ヒト肝癌動物モデル及びこれを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の予防及び治療効能を分析する方法
本発明は、ヒト肝癌動物モデルを開発し、これを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関し、より詳細には、以下の段階を含むヒト肝癌動物モデルを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関する:(a)ヒト肝癌抗原をマウス細胞株に恒久的に発現させて、ヒト肝癌抗原を発現する組換えマウス癌細胞株を形成する段階、(b)(b’)分析対象の樹状胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階または(b”)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階、(c)(c’)前記段階(b)で(b’)を行った場合、前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階または(c”)前記段階(b)で(b”)を行った場合、前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階;及び(d)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を決定する段階。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関し、より詳細には、ヒト肝癌動物モデルを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に肝癌の年間発病率は、全体癌の4%である56万名水準であり、この中、39万名以上の患者がアジアに居住する。韓国では、毎年1万2千名〜1万5千名の肝癌患者が発生するが、これは、胃癌に次いで2位で、肺癌とほぼ等しい発生率であり、死亡率においても、肺癌、胃癌に次いで3位であるため、国家的に看過できない重要疾患である。韓国人の肝癌の70%は、B型肝炎ウイルス肝炎に起因し、C型肝炎ウイルスによるものが13%程度、その他が18%程度を占めると知られている。
【0003】
肝癌は、原発性癌と転移癌に分類されて、原発性肝癌の中、最も有り触れたのは、肝細胞癌(hepatocellular carcinomaまたはHCC)で、慢性肝疾患患者から最も頻繁に発病する悪性疾患であって、肝門脈を通じての転移癌の発生率も高い。現在肝疾患治療剤として開発されて使用されているものは、主に肝炎治療剤であって、インターフェロン(Interferon)とラミブジンが代表的である。ラミブジンは、インターフェロンとは異なって、副作用があまりなく、飲む薬として使用が簡便であるが、市販後3年になった現在、薬剤に耐性を有したウイルスの出現がほぼ50%に達すると報告されており、肝癌に進展された患者にはほとんど効果がない。肝癌は、初期は症状がほとんどなく、既に症状が現れた後に発見される肝癌は、非常に進展された場合が大部分であり、肝癌治療方法は、肝切除術が一次的であるが、肝癌患者の中、肝切除術が可能な場合は一部に過ぎず、その他の治療方法として肝移植、全身的化学療法、放射線治療、高周波熱治療法などの使用が可能であるが、再発率が高くて、移植後拒否反応などの副作用が激しく、役に立たない場合が多い。成功的な切除といっても、年間再発率が25%に至り、大きさ2〜3cmの小肝癌の場合が最もよい手術成績を示すと知られているが、このような小肝癌の場合においても、手術後3年以内に再発する可能性が50%以上である。
【0004】
このような肝癌再発の原因は、第一、手術時全身的に広がって発生する微細転移(micrometastasis)の進行により、第二、ほとんどが肝硬変症を伴っているため、新たに肝癌が発生する危険が高いためであると知られている。このように既存の癌治療法で予後が改善されない国内癌患者のための治療法として、既存抗癌治療とは違って副作用や患者の苦痛がほとんどない最先端の細胞免疫治療法の開発が切実に求められる趨勢である。
【0005】
樹状細胞(dendritic cell)を利用した抗癌ワクチン治療は、最近開発された積極的免疫治療法(active immunotherapy)であって、既存の死滅癌細胞ワクチンを利用した免疫治療法より強力であり、患者のT細胞を体外で増殖させてから注入する消極的免疫治療(passive immunotherapy)より効果が長期的であって、IL-2とIFN-αなどのサイトカインを多量直接投与するより著しく安全なものと評価されている。また、転移性あるいは再発性末期癌の初期治療に非常に効果があるだけではなく、施術過程で組織適合抗原の問題がなく、患者にほとんど苦痛を与えなくて、副作用もない無毒性の治療法である。樹状細胞(DC)を利用した抗癌ワクチン治療は、その薬理メカニズム上、一遍に巨大な癌組織を縮小させる効果は少ないが、体の抗癌免疫を誘導して一次治療後、最小疾患の状態や微細転移(micrometastasis)のような転移初期段階において、再発や深刻な転移(overt metastasis)を抑制するに非常に効果が高いと評価される。このような樹状細胞を利用した免疫治療の臨床試験のためには、まず動物モデルにおいて効果性と安全性が確認されなければならないが、未だにヒト肝癌に対する樹状細胞ワクチンの効能を評価できるような肝癌動物モデルがない実情である。
【0006】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上述の当業界の要求を解決するために鋭意研究した結果、ヒト肝癌−特異抗原を発現する異種(xenogenic)癌細胞株を構築し、これを利用して肝癌動物を構築した後、これを利用して樹状細胞の効能を検査して、その結果、樹状細胞の肝癌免疫治療剤または免疫予防剤としての効能を正確に分析することができることを確認した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ヒト肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ヒト肝癌−特異抗原発現マウス由来の肝癌細胞株を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、肝癌マウス(Mus musculus)モデルを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態によると、本発明は、以下の段階を含むヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防及び治療効能を分析する方法を提供する:
(a)(a’)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階、または(a”)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階;(b)(b’)前記段階(a)において、(a’)を行った場合、前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階、または(b”)前記段階(a)において、(a”)を行った場合、前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階;及び(c)(c’)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の予防及び治療効能を決定する段階。
【0013】
本発明は、(i)ヒト肝癌抗原をマウス細胞株に恒久的に発現させて、ヒト肝癌抗原を発現する組換えマウス癌細胞株、(ii)樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を分析する方法、及び(iii)樹状細胞由来の肝癌免疫予防剤の効能を分析する方法に大別される。
【0014】
したがって、本発明の樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を分析する方法は、(a”)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階と、(b”)前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階と、(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を決定する段階とを含む。
【0015】
本発明の肝癌免疫予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法は、(a’)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階と、 (b’)前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階と、(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を決定する段階とを含む。
【0016】
本発明は、ヒト樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤または予防剤の効能を、動物モデルを利用して最初に分析したものである。従来には、このような効能分析に適した動物モデルが提示されたことがない。
【0017】
本発明の方法において、利用される動物は、人間を除いたいかなる動物でも可能であって、好ましくは哺乳動物、より好ましくはげっ歯類動物であって、さらに好ましくはマウス(Mus musculus)であり、最も好ましくは、C3H/HeNマウスである。本発明において用語‘正常動物’は、癌が発生されていない動物を意味する。
【0018】
本発明の方法において、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を構築するために利用される抗原は、ヒト肝癌で特異的に発現されるいかなる抗原でも利用可能である。好ましくは、前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)であり、より好ましくはAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)またはMGAE1であり、さらに好ましくはAFP(ALPHA- FETOPROTEIN)またはGPC3(GLYPICAN3)であって、最も好ましくはAFP(ALPHA- FETOPROTEIN)である。前記抗原は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。
【0019】
好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1〜346または1〜484(参照:配列番号13または14)、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸配列1〜332(参照:配列番号15)、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1〜326(参照:配列番号16)、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)の場合、アミノ酸1〜180(参照:配列番号17)、そしてMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1〜309(参照:配列番号18)に該当する配列を抗原として利用する。
【0020】
正常動物から癌を誘発するに利用される癌細胞株は、多様な動物由来のものが利用できるが、好ましくは、癌細胞の受容者(recipient)である動物に対して同種異質(allogeneic)または同種同質(syngeneic)の癌細胞株であり、より好ましくは、同種同質の癌細胞株である。本発明の好ましい具現例において、正常動物としてマウスが利用されて、癌細胞株としてマウス由来の癌細胞株が利用されて、より好ましい具現例において、正常動物としてC3H/HeNマウスが利用されて、癌細胞株としてMH134マウス由来の癌細胞株が利用される。
【0021】
本発明で利用される癌細胞株は、肝癌細胞株、胃癌細胞株、脳癌細胞株、肺癌細胞株、乳癌細胞株、卵巣癌細胞株、気管支癌細胞株、鼻咽頭癌細胞株、喉頭癌細胞株、膵臓癌細胞株、膀胱癌細胞株、結腸癌細胞株及び子宮頸部癌細胞株などを含む。最も好ましくは、同一癌細胞株である肝癌細胞株(例えば、MH134細胞株)である。
【0022】
本発明の好ましい具現例において、本発明で利用されるヒト肝癌−特異抗原を発現する癌細胞株は、肝癌細胞由来のものである。一方、マウス由来の肝癌細胞株(C57BL/6マウス、C3H/HeNマウス及びBALB/cマウス由来の肝癌細胞株)があるが、上記報告された肝癌−特異抗原の発現が確認されておらず、肝癌抗原特異的な樹状細胞由来の免疫治療剤の効果を確認できない短所があるため、本発明の方法に直接使用するには適していない。もし癌細胞株として肝癌細胞株が利用されて、癌細胞株の受容者としてC3H/HeNマウスが利用される場合は、同種同質の肝癌細胞株であるMH134を利用することが最も好ましい。
【0023】
ヒト肝癌−特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列でマウス由来の肝癌細胞株を形質転換して、本発明の癌細胞株として利用する。ヒト肝癌−特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1〜346または1-484をエンコーディングするヌクレオチド配列、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸1〜332をエンコーディングするヌクレオチド配列、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1〜326をエンコーディングするヌクレオチド配列、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)の場合、アミノ酸1〜180をエンコーディングするヌクレオチド配列、そしてMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1〜309をエンコーディングするヌクレオチド配列である。より好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合は、配列番号1の7-1044ヌクレオチドまたは配列番号2の7-1458ヌクレオチド、GPC3(GLYPICAN3)の場合は、配列番号3の7-1002ヌクレオチド、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合は、配列番号4の7-984ヌクレオチド、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合は、配列番号5の7-546ヌクレオチド、そしてMAGE 1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合は、配列番号6の7-933ヌクレオチドである。
【0024】
このようなヒト肝癌-特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、多様な方法により得られて、例えば、ヒト由来肝癌細胞株(例えば、HepG2, ZR75-1, SK-BR-3)の総RNAを分離した後、公知のヒト肝癌-特異抗原の配列を参照して製作されたプライマーを利用してcDNAを製造する。次いで前記cDNAを適した動物細胞発現用ベクター(例えば、pcDNA3.1(+))にクローニングした後、マウス肝癌細胞(例えば、MH134細胞株)に形質感染させる。形質感染された癌細胞の中、ヒト肝癌-特異抗原を発現する細胞を選別して、最終的にヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を確立する。
【0025】
上述のように、ヒト肝癌-特異抗原を発現するマウス由来の肝癌細胞株は、本発明者らが最初に構築したものである。このようなヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、発現されたヒト肝癌抗原をプロセシングして(ペプチド形態に分解されて)、組織適合抗原であるクラスI分子に乗せて細胞表面に提示(presentation)する。結局、このような癌細胞株は、ヒト肝癌抗原に特異的に反応するT細胞により認識される特性を有するようになる。
【0026】
一方、本発明で分析対象に使用される樹状細胞は、当業界に公知の多様な方法を通じて得られる。例えば、樹状細胞は、単核球、造血母細胞または骨髄細胞を利用して得られる。
【0027】
具体的な実施例として、骨髄細胞を利用して樹状細胞を得る過程は、以下のようである:まず、マウスの大腿骨と脛骨から骨髄細胞を抽出した後、骨髄細胞を樹状細胞に分化させるために、適したサイトカイン(例えば、IL-4及びGM-CSF)を含む培地で骨髄細胞を培養する。次いで、分化誘導された未成熟樹状細胞をヒト肝癌特異抗原で感作(pulsing)させて、適したサイトカインが含まれた培地で培養し、成熟樹状細胞を得て、これを分析対象として利用する。上記感作させる過程において、好ましくは、ヒト肝癌特異抗原に本発明者らが以前開発したCTP(cytoplasmic transduction peptide)が結合されたもので感作させる。CTPは、ヒト肝癌特異抗原を、核ではない細胞質に運搬するため、樹状細胞がより効果的に導入された抗原を、クラスI分子を通じて提示できるようになり、DCワクチン投与時、強力な抗原特異CTLを誘導するに非常に有利である。CTPの詳細な内容は、大韓民国登録特許第10-0608558号に開示されており、前記特許文献は、本明細書に参照として取り込まれている。
【0028】
