説明

ヒト凝固第VII因子ポリペプチド

本発明は、凝固活性を有する新規のヒト凝固第VIIa因子変異体、並びにこのような変異体をコードするポリヌクレオチドコンストラクト、該ポリヌクレオチドを含み、発現するベクター及び宿主細胞、薬剤的組成物、使用及び治療の方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
(本発明の分野)
本発明は、血液凝固活性を有する新規のヒト凝固第VIIa因子ポリペプチド、並びに該ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドコンストラクト、該ポリヌクレオチドを含み発現するベクター及び宿主細胞、薬剤的組成物、使用及び治療方法に関する。
【0002】
(本発明の背景)
血液凝固は、最終的にフィブリン血餅を生じさせる、様々な血液成分(又は因子)の複合体形成からなるプロセスである。一般に、凝固「カスケード」 と称されてきたものに関与するこの血液成分は、酵素学的に不活性なタンパク質(プロ酵素又は酵素前駆体(チモーゲン))であり、これらは、アクチベータ(これ自身は活性化された凝固因子である)の作用によりタンパク質分解酵素へと転換される。この転換を受けた凝固因子は、一般に「活性因子」と称され、文字「a」を凝固因子の名称に付加することにより表される(たとえば、第VIIa因子)。
止血プロセスの開始は、血管壁への傷害の結果として暴露される組織因子と第VIIa因子との間の複合体の形成により誘導される。次いで、この複合体は、第IX因子及び第X因子をそれらの活性型へと転換する。第Xa因子は、限られた量のプロトロンビンをトロンビンへと、組織因子関連細胞(tissue factor-bearing cell)上で転換する。トロンビンは血小板を活性化し、第V因子及び第VIII因子を第Va因子及び第VIIIa因子へと活性化する。この両補助因子は、更なるプロセスにおいて完全なトロンビンバースト(thrombin burst)を導く。このプロセスは第IXa因子(第VIIIa因子との複合体における)による第Xa因子の産生を含み、活性化された血小板の表面上で生じる。トロンビンは、最終的にフィブリノーゲンをフィブリンへと転換し、フィブリン血餅を形成する。近年、第VII因子及び組織因子が、血液凝固の主なイニシエーターであることが見出された。
【0003】
第VII因子は、単一鎖の酵素前駆体として血液中を循環する微量な血漿糖タンパク質である。この酵素前駆体は触媒的に不活性である。単一鎖(Single-chain)の第VII因子は、インビトロで第Xa因子、第XIIa因子、第IXa因子、第VIIa因子又はトロンビンにより2鎖(two-chain)の第VIIa因子へと転換されうる。第Xa因子は、第VII因子の主要な生理的なアクチベーターであると思われる。止血に関与する数種類の他の血漿タンパク質と同様に、第VII因子は、その活性に関してビタミンKに依存しており、該タンパク質のアミノ末端に近接してクラスター形成している複数のグルタミン酸残基のγ-カルボキシル化に必要とされる。これらのγ-カルボキシル化されたグルタミン酸は、第VII因子とリン脂質との金属イオン誘導による相互作用に必要とされる。酵素前駆体第VII因子の活性化された2鎖の分子への転換は、内部のArg152-Ile153ペプチド結合の切断により生じる。組織因子、リン脂質、及びカルシウムイオンの存在下において、2鎖の第VIIa因子は、限定的なタンパク質分解により第X因子又は第IX因子を迅速に活性化する。
【0004】
被検体の凝固カスケードを刺激する又は改善することが望ましいことが多い。第VIIa因子は、凝固因子欠損(例えば、血友病A及びB又は凝固第XI因子ないし第VII因子の欠損)又は凝固因子インヒビターなどのいくつかの原因を有する出血性疾患(bleeding disorders)をコントロールするために使用されている。また、第VIIa因子は、正常に機能している血液凝固カスケードを有する(前記凝固因子のいずれかに対するインヒビター又は凝固因子欠損がない)被検体の過剰な出血をコントロールするために使用されている。この出血は、例えば、欠陥のある血小板機能、血小板減少症又はフォンウィルブランド病により生じうる。また、出血は、外科及び他の形態の組織損傷に関連する重大な問題である。
欧州特許第200421号(ZymoGenetics)は、ヒト第VII因子をコードするヌクレオチド配列及び哺乳類細胞における第VII因子の組み換え発現に関する。
Dickinson等 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1996) 93, 14379-14384)は、セリンプロテアーゼ第VIIa因子の触媒機能及び組織因子結合を媒介する表面残基の同定に関する。
【0005】
Iwanaga等(Thromb. Haemost. (supplement August 1999), 466, abstract 1474)は、残基316−320が欠失しているか、又は残基311−322がトリプシンから対応する残基に置換されている第VIIa因子変異体に関する。
国際特許出願公開第01/83725号、第02/22776号、第02/077218号、第03/027147号、第04/029090号、第03/027147号;第02/38162号は、増加した活性を有する第VIIa因子の変異体に関する。
血液凝固活性を有する第VIIa因子の変異体、相対的に低い用量で投与できる高い活性を有する変異体、内在性インヒビターによる不活性化に対してより耐性を有する変異体、及び望ましくない副作用を生じない変異体が必要とされている。
【0006】
(発明の概要)
広義の態様では、本発明は、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して増加した凝固活性を表している第VIIa因子ポリペプチドに関する。
第一の態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含む第VII因子ポリペプチドであって、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換であり、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性が増加している、第VII因子ポリペプチドに関する。
第二の態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含む第VII因子ポリペプチドであって、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換であり、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性が増加している、第VII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドコンストラクトに関する。
【0007】
(発明の詳細な説明)
補助因子である組織因子(TF)の非存在下ではFVIIaの酵素活性が低いために、血友病A患者の治療に大量のFVIIaが必要である。したがって、血友病A患者の治療、並びに血友病関連の外傷及び他の重大な出血を有する患者の治療に、超活性なFVIIa変異体が重要であると思われる。
ヒトFVIIaのプロテアーゼドメインのCa2+ループE210-E220の突然変異誘発探索の一部として、ヒトFVIIaのアミノ酸D212ができる限り有効なアミノ酸として同定された。このアミノ酸は置換されてFVIIa類似体を超活性に、すなわちタンパク質分解活性を高くする。特に、D212N突然変異は、S214相互作用を介し、又はD212NとE296との負の反作用の緩和によってさらにCa2+ループを安定化して、N末端I153を囲む構造環境を安定化すると思われる。
【0008】
D212N FVIIa類似体のアミド分解活性の増加は、N末端の安定化によっても媒介され、活性部位成熟をより高くする。さらに、その効果が、Ca2+結合ループへのCa2+結合の改善よりむしろD212とE296との間で観察される負の反作用の緩和によって媒介されることがもっともなようである。
本発明では、FVIIaの位置D212(位置212はキモトリプシノーゲン番号付けに従うと位置72に対応する)が、例えばアスパラギンに変異させた場合に、アミド分解アッセイで測定すると超活性になることが同定されている(FVIIaと比較して2倍の活性向上)。既に、プロテアーゼドメインのカルシウム結合ループに位置するD212をアラニンに変異させると、wt FVIIaと比較してタンパク質分解活性及び組織因子結合親和性が減少していた(Dickinson, Kelly and Ruf, PNAS 93, 14379-14384 (1996))。おそらく、D212N変異体は、プロテアーゼドメインのカルシウム結合ループを安定させることによって、又は、N末端を安定させることによって酵素活性を亢進する。
ゆえに、現在、ヒト野生型FVII(配列番号:1)の配列と比較して位置212のアミノ酸が異なるアミノ酸に置換されているヒトの凝固第VIIa因子ポリペプチド変異体が、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性を増加していることが明らかとなっている。
【0009】
本明細書中に使用される「異なるアミノ酸」なる用語は、その位置に天然に存在するアミノ酸とは異なる1つのアミノ酸を意味する。これは、あるポリヌクレオチドによりコードされうるアミノ酸を含むが、それらに限定されない。一実施態様では、異なるアミノ酸は天然のL型であり、あるポリヌクレオチドによりコードされうる。具体的な例はL‐システイン(Cys)である。
本明細書中に使用される「活性」なる用語は、第VII因子ポリペプチドの、その基質である第X因子の活性な第Xa因子への転換能を意味する。第VII因子ポリペプチドの活性は「インビトロタンパク質分解アッセイ」により測定されうる(実施例4を参照)。
【0010】
ヒト野生型FVII(配列番号:1)の配列に対応する位置212のアミノ酸を置換することによって、第VII因子ポリペプチドが増加した活性を得ることが、本発明の発明者によって明らかにされた。例えばNovoSeven(登録商標)の高用量が投与されるなどの、プロ凝固活性が組織因子(血小板表面上の第Xa因子生成)に依存していない場合に、このような第VIIa因子ポリペプチド変異体は治療的に有用となりうる。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、プロテアーゼドメイン内の残りの位置の少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、プロテアーゼドメインの残りの位置の最大20個の更なるアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、配列番号:1の157−170から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている。
【0011】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、配列番号:1の290−305から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、R304がTyr、Phe、Leu及びMetからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、配列番号:1の306−312から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、M306がAsp及びAsnからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D309がSer及びThrからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
【0012】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、配列番号:1の330−339から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、A274が任意の他のアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、A274がMet、Leu、Lys及びArgからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、K157がGly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、K337がAla、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D334がGly及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、S336がGly及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
【0013】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、V158がSer、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、E296がArg、Lys、Ile、Leu及びValからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、M298がLys、Arg、Gln及びAsnからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、L305がVal、Tyr及びIleからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、S314がGly、Lys、Gln及びGluからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、F374がPro及びTyrからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、F374がTyrに置換されているFVIIポリペプチドである。
【0014】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、アミノ酸がポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされうる任意の他のアミノ酸に置換されているポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、前記第VII因子ポリペプチドがヒトの第VII因子であるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、前記第VII因子ポリペプチドがヒトの第VIIa因子であるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、前記第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくともおよそ1.25であるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、前記の比率が少なくともおよそ2.0、好ましくは少なくともおよそ4.0であるポリペプチドである。
【0015】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212がGly、Met、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、Tyr、Asn、Glu、Gln、His、Lys、Argン、Cys、Ser、Thrからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸がAsn、Gln、Ser、Thrからなる群から選択されるアミノ酸に置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212がAsnに置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212がThrに置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212がSerに置換されているFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212がGlnに置換されているFVIIポリペプチドである。
【0016】
