説明

ヒトBRCA1遺伝子のコード配列

【課題】染色体17のBRCA1領域における1以上の突然変異を突き止め、高い危険性のある女性を早期に検出することによって、乳房および卵巣の癌の高い発生率および死亡率を低下し得る有望な手段を提供する。
【解決手段】BRCA1遺伝子の3種コード配列、BRCA1(omi1)、BRCA1(omi2)、BRCA1(omi3)およびその発生頻度が、そのコードするタンパク質と共に提供される。また、遺伝子についての共通配列を決定する方法および、乳房および卵巣癌に対する増大した遺伝子感受性を有する個体を同定する。これらの個体はBRCA1遺伝子における原因的突然変異を承継している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の領域
本発明は、遺伝子に突然変異がみられる乳房および卵巣の癌に関連する遺伝子に関する。特に、本発明は、ヒトから分離されたBRCA1の3種のコード配列、BRCA1(omi1)、BRCA1(omi2)およびBRCA1(omi3)に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
乳癌の5−10%が遺伝性のものであると考えられている。Rowell,S., et al., American Journal of Human Genetics 55:861-865(1994)。染色体17に位置するBRCA1は、乳房および卵巣の癌の危険性を増大するとして同定された最初の遺伝子である。Miki et al., Science 266:66-71(1994)。この“腫瘍抑圧”遺伝子は、遺伝性乳癌の約45%、および乳房および卵巣の癌の早期発現の危険性が増加している家系の80−90%の原因となっていると考えられている。Easton et al., American Journal of Human Genetics 52:678-701(1993)。
【0003】
染色体17のBRCA1領域における1以上の突然変異を突き止めることは、高い危険性のある女性を早期に検出することによって、乳房および卵巣の癌の高い発生率および死亡率を低下し得る有望な手段を提供する。このような女性は、一度認定されると、さらに高度な予防方法の対象とすることができる。スクリーニングは、核型認定、プローブ結合、DNA配列決定を含む種々の方法によって実施される。
【0004】
DNA配列決定技術において、ゲノムDNAは全血から抽出され、そしてBRCA1遺伝子のコード配列が増幅される。コード配列は完全に配列決定されて、その結果が遺伝子のDNA配列と比較される。別法として、サンプル遺伝子のコード配列は、遺伝子を完全に配列決定して、それを遺伝子の正常配列と比較する前に、既知の突然変異パネルと比較することができる。
【0005】
BRCA1コード配列において突然変異がみつかったら、その個人に対して遺伝子の増大した発現を遺伝子転移治療によって提供することが可能であろう。BRCA1コード配列の癌細胞への遺伝子転移が癌細胞の生長を阻害し、ヌードマウスにおけるヒト癌細胞の腫瘍発生を低下することが示されている。Jeffrey Holtおよびその協力者は、BRCA1発現の産生物が分泌腫瘍生長阻害剤であり、BRCA1が遺伝子治療研究のための理想的な遺伝子であると結論している。腫瘍細胞の低い%の形質導入でもすべての腫瘍細胞を阻害するのに充分な生長阻害剤を明らかに産生する。Arteaga, CL, and JT Holt Cancer Research 56:1098-1103(1996), Holt, JT et al.,Nature Genetics 12:298-302(1996) 。
Holtらの研究によると、BRCA1生長阻害剤は、腫瘍抑圧のために腫瘍部位に生長阻害剤を注入使用するのを可能にする分泌タンパク質である。
【0006】
BRCA1遺伝子は24の別個のエキソンに分類される。エキソン1および4は非暗号であって、最終機能的BRCA1タンパク質産生物の部分ではない。BRCA1コード配列は大略5600塩基対(bp)に及ぶ。各エキソンは200−400bpからなるが、エキソン11のみが約3600bpである。BRCA1遺伝子のコード配列を決定するために、各エキソンは別個に増幅されて、得たPCR産生物が正および逆方向に配列される。エキソン11がこのように大きいので、我々は、これを各々約350bpの12個の重複するPCRフラグメントに分断した(BRCA1エキソン11のセグメントAからL)。
【0007】
多くの突然変異および多形性がBRCA1遺伝子について既に報告されている。乳癌感受性遺伝子における変化の検出および特性化を容易にするために、世界的な情報網がつくられている。このようなBRCA1の突然変異は、http://www.nchgr.nih.gov/dir/lab transfer/bic.の乳癌情報機関を通じて情報を得ることができる。この情報機関は1995年11月1日に一般に利用可能となった。Friend, S. et al., Nature Genetics 11:238,(1995)。
【0008】
乳房/卵巣癌症候の遺伝は、低い浸透度の常染色体優性である。この意味を簡単に言うと、この症候は家系を通じて生じ、男女共に関与し(女性のみ発病し、男性は通過する)、すべての世代が乳房/卵巣または両者の疾患に、時々同じ個人がかかることがあり、時には、この遺伝子のある女性が発病する時間を得ないままに若くして死亡するか(子孫は遺伝子を持って)、あるいは乳房または卵巣癌になることなしに老齢で死亡する(後者の人々を、癌が発病することがないので、低い浸透度を有すると言う)。いかなる研究よりも前に血統的解析および遺伝学的検討が、適当な家系対策に絶対的に必須である。
【0009】
現在のところ、BRCA1遺伝子の唯一のコード配列が患者サンプルと比較するのに使用可能である。この配列は、遺伝子銀行口座番号U14680で利用できる。従って、多くの人々に見いだされるBRCA1コード配列である“共通コード配列”BRCA1(omi1)配列番号1が利用されることに技術的必要性がある。共通コード配列は、真の突然変異を容易に同定し、または多形性と識別するのを可能にする。BRCA1遺伝子およびタンパク質の突然変異の同定は、遺伝性の乳房および卵巣癌を診断的にスクリーニングするのを現在可能な以上に広くできるようになすであろう。2つの追加のコード配列が単離されて、特徴が明らかにされた。BRCA1(omi2)配列番号5およびBRCA1(omi3)配列番号3コード配列は、診断、遺伝子治療および治療的BRCA1タンパク質の製造に有用性がある。
【0010】
ヒト遺伝子プールにおいて最も普通に生じるBRCA1遺伝子のコード配列が提供される。最も普通に生じるコード配列は、ヒトで見いだされる最もあり得る配列をより正確に反映している。以前に公表されているBRCA1配列よりもコード配列、BRCA1(omi1)配列番号1の使用は、病的な“突然変異”(すなわち、個体に疾患を起こす、または個体に疾患が生じる高い危険性をもたらす)を有する個体群にみられる“配列変異”(すなわち多形性)の読み誤りやすさを減少せしめる。乳癌の素質試験において、読み誤りは特に問題である。すでに乳癌になっている者は、“私の病気は遺伝性の突然変異によるものですか”との医学的質問をする。乳癌の患者の家族は、“私は家族が有する突然変異の素質があるのですか、そうなら、私の危険性が増加しているなら、私ももっと高度の検査プログラムを受けねばならないのでしょうか”と尋ねる。
【発明の概要】
【0011】
本発明の要約
本発明は、ヒトに見いだされるBRCA1遺伝子の3種のコード配列を単離することに基づいている。
本発明の目的は、BRCA1遺伝子の最も普通に生じるコード配列を提供することである。
本発明の別の目的は、BRCA1遺伝子の2種の他のコード配列を提供することである。
【0012】
本発明の別の目的は、BRCA1遺伝子の3種のコード配列によってコードされる3種のタンパク質配列を提供することである。
本発明の他の目的は、BRCA1遺伝子上の7多形性ポイントの各々で生じるコドン対のリストを提供することである。
本発明の他の目的は、コドンについての発生比率を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、BRCA1またはその部分が1以上のオリゴヌクレオチドプライマーで増幅される方法を提供することである。
本発明の他の目的は、BRCA1コード配列の突然変異がなく、従って、BRCA1遺伝子に基づく乳房または卵巣の癌に対する遺伝子感受性が増加していない者を同定する方法を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、乳房または卵巣の癌に対する遺伝子感受性を増大せしめる突然変異を同定する方法を提供することである。
BRCA1遺伝子の配列およびBRCA1のタンパク質配列、さらに配列上の多形性ポイントに生じるコドンの正確なリストについて技術上の必要性がある。
【0015】
遺伝子感受性試験における当業者は、本発明が下記の事項に有用であることが分かるであろう。
a)突然変異をコードしないBRCA1遺伝子を有する個体、従ってBRCA1遺伝子からの乳房または卵巣癌の増大した遺伝子感受性を有するとは言えない個体を同定すること。
b)BRCA1遺伝子にみられる多形性の読み誤りを回避すること。
c)BRCA1遺伝子に今まで知られていない突然変異の存在を認定すること。
d)乳房および卵巣癌に対する遺伝子感受性を増大せしめる突然変異を同定すること。
e)BRCA1遺伝子のヒトのサンプルをプローブすること。
f)遺伝子療法を行うこと。
g)BRCA1omi遺伝子の1つでコードされた機能的腫瘍生長阻害タンパク質をつくるために用いること。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1に示すように、染色体に沿った多形性(変異をおこす非−突然変異)部位における選択対立遺伝子は、BRCA1などの遺伝子内の“半数型”として表される。BRCA1(omi1)半数型は図1で灰色で示される(ヌクレオチド部位2201、2430、2731、3232、3667、4427および4956にみられる選択対立遺伝子を含む)。比較のために、遺伝子銀行での半数型は白色のままである。図から分かるように、普通の“共通”半数型は、OMIシンボルでラベルされた5単離染色体において無傷である(左から右へ番号1−5)。2種の半数型(BRCA1(omi2)およびBRCA1(omi3))は、灰色と白色が混在している(左から右へ番号7および9)。全体として、BRCA1遺伝子に沿った10半数体のうち7が独特である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
定義
下記の定義は本発明を理解する目的で提供される。
“乳房および卵巣癌”は、女性における乳房および卵巣癌、および男性における乳房および前立腺癌を含むと当業者に理解される。BRCA1は、女性における遺伝性の乳房および卵巣癌、および男性における遺伝性の乳房および前立腺癌に対する遺伝子感受性に関連している。従って、乳房および卵巣癌と記載されたものは、男性および女性における乳房、卵巣および前立腺癌を意味する。
【0018】
“コード配列”または“DNAコード配列”は、一緒になってペプチド(タンパク質)をコードする、または核酸自体が機能する遺伝子の部分を意味する。
“タンパク質”または“ペプチド”は、機能する配列アミノ酸を意味する。
【0019】
“BRCA1(omi)”とは、総合的に“BRCA1(omi1)”、“BRCA1(omi2)”および“BRCA1(omi3)”コード配列を意味する。
“BRCA1(omi1)は、配列番号1、BRCA1遺伝子のコード配列を意味する。コード配列は、乳房および卵巣癌の家族歴のない白人母集団から無作為に抽出した個体よりのBRCA1対立遺伝子を端から端まで配列決定することにより見出された。配列決定された遺伝子は、いかなる突然変異も含まない。BRCA1(omi1)は、配列決定されたサンプル対立遺伝子にコード配列が生じる頻度を測定することにより共通配列であることが決定された。
