説明

ヒト糖タンパクNMBをターゲットにする抗体および免疫毒素

本発明は、多形性グリア芽細胞腫細胞、退形成星状細胞腫細胞、退形成性乏突起神経膠腫細胞、乏突起神経膠腫細胞および黒色腫細胞を含むヒト糖タンパクNMBを発現する細胞の成長を阻害する免疫毒素の形成に適する高親和性抗体を提供する。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2005年10月31日出願の米国特許仮出願第60/732,227号の恩典を主張するものであり、該出願の内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の下で成された発明に対する権利に関する記載
該当なし
【0003】
コンパクト・ディスクを用いて提出される「配列表」、表、またはコンピュータ・プログラム表付属文書への参照
該当なし
【0004】
発明の背景
癌細胞上の細胞表面タンパク質のターゲッティングは、癌療法の近代的アプローチである。ターゲットにされる細胞毒素は、癌細胞に対して化学療法より5〜10倍強力であり、望ましくない副作用を生じさせることなく特異性を提供する(Frankel, A.E. et al., Cancer Res. 56, 926-932(1996)(非特許文献1); Rand, R.W. et al., Clin. Cancer Res. 6, 2157-2165(2000)(非特許文献2))。ターゲットされる作用物質を生成するには、特有の癌細胞関連受容体または抗原の同定が重要である。
【0005】
ゲノムおよび遺伝子発現のための総合分子分析ツールの開発に関する最近の進歩は、腫瘍特異的分布を用いて新規ターゲット分子を発見する基礎をもたらした(Velculescu et al., Science, 270:484-7(1995)(非特許文献3))。新規神経膠腫関連抗原を同定しようという以前の努力の中で、遺伝子発現法の逐次分析により、神経膠腫の際に優先的に発現される幾つかの遺伝子が発見された(Loging et al., Genome Res, 10:1393-402(2000)(非特許文献4))。これらの神経膠腫マーカー遺伝子候補の中で、糖タンパクnmb(GPNMB)は、HGLの場合の5/12において、正常脳サンプルより10倍を超えるmRNA発現誘導を示した(Loging et al.,前記(非特許文献4))。
【0006】
糖タンパク非転移性黒色腫タンパク質B(「GPNMB」)は、ヌードマウスにおいて低い転移能力を有するヒト黒色腫細胞系統と高い転移能力を有するヒト黒色腫細胞系統との間の差次的発現に基づきサブトラクティブcDNAライブラリから単離された、I型膜貫通タンパク質である。gpnmb mRNAは、低転移性黒色腫細胞系統および異種移植片においても高レベルで発現された(Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995)(非特許文献5))。ヒトGPNMBは、その天然型(「GPNMBwt」)と細胞外ドメインに12-アミノ酸インフレーム挿入があるスプライス変異型(「GPNMBsv」)の両方で存在する。
【0007】
癌細胞上の多種多様な細胞表面ターゲットを認識する免疫毒素が作られた。一般に、これらは、腫瘍関連抗原、すなわち、正常な細胞を基準にして癌細胞上で過剰発現される抗原である。GPNMBを発現する細胞の成長の阻害に有用な免疫毒素を有することは望ましいことである。
【0008】
【非特許文献1】Frankel, A.E. et al., Cancer Res. 56, 926-932(1996)
【非特許文献2】Rand, R.W. et al., Clin. Cancer Res. 6, 2157-2165(2000)
【非特許文献3】Velculescu et al., Science, 270:484-7(1995)
【非特許文献4】Loging et al., Genome Res, 10:1393-402(2000)
【非特許文献5】Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995)
【発明の開示】
【0009】
発明の簡単な概要
本発明は、ヒト糖タンパクNMBに対する抗体およびそれらの使用方法を提供する。態様の第一群において、本発明は、抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含む単離されたポリペプチドを提供し、各可変領域は、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、ならびにフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する、四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、該VHのCDR1は、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、該VHのCDR2は、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3は、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1は、SEQ ID NO:31の配列を有し、該VLのCDR2は、SEQ ID NO:32の配列を有し、および該VLのCDR3は、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:23の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:24の配列を有し、該VL鎖の該CDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:25の配列を有し、該VL鎖の該CDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:26の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該VHのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、該VLのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する。
【0010】
態様のさらなる群において、本発明は、(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有するポリペプチド、ならびに(b)検出可能標識、放射性核種および治療薬からなる群より選択されるエフェクター分子を含む、キメラ分子を提供する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:23の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:24の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:25の配列を有し、該VL鎖の該CDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:26の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該VHのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、該VLのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する。一部の態様において、該エフェクター分子は、治療薬である。一部の態様において、該治療薬は、細胞毒素である。一部の態様において、該細胞毒素は、シュードモナス外毒素A(Pseudomonas exotoxin A)(PE)である。一部の態様において、該PEは、PE4E、PE35、PE37、PE38、PE38QQR、PE38KDEL、およびPE40からなる群より選択される。
【0011】
態様のさらにもう一つの群において、本発明は、前の段落で説明したキメラ分子のうちのいずれかと薬学的に許容される担体とを含む組成物を提供する。
【0012】
態様のさらにもう一つの群において、本発明は、抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有するポリペプチドをコードする単離された核酸を提供する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:23の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:24の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:25の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:26の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該VHのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、該VLのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する。一部の態様において、該核酸は、該ポリペプチドに融合したエフェクター成分をさらにコードする。一部の態様において、該エフェクター成分は、細胞毒素である。一部の態様において、該細胞毒素は、シュードモナス外毒素A(「PE」)である。一部の態様において、該PEは、PE4E、PE35、PE37、PE38、PE38QQR、PE38KDEL、およびPE40からなる群より選択される。
【0013】
態様のさらなる群において、本発明は、ヒト糖タンパクNMBを発現する癌細胞の成長を阻害する方法を提供し、本方法は、(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有するポリペプチド、ならびに(b)治療薬を含むキメラ分子と、該細胞を接触させる段階を含み、該細胞と該薬剤との接触が、該細胞の成長を阻害する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:23の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:24の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:25の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:26の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該VHのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、該VLのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する。一部の態様において、該治療薬は、細胞毒素である。一部の態様において、該細胞毒素は、シュードモナス外毒素A(PE)である。一部の態様において、該癌細胞は、多形性グリア芽細胞腫細胞、退形成星状細胞腫細胞、退形成性乏突起神経膠腫、乏突起神経膠腫細胞、および黒色腫細胞からなる群より選択される。
【0014】
態様のさらなる群において、本発明は、ヒト糖タンパクNMBを発現する癌細胞の存在を検出する方法を提供し、本方法は、(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有するポリペプチド、ならびに(b)検出可能標識を含むキメラ分子と、該細胞を接触させる段階を含み、該細胞に結合した該標識の存在を検出し、それによって該細胞の存在を検出する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:23の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:24の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:25の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該ポリペプチドの該VH鎖のCDR1は、SEQ ID NO:26の配列を有し、該VL鎖の該CDR3は、SEQ ID NO:34の配列を有する。一部の態様において、該VHのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、該VLのそれぞれ、FR 1〜4は、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する。
【0015】
詳細な説明
序論
ヒト膜貫通糖タンパク非転移性黒色腫タンパク質B(「GPNMB」)および該タンパク質の細胞外領域に12のアミノ酸のインフレーム挿入があるスプライス変異型は、幾つかの形態の脳癌の細胞において、正常な脳細胞と比較して高度に発現されることが判明した。特に、該タンパク質およびそのスプライス変異体は、多形性グリア芽細胞腫、退形成星状細胞腫、退形成性乏突起神経膠腫、および乏突起神経膠腫において過剰発現されることが判明した。Kuan et al., Proc Amer Assoc Cancer Research 43:277(2002)参照。GPNMBは、一部の黒色腫細胞上でも発現される。従って、GPNMBまたはそのスプライス変異体を発現する細胞に優先的に薬剤をターゲッティングできることは有用なことである。
【0016】
本発明は、GPNMBにおよびそのスプライス変異体に高い親和性で結合する新規抗体を提供する。無損傷抗体が二価であり、一方、scFvおよびdsFvが一価であること、ならびに無損傷抗体からのscFvまたはdsFvの生成が、出発原料として使用された抗体と比較して、一般に、親和性の結果として生じた喪失をもたらすことが、理解される。従って、ターゲット細胞への免疫毒素などの免疫複合体の結合を促進するために、scFvまたはdsFvを産生する抗体が、ターゲット抗原に対して高い親和性を有することは望ましい。従って、本抗体は、毒素および他の治療薬はもちろん、標識をGPNMB発現細胞にターゲッティングするために有用な作用物質である。
【0017】
本発明者らのうちの二人は、GPNMBに対するモノクローナル抗体を産生させることができたことを以前に報告している。Kuan et al., Proc Amer Acad Cancer Res 44:1116-7(2003)。しかし、これらの抗体は、十分に内在化しないことが判明した。このため、これらの抗体は、免疫毒素のターゲッティング部分としての使用に不適当である。それらが、ターゲット細胞への免疫毒素の細胞毒素部分の内在化を促進しないからである。当業者には理解されるように、細胞毒素は、細胞を殺傷するために細胞内に内在化されなければならない。残念なことに、ある抗体は内在化され、別のものはされない理由は、あまりわかっておらず、ならびにどの抗体が内在化され、どれが内在化されないかを予測することができない。さらに、免疫毒素のターゲッティング部分の親和性の改善は、その免疫毒素が細胞に結合する期間を増加させる傾向があり、従って、それが内在化される機会を増すが、免疫毒素のターゲッティング部分の親和性が自動的にその免疫毒素の殺細胞能と相関するとは必ずしも言えない。例えば、免疫毒素を、サイトゾルにその毒素部分を放出できるように、細胞内輸送することはできない。従来の免疫化方式によって産生された抗体は、GPNMB発現細胞への細胞毒素のターゲッティングには不適当であることが判明した。
【0018】
モノクローナル抗体アプローチにより内在化した抗体を得られなかったことに鑑みて、もう一つのアプローチに着手した。これにより、「G49」と呼ばれるscFv、および「L22」と呼ばれる変異体を発見した。さらなる研究により、「B307」、「902V」、「201」、「B308」、「B305」、「L04」、「L12」、および「L15」とそれぞれ呼ばれる、G49のまたはL22のさらなる変異体を発見した(これらの各抗体の配列は、下で詳細に論じる)。驚くべきことに、および動物を免疫することによって産生された抗体とは異なり、これらの抗体は、GPNMBに対して高い親和性を有するばかりでなく、十分に内在化もする。さらに、組換え免疫毒素として発現された場合、G49は、GPNMB発現細胞に対して有意な細胞傷害効果を有したが、他のものは、GPNMB発現細胞に対して、同様のG49系免疫毒素(G49と同じ細胞毒性を有したL15を除く)が示すより有意に高い細胞毒性を示した。このようにして、本発明の抗GPNMB抗体は、GPNMB発現細胞への細胞毒素のターゲッティングに驚くほど有用な作用物質である。
【0019】
本発明の抗体は、十分に内在化するとはいえ、内在化の前に十分に長くターゲット細胞の表面に留まると、尚、予想され、そのため、生体サンプルにおけるGPNMB発現細胞の検出のための検出可能標識の送達に、または患者におけるGPNMB発現細胞の位置の画像化に、尚、有用であることに留意しなければならない。従って、以前から使用可能なモノクローナル抗体を、GPNMB発現細胞を標識するために使用することができ、またはターゲット細胞に放射性核種もしくは効果を上げる該細胞に侵入する必要がない他の作用物質を運ぶために使用することはできるが、それらは、免疫毒素の生成には有用でない。対照的に、本発明の抗体は、GPNMB発現細胞を標識するために使用することができ、効果を上げるための該細胞に侵入する必要がない物質をそれらに送達するために使用することができ、ならびに免疫毒素を生成するために使用することができる。従って、本発明の抗体は、当技術分野において以前に報告されている抗GPNMB抗体より広い使用範囲を有し、ならびに当技術分野において以前から使用できる抗体が不適当である用途に使用することができる。
【0020】
免疫毒素は、一般に、大腸菌(E. coli)において組換え免疫毒素を発現させることによって生産され、この場合、それらは、封入体の中に蓄積する。該封入体を広範に洗浄した後、塩酸グアニジンに溶解し、タンパク質を再生し、イオン交換クロマトグラフィーおよびゲル濾過によって精製する。処理および費用の問題を緩和するために、免疫毒素を高収率で生産できる場合にそれは有利である。しかし、多くの場合、免疫毒素は、数パーセントの収率でしか生産することができない。
【0021】
従って、態様の一つの群において、本発明は、本発明者らがG49、L22、B307、902V、201、B308、B305、L04、L12、およびL15と呼ぶ抗GPNMB抗体を提供する。これらの抗体のFv領域は、これらの各抗体の可変重鎖の配列、該抗体の重鎖と軽鎖を連結させるために実施例において報告する研究で使用した典型ペプチドの配列(SEQ ID NO:11)、ならびに該抗体の可変軽鎖の配列を記載する、図7AおよびBに示す。(明確にするために、図7Aおよび7Bでは各抗体についての可変重および軽鎖の全配列を一本の線上に記載できなかったことを注記しておく。従って、第一の線上に各抗体の重鎖および軽鎖について示されているSEQ ID NO:は、その第一の線上に示されている配列だけではなく、全鎖の配列に関するものである。従って、第二の線は、問題となる重または軽鎖についてのSEQ ID NO:によって既に特定された配列の続きであるので、第二に線には独立した配列番号がない)。各抗体の各鎖の四つのフレームワーク領域(「FR」)は、各鎖の相補性決定領域(「CDR」)1、2および3と同様に、標識および番号付けしてある。抗体がG49のものとは異なる残基に下線を引く。わかるように、VH鎖のCDR1において、G49、L22、L04、L12およびL15は、同じ配列を有するが、B307は、(第一セリンのグリシンでの)一置換を有し、902Vは、二つの置換を有し、ならびに201、B308およびB305は、すべて、三つの置換を有する。VL鎖のCDR3において、G49の九つの変異体のうちの六つは、そのCDRの位置2および3に、それぞれ、グルタミン酸およびトレオニンを有するが、二つの変異体は、そのCDRの最初の三つの位置の三つすべてが突然変異しており、G49の一つの変異体(L15)は、そのCDRの最初の二つの位置だけの突然変異を含有する。