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212N-FVIIa、D212T-FVIIa、D212S-FVIIa及びD212Q-FVIIaから選択されるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212N-FVIIaであるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212T-FVIIaであるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212S-FVIIaであるFVIIポリペプチドである。
ある実施態様では、本発明に係るFVIIポリペプチドは、D212Q-FVIIaであるFVIIポリペプチドである。
更なる実施態様では、プロテアーゼドメイン内のアミノ酸の更なる置換により、分子の活性な高次構造の形成がさらに促される。しかしながら、最後の7つのアミノ酸の近傍(連続して又は三次元的な近傍)に上記の突然変異がなされる場合に最も明らかな効果が見られるであろうと思われる。
【0017】
本発明の更なる実施態様では、第VIIa因子ポリペプチドは、N-末端Glaドメインに一又は複数のアミノ酸(配列番号:1の1−37に対応する位置のアミノ酸)の置換をさらに含んでおり、それによって第VIIa因子ポリペプチドは組織因子関連細胞又は血小板の膜リン脂質といった膜リン脂質に実質的に高い親和性を有し、それによってプロ凝固作用が改善された第VII因子ポリペプチド変異体が生成される。
ゆえに、前述の第VIIa因子ポリペプチド変異体は、位置D212のアミノ酸及び、場合によってプロテアーゼドメイン内の他のアミノ酸が既に置換されていることに加えて、N-末端Glaドメインに少なくとも一のアミノ酸の置換も有し、それによって、天然の第VII因子と比較して膜リン脂質に対して親和性が増加しているだけでなく活性もまた増加しているタンパク質を得うる。
【0018】
ある実施態様では、第VII因子の4、8、10、11、28、32、33、34及び35(配列番号:1を指す)から選択される位置の一又は複数のアミノ酸が異なるアミノ酸に置換されている。ある実施態様では、第VII因子の10及び32(配列番号:1を指す)から選択される位置の一又は複数のアミノ酸が異なるアミノ酸に置換されている。上述の位置への組み込みに好適なアミノ酸の例は以下の通りである。位置10のアミノ酸ProはGln、Arg、His、Gln、Asn又はLysに置換される;及び/又は、位置32のアミノ酸LysはGlu、Gln又はAsnに置換される。
また、Glaドメインの他のアミノ酸は、ビタミンK依存性血漿タンパク質の配列及び異なるリン脂質親和性に基づいて、置換のために考慮されうる。
【0019】
「N-末端GLA-ドメイン」なる用語は第VII因子のアミノ酸配列1−37を意味する。
3-文字表記「GLA」は、4-カルボキシグルタミン酸(γ-カルボキシグルタミン酸塩)を意味する。
「プロテアーゼドメイン」なる用語は、第VII因子のアミノ酸配列153−406(第VIIa因子の重鎖)を意味する。
【0020】
本明細書中で用いる「第VII因子ポリペプチド」又は「FVIIポリペプチド」なる用語は、野生型ヒト第VIIa因子(すなわち米国特許第4784950号に開示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド)のアミノ酸配列1−406を含んでなる任意のタンパク質、その変異体、並びに第VII因子誘導体及び第VII因子コンジュゲートを意味する。これには、野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じか改善された生物学的活性を示す第VII因子変異体、第VII因子誘導体及び第VII因子コンジュゲートが含まれる。
特に明記しない限り、「第VII因子」なる用語は、それらの非切断(チモーゲン)型の第VII因子ポリペプチド、並びに第VIIa因子と称されうるそれぞれ生物活性型を得るようにタンパク質分解されてプロセシングされている第VII因子ポリペプチドの両方を包含することを意図する。一般的に、第VII因子は、残基152と153の間で切断されて第VIIa因子となる。第VII因子のこのような変異体は、安定性、リン脂質結合、変更された特定の活性などを含め、ヒトの第VII因子と比べて異なる性質を表してもよい。
【0021】
「第VIIa因子」又は「FVIIa」なる用語は、活性型からなる生成物(第VIIa因子)を意味する。上記の定義の範囲内の「第VII因子」又は「第VIIa因子」は、存在し、ある個体から他の個体に生じうる天然の対立遺伝子の変異形も含む。また、グリコシル化又は他の翻訳後修飾の程度と位置は、選択した宿主細胞及び宿主細胞の環境の性質に従って異なりうる。
本明細書中で用いる「野生型ヒト第VIIa因子」は、米国特許第4784950号に開示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0022】
本明細書中で用いる「第VII因子関連ポリペプチド」は、第VIIa因子生物学的活性が野生型第VIIa因子の活性と比較して減少するなどの実質的に修飾されている変異体を含むポリペプチドを包含する。これらのポリペプチドには、ポリペプチドの生理活性を修飾するか又は崩壊するような特定のアミノ酸配列の変更が導入されている第VII因子又は第VIIa因子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
本明細書中で用いられる「第VII因子誘導体」なる用語は、野生型第VII因子に対して相対的に同じか又は改善された生物学的活性を実質的に示すFVIIポリペプチドを表すことを意図し、このFVIIポリペプチドにおいて、親ペプチドの一又は複数のアミノ酸が、例えばアルキル化、グリコシル化、PEG化、アシル化、エステル形成又はアミド形成などによって遺伝的に及び/又は化学的に及び/又は酵素的に修飾されている。これには、PEG化されたヒト第VIIa因子、システイン-PEG化ヒト第VIIa因子及びその変異体を含むが、これらに限定されるものではない。第VII因子誘導体の非限定的な例には、国際公開第03/31464号及び米国公開特許第20040043446号、同第20040063911号、同第20040142856号、同第20040137557号及び同第20040132640号(Neose Technologies, Inc.)に開示されるグリコPEG化FVII誘導体;国際公開第01/04287号、米国公開特許第20030165996号、国際公開第01/58935号、国際公開第03/93465号(Maxygen ApS)及び国際公開第02/02764号、米国公開特許第20030211094号(University of Minnesota)に開示されるFVIIコンジュゲートが含まれる。
【0024】
「改善された生物学的活性」なる用語は、i) 組み換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じ又は増加したタンパク質分解活性を有するFVIIポリペプチド、又はii) 組み換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じ又は増加したTF結合活性を有するFVIIポリペプチド、又はiii) 組み換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じ又は増加した血漿中の半減期を有するFVIIポリペプチドを指す。「PEG化されたヒト第VIIa因子」なる用語は、ヒト第VIIa因子ポリペプチドにコンジュゲートされたPEG分子を有するヒト第VIIa因子を意味する。PEG分子が第VIIa因子ポリペプチドのいずれかのアミノ酸残基又は糖鎖を含む第VIIa因子ポリペプチドのいずれかの部分に付着しうることは理解される。「システイン-PEG化ヒト第VIIa因子」なる用語は、ヒト第VIIa因子に導入されるシステインのスルフヒドリル基にコンジュゲートされるPEG分子を有する第VIIa因子を意味する。
【0025】
組み換え野生型ヒト第VIIa因子と比較して実質的に同じ又は増加したタンパク質分解活性を有する第VII因子ポリペプチドを生じる、第VII因子ポリペプチド更なるアミノ酸置換の非限定的な例には、S52A、S60A( Lino等, Arch. Biochem. Biophys. 352: 182-192, 1998);米国特許第5580560号に開示される、増加したタンパク質分解性安定性を表すFVIIaポリペプチドを生じる置換;残基290と291又は残基315と316の間でタンパク質分解的に切断されているFVIIaポリペプチドを生じる置換(Mollerup等, Biotechnol. Bioeng. 48:501-505, 1995);第VIIa因子の酸化型(Kornfelt等, Arch. Biochem. Biophys. 363:43-54, 1999);国際公開第02/077218号に開示されるFVIIaポリペプチドの置換;及び、国際公開第02/38162号(Scripps Research Institute)に開示される、増加したタンパク質分解性安定性を表すFVIIaポリペプチドの置換;国際公開第99/20767号、米国特許第6017882号及び同第6747003号、米国公開特許第20030100506号(University of Minnesota)及び国際公開第00/66753号、米国公開特許第20010018414号、同第2004220106号、及び同第200131005号、米国特許第6762286号及び同第6693075号(University of Minnesota)に開示される、変性Gla-ドメインを有し、亢進した膜結合を示すポリペプチドを生じる、FVIIaポリペプチドの置換;及び、国際公開第01/58935号、米国特許第6806063号、米国公開特許第20030096338号(Maxygen ApS)、国際公開第03/93465号(Maxygen ApS)、国際公開第04/029091号(Maxygen ApS)、国際公開第04/083361号(Maxygen ApS)、及び国際公開第04/111242号(Maxygen ApS)、並びに国際公開第04/108763号(Canadian Blood Services)に開示される、FVIIaポリペプチドの置換が含まれる。
【0026】
野生型FVIIaと比較して増加した生物学的活性を有するFVIIポリペプチドを生じるFVIIaポリペプチドの更なる置換の非限定的な例には、国際公開第01/83725号、国際公開第02/22776号、国際公開第02/077218号、国際公開第03/027147号、国際公開第04/029090号、国際公開第03/027147号;国際公開第02/38162号(Scripps Research Institute)に開示される置換;及び、特願2001061479(Chemo-Sero-Therapeutic Res Inst.)に開示される、亢進した活性を有するFVIIaポリペプチドが含まれる。
本発明のFVIIaポリペプチドの更なる置換の例には、L305V、L305V/M306D/D309S、L305I、L305T、F374P、V158T/M298Q、V158D/E296V/M298Q、K337A、M298Q、V158D/M298Q、L305V/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V、V158D/E296V/M298Q/K337A、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A、K157A、E296V、E296V/M298Q、V158D/E296V、V158D/M298K、及びS336G、L305V/K337A、L305V/V158D、L305V/E296V、L305V/M298Q、L305V/V158T、L305V/K337A/V158T、L305V/K337A/M298Q、L305V/K337A/E296V、L305V/K337A/V158D、L305V/V158D/M298Q、L305V/V158D/E296V、L305V/V158T/M298Q、L305V/V158T/E296V、L305V/E296V/M298Q、L305V/V158D/E296V/M298Q、L305V/V158T/E296V/M298Q、L305V/V158T/K337A/M298Q、L305V/V158T/E296V/K337A、L305V/V158D/K337A/M298Q、L305V/V158D/E296V/K337A、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、S314E/K316H、S314E/K316Q、S314E/L305V、S314E/K337A、S314E/V158D、S314E/E296V、S314E/M298Q、S314E/V158T、K316H/L305V、K316H/K337A、K316H/V158D、K316H/E296V、K316H/M298Q、K316H/V158T、K316Q/L305V、K316Q/K337A、K316Q/V158D、K316Q/E296V、K316Q/M298Q、K316Q/V158T、S314E/L305V/K337A、S314E/L305V/V158D、S314E/L305V/E296V、S314E/L305V/M298Q、S314E/L305V/V158T、S314E/L305V/K337A/V158T、S314E/L305V/K337A/M298Q、S314E/L305V/K337A/E296V、S314E/L305V/K337A/V158D、S314E/L305V/V158D/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V、S314E/L305V/V158T/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V、S314E/L305V/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/K337A、K316H/L305V/V158D、K316H/L305V/E296V、K316H/L305V/M298Q、K316H/L305V/V158T、K316H/L305V/K337A/V158T、K316H/L305V/K337A/M298Q、K316H/L305V/K337A/E296V、K316H/L305V/K337A/V158D、K316H/L305V/V158D/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V、K316H/L305V/V158T/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V、K316H/L305V/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/K337A、K316Q/L305V/V158D、K316Q/L305V/E296V、K316Q/L305V/M298Q、K316Q/L305V/V158T、K316Q/L305V/K337A/V158T、K316Q/L305V/K337A/M298Q、K316Q/L305V/K337A/E296V、K316Q/L305V/K337A/V158D、K316Q/L305V/V158D/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V、K316Q/L305V/V158T/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V、K316Q/L305V/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A、F374Y/K337A、F374Y/V158D、F374Y/E296V、F374Y/M298Q、F374Y/V158T、F374Y/S314E、F374Y/L305V、F374Y/L305V/K337A、F374Y/L305V/V158D、F374Y/L305V/E296V、F374Y/L305V/M298Q、F374Y/L305V/V158T、F374Y/L305V/S314E、F374Y/K337A/S314E、F374Y/K337A/V158T、F374Y/K337A/M298Q、F374Y/K337A/E296V、F374Y/K337A/V158D、F374Y/V158D/S314E、F374Y/V158D/M298Q、F374Y/V158D/E296V、F374Y/V158T/S314E、F374Y/V158T/M298Q、F374Y/V158T/E296V、F374Y/E296V/S314E、F374Y/S314E/M298Q、F374Y/E296V/M298Q、F374Y/L305V/