説明

ヒドロキシル化コントラスト増強剤及びその中間体

一態様では、本発明は、構造(I)の鉄キレートを含むコントラスト増強剤を提供する。


式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。コントラスト増強剤Iの調製に有用な、構造IXの金属キレート配位子、コントラスト増強剤Iを含む医薬製剤、並びに、構造IXのキレート配位子の調製に有用な保護配位子前駆体XX及びXXIVも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴イメージング用のコントラスト増強剤に関するものであり、特に、かかるコントラスト増強剤の調製に有用な金属キレート配位子及び金属キレート化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴(MR)イメージングは、ヒトの健康の重要な医用診断ツールとなっている。MRコントラスト増強剤をMRイメージングプロトコールに使用すると、MRイメージング法で得られる画像の質だけでなく、かかる画像の取得効率も向上するので、本技術に重要な添加剤である判明している。公知のMRコントラスト増強剤には、様々な短所がある。例えば、ガドリニウム(Gd)キレートを含有するMRコントラスト増強剤はそれ自体は有毒ではないが、遊離イオンの形態では有毒なガドリニウムイオンを含んでいる。マンガン(Mn)のキレートを含むコントラスト増強剤は、マンガン金属中心からキレート配位子が解離し易いが、このような解離は望ましくない。その他様々な金属キレートをMRコントラスト増強剤として使用し得るが、ガドリニウムキレートほど効果的でないこと及び/又はイメージング後の患者の体内からのクリアランス速度が十分に高くないことが多い。
【0003】
ガドリニウムキレートを含むMRコントラスト増強剤の潜在毒性を低減し、体内分布を制御するために、多大な努力及び創意工夫がなされてきた。有望なMRコントラスト増強剤は、良好なインビボ及びインビトロ安定性を示すとともに、MRイメージング後に体内から迅速なクリアランスを示すべきである。鉄はガドリニウムに比べて広範かつ大概は無害な天然の生化学特性を有するので、常磁性鉄中心を含むMRコントラスト増強剤が魅力的である。そのため、MRイメージングのコントラスト剤として鉄系材料を使用することへの関心が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許第0230893号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知のコントラスト増強剤と同等もしくは優れた性能を示しつつ、低用量での画質の向上、高用量が必要とされる場合の患者の高い耐容性及び安全性、並びにイメージング後の患者からのクリアランスの改善など、1以上の追加の利点をもたらすMRイメージング用の鉄含有コントラスト増強剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一の実施形態では、本発明は、次の構造Iの鉄キレートを含むコントラスト増強剤を提供する。
【0007】
【化1】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【0008】
第二の実施形態では、本発明は、次の構造IIのコントラスト増強剤を提供する。
【0009】
【化2】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【0010】
第三の実施形態では、本発明は、次の理想構造IXの金属キレート配位子を提供する。
【0011】
【化3】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【0012】
第四の実施形態では、本発明は、次の理想構造XIIIの金属キレート配位子を提供する。
【0013】
【化4】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【0014】
第五の実施形態では、本発明は、次の構造Iのコントラスト増強剤を含む医薬製剤を提供する。
【0015】
【化5】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【0016】
第七の実施形態では、本発明は、次の構造IIのコントラスト増強剤を含む医薬製剤を提供する。
【0017】
【化6】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【0018】
第八の実施形態では、本発明は、次の構造XXの保護配位子前駆体を提供する。
【0019】
【化7】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R8〜R11の1以上が保護ヒドロキシ基又は保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、R12及びR13は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基である。
【0020】
第九の実施形態では、本発明は、次の構造XXIVの保護配位子前駆体を提供する。
【0021】
【化8】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R12は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基であり、R14及びR15は各々独立にC1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基又はアリール基であり、Mは各々独立にB、Si又は炭素であり、cは0〜3であり、dは0又は1である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書及び特許請求の範囲では多くの用語を用いるが、これらは以下の意味をもつものと定義される。
【0023】
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。
【0024】
「任意の」又は「任意には」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象が起こる場合と起こらない場合を包含する。
【0025】
本明細書で用いる「溶媒」という用語は、1種類の溶媒又は溶媒の混合物を意味する。
【0026】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量を修飾し、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表現する際に適用される。したがって、「約」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。
【0027】
本明細書で用いる「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族基を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族基を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、炭素と水素のみからなるものでもよい。本明細書で用いる「芳香族基」という用語には、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基が包含される。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族基を含む。芳香族基は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示される。芳香族基は非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族基)とメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は芳香族基(C63)が非芳香族成分−(CH24−と縮合してなる芳香族基である。便宜上、本明細書での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範な官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF32PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のその他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH26PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C10芳香族基」という用語は、炭素原子数が3以上で10以下の芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C78−)はC7芳香族基を代表する。
【0028】
本明細書で用いる「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)とメチレン基(非環式成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、炭素と水素のみからなるものでもよい。便宜上、本明細書での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペンタ−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブタ−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一又は異なる1以上のハロゲン原子を含んでいてもよい。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクタ−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキサ−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキサ−4−イル)(即ち、−C610C(CF32610−)、2−クロロメチルシクロヘキサ−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキサ−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキサ−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキサ−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペンタ−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキサ−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のその他の例には、4−アリルオキシシクロヘキサ−1−イル、4−アミノシクロヘキサ−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペンタ−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキサ−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキサ−1−イル、メチレンビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブタ−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキサ−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH26610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキサ−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキサ−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキサ−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキサ−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキサ−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペンタ−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、炭素原子数が3以上で10以下の脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0029】
本明細書で用いる「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよいし、炭素と水素のみからなるものでもよい。便宜上、本明細書での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範な官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペンタ−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブタ−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一又は異なる1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であってもよい。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のその他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン(即ち、−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち、−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH33Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。その他の例としては、C1〜C10脂肪族基は炭素原子数が1以上10以下のものである。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH29−)はC10脂肪族基の例である。
【0030】
上述の通り、一実施形態では、本発明は、次の構造Iの鉄キレートを含むコントラスト増強剤を提供する。
【0031】
【化9】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。