【0022】
実施例に記載するように、本発明者らは、9.1 nMのGPNMBの細胞外ドメインに対して親和性(KD)を有するG49抗体を発見した。強力な細胞毒素、「PE38」として公知のシュードモナス外毒素Aの38kD切断型を使用して免疫毒素にした場合、結果として生じる免疫毒素は、典型GPNMB発現細胞系列(細胞系列D392MG)において、それらの細胞を24時間、その免疫毒素に曝露した場合、30 ng/mLの濃度でタンパク質合成を50%阻害した。対照的に、1000 ng/mLを超える濃度では、免疫毒素は、GPNMBを発現しない対照細胞系統、HEK293においてタンパク質合成を50%阻害しなかった。(タンパク質合成を50%阻害する作用物質の量は、その作用物質の「IC50」として公知であり、その作用物質の細胞毒性の重要な尺度と考えられる)。下の表5参照。
【0023】
実施例においてさらに示すように、いわゆる「ホットスポットモチーフ」Pu-G-Py-A/T(この場合、「Pu」は、プリン塩基を指し、「Py」は、ピリミジン塩基を指す)に分類されるヌクレオチドを有するコドンによってコードされているVL CDR3内の二つの残基の突然変異は、結果として生じる抗体(L22と呼ぶ)を典型免疫毒素においてG49抗体の代わりに使用した場合、その細胞毒性を劇的に増加させた。表5および図6に示すように、容易に比較できるように同じリンカーペプチドおよび同じ毒性成分を使用して、L22-PE38構築物の細胞毒性を、G49-PE38のものと対照して試験した。意外なことに、該二つの構築物間には二つのアミノ酸の差しかなかったにもかかわらず、L22-PE38構築物は、あるGPNMB発現細胞系統(細胞系統D392MG)に対してG49-PE38の5倍、細胞毒性であり、別のもの(D54MG)に対してはG49-PE38の3倍より多い細胞毒性であった。さらに、VH CDR1において「ホットスポット」を突然変異させた場合、L22の単一の残基の突然変異(結果としてB307抗体を生じる)は、D392MG細胞系統に対してもう3倍、およびD54MG細胞系統に対して5倍、免疫毒素の細胞毒性を増加させ、対照細胞系統に対しては細胞毒性を明らかに増加させないことが判明した。さらに、結果として902V抗体を生じさせるVH CDR1の第二の残基の突然変異は、結果として生じた該抗体を用いて作られた免疫毒素のD392MG細胞系統に対する細胞毒性を、尚、さらに二倍に、D54MG細胞系統に対する細胞毒性をさらに三倍にした。表5が示すように、902V抗体を用いて作られた免疫毒素は、ターゲッティング部分としてG49を用いて作られた同様の免疫毒素より30倍大きくD392MG細胞系統に対して細胞毒性であり、ターゲッティング部分としてG49を用いて作られた同様の免疫毒素より50倍大きくD54MG細胞系統に対して細胞毒性であった。
【0024】
該抗体についてのVH CDR1の配列は、それぞれ、SEQ ID NO:22〜28である。図7に示すように、VH CDR2(SEQ ID NO:29)およびVH CDR3(SEQ ID NO:30)については、すべての抗体が同じ配列を共有する。図7に示すように、すべての抗体が、VL CDR1(SEQ ID NO:31)およびVL CDR2(SEQ ID NO:32)についても同じ配列を共有するが、G49のVL CDR3(SEQ ID NO:33)の最初の三つの残基の変異を示す。
【0025】
当業者は、相補性決定領域(「CDR」)が、抗体の特異性および親和性に責任を負う一方で、さらに一般的には、フレームワーク領域が、分子の三次元形状および配置に寄与し、抗体の特異性および親和性に対してさほど影響を及ぼさないことを認識すると考えられる。当業者は、例えば、抗原結合または特異性に有意に影響を及ぼすことなく、フレームワーク領域(これらのうちの四つが、各可変軽および重鎖内に存在する)内で保存的置換を一般に行うことができることも知っている。該抗体のVHおよびVL鎖の各FR領域の配列を図7に示す。
【0026】
抗体のFv領域が、抗原に結合する部分であり、一方、抗体のFc領域が、オプソニン作用または他のエフェクター機能に関与することも、当業者には理解される。さらに、該Fc領域が、任意の所与のクラスの免疫グロブリン(すなわち、IgG、IgM、IgAなど)について比較的不変であることは、当業者には理解される。従って、所望される場合には、任意の所与のFv領域をFcセクションにグラフトさせて、無損傷免疫グロブリンを生成することができる。しかし、小さい分子のほうが、大きな分子より良好に腫瘍に侵入する傾向があるので、充実性腫瘍に対する使用を目的とする免疫毒素のターゲッティング部分としては、無損傷免疫グロブリンよりむしろ抗原認識を保持する抗体フラグメントを使用するほうが、通常は望ましい。従って、Fv領域を構成する可変軽鎖と可変重鎖は、scFvとして公知の構築物を形成するように、リンカーによって、またはこれらの鎖間にジスルフィド結合を形成し、その結果、dsFvとして公知の構築物を作製することができるように、システインをフレームワーク領域に遺伝子工学で作製することによって、一般に、連結される。
【0027】
本明細書において記載する抗体の変更、例えば、フレームワーク領域の変更を、GPNMBに結合する本抗体の能力に有意に影響を及ぼすことなく行うことができることは理解される。従って、図7に示すような抗体のCDRを有するが、本明細書において記載するようなこれらの抗体の配列を有するフレーム領域(「FR」)を有さない抗体を、遺伝子工学で容易に作製することができる(すべての抗体は、G49抗体のFRを共有するので、便宜上、本明細書において、FRをG49抗体のFRと呼ぶことがある)。幾つかの簡単な例を挙げれば、専門家は、Fvの1本の鎖の中の1つのFR内の1つの残基についての、または1本の鎖の中の各FR内の1つ残基についての、または各鎖の中の各FR内での、保存的置換を行うことができる。例えば、専門家は、図4においてVL FR4について示されている最後の残基であるアルギニン(「R」)をリシン(「K」)で置換して生理学的pHでアルギニンが有すると予想される正電荷を保存することができる。同様に、VH FR1における12位に見出せるグルタミン酸(「E」)をアスパラギン酸(「D」)で置換して、生理学的pHでグルタミン酸残基が有すると予想される負電荷を保存する置換をもたらすことができる。その後、それらの得られた抗体を試験して、突然変異が、結合に、細胞毒性に、または突然変異した抗体で作られる免疫毒素の収率に、影響を及ぼさないことを確認することは容易にできる。従って、本発明の抗GPNMB抗体は、GPNMBに結合する抗体、ならびにFRの配列が完全にG49抗体のものであろうと、なかろうと、本明細書において記載する抗体のVH CDRおよびVL CDR配列を含む抗体を包含する。
【0028】
非ヒト種に由来する抗体のフレームワーク領域(非CDR領域)を遺伝子操作して、非ヒト動物、例えばマウスの抗体における特定の位置に見出される残基を、ヒト抗体において同じ位置に、より一般的に見出される残基で置換することができる。これらの方法で遺伝子操作された抗体は、「ヒト化抗体」と呼ばれ、これらは、副作用を誘導するリスクがより低く、一般に、より長く循環(circulation)内に残ることができるので好ましい。しかし、抗体をヒト化する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第6,180,377号、同第6,407,213号、同第5,693,762号、同第5,585,089号および同第5,530,101号に記載されている。本明細書において記載する抗体は、ヒトライブラリから発生させることができ、ならびにそれらのフレームワーク領域は、ヒトに投与された場合、免疫反応を誘発しないと予想される。しかし、当業者は、所望される場合には、残基のヒト化に関する当技術分野における情報をガイドとして使用して、それらのフレームワーク領域に修飾を施すことができる。
【0029】
さらに、可変領域のCDRが抗体特性を決めるので、最適な抗体にCDRをグラフトするか遺伝子工学で作って、その抗体にGPNMB結合特異性を付与することができる。例えば、図7に示すその配列が示されている抗体の、またはこれらの抗体の変異体の、相補性決定領域(CDR)、すなわち抗原結合ループを、当技術分野において公知であるような公知の三次元構造のヒト化抗体フレームワーク(例えば、WO98/45322;WO 87/02671;米国特許第5,859,205号:米国特許第5,585,089号;米国特許第4,816,567号;欧州特許出願0173494;Jones, et al. Nature 321 :522(1986); Verhoeyen, et al., Science 239:1534(1988), Riechmann, et al Nature 332:323(1988);およびWinterおよびMilstein, Nature 349:293(1991)参照)にグラフトさせて、GPNMB結合抗体を作製することができる。
【0030】
一部の態様では、遺伝子工学でフレームワーク領域に作られたシステイン間のジスルフィド結合によって可変領域の軽鎖と重鎖を接続して、ジスルフィド安定化Fv、すなわち「dsFv」を形成する。dsFvの形成は、当技術分野において公知であり、例えば、Pastanの米国特許第6,558,672号(これは、参照により本明細書に組み入れられる)に教示されており、該特許には、システインを遺伝子工学でフレームワーク領域に作って、鎖間のジスルフィド結合の形成を促進することができるセリンの位置が記載されている。該‘672特許、ならびに現在、前臨床および臨床試験中である様々なジスルフィド安定化Fvに鑑みて、dsFvを形成するために突然変異させる位置の特定の対の選択は、専門家の技能の範囲内であると考えられる。しかし、該‘672特許に従って、ある態様では、Fvを遺伝子操作し、抗体残基に番号付けするためのKabatシステムに従って抗体の残基に番号を付けて、軽鎖の位置42、43、44、45または46にそうしなければ存在する残基をシステインで置換し、ならびに重鎖の位置103、104、105または106にそうしなければ存在する残基を置換するようにシステインを遺伝子操作する。他の態様では、Fvを遺伝子操作して、重鎖の43、44、45、46または47にそうしなければ存在する残基を置換し、第二可変領域をコードする核酸を、システインが軽鎖の位置98、99、100または101にコードされるように突然変異させる(この段落において述べたすべての位置は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされている)。
【0031】
dsFvを製造するための方法も当技術分野において公知である。一般に、原核宿主細胞、例えば大腸菌において別個のプラスミドから二本の鎖を発現させ、結合させた後、そのタンパク質を封入体から精製する。dsFvの作製は、例えば、Mansfield et al., Blood, 90(5):2020-26(1997)およびFitzGerald et al., 国際公開番号WO 98/41641に例示されている。
【0032】
scFv態様において、VHおよびVL鎖は、単一の融合タンパク質として発現される。一部の態様において、これらの鎖は、スペーサーまたはリンカーを伴わない逐次的に発現されるVH鎖およびVL鎖で発現される。さらに一般的には、該二本の鎖は、リンカーによって隔てられている。好都合には、該リンカーは、セリン残基によって隔てられた一連のグリシンである。本明細書において報告する研究の過程で開発された抗体を用いて作られる免疫毒素の細胞毒性の比較を容易にするために、すべての免疫毒素を、同じリンカー、GGGGSGGGGSGGSA(SEQ ID NO:11)を用いて作った。この配列から明らかであるように、該リンカーは、セリンが後に続く四つのグリシンの二つのリピート(G4Sと略記される公知のモチーフ:SEQ ID NO:45)を有する。該リンカーは、例えば、G4S(SEQ ID NO:45)モチーフのリピートの数を変えることによって、例えば、該モチーフの1、3、4または5つのリピートを有することにより変えることができる。しかし、scFvが、十年をはるかに上回る期間にわたって作られていること、および多数の他の適するリンカーペプチドが、当技術分野において公知のことは、理解される。本発明のscFvと共に使用される特定のリンカーの選択は、専門家の技能の範囲内であり、本発明の実施には重要でない。
【0033】
一般に、scFvの、またはscFvを免疫毒素にする場合の毒素成分の、固有のフォールディングまたは活性に干渉しない限り、アミノ酸残基数約4から20の任意のペプチドを使用することができる。該scFvまたは毒素成分の活性に対するリンカーの作用は、そのターゲットへの該scFvの結合をアッセイすることによって、および該scFvによりターゲッティングされる細胞に対する該毒性成分の細胞毒性をアッセイすることによって、容易に判定することができる。該ターゲッティング成分の結合親和性の25%より多くの減少、もしくは該毒素成分の細胞毒性の25%より多くの減少、または両方は、試験した特定のリンカーペプチドが適切でないことを示す。非常に多数の抗体およびリガンドの結合能力を判定するためのアッセイ法が当技術分野において公知である。例えば、免疫毒素のターゲッティング分子として使用されるリガンドの結合親和性は、そのターゲット基質由来の天然リガンドを置換するターゲッティング分子の能力を測定することによってアッセイすることができる。これは、天然リガンドを標識し、その後、ターゲット受容体を有する細胞を、固定量の該標識リガンドおよび様々な濃度のリガンド含有免疫毒素と共にインキュベートすることによって遂行することができる。結合した天然リガンドの量は、ターゲット細胞に結合した標識の量を検出することによって決定することができる。標識していない天然リガンドを対照として行ってもよい。
【0034】
本発明が提供する抗体および抗体フラグメントの改善された親和性をキメラ免疫複合体に組み込んで、GPNMB抗原を有する細胞をターゲッティングするそのキメラ免疫複合体の能力を改善することができる。該免疫複合体は、例えば、放射性同位体、蛍光成分またはレポーター酵素などの検出可能な標識を有することができる。これらの標識された免疫複合体は、例えば、生体サンプルにおいてGPNMB発現細胞の存在を検出するためのインビトロアッセイ法のために使用することができ、または患者に導入して、GPNMB発現細胞の位置を画像化することができる。もう一度言うが、抗体およびそのフラグメントを使用する免疫複合体の作製は、当技術分野において周知であり、当業者は、本件に関する相当な文献を熟知していると仮定する。
【0035】
インビトロ用途のもう一つのセットでは、該免疫複合体が、検出可能標識以外の細胞毒素を有する。そのような免疫毒素を使用して、患者からのサンプルにおいてGPNMB発現細胞をパージすることができる。その後、それらの細胞は、培養される場合もあり、またはさらなる研究において使用される場合もある。
【0036】
インビボ用途において、本発明の抗体または抗体フラグメントを用いて作製された免疫毒素は、GPNMB抗原を有する癌細胞の成長および増殖を阻害するために使用することができる。本発明の抗体および抗体フラグメントの高い親和性、ならびにそれらを用いて作製された免疫毒素の高い細胞毒性は、比較的少量の該免疫毒素を投与して所望の治療効果を達成できることを意味する。副作用は、多くの場合用量依存性であるので、所与の治療効果を達成するために投与しなければならない免疫毒素の量が比較的少なければ、その免疫毒素の投与を受ける患者における副作用の発生が減少し、それらを経験する患者における副作用の重症度が低減されるはずである。
【0037】
比較を容易にするために、本発明の抗体は、同じ細胞毒素、PE38を使用して試験した。下の細胞毒素に関するセクションでさらに詳細に論じるように、シュードモナス外毒素Aの多数の変異体が当技術分野において公知である。すべてが同じ作用メカニズムを共有し、およびインビトロで使用された場合、すべてが等しく強力であると予想される。充実性腫瘍に対するインビボ使用には、PE38およびその変異体 PE38QQRのほうが、PE40より多少好ましい。それらのほうが、多少小さく、良好に免疫毒素を腫瘍に侵入させることができるからである。PEに加えて、免疫毒素での使用に適する他の細胞毒素も当技術分野において公知であり、本発明の抗GPNMB抗体を用いる免疫毒素の生成の際にそれらをPE38の代わりに使用することができる。
【0038】
一部の態様において、該抗体は、scFvまたはdsFvである。scFvの構築物から生産される組換え免疫毒素の多くは、IgG-毒素化学的複合体の三分の一のサイズであり、組成の点では均一である。scFvからのIgG分子の定常部分の削除は、霊長類を含む動物への注射後、その免疫毒素の急速なクリアランスを生じさせ、その複合体のより小さなサイズは、充実性腫瘍への薬物の侵入を向上させる。合わせて、これらの特性は、免疫毒素(IT)が非ターゲット組織および非常に低レベルの抗原を発現する組織と相互作用する時間を減少させることにより、毒性成分に関連した副作用を減少させる。
【0039】
しかし、これらの利点は、IgGsがscFvに変換されると発生する抗原結合親和性の喪失によってある程度相殺される(Reiter et al., Nature Biotechnol. 14:239-1245(1996))。親和性の増加は、scFvの選択的腫瘍送達を向上させることが証明されており(Adams et al., Cancer Res. 58:485-490(1998))、腫瘍の画像化および治療におけるそれらの有用性を増大させる可能性が高い。従って、免疫複合体のscFvおよび他のターゲッティング成分(例えば、dsFv、Fab、およびF(ab')2)の親和性の増加は、エフェクター分子、例えば毒素および他の治療薬をそれらの目的とするターゲットに送達する際のこれらの作用因子の効率を改善するために望ましい。従って、本発明の抗体の改善された親和性は、GPNMB発現性癌細胞への標識および特に毒素の送達に関する重要な進歩である。
【0040】
定義
単位、接頭語および記号は、それらのSysteme International de Unites(SI)公認の形式で示す。数値範囲は、範囲を定義する数を含んでいる。別の指示がない限り、核酸は、左から右へ、5’から3’の向きで記載し;アミノ酸配列は、左から右に、アミノからカルボキシの向きで記載する。本明細書において提供する見出しは、本明細書を全体として参照することにより受け入れることができる本発明の様々な局面および態様の限定ではない。従って、直ぐ下で定義する用語は、本明細書を全体として参照することによりさらに完全に定義される。
【0041】