分析対象の樹状細胞を動物に投与する方法は、当業界に公知の多様な方法を通じて行うことができるが、好ましくは、静脈内注入または皮下注入(subcutaneous injection)であり、最も好ましくは、皮下注入である。 ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を正常動物に投与する方法は、当業界に公知の多様な方法を通じて行うことができるが、好ましくは、静脈内注入または皮下注入であり、最も好ましくは、皮下注入である(Fong, L. et al., Dendritic cells injected via different routes induce immunity in cancer patients. J. Immunol. 166:4254.(2001))。
【0029】
本発明の方法の前記段階(a)で投与される樹状細胞の量は、一般的なマウスを基準に1 x 104 - 1 x 108細胞、好ましくは1 x 105 - 1 x 107細胞、より好ましくは、約1 x 106細胞である。このような樹状細胞の適した投与間隔(例えば、1週間隔)で2回以上投与することが好ましい。また、本発明の方法の前記段階(a)で投与される癌細胞株の量は、一般的なマウスを基準に1 x 104 - 1 x 108細胞、好ましくは1 x 105 - 1 x 107細胞、より好ましくは約3 x 105細胞である。
【0030】
一般的な技術常識によると、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、ヒトを除いた動物に投与されると、動物内の免疫反応を触発させて、投与された癌細胞が除去されると期待される。しかし驚くことに、本発明によると、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を人間を除いた動物に投与した場合にも、その動物内で癌組織を形成する。ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株の上述の癌組織形成能により、本発明の方法が成功的に行われる。
【0031】
本発明の方法において、段階(b)において、樹状細胞または癌細胞株の投与方法及び投与量は、上述の段階(a)の内容が適用できる。
【0032】
本発明の方法において、段階(a’)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原と、段階(b’)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原とは、同一な抗原由来のものである。例えば、段階(a’)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原がAFP(ALPHA-FETOPROTEIN)である場合、段階(b')で投与される癌細胞株は、AFPを発現する。したがって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を提示する樹状細胞により誘導された細胞毒性T細胞(cytotoxic T lymphocyte)がAFPを発現する癌細胞株を認識して癌細胞を死滅させる。
【0033】
本発明の方法において、段階(a”)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原と、段階(b”)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原とは、同一な抗原由来のものである。例えば、段階(a”)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原がAFPである場合、段階(b”)で投与される樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)である。したがって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を提示する樹状細胞により誘導された細胞毒性T細胞がAFPを発現する癌細胞株を認識して癌細胞を死滅させる。
【0034】
本発明の最終段階において、動物内で癌細胞の形成または成長を測定し、肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を決定する。癌細胞の形成または成長は、肉眼で観察することができて、またはキャリパスのような道具を利用して測定できる。癌細胞の追加的形成が抑制されるか成長が抑制された場合は、分析対象の樹状細胞が免疫治療剤または予防剤としての効能を有すると判断してもよい。
【0035】
樹状細胞を利用した肝癌免疫治療または免疫予防を臨床水準で施すためには、まず動物モデルにおいて樹状細胞の効能と安全性が確認されなければならないが、本発明は、このような動物モデル-基礎試験を可能にする。本発明によりスクリーニングされた樹状細胞は、肝癌免疫治療剤または免疫予防剤として確実な候補者(candidate)になりえる。
【0036】
本発明の他の様態によると、本発明は、ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)を発現するマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)を提供する。
【0037】
本発明のヒト肝癌-特異抗原発現マウス肝癌細胞株(組換えMH134)は、従来にはなかった細胞株であって、肝癌マウスモデルを構築するために本発明者らによって最初に開発されたものである。
【0038】
本発明の肝癌細胞株は、ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)をエンコーディングするヌクレオチド配列により形質転換されたものである。ヒト肝癌-特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1-346または1-484全長をエンコーディングする配列、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸1-332全長をエンコーディングする配列、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1-326全長をエンコーディングする配列、MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1-309全長をエンコーディングする配列、そしてNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、アミノ酸1-180全長をエンコーディングする配列を含むベクターにより形質転換されたものである。
【0039】
より好ましくは、本発明のヒト肝癌-特異抗原発現マウス由来肝癌細胞株は、添付の図2のpcDNA3.1(+)-Tag (pcDNA3.1(+)-36A)ベクターにヒト肝癌-特異抗原をコーディングするポリヌクレオチドを挿入したpcDNA3.1(+)-Tag/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), pcDNA3.1(+)-Tag/GPC3(GLYPICAN3), pcDNA3.1(+)-Tag/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), pcDNA3.1(+)-Tag/NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)またはpcDNA3.1(+)-Tag/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)で形質転換されたものである。
【0040】
図2のpcDNA3.1(+)-Tagベクターに挿入するヒト肝癌抗原AFP, GPC3, P53, NY-ESO-1及びMGAE1は、それぞれ配列番号1の7-1044の1038ヌクレオチド、配列番号2の7-1458の1452ヌクレオチド、配列番号3の7-1002の996ヌクレオチド、配列番号4の7-984の978ヌクレオチド、配列番号5の7-546の540ヌクレオチド及び配列番号6の7-993の927ヌクレオチド配列である。
【0041】
本発明のヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、細胞内で発現されたヒト肝癌-特異抗原をプロセシングして(ペプチド形態に分解されて)、組織適合抗原であるクラスI分子に乗せられ細胞表面にヒト肝癌-特異抗原を提示(presentation)する。結局、このような癌細胞株は、ヒト肝癌抗原に特異的に反応するT細胞により認識される特性を有するようになる。
【0042】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、上述の本発明のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株が接種されて癌が形成されており、肝癌-特異抗原で感作された(pulsing)樹状細胞を処理する場合は、癌の転移または成長が抑制される特徴を示す肝癌マウス(Mus musculus)モデルを提供する。
【0043】
本発明の肝癌マウスモデルは、ヒト肝癌-特異抗原を発現するマウス肝癌細胞株が移植されて癌が形成されており、樹状細胞の肝癌治療または予防効能が検証できる動物モデルである。このようにヒト肝癌治療または予防効能が検証できるマウスモデルは開発されたことがない。
【0044】
本発明の好ましい具現例によると、前記マウスに注入される肝癌細胞株は、マウスに対して同種同質(syngeneic)の細胞である。
【0045】
好ましくは、本発明の肝癌マウスモデルは、上述の樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防及び治療効能を分析する本発明の方法を行うに利用される。
【0046】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のマウスモデルは、注入された癌細胞株と同種同質の特性を示すC3H/HeNマウスである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】肝癌-特異抗原、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)のPCR増幅産物を示すゲル写真である。組換え抗原蛋白質を得るために、HepG2(ヒト肝癌細胞株), ZR-75-1(ヒト乳癌細胞株), Sk-BR3からcDNAを合成して、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)をPCR増幅した。Mレーンは、マーカー; 1レーンは、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN) 1/2N (1040 bp); 2レーンは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN) 2/3N (1454 bp); 3レーンは、GPC3(GLYPICAN3) 1/2N (998 bp); 4レーンは、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53) 2/3N (980 bp); 5レーンは、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1) (540 bp); 6レーンは、MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(929 bp)に該当する。
【図2】肝癌-特異抗原を発現するための組換え発現ベクターの遺伝子地図である。HepG2(ヒト肝癌細胞株), ZR-75-1(ヒト乳癌細胞株), Sk-BR3から合成されたcDNAを鋳型としてAFP, MAGE1, P53, GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1をPCR増幅した。これらの発現のために、真核細胞用ベクター(pcDNA3.1-36A)及び原核細胞用ベクター(pCTP)にクローニングした。ベクターの遺伝子地図において、36Aは、36A Tagをコーディングする配列であり、CMV promoterは、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)のプロモーターであり、 BGH pAは、牛成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化配列であり、f1 oriは、f1複製起点を示し、SV40 oriは、SV40複製起点を示して、抗生剤の名称が記載されたものは、その抗生剤-耐性遺伝子を示す。 真核細胞ベクターから発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子を挿入した。Tag導入に使用したプライマーは、Tag-XhoI/s(5'-ACCCTCGAGGTCCATGACCGGAGGTCAGCAGATGGGTCGCGACCTGTACGACGA-3')及びTag-XbaI/as(5'-ACCTC TAGATTAGCTTCCCCATCTGTCCTTGTCGTCATCGTCGTACAGGTCGCG-3')であり、94℃, 30sec; 52℃, 30sec;及び72℃, 5minの総 1サイクルを行って、tag DNA断片を確保した。36A Tagのアミノ酸配列は、SMTGGQQMGRDLYDDDDKDRWGSであり、ヌクレオチド配列は、TCC ATG ACC GGA GGT CAG CAG ATG GGT CGC GAC CTG TAC GAC GAT GAC GAC AAG GAC AGA TGG GGA AGCである。36A配列の場合、MCSとBGH pAとの間に(XhoI-36A-Stop-XbaI)の形態で挿入されている。36A Tagのより詳しい内容は、大韓民国登録特許第10-0295558号に記載されている。
【図3】形質転換細胞から発現された肝癌抗原に対するウェスタンブロッティング分析結果を示す。pcDNA3.1-HA-36A/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), pcDNA3.1-HA-36A/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), pcDNA3.1-HA-36A/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びpcDNA3.1-HA-36A/GPC3(GLYPICAN3)組換えプラスミドをMH134細胞株に形質感染させて、G418で選別後、安定化された細胞株で導入された抗原発現をウェスタンブロッティングで確認した。分析抗体は、遺伝子特異的抗体をそれぞれ使用した(抗-AFP抗体、H-140 SantaCruz; 抗-MAGE1抗体, ab3211 Abcam; 抗-P53抗体, MAB1355 R&D systems; 抗-GPC3抗体, AF2199 R&D systems)
【図4】MH134細胞に導入された肝癌抗原(AFP, P53, MAGE1及びGPC3)の発現安定性を示すRT-PCR分析結果である。製作された安定化細胞株のそれぞれを、G418が添加されていない培地で培養し、20日目に1 x 106細胞を回収してウェスタンブロッティングを行った。陰性対照群(Negative Control)として、形質転換されなかったMH134を使用した。
【図5】肝癌抗原蛋白質(AFP, MAGE1, GPC3, P53及びNY-ESO-1)のSDS-PAGE分析及びウェスタンブロッティング結果を示す。pCTPベクターにそれぞれの抗原遺伝子をクローニングして、BL21-gold(DE3)で発現させた。発現されたCTP-結合組換え蛋白質を12% SDS-PAGEとウェスタンブロッティング方法により確認した。レーンMは、分子量マーカー;レーン1, 2は、CTP-AFP 1/2Nペレットと上澄み液;レーン3, 4は、CTP-AFP 2/3Nペレットと上澄み液;レーン5, 6は、CTP-GPC3 1/2Nペレットと上澄み液;レーン7, 8は、CTP-P53 2/3Nペレットと上澄み液;レーン9, 10は、CTP-NY-ESO1ペレットと上澄み液;レーン11, 12は、CTP-MAGE1ペレットと上澄み液;レーン13, 14は、CTP-MAGE3ペレットと上澄み液に対するものである。
【図6a】C3H/HeNマウスにおいて、対照群MH134細胞及びヒト肝癌特異抗原を発現する組換えMH134を投与時に誘導された固形癌の相対的成長速度を示す。C3H/HeNマウスに3 x 105の対照群MH134細胞及び組換えMH134を皮下(SC, subcutaneous)注射して、30日以後に癌の形成及び成長を観察した。組換え癌細胞株の接種後、三日間隔で癌の大きさを測定した。
【図6b】C3H/HeNマウスにおいて、対照群MH134細胞及びヒト肝癌特異抗原を発現する組換えMH134を投与時に誘導された固形癌の相対的成長速度を示す。C3H/HeNマウスに5 x 105の対照群MH134細胞及び組換えMH134を皮下注射して、30日以後に癌の形成及び成長を観察した。組換え癌細胞株の接種後、三日間隔で癌の大きさを測定した。
【図7】樹状細胞(DC, dendritic cell)ワクチン投与時、組換えMH134細胞株による腫瘍形成抑制効果を示すグラフである。腫瘍抗原に感作された樹状細胞による腫瘍予防効果を確認するために、1週間隔で1 x 106抗原感作DC/マウスの投与量で2回皮下(SC, subcutaneous)注射して、1週間後にそれぞれの安定された組換え癌細胞株を3 x 105細胞/マウスの投与量で皮下注射した。注射後、二日間隔で腫瘍大きさを測定した。
【図8】樹状細胞による癌予防モデルにおいて、生存期間をグラフで示す結果である。樹状細胞(DC)ワクチンを2回投与後、それぞれの組換え腫瘍細胞株をチャリンジングして、以後生き残ったマウス数を数値化したグラフである。50日目までの観察結果、対照群の全てのマウスが死亡した後にも、樹状細胞を注射した実験群の生存を確認することができた。
