説明

ヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革及びその製造方法

【課題】
既存の人工皮革と比べて耐熱性及び機械的物性などを向上させた、異臭感のない環境親和性のある人工皮革を提供する。
【解決手段】
本発明はヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革に係り、より詳しくは、大豆タンパク質分離体と無溶剤ポリウレタン樹脂を含む人口皮革に関し、大豆タンパク質分離体を使用して既存の人工皮革と比べて水分吸収力を増加させ、触感などの感性を向上させ、更に無溶剤ポリウレタンを使用し、既存の人工皮革と比べて耐熱性及び機械的物性などを向上させた、異臭感のない環境親和的な人工皮革を提供することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革に係り、より詳しくは、大豆タンパク質分離体と無溶剤ポリウレタン樹脂を含む人口皮革に関し、本発明は大豆タンパク質分離体を使用して既存の人工皮革と比べて水分吸収力を増加させ、触感などの感性を向上させ、更に、無溶剤ポリウレタンを使用して既存の人工皮革と比べて耐熱性及び機械的物性などを向上させた、異臭感のない環境親和的な人工皮革を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、皮革は天然皮革と人工皮革に大きく区分される。天然皮革は動物の皮を加工したものであり、生産量に限界があり、高価であり、1枚となっているため連続作業が不可能であり、色の多様化や品質の均一化などを期待することができない。一方、人工皮革は不織布や織布のような繊維を使用して可能な限り天然皮革に近く製造したものを言い、天然皮革が持つ上記の短所を補完する役割をする。但し、人工皮革は触感などの感性面で未だ天然皮革に比べて劣っている。
【0003】
従来の高分子単一製品、または同一合成材料を混ぜて作った多様目的の高分子人工皮革は、ヒトの肌に直接接触する部分では心地良くなく、冷たくすべすべした感じがし、反射光により目が容易に疲労し、体内で発生する汗が吸収されないため、不快な気分となるなど触感などの感性的側面で天然皮革に比べて物性が劣っている。特に、水分吸収力が非常に低いため、人体で発生したり、周辺環境で発生する水分によるベタつきが問題点として指摘されており、色、光沢、加工性、デザイン及び感触などの面で、消費者の高級化された性向を満足させるには不足である。
【0004】
このような消費者の高級化された性向を満足させるために、多数の人工皮革の製造技術が公示されている。例えば、大韓民国登録特許第10−0581330号の無溶剤型ポリウレタン多孔質体を用いた人工皮革の場合、既存の人工比較より機械的物性、耐黄変性、耐薬品性などが優れているが、触感などの感性が十分ではなく、本発明の発明者の大韓民国登録特許第10−0706403号のシルクタンパク質粉砕物とポリ塩化ビニル樹脂を含有する人工皮革の場合は、感性などが優れているが、高価のシルクを原材料として利用するため、製造単価が高く、商業的に使用することが難しい。
【0005】
今までのポリウレタン系人工皮革ポリウレタン樹脂は大部分が溶液型であり、通常1液型方式で製造されるが、1液型樹脂はジイソシアネートとほぼ同一のモル数の高分子ジオールと、鎖延長剤の重付加反応により得られた線状の高分子量体として、DMF(N,N−Dimethyl formide)、MEK(Methyl ethyl ketone)、TOL(Toluene)などの有機溶剤を主体とした“ポリウレタン有機溶剤溶液”であった。しかし、このような有機溶剤を用いて製造された人工皮革は、有機溶剤自体が持つ揮発性により異臭誘発物質及び環境ホルモンなどを発散させるという問題がある。
【0006】
このような雰囲気下で消費者の高級化された性向を満足させるために、人工皮革製造業界、家具業界及び自動車業界などでは触感などの感性だけでなく、耐熱性、機械的物性などが優れた人工皮革の開発に対する要求が増加されている。
【0007】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10−0581330号
【特許文献2】大韓民国登録特許第10−0706403号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の発明者は、天然皮革の触感のような感性を増加させるためには人工皮革自体の水分吸収力を増大させなければならないということを確認した。
【0009】