【0020】
“BRCA1(omi2)”および“BRCA1(omi3)”は、夫々配列番号5および配列番号3を意味する。これらは、乳房および卵巣癌の家族歴のない白人母集団から無作為に抽出した個体より分離したBRCA1遺伝子の2種の追加のコード配列である。
【0021】
ここで用いられる“プライマー”は、BRCA1遺伝子の約20以上のヌクレオチドを含む配列を意味する。
“遺伝子感受性”は、BRCA1遺伝子における突然変異の存在による乳房または卵巣の癌に対する感受性を意味する。
【0022】
“標的ポリヌクレオチド”は、興味ある核酸配列、例えばBRCA1をコードするポリヌクレオチドを意味する。プライマー・ハイブリダイゼイションに用い得る他のプライマーは、当業者に知られるか、または容易に確認されるであろう。 “共通”は、母集団で最も普通に生じるのを意味する。“共通ゲノム配列”は、標的遺伝子に関連する疾患の家族歴のない個体の集団において、最も頻繁に生じる標的遺伝子の対立遺伝子を意味する。
【0023】
“実質的に相補性”は、対立遺伝子特異オリゴヌクレオチド・プローブまたはプライマーがそれらと相補的であるBRCA1配列とハイブリダイズするように、ストリンジェントな条件で提供される配列および/またはBRCA1配列との充分な相同性を有する配列とハイブリダイズするプローブまたはプライマー配列を意味する。
“半数型”は、染色体上の遺伝子内の対立遺伝子の1系統を意味する。
【0024】
“単離された”は、他の核酸、タンパク質、炭水化物および結合し得る他の物質を実質的に含まないことを意味する。かかる結合は、細胞性材料および合成培地のいずれでも典型的である。
【0025】
“突然変異”は、DNA配列における塩基の変化、または塩基対の獲得または喪失を意味し、非機能性のタンパク質または実質的に低下あるいは変化した機能のタンパク質をコードするDNA配列をもたらす。
【0026】
“多形性”は、既知の病理と関連しない塩基変化を意味する。
“腫瘍生長阻害タンパク質”は、BRCA1によりコードされたタンパク質を意味する。機能性タンパク質は乳房および卵巣腫瘍の生長を抑制すると考えられる。
【0027】
本発明は、いくつかの実施態様において下記の事項を含む。
1.配列番号1に規定されたBRCA1コード配列の単離された共通DNA配列。
2.配列番号2に規定されたBRCA1タンパク質の共通タンパク質配列。
3.配列番号3に規定されたBRCA1遺伝子の単離されたコード配列。
4.配列番号4に規定されたBRCA1タンパク質のタンパク質配列。
5.配列番号5に規定されたBRCA1遺伝子の単離されたコード配列。
6.配列番号6に規定されたBRCA1タンパク質のタンパク質配列。
7.2201位に夫々約35−45%および約55−65%の頻度で生じるAGCおよびAGTコドンの選択対を含む、乳房または卵巣癌に関連しないBRCA1コード配列を有するBRCA1遺伝子。
8.AGCが約40%の頻度で生じる、請求項7のBRCA1遺伝子。
【0028】
9.乳房または卵巣癌に関連しないBRCA1コード配列を有するBRCA1遺伝子の多形性位置で生じ、コドン対が下記からなる群より選択される、少なくとも2の選択コドン対の組。
・2201位のAGCおよびAGT
・2430位のTTGおよびCTG
・2731位のCCGおよびCTG
・3232位のGAAおよびGGA
・3667位のAAAおよびAGA
・4427位のTCTおよびTCC
・4956位のAGTおよびGGT
【0029】
10.コドン対が疾患のない個体の母集団より夫々次の頻度で生じる、請求項9の少なくとも2の選択コドン対の組。
・2201位でAGCおよびAGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2430位でTTGおよびCTGは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2731位でCCGおよびCTGは夫々約25−35%から、および約65−75%からの頻度で生じる
・3232位でGAAおよびGGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・3667位でAAAおよびAGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・4427位でTCTおよびTCCは夫々約45−55%から、および約45−55%からの頻度で生じる
・4956位でAGTおよびGGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
【0030】
11.少なくとも3のコドン対である、請求項10の組。
12.少なくとも4のコドン対である、請求項10の組。
13.少なくとも5のコドン対である、請求項10の組。
14.少なくとも6のコドン対である、請求項10の組。
15.少なくとも7のコドン対である、請求項10の組。
【0031】
16.下記を含む、疾患に関連しないBRCA1コード配列のBRCA1遺伝子を有する個体を同定する方法。
(a)遺伝子内配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを用いて個体のBRCA1コード配列のDNAフラグメントを増幅する
(b)該増幅DNAフラグメントをジデオキシ配列決定により配列決定する
(c)該個体のBRCA1コード配列が完全に配列決定されるまで工程(a)および(b)をくりかえす
(d)該増幅DNAフラグメントの配列をBRCA1(omi)DNA配列、配列番号1、配列番号3または配列番号5と比較する
(e)該個体のBRCA1コード配列における下記の多形性変異の各々の存在または不存在を決定する
・2201位のAGCおよびAGT
・2430位のTTGおよびCTG
・2731位のCCGおよびCTG
・3232位のGAAおよびGGA
・3667位のAAAおよびAGA
・4427位のTCTおよびTCC
・4956位のAGTおよびGGT
(f)該個体のBRCA1コード配列と配列番号1、配列番号3または配列番号5とのすべての配列相違を決定し、その相違において、該多形性の存在および2201、2430、2731、3232、3667、4427および4956位以外の変異の不存在は、BRCA1コード配列におけるBRCA1突然変異による乳房または卵巣癌に対する増大した遺伝子感受性の不存在と相関する
【0032】
17.コドン変異が疾患のない個体の母集団において次の頻度で夫々生じる、請求項16の方法。
・2201位でAGCおよびAGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2430位でTTGおよびCTGは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2731位でCCGおよびCTGは夫々約25−35%から、および約65−75%からの頻度で生じる
・3232位でGAAおよびGGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・3667位でAAAおよびAGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・4427位でTCTおよびTCCは夫々約45−55%から、および約45−55%からの頻度で生じる
・4956位でAGTおよびGGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
【0033】
18.該オリゴヌクレオチドプライマーが放射ラベル、蛍光ラベル、生物発光ラベル、化学発光ラベルまたは酵素ラベルでラベルされている、請求項16の方法。
【0034】
19.下記を含む、BRCA1コード配列の変異の存在による個体の乳房および卵巣癌に対する増大した遺伝子感受性を検出する方法。
(a)遺伝子内配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを用いて個体のBRCA1コード配列のDNAフラグメントを増幅する
(b)該増幅DNAフラグメントをジデオキシ配列決定により配列決定する
(c)該個体のBRCA1コード配列が完全に配列決定されるまで工程(a)および(b)をくりかえす
(d)該増幅DNAフラグメントの配列をBRCA1(omi)DNA配列、配列番号1、配列番号3および配列番号5と比較する
(e)該個体のBRCA1コード配列と配列番号1、配列番号3または配列番号5との何らかの配列相違を測定し、該個体のBRCA1コード配列における、下記のいずれでもない塩基変化の存在または不存在を決定する
・2201位のAGCおよびAGT
・2731位のCCGおよびCTG
・3232位のGAAおよびGGA
・3667位のAAAおよびAGA
・4427位のTCTおよびTCC
・4956位のAGTおよびGGTは、BRCA1コード配列におけるBRCA1突然変異による乳房または卵巣癌に対する増大した遺伝子感受性の強さと相関する
【0035】
20.コドン変異が疾患のない個体の母集団において次の頻度で夫々生じる、請求項19の方法。
・2201位でAGCおよびAGTは夫々約40%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2430位でTTGおよびCTGは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2731位でCCGおよびCTGは夫々約25−35%から、および約65−75%からの頻度で生じる
・3232位でGAAおよびGGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・3667位でAAAおよびAGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・4427位でTCTおよびTCCは夫々約45−55%から、および約45−55%からの頻度で生じる
・4956位でAGTおよびGGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
【0036】
21.該オリゴヌクレオチドプライマーが放射ラベル、蛍光ラベル、生物発光ラベル、化学発光ラベルまたは酵素ラベルでラベルされている、請求項19の方法。
【0037】
22.請求項1のBRCA1コード配列を有するBRCA1遺伝子における多形性位置で生じ、コドン対が下記の通りである、コドン対の組。
・2201位のAGCおよびAGT
・2430位のTTGおよびCTG
・2731位のCCGおよびCTG
・3232位のGAAおよびGGA
・3667位のAAAおよびAGA
・4427位のTCTおよびTCC
・4956位のAGTおよびGGT
【0038】
23.少なくとも2選択コドン対の組が下記の頻度で生じる、請求項22の少なくとも2選択コドン対の組。
・2201位でAGCおよびAGTは夫々約40%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2430位でTTGおよびCTGは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2731位でCCGおよびCTGは夫々約25−35%から、および約65−75%からの頻度で生じる
・3232位でGAAおよびGGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・3667位でAAAおよびAGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・4427位でTCTおよびTCCは夫々約45−55%から、および約45−55%からの頻度で生じる
・4956位でAGTおよびGGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