本明細書全体にわたってヒトの健康に相当重点が置かれているが、本発明が提供するコントラスト増強剤は、様々なヒト及び動物の疾患の研究及び治療において、造影剤として、及び造影剤の開発用のプローブとして有用である。
【0032】
鉄キレートを含み、かつ一般構造Iの範囲に属するコントラスト増強剤を、以下の表1に例示する。
【0033】
【化10】

【0034】
【表1】

一般に、また本明細書全体を通して、ある構造に関する絶対又は相対立体化学は、例えば構造I及びIIのように明示していないが、構造は可能な絶対及び相対立体化学配置を包含する。例えば、構造Iは絶対又は相対立体化学の示されていないフッ素化エーテル化合物を表す。したがって、構造Iは、ラセミ化合物、単一の鏡像異性体、鏡像異性的に富化された組成物、及びジアステレオマーの混合物を含む鉄キレート化合物の属を表すものである。一実施形態では、本発明は、コントラスト増強剤1aの左旋性及び右旋性鏡像異性体の濃度が等しいラセミ混合物である、構造1a(表1)のコントラスト増強剤を提供する。別の実施形態では、本発明は、1bの左旋性及び右旋性鏡像異性体の濃度が等しくない鏡像異性的に富化された混合物である、構造1b(表1)のコントラスト増強剤を提供する。また別の実施形態では、本発明は、鏡像異性体ではない構造1cの2以上の化合物を含むジアステレオ異性混合物である、構造1c(表1)のコントラスト増強剤を提供する。
【0035】
本発明が提供する鉄キレート組成物が、主成分鏡像異性体、微量成分鏡像異性体、及びさらなるジアステレオ異性鉄キレート成分を含み得ることは当業者には自明であろう。一実施形態では、本発明は、主成分鏡像異性体及び関連ジアステレオマーを含む鉄キレート組成物を提供する。別の実施形態では、本発明は、主成分鏡像異性体を有さず、かつジアステレオ異性混合物である鉄キレート組成物を提供する。
【0036】
別の実施形態では、本発明は、次の構造IIの鉄キレートを含むコントラスト増強剤を提供する。
【0037】
【化11】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【0038】
鉄キレートを含み、かつ一般構造IIの範囲に属するコントラスト増強剤を、以下の表2に例示する。
【0039】
【表2】

電荷均衡対イオンQは、有機カチオンであっても無機カチオンであってもよい。一実施形態では、電荷均衡対イオンQは無機カチオンである。無機カチオンの非限定的な例は、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン及び無機アンモニウムカチオン(NH4+)を含む。別の実施形態では、電荷均衡対イオンQは、有機カチオン、例えば、有機アンモニウムカチオン、有機ホスホニウムカチオン、有機スルホニウムカチオン、又はそれらの混合物である。一実施形態では、電荷均衡対イオンは、2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)−2−デオキシグルコースのようなアミノ糖のアンモニウム塩である。一実施形態では、電荷均衡対イオンは、N−メチルグルカミンのプロトン化形態である。
【0040】
一実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造IIIの鉄キレートを含む。
【0041】
【化12】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【0042】
別の実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造IVの鉄キレートを含む。
【0043】
【化13】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【0044】
別の実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造Vの鉄キレートを含む。
【0045】
【化14】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【0046】
さらに別の実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造VIの鉄キレートを含む。
【0047】
【化15】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【0048】
別の実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造VIIの鉄キレートを含む。
【0049】
【化16】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
を含む。さらに別の実施形態では、コントラスト増強剤は、次の構造VIIIの鉄キレートを含む。
【0050】
【化17】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【0051】
一実施形態では、本発明は、次の理想構造IXの金属キレート配位子を提供する。
【0052】
【化18】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【0053】
「理想構造」という用語は、本明細書で、示されている構造、並びに理想構造を有する金属キレート配位子のプロトン化及び脱プロトン化形態を含み得るさらなる構造を指定するために使用される。本発明が提供する個々の金属キレート配位子は、金属キレート配位子のプロトン化及び脱プロトン化形態を含み得ること、例えば、構造IXの金属キレート配位子の理想構造は、構造X〜XIIのプロトン化及び脱プロトン化形態の1以上を含むことは当業者には自明であろう。
【0054】
【化19】

式中、W及びX’は電荷均衡対イオンである。一実施形態では、電荷均衡対イオンX’は、無機アニオンであっても有機アニオンであってもよい。同様に、Wは、無機アニオンであっても有機アニオンであってもよい。一実施形態では、電荷均衡対イオンWは無機アニオンである。別の実施形態では、電荷均衡対イオンWは有機アニオンである。同様に、一実施形態では、電荷均衡対イオンX’は無機アニオンである。別の実施形態では、電荷均衡対イオンX’は有機アニオンである。電荷均衡対イオンX’が、塩化物、臭化物、ヨウ化物、重炭酸塩、酢酸塩、グリシン酸塩、コハク酸アンモニウムのような一価アニオンを含むことは当業者には自明であろう。同様に、電荷均衡対イオンWが、炭酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩のような多価アニオンを含むことは当業者には自明であろう。
【0055】
理想構造IXの金属キレート配位子を、以下の表3にさらに例示する。
【0056】
【表3】

別の実施形態では、本発明は、理想構造XIIIの金属キレート配位子を提供する。
【0057】
【化20】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【0058】
理想構造XIIIの金属キレート配位子を、以下の表4にさらに例示する。
【0059】
【表4】