従って、本発明の目的は、大豆タンパク質分離体を無溶剤ポリウレタン樹脂に適用するために、これらの含有成分の最適の比率及びその適用方法などを探して提供することであり、更に、有機溶剤ではない無溶剤ポリウレタン樹脂を使用することで、人工皮革自体が持つ異臭感などを最小化させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明はヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革において、無溶剤ポリウレタン樹脂85〜95重量%及び平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%を含有することをその特徴とする。
【0011】
更に、本発明は前記無溶剤ポリウレタン系人工皮革を製造する方法に関し、平均分子量100〜20,000を有するポリオール99〜99.7重量%、遅延性触媒0.2〜0.7重量%、界面活性剤0.05〜0.2重量%及び水0.01〜0.1重量%を攪拌、混合してレジンプレミックスを製造する1段階、平均分子量100〜20,000を有するポリオール35〜40重量%、ジイソシアネート系化合物50〜55重量%及び大豆タンパク質粉末5〜15重量%を38〜42℃で10〜15分間ウレタン反応させ、ジイソシアネートプレポリマーを製造する2段階、前記混合物と前記ジイソシアネートプレポリマーを1:1.5〜2.5当量比で混合及び反応させ、人工皮革の原料を製造する3段階、及び前記人工皮革の原料で表面層を形成させる4段階を含むことをその特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革は、水分吸収力が優れているため、触感などの感性が非常に優れており、ヒト皮膚を感じることができ、また、既存の人工皮革と比較して同等またはそれ以上の耐熱性及び機械的物性を有するだけでなく、既存で人工皮革を製造する際に使用されていた有機溶剤を使用しないため、人工皮革自体が持つ異臭感及び環境ホルモンなどの揮発物質の発生を最小化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の発明者は天然皮革に比べて感性が劣り、異臭感を誘発させる人工皮革の短所を改善するためにたゆまない研究をした結果、人工皮革の水分吸収力を増進させるために、大豆タンパク質粉砕物を導入し、異臭誘発物質及び環境ホルモンの発散を最小化または防止するために、無溶剤ポリウレタン樹脂を導入した人工皮革を案出するに至った。
【0014】
以下、添付図面を参照にし、本発明に係るヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革について説明する。
【0015】
大豆は処理によって下記のような物質が生成されるが、一次的に大豆油が発生する。油が除去された残留物を脱脂大豆フレークと言い、この物質から大豆粉末、大豆濃縮物及び大豆タンパク質分離体(以下、‘SPI’と称す)である3種の物質を得ることができる。前記SPIはタンパク質の含量が90%以上であり、その他には炭水化物などで構成されるが、本発明はこれを利用することに特徴がある。
【0016】
本発明の人工皮革は無溶剤ポリウレタン樹脂85〜95重量%及び平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%を含有することにその特徴がある。
【0017】
本発明において、前記無溶剤ポリウレタン樹脂は、平均分子量100〜20,000を有するポリオール99〜99.7重量%、遅延性触媒0.2〜0.7重量%、界面活性剤0.05〜0.2重量%及び水0.01〜0.1重量%を含有するレジンプレミックス、及び、平均分子量100〜20,000を有するポリオール40〜50重量%、ジイソシアネート系化合物50〜60重量%を含有するジイソシアネートプレポリマーを1:1.5〜2.5当量比で含むことにその特徴がある。
【0018】
上で説明した本発明の含有成分に対する具体的な説明をすると下記の通りである。
【0019】
本発明は平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%を含有することにその特徴があるが、前記大豆タンパク質分離体が1μm未満の場合、分散不良により人工皮革の内部に凝集現象が発生して物性が落ち、75μmを超過する場合、粒子の個数に比べて表面積が減少して水分吸収力が低減してしまう。そして、前記大豆タンパク質分離体を5重量%未満で使用すると、水分吸収力の増大効果を得ることができず、15重量%を超過する場合、相対的に無溶剤ポリウレタン樹脂の含量が小さくなり、これにより物性が低下してしまう。
