価するためにヒト女性被験者をスクリーニングするインビトロ方法を提供する。
【解決手段】ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子および場合によりL1遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現について陽性である被験者が、子宮頸癌を発症する危険性を有するとして評価される。そのような方法を実施するためのキット。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、ヒト被験者を、子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにスクリーニングするインビトロ方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
子宮頸癌は、世界中で最も一般的な悪性疾患の1つであり、女性の間では罹病および死亡の主要な原因の1つである(Parkin DM、Pisani P、Ferlay J(1993)、Int J Cancer、54:594〜606;Pisani P、Parkin DM、Ferlay J(1993)、Int J Cancer、55:891〜903)。15,700人の新規の侵襲性子宮頸癌患者が1996年に米国では予測されたが、世界中での年間発生数は、世界保健機構により、45万人であると推定されている(1990)。年間発生率は世界の地域によって異なり、西アジアにおける10万人あたり7.6人から、南部アフリカにおける10万人あたり46.8人までの範囲に及ぶ(Parkin等、1993、同上)。
【0003】
子宮頸癌の現在の概念は、子宮頸癌は、多くの場合には10年〜25年の期間にわたって発達する多段階の疾患であるということである。子宮頸部の侵襲性扁平上皮癌は、基底膜の貫通、および間質または上皮粘膜固有層を侵襲することによって表される。子宮頸癌の臨床経過はかなりの変動を示す。予後は、臨床的段階、リンパ節の関与、原発性腫瘍の大きさ、組織学の型、侵襲の深度、およびリンパ管内蔓延に関連づけられている(Delgado G等(1990)、Gynecol Oncol、38:352〜357)。腫瘍の特徴があまり好ましくない患者の中には、比較的良好な結果を有する患者がいる一方で、初期段階に限定された疾患の致死的結果を受ける患者がいる。このことは、危険性に適合した治療を施すために、新たに診断された子宮頸癌を更に特徴づけるための更なるマーカーが明らかに必要であることを示している(Ikenberg H等、Int.J.Cancer、59:322〜6、1994)。
【0004】
子宮頸癌の疫学は、宗教、結婚および性の行動様式と強い関連を示している。約100例の患者対照研究により、HPVと子宮頸部腫瘍形成との関係が調べられ、ほぼすべてに明確な関連が見出されている(IARCモノグラフ、1995)。この関連は強く、一貫しており、かつ限られた数のウイルス型に対して特異的である(Munoz N、Bosch FX(1992)、HPVおよび子宮頸部腫瘍形成:患者対照研究およびコホート研究の概説、IARC Sci Publ、251〜261)。非常に有益な研究の中で、HPV16のDNAとの強い関連が、侵襲性癌および高悪性度のCIN病変について顕著な一貫性で観察されており、これにより、この関連が偶然、偏りまたは混同により説明され得るという可能性が排除されている(IARCモノグラフ、1995)。間接的な証拠により、癌細胞において検出されるHPVのDNAが、発癌のより初期におけるHPV感染の役割に対する良好なマーカーであることが示唆された。用量反応相関が、増大するウイルス負荷量と子宮頸癌の危険性との間で報告されている(MunozおよびBosch、1992、同上)。いくつかのより大規模な一連の試験において、最高で100%の腫瘍がHPV陽性であったが、ウイルス陰性の子宮頸癌の存在についてはまだ議論の余地がある(Meijer CJ等(1992)、細胞学に関連したポリメラーゼ連鎖反応による子宮頸切屑標本におけるヒトパピローマウイルスの検出:子宮頸癌スクリーニングのための考えられる意義、IARC Sci Publ、271〜281;Das BC等(1993)、Cancer、72:147〜153)。
【0005】
扁平上皮細胞の子宮頸癌において最も頻繁に見出されるHPVの型は、HPV16(41%〜86%)およびHPV18(2%〜22%)である。更に、HPVの31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、54型、56型、58型、59型、61型、66型および68型もまた見出されている(IARCモノグラフ、1995)。バルセロナで開催されたHPV2000国際会議において、HPVの16型、18型、31型および45型は危険性が高いとして定義され、その一方で、HPVの33型、35型、39型、51型、52型、56型、58型、59型、68型は中間の危険性であるとして定義された(Keerti V.Shah、71頁)。これら13種の高危険性HPVおよび中間危険性HPVはまとめて癌関連HPV型と呼ばれることが多い。
【0006】
多数の研究により、子宮頸部のスクリーニングにおけるHPV検査の潜在的な役割が調査されている(Cuzick等、子宮頸部スクリーニングプログラムの範囲でのヒトパピローマウイルス検査の役割に関する体系的概説、Health Technol Assess、3:14、1999)。
【0007】
Reid等(Reid R等(1991)、Am J Obstet Gynecol、164:1461〜1469)は、スクリーニングに関連してHPV検査に対する役割を最初に明らかにした。この研究は、性感染症診療所および婦人科専門医からの、危険性が高い女性に対して行われ、高感度(低ストリンジェンシー)のサザンブロットハイブリダイゼーションがHPV検出のために使用された。合計で1012名の女性が登録され、頸管造影法もまた、細胞学の可能な補助的手段として考慮された。23例のCIN II/III病変が全体で見出されたが、12例のみが細胞学によって検出されただけであった(52%の感度、92%の特異性)。HPV検査により、16例の高悪性度の病変が見出された。
【0008】
Bauer等(Bauer HM等(1991)、JAMA、265:472〜477)は、日常的な塗抹標本に参加した若い女性(大学生)における、MY09/11プライマー(Manos M等(1990)、Lancet、335:734)を使用したPCRに基づく初期の研究を報告している。彼らは、467名の女性において陽性率が46%であることを見出したが、これはドットブロットアッセイの場合(11%)よりもはるかに高いものであった。
【0009】
GP5/6プライマー(Van Den Brule AJ等(1990)、J Clin Microbiol、28:2739〜2743)によるPCRを用いた研究において、van der Brule等(Van Den Brule AJ等(1991)、Int J Cancer、48:404〜408)は、細胞学によって評価されるような子宮頸部腫瘍形成とのHPV陽性の相関が非常に強いことを示した。細胞学で陰性となった高齢の女性(35歳〜55歳)では、HPV陽性率はわずかに3.5%であったが、16型、18型、31型および33型のみを考慮した場合、HPV陽性率は1.5%に減少した。一方、転移していない元の位置にある組織学的癌を有する女性は全員がHPV陽性であり、90%が上記の4つの型の1つを有していた。細胞学的異常がそれほど重篤でない女性は、明らかな傾向を示す段階的な様式で、より低いHPV陽性率を有していた。
【0010】
Roda Housman等(Roda Housman AM等(1994)、Int J Cancer、56:802〜806)は、塗抹標本での異常を有する更なる1373名の女性を調べることによって、これらの観察結果を拡張させた。この研究ではまた、塗抹標本での結果の重篤度が増大することに伴う陽性率の増大が確認された。彼らはまた、HPV異種性のレベルが、低悪性度の塗抹標本に対して22種の型から、高悪性度の塗抹標本に対して10種の「危険性が高い」型に減少したことを認めた。この論文では、細胞学的に陰性の女性が全く含まれず、また、細胞学的疾患が組織学的に確認されていなかった。
【0011】
Cuzick等(Cuzick J等(1992)、Lancet、340:112〜113;Cuzick J等(1994)、Br J Cancer、69:167〜171)は、HPV検査が、ランダムスクリーニング時に検出された細胞学的異常の分類のために有用な情報をもたらすことを最初に報告した。膣鏡診のために紹介された133名の女性の研究において、陽性予測値が42%であることが見出され、これは、中程度の核異型に対する陽性予測値と類似していた。この結果は、HPV16に対して最も顕著であった。この場合、HPV16について陽性である42名の女性のうちの39名が、高悪性度のCINを有していることが生検で見出された。この研究では、ウイルス負荷量を評価することの重要性が指摘されたが、危険性が高い型の高いレベルが陽性として見なされるだけであった。
【0012】
Cox等(Cox JT等(1995)、Am J Obstet Gynecol、172:946〜954)は、塗抹標本で境界線上の女性を分類するためにHybrid Capture(商標)システム(DIGENE Corporation、Gaithersburg、MD、米国)を使用してHPVを検査するための役割を明らかにした。この検査は、大学紹介サービスからの217名のそのような女性に対して実施され、93%の感度が、再度の細胞学について73%と比較されるが、CIN II/IIIについて見出された。高いウイルス負荷は、偽陽性を減少させることによって、性能を更に改善することが見出された。5RLUが切捨て値として採用されたとき、約24%のPPVが、感度の喪失を伴うことなく見出された。
【0013】
Cuzick等(Cuzick J等(1995)、Lancet、345:1533〜1536)は、家族計画診療所での日常的なスクリーニングに参加した1985名の女性における、一次スクリーニングに関連するHPV検査の評価を行なった。4つの一般的なHPV型に対する型特異的なPCRを使用した感度(75%)は、細胞学の感度(46%)を超え、そして陽性HPV検査に対するPPV(42%)は、中程度の核異型の場合(43%)と類似していた。
【0014】
国際公開公報第91/08312号には、HPV感染者の予後を決定するための方法が記載される。この方法は、サンプル中のE6および/またはE7のHPV遺伝子のすべてまたは一部分の転写物を検出することによってHPV活性のレベルを測定すること、そして、活性と、子宮頸部での重篤な腫瘍形成または癌腫に進行する危険性との間における以前に確立された関係を用いて、HPV活性の測定値を比較することを含む。
【0015】
国際公開公報第99/29890号には、遺伝子発現レベルの測定および分析に基づいてHPV感染を評価するための方法が記載される。具体的には、国際公開公報第99/29890号は、2つ以上のHPV遺伝子(例えば、HPVのE6、E7、L1およびE2)の発現レベルを測定し、その後、患者においてHPVに基づく疾患の病期を示すためにこれらの遺伝子の組合わせの発現比率を比較することに基づく方法を記載する。
【0016】
本発明者らは、HPVのL1mRNA転写物およびE6mRNA転写物の発現を陽性/陰性で単に明らかにすることに基づくだけであり、これら2つの転写物の発現レベルの正確な定量的測定、またはこれら2つの転写物の発現レベルの相違を明らかにすることを全く必要としない、HPV関連疾患の臨床的に有用な評価を行うことが可能であることを明らかにしている。この方法は技術的に簡便であり、また、好ましい実施形態では、中〜高処理能の形式での自動化が容易である。更に、本発明の方法を使用して得られる結果に基づいて、本発明者らは、HPV遺伝子の発現パターンにおける疾患に関連した分子変化に関係づけられ、かつCIN分類とは無関係である、子宮頸癌を発症する危険性に基づく患者分類のための新規な方式を規定している。
【0017】
従って、第1の態様において、本発明は、子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのL1遺伝子およびE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現についてスクリーニングすることを含み、L1mRNAおよび/または全長のE6mRNAの発現について陽性である被験者が、子宮頸癌を発症する危険性を有するとして評価される方法を提供する。
【0018】
本発明の方法における陽性のスクリーニング結果は、子宮頸部の細胞におけるL1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現が陽性であることによって示される。これらのmRNAのいずれか一方または両方のmRNAの発現が陽性であることは、被験者が子宮頸癌を発症する「危険性を有する」ということを示すものとして理解される。発癌性のE6およびE7は細胞周期調節タンパク質に結合し、細胞増殖のためのスイッチとして作用するので、E6mRNAを発現する女性は、細胞変化を生じさせる危険性が高い。E6mRNAの明らかな発現は、子宮頸部における細胞変化を直接的に示すものである。L1mRNAの発現はまた、E6mRNAの発現を伴って、またはE6mRNAの発現を伴うことなく、活性なHPVの存在を示している。
【0019】
子宮頸スクリーニングのより広範な状況では、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現について陽性であるとして同定された女性を、更なる調査のために、例えば、細胞学(細胞診)を使用する調査のために選択することができる。従って、1つのレベルで、本発明の方法は、更なる調査のために選択することができるHPV陽性被験者を同定するために、女性集団を予備スクリーニングする簡便な技術的手段を提供することができる。
【0020】
特定の実施形態において、本発明の方法は、L1mRNAおよびE6mRNAの発現を陽性/陰性で評価することに基づいて、被験者を、子宮頸癌の発症について4つの異なる危険性クラスに分類するために使用することができる。
【0021】
従って、更なる態様において、本発明は、 子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、HPVのL1遺伝子のmRNA転写物およびHPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすること、そして、下記の分類に従って、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現に基づく子宮頸癌の発症について4つの危険性カテゴリーの1つに被験者を分類することを含む方法を提供する:
【0022】
危険性カテゴリー1:HPVの16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型または68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性であるが、L1mRNAの発現について陰性である被験者。HPVの16型、18型、31型または33型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性である人は、例えば、これらの型について陰性であるが、HPVの35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型または68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現については陽性である人と比較した場合、より危険性が高いとして評価される。
【0023】
危険性カテゴリー2:HPVの16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型または68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性であり、L1mRNAの発現について陽性である被験者。HPVの16型、18型、31型または33型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性である人は、例えば、これらの型について陰性であるが、HPVの35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型または68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現については陽性である人と比較した場合、より危険性が高いとして評価される。
【0024】
危険性カテゴリー3:癌関連HPV型に由来するE6mRNAの発現について陰性(例えば、HPVの16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型および68型に由来するE6mRNAの発現について陰性)であるが、L1mRNAの発現について陽性である被験者。
【0025】
危険性カテゴリー4:L1mRNAの発現について陰性であり、E6mRNAの発現について陰性である被験者。
【0026】
好ましい実施形態において、陽性の発現は、1mlあたり(またはサンプルの総容量あたり)50コピーを超える転写物が存在することによって示され、陰性の発現は、1mlあたり(またはサンプルの総容量あたり)1コピー未満の転写物が存在することによって示される。
【0027】
上記の分類は、子宮頸癌を発症する危険性に関連する分子的事象に基づいており、被験者のCIN状態には無関係である。従って、この分類方法は、子宮頸癌を発症する潜在的危険性を有する女性を同定するための、女性の日常的なスクリーニングにおける細胞学の使用に対する代替法を提供することができる。この方法はまた、細胞学の補助的手段として、例えば、細胞学に基づいてなされる危険性評価を確認するための確認検査として使用することができる。
【0028】
HPVの16型、18型、31型または33型の1つに由来する、危険性が高いE6mRNAの発現について陽性であるが、L1の発現について陰性である女性は、重度の細胞変化および細胞異常を生じさせる危険性レベルが最も高い。これは、L1mRNAの発現に対する陰性の結果は、組み込まれたHPV、従って、E6およびE7の発現が高く、かつ一定している蓋然性がより高いことを直接的に示しているという事実のためである。ヒトゲノムにおけるウイルスの組み込みはまた、細胞の安定性に対して直接的な影響を及ぼす。HPVの組み込みはまた、細胞変化を復帰させる可能性を低下させる。
【0029】
HPVの16型、18型、31型または33型の1つに由来するE6mRNAの発現について陽性であり、L1mRNAの発現について陽性である女性は、「危険性が高い」HPV発現を有しており、HPVが組み込まれていることが依然として考えられる。しかしながら、これらの女性の危険性は、L1について陰性であり、E6について陽性である女性ほど高く分類されない。なぜなら、これらの女性はHPVが組み込まれていないと考えることが妥当であるからである。
【0030】
HPVの16型、18型、31型または33型に由来するE6mRNAの発現について陰性であるが、別のHPV型(例えば、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型および68型)に由来するE6mRNAの発現について陽性である女性は、依然として、「危険性を有する」と見なされる。従って、これらの女性は、L1mRNAの発現について陽性または陰性であるかどうかに依存して、(上記で定義されたような)危険性カテゴリー1または2に位置づけることができる。
【0031】
