ヒト成長ホルモンの結晶およびその調製方法
【課題】安定かつ長期に作用するhGHが得られるヒト成長ホルモンの結晶を提供すること。
【解決手段】本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の安定な長期放出結晶およびこのような結晶を含む組成物または処方物に関する。本発明は、さらに、これらの結晶および組成物の生成方法を提供する。本発明は、さらに、これらの結晶および組成物または処方物を使用したヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する個体の治療方法を提供する。ヒト成長ホルモンもしくはヒト成長ホルモン誘導体の結晶または結晶を含む組成物あるいは処方物は、いくつかの利点(1週間に1回の投与能力、即時使用できる結晶懸濁形態、安全性、有効性、純度、安定性、再懸濁可能性、および短時間でのシリンジ利用可能性が含まれる)を有する。
【解決手段】本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の安定な長期放出結晶およびこのような結晶を含む組成物または処方物に関する。本発明は、さらに、これらの結晶および組成物の生成方法を提供する。本発明は、さらに、これらの結晶および組成物または処方物を使用したヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する個体の治療方法を提供する。ヒト成長ホルモンもしくはヒト成長ホルモン誘導体の結晶または結晶を含む組成物あるいは処方物は、いくつかの利点(1週間に1回の投与能力、即時使用できる結晶懸濁形態、安全性、有効性、純度、安定性、再懸濁可能性、および短時間でのシリンジ利用可能性が含まれる)を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶およびこれを含む組成物または処方物に関する。さらに、本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶の生成方法を提供する。本発明の結晶は、特に、ヒト成長ホルモン欠損症に関連するか、またはヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する哺乳動物の治療方法で有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ソマトトロピンすなわち、成長ホルモン(「GH」))は、内分泌系の主な腺(腺下垂体)によって脳内で合成および分泌される刺激ホルモンクラスを含む哺乳動物タンパク質である。腺下垂体によるGHおよび他の刺激ホルモンの分泌により、体内の他の内分泌腺および組織中の細胞の活動が制御される。詳細には、GHは、下垂体前葉の成長ホルモン産生細胞によって分泌され、IGF−1(細胞分裂を調節するタンパク質)を合成および分泌するように肝臓および他の組織を刺激するように機能し、代謝過程を制御し、遊離状態で存在するか、IGFBP−1〜6と呼ばれる6つの他のタンパク質のうちの1つと結合する。それ自体の分泌過程は、ソマトリベリン(GH放出を促進する)およびソマトスタチン(GH放出を阻害する)の相反する作用によって調整される。
【0003】
ヒト成長ホルモン(「hGH」)は、細胞および器官の成長の制御および種々の加齢段階での生理学的機能において重要なホルモンとして作用するので、特に興味深い。例えば、hGHの過剰産生により、小児では巨人症を発症し、成人では先端巨大症を発症するのに対し、過小産生により、小児では、小人症(Maurasら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,85(10),3653−3660(2000);Frindikら、Hormone Research,51(1),15−19(1999);Legerら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,83(10),3512−3516(1998))Turner‘s Symdrome(females only)(Bramswig,Endocrine,15(1),5−13(2001);Pasquinoら、Hormone Research,46(6),269−272(1996))、およびchronic renal insufficiency(Carrollら、Trends in Endocrinology and Metabolism,11(6),231−238(2000);Uelandら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,87(6),2760−2763(2002);Simpsonら、Growth Hormone & IGF Research,12,1−33(2002))を発症する。成人では、hGH欠損症は、タンパク質、炭水化物、脂質、無機質、および結合組織の代謝過程に影響を与え、筋肉、骨、または皮膚の萎縮症を発症させ得る(Mehls and Haas,Growth Hormone &IGF Research,Supplement B,S31−S37(2000);Fineら、J.Pediatrics,136(3),376−382(2000);Motoyamaら、Clin.Exp.Nephrology,2(2),162−165(1998))。成長不全によって特徴づけられる他のhGH欠損障害には、AIDS消耗症候群(Hirschfeld,Hormone Research,46,215−221(1996);Tritosら、Am.J.Medicine,105(1),44−57(1998);Mulliganら、J.Parenteral and Enteral Nutrition,23(6),S202−S209(1999);Torres and Cadman,BioDrugs,14(2),83−91(2000))、およびPraderwilli syndrome(Ritzen,Hormone Research,56(5−6),208(2002);Eiholzerら、Eur.J.Pediatrics,157(5),368−377(1998))が含まれる。
【0004】
今日まで、ヒトのhGH欠損症の治療計画は、主に、組換えDNAテクノロジーによって作製された精製hGHの皮下注射にフォーカスしている。この治療薬は、カートリッジ中の溶液または使用時に再構成が必要な凍結乾燥粉末のいずれかとしてパッケージングされている。注射頻度は、治療をうける疾患および使用される市販の製品に依存して変化する。例えば、小人症は、組換えhGHの毎日の皮下注射によって治療する。
【0005】
溶液中でのタンパク質の固有の不安定性により、hGHの迅速な輸送経路として皮下投与を使用する必要がある。この不安定性は、タンパク質のアミノ酸配列内の特定の位置での重要な分子内架橋の切断、言い換えれば、患者の細胞表面によって認識および関連する不可欠な三次元構造の破壊に起因する。hGHの切断機構または分解機構は、主に、メチオニン残基の酸化または溶解時のアスパラギン酸残基の脱アミド化、それによるタンパク質の不活化によって調整される。この脆弱性により、安定かつ長期に作用し、かつ皮下だけでなく他の従来の投薬経路(経口経路、真皮経路、および静脈内経路など)によっても輸送することができるhGH組成物または処方物が当該分野で必要とされる。
【0006】
この必要性に取り組むための多数の市販のhGH製品が開発されている。例えば、Nutropin Depot(登録商標)は、ポリラクチド−コグリコリド(PLG)ミクロスフィア中に包埋した組換えヒト成長ホルモン(rhGH)の注射用懸濁液である(http://www.gene.comを参照のこと)。rhGHおよびPLGに加えて、ミクロスフィアは、酢酸亜鉛および炭酸亜鉛成分も含む。投与前に、固体材料を、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリソルベート、塩化ナトリウム、および水を含む水溶液で再構成しなければならない。ほとんどがポリマーから構成されるこの懸濁液を、1ヶ月に1回または2回投与し、注射には21ゲージのニードルが必要である。ミクロスフィアのサイズおよび製品の種々の性質により、注射部位に副作用を起こし、小節、紅斑、疼痛、紫斑、痒み、脂肪細胞萎縮症、および腫脹を生じ得る(http://www.genentech.com/gene/products/information/opportunistic/nutropin−depot/index.jspを参照のこと)。
【0007】
開発されたが、その後製造中止になった別のhGH製品はAlbutropinTM(長時間作用型の遺伝的に産生されたヒトアルブミンとヒト成長ホルモンとの融合タンパク質)である(http://www.hgsi.com/products/ albutropin.htmlを参照のこと)。この製品は、長期循環半減期を示し、可溶性の天然hGHの半減期よりもおよそ50%長いといわれている。AlbutropinTMは、典型的には、1週間を基本として注射によって輸送され、身体からのクリアランス後長期にわたりIGF−1レベルを刺激するといわれている。この製品の生物学的作用は、現在利用可能な成長ホルモン療法の生物学的作用と類似する。
【0008】
開発された別の製品は、Infitropin CRTM(ポリエチレングリコール抱合hGH分子から構成されるhGHの処方物)であった。この抱合hGHは1週間に1回注射する必要があり、有意なバースト効果(burst effect)を起こすことなく連続的に放出されるといわれていた(Rossら、J.Biol.Chem.,271(36),21696−21977(1996))。しかし、この製品は製造中止になった。
【0009】
米国特許第5,981,485号および同第6,448,225号は、再構成工程を必要とせず、かつ毎日の注射によって投与されるといわれているhGHの水性処方物を言及している。このような処方物は、典型的には、hGH、緩衝液、非イオン性界面活性剤、および任意選択的に中性塩、マンニトール、または防腐剤を含む。
【0010】
ヒドロゲル(Katakamら、J.Controlled Release,49(1),21−26(1997))、リポソーム、油性乳濁液、および生分解性ポリマーミクロスフィアなどの種々の他の薬物輸送テクノロジーがhGHの薬物放出の目的で使用されている。しかし、得られた処方物は、薬物のバースト放出を示し、厳しい条件を使用し、製造が複雑なものもある。ミクロスフィアの生成に使用するプロセスは、高温、界面活性剤、有機溶媒、および水性溶媒/有機溶媒境界(これらは全てタンパク質を変性させる)などの条件を使用する傾向があるので、これは、特に、DL−乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)ミクロスフィアテクノロジーに基づいたhGH処方物についても当てはまる(Herbergerら、Proc.Intl.Symp.Controlled Release of Bioactive Materials,23,835−836(1996);Kimら、Intl.J.Pharmaceutics,229(1−2),107−116(2001))。
【0011】
いくつかの上記調製物は、hGHを凍結乾燥状態で保存する必要があり、これは時間がかかり、かつ高価なプロセスであり得る。米国特許第5,780,599号および同第6,117,984号は、hGHの2価のカチオン結晶および凍結乾燥工程を必要としないhGHの2価のカチオン結晶の生成方法を言及している。
【0012】
従来のhGH製品の欠点(保存および注射時の不安定性、in vivoでの半減期の短さ、バースト効果、経口生物学的利用能の欠如、ならびに投与の困難さおよび頻度が含まれる)に取り組む努力にもかかわらず、改良されたhGH調製物が必要である。この必要性に取り組むために、本発明は、安定かつ長期に作用するhGHが得られるヒト成長ホルモンの結晶を有利に提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の安定かつ長期に作用する便利で患者に優しい結晶に関する。本発明は、さらに、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶の組成物(その薬学的に許容可能な組成物が含まれる)を提供する。本発明は、さらに、このような結晶およびこのような結晶を含む組成物の調製方法を提供する。本発明の結晶および組成物は、ヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する個体の治療方法で有利に使用される。
【0014】
ヒト成長ホルモンもしくはヒト成長ホルモン誘導体の結晶または結晶を含む組成物あるいは処方物は、いくつかの利点(1週間に1回の投与能力、即時使用できる結晶懸濁形態、安全性、有効性、純度、安定性、再懸濁可能性、および短時間でのシリンジ利用可能性が含まれる)を有する。本発明の他の目的(従来のhGH調製物と比較したhGH結晶およびこれを含む組成物または処方物の改良が含まれる)は、本明細書中の開示を考慮して当業者に認識される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶。
(項目2)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の1価のカチオン結晶。
(項目3)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のプロタミン結晶。
(項目4)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶。
(項目5)
前記1価のカチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される、項目2に記載の1価のカチオン結晶。
(項目6)
前記1価のカチオンがナトリウムである、項目5に記載の1価のカチオン結晶。
(項目7)
前記結晶の哺乳動物への単回投与によって、
(a)約0.3ng/ml〜約2,500ng/ml hGH、
(b)約0.5ng/ml〜約1,000ng/ml hGH、および
(c)約1ng/ml〜約100ng/ml hGHからなる群から選択される該哺乳動物のin vivoでの血清hGH濃度を、
(i)投与後約0.5時間と約40日間との間、
(ii)投与後約0.5時間と約10日間との間、
(iii)投与後約0.5時間と約7日間との間、および
(iv)投与後約0.5時間と約1日間との間からなる群から選択される期間で得られる、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目8)
前記結晶の哺乳動物への単回投与によって、
(a)約5ng/ml〜約2,500ng/ml、および
(b)約100ng/ml〜約1,000ng/mlからなる群から選択される投与前の哺乳動物のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivoでの血清IGF−1上昇を、
(i)投与後約0.5時間と約40日間との間、および
(ii)投与後約0.5時間と約7日間との間からなる群から選択される期間で得られる、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目9)
前記結晶の相対生物学的利用能が、同一の投与経路を介して輸送される同一用量の可溶性hGHと比較して少なくとも50%またはそれ以上であり、該生物学的利用能を該可溶性hGHおよび該結晶についてのin vivoでの総血清hGH濃度のAUCによって測定された、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目10)
前記哺乳動物がヒトである、項目7または項目8に記載の結晶。
(項目11)
前記結晶が、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体あたり約1個から約500個までのカルシウム分子を含む、項目1に記載の結晶。
(項目12)
前記結晶が、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体あたり約1個から約500個までの1価のカチオンを含む、項目2に記載の結晶。
(項目13)
前記結晶が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、およびグルコン酸カル
シウムからなる群から選択されるカルシウム塩を含む、項目1に記載の結晶。
(項目14)
前記カルシウム塩が酢酸カルシウムである、項目13に記載の結晶。
(項目15)
前記結晶が、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択されるナトリウム塩を含む、項目6に記載の結晶。
(項目16)
前記ナトリウム塩が酢酸ナトリウムである、項目15に記載の結晶。
(項目17)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶および賦形剤を含む組成物において、該結晶が、
(a)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、
(b)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の1価のカチオン結晶、
(c)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体プロタミン結晶、および
(d)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶からなる群から選択される、組成物
(項目18)
前記結晶および前記賦形剤が前記組成物中にhGH:賦形剤のモル比が約1:10〜約1:0.125で存在する、項目17に記載の組成物。
(項目19)
前記賦形剤が、アミノ酸、塩、アルコール、炭水化物、タンパク質、脂質、界面活性剤、ポリマー、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記賦形剤が、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、グルコン酸カルシウム、ポリアミノ酸、ポリエチレングリコール、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記賦形剤が、プロタミン、ポリアルギニン、ポリエチレングリコール、およびその混合物からなる群から選択される、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記組成物中のヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の濃度が、
(a)約0.1mg/mlと約100mg/mlとの間、
(b)約1mg/mlと約100mg/mlとの間、および
(c)約10mg/mlと約100mg/mlとの間、からなる群から選択される、項目17に記載の組成物。
(項目23)
ヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する哺乳動物を治療するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量の項目1、項目2、項目3、もしくは項目4のいずれか1項に記載の結晶または項目17に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
哺乳動物の体重増加を誘導する方法であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量の項目1、項目2、項目3、もしくは項目4のいずれか1項に記載の結晶または項目17に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目25)
前記哺乳動物が下垂体摘出ラットであり、週1回の注射による前記結晶の投与後の該ラットで誘導された体重増加が5%と約40%との間である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記障害が、成人成長ホルモン欠損症、小児成長ホルモン欠損症、プラダー・ウィリ症候群、ターナー症候群、短腸症候群、慢性腎機能不全、特発性低身長、小人症、下垂体性小人症、骨再生、女性不妊症、胎内発育遅延、AIDS関連悪液質、クローン病、および火傷からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記障害が小児成長ホルモン欠損症であり、前記方法により前記哺乳動物の年率換算の成長率が約7cmと約11cmとの間になる、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記結晶または組成物を、経口経路、非経口経路、皮下経路、または筋肉内経路によって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目29)
前記結晶または組成物を、27またはそれ以上のゲージのニードルを使用した皮下経路によって前記哺乳動物に投与する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記結晶または組成物を、無針注射器またはメタ用量注入ポンプによって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目31)
前記結晶または組成物を、
(a)3日毎に約1回、
(b)1週間に約1回、
(c)2週間毎に約1回、および
(d)1ヶ月毎に約1回からなる群から選択される時間治療計画によって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目32)
前記哺乳動物がヒトである、項目23または項目24に記載の方法。
(項目33)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化溶液とを混合する工程であって、該結晶化溶液が、カルシウム塩または1価のカチオン塩およびイオン性ポリマーを含み、該イオン性ポリマーがプロタミンまたはポリアルギニンである、工程、
(b)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶が生成されるまで約4℃と約37℃との間の温度で約12時間を超えてインキュベートする工程とを包含する、方法。
(項目34)
前記イオン性ポリマーがポリリジンである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記イオン性ポリマーが、任意の2つまたはそれ以上のプロタミン、ポリアルギニン、およびポリリジンの混合物である、項目33に記載の方法。
(項目36)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程、
(b)該結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程、
(c)該結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程と、
(d)該結晶化溶液にカルシウム塩または1価のカチオン塩を添加する工程と、
(e)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間の温度で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程、
(f)該ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶にイオン性ポリマーまたはイオン性小分子を添加する工程とを包含する、方法。
(項目37)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程、
(b)該結晶化溶液に脱イオン水を添加する工程、
(c)該結晶化溶液にイオン性小分子またはイオン性ポリマーを添加する工程、
(d)該結晶化溶液にカルシウム塩または1価のカチオン塩を添加する工程、
(e)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間の温度で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程とを包含する、方法。
(項目38)
前記方法が、工程(b)の後かつ工程(c)の前に、前記結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程を包含する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記カルシウム塩が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記カルシウム塩が酢酸カルシウムである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記1価のカチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記1価のカチオンがナトリウムである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記1価のカチオン塩が、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記1価のカチオン塩が酢酸ナトリウムである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記結晶化溶液がpH緩衝液をさらに包含する、項目33に記載の方法。
(項目46)
前記pH緩衝液のpHが、
(a)約pH6と約pH10との間、
(b)約pH7.0と約pH10との間、
(c)約pH6と約pH9との間、および
(d)約pH7.8と約pH8.9との間からなる群から選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記pH緩衝液が、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群か
ら選択される緩衝液である、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記沈殿剤が、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである、項目36または項目38に記載の方法。
(項目49)
前記非イオン性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ポリエチレングリコールの分子量が、
(a)約200と約8000との間の分子量、
(b)約6000の分子量、
(c)約4000の分子量、および
(d)約3350の分子量からなる群から選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記ポリエチレングリコールが、前記結晶化溶液中に、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で存在する、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記沈殿剤が、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目38に記載の方法。
(項目53)
前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、
(a)約1mg/mlと約1,000mg/mlとの間の濃度、
(b)約2mg/mlと約50mg/mlとの間の濃度、
(c)約10mg/mlと約25mg/mlとの間の濃度からなる群から選択される濃度で存在する、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記カルシウム塩または前記1価のカチオン塩が、前記結晶化溶液中に、
(a)約0.01Mと約1Mとの間の濃度、および
(b)約25mMと約205mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で存在する、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記結晶化溶液は、
(a)約33℃で約0.25日間と約2日間との間、
(b)約25℃で約0.25日間と約2日間との間、および
(c)約15℃で約0.25日間と約2日間との間からなる群から選択される時間および温度でインキュベートされる、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記イオン性小分子が、アミノ酸、ペプチド、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目57)
前記イオン性ポリマーが、プロタミン、ポリサッカリド、ポリアミノ酸、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリグルタミン酸塩、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目58)
前記イオン性ポリマーが、プロタミンまたはポリアルギニンである、項目57に記載の方法。
(項目59)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記結晶化溶液は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約4℃と約40℃の間の温度で約4時間と約48時間との間インキュベートされる、項目36または項目37に記載の方法。
(項目60)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目61)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目62)
前記結晶化緩衝液が、Tris−HCl緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、Bis−Tris緩衝液、AMP緩衝液、AMPD緩衝液、AMPSO緩衝液、ビシン緩衝液、エタノールアミン緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、TAPS緩衝液、タウリン緩衝液、トリアン緩衝液、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目63)
項目36に記載の工程(a)または項目37に記載の工程(a)において、前記結晶化緩衝液が、前記結晶化溶液中に、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目64)
工程(a)において、前記結晶化緩衝液のpHが、
(a)約pH3と約pH10との間、
(b)約pH6と約pH9との間、および
(c)約pH7.5と約pH10との間からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目65)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記結晶化溶液中の結晶化緩衝液のpHにより、前記溶液が、
(a)約pH3と約pH10との間、
(b)約pH6と約pH9.5との間、および
(c)約pH7.5と約pH9.5との間からなる群から選択されるpHとなる、項目36または項目37に記載の方法。
(項目66)
前記緩衝液が、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される、項目64または項目65に記載の方法。
(項目67)
前記酢酸カルシウムが、
(a)約pH3.0と約pH9.0との間、および
(b)約pH7.0と約pH8.6との間からなる群から選択されるpHを有する水溶液の形態である、項目40に記載の方法。
(項目68)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記酢酸カルシウムが、
(a)約0.1mMと約205mMとの間の濃度、および
(b)約85mMと約100mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で前記結晶化溶液中に存在する、項目40に記載の方法。
(項目69)
前記酢酸ナトリウムが、
(a)約pH3.0と約pH9.0との間、および
(b)約pH7.0と約pH8.6との間からなる群から選択されるpHを有する水溶液の形態である、項目44に記載の方法。
(項目70)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記酢酸ナトリウムが、
(a)約0.5mMと約800mMとの間の濃度、および
(b)約100mMと約500mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で前記溶液中に存在する、項目45に記載の方法。
(項目71)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記溶液は、約4℃と約37℃との間の温度で約1日間と約2日間との間インキュベートされる、項目36または項目37に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、光学顕微鏡によって画像化した860mMリン酸アンモニウム(pH8.9)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、光学顕微鏡によって画像化した390mMクエン酸ナトリウムの存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例2を参照のこと。
【図3】図3は、光学顕微鏡によって画像化した600mM第二リン酸ナトリウムおよび100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例3を参照のこと。
【図4】図4は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウムおよび100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させ、硫酸プロタミン(1mg/ml)で同時結晶化したhGH結晶を示す。実施例4を参照のこと。
【図5】図5は、時間の関数としておよび280nmでモニタリングした、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、および酢酸カルシウム/プロタミン沈殿剤から作製したhGHの溶解性を示す。実施例5を参照のこと。
【図6】図6は、光学顕微鏡によって画像化した10%(v/v)イソプロパノール、85mM酢酸カルシウム、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例6を参照のこと。
【図7】図7は、光学顕微鏡によって画像化した5%(v/v)イソプロパノール、85mM塩化カルシウム、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例7を参照のこと。
【図8】図8は、光学顕微鏡によって画像化した10%(v/v)エタノール、10%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例8を参照のこと。
【図9】図9は、時間(分)の関数として280nmでモニタリングした実施例6〜8にしたがって成長させたhGH結晶の溶解性を示す。実施例9を参照のこと。
【図10】図10は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例10を参照のこと。
【図11】図11は、光学顕微鏡によって画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例11を参照のこと。
【図12】図12は、光学顕微鏡によって画像化した85mM塩化カルシウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例12を参照のこと。
【図13】図13は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させ、硫酸プロタミン(1mg/ml)で同時結晶化したhGH結晶を示す。実施例13を参照のこと。
【図14】図14は、光学顕微鏡によって画像化した125mM酢酸カルシウム、6%(v/v)PEG−MME−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例14を参照のこと。
【図15】図15は、時間(分)の関数として280nmでモニタリングした実施例10〜14にしたがって成長させたhGH結晶の溶解性を示す。実施例15を参照のこと。
【図16】図16は、ラットあたり2.5mg/kgの可溶性または結晶hGHの単回皮下投与から24時間後にサンプリングした雌Sprague−Dawleyラットにおける市販のhGH(可溶性hGH)および実施例10にしたがって調製したhGFH(結晶hGH)の血清レベル(ng/ml)を示す。t=0、0.5、1、2、4、6、8、12、および24時間で血清レベルを測定した。実施例16を参照のこと。