【図9】樹状細胞ワクチンの投与後、組換え腫瘍細胞株の肺転移(pulmonary metastasis)挑戦実験において、樹状細胞ワクチンの肺転移予防効果を示した写真である。CTP-AFPで感作された(pulsed)樹状細胞を1週間隔で2回投与した後、1週目に、マウス静脈に組換え肝癌細胞株(MH134/AFP)3 x 105 cellsを接種して、20日後肺を抽出して撮影した写真である。
【図10】腫瘍が形成されたマウスにおいて、腫瘍成長に対する樹状細胞ワクチンの治療効果を示す。ヒト肝癌抗原を発現するマウス癌細胞株を3 x 105 細胞/マウスで皮下に接種して、三日後、CTP-MAGE1またはCTP-AFP組換え肝癌抗原で感作した骨髄由来の樹状細胞(Bm-DC)を各マウス群の1 x 106 抗原感作DC/マウスの投与量で皮下に1週間隔で2回接種した。接種二日目から2日間隔で癌の形成及び大きさを調べて、20日目に写真を撮影した。
【図11a】図11aは、防御モデルを利用して樹状細胞ワクチンで治療したマウスにおいて、癌抗原-特異的な細胞毒性リンパ球(CTL)生成程度を示すグラフである。樹状細胞ワクチンを投与したマウスから脾臓を分離してT細胞を分離し、それぞれのCTP-抗原で処理された抗原提示細胞(APC)と5:1(T細胞:APC)で混合して5日間培養した後、それぞれの該当肝癌抗原発現組換え細胞株を標的細胞(target cell)として細胞毒性リンパ球生成程度を測定したグラフである。
【図11b】図11aにおいて、培養上澄み液からIFN-γとIL-4の発現をELISAで確認した図。
【図11c】図11aにおいて、T-細胞増殖能をMTT assayで確認した図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0049】
実施例1:ヒト由来の肝癌抗原を発現するマウス細胞株の開発
実施例1−1:ヒト由来の肝癌特異抗原発現ベクターの製作
(a)ヒト由来の肝癌特異抗原発現細胞株HepG2, ZR75-1, SK-BR-3の培養
本実験に使用されたHepG2, ZR75-1, SK-BR-3は、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(alpha feto protein1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)(Glypican3), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)などの肝癌特異的な抗原を発現するヒト由来の肝癌細胞株であって、韓国細胞株銀行から入手して実験に使用した。この肝癌細胞株は、10% FBSが添加されたRPMI-1640倍値(GIBCO/BRL)で培養/維持して、継代培養時は、trypsin-EDTAを約1分間処理して非付着性単一細胞に分離し、培養群体が約80%を超えないように1週間に2〜3回継代培養した。
【0050】
(b) HepG2からAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3) MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)、そしてSK-BR-3からNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)とMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1) cDNA PCR生成物の確保
肝癌細胞株を収穫する前に、細胞の条件を最適化するために培養群体が60%を超えないように維持して2〜3回継代後、trypsin-EDTAを処理して回収した。回収された細胞にTrizol(Gibco BRL)を処理して総RNAを抽出し、イソプロパノール沈殿及び70%エタノール洗浄過程を通じて総RNAを精製した。cDNA合成のために、10μgの総RNAを1μgのオリゴ(dT) 12-18と混合させた後、65℃で5分間変性させた後、直ぐに氷に移して、これに逆転写酵素反応緩衝液,10mM DTT, 1mM dNTP混合物及び20units RNAsinを添加して、42℃で2分間前反応した後、200unitのMmlV(Molony Murine Leukemia virus)逆転写酵素(Invitrogen社)を添加して再び42℃で60分間反応した。反応が完全に終了した後、70℃で15分間放置し、酵素を非活性化させた。このように合成されたcDNAを鋳型としてPCRを行い、ヒトAFP(ALPHA- FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)に対するcDNAを確保した。使用されたPCRプライマーは、下記のようである。
【0051】
[表1a]
原核細胞用発現ベクターにクローニングするために使用されたプライマー
【0052】
[表1b]
真核細胞用発現ベクターにクローニングするために使用されたプライマー
【0053】
上記のプライマーセット(Bionics社) [表1a]及びPCR重合酵素(Solgent社)を使用して、94℃, 30sec; 62℃, 30sec;及び72℃, 50secの総25サイクルのPCRを行って、原核細胞用GPC3(GLYPICAN3)(909 bp), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)(978 bp), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)(540 bp), AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(983 bp)及びMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(927 bp)のDNA断片を確保して、プライマーセット[表1b]を使用して、真核細胞用発現ベクターにクローニングするGPC3(GLYPICAN3) (998 bp), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)(980 bp), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)(542 bp), AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(1040 bp)及びMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(929 bp)のDNA断片を確保した。真核細胞ベクターで発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子が挿入されたベクターを使用した。真核細胞ベクターで発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子を挿入した。Tag導入に使用したプライマーは、Tag-XhoI/s(5'-ACCCTCGAGGTCCATGACCGGAGGTCAGCAGATGGGTCGCGACCTGTACGACGA-3')及びTag-XbaI/as(5'-ACCTC TAGATTAGCTTCCCCATCTGTCCTTGTCGTCATCGTCGTACAGGTCGCG-3')であり、94℃, 30sec; 52℃, 30sec;及び72℃, 5minの総1サイクルを行って、tag DNA断片を確保した。36A Tagのアミノ酸配列は、SMTGGQQMGRDLYDDDDKDRWGSであり、ヌクレオチド配列は、TCC ATG ACC GGA GGT CAG CAG ATG GGT CGC GAC CTG TAC GAC GAT GAC GAC AAG GAC AGA TGG GGA AGCである。36A配列の場合、MCSとBGH pAとの間に(XhoI-36A-Stop-XbaI)の形態で挿入されている。36A Tagのより詳しい内容は、大韓民国登録特許第10-0295558号に記載されている。
【0054】
(c)肝癌抗原cDNAを発現ベクター(pCDNA3.1(+)-36A Tagベクター及びpCTPベクター)にクローニング
(株)クレアゼンで開発されたpcDNA3.1(+)-Tagベクターにそれぞれのヒト肝癌抗原遺伝子断片をKpnI/EcoRI処理し、pcDNA3.1(+)-Tagベクターにクローニングして、組換えベクターのヌクレオチド配列は、シーケンシングで確認した(参照:図2及び配列番号1乃至6)。また、原核細胞でも組換え肝癌抗原蛋白質を得るために、(株)クレアゼンで開発されたpCTP-Td vectorを使用した。pCTP-Tdベクターは、pTAT-HAベクター(Washington大学のS. Dowdy博士から入手、H. Nagahara et al., Nature Med. 4:1449(1998))を遺伝子操作して製作した。それぞれのヒト肝癌抗原遺伝子断片をKpnI/EcoRI処理して、上記製作されたpCTPベクターにクローニングした(参照:図2及び配列番号7乃至12)。
【0055】
導入遺伝子に対してDNA塩基配列分析を行って、導入されたcDNAがエンコーディングするアミノ酸配列が公知されたAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の配列と100%一致することを確認した(Blast 2配列検索)。
【0056】
原核細胞用発現ベクターに挿入された部位は、各肝癌抗原のN-末端シグナルペプチドに該当する部位とC-末端に隣接した膜透過ドメインと予想される部位が除かれた部分であって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列20-346(327 aa)(配列番号19), GPC3(GLYPICAN3)の場合、31-331(303 aa)(配列番号21), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、1-326(326 aa)(配列番号22), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、1-180 (180 aa)(配列番号23), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、1-308(308 aa)(配列番号24)に該当する。一方、真核細胞用発現ベクターに挿入される部位は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1-346(346 aa)(配列番号13), GPC3(GLYPICAN3)の場合、1-332 (332 aa)(配列番号15), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、1-326 (326 aa)(配列番号16), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、1-180 (180 aa)(配列番号17), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、1-309 (309 aa)(配列番号18)に該当する。
【0057】
実施例1−2:ヒト由来の肝癌抗原発現マウス細胞株の開発
(a)選別された肝癌抗原発現細胞株から抗原発現の確認
肝癌抗原発現細胞株の製作のために、pcDNA3.1(+)-Tag/肝癌抗原(AFP(ALPHA- FETOPROTEIN;配列番号1), GPC3(GLYPICAN3;配列番号3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53;配列番号4),またはMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1;配列番号6))ベクターをマウス肝癌細胞株MH134細胞に形質感染させた。
【0058】
哺乳動物発現ベクターである20μgのpcDNA3.1(+)-36Aにクローニングされているコンストラクトを、制限酵素(Ssp I, AFPの場合、Pvu I)を利用して37 ℃で2時間切断してベクターを線形化した。酵素で切断されたpcDNA3.1をPCR精製キットを利用して高収率条件で精製した。最終50μlに溶出させた。最終溶出されたDNA 50μlに2 x 105 cellsのMH134細胞を550μlの1 x PBSに再懸濁して混ぜて、これに2μlの2M MgCl2 (最終濃度5mM)を添加する。最終660μlのDNA + MH134細胞混合物をelectroporation cuvetteに入れて、氷中に7分間立てておいた。次いで、BIO-RAD gene pulserを使用して280V, 950μF条件でelectroporation進行して、氷で10分間インキュベーションした。electroporation cuvetteの中のDNA + MH134細胞混合物をイエローチップを利用して、10mlのRPMI1640 + 10 % FBSが入っている50mlチューブに注意して移した。マルチチャネルピペットを利用して、一つの96ウェルマイクロプレートでウェル当たり100μlずつ分けて入れた。37 ℃インキュベーターで二日間インキュベーションした後、G418(10mg/ml)を各ウェル当たり添加して、最終G418濃度が1mg/mlになるようにした。G418処理後、10日〜14日間細胞コロニーが形成されるかを観察した。コロニーが形成されたウェルを選択して6ウェルプレートに移した後、106 cells/ml以上に成長した時、再び100mmディッシュに移す。選別された細胞は、増殖過程の間に回収して、発現状態をウェスタンブロッティング方法により確認した。回収された細胞をPBSで2回洗浄した後、蛋白質試料緩衝液に浮遊させて沸かした後、遠心分離してゲノムDNAを除去し、上澄み液をSDS-PAGEで分離した。分離された蛋白質バンドをニトロセルロース膜にsemi-dry transfer blotter (Bio-Rad社)を使用して移した後、1次抗体であるTag抗原-特異単一クローン抗体を処理して、2次抗体AP(alkaline phosphatase)-接合抗-マウスIgG(Sigma)を処理した。その後、NBT/BCIPが含有されたAP反応溶液(Promega社)に移して、バンドを確認した。
【0059】
(b)細胞株の抗原発現安定性の確認
組換え細胞株をマウスに接種時、抗生剤(G418)がない条件で導入抗原発現が維持できるかを検証するために、細胞株をG418がない培地で持続的に継代しながら導入した遺伝子の発現安定性を確認した。G418がない条件でそれぞれの組換え細胞株(MH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MH134/GPC3(GLYPICAN3), MH134/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びMH134/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1))を培養しながら、20日後1 x 106細胞を回収して、抗原発現状態を調べた。抗原発現を確認するために、各抗原の特異性を示す部分にプライマーを製作してRT-PCRを行った。
【0060】
[表1C]
真核細胞用発現ベクター発現を確認するために使用したプライマー
ターゲット遺伝子プライマー配列
MAGE-1
SEQUENCE SIZE: 930
INCLUDED REGION SIZE: 930
PRODUCT SIZE: 238
AFP 1/2N
SEQUENCE SIZE: 900
INCLUDED REGION SIZE: 900
PRODUCT SIZE: 215
TP53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53) 2/3N
SEQUENCE SIZE: 550
INCLUDED REGION SIZE: 550
PRODUCT SIZE: 151
GPC3(GLYPICAN3) 1/2N
SEQUENCE SIZE: 871
INCLUDED REGION SIZE: 871
PRODUCT SIZE: 240
【0061】
図4から分かるように、4種類の細胞株の全部において、導入された抗原遺伝子の発現が20日まで抗原発現が持続されることを確認した。したがって、前記実施例で製作したヒト肝癌抗原-発現細胞株は、マウス肝癌モデル確立に使用可能な細胞株であることが分かる。
【0062】
実施例2:樹状細胞感作用CTP-結合組換え蛋白質の精製
実施例2−1:CTP-結合肝癌組換え抗原の発現及び精製
各肝癌抗原cDNA(参照:配列番号7乃至12)を、図2のpCTP-Tdベクターに導入し、これをE. coli BL21-gold(DE3)コンピテント細胞(Stratagene社)に、Hanahan方法を利用して形質転換させて発現菌株を確保し、この菌株をLB-アンピシリン培地で大量培養した。培養後遠心分離して、PBSで洗浄して細胞を回収した後、12% SDS-PAGEで肝癌抗原の発現状態を確認した。大量発現後、CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), CTP-MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), CTP-P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), CTP-GPC3(GLYPICAN3)及びCTP-NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)組換え蛋白質は、Ni+-NTAレジン(Qiagen)カラムで純粋分離した。確認された蛋白質は、ベクター自体の非ゲノム配列により約6kDa程度増加された大きさで確認された。即ち、CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)は、約44kDa, CTP-MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)は、約48kDa, CTP-GPC3(GLYPICAN3)は、約41kDa, CTP-P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)は、約53kDa、そしてCTP-NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)は、約30kDaに発現された。