L1mRNAについて陽性であるが、E6mRNAについて陰性である女性は、中程度の危険性を有するとして評価される。危険性が高いHPV型がサンプル中に存在することがあり、L1の発現は溶解活性を示す。様々なHPV型が組み込まれて存在し得ることもあるが、ウイルスを伴うことは希でしかない。しかしながら、溶解活性を検出することにより、細胞がまもなく何らかの変化を生じさせ得ることが示されることがある。
【0032】
子宮頸スクリーニングのより広範な状況において、本発明の方法は、子宮頸癌を発症する危険性に従って女性を分類するために使用することができ、従って、処置および/または更なるスクリーニングに関する判定のための基礎を提供する。例えば、危険性カテゴリー1の女性、具体的には、HPVの16型、18型、31型または33型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの陽性発現を示す女性は、「即座の措置」(これは、生検および組織学(組織診)を含む、円錐切除術または膣鏡検査を意味する)を必要とするとして同定され得る。
【0033】
上記で定義されたように、危険性カテゴリー2の女性は、即時の注意(これは、膣鏡検査単独、または生検および組織学を含む膣鏡検査を意味する)を必要とするとして評価され得る。
【0034】
上記で定義されたように、危険性カテゴリー3の女性は、即座の再検査(これは、即時に、または比較的短い間隔(例えば、6ヶ月)の後に、HPVの発現について更なる検査のために再び呼び出されることを意味する)を必要とするとして評価され得る。
【0035】
上記で定義されたように、危険性カテゴリー4の女性は、後日、HPVの発現について再検査されるためにスクリーニングプログラムに戻され得る。
【0036】
更なる実施形態において、本発明は、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在についてヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのL1遺伝子およびE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、L1mRNAの発現について陰性であるが、E6mRNAの発現について陽性である被験者が、組み込まれたHPVを保有するとして評価される方法を提供する。
【0037】
用語「組み込まれたHPV」は、ヒトゲノムに組み込まれているHPVゲノムを示す。
【0038】
用語「改変されたエピソームHPVゲノム」は、エピソームとしてヒト被験者の細胞内に保持されているHPVゲノム(すなわち、ヒトゲノムに組み込まれていないHPVゲノム)であって、対応する野生型のHPVゲノムと比較したとき改変を有し、そのような改変により、E6遺伝子および/またはE7遺伝子の転写物の構成的発現または持続的発現が生じているHPVゲノムを意味することが理解される。「改変」は、典型的には、E6/E7の発現の調節に影響を及ぼす、欠失、エピソームの多量体化または鎖状体化、エピソームの再配列などである。
【0039】
上記のように、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在は、子宮頸の細胞におけるE6mRNAの発現に対する陽性の結果とともに、L1mRNAの発現に対する陰性の結果によって示される。従って、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在をこのアッセイで予測することができる能力は、L1mRNAの発現に対する陰性の結果を評価する能力に決定的に依存する。これには、最大の感度を有し、その上、偽陰性の結果が最小限である検出技術が必要である。好ましい実施形態において、これは、L1mRNAの存在の有無についてスクリーニングするために高感度増幅技術およびリアルタイム検出技術を使用することによって達成される。最も好ましい技術は、Leone等、Nucleic Acids Research、1998、第26巻、2150〜2155に記載されるような、分子ビーコンプローブを使用するリアルタイムNASBA増幅である。この技術の感度により、偽陰性の結果の発生が最小限に抑えられ、「陰性のL1発現」の結果をより大きな信頼性で評価することができる。
【0040】
更なる実施形態において、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在についてヒト被験者をスクリーニングする方法は、E6mRNAだけの発現についてスクリーニングすることに基づくことができる。従って、本発明は、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在についてヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、E6mRNAの発現について陽性である被験者が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価される、方法を提供する。
【0041】
更に、E6mRNAだけの発現を「オン/オフ」で決定することに基づいて、子宮頸癌の発症に対する2つの危険性カテゴリーの1つに人を分類することができる。従って、本発明は、子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、HPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすること、および、E6mRNAの発現に基づいて子宮頸癌の発症について2つの危険性カテゴリーの1つに被験者を分類することを含み、E6mRNAの発現について陽性である個体が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について「危険性が高い」として分類され、これに対して、E6mRNAの発現について陰性である個体が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有しないとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について「検出できるほどの危険性がない」として分類される、方法を提供する。
【0042】
被験者は、子宮頸部の細胞におけるE6mRNAの発現を「オン/オフ」で決定することに基づいて、子宮頸癌の発症に対する2つの危険性カテゴリーの1つに分類される。E6mRNAの発現について陽性である人は、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について「危険性が高い」として分類され、これに対して、E6mRNAの発現について陰性である人は、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有しないとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について「検出できるほどの危険性がない」として分類される。
【0043】
子宮頸スクリーニングに関連して、子宮頸癌の発症について「危険性が高い」または「検出できるほどの危険性がない」の2つの群に被験者を分類することにより、処置および/または更なるスクリーニングに関する判定のための根拠が提供される。例えば、危険性が高いというカテゴリーの被験者は、即座の更なる分析(例えば、組織学的膣鏡検査による分析)を必要とするとして評価され得る一方で、検出できるほどの危険性がないというカテゴリーの被験者は、3年または5年の間隔でスクリーニングプログラムに差し戻され得る。これらの方法は、HPVに感染していることが判明している被験者、例えば、HPVのDNAについて陽性であると検査された被験者、あるいは、細胞学またはパプ塗抹標本によって子宮頸部の異常が以前に現れたことがある被験者において癌を発症する危険性を評価するために特に有用である。E6mRNA発現に基づいて「検出できるほどの危険性がない」というカテゴリーに位置づけられた被験者には、HPVのDNAが存在することがあり、しかし、E6発現に対する陰性の結果は、HPVが検査時の癌遺伝子の活性には無関係であることを示している。
【0044】
E6mRNAの発現に対する陽性の結果によって示されるような、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在は、それ自体が、被験者が子宮頸部における異常な細胞変化を有することを示している。従って、本発明はまた、子宮頸部における異常な細胞変化を有するヒト被験者を同定するインビトロ方法であって、HPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、E6mRNAの発現について陽性である個体が、子宮頸部における異常な細胞変化を有するとして同定される、方法に関する。
【0045】
用語「子宮頸部における異常な細胞変化」は、低悪性度の子宮頸部病変または低度の扁平上皮内病変よりも重篤な疾患に特徴的である細胞変化を包含し、また、高悪性度のCIN(形質転換細胞の腫瘍性拡大として定義される)、CIN(子宮頸部上皮内腫瘍)III、または高度の扁平上皮内腫瘍(HSIL)と同等の重篤度またはこれらよりも大きい重篤度の疾患に特徴的な細胞変化を含み、これらには、多倍数性DNAプロフィールを伴う病変、ならびに増大した平均DNAインデックス値、高率のDNA異数性、および2.5cの超過率(Exceeding Rates)を有する「悪性」のCIN病変が含まれる(Hanselaar等、1992、Anal Cell Pathol.、4:315〜324;Rihet等、1996、J.Clin Pathol、49:892〜896;McDermott等、1997、Br.J.Obstet Gynaecol.104:623〜625)。
【0046】
子宮頸部上皮内腫瘍(これは「CIN」と略される)は、子宮頸部形成異常とも呼ばれるが、ヒトパピローマウイルスによって引き起こされる子宮頸部疾患である。CINは、その重篤度に依存して、I、IIまたはIIIとして分類される。CINは、実際の癌ではなく、前癌性の異常であると考えられている。その最も軽い形態であるCIN Iは、まれに癌に進行し得るが、通常ひとりでに消失する。より重篤な形態であるCIN IIおよびCIN IIIは、非常に多くの場合、同じ状態を持続するか、または時間とともに悪化する。これらは癌になり得るが、適切に処置された場合、癌になることはほとんどない。
【0047】
HPVは、子宮頸癌の発症をもたらし得る子宮頸における細胞変化を発生させる際の原因因子として同定されている。これらの細胞変化は、HPVウイルスゲノムに由来するE6/E7タンパク質の構成的発現または持続的発現に関連づけられている。従って、E6mRNAの発現が検出され得る被験者、特に、一定の期間にわたって評価されたとき、持続したE6発現を示す被験者は、子宮頸部における細胞変化を既に現していると結論づけることが可能である。これらの変化は、子宮頸のほんの少数の細胞のみにおいて起こっている場合があり、従来の細胞学により検出することができない場合がある。それにもかかわらず、E6mRNAの高感度、特異的かつ正確な検出方法の使用により、従来の細胞学的スクリーニングを使用して可能であったよりもはるかに早期の段階で、子宮頸部における細胞変化を既に示しているそのような被験者を同定することが可能である。これにより、子宮頸癌の発症を予防することを目的とする処置を用いたより早期の治療が可能になる。
【0048】
ヒトゲノム内へのHPVの組み込みの結果として、または改変されたエピソームHPVゲノムにおける「改変」の結果として、ウイルスのE6/E7癌遺伝子転写の正常な制御が失われている(Durst等、1985、J Gen Virol、66(Pt7):1515〜1522;PaterおよびPater、1985 Virology 145:313〜318;Schwarz等、1985、Nature、314:111〜114;Park等、1997、同上)。対照的に、前悪性状態の病変およびHPV感染の正常な上皮において、パピローマウイルスは、「改変されていない」エピソーム形態が優勢であり、従って、癌遺伝子(E6/E7)の転写が存在しないことがあるか、または効率的にダウンレギュレーションされていることがある(Johnson等、1990、J Gen Virol、71(Pt7):1473〜1479;Falcinelli等、1993、J Med Virol、40:261〜265)。16型ヒトパピローマウイルスDNAのヒトゲノムへの組み込みは、より不安定な細胞活性/ゲノムをもたらし、E6mRNAおよびE7mRNAの安定性を増大させることが観察されている(JeonおよびLambert、1995、Proc Natl Acad Sci USA、92:1654〜1658)。従って、子宮頸癌において典型的に見出されるが、CIN病変ではまれに見出されるだけであるHPVの組み込み(Carmody等、1996、Mol Cell Probes、10:107〜116)は、子宮頸の発癌現象における重要な事象であると考えられる。
【0049】
本発明の方法では、子宮頸部におけるE6/E7のウイルスmRNA発現が、DNAの代わりに検出される。子宮頸細胞におけるE6/E7のウイルス発現は、HPVウイルスが存在することを単に示すことよりもはるかに正確な癌発症の危険性評価である。更に、HPVの癌遺伝子転写物の検出は、発癌現象におけるウイルス癌遺伝子の直接的な関与をより高感度に示すものであり得る(Rose等、1994、Gynecol Oncol、52:212〜217;Rose等、1995、Gynecol Oncol、56:239〜244)。増幅および検出によるE6/E7転写物の検出は、危険性が高いHPV型に感染しているASCUS患者およびCIN I患者では特に、CINの発症およびCINの子宮頸癌への進行に関する危険性評価のための有用な診断手段である(Sotlar等、1998、Gynecol Oncol、69:114〜121;Selinka等、1998、Lab Invest、78:9〜18)。
【0050】
HPV−16/18のE6/E7転写物の発現はHPVのDNAの物理的状態と一様に相関している(Park等、1997、Gynecol Oncol、第65巻(1)、121〜9)。大部分の子宮頸癌細胞では、特定のヒトパピローマウイルスのE6遺伝子およびE7遺伝子が、宿主細胞の染色体に組み込まれたウイルス配列から転写されている(von Kleben Doeberitz等、1991、Proc Natl Acad Sci USA、第88巻(4)、1411〜5)。ウイルスの負荷量および組み込みが広範囲の一連のCIN病変において評価されている(Pietsaro等、2002、J Clin Microbiol、第40巻(3)、886〜91)。1つのサンプルのみがエピソームHPV16のDNAをもっぱら含み、この病変は自然に退縮した。37個の侵襲性子宮頸癌のサンプルのうち、17サンプルが、E1/E2遺伝子全体に及ぶPCRを使用することによって、完全に組み込まれたHPV16のゲノムを含有するとして以前に同定されたが、このことは16例でrliPCRにより確認された。しかしながら、1例は、優勢である組み込まれた形態に加えて、低レベルのエピソームのデオキシリボ核酸を示した。以前の分析においてエピソームの形態を示した残りの20個の癌腫サンプルのうち、14個は、組み込まれた形態を含有することが、rliPCRを使用して見出され、4個は多量体型(改変された)エピソーム形態を含有していた。従って、合計で37個の癌腫のうちの31個(84%)が、組み込まれたHPV16のゲノムを示し、その一方で、組み込みの非存在は検出することができなかった(Kalantari等、2001、Diagn Mol Pathol、第10巻(1)46〜54)。
【0051】
子宮頸癌細胞が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVのDNAを伴わずに存在するということは事実上観察されていない(Kalantari等、2001;Pietsaro等、2002、同上)。更に、E6およびE7は、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVのDNAから転写され得るだけであることが示されている(von Kleben Doeberitz等、1991、同上)。従って、本発明者らは、E6/E7の発現を検出することにより、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVおよび高い癌遺伝子活性の直接的な徴候が提供されると推測し、そして、臨床的状況では、E6(E6/E7)の発現を検出することが、単独で、子宮頸癌を発症する「危険性が高い」被験者を同定するために十分であると結論している。すなわち、E6/E7のmRNA発現を子宮頸部サンプルで検出することができる場合、これは、子宮頸部における細胞異常を直接的に示しており、持続的なHPV癌遺伝子活性により子宮頸癌を発症する危険性が非常に高い。従って、ヒト被験者においてE6/E7のmRNAが検出されることは、その被験者は、子宮頸癌を発症する危険性が非常に大きく、更なるスクリーニング、例えば、膣鏡検査によるスクリーニングを即座に受けなければならないことを示している。
【0052】
HPVのE6/E7のmRNA発現が検出されない場合、それでもなお、被験者はHPVの感染を有することがある。しかしながら、組み込みおよび癌遺伝子活性がないことにより、それは自然に退縮することがある(Pietsaro等(2002、同上)によって観察されたように)。
【0053】
臨床的状況において、E6mRNAだけの発現についてスクリーニングすることに依る方法の性能は、E6mRNAの発現に対する陰性の結果を確実に評価する能力に決定的に依存する。これにはまた、再度ではあるが、最大の感度を有し、その上、偽陰性の結果が最小限である検出技術が必要である。好ましい実施形態において、これは、E6mRNAの存在の有無についてスクリーニングするために高感度増幅技術およびリアルタイム検出技術を使用することによって達成される。最も好ましい技術が、Leone等、Nucleic Acids Research、1998、第26巻、2150〜2155によって記載されるような、分子ビーコンプローブを使用するリアルタイムNASBA増幅である。この技術の感度により、偽陰性の結果の発生が最小限に抑えられ、「陰性のE6発現」の結果をより大きな信頼性で評価することができる。アッセイが臨床的なスクリーニングプログラムの状況に関連して使用されることになる場合、このことは極めて重要である。
【0054】
E6mRNAだけを検出することに基づく方法では、HPV16、HPV18、HPV31、HPV33およびHPV45を少なくとも検出することが好ましく、好ましい実施形態において、このアッセイでは、これらのHPV型のみを検出することができる。HPVの16型、18型、31型および33型に由来するDNAが、87%を超える子宮頸癌サンプルで検出されている(Karlsen等、1996、J Clin Microbiol、34:2095〜2100)。他の研究では、E6およびE7の発現が悪性状態への転換および悪性状態の維持のために必要であると考えられるので、E6およびE7がほぼ常に子宮頸癌において保持されていることが示されている(Choo等、1987、J Med Virol、21:101〜107;Durst等、1995、Cancer Genet Cytogenet、85:105〜112)。非損傷ゲノムまたはL1遺伝子配列の検出に基づくHPV検出システムとは対照的に、E6/E7領域から発現されるHPVmRNAを検出することにより、子宮頸癌を発症する危険性に直接に関連づけられる患者の90%以上を検出することができる。
【0055】