金属キレート配位子は、様々な金属と配位錯体を形成する。一実施形態では、金属キレート配位子は、遷移金属と錯体を形成する。特定の実施形態では、遷移金属は鉄である。
【0060】
一実施形態では、金属キレート配位子は、理想構造XIVを有する。理想構造XIVを有する組成物の調製を、本明細書の実施例の項の実施例5に記す。
【0061】
【化21】

別の実施形態では、金属キレート配位子は、理想構造XVを有する。理想構造XVを有する組成物の調製を、本明細書の実施例の項の実施例2に記す。
【0062】
【化22】

さらに別の実施形態では、金属キレート配位子は、理想構造XVIを有する。
【0063】
【化23】

別の実施形態では、金属キレート配位子は、理想構造XVIIを有する。
【0064】
【化24】

一実施形態では、本発明は、遊離カルボン酸基(又はそのイオン化形態)を有する部分的に脱保護された配位子前駆体XVIIIを提供する。
【0065】
【化25】

式中、構造XVIIIに関してのみ、R8は各々独立にヒドロキシ基、保護ヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R9〜R11は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R14及びR15は各々独立にC1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基又はアリール基であり、Mは各々独立にB、Si又は炭素であり、cは0〜3であり、dは0又は1である。配位子前駆体XVIIIは、本明細書の実施例の項において実証される通り、金属キレート配位子に変換され得る。
【0066】
一般構造XVIIIの範囲に属する部分的に保護された配位子前駆体を、以下の表5に例示する。
【0067】
【表5】

一実施形態では、本発明は、構造XIXを有する一般構造XVIIIの範囲に属する部分的に脱保護された配位子前駆体を提供する。
【0068】
【化26】

一実施形態では、本発明は、XVIII(式中、基R15はフェニルである。)に対応する部分的に脱保護された配位子前駆体を提供する。
【0069】
一実施形態では、本発明は、コントラスト増強剤の合成に用いられ得る保護配位子前駆体を提供する。一実施形態では、保護配位子前駆体は、次の構造XXを有する。
【0070】
【化27】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R8〜R11の1以上が保護ヒドロキシ基又は保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、R12及びR13は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基である。本発明が提供する保護配位子前駆体に、多種多様な保護基を組み込んでよい。該保護基は、酸感受性保護基(例えばメチルチオメチル基)、塩基感受性保護基(例えばアセテート及びトリクロロアセテート基)、光感受性保護基(例えばオルト−ニトロベンジル基)、水素化分解を受けやすい基(例えばベンジル基)、及び基の不安定性を増強する金属媒介性転換を受けやすい基(例えばアリル基)を含む。
【0071】
一実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にエチル基、トリクロロエチル基、β−シアノエチル基、トリメチルシリルエチル基又は第三ブチル基である。)を提供する。一実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にエチル基である。)を提供する。別の実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にトリクロロエチル基である。)を提供する。また別の実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にβ−シアノエチル基である。)を提供する。またさらに別の実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にトリメチルシリルエチル基である。)を提供する。また別の実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立に第三ブチル基である。)を提供する。
【0072】
一般構造XXの範囲に属する保護配位子前駆体を、以下の表6に例示する。
【0073】
【表6】

一実施形態では、本発明は、構造XXの保護配位子前駆体(式中、R12及びR13は各々独立に酸感受性保護基である。)を提供する。酸感受性保護基の非限定的な例は、アセタール基、ケタール基、メトキシエトキシメチル基、t−ブチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリル基及びトリメチルシリルエチル基を含む。一実施形態では、R12は第三ブチル基である。別の実施形態では、R12はトリメチルシリル基である。別の実施形態では、R12はtert−ブチルジメチルシリル基である。また別の実施形態では、R12はトリメチルシリルエチル基である。一実施形態では、R13はTHP基である。別の実施形態では、R13はメトキシエトキシメチル基である。別の実施形態では、R13はt−ブチルジメチルシリル基である。また別の実施形態では、R13はトリメチルシリル基である。
【0074】
一実施形態では、本発明は、構造XXIの保護配位子前駆体を提供する。
【0075】
【化28】

別の実施形態では、本発明は、構造XXIIの保護配位子前駆体を提供する。
【0076】
【化29】

一実施形態では、本発明は、構造XXIIIの保護配位子前駆体を提供する。
【0077】
【化30】

一実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体を提供する。
【0078】
【化31】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R12は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基であり、R14及びR15は各々独立に水素、C1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基又はアリール基であるか;或いは、基R14及びR15は、Mと一緒になって、カルボニル基又はチオカルボニル基を形成してよく;Mは各々独立にB、Si又は炭素であり、cは0〜3であり、dは0又は1である。
【0079】
一実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にエチル基、トリクロロエチル基、β−シアノエチル基、トリメチルシリルエチル基又は第三ブチル基である。)を提供する。一実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にエチル基である。)を提供する。別の実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にトリクロロエチル基である。)を提供する。また別の実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にβ−シアノエチル基である。)を提供する。またさらに別の実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にトリメチルシリルエチル基である。)を提供する。また別の実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立に第三ブチル基である。)を提供する。
【0080】
一般構造XXIVの範囲に属する保護配位子前駆体を、以下の表7に例示する。
【0081】
【表7】