K337A/V158D、F374Y/L305V/K337A/E296V、F374Y/L305V/K337A/M298Q、F374Y/L305V/K337A/V158T、F374Y/L305V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V、F374Y/L305V/V158D/M298Q、F374Y/L305V/V158D/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q、F374Y/L305V/E296V/V158T、F374Y/L305V/E296V/S314E、F374Y/L305V/M298Q/V158T、F374Y/L305V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158T/S314E、F374Y/K337A/S314E/V158T、F374Y/K337A/S314E/M298Q、F374Y/K337A/S314E/E296V、F374Y/K337A/S314E/V158D、F374Y/K337A/V158T/M298Q、F374Y/K337A/V158T/E296V、F374Y/K337A/M298Q/E296V、F374Y/K337A/M298Q/V158D、F374Y/K337A/E296V/V158D、F374Y/V158D/S314E/M298Q、F374Y/V158D/S314E/E296V、F374Y/V158D/M298Q/E296V、F374Y/V158T/S314E/E296V、F374Y/V158T/S314E/M298Q、F374Y/V158T/M298Q/E296V、F374Y/E296V/S314E/M298Q、F374Y/L305V/M298Q/K337A/S314E、F374Y/L305V/E296V/K337A/S314E、F374Y/E296V/M298Q/K337A/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A、F374Y/L305V/E296V/M298Q/S314E、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A、F374Y/V158D/E296V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158D/K337A/S314E、F374Y/V158D/M298Q/K337A/S314E、F374Y/V158D/E296V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A、F374Y/L305V/V158D/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/S314E、F374Y/V158T/E296V/M298Q/K337A、F374Y/V158T/E296V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158T/K337A/S314E、F374Y/V158T/M298Q/K337A/S314E、F374Y/V158T/E296V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158T/E296V/M298Q、F374Y/L305V/V158T/M298Q/K337A、F374Y/L305V/V158T/E296V/K337A、F374Y/L305V/V158T/M298Q/S314E、F374Y/L305V/V158T/E296V/S314E、F374Y/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E、F374Y/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q/V158T/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T、F374Y/L305V/E296V/K337A/V158T/S314E、F374Y/L305V/M298Q/K337A/V158T/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A、F374Y/L305V/V158D/E296V/K337A/S314E、F374Y/L305V/V158D/M298Q/K337A/S314E、F374Y/L305V/E296V/M298Q/K337A/V158T/S314E、F374Y/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A/S314E、S52A、S60A;R152E、S344A、T106N、K143N/N145T、V253N、R290N/A292T、G291N、R315N/V317T、K143N/N145T/R315N/V317T;及び、233Thrから240Asnまでのアミノ酸配列の置換、付加又は欠失;304Argから329Cysまでのアミノ酸配列の置換、付加又は欠失;及び、153Ileから223Argまでのアミノ酸配列の置換、付加又は欠失が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書中で用いる「変異体」又は「複数の変異体」なる用語は、配列番号1の配列を有する第VII因子であって、親タンパク質(parent protein)の一又は複数のアミノ酸が別のアミノ酸によって置換されている、及び/又は親タンパク質の一又は複数のアミノ酸が欠失している、及び/又は一又は複数のアミノ酸がタンパク質中に挿入されている、及び/又は一又は複数のアミノ酸が親タンパク質に付加されているものを設定することを意図する。この付加は、親タンパク質のN末端又はC末端のいずれかで又は両方で生じてもよい。本定義内の「変異体」又は「複数の変異体」は、その活性型においてなおもFVII活性を有する。ある実施態様では、変異体は、配列番号:1の配列と70%同一である。ある実施態様では、変異体は、配列番号:1の配列と80%同一である。他の実施態様では、変異体は、配列番号:1の配列と90%同一である。更なる実施態様では、変異体は、配列番号:1の配列と95%同一である。
【0028】
「コンストラクト」なる用語は、ポリヌクレオチドセグメントを示すことを意図する用語であり、これは所望のポリペプチドをコードする、完全ないしは部分的に天然に生じるヌクレオチド配列に基づいたものであってもよい。場合によって、コンストラクトは他のポリヌクレオチドセグメントを含有していてもよい。同様に、「ポリヌクレオチドコンストラクトによりコードすることができるアミノ酸」なる用語は、上記で定義したポリヌクレオチドコンストラクトによりコードされうるアミノ酸、即ち、Ala、Val、Leu、Ile、Met、Phe、Trp、Pro、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glu、Lys、Arg、His、Asp及びGlnなどのアミノ酸を含む。
本明細書中で用いる「ベクター」なる用語は、宿主細胞において増幅の可能な任意の核酸の実体(entity)を意味する。したがって、このベクターは自己複製するベクター、即ち、染色体外の実体として存在し、その複製が染色体複製に依存していないベクター、例えばプラスミドである。あるいは、このベクターは、宿主細胞に導入された際に、該宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体(一又は複数)と共に複製されるベクターであってもよい。ベクターの選択は、導入される宿主細胞に依存することが多い。ベクターは、プラスミドベクター、ファージベクター、ウイルス又はコスミドベクターを含むが、これらに限定されない。ベクターは、通常、複製開始点及び少なくとも一の選択遺伝子、即ち、迅速に検出されうる産物又はその存在が細胞の成長に必須である産物をコードする遺伝子を含む。
【0029】
更なる態様では、本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドコンストラクト又はベクターを含む、組み換え宿主細胞を提供する。ある実施態様では、組み換え宿主細胞は真核細胞である。他の実施態様では、組み換え宿主細胞は哺乳類起源のものである。更なる実施態様では、組み換え宿主細胞は、CHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞からなる群から選択される。
【0030】
本明細書中で用いる「宿主細胞」なる用語は、ハイブリッド細胞を含む任意の細胞を表し、異種性DNAを発現することができる。典型的な宿主細胞には、昆虫細胞、酵母細胞、ヒトの細胞を含む哺乳類細胞、例えばBHK、CHO、HEK及びCOS細胞を含むが、これらに限定されない。本発明の実施において、培養される宿主細胞は、好ましくは哺乳類細胞、より好ましくは樹立された哺乳類の細胞株であり、CHO(例えば、ATCC CCL 61)、COS-1(例えば、ATCC CRL 1650)、仔ハムスター腎臓(BHK)及びHEK293(例えば、ATCC CRL 1573;Graham等, J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)細胞株を含むが、これらに限定されない。好適なBHK細胞株は、tk-−ts13BHK細胞株(Waechter及びBaserga, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79:1106-1110, 1982)であり、以降BHK570細胞と称する。BHK570細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関、12301 Parklawn Dr.、Rockville、MD 20852からATCC受託番号CRL10314で利用可能である。また、tkts13BHK細胞株も、ATCCから受託番号CRL1632で利用可能である。他の適切な細胞株には、ラットHepI(ラット ヘパトーマ;ATCC CRL 1600)、ラットHepII(ラット ヘパトーマ;ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC1469(ATCC CCL 9.1)及びDUKX細胞(Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)が含まれるが、これらに限定されない。同様に有用な細胞は、3T3細胞、Namalwa細胞、ミエローマ及びミエローマと他の細胞との融合物である。
【0031】
更なる態様では、本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドコンストラクトを含み、発現するトランスジェニック動物を提供する。
更なる態様では、本発明は、本発明に係るポリヌクレオチドコンストラクトを含み、発現するトランスジェニック植物を提供する。
更なる態様では、本発明は、本発明の第VII因子ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトの発現を促す条件下で好適な成長培地中でポリヌクレオチドコンストラクトを含む細胞を培養し、培養培地から結果として生じたポリペプチドを回収することを含んでなる方法に関する。
【0032】
本明細書中で用いる「好適な成長培地」なる用語は、細胞の成長及び本発明の第VII因子ポリペプチドをコードする核酸配列の発現に必要な、栄養物及び他の成分を含有する培地を意味する。
更なる態様では、本発明は、第VII因子ポリペプチドを生成するための方法であって、トランスジェニック動物によって産生される乳からポリペプチドを回収することを含んでなる方法に関する。
更なる態様では、本発明は、第VII因子ポリペプチドを生成するための方法であって、ポリヌクレオチドコンストラクトを含むトランスジェニック植物の細胞を培養し、結果として生じる植物からポリペプチドを回収することを含んでなる方法に関する。
【0033】
更なる態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して一又は複数の置換を含み、該置換が、配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチド;と、場合によって薬学的に受容可能な担体とを含有してなる薬剤的組成物に関する。
更なる態様では、本発明は、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して一又は複数の置換を含み、該置換が、配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの、出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための医薬の調製における使用に関する。一実施態様では、前記使用は血友病A又はBの治療のためである。
更なる態様では、本発明は、被検体の出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための方法であって、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法に関する。
【0034】
この文脈において、「治療」なる用語は、出血を阻害するか最小限にすることを目的として、手術などの予想される出血を防止すること、及び外傷などのすでに起こっている出血を調節することの両者を含むことを意味する。したがって、本発明に係る第VIIa因子ポリペプチドの予防的投与は「治療」の用語に含まれる。
「出血性症状」なる用語は、コントロールできない過剰な出血を含むことを意味する。出血性症状は、外科及び他の形態の組織損傷に関連した重大な問題である。コントロールできない過剰な出血は、正常な凝固系を有する被検体及び凝固ないしは出血性疾患を有する被検体において発生しうる。本明細書中で用いる「出血性疾患」なる用語は、出血に現れる、細胞ないしは分子の起源の、先天性、後天性、又は誘導される任意の欠陥を表す。例として、凝固因子欠損(例えば、血友病A及びB又は凝固第XI因子ないしは第VII因子の欠損)、凝固因子インヒビター、欠陥のある血小板機能、血小板減少症又はフォンウィルブランド病がある。
【0035】
また、過剰な出血は、正常に機能している血液凝固カスケードを有する(任意の凝固因子に対するインヒビター又は凝固因子の欠損がない)被検体においても生じ、欠陥のある血小板機能、血小板減少症又はフォンウィルブランド病により生じうる。このような場合、血友病においては、止血系の主な出血を引き起こす必須の凝固「化合物」(血小板又はフォンビルブラント因子タンパク質)が欠損しているか異常であるので、出血は血友病により生じる出血にたとえられる。
手術又は大きな外傷に関連して、広範な組織損傷を受けている被検体では、正常な止血機構では即時性の止血の必要に応答しきれず、正常な止血機構であるにもかかわらず出血を発生してしまうであろう。また、満足に止血を達成することは、出血が外科的な止血が制限されている臓器、例えば、脳、内耳領域、及び眼において生じた場合に問題となる。同じ問題は、様々な臓器(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検を行う過程、並びに腹腔鏡検査手術で生じうる。これら全ての状況において共通することは、出血がびまん性(出血性胃炎及び大量の子宮出血)である場合の外科的技術(縫合、クリップなど)によって止血を行うことが困難なことである。急性かつ多量の出血は、行う治療によって止血の欠陥が誘導される抗凝固療法中の被検体においても生じるであろう。このような被検体は、抗凝固作用が急速に中和されるべき場合には、外科的な処置を必要とするだろう。根治的な恥骨後前立腺摘除術(Radical retropubic prostatectomy)は、局在型の前立腺癌を有する被検体に対して一般的に実施される処置である。重大で時に大量の失血を生じることから手術が複雑になることが多い。前立腺切除の間の重大な失血は、主に、外科的な止血の実施が難しいために広範囲からびまん性の出血が生じうる、多様な高密度の脈管部位を伴った、複雑な解剖学的な状況に関連する。不満足な止血の場合に問題となりうる別の状況は、正常な止血機構を有する被検体が血栓塞栓性疾患を予防するための抗凝固療法を施されている場合である。このような療法には、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリン又は他の形態のビタミンK-アンタゴニスト、並びにアスピリン及び他の血小板凝集インヒビターが含まれうる。
【0036】