診療所において、E6mRNAの検出に基づく方法は、スクリーニング後、すなわち、ASCUS、CIN 1またはコンジロームの診断を以前に受けた個体を更に分析する際の使用のために好ましい。この方法は、ASCUS、CIN 1またはコンジロームの診断を以前に受けた個体群の中から、子宮頸癌を発症する危険性が高い個体を選択するために使用することができる。ASCUS、コンジロームおよびCIN Iは、異なる細胞学者および異なる細胞学部門の間では再現性が非常に低いため、ほとんど同じような診断として定義されることがある。Ostor(Int J.Gyn Path.、12:186〜192、1993)は、CIN 1の症例の約1%のみが子宮頸癌に進行し得ることを見出した。従って、子宮頸癌を発症する実質的な危険性を有する、ASCUS、コンジロームまたはCIN Iを患う個体のサブセットを同定する効率的な方法が真に求められている。HPVの16型、18型、31型または33型の1つが、Karlsen等(1996)による子宮頸癌症例研究の87%で検出された。HPV45を含めることにより、子宮頸癌サンプルのほぼ90%がこれらの5つのHPV型に関係づけられることが見出されている。従って、Ostor(Int J.Gyn Path.、12:186〜192、1993)によって提供されたデータから計算された場合、99.9%以上が検出され、ASCUS、CIN Iまたはコンジロームに関する症例が本発明者らのHPV−Prooferキットによって見逃されている。
【0056】
本発明の方法において、mRNAの「陽性の発現」は、バックグラウンドを超える発現を意味することが理解される。mRNAの発現レベルの正確な定量的決定のために、またはL1mRNAおよびE6mRNAの相対的な発現レベルの正確な決定のために絶対的に要求されるものはない。
【0057】
特定の実施形態において、本発明の方法は、mRNAの発現レベルを定量的に決定することを含むことができる。好ましい実施形態において、「陽性の発現」と「陰性の発現」との明確な区別を提供するために、「陽性の発現」の決定は、(サンプル1mlあたり、またはサンプル総容量あたり)50コピーを超える関連mRNAが存在することを必要とし得る。これに対して、「陰性の発現」の決定は、(サンプル1mlあたり、またはサンプル総容量あたり)1コピー未満の関連mRNAが存在することを必要とし得る。
【0058】
本発明の方法は、好ましくは、癌関連HPV型(より好ましくは、「危険性が高い」癌関連HPV)に由来するE6mRNAを特異的に検出することができる技術を使用してE6mRNAについてスクリーニングすることを含む。最も好ましい実施形態において、本発明の方法は、HPVの16型、18型、31型および33型、そしてまた、好ましくは45型に由来するE6mRNAを検出することができる技術を使用してE6mRNAについてスクリーニングすることを含む。最も好ましくは、本発明の方法では、HPVの16型、18型、31型、33型、そしてまた、好ましくは45型に由来するE6mRNAの発現が特異的に検出され、最も好ましくは、5つの型のすべてに由来するE6mRNAの発現が特異的に検出される。しかしながら、16型、18型、31型、33型および45型とは異なる型(例えば、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型および68型)に由来するE6の発現について陽性である女性は、依然として、子宮頸癌を発症する「危険性を有する」ことがある。従って、本発明の方法は、1つ以上のこれらのHPV型に由来するE6mRNAの発現についてスクリーニングすることを含むことができ、最も好ましくは、HPVの16型、18型、31型、33型および45型に由来するE6mRNAについてスクリーニングすることに加えて、そのようなスクリーニングを含むことができる。特定のHPV型が顕著な地理学的/集団的分布を示す。従って、例えば、HPVの16型、18型、31型、33型および45型についてスクリーニングすることに加えて、検査している集団的/地理学的領域において優勢であることが知られているHPV型に対して特異的なプライマーを含むことが適切であり得る。
【0059】
不確かさを回避するため、別途言及されない限り、本明細書中で使用される用語「E6mRNA」は、天然に存在するスプライスバリアントを含む、E6オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有する天然に存在するmRNA転写物のすべてを包含し、従って、E7オープンリーディングフレーム(および更なるオープンリーディングフレーム)のすべてまたは一部分を更に含有する転写物を包含する。用語「E6/E7mRNA」、用語「E6/E7転写物」などは、用語「E6mRNA」、用語「E6転写物」と交換可能に使用することができ、そしてまた、天然に存在するスプライスバリアントを含む、E6オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有する天然に存在するmRNA転写物、およびE7オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有する転写物を包含する。用語「癌遺伝子発現」もまた、別途言及されない限り、天然に存在するスプライスバリアントを含む、E6オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有する天然に存在するmRNA転写物、およびE7オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有する転写物を示す。
【0060】
4つのE6/E7mRNA種がHPV16感染細胞においてこれまでに記載されている。すなわち、1つのスプライシングされていないE6転写物、そして、E6I、E6IIおよびE6IIIとして示される3つのスプライシングされた転写物である(Smotkin D等、J Virol.1989(3月)、63(3):1441〜7;Smotkin D、Wettstein FO、Proc Natl Acad Sci USA、1986(7月)、83(13):4680〜4;Doorbar J.等、Virology、1990(9月)、178(1):254〜62;Cornelissen MT等、J Gen Virol.、1990(5月)、71(Pt5):1243〜6;Johnson MA等、J Gen Virol.、1990(7月)、71(Pt7):1473〜9;Schneider−Maunoury S等、J Virol.、1987(10月)、61(10):3295〜8;Sherman L等、Int J Cancer、1992(2月)、50(3):356〜64)。4つの転写物はすべてが、E6 ORFの2番目のATGのすぐ上流に位置する単一のプロモーター(p97)から転写される。
【0061】
1つの実施形態において、本発明の方法は、E7オープンリーディングフレームのすべてまたは一部分を含有するE6転写物に対するスクリーニングすることを含むことができる。これは、例えば、E7のコード領域に対して特異的なプライマーまたはプローブを使用して達成することができる。
【0062】
更なる実施形態において、本発明の方法は、「全長」のE6転写物の存在についてスクリーニングすることを含むことができる。HPV16の場合、用語「全長のE6転写物」は、E6 ORFにおけるヌクレオチド(nt)97からnt880まで(nt97およびnt880を含む)の領域のすべてを含有する転写物を示す。ヌクレオチドの位置は標準的なHPVの命名法に従って番号付けされる(HV Database(Mail Stop K710、Los Alamos National Laboratory、Los Alamos、NM87545、米国)からインターネットを介して、または紙形態で利用可能な、Human Papillomavirus Compendium Onlineを参照のこと)。全長の転写物の特異的な検出は、例えば、全長のE6転写物にだけ存在し、スプライスバリアントには存在しない領域に対して特異的なプライマーまたはプローブを使用して達成することができる。異なるHPV型は異なるパターンのE6/E7mRNA発現を示す。E6/E7転写物を検出するためのプローブまたはプライマーの設計を助けるために使用することができる様々なHPV型(HPVの16型および31型を含む)に対する転写物地図を、(上記のように)Human Papillomavirus Compendiumを介して公式に利用することができる。
【0063】
様々なHPV型に由来するE6mRNAの様々な領域をNASBAまたはPCRによって増幅する際に使用される好適なE6オリゴヌクレオチドプライマーが本明細書中に記載される。
【0064】
好ましい実施形態において、L1mRNAの発現についてスクリーニングすることを含む方法は、実質的にすべての知られているHPV型に由来するか、または少なくとも主要な癌関連HPV型(例えば、好ましくは、HPVの16型、18型、31型および33型のすべて)に由来するL1mRNAを検出することができる技術を使用してL1mRNA発現についてスクリーニングすることを含むことができる。HPVの6型、11型、16型、18型、31型、33型、35型および51型に由来するL1mRNAを子宮頸サンプルにおいて検出することができるL1プライマーおよびプローブが本明細書中に記載される。
【0065】
L1転写物の検出は、HPVの溶解活性の存在を意味するHPVの「毒性」を検出することであると言うことができる。E6/E7転写物の検出は、HPVの「病原性」を検出することであると言うことができる。なぜならば、これらのmRNAの発現は、癌腫を発症する危険性に関連する分子事象を示すからである。
【0066】
4589名の女性の研究では、E6mRNAおよびL1mRNAの発現についてスクリーニングすることに基づく方法を使用して、CIN III病変または癌の症例を、1症例を除くすべてで検出することができた(添付の実施例を参照のこと)。
【0067】
更なる実施形態において、本発明の上記の方法は、HPVのL1転写物および/またはE6転写物の発現についてスクリーニングすることに加えて、ヒトp16ink4a遺伝子に由来するmRNA転写物の発現についてスクリーニングすることを含むことができる。
【0068】
p16ink4amRNAの発現に対する陽性の結果は、子宮頸癌を発症する危険性を更に示すものとして理解される。
【0069】
p16ink4a、および関連するファミリーのメンバーは、網膜芽細胞腫遺伝子産物(RB)のリン酸化および増殖抑制活性を調節するために機能し得る。この裏付けで、選択された癌細胞株におけるp16ink4aタンパク質の発現と正常なRBの存在との間には逆比例の関係が存在することが見出されている。例えば、p16ink4aタンパク質は、RBが変異しているか、または欠失しているか、または不活性化されているときに検出可能であり、正常なRBを含む細胞株では、著しく減少しているか、または存在しない。Kheif等(Kheif SN等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93:4350〜4354、1996)は、p16ink4aタンパク質が、変異型RB、またはE7により機能的に不活性化されている野生型RBのいずれかを含有するヒト子宮頸癌細胞で発現していることを見出した。彼らはまた、RBの不活性化が、p16ink4aおよびRBを伴うフィードバックループを裏付けるp16ink4aのアップレギュレーションと相関することを示している。Milde−Langosch等(Milde−Langosch K等(2001)、Virchows Arch、439:55〜61)は、著しい相関が、p16の強い発現とHPVの16/18の感染との間に、そして、p16の強い発現とHPVの16/18のE6/E7癌遺伝子発現との間に存在することを見出した。Klaes等(Klaes R等(2001)、Int J Cancer、92:276〜284)は、152例の高悪性度の形成異常の子宮頸部病変(CIN IIから侵襲性癌まで)のうちの150個でp16ink4a遺伝子産物の強い過剰発現を観察し、これに対して、正常な子宮頸部上皮または炎症性病変または化生性病変はp16ink4a特異的モノクローナル抗体E6H4で染色されなかった。LR−HPV型に関連する、CIN Iと評価された病変はすべてが反応性を全く示さなかったか、または限局的もしくは散発性の反応性を示しただけであり、これに対して、HR−HPV型に関連する、CIN Iと評価された病変は、2つを除くすべてがp16ink4aについて強い広汎性の染色を示した。
【0070】
開示されるスクリーニング方法は、検査中の被験者から採取された子宮頸細胞を含有する臨床サンプルまたは生検物から単離された核酸の調製物に対して行うことができる。核酸の供給源として使用することができる好適なサンプルには、子宮頸部拭き取り検体、子宮頸部生検物、子宮頸部かき取り検体、皮膚生検物/いぼ、そしてパラフィン包埋組織、およびホルマリン固定細胞またはメタノール固定細胞が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。
【0071】
開示される方法を使用してスクリーニングされる核酸の調製物は、mRNAを含まなければならないが、精製されたポリA+mRNAの調製物である必要はない。トータルRNAの調製物、またはRNAおよびゲノムDNAの両方を含有するトータル核酸の粗調製物、または粗細胞溶解物さえもまた、NASBA反応のための出発材料として好適である。本質的には、mRNAを含む核酸の調製物を単離するためにこの分野で知られている任意の技術を、検査サンプルから核酸を単離するために使用することができる。好ましい技術は、米国特許第5,234,809号および欧州特許EP−B−0389,063に記載される「Boom」単離法である。この方法は、RNAおよびDNAの両方を含有する核酸調製物を単離するために使用することができ、カオトロピック剤であるグアニジンチオシアナート(GuSCN)の存在下での二酸化ケイ素粒子の核酸結合性に基づいている。
【0072】
本発明の方法は、子宮頸部の細胞におけるHPVゲノムの活性な転写物を評価することに基づいている。本発明の方法は、mRNA発現を検出するために使用される精確な技術に関して限定されない。特定のmRNA配列を検出するための多くの技術がこの分野では知られており、これらを本発明に従って使用することができる。例えば、特定のmRNAを、ハイブリダイゼーション、増幅または配列決定技術によって検出することができる。
【0073】
増幅技術(最も好ましくは、例えば、NASBA、転写介在増幅、RNA技術のシグナル介在増幅、等温液相増幅などの等温増幅)によってmRNA発現を検出することが最も好ましい。これらの方法はすべてがこの分野では広く知られている。より好ましくは、mRNA発現は、増幅生成物のリアルタイム検出との組合せでの等温増幅によって検出される。最も好ましい組み合わせは、Leone等、Nucleic Acids Research、1998、第26巻、2150〜2155、に記載されるような、分子ビーコン技術を使用する増幅生成物のリアルタイム検出と一緒にされたNASBAによる増幅である。
【0074】
NASBA技術を使用して検査サンプルにおけるHPVを検出するための方法は、一般には、下記の工程を含む:(a)好適なプライマー対、RNA依存性DNAポリメラーゼ、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAを加水分解することなくRNA−DNAハイブリッドのRNA鎖を加水分解するリボヌクレアーゼ、上記プロモーターを認識するRNAポリメラーゼ、ならびにリボヌクレオシド三リン酸およびデオキシリボヌクレオシド三リン酸を含む反応媒体を組み立てる(調製する)工程;(b)NASBA増幅反応を可能にする反応条件のもと、反応媒体を、HPVを含有すると思われる検査サンプルから単離された核酸調製物とインキュベーションする工程;(c)NASBA増幅反応の任意のHPV特異的な生成物を検出し、かつ/または定量的に測定する工程。
【0075】
NASBA反応の特異的な生成物(すなわち、標的RNAのセンスコピーおよび/またはアンチセンスコピー)の検出は多数の異なる方法で行なうことができる。1つの方法において、NASBAの生成物は、NASBA生成物に特異的にアニーリングすることができるHPV特異的なハイブリダイゼーションプローブの使用によって検出することができる。ハイブリダイゼーションプローブは、顕示用の標識(例えば、蛍光性化合物、発光性化合物、放射性化合物または化学発光性化合物あるいは酵素標識あるいは当業者に知られている任意の他のタイプの標識)に結合させることができる。標識の精確な性質は重要ではないが、外部の手段(それ自体によるか、または1つ以上の更なる物質(例えば、酵素に対する基質)との組合せによるかのいずれか)によって検出可能なシグナルを生じさせることができなければならない。
【0076】
好ましい検出方法は、いわゆる「リアルタイムNASBA」であり、これは、反応の経過にわたってNASBA反応の生成物の形成を連続的にモニターすることができる。好ましい実施形態において、これは、この分野では知られているように、また本明細書中に記載されるように、NASBA生成物にアニーリングすることができるHPV特異的配列、ステム二重鎖形成オリゴヌクレオチド配列、および1対の蛍光剤/消光剤部分を含む「分子ビーコン」プローブを使用して達成することができる。分子ビーコンプローブが増幅前の反応混合液に加えられる場合、リアルタイムでNASBA生成物の形成をモニターすることが可能であり得る(Leone等、Nucleic Acids Research、1998、第26巻、2150〜2155)。リアルタイムNASBA検出を行なうための様々な試薬キットおよび計測器械が市販されている(例えば、Organon TeknikaからNucliSens(商標) EasyQシステム)。
【0077】
更なる方法において、分子ビーコン技術は、別個のハイブリダイゼーションプローブを必要とすることなく、NASBA反応のリアルタイムでのモニタリングを可能にするプライマー2オリゴヌクレオチドに組み込むことができる。
【0078】
なお更なる方法において、NASBA反応の生成物は、プライマー2オリゴヌクレオチドの5’末端においてヌクレオチド配列にハイブリダイゼーションする一般的な標識された検出プローブを使用してモニターすることができる。これは、Organon Teknikaによって供給される「NucliSens(商標)」検出システムに対応する。このシステムでは、標的HPVmRNAから得られたNASBA生成物に対する特異性が、磁性マイクロビーズなどの固体支持体に結合した本明細書中に記載されるようなプローブオリゴヌクレオチドを含むHPV特異的な捕捉プローブを使用することによって付与され得る。最も好ましくは、一般的な標識された検出プローブは、Organon Teknikaによって供給されるECL(商標)検出プローブである。NASBA単位複製配列(NASBAアンプリコン)は、プライマー2上の相補的配列を介して、HPV特異的な捕捉プローブおよび一般的なECLプローブにハイブリダイズする。ハイブリダイゼーションの後、ビーズ/アンプリコン/ECLプローブの複合体を自動ECLリーダー(例えば、Organon Teknikaにより供給されるNucliSens(商標)リーダー)の磁石電極において捕捉することができる。その後、電圧パルスにより、ECL(商標)反応は開始させられる。
【0079】
HPVmRNAの検出はまた、例えば、頭部および頸部の癌腫、口腔および舌の癌腫、皮膚の癌腫、肛門および膣の癌腫を含む、子宮頸癌以外の癌において臨床的関連性を有する。HPVmRNAの検出はまた、身体の下部部分におけるリンパ節中の微小転移巣の診断において非常に有用であり得る。従って、本発明ではまた、HPVのL1転写物およびE6転写物の発現についてスクリーニングすることに基づいた、上記に示された癌に対する罹病性についてのスクリーニングが考えられる。
【0080】
本発明の更なる態様によれば、HPVのL1遺伝子およびE6遺伝子の転写物の検出に使用するためのキットが提供され、このキットは、少なくともHPVの16型、18型、31型および33型、および好ましくはHPV45に由来するL1転写物の領域の増幅に使用するのに適した少なくとも1つのプライマー対と、HPVの16型、18型、31型および33型、および好ましくはHPV45に由来するE6転写物の領域の増幅を可能にする1つ以上のプライマー対とを含む。
【0081】