【図17】図17は、種々の量の硫酸プロタミンの添加時のhGH結晶(85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で形成)の溶解特性を示す。次いで、hGH結晶のこれらの種々の処方物を、溶解緩衝液に添加し、1時間静置し、その後上清中の可溶性hGHの濃度をRP−HPLC法(Area)によって測定した。実施例17を参照のこと。
【図18A】図18Aは、TEMよって長手方向に画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例18を参照のこと。
【図18B】図18Bは、TEMよって断面を画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例18を参照のこと。
【図19A】図19Aは、ラットあたり6.7mg/kgのhGHの7日間にわたる毎日の皮下投与または7日間にわたる単回投与のいずれかから168時間後(0〜72時間を示す)にわたりサンプリングした雌Sprague−Dawleyラットの第3群〜第5群および第9群におけるhGHの血清レベル(ng/ml)を示す。実施例22および表7〜12を参照のこと。
【図19B】図19Bは、ラットあたり6.7mg/kgのhGHの7日間にわたる毎日の皮下投与(第2群)または7日間の第1日目における単回皮下投与(第4群および第9群)のいずれかから8日後にわたる選択処方物(第2群、第4群、および第9群)の雌Sprague−Dawleyラットの体重増加(g)を示す。実施例22および表13を参照のこと。
【図20A】図20Aは、表16にしたがって、可溶性hGH(第1群)、ポリアルギニンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清hGH濃度を示す。実施例23を参照のこと。
【図20B】図20Bは、表18にしたがって、可溶性hGH(第1群)、ポリアルギニンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清IGF−1濃度を示す。実施例23を参照のこと。
【図21A】図21Aは、表20にしたがって、可溶性hGH(第1群)、プロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=3:1)(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=2:1)(第3群)を毎日皮下投与した幼若雌カニクイザルについての時間の関数としての血清hGH濃度を示す。実施例24を参照のこと。
【図21B】図21Bは、表22にしたがって、可溶性hGH(第1群)、プロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=3:1)(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=2:1)(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清IGF−1濃度を示す。実施例24を参照のこと。
【図22】図22は、表25に従って、コントロール(第1群、7日間にわたり毎日1回)、可溶性hGH(第4群および第5群、7日間にわたり毎日1回)、および結晶hGH(第6群、第7群、第9群、および第10群、7日間にわたり1回)を皮下投与した雄Wistarラットの7日間の成長を示す。実施例25を参照のこと。
【図23】図23は、表26に従って、コントロール(第1群、7日間にわたり毎日1回)、可溶性hGH(第4群および第5群、7日間にわたり毎日1回)、および結晶hGH(第6群、第7群、第9群、および第10群、7日間にわたり1回)皮下投与した雄Wistarラットの7日間にわたる毎日の誘導体重増加(g)を示す。実施例25を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中の他で定義しない限り、本発明に関連して使用した科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するべきである。さらに、他の文脈で必要でない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるべきである。一般に、本明細書中に記載のカラムクロマトグラフィ、光学顕微鏡法、UV−VIS分光法、薬物動態学分析、組換えDNA法、ペプチドおよびタンパク質化学、核酸化学、および分子生物学と共におよびその技術で使用される用語は当該分野で周知であり、かつ一般的に使用されている用語である。
以下の用語は、他で示さない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0017】
用語「成長ホルモン(GH)」は、一般に、哺乳動物下垂体によって分泌される成長ホルモンをいう。完全なリストではないが、哺乳動物の例には、ヒト、類人猿、サル、ラット、ブタ、イヌ、ウサギ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、およびヤギが含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、哺乳動物はヒトである。
【0018】
「ヒト成長ホルモン(hGH)」は、天然のヒト成長ホルモンに特徴的なアミノ酸配列、構造、および機能を有するタンパク質を示す。本明細書中で使用される、「ヒト成長ホルモン(hGH)」には、天然のヒト成長ホルモンの任意のイソ型(分子量が5kDa、17kDa、20kDa、22kDa、24kDa、36kDa、および45kDaのイソ型が含まれるが、これらに限定されない)も含まれる(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998))。したがって、用語hGHには、天然のhGH(ソマトトロピン)の191個のアミノ酸配列およびN末端メチオニンを含む192個のアミノ酸配列(Met−hGH)およびソマトレムが含まれる(米国特許第4,342,832号および同第5,633,352号)。生物源からの単離および精製または組換えDNA法によってhGHを得るとことができる。組換えDNAテクノロジーによって作製される場合、hGHは組換えヒト成長ホルモン(rhGH)と呼ぶ。Met−hGHは、典型的には、組換えDNA法によって調製する。
【0019】
用語「ヒト成長ホルモン誘導体」は、天然に存在するヒト成長ホルモンに類似のアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。用語「類似の」は、hGHの191個のアミノ酸配列またはMet−hGHの192個のアミノ酸配列と2%と100%との間で相同なアミノ酸配列をいう。本発明の種々の実施形態では、ヒト成長ホルモン誘導体は、hGHまたはMet−hGHの有機カチオン、生物学的に合成されたhGHまたはMet−hGHタンパク質の置換、欠失、および挿入変異型、翻訳後修飾hGHおよびMet−hGHタンパク質(脱アミド化、リン酸化、グリコシル化、アセチル化、凝集、および酵素切断反応が含まれる)(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998))、生物源由来の化学修飾hGHまたはMet−hGHタンパク質、hGHまたはMet−hGHに類似のアミノ酸配列を含むポリペプチドアナログおよび化学合成ペプチドを含む。
【0020】
hGHまたはMet−hGHを調製するために使用する方法には、生物源からの単離、組換えDNA法、合成化学経路、またはその組み合わせが含まれる。今日まで、hGHの異なるDNA配列をコードする遺伝子には、hGH−NおよびhGH−Vが含まれる(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998);Bennani−Baitiら、Genomics,29,647−652(1995))。
【0021】
用語「原子価」は、他の元素と組み合わされて原子の最外殻の電子数によって予想され、その原子と結合する(または置換する)ことができる水素原子(または任意の他の標準的な1価の元素)の数として示される元素の能力と定義する(Webster’s New World Dictionary of Science,Lindley,D.and Moore T.H.,Eds.,Macmillan,New York,New York,1998)。用語「1価のカチオン」および「2価のカチオン」は、それぞれ1つまたは2つの原子価状態を有する正電荷のイオンをいう。異なる原子価状態を有するカチオンは、事実上有機または無機であり得る。1価の無機カチオンの例には、アンモニウム(NH4+)および周期表の1族の元素(H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、およびFr+)が含まれ、2価の無機カチオンには、2族の元素(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、CO2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Mo2+、およびRa2+)が含まれる。
【0022】
「ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶」は、2価のカルシウムイオンの存在下で結晶化されたヒト成長ホルモンまたはその誘導体をいう。2価のカルシウムイオンを、カルシウム塩として結晶化溶液に導入する。好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約500個までのカルシウム分子を含む。より好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約140個までのカルシウム分子を含む。
【0023】
用語「カルシウム塩」には、カルシウムイオンとイオン結合を形成する無機および有機の対イオンまたは分子の両方が含まれる。異なるカルシウム塩の例には、酢酸カルシウム水和物、酢酸カルシウム1水和物、カルシウムアセチルアセトン水和物、L−アスコルビン酸カルシウム2水和物、カルシウムビス(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)、カルシウムビス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カルシウム2水和物、塩化カルシウム6水和物、塩化カルシウム水和物、クエン酸カルシウム4水和物、リン酸二水素カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化カルシウム水和物、カルシウムイオノフォアI、モリブデン酸カルシウム、硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸カルシウム水和物、酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれる。本発明の好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウムである。
【0024】
「ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の有機カチオン結晶」は、有機カチオンの存在下で結晶化したヒト成長ホルモンをいう。用語「有機カチオン」は、炭素を含む正電荷の原子または原子群をいう。有機カチオンの例には、第四級アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウム(TEA)、トリブチルメチルアンモニウム(TBuMA)、臭化エチルプロカインアミド(PAEB)、メトヨウ化アジドプロカインアミド(APM)、d−ツボクラリン、メトクリン、ベクロニウム、ロクロニウム、1−メチル−4−フェニルピリジニウム、コリン、およびN−(4,4−アキソ−n−ペンチル)−21−デオキシアジュマリニウム(APDA)が含まれる。
【0025】
hGHは凍結乾燥形態で市販されており、典型的には、組換えDNA法で製造されている。本発明によれば、hGHの結晶化は、一般に、hGHの緩衝化溶液の調製、精製および/または脱塩、溶液の透析および濃縮、ならびに溶液への1価または2価のカチオンもしくは塩の添加によって行われる。後者の工程により、hGHに結合した有機または無機カチオンが形成される。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態は、hGHまたはhGH誘導体の1価のカチオン結晶に関する。より好ましい実施形態では、1価のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、1価のカチオンはナトリウムである。最も好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約500個までのカチオン分子を含む。
【0027】
用語「1価のカチオン塩」には、1価のイオンとイオン結合を形成する無機および有機の対イオンまたは分子の両方が含まれる。好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウム塩である。より好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、ナトリウム塩は酢酸ナトリウムである。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のプロタミン結晶に関する。同様に、さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、hGHまたはhGH誘導体のポリアルギニン結晶に関する。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体化または同時結晶化したhGHまたはhGH誘導体の1価または2価の結晶を含む。より好ましくは、結晶は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体化または同時結晶化したナトリウム結晶である。
【0030】
hGHの可溶性形態を、種々の方法(逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)、および疎水性クロマトグラフィ(HIC)が含まれる)によって特徴づけることができる(Wuら、J.Chromatography,500,595−606(1990);「Hormone Drugs」,FDA publication,(1982))。他方では、hGHの結晶形態を、光学顕微鏡法およびX線回折によって特徴づけることができる。一般に、結晶化条件は、タンパク質結晶の形状(すなわち、球体、針状、棒状、平面(六方晶系および四角形)、長斜方形、立方体、両錐、および角柱からなる群から選択される形状)で決定される。
【0031】
本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶は、光学顕微鏡法を使用して画像化した場合、棒様形態または針様形態を形成している。1つの実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約0.1μmと約200μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約3μmと約100μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。より好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約10μmと約25μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物に関する。さらに別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約1:250〜約1:20でこのような組成物中に存在する。別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約3:1〜約1:10で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約1:10〜約1:0.125で存在する。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、ポリアルギニンまたはプロタミンで結晶化またはコーティングすることができる酢酸ナトリウムで成長させる。
【0033】
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶を、任意の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせることができる。本発明によれば、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、薬学的組成物中で使用される充填剤または充填剤の組み合わせとして作用する賦形剤である。このカテゴリーに含まれる好ましい賦形剤は、以下である:1)グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなどのアミノ酸、2)炭水化物(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなどのモノサッカライドなど)、3)ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなどのジサッカリド、4)マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなどのポリサッカリド、5)マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなどのアルジトール、6)グルクロン酸、ガラクツロン酸、7)メチルシクロデキストリン、およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、8)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム、ならびにリン酸アンモニウムなどの無機分子、9)酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩などの有機分子、10)アカシア、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロクサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシルエチレン誘導体、ソルビタン誘導体などの乳化剤または可溶化剤/安定剤、ならびに11)寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースおよびその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールなどの増粘剤。このような化合物の塩も使用することができる。さらに好ましい賦形剤群には、スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、イノシトール、ナトリウムおよびカリウム塩(酢酸、リン酸、クエン酸、およびホウ酸など)、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリリジン、およびポリアルギニンが含まれる。
【0034】
本発明の1つの実施形態では、賦形剤は、アミノ酸、塩、アルコール、炭水化物、タンパク質、脂質、界面活性剤、ポリマー、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、賦形剤は、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、グルコン酸カルシウム、ポリアミノ酸(ポリアルギニン、ポリリジン、およびポリグルタミン酸など)、ポリエチレングリコール、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、賦形剤は、プロタミン、ポリアルギニン、ポリエチレングリコール、およびその混合物からなる群から選択される。
【0035】
本発明のヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶を、キャリアまたは賦形剤(治療薬に添加した場合にその作用を促進するか改良する物質)と組み合わせることもできる(The On− Line Medical Dictionary,http://cancerweb.ncl.ac.uk/omd/index.html)。キャリアまたは賦形剤の例には、例えば、リン酸などの緩衝剤、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、または電解質(硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛片、コロイド状シリカ、マグネシウム、トリシリケート、セルロースベースの物質、およびポリエチレングリコールなど)が含まれる。ゲルベース形態のキャリアまたは賦形剤には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、およびウッドワックスアルコールが含まれ得る。
【0036】
さらにより好ましい実施形態では、賦形剤はプロタミンである。さらに、hGHまたはhGH誘導体およびプロタミンの結晶は、hGH:プロタミン比が約5:1〜約1:10(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。最も好ましくは、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約3:1と約1:10との間(w/w)である。別の実施形態では、この比は、約5:1と約40:1との間(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0037】
本発明の別の態様では、薬学的に許容可能な賦形剤は、ポリアミノ酸(ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリグルタミン酸が含まれる)からなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、賦形剤はポリリジンである。より好ましい実施形態では、ポリリジンの分子量は、1,500kDと約8,000kDとの間である。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体およびポリリジンの結晶は、hGH:ポリリジン比が約5:1〜約40:1(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約5:1〜約1:50(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0038】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、賦形剤はポリアルギニンである。より好ましい実施形態では、ポリアルギニンの分子量は、約15,000kDと約60,000kDとの間である。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体およびポリアルギニンの結晶は、hGH:ポリアルギニン比が約5:1〜約40:1(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、この比は、約12:1〜約3:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約5:1〜約1:50(w/w)である。別の実施形態では、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0039】
本発明の1つの実施形態は、約20mg/mlのhGHまたはhGH誘導体の結晶を含む注射用結晶懸濁液を含む。この懸濁液は、再懸濁の容易さ、ゆっくりとした沈殿、および約7日間の時間作用プロフィールによって特徴づけられる。これを、30ゲージのシリンジを使用して1週間に1回注射することができ、80%の有効負荷レベルが得られる。0.02%の凝集(SE−HPLC)および2.3%の関連タンパク質(RP−HPLC)のパラメーターを反映させたところ、この懸濁液は純粋である。この純度を、冷蔵条件下で少なくとも4ヶ月維持する。
【0040】
本発明の1つの実施形態は、個体に導入した場合に従来の可溶性hGHまたはhGH誘導体の処方物と比較して遅延した溶解挙動を示すことが特徴づけられたhGHまたはhGH誘導体の結晶に関する。本発明によれば、hGHまたはhGH誘導体の結晶の溶解を、in vitroまたはin vivo溶解パラメーターのいずれかによって特徴づける。例えば、in vitro溶解は、15分間あたりまたは連続的溶解プロセス中の洗浄工程あたりに得られる可溶性hGHの濃度(最初に存在する全hGHまたはhGH誘導体の結晶比率またはmgとして示す)と説明される(実施例5を参照のこと)。本発明の1つの実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、37℃で溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)への曝露時の洗浄工程あたり約2%と約16%との間の結晶のin vitro溶解速度によって特徴づけ、hGHまたはhGH誘導体は、溶液中に約2mg/mlの濃度で存在する。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、連続的溶解プロセスにおける洗浄工程あたり約0.04mg〜約0.32mgの前記結晶のin vitro溶解速度によって特徴づける(実施例5を参照のこと)。他方では、in vivo溶解を、哺乳動物へのhGHの単回注射後の長期にわたる哺乳動物内での血清hGHレベルによって説明する。
【0041】
哺乳動物では、GHは、IGF−1(言い換えると、細胞分裂および代謝過程で役割を果たすタンパク質)を合成および分泌するように組織を刺激する。当業者に認識されているように、血清hGHおよびIGF−1レベルは、多数の要因(生理学的および治療関連因子が含まれる)に依存する。このような要因には、以下が含まれるが、これらに限定されない:年齢および骨年齢、性別、体重、発達段階(例えば、思春期でのレベルの増加)などの生理学的要因ならびに用量、投与速度(速度)および投与経路などの治療関連要因。また、当業者は、安全性および有効性の両観点から、異なる患者集団には異なるhGHおよびIGF−1レベルが有利であり得ることを認識する。
【0042】
種々のhGH機能不全、病態、または症候群を罹患した成人または小児を、本発明のhGH結晶またはhGH誘導体結晶を使用した種々のhGHの外因的輸送治療計画によって治療することができる。例えば、内分泌学者は、小児には、約0.2mg/kg/週の用量、治療の数週間または数ヵ月後に約0.3mg/kg/週に増加させた用量、思春期あたりで約0.7mg/kg/週にさらに増加させた用量を使用して治療を開始することができる。当業者に認識されるように、hGH輸送を必要とする成人または小児に投与されたhGHのこのような外因的輸送レベルはまた、hGHの既存の生理学的レベルまたは濃度に依存する。
【0043】
成人または小児におけるhGHの投薬計画は、通常mg/mlまたは国際単位(IU/kg)で示される。このような治療計画を、一般に、日または週のいずれかについて計画する(すなわち、mg/kg/日またはmg/kg/週)。これらを考慮して、本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与(例えば、30kgの小児あたり約9mgの毎週の単回投与)により、in vivo hGH血清濃度は、投与1日後および2日後に約10ng/mlを超え、投与3日後および4日後に約5ng/mlを超え、投与5〜7日後に約0.3ng/mlを超える。あるいは、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約0.5時間後と約10日後、7日後、または1日後のいずれかとの間で約0.3ng/ml〜約2,500ng/ml hGH、好ましくは約0.5ng/ml〜約1,000ng/ml hGH、最も好ましくは約1ng/ml〜約100ng/ml hGHになる。同様に、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、前記哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約10日後、7日後、または1日後のいずれかで約2ng/ml hGHを超え、好ましくは約5ng/ml hGHを超え、最も好ましくは約10ng/ml hGHを超える。本発明のより好ましい実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約10日後、7日後、または1日後のいずれか任意の期間で約0.3ng/ml hGHを超える。本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の1週間に1回の投与により、in vivo hGH血清濃度は、投与1日後および2日後では約10ng/ml hGHを超え、投与3日後および4日後では約5ng/ml hGHを超え、投与5〜7日後では約0.3ng/ml hGHを超える。さらなる実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo hGH血清濃度は、投与0.5時間後と10日後との間で約0.3ng/ml hGHを超える。
【0044】
本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、上記投与前のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivo IGF−1血清上昇は、投与約10時間後から約72時間後までに約50ng/mlを超え、投与72時間後から約15日後、好ましくは投与約10日後に約0.5ng/ml〜約50ng/mlになる。あるいは、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo IGF−1血清上昇は、投与約0.5時間後〜約40日後、好ましくは投与約7日後に約5ng/ml〜約2,500ng/ml、好ましくは、約100ng/ml〜約1,000ng/mlになる。あるいは、本発明によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo IGF−1血清上昇は、投与約0.5時間後〜約40日後まで、好ましくは投与約7日後に約50ng/ml超え、好ましくは約100ng/mlを超え得る。本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、前記投与前のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivo IGF−1血清上昇は、投与約10時間後から約72時間後までに約50ng/mlを超え、投与72時間後から約15日後または投与約72時間後〜約10日後に約0.5ng/ml〜約50ng/mlになる。
【0045】
本発明によれば、単回投与を、投与体積が0.1mlと約1.5mlとの間である、約0.01mg/kg/週〜約100mg/kg/週のhGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはこのような結晶を含む組成物と定義する。例えば、小児成長ホルモン欠損症には、約0.3mg/kg/週(例えば、30kgの小児あたり約9mg)のhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物を投与することができる。ターナー症候群には、約0.375mg/kg/週(例えば、30kgの小児あたり約11.25mg)のhGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはこのような結晶を含む組成物を投与することができる。さらに、成人成長ホルモン欠損症には、約0.2mg/kg/週(例えば、80kgの成人あたり約16mg)のhGHを投与することができる。AIDS消耗疾患には、6mg/日(例えば、42mg/週)のhGHを投与することができる。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物は、哺乳動物において可溶性hGHと同様の相対生物学的利用能を示す。可溶性hGHおよび前記結晶の総in vivo hGH血清濃度の濃度曲線下面積(AUC)によって測定した本発明の結晶の相対生物学的利用能は、同一経路(例えば、皮下または筋肉内注射)によって輸送された可溶性hGHと比較して少なくとも50%またはそれ以上である。したがって、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、有利なin vivo溶解速度によって特徴づける。
【0047】
本発明は、さらに、hGHまたはhGH誘導体の結晶をヒト成長ホルモン欠損症に関連するかhGH治療によって改善する障害を有する哺乳動物に投与する方法を提供する。この方法は、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を投与する工程を含む。あるいは、この方法は、有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶のみを含むか賦形剤と組み合わせた組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶の種々の実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶、1価の結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶である。このような結晶またはこれを含む組成物を、3日毎に約1回、1週間に約1回、2週間毎に約1回、または毎月約1回の時間投与計画によって投与することができる。
【0048】
本発明によって治療することができるhGH機能不全に関連する障害には、成人成長ホルモン欠損症、小児成長ホルモン欠損症、プラダー・ウィリ症候群、ターナー症候群、短腸症候群、慢性腎機能不全、特発性低身長、小人症、下垂体性小人症、骨再生、女性不妊症、胎内発育遅延、AIDS関連悪液質、クローン病、火傷、ならびに他の遺伝子障害および代謝障害が含まれるが、これらに限定されない。本発明の1つの実施形態では、障害は小児成長ホルモン欠損症であり、治療を受けた小児の年率換算の成長率が約7cmと約11cmとの間になる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶は、哺乳動物の骨治療およびヒト成長ホルモン欠損症治療の有用な補助薬として作用することができる。
【0050】
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を前記哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の体重増加を誘導する方法を提供する。あるいは、このような方法は、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む。このような方法の1つの実施形態では、週1回の注射による前記結晶投与後の下垂体摘出ラットで誘導された体重増加は、約5%と約40%との間である。
【0051】
hGHの結晶、hGH誘導体の結晶、またはこれらのみまたは賦形剤と共に含む組成物を、単独または薬学的調製物、治療調製物、もしくは予防調製物の一部として投与することができる。これらを、任意の従来の投与経路(例えば、非経口、経口、肺、鼻腔、耳、肛門、真皮、眼、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所、口腔、または頭蓋内が含まれる)によって投与することができる。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、賦形剤を含むか含まないhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこれを含む組成物を、経口経路または非経口経路によって投与する。好ましい実施形態では、賦形剤を含むか含まないhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこれを含む組成物を、皮下経路または筋肉内経路によって投与する。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の結晶または組成物を、27またはそれ以上のゲージのニードルを使用した皮下経路によって投与する。本発明の1つの実施形態では、ニードルゲージは、30であり得る。結晶または組成物を、プレフィルドシリンジまたはメタ用量注入ポンプから投与することができる。あるいは、無針注入器によってこれらを投与することができる。
【0054】
本発明により、hGHを哺乳動物に有利に放出することが可能である。1つの実施形態では、本発明の結晶または組成物を、週に約1回投与する。別の実施形態では、本発明の結晶または組成物を、2週間毎に約1回投与する。さらに別の実施形態では、本発明の結晶または組成物を、毎月約1回投与する。特定の治療計画は、治療すべき疾患、治療すべき患者の年齢および体重、患者の全身的な身体状態、および治療を担当する医師の判断などの要因に依存することが当業者に認識される。
