説明

ヒト及び動物における寄生虫性の感染を防止するための駆虫剤

【課題】寄生性扁形動物(扁形動物門)の感染力を有する段階によってヒトもしくは動物が感染するのを防止する、蠕虫類の寄生生物を阻止するための駆虫剤の提供。
【解決手段】NーアルキルまたはNーアリルオキシカルボニル−2−ヒドロキシエチルピペリジンを含む組成物。Nーアルキルのアルキルはtーブチル、ブチル、イソブチルを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆虫剤として適切な、ある種の活性化合物を含む組成物、及び寄生性の扁形動物(扁形動物門)の伝染力を有する段階でヒトもしくは動物が感染するのを防止するための、それらの使用に関する。この組成物は、皮膚を通して宿主生物に侵入することができる扁形動物の段階[セルカリア(cercariae)]に備えて皮膚に使用する。
【背景技術】
【0002】
扁形動物門の数種はヒト及び動物の重病の原因になる。熱帯地方の国では、特に住血吸虫属(Schistosoma species)による感染は慢性的な苦痛の原因になり、また、頻発する死亡の原因になる。重要な病原体はマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)、ビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)及び日本住血吸虫(Schistosoma japonicum)である。地元住民、観光客、人道主義援助団体のために働く人々、及び軍隊の従業者が冒される。氷結しない水域の水中にいる感染力のあるセルカリア(cercariae)は皮膚を通して体の中に侵入する。
【0003】
また、穏和な気候の国では、トリコビルハルジア(Trichobilharzia)属及びオルニトビルハルジア(Orinthobilharzia)属の中の幾つかの種に属するセルカリア(cercariae)による人の感染が問題である。これらのセルカリアは皮膚に穴をあけることができ、皮膚炎を起こさせる。このような感染は内陸の水域もしくは海岸でのレジャー活動中、また、魚釣り、池もしくは用水耕地での作業中に発生する。一般に、毎日の生活の多くの状況において、もしかすると汚れた/病毒で汚染された水との皮膚の接触は避けがたい。
【0004】
しかしながら、病原体の侵入に対する保護は、駆虫性物質を用いる本発明に従って皮膚を前もって処理することにより可能になる。
【0005】
過去において、前述の寄生虫による感染を予防するための、幾つかの化合物の適合性について、それらの化合物を既にテストした。しかしながら、本発明の目的に関連して今まで記述された物質は、皮膚を通して又は経口的に体内に入った場合には有毒である。
【0006】
このように、例えばヘキサクロロフェン(hexachlorophene)はマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)のセルカリア(cercariae)に対して致死作用を示す(非特許文献1)。健康に対する危険度、特に肝臓の損傷のために、ヘキサクロロフェンはヒトの皮膚には使用することができない。この化合物は、皮膚に接触すると有毒であり、飲み込むと多分奇形の原因となり、また、事によると発癌性である[非特許文献2]。
【0007】
ニクロスアミド(Niclosamide)はセルカリアの侵入を防ぐように作用するけれども[非特許文献3]、ニクロスアミドは、ことによると遺伝する遺伝子損傷の原因になるかもしれないので、毒物学的には好ましくない(非特許文献4)。ニクロスアミドは水質公害の原因となるので、使用者が水にさらされる場合には、環境にもたらす危険性のために、皮膚に使用するのは避けなければならない[非特許文献5]。それゆえに、セルカリアを防ぐためにこの化合物がこれまでに商業上人に利用されたことはない。
【0008】
N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET)は、マンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)のセルカリアを防ぐように作用する[非特許文献6]。し
かしながら、DEETは幾つかの不都合な特性を有している。
【0009】
扁形動物門の動物の感染力を有する段階に対する、これまでに記述された駆除剤の作用は、これまでにマンソン住血吸虫(Schistosoma mansoni)属のセルカリアについてテストされたに過ぎない、すなわち、他の蠕虫に対するこれらの薬剤の効力は今までに明示されたことがない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Fripp,P.J. and Armstrong,F.I.,The efficacy of hexachlorophene skin cleanser as a cercariae repellent.South African Med.J.47:1973,526−527
【非特許文献2】Commission of the European Community,Directive 93/72/EEC of 1 September 1993,1999年までの追録を伴うAnnex Vol.I and II(EU Directive on Dangerous Substances),Official Journal EUL 258A,Volume 36,16 October 1993,1997年までの追録
【非特許文献3】Bruce,J.I. et al.(1992)Efficacy of niclosamide as a potential topical antipenetrant(TAP)against cercariae of Schistosoma mansoni in monkeys.Mem.Inst.Oswaldo Cruz 87:28,1−289.