糖タンパク非転移性黒色腫タンパク質B、すなわち「GPNMB」は、高および低転移性ヒト黒色腫細胞系統のサブトラクティブcDNAライブラリから十年前に最初に発見された、高グリコシル化I型膜貫通タンパク質を指す。Weterman et al., Int J Cancer. 60(1):73-81(1995)。ヒトgpnmb遺伝子は、アミノ酸数560と予測されるタンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は、GPNMBが三つのドメイン:シグナルペプチドの前にある細胞外ドメイン(464アミノ酸)、単一の膜貫通領域、および53アミノ酸残基からなる比較的短い細胞質ドメインで構成されていることを示す。GPNMBの生物学的機能は依然として見られるが、gpnmb cDNAでの最少形質転換ヒト胎児星状細胞細胞系統のトランスフェクションは、結果として、腫瘍異種移植片の表現型を最少浸潤性から高浸潤性および転移性に変えた。
【0042】
細胞の外側の曝露される部分がGPNMBの細胞外ドメインであり、従って、それが本発明の抗体および組成物が結合するために使用できることは、当業者にはわかる。従って、文脈が別様に求めていない限り、GPNMBの結合への本明細書においての言及は、糖タンパクの細胞外ドメインの結合を指す。さらに特定するために、該細胞外ドメインを、本明細書において、時として、GPNMBECDと呼ぶ。ヒトGPNMBは、その天然型(「GPNMBwt」)と、細胞外ドメイン(「GPNMBsv」)に12のアミノ酸がインフレーム挿入されているスプライス変異体型の両方で存在する。
【0043】
参照の便宜上、本明細書において用いる場合、用語「抗体」は、文脈が別様に求めていない限り、全(時として、本明細書において「無損傷」と呼ぶ)抗体、抗原認識および結合能力を保持する抗体フラグメント、全抗体の修飾によって生産されたものであろうと、または組換えDNA方法を使用して新たに合成したものであろうと、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、ならびに抗体模倣体を含む。抗体は、IgM、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgAまたはIgEであり得る。
【0044】
用語「抗体フラグメント」は、無損傷抗体の一部分、一般には無損傷抗体の抗原結合または可変領域を含む分子を意味する。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2およびFvフラグメント;ヘリックス安定化抗体(例えば、Arndt et al., J Mol Biol 312:221-228(2001)参照);ダイアボディー(下記参照);一本鎖抗体分子(「scFv」、例えば、米国特許第5,888,773号参照);ジスルフィド安定化抗体(「dsFv」、例えば、米国特許第5,747,654号および同第6,558,672号参照);およびドメイン抗体(「dAb」、例えば、Holt et al., Trends Biotech 21(11):484-490(2003)、Ghahroudi et al., FEBS Lett. 414:521-526(1997)、Lauwereys et al., EMBO J 17:3512-3520(1998)、Reiter et al., J. Mol. Biol. 290:685-698(1999)、Davies and Riechmann, Biotechnology, 13:475-479(2001)参照)が挙げられる。
【0045】
用語「ダイアボディー」は、二つの抗原結合部位を有する小さな抗体フラグメントを指し、該フラグメントは、可変軽鎖ドメイン(「VL」または「VL」)に連結された可変重鎖ドメイン(「VH」または「VH」)を同じポリペプチド鎖内に含む(VH-VL)。同じ鎖上の二つのドメイン間の対合を可能にするには小さすぎるリンカーを使用することにより、それらのドメインを別の鎖の相補ドメインと対合させて、二つの抗原結合部位を作製する。ダイアボディーおよびそれらの生産は、例えば、欧州特許第404,097号;WO 93/11161;およびHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 6444-6448(1993)により詳細に記載されている。
【0046】
「VH」または「VH」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabのものを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabのものを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。G49抗体のアミノ酸番号付けおよびCDR範囲設定は、IMGTデータベース(Lefranc, M.P., IMGT, the international ImMunoGeneTics database. Nucleic Acids Res, 31(1): 307-10(2003))に従って決定した。ジスルフィド安定化抗体を作製するための抗体のアミノ酸残基の番号付けについて、重または軽鎖のアミノ酸位置への言及は、「Kabat」システムの下でのアミノ酸の番号付けを指す(Kabat, E., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, U.S. Government Printing Office, NIH Publication No. 91-3242(1991)。Kabatシステムの下での残基の番号付けは、それを他の抗体と整列化して、フレームワーク領域およびCDR内の残基の決定を可能にするので、このシステムの下で残基に割り当てられる数は、所与の重または軽鎖における残基についてその鎖のアミノ末端から単純な計数によって得られる数とは、必ずしも一致しない。従って、特定のVHまたはVL配列内のアミノ酸残基の位置は、特定の配列内のアミノ酸の数を指さず、むしろ、Kabat番号付け機構を参照して示される位置を指す)。
【0047】
「一本鎖Fv」または「scFv」という語句は、従来の二本鎖抗体の重鎖のおよび軽鎖の可変ドメインが一本の鎖を形成するように接続された抗体を指す。一般に、リンカーペプチドをそれらの二本の鎖の間に挿入して、固有のフォールディングおよび活性結合部位の生成を可能にする。
【0048】
用語「リンカーペプチド」は、重鎖の可変ドメインを軽鎖の可変ドメインに間接的に結合させるために役立つ抗体結合フラグメント(例えば、Fvフラグメント)内のペプチドへの言及を含む。
【0049】
用語「親抗体」は、より高い親和性でではないがその親抗体と同じエピトープに結合する抗体またはそのフラグメントを得るために突然変異または変異を受けることとなるまたは受けた、対象となる抗体を意味する。
【0050】
用語「ホットスポット」は、特に高い自然変化部位である可変ドメインのCDRのまたはフレームワーク領域のヌクレオチド配列の一部を意味する。CDRは、それら自体、高変動の領域であると考えられているが、突然変異は、CDR全体にわたって均等に分布していないことが分かった。特定の部位、すなわちホットスポットは、集中的な突然変異を受ける位置として特定された。ホットスポットは、多数の構造的特徴および配列によって特性付けられる。これらの「ホットスポットモチーフ」を使用して、ホットスポットを特定することができる。特によく特性付けされている二つのコンセンサスモチーフ配列は、テトラヌクレオチド配列RGYWおよびセリン配列AGYであり、この場合のRは、AまたはGであり、Yは、CまたはTであり、およびWは、AまたはTである。
【0051】
「ターゲッティング成分」または「ターゲッティング部分」は、免疫複合体を対象となる細胞にターゲッティングすることを目的とする免疫複合体の部分である。一般に、ターゲッティング部分は、抗体であるか、抗原認識能力を保持する抗体のフラグメント、例えば、scFv、dsFv、FabまたはF(ab')2である。
【0052】
一般に、免疫グロブリンは、重および軽鎖を有する。重および軽鎖各々が、定常領域および可変領域を含有する(該領域は、「ドメイン」としても知られている)。軽および重鎖可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」とも呼ばれる、三つの超可変領域が割り込んだ「フレームワーク」領域を含有する。フレームワーク領域およびCDRの大きさは、定義されている。異なる軽または重鎖のフレームワーク領域の配列は、種内で比較的保存される。抗体のフレームワーク領域、すなわち、構成要素軽および重鎖のフレームワーク領域は、三次元空間でのCDRの位置特定および整列化に役立つ。
【0053】
CDRは、主として、抗原のエピトープへの結合に責任を負う。各鎖のCDRは、N末端から始めて順次番号付けしてCDR1、CDR2およびCDR3と一般に呼ばれ、一般に、特定のCDRが位置する鎖によっても特定される。従って、VH CDR3は、それが見出される抗体の重鎖の可変ドメインに位置し、これに対してVL CDR1は、それが見出される抗体の軽鎖の可変ドメインからのCDR1である。
【0054】
「VH」または「VH」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabを含む免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」または「VL」への言及は、Fv、scFv、dsFvまたはFabのものを含む免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0055】
「一本鎖Fv」または「scFv」とう語句は、従来の二本鎖抗体の重鎖のおよび軽鎖の可変ドメインが一本の鎖を形成するように接続された抗体を指す。一般に、リンカーペプチドをそれらの二本の鎖の間に挿入して、固有のフォールディングおよび活性結合部位の生成を可能にする。
【0056】
「ジスルフィド結合」または「システイン-システインジスルフィド結合」という語句は、システインの硫黄原子が酸化されてジスルフィド結合を形成する、二つのシステイン間の共有結合性相互作用を指す。ジスルフィド結合の平均結合エネルギーは、水素結合についての1〜2 kcal/molと比較して、約60 kcal/molである。
【0057】
「ジスルフィド安定化Fv」または「dsFv」という語句は、軽鎖と重鎖の間にジスルフィド結合がある免疫グロブリンの可変領域を指す。本発明に関連して、ジスルフィド結合を形成するシステインは、抗体鎖のフレームワーク領域内にあり、その抗体の配座の安定化に役立つ。一般に、抗体を遺伝子操作して、フレームワーク領域内の、置換が抗原結合に干渉しない位置にシステインを導入する。
【0058】
特定の抗原と免疫学的に反応性である抗体は、組換え法、例えば、ファージ中の組換え抗体もしくは同様のベクターのライブラリの選択(例えば、Huse, et al., Science 246: 1275-1281(1989); Ward, et al., Nature 341:544-546(1989);およびVaughan, et al., Nature Biotech. 14:309-314(1996))によって、または抗原でもしくは抗原をコードするDNAで動物を免疫することによって産生させることができる。
【0059】
「毒性成分」は、その免疫毒素を対象となる細胞に対して細胞毒性にする免疫毒素の部分である。
【0060】
「治療用成分」は、治療薬として作用することを目的とする免疫複合体の部分である。
【0061】
用語「治療薬」は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、サイトカイン、抗感染薬、酵素活性化剤または阻害剤、アロステリック修飾薬、抗体または患者において所望の治療効果を誘導するために投与される他の薬剤として作用する、現在知られているまたは後に開発される任意の数の化合物を含む。治療薬は、意図された治療効果が、例えば、癌細胞の殺傷である毒素または放射性同位体である場合もある。
【0062】
「検出可能な標識」は、免疫複合体に関して言えば、その存在を検出できるようにする特性を有する免疫複合体の部分を意味する。例えば、免疫複合体は、その免疫複合体が存在する細胞を免疫組織化学的アッセイ法において検出することができるようにする放射性同位体で標識することができる。
【0063】
用語「エフェクター成分」は、ターゲッティング部分がターゲットにする細胞に対して作用することまたは免疫複合体の存在を特定することを目的とする免疫複合体の部分を意味する。従って、エフェクター成分は、例えば、治療成分、毒素、放射性標識または蛍光標識であり得る。
【0064】
用語「免疫複合体」は、抗体へのエフェクター分子の共有結合性連結への言及を含む。エフェクター分子は、細胞毒素であり得る。
【0065】
用語「有効量」または「に有効な量」または「治療有効量」は、所望の結果を生じさせる、例えば、細胞タンパク質合成を少なくとも50%阻害するまたは細胞を殺傷するために十分な治療薬の投薬量への言及を含む。
【0066】
用語「毒素」は、シュードモナス外毒素A(PE)、ジフテリア毒素(DT)、ボツリヌス毒素、またはそれらの修飾毒素への言及を含む。例えば、PEおよびDTは、一般には肝臓毒性によって死をもたらす高毒性化合物である。しかし、PEおよびDTは、その毒素の天然ターゲッティング成分(例えば、PEのドメインIaまたはDTのB鎖)を除去し、それを別のターゲッティング部分、例えば抗体で置換することにより免疫毒素として使用するための形態に変更することができる。
【0067】
用語「接触」は、直接的物理的会合における配置への言及を含む。
【0068】
「発現プラスミド」は、プロモーターに機能的に連結されている対象となる分子をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0069】
本明細書において用いる場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、同義で用いており、アミノ酸残基のポリマーへの言及を含む。本用語は、天然のアミノ酸ポリマーばかりでなく、一つまたは複数のアミノ酸残基が対応する天然のアミノ酸の人工の化学的類似体であるアミノ酸ポリマーにもあてはまる。本用語は、そのタンパク質が依然として機能的であるような保存的アミノ酸置換を含むポリマーにもあてはまる。
【0070】
用語「残基」または「アミノ酸残基」または「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(総称して「ペプチド」)に組み込まれているアミノ酸への言及を含む。該アミノ酸は、天然のアミノ酸であり得、ならびに別の限定がない限り、天然のアミノ酸と同様に機能することができる天然アミノ酸の公知類似体を包含し得る。
【0071】
本明細書において言及するアミノ酸および類似体は、表Aにおける次のとおりの速記記号によって記載している。
【0072】
(表A)アミノ酸命名法

【0073】
タンパク質を説明する場合、「保存的置換」は、そのタンパク質の活性を実質的に変えないそのタンパク質のアミノ酸組成の変化を指す。従って、特定のアミノ酸配列の「保存的修飾変異」は、タンパク質の活性にとって重要でないアミノ酸についてのアミノ酸置換を指し、または重要なアミノ酸であってもその置換が実質的に活性を変化させないような同様の特性(例えば、酸性、塩基性、正もしくは負電荷、極性もしくは非極性など)を有する他のアミノ酸でのアミノ酸置換を指す。機能的に同様のアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。表B内の次の六群は、互いに保存的置換である各アミノ酸を含む。
【0074】
(表B)
1)アラニン(A)、セリン(S)、トレオニン(T);
2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);
3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q);
4)アルギニン(R)、リシン(K);
5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V);および
6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
Creighton, Proteins : Structures and Molecular Properties, W.H. Freeman and Company, New York(2nd Ed., 1992)も参照のこと。
【0075】
ペプチドに関連して、用語「実質的に同様の」は、ペプチドが、10〜20アミノ酸の比較ウインドウにわたって参照配列との少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含むことを示す。配列同一性の百分率は、ある比較ウインドウにわたって二つの最適に整列化された配列を比較することによって決定され、この場合、その比較ウインドウ内のポリヌクレオチド配列の一部は、それら二つの配列の最適なアラインメントのために参照配列(これは、付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(すなわち、ギャップ)を含む場合がある。該百分率は、同一の核酸塩基またはアミノ酸残基が両方の配列内で発生する位置の数を判定して、マッチした位置の数を得、そのマッチした位置の数を比較ウインドウ内の位置の総数で割り、その結果に100を掛けて配列同一性の百分率を得ることによって算出される。
【0076】
用語「複合化」、「接続」、「結合」または「連結」は、二つのポリペプチドを一つの近接するポリペプチド分子にすることを指す。本発明に関連して、本用語は、エフェクター分子(EM)への抗体成分の接続への言及を含む。その連結は、化学的手段による場合もあり、または組換え手段による場合もある。「化学的手段」は、二つの分子間に共有結合が形成されて一つの分子を形成するような抗体成分とエフェクター分子との反応を指し、一方、「組換え手段」は、二つの別の分子として最初に存在しなかった単一の融合タンパク質の生産をもたらす核酸の発現を指す。
【0077】
本明細書において用いる場合、「組換え」は、タンパク質を発現することができるDNAの内因性コピーを天然の状態では有さない細胞を使用して生産されたタンパク質への言及を含む。該細胞は、適切な単離された核酸配列の導入によって遺伝子改変されているため、組換えタンパク質を生産する。本用語は、異種核酸の導入により、もしくは天然核酸をその細胞にとって自然でない形態に改変することにより修飾された、またはその細胞がそのように修飾された細胞に由来する細胞または核酸またはベクターへの言及を含む。従って、例えば、組換え細胞は、その細胞の天然(非組換え)型の中では見出されない遺伝子を発現し、その天然型の中で見出される遺伝子の突然変異体を発現し、または別様に異常に発現される、低発現される、もしくは全く発現されない天然遺伝子を発現する。
【0078】
本明細書において用いる場合、「核酸」または「核酸配列」は、一本鎖型または二本鎖型いずれかのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーへの言及を含み、ならびに別の限定がない限り、天然のヌクレオチドと同様に核酸にハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知類似体を包含する。別の指示がない限り、特定の核酸配列は、その相補配列、ならびに保存的変異体、すなわち、タンパク質に翻訳された場合にアミノ酸の保存的置換を生じさせるコドンおよび変異体のウォブル位置に存在する核酸を含む。
【0079】