「プライマー対」は、任意の知られている核酸技術を使用してL1mRNAまたはE6mRNAの特定の領域を増幅するために組み合わせて使用することができるプライマーの対を意味することが理解される。好ましい実施形態において、キットに含まれるプライマー対は、NASBA増幅または類似する等温増幅技術において使用するために適している。
【0082】
キットに含まれる各プライマー対を構成する個々のプライマーは、別々に供給され得るか(例えば、各プライマーの別個の容器で)、または、より好ましくは、1つの容器において混合されて供給され得る。2つ以上のプライマー対の組み合わせを、キット内の1つの容器において混合済みとして供給することができる。2つ以上の増幅反応が「多重化」されることになる場合(これは、1つの反応容器で同時に行なわれることを意味する)、1つの容器で2つ以上のプライマー対を供給することが好都合である場合がある。
【0083】
E6転写物の領域を増幅において使用するのに適したプライマー対は、少なくとも主要な癌関連HPVの16型、18型、31型、および33型、そしてまた、好ましくはHPV45に由来するE6mRNA領域の増幅を可能にしなければならない。これを達成することができる異なる方法がいくつかある。
【0084】
1つの実施形態において、キットは、HPVの16型、18型、31型および33型、そしてまた、好ましくは45型のそれぞれについて特異的な別個のプライマー対を含有することができる。これらのプライマー対は別個の容器でキット内に供給され得るか、または、例えば、増幅反応の多重化を可能にするために、2つ以上のプライマー対の混合物として1つの容器で供給され得る。
【0085】
更なる実施形態において、キットは、HPVの16型、18型、31型および33型、そしてまた、好ましくはHPV45に由来するE6遺伝子の領域を増幅することができ、従って1回の増幅反応で4つ(好ましくは5つ)の型すべての増幅を可能にする単一のプライマー対を含有することができる。これは、例えば、1対の縮重プライマーの使用によって、または様々なHPV型の間で高度に保存されているE6mRNAの領域を選択することによって達成することができる。
【0086】
E6プライマー対はE6mRNAの任意の領域に対応し得るし、また、E6のオープンリーディングフレームおよび/またはE7のオープンリーディングフレームのすべてまたは一部分の増幅を可能にし得る。
【0087】
キットは更に、16型、18型、31型および33型、そしてまた、好ましくはHPV45とは異なるHPV型に由来するE6mRNAを増幅する際に使用されるのに適したプライマー対を含むことができる。例えば、キットは、特定の地理学的領域または集団において特有であるHPV型を検出するためのE6プライマーを追加することができる。
【0088】
L1転写物の領域を増幅する際に使用されるのに適したプライマー対は、少なくとも、主要な癌関連HPV型である16型、18型、31型および33型、および、好ましくはHPV45に由来するL1mRNAの特定領域を増幅することができなければならず、また、実質的にすべての知られているHPV型に由来するL1mRNAの特定領域を増幅する際の使用のために適していなければならない。そのようなプライマーの使用により、1回の増幅反応で多数のHPV型に由来するL1mRNAの活性な転写について試験することが可能である。
【0089】
高度に保存されているL1転写物の領域を選択することによって多数のHPV型に由来するL1転写物を検出することができるプライマーを設計することが可能である。
【0090】
更なる方法において、多数のHPV型に対する特異性を、縮重オリゴヌクレオチドプライマーの使用によって、または、好ましくは様々なHPV遺伝子型の間での配列変化部位に対応する小さな配列変化を示すポリヌクレオチドの複雑な混合物の使用によって達成することができる。そのような縮重プライマーまたは混合物を使用することの理由となる理論的根拠は、混合物が、それぞれのHPV型を検出することができる少なくとも1つのプライマー対を含有し得るということである。
【0091】
なお更なる方法において、多数のHPV型に対する特異性を、好ましくは様々なHPV遺伝子型の間での配列変化部位において1つ以上のイノシンヌクレオチドをプライマーに取り込むことによって達成することができる。
【0092】
E6プライマー対およびL1プライマー対は別個の容器でキット内に供給され得るか、またはL1プライマー対が、1つの容器において、1つ以上のE6プライマー対との混合物として供給され得る。
【0093】
キットは更に、キット内に含まれるプライマー対を使用して行われた増幅反応の生成物を検出する際に使用されるのに適した1つ以上のプローブを含むことができる。プローブは別個の試薬としてキット内に供給され得る。あるいは、プローブは1つ以上のプライマー対との混合物として供給され得る。
【0094】
キットに含まれるプライマーおよびプローブは、好ましくは一本鎖DNA分子である。相補的な核酸分子との塩基対を形成する能力を保持する非天然型合成ポリヌクレオチドもまた使用することができ、これには、修飾塩基を取り込む合成オリゴヌクレオチド、および個々のヌクレオシド間の連結がホスホジエステル結合以外の結合を含む合成オリゴヌクレオチドが含まれる。プライマーおよびプローブは、オリゴヌクレオチド合成のための標準的な装置およびプロトコルを使用する化学合成などによって、この分野で広く知られている技術に従って製造することができる。
【0095】
プライマーおよびプローブは、典型的には、長さが100塩基以下である単離された一本鎖ポリヌクレオチドであり、より典型的には、長さが55塩基未満である単離された一本鎖ポリヌクレオチドである。不確かさを避けるために、用語「プライマー」および用語「プローブ」は、天然に存在する全長のHPVゲノムを含まないことがそれにより示される。
【0096】
HVP特異的配列を取り込む、いくつかの一般的なタイプのオリゴヌクレオチドプライマーおよびプローブをキットに含めることができる。典型的には、そのようなプライマーおよびプローブは非HPV配列を更に含むことができ、例えば、増幅反応のために要求される配列、または増幅反応の生成物の検出を容易にする配列を含むことができる。
【0097】
第1のタイプのプライマーはプライマー1オリゴヌクレオチド(これはまた、NASBA P1プライマーとして本明細書中では示される)であり、これは、長さが一般には約50塩基であるオリゴヌクレオチドで、標的mRNAの領域に対して相補的である平均して約20塩基を3’端に含有する。NASBA P1プライマーとして使用される好適なオリゴヌクレオチドが表1に「P1/PCR」として示される。P1プライマーオリゴヌクレオチドは、X−SEQの一般的な構造(この場合、SEQはHPV特異的配列を表し、Xは特異的なRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーターを含む配列である)を有する。バクテリオファージのプロモーター、例えば、T7、T3およびSP6のプロモーターは、適切なRNAポリメラーゼの結合にだけ依存する高レベルの転写という利点をもたらすので、本発明のオリゴヌクレオチドにおける使用のために好ましい。好ましい実施形態において、配列「X」は配列AATTCTAATACGACTCACTATAGGGまたは配列AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGを含むことができる。これらの配列は、T7RNAポリメラーゼに対する転写開始部位を含むT7プロモーターを含有する。
【0098】
表1に「P1/PCR」として示されるプライマーにおけるHPV特異的配列はまた、標準的なPCRプライマーにおける使用のために適合させることができる。これらの配列がNASBA P1プライマーの基礎として使用されるとき、これらの配列は、上記で定義されたように、X−SEQの一般的な構造を有する。プロモーター配列Xは、NASBA P1プライマーでは必須である。しかしながら、同じ配列が標準的なPCRプライマーの基礎として使用されるときには、Xを含むことは必ずしも必要ない。
【0099】
第2のタイプのプライマーはNASBAプライマー2オリゴヌクレオチド(これはまた、NASBA P2プライマーとして本明細書中では示される)であり、これは、一般には、標的mRNAの領域に対して実質的に同一である約20塩基の配列を含む。表1に「P2/PCR」として示されるオリゴヌクレオチド配列は、NASBA P2プライマーおよび標準的なPCRプライマーの両方での使用のために好適である。
【0100】
NASBA P2プライマーとしての使用のために意図されたオリゴヌクレオチドは、特定の、しかし非限定的な実施形態において、標的mRNAに対して関連性がなく、しかし、一般的な検出プローブに対してハイブリダイゼーションすることができるヌクレオチド配列を5’端に更に含むことができる。検出プローブは、好ましくは、例えば、蛍光標識、発光性標識または酵素標識で標識することができる。ある実施形態において、検出プローブは、ECL(商標)技術を使用する検出を可能にする標識で標識される。だが、本発明はこの特定の検出方法に決して限定されないことが理解される。好ましい実施形態において、プライマー2オリゴヌクレオチドの5’端は配列GATGCAAGGTCGCATATGAGを含むことができる。この配列は、下記の構造:Ru(bpy)2+−GATGCAAGGTCGCATATGAG−3’を有する、Organon Teknikaから市販されている一般的なECL(商標)プローブにハイブリダイゼーションすることができる。
【0101】
異なる実施形態において、プライマー2オリゴヌクレオチドは、NASBA反応のリアルタイムでのモニターを可能にするために「分子ビーコン」技術を取り込むことができる。この技術は、この分野では知られており、例えば、国際公開公報第95/13399号によって、また、TyagiおよびKramer、Nature Biotechnology、14:303〜308、1996に記載される。
【0102】
標的特異的なプローブオリゴヌクレオチドもまたキット内に含めることができる。プローブオリゴヌクレオチドは、一般には、標的mRNAの領域またはその相補体に対して実質的に同一である約20塩基〜25塩基の配列を含む。プローブとしての使用のために好適である例示的なHPV特異的オリゴヌクレオチド配列が表1に「PO」として示される。プローブオリゴヌクレオチドは、NASBA反応またはPCR反応の生成物を検出するための標的特異的なハイブリダイゼーションプローブとして使用することができる。これに関連して、プローブオリゴヌクレオチドは、捕捉プローブ(下記参照)を形成させるために、常磁性ビーズなどの固体支持体に結合させることができる。好ましい実施形態において、プローブオリゴヌクレオチドの5’端をビオチンで標識することができる。ビオチン標識の付加は、プローブをビオチン/ストレプトアビジン連結またはビオチン/アビジン連結により固体支持体に結合させることを容易にする。
【0103】
増幅産物のリアルタイムでの検出を可能にする標的特異的なプローブは「分子ビーコン」技術を取り込むことができる。この技術は、この分野では知られており、例えば、TyagiおよびKramer、Nature Biotechnology、14:303〜308、1996によって記載され、また、国際公開公報第95/13399号に記載される。分子ビーコンプローブとしての使用のために好適である例示的なHPV特異的オリゴヌクレオチド配列が表1に「MB」として示される。
【0104】
本明細書中で使用される用語「分子ビーコンプローブ」は、下記の構造を有する分子を意味することが理解される:
−arm−標的−arm−X
(式中、「標的」は標的特異的なヌクレオチド配列を表し、「X」および「X」は蛍光性成分、および、蛍光性成分と消光剤成分との2つが非常に近くで一緒に保たれたときに蛍光性成分からの蛍光を実質的または完全に消光することができる消光剤成分を表し、「arm」および「arm」はステム二重鎖を形成することができる相補的な配列を表す)。
【0105】
「arm」配列および「arm」配列の好ましい組合せは下記の通りであるが、これらは、本発明に対する限定ではなく、むしろ例示であることが意図される:
cgcatg−SEQ−catgcg
ccagct−SEQ−agctgg
cacgc−SEQ−gcgtg
cgatcg−SEQ−cgatcg
ccgtcg−SEQ−cgacgg
cggacc−SEQ−ggtccg
ccgaagg−SEQ−ccttcgg
cacgtcg−SEQ−cgacgtg
cgcagc−SEQ−gctgcg
ccaagc−SEQ−gcttgg
ccaagcg−SEQ−cgcttgg
cccagc−SEQ−gctggg
ccaaagc−SEQ−gctttgg
cctgc−SEQ−gcagg
ccaccc−SEQ−gggtgg
ccaagcc−SEQ−ggcttgg
ccagcg−SEQ−cgctgg
cgcatg−SEQ−catgcg
【0106】
分子ビーコン技術の使用により、増幅反応、例えば、NASBA増幅(Leone等、Nucleic Acids Research.、1998、第26巻、2150頁〜2155頁を参照のこと)のリアルタイムでのモニタリングが可能になる。分子ビーコンプローブは、一般には、ステム二重鎖構造を互いに形成するためにハイブリダイゼーションすることができる、HPV特異的配列に隣接する相補的な配列(これらは、本明細書中ではarmおよびarmの表示によって表される)を含む。armおよびarmの正確な配列は、プローブが標的HPV配列に結合しないとき、これらの配列がステム二重鎖を形成することができなければならないという条件を除いて、本発明にとって重要ではない。
【0107】
分子ビーコンプローブはまた、本明細書中ではXおよびXの表示によって表される蛍光性成分および消光剤成分を含む。当業者によって理解されるように、蛍光剤成分および消光剤成分は、これらの2つの成分が非常に近くに存在するとき、例えば、プローブが標的配列の非存在下でヘアピンの「閉じた」立体配座にあるとき、消光剤成分が蛍光性成分からの蛍光を実質的または完全に消光することができるように選択される。標的配列に結合したとき、蛍光性成分および消光剤成分は、蛍光性成分の蛍光がもはや消光されないように離れて保たれる。
【0108】
本発明に従って使用され得る消光剤/蛍光性成分の好適な対の多くの例がこの分野では知られている(国際公開公報第95/13399号、TyagiおよびKramer(同上)を参照のこと)。多くの異なる色での広範囲の蛍光団を使用することができ、これらには、例えば、5−(2’−アミノエチル)アミノナフタレン−1−スルホン酸(EDANS)、フルオレセイン、FAMおよびテキサスレッドが含まれる(Tyagi、BratuおよびKramer、1998、Nature Biotechnology、16:49〜53を参照のこと)。異なる色の蛍光団で標識されたプローブの使用は、1つの反応容器における2つ以上の異なるプローブの「多重」検出を可能にする。好ましい消光剤は4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)であり、これは、広範囲の蛍光団に対する「普遍的(ユニバーサル)」な消光剤として役立つ非蛍光性発色団である。蛍光剤成分および消光剤成分は、いずれかの配向で、すなわち、5’端またはその近くにおける蛍光剤および3’端またはその近くにおける消光剤、あるいはその逆のいずれかで、プローブに共有結合的に結合させることができる。分子ビーコンプローブを合成するための様々なプロトコルがこの分野では知られている。合成に関する詳細なプロトコルが、Sanjay Tyagi等(分子遺伝学部、公衆衛生研究所、455 First Avenue、New York、NY 10016、米国)による「分子ビーコン:均一溶液において核酸を検出するためのハイブリダイゼーションプローブ」と題する論文に示されている(これは、(www.phri.nyu.eduまたはwww.molecular−beacons.orgにおける)PHRIウエブサイトを介してオンラインで入手可能である)。
【0109】
NASBA P1プライマーおよびNASBA P2プライマーの好適な組合せを、NASBA増幅反応を行わせるために使用することができる。NASBA増幅反応を行わせるために、プライマー1オリゴヌクレオチドおよびプライマー2オリゴヌクレオチドは、mRNAの標的領域から二本鎖DNAの合成を開始させることができなければならない。これが生じるためには、プライマー1オリゴヌクレオチドおよびプライマー2オリゴヌクレオチドは、標的mRNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖の領域に対してそれぞれ相補的である標的特異的な配列を含まなければならない。
【0110】
NASBA増幅反応サイクルの最初の段階(いわゆる「非サイクル」段階)において、プライマー1オリゴヌクレオチドは、標的mRNA内の相補的な配列にアニーリングし、その3’端がRNA依存性DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)の作用によって伸張させられ、第一鎖cDNA合成を形成する。得られるRNA:DNAハイブリッドのRNA鎖が、その後、例えば、RNaseHの作用によって消化され、一本鎖のDNAが残る。プライマー2オリゴヌクレオチドが、この一本鎖DNAの3’端に向かって相補的な配列にアニーリングし、その3’端が(逆転写酵素の作用によって)伸張され、二本鎖DNAを形成する。その後、RNAポリメラーゼは、今度は二本鎖DNA内の転写活性なプロモーター配列から多数のRNAコピーを転写することができる。このRNA転写物は、元の標的mRNAに対してアンチセンスではあるが、NASBA反応を更に行うためのテンプレートとして作用することができる。この場合、プライマー2がRNAにアニーリングし、第一鎖cDNA鎖の合成を開始させ、そしてプライマー1が第二cDNA鎖の合成を開始させる。NASBA反応の一般的な原理はこの分野では広く知られている(Compton、J.、Nature、350:91〜92を参照のこと)。
【0111】
本明細書中に記載される標的特異的なプローブオリゴヌクレオチドはまた、磁石マイクロビーズなどの固体支持体に結合させて、NASBA増幅反応の生成物(一本鎖RNA)を固定化するための「捕捉プローブ」として使用することができる。本明細書中に記載される標的特異的な「分子ビーコン」プローブは、NASBA反応のリアルタイムでのモニタリングのために使用することができる。
【0112】
本発明によるキットはまた、既知のHPV型に由来するE6mRNAおよび/またはL1mRNAを含有する陽性コントロールを含むことができる。好適なコントロールには、例えば、既知のHPV型が感染している細胞株(例えば、HeLa、CaSki)から調製された核酸抽出物が含まれる。
【0113】
キットは更に、内部標準用の増幅プライマー、例えば、ヒトU1A RNAについて特異的なプライマー、を含有することができる。
【0114】
NASBA増幅において使用される好適なプライマー(および場合によりプローブ)を含有するキットは更に、NASBA反応のために要求される酵素の混合物、例えば、RNA依存性DNAポリメラーゼ(例えば、逆転写酵素)、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAを加水分解することなくRNA−DNAハイブリッドのRNA鎖を加水分解するリボヌクレアーゼ(例えば、RNaseH)、およびRNAポリメラーゼの酵素混合物を含むことができる。RNAポリメラーゼは、試薬キットに供給されるNASBA P1プライマーの5’末端領域に存在するプロモーター領域を認識するものでなければならない。キットはまた、RNA合成およびDNA合成のために要求されるリボヌクレオシドおよびデオキシリボヌクレオシドを含有するNASBA緩衝液の供給源を含むことができる。標準的なNASBA反応緩衝液の組成は当業者には広く知られている(Leone等(同上)もまた参照のこと)。
【0115】
【表1−1】