【非特許文献4】Registry of Toxic Effects of Chemical Substances,National Institute of Occupational Saftey and Health
【非特許文献5】Federal Office for the Environment(Ed.),Catalogue of substances hazardous to water.LTwS NO.12May 1996 with current amendments,Berlin 1996
【非特許文献6】Salafsky,B.et al.Evaluation of N,N−ジエチル−m−トルアミド(DEET) as a topical agents for preventing skin penetration by cercariae of Schistosoma mansoni.Am.J.Trop.Med.Hyg. 58:1998,828−834
【発明の概要】
【0011】
驚くべきことに、本発明組成物は扁形動物門の動物、特にビルハルツ住血吸虫(Schistosoma haematobium)、日本住血吸虫(Schistosoma
japonicum)、トリコビルハルジア(Trichobilharzia spp.)及びオルニトビルハルジア(Ornithobilharzia spp.)、またエキノストマ(Echinostoma spp.)及びその他の扁形動物による感染に対してヒト及び動物を効果的に保護するのに適していることが現在では判明している。
【0012】
それゆえに、本発明は下記項目1乃至5において述べる事項に関する:
1.蠕虫類の寄生生物(helminthischen parasiten)を阻止するための組成物が式(I)
【0013】
【化1】

【0014】
[式中、Yは水素、場合により置換されたアルキルもしくは基O−Xを表し、
Xは水素、COR11、COOR12もしくはR13を表し、
1 は場合により置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル基を表し、
2 、R11、R12及びR13は同一であるか又は異なっており、場合により置換されたアルキルもしくはアルケニル基を表し、
3 乃至R10は、同一であるかもしくは異なっており、そして水素を表すか又は場合により置換されたアルキル基を表し、その場合R2及びR3 もしくはR3 及びR7 もしくはR3
及びR5もしくはR5 及びR7 は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された単環式環を形成してもよく、
そして
n及びmは同一であるかもしくは異なっており、0又は1である。]
の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、前記組成物。
2.Yは水素、C1 −C6 アルキルもしくは基O−Xを表し、
Xは水素、COR11もしくはR13を表し、
1 はC3 −C7 シクロアルキル、C3−C7 シクロアルケニル、C1 −C2 アルキル−C3 −C7シクロアルキル、C1 −C2 アルキル−C3 −C7 シクロアルケニルを表し、その場合上述の基の中のシクロアルキル環もしくはシクロアルケニル環はC1−C6 アルキルもしくはC1 −C6 ジアルキレン架橋で3回まで場合により置換されているか、又はR1 はC1 −C7 アルキル、C2−C7 アルケニルもしくはC2 −C7 アルキニルを表し、
2 、R11、R13は同一であるかもしくは異なっており、C1−C6 アルキルを表し、
3 乃至R8 は、同一であるかもしくは異なっており、そして水素もしくはC1−C6 アルキルを表し、その場合R2 及びR3 もしくはR3 及びR7もしくはR3 及びR5 もしくはR5 及びR7 は、それらが結合している原子と一緒になって、5員もしくは6員の単環式環を形成してもよく、そして
nは1を表し、mは0を表す式(I)の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、項目1に記載の蠕虫類の寄生生物を阻止する組成物。
3.項目1に記載の式(I)の化合物を、保護されるべき生物の皮膚に施用することを特徴とする、蠕虫類の寄生生物を阻止する方法。
4.蠕虫類の寄生生物を阻止するための、項目1に記載の式(I)の化合物の使用。