【0039】
24.コドン対が下記の頻度で生じる、請求項1のBRCA1コード配列。
・2201位でAGCおよびAGTは夫々約40%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2430位でTTGおよびCTGは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・2731位でCCGおよびCTGは夫々約25−35%から、および約65−75%からの頻度で生じる
・3232位でGAAおよびGGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・3667位でAAAおよびAGAは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
・4427位でTCTおよびTCCは夫々約45−55%から、および約45−55%からの頻度で生じる
・4956位でAGTおよびGGTは夫々約35−45%から、および約55−65%からの頻度で生じる
【0040】
25.下記を含み、標的遺伝子についての共通ゲノム配列または共通コード配列を測定する方法。
a)標的遺伝子についての正常な対立遺伝子の承継を示す家族歴のために母集団から一定数の個体をスクリーニングする
b)標的遺伝子についての正常な対立遺伝子の承継を示す家族歴を有する個体から少なくとも1つの標的遺伝子の対立遺伝子を単離する
c)各対立遺伝子を配列決定する
d)ゲノム配列または標的遺伝子の各対立遺伝子のコード配列の核酸配列を比較して、核酸配列における同一および相違を決定する
e)どの標的遺伝子の対立遺伝子が最も大きい頻度で生じるかを決定する
【0041】
26.下記を含む、遺伝子治療を行う方法。
a)配列番号1、配列番号3または配列番号5のBRCA1コード配列で形質転換したベクターの効果量でインビボで癌細胞をトランスフェクトし、
b)細胞にベクターを取り込みさせ、
c)腫瘍生長の低下を測定する。
【0042】
27.下記を含む、タンパク質治療を行う方法。
a)配列番号2、配列番号4または配列番号6のBRCA1腫瘍生長阻害タンパク質の効果量を患者に注射し、
b)細胞にタンパク質を取り込みさせ、
c)腫瘍生長の低下を測定する
【0043】
配列決定
すべての核酸標本は、精製形態であろうと非精製形態であろうと、多形性座を含む特殊な核酸配列を含有するか、または含有するかも知れない限り、出発の核酸として用いることができる。メッセンジャーRNAを含むDNAまたはRNAは増幅し得る。DNAまたはRNAは一重鎖あるいは二重鎖であり得る。RNAが鋳型として用いられる場合は、鋳型をDNAへ逆転写するための酵素および/または適当な条件が用いられるであろう。更に、各一重鎖を含むDNA−RNAハイブリドが用いられる。核酸の混合物も用いられ、あるいは同一または異なるプライマーを用いてあらかじめ増幅反応で産生された核酸が用いられる。参照、表2。増幅された特殊な配列、すなわち多形性座は、より大きい分子の断片であり得たり、または個々の分子として最初は存在し得て、特殊な配列が完全な核酸を構成する。増幅される配列が最初から純粋な形で存在することは必要でない。全ヒトDNA中に含まれるような複合混合物の小さい断片であり得る。
【0044】
ここで用いられるDNAは、血液、組織材料などの血液サンプルから(Maniatis,et.al.in Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,NY,p.280-281,1982)に記載のような様々な方法により抽出され得る。抽出されたサンプルが純粋でなければ、増幅の前に、サンプルの細胞または動物細胞膜を開き、核酸の鎖を爆露および/または単離するのに効果的な試薬量で処置することができる。鎖を爆露または単離するこの溶菌および核酸変性工程は、増幅がより迅速に起きるのを可能にする。
【0045】
デオキシリボヌクレオチドトリホスフェートdATP、dCTP、dGTPおよびdTTPは、個々にまたはプライマーと共に、適当な量で、合成混合物に加えられ、得た溶液を約1−10分間、好ましくは1−4分間、約90−100℃で加熱する。この加熱期間後、溶液を冷却し、これはプライマーハイブリデイションに好ましい。冷却した混合物にプライマー伸長反応を生じるのに適した薬剤(ここでは、“ポリメリゼイション剤”と呼ぶ)を加え、反応を当業者に知られた条件で生起せしめる。ポリメリゼイション剤も熱が安定すれば、他の反応剤と共に加えることができる。この合成(増幅)反応は、室温またはポリメリゼイション剤がもはや機能しない上記温度で生じ得る。例えば、DNAポリメラーゼが反応剤として用いられたときは、温度は一般的に40℃より大きくはない。最も好都合には、反応は室温で生じる。
【0046】
本発明の実施に用いられるプライマーは、ポリメリゼイションを開始するのに充分な長さと適当な配列のオリゴヌクレオチドを含む。合成を促進する環境条件は、ヌクレオチドトリホスフェート、DNAポリメラーゼなどのポリメリゼイション剤および適当な温度とpHである。
【0047】
プライマーは、増幅に最も効率的には単鎖であるが、二重鎖でもよい。二重鎖のときは、伸長生産物を製造するのに用いる前に、プライマーはその鎖を分離するためにまず処置される。プライマーは、ポリメリゼイションの促進剤の存在下に伸長生産物の合成を始めるのに充分長くなければならない。プライマーの厳密な長さは、温度、緩衝剤およびヌクレオチドの組成を含む多くの要因に依存する。オリゴヌクレオチドは、典型的には12−20以上のヌクレオチドを含むが、より少ないヌクレオチドのこともある。
【0048】
本発明の実施に用いられるプライマーは、増幅されるべきゲノム座の各鎖に実質的に相補的であるように設計される。このことは、ポリメリゼイション剤が働く条件下で、各々の鎖にハイブリダイズするのに充分に相補的でなければならなことを意味する。換言すると、プライマーは突然変異を挟む5'および3'配列に充分に相補的であるべきで、それとハイブリダイズし、ゲノム座の増幅をもたらす。
【0049】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、関与する反応段階数に比較して急増した量の多形性座を生産する酵素鎖反応である増幅過程において用いられる。典型的には、一つのプライマーが多形性座の負(−)鎖に相補的であり、他の一つが正(+)鎖に相補的である。DNAポリメラーゼの大きいフラグメント(Klenow)などの酵素で伸長による変性核酸およびヌクレオチドプライマーをアニーリングすることは、標的多形性座配列を含む新規合成の+および−鎖をもたらす。これらの新規合成配列は鋳型であるので、変性のくりかえしサイクル、プライマーアニーリングおよび伸長は、プライマーで定義される領域(すなわち標的多形性剤配列)の急増的な産生をもたらす。鎖反応の生産物は、用いられる特殊なプライマーの末端に対応する終末を有する目立たない核酸2量体である。
【0050】
本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、通常のホスホトリエステルおよびホスホジエステル方法またはその自動実施などの適当な方法を用いて調製される。一つのかかる自動実施において、ジエチルホスホルアミジットが出発物質として用いられ、Beaucage,et al.,Tetrahedron Letters,22:1859-1862,1981記載のように合成される。修正された固体支持体でのオリゴヌクレオチドの合成の一つの方法が米国特許第4,458,066に記載されている。
【0051】
ポリメリゼイション剤は、酵素を含み、プライマー伸長産生物の合成を遂行する機能を有するいかなる化合物およびシステムであり得る。この目的のための適当な酵素としては、例えばE.coli DNAポリメラーゼのKlenowフラグメント、ポリメラーゼミュテイン、逆トランスクリプターゼおよびTaqポリメラーゼなどの熱安定性の酵素(すなわち、変性を起こすのに充分高い温度にかけた後にプライマー伸長をおこす酵素)を含む他の酵素がある。適当な酵素は、各多形性座核酸鎖に相補的であるプライマー伸長産生物を形成するのに適した状態で、ヌクレオチドの結合を容易にする。一般に、合成は各プライマーの3'末に始まり、鋳型鎖に沿って5'末の方向に進み、合成が終了するまで、相違する長さの分子を産生する。
【0052】
新規合成の鎖およびその相補的核酸鎖は、上記したハイブリダイズ条件で二重鎖分子を形成し、このハイブリドは続く工程に用いられる。次の工程において、新規合成二重鎖分子は、一重鎖分子を提供するために、上記手法のいずれかを用いて、変性条件の対象とされる。
【0053】
変性、アニーリングおよび伸長産生物合成の工程は、標的多形性座核酸配列を検出に必要な程度にまで増幅するために、何度もくりかえされる。製造された特殊な核酸配列の量は急増して蓄積される。増幅については、PCR.A.Practical Approach,ILR Press,Eds.M.J.McPherson,P.Qurke,and G.R.Taylor,1992.に記載されている。
【0054】
増幅産生物は、サザンブロット法により放射活性プローブを用いずに、検出される。この方法において、例えば、多形性座の核酸配列の非常に低レベルを含有するDNAの小サンプルは、増幅され、サザンブロット法あるいは類似的にドットブロット法を用いて、解析される。非放射活性プローブまたはラベルの使用は、増幅シグナルの高レベルによって容易となる。別法として、増幅産生物を検出するのに用いられるプローブは、例えば、放射性同位元素、蛍光化合物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレート剤または酵素によって、直接的または間接的に検出可能なようにラベルされる。当業者は、プローブを結合する他の適当なラベルを知り、または通常実験で適当なラベルを確定することができるであろう。
【0055】
本発明方法により増幅された配列は、PCRなどの特殊なDNA配列の検出に通常用いられる方法で、オリゴーマ制限(Saiki,et.al.,Bio/Technology,3:1008-10102,1985)、対立遺伝子特異オリゴヌクレオチド(ASO)プローブ解析法(Conner,et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,80:278,1983)、オリゴヌクレオチド連結反応検定(Landgren,et.al.,Science,241:1007,1988)などによって、溶液において、または固状支持体に結合された後に、さらに検討され、検定され、クローン化され、配列決定される。DNA解析の分子的手法は総説されている(Landgren,et.al.,Science,242:229-237,1988)。
【0056】