本明細書において用いる場合、指定の核酸に関して「コードする」は、その指定のタンパク質への翻訳についての情報を含む核酸への言及を含む。該情報は、コドンの使用によって指定される。一般に、アミノ酸配列は、「普遍的」遺伝子コードを用いて核酸によってコードされる。しかし、一部の植物、動物および真菌ミトコンドリア中に存在するような不変コードの変異体、細菌マイコプラズマ・カプリコラム(Mycoplasma capricolum)(Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82:2306-2309(1985))、または繊毛虫大核を、これらの生物の翻訳装置を使用して核酸が発現される場合に使用することができる。
【0080】
「インフレームでの融合」という語句は、接続された核酸が、元のポリペプチド鎖を含む一本鎖タンパク質に翻訳されるポリペプチドをコードする二つまたはそれ以上の核酸配列の接続を指す。
【0081】
本明細書において用いる場合、「発現された」は、タンパク質への核酸の翻訳への言及を含む。タンパク質は、発現され、細胞内に残る場合もあり、細胞表面膜の構成要素となる場合もあり、または細胞外基質もしくは培地に分泌される場合もある。
【0082】
「宿主細胞」は、発現ベクターの複製または発現を支援することができる細胞を意味する。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌である場合もあり、または真核細胞、例えば酵母、昆虫、両生類もしくは哺乳動物細胞である場合もある。
【0083】
「ファージディスプレイライブラリ」という語句は、表面タンパク質にインフレームで組換え融合した外来cDNAを各々が含有するバクテリオファージの集団を指す。このファージは、その表面のcDNAによってコードされた外来タンパク質を表示する。細菌宿主、一般には大腸菌内での複製後、対象となる外来cDNAを含有するファージをそのファージ表面での外来タンパク質の発現によって選択する。
【0084】
二つまたはそれ以上の核酸またはポリペプチド配列に関連して、用語「同一の」または「同一性」パーセントは、下記の配列比較アルゴリズムのうちの一つを使用してまたは目視検査によって測定される最大の一致のために比較および整列化した場合、同じであるまたは同じであるアミノ酸残基もしくはヌクレオチドの指定された百分率を有する二つまたはそれ以上配列または部分配列を指す。
【0085】
二つの核酸またはポリペプチドに関連して「実質的に同一の」という語句は、下記の配列比較アルゴリズムのうちの一つを使用してまたは目視検査によって測定される最大の一致のために比較および整列化した場合、少なくとも60%、さらに好ましくは65%、さらにいっそう好ましくは70%、尚いっそう好ましくは75%、さらにいっそう好ましくは80%、および最も好ましくは90〜95%のヌクレオチドまたは核酸残基同一性を有する二つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、少なくとも約50残基の長さである配列の領域にわたって、さらに好ましくは少なくとも約100残基の領域にわたって、尚いっそう好ましくは少なくとも約150残基にわたって、および最も好ましくはその配列の完全長にわたって実質的な同一性が存在する。最も好ましい態様において、該配列は、コード領域の全長にわたって実質的に同一である。
【0086】
配列比較のために、一般には一つの配列が、試験配列を比較する参照配列としての役割を果す。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列をコンピュータに入力し、必要な場合には、部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。その後、配列比較アルゴリズムが、指定したプログラムパラメータに基づき、参照配列を基準にして試験配列についての配列同一性パーセントを算出する。
【0087】
比較のための配列の最適なアラインメントは、例えば、SmithおよびWaterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって、NeedlemanおよびWunsch, J Mol. Biol. 48:443(1970)の相同性アラインメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman, Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444(1988)の類似性検索法によって、これらのアルゴリズムのコンピュータでの実施によって(ウィスコンシン州マディソン、575 Science Dr.にあるGenetics Computer Groupのthe Wisconsin Genetics Software Package内のGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または目視検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc.,(1995 Supplement)(Ausubel)参照)によって、行うことができる。
【0088】
配列同一性パーセントおよび配列類似性の決定に適するアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらは、それぞれ、Altschul et al.(1990)J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschuel et al.(1977)Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されている。BLAST解析を行うためのソフトウェアは、the National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)を通して公的に入手することができる。このアルゴリズムは、データベース配列内の同じ長さのワードと整列化した場合に何らかの正の値の閾値スコアTとマッチするまたはそれを満たす、クエリ配列内の長さWの短いワードを特定することによって、高スコアの配列ペア(HSP)を同定することを先ず含む。Tは、隣接ワードスコア閾値と呼ばれる(Altschul et al.,前記)。これらの最初の隣接ワードヒットは、それらを含む、より長いHSPを見つける検索を開始するためのシードとしての役割を果す。その後、それらのワードヒットを、累積アラインメントスコアを増加できなくなるまで、各配列に沿って両方向に拡張する。累積スコアは、ヌクレオチド配列については、パラメータM(一対のマッチする残基のリワードスコア;常に>0)およびN(ミスマッチする残基のペナルティースコア;常に<0)を使用して算出する。アミノ酸配列については、スコアリングマトリックスを使用して、累積スコアを算出する。各方向へのワードヒットの拡張は、累積アラインメントスコアが、その最大獲得値から量X分落ち込んだ場合;一つまたは複数の負のスコアの残基アラインメントの累積に起因して、累積スコアがゼロまたはそれ以下になった場合;またはいずれかの配列の末端に達した場合、中止する。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、およびXは、そのアラインメントの感度および速度を決める。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして11のワード長(W)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を用いる。アミノ酸配列用のBLASTPプログラムは、デフォルトとして3ワード長(W)、10の期待値(E)、およびBLOSUM62スコアリングマトリックス(HenikoffおよびHenikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:10915(1989))を用いる。
【0089】
配列同一性パーセントの算出に加えて、BLASTアルゴリズムは、二配列間の類似性の統計解析を行うこともできる(例えば、KarlinおよびAltschul, Proc. Nat'l Acad Sci. USA 90:5873-5787(1993)参照)。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の一つの測度は、最小合計確立(P(N))であり、これは、二つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間のマッチが偶然に発生する確率の指標となる。例えば、核酸と参照配列は、その試験核酸とその参照核酸の比較で最小合計確立が約0.1未満、さらに好ましくは約0.01未満、および最も好ましくは約0.001未満である場合、類似していると見なされる。
【0090】
二つの核酸配列またはポリペプチドが実質的に同一であるさらなる指標は、下で説明するように、第一の核酸によってコードされているポリペプチドが、第二の核酸によってコードされているポリペプチドと免疫学的に交差反応性であることである。従って、一般に、あるポリペプチドと第二のポリペプチドは、例えば、それら二つのペプチドの違いが保存的置換のみである場合、実質的に同一である。二つの核酸配列が実質的に同一であるもう一つの指標は、それら二つの分子が、下で説明するようなストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0091】
用語「インビボ」は、細胞を得た生物の体内への言及を含む。「エクスビボ」および「インビトロ」は、細胞を得た生物の体外を意味する。
【0092】
「悪性細胞」または「悪性病変」という語句は、浸潤性であり、および/または転移を受けることができる腫瘍または腫瘍細胞、すなわち癌性細胞を指す。
【0093】
本明細書において用いる場合、「哺乳動物細胞」は、ヒト、ラット、マウス、モルモット、チンパンジーまたはマカクを含む哺乳動物に由来する細胞への言及を含む。これらの細胞は、インビボまたはインビトロで培養することができる。
【0094】
抗原に関して、用語「選択的反応性」は、抗体(全体または一部)と、その抗原を欠く細胞または組織とではなく、その抗原を有する細胞または組織との優先的会合を指す。ある程度の非特異的相互作用が、分子と非ターゲット細胞または組織との間に起こり得ることは、勿論、認識される。それにもかかわらず、選択的反応性は、抗原の特異的認識によって媒介されるものとして扱われる。選択的反応性抗体は、抗原に結合するとはいえ、低い親和性でそうすることができる。一方、特異的結合は、抗体と抗原を有する細胞との間のほうが、結合した抗体と抗原を欠く細胞との間よりはるかに強い会合を生じさせる。特異的結合は、GPNMBを欠く細胞または組織へのものと比較してGPNMBを有する組織または細胞への結合抗体の量(単位時間あたり)を、一般に2倍より大きく、好ましくは5倍より大きく、さらに好ましくは10倍より大きく、および最も好ましくは100倍より大きく増加させる。そのような条件下でのタンパク質への特異的結合は、特定のタンパク質に対するその特異性のために選ばれる抗体を必要とする。様々なイムノアッセイ形式が、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体の選択に適する。例えば、固相ELISAイムノアッセイ法は、タンパク質と特異的に免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するために常用されている。特異的免疫反応性を判定するために使用することができるイムノアッセイ形式および条件の説明については、HarlowおよびLane, ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Publications, New York(1988)を参照のこと。
【0095】
用語「免疫学的反応性条件」は、特定のエピトープに対して産生させた抗体が、実質的にすべての他のエピトープへの結合より検出可能に大きな程度に、および/または実質的にすべての他のエピトープへの結合を除外するほどに、そのエピトープに結合できる条件への言及を含む。免疫学的反応性条件は、抗体結合反応の形式に依存し、一般に、イムノアッセイプロトコルに使用されるものまたはインビボで遭遇する条件である。イムノアッセイ形式および条件の説明については、HarlowおよびLane,前記を参照のこと。好ましくは、本発明の方法において用いられる免疫学的反応性条件は、[生理条件]であり、これは、生きている哺乳動物または哺乳動物細胞の内部に概して存在する条件(例えば、温度、浸透圧モル濃度pH)への参照を含む。一部の器官は、極端な条件に付されることがわかっているが、生物体内および細胞内環境は、通常、pH 7(すなわち、pH 6.0からpH 8.0、さらに一般的にはpH 6.5から7.5)辺りにあり、主溶媒として水を含有し、ならびに0℃より上で50℃より下の温度で存在する。浸透圧モル濃度は、細胞生存力および増殖を支援する範囲内のものである。
【0096】
糖タンパクNMB
ヒトgpnmb遺伝子は、アミノ酸数560と予測されるタンパク質をコードし、その推定アミノ酸配列は、GPNMBが三つのドメイン、シグナルペプチドの前にある長い細胞外ドメイン(ECD)、単一の膜貫通領域、および比較的短い細胞質ドメインで構成されていることを示す。ヒトGPNMBアミノ酸配列は、DC-HILとの71.1%の相同性を有し(Shikano et al., J Biol Chem, 276:8125-34(2001))、オステオアクチビンとの69.8%の相同性を有し(Safadi et al., J Cell Biochem, 84:12-26(2001))、pMel 17の前駆体との56%の相同性を有し(Kwon et al., Proc Natl Acad Sci USA, 88:9228-32(1991))、およびQNR-71との51%の相同性を有した(Turque et al., Embo J, 15:3338-50(1996))。
【0097】
ヒトGPNMB遺伝子は、ヒト染色体7q15(NCBI Unigene Cluster Hs.82226 GPNMB)、ヒト遺伝性疾患類嚢胞黄斑ジストロフィーに関与する遺伝子座に局在していた。Bachnerらは、網膜および虹彩色素上皮内でマウスgpnmb mRNAの高い発現を見つけたので、ヒトGPNMBが優性嚢胞黄斑浮腫についての候補遺伝子であり得ると提案した(Bachner et al., Brain Res Gene Expr Patterns, 1:159-65(2002))。
【0098】
GPNMBの機能は、十分には説明されておらず、トランスフェクション研究での矛盾した作用に注目された。インビトロ最少形質転換ヒト胎児星状細胞系統、THRG(Rich et al., Cancer Res, 61:3556-60(2001); Rich et al., J Biol Chem(2003))のgpnmb cDNAでのトランスフェクションは、無胸腺マウスにおいて皮下および頭蓋内腫瘍成長の両方の表現型を最少浸潤性から高浸潤性へと変え、ならびに転移表現型を変えた。逆に、高転移性黒色腫細胞系統への部分的gpnmb cDNAのトランスフェクションは、ヌードマウスにおいて皮下腫瘍成長を遅速させ、自然転移の可能性も減少させた(Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995))。本発明者らの一部による高悪性度神経膠腫(HGG)生検サンプルの研究では、35/50のGBM(70%)においてgpnmb RNA転写産物を検出したが、正常な脳サンプルでは殆どまたはまったくgpnmb mRNA発現がなかったことを指摘した。より大きなHGG群の免疫組織化学的研究によると、75/108のGBM(70%)は、GPNMBタンパク質発現について陽性であった。さらに、新鮮なGBM生検材料の定量的フローサイトメトリー分析は、細胞表面GPNMB分子密度が、分子数1.1から7.8×104の範囲に及んだことを示した。ヒトHGGにおける頻繁な発現およびその細胞表面局在のため、GPNMBは、細胞傷害剤の抗原媒介送達の良好なターゲットとなる。
【0099】
免疫複合体の生産
免疫複合体としては、治療薬が抗体に共有結合している分子が含まれるがこれらに限定されるわけではない。治療薬は、特定のターゲット分子またはターゲット分子を有する細胞に対する特定の生物活性を有する薬剤である。治療薬が、ビンブラスチン、ダウノマイシンなどのような様々な薬物;天然または修飾シュードモナス外毒素またはジフテリア毒素などの細胞毒素;それら自体が薬理学的組成物を含有する封入剤(例えば、リポソーム);125I、32P、14C、3Hおよび35Sなどの放射性物質;ならびに他の標識、ターゲット成分およびリガンドを含み得ることは当業者には理解される。
【0100】
特定の治療薬の選択は、特定のターゲット分子または細胞に依存し、生物学的作用を誘発することが望まれる。従って、例えば、一部の態様において、治療薬は、特定のターゲット細胞の死滅をもたらすために使用される細胞毒素である。逆に、非致死的生体応答を誘発が単に望まれる場合、治療薬を、非致死性薬物と、または非致死性薬物を含有するリポソームと複合化させてもよい。
【0101】
本明細書において提供する治療薬および抗体を用いて、当業者は、機能的に等価の核酸、例えば、配列の点では異なるが、同じエフェクター分子(「EM」)または抗体配列をコードしている核酸を含有する様々なクローンを容易に構築することができる。従って、本発明は、抗体ならびにそれらの複合体および融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0102】
A.組換え法
本発明の核酸配列は、例えば適切な配列のクローニングを含む任意の適切な方法によって、またはNarang, et al., Meth. Enzymol. 68:90-99(1979)のホスホトリエステル法;Brown, et al., Meth. Enzymol. 68:109-151(1979)のホスホジエステル法;Beaucage, et al., Tetra. Lett. 22:1859-1862(1981)のジエチルホスホロアミダイト法;例えば、Needham-VanDevanter, et al Nucl Acids Res. 12:6159-6168(1984)記載されているような自動合成装置を例えば使用するBeaucageおよびCaruthers, Tetra. Letts. 22(20): 1859-1862(1981)により記載された固相ホスホロアミダイトトリエステル法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体法などの方法による直接化学合成によって作製することができる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。これは、相補配列とのハイブリダイゼーションにより、またはテンプレートとして一本鎖を使用するDNAポリメラーゼでの重合により二本鎖DNAに変換することができる。DNAの化学合成は、塩基数約100の配列に限られるが、より短い配列のライゲーションによってより長い配列を得ることができることは、当業者には理解される。
【0103】