一実施形態では、本発明は、構造XXIVの保護配位子前駆体(式中、R12は各々独立にアセタール基、ケタール基、メトキシエトキシメチル基、t−ブチル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリメチルシリル基、トリメチルシリルエチル基からなる群から選択される酸感受性保護基である。)を提供する。一実施形態では、R12は第三ブチル基である。別の実施形態では、R12はトリメチルシリル基である。別の実施形態では、R12はtert−ブチルジメチルシリル基である。また別の実施形態では、R12はトリメチルシリルエチル基である。
【0082】
特定の実施形態では、本発明は、XXIVに対応する保護配位子前駆体(式中、例えばMが炭素である場合のように基R15はフェニルであり、R14はメチルである。)を提供する。
【0083】
一実施形態では、本発明は、構造XXVの保護配位子前駆体を提供する。
【0084】
【化32】

別の実施形態では、本発明は、構造XXVIの保護配位子前駆体を提供する。
【0085】
【化33】

さらに別の実施形態では、本発明は、構造XXVIIの保護配位子前駆体を提供する。
【0086】
【化34】

さらに別の実施形態では、本発明は、構造XXVIIIの保護配位子前駆体を提供する。
【0087】
【化35】

別の実施形態では、本発明は、構造XXIXの保護配位子前駆体を提供する。
【0088】
【化36】

上述した通り、本明細書全体にわたって、ある構造について例えば構造XX及びXXIVにあるような絶対立体化学も相対立体化学も示すことは意図されておらず、別段の規定がない限り、構造は考えられるすべての絶対及び相対立体化学配置を包含するように意図されている。例えば構造XXは、絶対立体化学も相対立体化学も示すことが意図されていない化合物を描写している。そのため、構造XXは、ラセミ化合物、単一鏡像異性体、鏡像異性的に富化された組成物、及びジアステレオマーの混合物を含む化合物の属を表すように意図されている。
【0089】
一実施形態では、本発明は、構造Iのコントラスト増強剤を含む医薬製剤を提供する。また別の実施形態では、本発明は、構造IIのコントラスト増強剤を含む医薬製剤を提供する。別の実施形態では、本発明が提供する医薬製剤は、構造III、IV、V、VI、VII及びVIIIから選択される1以上の構造を含む。本発明が提供するコントラスト増強剤は、種々の病的状態についてヒト患者を磁気共鳴(MR)スクリーニングするための造影剤として使用するのに適している。当業者には明らかであろうが、MRイメージングは、ヒトの健康にとって極めて重要な医療撮像技術となってきた。一実施形態では、本発明は、本発明のコントラスト増強剤を生きている対象に投与し、対象の磁気共鳴イメージングを行うことにより、放出されるシグナルを増加させ、それによって生物における組織の分化をインビボで取得するための方法を提供する。一実施形態では、本発明が提供するコントラスト増強剤は鉄キレートを含み、ここで、鉄は常磁性である。常磁性鉄中心を含む本発明が提供するコントラスト増強剤は、ヒト患者及び動物によって、より容易に排出され、そのため、磁気共鳴イメージング法後、患者から、より急速かつ完全に排泄されると考えられている。加えて、本発明が提供するコントラスト増強剤は、画質を犠牲にすることなく、公知のコントラスト増強剤と比べて低いレベルのコントラスト増強剤を、患者に投与することを可能にし得る。一実施形態では、本発明のコントラスト増強剤を使用する有用なMRコントラスト増強は、公知のMRコントラスト剤と比較して低い投与量レベルで達成される。別の実施形態では、特定の結果を達成するために、本発明が提供するコントラスト増強剤を、公知のMRコントラスト剤と比較して高い投与量レベルで患者に投与してよい。より高い投与量の本発明のコントラスト増強剤は、部分的にはかかる鉄系コントラスト増強剤の安全性強化、及びイメージング法後の患者からのコントラスト増強剤のクリアランス改善を理由として、許容され得る。一実施形態では、コントラスト増強剤は、患者の体重1kg当たり約0.001〜約5ミリモルに相当する投与量で投与される。当業者には明らかであろうが、必要とされる撮像時間の長さに応じて、本発明が提供するコントラスト増強剤を、患者体内におけるコントラスト増強剤の滞留時間を最適化するように選択及び/又はさらに修飾してよい。
【0090】
一実施形態では、本発明によるコントラスト増強剤は、循環器系、泌尿生殖器系、肝胆道系、中枢神経系を撮像するため、腫瘍、膿瘍等を撮像するために使用できる。別の実施形態では、本発明のコントラスト増強剤は、病変又は隣接する正常構造のいずれかのMR増強によって病変検出率を向上させるためにも有用となり得る。
【0091】
コントラスト増強剤は、コントラスト増強剤を所望の組織領域に導入するための任意の適切な方法によって投与できる。コントラスト増強剤を含有する医薬製剤は、無菌であるのが望ましく、典型的には静脈内投与され、MR造影剤の拡散を促進する種々の薬学的に許容される作用物質を含有し得る。一実施形態では、本発明が提供する医薬製剤は、水溶液である。一実施形態では、MR造影剤は、エタノールとコントラスト増強剤とを含む水性製剤で、患者に投与し得る。別の実施形態では、MR造影剤は、デキストロースとコントラスト増強剤とを含む水性製剤として、患者に投与し得る。また別の実施形態では、MR造影剤は、生理食塩水とコントラスト増強剤とを含む水性製剤として、患者に投与し得る。
【0092】
MR造影剤として、及びMR造影剤として使用するために所与の鉄キレート化合物の適性を決定するためのプローブとして有用であるのに加えて、本発明が提供するコントラスト増強剤は、ある特定の実施形態では、ヒト及び/又は動物における1以上の病的状態を治療する上での治療的有用性も保有し得る。一実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造Iのコントラスト増強剤を提供する。別の実施形態では、本発明は、患者における病的状態を治療するのに有用な、構造IIのコントラスト増強剤を提供する。
【0093】
一般構造Iの範囲に属する鉄キレート化合物が、様々な条件下で、MR造影剤、造影剤の発見及び開発用のプローブとして、並びに/又は治療剤として有用な塩を形成し得ることは当業者には自明であろう。本発明は、多数の新規かつ有用な鉄キレート化合物及びそれらの塩を提供する。
【0094】
本発明のコントラスト増強剤は、本明細書の実験の項において提供されるものを含む様々な方法によって調製できる。例えば、化学量論量の金属イオン及び金属キレート配位子を、必要に応じて適切なpH調整をした溶液中で混合してよい。コントラスト増強剤を、結晶化、クロマトグラフィーのような従来の方法によって単離し、医薬品投与に適した従来の医薬担体と混合してよい。
【0095】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、本発明を当業者が実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【実施例】
【0096】
方法1:ジアミン化合物1の調製
【0097】
【化37】