【0055】
1つの実施形態によれば、本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶を含む組成物を、約0.1mg/mlを超えるhGH濃度によって特徴づける。例えば、濃度は、0.1mg/mlと100mg/mlとの間であり得る。あるいは、組成物を、約1mg/mlと約100mg/mlとの間または10mg/mlと約100mg/mlとの間のhGH濃度によって特徴づけることができる。このような組成物には、以下の成分も含まれる:マンニトール−約5mg/ml〜約100mg/ml;酢酸ナトリウム−約5mM〜約250mM(好ましくは、25mM〜約150mM);Tris HCl−約5mM〜約100mM;約pH6.0〜約pH9.0(好ましくは、約6.5〜約8.5);PEG(MW800〜8000、好ましくは3350、4000、6000、または8000)−0〜約25%;プロタミン(好ましくは、hGH:プロタミン=3:1);およびポリアルギニン(好ましくは、hGH:ポリアルギニン=5:1)。このような組成物は、任意選択的に、スクロース−0mg/ml〜約100mg/ml;アミノ酸(例えば、アルギニンおよびグリシン)−0mg/ml〜約50mg/ml;防腐剤(抗菌薬、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラベンゾエート(パラベン))−0%〜約5%(好ましくは0%〜約0.9%);およびポリソルベート−0mg/ml〜約10mg/mlを含み得る。1つの実施形態によれば、本発明の組成物を、80%有効負荷によって特徴づける。
【0056】
本発明の好ましい処方賦形剤は、約100mM酢酸ナトリウム、約5%PEG6000MW、および約25mM Tris.HCl(pH7.5)を含む。このような賦形剤を使用して調製したhGH組成物は、約9.35mg/ml結晶hGHおよび約1.81mg/mlポリアルギニン(または約3.12mg/mlプロタミン)を含み得る。当業者に認識されるように、本発明の組成物のhGH濃度が約1mg/ml〜約100mg/mlであり得る場合、rhGH:ポリアルギニン(w/w)比を5:1またはhGH:プロタミン比(w/w)を3:1に維持し、かつ約5ng/mlのhGHの低溶解性および放出の維持に十分なように、ポリアルギニン(またはプロタミン)濃度を適宜調製すべきである。例えば、上記処方物のために、所望の結晶hGH濃度が約20mg/mlである場合、ポリアルギニン(またはプロタミン)濃度は、約4mg/mlであるべきである。
【0057】
本発明は、さらに、hGHまたはhGH誘導体の結晶の調製方法を提供する。1つのこのような方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液を結晶化溶液と混合する工程と、前記結晶化溶液が塩およびイオン性ポリマーを含むことと、(b)前記溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約37℃との間の温度で約12時間を超えてインキュベートする工程とを含む。別の実施形態では、方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液を結晶化溶液と混合する工程であって、前記結晶化溶液が塩および賦形剤を含む、工程、(b)前記溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約37℃との間の温度で約16時間を超えてインキュベートする工程とを含む。別の実施形態では、上記いずれかの方法の工程(b)の溶液を、約15℃の温度で約1週間を超えてインキュベートすることができる。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、カルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶であり、イオン性ポリマーはプロタミンまたはポリアルギニンである。別の実施形態では、イオン性ポリマーは、ポリリジンまたはポリオルチニンである。さらに別の実施形態では、イオン性ポリマーは、任意の2つまたはそれ以上のプロタミン、ポリアルギニン、およびポリリジンの混合物である。
【0058】
上記方法の工程(a)の塩は、1価または2価および無機または有機のいずれかであり得る。2価の塩の好ましい実施形態は、カルシウム塩である。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。別の好ましい実施形態では、1価のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、1価のカチオンはナトリウムである。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウム塩である。より好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、酢酸ナトリウムである。
【0060】
上記方法では、塩がカルシウム塩または1価のカチオン塩である場合、塩は、工程(a)の結晶化溶液中に、約0.01mMと約1Mとの間の濃度で存在する。好ましい実施形態では、この濃度は、約25mMと約205mMとの間である。塩がカルシウム塩である場合、塩は、工程(a)の結晶化溶液中に、約0.01mMと約235mMとの間の濃度で存在する。
【0061】
好ましい実施形態では、工程(a)の結晶化溶液はpH緩衝剤をさらに含む。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH6と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.5と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.0と約pH10との間である。さらにより好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH6と約pH9との間である。さらにより好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.8と約pH8.9との間である。
【0062】
上記方法の別の態様では、工程(a)のpH緩衝液は、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。上記方法の好ましい実施形態では、工程(a)のpH緩衝液は、重炭酸緩衝液、イミダゾール−リンゴ酸緩衝液、グリシン緩衝液、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(「ビス−tris」)緩衝液、炭酸緩衝液、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、および(N−(1−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)からなる群から選択される。
【0063】
上記方法の1つでは、hGHまたはhGH誘導体の結晶を調製するために使用される沈殿剤は、典型的には、高分子(低分子量ポリアルコールおよびプロタミンが含まれる)である。本発明の別の実施形態では、上記方法の1つの工程(a)の沈殿剤は非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルアルコール、またはエタノールからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、沈殿剤は、イソプロピルアルコールまたはエタノールである。さらにより好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000との間である。PEGの分子量は、3350、4000、6000、または8000であり得る。より好ましい実施形態では、PEGの分子量は約6000である。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%w/vと約12%w/vとの間の濃度で存在する。
【0064】
上記方法の1つの別の実施形態では、工程(a)の沈殿剤はイオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、およびポリリジンからなる群から選択される。
【0065】
上記方法の混合工程(a)は、hGHまたはhGH誘導体の溶液を結晶化溶液と混合する工程を含む。この方法の1つの実施形態では、上記結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体の濃度は、約1mg/mlと約1,000mg/mlとの間である。好ましい実施形態では、前記溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約50mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる態様では、前記溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約10mg/mlと約25mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0066】
上記hGHまたはhGH誘導体の結晶の調製方法の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、工程(b)において、約33℃で約0.25日間と約2日間との間インキュベートする。あるいは、温度は、約37℃であり得る。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、約25℃で約0.25日間と約2日間との間インキュベートする。さらに別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、約15℃で約0.25日間と約2日間の間インキュベートする。
【0067】
本発明は、さらに、hGHの結晶、hGH誘導体の結晶、またはこのような結晶および賦形剤を含む組成物の別の調製方法を提供する。この方法は、(a)hGHまたはhGH誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程と、(b)結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程と、(c)前記結晶化溶液にイオン性小分子またはイオン性ポリマーを添加する工程と、(d)前記結晶化溶液に塩を添加する工程と、(e)結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程とを含む。本発明のさらなる実施形態では、約4時間と約48時間との間インキュベートする。別の好ましい実施例では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶を形成するまで、約4℃と約40℃との間で約4時間と約48時間との間インキュベートする。別の実施形態によれば、工程(b)の後に任意選択的な工程を使用して上記方法を行う。任意選択的工程は、結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程を含む。上記方法のさらなる実施形態では、工程(c)は任意選択的である。これらの任意選択的工程の使用にかかわらず、好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間インキュベートする。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約4℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間インキュベートする。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)では、塩はカルシウム塩または1価のカチオン塩である。カルシウム結晶についての好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。好ましい実施形態では、酢酸カルシウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸カルシウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6との間である。別の実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約0.1mMと約205mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約85mMと約100mMとの間の濃度で存在する。
【0069】
より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)における1価のカチオン塩はナトリウムである。同様に、より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は酢酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、酢酸ナトリウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸ナトリウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6の間である。別の実施形態では、工程(e)の溶液中の酢酸ナトリウムは、約0.5mMと約800mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の溶液中の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約100mMと約500mMとの間の濃度で存在する。この濃度はまた、約85mMと約100mMとの間であり得る。
【0070】
さらに別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約17.5mg/mlとの間の濃度で存在する。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0071】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(a)の結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。あるいは、結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、Bis−Tris緩衝液、AMP(2−アミノ−2−メチルプロパノール)緩衝液、AMPD(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)緩衝液、AMPSO(3−([1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)緩衝液、ビシン緩衝液、エタノールアミン緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、TAPS緩衝液、タウリン緩衝液、トリアン緩衝液、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、工程(a)の溶液中の結晶化緩衝液は、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する。
【0072】
上記方法の別の実施形態では、工程(a)の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間で存在する。好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9との間で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH10との間で存在する。
【0073】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の溶液中の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9.5との間である。なおさらに好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH9.5との間である。
【0074】
結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程(b)の後の任意の選択的工程を包含する、方法の好ましい実施形態では、沈殿剤は、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000、約6000、約4000、および約3350との間からなる群から選択される。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で結晶化溶液中に存在する。上記方法の別の好ましい実施形態では、沈殿剤は、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。
【0075】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチン、およびオクタルギニンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)では、ポリアルギニンを、5:1と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。得られた結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間の範囲の温度で約16時間〜約48時間インキュベートする。
【0076】
本発明は、ヒト成長ホルモンの結晶、ヒト成長ホルモン誘導体の結晶、またはこのような結晶を含む組成物、および賦形剤のさらに別の調製方法を提供する。この方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程と、(b)前記結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程と、(c)前記結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程と、(d)前記結晶化溶液に塩を添加する工程と、(e)結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程と、(f)前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶にイオン性ポリマーを添加する工程とを含む。上記方法の1つの実施形態によれば、工程(f)は任意選択的である。好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間でインキュベートする。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約4℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間でインキュベートする。本発明のさらなる実施形態では、約2時間と約48時間との間インキュベートする。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約40℃との間で約4時間と約48時間との間でインキュベートする。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)において、塩はカルシウム塩または1価のカチオン塩である。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。好ましい実施形態では、酢酸カルシウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸カルシウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6との間である。別の実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約0.1mMと約205mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約85mMと約100mMとの間の濃度で存在する。
【0078】
より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウムである。同様に、より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は酢酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、酢酸ナトリウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸ナトリウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6の間である。別の実施形態では、工程(e)の溶液中の酢酸ナトリウムは、約0.5mMと約800mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の溶液中の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約100mMと約500mMとの間の濃度で存在する。あるいは、この濃度はまた、約85mMと約100mMとの間であり得る。
【0079】
さらに別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約17.5mg/mlとの間の濃度で存在する。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0080】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(a)の結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、工程(a)の溶液中の結晶化緩衝液は、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する。
【0081】
上記方法の別の実施形態では、工程(a)の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間で存在する。好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9との間で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH10との間で存在する。
【0082】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の溶液中の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9.5との間である。なおさらに好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH9.5との間である。
【0083】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)において、沈殿剤は、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000、約6000、約4000、および約3350との間からなる群から選択される。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で結晶化溶液中に存在する。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)において、沈殿剤は、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。
【0084】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(f)では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチン、およびオクタルギニンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(f)では、ポリアルギニンを、約5:1と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。別の実施形態では、ポリアルギニンを、約1:5と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。工程(f)で得られた溶液を、約15℃と約37℃との間の範囲の温度で約16時間〜約48時間インキュベートする。hGHまたはhGH誘導体の結晶の溶解速度に対するポリマーの効果は、完全な溶解に必要な洗浄回数を反映する。コントロール結晶は、完全な溶解ために約7回〜約13回の洗浄が必要であり、ポリアルギニンで調製した結晶は、完全な溶解のために同一の溶解緩衝液で約30回〜90回の洗浄が必要である。洗浄は、連続的溶解プロセス中の洗浄工程である(実施例5を参照のこと)。
【0085】
任意の上記方法の別の実施形態では、カルシウム塩または1価のカチオン塩は、約0.01Mと約1Mとの間または約25mMと約205mMとの間の濃度で結晶化溶液中に存在し得る。任意の上記方法の別の実施形態では、結晶化溶液を、約33℃で約0.25日間と約2日間との間;約25℃で約0.25日間と約2日間との間、および約15℃で約0.25日間と約2日間との間からなる群から選択される時間および温度でインキュベートする。
【0086】
本発明はまた、治療薬の処方物で使用するためのhGHまたはhGH誘導体の結晶のスクリーニング方法を含む。このような方法の工程は、(1)前記hGHまたはhGH誘導体の結晶を約37℃の溶解緩衝液で洗浄する工程と(例えば、2mgの結晶および1mlの溶解緩衝液)、(2)前記溶解緩衝液中での1洗浄あたりの前記hGHまたはhGH誘導体の結晶のin vitro溶解速度を測定する工程と、前記結晶の前記in vitro溶解速度が約10分間と約1500分間との間に結晶の約2%と約16%との間であり、連続的溶解プロセスにおいて1洗浄あたり約2分間および32分間であることとを含む(実施例5を参照のこと)。前記結晶のin vitro溶解速度はまた、15分間にわたり前記結晶の約4%と約10%との間または15分間にわたり約0.04mgと約0.32mgとの間であり得る。
【0087】
本発明をより深く理解することができるように、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限すると決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0088】
(実施例)
下記の実施例で以下の材料を使用した。
【0089】
(材料)
市販の組換えヒト成長ホルモン(rhGH)をBresaGen Ltd.(Thebarton,Australia)から購入し、平均分子量が4000または6000のポリエチレングリコール(PEG−4000またはPEG−6000)を、Hampton Research(Laguna Niguel,California)から購入し、硫酸プロタミンをFisherを介してICN Biomedicals Inc.(Pittsburgh,PA)から購入した。リン酸アンモニウム、Tris−HCl、クエン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸亜鉛、HEPES、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アジ化ナトリウム、イソプロパノール(IPA)、エタノール、およびポリエチレングリコールモノメチルエーテルを、それぞれFisher(Pittsburgh,PA)から入手した。Sprague−Dawleyラットを、Charles River Laboratories(Worcester,MA)またはBiomedical Research Laboratories,Inc.(Worcester,MA)から入手した。ポリアルギニンを、Sigma(St.Louis)から入手した。
【0090】
(分析技術およびアッセイ)
(逆相高速液体クロマトグラフィ)
逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、C5(5cm×4.6mm、3μm)カラム(Supelco,Bellefonte,PA)を具備したAgilent 1100シリーズHPLC(Palo Alto,CA)を有する。サンプルを、溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)に溶解し、注射前に濾過する(0.2μm)。溶媒AおよびBの勾配法を使用して、214nmおよび280nmで溶離プロフィールをモニタリングした。溶媒Aは、99.9%脱イオン水/0.1%TFAからなる。溶媒Bは、99.9%アセトニトリル/0.1%TFAからなる。全てFisherから入手したHPLCグレードの化学物質であった。40〜50%Bを0〜2分間、50〜60%Bを2〜12分間、および60〜85%Bを12〜15分間の勾配デザインを使用して、15分間溶離を行った。運転中、流速1ml/分およびカラム温度35℃を維持した。AgilentChemstationソフトウェア(Palo Alto,CA)を使用して、データを分析した。
【0091】
サンプル調製物中のプロタミンまたはポリアルギニンの濃度を、溶媒A(99.9%脱イオン水/0.1%TFA)およびB(99.9%アセトニトリル/0.1%TFA)の勾配法を使用して測定した。95:5(A:B)で0〜2.5分間、65:35(A:B)で2.5〜7.5分間、25:75(A:B)で7.5〜15.5分間、25:75(A:B)で15.5〜17.0分間、95:5(A:B)で17〜17.1分間の勾配デザインを使用して、流速1ml/分で20分間溶離した。6.2分でプロタミンまたはポリアルギニンが典型的に溶離され、14分でインタクトなhGHが溶離された。213nmでのAUCを計算した。プロタミンおよび/またはポリアルギニン(mg/ml)添加剤の含有率を、各添加物から作成した検量線から計算した。これと同一の方法を使用して、複合体から放出された賦形剤を分析することができる。
【0092】
異なるが類似する逆相法を使用して、合せた分解hGHを決定した。例えば、運転中に37℃のサーモスタット温度を維持しながら、C5 Supelco Discovery Bio Wide Poreカラム(5cm×4.6mm、粒子サイズ3μm、孔サイズ30nm)にて分析した。移動相A(20% ACN、80%H2O、0.1%TFA)および移動相B(20% ACN、80%2−プロパノール、0.1%TFA)を有する勾配法を使用して、溶離プロフィールをモニタリングした。Bを0〜5分間で20%から45%まで、5〜15分間で45%から55%まで、15〜15.1分間で55%から90%まで変化させ、17分までBを90%に保持し、本工程直後に20分に達するまでBを再度20%にした。
【0093】
(サイズ排除高速液体クロマトグラフィ)
サイズ排除クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)は、TSK−Gel G2000SWXLカラム(パーツ番号08450,Tosoh Biosep LLC,Montgomeryville,PA)(7.8mm×30cm、5μm)およびAgilent 1100シリーズMWD(UV)を具備したAgilent 1100シリーズHPLC(Palo Alto,CA)を有する。サンプルを、0.2mlの溶解緩衝液に溶解し、Agilent 1100シリーズ温度制御オートサンプラーに注入する前に0.2μmで濾過した。移動相を(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05%NaN3(pH7.5))を使用して、溶離プロフィールを214nmおよび280nmでモニタリングした。カラム温度を25℃に保持し、Agilent 1100シリーズ脱気装置を使用して、溶媒を脱気した。
【0094】
(UV−VIS吸収および光学顕微鏡法)
Beckman DU 7400分光光度計(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA)によってUV−VISスペクトロフォトグラムを得た。Olympus BX−51顕微鏡を使用した明視野で画像化し、Image−Proソフトウェア(Media Cybernetics L.P.,Silver Springs,Maryland)を使用したSony DXC−970MD 3CCDカラーデジタルビデオカメラでのキャプチャーによって、40倍〜400倍の光学顕微鏡写真を得た。
【0095】
(透過電子顕微鏡法(TEM))
以下のようにTEM分析を行った。母液中のhGH結晶の懸濁液を水で2回洗浄して過剰な母液を除去し、その後0.5%酢酸ウラニルで1時間陰性染色を行った。染色されたhGH結晶懸濁液(1〜5μL)を、銅製TEMグリッド上に移した。過剰な液体を除去し、サンプルグリッドを短時間風乾した。TEMグリッドを、JEOL 1210透過電子顕微鏡のサンプルステージに移し、80kV電子ビームを使用して画像を収集した。結晶内に結晶プリズム軸と一直線上の方向で非常に組織化された格子構造が認められた。
【0096】
(実施例1)
(リン酸アンモニウムでのhGHの結晶化)
市販のhGH(50mg)を、最初に15ml Tris−HCl(10mM(pH8.0))に溶解し、分子量カットオフ(MWCO)が10,000のPierce Dialyzerカートリッジを使用して2×4000mlTris−HCl(10mM(pH8.0))に対して透析した。Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した4000rpmで20〜30分間の遠心分離によって、タンパク質濃度を調整した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は、30〜45mg/mlの範囲であることが見出された。溶液に脱イオン水を添加して、10〜20mg/mlの最終タンパク質濃度を得た。NH4H2PO4の最終濃度が860mMとなるような溶液へのリン酸アンモニウム(NH4H2PO4)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが約8〜15μm、結晶収量が90%を超えることが見出された。図1を参照のこと。
【0097】
(実施例2)
(クエン酸ナトリウムでのhGHの結晶)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。hGHの濃縮液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を17.5mg/mlとした。クエン酸ナトリウム(Na−Citrate)の最終濃度が390mMとなるような溶液にクエン酸ナトリウム(1.5M)の添加によってhGH結晶を成長させた。hGHのTris−HCl濃度がすでに10mMであることは別として、pHを調整する必要はなかった。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが約8μm未満であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図2を参照のこと。
【0098】
(実施例3)
(リン酸ナトリウムでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を12.5〜17.5mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。Na2HPO4の最終濃度が600mMとなるような溶液への第二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが5μmと25μmとの間であり、結晶収量が75%を超えることが見出された。図3を参照のこと。
【0099】
(実施例4)
(酢酸カルシウムおよび硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、最終濃度1mg/mlまで硫酸プロタミンを添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(Ca−Acetate)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で8時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが20μm未満であり、結晶収量が75%を超えることが見出された。図4を参照のこと。
【0100】
(実施例5)