好ましい態様において、本発明の核酸配列は、クローニング技術によって作製することができる。適切なクローニングおよび塩基配列決定技術の例、ならびに多くのクローニング実習を当業者に指図するために十分な教示は、Sambrook, et al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL(2ND ED.), Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory(1989))、Berger and Kimmel(eds.), GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES, Academic Press, Inc., San Diego CA(1987))、またはAusubel, et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing and Wiley-Interscience, NY(1987)において見出される。生物試薬および実験装置の製造業社からの製品情報も有用な情報を提供する。そのような製造業社としては、the SIGMA chemical company(ミズーリ州セントルイス)、R&D systems(ミネソタ州ミネアポリス)、Pharmacia LKB Biotechnology(ニュージャージー州ピスカタウェイ)、CLONTECH Laboratories, Inc.(カリフォルニア州パロ・アルト)、Chem Genes Corp., Aldrich Chemical Company(ウィスコンシン州ミルウォーキー)、Glen Research, Inc., GIBCO BRL Life Technologies, Inc.(メリーランド州ゲーサーズバーグ)、Fluka Chemica-Biochemika Analytika(Fluka Chemie AG, スイス、ブックス)Invitrogen(カリフォルニア州サンディエゴ)、およびApplied Biosystems(カルフォルニア州フォスター・シティー)、ならびに当業者には公知の他の多くの商業的供給元が挙げられる。
【0104】
天然EMまたは抗GPNMB抗体をコードする核酸を修飾して、本発明の抗体または免疫複合体を作製することができる。部位特異的突然変異誘発による修飾は、当技術分野において周知である。抗GPNMB抗体または免疫複合体をコードする核酸は、インビトロ法によって増幅させることができる。増幅法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写系増幅システム(TAS)、自己配列複製システム(3SR)が挙げられる。多種多様なクローニング法、宿主細胞およびインビトロ増幅方法が、当業者には周知である。
【0105】
好ましい態様では、抗GPNMB scFv抗体をコードするcDNAを、EMをコードするcDNAを含むベクターに挿入することによって免疫複合体を作製する。この挿入は、該scFvおよびEMがインフレームで、すなわち、機能的Fv領域および機能的EM領域を含有する1つの連続したポリペプチドの中で読み取られるように行われる。特に好ましい態様では、ジフテリア毒素フラグメントをコードするcDNAが、scFvに、該毒素が該scFvのカルボキシル末端に位置するようにライゲートされる。さらに好ましい態様では、PEをコードするcDNAが、scFvに、該毒素が該scFvのアミノ末端に位置するようにライゲートされる。
【0106】
本発明のEM、抗GPNMB抗体または免疫複合体をコードする核酸を、一旦、単離およびクローニングすると、遺伝子組換え細胞、例えば細菌、植物、酵母、昆虫および哺乳動物細胞において所望のタンパク質を発現させることができる。当業者は、大腸菌、他の細菌宿主、酵母ならびに様々な高等真核細胞、例えばCOS、CHO、HeLaおよび黒色腫細胞系統を含むタンパク質の発現に使用できる非常に多数の発現系に精通していると予想される。原核生物または真核生物においてタンパク質を発現させるための公知の様々な方法は、詳細には説明しないようにする。簡単に言えば、本発明の単離されたタンパク質をコードする天然または合成核酸の発現は、一般に、プロモーター(構成的であるか誘導性である)にDNAまたはcDNAを機能的に連結させ、その後、発現カセットに組み込むことによって達成される。該カセットは、原核生物または真核生物における複製およびそれらへの組み込みに適するものであり得る。代表的な発現カセットは、タンパク質をコードするDNAの発現の調節に有用な転写および翻訳ターミネータ、開始配列ならびにプロモーターを含有する。クローニングされた遺伝子の高レベルの発現を得るには、転写を命ずる強いプロモーター、翻訳開始のためのリボソーム結合部位、および転写/翻訳ターミネータを最低でも含有する発現カセットを構築することが望ましい。大腸菌の場合、これは、プロモーター、例えばT7、trp、lacまたはλプロモーター、リボソーム結合部位、および好ましくは、転写停止シグナルを含む。真核細胞の場合、制御配列は、プロモーターおよび好ましくは、免疫グロブリン遺伝子、SV40、サイトメガロウイルスおよびポリアデニル化配列から誘導されたエンハンサを含むことができ、スプライスドナーおよびアクセプター配列を含むこともある。本発明のカセットは、選択された宿主細胞に、周知の方法、例えば、大腸菌については塩化カルシウム形質転換またはエレクトロポレーション、および哺乳動物細胞についてはリン酸カルシウム処理、エレクトロポレーションまたはリポフェクションによって移入することができる。該カセットによって形質転換された細胞は、それらのカセットに含まれている遺伝子、例えば、amp、gpt、neoおよびhyg遺伝子によって付与される抗生物質に対する耐性により選択することができる。
【0107】
本発明のポリペプチド(すなわち、抗GPNMB抗体、またはその抗体を使用して作られた免疫複合体)をコードする核酸に対して、その生物活性を低下させることなく修飾を行うことができることは、当業者には理解される。一部の修飾は、融合タンパク質へのターゲッティング分子のクローニング、発現または組み込みを容易にするために行うことができる。そのような修飾は、当業者には周知であり、例えば、停止コドン、開始、部位を生じさせるためにアミノ末端に付加されるメチオニン、都合のよい位置にある制限部位を作製するためにいずれかの末端に配置される追加のアミノ酸、または精製段階を助長するための追加のアミノ酸(例えば、ポリHis)を含む。
【0108】
組換え法に加えて、本発明の抗体および免疫複合体は、標準的なペプチド合成を使用して、全部または一部を構築することもできる。長さがアミノ酸数 50未満の本発明のポリペプチドの固相合成は、その配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に取り付け、その後、その配列内の残りのアミノ酸を逐次的に付加させることによって遂行することができる。固相合成のための技術は、BaranyおよびMerrifield, THE PEPTIDES: ANALYSIS, SYNTHESIS, BIOLOGY. VOL. 2: SPECIAL METHODS IN PEPTIDE SYNTHESIS, PART A. pp. 3-284; Merrifield, et al. J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2156(1963);およびStewart, et al., SOLID PHASE PEPTIDE SYNTHESIS, 2ND ED. , Pierce Chem. Co., Rockford, 111.(1984)によって説明されている。より長い長さのタンパク質は、より短いフラグメントのアミノ末端とカルボキシル末端の縮合によって合成することができる。(例えば、カップリング試薬N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミドの使用による)カルボキシル末端の活性化によるペプチド結合の形成方法は、当業者には公知である。
【0109】
B.精製
一旦、発現されたら、本発明の組換え免疫複合体、抗体、および/またはエフェクター分子は、硫酸アンモニウム沈殿法、アフィニティーカラム、カラムクロマトグラフィーなどを含む当技術分野における標準的手順(一般に、R. Scopes et al., PROTEIN PURIFICATION: PRINCIPLES AND PRACTICE Springer-Verlag, N. Y.(3rd ed., 1994)を参照のこと)に従って精製することができる。薬学的用途には、少なくとも約90から95%均質性の実質的に純粋な組成物が好ましく、98〜99%またはそれ以上の均質性が最も好ましい。治療に使用される場合には、望みどおりに部分的にまたは均質まで精製したら、それらのポリペプチドには実質的に内毒素がないはずである。
【0110】
大腸菌などの細菌から、一本鎖抗体を発現させるためのおよび/または一本鎖抗体を含む適切な活性型にリフォールディングするのための方法は記載されており、周知であり、ならびに本発明の抗体に適用することができる。Buchner, et al., Anal. Biochem. 205:263-270(1992); Pluckthun, Biotechnology 9:545(1991); Huse, et al., Science 246:1275(1989);およびWard, et al., Nature 341:544(1989)参照(すべて参照により本明細書に組み入れられる)。
【0111】
多くの場合、大腸菌または他の細菌からの機能的異種タンパク質は、封入体から単離され、ならびに強力な変性剤を使用する可溶化およびその後のリフォールディングを必要とする。可溶化段階の間、当技術分野において周知であるように、ジスルフィド結合を分離するために還元剤が存在しなければならない。還元剤を伴う例示的なバッファーは、0.1 M Tris pH 8、6M グアニジン、2mM EDTA、0.3M DTE(ジチオエリトリトール)である。ジスルフィド結合の再酸化は、Saxena, et al., Biochemistry 9: 5015-5021(1970)(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、および特に、Buchner et al.,前記により記載されているように、還元および酸化型の低分子量チオール試薬の存在下で行うことができる。
【0112】
再生は、変性および還元されたタンパク質をリフォールディングバッファーで希釈(例えば、100倍)することによって一般に遂行される。例示的なバッファーは、0.1 M Tris pH 8.0、0.5M L-アルギニン、8mM 酸化グルタチオン、および2mM EDTAである。
【0113】
二本鎖抗体精製プロトコルの改変としては、重および軽鎖領域を別々に可溶化し、還元し、その後、リフォールディング溶液中で併せる。これら二つのタンパク質を、一方のタンパク質が他方に対して5モル過剰量を超えないようなモル比で混合すると、好ましい収量が得られる。レドックス-シャッフリングが完了した後、過剰な酸化グルタチオンまたは他の酸化性低分子量化合物をそのリフォールディング溶液に添加することが望ましい。
【0114】
細胞毒素
本発明の抗体と共に毒素を用いて免疫毒素を生じさせることができる。例示的な毒素としては、リシン、アブリン、ジフテリア毒素およびそのサブユニット、ならびにボツリヌス毒素AからFが挙げられる。これらの毒素は、商業的供給元(たとえば、ミズーリ州セントルイスのSigma Chemical Company)から容易に入手することができる。ジフテリア毒素(「DT」)は、コリネバクテリウム・ジフセリエ(Corynebacterium diphtheriae)から単離される。リシンは、トウゴマ(Ricinus communis)(ヒマの種(Castor bean))からのレクチンRCA60である。この用語は、それらの毒性変異体も参照する。例えば、米国特許第5,079,163号および同第4,689,401号参照。トウゴマ凝集素(RCA)は、それぞれ、約65および120 kDのそれらの分子量に従ってRCA60およびRCA120と呼ばれる二つの形態で発生する(NicholsonおよびBlaustein, J Biochim. Biophys. Acta 266:543(1972))。A鎖は、タンパク質合成の不活性化および細胞の殺傷に責任を負う。B鎖は、リシンを細胞表面ガラクトース残基に結合させ、サイトゾルへのA鎖の輸送を助長する(Olsnes, et al., Nature 249:627-631(1974)および米国特許第3,060,165号)。
【0115】
アブリンは、トウアズキ(Abrus precatorius)からの毒性レクチンを含む。毒性成分、アブリンa、b、cおよびdは、約63から67 kDまでの分子量を有し、二本のジスルフィド連結ポリペプチド鎖AおよびBからなる。A鎖は、タンパク質合成を阻害し;B鎖(アブリン-b)は、D-ガラクトース残基に結合する(Funatsu, et al., Agr. Biol. Chem. 52:1095(1988);およびOlsnes, Methods Enzymol. 50:330-335(1978)参照)。
【0116】
A.ジフテリア毒素(「DT」)
一部の態様において、毒素は、ジフテリア毒素(「DT」)の突然変異体型である。先進世界のほとんどの人々は、ジフテリアの免疫処置を受けており、その結果、体循環内にDTに対する抗体が存在し、全身投与のための免疫毒素の毒性成分としてのDTの消費量は減少している。しかし、血液脳関門のため、抗DT抗体は、脳内でのDT系免疫毒素の使用に干渉する傾向がなく、脳癌の免疫毒療法は、一般に、腫瘍を切除した後の腫瘍または腫瘍周辺領域の局所注入を含む。従って、本発明のDT系免疫毒素は、神経膠腫またはGPNMBを発現する他の脳癌の治療に特に有用である。
【0117】
DTは、コリネバクテリウム・ジフセリエの毒素産生菌によって分泌されるタンパク質である。これは、最初、アミノ酸数 535のポリペプチドとして合成され、それがタンパク質分解を受けて、ジスルフィド結合により接続された二つのサブユニットAおよびBからなる毒素を形成する。カルボキシル末端で見出されるBサブユニットは、細胞表面結合および転移に責任を負い;アミノ末端上に存在するAサブユニットは、触媒ドメインであり、延長因子2(「EF-2」)のADPリボシル化を生じさせ、それによってEF-2を不活性化する。EF-2は、タンパク質を合成するために細胞には必須であり、細胞内でのEF-2の不活性化は、その死の原因となる。一般に、Uchida et al., Science 175:901-903(1972); Uchida et al., J. Biol. Chem. 248:3838-3844(1973)参照。
【0118】
態様の好ましい系列において、DTの突然変異型は、細胞結合機能には欠陥があるが、細胞転移機能にはないものである。これらとしては、アミノ酸残基384〜535を含む天然受容体結合ドメインが切断されているまたは完全に除去されている突然変異体、および細胞結合または転移に不可欠な一つまたは複数の残基が、そのドメインの機能性を低減または破壊する残基に突然変異している突然変異体が挙げられる。DT389、残基389で始まるカルボキシル末端配列が除去されているDT(例えば、LeMaistre et al., Blood 91:399-405(1999))、および残基388で切断された形態を含む、天然受容体結合ドメインの様々な欠失突然変異体が、臨床試験されている。Hall et al., Leukemia 13:629-633(1999)参照。385、386、387、390もしくは391のような他の残基で始まる該ドメインが、切断されている場合もあり、または残基384で始まる全ドメインが欠失している場合もある。該ドメインのより小さな部分が欠失されている突然変異体を使用することもできるが、但し、それらが非特異的結合活性を保持していないことを条件とする。任意の特定の切断または他の突然変異体が非特異的結合を保持する程度は、当技術分野において標準的なアッセイ法、例えば、Vallera et al., Science 222:512-515(1983)により教示されているものによって容易に測定することができる。
【0119】
態様の好ましい類において、突然変異体DTは、その分子の受容体への結合を減少または削除する天然受容体結合ドメインの一つまたは複数の残基での突然変異を含有する。これらとしては、例えば、Nicholls and Youle in Frankel, ed., GENETICALLY ENGINEERED TOXINS, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y.(1992)によって記載されているような、Bサブユニットに突然変異を有し、その結果細胞への非特異的結合が減少されたDT分子、例えば、突然変異体CRM9、CRM45、CRM102、CRM103およびCRM107が挙げられる。特に好ましい態様において、突然変異DTは、CRM107である。CRM107は、位置525のセリンのフェニルアラニンでのアミノ酸置換を含有し、その結果Bサブユニットの転移特性に影響を及ぼすことなく細胞結合を1000倍より多く減少させる。Aサブユニットは、影響を受けず、ならびにターゲット細胞に導入された場合、天然DTの完全毒性を保持している。従って、CRM107は、免疫毒素の毒性成分、すなわち構成要素としての使用に特によく適する。しかし、DTの位置525は、各天然アミノ酸で置換されていること、および多数のアミノ酸が、細胞への毒性を結果的に減少させることが判明したこと(毒性は、通常、その毒素の結合に比例して減少され、代替尺度として用いることができる)に留意しなければならない。従って、セリンのフェニルアラニンでの置換は、結果として毒性を最大に減少させるが、他のアミノ酸置換の多くも毒性を減少させ、本明細書における方法において使用することができた。勿論、任意の特定の置換を非特異的毒性について試験して、それが本発明の方法での使用に適するかどうかを確認することができる。
【0120】
天然受容体結合ドメインにおける他の位置を、位置525の代わりにまたはそれに加えて突然変異させて、非特異的結合を減少または削除することができる。例えば、位置508をセリンからフェニルアラニンに突然変異させて結合を減少させることができる。この突然変異は、結果的に非特異的結合を大きな程度喪失させるが、しかし、他のアミノ酸残基置換も結合を減少させる。位置508のセリンの別のアミノ酸での任意の特定の置換を試験して、それが、非特異的に結合する能力を喪失させた程度を判定することができる。当技術分野において標準的なアッセイ法、例えば、Vallera et al.,前記よって教示されているものを、これらの判定に使用することができる。さらに、非特異的結合を減少させるために位置508のセリンと位置525のセリンを両方とも突然変異させることで、二重突然変異体を作製することができる。好ましい態様では、位置508のセリンおよび位置525のセリンを両方ともフェニルアラニンに突然変異させる。
【0121】
B.シュードモナス外毒素Aおよびその変異体
本発明の好ましい態様において、毒素は、シュードモナス外毒素A(「PE」)である。天然PEは、真核細胞におけるタンパク質合成を阻害する緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)によって分泌される極めて活性のある単量体タンパク質(分子量66 kD)である。天然PE配列は、米国特許第5,602,095号(参照により本明細書に組み入れられる)に記載されている。作用方法は、延長因子2(EF-2)のADPリボシル化の不活性化である。この外毒素は、協力して細胞毒性を生じさせるように作用する三つの構造ドメインを含有する。ドメインIa(アミノ酸1〜252)は、細胞結合を媒介する。ドメインII(アミノ酸253〜364)は、サイトゾルへの転移に責任を負い、ドメインIII(アミノ酸400〜613)は、延長因子2のADPリボシル化を媒介する。ドメインIb(アミノ酸365〜399)の機能は、未定義のままであるが、その大きな部分、アミノ酸365〜380は、細胞毒性を喪失させることなく欠失させることができる。Siegall, et al., J Biol Chem 264:14256-61(1989)参照。