【0116】
【表1−2】

【0117】
【表1−3】

【0118】
【表1−4】

【0119】
【表2】

【0120】
HPVのL1mRNAおよびE6mRNAをNASBAによって検出する際に使用される好適な好ましいプライマーが下記の表に示される。しかしながら、これらは単なる例示であり、本発明の範囲がこれらの特定の分子に限定されることは意図されない。
【0121】
下記の表において、NASBA P2プライマー(p2)は配列GATGCAAGGTCGCATATGAGを5’端に含み、NASBA P1プライマー(p1)は配列AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGを5’端に含む。プローブとして使用される好適なオリゴヌクレオチドは「po」によって識別される。P2プライマーは、一般には、プラス鎖に由来するHPV配列を含有し、これに対して、p1プライマーは、一般には、マイナス鎖に由来するHPV配列を含有する。ntは、関連するHPVゲノム配列におけるヌクレオチド位置を示す。
【0122】
【表3−1】

【0123】
【表3−2】

【0124】
【表3−3】

【0125】
【表3−4】

【0126】
【表3−5】

【0127】
【表3−6】

【0128】
同じ接頭辞を有するP1プライマーおよびP2プライマーの対(例えば、HAe6701p1およびHAe6701p2)は、組合せで使用されることが意図される。しかしながら、HPVの16型、18型、31型、33型および45型について下記に要約されるように、他の組合せもまた使用することができる。
【0129】
HPV16のE6mRNAを増幅するための好適なプライマー対は下記の通りである:
HAe6701p2またはHAe6702p2(両者とも、nt116)およびHAe6701p1またはHAe6702p1(両者とも、nt368)。
HAe6701p2またはHAe6702p2(両者とも、nt116)およびHPV16p1(nt258)。H16e6702Ap2(nt142)、H16e6702Bp2(nt182)、H16e6702Cp2(nt185)またはH16e6702Dp2(nt188)およびHAe6701p1またはHAe6702p1(両者とも、nt368)。
HAe6701p2またはHAe6702p2(両者とも、nt116)およびHAe6702Ap1(nt208)、HAe6702Bp1(nt191)、HAe6702Cp1(nt186)またはHAe6702Dp1(185)。これらの組合せは、すべてのE6スプライス変化体を増幅するために好適である。
HAe6703p2またはHAe6704p2(両者とも、nt656)およびHAe6703p1またはHAe6704p1(両者とも、nt741)。これらの組合せは、(少なくともnt741までの)E7コード領域を含有する転写物のすべてを増幅するために好適である。
【0130】
下記のプライマー対は、HPV18のE6mRNAを増幅するために好ましい:
H18e6701p2(nt702)またはH18e6702p2(nt698)およびH18e6701p1またはH18e6702p1(両者とも、nt869)。
H18e6703p2(nt651)およびH18e6703p1(nt817)。
H18e6704p2(nt179)およびH18e6704p1(nt379)。
【0131】
下記のプライマー対は、HPV31のE6mRNAを増幅するために好ましい:
H31e6701p2またはH31e6702p2(両者とも、nt164)およびH31e6701p1またはH31e6702p1(両者とも、nt423)。
H31e6703p2(nt617)、H31e6704p2(nt619)またはH31e6705p2(nt617)およびH31e6703p1(nt766)、H31e6704p1(766)またはH31e6705p1(nt809)。
【0132】
下記のプライマー対は、HPV33のE6mRNAを増幅するために好ましい:
H33e6701p2(nt618)またはH33e6703p2(nt620)およびH33e6701p1(nt763)またはH33e6703p1(nt807)。
H33e6702p2(nt431)およびH33e6702p1(nt618)。
【0133】
下記のプライマー対は、HPV45を増幅するために好ましい:
HPV45p2(nt430)およびHPV45p1(nt527)。
【0134】
【表4−1】

【0135】
【表4−2】

【0136】
【表4−3】

【0137】
HPVの16型、18型、31型および33型について好ましいPCRプライマー対はNASBAプライマー対と類似する。
【0138】
【表5】

【0139】
【表6】

【0140】
配列番号149および配列番号150(Onc2A2/Onc2A1−PCRおよびOnc2A1/Onc2A2−PCRのプライマー)におけるHPV特異的配列は、HPV16型のゲノム配列の6596位〜6615位のフラグメント(配列番号149;Onc2A2/Onc2A1−PCR)および6729位〜6747位のフラグメント(配列番号150;Onc2A1/Onc2A2−PCR)と同一である。
【0141】
HPV特異的配列の配列番号152および配列番号153(Onc2B2/Onc2B1−PCRおよびOnc2B1/Onc2B2−PCR)は、それぞれ、数個の縮重塩基を含む上記配列の変化体である。本明細書中に提供される縮重オリゴヌクレオチド分子の配列の代表例では、標準的なIUB記号が混合塩基部位について使用される:N=G、A、T、C;V=G、A、C;B=G、T、C;H=A、T、C;D=G、A、T;K=G、T;S=G、C;W=A、T;M=A、C;Y=C、T;R=A、G。
【0142】
配列の3’端に向かってヌクレオチド「SRH」の任意の2つが下記のようにイノシン(I)で置換されるHPV特異的配列の配列番号152(Onc2B2/Onc2B1−PCR)および配列番号153(Onc2B1/Onc2B2−PCR)の変化体を使用することもまた可能である:
5' AATGGCATTTGTTGGIIHAA 3'
5' AATGGCATTTGTTGGSIIAA 3'
5' AATGGCATTTGTTGGIRIAA 3'
【0143】
HPV特異的配列の配列番号156〜配列番号163(これらは、Onc2C2、Onc2D2、Onc2E2、Onc2F2、Onc2G2、Onc2H2、Onc2I2、Onc2J2、Onc2C1−PCR、Onc2D1−PCR、Onc2E1−PCR、Onc2F1−PCR、Onc2G1−PCR、Onc2H1−PCR、Onc2I1−PCRおよびOnc2J1−PCRのプライマーに存在する)は、HPV特異的配列の配列番号152(Onc2B2/Onc2B1−PCR)に基づく変化体であり、これに対して、HPV特異的配列の配列番号164〜配列番号169(これらは、Onc2K1、Onc2L1、Onc2M1、Onc2N1、Onc2O1、Onc2P1、Onc2K2−PCR、Onc2L2−PCR、Onc2M2−PCR、Onc2N2−PCR、Onc2O2−PCRおよびOnc2P2−PCRに存在する)は、HPV特異的配列の配列番号153(Onc2B1/Onc2B2−PCR)に基づく変化体である。これらの変化体は、縮重塩基と、そしてまたイノシン(I)残基とを含む。このような配列変化により、これらの変化体配列を取り込むオリゴヌクレオチドが多数のHPV型に結合することが可能になる。イノシン塩基はハイブリダイゼーションを妨害せず、従って、多数のHPV型に結合することができる「コンセンサス」プライマーを構築するために、様々なHPV型の間で変化している部位において含むことができる。
【0144】
Onc2A2、Onc2B2、Onc2C2、Onc2D2、Onc2E2、Onc2F2、Onc2G2、Onc2H2、Onc2I2およびOnc2J2のプライマーの任意の1つまたは複数を、HPVのL1mRNAをNASBA増幅するために、Onc2A1、Onc2B1、Onc2K1、Onc2L1、Onc2M1、Onc2N1、Onc2O1およびOnc2P1のプライマーの任意の1つまたは複数との組合せで使用することができる。
【0145】
Onc2A1−PCR、Onc2B1−PCR、Onc2C1−PCR、Onc2D1−PCR、Onc2E1−PCR、Onc2F1−PCR、Onc2G1−PCR、Onc2H1−PCR、Onc2I1−PCRおよびOnc2J1−PCRのプライマーの任意の1つまたは複数を、HPVのL1mRNAをPCR増幅するために、Onc2A2−PCR、Onc2B2−PCR、Onc2K2−PCR、Onc2L2−PCR、Onc2M2−PCR、Onc2N2−PCR、Onc2O2−PCRおよびOnc2P2−PCRのプライマーの任意の1つまたは複数との組合せで使用することができる。
【0146】
本発明は、下記の実験例および図面を参照して更に理解される。
【0147】
実施例1 NASBAに基づく核酸増幅およびリアルタイム検出によるHPVmRNAの検出
【0148】
臨床サンプルの採取および調製
パプ塗抹標本およびHPVサンプルがオスロ(ノルウェー)での子宮頸部スクリーニングプログラムで5970名の女性から集められた。RNA/DNA抽出のために意図されたサンプルは下記のように処理された。
【0149】
子宮頸部サンプルを、細胞採取用ブラシ(Rovesr Medical Devices、オランダ)を使用して、子宮頸部スクリーニングプログラムに参加した各女性から採取した。その後、細胞採取用ブラシは9mlの溶解緩衝液(5Mグアニジンチオシアナート)に漬けられた。RNAは5Mグアニジンチオシアナート中において−70℃で最も良く保護されるので、サンプルの全体積の1mlのみが各抽出操作のために使用された。溶解緩衝液中のサンプルは、−20℃で1週間まで保存され、その後は、DNA/RNAの単離が行われるまで−70℃で保存された。
【0150】
RNAおよびDNAは、溶解緩衝液における9mlの全サンプルから1mlを使用して、1回目の抽出において5300名の女性から自動処理により単離された。RNAおよびDNAは、Nuclisens(商標)抽出器を自動抽出用プロトコルに従って使用して、Organon Teknika(Organon Teknika B.V.、Boselind 15、P.O.Box 84、5280 AB Baxtel、オランダ;現在、Biomerieux、69280 Marcy l’Etoile、フランス)から得られる「Booms」単離法に従って抽出された。
【0151】
細胞株
HeLa細胞株(HPV18)、SiHa細胞株(HPV16)およびCaSki細胞株(HPV16)から得られたDNAおよびRNAが、PCR反応およびNASBA反応のための陽性対照として使用された。これらの細胞株はまた、感度実験(実施例2)におけるサンプル材料として使用された。SiHa細胞は、細胞あたり1−2コピーの組み込まれたHPV16を有し、一方、CaSki細胞は、組み込まれた状態およびエピソーム状態の両方で、60−600コピーのHPV16を有する。HeLa細胞は、細胞あたり約10−50コピーのHPV18を有する。
【0152】
PCRによるHPVの検出および型決定
子宮頸部切屑物に由来する単離されたDNAを、コンセンサスなGP5+/6+のプライマーを使用するPCRに供した(欧州特許EP−B−0517704)。PCRは、75mMのTris−HCl(25℃でpH8.8)、20mMの(NHSO、0.01%のTween20(商標)、200mMの各dNTP、1.5mMのMgCl、1Uの組換えTaq DNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)、3μlのDNAサンプル、ならびに、各50pmolのGP5+プライマーおよびGP6+プライマーを含有する50μlの反応体積において行われた。94℃での2分間の熱変性工程の後、PCRプロセッサー(Primus96、HPLブロック、MWG、ドイツ)による40サイクルの増幅が続いた。各サイクルには、1分の変性工程、40℃で2分間のプライマーアニーリング工程、および72℃で1.5分間の鎖伸張工程が含まれた。最後の伸張工程が、増幅されたDNAの完全な伸張を確実にするために4分伸ばされた。
【0153】
GP5+/6+陽性サンプルは、下記のように、HPVの16型、31型および33型のPCRプロトコルに供された:
HPV16、HPV31およびHPV33:PCRが、75mMのTris−HCl(25℃でpH8.8)、200mMの各dNTP、1.5mMのMgCl、2.5Uの組換えTaq DNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)、3μlのDNAサンプル、および25pmolの各プライマーを含有する50μlにおいて行われた。94℃での2分間の熱変性工程の後、PCRプロセッサー(Primus96、HPLブロック、MWG、ドイツ)による35サイクルの増幅が続いた。各サイクルには、30秒間の変性工程、57℃で30秒間のプライマーアニーリング工程、および72℃で1分間の鎖伸張工程が含まれた。最後の伸張工程が、増幅されたDNAの完全な伸張を確実にするために10分伸ばされた。HPV33に対するプロトコルは、52℃でのプライマーアニーリング工程を有した。HPV18のプロトコル:プライマーが、HPV18型を同定するために設計された。PCRが、75mMのTris−HCl(25℃でpH8.8)、20mMの(NHSO、0.01%のTween20、200mMの各dNTP、2.0mMのMgCl、2.5Uの組換えTaq DNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)、3μlのDNAサンプル、および25pmolの各プライマーを含有する50μlにおいて行われた。94℃での2分間の熱変性工程の後、PCRプロセッサー(Primus96、HPLブロック、MWG、ドイツ)における35サイクルの増幅が続いた。各サイクルには、30秒間の変性工程、57℃で30秒間のプライマーアニーリング工程、および72℃で1分間の鎖伸張工程が含まれた。最後の伸張工程が、増幅されたDNAの完全な伸張を確実にするために10分伸ばされた。
【0154】
ヒトβ−グロビン遺伝子に対するプライマーセットがDNA品質のコントロールとして使用された(操作手順、University Hospital Vrije Universiteit、Amsterdam、オランダ)。PCRが、75mMのTris−HCl(25℃でpH8.8)、200mMの各dNTP、1.5mMのMgCl、1Uの組換えTaq DNAポリメラーゼ(MBI Fermentas)、3μlのDNAサンプル、および25pmolの各プライマーを含有する50μlにおいて行われた。94℃での2分間の熱変性工程の後、PCRプロセッサー(Primus96、HPLブロック、MWG、ドイツ)による35サイクルの増幅が続いた。各サイクルには、94℃で1分間の変性工程、55℃で1分半のプライマーアニーリング工程、および72℃で2分間の鎖伸張工程が含まれた。最後の伸張工程が、増幅されたDNAの完全な伸張を確実にするために4分伸ばされた。HeLaが、HPV18に対する陽性コントロールとして使用され、一方、SiHaまたはCaSkiが、HPV16に対する陽性コントロールとして使用された。水が陰性コントロールとして使用された。
【0155】
【表7】