【0063】
実施例3:肝癌動物モデルの構築
実施例3−1:肝癌抗原発現細胞株のマウスにおける癌形成及び成長の確認
ヒト肝癌抗原を発現するマウス細胞株がマウスに癌を形成させることができるかどうかと、形成された固形癌の成長速度を調べた。製作された細胞株を6週齢Balb/cマウス(オリエント社)の大腿部に注射した。肝癌抗原発現組換え細胞株は、10% FBSとG418 500μg/mlが含有されたRPMI培地で培養/維持した。最適の成長状態で細胞をPBSで2〜3回洗浄後、トリプシン-EDTAを処理して、単一細胞に分離し、3 x 105 細胞/100μl、5 x 105 細胞/100μlになるように生理食塩水に懸濁した。前記懸濁液100μlをマウスの右側下腹部の皮内組織に接種した。細胞株の接種後、3日間隔で固形癌の形成有無を観察した。固形癌の大きさは、キャリパスを使用して測定した。図6bから分かるように、肝癌細胞株を接種した全てのマウスから固形癌が形成されたことを確認した。また、図6aから分かるように、3 x 105 細胞だけでも癌を形成して、異種抗原に対する自己免疫反応により、生成された癌が自ら消滅されないことを確認した。癌の成長速度を観察した結果、図6bから分かるように、MH134/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)組換え細胞株を投与した場合は、他の場合に比べ、比較的遅い速度で成長したが、MH134/ MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)投与時は、正常のMH134投与時とほぼ等しい速度で成長した。このような結果は、多分P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の発現が他の抗原に比べて比較的高く、異種抗原に対する免疫が他のものより強く誘導されたからであると推測される。上述の実験結果は、ヒトの肝癌抗原を発現するマウス細胞株が、たとえ異種抗原を発現してはいるものの、発現される異種抗原に対する体内基本免疫反応のみでは肝癌細胞株の癌形成を抑制することができないことを照明する。これにより、本発明者らが計画したマウスモデルが完成されて、樹状細胞ワクチンを利用した癌の予防及び治療効能を研究するに、これを利用することができるようになった。
【0064】
実施例4:樹状細胞の抗癌効果分析
実施例4−1:樹状細胞ワクチンによるマウス肝癌予防効果(Prevention model)
樹状細胞ワクチンによる肝癌予防可能性を調べるために、CTP-融合肝癌組換え抗原を感作させた樹状細胞をマウスに2回免疫させて、その後、肝癌特異抗原を発現する癌細胞株で挑戦試験を行って、固形癌の形成及び肺転移有無を調べた。マウス樹状細胞は、大腿骨と脛骨の両端を切断し、骨髄細胞を抽出して、50mlチューブに細胞を回収した。回収された骨髄細胞を0.83%塩化アンモニウム溶液で懸濁させて赤血球を除去し、骨髄細胞を樹状細胞生産培地(RPMI-1640, 10 % FBS, 10 ng/mlのマウス組換えIL-4と10ng/mlのマウスGM-CSF)で2日間培養しながら非吸着性細胞を除去して、容器の底に付着された細胞のみを取った。2〜3日間隔で新鮮な培地に入れ替えて、サイトカインの枯渇を防止した。培養6日目に未成熟樹状細胞を回収して、これに組換え抗原であるCTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を処理した。各抗原蛋白質を50μg/mlずつ20時間処理して、未成熟樹状細胞を感作して、24時間後から樹状細胞の成熟化に必要なサイトカイン(100μg/ml IFN-γと100μg/ml TNF-α)を添加して、樹状細胞の成熟化を誘導した。抗原で感作された樹状細胞1 x 106細胞をマウス皮下に注射して、抗癌免疫を誘導した。
【0065】
樹状細胞免疫は、1週間隔で2回接種して、2次樹状細胞接種の1週間後にCTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)が感作された樹状細胞で免疫したマウス実験群にはMH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を各3 x 105細胞/マウスで皮下(SC, subcutaneous)注射した。癌の大きさ(横 x縦)は、3日毎に測定した。測定結果、図7のように、CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)抗原を感作させた樹状細胞で免疫したマウス群で癌の形成が著しく遅延されることを観察することができた。
【0066】
一方、樹状細胞による癌予防モデルにおいて生存期間をグラフで示すと、図8のようである。CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を感作させた樹状細胞を注射した実験群の場合、MH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)株を投与後、癌形成が遅延される効果を示して、48日以後まで全て生存することを確認した。その反面、PBS対照群の場合、25日目から死亡し始め、42日目に6匹が全部死亡したことを確認して、また、抗原を感作させなかった樹状細胞のみを注射した対照群では、やはり42日目から死亡し始め、45日目に全て死亡したことを確認することができた。したがって、肝癌特異抗原を感作させた樹状細胞による癌予防モデルの場合、癌形成の遅延だけではなく、寿命延長にもその効果を示すことを確認することができた。
【0067】
実施例4−2:樹状細胞ワクチンによるマウス肝癌転移抑制効果(Prevention model)
上記の同様な方法により樹状細胞ワクチンをマウスに2回投与して免疫を誘導し、1週間後にそれぞれの組換え肝癌抗原発現細胞株をマウス当たり3 x 105細胞になるように調整して、各マウスに静脈注射した。MH134マウス肝癌細胞株の場合、自発的転移(spontaneous metastasis)が起こる細胞株である。そして、20日後、マウスを安楽死させて、肺転移程度を観察した。図9から観察できるように、AFPヒト肝癌抗原を感作させた樹状細胞で免疫した群では、肺転移が全く現れない反面、抗原を感作しなかった樹状細胞やPBSのみを投与した対照群では、両方とも強い癌の肺転移現象が現れた。これは、樹状細胞ワクチンにより強力な癌抗原特異的な免疫が誘導されて、癌の生成及び転移を抑制したことを示唆する。
【0068】
実施例4−3:CTP-肝癌抗原で感作された樹状細胞ワクチンによるマウスモデルにおける肝癌治療効果(Regression model)
肝癌抗原AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を発現する組換え細胞株を3 x 105細胞/マウスで各マウス実験群に皮下注射して、3日後にCTP-結合抗原(CTP-MAGE1及びCTP-AFP)で感作された樹状細胞(DC)をマウス当たり1 x 106細胞になるように調節して、皮下に1週間隔で2回注射した。2次樹状細胞の投与後、2日間隔で約一ヶ月間固形癌の形成及び成長を観察した。図10から分かるように、MH134/MAGE1及びMH134/AFP細胞株からなるマウス肝癌モデルの両方から癌成長抑制効果が観察された。
【0069】
実施例4−4:樹状細胞ワクチンの投与により誘導された抗原特異的なCTL確認
前記肺転移モデルで実験されたマウスの脾臓を取って、T細胞増殖分析とCTL分析を行った。それぞれのマウスを頚椎脱臼法で安楽死させて、脾臓を採取した。分離された脾臓が乾燥されないようにRPMIに保管した。それぞれの脾臓を取って、70μm網を通過させて浮遊組織を除去し、1回遠心分離して細胞を収穫した後、0.83%塩化アンモニウム溶液で懸濁し、赤血球を除去した。準備された脾臓細胞は、ナイロンウールカラムを通過させてTリンパ球のみを分離して、効能細胞(effector cell)刺激のために用意されたAPC(antigen presenting cells)と5:1比率で混合し、5日間培養した。APCは、実験日の2日前に準備した。正常マウスの脾臓を取って赤血球を除去し、3μg/mlのCon-Aで24時間刺激した。刺激後、1回洗浄した後、それぞれの抗原蛋白質CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)を50μg/mlで処理し、24時間培養した。培養時の細胞濃度は、1 x 106細胞/マウスを維持した。24時間培養後、Mitomycin Cを40分間処理して、処理後3回洗浄してAPCを準備した。
【0070】
効能T細胞(effector T cell)とAPCの培養の5日間の3日目に一部を取って、T cell proliferation assay (MTT assay)を行った。培養4日目に上澄み液を取って、各上澄み液に存在するIL-4とIFN-γの量を確認した。R&D systems kitを使用して、方法は、製作者の方法に従った。MH134細胞の場合は、懸濁細胞(suspension cell)であるため、CFSE staining方法を利用して特異的ライシス(specific lysis)を確認した。非ターゲット(non target)群としてMH134を、ターゲット群としては、抗原を発現する安定化された細胞株を使用した。まず、非ターゲット細胞株とターゲット細胞株とを区分するために、細胞を洗浄後、CFSEを利用して染色した(Target : add 15ul of 1mM CFSE (CFSE high) vs Non target cell : add 10ul of 0.1mM CFSE (CFSE low))。染色された二種の細胞株を同一比率で混ぜた後、Histopaque(Sigma)を利用して死んだ細胞を除去して効能T細胞を分離し、 ターゲット細胞とE:T ratioが1:1, 10:1及び20:1になるように混合して6時間培養した。その後、FACS分析を通じて生きている細胞の数を定めた。
【0071】
【0072】
その後、式
Percent of specific lysis
= (1 - the ratio of target cells only / the ratio of target + effector cells) * 100
を利用して計算した。
【0073】
図11のCTL結果から分かるように、3種のマウス肝癌モデルの全部において、CTLが効果的に誘導された。これは、CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)で感作されたマウス骨髄由来の樹状細胞ワクチンの投与により、それぞれのヒト肝癌抗原に特異的なCTLが効果的に誘導されて、これにより治療及び予防に抗癌効果が示されたことを示す結果である。
【0074】
以上詳述したように、本発明は、ヒト肝癌動物モデルを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法を提供する。樹状細胞を利用した肝癌免疫治療または免疫予防を臨床水準で施すためには、まず動物モデルにおいて樹状細胞の効能と安全性が確認されなければならないが、本発明は、このような動物モデル-基礎試験を可能にする。本発明により効能が検証された樹状細胞ワクチン(DCワクチン)は、肝癌免疫治療剤または免疫予防剤として確実な候補者(candidate)になりえる。
【0075】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関し、より詳細には、ヒト肝癌動物モデルを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
全世界的に肝癌の年間発病率は、全体癌の4%である56万名水準であり、この中、39万名以上の患者がアジアに居住する。韓国では、毎年1万2千名〜1万5千名の肝癌患者が発生するが、これは、胃癌に次いで2位で、肺癌とほぼ等しい発生率であり、死亡率においても、肺癌、胃癌に次いで3位であるため、国家的に看過できない重要疾患である。韓国人の肝癌の70%は、B型肝炎ウイルス肝炎に起因し、C型肝炎ウイルスによるものが13%程度、その他が18%程度を占めると知られている。
【0003】
肝癌は、原発性癌と転移癌に分類されて、原発性肝癌の中、最も有り触れたのは、肝細胞癌(hepatocellular carcinomaまたはHCC)で、慢性肝疾患患者から最も頻繁に発病する悪性疾患であって、肝門脈を通じての転移癌の発生率も高い。現在肝疾患治療剤として開発されて使用されているものは、主に肝炎治療剤であって、インターフェロン(Interferon)とラミブジンが代表的である。ラミブジンは、インターフェロンとは異なって、副作用があまりなく、飲む薬として使用が簡便であるが、市販後3年になった現在、薬剤に耐性を有したウイルスの出現がほぼ50%に達すると報告されており、肝癌に進展された患者にはほとんど効果がない。肝癌は、初期は症状がほとんどなく、既に症状が現れた後に発見される肝癌は、非常に進展された場合が大部分であり、肝癌治療方法は、肝切除術が一次的であるが、肝癌患者の中、肝切除術が可能な場合は一部に過ぎず、その他の治療方法として肝移植、全身的化学療法、放射線治療、高周波熱治療法などの使用が可能であるが、再発率が高くて、移植後拒否反応などの副作用が激しく、役に立たない場合が多い。成功的な切除といっても、年間再発率が25%に至り、大きさ2〜3cmの小肝癌の場合が最もよい手術成績を示すと知られているが、このような小肝癌の場合においても、手術後3年以内に再発する可能性が50%以上である。
【0004】
このような肝癌再発の原因は、第一、手術時全身的に広がって発生する微細転移(micrometastasis)の進行により、第二、ほとんどが肝硬変症を伴っているため、新たに肝癌が発生する危険が高いためであると知られている。このように既存の癌治療法で予後が改善されない国内癌患者のための治療法として、既存抗癌治療とは違って副作用や患者の苦痛がほとんどない最先端の細胞免疫治療法の開発が切実に求められる趨勢である。
【0005】
樹状細胞(dendritic cell)を利用した抗癌ワクチン治療は、最近開発された積極的免疫治療法(active immunotherapy)であって、既存の死滅癌細胞ワクチンを利用した免疫治療法より強力であり、患者のT細胞を体外で増殖させてから注入する消極的免疫治療(passive immunotherapy)より効果が長期的であって、IL-2とIFN-αなどのサイトカインを多量直接投与するより著しく安全なものと評価されている。また、転移性あるいは再発性末期癌の初期治療に非常に効果があるだけではなく、施術過程で組織適合抗原の問題がなく、患者にほとんど苦痛を与えなくて、副作用もない無毒性の治療法である。樹状細胞(DC)を利用した抗癌ワクチン治療は、その薬理メカニズム上、一遍に巨大な癌組織を縮小させる効果は少ないが、体の抗癌免疫を誘導して一次治療後、最小疾患の状態や微細転移(micrometastasis)のような転移初期段階において、再発や深刻な転移(overt metastasis)を抑制するに非常に効果が高いと評価される。このような樹状細胞を利用した免疫治療の臨床試験のためには、まず動物モデルにおいて効果性と安全性が確認されなければならないが、未だにヒト肝癌に対する樹状細胞ワクチンの効能を評価できるような肝癌動物モデルがない実情である。
【0006】
本明細書全体にかけて多数の特許文献及び論文が参照されて、その引用が表示されている。引用された特許文献及び論文の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、上述の当業界の要求を解決するために鋭意研究した結果、ヒト肝癌−特異抗原を発現する異種(xenogenic)癌細胞株を構築し、これを利用して肝癌動物を構築した後、これを利用して樹状細胞の効能を検査して、その結果、樹状細胞の肝癌免疫治療剤または免疫予防剤としての効能を正確に分析することができることを確認した。
【0008】
したがって、本発明の目的は、ヒト肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、ヒト肝癌−特異抗原発現マウス由来の肝癌細胞株を提供することにある。
【0010】
本発明のまた他の目的は、肝癌マウス(Mus musculus)モデルを提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、さらに明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一様態によると、本発明は、以下の段階を含むヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防及び治療効能を分析する方法を提供する:
(a)(a’)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階、または(a”)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階;(b)(b’)前記段階(a)において、(a’)を行った場合、前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階、または(b”)前記段階(a)において、(a”)を行った場合、前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階;及び(c)(c’)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の予防及び治療効能を決定する段階。