【0122】
本明細書において用いる場合、用語「シュードモナス外毒素」および「PE」は、一般に非特異的毒性を減少または削除するように天然タンパク質から修飾されたPEを指す。そのような修飾としては、ドメインIaの削除、ドメインIb、IIおよびIIIにおける様々なアミノ酸欠失、一アミノ酸置換ならびにカルボキシル末端への一つまたは複数の配列、例えば、KDEL(SEQ ID NO:42)およびREDL(SEQ ID NO:43)の付加を挙げることができるがこれらに限定されるわけではない。例えば、Siegall, et al.,前記参照。PEの細胞毒性フラグメントとしては細胞毒性であり、(例えば、タンパク質またはプレタンパク質のように)そのターゲット細胞おいて後にタンパク質分解性または他のプロセッシングを受けるまたは受けないものが挙げられる。PEの細胞毒性フラグメントとしては、下で論じるような、PE40、PE38ならびにその変異体PE38QQRおよびPE38KDEL、およびPE35が挙げられる。好ましい態様において、PEの細胞毒性フラグメントは、天然PEの細胞毒性の少なくとも50%、好ましくは75%、さらに好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは95%を保持する。一部の好ましい態様において、細胞毒性フラグメントは、天然PEより毒性が強い。
【0123】
好ましい態様において、PEは、米国特許第4,892,827号に教示されているように、多くの場合、ドメインIaを欠失させることにより非特異的細胞結合を減少または削除するように修飾されているが、これは、例えば、ドメインIaの一定の残基を突然変異させることによっても達成することができる。例えば、米国特許第5,512,658号には、ドメインIaは存在するが、ドメインIaの位置57、246、247および249の塩基性残基が酸性残基(グルタミン酸、すなわち「E」)で置換されている突然変異PEが、非特異的細胞毒性を大きく減少させると開示されている。PEのこの突然変異型は、時として、PE4Eと呼ばれる。
【0124】
PE40は、当技術分野において以前に説明されているようなPEの切断型誘導体である。Pai, et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 88:3358-62(1991);およびKondo, et al., J. Biol. Chem. 263:9470-9475(1988)参照。PE35は、アミノ酸残基1〜279が欠失しているPEの35 kD カルボキシル末端フラグメントであり、その分子は、天然PEの位置280のmetで始まり、アミノ酸281〜364、そして381〜613がそれに続く。PE35およびPE40は、例えば、米国特許第5,602,095号および同第4,892,827号に開示されている。
【0125】
一部の好ましい態様では、細胞毒性フラグメントPE38を使用する。PE38は、PEの転移およびADPリボシル化ドメインを含有するが、細胞結合部分を有さない(Hwang, J. et al., Cell, 48:129-136 (1987))。PE38は、アミノ酸253〜364および381〜613からなる切断型PEプロタンパク質であり、細胞内でのプロセッシングによってその細胞毒性型へと活性化される(例えば、米国特許第5,608,039号、およびPastan et al., Biochim. Biophys. Acta 1333:C1-C6(1997)参照)。専門家は、PEの配列からPE38の配列を容易に決定することができる。当業者は、遺伝子コードの縮重のため、PE38の、ならびにその変異体、例えば、PE38KDEL(「PE38KDEL」が、そのカルボキシル末端が示されている特定の残基で終わる特定のPE38変異体を意味することに留意しなければならない)の、および本明細書において論じる他のPE誘導体のアミノ酸配列が、非常に様々な核酸配列によってコードされ得るものであり、それらのいずれかを発現させて所望のポリペプチドを生じさせことができることを知っている。
【0126】
上で述べたように、ドメイン1bの一部またはすべてを欠失させ、残りの部分をリンカーによりまたはペプチド結合により直接接続することができる。ドメインIIの一部のアミノ部分を欠失させることができる。および、そのC末端は、残基609〜613の天然配列(REDLK(SEQ ID NO:44))を含有する場合があり、またはサイトゾルに転移するその構築体の能力を維持することが判明した変異、例えば、REDL(SEQ ID NO:43)もしくはKDEL(SEQ ID NO:42)、およびこれらの配列のリピートを含む場合がある。例えば、米国特許第5,854,044号、同第5,821,238号および同第5,602,095号ならびにWO 99/51643参照。好ましい態様において、PEは、PE38、PE4EまたはPE40であるが、非特異的細胞毒性が削除されたまたは非ターゲット細胞への有意な毒性が発生しないレベルに減少された任意の形態のPEを、それがターゲット細胞に転移し、EF-2リボシル化する能力を保持するのであれば、本発明の免疫毒素において使用することができる。
【0127】
好ましい態様において、PE分子は、PE分子の位置490に通常存在するアルギニンの代わりに脂肪族アミノ酸の置換を有するように、さらに修飾される。この置換アミノ酸は、例えば、G、A、V、LまたはIであり得る。G、AおよびIは、さらに好ましい置換物であり、Aが最も好ましい。従って、例えば、PE40、PE38、PE38KDEL、PE38QQR、PE4E、PE37またはPE35を、位置490にG、AまたはIを有するように遺伝子操作して、その分子の細胞毒性を改善することができる。特に好ましい態様では、位置490の残基をアラニンに変える。PEは、インビボで使用された場合に免疫毒性のPE部分の免疫原性を低下させるように、修飾することもできる。
【0128】
i.)PEの保存的修飾変異体
PEまたはそれらの細胞毒性フラグメントの保存的修飾変異体は、アミノ酸レベルで、PE38などの対象となるPEとの少なくとも80%配列類似性、好ましくは少なくとも85%配列類似性、さらに好ましくは少なくとも90%配列類似性、および最も好ましくは少なくとも95%配列類似性を有する。
【0129】
用語「保存的修飾変異体」は、アミノ酸配列と核酸配列の両方にあてはまる。特定の核酸配列に関して、保存的修飾変異体は、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸配列を指し、または核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の核酸配列を指す。遺伝子コードの縮重のため、非常に多数の機能的に同一の核酸が、任意の所与のポリペプチドをコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは、すべて、アミノ酸アラニンをコードする。従って、アラニンがコドンによって指定されているあらゆる位置で、コードされているポリペプチドを変えることなくそのコドンを、記載されている対応するコドンのいずれかに変えることができる。このような核酸変異は、保存的修飾変異の一種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書におけるあらゆる核酸配列は、その核酸のあらゆる可能なサイレント変異も表している。核酸における各コドン(通常はメチオニンについての唯一のコドンであるAUGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を生じさせることができる。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載する各配列に潜在的に含まれている。
【0130】
アミノ酸配列に関して、コードされた配列内の一アミノ酸またはわずかな比率のアミノ酸を改変、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列への個々の置換、欠失または付加は、その改変がアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸での置換をもたらす場合、「保存的修飾変異体」であることは、当業者には認識される。
【0131】
ii.)PEの細胞毒性についてのアッセイ法
本発明において使用するシュードモナス外毒素は、当業者には周知のアッセイ法によって望ましい細胞毒性レベルについてアッセイすることができる。従って、PEの細胞毒性フラグメントおよびそのようなフラグメントの保存的修飾変異体は、細胞毒性について容易にアッセイすることができる。当技術分野において周知の方法により、非常に多数の候補PE分子を細胞毒性について同時にアッセイすることができる。例えば、候補分子のサブグループを細胞毒性についてアッセイすることができる。候補分子のサブグループの陽性反応を、所望の細胞毒性フラグメントが同定されるまで連続的に細分し、再アッセイすることができる。そのような方法により、PEの非常に多数の細胞毒性フラグメントまたは保存的変異体を迅速にスクリーニングすることができる。
【0132】
C.他の治療用成分
本発明の抗体は、任意の数の異なる診断用または治療用化合物が、表面でGPNMBを発現する細胞をターゲットにするようにするために使用することもできる。従って、本発明の抗体、例えば、抗GPNMB scFvは、GPNMBを有する細胞に直接送達されるべき薬物に直接またはリンカーによって取り付けることができる。治療薬としては、核酸、タンパク質、ペプチド、アミノ酸もしくは誘導体、糖タンパク、放射性同位体、脂質、炭水化物または組換えウイルスのような化合物が挙げられる。核酸療法用および診断用成分としては、アンチセンス核酸、単鎖または二重鎖DNAとの共有結合架橋のための誘導体化オリゴヌクレオチド、および三重鎖形成性オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0133】
あるいは、抗GPNMB抗体に連結された分子は、循環系への直接曝露から好ましくは保護される治療組成物、例えば薬物、核酸(例えば、アンチセンス核酸)または別の治療用成分を含有する封入系、例えばリポソームまたはミセルである場合もある。抗体に取り付けられたリポソームを作製する手段は、当業者には周知である。例えば、米国特許第4,957,735号;およびConnor, et al., Pharm. Ther. 28:341-365(1985)参照。
【0134】
検出可能な標識
本発明の抗体の高い親和性も、本発明の抗体を、GPNMB発現細胞の標識用の改善された試薬として適するものにする。これらの目的に使用される抗体は、検出可能な標識に共有結合でまたは非共有結合で連結させることができる。そのような用途に適する検出可能な標識としては、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出できる任意の組成物が挙げられる。本発明において有用な標識としては、磁性ビーズ(例えば、DYNABEADS)、蛍光染料(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、テキサスレッド、ローダミン、緑色蛍光タンパク質など)、放射性標識(例えば、3H、125I、35S、14C、または32P)、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼおよびELISAにおいて一般に使用される他のもの)、および比色標識、例えば、コロイド金または着色ガラスもしくはプラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ラテックスなど)ビーズが挙げられる。
【0135】
そのような標識を検出する手段は、当業者には周知である。従って、例えば、写真フィルムまたはシンチレーションカウンタを使用して放射性標識を検出することができ、光検出装置を使用して蛍光マーカー検出して、放射照度を検出することができる。酵素的標識は、一般に、基質を伴う酵素を生じさせること、およびその基質上の酵素の作用により生成された反応生成物を検出することによって検出され、比色標識は着色標識を単に視覚化することによって検出される。
【0136】
抗体への毒素または標識の複合化
本発明の非組換え態様において、エフェクター分子、例えば、治療用、診断用または検出成分は、当業者に公知の任意の数の手段を使用して本発明の抗GPNMB抗体に連結される。共有結合での取り付け手段も、非共有結合での取り付け手段も、本発明の抗GPNMB抗体で使用することができる。
【0137】
抗体にエフェクター分子を取り付ける手順は、そのEMの化学構造に従って変化する。ポリペプチドは、一般に、エフェクター分子の結合を結果としてもたらす抗体上の適する官能基との反応に用いることができる様々な官能基、例えば、カルボン酸(COOH)、遊離アミン(-NH2)またはスルフヒドリル(-SH)基を含有する。
【0138】
あるいは、抗体を誘導体化して、さらなる反応性官能基に曝露するまたは取り付ける。この誘導体化は、イリノイ州ロックフォードのPierce Chemical Companyから入手できるものなどの任意の多数のリンカー分子の取り付けを含むことができる。
【0139】
本明細書において用いる場合、「リンカー」は、抗体をエフェクター分子に接続するために使用される分子である。リンカーは、抗体とエフェクター分子の両方と共有結合を形成することができる。適するリンカーは、当業者に周知であり、直鎖もしくは分枝鎖炭素リンカー、複素環式炭素リンカー、またはペプチドリンカーが含まれるがこれらに限定されるわけではない。抗体およびエフェクター分子がポリペプチドである場合、リンカーは、構成要素のアミノ酸にそれらの側基によって(例えば、システインに、ジスルフィド結合によって)接続することができる。しかし、好ましい態様において、リンカーは、末端アミノ酸のα炭素アミノおよびカルボキシル基に接続される。
【0140】
状況によっては、免疫複合体がそのターゲット部位に到達した場合、抗体からエフェクター分子を遊離することが望ましい。従って、これらの状況では、免疫複合体は、そのターゲット部位の付近に切断可能である連結を含む。抗体からエフェクター分子を放出させるようなリンカーの切断は、酵素活性によってまたは免疫複合体がターゲット細胞内部もしくはターゲット部位付近に供される条件によって誘発され得る。ターゲット部位が腫瘍である場合、腫瘍部位に存在する条件下で(例えば、腫瘍関連酵素または酸性pHに曝露された場合)切断可能であるリンカーを使用することができる。
【0141】
様々な放射線診断用化合物、放射性療法用化合物、薬物、毒素および他の薬剤の抗体への取り付けについて報告されている非常に多数の方法を考慮して、当業者は所与の薬剤を抗体または他のポリペプチドに取り付けるために適切な方法を決定することができる。
【0142】
薬学的組成物および投与
本発明の抗体および/または免疫複合体組成物(すなわち、本発明の抗GPNMB抗体に連結されたPE)は、脳への投与などの局所投与、または静脈内投与もしくは体腔への投与などの非経口投与に有用である。
【0143】
投与のための組成物は、一般に、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解された抗体および/または免疫複合体の溶液を含む。様々な水性担体、例えば緩衝食塩水などを使用することができる。これらの溶液は、無菌であり、一般に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。組成物は、生理条件に近づけるために必要な場合には薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調節および緩衝剤、毒性調節剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有することがある。これらの調合物における融合タンパク質の濃度は、非常に様々であり得、主として、選択される特定の投与方式および患者のニーズに従って液量、粘度、体重などを基に選択される。
【0144】
従って、静脈内投与のための本発明の代表的な薬学的免疫毒素組成物は、一日あたり患者につき約0.1から10 mgである。一日あたり患者につき0.1から約100 mgまでの投薬量を用いることができる。投与可能な組成物の実際の作製方法は、当業者には公知または明らかであり、より詳細に、REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCE, 19TH ED., Mack Publishing Company, Easton, Pennsylvania(1995)などの刊行物に記載されている。
【0145】
免疫毒素などの本発明の免疫複合体の投与は、残存細胞を殺傷するために腫瘍を切除した部位の周辺部位への定位カニューレ挿入および目視検査後の直接注入を含む神経外科における従来の技術によって、脳に直接または脳腫瘍に直接行うことができる。脳癌を治療するための免疫毒素の高流量組織内微量注入(high-flow interstitial microinfusion)は、例えば、Laske, D. W. et al., Nat. Med., 3:1362-1368(1997)に詳細に記載されている。圧力勾配を使用して脳内に免疫毒素を分配する対流増加送達は、例えば、Kunwar, Acta Neurochir Suppl. 88:105-11(2003)に記載されている。脳腫瘍にDT系およびPE系免疫毒素を投与する臨床試験が、米国のあちこちの病院で行われている。例えば、Weaver and Laske, J Neurooncol. 65(1):3-13(2003);およびHusain and Puri, J Neurooncol. 65(l):37-48(2003)参照。
【0146】
本発明の組成物は、治療的処置のために投与することができる。治療用途の場合、組成物は、疾病に罹患している患者に、該疾病およびその合併症を治癒または少なくとも部分的に阻止するために十分な量で投与される。これを遂行するために適切な量を「治療有効用量」と定義する。この用途に有効な量は、その疾病の重症度および患者の総合的な健康状態に依存する。化合物の有効量は、症状の自覚的軽減、または臨床医もしくは他の資格のある観察者によって述べられるような他覚的に確認できる改善いずれかをもたらす量である。
【0147】
本組成物の単回または多数回投与は、患者に必要とされるおよび許容される投薬量および頻度に依存して投与される。いずれにしても、本組成物は、患者を有効に治療するために十分な量の本発明のタンパク質を提供する。好ましくは、該投薬量は、一回で投与されるが、治療結果が達成されるまで、または副作用が治療中止を是認するまで、定期的に適用することができる。一般に、その用量は、患者に許容できない毒性をもたらすことなく疾病の症状または徴候を治療または改善するために十分なものである。
【0148】