好ましくは、増幅方法は、本明細書記載のように、かつ当業者に普通使用されているように、PCRによるものである。増幅の他の方法は、記述されており、本発明のプライマーPCRにより増幅されたBRCA1座が同様に他の手段で増幅される限り、使用することができる。かかる他の増幅系には、制限するわけでないが、望むRNAの短い配列およびT7プロモーターで始まる自己保持配列複製がある。逆トランスクリプターゼは、RNAをcDNAに複写し、RNAを変性し、次いでDNAの第2鎖をポリメリ化する。他の核酸増幅技術は、逆転写およびT7 RNAポリメラーゼを用い、2プライマーをそのサイクル標的とするように合体する核酸配列を基とする増幅(NASBA)である。NASBAは、DNAまたはRNAのいずれかで始まりいずれかで終わり、60−90分以内に10コピーに増幅する。他の方法として、核酸は連結反応活性転写(LAT)により増幅することができる。LATは、単鎖鋳型から、部分的に単鎖であり部分的に二重鎖である単一のプライマーに働く。増幅は、cDNAをプロモーターオリゴヌクレオチドに連結することにより始まり、数時間で10−10となる。本発明方法で有用な他の増幅はQBレプリカーゼ系である。QBレプリカーゼ系は、MDV−1と呼ばれるRNA配列を望むDNA配列に相補的なRNAに結合することにより、用いることができる。サンプルと混合するに際して、ハイブリドRNAは、標本のmRNA中にその補体を見出し、望むタグ−アロング配列を複写するレプリカーゼを活性化して、結合する。他の核酸増幅技法であるリガーゼチェイン反応(LCR)は、新しい標的を形成し、サンプル中の隣接配列の存在下にリガーゼにより共有結合された望む配列の2つの別個にラベルされた半分を用いる。修復チェイン反応(RCR)核酸増幅技術は、標的配列を幾何的に増幅するために、2つの相補的かつ標的特異的オリゴヌクレオチドプローブ対、熱安定性ポリメラーゼおよびリガーゼ、およびDNAヌクレオチドを用いる。A2−ベースギャップは、オリゴヌクレオチドプローブ対を単離し、RCRは、DNA修復を模倣してギャップを満たし結合せしめる。鎖置換活性化(SDA)による核酸増幅は、標的DNAに結合する5'末上に短い張り出しを有するHinkIIの認識部位を含む短いプライマーを利用する。DNAポリメラーゼは、硫黄含有アデニン類似体での張り出しの反対側のプライマーの部分を満たす。HinkIIは、加えられるが、非修飾のDNA鎖を切断するのみである。5'エクソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼは、ニックの部位に入り、そしてポリメリを開始し、最初のプライマー鎖を下流方向に置換し、よりプライマーとして働く新しいものを形成する。SDAは37℃で2時間で10の以上の増幅を行う。RCRおよびLCRと異なり、SDAは器具設置の温度サイクルを要しない。
【0057】
他の方法は、精製されて、または核酸の混合物中に存在しているDNAまたはRNA鋳型から核酸配列を増幅する方法である。得た核酸配列は鋳型の正確なコピーであり、また修飾し得る。この方法は、特殊な核酸配列を複写する信頼性を増大し、単一検定で特殊点の突然変異を効率的に検出するのを可能にすることにおいてPCRより優れている。標的核酸は、鎖置換を回避しながら酵素的に増幅される。3プライマーが用いられる。第1のプライマーは標的の第1末端に相補的である。第2プライマーは標的の第2末端に相補的である。第3プライマーは、標的の第1末端に類似し、かつ第1プライマーの少なくとも一部に実質的に相補的であり、第3プライマーが第1プライマーとハイブリダイズしたときに、第1プライマーの5'末端の塩基に相補的な第3プライマーの位置が実質的に鎖置換を回避する修飾を含む。この方法は、Bhatnager et. al.,1997の米国特許第5,593,840に詳記されている。これらの他の方法は、PCRが本発明の望ましい方法であるが、本発明方法に記載したようにBRCA1座を増幅のに用いることができる。
【0058】
BRCA1(omi)DNAコード配列は、上記の方法により5人のBRCA1対立遺伝子を端から端まで配列決定することにより得て、次いで得たデータを解析した。得たデータは、7つの以前に公表した多形性を評価し、選択コドンの発生頻度を確認し、必要とあれば訂正する機会を提供する。
【0059】
遺伝子治療
コード配列は遺伝子治療に使用できる。様々な方法が遺伝子転移について知られているが、そのいずれも利用できるであろう。
【0060】
インビボでの組換えDNAの直接注入
1.“裸の”DNAをシリンジおよび針で特殊な組織に直接注入し、血管床を通して浸透し、またはカテーテルを通して内皮細胞に移行さす。
2.自工的脂質小胞に含まれるDNAを直接注入する。
3.抗原などの標的組織を複合したDNAを直接注入する。
4.DNAを金粒子上にコートし、細胞中に射入するものであり、粒子を爆撃的に直接注入する。
【0061】
ヒト人工染色体
この新しい遺伝子運搬方法は、複製に基本的な要素および転移の望む遺伝子のみを含有するようにはがされたヒト染色体の使用を含む。
【0062】
レセプター仲介遺伝子転移
DNAが特殊な細胞表面レセプターに結合する標的分子にリンクされ、DNAの哺乳動物細胞へのエンドサイト−シスおよび転移を誘発する。この技術の一つでは、アシアログリコタンパク質をDNAにリンクするために、ポリ−L−リジンを用いる。アデノウイルスも複合体に加わって、リソソームをこわし、DNAの変性を回避し、その核への移動を可能にする。これらの粒子の静脈内注入は肝細胞への遺伝子転移をもたらす。
【0063】
組替えウイルスベクター
いくつかのベクターが遺伝子治療で用いられている。それらには、モノロニイ・ネズミ白血病ウイルス(MoMLV)ベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクター、ポックスウイルスベクター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ベクターがある。
【0064】
遺伝子の置換および修復
遺伝性疾患の処置についての理想的遺伝子操作法は、欠陥遺伝子をその遺伝子の正常なコピーで置きかえることである。相同組換えは、DNAのセクションを切りかえ、新しいもので置換することを意味する用語である。この技術により、欠陥遺伝子を機能的BRCA1腫瘍生長阻害タンパク質発現の正常な遺伝子で置換することができる。遺伝子治療についての詳細な記載は、Gene Therapy A Primer For Physicians 2d Ed. by Kenneth W.Culver,M.D. Publ.Mary Ann Liebert Inc.(1996)にも記載されている。BRCA1について2種の遺伝子治療プロトコールがJeffrey T.Holt et al.組換えDNA諮問委員会で認められている。これらは、9602−148および9603−149としてリストされ、NIHから入手できる。単離されたBRCA1は増幅生成物から合成または組み立てられて、LXSNベクターなどのベクターに挿入される。
【0065】
BRCA1アミノ酸および核酸配列は診断的プローブおよび抗体をつくるのに用いられる。ラベル診断プローブは、患者の血清あるいは細胞サスペンション、または固状表面細胞サンプル中のBRCA1タンパク質レベルを測定するために、いかなるハイブリダイゼイションによっても使用され得る。
【0066】
BRCA1アミノ酸配列は、乳房または卵巣癌の危険から患者の保護を行い、あるいは腫瘍の大きさを減少せしめるのに用いられ得る。タンパク質を作り、または抽出する方法はよく知られている。Itakura et.al.の米国特許4,704,362、第5,221,619および第5,583,013号。BRCA1は分泌されることが示されている。Jensen,R.A.et.al.,Nature Genetics 12:303-308(1996)。
【実施例】
【0067】
実施例1
5人の個体由来のBRCA1(omi)遺伝子のコード配列の決定
原料および方法
肉親 (すなわち、一等および二等の親族)が癌の経歴をもたない個体を同定するために約150人の志願者を審査した。各人に下記の表Iに示される『遺伝性癌を事前選別試験するためのアンケート』に答えてもらった。BRCA1遺伝子の全配列を決定するために、これらの中の5人を任意に選んだ。一等の親族は両親、兄弟、又は子である。二等の親族は、おば、おじ、祖父母、孫、めい、甥、又は半兄弟である。
【0068】
表I
遺伝性癌を事前選別するためのアンケート
A部:あなたの家族について以下の質問に答えて下さい
1.あなたの知る限りにおいて、あなたの家族の誰かが家族性大腸線腫症(FAP)と呼ばれる大変特異な遺伝性大腸疾患と診断されたことが今までにありますか。
2.あなたの知る限りにおいて、あなた又はおばの誰かが35才以前に乳癌にかかったことが今までにありますか。
3.あなたは7年間より長い期間、クローン病又は潰瘍性大腸炎と呼ばれる炎症性腸疾患にかかったことが今までにありますか。
【0069】
B部:B部の質問についてのみ、あなたの返答のために、下記の癌の一覧表を参照して下さい
膀胱癌 肺癌 膵臓癌
乳癌 胃癌 前立腺癌
大腸癌 悪性メラノーマ 腎臓癌
子宮癌 卵巣癌 甲状腺
4.あなたの母親又は父親、あなたの兄弟姉妹、又はあなたの子供が、表で示された癌のいずれかに今までにかかったことがありますか。
5.あなたの母親の兄弟姉妹、又はあなたの母親の両親が、1つよりも多い上記の表で示された癌であると診断されたことが今までにありますか。
6.あなたの父親の兄弟姉妹、又はあなたの父親の両親が、1つよりも多い上記の表で示された癌であると診断されたことが今までにありますか。
【0070】
C部:C部の質問についてのみ、あなたの返答のために、下記の親族の一覧表を参照して下さい
あなた あなたの母親
あなたの兄弟姉妹 あなたの母親の兄弟姉妹(母方のおばおじ)
あなたの子供 あなたの母親の両親(母方の祖父母)
7.これらの親族の中で、同種の癌を2つ以上診断されたことが今までにありますか。
基底細胞皮膚癌又は偏平上皮細胞皮膚癌とも呼ばれる『単純』皮膚癌は、数えないで下さい。
8.上の表で示した親族の中に、『単純』皮膚癌以外のなんらかの癌が合計して4つ以上ありますか。
【0071】
D部:D部の質問についてのみ、あなたの返答のために、下記の親族の一覧表を参照して下さい
あなた あなたの父親
あなたの兄弟姉妹 あなたの父親の兄弟姉妹(父方のおばおじ)
あなたの子供 あなたの父親の両親(父方の祖父母)
9.これらの親族の中で、同種の癌を2つ以上診断されたことがありますか。
基底細胞皮膚癌又は偏平上皮細胞皮膚癌とも呼ばれる『単純』皮膚癌は、数えないで下さい。
10.上記した表で示した親族中に、『単純』皮膚癌以外のなんらかの癌が合計して4つ以上ありますか。
【0072】
上記の質問に対する返答を解析して選んだ5個体の白血球細胞から、ゲノムDNAを単離した。ジデオキシ配列解析をポリメラーゼ連鎖反応増幅後に行った。
BRCA1遺伝子の全てのエクソンは、このDNAサンプルから増幅した一本鎖産物を生ぜしめるために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて不斉増幅することによる、直接ジデオキシ配列解析の対象とした。Shuldiner、et al.、Handbook of Techniques in Endocrine Research、p.457-486、DePablo、F.、Scanes、C.、監修、Academic Press、Inc.、1993。Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-Elmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素を結合させた。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行った。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入したシークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアであった。
【0073】
1.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
ゲノムDNA(100ng)を5個体の白血球細胞から抽出した。5個のサンプルの各々を端から端まで配列決定した。各サンプルを、1μl(100ng)ゲノムDNA、2.5μl 10×PCR緩衝液(100mMTris、pH8.3、500mMKCl、1.2mMMgCl)、2.5μl 10×dNTP混合(2mM各ヌクレオチド)、2.5μl正のプライマー、2.5μl負のプライマー、および1μlTaqポリメラーゼ(5単位)、および13μl水を含む最終容量25μlで増幅した。
【0074】
下の表IIのプライマーを使用して、様々な分画のBRCA1遺伝子のサンプルを増幅した。プライマーは、DNA/RNAモデル394(登録商標)シンセサイザーで合成した。
【0075】
【表1】