5ミリリットル(mL)のジメチルホルムアミド(DMF)中のブロモ酢酸tert−ブチル(3.41g、17.47mmol)の溶液を、0℃の無水ジメチルホルムアミド(30mL)中のエチレンジアミン(1.05g、17.47mmol)の溶液に、シリンジポンプを介し30分間添加した。反応混合物を約2時間静置した。標記時間の終了時に、反応混合物を液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)によって分析した。LC−MS分析は、一、ビス、ビス’、三及び四置換生成物を含むアルキル化生成物の統計的混合物の存在を示した。次いで、反応混合物を減圧濃縮し、C−18逆相クロマトグラフィーで精製した。ジアミン化合物1を含有する収集画分を合わせ、LC−MSによって評価した。m/z=289[M+H]+。
【0098】
方法2:アルデヒド化合物2の調製
【0099】
【化38】

3−ブロモサリチルアルコールイソプロピリデンアセタール(5.05g、22.1mmol)は、Meier C. et al. Eur J. Org. Chem. 2006, 197に記載されている方法を使用して調製した。ヘキサン中のn−BuLi(8.31mL、20.77mmol)を30mLの無水テトラヒドロフラン(THF)で希釈し、−75℃に冷却した。次いで、内部反応温度をアセトン/ドライアイス浴中で−70℃以下に維持しながら、15mLの無水THF中の3−ブロモサリチルアルコールイソプロピリデンアセタールの溶液を1.5時間添加した。3−ブロモサリチルアルコールイソプロピリデンアセタールの添加後、温度を−70℃以下に維持しながら、反応混合物をさらに30分間撹拌した。30分の終了時に、無水DMF(1.62mL、20.77mmol)を反応混合物に30秒間添加した。反応混合物を再平衡させて−70℃とし、次いで0℃に加温した。次いで、反応混合物をメタノール(30mL)の添加によってクエンチし、飽和NaHCO3水溶液に注ぎ入れ、次いでジクロロメタン(3×75mL)で抽出した。合わせた有機抽出物をMgSO4で乾燥し、濾過し、減圧濃縮して黄色油を得、これを高真空下で静置して凝固させた。粗製材料をフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、40gカラム、アイソクラチック、10%EtOac〜ヘキサン、254及び327nm)で精製して、アルデヒド化合物2を淡黄色固体として得た。m/z=195[M+3H]+。
【0100】
実施例1:保護配位子前駆体XXVIの調製
【0101】
【化39】

ジアミン1(0.1g、0.35mmol)及びアルデヒド2(0.13g、0.69mmol)を1,2ジクロロエタン(3.5mL)に溶解した。次いで、ナトリウムアセトキシボロヒドリド(0.33g、1.56mmol)を、撹拌した反応混合物に添加し、撹拌を終夜続けた。反応進行をLC−MSによってモニターした。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液及びジクロロメタン(10mL)で希釈した。水層と有機層とを分離し、水層をジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×25mL)、ブライン(2×25mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物XXVIを淡黄色油として得、これを、下記の勾配プログラムを30mL/分で使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、12g)で精製した:100%ヘキサンで3カラム体積分、次いで35%EtOAc〜ヘキサンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に35%EtOAc〜ヘキサンで5カラム体積分保持した。カラム溶出液を289nmでモニターし、精製したXXVIを含有する画分をプールし、減圧濃縮した。保護配位子前駆体XXVIが無色油として得られ、これを高真空下でさらに乾燥した。m/z=642[M+H]+。
【0102】
実施例2:理想構造XVの配位子の調製
【0103】
【化40】

ジオキサン(0.71mL)及び水(0.36mL)の混合物を保護配位子前駆体XXVI(0.11g、0.18mmol)に添加し、続いて、ジオキサン中4MのHCl(0.71mL)を添加した。反応混合物を2時間72℃に加熱し、脱保護の進行をLC−MSによってモニターして、完全な脱保護を確実にした。次いで、化学量論量の4M NaOHを使用して反応混合物をpH6に中和した。混合物を減圧濃縮して黄色泡状物を得、これをLC−MSによって分析すると、所望される配位子及び他の成分を含有することを示した。下記の勾配プログラムを9mL/分で使用するC18官能化シリカゲル(10×100mm waters xTerra Prep(登録商標)C18 5um)上での分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、粗生成物を精製した:2%MeCN〜0.05%TFA水溶液で0.5分間、次いで60%MeCN〜0.05%TFA水溶液で14.5分間グラジエントをかけ、最終的に60%MeCN〜0.05%TFA水溶液で3分間保持した。カラム溶出液を285nmでモニターし、純粋なXVを含有する画分をプールし、減圧濃縮して、配位子XVを無色油として得た。m/z=449[M+H]+。
【0104】
実施例3:FeHBED(OH)2IVの調製
【0105】
【化41】