5.項目1に記載の式(I)の化合物を増量剤及び/又は界面活性剤と混合することを特徴とする、蠕虫類の寄生生物を阻止するための組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
好ましい実施態様では、式(I)の置換基Yは水素又はC1 −C6 アルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、iso−ブチル
もしくはtert−ブチル、ペンチルもしくはヘキシルを表す。この場合、R1は、好ましくはC3 −C7 シクロアルキル、C3 −C7 シクロアルケニル、C1−C2 アルキル−C3 −C7 シクロアルキル、C1 −C2アルキル−C3 −C7 シクロアルケニルを表し、その場合上述の基の中のシクロアルキル環もしくはシクロアルケニル環は、C1−C6 アルキルでもしくはC1 −C6 ジアルキレン架橋で3回まで場合により置換される。
【0016】
別の実施態様によれば、本発明組成物に用いられる式(I)の化合物は、Yが基O−Xを表し、
Xが水素、COR11、COOR12もしくはR13を表し、
1 が場合により置換されたアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアルキニル基を表し、
2 、R11、R12及びR13は、同一であるかもしくは異なっており、場合により置換されたアルキルもしくはアルケニル基を表し、
3 乃至R10は同一であるかもしくは異なっていると共に、水素を表すか又は場合により置換されたアルキル基を表し、その場合R2及びR3 もしくはR3 及びR7 もしくはR3 及びR5もしくはR5 及びR7 は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された単環式環を形成してもよく、
そして
n及びmは同一であるかもしくは異なっており、0もしくは1である化合物である。
【0017】
これらの化合物の中で、Xが水素、COR11もしくはR13を表し、
1 がC1 −C7 アルキル、C3−C7 シクロアルキル、C2 −C7 アルケニルもしくはC2 −C7アルキニルを表し、
2 、R11、R13が同一であるかもしくは異なっていると共に、C1−C6 アルキルを表し、
3 〜R8 が同一であるかもしくは異なっていると共に、水素もしくはC1−C6 アルキルを表し、その場合R2 及びR3 もしくはR3 及びR7もしくはR3 及びR5 もしくはR5
及びR7 は、それらが結合している原子と一緒になって、5員もしくは6員の単環式環を形成してもよく、そして
nが1を表し、mが0を表す式(I)の化合物が好ましい。
【0018】
これらの化合物の中で、Xが水素もしくはR13を表し、その場合R13はC1 −C6 アルキルを表し、
1 がC1 −C7 アルキルもしくはC3−C7 アルケニルを表し、
4 乃至R8 は同一であるかもしくは異なっていると共に、水素もしくはC1−C6 アルキルを表し、
2 及びR3 は、それらが結合している原子と一緒になって、5員もしくは6員の単環式環を形成し、
nは1を表し、そして
mは0を表す、式(I)の化合物が特に好ましい。
【0019】
さらに、Yが基O−Xを表す化合物の中では、R1 がC1 −C7 アルキル、C3−C7 シクロアルキルもしくはC3 −C7 アルケニルを表し、XがCOR11もしくはR13を表し、R2及びR11が同一であるかもしくは異なっており、そしてC1 −C6 アルキルを表し、R3乃至R8 は同一であるかもしくは異なっており、そして水素もしくはC1 −C6 アルキルを表し、R13はC1−C6 アルキルを表し、そしてnは1を表し、mが0を表す化合物が好ましい。
【0020】
Yが基O−Xを表し、
mが0であって、nが1であり、
1 はC1 −C4 アルキルもしくはC5−C6 シクロアルキルを表し、
2 、R11及びR13が同一であるかもしくは異なっており、そしてC1−C6 アルキルを表し、R3 乃至R8 は水素を表し、そしてXが水素、COR11もしくはR13を表し、その場合R11及びR13が上で定義した通りである、一般式(I)の化合物は、本発明の組成物に用いるのに極めて特に好ましい。
【0021】
さらに、mが0であってnが1であり、R1 はC1 −C4 アルキルを表し、R2及びR3