【0020】
本発明の含有成分である前記無溶剤ポリウレタン樹脂はレジンプレミックスとジイソシアネートプレポリマーを含む。前記レジンプレミックスとジイソシアネートプレポリマーは、平均分子量100〜20,000、更に好ましくは500〜15,000であるポリオールを使用することができるが、前記ポリオールはポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールを使用することができるが、ポリオールの平均分子量が100未満の時、最終製品の物性が低下し、20,000を超過する場合、過度な粘度向上により加工性の低下が発生する。
【0021】
前記ポリエステルポリオールは平均水酸基が100〜450mgKOH/g、好ましくは150〜400mgKOH/gであり、粘度が1,000〜10,000cps(25℃)、好ましくは3,000〜85,000cps(25℃)であるものを使用することができる。
【0022】
この時、平均水酸基が100mgKOH/g未満であるポリエステルポリオールを使用すると、ポリオールの粘度が非常に高くなるため商用性が落ち、450mgKOH/gを超過すると、ポリウレタン樹脂の製造時に硬度が上昇してしまう。
【0023】
ここで、前記ポリエーテルポリオールは平均官能基が2〜5であり、平均水酸基が200〜850mgKOH/gであるものを使用することが好ましい。前記ポリエーテルポリオールの平均官能基が2未満の場合、架橋性が落ちてしまい、成形が円滑に行われず、平均官能基が5を超過すると、過度な架橋が発生してしまう。更に、平均水酸基が200mgKOH/g未満の場合、イソシアネートと反応するポリオールの反応器が少ないため、ウレタン反応度が低いという問題点があり、850mgKOH/gを超過する場合、過度な架橋反応が発生して、粘度が急激に高くなるという問題が発生する。
【0024】
前記レジンプレミックスは遅延性触媒を含有するが、本発明において遅延性触媒を使用する理由は通常的な触媒を使用する場合、ウレタン結合反応が急激に行われ、本発明の人工皮革のコーティング層を十分に形成することができないため、本発明ではこのような通常的な触媒よりはウレタン結合反応をより遅延させることができる第3アミン類触媒を使用するのが良い。このような第3アミン類触媒は、トリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリス(3−ジメチルアミノ)プロピルヘキサヒドロトリアミン、及びこれらの誘導体の中から選択された少なくとも1種を使用することができる。前記レジンプレミックにおいて、遅延性触媒は0.2〜0.7重量%含有するのが良いが、0.7重量%を超過する場合、反応速度が非常に速くなり、0.2重量%未満の時、触媒を使用する効果を見ることができないためである。
【0025】
前記レジンプレミックスは、本発明のポリウレタン系人工皮革の表面層の内部でセルが形成される時に生成されたセルが合一または破壊されることを防止し、均一なセルが形成されるように調整するために、界面活性剤を0.05〜0.2重量%使用するが、前記界面活性剤は当業界で通常的に使用されるものを使用することができるが、好ましくは、シリコン界面活性剤を使用するのが良い。そして、前記界面活性剤が0.05重量%未満の場合、成形が不均一となってしまい、0.2重量%を超過する時、成形が遅延してしまう。
【0026】
前記レジンプレミックスはポリウレタン系人工皮革に発泡効果を与えるために、水0.01〜0.1重量%を使用するが、0.1重量%を超過して使用すると、発泡が著しく起きて亀裂が生じてしまう。
【0027】
本発明の成分であるジイソシアネートプレポリマーについて説明すると、前記ジイソシアネートプレポリマーは先に説明した前記レジンプレミックスのポリオールと同一のものを使用し、前記ポリオールとジイソシアネート系化合物の混合及びウレタン反応を通してジイソシアネート末端の遊離NCOの含量が15〜20重量%となる。前記ジイソシアネートプレポリマーのジイソシアネート末端の遊離NCOの含量が15重量%未満の場合、最終製品の物性が低下し、20重量%を超過する場合、硬度上昇による製品の柔軟性が低下してしまうためである。
【0028】