本発明の免疫複合体組成物の制御放出非経口調合物は、インプラント、油性注射、または粒状系として生成することができる。タンパク質送達系の広い全体像については、Banga, A.J., THERAPEUTIC PEPTIDES AND PROTEINS: FORMULATION, PROCESSING, AND DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, PA,(1995)参照(これは、参照により本明細書に組み入れられる)。粒状系としては、マイクロスフェア、微粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェアおよびナノ粒子が挙げられる。マイクロカプセルは、中心コアとして治療用タンパク質を含有する。マイクロスフェアでは、治療薬がその粒子全体にわたって分散されている。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェアおよびマイクロカプセルは、一般に、ナノ粒子、ナノスフェアおよびナノカプセルとそれぞれ呼ばれる。キャピラリーは、ナノ粒子のみを静脈内投与するように約5μmの直径を有する。微粒子は、一般に、直径が約100μmであり、皮下または筋肉内投与される。例えば、Kreuter, J., COLLOIDAL DRUG DELIVERY SYSTEMS, J. Kreuter, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, NY, pp. 219-342(1994);ならびにTiceおよびTabibi, TREATISE ON CONTROLLED DRUG DELIVERY, A. Kydonieus, ed., Marcel Dekker, Inc. New York, NY, pp.315-339,(1992)参照(これは、両方とも、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0149】
本発明の免疫複合体組成物のイオン制御放出のためにポリマーを使用することができる。制御薬物送達用の様々な分解性および非分解性ポリマーマトリックスが、当技術分野において公知である(Langer, R., Accounts Chem. Res. 26:537-542(1993))。例えば、ブロックコポリマー、ポラキサマー407は、低温では粘稠だが可動性の液体として存在するが、体温では半固体ゲルを形成する。これは、組換えインターロイキン-2およびウレアーゼの調合および持続的送達に有効なビヒクルであることが証明された(Johnston, et al., Pharm. Res. 9:425-434(1992);およびPec, et al., J. Parent. Sci. Tech. 44(2):58-65(1990))。あるいは、タンパク質の制御放出のためのマイクロキャリアとしてヒドロキシアパタイトが使用されている(Ijntema, et al., Int. J. Pharm. 112:215-224(1994))。さらにもう一つの局面では、リポソームが、制御放出ならびに脂質カプセル薬の薬物ターゲッティングに使用される(Betageri, et al., LIPOSOME DRUG DELIVERY SYSTEMS, Technomic Publishing Co., Inc., Lancaster, PA(1993))。治療用タンパク質の制御送達のための非常に多数のさらなる系が公知である。例えば、米国特許第5,055,303号、同第5,188,837号、同第4,235,871号、同第4,501,728号、同第4,837,028号、同第4,957,735号、同第5,019,369号、同第5,055,303号、同第5,514,670号、同第5,413,797号、同第5,268,164号、同第5,004,697号、同第4,902,505号、同第5,506,206号、同第5,271,961号、同第5,254,342号および同第5,534,496号参照(これらの各々が、参照により本明細書に組み入れられる)。
【0150】
本発明の免疫毒素の様々な用途には、融合タンパク質の毒性作用によって排除することができる特定のヒト細胞によって生じる様々な疾病状態が含まれる。本発明の免疫毒素の一つの好ましい用途は、GPNMBを発現する悪性細胞の成長の阻害である。例示的な悪性細胞としては、GPNMB発現性神経膠腫および黒色腫が挙げられる。
【0151】
診断キットおよびインビトロ用途
もう一つの態様において、本発明は、生体サンプルにおいてGPNMBまたはその免疫反応性フラグメント(すなわち、総称して、「GPNMBタンパク質」)を検出するためのキットを提供する。本明細書において用いる場合、「生体サンプル」は、生体組織または生体液のサンプルである。そのようなサンプルとしては、生検からの組織、血液、または細胞を含有する他の体液が含まれるがこれらに限定されるわけではない。生体サンプルとしては、組織学的目的で採取した凍結切片などの組織の切片も挙げられる。生体サンプルは、一般に、多細胞真核生物、好ましくは、哺乳動物、例えばラット、マウス、ウシ、イヌ、モルモットまたはウサギ、さらに好ましくは、霊長類、例えばマカク、チンパンジーまたはヒトから得られる。最も好ましくは、該サンプルは、ヒト由来である。
【0152】
キットは、一般に、本発明の抗GPNMB抗体を含む。一部の態様において、抗GPNMB抗体は、抗GPNMB Fvフラグメント、例えば、scFvまたはdsFvである。
【0153】
加えて、本キットは、一般に、本発明の抗体を使用する(例えば、生検サンプルにおいて神経膠腫細胞または黒色腫細胞を検出するための)手段を開示する教材を含む。本キットは、そのキットが計画される特定の用途を助長するための追加の構成要素を含む場合もある。従って、例えば、本キットは、標識を検出する手段(例えば、酵素的標識のための酵素基質、蛍光標識、適切な二次標識、例えばヒツジ抗マウス-HRPを検出するためのフィルターセット、など)をさらに含有することがある。本キットは、特定の方法を実施するために常用されているバッファーおよび他の試薬をさらに含むことがある。そのようなキットおよび適切な内容物は、当業者には周知である。
【0154】
本発明の一つの態様において、診断用キットは、イムノアッセイ法を含む。上で説明したように、本発明のイムノアッセイ法の詳細は、使用される特定の形式によって様々であり得るが、生体サンプル中のGPNMBの検出方法は、免疫学的反応性条件下でGPNMBと特異的に反応する本発明の抗体と生体サンプルを接触させる段階を一般に含む。本抗体は、免疫学的反応性条件下でGPNMBに結合することができ、その結合した抗体の存在が直接または間接的に検出される。
【0155】
本発明の抗体の増加した親和性のため、本抗体は、診断薬として、および生体サンプルにおいてGPNMBの存在を検出するためのインビトロアッセイ法において特に有用である。例えば、本明細書において教示する抗体を免疫組織化学的アッセイ法において免疫複合体のターゲッティング成分として使用して、サンプルがGPNMBを発現する細胞を含有するかどうかを判定することができる。リンパ球におけるGPNMBの検出は、その患者が、GPNMB発現細胞の存在を特徴とする癌を有すること、またはそのような癌についての治療が、その癌の根絶にまだ成功していないことを示す。
【0156】
本発明についての用途のもう一つのセットでは、本発明の抗体によりターゲッティングされる免疫毒素を使用して、培養物中の細胞の集団からターゲッティングされた細胞をパージすることができる。従って、例えば、GPNMBを発現する癌を有する患者から培養した細胞から、本発明の抗体をターゲッティング成分として使用する免疫毒素とその培養物とを接触させることにより癌細胞をパージすることができる。
【0157】
実施例
以下の実施例は、説明のために提供するものであり、特許請求の範囲に記載の本発明を限定するために提供するものではない。
【0158】
実施例1
抗GPNMB scFv G49の単離
ライブラリおよびパニング
GPNMB特異的scFvを得るために、1.2×109メンバーのヒト合成ファージディスプレイライブラリ(英国ケンブリッジのMRC Center for Protein EngineeringからのGriffin.1ライブラリ)を組換えタンパク質GPNMBECDでパニングして、GPNMBの細胞外ドメイン(「ECD」)を定義した(Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995))。GPNMBECDタンパク質は、High Five(商標)昆虫細胞(カリフォルニア州カールスバッドのInvtrogen Corp.)において生産し、パニング手順においてターゲット抗原として使用するためにビオチン化した。
【0159】
パニングは、以前に記載された方法(Amersdorfer, P. and Marks, J.D., Methods Mol Biol; 145:219-40(2000))に従って溶液中で行った。四ラウンドのパニング後、12のファージクローンをランダムに選択して、GPNMBECDとの反応性を検査した。ファージELISAによると12のうち9が陽性であり、DNAのフィンガープリンティングおよび塩基配列決定は、9のクローンすべてが、同一のscFV配列を有することを示した。このクローンをG49と呼んだ(表1)。
【0160】
G49 scFv抗体およびBIACore分析
G49 scFv抗体を産生させるために、G49 scFVをコードするDNAフラグメントをNcoIおよびNotI消化により対応するファージミドから切り出し、精製および検出のためにscFvタンパク質のカルボキシ末端がヘキサヒスチジンおよびmyc配列でタグを付けられたpET22ベクター(ウィスコンシン州マディソンのNovagen)のNcoI-NotI部位にライゲートした。プラスミドを大腸菌BL21(DE3)Gold細胞(カリフォルニア州ラ・ホーヤのStratagene)に導入した。HisタグG49 scFv抗体を発現させ、金属親和性樹脂(BD TALON(商標);カリフォルニア州パロ・アルトのBD Biosciences)をその製造業社の説示に従って使用して精製した(図1)。
【0161】
精製されたG49 scFv抗体の結合親和性を表面プラズモン共鳴(BIACore分析;ニュージャージー州ピスカタウェイのBIAcore Inc.)によって測定した。G49 scFv抗体は、GPNMBECDタンパク質について8.4 nMのKDを有した(表2)。
【0162】
G49-PE38免疫毒性および細胞毒性アッセイ法
組換え免疫毒素G49-PE38は、シュードモナス外毒素AのドメインIIおよびIIIについての配列にG49 scFVを融合させることによって構築した(Beers et al., Clin Cancer Res; 6:2835-43.(2000))(図2)。免疫毒素のリフォールディングプロセスにおいて、50 mgの可溶性G49-PE38を300 mgの可溶化封入体から得、それによって約17%の収率を得た。BIACore分析によると、精製されたG49-PE38免疫毒素は、GPNMBECDタンパク質について3.2 nMのKDを有した(表2)。
【0163】
免疫毒素G49-PE38を、GPNMB発現性神経膠腫細胞での細胞毒性アッセイ法において使用した。D392 MGおよびD54 MG細胞は、グリア芽細胞種由来の細胞系統である。(Bigner, D. et al., J Neuropathol Exp Neurol 40(3): 201-29(1981))。定量FACS分析によって定義された細胞あたり2.5×105の表面GPNMB分子を発現するD392 MG神経膠腫細胞をターゲットとして選択した。G49-PE38免疫毒素は、細胞を免疫毒素に20時間曝露した場合、23 ng/mLの濃度でD392 MG細胞に関してタンパク質合成の50%を阻害したが、対照抗Tac(Fv)PE40免疫毒素は、最大1000 ng/mLで細胞傷害活性を示さなかった(図3)。HEK293、A431およびマウス線維芽細胞NR6細胞を含めてGPNMB陰性細胞系統に関しては、最大1000 ng/mLの濃度では細胞毒性が顕著でなかった。これは、G49-PE38の細胞毒性が、GPNMB発現細胞に限られることを示している。
【0164】
実施例2
GPNMB結合scFv G49の親和性成熟
GPNMBに対する親和性が増大したG49の突然変異体を得るために、ランダム相補性決定領域(CDR)突然変異誘発を行った。
【0165】
軽鎖CDR3突然変異誘発
G49クローンの軽鎖のCDR3は、一つのコンセンサスホットスポット配列を含有する9つのアミノ酸からなる(表3)。各々が三つの連続するアミノ酸をランダム化する縮重オリゴヌクレオチドPCRプライマーを使用してVLCDR3を突然変異させた(図4および表4)。三つのVLライブラリ、残基1〜3ランダム突然変異誘発のためにL1、残基4〜6ランダム突然変異誘発のためにL2、および残基7〜9ランダム突然変異誘発のためにL3を、以前に記載されている(Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995))とおり、pCANTAB5Eファージミド系で構築した。大腸菌TG1の形質転換後、各ライブラリは、約1.0×106のクローンを含有した。
【0166】
GPNMB発現性神経膠腫細胞系統D54 MGをターゲットとして使用して細胞ベースのパニングを行った(Weterman et al., Int J Cancer, 60:73-81(1995))。10% FBSを補足した硫黄オプション(zinc option)培地中に維持した2×107個のD54 MG細胞を、0.02% EDTAを使用して回収し、2% BSAを含有する10mLのダルベッコPBSに懸濁させた。各軽鎖CRD3ライブラリからの1×1010 pfuのファージを併せ(合計、3×1010 pfuのファージ)、D54 MG細胞懸濁液に添加した。その混合物を4℃で2時間回転させた。その後、細胞を10mLの2% BSA/ダルベッコPBSで三回洗浄し、結合したファージを氷冷50mM HCl中で溶離し中和した。溶離したファージの半分を、次の選択ラウンドでの使用のために増幅した。
【0167】
三ラウンドのパニング後、24のクローンをランダムに選択し、ファージレスキューに供して、GPNMBに結合するそれらの能力を評価した。ファージELISAによると、19/24のクローンが、GPNMBについて陽性であり、親G49ファージより強いELISAシグナルを有した14のクローンをDNA塩基配列決定のために処理した(図5)。親G49と同一の一つのクローンを除き、これら14のクローンすべてが、ライブラリL1に属し、ホットスポット位置でのアミノ酸置換を有した(表4)。
【0168】
重鎖CDR3突然変異誘発
G49重鎖CDR3は、4つのアミノ酸からなり、ホットスポット配列を含有しない(表3)。これら四つのアミノ酸すべてを同時に突然変異させることによりVHCDR3ライブラリを構築し(図4)、VLCDR3ライブラリについて説明したとおりパニングを行った。三ラウンドの選択後、11/24のクローンが、ファージELISAによるとGPNMBについて陽性であった。しかし、DNA塩基配列決定は、11のクローンすべてが親G49 scFvと同一であったことを示した。
【0169】
選択された突然変異体の細胞毒性アッセイ法
最も強いELISAシグナルを有した14の突然変異体のうちの三つ(L22、L04およびL12)を使用して、免疫毒素を構築し、精製された免疫毒素を、D392 MGおよびD54 MG細胞に対するそれらの細胞毒性についてアッセイした。親クローンG49-PE38と比較して、一つの突然変異体クローン、L22-PE38(Gln→GluおよびAla→Thr)は、D392 MGおよびD54 MGに対して数倍改善された細胞殺傷活性を示した(表5、図6)。GPNMB陰性HEK293、A431またはNR6細胞に対するL22-PE38の細胞傷害活性はなかった(図6)。
【0170】
結論:
G49およびL22抗GPNMB scFv免疫毒素は、生産に成功し、様々なGPNMB陽性細胞系統に対して良好な細胞傷害活性を示したが、GPNMB陰性系統に対しては示さなかった。
【0171】
実施例3
免疫毒素にした場合さらにいっそう高い親和性および細胞毒性を有するL22の突然変異体の開発
上で論じたホットスポット親和性突然変異研究に加えて、L22抗体配列のVHおよびVL CDR1および2を突然変異させたホットスポット親和性成熟研究を行った。例えば、VH CDR1および2ならびにVL CDR1および2をホットスポット突然変異誘発に供した。VH CDR1の二つの残基における突然変異のみが、出発、L22、抗体より高い親和性を有する突然変異体を生じさせた。B307および902Vと呼ぶこれらのクローンの両方を免疫毒素として検定し、両方が、G49またはL22抗体を用いて作った同様の免疫毒素のものより良好な細胞毒性を意外にも有する免疫毒素を生じさせた。酵母細胞からレスキューしたプラスミドのDNA塩基配列決定により、B307は、VH CDR1ドメイン内の位置31においてSの代わりとしてGの一置換を有することが判明した。(表7参照)。50倍モル過剰量のGPNMBECDタンパク質でのコインキュベーションは、D54 MG細胞に対するB307-PE38の細胞毒性を無効にした。これは、観察された抗GPNMB毒素の細胞殺傷活性が、抗体と細胞表面ターゲット分子の特異的相互作用に依存することを示している。
【0172】
G49、L22、B307および902V抗体の親和性の研究の結果、ならびに免疫毒素のターゲッティング位置として抗体を使用して免疫毒素の細胞毒性を比較する研究の結果を表5に示す。IC50値として示す細胞毒性は、細胞を免疫毒素に24時間曝露した場合、タンパク質合成を50%阻害することが判明した免疫毒素の量を反映している。比較が意味のあったことを保証するために、すべての免疫毒素を、ターゲッティング抗体と細胞毒素の間に同じリンカーを使用して作り、ならびにすべての免疫毒素を、同じ毒素を用いて作った。異なるリンカーおよび異なる毒素を用いて同様の比較結果が達成されると予想される。表5に示すように、免疫毒素型に変換した場合、B307-PE38は、L22を用いて作った同様の免疫毒素と比較して、D392 MG細胞およびD54 MG細胞に対して細胞傷害活性の点でそれぞれ3倍および5倍の改善を示し、一方、902V-PE38は、D392MG細胞に対してB307-PE38の二倍の細胞毒性およびD54MG細胞に対してB307-PE38の三倍の細胞毒性を示した。抗体201、B308、B305、L04、L12およびL15を用いて作った免疫毒素で同様の研究を行った。結果を表8および9にそれぞれ示す。
【0173】
従って、本発明の抗GPNMBは、毒素成分を含む免疫複合体をGPNMB発現細胞に向けるための強力なターゲッティング成分を形成すると予想される。
【0174】
(表1)GPNMB特異的scFvについてのヒト合成ファージディスプレイライブラリのパニング

a)DNAフィンガープリンティングおよび塩基配列決定によって決定した。
【0175】
(表2)G49 scFv抗体およびG49-PE38免疫毒素のBIACore分析

【0176】
(表3)G49 scFvの軽鎖CDR3および重鎖CDR3のDNAおよびアミノ酸配列

配列Pu-G-Py-A/Tを有するホットスポットに下線を引く。
【0177】
(表4)軽鎖CDR3ライブラリから単離した突然変異体ファージの配列

突然変異した残基を太字で示す。
【0178】
(表5)GPNMB+ およびGPNMB-(対照)細胞に対する抗GPNMB免疫毒素(「IT」)の結合親和性および細胞傷害活性(IC50)(単位:ng/mL)

D392 MGおよびD54 MGは、GPNMB+ 細胞系統であり、HEK293細胞は、対照として使用したGPNMB-細胞である。
【0179】
(表6)抗GPNMB免疫毒素の収量

【0180】
(表7)抗GPNMB免疫毒素のVH CDR1およびVL CDR3におけるアミノ酸の違い

【0181】
(表8)VH CDR1突然変異体

a)フローサイトメトリーにおいて、親クローンL22を発現する細胞より高い平均蛍光強度を有した五つの突然変異体クローン。
b)IMATによって決定したアミノ酸番号付けであり、図7に示すとおりのVH CDR1の最初の三つの位置を指す。
c)対応する免疫毒素を用いてBIACoreによって決定した。
d)抗体-PE38免疫毒素を使用するD392 MG細胞に対する細胞毒性アッセイ法によって決定した。