はそれらが結合している原子と一緒になって6員のピペラジン環を形成し、R4 乃至R8は水素を表し、そしてXは水素もしくはR13を表し、その場合R13はC1 −C4アルキルを表す一般式(I)の化合物は、本発明組成物に用いるのに極めて特に好ましい。
【0022】
2 及びR3 は、それらが結合している原子と一緒になって、場合により置換された単環式環を形成する化合物の例として下記のものを挙げることができよう:
【0023】
【化2】

【0024】
2 及びR3 が環を形成しない化合物の例として下記のものを挙げることができよう:
【0025】
【化3】

【0026】
一般式(I)の化合物は、知られているか、又は広く知られた方法及び工程で製造することができる(例えば、Cesare Ferri,Reaktionen der organischen Synthese[Reactions of Organic
Synthesis]、Georg Thieme Verlag Stuttgart,1978,p.223 and p.450,及びEPA 0 289 842参照)。
【0027】
本発明組成物中に含まれる活性化合物は、明確に言えば昆虫及びマダニを防ぐように皮膚上に塗る忌避剤として既に用いられている。
【0028】
本発明化合物を用いることの実質的な利点は、それらの化合物の皮膚、植物及び環境に対する高い適合性と、これらの化合物の概して低い毒性とである。
【0029】
戸外にとどまる場合には、蚊に備えて保護されることがさらに望ましい。蚊は、一方では迷惑なものと見なされ、他方では、とりわけ熱帯地方で、それらが刺すことによってマラリア、各種のウイルス、糸状虫及び寄生虫等の病気を運ぶことができよう。本発明組成物は、ただ一つの組成物で扁形動物の感染の予防と蚊よけとを同時に可能にする。このように、二つの異なる、多分相いれない組成物を皮膚に同時に使用する必要性が回避される。
【0030】
活性化合物のほかに、本発明組成物は、局所施用用の製剤に用いられる通例の助剤及び添加剤の全てを含んでいてもよい。
【0031】
活性化合物は、活性化合物そのまま又は適切な製剤の形態で、経皮的に投与するか、又は活性化合物を含む成型品、例えば細片、板、テープ、首輪、耳への下げ札、肢バンドもしくはマーク用装置の助けをかりて投与する。
【0032】
皮膚への投与は、例えば入浴、浸漬、噴霧、注加(pouring−on)もしくは磨り付け(spotting−on)、洗浄、髪洗いもしくは振り掛け (powdering)の形態で行う。
【0033】
適切な製剤としては次のものが挙げられる:
希釈した後に投与するための液剤もしくは濃厚液、皮膚に使用するための液剤、注加製剤
(pour−on formulations)、ゲル剤;
皮膚に投与するためのエマルジョン及び懸濁剤、そしてまた半固体製剤;
活性化合物を軟膏基剤又は水中油滴型エマルジョン基剤もしくは油中水滴型エマルジョン基剤に混和した製剤;
粉剤、活性化合物を含む成型品等の個体製剤。
【0034】
皮膚に使用するための液剤は、一滴ずつ施用するか、塗布するか、噴出させるか、もしくは噴霧するか、又は浸漬、入浴もしくは洗浄により施用する。
【0035】
液剤は、適切な溶媒に活性化合物を溶解させ、そして適切であれば、可溶化剤、酸類、塩基類、緩衝塩類、酸化防止剤、防腐剤等の添加剤を加えて製造する。
【0036】
適切な溶媒としては、生理学的に許容される溶媒、例えば水;エタノール、ブタノール、ベンジルアルコール、グリセリン等のアルコール類;炭化水素類、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール及びN−メチルピロリドン、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
適切であれば、活性化合物を生理学的に許容される植物油もしくは合成油に溶解させることもできる。
【0038】
適切な可溶化剤としては、主要な溶媒への活性化合物の溶解を促進するか、又は活性化合物の沈殿を防止する溶媒が挙げられる。可溶化剤の例は、ポリビニルピロリドン、ポリエトキシ化ひまし油及びポリエトキシ化ソルビタンエステル類である。
【0039】
適切な防腐剤は、ベンジルアルコール、トリクロロブタノール、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類もしくはn−ブタノールである。
【0040】