(塩誘導結晶化によって調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例1〜4における結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレット(0.4mg)を0.200mlの溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を完全に除去した。結晶化ペレットを、0.200mlの溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。このプロセスを、連続希釈という。
【0101】
図5は、時間の関数(分)としての上記実施例1〜4において1価(NaまたはNH4)または2価(Ca)の塩を使用して調製した種々のhGH結晶の溶解性挙動を示す。RP−HPLC由来の累積放出率としてhGH溶解をプロットし、タンパク質サンプルのAUC値を、UV−VIS分光光度計を使用してmg/mlで測定した。データは、390mM Na−Citrateの添加によって調製されたhGH結晶は60分後に完全に溶解したことを示す。さらに、600M Na2HPO4または860mM NH4H2PO4の添加によって調製されたhGH結晶は、それぞれ60分後または75分後に完全に溶解する。他方では、85mM Ca−Acetateおよび硫酸プロタミンの添加によって調製されたhGH結晶は、390分後に完全に溶解した(以下の表1を参照のこと)。
【0102】
【表1】
(実施例6)
(酢酸カルシウムおよび10%イソプロパノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液へのCa−Acetate(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。この溶液に、10%(v/v)イソプロパノール(IPA)を添加した。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが100μmを超え、結晶収量が85%を超えることが見出された。図6を参照のこと。
【0103】
(実施例7)
(塩化カルシウムおよび5%イソプロパノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。CaCl2の最終濃度が85mMとなるような溶液への塩化カルシウム(CaCl2)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。この溶液に、5%(v/v)IPAを添加した。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが200μmを超え、結晶収量が85%を超えることが見出された。図7を参照のこと。
【0104】
(実施例8)
(10%PEG−6000および10%エタノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を25mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。溶液への10%(v/v)PEG−6000および10%(v/v)エタノール(EtOH)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μm未満であり、結晶収量が70%を超えることが見出された。図8を参照のこと。
【0105】
(実施例9)
(アルコールによって調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例6〜8で調製された結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレットを0.200mlの溶解緩衝液(実施例5を参照のこと)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を完全に除去した。hGH溶解を、累積率として測定し、これはAUV値またはUV−VISのmg/ml測定値から算出した。結晶化ペレットを、溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。
【0106】
図9および表2は、時間の関数(分)としての10% IPA/85mM Ca−Acetate、5% IPA/85mM CaCl2、および10% EtOH/10%PEG−6000で調製したhGH結晶の溶解性挙動を示す。結果は、10% IPA/85mM Ca−Acetateの添加によって調製したhGH結晶は150分後に完全に溶解するのに対して、5% IPA/85mM CaCl2および10% EtOH/10%PEG−6000の添加によって調製したhGH結晶はそれぞれ120分および135分で完全に溶解することを示す。
【0107】
【表2】
(実施例10)
(酢酸カルシウムおよび2%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、2%(v/v)PEG−6000を添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液へのCa−Acetate(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μmと約75μmとの間であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図10を参照のこと。
【0108】
(実施例11)
(酢酸ナトリウムおよび6%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)PEG−6000を添加した。Na−Acetateの最終濃度が500mMとなるような溶液への酢酸ナトリウム(Na−Acetate)(2M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μmと約75μmとの間であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図11を参照のこと。
【0109】
(実施例12)
(塩化カルシウムおよび6%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)PEG−6000を添加した。CaCl2の最終濃度が85mMとなるような溶液へのCaCl2(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが100μmを超え、結晶収量が90%を超えることが見出された。図12を参照のこと。
【0110】
(実施例13)
(酢酸カルシウム、6%PEG−6000、および硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、硫酸プロタミン(1mg/ml)および6%PEG−6000(v/v)を添加した。酢酸カルシウムの最終濃度が85mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μm未満であり、結晶収量が70%を超えることが見出された。図13を参照のこと。
【0111】
(実施例14)
(酢酸カルシウムおよび6%PEG−MME−5000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−5000(PEG−MME−5000)を添加した。酢酸カルシウムの最終濃度が125mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが50μm未満であり、結晶収量が90%を超えることが見出された。図14を参照のこと。
【0112】
(実施例15)
(ポリエチレングリコールを使用して調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例10〜14で調製された結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレットを0.2mlの溶解緩衝液(実施例5を参照のこと)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を除去した。結晶化ペレットを、溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。
【0113】
図15および表3は、時間の関数(分)としての2% PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム、6% PEG−6000/500mM 酢酸ナトリウム、6%PEG−6000/85mM CaCl2、6%PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム/プロタミン、および6% PEG−MME−5000/125mM 酢酸カルシウムで調製したhGH結晶の溶解性挙動を示す。hGH溶解を、蓄積率として測定し、AUC値またはUV−VISmg/ml測定値から算出した。結果は、6%PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム/プロタミンの添加によって調製したhGH結晶は最も溶解が遅く、495分後に完全に溶解した。2% PEG−6000/85mM酢酸カルシウム結晶についての他の結晶は300分で溶解するか、他のhGH結晶についてはより短かった。
【0114】
【表3−1】
【0115】
【表3−2】
(実施例16)
(Sprague−Dawleyラットを使用した薬物動態学試験)
2.5mg/kgの可溶性(市販)または結晶(85mM 酢酸カルシウム/2% PEG−6000)hGHを実施例10に記載のように調製し、懸濁液を、24匹の雌Sprague−Dawleyラットに皮下投与した。各ラットの平均体重は200gであった。24匹のラットを、2つの群に分けた。各群は、3群のサブセットを含んでおり、それぞれ4匹のラットを含む。3回の特定の測定点で、各サブセット内の頸動脈インプラントを介して採血した。所与の時点で採取することができる血液量は限られているので、リープフロッグデザインを使用した。動物の安定性を維持するために、上記測定点で群内の動物サブセットから採血した。次いで、血清サンプルをコンパイルして、線形累進時系列を形成した。サブセットの平均からの所与の測定点でのサブセット内の血清レベルの分散によって標準偏差を決定した。表4〜6を参照のこと。表4〜5では、1〜12と命名した動物に可溶性hGHを、動物13〜24に結晶化hGHを、各動物に対して500μgの用量で投与した。
【0116】
図16は、可溶性および結晶化hGHについての時間の関数としての血清hGHレベルを示す。結晶化hGHの半減期は、可溶性hGHのほぼ19倍であった。血清中で最大hGHが認められた時間は、結晶化hGHについては4時間であり、可溶性hGHについては0.5時間であった。ラットの群およびサブセットを5.5mg/ml(2.2mg.kgに相当する用量)の濃度の可溶性hGHまたは結晶hGHで処置した場合、以下の表6で列挙したCmax値は、結晶形態で輸送させた場合、hGHは、同一の可溶性の用量と比較した場合に最大血清濃度が有意に減少したことを示す。また、可溶性hGHと結晶hGHとの総血清レベルのAUCは類似しており、結晶化によって生物学的利用能は有意に影響を受けないことを示した。可溶性および結晶の両結果についてT90%値を計算した。このパラメーターは、総AUCの90%が起こる時間を示す。T90%値が高いほど、薬物がより長く血清中に留まることを示す。表6に含まれるT90%の結果は、結晶形態により、可溶性形態よりもhGHレベルの上昇が有意に長くなることを明白に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
(実施例17)
(hGH結晶の溶解特性に対する硫酸プロタミンの効果)
図17は、既存のカルシウムhGH結晶溶液への所与の量の硫酸プロタミンの添加から1時間のインキュベーション後に37℃の溶解緩衝液中に溶解する実施例10にしたがって調製したhGH結晶(85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6))の量を示す。hGH:プロタミン(mg:mg)比を、図17に示す。グラフは、プロタミンがhGH結晶の溶解に有意に影響を与えることを示す。
【0120】
(実施例18)
(酢酸ナトリウムでのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(未知の緩衝液中で供給された10〜20mg/ml rhGH)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−6000、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、6%(v/v)、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。ニードルまたは棒様結晶が得られ、TEMで画像化した(図18Aおよび18Bを参照のこと)。結晶の長さは、約2〜25μmの範囲であった。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、85%を超える結晶収量が測定された。33℃と15℃の間の温度で結晶を形成させることもできるが、より長い結晶化時間を必要とし、おそらく収率が低い。
【0121】
(実施例19)
(ナトリウムhGH結晶とイオン性ポリマー添加剤との複合体化)
結晶収量の決定後(実施例18を参照のこと)、ナトリウムrhGH結晶の最終濃度が21mg/mlとなるように、母液(250mM NaOAc、25mM Tris−HCl(pH8.6)、6%PEG−6000、および7mg/ml硫酸プロタミンまたは4.2mg/mlポリアルギニン)にナトリウムrhGH結晶を再懸濁した。rhGH:硫酸プロタミンについてのタンパク質:添加剤の比は、約3:1(mg:mg)であり、rhGH:ポリアルギニンについては5:1(mg:mg)であった。これらの比は、rhGH:プロタミンについては約1:1.715、rhGH:ポリアルギニンについては約1:0.587のモル比であると計算される。上記rhGHペレットを、適切な母液に均一に再懸濁し、遠心分離前に2〜8℃で一晩インキュベートして濃縮ペレットを得た。上清を除去し、ペレットを同一の母液(イオン性ポリマー添加剤を含まない)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0122】
母液の添加剤濃度(mg/ml)を変化させながら21mg/mlのrhGHを依然として再懸濁することによってさらなるrhGH:イオン性ポリマー添加剤比を得ることができる。例えば、母液中の硫酸プロタミン濃度の増加(10.5mg/ml)を使用して、再懸濁時のrhGH:添加剤比を2:1にすることができる。
【0123】
(実施例20)
(酢酸亜鉛でのhGHの結晶化。酢酸亜鉛およびアセトンでのrhGHの結晶化)
約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのNa2HPO4/NaH2PO4(10mM(pH6.1))での洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)を添加した。4.5ml量の脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで5〜10分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は15mg/mlの範囲であった。15mg/mlタンパク質を含む10mMNa2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)への脱イオン水、8.91mMNa2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)、0.88mg/ml酢酸亜鉛、9.89%アセトンを含む400μlの母液の添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、15℃で24〜48時間インキュベートした。幅が約2〜25μmの六角形様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、結晶収量は約55%と測定された。
【0124】
(実施例21)
(酢酸カルシウムでのhGHの結晶化およびカルシウムhGHとイオン性ポリマー添加剤(ポリアルギニン)との複合体化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。約3.5ml(12mg/ml rhGHを含むTris−HCl(10mM(pH8.0))の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終濃度が15mg/ml rhGH、100mM Tris−HCl(pH8.6)、2%(v/v) PEG−6000、および85mM 酢酸カルシウムであるようなrhGH(30mg/mlストック調製物)への1MTris−HCl(pH8.6)、50% PEG−6000、および1M 酢酸ナトリウムの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。ニードル様結晶の長さは、約2〜25μmの範囲であった。上清の抽出ならびに結晶の遠心分離およびペレット化後、結晶収量は85%を超えていた。33℃と15℃の間の温度で結晶を形成させることもできるが、より長い結晶化時間を必要とし、収率が低い。結晶収量の決定後(実施例18を参照のこと)、カルシウムrhGH結晶の最終濃度が21mg/mlとなるように、処方賦形剤(5mM CaOAc、100mM Tris−HCl(pH8.6)、6%PEG−6000、および4.2mg/mlポリアルギニン)にカルシウムrhGH結晶を再懸濁した。rhGH:ポリアルギニンについてのタンパク質:添加剤の比は、約5:1(mg:mg)であった。これらの比は、rhGH:ポリアルギニンについて約1:0.587のモル比であると計算される。上記rhGHペレットを、適切な母液に均一に再懸濁し、遠心分離前に2〜8℃で一晩インキュベートして濃縮ペレットを得た。上清を除去し、ペレットを同一の母液(イオン性添加剤を含まない)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0125】
(実施例22)
(Sprague−DawleyラットおよびhGHの2価のカチオン結晶を使用した、皮下投与したhGHの薬物動態学および薬力学試験)
本試験の目的は、下垂体摘出Sprague−DawleyラットにおけるhGH結晶懸濁液の皮下移植時のhGH結晶懸濁液からのhGHの放出および体重増加の制御を評価することであった。試験デザインを以下に示した。
【0126】
【表7】
到着時に、体重が約150g±25gであり、かつ約4〜6週齢である80匹の雌のSprague−Dawleyラットを、制御された条件下(約21±3℃、相対湿度50±20%、それぞれ24時間で12時間の明所および12時間の暗所、1時間あたり10〜15回の換気)で個別に飼育し、試験期間中、精製水および固形試料を自由に利用させた。ラットを、試験前に1週間環境に馴化させた。
【0127】
表7にしたがって、80匹のラットのうち48匹にhGH懸濁液を投与した。試験化合物を、背中への単回皮下ボーラス注射として、1日目に1回または7日間毎日1回投与した。注射を容易にするために必要な場合、注射部位の毛を剃り、投与前後3日までマークした。300μlシリンジに取りつけた30ゲージ×8mmニードルを使用して、試験化合物を投与した。シリンジへの取り出し前および投与前に気泡を形成することなく懸濁液または溶液を確実に均一にするために、試験化合物を慎重に逆にした。注射体積は、ラットあたり約0.1mlであった。
【0128】
1日目の注射から4時間後、32時間後、96時間後、および168時間後に、第1群、第5群、第7群、および第8群(群あたりそれぞれ3匹のラットを有する)のラットから血液サンプルを採取した。第2群、第3群、第4群、および第9群(それぞれ群あたり9匹のラット有する)のラット由来の血液サンプルを、3匹のラットを有する3つの群にさらに分けた。ここでは、第1日目の注射から0.5時間後、24時間後、72時間後、および168時間後にラットの第1のサブセットから、4時間後、32時間後、96時間後、および168時間後に第2のサブセットから、および8時間後、48時間後、120時間後、および168時間後に第3のサブセットから血液サンプルを採取した。一般的には、非麻酔ラットまたはCO2/O2麻酔ラットの眼窩を介して採血し、血清分離器を使用してBD Microtainerチューブに回収した。次いで、サンプルを、約4℃で遠心分離し、血清を回収し、hGHおよびIGF−1レベルの測定前に凍結保存した(約−80℃)。
【0129】
次いで、血清サンプルをコンパイルし、第2群、第3群、第4群、および第9群の場合、線形累進時系列を形成した。サブセットの平均からの所与の測定点でのサブセット内の血清レベルの分散によって標準偏差を決定した。表8〜14および図19Aを参照のこと。特定の結晶処方物を投与した場合、rhGHの血清レベル(ng/ml)を示す。試験プロトコールにしたがって、投与に関連する特定の測定点で動物を採血した。結果は、複合体化結晶材料(例えば、プロタミンおよびポリアルギニン)の吸収と非複合体化結晶処方物(例えば、CaOACおよびZnOAC)との間に差が存在することを明らかに示す。
【0130】
【表8】
【0131】
【表9】
【0132】
【表10】
【0133】
【表11】
【0134】
【表12】
【0135】
【表13】
試験1日目の注射前および試験の翌朝の採血前に再度各ラットの重量を測定し、記録した。したがって、各群内の各ラットの体重の増減を、1日目の体重(注射前)から各翌日(注射前)を引くことによって計算した。群内の全ラットの平均体重を毎日計算した。これらの結果を、表14に示す。
【0136】
【表14】
表14および図19Bは、市販のhGHの毎日用量の投与と比較した本発明の結晶の単回用量(1日目)の投与の7日間の効果を示す。例えば、図19Bは、ポリアルギニンと複合体化したhGHのカルシウム結晶により同一の期間にわたる1回のみの投薬する毎日の可溶性用量に匹敵する体重増加が得られることを示す。体重増加と血清中のrhGHの各放出プロフィールとの比較により、ポリアルギニン処方物のより長い放出は体重増加速度のさらなる持続と相関することが明らかである。
【0137】
(実施例23)
(雌幼若カニクイザルにおける薬力学比較試験)
本試験の目的は、雌カニクイザルに皮下投与した場合の結晶組換えヒト成長ホルモン(rhGH)のin vivo薬物動態学プロフィールを評価することであった。血清中の結晶rhGHの制御放出および結晶rhGH放出の関数としての体重増加についてのモデルを確立するためにこれらのデータを得た。
【0138】
【表15】
12匹の雌幼若カニクイザルを、3つの群(群あたりそれぞれ4匹の動物を有する)に分け、可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびポリアルギニンとのナトリウム結晶(群2、実施例18および19による)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(群3、実施例18および19による)のいずれかを投与した。治療開始時に体重が2〜6kgで4〜7歳の範囲のサルを、自動給水システムまたは水差しを備えたステンレススチール製ケージに個別に飼育した。動物の室内環境を制御し(約21±3℃、湿度30〜70%、各24時間周期で12時間の明所および12時間の暗所、および1時間あたり12〜20回の換気)、サルに標準的な認定された市販の霊長類固形試料(Harlan Teklad Certified Primate Diet #2055C)を1日2回与えた。
【0139】
可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびポリアルギニンとのナトリウム結晶(群2)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(群3)の投与後のhGHおよびIGF−1の血清濃度を測定および比較するために、この霊長類試験を行った。上記表15に示す移動時および投与前の全動物の体重を記録した。血液サンプル(約1ml)を、−216日目、−120日目、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、24日目、48日目、72日目、96日目、120日目、144日目、168日目、192日目、216日目、240日目、264日目、288日目、および312日目の朝に大腿部、上腕、または伏在静脈を介して各動物から採取した。血清分離チューブに採血し、凝血するまで室温で30〜45分間静置し、2〜8℃にて3000rpmで10分間遠心分離した。各血清サンプルを100μl量に分注し、残りの量と両方を、分析前に−70℃±10℃で保存した。一般的には、rhGH決定にはより少量の100μl量を使用し、IGF−1決定にはより大きな量を使用した。必要な複製物の体積により、いくつかの例外が存在する。
【0140】
次いで、回収した血清サンプルを、hGH濃度について分析した(表16を参照のこと)。標準値の範囲外のrhGH濃度を適切に希釈した。全値を使用して、霊長類GHの動物平均バックグラウンドレベルあたりの個体を得ることができる。動物平均あたりの個体を、この試験化合物についての各測定点で測定した血清レベルから差し引いた。次いで、測定点あたりの修正値を、血清中のrhGHの修正平均を得るために平均化した。次いで、修正平均の標準偏差の使用およびN=4の平方根で割ることによって標準誤差を計算した。
【0141】
【表16】
図20Aは、ベースライン調整後の群1、2、および3についての時間(時間)の関数としての血清のrhGHレベルを示す。
【0142】
【表17】
上記データは、血清中に認められる最大hGH(Tmax)時の時間は、ポリアルギニン複合体化結晶hGHでは10時間であり、プロタミン複合体化ナトリウム結晶hGHについては10時間であり、可溶性hGHについては2時間であることを示す。可溶性hGHを1/7の用量の結晶投与で輸送する場合でさえ、上記表17に列挙したCmax値は、いずれかの複合体化結晶形態で輸送された場合、hGHは初期血清濃度の急上昇を有意に減少させることを示す。さらに、可溶性および結晶群のT90%値を計算した。群1(可溶性形態)のT90%は20時間であり、群2および3(複合体化結晶形態)のT90%は、それぞれ74時間および77時間であった。これらの結果は、複合体化結晶形態により可溶性形態よりも有意により長い期間hGHレベルを上昇させることを明白に示す。
【0143】
hGHの血清濃度の決定に加えて、時間の関数としてもIGF−1レベルを測定した。IGF−1産生の測定により、rhGHの有効性を確認した。以下の表18は、群1〜3に動物についてのIGF−1濃度を報告する。図20Bは、内因性IGF−1レベルのベースラインを引いた後に、複合体化結晶処方物が毎日の可溶性投与に匹敵するIGF−1放出の刺激能力を示す。これらの結果は、非ヒト霊長類では、本発明の処方物を有利に使用してヒトにおいて類似の有効性を達成することができることを示す。
【0144】
【表18−1】
【0145】
【表18−2】
(実施例24)
(異なるプロタミン比を使用した雌幼若カニクイザルにおける薬力学比較試験)
本試験の目的は、雌カニクイザルに皮下投与した場合の結晶組換えヒト成長ホルモン(rhGH)のin vivo薬物動態学プロフィールを評価することであった。ナトリウムhGHとプロタミンとの比が血清中の結晶rhGHの制御放出および結晶rhGH放出の関数としての体重増加に効果があるかを試験するためにこれらのデータを得た。
【0146】
【表19】
霊長類試験IIでは、霊長類試験Iに記載の12頭の雌幼若カニクイザルを、3つの群(群あたりそれぞれ4頭の動物を有する)に分け、可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=3:1)(群2)(実施例18および19)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=2:1)(群3)のいずれかを投与した(実施例18および19)。治療開始時に体重が2〜6kgで4〜7歳の範囲のサルを、自動給水システムまたは水差しを備えたステンレススチール製ケージに個別に飼育した。動物の室内環境を制御し(約21±3℃、湿度30〜70%、各24時間周期で12時間の明所および12時間の暗所、および1時間あたり12〜20回の換気)、サルに標準的な認定された市販の霊長類固形試料(Harlan Teklad Certified Primate Diet #2055C)を1日2回与えた。
【0147】
可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=3:1)(群2)、およびrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=2:1)(群3)の投与後のhGHおよびIGF−1の血清濃度を測定および比較するために、この霊長類試験を行った。上記表19に示す移動時および投与前の全動物の体重を記録した。血液サンプル(約1ml)を、−144日目、−120日目、−96日目、−72日目、−48日目、−24日目、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、24日目、48日目、72日目、96日目、120日目、144日目、168日目、192日目、216日目、240日目、264日目、288日目、および312日目の朝に大腿部、上腕、または伏在静脈を介して各動物から採取した。血清分離チューブに採血し、凝血するまで室温で30〜45分間静置し、2〜8℃にて3000rpmで10分間遠心分離した。各血清サンプルを100μl量に分注し、残りの量の両方を、分析前に−70℃±10℃で保存した。
【0148】
採取された血清サンプル中のhGH濃度(ng/ml)を分析し、ベースライン修正を行った(表20のデータを参照のこと)。標準値の範囲外のrhGH濃度を適切に希釈することに留意のこと。全値を使用して、霊長類hGHの動物平均バックグラウンドレベルあたりの個体を得ることができる。動物平均あたりの個体を、この試験化合物についての各測定点で測定した血清レベルから差し引いた。次いで、測定点あたりの修正値を、血清中のrhGHの修正平均を得るために平均化した。次いで、修正平均の標準偏差の使用およびN=4の平方根で割ることによって標準誤差を計算した。
【0149】
【表20】
図21Aは、ベースライン調整後の群1、2、および3についての時間(時間)の関数としての血清rhGHレベルを示す。
【0150】
【表21】
これらのデータは、血清中に認められる最大hGH時の時間は、プロタミン(3:1)複合体化結晶hGHでは10時間であり、プロタミン(2:1)複合体化ナトリウム結晶hGHについては24時間であり、可溶性hGHについては4時間であることを示す。可溶性hGHを1/7の用量の結晶投与で輸送する場合、上記表22に列挙したCmax値は、いずれかの複合体化結晶形態で輸送された場合、hGHは最大血清濃度を有意に減少させることを示す。群1(可溶性形態)のT90%は20時間であり、群2および3(複合体化結晶形態)のT90%は、それぞれ119時間および72時間であった。これらの結果は、複合体化結晶形態により可溶性形態よりも有意により長い期間hGHレベルを上昇させることを明白に示す。
【0151】
hGHの血清濃度の測定に加えて、時間の関数としてもIGF−1レベルを測定した。IGF−1産生の測定により、rhGHの有効性を確認した。以下の表22は、群1〜3の動物についてのIGF−1濃度を報告する。図21Bは、内因性IGF−1レベルのベースラインを引いた後に、複合体化結晶処方物が毎日の可溶性投与に匹敵するIGF−1放出の刺激能力を示す。これらの非ヒト霊長類の結果は、本発明の処方物を有利に使用してヒトにおいて類似の有効性を達成することができることを示す。
【0152】
【表22】
(実施例25)
(下垂体摘出雌ラットへの単回または毎日の皮下注射によって投与したヒト成長ホルモンの薬力学試験)
本試験の目的は、下垂体摘出雄Wistarラットに1回または7日間毎日皮下注射した場合にhGHの異なる処方物の有効性を比較することであった。試験デザインを以下に示した。
【0153】
【表23−1】
【0154】
【表23−2】
【0155】
【表24】
到着時に、体重が約90〜100gであり、かつ約25〜30日齢である138匹のWistarラットを、制御された条件下(約23±3℃、相対湿度30〜70%、24時間で12時間の明所および12時間の暗所、1時間あたり10〜15回の換気)で群毎に飼育し、試験中、精製水および固形試料を自由に摂取させた。ラットを、試験前に2週間環境に馴化させた。
【0156】
表24に記載の濃度、体積、および投与計画にしたがって、138匹のラットにサンプルを投与した。試験化合物を、背中への単回皮下ボーラス注射として、1日目に1回または7日間毎日1回投与した。注射を容易にするために必要な場合、注射部位の毛を剃り、投与前後3日まで印をつけた。300μlシリンジに取りつけた30ゲージ×8mmニードルを使用して、試験化合物を投与した。シリンジへの取り出し前および投与前に気泡を形成することなく懸濁液または溶液を確実に均一にするために、試験化合物を慎重に逆にした。
【0157】
−3週目および−2週目で1週間に2回および−7日目から14日目まで毎日体重増加を測定し、記録した。ラットの体重は、投与時に約100g±10%であった。成長誘導発率の結果を図22および23に示し、表25および26にまとめる。表25では、「高用量」は、5.6mg/kg/週を示す。データは、コントロール(群1、hGHなし)または可溶性hGHサンプル(群4および5)の7日間にわたる毎日の注射に対するrhGH:ポリアルギニン(群7、実施例18および19)結晶またはrhGH:プロタミン(群9および10、実施例18および19)結晶の7日間にわたる単回注射を実施したラットの体重増加の比較を示す。群1(偽下垂体摘出ラット)は、7日間にわたり正常な成長を示す。さらに、7日間にわたる1回の注射でrhGH:ポリアルギニンを投与したラット(群7)は、可溶性hGHを7日間毎日投与したラット(群5)よりも誘導成長率が高かった。これらの結果は、本発明のhGH結晶および処方物は1週間にわたる毎日の可溶性rhGH投与と同様に有効であることを示す。
【0158】
【表25】
【0159】
【表26】
(実施例26)
(酢酸ナトリウムおよび硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−4000、硫酸プロタミン、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、6%(v/v)、2mg/ml、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。長さが約2〜25μmのニードル様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、90%を超える結晶収量が測定された。
【0160】
(実施例27)
(酢酸ナトリウムおよびポリアルギニンHClのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−4000、ポリアルギニンHCl、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、2%(v/v)、2mg/ml、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。長さが約2〜25μmのニードル様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、90%を超える結晶収量が測定された。
【0161】
上記発明は、理解をより明確にする目的で例示および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、記載の実施形態を含む本明細書の開示の精神または範囲を逸脱する事なく一定の変更形態および修正形態を得ることができることが当業者に容易に明らかである。
【技術分野】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶およびこれを含む組成物または処方物に関する。さらに、本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶の生成方法を提供する。本発明の結晶は、特に、ヒト成長ホルモン欠損症に関連するか、またはヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する哺乳動物の治療方法で有用である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ソマトトロピンすなわち、成長ホルモン(「GH」))は、内分泌系の主な腺(腺下垂体)によって脳内で合成および分泌される刺激ホルモンクラスを含む哺乳動物タンパク質である。腺下垂体によるGHおよび他の刺激ホルモンの分泌により、体内の他の内分泌腺および組織中の細胞の活動が制御される。詳細には、GHは、下垂体前葉の成長ホルモン産生細胞によって分泌され、IGF−1(細胞分裂を調節するタンパク質)を合成および分泌するように肝臓および他の組織を刺激するように機能し、代謝過程を制御し、遊離状態で存在するか、IGFBP−1〜6と呼ばれる6つの他のタンパク質のうちの1つと結合する。それ自体の分泌過程は、ソマトリベリン(GH放出を促進する)およびソマトスタチン(GH放出を阻害する)の相反する作用によって調整される。