e)酵母表面ディスプレイおよびフローサイトメトリーによってクローンを選択した。
ND;決定されなかった。
【0182】
(表9)ファージディスプレイによるVL CDR3突然変異体ライブラリのバイオパンニング;突然変異体scFVおよび免疫毒素の配列、結合親和性および細胞傷害活性

a)ファージELISAシグナルが、親G49ファージを基準にして3倍より高く増加した六つの突然変異体クローン。
b)IMATによって決定したアミノ酸番号付け。
c)対応する免疫毒素を使用してBIACoreにより決定した。
d)D392 MG細胞に対する抗体-PE38の細胞毒性アッセイ法によって決定した。
ND;免疫毒素が低かったため決定されなかった。
【0183】
本明細書において記載した実施例および態様が、説明のためだけのものであること、およびそれらに照らして当業者は様々な変形または変更を思いつき、そのような変形および変更が本出願および添付の特許請求の範囲の精神および範囲内であることは理解される。本明細書に引用したすべての刊行物、特許および特許出願は、それら全体があらゆる意味で参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】電気泳動させたG49 scFV抗体のSDS-PAGEゲルの写真である。5μgのG49 scFV(28.6 kD、矢印により指摘)を非還元条件下で4〜12% Bis-Trisゲルにより電気泳動させた。サイズマーカーの位置(単位:kD)を左に示す。
【図2】電気泳動させたG49-PE38免疫毒素のSDS-PAGEゲルの写真である。2μgのG49-PE38(64 kD、矢印により指摘)を非還元条件下で電気泳動させた。サイズマーカーの位置(単位:kD)を左に示す。
【図3】図3Aは、GPNMB発現性神経膠腫細胞系、D392 MGに対する二つの免疫毒素、G49-PE38および抗TAC-PE38(これは、IL-2受容体α鎖に結合するものであり、この研究において対照として使用した)についての細胞毒性アッセイ法の結果を示す。図3Bは、GPNMBを発現しない線維芽細胞系統NR6に対する同じ二つの免疫毒素についての細胞毒性アッセイ法の結果を示す。両方の図:四角:G49-PE38免疫毒素。三角:抗Tac-PE38。縦軸:3H-ロイシンの組み込み(単位:cpm)。横軸:免疫毒素の濃度(単位:ng/mL)。
【図4】図4Aおよび4Bは、各々が三つの連続したアミノ酸をランダム化する縮重オリゴヌクレオチドPCRプライマーを使用するG49のVH CDR3(図4A)およびVL CDR3(図4B)の突然変異のためのファージミドベクターの構築を示す略画である。
【図5】横軸の文字「L」で始まる指示子で特定される14の突然変異体ファージクローンサンプルが、親クローンG49のものより強いELISAシグナルを有したことを示すELISA試験の結果を示す。492nmでの吸光度を縦軸に示す。
【図6】図6A〜Cは、GPNMB+ およびGPNMB-細胞に対する免疫毒素L22-PE38およびG49-PE38の細胞毒性を示すグラフである。図6A:GPNMB+ 細胞系統D392 MGに対する免疫毒素の細胞毒性。図6B:GPNMB-細胞系統HEK293に対する免疫毒素の細胞毒性。図6C:GPNMB+ 細胞系統D54MGに対する免疫毒素の細胞毒性。すべての図:四角:G49-PE38免疫毒素。三角:L22-PE38免疫毒素。縦軸:3H-ロイシンの組み込み(単位:cpm)。横軸:免疫毒素の濃度(単位:ng/mL)。
【図7】図7Aは、抗体G49、L22、B307、902V、201、B308、B305、L04、L12およびL15(SEQ ID NO:1〜10)の重鎖のアミノ酸配列のアラインメントと、これらの抗体のscFvにおける軽鎖に重鎖を繋げるリンカー(SEQ ID NO:11)の配列である。図7Bは、抗体G49、L22、B307、902V、201、B308、B305、L04、L12およびL15(SEQ ID NO:12〜21)の軽鎖のアミノ酸配列のアラインメントである。各鎖についてのフレームワーク領域(「FR」)および相補性決定領域(「CDR」)を標識し;CDRの配列を太字体で示す。図7Aでは、scFv B307、scFv 902V、scFv 201、scFv B308、およびscFv B305を形成するように突然変異させたscFv G49重鎖CDR1の残基に下線を引く。図7Bでは、scFv L22、scFv B307、scFv 902V、scFv 201、scFv B308、scFv B305、scFv L04、scFv L12、およびscFv L15を形成するように突然変異させたG49のVL CDR3の残基に下線を引く。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、
各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つのCDRを含み、
(a)該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、
(b)該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、
(c)該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、
(d)該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、
(e)該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および
(f)該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する、
単離されたポリペプチド。
【請求項2】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:23の配列を有し、
VL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:24の配列を有し、
VL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項4】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:25の配列を有し、
VL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項5】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:26の配列を有し、
VL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項6】
VHのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VLのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項1記載のポリペプチド。
【請求項7】
VHのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VLのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項4記載のポリペプチド。
【請求項8】
(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、
各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの相補性決定領域CDRを含み、
該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、 該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、
該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、
該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および
該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する、
ポリペプチド、ならびに
(b)検出可能標識、放射性核種および治療薬からなる群より選択されるエフェクター分子
を含む、キメラ分子。
【請求項9】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:23の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項8記載のキメラ分子。
【請求項10】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:24の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項8記載のキメラ分子。
【請求項11】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:25の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項8記載のキメラ分子。
【請求項12】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:26の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項8記載のキメラ分子。
【請求項13】
VHのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VLのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項8記載のキメラ分子。
【請求項14】
エフェクター分子が、治療薬である、請求項8記載のキメラ分子。
【請求項15】
治療薬が、細胞毒素である、請求項14記載のキメラ分子。
【請求項16】
細胞毒素が、シュードモナス外毒素A(Pseudomonas exotoxin A)(PE)である、請求項15記載のキメラ分子。
【請求項17】
請求項8記載のキメラ分子および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項18】
抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、
各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、
該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、 該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、
該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、
該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および
該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する、
ポリペプチドをコードする単離された核酸。
【請求項19】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:23の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項18記載の核酸。
【請求項20】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:24の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項18記載の核酸。
【請求項21】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:25の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項18記載の核酸。
【請求項22】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:26の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項18記載の核酸。
【請求項23】
ポリペプチドのVH領域のそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VL領域のそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項18記載の核酸。
【請求項24】
ポリペプチドに融合したエフェクター成分をさらにコードする、請求項18記載の核酸。
【請求項25】
エフェクター成分が、さらに細胞毒素である、請求項24記載の単離された核酸。
【請求項26】
細胞毒素が、シュードモナス外毒素A(「PE」)である、請求項25記載の単離された核酸。
【請求項27】
ヒト糖タンパクNMBを発現する該細胞の成長を阻害する方法であって、
(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、
各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、
該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、 該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、
該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、
該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、
該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および
該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する、
ポリペプチド、ならびに
(b)治療薬
を含むキメラ分子と、該細胞を接触させる段階を含み、
該細胞と該薬剤との接触が、該細胞の成長を阻害する、方法。
【請求項28】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:23の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項27記載の方法。
【請求項29】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:24の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項27記載の方法。
【請求項30】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:25の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項27記載の方法。
【請求項31】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:26の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項27記載の方法。
【請求項32】
VHのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VLのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項27記載の方法。
【請求項33】
治療薬が、細胞毒素である、請求項27記載の方法。
【請求項34】
細胞毒素が、シュードモナス外毒素A(PE)である、請求項33記載の方法。
【請求項35】
癌細胞が、多形性グリア芽細胞腫細胞、退形成星状細胞腫細胞、退形成性乏突起神経膠腫、乏突起神経膠腫細胞、および黒色腫細胞からなる群より選択される、請求項27記載の方法。
【請求項36】
ヒト糖タンパクNMBを発現する該細胞の存在を検出する方法であって、
(a)抗体重鎖可変領域(「VH」)および抗体軽鎖可変領域(「VL」)を含み、
各可変領域が、アミノ末端およびカルボキシル末端を有し、かつフレームワーク領域(「FR」)に該アミノ末端から出発して逐次FR 1〜4と番号を付与する四つの該FR、および
各領域の相補性決定領域(「CDR」)に該アミノ末端から出発して逐次CDR1からCDR3の番号を付与する三つの該CDRを含み、
該VHのCDR1が、SEQ ID NO:22〜28からなる群より選択される配列を有し、
該VHのCDR2が、SEQ ID NO:29の配列を有し、
該VHのCDR3が、SEQ ID NO:30の配列を有し、
該VLのCDR1が、SEQ ID NO:31の配列を有し、
該VLのCDR2が、SEQ ID NO:32の配列を有し、および
該VLのCDR3が、SEQ ID NO:33〜37からなる群より選択される配列を有する、
ポリペプチド、ならびに
(b)検出可能標識
を含むキメラ分子と、癌細胞を接触させる段階を含み、
該細胞に結合した該標識の存在を検出し、それによって該細胞の存在を検出する、方法。
【請求項37】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:23の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項36記載の方法。
【請求項38】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:24の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項36記載の方法。
【請求項39】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:25の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項36記載の方法。
【請求項40】
ポリペプチドのVH鎖のCDR1が、SEQ ID NO:26の配列を有し、
該ポリペプチドのVL鎖のCDR3が、SEQ ID NO:34の配列を有する、
請求項36記載の方法。
【請求項41】
VHのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVHのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有し、
VLのそれぞれ、FR 1〜4が、図7に示すような抗体G49のVLのそれぞれ、FR 1〜4の配列を有する、
請求項36記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公表番号】特表2009−513147(P2009−513147A)
【公表日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−538120(P2008−538120)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/042735
【国際公開番号】WO2007/053718
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(394002800)アメリカ合衆国 (4)
【出願人】(508129805)デューク ユニバーシティー (3)
【Fターム(参考)】