更に、前記ジイソシアネート化合物は特定のものに限定するわけではないが、芳香族、脂肪族及び芳香脂肪族ジイソシアネート化合物を使用することができ、更に詳しくは、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、及びこれらの誘導体の中から選択された少なくとも1種を使用することが良い。前記ジイソシアネート化合物は50〜60重量%を使用するが、ここで、50重量%未満の場合、最終製品の物性が低下し、60重量%を超過すると、柔軟性が低下してしまう。
【0029】
本発明のポリウレタン系人工皮革は先に説明した前記レジンプレミックスとジイソシアネート化合物を1:1.5〜2.5当量比で混合してウレタン結合反応をさせるが、ここで、1:1.5当量比未満の場合、最終製品の引張物性が低下し、1:2.5当量比を超過する場合、最終製品の過度な硬度増加による柔軟性が低下するため、一般的に、ウレタン結合反応において、ポリオールとイソシアネートを当量比を超過して反応させる。
【0030】
無溶剤ポリウレタン樹脂85〜95重量%及び平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%を含有する本発明のポリウレタン系人工皮革はその利用によって、発泡層、コーティング層及び基材層の中から選択されたいずれか1層以上を更に含むことができ、ここで、前記発泡層は一般的に発泡体として使用されるポリウレタン発泡フォームまたはポリ塩化ビニル樹脂の中から選択された少なくとも1種を含むものを使用することができ、特に限定されるわけではない。
【0031】
前記コーティング層は人工皮革の製造に一般的に使用されるものを使用することができるが、水溶性アクリルウレタン樹脂の中から選択された少なくとも1種を使用することが更に好ましく、その組成は水溶性ウレタン樹脂100重量%もしくは水溶性ウレタン樹脂と水溶性アクリルウレタン樹脂を2〜2.5:1重量比で混合して使用することができる。
【0032】
前記基材層は人工皮革の基層として特に限定はしないが、織布、不織布、編地及び綿花などから選択された少なくとも1種を使用することができ、起毛(napping)または無起毛状態のものを使用することができる。
【0033】
以下では先に紹介した本発明のポリウレタン系人工皮革の製造方法について説明する。
【0034】
本発明のポリウレタン系人工皮革は、平均分子量100〜12,000を有するポリオール99〜99.7重量%と平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%、遅延性触媒0.2〜0.7重量%、界面活性剤0.05〜0.2重量%及び水0.01〜0.1重量%を攪拌、混合してレジンプレミックスを製造する1段階、平均分子量100〜20,000を有するポリオール35〜40重量%、ジイソシアネート系化合物50〜55重量%及び大豆タンパク質粉末5〜15重量%を38〜42℃で10〜15分間ウレタン反応させ、ジイソシアネートプレポリマーを製造する2段階、前記混合物と前記ジイソシアネートプレポリマーを1:1.5〜2.5当量比で混合及び反応させ、人工皮革の原料を製造する3段階、及び前記人工皮革の原料で表面層を形成させる4段階を含むことをその特徴とする。
【0035】
ここで、前記1段階と2段階はその製造順序を変えることができ、その順序は特に限定はしない。
【0036】
前記大豆タンパク質粉末体を、1段階であるレジンプレミックスを製造する際に使用せずに、前記2段階のジイソシアネートプレポリマーを製造する際に添加する理由は、大豆タンパク質粉末体をレジンプレミックスを製造する際に添加する場合、最終製品製造の反応性が急激に低下するためである。
【0037】
前記2段階のウレタン反応時、38〜42℃で10〜15分間反応させるが、この反応条件はジイソシアネートプレポリマーに末端遊離NCOの含量が15〜20重量%となるようにするための条件である。
【0038】
4段階において、前記表面層について説明をすると、前記3段階の人工皮革の原料がポリウレタン反応をしながら表面層を形成するわけだが、このように形成された表面層は本発明において、表面水分の吸収および放出を調節する効果があり、その使用によって、前記表面層は発泡層または基材層の上部に形成させて使用することができる。そして、表面層を発泡層または基材層の上部に形成させる方法は当業界で一般的に使用する方法を使用するができる。
【0039】
更に、前記ポリウレタン系人工皮革の製造方法は、表面層の上部に水溶性ウレタン樹脂及び水溶性アクリルウレタン合成樹脂の中から選択された少なくとも1種を含有するコーティング剤をグラビアコーティング法にてコーティングさせる5段階を更に含む。
【0040】