【0013】
本発明は、(i)ヒト肝癌抗原をマウス細胞株に恒久的に発現させて、ヒト肝癌抗原を発現する組換えマウス癌細胞株、(ii)樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を分析する方法、及び(iii)樹状細胞由来の肝癌免疫予防剤の効能を分析する方法に大別される。
【0014】
したがって、本発明の樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を分析する方法は、(a”)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階と、(b”)前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階と、(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を決定する段階とを含む。
【0015】
本発明の肝癌免疫予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法は、(a’)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階と、 (b’)前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階と、(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の効能を決定する段階とを含む。
【0016】
本発明は、ヒト樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤または予防剤の効能を、動物モデルを利用して最初に分析したものである。従来には、このような効能分析に適した動物モデルが提示されたことがない。
【0017】
本発明の方法において、利用される動物は、人間を除いたいかなる動物でも可能であって、好ましくは哺乳動物、より好ましくはげっ歯類動物であって、さらに好ましくはマウス(Mus musculus)であり、最も好ましくは、C3H/HeNマウスである。本発明において用語‘正常動物’は、癌が発生されていない動物を意味する。
【0018】
本発明の方法において、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を構築するために利用される抗原は、ヒト肝癌で特異的に発現されるいかなる抗原でも利用可能である。好ましくは、前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)であり、より好ましくはAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)またはMGAE1であり、さらに好ましくはAFP(ALPHA- FETOPROTEIN)またはGPC3(GLYPICAN3)であって、最も好ましくはAFP(ALPHA- FETOPROTEIN)である。前記抗原は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。
【0019】
好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1〜346または1〜484(参照:配列番号13または14)、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸配列1〜332(参照:配列番号15)、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1〜326(参照:配列番号16)、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)の場合、アミノ酸1〜180(参照:配列番号17)、そしてMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1〜309(参照:配列番号18)に該当する配列を抗原として利用する。
【0020】
正常動物から癌を誘発するに利用される癌細胞株は、多様な動物由来のものが利用できるが、好ましくは、癌細胞の受容者(recipient)である動物に対して同種異質(allogeneic)または同種同質(syngeneic)の癌細胞株であり、より好ましくは、同種同質の癌細胞株である。本発明の好ましい具現例において、正常動物としてマウスが利用されて、癌細胞株としてマウス由来の癌細胞株が利用されて、より好ましい具現例において、正常動物としてC3H/HeNマウスが利用されて、癌細胞株としてMH134マウス由来の癌細胞株が利用される。
【0021】
本発明で利用される癌細胞株は、肝癌細胞株、胃癌細胞株、脳癌細胞株、肺癌細胞株、乳癌細胞株、卵巣癌細胞株、気管支癌細胞株、鼻咽頭癌細胞株、喉頭癌細胞株、膵臓癌細胞株、膀胱癌細胞株、結腸癌細胞株及び子宮頸部癌細胞株などを含む。最も好ましくは、同一癌細胞株である肝癌細胞株(例えば、MH134細胞株)である。
【0022】
本発明の好ましい具現例において、本発明で利用されるヒト肝癌−特異抗原を発現する癌細胞株は、肝癌細胞由来のものである。一方、マウス由来の肝癌細胞株(C57BL/6マウス、C3H/HeNマウス及びBALB/cマウス由来の肝癌細胞株)があるが、上記報告された肝癌−特異抗原の発現が確認されておらず、肝癌抗原特異的な樹状細胞由来の免疫治療剤の効果を確認できない短所があるため、本発明の方法に直接使用するには適していない。もし癌細胞株として肝癌細胞株が利用されて、癌細胞株の受容者としてC3H/HeNマウスが利用される場合は、同種同質の肝癌細胞株であるMH134を利用することが最も好ましい。
【0023】
ヒト肝癌−特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列でマウス由来の肝癌細胞株を形質転換して、本発明の癌細胞株として利用する。ヒト肝癌−特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1〜346または1-484をエンコーディングするヌクレオチド配列、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸1〜332をエンコーディングするヌクレオチド配列、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1〜326をエンコーディングするヌクレオチド配列、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)の場合、アミノ酸1〜180をエンコーディングするヌクレオチド配列、そしてMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1〜309をエンコーディングするヌクレオチド配列である。より好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合は、配列番号1の7-1044ヌクレオチドまたは配列番号2の7-1458ヌクレオチド、GPC3(GLYPICAN3)の場合は、配列番号3の7-1002ヌクレオチド、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合は、配列番号4の7-984ヌクレオチド、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合は、配列番号5の7-546ヌクレオチド、そしてMAGE 1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合は、配列番号6の7-933ヌクレオチドである。
【0024】
このようなヒト肝癌-特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、多様な方法により得られて、例えば、ヒト由来肝癌細胞株(例えば、HepG2, ZR75-1, SK-BR-3)の総RNAを分離した後、公知のヒト肝癌-特異抗原の配列を参照して製作されたプライマーを利用してcDNAを製造する。次いで前記cDNAを適した動物細胞発現用ベクター(例えば、pcDNA3.1(+))にクローニングした後、マウス肝癌細胞(例えば、MH134細胞株)に形質感染させる。形質感染された癌細胞の中、ヒト肝癌-特異抗原を発現する細胞を選別して、最終的にヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を確立する。
【0025】
上述のように、ヒト肝癌-特異抗原を発現するマウス由来の肝癌細胞株は、本発明者らが最初に構築したものである。このようなヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、発現されたヒト肝癌抗原をプロセシングして(ペプチド形態に分解されて)、組織適合抗原であるクラスI分子に乗せて細胞表面に提示(presentation)する。結局、このような癌細胞株は、ヒト肝癌抗原に特異的に反応するT細胞により認識される特性を有するようになる。
【0026】
一方、本発明で分析対象に使用される樹状細胞は、当業界に公知の多様な方法を通じて得られる。例えば、樹状細胞は、単核球、造血母細胞または骨髄細胞を利用して得られる。
【0027】
具体的な実施例として、骨髄細胞を利用して樹状細胞を得る過程は、以下のようである:まず、マウスの大腿骨と脛骨から骨髄細胞を抽出した後、骨髄細胞を樹状細胞に分化させるために、適したサイトカイン(例えば、IL-4及びGM-CSF)を含む培地で骨髄細胞を培養する。次いで、分化誘導された未成熟樹状細胞をヒト肝癌特異抗原で感作(pulsing)させて、適したサイトカインが含まれた培地で培養し、成熟樹状細胞を得て、これを分析対象として利用する。上記感作させる過程において、好ましくは、ヒト肝癌特異抗原に本発明者らが以前開発したCTP(cytoplasmic transduction peptide)が結合されたもので感作させる。CTPは、ヒト肝癌特異抗原を、核ではない細胞質に運搬するため、樹状細胞がより効果的に導入された抗原を、クラスI分子を通じて提示できるようになり、DCワクチン投与時、強力な抗原特異CTLを誘導するに非常に有利である。CTPの詳細な内容は、大韓民国登録特許第10-0608558号に開示されており、前記特許文献は、本明細書に参照として取り込まれている。
【0028】
分析対象の樹状細胞を動物に投与する方法は、当業界に公知の多様な方法を通じて行うことができるが、好ましくは、静脈内注入または皮下注入(subcutaneous injection)であり、最も好ましくは、皮下注入である。 ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を正常動物に投与する方法は、当業界に公知の多様な方法を通じて行うことができるが、好ましくは、静脈内注入または皮下注入であり、最も好ましくは、皮下注入である(Fong, L. et al., Dendritic cells injected via different routes induce immunity in cancer patients. J. Immunol. 166:4254.(2001))。
【0029】
本発明の方法の前記段階(a)で投与される樹状細胞の量は、一般的なマウスを基準に1 x 104 - 1 x 108細胞、好ましくは1 x 105 - 1 x 107細胞、より好ましくは、約1 x 106細胞である。このような樹状細胞の適した投与間隔(例えば、1週間隔)で2回以上投与することが好ましい。また、本発明の方法の前記段階(a)で投与される癌細胞株の量は、一般的なマウスを基準に1 x 104 - 1 x 108細胞、好ましくは1 x 105 - 1 x 107細胞、より好ましくは約3 x 105細胞である。
【0030】
一般的な技術常識によると、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、ヒトを除いた動物に投与されると、動物内の免疫反応を触発させて、投与された癌細胞が除去されると期待される。しかし驚くことに、本発明によると、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を人間を除いた動物に投与した場合にも、その動物内で癌組織を形成する。ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株の上述の癌組織形成能により、本発明の方法が成功的に行われる。
【0031】
本発明の方法において、段階(b)において、樹状細胞または癌細胞株の投与方法及び投与量は、上述の段階(a)の内容が適用できる。
【0032】
本発明の方法において、段階(a’)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原と、段階(b’)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原とは、同一な抗原由来のものである。例えば、段階(a’)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原がAFP(ALPHA-FETOPROTEIN)である場合、段階(b')で投与される癌細胞株は、AFPを発現する。したがって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を提示する樹状細胞により誘導された細胞毒性T細胞(cytotoxic T lymphocyte)がAFPを発現する癌細胞株を認識して癌細胞を死滅させる。
【0033】
本発明の方法において、段階(a”)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原と、段階(b”)で投与された樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原とは、同一な抗原由来のものである。例えば、段階(a”)で投与された癌細胞株から発現されるヒト肝癌-特異抗原がAFPである場合、段階(b”)で投与される樹状細胞を感作するに利用されたヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)である。したがって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を提示する樹状細胞により誘導された細胞毒性T細胞がAFPを発現する癌細胞株を認識して癌細胞を死滅させる。
【0034】
本発明の最終段階において、動物内で癌細胞の形成または成長を測定し、肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を決定する。癌細胞の形成または成長は、肉眼で観察することができて、またはキャリパスのような道具を利用して測定できる。癌細胞の追加的形成が抑制されるか成長が抑制された場合は、分析対象の樹状細胞が免疫治療剤または予防剤としての効能を有すると判断してもよい。
【0035】
樹状細胞を利用した肝癌免疫治療または免疫予防を臨床水準で施すためには、まず動物モデルにおいて樹状細胞の効能と安全性が確認されなければならないが、本発明は、このような動物モデル-基礎試験を可能にする。本発明によりスクリーニングされた樹状細胞は、肝癌免疫治療剤または免疫予防剤として確実な候補者(candidate)になりえる。
【0036】
本発明の他の様態によると、本発明は、ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)を発現するマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)を提供する。
【0037】
本発明のヒト肝癌-特異抗原発現マウス肝癌細胞株(組換えMH134)は、従来にはなかった細胞株であって、肝癌マウスモデルを構築するために本発明者らによって最初に開発されたものである。
【0038】
本発明の肝癌細胞株は、ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), MGAE1またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)をエンコーディングするヌクレオチド配列により形質転換されたものである。ヒト肝癌-特異抗原をエンコーディングするヌクレオチド配列は、天然の(natural-occurring)全長を利用することができるが、全長の一部であってもよい。好ましくは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1-346または1-484全長をエンコーディングする配列、GPC3(GLYPICAN3)の場合、アミノ酸1-332全長をエンコーディングする配列、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、アミノ酸1-326全長をエンコーディングする配列、MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、アミノ酸1-309全長をエンコーディングする配列、そしてNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、アミノ酸1-180全長をエンコーディングする配列を含むベクターにより形質転換されたものである。
【0039】
より好ましくは、本発明のヒト肝癌-特異抗原発現マウス由来肝癌細胞株は、添付の図2のpcDNA3.1(+)-Tag (pcDNA3.1(+)-36A)ベクターにヒト肝癌-特異抗原をコーディングするポリヌクレオチドを挿入したpcDNA3.1(+)-Tag/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), pcDNA3.1(+)-Tag/GPC3(GLYPICAN3), pcDNA3.1(+)-Tag/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), pcDNA3.1(+)-Tag/NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)またはpcDNA3.1(+)-Tag/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)で形質転換されたものである。