液剤を製造する際に、増粘剤を加えると有利であろう。適切な増粘剤は、ベントナイト、コロイドシリカ、アルミニウムモノステアレート等の無機増粘剤、又はセルロース誘導体、ポリビニルアルコール類並びにそれらの共重合体、アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類である。
【0041】
皮膚に施用するかもしくは上塗するゲル剤は、上で説明した通りに製造した液剤に、軟膏のような硬さを有する透明な組成物が形成されるような量の増粘剤を加えて製造する。用いる増粘剤は上で別に述べた増粘剤である。
【0042】
皮膚の限られた領域に注加製剤及び磨り付け製剤を注ぐかもしくは噴出させると、活性化合物は体の表面上で分散する。
【0043】
注加製剤及び磨り付け製剤は、適切な皮膚に適合する溶媒もしくは溶媒混合物に活性化合物を溶解するか、懸濁させるか、もしくは乳化させて製造する。適切であれば、着色剤、酸化防止剤、光安定剤(photostabilizers)もしくは粘着付与剤等の他の助剤を加える。
【0044】
適切な溶媒としては、水、アルコール類、グリコール類、ポリエチレングリコール類、プロピレングリコール類、グリセリン、芳香族アルコール類、例えばベンジルアルコール、フェニルエタノール、フェノキシエタノール、エステル類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸ベンジル、エーテル類、例えばジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコ−ルアルキルエーテル、ケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン、芳香族及び/又は脂肪属炭化水素
類、植物油もしくは合成油、DMF、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、2−ジメチル−4−オキシ−メチレン−1,3−ジオキソランが挙げられる。
【0045】
着色剤は、溶解もしくは懸濁し得ると共に、動物用に承認された着色剤の全てである。
【0046】
助剤としては、展着油(spreading oils)、例えばミリスチン酸イソプロピル、ペラルゴン酸ジプロピレングリコール、シリコーン油、脂肪酸エステル類、トリグリセリド類もしくは脂肪アルコール類が挙げられる。
【0047】
酸化防止剤は、亜硫酸塩もしくはメタ重亜硫酸塩、例えばメタ重亜硫酸カリウム;アスコルビン酸、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロールである。
【0048】
光安定剤の例は、ベンゾフェノン類及びノバンチゾル酸(novantisolic acid)の部類からの物質である。
【0049】
粘着付与剤は、例えばセルロース誘導体、デンプン誘導体、ポリアクリレート類;アルジネート、ゼラチン等の天然重合体である。
【0050】
エマルジョンは油中水滴型か水中油滴型のいずれかである。
【0051】
それらは、適切な乳化剤と、適切であれば他の助剤、例えば着色剤、生体吸収促進剤、防腐剤、酸化防止剤、光安定剤及び増粘物質を用いて、活性化合物を疎水性相もしくは親水性相に溶解させ、そしてこの相を他相の溶媒と均質化して製造する。
【0052】
適切な疎水性相(油類)としては、パラフィン油、シリコーン油;天然の植物油、例えばゴマ油、扁桃油、ひまし油;合成トリグリセリド、例えばカプリル/カプリン酸ビグリセリド、鎖長C8-12の植物性脂肪酸もしくは特別に選択された別の天然脂肪酸とトリグリセリドとの混合物、ヒドロキシ基を含み得る飽和もしくは不飽和脂肪酸からなる部分グリセリド混合物、C8 /C10脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドが挙げられる。
【0053】
脂肪酸エステル類、例えばステアリン酸エチル、アジピン酸ジ−n−ブチリル、ラウリン酸ヘキシル、ペラルゴン酸ジプロピレングリコール;鎖長C16−C18の飽和脂肪アルコール類と中位の鎖長を有する枝分れした脂肪酸からなるエステル類、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、鎖長C12−C18の飽和脂肪アルコール類のカプリル/カプリン酸エステル類、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸オレイル、オレイン酸デシル、オレイン酸エチル、乳酸エチル;ろうのような脂肪酸エステル類、例えばフタル酸ジブチル、アジピン酸ジイソプロピル、後者、とりわけイソトリデシルアルコール、2−オクチルドデカノール、セチルステアリルアルコールもしくはオレイルアルコール等の他の脂肪アルコールに関連するエステル混合物。