先に説明した本発明のポリウレタン系人工皮革は飛行機シート、自動車シート、家具用シートなどに使用することができ、特に、自動車シートに使用するのに非常に適合している。
【0041】
以下、本発明を実施例に依拠して更に詳しく説明するが、本発明が下記実施例により限定されるわけではない。
【0042】
(実施例1)
下記表1に表す物質を含有した自動車シート用ポリウレタン系人工皮革を下記のように製造した。
【0043】
(1)レジンプレミックスの製造
平均分子量8,000であるポリエステルポリオール99.47重量%、トリエチレンジアミン0.4重量%、シリコン界面活性剤0.1重量%及び水0.03重量%を攪拌速度5000pm攪拌器を利用して10分間混合、攪拌してレジンプレミックスを製造した。
【0044】
(2)ジイソシアネートプレポリマーの製造
平均分子量8,000であるポリエステルポリオール45重量%、ジフェニルメタンジイソシアネート55重量%及び平均直径15μmである大豆タンパク質分離体10重量%を混合し、40℃で12時間反応させてジイソシアネートプレポリマーを製造した。このように製造されたジイソシアネートプレポリマーをASTM D 2572により末端の遊離NCOの含量を測定するために、前記ジイソシアネートプレポリマー1gの試料を得た後、これに過剰のジ−n−ブチルアミンを含むo−ジクロロベンゼン溶液を加えてアミンとイソシアネートを反応させ、反応後に残ったアミンを0.1N HCl溶液で滴定して測定した。測定結果、製造されたジイソシアネートプレポリマーは末端遊離NCOの含量が18重量%であった。
【0045】
(3)ポリウレタン系人工皮革の製造
混合チャンバーに前記レジンプレミックスとジイソシアネートプレポリマーを1:1.5当量比で得た後、これを温度40℃、圧力1kgf/cmの条件下で高速で混合、攪拌して人工皮革の原料を製造した。
【0046】
前記人工皮革の原料をロールコーター(roll coater)を利用して繊維の基である基材層の上部に表面層を形成させた後、コーティング剤を表面層の上部にコーティングした後、加熱オーブンに通過させて人工皮革を製造し、図1及び図2は製造された人工皮革の断面図の写真である。
【0047】
(実施例2〜4及び比較例1)
下記表1に表した物質を利用して実施例1と同様の方法で人工皮革を製造し、実施例2〜3及び比較例1を実施した。比較例1はSPIを添加しなかったものであり、比較例2は大韓民国特許登録第10−0806403号のシルクタンパク質粉砕物を添加したものである。
【0048】
(比較例2)
大韓民国登録特許第10−0806403号のシルクタンパク質粉砕物を添加した人工皮革を製造し、その組成は下記の通りである。
【0049】
ポリ塩化ビニル樹脂[PBI302、LG化学(韓)]90重量%、平均直径6μmを有するシルクタンパク質粉砕物[シルクパウダー100、SINDBIOSILK(韓)]12重量%を含有する表面層、シルクタンパク質粉砕物:水性系接着剤=65:45からなるコーティング層、ポリウレタンフォームで構成された発泡層、及び織布からなる基材層を含むシルクタンパク質粉砕物を含有するポリ塩化ビニル系人工皮革を製造した。
【0050】
(比較例3)
大韓民国登録特許第10−0581330号の無溶剤人工皮革を下記のような組成となるように製造した。
【0051】
水酸基末端ウレタンプレポリマー[PTMG,NPG/AA,PPG−400(3F)及びMDI型プリポリマー、OH含有量2.2%、粘度21,000cps/60℃、BAIKSAN(韓)]100重量部に対してイソシアネート系化合物[Desmodur VH−20、Bayel(独)]13重量部、界面活性剤[SF−2944F、東レ・ダウコーニング・シリコーン]2.5重量部、架橋触媒剤[U−CATSA−610、サンアプロ株式会社]0.07重量部の組成となるように、大韓民国登録特許第10−0581330号に記載された実施例5と同様に実施した。
【表1】

【0052】
(実験例1)水分吸着力の測定実験
前記実施例1〜4及び比較例1〜3の人工皮革の水分吸着−脱着の特性を比較するための実験として、ASTM D 570(Standard Test Method for Water Absorption of Plastics)法により、温度及び湿度の調節が可能なチャンバー内に試料を一定時間維持した後、変化する水分吸収力を測定した。詳しくは、50℃の恒温条件、相対湿度50%の条件のチャンバー内に試料を維持させた後、1時間単位で3時間水分吸収量を測定し、その結果を下記表2に表した。
【表2】

【0053】