【0040】
図2のpcDNA3.1(+)-Tagベクターに挿入するヒト肝癌抗原AFP, GPC3, P53, NY-ESO-1及びMGAE1は、それぞれ配列番号1の7-1044の1038ヌクレオチド、配列番号2の7-1458の1452ヌクレオチド、配列番号3の7-1002の996ヌクレオチド、配列番号4の7-984の978ヌクレオチド、配列番号5の7-546の540ヌクレオチド及び配列番号6の7-993の927ヌクレオチド配列である。
【0041】
本発明のヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、細胞内で発現されたヒト肝癌-特異抗原をプロセシングして(ペプチド形態に分解されて)、組織適合抗原であるクラスI分子に乗せられ細胞表面にヒト肝癌-特異抗原を提示(presentation)する。結局、このような癌細胞株は、ヒト肝癌抗原に特異的に反応するT細胞により認識される特性を有するようになる。
【0042】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、上述の本発明のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株が接種されて癌が形成されており、肝癌-特異抗原で感作された(pulsing)樹状細胞を処理する場合は、癌の転移または成長が抑制される特徴を示す肝癌マウス(Mus musculus)モデルを提供する。
【0043】
本発明の肝癌マウスモデルは、ヒト肝癌-特異抗原を発現するマウス肝癌細胞株が移植されて癌が形成されており、樹状細胞の肝癌治療または予防効能が検証できる動物モデルである。このようにヒト肝癌治療または予防効能が検証できるマウスモデルは開発されたことがない。
【0044】
本発明の好ましい具現例によると、前記マウスに注入される肝癌細胞株は、マウスに対して同種同質(syngeneic)の細胞である。
【0045】
好ましくは、本発明の肝癌マウスモデルは、上述の樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防及び治療効能を分析する本発明の方法を行うに利用される。
【0046】
本発明の好ましい具現例によると、本発明のマウスモデルは、注入された癌細胞株と同種同質の特性を示すC3H/HeNマウスである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】肝癌-特異抗原、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)のPCR増幅産物を示すゲル写真である。組換え抗原蛋白質を得るために、HepG2(ヒト肝癌細胞株), ZR-75-1(ヒト乳癌細胞株), Sk-BR3からcDNAを合成して、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)をPCR増幅した。Mレーンは、マーカー; 1レーンは、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN) 1/2N (1040 bp); 2レーンは、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN) 2/3N (1454 bp); 3レーンは、GPC3(GLYPICAN3) 1/2N (998 bp); 4レーンは、P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53) 2/3N (980 bp); 5レーンは、NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1) (540 bp); 6レーンは、MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(929 bp)に該当する。
【図2】肝癌-特異抗原を発現するための組換え発現ベクターの遺伝子地図である。HepG2(ヒト肝癌細胞株), ZR-75-1(ヒト乳癌細胞株), Sk-BR3から合成されたcDNAを鋳型としてAFP, MAGE1, P53, GPC3(GLYPICAN3)及びNY-ESO-1をPCR増幅した。これらの発現のために、真核細胞用ベクター(pcDNA3.1-36A)及び原核細胞用ベクター(pCTP)にクローニングした。ベクターの遺伝子地図において、36Aは、36A Tagをコーディングする配列であり、CMV promoterは、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus)のプロモーターであり、 BGH pAは、牛成長ホルモン遺伝子のポリアデニル化配列であり、f1 oriは、f1複製起点を示し、SV40 oriは、SV40複製起点を示して、抗生剤の名称が記載されたものは、その抗生剤-耐性遺伝子を示す。 真核細胞ベクターから発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子を挿入した。Tag導入に使用したプライマーは、Tag-XhoI/s(5'-ACCCTCGAGGTCCATGACCGGAGGTCAGCAGATGGGTCGCGACCTGTACGACGA-3')及びTag-XbaI/as(5'-ACCTC TAGATTAGCTTCCCCATCTGTCCTTGTCGTCATCGTCGTACAGGTCGCG-3')であり、94℃, 30sec; 52℃, 30sec;及び72℃, 5minの総 1サイクルを行って、tag DNA断片を確保した。36A Tagのアミノ酸配列は、SMTGGQQMGRDLYDDDDKDRWGSであり、ヌクレオチド配列は、TCC ATG ACC GGA GGT CAG CAG ATG GGT CGC GAC CTG TAC GAC GAT GAC GAC AAG GAC AGA TGG GGA AGCである。36A配列の場合、MCSとBGH pAとの間に(XhoI-36A-Stop-XbaI)の形態で挿入されている。36A Tagのより詳しい内容は、大韓民国登録特許第10-0295558号に記載されている。
【図3】形質転換細胞から発現された肝癌抗原に対するウェスタンブロッティング分析結果を示す。pcDNA3.1-HA-36A/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), pcDNA3.1-HA-36A/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), pcDNA3.1-HA-36A/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びpcDNA3.1-HA-36A/GPC3(GLYPICAN3)組換えプラスミドをMH134細胞株に形質感染させて、G418で選別後、安定化された細胞株で導入された抗原発現をウェスタンブロッティングで確認した。分析抗体は、遺伝子特異的抗体をそれぞれ使用した(抗-AFP抗体、H-140 SantaCruz; 抗-MAGE1抗体, ab3211 Abcam; 抗-P53抗体, MAB1355 R&D systems; 抗-GPC3抗体, AF2199 R&D systems)
【図4】MH134細胞に導入された肝癌抗原(AFP, P53, MAGE1及びGPC3)の発現安定性を示すRT-PCR分析結果である。製作された安定化細胞株のそれぞれを、G418が添加されていない培地で培養し、20日目に1 x 106細胞を回収してウェスタンブロッティングを行った。陰性対照群(Negative Control)として、形質転換されなかったMH134を使用した。
【図5】肝癌抗原蛋白質(AFP, MAGE1, GPC3, P53及びNY-ESO-1)のSDS-PAGE分析及びウェスタンブロッティング結果を示す。pCTPベクターにそれぞれの抗原遺伝子をクローニングして、BL21-gold(DE3)で発現させた。発現されたCTP-結合組換え蛋白質を12% SDS-PAGEとウェスタンブロッティング方法により確認した。レーンMは、分子量マーカー;レーン1, 2は、CTP-AFP 1/2Nペレットと上澄み液;レーン3, 4は、CTP-AFP 2/3Nペレットと上澄み液;レーン5, 6は、CTP-GPC3 1/2Nペレットと上澄み液;レーン7, 8は、CTP-P53 2/3Nペレットと上澄み液;レーン9, 10は、CTP-NY-ESO1ペレットと上澄み液;レーン11, 12は、CTP-MAGE1ペレットと上澄み液;レーン13, 14は、CTP-MAGE3ペレットと上澄み液に対するものである。
【図6a】C3H/HeNマウスにおいて、対照群MH134細胞及びヒト肝癌特異抗原を発現する組換えMH134を投与時に誘導された固形癌の相対的成長速度を示す。C3H/HeNマウスに3 x 105の対照群MH134細胞及び組換えMH134を皮下(SC, subcutaneous)注射して、30日以後に癌の形成及び成長を観察した。組換え癌細胞株の接種後、三日間隔で癌の大きさを測定した。
【図6b】C3H/HeNマウスにおいて、対照群MH134細胞及びヒト肝癌特異抗原を発現する組換えMH134を投与時に誘導された固形癌の相対的成長速度を示す。C3H/HeNマウスに5 x 105の対照群MH134細胞及び組換えMH134を皮下注射して、30日以後に癌の形成及び成長を観察した。組換え癌細胞株の接種後、三日間隔で癌の大きさを測定した。
【図7】樹状細胞(DC, dendritic cell)ワクチン投与時、組換えMH134細胞株による腫瘍形成抑制効果を示すグラフである。腫瘍抗原に感作された樹状細胞による腫瘍予防効果を確認するために、1週間隔で1 x 106抗原感作DC/マウスの投与量で2回皮下(SC, subcutaneous)注射して、1週間後にそれぞれの安定された組換え癌細胞株を3 x 105細胞/マウスの投与量で皮下注射した。注射後、二日間隔で腫瘍大きさを測定した。
【図8】樹状細胞による癌予防モデルにおいて、生存期間をグラフで示す結果である。樹状細胞(DC)ワクチンを2回投与後、それぞれの組換え腫瘍細胞株をチャリンジングして、以後生き残ったマウス数を数値化したグラフである。50日目までの観察結果、対照群の全てのマウスが死亡した後にも、樹状細胞を注射した実験群の生存を確認することができた。
【図9】樹状細胞ワクチンの投与後、組換え腫瘍細胞株の肺転移(pulmonary metastasis)挑戦実験において、樹状細胞ワクチンの肺転移予防効果を示した写真である。CTP-AFPで感作された(pulsed)樹状細胞を1週間隔で2回投与した後、1週目に、マウス静脈に組換え肝癌細胞株(MH134/AFP)3 x 105 cellsを接種して、20日後肺を抽出して撮影した写真である。
【図10】腫瘍が形成されたマウスにおいて、腫瘍成長に対する樹状細胞ワクチンの治療効果を示す。ヒト肝癌抗原を発現するマウス癌細胞株を3 x 105 細胞/マウスで皮下に接種して、三日後、CTP-MAGE1またはCTP-AFP組換え肝癌抗原で感作した骨髄由来の樹状細胞(Bm-DC)を各マウス群の1 x 106 抗原感作DC/マウスの投与量で皮下に1週間隔で2回接種した。接種二日目から2日間隔で癌の形成及び大きさを調べて、20日目に写真を撮影した。
【図11a】図11aは、防御モデルを利用して樹状細胞ワクチンで治療したマウスにおいて、癌抗原-特異的な細胞毒性リンパ球(CTL)生成程度を示すグラフである。樹状細胞ワクチンを投与したマウスから脾臓を分離してT細胞を分離し、それぞれのCTP-抗原で処理された抗原提示細胞(APC)と5:1(T細胞:APC)で混合して5日間培養した後、それぞれの該当肝癌抗原発現組換え細胞株を標的細胞(target cell)として細胞毒性リンパ球生成程度を測定したグラフである。
【図11b】図11aにおいて、培養上澄み液からIFN-γとIL-4の発現をELISAで確認した図。
【図11c】図11aにおいて、T-細胞増殖能をMTT assayで確認した図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0049】
実施例1:ヒト由来の肝癌抗原を発現するマウス細胞株の開発
実施例1−1:ヒト由来の肝癌特異抗原発現ベクターの製作
(a)ヒト由来の肝癌特異抗原発現細胞株HepG2, ZR75-1, SK-BR-3の培養
本実験に使用されたHepG2, ZR75-1, SK-BR-3は、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(alpha feto protein1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)(Glypican3), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)などの肝癌特異的な抗原を発現するヒト由来の肝癌細胞株であって、韓国細胞株銀行から入手して実験に使用した。この肝癌細胞株は、10% FBSが添加されたRPMI-1640倍値(GIBCO/BRL)で培養/維持して、継代培養時は、trypsin-EDTAを約1分間処理して非付着性単一細胞に分離し、培養群体が約80%を超えないように1週間に2〜3回継代培養した。
【0050】
(b) HepG2からAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3) MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)、そしてSK-BR-3からNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)とMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1) cDNA PCR生成物の確保
肝癌細胞株を収穫する前に、細胞の条件を最適化するために培養群体が60%を超えないように維持して2〜3回継代後、trypsin-EDTAを処理して回収した。回収された細胞にTrizol(Gibco BRL)を処理して総RNAを抽出し、イソプロパノール沈殿及び70%エタノール洗浄過程を通じて総RNAを精製した。cDNA合成のために、10μgの総RNAを1μgのオリゴ(dT) 12-18と混合させた後、65℃で5分間変性させた後、直ぐに氷に移して、これに逆転写酵素反応緩衝液,10mM DTT, 1mM dNTP混合物及び20units RNAsinを添加して、42℃で2分間前反応した後、200unitのMmlV(Molony Murine Leukemia virus)逆転写酵素(Invitrogen社)を添加して再び42℃で60分間反応した。反応が完全に終了した後、70℃で15分間放置し、酵素を非活性化させた。このように合成されたcDNAを鋳型としてPCRを行い、ヒトAFP(ALPHA- FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1; CTAG1)に対するcDNAを確保した。使用されたPCRプライマーは、下記のようである。
【0051】
[表1a]
原核細胞用発現ベクターにクローニングするために使用されたプライマー
【0052】
[表1b]
真核細胞用発現ベクターにクローニングするために使用されたプライマー
【0053】
上記のプライマーセット(Bionics社) [表1a]及びPCR重合酵素(Solgent社)を使用して、94℃, 30sec; 62℃, 30sec;及び72℃, 50secの総25サイクルのPCRを行って、原核細胞用GPC3(GLYPICAN3)(909 bp), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)(978 bp), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)(540 bp), AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(983 bp)及びMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(927 bp)のDNA断片を確保して、プライマーセット[表1b]を使用して、真核細胞用発現ベクターにクローニングするGPC3(GLYPICAN3) (998 bp), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)(980 bp), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)(542 bp), AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)(1040 bp)及びMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)(929 bp)のDNA断片を確保した。真核細胞ベクターで発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子が挿入されたベクターを使用した。真核細胞ベクターで発現された蛋白質の確認を容易にするために、(株)クレアゼンで開発された36A Tag遺伝子を挿入した。Tag導入に使用したプライマーは、Tag-XhoI/s(5'-ACCCTCGAGGTCCATGACCGGAGGTCAGCAGATGGGTCGCGACCTGTACGACGA-3')及びTag-XbaI/as(5'-ACCTC TAGATTAGCTTCCCCATCTGTCCTTGTCGTCATCGTCGTACAGGTCGCG-3')であり、94℃, 30sec; 52℃, 30sec;及び72℃, 5minの総1サイクルを行って、tag DNA断片を確保した。36A Tagのアミノ酸配列は、SMTGGQQMGRDLYDDDDKDRWGSであり、ヌクレオチド配列は、TCC ATG ACC GGA GGT CAG CAG ATG GGT CGC GAC CTG TAC GAC GAT GAC GAC AAG GAC AGA TGG GGA AGCである。36A配列の場合、MCSとBGH pAとの間に(XhoI-36A-Stop-XbaI)の形態で挿入されている。36A Tagのより詳しい内容は、大韓民国登録特許第10-0295558号に記載されている。