【表2】

【0076】
35サイクルを行い、各々は、変性(95℃;30秒)、アニーリング(55℃;1分)、および伸長(72℃;90秒)から構成され、ただし、始めのサイクルでは変性時間を5分に増やし、最後のサイクルでは伸長時間を5分に増やした。
PCR産物は、Qia-quick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen 商品番号28104;Chatsworth、CA)を用いて精製した。PCR産物の収率および純度は、ベックマンDU650分光光度計においてOD260で分光光度的に測定した。
【0077】
2.ジデオキシ配列解析
Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-Elmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素をPCR産物に結合させた。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)Foster City、CA.、自動モデル377(登録商標)シークエンサーを用いて正および逆の両方向で行った。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』であった。
【0078】
3.結果
5個体由来の10個の対立遺伝子の核酸における差異が、遺伝子上の7カ所でみられた。変化およびその位置を下記の表IIIに示す。
【表3】

【0079】
表3および表4は、本発明の1つの態様である少なくとも2つの別のコドン対の組(ここで、コドン対はそれぞれ、疾病を患っていない個体の集合において以下の頻度であらわれる)を示す。
・2201位において、AGCおよびAGTはそれぞれ、約35−45%および55−65%の頻度でおこる;
・2430位において、TTGおよびCTGはそれぞれ、約35−45%および55−65%の頻度でおこる;
・2731位において、CCGおよびCTGはそれぞれ、約25−35%および65−75%の頻度でおこる;
・3232位において、GAAおよびGGAはそれぞれ、約35−45%および55−65%の頻度でおこる;
・3667位において、AAAおよびAGAはそれぞれ、約35−45%および55−65%の頻度でおこる;
・4427位において、TCTおよびTCCはそれぞれ、約45−55%および45−55%の頻度でおこる;
・4956位において、AGTおよびGGTはそれぞれ、約35−45%および55−65%の頻度でおこる;
【0080】
データは各サンプルについてのものである。BRCA1遺伝子は7つの多形性の領域を除き同一である。これらの多形性領域(その位置と共に)、各コドンのアミノ酸残基、あらわれる頻度および各コドンによりコードされているアミノ酸を、下の表IVに示す。
【表4】