表2に表された水分吸着力の測定実験結果を見れば、本発明のポリウレタン系人工皮革の場合、水分吸収力が非常に高いが、大豆タンパク質分離体を含有していない比較例1及び比較例3の場合、水分吸着力が実施例1〜4と比較して、非常に低いことを確認することができる。
【0054】
更に、本発明の実施例1〜4は既存の発明であるシルクタンパク質粉砕物を含有したポリ塩化ビニル系人工皮革と比較して水分吸収力がほぼ類似した結果を示した。これを通して人工皮革の質感を向上させるために、高価のシルクタンパク質粉砕物に代替して大豆タンパク質分離体を使用することで、人工皮革の質感を向上させた低価の人工皮革の製造が可能であるという結論を得ることができる。
【0055】
(実験例2)物性実験
前記実施例1〜4及び比較例1〜3の成形性、耐熱性及び耐黄変性を下記のように測定して下記表3に表した。
【0056】
ここで、成形性はグラビアロールコーティング方法に依拠し、製品の表面特性を肉眼及び触感評価方法にて実験し、耐熱性実験は120℃のオーブンに7日間置かせた後,表面の色変化及び表面のひびの評価方法に依拠して実験し、耐黄変性は耐候性実験装備を使用して、85℃、84MJ/m照射(Xenon Arc)法に依拠して色変化を実験し、耐黄変性は等級が低いほど良い。
(評価基準:1級−色変化なし、2級−一部少量の変化がある、3級−変化が肉眼ではっきり感知される、4級−色変化がはっきり出る、5級−既存の色と異なる色への変化が非常にはっきり感知される)
【表3】

【0057】
前記表3の物性実験結果を見ると、本発明の実施例1〜4が既存の人口皮革に比べて、物性がほぼ同等な結果を見せていることを確認することができ、これを通して本発明の人工皮革が物性が優れていることが分かる。
【0058】
(実験例3)臭い等級の測定実験
下記のような方法で実施例1〜4及び比較例1〜3の異臭発生可否実験を行い、評価基準は下記表4に記載された方法と同じであり、その結果を表5に表した。
【0059】
本実験は規格サイズに加工された試片を4Lの密閉されたガラス容器に入れた後、室温(23±2℃)で1時間放置した後、容器を開封して下記基準によって等級付けをした。
【表4】

【表5】

【0060】
前記表5の臭い等級の測定実験の結果を見ると、無溶剤ポリウレタン樹脂を使用して製造した実施例1〜4及び比較例3は揮発物質が少ないため、臭いが微々であり、これを通して本発明の人工皮革は異臭感をほぼ示さないことがわかる。
【0061】
本発明のポリウレタン系人工皮革は優れた水分吸収力を通して人工皮革がヒトの皮膚の質感を持つようにし、更に、無溶剤ポリウレタン樹脂を使用することで、人工皮革で発生する異臭感などを発生させないため、家具用シート、電車用シート、飛行機用シートなどに使用するのに適合し、特に自動車シートしての使用が期待される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本願発明は、ヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革の分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】自動車シート用ポリウレタン人工皮革の断面写真である。
【図2】ポリウレタン人工皮革の断面を拡大した写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無溶剤ポリウレタン樹脂が85〜95重量%であり、平均直径が1〜75μmである大豆タンパク質分離体が5〜15重量%を含有することを特徴とするヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項2】
前記人工皮革は発泡層、コーティング層及び基材層の中から選択された少なくとも1種を更に含むことを特徴とする、請求項1記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項3】
前記無溶剤ポリウレタン樹脂は、
平均分子量100〜20,000を有するポリオール99〜99.7重量%、遅延性触媒0.2〜0.7重量%、界面活性剤0.05〜0.2重量%及び水0.01〜0.1重量%を含有するレジンプレミックス、及び、
平均分子量100〜20,000を有するポリオール40〜50重量%、ジイソシアネート系化合物50〜60重量%を含有するジイソシアネートプレポリマーを、
1:1.5〜2.5当量比で含むことを特徴とする、請求項1記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革 。
【請求項4】