本発明のある実施態様では、出血は血友病に関連する。他の実施態様では、出血は獲得されたインヒビターによる血友病に関連する。他の実施態様では、出血は血小板減少症に関連する。他の実施態様では、出血はフォンウィルブランド病に関連する。他の実施態様では、出血は重度の組織損傷に関連する。他の実施態様では、出血は重度の外傷に関連する。他の実施態様では、出血は手術に関連する。他の実施態様では、出血は腹腔鏡検査手術に関連する。他の実施態様では、出血は出血性胃炎に関連する。他の実施態様では、出血は大量の子宮出血に関連する。他の実施態様では、出血は機械的な止血の制限がある臓器において生じる。他の実施態様では、出血は脳、内耳領域又は眼において生じる。他の実施態様では、出血は生検を行う過程に関連する。他の実施態様では、出血は抗凝固療法に関連する。
【0037】
本明細書中で用いる「被検体」なる用語は、任意の動物、特にヒトなどの哺乳類を意味することを意図し、適切な場合には、「患者」なる用語と交換可能に使用されてもよい。
「正常な止血系の亢進」なる用語は、トロンビン生成能の増強を意味する。
【0038】
更なる態様では、本発明は、被検体の出血性疾患又は出血性発症の治療のための又は通常の止血系の亢進のための方法であって、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含む第VII因子ポリペプチドであって、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換であり、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性が増加している第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法に関する。
更なる態様では、本発明は、医薬としての使用のための本発明の第VII因子ポリペプチドに関する。
【0039】
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、プロテアーゼドメインの残りの位置の少なくとも1つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されているポリペプチドである。
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、プロテアーゼドメインの残りの位置の最大20個の更なるアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されているポリペプチドである。
【0040】
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、アミノ酸がポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされうる異なるアミノ酸に置換されているポリペプチドである。
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはポリペプチドであり、この第VII因子ポリペプチドはヒトの第VII因子である。
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドはポリペプチドであり、この第VIIポリペプチドはヒトの第VIIa因子である。
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくともおよそ1.25であるポリペプチドである。ある実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は少なくともおよそ2.0である。更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は少なくともおよそ4.0である。
【0041】
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、第VIIa因子活性アッセイにおいて試験した場合に少なくともおよそ1.25であるポリペプチドである。ある実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、第VIIa因子活性アッセイにおいて試験した場合に少なくともおよそ2.0である。更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、第VIIa因子活性アッセイにおいて試験した場合に少なくともおよそ4.0である。第VIIa因子活性は実施例3又は4に記載のアッセイによって測定されてもよい。
【0042】
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、「インビトロ加水分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ1.25であるポリペプチドである。ある実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロ加水分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ2.0である。更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロ加水分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ4.0である。
【0043】
本発明の更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドは、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が、「インビトロタンパク質分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ1.25であるポリペプチドである。ある実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ2.0である。更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ4.0である。更なる実施態様では、第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率は、「インビトロタンパク質分解アッセイ」において試験した場合に少なくともおよそ8.0である。
【0044】
更なる態様では、本発明は、天然のヒト凝固第VIIa因子と比較して、亢進した組織因子非依存的な活性を有するヒト凝固第VIIa因子ポリペプチドを提供する。他の態様では、亢進した活性は、基質特異性の変化を伴わない。本発明の他の態様では、組織因子へのポリペプチド変異体の結合は損なわれず、ポリペプチド変異体は組織因子に結合した場合に、少なくとも野生型の第VIIa因子の活性を有するであろう。
【0045】
以下の実施例で用いるアミノ酸置換に関する用語は以下のとおりである。1番目の文字は、配列番号:1の位置に天然に存在するアミノ酸を表す。続く番号は、配列番号:1における位置を表す。2番目の文字は、天然のアミノ酸に対し置換される、異なるアミノ酸を表す。例えば、D212N/F374Y-FVIIは、配列番号:1の位置212のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されており、配列番号:1の位置374のフェニルアラニンがチロシンに置換されており、同じ第VII因子変異体に両方の突然変異があるものである。
本明細書中において、アミノ酸の三文字又は一文字の表記は、表1に示すように、これらの従来の意味で使用した。明示されない限り、本明細書において言及されるアミノ酸はL-アミノ酸である。更に、特に明記しない限り、ペプチドのアミノ酸配列の左及び右は、それぞれN-末端及びC-端である。
【0046】
表1:アミノ酸の略語:

【0047】
第VII因子ポリペプチド変異体の調製
また、本発明は、上記のヒト第VII因子ポリペプチド変異体を調製する方法に関する。本明細書中に記載される第VII因子ポリペプチド変異体は、組み換え核酸技術の手段で作出しうる。通常、クローン化した野生型の第VII因子核酸配列は、所望のタンパク質をコードするように修飾される。次いで、この修飾された配列は発現ベクターに挿入され、次に宿主細胞を形質転換又は宿主細胞に形質移入する。高等な真核生物細胞、特に培養された哺乳類細胞は、宿主細胞として好適である。ヒト第VII因子の完全なヌクレオチド及びアミノ酸配列は公知である(組み換えヒト第VII因子のクローニング及び発現が記載される米国特許第4784950を参照のこと)。ウシ第VII因子配列は、文献(Takeya等, J. Biol. Chem. 263:14868-14872 (1988))に記載されている。
【0048】
アミノ酸配列変更は、様々な技術により達成しうる。核酸配列の修飾は、部位特異的な突然変異誘発によるものであってもよい。部位特異的な突然変異誘発に関する技術は当該技術において周知であり、例えば、Zoller及びSmith (DNA 3:479-488, 1984)又はHorton等("Splicing by extension overlap", Gene 77, 1989, pp. 61-68)に記載されている。ゆえに、第VII因子のヌクレオチド及びアミノ酸配列を用いて、選択した変更(一又は複数)を導入しうる。同様に、特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法を用いた、DNAコンストラクトを調製するための手順は、当該技術分野の当業者に周知である(PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USAを参照のこと)。
【0049】
本発明の第VII因子ポリペプチド変異体をコードする核酸コンストラクトは、好適なゲノム又はcDNA起源のものでよく、例えば、標準的な技術に従って、ゲノムないしはcDNAライブラリーを調製し、ポリペプチドの全部又は一部をコードするDNA配列を、合成オリゴヌクレオチドプローブを用いたハイブリダイゼーションによりスクリーニングすることによって得てもよい(Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd. Ed. Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照のこと)。
第VII因子ポリペプチド変異体をコードする核酸コンストラクトは、確立された標準的な方法、例えば、Beaucage及びCaruthers, Tetrahedron Letters 22 (1981), 1859-1869に記載された亜リン酸アミダイト法、又はMatthes等, EMBO Journal 3 (1984), 801-805に記載された方法により合成して調製してもよい。亜リン酸アミダイト法に従って、オリゴヌクレオチドは合成され(例えば、自動DNA合成機において)、精製され、アニールされ、連結させ、そして適切なベクターにクローニングされる。また、例えば米国特許第4683202号、Saiki等, Science 239 (1988), 487-491、又はSambrook等(上記)に記載のように、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列は、特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応法により調製してもよい。
【0050】
さらに、核酸コンストラクトは、合成、ゲノム、又はcDNA起源のフラグメント(必要に応じて)、全体の核酸コンストラクトの様々な部分に対応するフラグメントを、標準的な技術に従って連結することにより調製しした、合成とゲノムの混合性のもの、合成とcDNAの混合性のもの又はゲノムとcDNA起源の混合性のものである。
核酸コンストラクトは、好ましくはDNAコンストラクトである。本発明に係る第VII因子ポリペプチド変異体の産生に使用するためのDNA配列は、典型的には、第VII因子のアミノ末端でプレプロポリペプチドをコードし、適切な翻訳後のプロセッシング(例えば、グルタミン酸残基のγ-カルボキシル化)を得て、宿主細胞から分泌される。プレプロポリペプチドは、第VII因子又は別のビタミンK-依存性血漿タンパク質(例えば、第IX因子、第X因子、プロトロンビン、プロテインC又はプロテインS)のプレプロポリペプチドであってもよい。当業者により理解されるとおり、血液凝固因子としてのタンパク質の能力を有意に損傷しない更なる修飾を第VII因子ポリペプチド変異体のアミノ酸配列に作出できる。例えば、第VII因子ポリペプチド変異体は、活性化切断部位において修飾すると、酵素前駆体第VII因子の活性化された2鎖形態(two-chain form)への転換を阻害することができる(米国特許第5288629号に一般的に記載される、これは本明細書中に参照によって援用される)。
【0051】
ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列は、通常、組み換えベクターに挿入される。このベクターは、組み換えDNA処置に都合よく供される任意のベクターでよく、ベクターの選択は、導入される宿主細胞に依存することが多い。したがって、ベクターは自己複製するベクター、即ち、染色体外の実体として存在し、その複製が染色体複製に非依存性であるベクターである(例えば、プラスミド)。あるいは、このベクターは、宿主細胞に導入された際に、該宿主細胞ゲノムに組み込まれ、それが組み込まれた染色体(一又は複数)と共に複製されるベクターであってもよい。
【0052】
好ましくは、ベクターは、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列が該DNAの転写に必要とされる付加的なセグメントに作用可能に連結されている、発現ベクターである。通常、発現ベクターは、プラスミド又はウイルスのDNAに由来するものであるか、あるいは両方のエレメントを含有していてもよい。「作用可能に連結される」なる用語は、セグメントが、それらの意図する目的のために協調して機能するように配置されることを示す。例えば、転写は、プロモーターにおいて開始され、ポリペプチドをコードするDNA配列まで進行する。
第VIIa因子ポリペプチド変異体の発現に使用するための発現ベクターは、クローニングされた遺伝子又はcDNAの転写を促すことが可能なプロモーターを具備する。プロモーターは、選択された宿主細胞において転写活性を呈する、任意のDNA配列でよく、宿主細胞に対して相同なないしは異種性のタンパク質をコードする遺伝子に由来するものであってもよい。
【0053】
哺乳類細胞におけるヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNAの転写を促す適切なプロモーターの例は、SV40プロモーター(Subramani等, Mol.Cell. Biol. 1 (1981), 854-864)、MT-1(メタロチオネイン遺伝子)プロモーター(Palmiter等, Science 222 (1983), 809-814)、CMVプロモーター(Boshart等,Cell. 41:521-530, 1985)、又はアデノウイルス2主要後期プロモーター(Kaufman and Sharp, Mol.Cell. Biol, 2:1304-1319, 1982)である。
昆虫細胞における使用に関して適切なプロモーターは、ポリヘドリンプロモーター(US 4,745,051; Vasuvedan等, FEBS Lett. 311, (1992) 7-11)、P10プロモーター(J.M. Vlak等, J. Gen. Virology 69, 1988, pp. 765-776)、Autographa californica多核体病ウイルス塩基性タンパク質プロモーター(欧州特許第397485号)、バキュロウイルス前初期遺伝子1プロモーター(米国特許第5155037号;米国特許第5162222号)、又はバキュロウイルス39K遅延性-初期遺伝子プロモーター(米国特許第5155037号;米国特許第5162222号)である。
【0054】
酵母宿主細胞における使用に関して適切なプロモーターの例には、酵母の解糖遺伝子(Hitzeman等, J. Biol. Chem. 255 (1980), 12073-12080;Alber及びKawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1 (1982), 419-434)又はアルコール脱水素酵素遺伝子(Young等, in Genetic Engineering of Microorganisms for Chemicals (Hollaender等, 編集), Plenum Press, New York, 1982)のプロモーター、又はTPI1(米国特許第4599311号)又はADH2-4c (Russell等, Nature 304 (1983), 652-654)プロモーターが含まれる。