【0003】
ヒト成長ホルモン(「hGH」)は、細胞および器官の成長の制御および種々の加齢段階での生理学的機能において重要なホルモンとして作用するので、特に興味深い。例えば、hGHの過剰産生により、小児では巨人症を発症し、成人では先端巨大症を発症するのに対し、過小産生により、小児では、小人症(Maurasら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,85(10),3653−3660(2000);Frindikら、Hormone Research,51(1),15−19(1999);Legerら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,83(10),3512−3516(1998))Turner‘s Symdrome(females only)(Bramswig,Endocrine,15(1),5−13(2001);Pasquinoら、Hormone Research,46(6),269−272(1996))、およびchronic renal insufficiency(Carrollら、Trends in Endocrinology and Metabolism,11(6),231−238(2000);Uelandら、J.Clin.Endocrinology and Metabolism,87(6),2760−2763(2002);Simpsonら、Growth Hormone & IGF Research,12,1−33(2002))を発症する。成人では、hGH欠損症は、タンパク質、炭水化物、脂質、無機質、および結合組織の代謝過程に影響を与え、筋肉、骨、または皮膚の萎縮症を発症させ得る(Mehls and Haas,Growth Hormone &IGF Research,Supplement B,S31−S37(2000);Fineら、J.Pediatrics,136(3),376−382(2000);Motoyamaら、Clin.Exp.Nephrology,2(2),162−165(1998))。成長不全によって特徴づけられる他のhGH欠損障害には、AIDS消耗症候群(Hirschfeld,Hormone Research,46,215−221(1996);Tritosら、Am.J.Medicine,105(1),44−57(1998);Mulliganら、J.Parenteral and Enteral Nutrition,23(6),S202−S209(1999);Torres and Cadman,BioDrugs,14(2),83−91(2000))、およびPraderwilli syndrome(Ritzen,Hormone Research,56(5−6),208(2002);Eiholzerら、Eur.J.Pediatrics,157(5),368−377(1998))が含まれる。
【0004】
今日まで、ヒトのhGH欠損症の治療計画は、主に、組換えDNAテクノロジーによって作製された精製hGHの皮下注射にフォーカスしている。この治療薬は、カートリッジ中の溶液または使用時に再構成が必要な凍結乾燥粉末のいずれかとしてパッケージングされている。注射頻度は、治療をうける疾患および使用される市販の製品に依存して変化する。例えば、小人症は、組換えhGHの毎日の皮下注射によって治療する。
【0005】
溶液中でのタンパク質の固有の不安定性により、hGHの迅速な輸送経路として皮下投与を使用する必要がある。この不安定性は、タンパク質のアミノ酸配列内の特定の位置での重要な分子内架橋の切断、言い換えれば、患者の細胞表面によって認識および関連する不可欠な三次元構造の破壊に起因する。hGHの切断機構または分解機構は、主に、メチオニン残基の酸化または溶解時のアスパラギン酸残基の脱アミド化、それによるタンパク質の不活化によって調整される。この脆弱性により、安定かつ長期に作用し、かつ皮下だけでなく他の従来の投薬経路(経口経路、真皮経路、および静脈内経路など)によっても輸送することができるhGH組成物または処方物が当該分野で必要とされる。
【0006】
この必要性に取り組むための多数の市販のhGH製品が開発されている。例えば、Nutropin Depot(登録商標)は、ポリラクチド−コグリコリド(PLG)ミクロスフィア中に包埋した組換えヒト成長ホルモン(rhGH)の注射用懸濁液である(http://www.gene.comを参照のこと)。rhGHおよびPLGに加えて、ミクロスフィアは、酢酸亜鉛および炭酸亜鉛成分も含む。投与前に、固体材料を、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、ポリソルベート、塩化ナトリウム、および水を含む水溶液で再構成しなければならない。ほとんどがポリマーから構成されるこの懸濁液を、1ヶ月に1回または2回投与し、注射には21ゲージのニードルが必要である。ミクロスフィアのサイズおよび製品の種々の性質により、注射部位に副作用を起こし、小節、紅斑、疼痛、紫斑、痒み、脂肪細胞萎縮症、および腫脹を生じ得る(http://www.genentech.com/gene/products/information/opportunistic/nutropin−depot/index.jspを参照のこと)。
【0007】
開発されたが、その後製造中止になった別のhGH製品はAlbutropinTM(長時間作用型の遺伝的に産生されたヒトアルブミンとヒト成長ホルモンとの融合タンパク質)である(http://www.hgsi.com/products/ albutropin.htmlを参照のこと)。この製品は、長期循環半減期を示し、可溶性の天然hGHの半減期よりもおよそ50%長いといわれている。AlbutropinTMは、典型的には、1週間を基本として注射によって輸送され、身体からのクリアランス後長期にわたりIGF−1レベルを刺激するといわれている。この製品の生物学的作用は、現在利用可能な成長ホルモン療法の生物学的作用と類似する。
【0008】
開発された別の製品は、Infitropin CRTM(ポリエチレングリコール抱合hGH分子から構成されるhGHの処方物)であった。この抱合hGHは1週間に1回注射する必要があり、有意なバースト効果(burst effect)を起こすことなく連続的に放出されるといわれていた(Rossら、J.Biol.Chem.,271(36),21696−21977(1996))。しかし、この製品は製造中止になった。
【0009】
米国特許第5,981,485号および同第6,448,225号は、再構成工程を必要とせず、かつ毎日の注射によって投与されるといわれているhGHの水性処方物を言及している。このような処方物は、典型的には、hGH、緩衝液、非イオン性界面活性剤、および任意選択的に中性塩、マンニトール、または防腐剤を含む。
【0010】
ヒドロゲル(Katakamら、J.Controlled Release,49(1),21−26(1997))、リポソーム、油性乳濁液、および生分解性ポリマーミクロスフィアなどの種々の他の薬物輸送テクノロジーがhGHの薬物放出の目的で使用されている。しかし、得られた処方物は、薬物のバースト放出を示し、厳しい条件を使用し、製造が複雑なものもある。ミクロスフィアの生成に使用するプロセスは、高温、界面活性剤、有機溶媒、および水性溶媒/有機溶媒境界(これらは全てタンパク質を変性させる)などの条件を使用する傾向があるので、これは、特に、DL−乳酸−グリコール酸コポリマー(PLGA)ミクロスフィアテクノロジーに基づいたhGH処方物についても当てはまる(Herbergerら、Proc.Intl.Symp.Controlled Release of Bioactive Materials,23,835−836(1996);Kimら、Intl.J.Pharmaceutics,229(1−2),107−116(2001))。
【0011】
いくつかの上記調製物は、hGHを凍結乾燥状態で保存する必要があり、これは時間がかかり、かつ高価なプロセスであり得る。米国特許第5,780,599号および同第6,117,984号は、hGHの2価のカチオン結晶および凍結乾燥工程を必要としないhGHの2価のカチオン結晶の生成方法を言及している。
【0012】
従来のhGH製品の欠点(保存および注射時の不安定性、in vivoでの半減期の短さ、バースト効果、経口生物学的利用能の欠如、ならびに投与の困難さおよび頻度が含まれる)に取り組む努力にもかかわらず、改良されたhGH調製物が必要である。この必要性に取り組むために、本発明は、安定かつ長期に作用するhGHが得られるヒト成長ホルモンの結晶を有利に提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の安定かつ長期に作用する便利で患者に優しい結晶に関する。本発明は、さらに、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶の組成物(その薬学的に許容可能な組成物が含まれる)を提供する。本発明は、さらに、このような結晶およびこのような結晶を含む組成物の調製方法を提供する。本発明の結晶および組成物は、ヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する個体の治療方法で有利に使用される。
【0014】
ヒト成長ホルモンもしくはヒト成長ホルモン誘導体の結晶または結晶を含む組成物あるいは処方物は、いくつかの利点(1週間に1回の投与能力、即時使用できる結晶懸濁形態、安全性、有効性、純度、安定性、再懸濁可能性、および短時間でのシリンジ利用可能性が含まれる)を有する。本発明の他の目的(従来のhGH調製物と比較したhGH結晶およびこれを含む組成物または処方物の改良が含まれる)は、本明細書中の開示を考慮して当業者に認識される。
本発明はまた、以下の項目を提供する。
(項目1)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶。
(項目2)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の1価のカチオン結晶。
(項目3)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のプロタミン結晶。
(項目4)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶。
(項目5)
前記1価のカチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される、項目2に記載の1価のカチオン結晶。
(項目6)
前記1価のカチオンがナトリウムである、項目5に記載の1価のカチオン結晶。
(項目7)
前記結晶の哺乳動物への単回投与によって、
(a)約0.3ng/ml〜約2,500ng/ml hGH、
(b)約0.5ng/ml〜約1,000ng/ml hGH、および
(c)約1ng/ml〜約100ng/ml hGHからなる群から選択される該哺乳動物のin vivoでの血清hGH濃度を、
(i)投与後約0.5時間と約40日間との間、
(ii)投与後約0.5時間と約10日間との間、
(iii)投与後約0.5時間と約7日間との間、および
(iv)投与後約0.5時間と約1日間との間からなる群から選択される期間で得られる、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目8)
前記結晶の哺乳動物への単回投与によって、
(a)約5ng/ml〜約2,500ng/ml、および
(b)約100ng/ml〜約1,000ng/mlからなる群から選択される投与前の哺乳動物のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivoでの血清IGF−1上昇を、
(i)投与後約0.5時間と約40日間との間、および
(ii)投与後約0.5時間と約7日間との間からなる群から選択される期間で得られる、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目9)
前記結晶の相対生物学的利用能が、同一の投与経路を介して輸送される同一用量の可溶性hGHと比較して少なくとも50%またはそれ以上であり、該生物学的利用能を該可溶性hGHおよび該結晶についてのin vivoでの総血清hGH濃度のAUCによって測定された、項目1、項目2、項目3、または項目4のいずれか1項に記載の結晶。
(項目10)
前記哺乳動物がヒトである、項目7または項目8に記載の結晶。
(項目11)
前記結晶が、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体あたり約1個から約500個までのカルシウム分子を含む、項目1に記載の結晶。
(項目12)
前記結晶が、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体あたり約1個から約500個までの1価のカチオンを含む、項目2に記載の結晶。
(項目13)
前記結晶が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、およびグルコン酸カル
シウムからなる群から選択されるカルシウム塩を含む、項目1に記載の結晶。
(項目14)
前記カルシウム塩が酢酸カルシウムである、項目13に記載の結晶。
(項目15)
前記結晶が、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択されるナトリウム塩を含む、項目6に記載の結晶。
(項目16)
前記ナトリウム塩が酢酸ナトリウムである、項目15に記載の結晶。
(項目17)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶および賦形剤を含む組成物において、該結晶が、
(a)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、
(b)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の1価のカチオン結晶、
(c)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体プロタミン結晶、および
(d)ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶からなる群から選択される、組成物
(項目18)
前記結晶および前記賦形剤が前記組成物中にhGH:賦形剤のモル比が約1:10〜約1:0.125で存在する、項目17に記載の組成物。
(項目19)
前記賦形剤が、アミノ酸、塩、アルコール、炭水化物、タンパク質、脂質、界面活性剤、ポリマー、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される、項目17に記載の組成物。
(項目20)
前記賦形剤が、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、グルコン酸カルシウム、ポリアミノ酸、ポリエチレングリコール、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される、項目19に記載の組成物。
(項目21)
前記賦形剤が、プロタミン、ポリアルギニン、ポリエチレングリコール、およびその混合物からなる群から選択される、項目20に記載の組成物。
(項目22)
前記組成物中のヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の濃度が、
(a)約0.1mg/mlと約100mg/mlとの間、
(b)約1mg/mlと約100mg/mlとの間、および
(c)約10mg/mlと約100mg/mlとの間、からなる群から選択される、項目17に記載の組成物。
(項目23)
ヒト成長ホルモン欠損症に関連するかヒト成長ホルモン治療によって改善する障害を有する哺乳動物を治療するための方法であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量の項目1、項目2、項目3、もしくは項目4のいずれか1項に記載の結晶または項目17に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目24)
哺乳動物の体重増加を誘導する方法であって、該方法は、該哺乳動物に治療有効量の項目1、項目2、項目3、もしくは項目4のいずれか1項に記載の結晶または項目17に記載の組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目25)
前記哺乳動物が下垂体摘出ラットであり、週1回の注射による前記結晶の投与後の該ラットで誘導された体重増加が5%と約40%との間である、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記障害が、成人成長ホルモン欠損症、小児成長ホルモン欠損症、プラダー・ウィリ症候群、ターナー症候群、短腸症候群、慢性腎機能不全、特発性低身長、小人症、下垂体性小人症、骨再生、女性不妊症、胎内発育遅延、AIDS関連悪液質、クローン病、および火傷からなる群から選択される、項目23に記載の方法。
(項目27)
前記障害が小児成長ホルモン欠損症であり、前記方法により前記哺乳動物の年率換算の成長率が約7cmと約11cmとの間になる、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記結晶または組成物を、経口経路、非経口経路、皮下経路、または筋肉内経路によって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目29)
前記結晶または組成物を、27またはそれ以上のゲージのニードルを使用した皮下経路によって前記哺乳動物に投与する、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記結晶または組成物を、無針注射器またはメタ用量注入ポンプによって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目31)
前記結晶または組成物を、
(a)3日毎に約1回、
(b)1週間に約1回、
(c)2週間毎に約1回、および
(d)1ヶ月毎に約1回からなる群から選択される時間治療計画によって前記哺乳動物に投与する、項目23または項目24に記載の方法。
(項目32)
前記哺乳動物がヒトである、項目23または項目24に記載の方法。
(項目33)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化溶液とを混合する工程であって、該結晶化溶液が、カルシウム塩または1価のカチオン塩およびイオン性ポリマーを含み、該イオン性ポリマーがプロタミンまたはポリアルギニンである、工程、
(b)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶が生成されるまで約4℃と約37℃との間の温度で約12時間を超えてインキュベートする工程とを包含する、方法。
(項目34)
前記イオン性ポリマーがポリリジンである、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記イオン性ポリマーが、任意の2つまたはそれ以上のプロタミン、ポリアルギニン、およびポリリジンの混合物である、項目33に記載の方法。
(項目36)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程、
(b)該結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程、
(c)該結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程と、
(d)該結晶化溶液にカルシウム塩または1価のカチオン塩を添加する工程と、
(e)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間の温度で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程、
(f)該ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶にイオン性ポリマーまたはイオン性小分子を添加する工程とを包含する、方法。
(項目37)
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶を生成するための方法であって、該方法は、
(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程、
(b)該結晶化溶液に脱イオン水を添加する工程、
(c)該結晶化溶液にイオン性小分子またはイオン性ポリマーを添加する工程、
(d)該結晶化溶液にカルシウム塩または1価のカチオン塩を添加する工程、
(e)該結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間の温度で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程とを包含する、方法。
(項目38)
前記方法が、工程(b)の後かつ工程(c)の前に、前記結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程を包含する、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記カルシウム塩が、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目40)
前記カルシウム塩が酢酸カルシウムである、項目39に記載の方法。
(項目41)
前記1価のカチオンが、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目42)
前記1価のカチオンがナトリウムである、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記1価のカチオン塩が、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記1価のカチオン塩が酢酸ナトリウムである、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記結晶化溶液がpH緩衝液をさらに包含する、項目33に記載の方法。
(項目46)
前記pH緩衝液のpHが、
(a)約pH6と約pH10との間、
(b)約pH7.0と約pH10との間、
(c)約pH6と約pH9との間、および
(d)約pH7.8と約pH8.9との間からなる群から選択される、項目45に記載の方法。
(項目47)
前記pH緩衝液が、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群か
ら選択される緩衝液である、項目45に記載の方法。
(項目48)
前記沈殿剤が、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである、項目36または項目38に記載の方法。
(項目49)
前記非イオン性ポリマーが、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される、項目48に記載の方法。
(項目50)
前記ポリエチレングリコールの分子量が、
(a)約200と約8000との間の分子量、
(b)約6000の分子量、
(c)約4000の分子量、および
(d)約3350の分子量からなる群から選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記ポリエチレングリコールが、前記結晶化溶液中に、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で存在する、項目50に記載の方法。
(項目52)
前記沈殿剤が、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目38に記載の方法。
(項目53)
前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、
(a)約1mg/mlと約1,000mg/mlとの間の濃度、
(b)約2mg/mlと約50mg/mlとの間の濃度、
(c)約10mg/mlと約25mg/mlとの間の濃度からなる群から選択される濃度で存在する、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記カルシウム塩または前記1価のカチオン塩が、前記結晶化溶液中に、
(a)約0.01Mと約1Mとの間の濃度、および
(b)約25mMと約205mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で存在する、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記結晶化溶液は、
(a)約33℃で約0.25日間と約2日間との間、
(b)約25℃で約0.25日間と約2日間との間、および
(c)約15℃で約0.25日間と約2日間との間からなる群から選択される時間および温度でインキュベートされる、項目33、項目36、または項目37のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記イオン性小分子が、アミノ酸、ペプチド、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目57)
前記イオン性ポリマーが、プロタミン、ポリサッカリド、ポリアミノ酸、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリグルタミン酸塩、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目58)
前記イオン性ポリマーが、プロタミンまたはポリアルギニンである、項目57に記載の方法。
(項目59)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記結晶化溶液は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶または1価のカチオン結晶が形成されるまで、約4℃と約40℃の間の温度で約4時間と約48時間との間インキュベートされる、項目36または項目37に記載の方法。
(項目60)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目61)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体が、前記結晶化溶液中に、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目62)
前記結晶化緩衝液が、Tris−HCl緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、Bis−Tris緩衝液、AMP緩衝液、AMPD緩衝液、AMPSO緩衝液、ビシン緩衝液、エタノールアミン緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、TAPS緩衝液、タウリン緩衝液、トリアン緩衝液、およびその混合物からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目63)
項目36に記載の工程(a)または項目37に記載の工程(a)において、前記結晶化緩衝液が、前記結晶化溶液中に、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する、項目36または項目37に記載の方法。
(項目64)
工程(a)において、前記結晶化緩衝液のpHが、
(a)約pH3と約pH10との間、
(b)約pH6と約pH9との間、および
(c)約pH7.5と約pH10との間からなる群から選択される、項目36または項目37に記載の方法。
(項目65)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記結晶化溶液中の結晶化緩衝液のpHにより、前記溶液が、
(a)約pH3と約pH10との間、
(b)約pH6と約pH9.5との間、および
(c)約pH7.5と約pH9.5との間からなる群から選択されるpHとなる、項目36または項目37に記載の方法。
(項目66)
前記緩衝液が、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される、項目64または項目65に記載の方法。
(項目67)
前記酢酸カルシウムが、
(a)約pH3.0と約pH9.0との間、および
(b)約pH7.0と約pH8.6との間からなる群から選択されるpHを有する水溶液の形態である、項目40に記載の方法。
(項目68)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記酢酸カルシウムが、
(a)約0.1mMと約205mMとの間の濃度、および
(b)約85mMと約100mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で前記結晶化溶液中に存在する、項目40に記載の方法。
(項目69)
前記酢酸ナトリウムが、
(a)約pH3.0と約pH9.0との間、および
(b)約pH7.0と約pH8.6との間からなる群から選択されるpHを有する水溶液の形態である、項目44に記載の方法。
(項目70)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記酢酸ナトリウムが、
(a)約0.5mMと約800mMとの間の濃度、および
(b)約100mMと約500mMとの間の濃度からなる群から選択される濃度で前記溶液中に存在する、項目45に記載の方法。
(項目71)
項目36に記載の工程(e)または項目37に記載の工程(e)において、前記溶液は、約4℃と約37℃との間の温度で約1日間と約2日間との間インキュベートされる、項目36または項目37に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、光学顕微鏡によって画像化した860mMリン酸アンモニウム(pH8.9)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例1を参照のこと。
【図2】図2は、光学顕微鏡によって画像化した390mMクエン酸ナトリウムの存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例2を参照のこと。
【図3】図3は、光学顕微鏡によって画像化した600mM第二リン酸ナトリウムおよび100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例3を参照のこと。
【図4】図4は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウムおよび100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させ、硫酸プロタミン(1mg/ml)で同時結晶化したhGH結晶を示す。実施例4を参照のこと。
【図5】図5は、時間の関数としておよび280nmでモニタリングした、リン酸アンモニウム、クエン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、および酢酸カルシウム/プロタミン沈殿剤から作製したhGHの溶解性を示す。実施例5を参照のこと。
【図6】図6は、光学顕微鏡によって画像化した10%(v/v)イソプロパノール、85mM酢酸カルシウム、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例6を参照のこと。
【図7】図7は、光学顕微鏡によって画像化した5%(v/v)イソプロパノール、85mM塩化カルシウム、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例7を参照のこと。
【図8】図8は、光学顕微鏡によって画像化した10%(v/v)エタノール、10%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例8を参照のこと。
【図9】図9は、時間(分)の関数として280nmでモニタリングした実施例6〜8にしたがって成長させたhGH結晶の溶解性を示す。実施例9を参照のこと。
【図10】図10は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例10を参照のこと。
【図11】図11は、光学顕微鏡によって画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例11を参照のこと。
【図12】図12は、光学顕微鏡によって画像化した85mM塩化カルシウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例12を参照のこと。
【図13】図13は、光学顕微鏡によって画像化した85mM酢酸カルシウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させ、硫酸プロタミン(1mg/ml)で同時結晶化したhGH結晶を示す。実施例13を参照のこと。
【図14】図14は、光学顕微鏡によって画像化した125mM酢酸カルシウム、6%(v/v)PEG−MME−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例14を参照のこと。
【図15】図15は、時間(分)の関数として280nmでモニタリングした実施例10〜14にしたがって成長させたhGH結晶の溶解性を示す。実施例15を参照のこと。
【図16】図16は、ラットあたり2.5mg/kgの可溶性または結晶hGHの単回皮下投与から24時間後にサンプリングした雌Sprague−Dawleyラットにおける市販のhGH(可溶性hGH)および実施例10にしたがって調製したhGFH(結晶hGH)の血清レベル(ng/ml)を示す。t=0、0.5、1、2、4、6、8、12、および24時間で血清レベルを測定した。実施例16を参照のこと。
【図17】図17は、種々の量の硫酸プロタミンの添加時のhGH結晶(85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で形成)の溶解特性を示す。次いで、hGH結晶のこれらの種々の処方物を、溶解緩衝液に添加し、1時間静置し、その後上清中の可溶性hGHの濃度をRP−HPLC法(Area)によって測定した。実施例17を参照のこと。
【図18A】図18Aは、TEMよって長手方向に画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例18を参照のこと。
【図18B】図18Bは、TEMよって断面を画像化した500mM酢酸ナトリウム、6%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6)の存在下で成長させたhGH結晶を示す。実施例18を参照のこと。
【図19A】図19Aは、ラットあたり6.7mg/kgのhGHの7日間にわたる毎日の皮下投与または7日間にわたる単回投与のいずれかから168時間後(0〜72時間を示す)にわたりサンプリングした雌Sprague−Dawleyラットの第3群〜第5群および第9群におけるhGHの血清レベル(ng/ml)を示す。実施例22および表7〜12を参照のこと。
【図19B】図19Bは、ラットあたり6.7mg/kgのhGHの7日間にわたる毎日の皮下投与(第2群)または7日間の第1日目における単回皮下投与(第4群および第9群)のいずれかから8日後にわたる選択処方物(第2群、第4群、および第9群)の雌Sprague−Dawleyラットの体重増加(g)を示す。実施例22および表13を参照のこと。
【図20A】図20Aは、表16にしたがって、可溶性hGH(第1群)、ポリアルギニンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清hGH濃度を示す。実施例23を参照のこと。
【図20B】図20Bは、表18にしたがって、可溶性hGH(第1群)、ポリアルギニンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清IGF−1濃度を示す。実施例23を参照のこと。
【図21A】図21Aは、表20にしたがって、可溶性hGH(第1群)、プロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=3:1)(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=2:1)(第3群)を毎日皮下投与した幼若雌カニクイザルについての時間の関数としての血清hGH濃度を示す。実施例24を参照のこと。
【図21B】図21Bは、表22にしたがって、可溶性hGH(第1群)、プロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=3:1)(第2群)、およびプロタミンと複合体化したhGHのナトリウム結晶(hGH:プロタミン=2:1)(第3群)を毎日皮下投与した雌幼若カニクイザルについての時間の関数としての血清IGF−1濃度を示す。実施例24を参照のこと。