【0054】
(c)肝癌抗原cDNAを発現ベクター(pCDNA3.1(+)-36A Tagベクター及びpCTPベクター)にクローニング
(株)クレアゼンで開発されたpcDNA3.1(+)-Tagベクターにそれぞれのヒト肝癌抗原遺伝子断片をKpnI/EcoRI処理し、pcDNA3.1(+)-Tagベクターにクローニングして、組換えベクターのヌクレオチド配列は、シーケンシングで確認した(参照:図2及び配列番号1乃至6)。また、原核細胞でも組換え肝癌抗原蛋白質を得るために、(株)クレアゼンで開発されたpCTP-Td vectorを使用した。pCTP-Tdベクターは、pTAT-HAベクター(Washington大学のS. Dowdy博士から入手、H. Nagahara et al., Nature Med. 4:1449(1998))を遺伝子操作して製作した。それぞれのヒト肝癌抗原遺伝子断片をKpnI/EcoRI処理して、上記製作されたpCTPベクターにクローニングした(参照:図2及び配列番号7乃至12)。
【0055】
導入遺伝子に対してDNA塩基配列分析を行って、導入されたcDNAがエンコーディングするアミノ酸配列が公知されたAFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), GPC3(GLYPICAN3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の配列と100%一致することを確認した(Blast 2配列検索)。
【0056】
原核細胞用発現ベクターに挿入された部位は、各肝癌抗原のN-末端シグナルペプチドに該当する部位とC-末端に隣接した膜透過ドメインと予想される部位が除かれた部分であって、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列20-346(327 aa)(配列番号19), GPC3(GLYPICAN3)の場合、31-331(303 aa)(配列番号21), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、1-326(326 aa)(配列番号22), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、1-180 (180 aa)(配列番号23), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、1-308(308 aa)(配列番号24)に該当する。一方、真核細胞用発現ベクターに挿入される部位は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)の場合、アミノ酸配列1-346(346 aa)(配列番号13), GPC3(GLYPICAN3)の場合、1-332 (332 aa)(配列番号15), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の場合、1-326 (326 aa)(配列番号16), NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)の場合、1-180 (180 aa)(配列番号17), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)の場合、1-309 (309 aa)(配列番号18)に該当する。
【0057】
実施例1−2:ヒト由来の肝癌抗原発現マウス細胞株の開発
(a)選別された肝癌抗原発現細胞株から抗原発現の確認
肝癌抗原発現細胞株の製作のために、pcDNA3.1(+)-Tag/肝癌抗原(AFP(ALPHA- FETOPROTEIN;配列番号1), GPC3(GLYPICAN3;配列番号3), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53;配列番号4),またはMAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1;配列番号6))ベクターをマウス肝癌細胞株MH134細胞に形質感染させた。
【0058】
哺乳動物発現ベクターである20μgのpcDNA3.1(+)-36Aにクローニングされているコンストラクトを、制限酵素(Ssp I, AFPの場合、Pvu I)を利用して37 ℃で2時間切断してベクターを線形化した。酵素で切断されたpcDNA3.1をPCR精製キットを利用して高収率条件で精製した。最終50μlに溶出させた。最終溶出されたDNA 50μlに2 x 105 cellsのMH134細胞を550μlの1 x PBSに再懸濁して混ぜて、これに2μlの2M MgCl2 (最終濃度5mM)を添加する。最終660μlのDNA + MH134細胞混合物をelectroporation cuvetteに入れて、氷中に7分間立てておいた。次いで、BIO-RAD gene pulserを使用して280V, 950μF条件でelectroporation進行して、氷で10分間インキュベーションした。electroporation cuvetteの中のDNA + MH134細胞混合物をイエローチップを利用して、10mlのRPMI1640 + 10 % FBSが入っている50mlチューブに注意して移した。マルチチャネルピペットを利用して、一つの96ウェルマイクロプレートでウェル当たり100μlずつ分けて入れた。37 ℃インキュベーターで二日間インキュベーションした後、G418(10mg/ml)を各ウェル当たり添加して、最終G418濃度が1mg/mlになるようにした。G418処理後、10日〜14日間細胞コロニーが形成されるかを観察した。コロニーが形成されたウェルを選択して6ウェルプレートに移した後、106 cells/ml以上に成長した時、再び100mmディッシュに移す。選別された細胞は、増殖過程の間に回収して、発現状態をウェスタンブロッティング方法により確認した。回収された細胞をPBSで2回洗浄した後、蛋白質試料緩衝液に浮遊させて沸かした後、遠心分離してゲノムDNAを除去し、上澄み液をSDS-PAGEで分離した。分離された蛋白質バンドをニトロセルロース膜にsemi-dry transfer blotter (Bio-Rad社)を使用して移した後、1次抗体であるTag抗原-特異単一クローン抗体を処理して、2次抗体AP(alkaline phosphatase)-接合抗-マウスIgG(Sigma)を処理した。その後、NBT/BCIPが含有されたAP反応溶液(Promega社)に移して、バンドを確認した。
【0059】
(b)細胞株の抗原発現安定性の確認
組換え細胞株をマウスに接種時、抗生剤(G418)がない条件で導入抗原発現が維持できるかを検証するために、細胞株をG418がない培地で持続的に継代しながら導入した遺伝子の発現安定性を確認した。G418がない条件でそれぞれの組換え細胞株(MH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MH134/GPC3(GLYPICAN3), MH134/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)及びMH134/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1))を培養しながら、20日後1 x 106細胞を回収して、抗原発現状態を調べた。抗原発現を確認するために、各抗原の特異性を示す部分にプライマーを製作してRT-PCRを行った。
【0060】
[表1C]
真核細胞用発現ベクター発現を確認するために使用したプライマー
ターゲット遺伝子プライマー配列
MAGE-1
SEQUENCE SIZE: 930
INCLUDED REGION SIZE: 930
PRODUCT SIZE: 238
AFP 1/2N
SEQUENCE SIZE: 900
INCLUDED REGION SIZE: 900
PRODUCT SIZE: 215
TP53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53) 2/3N
SEQUENCE SIZE: 550
INCLUDED REGION SIZE: 550
PRODUCT SIZE: 151
GPC3(GLYPICAN3) 1/2N
SEQUENCE SIZE: 871
INCLUDED REGION SIZE: 871
PRODUCT SIZE: 240
【0061】
図4から分かるように、4種類の細胞株の全部において、導入された抗原遺伝子の発現が20日まで抗原発現が持続されることを確認した。したがって、前記実施例で製作したヒト肝癌抗原-発現細胞株は、マウス肝癌モデル確立に使用可能な細胞株であることが分かる。
【0062】
実施例2:樹状細胞感作用CTP-結合組換え蛋白質の精製
実施例2−1:CTP-結合肝癌組換え抗原の発現及び精製
各肝癌抗原cDNA(参照:配列番号7乃至12)を、図2のpCTP-Tdベクターに導入し、これをE. coli BL21-gold(DE3)コンピテント細胞(Stratagene社)に、Hanahan方法を利用して形質転換させて発現菌株を確保し、この菌株をLB-アンピシリン培地で大量培養した。培養後遠心分離して、PBSで洗浄して細胞を回収した後、12% SDS-PAGEで肝癌抗原の発現状態を確認した。大量発現後、CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), CTP-MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), CTP-P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), CTP-GPC3(GLYPICAN3)及びCTP-NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)組換え蛋白質は、Ni+-NTAレジン(Qiagen)カラムで純粋分離した。確認された蛋白質は、ベクター自体の非ゲノム配列により約6kDa程度増加された大きさで確認された。即ち、CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)は、約44kDa, CTP-MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)は、約48kDa, CTP-GPC3(GLYPICAN3)は、約41kDa, CTP-P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)は、約53kDa、そしてCTP-NY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1)は、約30kDaに発現された。
【0063】
実施例3:肝癌動物モデルの構築
実施例3−1:肝癌抗原発現細胞株のマウスにおける癌形成及び成長の確認
ヒト肝癌抗原を発現するマウス細胞株がマウスに癌を形成させることができるかどうかと、形成された固形癌の成長速度を調べた。製作された細胞株を6週齢Balb/cマウス(オリエント社)の大腿部に注射した。肝癌抗原発現組換え細胞株は、10% FBSとG418 500μg/mlが含有されたRPMI培地で培養/維持した。最適の成長状態で細胞をPBSで2〜3回洗浄後、トリプシン-EDTAを処理して、単一細胞に分離し、3 x 105 細胞/100μl、5 x 105 細胞/100μlになるように生理食塩水に懸濁した。前記懸濁液100μlをマウスの右側下腹部の皮内組織に接種した。細胞株の接種後、3日間隔で固形癌の形成有無を観察した。固形癌の大きさは、キャリパスを使用して測定した。図6bから分かるように、肝癌細胞株を接種した全てのマウスから固形癌が形成されたことを確認した。また、図6aから分かるように、3 x 105 細胞だけでも癌を形成して、異種抗原に対する自己免疫反応により、生成された癌が自ら消滅されないことを確認した。癌の成長速度を観察した結果、図6bから分かるように、MH134/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)組換え細胞株を投与した場合は、他の場合に比べ、比較的遅い速度で成長したが、MH134/ MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)投与時は、正常のMH134投与時とほぼ等しい速度で成長した。このような結果は、多分P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)の発現が他の抗原に比べて比較的高く、異種抗原に対する免疫が他のものより強く誘導されたからであると推測される。上述の実験結果は、ヒトの肝癌抗原を発現するマウス細胞株が、たとえ異種抗原を発現してはいるものの、発現される異種抗原に対する体内基本免疫反応のみでは肝癌細胞株の癌形成を抑制することができないことを照明する。これにより、本発明者らが計画したマウスモデルが完成されて、樹状細胞ワクチンを利用した癌の予防及び治療効能を研究するに、これを利用することができるようになった。
【0064】
実施例4:樹状細胞の抗癌効果分析
実施例4−1:樹状細胞ワクチンによるマウス肝癌予防効果(Prevention model)
樹状細胞ワクチンによる肝癌予防可能性を調べるために、CTP-融合肝癌組換え抗原を感作させた樹状細胞をマウスに2回免疫させて、その後、肝癌特異抗原を発現する癌細胞株で挑戦試験を行って、固形癌の形成及び肺転移有無を調べた。マウス樹状細胞は、大腿骨と脛骨の両端を切断し、骨髄細胞を抽出して、50mlチューブに細胞を回収した。回収された骨髄細胞を0.83%塩化アンモニウム溶液で懸濁させて赤血球を除去し、骨髄細胞を樹状細胞生産培地(RPMI-1640, 10 % FBS, 10 ng/mlのマウス組換えIL-4と10ng/mlのマウスGM-CSF)で2日間培養しながら非吸着性細胞を除去して、容器の底に付着された細胞のみを取った。2〜3日間隔で新鮮な培地に入れ替えて、サイトカインの枯渇を防止した。培養6日目に未成熟樹状細胞を回収して、これに組換え抗原であるCTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を処理した。各抗原蛋白質を50μg/mlずつ20時間処理して、未成熟樹状細胞を感作して、24時間後から樹状細胞の成熟化に必要なサイトカイン(100μg/ml IFN-γと100μg/ml TNF-α)を添加して、樹状細胞の成熟化を誘導した。抗原で感作された樹状細胞1 x 106細胞をマウス皮下に注射して、抗癌免疫を誘導した。
【0065】
樹状細胞免疫は、1週間隔で2回接種して、2次樹状細胞接種の1週間後にCTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)が感作された樹状細胞で免疫したマウス実験群にはMH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を各3 x 105細胞/マウスで皮下(SC, subcutaneous)注射した。癌の大きさ(横 x縦)は、3日毎に測定した。測定結果、図7のように、CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)抗原を感作させた樹状細胞で免疫したマウス群で癌の形成が著しく遅延されることを観察することができた。
【0066】
一方、樹状細胞による癌予防モデルにおいて生存期間をグラフで示すと、図8のようである。CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を感作させた樹状細胞を注射した実験群の場合、MH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)株を投与後、癌形成が遅延される効果を示して、48日以後まで全て生存することを確認した。その反面、PBS対照群の場合、25日目から死亡し始め、42日目に6匹が全部死亡したことを確認して、また、抗原を感作させなかった樹状細胞のみを注射した対照群では、やはり42日目から死亡し始め、45日目に全て死亡したことを確認することができた。したがって、肝癌特異抗原を感作させた樹状細胞による癌予防モデルの場合、癌形成の遅延だけではなく、寿命延長にもその効果を示すことを確認することができた。
【0067】
実施例4−2:樹状細胞ワクチンによるマウス肝癌転移抑制効果(Prevention model)
上記の同様な方法により樹状細胞ワクチンをマウスに2回投与して免疫を誘導し、1週間後にそれぞれの組換え肝癌抗原発現細胞株をマウス当たり3 x 105細胞になるように調整して、各マウスに静脈注射した。MH134マウス肝癌細胞株の場合、自発的転移(spontaneous metastasis)が起こる細胞株である。そして、20日後、マウスを安楽死させて、肺転移程度を観察した。図9から観察できるように、AFPヒト肝癌抗原を感作させた樹状細胞で免疫した群では、肺転移が全く現れない反面、抗原を感作しなかった樹状細胞やPBSのみを投与した対照群では、両方とも強い癌の肺転移現象が現れた。これは、樹状細胞ワクチンにより強力な癌抗原特異的な免疫が誘導されて、癌の生成及び転移を抑制したことを示唆する。
【0068】
実施例4−3:CTP-肝癌抗原で感作された樹状細胞ワクチンによるマウスモデルにおける肝癌治療効果(Regression model)