【0054】
脂肪酸、例えばオレイン酸及びその混合物。
【0055】
適切な親水性相としては、水、アルコール類、例えばプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール及びそれらの混合物が挙げられる。
【0056】
適切な乳化剤としては、下記のものが挙げられる:非イオン界面活性剤、例えばポリエトキシ化ひまし油、ポリエトキシ化ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、グリセリンモノステアレート、ポリエトキシステアレート、アルキルフェノールポリグリコールエーテル類;
両性界面活性剤、例えばN−ラウリル−β−イミノジプロピオン酸二ナトリウムもしくはレシチン;
アニオン界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、脂肪アルコールエーテル硫酸塩、及びモノ/ジアルキルポリグリコールエーテルオルトリン酸エステルのモノエタノールアミン塩;
カチオン界面活性剤、例えばセチルトリメチルアンモニウムクロリド。
【0057】
その他の適切な助剤としては、粘度を増加させると共にエマルジョンを安定化する物質、例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース及びその他のセルロース並びにデンプン誘導体、ポリアクリレート、アルジネート、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール類、ワックス、コロイドシリカ、もしくは列挙した物質の混合物が挙げられる。
【0058】
懸濁剤は、液体賦形剤に活性化合物を懸濁させ、適切であれば他の助剤、例えば湿潤剤、着色剤、生体吸収促進剤、防腐剤、酸化防止剤及び光安定剤を加えて製造する。
【0059】
適切な液体賦形剤としては、全ての均質な溶媒及び溶媒混合物が挙げられる。
【0060】
適切な湿潤剤(分散剤)としては、上で詳述した界面活性剤が挙げられる。
【0061】
その他の適切な助剤としては、上で詳述した助剤が挙げられる。
【0062】
皮膚に投与するための半固体製剤は、それらが比較的高い粘度を有する点のみが上述の懸濁剤及びエマルジョンと相違する。
【0063】
固体製剤を製造するには、活性化合物を適切な賦形剤と混合し、適切であれば助剤を加え、この混合物を所望のように製剤化する。
【0064】
適切な賦形剤としては生理学的に許容し得る固体の不活性物質の全てが挙げられる。無機及び有機物質がこの目的に適している。無機物質は例えば塩化ナトリウム;炭酸カルシウム、重炭酸塩等の炭酸塩、酸化アルミニウム、シリカ、クレー、沈降シリカもしくはコロイドシリカ及びリン酸塩である。
助剤は、上で既に詳述した防腐剤、酸化防止剤及び着色剤である。
【0065】
その他の適切な助剤は潤滑剤及び滑剤(glidants)、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ベントナイト類である。
【0066】
例えば水泳、衣類の洗濯もしくは魚釣りの際に長い間水と接触した後でも、前述の保護剤が十分な保護作用を有していることがさらに望ましい。そのために、本発明組成物は、撥水性物質もしくは防水性物質を追加的に含有させることができよう。
【0067】
適切な防水性物質は、太陽からのUV放射から使用者を保護する日よけ組成物に既に用いられている(例えばUS 5 518 712及びUS 4 810 489)。ここで、使用者が泳いだ後、大量に汗をかいているとき等でも日よけ作用を維持させようと考える。前述の防水性物質もしくは撥水性物質及び昆虫忌避剤を含む日よけ組成物は既に知られている(US 5 716 602)。しかしながら、駆虫剤を含む組成物はこれまで記述されたことがない。
【0068】
従って、防水性物質は、本発明組成物に含まれていてもよい。これらは脂肪に溶解する
が水には不溶な物質であり、組成物の皮膚への付着を改善する化合物である。
【0069】
皮膚保護製品は、防水性成分として、例えばポリビニルピロリドン類、ポリアクリレート類、シリコーン類等の重合体1乃至50重量%を含んでいてもよい。