【0156】
PCR生成物の可視化がDNA500チップ(Agilent Technologies、米国)においてそのマニュアルに従って行われた。DNAチップでは、最適な検出範囲が0.5〜50ng/mlであるマイクロスケールでのゲル電気泳動が使用される。結果は、Bioanalyzer2100ソフトウエア(Agilent Technologies、米国)を使用して解釈された。
【0157】
下記の表により、患者サンプルにおけるHPVのPCRのために使用されたプライマーが確認され、HPVの35型、39型、45型、51型、52型、58型およびHPV6/11について有用な更なるPCRプライマーが示される。
【0158】
【表8】

【0159】
NASBAによるRNA増幅
混入を避けるための注意事項:
1.核酸の放出、単離および増幅/検出を別個の研究室領域で行う。
2.核酸の放出、単離および増幅/検出のための試薬を、核酸の放出、単離および増幅/検出がそれぞれ行われることになる研究室領域において保存し、調製する。
3.チューブおよびバイアルはすべて、使用していないときには閉じたままにしておく。
4.1つの研究室領域で使用されたピペットおよび他の装置は他の領域で使用してはならない。
5.それぞれのピペッティング動作について新しいピペットまたはピペットチップを使用する。
6.核酸を含有する可能性がある流体についてはエアロゾル防止チップとともにピペットを使用する。溶液のピペッティングは、常に、この動作のためだけに開閉される隔離されたチューブから、またはこの動作のためだけに開閉される隔離されたチューブに行わなければならない。他のチューブおよびバイアルはすべて、閉じられたままにされ、取り扱われているものから分離されていなければならない。
7.標的RNAを含有する可能性がある臨床材料、または増幅物に関して処理するときには使い捨て手袋を使用する。可能であれば、試験手順における各ピペッティング工程の後で、特に、混入の可能性のある材料と接触した後では手袋を交換する。
8.使用済みの使い捨て物を容器に集める。それぞれの試験操作の後、容器を閉じて片づける。
9.各試験操作の後、少なくとも1時間、核酸の単離または増幅/検出のときに使用されたチューブラックを洗剤(例えば、Merck Extran MA01アルカリ)に浸漬する。
【0160】
下記の手順が、Organon Teknikaによって供給されるNuclisens(商標) ベーシックキットからの試薬を使用して行われた。
【0161】
n=10のサンプルに対する手順:
1.酵素溶液の調製。
55μlの酵素希釈液(Nuclisens(商標) ベーシックキットから;これはソルビトールを水溶液中に含有する)を3つの凍結乾燥された酵素球体(Nuclisens(商標) ベーシックキットから;これは、AMV−RT、RNaseH、T7RNAポリメラーゼおよびBSAを含有する)のそれぞれに加える。この酵素溶液を室温で少なくとも20分間放置する。酵素溶液を1つのチューブにまとめ、指でチューブをはじくことによって十分に混合し、軽く遠心沈殿して、1時間以内に使用する。酵素混合物における最終濃度は、375mMのソルビトール、2.5μgのBSA、0.08UのRNaseH、32UのT7RNAポリメラーゼおよび6.4UのAMV逆転写酵素である。
【0162】
2.試薬球体/KCl溶液の調製。
10サンプルについて:80μlの試薬球体希釈液(Nuclisens(商標) ベーシックキットから;これはTris/HCl(pH8.5)、45%DMSOを含有する)を凍結乾燥された試薬球体(Nuclisens(商標) ベーシックキットから;これは、ヌクレオチド、ジチオスレイトールおよびMgClを含有する)に加え、直ちに十分にボルテックスする。これを3つの試薬球体に関して行い、溶液を1つのチューブで混合する。
【0163】
3μlのNASBA水(Nuclisens(商標) ベーシックキットから)を、再構成された試薬球体溶液に加え、十分に混合する。
【0164】
56μlのKClストック溶液(Nuclisens(商標) ベーシックキットから)を加え、十分に混合する。このKCl/水混合液の使用により、最終的なKCl濃度が70mMであるNASBA反応物が得られる。試薬/KCl溶液における最終濃度は、1mMの各dNTP、2mMのATP、UTPおよびCTP、1.5mMのGTP、そして0.5mMのITP、0.5mMのジチオスレイトール、70mMのKCl、12mMのMgCl、40mMのTris−HCl(pH8.5)である。
【0165】
3.標的特異的プライマーおよび分子ビーコンプローブを含有するプライマー/プローブ溶液の調製。
それぞれの標的反応について、91μlの試薬球体/KCl溶液(工程2で調製されたもの)を新しいチューブに移す。25μlのプライマー/分子ビーコンプローブ溶液を加える(反応あたり、それぞれが約0.1μM〜0.5μMのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマー、そして約15pmol〜70pmolの分子ビーコンプローブの最終濃度にする)。ボルテックスによって十分に混合する。遠心はしない。
【0166】
10個未満の標的RNA増幅が行われている場合、適量の試薬球体溶液、KCl/水溶液およびプライマーが使用されるために下記の表を参照する。プライマー溶液は調製後30以内に使用しなければならない。
【0167】
【表9】

【0168】
4.サンプルの添加。
それぞれの標的RNA反応について: 96ウエルマイクロタイタープレートにおいて、10μlのプライマー/プローブ溶液(工程3で調製されたもの)を10個のウエルのそれぞれにピペットで入れる。5μlの核酸抽出物を各ウエルに加える。マイクロタイタープレートを65℃±1℃で4分間インキュベーションする。41±0.5℃に4分かけて冷却する。その後、各ウエルに5μlの酵素溶液を加える。直ちに、マイクロタイタープレートを蛍光検出装置(例えば、Nuclisens(商標) EasyQ Analyzer)に入れ、増幅を開始する。
【0169】
臨床研究からの結果
表10には、細胞学結果に関連づけられる、リアルタイムNASBAでのHPV陽性事例(L1および/またはE6の発現)およびPCRでのHPV陽性事例の分布が示される。PCR増幅は、Karlsen等、J Clin Microbiol.、34:2095〜2100、1996に記載されるように行われた。予想された組織学に対する数字は、CIN III病変に関する類似した研究から得られた平均結果(Clavel等、Br J Cancer、84:1616〜1623、2001)に基づく。数例の代表的な事例から得られた結果が表11に示される。
【0170】
【表10】

【0171】
【表11】

【0172】
実施例2 コントロール細胞株に対するリアルタイムNASBAの感度
子宮頸癌細胞株であるCaSki、SiHaおよびHeLaを、Organon Teknika/bioMerieuxから得られるBoom抽出方法を使用する核酸の自動処理抽出の前(並行1および並行3)、または核酸抽出の後(並行2)のいずれかで、溶解緩衝液で希釈した。リアルタイムNASBAが、上記に記載されたプロトコルに従って、テキサスレッド(16、L1および18)またはFAM(U1A、33および31)で標識された分子ビーコンプローブを使用して行われた。
【0173】
【表12】

【0174】
従って、リアルタイムNASBAを使用して1個未満の細胞においてHPVのE6mRNAを検出することが可能である。
【0175】
リアルタイムNASBAを、多重アッセイとして、また単一反応として、その両方で調べた。下記の感度研究から得られた結果は、CaSki細胞株、SiHa細胞株およびHeLa細胞株の並行操作に、そしてHPVの16型、18型、31型および33型についての合成DNAオリゴに対する3つの並行操作に基づいている。検出限界の定義は、並行したサンプルの両方が陽性であるということである。括弧内の数字(x)は、示された細胞量が何回かの操作でもまた検出されたことを示す。感度は、2つの並行操作でHPVを検出するために必要な細胞量として定義される。HPV型はPCRから決定され、特異性は、PCRと比較されるNASBAに基づいている。
【0176】
感度
PCR:Gp5+/6+を使用するHPVのコンセンサスPCRでは、10個までのSiHa細胞およびHeLa細胞が、そして10個までのCaSki細胞が検出された。しかしながら、型特異的なPCRプライマーセットはより高感度であり、HPV16の型特異的PCRプライマーセットについては10(10)個のSiHa細胞および0.1個のCaSki細胞が検出され、一方、HPV18の型特異的PCRプライマーセットでは、10個のHeLa細胞が検出された。
【0177】
リアルタイムNASBA:U1Aについて特異的なプライマーを用いたリアルタイムNASBAでは、10(1)個のSiHa細胞およびCaSki細胞、そして1個のHeLa細胞が反応混合物において検出された。HPV16特異的プライマーの場合、より低い検出限界が(10)(10、1)個のSiHa細胞および10(1)個のCaSki細胞であり、HPV18型特異的プライマーの場合、検出限界が1(0.1)個のHeLa細胞であった。ユニバーサルL1プライマーでは、10個のCaSki細胞が検出された。HeLa細胞およびSiHa細胞は、ユニバーサルL1プライマーを用いて検出されなかった。
【0178】
U1A特異的プライマーを用いたリアルタイム多重NASBAは、10(1)個のSiHa細胞および10(1)個のCaSki細胞についてより低い検出限界を有したHPV16特異的プライマーと組み合わされたとき、10(10)個のSiHa細胞および10(1)個のCaSki細胞のより低い検出限界を有した。L1特異的プライマーでは、HPV33特異的プライマーとの組合せで、10(10)個のCaSki細胞が検出された。競合するHPV33サンプルは反応中に存在しなかった。HPV18特異的プライマーの場合、HPV31特異的プライマーと組み合わされたとき、より低い検出限界が1(0.1)個のHeLa細胞であった。競合するHPV31サンプルは反応中に存在しなかった。HPV31特異的プライマーおよびHPV33特異的プライマーの感度は、これらのHPV型を保有する細胞株がないために試験されなかった。それらは、HPV31およびHPV33を含有するサンプルに対して試験された。しかし、細胞量、ならびにこれらの細胞におけるHPV31およびHPV33のコピー数は不明であり、おそらくはサンプル毎に異なっていた。
【0179】
【表13】

【0180】
リアルタイムNASBAが、1999年〜2001年の期間にCINの治療のためにOstfold中央病院に入院した女性から得られたサンプルに対して行われた(実施例3参照)。FAMまたはテキサスレッドで標識された分子ビーコンプローブが、上に記載された核酸抽出プロトコルおよびNASBAプロトコルと一緒に使用された。結果が、図1Aおよび図1B(HPV16−患者サンプル205)に、図2Aおよび図2B(HPV18−患者サンプル146)に、図3Aおよび図3B(HPV31−患者サンプル236)に、図4Aおよび図4B(HPV33−患者サンプル218)に、そして図5Aおよび図5B(HPV45−患者サンプル343)に示される。それぞれの場合において、「A」図は単一反応であり、一方、「B」は多重アッセイである。
【0181】
特異性:リアルタイムNASBAの交差反応性。
リアルタイムNASBAプライマーの組合せが、NASBAを使用してHPV型間の交差反応性について調べるために、HPV6/11、16、18、31、33、35、39、45、51、52、58またはHPV XについてPCRにより陽性であった、オスロ研究から得られた490個の子宮頸部サンプルに対して試験された。すべてのサンプルが、HPVの39型(2)、52型(1)および58型(2)を除いて、コンセンサスPCRと、それぞれのHPV型について型特異的なPCRとによって型決定された。これらのサンプルは、PreTeck HPV−Prooferに対して試験するために加えられている。HPV Xは、Gp5+/6+でのコンセンサスPCRについて陽性であるが、HPV6/11、16、18,31、33、35、45および51については型特異的PCRによって陰性である。結果が表17に示される。交差反応性は示されなかった。表17からの選択された数の事例の配列確認が表18に示される。
【0182】
PCR:合計で773個の子宮頸部サンプルが、PCRおよびPreTeck HPV−Proofer(リアルタイム多重NASBA)を用いて試験され、合計で24.6%(190/773)のサンプルが、Gp5+/6+でのコンセンサスPCRにより陽性であった。74.1%(83/112)がHPV16であると型決定され、13%(15/112)がHPV18であると型決定され、17%(19/112)がHPV31であると型決定され、12%(13/112)がHPV33であると型決定された。これらには、多重HPV感染が含まれていた。合計で103個のサンプルが単一HPV感染または多重HPV感染を有し、91.3%(94/103)が単一のHPV感染を有するだけであった。二重のHPV感染がサンプルの8.7%(9/103)に存在していた。サンプルはすべて、最初に、コンセンサスなGp5+/6+のPCRプライマーにより試験された。コンセンサスなGp5+/6+からのHPV PCR陰性サンプルは、その後、インタクトなDNAを確認するために、β−グロビンのコントロールプライマーにより試験された。HPV PCR陽性サンプルはこのDNAコントロールに供されなかった。この研究におけるHPV陰性サンプルはすべてが、β−グロビンのコントロールPCRプライマーにより陽性であった。Gp5+/6+でのPCRにより陽性であるDNAサンプルのみがHPV型特異的PCRに供された。注目されるHPV型は、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV33であった。
【0183】
リアルタイム多重NASBA:リアルタイムNASBA反応の場合、U1A遺伝子産物に対するプライマーおよびプローブが、インタクトなRNAに対する性能コントロールとして使用された。U1Aについて陰性であるサンプルは棄却された。多重HPV感染を示すサンプルを含めて、合計で14.2%(110/773)のサンプルが、HPV型特異的NASBAプライマーの少なくとも1つにより陽性であった。これらのサンプルから、54.5%(60/110)がHPV16のNASBAプライマーにより陽性であり、13.6%(15/110)がHPV18プライマーにより陽性であり、21.8%(24/110)がHPV31プライマーにより陽性であり、13.6%(15/110)がHPV33プライマーにより陽性であった。合計で45個のサンプルがL1コンセンサスプライマーにより陽性であり、通常はHPV16のE6/E7癌遺伝子発現と一緒であった(82.2%(37/45))。コンセンサスなL1が、それぞれ、HPV18、HPV31およびHPV33のいずれかと一緒に、2.2%(1/45)で検出された。L1はまた、8.9%(4/45)の事例において単独で検出されたが、それらはすべてが、Gp5+/6+のプライマーによりPCR陽性であった。合計で108個のサンプルが単一HPV感染または多重HPV感染を有し、98.1%(106/108)が単一HPV感染を有しただけであった。二重のmRNA発現がサンプルの1.9%(2/108)に存在していた。
【0184】
PCRと比較されるリアルタイム多重NASBA:合計で87個のサンプルが、HPV16のPCRまたはPreTect HPV−ProoferによりHPV16のDNAまたはRNAの存在を示した。64.4%(56/87)が、PCRおよびリアルタイムNASBAの両方によりHPV16について陽性であることが明らかにされた。39.1%(34/87)がPCRにより陽性であるにすぎず、3.4%(3/87)がリアルタイムNASBAにより陽性であるにすぎなかった。HPV18の場合、合計で20個のサンプルが、PCRまたはリアルタイムNASBAのいずれかによりHPV18のDNAまたはRNAの存在を示した。これらの20個のサンプルから、50%(10/20)が両方の試験により陽性であり、35%(7/20)がPCRにより陽性であるにすぎず、15%(3/20)がリアルタイムNASBAにより陽性であるにすぎなかった。合計で27個のサンプルが、PCRまたはリアルタイムNASBAのいずれかによりHPV31のDNAまたはRNAの存在を示した。これらの27個のサンプルのうち、59.3%(16/27)が両方の試験により陽性であり、11.1%(3/27)がPCR試験により陽性であるにすぎず、18.5%(5/27)がリアルタイムNASBA試験により陽性であるにすぎなかった。HPV33の場合、合計で18個のサンプルが、PCRまたはPreTect HPV−ProoferのいずれかによりHPVのDNAまたはRNAの存在を示し、55.6%(10/18)のサンプルが両方の試験により陽性であると試験された。16.7%(3/18)がPCRにより陽性であるにすぎず、22.2%(4/18)がリアルタイムNASBAにより陽性であるにすぎなかった。
【0185】
【表14】