配位子XV(4.5mg、7.0mmol)を脱イオン水(1.0mL)に溶解した。生じた透明溶液に、脱イオン水(100mL)に溶解した1.5mgのFeCl3.6H2O(6mmol)を添加して、暗赤色溶液を形成し、次いでこれをNaHCO3(300uL、0.1M)でクエンチした。反応混合物をSephadex(登録商標)G−10カラムに通し、脱イオン水で溶出して、鉄キレートIV(FeHBED(OH)2とも称される)(式中、Qはナトリウムカチオンである。)を透明赤色溶液として得た。m/z=501[M+H]+、524[M+Na]+。
【0106】
方法3:アルデヒド5の調製
【0107】
【化42】

アルデヒド5は、Koskinen, A. M. P.; Abe, A. M. M.; Helaja, J. Org. Lett. 2006, 8, 20, 4537に記載の手順(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)に従って調製した。
【0108】
実施例4:保護配位子前駆体XXVIIIの調製
【0109】
【化43】

ジアミン1(0.1g、0.35mmol)及びアルデヒド5(0.14g、0.69mmol)を1,2ジクロロエタン(3.5mL)に溶解し、続いてナトリウムアセトキシボロヒドリド(0.33g、1.56mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌させ、LC−MS分析により、反応の完了を確認した。反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液及びジクロロメタン(10mL)で希釈した。水層と有機層とを分離し、水層をジクロロメタン(3×25mL)で抽出した。合わせた有機層を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×25mL)、ブライン(2×25mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物を淡黄色油として得、これを、下記の勾配プログラムを30mL/分で使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、12g)で精製した:100%ヘキサンで3カラム体積分、次いで35%EtOAc〜ヘキサンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に35%EtOAc〜ヘキサンで5カラム体積分保持した。カラム溶出液を289nmでモニターし、精製した保護配位子前駆体XXVIIIを含有する画分をプールし、減圧濃縮して、XXVIIIを無色油として得た。m/z=669[M+H]+。
【0110】
実施例5:理想構造XIVの配位子の調製
【0111】
【化44】

ジオキサン(0.88mL)及び水(0.44mL)を保護配位子前駆体XXVIII(0.15g、0.22mmol)に添加し、続いて、ジオキサン中4MのHCl(0.88mL)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌させ、次いで72℃で約90分間加熱した。保護配位子前駆体XXVIIIの完全な脱保護をLC−MSで確認した。次いで、反応混合物を減圧濃縮し、高真空下でさらに乾燥して、配位子XVを白色固体として得た。m/z=477[M+H]+。該生成物混合物の濃縮で小程度の分解(約5〜10%)が観察されたことに留意すべきである。
【0112】
実施例6:FeHBED(Me)2(OH)2IIIの調製
【0113】
【化45】

脱イオン水(1.5mL)を配位子XIV(5.0mg、10mmol)及びFeCl3.6H2O(2.2mg、8.1mmol)と合わせて、濁った紫色の混合物を得た。次いで、NEt3HCO3の水溶液(0.5mL、0.1M)を添加して反応混合物を中和し、LC−MSで確認したところ鉄キレートIIIを含有する透明な暗紫色溶液を得た。混合物を12時間撹拌し、次いでSephadex(登録商標)G−10プラグに通過させ、脱イオン水で溶出し、続いて、ジエチルエーテル(2×2mL)で洗浄して紫色溶液を得、これを減圧濃縮した。得られた紫色固体をCH3CN(2×1mL)で洗浄し、真空乾燥して、鉄キレートIII(式中、電荷均衡対イオンQはトリエチルアンモニウムであった。)を紫色固体として得た。m/z=530[M+2H]+。
【0114】
方法4:保護ジアミン6の調製
【0115】
【化46】

ジクロロメタン(52mL)中の2,3−ジアミノブタン−1,4−ジオールビスヒドロクロリド(1.0g、5.8mmol)の、示されている絶対立体化学を有する溶液に、イミダゾール(1.7g、25.9mmol)、続いてt−ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS−Cl、1.6g、10.6mmol)を添加した。反応混合物を終夜撹拌し、次いで飽和炭酸カリウム水溶液でクエンチした。水層と有機層とを分離した。水層をジクロロメタン(3×25mL)で抽出し、合わせた有機層を、飽和炭酸カリウム水溶液(2×25mL)、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して、粗製保護ジアミン6を結晶性固体として得、これを、下記の勾配プログラムを40mL/分で使用する順相シリカゲル(40gカラム)上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製した:0.5%トリエチルアミンを加えた100%ジクロロメタンで2カラム体積分、次いで0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた20%MeOH〜ジクロロメタンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた20%MeOH〜ジクロロメタンで3カラム体積分保持した。カラム溶出液を230nmでモニターし、純粋な生成物を含有する画分をプールし、減圧濃縮した。真空乾燥により、示されている絶対立体化学を有する保護ジアミン6を淡黄色油として得た。m/z=349[M+H]+。
【0116】
方法5:保護サリチルアルデヒド7の調製
【0117】
【化47】

保護アルデヒド7は、Breslow, R.; Schephartz, A. JACS, 1987, 109, 1814及びHinterman, L.; Masuo, R.; Suzuki, K. Org. Lett. 2008, 10, 21, 4859に記載された手順(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。)と同様に調製した。
【0118】
方法6:ビスイミン8の調製
【0119】
【化48】