参照番号は、後述の参考文献の表に対応する。
【0081】
実施例2
BRCA1(omi)および参考としての7つの多形性を用いた個体の決定
遺伝子感受性試験の当業者は、本発明が以下事項に有用であることがわかるであろう:
a)BRCA1突然変異により乳房又は卵巣癌に対する遺伝子感受性が増大していない、すなわち、BRCA1遺伝子を有する個体の同定;
b)BRCA1遺伝子にみられる多形性を読み誤ることの回避;
配列決定は、問題となっている患者の血液を用いて実施例1のように行う。しかしながら、BRCA1(omi)配列を参考のために使用し、多形性部位は、各多形性部位のコドンについて上記した核酸配列と比較する。サンプルは、BRCA1(omi)配列と比較し、各多形性部位でおこる塩基変化の1つを含むものである。各多形性部位であらわれるコドンは、ここで対で参考として示す。
【0082】
・2201位のAGCおよびAGT、
・2430位のTTGおよびCTG、
・2731位のCCGおよびCTG、
・3232位のGAAおよびGGA、
・3667位のAAAおよびAGA、
・4427位のTCTおよびTCC、および
・4956位のAGTおよびGGT。
【0083】
これらの多形性対を使用すると、当業者が、突然変異を多形性変異と間違えることなく正しく多形性変異を解釈できることが一層確かになる。
【0084】
BRCA1遺伝子のエキソン11は、このDNAサンプルから増幅した一本鎖産物を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて不斉増幅し、直接ジデオキシ配列解析に供する。Shuldiner、et al.、Handbook of Techniques in Endocrine Research、p.457-486、DePablo、F.、Scanes、C.、監修、Academic Press、Inc.、1993。Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-Elmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素を結合させた。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行った。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。
【0085】
1.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
該体の白血球から抽出したゲノムDNA(100ng)は、1μl(100ng)ゲノムDNA、2.5μl 10×PCR緩衝液(100mMTris、pH8.3、500mMKCl、1.2mMMgCl)、2.5μl 10×dNTP混合(2mM各ヌクレオチド)、2.5μl正のプライマー(BRCA1−11K−F、10μM溶液)、2.5μl負のプライマー(BRCA1−11K−R、10μM溶液)、および1μlTaqポリメラーゼ(5単位)、および13μl水を含む最終容量25μlにおいて増幅する。
【0086】
患者のサンプルであるBRCA1遺伝子を増幅するために使用するPCRプライマーを表IIに示す。プライマーをDNA/RNAモデル394(登録商標)シンセサイザーで合成した。35サイクルで増幅し、各々は、変性(95℃;30秒)、アニーリング(55℃;1分)、および伸長(72℃;90秒)から構成され、ただし、始めのサイクルでは変性時間を5分に増やし、最後のサイクルで伸長時間を5分に増やす。
【0087】
PCR産物をQia-quick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen、商品番号28104;Chatsworth、CA)を用いて精製する。PCR産物の収率および純度は、ベックマンDU650分光光度計においてOD260で分光光度的に測定した。
【0088】
2.ジデオキシ配列解析
Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-ELmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素をPCR産物に結合させる。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)Foster City、CA.、自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行う。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。BRCA1(omi1)配列番号1配列を比較の標準物としてシークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアに入れる。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、1塩基ごとにサンプル配列をBRCA1(omi1)配列番号1標準物と比較する。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、BRCA1(omi1)配列番号1DNA配列と患者のサンプルの配列との間の全ての相違を明らかにする。
【0089】
一番目の技術者が、BRCA1(omi1)配列番号1標準物を患者のサンプルと視覚的に比較することによりコンピューター化された結果を調べ、再び標準物とサンプルの間のあらゆる差異を明白にする。次いで、一番目の技術者が、配列に沿って各位置における配列の変化を読む。各配列変異のクロマトグラムは、シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアにより作成され、カラープリンターに印刷される。ピークは、一番目の技術者および二番目の技術者がよむ。次いで、二番目の技術者はクロマトグラムを再試験する。最後に、結果を遺伝学者がよむ。各々の場合において、変異は、位置および塩基変化が既知である多形性と比較される。もし、既知の多形性の変異のみを伴う、サンプルBRCA1配列がBRCA1(omi1)配列番号1標準物と適合すれば、それは遺伝子配列として翻訳される。
【0090】
実施例3
BRCA1(omi1)および参考としての7つの多形性を用いたBRCA1遺伝子における突然変異の非存在の決定
遺伝子感受性試験の当業者は、本発明がBRCA1遺伝子において、既知であるか又は前以て知られていない突然変異の存在を決定するのに有用である。BRCA1の突然変異の一覧表は乳癌情報機関のhttp://www.nchgr.nih.gov/dir/lab_transfer/bic.で公共的に入手できる。この情報機関は1995年11月1日に公共的に使用できるようになった。Friend、S.et al.Nature Genetics 11:238、(1995)。
【0091】
問題となっている患者の血液サンプルを用いて実施例1のようにして配列決定を行う。しかしながら、BRCA1(omi)を参考として使用し、多形性部位を各多形性部位のコドンについて上記した核酸配列と比較する。サンプルは、BRCA1(omi2)配列番号5の配列と比較し、各多形性部位でおこる塩基変化の1つを含むものである。各多形性部位であらわれるコドンをここで対で参照する。
【0092】
・2201位のAGCおよびAGT、
・2430位のTTGおよびCTG、
・2731位のCCGおよびCTG、
・3232位のGAAおよびGGA、
・3667位のAAAおよびAGA、
・4427位のTCTおよびTCC、および
・4956位のAGTおよびGGT。
【0093】
これらの多形性対を使用すると、当業者が、突然変異を多形性変異と間違えることなく正しく多形性変異を解釈できることが一層確かになる。
【0094】
BRCA1遺伝子のエキソン11は、このDNAサンプルから増幅した一本鎖産物を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて不斉増幅し、直接ジデオキシ配列決定する。Shuldiner、et al.、Handbook of Techniques in Endocrine Research、p.457-486、DePablo、F.、Scanes、C.、監修、Academic Press、Inc.、1993。Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-Elmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素を結合させた。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行った。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。
【0095】
1.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
該体の白血球から抽出したゲノムDNA(100ng)は、1μl(100ng)ゲノムDNA、2.5μl 10×PCR緩衝液(100mMTris、pH8.3、500mMKCl、1.2mMMgCl)、2.5μl 10×dNTP混合(2mM各ヌクレオチド)、2.5μl正のプライマー(BRCA1−11K−F、10μM溶液)、2.5μl負のプライマー(BRCA1−11K−R、10μM溶液)、および1μlTaqポリメラーゼ(5単位)、および13μl水を含む最終容量25μlにおいて増幅する。
【0096】
患者のサンプルであるBRCA1遺伝子を増幅するために使用するPCRプライマーを表IIに示す。プライマーをDNA/RNAモデル394(登録商標)シンセサイザーで合成した。35サイクルで増幅し、各々は変性(95℃;30秒)、アニーリング(55℃;1分)、および伸長(72℃;90秒)から構成され、ただし、始めのサイクルでは変性時間を5分に増やし、最後のサイクルで伸長時間を5分に増やす。
【0097】
PCR産物をQia-quick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen、商品番号28104;Chatsworth、CA)を用いて精製する。PCR産物の収率および純度は、ベックマンDU650分光光度計においてOD260で分光光度的に測定した。
【0098】
2.ジデオキシ配列解析
Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-ELmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素をPCR産物に結合させる。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)Foster City、CA.、自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行う。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。BRCA1(omi2)配列番号5配列を比較の標準物としてシークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアに入れる。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、1塩基ごとにサンプル配列をBRCA1(omi2)配列番号5標準物と比較する。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、BRCA1(omi2)配列番号5DNA配列と患者のサンプルの配列との間の全ての相違を明らかにする。
【0099】