【0186】
【表15】

【0187】
【表16】

【0188】
【表17】

【0189】
【表18】

【0190】
考察
リアルタイムNASBAの感度は、一般に、PCRの感度よりも良好であった。すべてのマーカーに対するリアルタイムNASBAの感度は1個〜10個の細胞の間であった。これは、10〜10の感度範囲を有するPCR反応の場合よりもかなり良好である。予想されるように、特異的なプライマーおよびプローブの感度は、ユニバーサルプライマーおよびプローブの感度よりも良好であった。リアルタイムNASBAは、リアルタイム多重NASBAとまさに同程度の感度、またはそれよりも高感度であった。
【0191】
U1A(ヒトのハウスキーピング遺伝子)に指向するリアルタイムNASBA用のプライマーおよび分子ビーコンプローブが、サンプル材料中のRNAがインタクトであることを確保するためにリアルタイムNASBA反応におけるサンプル材料の性能コントロールとして使用された。この反応からの陽性シグナルが、リアルタイムNASBA反応の有効性評価のために必要であった。
【0192】
L1(HPVの主要キャプシドタンパク質)に関するユニバーサルリアルタイムNASBAの感度は、L1に同様に対するユニバーサルGp5+/6+でのPCRの場合よりもはるかに良好であり、10(10)個のCaSki細胞と比較して、10細胞の感度を有した。これらの2つのプライマーセット(PCRおよびNASBA)は、異なるHPV型の保存されたL1遺伝子の同じ領域にその標的を有する。感度の違いは、通常、細胞あたり1コピーの各遺伝子が存在し、一方で、mRNAのコピー数は数百であり得るという事実のためであると考えられる。リアルタイムNASBA用のL1プライマーでは、Gp5+/6+のPCRプライマーにより検出されるようなSiHa細胞またはHeLa細胞が検出されなかった。このことは、L1の発現がこれらの細胞株では存在しないことを示している。Gp5+/6+のPCRプライマーでは、10個のSiHa細胞またはHeLa細胞が検出された。各細胞におけるHPVコピー体の量を考慮すると、CaSki細胞が、SiHaおよびHeLaから得られる細胞量の1/10で検出されたことが理解される。これは、CaSki細胞は、組み込みおよびエピソームの両方で、細胞あたり60コピー〜600コピーのHPVを有し、一方、SiHa細胞は、細胞あたり1コピー〜2コピーのHPVを組み込まれて有し、HeLa細胞は、細胞あたり10コピー〜50コピーのHPVを組み込まれて有するからである。L1プライマーセットでは、HPVの組み込み形態およびエピソーム形態の両方を有するCaSki細胞のみが検出され、HPVの組み込み形態のみを有するSiHa細胞またはHeLa細胞は検出されなかった。このことは、L1遺伝子はHPV感染のエピソーム状態で発現するだけであることを示していると考えられ、従って、L1は、HPV感染の組み込みおよび持続に対する有益なマーカーであり得る。
【0193】
HPV型特異的なNASBAプライマーは、E2遺伝子産物が存在しないために癌細胞において多量に発現する全長のE6/E7転写物に指向している。リアルタイムNASBA用の16型特異的なプライマーにより、10(10)個のSiHa細胞を検出したHPV16のPCRプライマーと比較した場合、10(1)個のSiHa細胞および10(1)個のCaSki細胞が検出された。このことに対する説明は、各細胞株におけるHPVコピー体の量が異なることであると考えられる。CaSki細胞はHPVの組み込み形態およびエピソーム形態の両方を有し、一方、SiHa細胞はHPVの組み込み形態のみを有する。これは、E6/E7遺伝子からのmRNAの発現が大きいためであると考えられる。CaSKi細胞を検出する場合、NASBA用のHPV16プライマーに対する検出限界は、HPV16のPCRプライマーについて0.1個のCaSki細胞と比較して、10(1)個のCaSki細胞であった。このことは奇妙ではあるが、CaSki細胞は60コピー〜600コピーのHPV16 DNAを含有し、その結果、6コピー〜60コピーのHPV16 DNAを有する0.1個のCaSki細胞を検出することが可能であるという説明が考えられる。リアルタイムNASBAの感度が、PCRと比較して、より低いことは、CaSki細胞におけるE6/E7の発現が中程度/低いことを示し得る。不安定なmRNAの分解もまた1つの説明であると考えられる。CaSki細胞におけるHPVコピー体の量は、SiHa細胞における量よりもおよそ60倍〜600倍であり得る。このことは、CaSki細胞の検出の方がより高感度であることによって示される。
【0194】
型特異的なHPV18用PCRプライマーにより、10個のHeLa細胞が検出された。これは、HPVのコンセンサスなGp5+/6+のプライマーよりも100倍良好な大きさであり、特異的なプライマーは、一般に、コンセンサスなプライマーよりも高感度であることを述べている。型特異的なHPV18用NASBAプライマーの感度は1(0.1)個のHeLa細胞であり、このことは、HeLa細胞におけるE6/E7の発現が大きいことを示している。
【0195】
U1A用NASBAプライマーの感度は10個のSiHaまたはCaSkiであった。U1Aプライマーセットに対する標的は、どのヒト細胞でも発現しているヒトハウスキーピング遺伝子である。
【0196】
PCRおよびNASBAの感度は、プライマーセット毎に、そしてサンプル材料毎に変化し、一般に、コンセンサスなプライマーセットにおける塩基対ミスマッチのために、型特異的なプライマーの方がコンセンサスなプライマーよりも高感度である。PCR反応におけるプライマーに対するアニーリング温度は最適化することができ、これにより、プライマーについて最適な反応条件が得られる。PCRにおけるアニーリング温度とは対照的に、NASBAプライマーに対するアニーリング温度は41℃で固定されなければならない。このように温度柔軟性がないことにより、NASBAプライマーは、感度および特異性がPCRプライマーよりも低くなり得る。
【0197】
PCRは二本鎖DNAを増幅し、標的は、通常、細胞あたり1コピーとして存在し、このため、PCRはサンプル材料中の細胞数の影響を受けやすい。NASBA反応に対する標的はRNAであり、mRNAは、遺伝子の発現に依存して、細胞あたり複数コピーとして存在し得る。非常に発現している遺伝子を選ぶことによって、mRNAコピー数が細胞あたり数百になることがあり、従って、検出がより容易になり得る。
【0198】
dsDNAは細胞内では比較的安定であり、長期間にわたってインタクト(無傷)のままである。dsDNAとは対照的に、mRNAは一般にあまり安定ではなく、mRNAの分解が、細胞に依存して迅速である。溶解緩衝液ではDNase活性またはRNase活性が全く検出されず、従って、dsDNAおよびssRNAはともに安定であるはずである。自己触媒的な活性により、DNAおよびRNAの両方が分解されることがある。子宮頸部から得られたDNA/RNAは、溶解緩衝液に保存されたとき、15℃〜30℃で24時間、2℃〜8℃で7日間、または長期間の保存については−70℃でインタクトのままであるはずである。
【0199】
リアルタイムNASBA反応における1つの制限が分子ビーコンプローブの濃度である。生成物の量は分子ビーコンプローブの濃度を超え、従って、その量が検出されない。これは、分子ビーコンプローブ濃度が大きいことにより、反応混合物がより複雑になり、増幅反応が阻害されるからである。ヌクレオチドもまた、PCR反応およびNASBA反応の両方で、増幅生成物の最終的な量に対する制限になることがある。増幅生成物の最終的な濃度は、生成物の量および反応混合物の複雑性のために、それ自体、更なる増幅を阻害し得る。分子ビーコンの存在下でのNASBA反応のとき、プローブは、テンプレートにハイブリダイゼーションすることによって増幅と競合し得る。そのため、テンプレートがその次のRNA合成のために利用できなくなる。このように、逆転写工程および更にはT7RNAポリメラーゼによるRNA合成のための基質としてのRNAが減少する。この競合は、分子ビーコンの量が低い場合には著しくなく、また、分子ビーコンの量が大きい場合には、この阻害は、投入RNAのコピー数がより大きいことにより克服され得る。
【0200】
投入RNAの量と時間対陽性シグナルとの間における線形の関係が、種々のHPV細胞株の10倍連続希釈物で調べられた。陽性シグナルが投入RNAの量および時間に依存することが明瞭に示された。多重反応では、陽性シグナルを示すために、単一反応よりも多くの時間が必要であった。これは、多重反応容器でのより複雑な混合物における競合のためであると考えられ、そしてまた、多重反応では、プライマーおよびプローブの濃度が異なり、かつ低くなるという事実のためであると考えられる。標的RNAの量と時間対陽性シグナルとの間における関係により、内部RNA標準をそれぞれの反応溶液で用いたリアルタイム多重定量的増幅反応が本発明者らにもたらされた。
【0201】
リアルタイムNASBA:単一対多重。リアルタイムNASBAは、一般に、リアルタイム多重NASBAよりも高感度であった。これは、多重反応におけるプライマーとプローブとの間での競合のために予想される通りであった。プライマーおよび分子ビーコンプローブの最終濃度が多重反応では最適化され、その結果、プライマーおよびプローブのセットの少なくとも1つについては、濃度が単一反応での場合よりも低かった。このことから、プライマーの濃度がより低い場合、反応は感度が小さくなり、または、少なくとも、反応が迅速に生じなくなるということになる。増幅反応の指数関数状態に達するために、より長い時間がかかり、従って、生成物を検出するために、より長い時間がかかる。プライマーの濃度は、NASBA反応における生成物の最終的な濃度に対する制限にはならない。これは、プライマーから生じた二本鎖DNAが、引き続き、RNAポリメラーゼに対するテンプレートとしてループにおいて何度も作用するからである。多重リアルタイムNASBAの感度は、単一リアルタイムNASBAと比較した場合、HPV16およびHPV18については同じであったが、L1に対する感度は、単一反応における10(1)の検出限界から、多重反応における10(10)個のCaSki細胞に劇的に低下した。U1A用のNASBAプライマーの場合、感度は10(1)個のSiHa細胞から10(10)個のSiHa細胞に低下し、一方、検出限界は、CaSki細胞については依然として同じままであった。検出限界のこの低下は、多重反応におけるプライマーおよび分子ビーコンプローブのより複雑な競合のためであり得る。プライマーおよび分子ビーコンプローブの最終的な濃度は最良でないことがあり、そして、多重反応における種々のプライマーおよび分子ビーコンプローブが互いに妨害することがある。U1A用のNASBAプライマーでは、1個のHeLa細胞が検出された。同じ検出レベルがすべての細胞株において予想され得るが、HeLa細胞の感度はSiHa細胞およびCaSki細胞の検出レベルの1/10であった。これらの細胞株は癌細胞であり、U1Aの発現が異なるように細胞に対して異なる影響を有し得る。違いはまた、細胞を集めているときの計数誤差のために、各反応における細胞の量が異なるためであり得る。
【0202】
リアルタイムNASBAは、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV33の間での交差反応性、あるいは、HPV6/11、HPV35、HPV39、HPV45、HPV51、HPV52、HPV58またはHPV Xとの交差反応性を示さなかった。
【0203】
PCR反応の特異性はリアルタイムNASBA反応の特異性よりも良好であり得る。これは、NASBA反応が41℃での等温反応であり、プライマーのアニーリング温度を変化させることが全くできないからである。プライマーは、基本的には、PCRプライマーの場合と同じ様式で設計される。PCR反応では、NASBA反応とは対照的に、アニーリング温度を変化させることができ、従って、2つのプライマーについて最適であるアニーリング温度を選ぶことができる。これにより、プライマーのアニーリングがより特異的になる。PCRの結果は、ゲル電気泳動を用いて可視化された。しかし、リアルタイムNASBA反応における分子ビーコンプローブは、PCRと比較した場合、更なるパラメーターであり、従って、より良好な特異性を全体的なNASBA反応にもたらし得る。DNA配列上の2つの異なる領域をプライマーアニーリングのために見出すこともまた、より容易である。これは、PCR生成物の長さの柔軟度が、250bp未満が望ましいNASBA生成物に対する場合よりもはるかに大きいからである。異なるHPV型の間で保存されていない特徴的な領域を選ぶことが、NASBA反応の特異性のためには重要である。数個の塩基対ミスマッチは標的の増幅またはハイブリダイゼーションを依然としてもたらし得る。
【0204】
ユニバーサルなL1用NASBAプライマーにより、SiHaまたはHeLa(ともに組み込み型)ではなく、CaSki細胞(組み込み状態またはエピソーム状態)が検出されることは、組み込まれたHPVがL1の発現を何ら示さず、一方、エピソーム状態にあるHPVがL1の発現を有し得ることを示し得る。
【0205】
まとめると、HPVの16型、18型、31型および33型について、これらのHPV型の発癌性E6/E7発現を正確に同定することができる確認アッセイが開発された。このアッセイではまた、主要キャプシドタンパク質L1の発現を同定することができる。
【0206】
実施例3 190名の患者における更なる臨床研究
患者/臨床サンプル
1999年〜2001年の期間にCINの処置のためにOstfold中央病院に入院した190名の女性から得られた生検試料。この研究に含まれる190名の女性の平均年齢は37.4歳であった(22歳〜74歳の範囲)。生検試料は採取後直ちに−80℃で凍結された。
【0207】
サンプルの細胞学的検査
日常的な細胞学報告が、細胞学的知見を記録するために使用された。スライド標本を再評価することは試みられなかった。スライド標本のそれぞれが、入院、膣鏡検査および生検のための根拠であるCIN II〜IIIの状態(すなわち、高悪性度の形成異常またはHSIL)を示していた。
【0208】
サンプルの組織学的検査
生検試料(この場合、生検試料1と呼ばれる)が、高悪性度の細胞学報告の後で採取された。高悪性度の病変(CIN IIまたはIII)が確認された場合、その患者は、再度、今回は膣鏡誘導による円錐切除術のために入院させられた。円錐切除術の前に、しかし、局所麻酔が施された後、第2の生検試料(生検試料2)が、全体的な所見から判断して、形成異常が局在化している可能性が最も大きい部領域から採取された。この生検試料(2×2mm)は−80℃の冷凍庫で2分以内に凍結された。
【0209】
生検試料2は、凍結されるときに2つに分けられ、半分がDNA/RNA抽出のために使用された。残る半分は、組織病理学的検査のために、10%緩衝化ホルムアルデヒドで固定され、処理された。いくつかの病変部は、関連する表面上皮を示すために、パラフィンブロックに正しく配向させられず、再配向または連続切片化しなければならなかった。従って、正確に同じ組織が抽出および組織病理学的評価のために使用されたことを保証することができない。円錐試料は、最終的には、その場の病理学者によって評価されたが、病理学者は、すべての場合に形成異常の存在を確認することができた。円錐試料は、最初の生検試料の場合と必ずしも同じ悪性度ではなく、多くの場合、生検試料2の場合と同じではなかった。
【0210】
核酸の抽出
核酸は、既に記載したように自動化Nuclisens抽出器を使用して単離された(Boom等、1990)。それぞれの生検試料は2つに分けられ、1つは組織学的検査のためであり、残る半分はRNA分析のためである。RNA分析のための材料は、ドライアイス(−80℃)上で保たれながら、より小さく分割され、1mlの溶解緩衝液(上記)に入れられ、その後、使い捨て乳棒を使用して20秒間のホモジネート化が行われた。100mlのサンプルが溶解緩衝液で更に10倍希釈され、その後、100mlがDNA/RNAのために抽出された。抽出されたDNA/RNAは約40mlの溶出緩衝液(Organon Teknika)により溶出され、−70℃で保存された。
【0211】
この研究で使用されたすべての分子ビーコンプローブでは、蛍光団FAM(6−カルボキシフルオレセイン)が構造の5’端で用いられる。これは、ユニバーサルな消光剤4−(4’−ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)に3’端で結合した可変的なステム−ループ配列に結合された。これらのプローブはEurogenetec(ベルギー)によって作製された。反応で使用されたMBの最終濃度は2.5mMであった。リアルタイムNASBAの場合、使用者により規定されるRNA増幅アッセイの開発のために意図されたNucliSens ベーシックキット(Organon Tecknika、オランダ)が使用された。NASBA増幅は20μlの体積で行われた。プライマーセットおよびプローブは、危険性の高いHPV16、HPV18、HPV31およびHPV33に対する全長のE6/E7mRNAに指向した。性能コントロールとして、核酸の分解による偽陰性の結果を避けるために、本発明者らは、ヒトU1核内低分子リボ核タンパク質(snRNP)特異的なAタンパク質(U1A mRNA)に指向するプライマーセットおよびプローブを使用した(Nelissen等、1991)。すべてのサンプルは別の装置において二連で処理された(蛍光および吸光度を測定するためのマイクロプレートリーダー、Bio−tek FL−600FA、MWG製)。CaSki/SiHa細胞またはHeLa細胞から単離されたmRNAが、HPV16転写物およびHPV18転写物に対する陽性コントロールとしてそれぞれ役立った。陰性コントロール(これは、7反応毎に含められた)は、mRNAを除くすべての試薬を含有する反応液からなった。
【0212】
HPVのDNA分析;ポリメラーゼ連鎖反応
NASBA反応で使用されたのと同じ抽出物および量がPCRのために使用された。L1コンセンサスプライマーのGp5+/6+が、HPVのDNAを含有するすべてのサンプルを検出するために使用された。PCR増幅は、上に記載されるように行われた。最初のDNA変性が94℃で2分間行われ、その後、40サイクルのPCRが行われた:94℃で1分間の変性、40℃で2分間のアニーリング、72℃で1.5分間の伸張、その後、72℃で4分間の最後の伸張。HPVの型決定が、上に記載されるように、HPV16、HPV18、HPV31およびHPV33(HPV6/11、HPV35、HPV45、HPV51、HPV52、HPV58)に対するPCR用の型特異的プライマーを使用することによって行われた。
【0213】
結果
最初に、190名の患者は、生検が、CIN I、CIN IIまたはCIN IIIの診断が細胞学によってなされた後に行われた。高悪性度の病変が組織学的検査によって確認され、150サンプルがCIN IIIとして診断された(78.9%)。円錐切除術の前に採取された生検試料2がRNA分析のために使用された。しかしながら、この生検試料の組織学的検査では、最初の150サンプルのうちの53個のみがCIN IIIとして診断されただけであった[54個は診断を与えず、24個がCIN IIとして診断され、18個がCIN Iとして診断され、4個がHPV/コンジロームとして診断された]。CIN IIサンプルの数は16個(8.4%)から30個(15.8%)に増大した[組織学Iにより、24個がCIN IIIとして診断され、4個がCIN IIとして診断され、1個が癌腫として診断され、1個がCIN Iとして診断された。組織学Iに由来する12例のCIN IIには、組織学IIではより低い診断が与えられた]。CIN Iの程度は6サンプル(3.2%)から32サンプル(16.8%)に増大した。2つの扁平上皮癌が、組織学IIでは、CIN IIIとして診断され、腺癌がCIN IIとして診断された。71サンプル(38.4%)において、高悪性度の病変が検出されなかった。
【0214】
HPVの発癌性RNAが190名の患者のうちの69名(36%)で検出された。組織学IIにおいてCIN IIIとして診断された53サンプル(28%)のうち、40例(76%)が、HPV16、HPV18、HPV31またはHPV33の発癌性発現を示していることが見出された。更に、本発明者らは、発癌性の発現を、CIN IIの30例のうちの9例(30%)で、CIN Iの32例のうちの4例(13%)で、細胞異常を示していない71例のうちの14例(20%)で、そしてHPV/コンジロームとして診断された4サンプルのうちの2個(50%)で見出した。
【0215】
HPV16のRNAが190名の患者のうちの42名で見出され、HPV18が7名(3.7%)で見出され、HPV31が15名(7.9%)で見出され、HPV33が8名(4.2%)で見出された。1名の患者は、HPV16およびHPV18による混合感染を有し、1名が、HPV16およびHPV31による混合感染を有していた。
【0216】
主要キャプシドタンパク質をコードするL1遺伝子に指向するコンセンサスなGp5+/Gp6+のプライマーを使用したとき、PCRにより、HPVが190個の子宮頸部生検試料のうちの81個(43%)で検出された。2回目の組織学的検査で診断が下された119例(115例がCINとして診断され、4例がHPV/コンジロームとして診断された)のうち、63例がHPVのDNAを含有することが見出された。検出された更に18例は組織学的診断を何ら与えなかった。81例のうちの20例はNASBAによって検出されなかった。これらのうちの7例には、CIN IIIの診断が与えられ、2例はCIN IIとして診断され、4例はCIN Iとして診断され、7例には、診断が与えられなかった。
【0217】
型特異的なPCRにより、HPVを含有する85例が検出された。66例がHPV16を有し、10例がHPV18を有し、14例がHPV31を有し、7例がHPV33を有していた。12例が多重感染を有していた。3例が、HPV16+HPV18による感染を有し、4例が、HPV16+HPV33による感染を有し、5例が、HPV16+HPV31による感染を有していた。20例には診断がなかった。
【0218】
実施例4
細胞学および組織学と比較されるPreTect HPV−ProoferおよびPCRによって検出されるHPV
正常なサンプルおよびASCUSサンプル(境界部塗抹標本を含む)が細胞学によって決定された。すべてのサンプルが、コンセンサスPCRおよびPreTect HPV−Prooferを用いて調べられた。しかし、コンセンサス陽性サンプルのみがPCRによって型決定された。CIN3サンプルおよび癌サンプルが組織学によって決定され、サンプルのすべてが3つの方法のすべてで調べられた。結果が図6に示される。細胞学または組織学と比較されるリアルタイム多重NASBAとPCRとの間における一致が下記の表19に示される。
【0219】
【表19】