【0070】
局所施用組成物は、化粧品製造用の公知の方法に従って、噴霧液、液剤、クリーム、軟膏又は層形成もしくは膜形成組成物として製剤化することができる(Schrader,K.(1979)Grundlagen und Rezepturen der Kosmetika[Principles of and recipes for cosmetics],Dr.Alfred Huethig Verlag,Heiderberg)。
【0071】
使用する際に、本発明による製剤(formulation)は、使用者に適切な量で、均等に、皮膚上に切れ目なしに塗る。
【0072】
本発明組成物は、これらの属の寄生虫による動物の感染を防止するための、動物に対する使用にも勿論適している。本組成物は、ペット、例えばいぬ及びねこ、並びに経済的に有用な動物、例えば牛、豚、羊等にも使用し得る。
【0073】
本発明組成物を用いる場合、皮膚のcm2 当たり、通常0.03〜1mg、好ましくは0.03〜0.1mg、そして特に好ましくは0.04〜0.06mgの本活性化合物を施用する。このことは皮膚に侵入する蠕虫及びその幼若段階に対して予防処置を施すことになる。使用者が水中に比較的長時間とどまる場合、活性化合物を繰り返して施用しなければならない。
【0074】
後段の実施例は、本発明組成物を具体的に説明するけれども、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【実施例】
【0075】
生物学的実施例
マンソン住血吸虫のセルカリア(Schistosoma mansoni cercariae)に対する活性
[活性化合物の最終濃度500μl/l]
10mlの水の中で巻貝(Biomphalaria glabrata)のそれぞれを8匹のミラシジウム(miracidia)と共に一晩保育して巻貝を感染させた。感染後約6〜9週間で、暗がりに保持した巻貝に光を照射した後に、群がるセルカリアを2時間以内で収集してセルカリアを得た。
【0076】
各バッチが約100匹〜150匹のセルカリアを含むような量のセルカリア含有水(1〜2ml、下段参照)をテストバッチに加えた。
【0077】
活性化合物5μlを25μlのPEG300と十分に混合した。次に水槽の水9mlを加え、このバッチを激しく振とうした。セルカリア懸濁液1mlを(一定の間隔で)添加した後、立体拡大鏡を用いて、それぞれの場合についてセルカリアの生き残りを直ちに観察した。活性化合物の活性を下記の格付けを用いて評価した:0=120分の全テスト期間中、効果なし;1=弱い効果(セルカリアは激減した移動性を示す。);2=良好な効果(セルカリアは僅かに移動性であるに過ぎず、湾曲している。);3=十分な効果(セルカリアは完全に動かない。)。
【0078】
本発明による異なる化合物の評価:
【0079】
【化4】

【0080】
【化5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Ia)乃至(Id)
【化1】

の少なくとも1種の化合物を含むことを特徴とする、蠕虫類の寄生生物を阻止するための組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の式(Id)の化合物を含むことを特徴とする、蠕虫類の寄生生物を阻止するための組成物。
【請求項3】
蠕虫類の寄生生物を阻止するための組成物を製造するための、請求項1に記載の式(Ia)乃至(Id)の化合物の使用。
【請求項4】
請求項1に記載の式(Ia)乃至(Id)の化合物が増量剤及び/又は界面活性剤と混合されることを特徴とする、請求項3に記載の使用。

【公開番号】特開2013−35868(P2013−35868A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223263(P2012−223263)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【分割の表示】特願2002−506737(P2002−506737)の分割
【原出願日】平成13年6月25日(2001.6.25)
【出願人】(508054909)サルテイゴ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (1)
【Fターム(参考)】