【図22】図22は、表25に従って、コントロール(第1群、7日間にわたり毎日1回)、可溶性hGH(第4群および第5群、7日間にわたり毎日1回)、および結晶hGH(第6群、第7群、第9群、および第10群、7日間にわたり1回)を皮下投与した雄Wistarラットの7日間の成長を示す。実施例25を参照のこと。
【図23】図23は、表26に従って、コントロール(第1群、7日間にわたり毎日1回)、可溶性hGH(第4群および第5群、7日間にわたり毎日1回)、および結晶hGH(第6群、第7群、第9群、および第10群、7日間にわたり1回)皮下投与した雄Wistarラットの7日間にわたる毎日の誘導体重増加(g)を示す。実施例25を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(定義)
本明細書中の他で定義しない限り、本発明に関連して使用した科学用語および技術用語は、当業者によって一般に理解されている意味を有するべきである。さらに、他の文脈で必要でない限り、単数形の用語には複数形が含まれ、複数形の用語には単数形が含まれるべきである。一般に、本明細書中に記載のカラムクロマトグラフィ、光学顕微鏡法、UV−VIS分光法、薬物動態学分析、組換えDNA法、ペプチドおよびタンパク質化学、核酸化学、および分子生物学と共におよびその技術で使用される用語は当該分野で周知であり、かつ一般的に使用されている用語である。
以下の用語は、他で示さない限り、以下の意味を有すると理解すべきである。
【0017】
用語「成長ホルモン(GH)」は、一般に、哺乳動物下垂体によって分泌される成長ホルモンをいう。完全なリストではないが、哺乳動物の例には、ヒト、類人猿、サル、ラット、ブタ、イヌ、ウサギ、ネコ、ウシ、ウマ、マウス、ラット、およびヤギが含まれる。本発明の好ましい実施形態によれば、哺乳動物はヒトである。
【0018】
「ヒト成長ホルモン(hGH)」は、天然のヒト成長ホルモンに特徴的なアミノ酸配列、構造、および機能を有するタンパク質を示す。本明細書中で使用される、「ヒト成長ホルモン(hGH)」には、天然のヒト成長ホルモンの任意のイソ型(分子量が5kDa、17kDa、20kDa、22kDa、24kDa、36kDa、および45kDaのイソ型が含まれるが、これらに限定されない)も含まれる(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998))。したがって、用語hGHには、天然のhGH(ソマトトロピン)の191個のアミノ酸配列およびN末端メチオニンを含む192個のアミノ酸配列(Met−hGH)およびソマトレムが含まれる(米国特許第4,342,832号および同第5,633,352号)。生物源からの単離および精製または組換えDNA法によってhGHを得るとことができる。組換えDNAテクノロジーによって作製される場合、hGHは組換えヒト成長ホルモン(rhGH)と呼ぶ。Met−hGHは、典型的には、組換えDNA法によって調製する。
【0019】
用語「ヒト成長ホルモン誘導体」は、天然に存在するヒト成長ホルモンに類似のアミノ酸配列を有するタンパク質をいう。用語「類似の」は、hGHの191個のアミノ酸配列またはMet−hGHの192個のアミノ酸配列と2%と100%との間で相同なアミノ酸配列をいう。本発明の種々の実施形態では、ヒト成長ホルモン誘導体は、hGHまたはMet−hGHの有機カチオン、生物学的に合成されたhGHまたはMet−hGHタンパク質の置換、欠失、および挿入変異型、翻訳後修飾hGHおよびMet−hGHタンパク質(脱アミド化、リン酸化、グリコシル化、アセチル化、凝集、および酵素切断反応が含まれる)(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998))、生物源由来の化学修飾hGHまたはMet−hGHタンパク質、hGHまたはMet−hGHに類似のアミノ酸配列を含むポリペプチドアナログおよび化学合成ペプチドを含む。
【0020】
hGHまたはMet−hGHを調製するために使用する方法には、生物源からの単離、組換えDNA法、合成化学経路、またはその組み合わせが含まれる。今日まで、hGHの異なるDNA配列をコードする遺伝子には、hGH−NおよびhGH−Vが含まれる(Haroら、J.Chromatography B,720,39−47(1998);Bennani−Baitiら、Genomics,29,647−652(1995))。
【0021】
用語「原子価」は、他の元素と組み合わされて原子の最外殻の電子数によって予想され、その原子と結合する(または置換する)ことができる水素原子(または任意の他の標準的な1価の元素)の数として示される元素の能力と定義する(Webster’s New World Dictionary of Science,Lindley,D.and Moore T.H.,Eds.,Macmillan,New York,New York,1998)。用語「1価のカチオン」および「2価のカチオン」は、それぞれ1つまたは2つの原子価状態を有する正電荷のイオンをいう。異なる原子価状態を有するカチオンは、事実上有機または無機であり得る。1価の無機カチオンの例には、アンモニウム(NH4+)および周期表の1族の元素(H+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、およびFr+)が含まれ、2価の無機カチオンには、2族の元素(Be2+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、CO2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+、Cd2+、Mo2+、およびRa2+)が含まれる。
【0022】
「ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶」は、2価のカルシウムイオンの存在下で結晶化されたヒト成長ホルモンまたはその誘導体をいう。2価のカルシウムイオンを、カルシウム塩として結晶化溶液に導入する。好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約500個までのカルシウム分子を含む。より好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体のカルシウム結晶は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約140個までのカルシウム分子を含む。
【0023】
用語「カルシウム塩」には、カルシウムイオンとイオン結合を形成する無機および有機の対イオンまたは分子の両方が含まれる。異なるカルシウム塩の例には、酢酸カルシウム水和物、酢酸カルシウム1水和物、カルシウムアセチルアセトン水和物、L−アスコルビン酸カルシウム2水和物、カルシウムビス(6,6,7,7,8,8,8−ヘプタフルオロ−2,2−ジメチル−3,5−オクタンジオネート)、カルシウムビス(2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)、臭化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化カルシウム2水和物、塩化カルシウム6水和物、塩化カルシウム水和物、クエン酸カルシウム4水和物、リン酸二水素カルシウム、2−エチルヘキサン酸カルシウム、フッ化カルシウム、グルコン酸カルシウム、水酸化カルシウム、次亜塩素酸カルシウム、ヨウ素酸カルシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化カルシウム水和物、カルシウムイオノフォアI、モリブデン酸カルシウム、硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸カルシウム水和物、酸化カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、および硫酸カルシウムが含まれる。本発明の好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、およびグルコン酸カルシウムからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウムである。
【0024】
「ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の有機カチオン結晶」は、有機カチオンの存在下で結晶化したヒト成長ホルモンをいう。用語「有機カチオン」は、炭素を含む正電荷の原子または原子群をいう。有機カチオンの例には、第四級アンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウム(TEA)、トリブチルメチルアンモニウム(TBuMA)、臭化エチルプロカインアミド(PAEB)、メトヨウ化アジドプロカインアミド(APM)、d−ツボクラリン、メトクリン、ベクロニウム、ロクロニウム、1−メチル−4−フェニルピリジニウム、コリン、およびN−(4,4−アキソ−n−ペンチル)−21−デオキシアジュマリニウム(APDA)が含まれる。
【0025】
hGHは凍結乾燥形態で市販されており、典型的には、組換えDNA法で製造されている。本発明によれば、hGHの結晶化は、一般に、hGHの緩衝化溶液の調製、精製および/または脱塩、溶液の透析および濃縮、ならびに溶液への1価または2価のカチオンもしくは塩の添加によって行われる。後者の工程により、hGHに結合した有機または無機カチオンが形成される。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態は、hGHまたはhGH誘導体の1価のカチオン結晶に関する。より好ましい実施形態では、1価のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、1価のカチオンはナトリウムである。最も好ましい実施形態では、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体は、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の単量体または単量体鎖あたり約1個から約500個までのカチオン分子を含む。
【0027】
用語「1価のカチオン塩」には、1価のイオンとイオン結合を形成する無機および有機の対イオンまたは分子の両方が含まれる。好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウム塩である。より好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、ナトリウム塩は酢酸ナトリウムである。
【0028】
本発明の別の好ましい実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のプロタミン結晶に関する。同様に、さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、hGHまたはhGH誘導体のポリアルギニン結晶に関する。
【0029】
本発明のさらに好ましい実施形態は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体化または同時結晶化したhGHまたはhGH誘導体の1価または2価の結晶を含む。より好ましくは、結晶は、プロタミンまたはポリアルギニンと複合体化または同時結晶化したナトリウム結晶である。
【0030】
hGHの可溶性形態を、種々の方法(逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)、および疎水性クロマトグラフィ(HIC)が含まれる)によって特徴づけることができる(Wuら、J.Chromatography,500,595−606(1990);「Hormone Drugs」,FDA publication,(1982))。他方では、hGHの結晶形態を、光学顕微鏡法およびX線回折によって特徴づけることができる。一般に、結晶化条件は、タンパク質結晶の形状(すなわち、球体、針状、棒状、平面(六方晶系および四角形)、長斜方形、立方体、両錐、および角柱からなる群から選択される形状)で決定される。
【0031】
本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶は、光学顕微鏡法を使用して画像化した場合、棒様形態または針様形態を形成している。1つの実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約0.1μmと約200μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約3μmと約100μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。より好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、約10μmと約25μmとの間の長さの棒形態または針形態を形成する。
【0032】
本発明の別の実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む組成物に関する。さらに別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約1:250〜約1:20でこのような組成物中に存在する。別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約3:1〜約1:10で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤は、hGH:賦形剤のモル比が約1:10〜約1:0.125で存在する。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、ポリアルギニンまたはプロタミンで結晶化またはコーティングすることができる酢酸ナトリウムで成長させる。
【0033】
ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶を、任意の薬学的に許容可能な賦形剤と組み合わせることができる。本発明によれば、「薬学的に許容可能な賦形剤」は、薬学的組成物中で使用される充填剤または充填剤の組み合わせとして作用する賦形剤である。このカテゴリーに含まれる好ましい賦形剤は、以下である:1)グリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アスパラギン、グルタミン、プロリンなどのアミノ酸、2)炭水化物(例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、リボースなどのモノサッカライドなど)、3)ラクトース、トレハロース、マルトース、スクロースなどのジサッカリド、4)マルトデキストリン、デキストラン、デンプン、グリコーゲンなどのポリサッカリド、5)マンニトール、キシリトール、ラクチトール、ソルビトールなどのアルジトール、6)グルクロン酸、ガラクツロン酸、7)メチルシクロデキストリン、およびヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、8)塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カリウム、ホウ酸、炭酸アンモニウム、ならびにリン酸アンモニウムなどの無機分子、9)酢酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、乳酸塩などの有機分子、10)アカシア、ジエタノールアミン、モノステアリン酸グリセリル、レシチン、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロクサマー、ポリソルベート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸、モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、および他のソルビタン誘導体、ポリオキシル誘導体、ワックス、ポリオキシルエチレン誘導体、ソルビタン誘導体などの乳化剤または可溶化剤/安定剤、ならびに11)寒天、アルギン酸およびその塩、グアーガム、ペクチン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、セルロースおよびその誘導体、炭酸プロピレン、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、チロキサポールなどの増粘剤。このような化合物の塩も使用することができる。さらに好ましい賦形剤群には、スクロース、トレハロース、ラクトース、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、イノシトール、ナトリウムおよびカリウム塩(酢酸、リン酸、クエン酸、およびホウ酸など)、グリシン、アルギニン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、ポリリジン、およびポリアルギニンが含まれる。
【0034】
本発明の1つの実施形態では、賦形剤は、アミノ酸、塩、アルコール、炭水化物、タンパク質、脂質、界面活性剤、ポリマー、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。好ましい実施形態では、賦形剤は、プロタミン、ポリビニルアルコール、シクロデキストリン、デキストラン、グルコン酸カルシウム、ポリアミノ酸(ポリアルギニン、ポリリジン、およびポリグルタミン酸など)、ポリエチレングリコール、デンドリマー、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、キトサン、およびその混合物からなる群から選択される。より好ましい実施形態では、賦形剤は、プロタミン、ポリアルギニン、ポリエチレングリコール、およびその混合物からなる群から選択される。
【0035】
本発明のヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶を、キャリアまたは賦形剤(治療薬に添加した場合にその作用を促進するか改良する物質)と組み合わせることもできる(The On− Line Medical Dictionary,http://cancerweb.ncl.ac.uk/omd/index.html)。キャリアまたは賦形剤の例には、例えば、リン酸などの緩衝剤、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩、または電解質(硫酸プロタミン、リン酸一水素二ナトリウム、塩化ナトリウム、亜鉛片、コロイド状シリカ、マグネシウム、トリシリケート、セルロースベースの物質、およびポリエチレングリコールなど)が含まれる。ゲルベース形態のキャリアまたは賦形剤には、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール、およびウッドワックスアルコールが含まれ得る。
【0036】
さらにより好ましい実施形態では、賦形剤はプロタミンである。さらに、hGHまたはhGH誘導体およびプロタミンの結晶は、hGH:プロタミン比が約5:1〜約1:10(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。最も好ましくは、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約3:1と約1:10との間(w/w)である。別の実施形態では、この比は、約5:1と約40:1との間(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0037】
本発明の別の態様では、薬学的に許容可能な賦形剤は、ポリアミノ酸(ポリリジン、ポリアルギニン、およびポリグルタミン酸が含まれる)からなる群から選択される。本発明の好ましい実施形態では、賦形剤はポリリジンである。より好ましい実施形態では、ポリリジンの分子量は、1,500kDと約8,000kDとの間である。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体およびポリリジンの結晶は、hGH:ポリリジン比が約5:1〜約40:1(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約5:1〜約1:50(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0038】
本発明のさらに別の好ましい実施形態では、賦形剤はポリアルギニンである。より好ましい実施形態では、ポリアルギニンの分子量は、約15,000kDと約60,000kDとの間である。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体およびポリアルギニンの結晶は、hGH:ポリアルギニン比が約5:1〜約40:1(w/w)で存在する。この比はまた、約10:1〜約20:1(w/w)の範囲であり得る。より好ましくは、この比は、約12:1〜約3:1(w/w)の範囲である。別の実施形態によれば、この比は、約5:1〜約1:50(w/w)である。別の実施形態では、この比は、約12:1〜約15:1(w/w)である。さらなる実施形態では、この比は、約5:1(w/w)である。
【0039】
本発明の1つの実施形態は、約20mg/mlのhGHまたはhGH誘導体の結晶を含む注射用結晶懸濁液を含む。この懸濁液は、再懸濁の容易さ、ゆっくりとした沈殿、および約7日間の時間作用プロフィールによって特徴づけられる。これを、30ゲージのシリンジを使用して1週間に1回注射することができ、80%の有効負荷レベルが得られる。0.02%の凝集(SE−HPLC)および2.3%の関連タンパク質(RP−HPLC)のパラメーターを反映させたところ、この懸濁液は純粋である。この純度を、冷蔵条件下で少なくとも4ヶ月維持する。
【0040】
本発明の1つの実施形態は、個体に導入した場合に従来の可溶性hGHまたはhGH誘導体の処方物と比較して遅延した溶解挙動を示すことが特徴づけられたhGHまたはhGH誘導体の結晶に関する。本発明によれば、hGHまたはhGH誘導体の結晶の溶解を、in vitroまたはin vivo溶解パラメーターのいずれかによって特徴づける。例えば、in vitro溶解は、15分間あたりまたは連続的溶解プロセス中の洗浄工程あたりに得られる可溶性hGHの濃度(最初に存在する全hGHまたはhGH誘導体の結晶比率またはmgとして示す)と説明される(実施例5を参照のこと)。本発明の1つの実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、37℃で溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)への曝露時の洗浄工程あたり約2%と約16%との間の結晶のin vitro溶解速度によって特徴づけ、hGHまたはhGH誘導体は、溶液中に約2mg/mlの濃度で存在する。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、連続的溶解プロセスにおける洗浄工程あたり約0.04mg〜約0.32mgの前記結晶のin vitro溶解速度によって特徴づける(実施例5を参照のこと)。他方では、in vivo溶解を、哺乳動物へのhGHの単回注射後の長期にわたる哺乳動物内での血清hGHレベルによって説明する。
【0041】
哺乳動物では、GHは、IGF−1(言い換えると、細胞分裂および代謝過程で役割を果たすタンパク質)を合成および分泌するように組織を刺激する。当業者に認識されているように、血清hGHおよびIGF−1レベルは、多数の要因(生理学的および治療関連因子が含まれる)に依存する。このような要因には、以下が含まれるが、これらに限定されない:年齢および骨年齢、性別、体重、発達段階(例えば、思春期でのレベルの増加)などの生理学的要因ならびに用量、投与速度(速度)および投与経路などの治療関連要因。また、当業者は、安全性および有効性の両観点から、異なる患者集団には異なるhGHおよびIGF−1レベルが有利であり得ることを認識する。
【0042】
種々のhGH機能不全、病態、または症候群を罹患した成人または小児を、本発明のhGH結晶またはhGH誘導体結晶を使用した種々のhGHの外因的輸送治療計画によって治療することができる。例えば、内分泌学者は、小児には、約0.2mg/kg/週の用量、治療の数週間または数ヵ月後に約0.3mg/kg/週に増加させた用量、思春期あたりで約0.7mg/kg/週にさらに増加させた用量を使用して治療を開始することができる。当業者に認識されるように、hGH輸送を必要とする成人または小児に投与されたhGHのこのような外因的輸送レベルはまた、hGHの既存の生理学的レベルまたは濃度に依存する。
【0043】
成人または小児におけるhGHの投薬計画は、通常mg/mlまたは国際単位(IU/kg)で示される。このような治療計画を、一般に、日または週のいずれかについて計画する(すなわち、mg/kg/日またはmg/kg/週)。これらを考慮して、本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与(例えば、30kgの小児あたり約9mgの毎週の単回投与)により、in vivo hGH血清濃度は、投与1日後および2日後に約10ng/mlを超え、投与3日後および4日後に約5ng/mlを超え、投与5〜7日後に約0.3ng/mlを超える。あるいは、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約0.5時間後と約10日後、7日後、または1日後のいずれかとの間で約0.3ng/ml〜約2,500ng/ml hGH、好ましくは約0.5ng/ml〜約1,000ng/ml hGH、最も好ましくは約1ng/ml〜約100ng/ml hGHになる。同様に、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、前記哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約10日後、7日後、または1日後のいずれかで約2ng/ml hGHを超え、好ましくは約5ng/ml hGHを超え、最も好ましくは約10ng/ml hGHを超える。本発明のより好ましい実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、哺乳動物におけるin vivo hGH血清濃度は、投与約0.5時間後と約40日後との間、好ましくは投与約10日後、7日後、または1日後のいずれか任意の期間で約0.3ng/ml hGHを超える。本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の1週間に1回の投与により、in vivo hGH血清濃度は、投与1日後および2日後では約10ng/ml hGHを超え、投与3日後および4日後では約5ng/ml hGHを超え、投与5〜7日後では約0.3ng/ml hGHを超える。さらなる実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo hGH血清濃度は、投与0.5時間後と10日後との間で約0.3ng/ml hGHを超える。
【0044】
本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、上記投与前のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivo IGF−1血清上昇は、投与約10時間後から約72時間後までに約50ng/mlを超え、投与72時間後から約15日後、好ましくは投与約10日後に約0.5ng/ml〜約50ng/mlになる。あるいは、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo IGF−1血清上昇は、投与約0.5時間後〜約40日後、好ましくは投与約7日後に約5ng/ml〜約2,500ng/ml、好ましくは、約100ng/ml〜約1,000ng/mlになる。あるいは、本発明によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、in vivo IGF−1血清上昇は、投与約0.5時間後〜約40日後まで、好ましくは投与約7日後に約50ng/ml超え、好ましくは約100ng/mlを超え得る。本発明の1つの実施形態によれば、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物の単回投与により、前記投与前のベースラインIGF−1レベルを超えるin vivo IGF−1血清上昇は、投与約10時間後から約72時間後までに約50ng/mlを超え、投与72時間後から約15日後または投与約72時間後〜約10日後に約0.5ng/ml〜約50ng/mlになる。
【0045】
本発明によれば、単回投与を、投与体積が0.1mlと約1.5mlとの間である、約0.01mg/kg/週〜約100mg/kg/週のhGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはこのような結晶を含む組成物と定義する。例えば、小児成長ホルモン欠損症には、約0.3mg/kg/週(例えば、30kgの小児あたり約9mg)のhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物を投与することができる。ターナー症候群には、約0.375mg/kg/週(例えば、30kgの小児あたり約11.25mg)のhGH結晶もしくはhGH誘導体結晶またはこのような結晶を含む組成物を投与することができる。さらに、成人成長ホルモン欠損症には、約0.2mg/kg/週(例えば、80kgの成人あたり約16mg)のhGHを投与することができる。AIDS消耗疾患には、6mg/日(例えば、42mg/週)のhGHを投与することができる。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、hGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこのような結晶を含む組成物は、哺乳動物において可溶性hGHと同様の相対生物学的利用能を示す。可溶性hGHおよび前記結晶の総in vivo hGH血清濃度の濃度曲線下面積(AUC)によって測定した本発明の結晶の相対生物学的利用能は、同一経路(例えば、皮下または筋肉内注射)によって輸送された可溶性hGHと比較して少なくとも50%またはそれ以上である。したがって、hGHまたはhGH誘導体の結晶を、有利なin vivo溶解速度によって特徴づける。
【0047】
本発明は、さらに、hGHまたはhGH誘導体の結晶をヒト成長ホルモン欠損症に関連するかhGH治療によって改善する障害を有する哺乳動物に投与する方法を提供する。この方法は、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を投与する工程を含む。あるいは、この方法は、有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶のみを含むか賦形剤と組み合わせた組成物を哺乳動物に投与する工程を含む。本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶の種々の実施形態は、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶、1価の結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶である。このような結晶またはこれを含む組成物を、3日毎に約1回、1週間に約1回、2週間毎に約1回、または毎月約1回の時間投与計画によって投与することができる。
【0048】
本発明によって治療することができるhGH機能不全に関連する障害には、成人成長ホルモン欠損症、小児成長ホルモン欠損症、プラダー・ウィリ症候群、ターナー症候群、短腸症候群、慢性腎機能不全、特発性低身長、小人症、下垂体性小人症、骨再生、女性不妊症、胎内発育遅延、AIDS関連悪液質、クローン病、火傷、ならびに他の遺伝子障害および代謝障害が含まれるが、これらに限定されない。本発明の1つの実施形態では、障害は小児成長ホルモン欠損症であり、治療を受けた小児の年率換算の成長率が約7cmと約11cmとの間になる。
【0049】
本発明の別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体のカルシウム結晶は、哺乳動物の骨治療およびヒト成長ホルモン欠損症治療の有用な補助薬として作用することができる。
【0050】
本発明はまた、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶を前記哺乳動物に投与する工程を含む、哺乳動物の体重増加を誘導する方法を提供する。あるいは、このような方法は、哺乳動物に治療有効量のhGHまたはhGH誘導体の結晶および賦形剤を含む組成物を投与する工程を含む。このような方法の1つの実施形態では、週1回の注射による前記結晶投与後の下垂体摘出ラットで誘導された体重増加は、約5%と約40%との間である。
【0051】
hGHの結晶、hGH誘導体の結晶、またはこれらのみまたは賦形剤と共に含む組成物を、単独または薬学的調製物、治療調製物、もしくは予防調製物の一部として投与することができる。これらを、任意の従来の投与経路(例えば、非経口、経口、肺、鼻腔、耳、肛門、真皮、眼、静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、粘膜、舌下、皮下、経皮、局所、口腔、または頭蓋内が含まれる)によって投与することができる。
【0052】
本発明の1つの実施形態では、賦形剤を含むか含まないhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこれを含む組成物を、経口経路または非経口経路によって投与する。好ましい実施形態では、賦形剤を含むか含まないhGHもしくはhGH誘導体の結晶またはこれを含む組成物を、皮下経路または筋肉内経路によって投与する。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明の結晶または組成物を、27またはそれ以上のゲージのニードルを使用した皮下経路によって投与する。本発明の1つの実施形態では、ニードルゲージは、30であり得る。結晶または組成物を、プレフィルドシリンジまたはメタ用量注入ポンプから投与することができる。あるいは、無針注入器によってこれらを投与することができる。
【0054】
本発明により、hGHを哺乳動物に有利に放出することが可能である。1つの実施形態では、本発明の結晶または組成物を、週に約1回投与する。別の実施形態では、本発明の結晶または組成物を、2週間毎に約1回投与する。さらに別の実施形態では、本発明の結晶または組成物を、毎月約1回投与する。特定の治療計画は、治療すべき疾患、治療すべき患者の年齢および体重、患者の全身的な身体状態、および治療を担当する医師の判断などの要因に依存することが当業者に認識される。
【0055】
1つの実施形態によれば、本発明のhGHまたはhGH誘導体の結晶を含む組成物を、約0.1mg/mlを超えるhGH濃度によって特徴づける。例えば、濃度は、0.1mg/mlと100mg/mlとの間であり得る。あるいは、組成物を、約1mg/mlと約100mg/mlとの間または10mg/mlと約100mg/mlとの間のhGH濃度によって特徴づけることができる。このような組成物には、以下の成分も含まれる:マンニトール−約5mg/ml〜約100mg/ml;酢酸ナトリウム−約5mM〜約250mM(好ましくは、25mM〜約150mM);Tris HCl−約5mM〜約100mM;約pH6.0〜約pH9.0(好ましくは、約6.5〜約8.5);PEG(MW800〜8000、好ましくは3350、4000、6000、または8000)−0〜約25%;プロタミン(好ましくは、hGH:プロタミン=3:1);およびポリアルギニン(好ましくは、hGH:ポリアルギニン=5:1)。このような組成物は、任意選択的に、スクロース−0mg/ml〜約100mg/ml;アミノ酸(例えば、アルギニンおよびグリシン)−0mg/ml〜約50mg/ml;防腐剤(抗菌薬、フェノール、メタクレゾール、ベンジルアルコール、パラベンゾエート(パラベン))−0%〜約5%(好ましくは0%〜約0.9%);およびポリソルベート−0mg/ml〜約10mg/mlを含み得る。1つの実施形態によれば、本発明の組成物を、80%有効負荷によって特徴づける。
【0056】
本発明の好ましい処方賦形剤は、約100mM酢酸ナトリウム、約5%PEG6000MW、および約25mM Tris.HCl(pH7.5)を含む。このような賦形剤を使用して調製したhGH組成物は、約9.35mg/ml結晶hGHおよび約1.81mg/mlポリアルギニン(または約3.12mg/mlプロタミン)を含み得る。当業者に認識されるように、本発明の組成物のhGH濃度が約1mg/ml〜約100mg/mlであり得る場合、rhGH:ポリアルギニン(w/w)比を5:1またはhGH:プロタミン比(w/w)を3:1に維持し、かつ約5ng/mlのhGHの低溶解性および放出の維持に十分なように、ポリアルギニン(またはプロタミン)濃度を適宜調製すべきである。例えば、上記処方物のために、所望の結晶hGH濃度が約20mg/mlである場合、ポリアルギニン(またはプロタミン)濃度は、約4mg/mlであるべきである。