一番目の技術者が、BRCA1(omi2)配列番号5標準物を患者のサンプルと視覚的に比較することによりコンピューター化された結果を調べ、再び標準物とサンプルの間のあらゆる差異を明白にする。次いで、一番目の技術者が、配列に沿って各位置における配列の変化を読む。各配列変異のクロマトグラムは、シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアにより作成され、カラープリンターに印刷される。ピークは、一番目の技術者および二番目の技術者がよむ。次いで、二番目の技術者はクロマトグラムを再試験する。最後に、結果を遺伝学者がよむ。各々の場合において、変異は、位置および塩基変化が既知である多形性と比較される。もし、既知の多形性の変異のみを伴う、サンプルBRCA1配列がBRCA1(omi2)配列番号5標準物と適合すれば、それは遺伝子配列として翻訳される。
【0100】
実施例4
BRCA1(omi)および参考のための7つの多形性を用いたBRCA1遺伝子における突然変異の存在の決定
遺伝子感受性試験の当業者は、本発明がBRCA1遺伝子内の、既知であるか又は前以て知られていない突然変異の存在を決定するのに有用であることが分かるだろう。BRCA1の突然変異の一覧表は乳癌情報機構のhttp://www.nchgr.nih.gov/dir/lab_transfer/bic.で公共的に入手できる。この情報機構は1995年11月1日に公共的に使用できるようになった。Friend、S.et al.Nature Genetics 11:238、(1995)。本実施例では、エキソン11における突然変異は、突然変異の領域に適合するプライマーで突然変異の領域を増幅することにより特徴づけられる。
【0101】
BRCA1遺伝子のエキソン11は、このDNAサンプルから増幅した一本鎖産物を得るために、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて不斉増幅し、直接ジデオキシ配列決定する。Shuldiner、et al.、Handbook of Techniques in Endocrine Research、p.457-486、DePablo、F.、Scanes、C.、監修、Academic Press、Inc.、1993。Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-Elmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素を結合させた。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行った。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。
【0102】
1.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅
該体の白血球から抽出したゲノムDNA(100ng)は、1μl(100ng)ゲノムDNA、2.5μl 10×PCR緩衝液(100mMTris、pH8.3、500mMKCl、1.2mMMgCl)、2.5μl 10×dNTP混合(2mM各ヌクレオチド)、2.5μl正のプライマー(BRCA1−11K−F、10μM溶液)、2.5μl負のプライマー(BRCA1−11K−R、10μM溶液)、および1μlTaqポリメラーゼ(5単位)、および13μl水を含む最終容量25μlにおいて増幅する。
【0103】
エキソン11の分節(セグメント)K(ここに突然変異がみられる)を増幅するために使用するPCRプライマーは以下の通りである:
BRCA1−11K−F:5'−GCA AAA GCG TCC AGA
AAG GA−3'配列番号69
BRCA1−11K−R:5'−AGT CTT CCA ATT CAC
TGC AC−3'配列番号70
プライマーをDNA/RNAモデル394(登録商標)シンセサイザーで合成した。35サイクルで増幅し、各々は変性(95℃;30秒)、アニーリング(55℃;1分)、および伸長(72℃;90秒)から構成され、ただし、始めのサイクルでは変性時間を5分に増やし、最後のサイクルで伸長時間を5分に増やす。 PCR産物をQia-quick(登録商標)PCR精製キット(Qiagen、商品番号28104;Chatsworth、CA)を用いて精製する。PCR産物の収率および純度は、ベックマンDU650分光光度計においてOD260で分光光度的に測定した。
【0104】
2.ジデオキシ配列解析
Taq Dye Terminator(登録商標)Kit(Perkin-ELmer 商品番号 401628)を用いて、自動配列決定するために蛍光色素をPCR産物に結合させる。DNA配列決定は、Applied Biosystems、Inc.(ABI)Foster City、CA.、自動モデル377(登録商標)シークエンサーの正および逆の両方向で行う。得られたデータの解析に使用したソフトウェアは、ABIから購入した『シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェア』である。BRCA1(omi2)配列番号5配列を比較の標準物としてシークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアに入れる。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、1塩基ごとにサンプル配列をBRCA1(omi2)配列番号5標準物と比較する。シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアは、BRCA1(omi2)配列番号5DNA配列と患者のサンプルの配列との間の全ての相違を明らかにする。
【0105】
一番目の技術者が、BRCA1(omi2)配列番号5標準物を患者のサンプルと視覚的に比較することによりコンピューター化された結果を調べ、再び標準物とサンプルの間のあらゆる差異を明白にする。次いで、一番目の技術者が、配列に沿って各位置における配列の変化を読む。各配列変異のクロマトグラムは、シークエンスナビゲーター(登録商標)ソフトウェアにより作成され、カラープリンターに印刷される。ピークは、一番目の技術者および二番目の技術者がよむ。次いで、二番目の技術者はクロマトグラムを再試験する。最後に、結果を遺伝学者がよむ。各々の場合において、変異は、位置および塩基変化が既知である多形性と比較される。突然変異を非適合変異の長さにより表す。このような長い非適合パターンは欠失および置換によりおこる。
【0106】
3.結果
上記のPCR増幅および標準蛍光配列決定法を用いて、3888delGA突然変異を発見し得る。3888delGA突然変異BRCA1遺伝子はエキソン11の分節『K』に存在する。DNA配列決定の結果により、公表されているBRCA1(omi)配列の3888および3889ヌクレオチドで2つの塩基対が欠失していることが実証される。この突然変異はBRCA1の転写産物のリーディングフレームを阻害し、その結果、コドン1265位でインフレームターミネーター(TAG)が現れる。それ故、この突然変異により、短くなった、最もあり得ることは、機能しないタンパク質となる。突然変異の正式名は3888delGAである。この突然変異は、突然変異の命名に提案されている命名法、Baudet、A et al.、Human Mutation 2:245-248、(1993)に従って命名される。
【0107】
実施例5
BRCA1(omi1)遺伝子治療の使用
BRCA1遺伝子の発現を増加することにより、卵巣癌、乳癌又は前立腺癌の成長を抑制し得る。この遺伝子の不十分な発現は遺伝性の卵巣癌、乳癌および前立腺癌をもたらす。BRCA1を癌細胞にトランスフェクションさせると、その成長を阻害し、腫瘍発生を減少させることが実証された。腫瘍サイズを減少させるために患者に遺伝子治療を行う。LXSNベクターをBRCA1(omi1)配列番号1、BRCA1(omi2)配列番号5、又はBRCA1(omi3)配列番号3コーディング領域のいずれかで形質転換を起こさせる。
【0108】
ベクター
LXSNベクターを野生型BRCA1(omi1)配列番号1コード配列で形質転換させる。LXSN−BRCA1(omi1)レトロウイルス発現ベクターは、SalI連結BRCA1(omi1)cDNA(ヌクレオチド1−5711)をベクターLXSNのXhoIサイトにクローン化することにより構築される。構築物をDNA配列決定により確認する。Holt et al.Nature Genetics 12:298-302(1996)。
【0109】
レトロウイルスベクターは、血清およびフェノールレッドが含まれていない条件を用いて、ウイルス産生細胞から調製し、標準的解析法により、不稔性、特定の病原体の非存在、および複製能を有するレトロウイルスの存在について試験する。レトロウイルスは試験を行う分割単位で凍結させて保存する。
【0110】
患者は、全体の健康を測定するために、完全な物理的検査、血液検査、および尿検査を受ける。彼らはまた、腫瘍段階を評定するために、胸部X線、心電図、および適当な放射線測定を受ける。
【0111】
転移性卵巣癌の患者は、薬剤単位形あたり10および1010の間のウイルス粒子で、腫瘍を含む腹膜部位に組換えLXSN−BRCA1(omi1)レトロウイルスベクターを注入することによる、レトロウイルス遺伝子治療を用いて処置する。血液サンプルを毎日採取し、感度の良いポリメラーゼ連鎖(PCR)を基礎とした解析により、レトロウイルスベクターの存在を試験する。取り除いた液体を回析して以下を決定する:
1.組換えLXSN−BRBA1(omi)レトロウイルスベクターの組み合わせを取り込んだ癌細胞のパーセンテージ。BRCA1遺伝子が癌細胞にうまく取り込まれたことは、RT−PCR解析およびin situでのハイブリダイゼーションにより示される。
RT−PCRは、BRCA1(omi1)配列番号1由来のプライマーを用いて、Thompson et al.Nature Genetics 9:444-450(1995)の方法により行われる。Jensen et al.Nature Genetics 12:303-308(1996)およびJensen et al.Biochemistry 31:10887-10892(1992)の方法により、細胞溶解物を調製し、イムノブロットを行う。
【0112】
2.ApoTAG(登録商標)in situアポトーシス検知キット(Oncor、Inc.、Gaithersburg、メリーランド)およびDNA解析を用いたプログラムされた細胞死の存在。
3.スライド免疫蛍光法又はウエスタンブロットによるBRCA1遺伝子発現の測定。
測定可能な疾病の患者をまた、LXSN−BRCA1に対する臨床応答について検査し、特にレトロウイルスベクター治療後すぐに通常の処置はしないで患者を検査する。流動細胞診、腹部の周囲、腹部のCTスキャンおよび局所徴候を検査する。
【0113】
その他の部位の疾病については、以下のような慣用的な評価基準を使用する:
1.完全反応(CR)、少なくとも4週間、疾患の全ての測定可能な病巣および全ての徴候および症状の完全な消失
2.部分反応(PR)、4週間以内に2人の観察者により決定された全ての測定可能な病巣の最も大きい2つの垂線の直径の産物の合計が少なくとも50%減少。PRを続けると、この間に全く新しい病巣は現れず、またどの病巣もサイズが増大しない。
3.安定な疾病、前回の測定から腫瘍容積が25%以下の変化。
4.進行性疾病、前回の測定から腫瘍測定が25%以上の増加。
用量は処置に対する反応に影響される。
【0114】
この遺伝子療法の試みに関連するさらに詳しい情報は、『卵巣癌のBRCA1レトロウイルス遺伝子治療』a Human Gene Transfer Protocol:NIH ORDA登録番号9603-149Jeffrey Holt、JT、M.D.およびCarlos L.Arteaga、M.D.を参照。
【0115】
参考文献の表
【表5】