ジクロロメタン(10mL)中の保護ジアミン6(1.3g、3.73mmol)の撹拌懸濁液に、トリエチルアミン(0.94g、9.32mmol)及びMgSO4(1.80g、14.9mmol)を添加した。室温で1.5時間撹拌した後、ジクロロメタン(5mL)中のアルデヒド7(1.57g、7.46mmol)の溶液を添加し、反応混合物を終夜撹拌した。ビスイミン生成物8は加水分解に対して感受性であったため、ワークアップ及びクロマトグラフィー段階から水を排除する処置を施した。それから、反応混合物を濾過し、次いで減圧濃縮した。粗生成物をジエチルエーテルで粉砕し、濾過し、減圧濃縮して黄色油を得、これを真空乾燥した。出発材料からビスイミン8への完全変換を、NMR分光法で確認した。1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ 0.06 (s, 6H), 0.11 (s, 6H), 0.93 (s, 18H), 3.36 (s, 6H), 3.54-3.58 (m, 4H), 3.65-3.70 (m, 2H), 3.75-3.80 (m, 2H), 3.81-3.84 (m, 4H), 4.07-4.13 (m, 2H), 5.32 (s, 4H), 7.03-7.09 9m, 2H), 7.20-7.25 (m, 2H), 7.37-7.43 (m, 2H), 8.01-8.07 (m, 2H)及び8.76 (s, 2H); 13C[1H]NMR δ -5.49, 18.13, 25.69, 50.60, 66.83, 67.92, 71.59, 74.55, 93.70, 114.66, 121.65, 125.61, 127.42, 131.52, 156.77及び157.86.
方法7:ジアミン9の調製
【0120】
【化49】

メタノール:ジクロロメタン(1.9mL:7.5mL)中のビスイミン8(1.38g、1.88mmol)を、0℃の水素化ホウ素ナトリウム(0.28g、7.5mmol)で処理した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、次いで飽和炭酸カリウム水溶液で希釈した。水層と有機層とを分離し、水層をジクロロメタン(3×25mL)で抽出し、合わせた有機層を、飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×25mL)、ブライン(2×25mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して粗生成物を淡黄色油として得、これを、下記の勾配プログラムを60mL/分で使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、40gカラム)で精製した:0.5%トリエチルアミンを加えた100%ジクロロメタンで3カラム体積分、次いで0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた5%MeOH〜ジクロロメタンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた5%MeOH〜ジクロロメタンで5カラム体積分保持した。カラム溶出液を285nmでモニターし、精製した材料を含有する画分をプールし、減圧濃縮し、次いで真空乾燥して、精製したジアミン9を無色油として得た。m/z=738[M+H]+。
【0121】
実施例7:保護配位子前駆体XXIの調製
【0122】
【化50】

ヒューニッヒ塩基(0.20g、1.55mmol)をジアミン9(0.29g、0.39mmol)のDMF(2.9mL)溶液に添加し、混合物を30分間撹拌した。別個のバイアル中で、ヨウ化カリウム(0.19g、1.16mmol)をDMF(1mL)に溶解し、ブロモ酢酸tert−ブチル(0.16g、0.82mmol)と合わせ、混合物を30分間撹拌し、次いで、DMF中のジアミン9及びヒューニッヒ塩基の溶液に添加し、混合物を80℃で終夜撹拌し、この時間の後、LC−MSは、反応が完了まで進んだことを示し、微量不純物の存在も示した。反応混合物を減圧濃縮し、残留物をTHFに溶解し、濾過した。次いで、粗生成物をSiO2上に分散させ、下記の勾配プログラムを30mL/分で使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、12gカラム)で精製した:20%EtOAc〜0.5%トリエチルアミンを加えたヘキサンで3カラム体積分、次いで88%EtOAc〜0.5%トリエチルアミンを加えたヘキサンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に88%EtOAc〜0.5%トリエチルアミンを加えたヘキサンで5カラム体積分保持した。カラム溶出液を277nmでモニターし、精製した材料をプールし、減圧濃縮した。真空乾燥により、保護配位子前駆体XXIを無色油として得た。m/z=966[M+H]+。
【0123】
実施例8:FeHBED(OH’)2VIIの調製
【0124】
【化51】

ジオキサン(1.22mL)及び脱イオン水(1.22mL)中の保護配位子前駆体XXI(0.18g、0.18mmol)の溶液に、FeCl3.6H2O(5.7mg、0.17mmol)を添加した。反応混合物をジオキサン中4MのHCl(1.22mL)で処理し、室温で終夜撹拌し、次いで、油浴中で2時間75℃に加熱した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液で中和した反応混合物アリコートのLC−MS分析により、反応の完了を確認した。次いで、反応混合物を氷浴中で0℃に冷却し、重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチした。生じた混合物を脱イオン水(10mL)及びジクロロメタン(10mL)で希釈した。水層と有機層とを分離した。水層をジクロロメタン(3×25mL)で洗浄し、合わせた有機層を脱イオン水(2×25mL)で抽出した。水層を合わせ、減圧濃縮(50トル、40℃、30分)して、体積を低減させた。生じた赤色溶液を30,000分子量遮断フィルターに通して濾過し、凍結乾燥して、鉄キレートVIIを、中心にアスタリスク(*)を付した、保護配位子前駆体XXIに示すものと同じ絶対立体化学を有する赤色固体として得た(式中、電荷均衡対イオンQはナトリウムカチオンである。)。生成物鉄キレートVIIのLC−MS分析では、2つのジアステレオマーの65:35比での混合物、m/z=502[M+H]+を、保護配位子前駆体XXIに対応する微量の遊離配位子とともに示した。
【0125】
方法8:化合物10の調製
【0126】
【化52】

塩化チオニル(31.7g、266.8mmol)を、メタノール(75mL)中の2,3−ジアミノプロピオン酸一塩酸塩(5.0g、35.6mmol)の撹拌懸濁液に、約5分間滴下した。反応混合物を約80℃に約6時間加熱した。標記時間の終了時に、反応混合物を冷却し、揮発物を減圧下で除去して、化合物10(6.8g、100%)をオフホワイトの固体として得た。1H NMR(MeOD):δ4.51(m,1H)、δ3.96(s,3H)、δ3.53(m,2H)。
【0127】
方法9:保護アルデヒド11の調製
【0128】
【化53】