【0057】
本発明は、さらに、hGHまたはhGH誘導体の結晶の調製方法を提供する。1つのこのような方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液を結晶化溶液と混合する工程と、前記結晶化溶液が塩およびイオン性ポリマーを含むことと、(b)前記溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約37℃との間の温度で約12時間を超えてインキュベートする工程とを含む。別の実施形態では、方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液を結晶化溶液と混合する工程であって、前記結晶化溶液が塩および賦形剤を含む、工程、(b)前記溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約37℃との間の温度で約16時間を超えてインキュベートする工程とを含む。別の実施形態では、上記いずれかの方法の工程(b)の溶液を、約15℃の温度で約1週間を超えてインキュベートすることができる。好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体の結晶は、カルシウム結晶、1価のカチオン結晶、プロタミン結晶、またはポリアルギニン結晶であり、イオン性ポリマーはプロタミンまたはポリアルギニンである。別の実施形態では、イオン性ポリマーは、ポリリジンまたはポリオルチニンである。さらに別の実施形態では、イオン性ポリマーは、任意の2つまたはそれ以上のプロタミン、ポリアルギニン、およびポリリジンの混合物である。
【0058】
上記方法の工程(a)の塩は、1価または2価および無機または有機のいずれかであり得る。2価の塩の好ましい実施形態は、カルシウム塩である。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。別の好ましい実施形態では、1価のカチオンは、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、1価のカチオンはナトリウムである。
【0059】
本発明の別の好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウム塩である。より好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、ナトリウム塩は、酢酸ナトリウムである。
【0060】
上記方法では、塩がカルシウム塩または1価のカチオン塩である場合、塩は、工程(a)の結晶化溶液中に、約0.01mMと約1Mとの間の濃度で存在する。好ましい実施形態では、この濃度は、約25mMと約205mMとの間である。塩がカルシウム塩である場合、塩は、工程(a)の結晶化溶液中に、約0.01mMと約235mMとの間の濃度で存在する。
【0061】
好ましい実施形態では、工程(a)の結晶化溶液はpH緩衝剤をさらに含む。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH6と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.5と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.0と約pH10との間である。さらにより好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH6と約pH9との間である。さらにより好ましい実施形態では、pH緩衝剤のpHは、約pH7.8と約pH8.9との間である。
【0062】
上記方法の別の態様では、工程(a)のpH緩衝液は、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。上記方法の好ましい実施形態では、工程(a)のpH緩衝液は、重炭酸緩衝液、イミダゾール−リンゴ酸緩衝液、グリシン緩衝液、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール(「ビス−tris」)緩衝液、炭酸緩衝液、N−(2−アセトアミド)−イミノ二酢酸、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、および(N−(1−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸)からなる群から選択される。
【0063】
上記方法の1つでは、hGHまたはhGH誘導体の結晶を調製するために使用される沈殿剤は、典型的には、高分子(低分子量ポリアルコールおよびプロタミンが含まれる)である。本発明の別の実施形態では、上記方法の1つの工程(a)の沈殿剤は非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、アルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルアルコール、またはエタノールからなる群から選択される。より好ましい実施形態では、沈殿剤は、イソプロピルアルコールまたはエタノールである。さらにより好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000との間である。PEGの分子量は、3350、4000、6000、または8000であり得る。より好ましい実施形態では、PEGの分子量は約6000である。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%w/vと約12%w/vとの間の濃度で存在する。
【0064】
上記方法の1つの別の実施形態では、工程(a)の沈殿剤はイオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、およびポリリジンからなる群から選択される。
【0065】
上記方法の混合工程(a)は、hGHまたはhGH誘導体の溶液を結晶化溶液と混合する工程を含む。この方法の1つの実施形態では、上記結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体の濃度は、約1mg/mlと約1,000mg/mlとの間である。好ましい実施形態では、前記溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約50mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる態様では、前記溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約10mg/mlと約25mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0066】
上記hGHまたはhGH誘導体の結晶の調製方法の好ましい実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、工程(b)において、約33℃で約0.25日間と約2日間との間インキュベートする。あるいは、温度は、約37℃であり得る。別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、約25℃で約0.25日間と約2日間との間インキュベートする。さらに別の実施形態では、hGHまたはhGH誘導体および結晶化溶液を含む溶液を、約15℃で約0.25日間と約2日間の間インキュベートする。
【0067】
本発明は、さらに、hGHの結晶、hGH誘導体の結晶、またはこのような結晶および賦形剤を含む組成物の別の調製方法を提供する。この方法は、(a)hGHまたはhGH誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程と、(b)結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程と、(c)前記結晶化溶液にイオン性小分子またはイオン性ポリマーを添加する工程と、(d)前記結晶化溶液に塩を添加する工程と、(e)結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程とを含む。本発明のさらなる実施形態では、約4時間と約48時間との間インキュベートする。別の好ましい実施例では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶を形成するまで、約4℃と約40℃との間で約4時間と約48時間との間インキュベートする。別の実施形態によれば、工程(b)の後に任意選択的な工程を使用して上記方法を行う。任意選択的工程は、結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程を含む。上記方法のさらなる実施形態では、工程(c)は任意選択的である。これらの任意選択的工程の使用にかかわらず、好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間インキュベートする。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約4℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間インキュベートする。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)では、塩はカルシウム塩または1価のカチオン塩である。カルシウム結晶についての好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。好ましい実施形態では、酢酸カルシウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸カルシウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6との間である。別の実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約0.1mMと約205mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約85mMと約100mMとの間の濃度で存在する。
【0069】
より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)における1価のカチオン塩はナトリウムである。同様に、より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は酢酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、酢酸ナトリウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸ナトリウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6の間である。別の実施形態では、工程(e)の溶液中の酢酸ナトリウムは、約0.5mMと約800mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の溶液中の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約100mMと約500mMとの間の濃度で存在する。この濃度はまた、約85mMと約100mMとの間であり得る。
【0070】
さらに別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約17.5mg/mlとの間の濃度で存在する。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0071】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(a)の結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。あるいは、結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、グリシン緩衝液、HEPES緩衝液、イミダゾール緩衝液、Bis−Tris緩衝液、AMP(2−アミノ−2−メチルプロパノール)緩衝液、AMPD(2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール)緩衝液、AMPSO(3−([1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル]アミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸)緩衝液、ビシン緩衝液、エタノールアミン緩衝液、グリシルグリシン緩衝液、TAPS緩衝液、タウリン緩衝液、トリアン緩衝液、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、工程(a)の溶液中の結晶化緩衝液は、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する。
【0072】
上記方法の別の実施形態では、工程(a)の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間で存在する。好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9との間で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH10との間で存在する。
【0073】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の溶液中の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9.5との間である。なおさらに好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH9.5との間である。
【0074】
結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程(b)の後の任意の選択的工程を包含する、方法の好ましい実施形態では、沈殿剤は、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000、約6000、約4000、および約3350との間からなる群から選択される。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で結晶化溶液中に存在する。上記方法の別の好ましい実施形態では、沈殿剤は、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。
【0075】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチン、およびオクタルギニンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)では、ポリアルギニンを、5:1と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。得られた結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間の範囲の温度で約16時間〜約48時間インキュベートする。
【0076】
本発明は、ヒト成長ホルモンの結晶、ヒト成長ホルモン誘導体の結晶、またはこのような結晶を含む組成物、および賦形剤のさらに別の調製方法を提供する。この方法は、(a)ヒト成長ホルモン溶液またはヒト成長ホルモン誘導体溶液と結晶化緩衝液とを混合して結晶化溶液を生成する工程と、(b)前記結晶化溶液に脱イオン水と添加する工程と、(c)前記結晶化溶液に沈殿剤を添加する工程と、(d)前記結晶化溶液に塩を添加する工程と、(e)結晶化溶液を、ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶が形成されるまで、約10℃と約40℃の間で約2時間と約168時間との間インキュベートする工程と、(f)前記ヒト成長ホルモンまたはヒト成長ホルモン誘導体の結晶にイオン性ポリマーを添加する工程とを含む。上記方法の1つの実施形態によれば、工程(f)は任意選択的である。好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約15℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間でインキュベートする。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液を、約4℃と約37℃との間で約1日間と約2日間との間でインキュベートする。本発明のさらなる実施形態では、約2時間と約48時間との間インキュベートする。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液を、hGHまたはhGH誘導体の結晶が形成されるまで、約4℃と約40℃との間で約4時間と約48時間との間でインキュベートする。
【0077】
本発明の好ましい実施形態では、上記方法の工程(d)において、塩はカルシウム塩または1価のカチオン塩である。より好ましい実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、および硫酸カルシウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、カルシウム塩は酢酸カルシウムである。好ましい実施形態では、酢酸カルシウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸カルシウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6との間である。別の実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約0.1mMと約205mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約85mMと約100mMとの間の濃度で存在する。
【0078】
より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、およびアンモニウムからなる群から選択される。さらにより好ましい実施形態では、1価のカチオン塩はナトリウムである。同様に、より好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、および酢酸ナトリウムからなる群から選択される。なおさらに好ましい実施形態では、1価のカチオン塩は酢酸ナトリウムである。好ましい実施形態では、酢酸ナトリウムは、約pH3と約pH9.0との間の水溶液の形態である。より好ましい実施形態では、酢酸ナトリウム水溶液は、約pH7.0と約pH8.6の間である。別の実施形態では、工程(e)の溶液中の酢酸ナトリウムは、約0.5mMと約800mMとの間の濃度で存在する。より好ましい実施形態では、工程(e)の溶液中の結晶化溶液中の酢酸カルシウムは、約100mMと約500mMとの間の濃度で存在する。あるいは、この濃度はまた、約85mMと約100mMとの間であり得る。
【0079】
さらに別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約17.5mg/mlとの間の濃度で存在する。別の好ましい実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約14.5mg/mlと約15.5mg/mlとの間の濃度で存在する。さらなる実施形態では、工程(e)の結晶化溶液中のhGHまたはhGH誘導体は、約2mg/mlと約100mg/mlとの間の濃度で存在する。
【0080】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(a)の結晶化緩衝液は、Tris−HCl緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、イミダゾール緩衝液、およびグリシン緩衝液からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、工程(a)の溶液中の結晶化緩衝液は、約10mMと約800mMとの間の濃度で存在する。
【0081】
上記方法の別の実施形態では、工程(a)の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間で存在する。好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9との間で存在する。さらに別の好ましい実施形態では、結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH10との間で存在する。
【0082】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(e)の溶液中の結晶化緩衝液は、約pH3と約pH10との間である。より好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH6と約pH9.5との間である。なおさらに好ましい実施形態では、溶液中の結晶化緩衝液は、約pH7.5と約pH9.5との間である。
【0083】
好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)において、沈殿剤は、非イオン性小分子または非イオン性ポリマーである。好ましい実施形態では、非イオン性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、およびその混合物からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、PEGの分子量は、約200と約8000、約6000、約4000、および約3350との間からなる群から選択される。さらに別の好ましい実施形態では、PEGは、約0.5%と約20%(w/v)との間の濃度で結晶化溶液中に存在する。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(c)において、沈殿剤は、アミノ酸、ペプチド、ポリアミノ酸、およびその混合物からなる群から選択される。
【0084】
別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(f)では、イオン性ポリマーは、プロタミン、ポリアルギニン、ポリリジン、ポリオルニチン、およびオクタルギニンからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、上記方法の工程(f)では、ポリアルギニンを、約5:1と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。別の実施形態では、ポリアルギニンを、約1:5と約1:25との間のhGH:ポリアルギニン(mg:mg)比で添加する。工程(f)で得られた溶液を、約15℃と約37℃との間の範囲の温度で約16時間〜約48時間インキュベートする。hGHまたはhGH誘導体の結晶の溶解速度に対するポリマーの効果は、完全な溶解に必要な洗浄回数を反映する。コントロール結晶は、完全な溶解ために約7回〜約13回の洗浄が必要であり、ポリアルギニンで調製した結晶は、完全な溶解のために同一の溶解緩衝液で約30回〜90回の洗浄が必要である。洗浄は、連続的溶解プロセス中の洗浄工程である(実施例5を参照のこと)。
【0085】
任意の上記方法の別の実施形態では、カルシウム塩または1価のカチオン塩は、約0.01Mと約1Mとの間または約25mMと約205mMとの間の濃度で結晶化溶液中に存在し得る。任意の上記方法の別の実施形態では、結晶化溶液を、約33℃で約0.25日間と約2日間との間;約25℃で約0.25日間と約2日間との間、および約15℃で約0.25日間と約2日間との間からなる群から選択される時間および温度でインキュベートする。
【0086】
本発明はまた、治療薬の処方物で使用するためのhGHまたはhGH誘導体の結晶のスクリーニング方法を含む。このような方法の工程は、(1)前記hGHまたはhGH誘導体の結晶を約37℃の溶解緩衝液で洗浄する工程と(例えば、2mgの結晶および1mlの溶解緩衝液)、(2)前記溶解緩衝液中での1洗浄あたりの前記hGHまたはhGH誘導体の結晶のin vitro溶解速度を測定する工程と、前記結晶の前記in vitro溶解速度が約10分間と約1500分間との間に結晶の約2%と約16%との間であり、連続的溶解プロセスにおいて1洗浄あたり約2分間および32分間であることとを含む(実施例5を参照のこと)。前記結晶のin vitro溶解速度はまた、15分間にわたり前記結晶の約4%と約10%との間または15分間にわたり約0.04mgと約0.32mgとの間であり得る。
【0087】
本発明をより深く理解することができるように、以下に実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的とし、本発明の範囲を制限すると決して解釈すべきではない。
【実施例】
【0088】
(実施例)
下記の実施例で以下の材料を使用した。
【0089】
(材料)
市販の組換えヒト成長ホルモン(rhGH)をBresaGen Ltd.(Thebarton,Australia)から購入し、平均分子量が4000または6000のポリエチレングリコール(PEG−4000またはPEG−6000)を、Hampton Research(Laguna Niguel,California)から購入し、硫酸プロタミンをFisherを介してICN Biomedicals Inc.(Pittsburgh,PA)から購入した。リン酸アンモニウム、Tris−HCl、クエン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸亜鉛、HEPES、塩化ナトリウム、塩化カリウム、アジ化ナトリウム、イソプロパノール(IPA)、エタノール、およびポリエチレングリコールモノメチルエーテルを、それぞれFisher(Pittsburgh,PA)から入手した。Sprague−Dawleyラットを、Charles River Laboratories(Worcester,MA)またはBiomedical Research Laboratories,Inc.(Worcester,MA)から入手した。ポリアルギニンを、Sigma(St.Louis)から入手した。
【0090】
(分析技術およびアッセイ)
(逆相高速液体クロマトグラフィ)
逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、C5(5cm×4.6mm、3μm)カラム(Supelco,Bellefonte,PA)を具備したAgilent 1100シリーズHPLC(Palo Alto,CA)を有する。サンプルを、溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)に溶解し、注射前に濾過する(0.2μm)。溶媒AおよびBの勾配法を使用して、214nmおよび280nmで溶離プロフィールをモニタリングした。溶媒Aは、99.9%脱イオン水/0.1%TFAからなる。溶媒Bは、99.9%アセトニトリル/0.1%TFAからなる。全てFisherから入手したHPLCグレードの化学物質であった。40〜50%Bを0〜2分間、50〜60%Bを2〜12分間、および60〜85%Bを12〜15分間の勾配デザインを使用して、15分間溶離を行った。運転中、流速1ml/分およびカラム温度35℃を維持した。AgilentChemstationソフトウェア(Palo Alto,CA)を使用して、データを分析した。
【0091】
サンプル調製物中のプロタミンまたはポリアルギニンの濃度を、溶媒A(99.9%脱イオン水/0.1%TFA)およびB(99.9%アセトニトリル/0.1%TFA)の勾配法を使用して測定した。95:5(A:B)で0〜2.5分間、65:35(A:B)で2.5〜7.5分間、25:75(A:B)で7.5〜15.5分間、25:75(A:B)で15.5〜17.0分間、95:5(A:B)で17〜17.1分間の勾配デザインを使用して、流速1ml/分で20分間溶離した。6.2分でプロタミンまたはポリアルギニンが典型的に溶離され、14分でインタクトなhGHが溶離された。213nmでのAUCを計算した。プロタミンおよび/またはポリアルギニン(mg/ml)添加剤の含有率を、各添加物から作成した検量線から計算した。これと同一の方法を使用して、複合体から放出された賦形剤を分析することができる。
【0092】
異なるが類似する逆相法を使用して、合せた分解hGHを決定した。例えば、運転中に37℃のサーモスタット温度を維持しながら、C5 Supelco Discovery Bio Wide Poreカラム(5cm×4.6mm、粒子サイズ3μm、孔サイズ30nm)にて分析した。移動相A(20% ACN、80%H2O、0.1%TFA)および移動相B(20% ACN、80%2−プロパノール、0.1%TFA)を有する勾配法を使用して、溶離プロフィールをモニタリングした。Bを0〜5分間で20%から45%まで、5〜15分間で45%から55%まで、15〜15.1分間で55%から90%まで変化させ、17分までBを90%に保持し、本工程直後に20分に達するまでBを再度20%にした。
【0093】
(サイズ排除高速液体クロマトグラフィ)
サイズ排除クロマトグラフィ高速液体クロマトグラフィ(SEC−HPLC)は、TSK−Gel G2000SWXLカラム(パーツ番号08450,Tosoh Biosep LLC,Montgomeryville,PA)(7.8mm×30cm、5μm)およびAgilent 1100シリーズMWD(UV)を具備したAgilent 1100シリーズHPLC(Palo Alto,CA)を有する。サンプルを、0.2mlの溶解緩衝液に溶解し、Agilent 1100シリーズ温度制御オートサンプラーに注入する前に0.2μmで濾過した。移動相を(50mM Tris−HCl、150mM NaCl、0.05%NaN3(pH7.5))を使用して、溶離プロフィールを214nmおよび280nmでモニタリングした。カラム温度を25℃に保持し、Agilent 1100シリーズ脱気装置を使用して、溶媒を脱気した。
【0094】
(UV−VIS吸収および光学顕微鏡法)
Beckman DU 7400分光光度計(Beckman Coulter Inc.,Fullerton,CA)によってUV−VISスペクトロフォトグラムを得た。Olympus BX−51顕微鏡を使用した明視野で画像化し、Image−Proソフトウェア(Media Cybernetics L.P.,Silver Springs,Maryland)を使用したSony DXC−970MD 3CCDカラーデジタルビデオカメラでのキャプチャーによって、40倍〜400倍の光学顕微鏡写真を得た。
【0095】
(透過電子顕微鏡法(TEM))
以下のようにTEM分析を行った。母液中のhGH結晶の懸濁液を水で2回洗浄して過剰な母液を除去し、その後0.5%酢酸ウラニルで1時間陰性染色を行った。染色されたhGH結晶懸濁液(1〜5μL)を、銅製TEMグリッド上に移した。過剰な液体を除去し、サンプルグリッドを短時間風乾した。TEMグリッドを、JEOL 1210透過電子顕微鏡のサンプルステージに移し、80kV電子ビームを使用して画像を収集した。結晶内に結晶プリズム軸と一直線上の方向で非常に組織化された格子構造が認められた。
【0096】
(実施例1)
(リン酸アンモニウムでのhGHの結晶化)
市販のhGH(50mg)を、最初に15ml Tris−HCl(10mM(pH8.0))に溶解し、分子量カットオフ(MWCO)が10,000のPierce Dialyzerカートリッジを使用して2×4000mlTris−HCl(10mM(pH8.0))に対して透析した。Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した4000rpmで20〜30分間の遠心分離によって、タンパク質濃度を調整した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は、30〜45mg/mlの範囲であることが見出された。溶液に脱イオン水を添加して、10〜20mg/mlの最終タンパク質濃度を得た。NH4H2PO4の最終濃度が860mMとなるような溶液へのリン酸アンモニウム(NH4H2PO4)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが約8〜15μm、結晶収量が90%を超えることが見出された。図1を参照のこと。
【0097】
(実施例2)
(クエン酸ナトリウムでのhGHの結晶)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。hGHの濃縮液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を17.5mg/mlとした。クエン酸ナトリウム(Na−Citrate)の最終濃度が390mMとなるような溶液にクエン酸ナトリウム(1.5M)の添加によってhGH結晶を成長させた。hGHのTris−HCl濃度がすでに10mMであることは別として、pHを調整する必要はなかった。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが約8μm未満であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図2を参照のこと。
【0098】
(実施例3)
(リン酸ナトリウムでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を12.5〜17.5mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。Na2HPO4の最終濃度が600mMとなるような溶液への第二リン酸ナトリウム(Na2HPO4)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが5μmと25μmとの間であり、結晶収量が75%を超えることが見出された。図3を参照のこと。
【0099】
(実施例4)
(酢酸カルシウムおよび硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、最終濃度1mg/mlまで硫酸プロタミンを添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(Ca−Acetate)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で8時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが20μm未満であり、結晶収量が75%を超えることが見出された。図4を参照のこと。
【0100】
(実施例5)
(塩誘導結晶化によって調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例1〜4における結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレット(0.4mg)を0.200mlの溶解緩衝液(50mM HEPES(pH7.2)、140mM NaCl、10mM KCl、および0.02%(v/v)NaN3)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を完全に除去した。結晶化ペレットを、0.200mlの溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。このプロセスを、連続希釈という。
【0101】
図5は、時間の関数(分)としての上記実施例1〜4において1価(NaまたはNH4)または2価(Ca)の塩を使用して調製した種々のhGH結晶の溶解性挙動を示す。RP−HPLC由来の累積放出率としてhGH溶解をプロットし、タンパク質サンプルのAUC値を、UV−VIS分光光度計を使用してmg/mlで測定した。データは、390mM Na−Citrateの添加によって調製されたhGH結晶は60分後に完全に溶解したことを示す。さらに、600M Na2HPO4または860mM NH4H2PO4の添加によって調製されたhGH結晶は、それぞれ60分後または75分後に完全に溶解する。他方では、85mM Ca−Acetateおよび硫酸プロタミンの添加によって調製されたhGH結晶は、390分後に完全に溶解した(以下の表1を参照のこと)。
【0102】
【表1】
(実施例6)
(酢酸カルシウムおよび10%イソプロパノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液へのCa−Acetate(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。この溶液に、10%(v/v)イソプロパノール(IPA)を添加した。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが100μmを超え、結晶収量が85%を超えることが見出された。図6を参照のこと。