【0116】
『乳房および卵巣の癌』は、当業者により、女性における乳房および卵巣の癌、およびまた男性における乳房および前立腺の癌を含むと理解される。BRCA1は、女性における遺伝性乳房および卵巣の癌およびまた男性における乳房および前立腺の癌に対して、関連した遺伝子感受性がある。それ故、乳癌および/又は卵巣がんを記載したこの文書の請求の範囲は、女性および男性における、乳房、卵巣および前立腺の癌を意味する。本発明は現在の最も好ましい態様について記載しているが、数多くの修飾が本発明の精神からそれることなく可能なことを理解されたい。従って、本発明は以下の請求の範囲によりのみ制限される。
【0117】
【表6】

【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【表11】

【表12】

【表13】

【表14】

【表15】

【表16】

【表17】

【表18】

【表19】

【表20】

【表21】

【表22】

【表23】

【表24】

【表25】

【表26】

【表27】

【表28】

【表29】

【表30】

【表31】

【表32】

【表33】

【表34】

【表35】

【表36】

【表37】

【表38】

【表39】

【表40】

【表41】

【表42】

【表43】

【表44】

【表45】

【表46】

【表47】

【表48】

【表49】

【表50】

【表51】

【表52】

【表53】

【表54】

【表55】

【表56】

【表57】

【表58】

【表59】

【表60】

【表61】

【表62】

【表63】

【表64】

【表65】

【表66】

【表67】

【表68】

【表69】

【表70】

【表71】

【表72】

【表73】

【表74】

【表75】

【表76】

【表77】

【表78】

【表79】

【表80】

【表81】

【表82】

【表83】

【表84】

【表85】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に規定されたBRCA1コード配列の単離された共通DNA配列。
【請求項2】
配列番号2に規定されたBRCA1タンパク質の共通タンパク質配列。
【請求項3】
下記を含む、疾患に関連しないBRCA1コード配列のBRCA1遺伝子を有する個体を同定する方法:
(a)遺伝子内配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを用いて個体のBRCA1コード配列のDNAフラグメントを増幅する;
(b)該増幅DNAフラグメントをジデオキシ配列決定により配列決定する;
(c)該個体のBRCA1コード配列が完全に配列決定されるまで工程(a)および(b)をくりかえす;
(d)該増幅DNAフラグメントの配列をBRCA1(omi)DNA配列、配列番号1と比較する;
(e)該個体のBRCA1コード配列における下記の多形性変異の各々の存在または不存在を決定する:
・2201位のAGCおよびAGT;
・2430位のTTGおよびCTG;
・2731位のCCGおよびCTG;
・3232位のGAAおよびGGA;
・3667位のAAAおよびAGA;
・4427位のTCTおよびTCC;および
・4956位のAGTおよびGGT;
(f)該個体のBRCA1コード配列と配列番号1とのすべての配列相違を決定し、その相違において、該多形性の存在および2201、2430、2731、3232、3667、4427および4956位以外の変異の不存在は、BRCA1コード配列におけるBRCA1突然変異による女性の乳癌または卵巣癌および男性の乳癌または前立腺癌に対する増大した遺伝子感受性の不存在と相関する。
【請求項4】
該オリゴヌクレオチドプライマーが放射ラベル、蛍光ラベル、生物発光ラベル、化学発光ラベルまたは酵素ラベルでラベルされている、請求項3の方法。
【請求項5】
下記を含む、BRCA1コード配列の変異の存在による女性の乳癌および卵巣癌ならびに男性の乳癌および前立腺癌に対する増大した遺伝子感受性を検出する方法:
(a)遺伝子内配列に特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプライマーを用いて個体のBRCA1コード配列のDNAフラグメントを増幅する;
(b)該増幅DNAフラグメントをジデオキシ配列決定により配列決定する;
(c)該個体のBRCA1コード配列が完全に配列決定されるまで工程(a)および(b)をくりかえす;
(d)該増幅DNAフラグメントの配列をBRCA1(omi)DNA配列、配列番号1と比較する;
(e)該個体のBRCA1コード配列と配列番号1との何らかの配列相違を測定し、該個体のBRCA1コード配列における、下記のいずれでもない塩基変化の存在または不存在を決定する:
・2201位のAGCおよびAGT
・2731位のCCGおよびCTG
・3232位のGAAおよびGGA
・3667位のAAAおよびAGA
・4427位のTCTおよびTCC
・4956位のAGTおよびGGTは、BRCA1コード配列におけるBRCA1突然変異による女性の乳癌または卵巣癌および男性の乳癌または前立腺癌に対する増大した遺伝子感受性の強さと相関する。
【請求項6】
該オリゴヌクレオチドプライマーが放射ラベル、蛍光ラベル、生物発光ラベル、化学発光ラベルまたは酵素ラベルでラベルされている、請求項5の方法。
【請求項7】
以下を含む、遺伝子治療の実施方法に使用するための医薬組成物の製造のための、配列番号1のBRCA1コード配列で形質転換するためのベクターの使用:
a)該ベクターの効果量でインビボで癌細胞をトランスフェクトし、
b)細胞にベクターを取り込みさせ、そして
c)腫瘍生長の低下を測定する。
【請求項8】
以下を含む、タンパク質治療をの実施方法に使用するための医薬組成物の製造のための、配列番号2のBRCA1腫瘍生長阻害タンパク質の使用:
a)該タンパク質の効果量を患者に注射し、
b)細胞にタンパク質を取り込みさせ、そして
c)腫瘍生長の低下を測定する。

【図1】
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【公開番号】特開2012−90627(P2012−90627A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−227253(P2011−227253)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【分割の表示】特願平9−528770の分割
【原出願日】平成9年2月12日(1997.2.12)
【出願人】(500086515)ミリアド・ジェネティックス・インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】