肝癌抗原AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)を発現する組換え細胞株を3 x 105細胞/マウスで各マウス実験群に皮下注射して、3日後にCTP-結合抗原(CTP-MAGE1及びCTP-AFP)で感作された樹状細胞(DC)をマウス当たり1 x 106細胞になるように調節して、皮下に1週間隔で2回注射した。2次樹状細胞の投与後、2日間隔で約一ヶ月間固形癌の形成及び成長を観察した。図10から分かるように、MH134/MAGE1及びMH134/AFP細胞株からなるマウス肝癌モデルの両方から癌成長抑制効果が観察された。
【0069】
実施例4−4:樹状細胞ワクチンの投与により誘導された抗原特異的なCTL確認
前記肺転移モデルで実験されたマウスの脾臓を取って、T細胞増殖分析とCTL分析を行った。それぞれのマウスを頚椎脱臼法で安楽死させて、脾臓を採取した。分離された脾臓が乾燥されないようにRPMIに保管した。それぞれの脾臓を取って、70μm網を通過させて浮遊組織を除去し、1回遠心分離して細胞を収穫した後、0.83%塩化アンモニウム溶液で懸濁し、赤血球を除去した。準備された脾臓細胞は、ナイロンウールカラムを通過させてTリンパ球のみを分離して、効能細胞(effector cell)刺激のために用意されたAPC(antigen presenting cells)と5:1比率で混合し、5日間培養した。APCは、実験日の2日前に準備した。正常マウスの脾臓を取って赤血球を除去し、3μg/mlのCon-Aで24時間刺激した。刺激後、1回洗浄した後、それぞれの抗原蛋白質CTP-AFP(ALPHA- FETOPROTEIN)を50μg/mlで処理し、24時間培養した。培養時の細胞濃度は、1 x 106細胞/マウスを維持した。24時間培養後、Mitomycin Cを40分間処理して、処理後3回洗浄してAPCを準備した。
【0070】
効能T細胞(effector T cell)とAPCの培養の5日間の3日目に一部を取って、T cell proliferation assay (MTT assay)を行った。培養4日目に上澄み液を取って、各上澄み液に存在するIL-4とIFN-γの量を確認した。R&D systems kitを使用して、方法は、製作者の方法に従った。MH134細胞の場合は、懸濁細胞(suspension cell)であるため、CFSE staining方法を利用して特異的ライシス(specific lysis)を確認した。非ターゲット(non target)群としてMH134を、ターゲット群としては、抗原を発現する安定化された細胞株を使用した。まず、非ターゲット細胞株とターゲット細胞株とを区分するために、細胞を洗浄後、CFSEを利用して染色した(Target : add 15ul of 1mM CFSE (CFSE high) vs Non target cell : add 10ul of 0.1mM CFSE (CFSE low))。染色された二種の細胞株を同一比率で混ぜた後、Histopaque(Sigma)を利用して死んだ細胞を除去して効能T細胞を分離し、 ターゲット細胞とE:T ratioが1:1, 10:1及び20:1になるように混合して6時間培養した。その後、FACS分析を通じて生きている細胞の数を定めた。
【0071】
【0072】
その後、式
Percent of specific lysis
= (1 - the ratio of target cells only / the ratio of target + effector cells) * 100
を利用して計算した。
【0073】
図11のCTL結果から分かるように、3種のマウス肝癌モデルの全部において、CTLが効果的に誘導された。これは、CTP-AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)で感作されたマウス骨髄由来の樹状細胞ワクチンの投与により、それぞれのヒト肝癌抗原に特異的なCTLが効果的に誘導されて、これにより治療及び予防に抗癌効果が示されたことを示す結果である。
【0074】
以上詳述したように、本発明は、ヒト肝癌動物モデルを利用した肝癌免疫治療剤または予防剤としての樹状細胞の効能を分析する方法を提供する。樹状細胞を利用した肝癌免疫治療または免疫予防を臨床水準で施すためには、まず動物モデルにおいて樹状細胞の効能と安全性が確認されなければならないが、本発明は、このような動物モデル-基礎試験を可能にする。本発明により効能が検証された樹状細胞ワクチン(DCワクチン)は、肝癌免疫治療剤または免疫予防剤として確実な候補者(candidate)になりえる。
【0075】
以上、本発明の特定の部分を詳細に記述したが、当業界の通常の知識を有する者にとっては、このような具体的な記述はただ望ましい具現例に過ぎなく、これに本発明の範囲が限定されないことは明らかである。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物により定義されると言える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階と、
(b)前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階と、
(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の治療効能を決定する段階と、
を含む、ヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌治療効能を分析する方法。
【請求項2】
(a)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階と、
(b)前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階と、
(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の治療効能を決定する段階と、
を含む、ヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防効能を分析する方法。
【請求項3】
前記動物は、げっ歯類動物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記げっ歯類動物は、マウス(Mus musculus)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1))であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌細胞株は、マウス(Mus musculus)由来のものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞株は、前記動物に対して同種同質(syngeneic)の細胞であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)または段階(b)において、癌細胞株の投与は、皮下注入(subcutaneous injection)方法により行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記段階(a)または段階(b)において、樹状細胞の投与は、皮下注入(subcutaneous injection)方法により行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、肝癌細胞株由来であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)またはP53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)を発現して、マウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項13】
前記細胞株は、配列番号13、配列番号15、配列番号16または配列番号18のアミノ酸配列をエンコーディングするヌクレオチド配列を含むベクターにより形質転換されたことを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項14】
前記細胞株は、配列番号1のヌクレオチド7-1044、配列番号3のヌクレオチド7-1002、配列番号4のヌクレオチド7-984、または配列番号6のヌクレオチド7-933を含むベクターにより形質転換されたことを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項15】
前記細胞株は、pcDNA3.1(+)-Tag/AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), pcDNA3.1(+)-Tag/GPC3(GLYPICAN3), pcDNA3.1(+)-Tag/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)またはpcDNA3.1(+)-Tag/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A, 1)により形質転換されたことを特徴とする、請求項14に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項16】
前記細胞株は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)抗原を発現するMH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)であることを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項17】
請求項12に記載のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株が接種されて癌が形成されており、肝癌-特異抗原で感作された樹状細胞を処理する場合は、癌の転移または成長が抑制される特徴を示す肝癌マウス(Mus musculus)モデル。
【請求項18】
前記肝癌細胞株は、前記マウスに対して同種同質(syngeneic)の細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の肝癌マウスモデル。
【請求項19】
前記肝癌マウスモデルは、請求項1または2に記載の方法を行うことに利用されることを特徴とする、請求項18に記載の肝癌マウスモデル。
【請求項1】
(a)ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を、ヒトを除いた正常動物に投与して癌を誘発させる段階と、
(b)前記癌が誘発された動物に分析対象の樹状細胞を投与する段階と、
(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の治療効能を決定する段階と、
を含む、ヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌治療効能を分析する方法。
【請求項2】
(a)分析対象の樹状細胞を、ヒトを除いた正常動物に投与する段階と、
(b)前記動物に、ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株を投与する段階と、
(c)前記動物から癌細胞の形成または成長を測定し、樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の治療効能を決定する段階と、
を含む、ヒト肝癌動物モデルを利用した樹状細胞由来の肝癌免疫治療剤の肝癌予防効能を分析する方法。
【請求項3】
前記動物は、げっ歯類動物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記げっ歯類動物は、マウス(Mus musculus)であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1), P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53), GPC3(GLYPICAN3)またはNY-ESO-1(NEW YORK ESOPHAGEAL SQUAMOUS CELL CARCINOMA 1 OR CANER/TESTIS ANTIGEN1 ; CTAG1))であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記ヒト肝癌-特異抗原は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記癌細胞株は、マウス(Mus musculus)由来のものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記癌細胞株は、前記動物に対して同種同質(syngeneic)の細胞であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記段階(a)または段階(b)において、癌細胞株の投与は、皮下注入(subcutaneous injection)方法により行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記段階(a)または段階(b)において、樹状細胞の投与は、皮下注入(subcutaneous injection)方法により行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒト肝癌-特異抗原を発現する癌細胞株は、肝癌細胞株由来であることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
ヒト肝癌-特異抗原の中、AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), GPC3(GLYPICAN3), MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A,1)またはP53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)を発現して、マウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項13】
前記細胞株は、配列番号13、配列番号15、配列番号16または配列番号18のアミノ酸配列をエンコーディングするヌクレオチド配列を含むベクターにより形質転換されたことを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項14】
前記細胞株は、配列番号1のヌクレオチド7-1044、配列番号3のヌクレオチド7-1002、配列番号4のヌクレオチド7-984、または配列番号6のヌクレオチド7-933を含むベクターにより形質転換されたことを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項15】
前記細胞株は、pcDNA3.1(+)-Tag/AFP(ALPHA- FETOPROTEIN), pcDNA3.1(+)-Tag/GPC3(GLYPICAN3), pcDNA3.1(+)-Tag/P53(TRANSFORMATION RELATED PROTEIN 53)またはpcDNA3.1(+)-Tag/MAGE1(MELANOMA ANTIGEN FAMILY A, 1)により形質転換されたことを特徴とする、請求項14に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項16】
前記細胞株は、AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)抗原を発現するMH134/AFP(ALPHA-FETOPROTEIN)であることを特徴とする、請求項12に記載のマウス(Mus musculus)由来のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株(組換えMH134細胞株)。
【請求項17】
請求項12に記載のヒト肝癌-特異抗原発現肝癌細胞株が接種されて癌が形成されており、肝癌-特異抗原で感作された樹状細胞を処理する場合は、癌の転移または成長が抑制される特徴を示す肝癌マウス(Mus musculus)モデル。
【請求項18】
前記肝癌細胞株は、前記マウスに対して同種同質(syngeneic)の細胞であることを特徴とする、請求項17に記載の肝癌マウスモデル。
【請求項19】
前記肝癌マウスモデルは、請求項1または2に記載の方法を行うことに利用されることを特徴とする、請求項18に記載の肝癌マウスモデル。
【図6a】
【図6b】
【図8】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【図6b】
【図8】
【図11a】
【図11b】
【図11c】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−527234(P2010−527234A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506034(P2010−506034)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001420
【国際公開番号】WO2008/143400
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509299282)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際出願番号】PCT/KR2008/001420
【国際公開番号】WO2008/143400
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(509299282)
【Fターム(参考)】
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