前記レジンプレミックス及び前記ジイソシアネートプレポリマーのポリオールは、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項5】
前記ポリエステルポリオールは平均水酸基が100〜450mgKOH/gであり、粘度が1,000〜10,000cps(25℃)であることを特徴とする、請求項4記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項6】
前記ポリエーテルポリオールは平均官能基が2〜5であり、平均水酸基が200〜850mgKOH/gであることを特徴とする、請求項4記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項7】
前記遅延性触媒は、トリエチレンジアミン(TEDA)、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン及びトリス(3−ジメチルアミノ)プロピルヘキサヒドロトリアミンの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項8】
前記ジイソシアネート系化合物は、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)及びヘキサメチレンジイソシアネートの中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項3記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項9】
前記ジイソシアネートプレポリマーは、ジイソシアネート末端の遊離NCOの含量が15〜20重量%であることを特徴とする、請求項3記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項10】
前記基材層は織布、不織布、編地及び綿花の中から選択された少なくとも1種であることを特徴とする、請求項2記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項11】
平均分子量100〜20,000を有するポリオール99〜99.7重量%と平均直径1〜75μmである大豆タンパク質分離体5〜15重量%、遅延性触媒0.2〜0.7重量%、界面活性剤0.05〜0.2重量%及び水0.01〜0.1重量%を攪拌、混合してレジンプレミックスを製造する1段階、
平均分子量100〜20,000を有するポリオール35〜40重量%、ジイソシアネート系化合物50〜55重量%及び大豆タンパク質粉末5〜15重量%を38〜42℃で10〜15分間ウレタン反応させ、ジイソシアネートプレポリマーを製造する2段階、
前記混合物と前記ジイソシアネートプレポリマーを1:1.5〜2.5当量比で混合及び反応させ、人工皮革の原料を製造する3段階、及び、
前記人工皮革の原料で表面層を形成させる4段階、
を含むことをその特徴とするヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革の製造方法。
【請求項12】
前記表面層の上部に水溶性ウレタン樹脂及び水溶性アクリルウレタン合成樹脂の中から選択された少なくとも1種を含有するコーティング剤をグラビアコーティング法によりコーティングさせる5段階を更に含むことを特徴とする、請求項11記載のヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革の製造方法。
【請求項13】
請求項1乃至10のうちいずれか一項の人工皮革は、水分吸収量が3.5〜4.5g/mであることを特徴とするヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。
【請求項14】
請求項1乃至10のうちいずれか一項の人工皮革を自動車シートに使用することを特徴とするヒト皮膚様の無溶剤ポリウレタン系人工皮革。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−235658(P2009−235658A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158075(P2008−158075)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(591251636)現代自動車株式会社 (1,064)
【出願人】(500518050)起亞自動車株式会社 (449)
【Fターム(参考)】