糸状菌宿主細胞における使用に関して適切なプロモーターの例は、例えば、ADH3プロモーター(McKnight等, The EMBO J. 4 (1985), 2093-2099)又はtpiAプロモーターである。他の有用なプロモーターの例は、A.oryzae TAKAアミラーゼ、Rhizomucor mieheiアスパラギン酸プロテイナーゼ、A.niger中性α-アミラーゼ、A.niger酸安定性α-アミラーゼ(acid stable α-amylase)、A.niger、又はA.awamoriグルコアミラーゼ(gluA)、Rhizomucor mieheiリパーゼ、A.oryzaeアルカリ性プロテアーゼ、A.oryzae三炭糖リン酸塩イソメラーゼ、又はA.nidulansアセトアミダーゼをコードする遺伝子に由来するものである。好適なものは、TAKA-アミラーゼ及びgluAプロモーターである。適切なプロモーターは、例えば、欧州特許第238023号及び欧州特許第383779号に記載されている。
【0055】
また、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列は、必要であれば、適切なターミネーター、例えば、ヒト成長ホルモンターミネーター(Palmiter等, Science 222, 1983, pp. 809-814)又はTPI1(Alber and Kawasaki, J. Mol. Appl. Gen. 1, 1982, pp. 419-434)又はADH3(McKnight等, The EMBO J. 4, 1985, pp. 2093-2099)ターミネーターに作用可能に連結される。また、発現ベクターは、プロモーターの下流で且つ第VII因子配列自体の挿入部位の上流に位置する一組のRNAスプライス部位を含んでいてもよい。好適なRNAスプライス部位は、アデノウイルス及び/又は免疫グロブリン遺伝子から入手しうる。発現ベクターには、挿入部位の下流に位置するポリアデニル化シグナルも含まれる。特に好適なポリアデニル化シグナルには、SV40の早期あるいは遅発型のポリアデニル化シグナル(Kaufman and Sharp, ibid.)、アデノウイルス5Elb領域のポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモン遺伝子ターミネーター(DeNoto等 Nucl. Acids Res. 9:3719-3730, 1981)、又はヒト第VII因子遺伝子あるいはウシ第VII因子遺伝子のポリアデニル化シグナルが含まれる。また、発現ベクターには、非翻訳のウイルス性のリーダー配列(例えば、プロモーターとRNAスプライス部位の間に位置するアデノウイルス2トリパタイトリーダー;及びSV40エンハンサーなどのエンハンサー配列が含まれうる。
【0056】
本発明のヒト第VII因子ポリペプチド変異体を宿主細胞の分泌経路へと方向付けるために、分泌シグナル配列(リーダー配列、プレプロ配列、又はプレ配列としても知られる)を組み換えベクターに提供してもよい。分泌シグナル配列は、正しいリーディングフレームにヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列と連結される。分泌シグナル配列は、ペプチドをコードするDNA配列の5'に通常配置される。分泌シグナル配列は、タンパク質と通常関連するものであってもよく、又は別の分泌タンパク質をコードする遺伝子からのものであってもよい。
酵母細胞からの分泌に関して、分泌シグナル配列は、発現したヒト第VII因子ポリペプチドを細胞の分泌経路へ効率的に方向付ける、任意のシグナルペプチドをコードしてもよい。シグナルペプチドは、天然に生じるシグナルペプチド、又はその機能的な部分であってもよい、又は合成ペプチドであってもよい。適切なシグナルペプチドは、α-因子シグナルペプチド(米国特許第4870008号を参照)、マウス唾液アミラーゼのシグナルペプチド(O. Hagenbuchle等, Nature 289, 1981, pp. 643-646を参照)、修飾したカルボキシペプチダーゼシグナルペプチド(L.A. Valls等, Cell 48, 1987, pp. 887-897を参照)、酵母BAR1シグナルペプチド(国際公開第87/02670号)、又は酵母アスパラギン酸プロテアーゼ3(YAP3)シグナルペプチド(M. Egel-Mitani等, Yeast 6, 1990, pp. 127-137を参照)であることが見出されている。
【0057】
酵母における効率的な分泌に関して、リーダーペプチドをコードする配列が、シグナル配列の下流でかつ、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列の上流に挿入されてもよい。リーダーペプチドの機能は、発現されたポリペプチドを小胞体からゴルジ体へと、更に培養培地への分泌のための分泌小胞へと方向付けることを可能にすることである(すなわち、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体の、細胞壁を越える又は少なくとも細胞膜を介した酵母細胞の細胞膜周辺腔への輸送)。リーダーペプチドは、酵母α-因子リーダーであってもよい(その使用は、例えば米国特許第4546082号、米国特許第4870008号、欧州特許第16201号、欧州特許第123294号、欧州特許第123544号及び欧州特許第163529号に記載されている)。あるいは、リーダーペプチドは合成リーダーペプチドであってもよく、つまり自然界でみつけることができないリーダーペプチドと言える。合成リーダーペプチドは、例えば国際公開第89/02463号又は国際公開第92/11378号に記載されたように構築されてもよい。
【0058】
糸状菌における使用に関して、シグナルペプチドは、コウジカビ属の種(Aspergillus sp)のアミラーゼ又はグルコアミラーゼをコードする遺伝子である、Rhizomucor mieheiのリパーゼ又はプロテアーゼ又はHumicola lanuginosaのリパーゼをコードする遺伝子から由来するものであってもよい。シグナルペプチドは、好ましくはA.oryzae TAKAアミラーゼ、A.niger中性α-アミラーゼ、A.niger酸安定性アミラーゼ、又はA.nigerグルコアミラーゼをコードする遺伝子から由来するものである。適切なシグナルペプチドは、例えば、欧州特許第238023号及び欧州特許第215594号に開示されている。
昆虫細胞における使用に関して、シグナルペプチドは、昆虫遺伝子(国際公開第90/05783号を参照)、例えば、lepidopteran Manduca sextaの脂質動員ホルモン前駆物質シグナルペプチド(米国特許第5023328号を参照)から由来するものであってもよい。
【0059】
それぞれ、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列、プロモーター及び場合によってはターミネーター、及び/又は分泌シグナル配列を連結するために及びそれらを適切なベクター(このベクターは複製に必要な情報を含有している)に挿入するために使用される処置は、当業者に周知である(例えば、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989を参照)。
哺乳類細胞を形質移入し、この細胞に導入したDNA配列を発現させる方法は、例えば、Kaufman及びSharp, J. Mol. Biol. 159 (1982), 601-621;Southern及びBerg, J. Mol. Appl. Genet. 1 (1982), 327-341;Loyter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982), 422-426;Wigler等,Cell 14 (1978), 725;Corsaro及びPearson, Somatic Cell Genetics 7 (1981), 603、Graham及びvan der Eb, Virology 52 (1973), 456;及びNeumann等, EMBO J. 1 (1982), 841-845に記載されている。
【0060】
クローニングしたDNA配列は、例えば、リン酸カルシウムに媒介される形質移入(Wigler等, Cell 14:725-732, 1978;Corsaro及びPearson, Somatic Cell Genetics 7:603-616, 1981;Graham及びVan der Eb, Virology 52d:456-467, 1973)又は電気穿孔法(Neumann等, EMBO J. 1:841-845, 1982)により、培養した哺乳類細胞に導入される。外来性のDNAを発現する細胞を同定して選択するため、一般的に選択可能な表現型(選択マーカー)が、所望の遺伝子又はcDNAと共に導入される。好適な選択マーカーには、薬物、例えば、ネオマイシン、ハイグロマイシン、及びメトトレキセートに対する耐性を与える遺伝子が含まれる。選択マーカーは、増幅可能な選択マーカーであってもよい。好適な増幅可能な選択マーカーは、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)配列である。選択マーカーはThilly(Mammalian Cell Technology, Butterworth Publishers, Stoneham, MA、本明細書中に参照により援用される)により論評されている。当業者は、適切な選択マーカーを容易に選択することができる。
【0061】
選択マーカーは、細胞中に、別々のプラスミド上で、所望の遺伝子と同時に導入し得る、又はそれらを同じプラスミド上で導入し得る。同じプラスミド上の場合、選択マーカーと所望の遺伝子が、異なるプロモーター又は同じプロモーターの制御下で存在し得、後者の配置はジシストロン性メッセージ(dicistronic message)を産生する。このタイプのコンストラクトは既知である(例えば、Levinson及びSimonsen、米国特許第4713339号)。「キャリアDNA」として知られる付加的なDNAを、細胞に導入する混合物に添加することも有利であろう。
【0062】
細胞はDNAを取り込んだ後、適切な成長培地において成長し(典型的には1〜2日)、所望の遺伝子の発現が開始される。本明細書中で用いる「適切な成長培地」なる用語は、細胞の成長及び所望のヒト第VII因子ポリペプチドの発現に要求される栄養物及び他の成分を含有している培地を意味する。培地は、一般に炭素源、窒素源、必須アミノ酸類、必須な糖類、ビタミン類、塩類、リン脂質類、タンパク質及び成長因子を含む。γ-カルボキシル化されたタンパク質の産生に関して、培地はビタミンKを好ましくは、およそ0.1μg/mlからおよそ5μg/mlの濃度で含有する。次に薬物選択は、安定な様式で選択マーカーを発現している細胞の成長についての選択を行う。増幅可能な選択マーカーを形質移入された細胞に関して、薬物濃度を増やして、クローニングした配列のコピー数の増加について選択してもよい、これにより発現レベルを増加させる。次いで、安定的に形質移入した細胞のクローンは、所望のヒト第VII因子ポリペプチド変異体の発現についてスクリーニングする。
【0063】
ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列が導入された宿主細胞は、翻訳後修飾されたヒト第VII因子ポリペプチド変異体を産生する能力を有する任意の細胞であり得、この宿主細胞には、酵母、菌類、及び高等真核細胞が含まれる。
本発明における使用に関する哺乳類細胞株の例は、COS-1(ATCC CRL 1650)、仔ハムスター腎臓(BHK)及び293(ATCC CRL 1573; Graham等, J. Gen. Virol. 36:59-72, 1977)細胞株である。好適なBHK細胞株は、tk ts13 BHK株化細胞(Waechter及びBaserga, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79:1106-1110, 1982、本明細書中に参照により援用される)であり、以下BHK570細胞と称する。BHK570細胞株は、アメリカ培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection, 12301 Parklawn Dr., Rockville, Md. 20852)にATCC受託番号CRL10314で寄託されている。また、tk ts13 BHK細胞株も、ATCCから受託番号CRL1632で利用可能である。さらに、本発明に使用し得る、いくつかの他の細胞株には、ラットHep I(ラット ヘパトーマ;ATCC CRL 1600)、ラットHepII(ラット ヘパトーマ;ATCC CRL 1548)、TCMK(ATCC CCL 139)、ヒト肺(ATCC HB 8065)、NCTC1469(ATCC CCL 9.1)、CHO(ATCC CCL 61)、及びDUKX細胞(Urlaub及びChasin, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220, 1980)が含まれる。
【0064】
適切な酵母細胞の例には、Saccharomyces spp.又はSchizosaccharomyces spp.の細胞、特にSaccharomyces cerevisiae又はSaccharomyces kluyveriの株が含まれる。酵母細胞を異種性のDNAで形質転換し、その異種性のポリペプチドを産生させるための方法は、例えば、米国特許第4599311号、米国特許第4931373号、米国特許第4870008号、米国特許第5037743号、及び米国特許第4845075号に記載され、これら全ては参照によって援用される。形質転換された細胞は、選択マーカー、一般に薬剤抵抗性、又は特定の栄養分(例えば、ロイシン)の非存在下で成長する能力により決定される表現型により選択される。酵母における使用に関して好適なベクターは、米国特許第4931373号に開示されるPOT1ベクターである。ヒト第VII因子ポリペプチド変異体をコードするDNA配列は、シグナル配列及び場合によっては上記のようなリーダー配列により先行されていてもよい。適切な酵母細胞の更なる例は、Kluyveromyces(例えば、K.lactis)、hansenula(例えば、H.polymorpha、又はPichia(例えば、P.pastoris)の株である(Gleeson等, J. Gen. Microbiol. 132, 1986, pp. 3459-3465; US 4,882,279を参照)。
他の真菌細胞の例は、糸状菌、例えば、コウジカビ属 spp.(Aspergillus spp.)、パンカビ属 spp.(Neurospora spp.)、フザリウム spp.(Fusarium spp.)、又はトリコデルマ属 spp.(Trichoderma spp.)の細胞、特にA.oryzae、A.nidulans、又はA.nigerの株である。コウジカビ属 spp.のタンパク質の発現に関する使用は、例えば、欧州特許第272277号、欧州特許第238023号、欧州特許第184438号に記載されている。F.oxysporumの形質転換は、例えば、Malardier等, 1989, Gene 78: 147-156に記載のとおり実施してもよい。トリコデルマ属 spp.の形質転換は、例えば欧州特許第244234号に記載のとおり実施してもよい。
【0065】
糸状菌が宿主細胞として使用される場合、DNAコンストラクトを宿主染色体に組み込むことによって本発明のDNAコンストラクトを形質転換し、組み換え宿主細胞得てもよい。DNA配列が細胞において安定的に維持される可能性が高いので、この組み込みは一般的に利点である。DNAコンストラクトの宿主染色体への組み込みは、従来の方法、例えば、相同組み換え又は異種性の組み換えによって実施してもよい。
昆虫細胞の形質転換とその中での異種性のポリペプチドの産生は、米国特許第4745051号;米国特許第4879236号;米国特許第5155037号;米国特許第5162222号;欧州特許第397485号に記載のとおり実施してもよい(これらの文献の全ては本明細書中に参照によって援用される)。宿主として使用される昆虫細胞株は、鱗翅目細胞株(例えば、Spodoptera frugiperda細胞又はTrichoplusia ni細胞)であってもよい(米国特許第5077214号)。培養条件は、例えば国際公開第89/01029号又は国際公開第89/01028号に、又は上述の文献のいずれかに記載されたとおりであってもよい。
【0066】