【0220】
実施例5
本発明は、HPVのE6遺伝子に由来するmRNA転写物を検出するためのキットを提供する。このキットは、下記のプライマー対の1つ以上、2つ以上、そして好ましくはすべてと、付随する同定プローブとを含む。
HPV 16:HPV16.txt 7905 b.p

HPV16P2:
p2:116 (20) GATGCAAGGTCGCATATGAGCCACAGGAGCGACCCAGAAA
16 p1 (no7)
AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGG ATT CCC ATC TCT ATA TAC TA (51baser)

HPV16PO2:
po:230 (20) TATGACTTTGCTTTTCGGGA
H16e6702po

HPV 18:HPV18.txt 7857 b.p

HPV18P2:
p2:698 (22) GATGCAAGGTCGCATATGAGGAAAACGATGAAATAGATGGAG
H18e6702p2
HPV18P4:
p1:817 (20) AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGGGTCGTCTGCTGAGCTTTCT
H18e6703p1 (Multiplex)

HPV18PO2:
po:752 (21) GAACCACAACGTCACACAATG
H18e6702po


HPV 31:HPV31.txt 7912 b.p

HPV31P3:
p2:617 (20) GATGCAAGGTCGCATATGAGACTGACCTCCACTGTTATGA
H31e6703p2
p1:766 (20) AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGTATCTACTTGTGTGCTCTGT
H31e6703p1

HPV31PO4:
po:686 (26) GGACAAGCAGAACCGGACACATCCAA
H31e6704po


HPV 33:HPV33.txt 7909 b.p

HPV33P1:
p2:618 (22) GATGCAAGGTCGCATATGAGTATCCTGAACCAACTGACCTAT
H33e6701p2
p1:763 (19) AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGTTGACACATAAACGAACTG
H33e6701p1

HPV33PO3:
po:699 (23) GGACAAGCACAACCAGCCACAGC
H33e6703po
【0221】
上に示されたプローブの代替として、キットは、下記の分子ビーコンプローブの1つ以上を場合により含むことができる:
分子ビーコンプローブ:
H16e6702mb2-FAM ccagctTATGACTTTGCTTTTCGGGAagctgg
H18e6702mb1-TxR cgcatgGAACCACAACGTCACACAATGcatgcg
H31e6704mb2-FAM ccgtcgGGACAAGCAGAACCGGACACATCCAAcgacgg
H33e6703mb1-FAM ccaagcGGACAAGCACAACCAGCCACAGCgcttgg
【0222】
好ましくは、本発明のキットはまた、下記のプライマー対およびプローブを含む:
HPV45: HPV45.txt 7858 bp (X74479)

HPV45P1:
p2:430 (21): GATGCAAGGTCGCATATGAGAACCATTGAACCCAGCAGAAA
H45e6701p2
p1:527 (22): AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGTCTTTCTTGCCGTGCCTGGTCA
H45e6701p1

HPV45PO1:
po:500 (20): GTACCGAGGGCAGTGTAATA
H45e6701po
【0223】
上記のHPV45プローブは下記のHPV分子ビーコンプローブによって置き換えることができる:
H45e6701mb1 cgatcgGTACCGAGGGCAGTGTAATAcgatcg
【0224】
更に、キットは、キットを使用する地理学的領域に依存して、下記のプライマー対の1つ以上と、付随する同定プローブとを含むことができる:
HPV52: HPV52.txt 7942 bp (X74481)

HPV52P1:
p2:144 (22): GATGCAAGGTCGCATATGAGTTGTGTGAGGTGCTGGAAGAAT
H52e6701p2
p1:358 (18): AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGCCCTCTCTTCTAATGTTT
H52e6701p1

HPV52PO1:
Po:296 (20): GTGCCTACGCTTTTTATCTA
H52e6701po


HPV58 HPV58.txt 7824 bp (D90400)

HPV58P2:
p2:173 (18): GATGCAAGGTCGCATATGAGTCTGTGCATGAAATCGAA
H58e6702p2
p1:291 (18): AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGGAGCACACTTTACATACTG
H58e6702p1

HPV58PO2:
po:218 (22): TTGCAGCGATCTGAGGTATATG
H58e6702po

HPV51 HPV51.txt 7808 bp (M62877)

HPV51PA/P:
p2:655 (23): GATGCAAGGTCGCATATGAG AGA GGA GGA GGA TGA AGT AGA TA
H51e6702p2
p1:807 (20): AATTCTAATACGACTCACTATAGGGAGAAGG GCC CAT TAA CAT CTG CTGTA H51e6701p1

HPV51POA:
po:771 (24): TGG CAG TGG AAA GCA GTG GAG ACA
H51e67o2po
【0225】
上に示されたプローブは、下記の分子ビーコンプローブによってキットにおいて置き換えることができる:
H52e6701mb1 cgatcgGTGCCTACGCTTTTTATCTAcgatcg
H58e6702mb1 ccgtcgTTGCAGCGATCTGAGGTATATGcgacgg
H51e6702mb1 cgatcgTGG CAG TGG AAA GCA GTG GAG ACAcgatcg
【図面の簡単な説明】
【0226】
【図1】図1Aは、患者サンプルに対してHPV16用のFAM分子ビーコンを使用する単一反応リアルタイムNASBAアッセイの結果を示し、一方、図1Bは、図1AのFAM分子ビーコンと、UIAのためのテキサスレッド標識された分子ビーコンとを使用する多重化リアルタイムNASBAアッセイを示す。
【図2】図2Aは、患者サンプルに対してHPV18用のFAM分子ビーコンを用いた単一反応リアルタイムNASBAを示し、一方、図2Bは、HPB18用のテキサスレッド標識分子ビーコンと、HPV33用のFAM標識ビーコンとを用いた多重化形態を示す。
【図3】図3Aは、HPV31のFAM標識分子ビーコンを用いた単一反応リアルタイムNASBAを示し、一方、図3Bは、HPV45のテキサスレッド標識分子ビーコンを含む多重化形態を示す。
【図4】図4Aは、HPV33のFAM標識分子ビーコンを用いた単一反応リアルタイムNASBAを示し、一方、図4Bは、テキサスレッドで標識されたHPV18分子ビーコンを含む多重化形態を示す。
【図5】図5Aは、HPV45のFAM標識分子ビーコンを用いた単一反応リアルタイムNASBAを示し、一方、図5Bは、HPV45のテキサスレッド標識分子ビーコンと、FAMで標識されたHPV31分子ビーコンとを含む多重化形態を示す。
【図6】PreTect HPV−ProoferおよびPCRによって検出されるHPVを、細胞学または組織学と比較して示す。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図3A】

【図3B】

【図4A】

【図4B】

【図5A】

【図5B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのL1遺伝子およびE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現について陽性である被験者が、子宮頸癌を発症する危険性を有するとして評価される、方法。
【請求項2】
子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルス(HPV)のL1遺伝子のmRNA転写物およびHPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすること、そして、下記の分類:
危険性カテゴリー1:HPVの16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型および68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性であるが、L1mRNAの発現について陰性である被験者;
危険性カテゴリー2:HPVの16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、52型、56型、58型、59型、66型および68型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性であり、L1mRNAの発現について陽性である被験者;
危険性カテゴリー3:L1mRNAの発現について陽性であるが、E6mRNAの発現について陰性である被験者;
危険性カテゴリー4:L1mRNAの発現について陰性であり、E6mRNAの発現について陰性である被験者;
に従って、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現に基づく子宮頸癌の発症について4つの危険性カテゴリーの1つに被験者を分類することを含む、方法。
【請求項3】
p16ink4aの発現についてスクリーニングすることを更に含み、L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現について陽性であり、かつp16ink4aの発現について陽性である被験者が、子宮頸癌を発症する危険性を有するとして評価される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在についてヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのL1遺伝子およびE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、L1mRNAの発現について陰性であるが、E6mRNAの発現について陽性である被験者が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価される、方法。
【請求項5】
組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムの存在についてヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、ヒトパピローマウイルスのE6遺伝子に由来するmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、E6mRNAの発現について陽性である被験者が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価される、方法。
【請求項6】
子宮頸癌を発症する危険性を評価するためにヒト被験者をスクリーニングするインビトロ方法であって、HPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすること、および、E6mRNAの発現に基づいて子宮頸癌の発症について2つの危険性カテゴリーの1つに被験者を分類することを含み、E6mRNAの発現について陽性である個体が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有するとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について危険性が高いとして分類され、これに対して、E6mRNAの発現について陰性である個体が、組み込まれたHPVまたは改変されたエピソームHPVゲノムを保有しないとして評価され、従って、子宮頸癌の発症について検出できるほどの危険性がないとして分類される、方法。
【請求項7】
子宮頸部における異常な細胞変化を有するヒト被験者を同定するインビトロ方法であって、HPVのE6遺伝子のmRNA転写物の発現について被験者をスクリーニングすることを含み、E6mRNAの発現について陽性である個体が、子宮頸部における異常な細胞変化を有するとして同定される、方法。
【請求項8】
ヒト被験者が、子宮頸部の細胞においてヒトパピローマウイルスDNAが感染しているとして以前に確認された被験者である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ヒト被験者が、ASCUS、CIN1病変またはコンジロームの診断を以前に受けた被験者である、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
HPVの16型、18型、31型、33型または45型の少なくとも1つに由来するE6mRNAの発現について陽性である個体が、組み込まれたHPVを保有するとして評価される、請求項4〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
実質的にすべての既知のHPV型に由来するL1mRNAを検出することができる技術を使用してL1mRNAの発現についてスクリーニングすることを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの癌関連HPV型に由来するE6mRNAを検出することができる技術を使用してE6mRNAの発現についてスクリーニングすることを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
HPVの16型、18型、31型、33型、および好ましくは45型に由来するE6mRNAを検出することができる技術を使用してE6mRNAの発現についてスクリーニングすることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
L1mRNAおよび/またはE6mRNのA発現についてのスクリーニングが、mRNAの領域を増幅するための増幅反応を増幅反応の生成物のリアルタイム検出とともに使用して行われる、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
L1mRNAおよび/またはE6mRNAの発現についてのスクリーニングが、リアルタイムNASBAを使用して行われる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HPVのL1遺伝子およびE6遺伝子のmRNA転写物の検出に使用するためのキットであって、少なくともHPVの16型、18型、31型、33型、および好ましくは45型に由来するL1転写物の領域の増幅に使用するのに適した少なくとも1つのプライマー対と、HPVの16型、18型、31型、33型、および好ましくは45型に由来するE6転写物の領域の増幅を可能にする1つ以上のプライマー対とを含む、キット。

【図6】
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【公開番号】特開2010−131020(P2010−131020A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207(P2010−207)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2003−558207(P2003−558207)の分割
【原出願日】平成15年1月7日(2003.1.7)
【出願人】(503204565)
【Fターム(参考)】