【0103】
(実施例7)
(塩化カルシウムおよび5%イソプロパノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。CaCl2の最終濃度が85mMとなるような溶液への塩化カルシウム(CaCl2)(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。この溶液に、5%(v/v)IPAを添加した。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが200μmを超え、結晶収量が85%を超えることが見出された。図7を参照のこと。
【0104】
(実施例8)
(10%PEG−6000および10%エタノールでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を25mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。溶液への10%(v/v)PEG−6000および10%(v/v)エタノール(EtOH)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で16時間インキュベートした。棒様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μm未満であり、結晶収量が70%を超えることが見出された。図8を参照のこと。
【0105】
(実施例9)
(アルコールによって調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例6〜8で調製された結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレットを0.200mlの溶解緩衝液(実施例5を参照のこと)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を完全に除去した。hGH溶解を、累積率として測定し、これはAUV値またはUV−VISのmg/ml測定値から算出した。結晶化ペレットを、溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。
【0106】
図9および表2は、時間の関数(分)としての10% IPA/85mM Ca−Acetate、5% IPA/85mM CaCl2、および10% EtOH/10%PEG−6000で調製したhGH結晶の溶解性挙動を示す。結果は、10% IPA/85mM Ca−Acetateの添加によって調製したhGH結晶は150分後に完全に溶解するのに対して、5% IPA/85mM CaCl2および10% EtOH/10%PEG−6000の添加によって調製したhGH結晶はそれぞれ120分および135分で完全に溶解することを示す。
【0107】
【表2】
(実施例10)
(酢酸カルシウムおよび2%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、2%(v/v)PEG−6000を添加した。Ca−Acetateの最終濃度が85mMとなるような溶液へのCa−Acetate(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μmと約75μmとの間であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図10を参照のこと。
【0108】
(実施例11)
(酢酸ナトリウムおよび6%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)PEG−6000を添加した。Na−Acetateの最終濃度が500mMとなるような溶液への酢酸ナトリウム(Na−Acetate)(2M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μmと約75μmとの間であり、結晶収量が85%を超えることが見出された。図11を参照のこと。
【0109】
(実施例12)
(塩化カルシウムおよび6%PEG−6000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)PEG−6000を添加した。CaCl2の最終濃度が85mMとなるような溶液へのCaCl2(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが100μmを超え、結晶収量が90%を超えることが見出された。図12を参照のこと。
【0110】
(実施例13)
(酢酸カルシウム、6%PEG−6000、および硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、硫酸プロタミン(1mg/ml)および6%PEG−6000(v/v)を添加した。酢酸カルシウムの最終濃度が85mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、37℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが25μm未満であり、結晶収量が70%を超えることが見出された。図13を参照のこと。
【0111】
(実施例14)
(酢酸カルシウムおよび6%PEG−MME−5000でのhGHの結晶化)
実施例1に記載のように市販のhGHを精製し、濃縮した。濃縮hGH溶液に脱イオン水を添加して、タンパク質最終濃度を15mg/mlとした。最終濃度100mMまで、Tris−HCl(1M(pH8.6))を添加した。この溶液に、6%(v/v)ポリエチレングリコールモノメチルエーテル−5000(PEG−MME−5000)を添加した。酢酸カルシウムの最終濃度が125mMとなるような溶液への酢酸カルシウム(1M)の添加によってhGH結晶を成長させた。次いで、溶液を、25℃で16時間インキュベートした。ニードル様結晶が得られ、光学顕微鏡で画像化した。得られた結晶は、長さが50μm未満であり、結晶収量が90%を超えることが見出された。図14を参照のこと。
【0112】
(実施例15)
(ポリエチレングリコールを使用して調製されたhGH結晶の溶解性プロフィール)
実施例10〜14で調製された結晶化溶液のインキュベーション後、結晶をペレット化し、残りの上清を除去した。37℃で約15分間平衡化する前のピペッティングまたはボルテックスのいずれかによって、結晶ペレットを0.2mlの溶解緩衝液(実施例5を参照のこと)に再懸濁した。次いで、サンプルを、10,000×gで2分間遠心分離し、RP−HPLC、SEC−HPLC、またはUV−VISによって280nmで測定するタンパク質濃度の決定のために上清を除去した。結晶化ペレットを、溶解緩衝液にさらに再懸濁し、上清中に検出可能なタンパク質が測定されなくなるまで、このプロセスを繰り返した。
【0113】
図15および表3は、時間の関数(分)としての2% PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム、6% PEG−6000/500mM 酢酸ナトリウム、6%PEG−6000/85mM CaCl2、6%PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム/プロタミン、および6% PEG−MME−5000/125mM 酢酸カルシウムで調製したhGH結晶の溶解性挙動を示す。hGH溶解を、蓄積率として測定し、AUC値またはUV−VISmg/ml測定値から算出した。結果は、6%PEG−6000/85mM 酢酸カルシウム/プロタミンの添加によって調製したhGH結晶は最も溶解が遅く、495分後に完全に溶解した。2% PEG−6000/85mM酢酸カルシウム結晶についての他の結晶は300分で溶解するか、他のhGH結晶についてはより短かった。
【0114】
【表3−1】
【0115】
【表3−2】
(実施例16)
(Sprague−Dawleyラットを使用した薬物動態学試験)
2.5mg/kgの可溶性(市販)または結晶(85mM 酢酸カルシウム/2% PEG−6000)hGHを実施例10に記載のように調製し、懸濁液を、24匹の雌Sprague−Dawleyラットに皮下投与した。各ラットの平均体重は200gであった。24匹のラットを、2つの群に分けた。各群は、3群のサブセットを含んでおり、それぞれ4匹のラットを含む。3回の特定の測定点で、各サブセット内の頸動脈インプラントを介して採血した。所与の時点で採取することができる血液量は限られているので、リープフロッグデザインを使用した。動物の安定性を維持するために、上記測定点で群内の動物サブセットから採血した。次いで、血清サンプルをコンパイルして、線形累進時系列を形成した。サブセットの平均からの所与の測定点でのサブセット内の血清レベルの分散によって標準偏差を決定した。表4〜6を参照のこと。表4〜5では、1〜12と命名した動物に可溶性hGHを、動物13〜24に結晶化hGHを、各動物に対して500μgの用量で投与した。
【0116】
図16は、可溶性および結晶化hGHについての時間の関数としての血清hGHレベルを示す。結晶化hGHの半減期は、可溶性hGHのほぼ19倍であった。血清中で最大hGHが認められた時間は、結晶化hGHについては4時間であり、可溶性hGHについては0.5時間であった。ラットの群およびサブセットを5.5mg/ml(2.2mg.kgに相当する用量)の濃度の可溶性hGHまたは結晶hGHで処置した場合、以下の表6で列挙したCmax値は、結晶形態で輸送させた場合、hGHは、同一の可溶性の用量と比較した場合に最大血清濃度が有意に減少したことを示す。また、可溶性hGHと結晶hGHとの総血清レベルのAUCは類似しており、結晶化によって生物学的利用能は有意に影響を受けないことを示した。可溶性および結晶の両結果についてT90%値を計算した。このパラメーターは、総AUCの90%が起こる時間を示す。T90%値が高いほど、薬物がより長く血清中に留まることを示す。表6に含まれるT90%の結果は、結晶形態により、可溶性形態よりもhGHレベルの上昇が有意に長くなることを明白に示す。
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
【表6】
(実施例17)
(hGH結晶の溶解特性に対する硫酸プロタミンの効果)
図17は、既存のカルシウムhGH結晶溶液への所与の量の硫酸プロタミンの添加から1時間のインキュベーション後に37℃の溶解緩衝液中に溶解する実施例10にしたがって調製したhGH結晶(85mM酢酸カルシウム、2%(v/v)PEG−6000、および100mM Tris−HCl(pH8.6))の量を示す。hGH:プロタミン(mg:mg)比を、図17に示す。グラフは、プロタミンがhGH結晶の溶解に有意に影響を与えることを示す。
【0120】
(実施例18)
(酢酸ナトリウムでのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(未知の緩衝液中で供給された10〜20mg/ml rhGH)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−6000、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、6%(v/v)、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。ニードルまたは棒様結晶が得られ、TEMで画像化した(図18Aおよび18Bを参照のこと)。結晶の長さは、約2〜25μmの範囲であった。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、85%を超える結晶収量が測定された。33℃と15℃の間の温度で結晶を形成させることもできるが、より長い結晶化時間を必要とし、おそらく収率が低い。
【0121】
(実施例19)
(ナトリウムhGH結晶とイオン性ポリマー添加剤との複合体化)
結晶収量の決定後(実施例18を参照のこと)、ナトリウムrhGH結晶の最終濃度が21mg/mlとなるように、母液(250mM NaOAc、25mM Tris−HCl(pH8.6)、6%PEG−6000、および7mg/ml硫酸プロタミンまたは4.2mg/mlポリアルギニン)にナトリウムrhGH結晶を再懸濁した。rhGH:硫酸プロタミンについてのタンパク質:添加剤の比は、約3:1(mg:mg)であり、rhGH:ポリアルギニンについては5:1(mg:mg)であった。これらの比は、rhGH:プロタミンについては約1:1.715、rhGH:ポリアルギニンについては約1:0.587のモル比であると計算される。上記rhGHペレットを、適切な母液に均一に再懸濁し、遠心分離前に2〜8℃で一晩インキュベートして濃縮ペレットを得た。上清を除去し、ペレットを同一の母液(イオン性ポリマー添加剤を含まない)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0122】
母液の添加剤濃度(mg/ml)を変化させながら21mg/mlのrhGHを依然として再懸濁することによってさらなるrhGH:イオン性ポリマー添加剤比を得ることができる。例えば、母液中の硫酸プロタミン濃度の増加(10.5mg/ml)を使用して、再懸濁時のrhGH:添加剤比を2:1にすることができる。
【0123】
(実施例20)
(酢酸亜鉛でのhGHの結晶化。酢酸亜鉛およびアセトンでのrhGHの結晶化)
約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのNa2HPO4/NaH2PO4(10mM(pH6.1))での洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Na2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)を添加した。4.5ml量の脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで5〜10分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は15mg/mlの範囲であった。15mg/mlタンパク質を含む10mMNa2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)への脱イオン水、8.91mMNa2HPO4/NaH2PO4(pH6.1)、0.88mg/ml酢酸亜鉛、9.89%アセトンを含む400μlの母液の添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、15℃で24〜48時間インキュベートした。幅が約2〜25μmの六角形様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、結晶収量は約55%と測定された。
【0124】
(実施例21)
(酢酸カルシウムでのhGHの結晶化およびカルシウムhGHとイオン性ポリマー添加剤(ポリアルギニン)との複合体化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。約3.5ml(12mg/ml rhGHを含むTris−HCl(10mM(pH8.0))の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終濃度が15mg/ml rhGH、100mM Tris−HCl(pH8.6)、2%(v/v) PEG−6000、および85mM 酢酸カルシウムであるようなrhGH(30mg/mlストック調製物)への1MTris−HCl(pH8.6)、50% PEG−6000、および1M 酢酸ナトリウムの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。ニードル様結晶の長さは、約2〜25μmの範囲であった。上清の抽出ならびに結晶の遠心分離およびペレット化後、結晶収量は85%を超えていた。33℃と15℃の間の温度で結晶を形成させることもできるが、より長い結晶化時間を必要とし、収率が低い。結晶収量の決定後(実施例18を参照のこと)、カルシウムrhGH結晶の最終濃度が21mg/mlとなるように、処方賦形剤(5mM CaOAc、100mM Tris−HCl(pH8.6)、6%PEG−6000、および4.2mg/mlポリアルギニン)にカルシウムrhGH結晶を再懸濁した。rhGH:ポリアルギニンについてのタンパク質:添加剤の比は、約5:1(mg:mg)であった。これらの比は、rhGH:ポリアルギニンについて約1:0.587のモル比であると計算される。上記rhGHペレットを、適切な母液に均一に再懸濁し、遠心分離前に2〜8℃で一晩インキュベートして濃縮ペレットを得た。上清を除去し、ペレットを同一の母液(イオン性添加剤を含まない)に再懸濁し、4℃で保存した。
【0125】
(実施例22)
(Sprague−DawleyラットおよびhGHの2価のカチオン結晶を使用した、皮下投与したhGHの薬物動態学および薬力学試験)
本試験の目的は、下垂体摘出Sprague−DawleyラットにおけるhGH結晶懸濁液の皮下移植時のhGH結晶懸濁液からのhGHの放出および体重増加の制御を評価することであった。試験デザインを以下に示した。
【0126】
【表7】
到着時に、体重が約150g±25gであり、かつ約4〜6週齢である80匹の雌のSprague−Dawleyラットを、制御された条件下(約21±3℃、相対湿度50±20%、それぞれ24時間で12時間の明所および12時間の暗所、1時間あたり10〜15回の換気)で個別に飼育し、試験期間中、精製水および固形試料を自由に利用させた。ラットを、試験前に1週間環境に馴化させた。
【0127】
表7にしたがって、80匹のラットのうち48匹にhGH懸濁液を投与した。試験化合物を、背中への単回皮下ボーラス注射として、1日目に1回または7日間毎日1回投与した。注射を容易にするために必要な場合、注射部位の毛を剃り、投与前後3日までマークした。300μlシリンジに取りつけた30ゲージ×8mmニードルを使用して、試験化合物を投与した。シリンジへの取り出し前および投与前に気泡を形成することなく懸濁液または溶液を確実に均一にするために、試験化合物を慎重に逆にした。注射体積は、ラットあたり約0.1mlであった。
【0128】
1日目の注射から4時間後、32時間後、96時間後、および168時間後に、第1群、第5群、第7群、および第8群(群あたりそれぞれ3匹のラットを有する)のラットから血液サンプルを採取した。第2群、第3群、第4群、および第9群(それぞれ群あたり9匹のラット有する)のラット由来の血液サンプルを、3匹のラットを有する3つの群にさらに分けた。ここでは、第1日目の注射から0.5時間後、24時間後、72時間後、および168時間後にラットの第1のサブセットから、4時間後、32時間後、96時間後、および168時間後に第2のサブセットから、および8時間後、48時間後、120時間後、および168時間後に第3のサブセットから血液サンプルを採取した。一般的には、非麻酔ラットまたはCO2/O2麻酔ラットの眼窩を介して採血し、血清分離器を使用してBD Microtainerチューブに回収した。次いで、サンプルを、約4℃で遠心分離し、血清を回収し、hGHおよびIGF−1レベルの測定前に凍結保存した(約−80℃)。
【0129】
次いで、血清サンプルをコンパイルし、第2群、第3群、第4群、および第9群の場合、線形累進時系列を形成した。サブセットの平均からの所与の測定点でのサブセット内の血清レベルの分散によって標準偏差を決定した。表8〜14および図19Aを参照のこと。特定の結晶処方物を投与した場合、rhGHの血清レベル(ng/ml)を示す。試験プロトコールにしたがって、投与に関連する特定の測定点で動物を採血した。結果は、複合体化結晶材料(例えば、プロタミンおよびポリアルギニン)の吸収と非複合体化結晶処方物(例えば、CaOACおよびZnOAC)との間に差が存在することを明らかに示す。
【0130】
【表8】
【0131】
【表9】
【0132】
【表10】
【0133】
【表11】
【0134】
【表12】
【0135】
【表13】
試験1日目の注射前および試験の翌朝の採血前に再度各ラットの重量を測定し、記録した。したがって、各群内の各ラットの体重の増減を、1日目の体重(注射前)から各翌日(注射前)を引くことによって計算した。群内の全ラットの平均体重を毎日計算した。これらの結果を、表14に示す。
【0136】
【表14】
表14および図19Bは、市販のhGHの毎日用量の投与と比較した本発明の結晶の単回用量(1日目)の投与の7日間の効果を示す。例えば、図19Bは、ポリアルギニンと複合体化したhGHのカルシウム結晶により同一の期間にわたる1回のみの投薬する毎日の可溶性用量に匹敵する体重増加が得られることを示す。体重増加と血清中のrhGHの各放出プロフィールとの比較により、ポリアルギニン処方物のより長い放出は体重増加速度のさらなる持続と相関することが明らかである。
【0137】
(実施例23)
(雌幼若カニクイザルにおける薬力学比較試験)
本試験の目的は、雌カニクイザルに皮下投与した場合の結晶組換えヒト成長ホルモン(rhGH)のin vivo薬物動態学プロフィールを評価することであった。血清中の結晶rhGHの制御放出および結晶rhGH放出の関数としての体重増加についてのモデルを確立するためにこれらのデータを得た。
【0138】
【表15】
12匹の雌幼若カニクイザルを、3つの群(群あたりそれぞれ4匹の動物を有する)に分け、可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびポリアルギニンとのナトリウム結晶(群2、実施例18および19による)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(群3、実施例18および19による)のいずれかを投与した。治療開始時に体重が2〜6kgで4〜7歳の範囲のサルを、自動給水システムまたは水差しを備えたステンレススチール製ケージに個別に飼育した。動物の室内環境を制御し(約21±3℃、湿度30〜70%、各24時間周期で12時間の明所および12時間の暗所、および1時間あたり12〜20回の換気)、サルに標準的な認定された市販の霊長類固形試料(Harlan Teklad Certified Primate Diet #2055C)を1日2回与えた。
【0139】
可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびポリアルギニンとのナトリウム結晶(群2)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(群3)の投与後のhGHおよびIGF−1の血清濃度を測定および比較するために、この霊長類試験を行った。上記表15に示す移動時および投与前の全動物の体重を記録した。血液サンプル(約1ml)を、−216日目、−120日目、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、24日目、48日目、72日目、96日目、120日目、144日目、168日目、192日目、216日目、240日目、264日目、288日目、および312日目の朝に大腿部、上腕、または伏在静脈を介して各動物から採取した。血清分離チューブに採血し、凝血するまで室温で30〜45分間静置し、2〜8℃にて3000rpmで10分間遠心分離した。各血清サンプルを100μl量に分注し、残りの量と両方を、分析前に−70℃±10℃で保存した。一般的には、rhGH決定にはより少量の100μl量を使用し、IGF−1決定にはより大きな量を使用した。必要な複製物の体積により、いくつかの例外が存在する。
【0140】
次いで、回収した血清サンプルを、hGH濃度について分析した(表16を参照のこと)。標準値の範囲外のrhGH濃度を適切に希釈した。全値を使用して、霊長類GHの動物平均バックグラウンドレベルあたりの個体を得ることができる。動物平均あたりの個体を、この試験化合物についての各測定点で測定した血清レベルから差し引いた。次いで、測定点あたりの修正値を、血清中のrhGHの修正平均を得るために平均化した。次いで、修正平均の標準偏差の使用およびN=4の平方根で割ることによって標準誤差を計算した。
【0141】
【表16】
図20Aは、ベースライン調整後の群1、2、および3についての時間(時間)の関数としての血清のrhGHレベルを示す。
【0142】
【表17】
上記データは、血清中に認められる最大hGH(Tmax)時の時間は、ポリアルギニン複合体化結晶hGHでは10時間であり、プロタミン複合体化ナトリウム結晶hGHについては10時間であり、可溶性hGHについては2時間であることを示す。可溶性hGHを1/7の用量の結晶投与で輸送する場合でさえ、上記表17に列挙したCmax値は、いずれかの複合体化結晶形態で輸送された場合、hGHは初期血清濃度の急上昇を有意に減少させることを示す。さらに、可溶性および結晶群のT90%値を計算した。群1(可溶性形態)のT90%は20時間であり、群2および3(複合体化結晶形態)のT90%は、それぞれ74時間および77時間であった。これらの結果は、複合体化結晶形態により可溶性形態よりも有意により長い期間hGHレベルを上昇させることを明白に示す。
【0143】
hGHの血清濃度の決定に加えて、時間の関数としてもIGF−1レベルを測定した。IGF−1産生の測定により、rhGHの有効性を確認した。以下の表18は、群1〜3に動物についてのIGF−1濃度を報告する。図20Bは、内因性IGF−1レベルのベースラインを引いた後に、複合体化結晶処方物が毎日の可溶性投与に匹敵するIGF−1放出の刺激能力を示す。これらの結果は、非ヒト霊長類では、本発明の処方物を有利に使用してヒトにおいて類似の有効性を達成することができることを示す。
【0144】
【表18−1】
【0145】
【表18−2】
(実施例24)
(異なるプロタミン比を使用した雌幼若カニクイザルにおける薬力学比較試験)
本試験の目的は、雌カニクイザルに皮下投与した場合の結晶組換えヒト成長ホルモン(rhGH)のin vivo薬物動態学プロフィールを評価することであった。ナトリウムhGHとプロタミンとの比が血清中の結晶rhGHの制御放出および結晶rhGH放出の関数としての体重増加に効果があるかを試験するためにこれらのデータを得た。
【0146】
【表19】
霊長類試験IIでは、霊長類試験Iに記載の12頭の雌幼若カニクイザルを、3つの群(群あたりそれぞれ4頭の動物を有する)に分け、可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=3:1)(群2)(実施例18および19)、またはrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=2:1)(群3)のいずれかを投与した(実施例18および19)。治療開始時に体重が2〜6kgで4〜7歳の範囲のサルを、自動給水システムまたは水差しを備えたステンレススチール製ケージに個別に飼育した。動物の室内環境を制御し(約21±3℃、湿度30〜70%、各24時間周期で12時間の明所および12時間の暗所、および1時間あたり12〜20回の換気)、サルに標準的な認定された市販の霊長類固形試料(Harlan Teklad Certified Primate Diet #2055C)を1日2回与えた。
【0147】
可溶性rhGH(群1)、rhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=3:1)(群2)、およびrhGHとPEGおよびプロタミンとのナトリウム結晶(rhGH:プロタミンン=2:1)(群3)の投与後のhGHおよびIGF−1の血清濃度を測定および比較するために、この霊長類試験を行った。上記表19に示す移動時および投与前の全動物の体重を記録した。血液サンプル(約1ml)を、−144日目、−120日目、−96日目、−72日目、−48日目、−24日目、0日目、2日目、4日目、6日目、8日目、10日目、24日目、48日目、72日目、96日目、120日目、144日目、168日目、192日目、216日目、240日目、264日目、288日目、および312日目の朝に大腿部、上腕、または伏在静脈を介して各動物から採取した。血清分離チューブに採血し、凝血するまで室温で30〜45分間静置し、2〜8℃にて3000rpmで10分間遠心分離した。各血清サンプルを100μl量に分注し、残りの量の両方を、分析前に−70℃±10℃で保存した。
【0148】
採取された血清サンプル中のhGH濃度(ng/ml)を分析し、ベースライン修正を行った(表20のデータを参照のこと)。標準値の範囲外のrhGH濃度を適切に希釈することに留意のこと。全値を使用して、霊長類hGHの動物平均バックグラウンドレベルあたりの個体を得ることができる。動物平均あたりの個体を、この試験化合物についての各測定点で測定した血清レベルから差し引いた。次いで、測定点あたりの修正値を、血清中のrhGHの修正平均を得るために平均化した。次いで、修正平均の標準偏差の使用およびN=4の平方根で割ることによって標準誤差を計算した。
【0149】
【表20】
図21Aは、ベースライン調整後の群1、2、および3についての時間(時間)の関数としての血清rhGHレベルを示す。
【0150】
【表21】
これらのデータは、血清中に認められる最大hGH時の時間は、プロタミン(3:1)複合体化結晶hGHでは10時間であり、プロタミン(2:1)複合体化ナトリウム結晶hGHについては24時間であり、可溶性hGHについては4時間であることを示す。可溶性hGHを1/7の用量の結晶投与で輸送する場合、上記表22に列挙したCmax値は、いずれかの複合体化結晶形態で輸送された場合、hGHは最大血清濃度を有意に減少させることを示す。群1(可溶性形態)のT90%は20時間であり、群2および3(複合体化結晶形態)のT90%は、それぞれ119時間および72時間であった。これらの結果は、複合体化結晶形態により可溶性形態よりも有意により長い期間hGHレベルを上昇させることを明白に示す。
【0151】
hGHの血清濃度の測定に加えて、時間の関数としてもIGF−1レベルを測定した。IGF−1産生の測定により、rhGHの有効性を確認した。以下の表22は、群1〜3の動物についてのIGF−1濃度を報告する。図21Bは、内因性IGF−1レベルのベースラインを引いた後に、複合体化結晶処方物が毎日の可溶性投与に匹敵するIGF−1放出の刺激能力を示す。これらの非ヒト霊長類の結果は、本発明の処方物を有利に使用してヒトにおいて類似の有効性を達成することができることを示す。
【0152】
【表22】
(実施例25)
(下垂体摘出雌ラットへの単回または毎日の皮下注射によって投与したヒト成長ホルモンの薬力学試験)
本試験の目的は、下垂体摘出雄Wistarラットに1回または7日間毎日皮下注射した場合にhGHの異なる処方物の有効性を比較することであった。試験デザインを以下に示した。
【0153】
【表23−1】
【0154】
【表23−2】
【0155】
【表24】
到着時に、体重が約90〜100gであり、かつ約25〜30日齢である138匹のWistarラットを、制御された条件下(約23±3℃、相対湿度30〜70%、24時間で12時間の明所および12時間の暗所、1時間あたり10〜15回の換気)で群毎に飼育し、試験中、精製水および固形試料を自由に摂取させた。ラットを、試験前に2週間環境に馴化させた。
【0156】
表24に記載の濃度、体積、および投与計画にしたがって、138匹のラットにサンプルを投与した。試験化合物を、背中への単回皮下ボーラス注射として、1日目に1回または7日間毎日1回投与した。注射を容易にするために必要な場合、注射部位の毛を剃り、投与前後3日まで印をつけた。300μlシリンジに取りつけた30ゲージ×8mmニードルを使用して、試験化合物を投与した。シリンジへの取り出し前および投与前に気泡を形成することなく懸濁液または溶液を確実に均一にするために、試験化合物を慎重に逆にした。
【0157】
−3週目および−2週目で1週間に2回および−7日目から14日目まで毎日体重増加を測定し、記録した。ラットの体重は、投与時に約100g±10%であった。成長誘導発率の結果を図22および23に示し、表25および26にまとめる。表25では、「高用量」は、5.6mg/kg/週を示す。データは、コントロール(群1、hGHなし)または可溶性hGHサンプル(群4および5)の7日間にわたる毎日の注射に対するrhGH:ポリアルギニン(群7、実施例18および19)結晶またはrhGH:プロタミン(群9および10、実施例18および19)結晶の7日間にわたる単回注射を実施したラットの体重増加の比較を示す。群1(偽下垂体摘出ラット)は、7日間にわたり正常な成長を示す。さらに、7日間にわたる1回の注射でrhGH:ポリアルギニンを投与したラット(群7)は、可溶性hGHを7日間毎日投与したラット(群5)よりも誘導成長率が高かった。これらの結果は、本発明のhGH結晶および処方物は1週間にわたる毎日の可溶性rhGH投与と同様に有効であることを示す。
【0158】
【表25】
【0159】
【表26】
(実施例26)
(酢酸ナトリウムおよび硫酸プロタミンでのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−4000、硫酸プロタミン、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、6%(v/v)、2mg/ml、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。長さが約2〜25μmのニードル様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、90%を超える結晶収量が測定された。
【0160】
(実施例27)
(酢酸ナトリウムおよびポリアルギニンHClのhGHの結晶化)
ここでは、可溶性組換え産生hGH(rhGH)の凍結バルクフィード溶液を、2つのストック(一方はE.coli(Novartis)に由来し、他方は酵母(Lucky Gold)に由来する)から得た。E.coliおよび酵母のストック溶液由来のrhGHの個別の分析によって、その供給源に関係なく同一の結晶化および溶解性を有するrhGHが得られた。約3.3ml(10〜20mg/ml)の解凍rhGHフィード溶液を、BioRadから供給された10DG脱塩カラムを使用して精製した。サンプルのローディング前に、30mlのTris−HCl(10mM(pH8.0))でのカラムの洗浄によってカラムを馴化した。次いで、rhGHサンプルをロードし、重力によってカラムに侵入させた。最初の3mlの溶離液の破棄後、別の5.0mlの10mM Tris−HCl(pH8.0)を添加した。4.5mlの脱塩rhGHを溶離および回収した。次いで、Millipore濃縮器(MWCO 10,000)を使用した3500rpmで20〜30分間の遠心分離によって濃縮した。280nm/0.813(1mg/ml hGH A280=0.813吸収単位)での吸光度によって測定したところ、hGHの濃度は30mg/mlの範囲であった。最終タンパク質濃度が15mg/mlである全容液中での脱イオン水、Tris−HCl(pH8.6)、PEG−4000、ポリアルギニンHCl、および酢酸ナトリウムのそれぞれの最終濃度が100mM、2%(v/v)、2mg/ml、および500mMでの添加によって結晶を成長させた。次いで、溶液をゆっくり混合し、33℃で12〜16時間インキュベートした。長さが約2〜25μmのニードル様結晶が得られた。結晶の遠心分離およびペレット化後、上清を抽出し、90%を超える結晶収量が測定された。
【0161】
上記発明は、理解をより明確にする目的で例示および実施例によっていくらか詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、記載の実施形態を含む本明細書の開示の精神または範囲を逸脱する事なく一定の変更形態および修正形態を得ることができることが当業者に容易に明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト成長ホルモン(hGH)またはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶。
【請求項1】
ヒト成長ホルモン(hGH)またはヒト成長ホルモン誘導体のポリアルギニン結晶。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−209079(P2010−209079A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87407(P2010−87407)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2005−508635(P2005−508635)の分割
【原出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(505245494)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2005−508635(P2005−508635)の分割
【原出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(505245494)アルタス ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】
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