そして、上記の形質転換された又は形質移入した宿主細胞は、適切な栄養培地中で、ヒト第VII因子ポリペプチド変異体の発現を許容する条件下で培養され、その後、生じたペプチドの全部又は一部を培養物から回収する。細胞を培養するために使用される培地は、宿主細胞を成長させるために適切な任意の従来の培地、例えば、適切なサプリメントを含有する最小培地の又は複合(complex)培地であってもよい。適切な培地は、商業上の提供者から購入しても、公開された手順(例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログ中の)に従って調製してもよい。次いで、細胞により産生されたヒト第VII因子ポリペプチド変異体は、培養培地から従来の処理により回収される。この処理には遠心分離又は濾過により宿主細胞を培地から分離すること、上清もしくは濾過物のタンパク性成分を塩(例えば、アンモニウム硫酸塩)で沈殿させること、様々なクロマトグラフィー処理(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなど)により精製することなどが含まれ、この処理は対象のポリペプチドの種類に依存して行われる。
【0067】
トランスジェニック動物技術を使用して、本発明の第VII因子ポリペプチド変異体を産生してもよい。タンパク質を宿主の雌哺乳類の乳腺内で産生することが好適である。乳腺における発現とその後の所望のタンパク質の乳への分泌により、他の供給源からタンパク質を分離する際に伴う多くの困難が克服される。乳は容易に採集され、大量に利用可能であり、また生化学的に十分に特性が調べられている。さらに、主な乳タンパク質は高濃度(典型的に約1から15g/l)で乳に存在する。
商業の観点から、大量の乳収率を有する種を宿主として使用することは明らかに好ましい。より小さい動物(例えば、マウス及びラット)を使用することができるが(また、基礎段階の証明に好適である)、家畜哺乳類(ブタ、ヤギ、ヒツジ、及びウシを含むが、これらに限定されない)を使用することが好適である。遺伝子導入の歴史、乳収率、コスト、及び羊乳を採集するための装置の利用容易性などの要因があるので、ヒツジが特に好適である(例えば、宿主種の選択に影響する要因の比較に関して、国際公開第88/00239号を参照されたい)。一般的に、日常的に使用するために繁殖させてきた宿主動物の品種を選択すること(例えば、イースト・フライズランド・シープ(East Friesland sheep))、又は搾乳用家畜を後にトランスジェニック系統の繁殖により導入することが望ましい。いずれにしても、既知の、良好な健康状態の動物を使用すべきである。
【0068】
乳腺で発現させるため、乳タンパク質遺伝子からの転写プロモーターが使用される。乳タンパク質遺伝子には、カゼイン(米国特許第5304489号を参照されたい)、β-ラクトグロブリン、a-ラクトアルブミン、及び乳清酸性タンパク質をコードする遺伝子が含まれる。β-ラクトグロブリン(BLG)プロモーターが好適である。ヒツジのβ-ラクトグロブリン遺伝子の場合、この遺伝子の5'隣接配列の少なくとも近位の406bpの領域が一般に使用されが、より大きい部分の5'隣接配列(およそ5kbp以下)が好適である(例えば、β-ラクトグロブリン遺伝子の5'隣接のプロモーター及び非翻訳領域部分を含む、4.25kbp以下のDNAセグメント)(Whitelaw等, Biochem. J. 286: 31-39 (1992)を参照されたい)。他の種からのプロモーターDNAの類似するフラグメントも適切である。
【0069】
また、βラクトグロブリン遺伝子の他の領域を、発現される遺伝子のゲノム領域としてコンストラクトに導入してもよい。イントロンを欠損しているコンストラクトが、例えば、係るDNA配列を含有するものと比較してあまり発現されないことは、当該技術分野において一般的に認識されている(Brinster等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 836-840 (1988);Palmiter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 478-482 (1991);Whitelaw等, Transgenic Res. 1: 3-13 (1991);国際公開第89/01343号;及び国際公開第91/02318号を参照されたい、これらの各々は本明細書中に参照により援用される)。この点において、できれば、所望のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の天然のイントロンのすべて又はいくつかを含むゲノム配列を使用することが一般的に好ましく、ゆえに、例えばβ-ラクトグロブリン遺伝子の少なくともいくつかのイントロンの更なる包含が好ましい。係る領域の1つは、ヒツジのβ-ラクトグロブリン遺伝子の3'非翻訳領域からイントロンスプライシング及びRNAポリアデニル化を提供するDNAセグメントである。ある遺伝子の天然の3'非翻訳領域配列を置換する場合、このヒツジのβ-ラクトグロブリンセグメントは、所望のタンパク質又はポリペプチドの発現レベルを増強しかつ安定化することができる。他の態様の範囲内で、変異体第VII因子配列の開始ATGを囲む領域は、乳特異的なタンパク質遺伝子の対応する配列に置換される。係る置換により、推定上の組織特異的な開始環境が提供されて、発現が増強される。全体の変異体第VII因子プレ-プロ配列及び5'非翻訳配列を、例えばBLG遺伝子のもので置換することは都合がよいけれども、より小さな領域を置換してもよい。
【0070】
第VII因子ポリペプチド変異体のトランスジェニック動物における発現に関して、変異体第VII因子をコードするDNAセグメントは、その発現に必要な付加的なDNAセグメントに作用可能に連結されて、発現ユニットを産生する。係る付加的なセグメントには、前述のプロモーター、並びに転写の終結及びmRNAのポリアデニル化に必要な配列が含まれる。さらに、発現ユニットは、修飾された第VII因子をコードするセグメントに作用可能に連結される分泌シグナル配列をコードするDNAセグメントを含む。分泌シグナル配列は、天然の第VII因子分泌シグナル配列であってもよいし、別のタンパク質(例えば、乳タンパク質)のものであってもよい(例えば、von Heijne, Nucl. Acids Res. 14: 4683-4690 (1986);及びMeade等、米国特許第4873316号を参照されたい、これらは本明細書中に参照により援用される)。
【0071】
トランスジェニック動物における使用に関する発現ユニットの構築は、変異体第VII因子配列を、付加的なDNAセグメントを含むプラスミド又はファージベクターに挿入することにより都合よく実施されるが、発現ユニットは基本的に連結物(ligations)のいずれかの配列により構築されうる。乳タンパク質をコードするDNAセグメントを含むベクターを提供すること及び乳タンパク質のコード配列を第VII因子変異体の配列で置換することは、特に都合がよく、これによって乳タンパク質遺伝子の発現制御配列を含む遺伝子融合体が作出される。いずれにしても、プラスミド又は他のベクターに発現ユニットをクローニングすることにより、変異体第VII因子配列の増幅が促進される。増幅は細菌性(例えば、大腸菌)の宿主細胞において都合よく実施され、それゆえベクターは、細菌性の宿主細胞において機能的な複製開始点及び選択マーカーを典型的に含むであろう。次いで、発現ユニットは、選択された宿主種の受精卵(早期段階の胚を含む)へと導入される。異種性DNAの導入は、マイクロインジェクション(例えば、米国特許4,873,191号)、レトロウイルス感染(Jaenisch, Science 240: 1468-1474 (1988))、又は胚性幹(ES)細胞を用いた部位特異的統合(Bradley等, Bio/Technology 10: 534-539 (1992)により概説されている)を含む、いくつかの手段の1つにより達成できる。そして、卵を偽妊娠雌の卵管又は子宮に移植し、出産間近まで発育させる。生殖系列において導入したDNAを保持している子孫は、そのDNAを彼らの後代(プロジェニー)へと通常のメンデル様式で伝達して、トランスジェニック群(transgenic herds)の発生を可能にする。トランスジェニック動物を生産するための一般的な手順は当分野で公知である(例えば、Hogan等, Manipulating the Mouse Embryo: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1986;Simons等, Bio/Technology 6: 179-183 (1988);Wall等, Biol. Reprod. 32: 645-651 (1985);Buhler等, Bio/Technology 8: 140-143 (1990);Ebert等, Bio/Technology 9: 835-838 (1991);Krimpenfort等, Bio/Technology 9: 844-847 (1991);Wall等, J. Cell. Biochem. 49: 113-120 (1992);米国特許第4873191号;米国特許第4873316号;国際公開第88/00239号、国際公開第90/05188号、国際公開第92/11757号;及びGB87/00458を参照のこと)。外来性のDNA配列を哺乳類及び彼らの胚細胞に導入するための技術は、マウスにおいて最初に開発された(例えば、 Gordon等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 7380-7384 (1980);Gordon及びRuddle, Science 214: 1244-1246 (1981);Palmiter及びBrinster, Cell 41: 343-345 (1985);Brinster等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 4438-4442 (1985);及びHogan等 (ibid.)を参照のこと)。これらの技術は、その後、大型の動物(家畜種を含む)での使用に応用された(例えば、国際公開第88/00239号、国際公開第90/05188号、及び国際公開第92/11757号;及びSimons等, Bio/Technology 6: 179-183 (1988)を参照のこと)。要約すると、トランスジェニックマウス又は家畜の産生においてこれまで使用された最も効率的な手段では、確立された技術に従って所望のDNAの数百の直鎖状分子が受精卵の前核(pro-nuclei)の1つに注入される。接合体(zygote)の細胞質へのDNAの注入も実施できる。
【0072】
また、トランスジェニック植物で生産してもよい。発現を、一般化又は特定の器官(例えば、塊茎)に方向付けてもよい(Hiatt, Nature 344:469-479 (1990);Edelbaum等, J. Interferon Res. 12:449-453 (1992);Sijmons等, Bio/Technology 8:217-221 (1990);及び欧州特許第0255378号を参照されたい)。
【0073】
本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は、細胞培養培地又は乳から回収される。本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、等電点電気泳動、及びサイズ排除)、電気泳動的な処置(例えば、調製用の等電点電気泳動(IEF))、溶解度の差異(例えば、硫安塩析)、又は抽出を含む、当該技術分野において知られる種々の手順によって精製してもよいが、これらに限定されない(例えば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照されたい)。好ましくは、アフィニティークロマトグラフィーを抗第VII因子抗体カラム上で行うことにより精製してもよい。Wakabayashi等, J. Biol. Chem. 261:11097-11108, (1986) 及び Thim等, Biochemistry 27: 7785-7793, (1988)に記載のように、カルシウム依存性モノクローナル抗体の使用は特に好適である。付加的な精製は、従来の化学的な精製手段(例えば、高速液体クロマトグラフィー)により達成しうる。バリウムクエン酸塩沈殿を含む他の精製方法は、当該技術分野において知られており、本明細書中に記載される新規の第VII因子ポリペプチド変異体の精製に応用しうる(例えば、Scopes, R., Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., 1982を参照のこと)。
【0074】
治療上の目的のために、本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は実質的に純粋である。したがって、本発明の好適な実施態様では、本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は、少なくともおよそ90から95%均質(homogeneity)、好ましくは少なくともおよそ98%均質にまで精製される。純度は、例えば、ゲル電気泳動及びアミノ末端アミノ酸配列決定法により評価しうる。
第VII因子変異体は、その活性化部位で切断され、その2鎖形態へと転換される。活性化は、当該技術分野において既知の手順、例えば、Osterud,等, Biochemistry 11:2853-2857 (1972);Thomas、U.S.Patent No. 4,456,591;Hedner及びKisiel, J. Clin. Invest. 71:1836-1841 (1983);又はKisiel及びFujikawa, Behring Inst. Mitt. 73:29-42 (1983)に記載されたものに従って実施してもよい。あるいは、Bjoern等(Research Disclosure, 269 September 1986, pp. 564-565)によって記載されているように、第VII因子をMono Q(登録商標)(Pharmacia fine Chemicals)などのイオン交換クロマトグラフィに通すことにより、活性化してもよい。次いで、生じる活性化された第VII因子変異体を後述するように製剤化し、投与してもよい。
【0075】
アッセイ法
また、本発明は、本発明に係る好適な第VIIa因子変異体を選択するための適切なアッセイを提供する。これらのアッセイは、単純な予備的インビトロ検査として実施することができる。
したがって、本明細書中の実施例3は、本発明の第VIIa因子変異体の活性に関する単純な検査(「インビトロ加水分解アッセイ法」と称する)を開示する。それに基づいて、特に興味深い第VIIa因子変異体は、「インビトロ加水分解アッセイ法」において試験される場合に、変異体の活性と図1に示す天然の第VII因子の活性との間の比率が、1.0を超える、例えば少なくとも約1.25、好ましくは少なくとも約2.0、例えば少なくとも約3.0又は、更により好ましくは少なくとも約4.0である変異体である。
また、変異体の活性は、第X因子などの生理学的な基質を、適切には100〜1000nMの濃度で使用して測定してもよく(「インビトロタンパク質分解アッセイ法」)(実施例4を参照)、この場合、生成された第Xa因子は、適切な色素生産性基質(例えば、S-2765)を添加した後に測定される。さらに、活性アッセイは、生理学的な温度で行ってもよい。
第VIIa因子変異体のトロンビン生成能は、生理的濃度のすべての関連性のある凝固因子及びインヒビター(血友病A症状を模倣する場合、第VIII因子を除く)と活性化された血小板(Monroe等 (1997) Brit. J. Haematol. 99, 542-547のp.543に記載のとおり、これは本明細書中に参照として援用される)を含むアッセイにおいて測定することができる。
【0076】
投与及び薬学的組成物
本発明に係る第VII因子ポリペプチド変異体を用いて、いくつかの原因、例えば、凝固因子欠損(例えば、血友病A及びB又は凝固第XI因子又は第VII因子の欠損)又は凝固因子インヒビターを有する出血性疾患をコントロールしてもよいし、又は、それらを用いて、正常に機能している血液凝固カスケードを有する(凝固因子欠損又は任意の凝固因子に対するインヒビターが存在しない)被検体の過剰な出血の発生をコントロールしてもよい。出血は、欠陥のある血小板機能、血小板減少症又はフォンウィルブランド病により生じる可能性がある。また、増加した線維素溶解性活性が、多様な刺激により誘導された被検体においても認められる。
【0077】
手術又は大きな外傷に関連して、広範な組織損傷を受けている被検体では、正常な止血機構では即時性の止血の必要に応答しきれず、正常な止血機構であるにもかかわらず出血を発生してしまうかもしれない。また、満足に止血を達成することは、出血が脳、内耳領域及び眼などの臓器において生じた場合に問題となり、また、出血源を同定することが困難であるびまん性の出血(出血性胃炎及び多量の子宮出血)の場合にも問題である。同じ問題は、様々な臓器(肝臓、肺、腫瘍組織、胃腸管)からの生検を行う過程、並びに腹腔鏡検査手術で生じうる。これらの状況は、外科的な技術(縫合術、クリップなど)による止血が困難であることが共通している。急性かつ多量の出血は、行う治療によって止血の欠陥が誘導される抗凝固療法中の被検体においても生じうる。係る被検体は、抗凝固作用が迅速に中和されるべき場合には、外科的な処置を必要としうる。不満足な止血の場合に問題となりうる別の状況は、正常な止血機構を有する被検体が血栓塞栓性疾患を予防するための抗凝固療法を施されている場合である。係る療法には、ヘパリン、他の形態のプロテオグリカン、ワルファリン又は他の形態のビタミンK-アンタゴニスト、並びにアスピリン及び他の血小板凝集インヒビターが含まれうる。
【0078】
凝固カスケードの全身性の活性化により、播種性血管内血液凝固(DIC)が発生しうる。しかしながら、この種類の局所性の止血プロセスは、第VIIa因子と血管壁損傷の部位で曝されるTFとの間の複合体形成により誘導されるので、このような合併症は高用量の組み換え第VIIa因子で治療した被検体においては見られない。したがって、本発明に係る第VII因子ポリペプチド変異体は、正常な止血性機構と関連する過剰な出血をコントロールするために、それらの活性型で使用されてもよい。
計画的な(deliberate)処置に関連した治療のためには、本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は、典型的には処置を行う前のおよそ24時間以内に、及びその後7日以上の間に投与される。凝固剤としての投与は、本明細書に記載されているような種々の手段によるものであってもよい。
【0079】
第VII因子ポリペプチド変異体の用量は、被検体の体重及び症状の重篤さに依存して、負荷投与量及び維持量として、70kgの被検体について約0.05mg〜約500mg/日、好ましくは約1mg〜約200mg/日、及び、より好ましくは約10mg〜約175mg/日の範囲で変動する。
【0080】
薬学的組成物は、予防的及び/又は治療的な治療のための非経口投与を主に意図している。好ましくは、薬学的組成物は、非経口的、すなわち静脈内、皮下、又は筋肉内投与される、又は連続的ないしは間欠的(pulsatile)な注入により投与されてもよい。非経口投与に関する組成物は、本発明の第VII因子変異体と、薬学的に許容される担体(好ましくは、水溶性担体)との組み合わせ(好ましくは該担体中に溶解される)を含有する。水、緩衝水、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどの種々の水溶性担体を使用してもよい。また、本発明の第VII因子ポリペプチド変異体は、損傷の部位へのデリバリー又は損傷の部位をターゲティングするために、リポソーム調製物に製剤化することもできる。リポソーム調製物は、例えば米国特許第4837028号、米国特許第4501728号、及び米国特許第4975282号に一般的に記載されている。組成物は、周知の滅菌技術で殺菌されうる。生じる水溶液は、使用のためにパッケージされ、又は無菌条件下で濾過して凍結乾燥されていてもよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌水溶液と混合される。組成物は、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなどの、pHを調整する及び緩衝化する薬剤、緊張度(tonicity)を調整する薬剤などの、生理学的条件に近づけるために必要とされるような、薬剤的に許容される補助物質を含んでいてもよい。
【0081】
これらの製剤中の第VII因子変異体の濃度は、大きく変化していてもよく、すなわち、約0.5重量%未満、通常少なくとも約1重量%以上から、15又は20重量%程度にまで変更することができ、選択される特定の投与方法に従って、主に液体体積、粘性などによって選択される。
このようにして、静脈内注入のための典型的な薬学的組成物は、250mlの無菌のリンゲル液及び10mgの第VII因子変異体を含むように作出することができる。非経口的に投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に既知又は明白であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA (1990)に更に詳細に記載されている。
【0082】
本発明の第VII因子ポリペプチド変異体を含有している組成物は、予防的及び/又は治療的な治療のために投与することができる。治療的な適用において、組成物は、すでに疾患に罹患している被検体に対して、疾患及びその合併症を治癒する、軽減する、又は部分的に抑えるために十分な量で、上記の通りに投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療的に有効な量」として定義される。当業者に理解されるであろうとおり、本目的のための有効な量は、疾患又は損傷の重篤さ、並びに被検体の重量及び全体の状態に依存する。しかしながら、通常は、有効な量は、約0.05mgから約500mgまでの第VII因子変異体/日を70kgの被検体に投与する範囲で変動し、約1.0mgから約200mgの第VII因子変異体/日がより一般的に使用される。
【0083】
本発明のFVIIaポリペプチドは、一般に重篤な疾病又は損傷の状態、すなわち生命に脅威となる、又は潜在的に生命に脅威となる状況で用いられうる。このような場合、外来物質を最小限に抑え、ヒトにおけるヒト第VII因子ポリペプチドの免疫原性を全体的に無くすという観点から、治療する医師によって、これらの変異体第VII因子組成物を実質的に過剰に投与することが望ましいと感じられるであろう。
予防的適用において、本発明の第VII因子変異体を含む組成物は、疾病状態又は損傷に感受性があるか、又はさもなければそのリスクのある被検体に投与されて、被検体自身の凝固能力を増強する。このような量は、「予防的に有効な量」であると定義される。予防的な適用において、正確な量は、被検体の健康状態や重量に依存するが、用量は、一般に70キログラム被検体に対し約0.05mgから約500mg/日、より一般には70キログラム被検体に対し約1.0mgから約200mg/日の範囲にわたる。
【0084】
組成物の一回又は複数回の投与は、治療する医者により選択される用量レベル及びパターンで実施されうる。日常的な維持レベルを必要とする外来患者には、第VII因子ポリペプチド変異体は、連続的な注入(例えば、携帯型のポンプシステムを用いたもの)により投与してもよい。
本発明の第VII因子変異体の局所的デリバリー、たとえば局所的適用は、たとえば噴霧、灌流、二重バルーンカテーテル、ステント、血管グラフトないしはステントへの移植、バルーンカテーテルを被覆するために使用されるヒドロゲル、又はその他の十分に確立された方法によって行ってもよい。いずれにしても、薬学的組成物は、被検体を有効に治療するために十分な量の第VII因子変異体を提供するべきである。
【0085】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これは、保護の範囲を限定するものとして解釈されない。これまでの記載並びに以下の実施例において開示された特徴は、別々でも、いずれかを組み合わせたものであっても、多様な形態の本発明を理解するための材料にすぎない。
【実施例】
【0086】
以下の実施例に用いたアミノ酸置換に関する用語は、以下のとおりである。1番目の文字は、配列番号:1の位置に天然に存在するアミノ酸を表す。続く番号は、配列番号:1における位置を表す。2番目の文字は、天然のアミノ酸を置換している異なるアミノ酸を表す。例えば、D212N/F374Y-FVIIは、配列番号:1の位置212のアスパラギン酸がアスパラギンに置換されており、配列番号:1の位置374のフェニルアラニンがチロシンに置換されており、同じ第VII因子変異体に両方の突然変異があるものである。
【0087】
実施例1
D212N-FVIIをコードするDNA
以下のプライマー(標準的な条件下でTおよそ87.8℃)によるPCRベースのQuickChange(登録商標)部位特異的突然変異誘発キットを用いて、FVII cDNAを含む哺乳類の発現ベクターpZym219b(図2を参照)に突然変異を導入した。
フォワード:
5' C CTG ATC GCG GTG CTG GGC GAG CAC AAC CTC AGC GAG CAC G(配列番号:2)
バックワード:
5' C GTG CTC GCT GAG GTT GTG CTC GCC CAG CAC CGC GAT CAG G(配列番号:3)
【0088】
各々がベクターの逆の鎖に相補的なオリゴヌクレオチドプライマーを、Pfu DNAポリメラーゼによって温度を変えながら伸長させた。プライマーが組み込まれると、ねじれ形のニックを含む変異したプラスミドが生成される。温度循環後、生成物を、メチル化したDNA及びヘミメチル化したDNAに特異的なDpnIにて処理し、親のDNA鋳型を消化して、突然変異含有合成DNAを選別した。
所望のFVII変異体を作製するための特異的なプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応を用いて本発明に係るすべてのFVII変異体のDNAコンストラクトを調製するための手順は、当業者に周知である(PCR Protocols, 1990, Academic Press, San Diego, California, USAを参照)。
変更したコドンを下線で示し、変更された特定の塩基を太字で示す。PCR反応は、1) 95℃で30秒間の初期融解、その後2) 95℃で30秒間の融解、55℃で60秒間のアニーリング、68℃で12分間の伸長を18サイクル、そして3) 4℃で10分より長い間の冷却で終える、3セグメント法で行った。導入された突然変異は、完全なFVII cDNAをカバーするDNA配列決定法を用いて調べた。FVIIa cDNAに塩基の変化は観察されなかった。
【0089】
実施例2
D212N-FVIIの調製
基本的には既に記載のあるように(Thim等 (1988) Biochemistry 27, 7785-7793;Persson and Nielsen (1996) FEBS Lett. 385, 241-243)、BHK細胞を形質移入して、特定のFVII変異体を発現させた。簡単に言えば、安定細胞株の産生のためにリポフェクタミンを用いて、仔ハムスター腎臓(BHK)細胞にD212N_pZym219b_FVIIcDNAコンストラクトを形質移入した。選択剤としてメトトレキセートを用いた。樹立した安定形質移入細胞株を、合計およそ1500mlの細胞上清が得られる大量発現培地(medium large expression)に拡げた。2%(v/v)ウシ胎仔血清、抗生物質及びビタミンK12を添加したDMEMを発現に用いた。
【0090】
第VII因子変異体は以下の通りに精製した。
変異体は、始めにQ Fast Flowイオン交換カラム、次にmAbアフィニティーカラム、最後にMonoQイオン交換カラムと続けて用いてタンパク質精製した。まず最初に細胞上清を18000回転数/分で遠心してクリアにし、8.0にpH調整した2μmフィルターにて濾過した。また、伝導率は、ミリQ水にておよそ50%(v/v)希釈してQ Fast FlowバッファA平衡カラム(バッファA組成物:10mM トリス、pH8及び50mM NaCl)と同じ伝導率レベルに調整した。終濃度10mM EDTA及び10mM トリス、pH8.0を細胞上清に加えて、Q Fast Flowカラムにアプライした。pH7.5に調整したバッファB(バッファCとする)にて平衡化した、mAbカラムに、バッファB(バッファB組成物:10mM トリス、pH8、50mM NaCl及び5mM CaCl)による均一濃度勾配を直接用いてタンパク質を溶出した。0.5M NaCl調整バッファCを用いた洗浄工程を行い、その後10mM EDTA調整バッファCを用いて溶出した。分画をプールし、CaClを15mMの終濃度で加え、非還元SDS-PAGE/クーマシー染色を用いて一定分量を分析した。およそ45kDaのFVII分子の予想される分子量に、単一の同種のバンドが観察された。
最後にMonoQイオン交換カラムを用いて精製した。ここで、カラムは、10mM トリス、pH7.5及び50mM NaClからなるバッファにて平衡化し、10mM トリス、pH7.5及び0.5M NaClからなるバッファの直線濃度勾配のおよそ55%で溶出した。クロマトグラフィーの特徴を図5に示す。回収した分画をプールして、濃度を上げ、FXaカップリングセファロースを用いて活性化した。D212N FVIIa分子の20kDaの軽鎖及び30kDaの重鎖のみの移動が観察されたので、還元SDS-PAGE/クーマシー分析から完全な活性が観察された。本発明に係る他の変異体であるFVII変異体を同じ方法により調製してもよい。
【0091】
実施例3
インビトロ加水分解アッセイ−アミド分解活性
天然の(野生型)第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(共に以降「第VIIa因子」と称する)を同時にアッセイし、それらの比活性を直接比較する。アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行う。色素生産性基質D-Ile-Pro-Arg-p-ニトロアニリド(S-2288、Chromogenix, Sweden)(終濃度1mM)を、第VIIa因子(終濃度100nM)を含む、0.1M NaCl、5mM CaCl及び1mg/ml ウシ血清アルブミンを含有する50mM Hepes、pH7.4に加えた。405nmの吸光度を、SpectraMaxTM340プレート読み取り機(Molecular Devices, USA)にて連続的に測定する。20分間のインキュベーションの間に反応した吸光度を用いて、酵素を含有しないブランクウェルの吸光度を減算した後、変異体と野生型第VIIa因子との間の活性の比率を算出する。
比率=(A405nm 第VIIa因子変異体)/(A405nm 第VIIa因子野生型)。
野生型と比較してD212Nでは2倍のアミド分解活性が測定され、K値に変化がないとした場合にS-2288基質に関して等しく高いkcat及びkcat−1を回復した。これは、活性部位との関係で残基212の空間的配位が適当であると思われる(すなわち、活性部位S343から20Åより大きく離れている)。
【0092】
実施例4
インビトロタンパク質分解アッセイ−タンパク質分解活性
天然の(野生型)第VIIa因子及び第VIIa因子変異体(共に以降「第VIIa因子」と称する)をFX活性について同時にアッセイし、それらの比活性を直接比較する。アッセイは、マイクロタイタープレート(MaxiSorp, Nunc, Denmark)において行われる。10nM FVIIa変異体、例えばD212N終濃度と0.11〜7.0μM FXを含む50μlのアッセイバッファ(0.1M NaCl及び5mM CaClを含有する50mM Hepes、pH7.4)中にて、室温で20分間インキュベートしてFX活性を測定した。20mM EDTA(w.o. CaCl)を含有する150μlのバッファ(0.1M NaClを含有する50mM Hepes、pH7.4)を加えてFX活性化を止めた。その後、50μlの2.5mM S-2765を加え、残効性を測定した。S-2765加水分解の速度を2分間モニターしたところ、その間の吸光度の増加は線形であった。それ自体のFVIIa及びFX調製物のバックグラウンド活性を減算し、生成されたFXaの量を標準曲線(0.16−10nM)から推定した。3.3μMのK及び0.45×10−3/秒が測定され、野生型FVIIa(0.3×10−3/秒)と比較しておよそ1.5倍のkcatとなったが、Kに有意差はなかった。
【0093】
実施例5
実施例3及び4に記述されるアッセイにおいて測定されるFVIIa変異体(野生型ヒトFVIIaと比較した場合)の相対的な活性。
変異体 実施例3の比率 実施例4の比率
D212N-FVIIa 2 1.5
wt-FVIIa 1.0 1.0
【0094】
実施例6
Ca2+依存
Ca2+濃度との関係における活性レベルを測定することによってCa2+依存分析を行い、間接的なK値を測定した。一定のS-2288基質濃度と1mM及び100nMそれぞれのタンパク質濃度を用いて分析を行った。D212N変異体と野生型FVIIaの両方についておよそ3mMのK値が得られ、このことから結合親和性が導入した突然変異体によって変更されなかったことが示された。
【0095】
本発明に係る実施態様:
1. 配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含む第VII因子ポリペプチドであって、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換であり、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性が増加している、第VII因子ポリペプチド。
2. プロテアーゼドメインの残りの位置の少なくとも一つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1に記載の第VII因子ポリペプチド。
3. プロテアーゼドメインの残りの位置の多くとも20の付加的なアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1又は2に記載の第VII因子ポリペプチド。
4. 配列番号:1の157−170から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも一つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から3のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
5. 配列番号:1の290−305から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも一つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から4のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
6. R304がTyr、Phe、Leu及びMetからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から5のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
7. 配列番号:1の306−312から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも一つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から6のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
8. M306がAsp及びAsnからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から7のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
9. D309がSer及びThrからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から8のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
10. 配列番号:1の330−339から選択される位置のアミノ酸に対応する少なくとも一つのアミノ酸が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から9のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
11. A274が任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から10のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
12. 前記A274がMet、Leu、Lys及びArgからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様11に記載の第VII因子ポリペプチド。
13. K157がGly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から12のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
14. K337がAla、Gly、Val、Ser、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から13のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
15. D334がGly及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から14のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
16. S336がGly及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から15のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
17. V158がSer、Thr、Asn、Gln、Asp及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から16のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
18. E296がArg、Lys、Ile、Leu及びValからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から17のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
19. M298がLys、Arg、Gln及びAsnからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から18のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
20. L305がVal、Tyr及びIleからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から19のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
21. S314がGly、Lys、Gln及びGluからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から20のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
22. F374がPro及びTyrからなる群から選択されるアミノ酸によって置換されている、実施態様1から21のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
23. 前記F374がTyrによって置換されている、実施態様22に記載の第VII因子ポリペプチド。
24. アミノ酸がポリヌクレオチドコンストラクトによってコードされうる任意の他のアミノ酸に置換されている、実施態様1から23のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
25. 前記第VII因子ポリペプチドがヒトの第VII因子である、実施態様1から24のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
26. 前記第VII因子ポリペプチドがヒトの第VIIa因子である、実施態様1から25のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
27. 前記第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくともおよそ1.25である、実施態様1から26のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
28. 前記比率が少なくともおよそ2.0、好ましくは少なくともおよそ4.0である、実施態様27に記載の第VII因子ポリペプチド。
29. 配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸がAsn、Gln、Ser、Thrからなる群から選択されるアミノ酸により置換されている、実施態様1から28のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
30. D212N-FVIIa、D212T-FVIIa、D212S-FVIIa、及びD212Q-FVIIaから選択される、実施態様1に記載の第VII因子ポリペプチド。
31. 実施態様1から30のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドコンストラクト。
32. ベクターである、実施態様31に記載のポリヌクレオチドコンストラクト。
33. 実施態様31又は32に記載のポリヌクレオチドコンストラクトを含んでなる宿主細胞。
34. 真核細胞である、実施態様33に記載の宿主細胞。
35. 哺乳類起源である、実施態様34に記載の宿主細胞。
36. 細胞がCHO細胞、HEK細胞及びBHK細胞からなる群から選択される、実施態様35に記載の宿主細胞。
37. 実施態様31において定義されるポリヌクレオチドコンストラクトを含有し、発現するトランスジェニック動物。
38. 実施態様31において定義されるポリヌクレオチドコンストラクトを含有し、発現するトランスジェニック植物。
39. ポリヌクレオチドコンストラクトの発現を促す条件下で好適な成長培地中で実施態様33から36のいずれか一において定義される細胞を培養し、培養培地から結果として生じたポリペプチドを回収することを含んでなる、実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの生成方法。
40. 実施態様37において定義されるトランスジェニック動物によって産生される乳から第VII因子ポリペプチドを回収することを含んでなる、実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの生成方法。
41. 実施態様38において定義されるトランスジェニック植物の細胞を培養し、該植物から第VII因子ポリペプチドを回収することを含んでなる、実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの生成方法。
42. 配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドと、場合によって薬学的に受容可能な担体を含有してなる薬剤的組成物。
43. 実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドと、場合によって薬学的に受容可能な担体を含有してなる薬剤的組成物。
44. 配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの、出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための医薬の調製における使用。
45. 実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの、出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための医薬の調製における使用。
46. 血友病A又はBの治療のための、実施態様44又は45に記載の使用。
47. 被検体の出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための方法であって、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法。
48. 被検体の出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための方法であって、実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法。
49. 医薬としての使用のための実施態様1から30のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチド。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1a】天然の(野生型)ヒト凝固第VII因子の完全なアミノ酸配列を示す(配列番号:1)。
【図1b】天然の(野生型)ヒト凝固第VII因子の完全なアミノ酸配列を示す(配列番号:1)。
【図2】FVII cDNAを包含するpZym219bベクターマップ。D212N突然変異の位置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含む第VII因子ポリペプチドであって、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換であり、野生型ヒト凝固第VIIa因子と比較して凝固活性が増加している、第VII因子ポリペプチド。
【請求項2】
前記第VII因子ポリペプチドがヒト第VIIa因子である、請求項1に記載の第VII因子ポリペプチド。
【請求項3】
前記第VII因子ポリペプチドの活性と配列番号:1に示す天然の第VIIa因子ポリペプチドの活性との間の比率が少なくともおよそ1.25である、請求項1又は2に記載の第VII因子ポリペプチド。
【請求項4】
配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸がAsn、Gln、Ser、Thrからなる群から選択されるアミノ酸により置換されている、請求項1から3のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチド。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載の第VII因子ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドコンストラクト。
【請求項6】
配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドと、場合によって薬学的に受容可能な担体を含有してなる薬剤的組成物。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドと、場合によって薬学的に受容可能な担体を含有してなる薬剤的組成物。
【請求項8】
配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの、出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための医薬の調製における使用。
【請求項9】
請求項1から4のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの、出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための医薬の調製における使用。
【請求項10】
血友病A又はBの治療のための、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
被検体の出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための方法であって、配列番号:1のアミノ酸配列と比較して少なくとも一の置換を含み、該置換が配列番号:1の位置D212のアミノ酸に対応するアミノ酸の任意の他のアミノ酸による置換である第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法。
【請求項12】
被検体の出血性疾患又は出血性症状の治療のため又は通常の止血系の促進のための方法であって、請求項1から4のいずれか一において定義される第VII因子ポリペプチドの治療的ないしは予防的な有効量を、必要とする被検体に投与することを含んでなる方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−508510(P2009−508510A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531700(P2008−531700)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066587
【国際公開番号】WO2007/039475
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】