ジイソプロピルエチルアミン(8.64g、66.8mmol)を、氷浴中、0℃のジクロロメタン(477mL)中のサリチルアルデヒド(5.83g、47.7mmol)の撹拌溶液に添加した。反応混合物を1時間静置し、次いで、クロロメトキシエタン(4.74g、50.1mmol)を5分間滴下した。淡黄色の反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム水溶液(100mL)で希釈し、層を分離した。水層をジクロロメタン(2×50mL)で抽出した。有機層を合わせ、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して、粗生成物を黄色油として得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサンから1:9酢酸エチル:ヘキサン)で精製して、保護アルデヒド11をほぼ無色の油として得た。m/z=181[M+H]+。
【0129】
方法10:ビスイミン12の調製
【0130】
【化54】

無水塩化メチレン(50mL)中のジアミン10(2.69g、14.1mmol)の撹拌溶液に、トリエチルアミン(6.41g、63.4mmol)を添加した。反応混合物を約45分間撹拌した。次いで、MgSO4(6.78g、56.3mmol)を添加し、混合物をさらに45分間撹拌した。次いで、塩化メチレン(5mL)中の保護アルデヒド11(5.15g、28.6mmol)の溶液を2分間添加し、無色混合物を室温で18時間撹拌した。黄橙色の反応混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮して、油を得た。油を塩化メチレンに溶解し、撹拌しながらジエチルエーテル(250mL)に添加して、白色沈殿物(Et3NHCl)を得た。混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮して、ビスイミン12を黄橙色油として得、その構造をNMR分光法で確認した。1H NMR (CD2Cl2): δ 8.72 (s, 1H), δ 8.70 (s, 1H), δ 7.98 (dd, J=7.0 Hz, J=7.0 Hz, 1H), δ 7.91 (dd, J=7.0 Hz, J=7.0 Hz, 1H), 7.38 (m, 2H), δ 7.15 (t, J=8.0 Hz, 2H), δ 7.02 (m, 2H), δ 5.23 (s, 4H), δ 4.43 (m, 1H), δ 4.32 (m, 1H), δ 3.91 (m, 1H), δ 3.79 (s, 3H), δ 3.68 (m, 4H), δ 1.19 (t, J=7.0 Hz, 1H).
方法11:ジアミン13の調製
【0131】
【化55】

0℃(氷浴)の無水テトラヒドロフラン(50mL)中の化合物12(2.0g、4.52mmol)の撹拌溶液に、水素化アルミニウムリチウム(0.69g、18.1mmol)を約5分間少量ずつ添加した。生じた帯緑灰色の反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。次いで、脱イオン水(8〜10mL)を5分間滴下し、生じた混合物を1.5時間撹拌した。混合物を濾過し、濾液を減圧濃縮して、粗生成物ジアミン13を黄色油として得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO2、99%塩化メチレン:1%トリエチルアミンから94%塩化メチレン:5%メタノール:1%トリエチルアミン)で精製して、精製したジアミン13を淡黄色油として得た。m/z=419[M+H]+。
【0132】
方法12:ジアミン14の調製
【0133】
【化56】

無水ジクロロメタン(50mL)中のジアミン13(1.00g、2.39mmol)の冷却した(0℃)撹拌溶液に、イミダゾール(0.65g、9.56mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌し、この時間の後、塩化tert−ブチルジメチルシリル(0.38g、2.51mmol)を添加した。得られた淡黄色の反応混合物を室温に加温し、18時間撹拌した。次いで、飽和炭酸カリウム水溶液(50mL)を添加し、層を分離した。水層をジクロロメタン(2×25mL)で抽出し、有機層を合わせ、減圧濃縮して、粗生成物を黄色油として得た。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカ、ヘキサンから1:9酢酸エチル:ヘキサン)で精製して、精製したジアミン14(1.08g、85%)をほぼ無色の油として得た。m/z=533[M+H]+。
【0134】
実施例9:保護配位子前駆体6cの調製
【0135】
【化57】

N,N−ジメチルホルムアミド(20mL)中のジアミン14(1.08g、2.03mmol)の撹拌溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.79g、6.08mmol)を添加した。撹拌を45分間続け、続いて、N,N−ジメチルホルムアミド(5mL)中のヨウ化カリウム(1.35g、8.11mmol)及びブロモ酢酸tert−ブチル(0.83g、4.26mmol)の別個に調製した溶液を添加した。生じた淡黄色の反応混合物を80℃で18時間加熱した。生じた帯赤褐色の生成物混合物を室温に冷却し、減圧濃縮して、粗生成物を暗色油として得、これをカラムクロマトグラフィー(SiO2、ヘキサンから1:9酢酸エチル:ヘキサン)に付して、精製した保護配位子前駆体6c(0.88g、57%)を淡黄色油として得た。m/z=762[M+H]+。
【0136】
実施例10:配位子4fの調製
【0137】
【化58】

アセトニトリル(1mL)中の保護配位子前駆体6c(0.88g、1.15mmol)の撹拌溶液に、1Mの塩酸水溶液(2mL)を添加し、反応物を18時間50℃に加熱した。反応混合物を5Nの水酸化ナトリウム(0.80mL)でpH7.1〜7.3に中和した。中和した溶液を減圧濃縮して、配位子4fをオフホワイトの固体として得、これをさらに精製することなく使用した。m/z=419[M+H]+。
【0138】
実施例11:FeHBED(OH)VIの調製
【0139】
【化59】

配位子4f(488mg、1.15mmol)をMeOH(7mL)に溶解して、均質な無色溶液を得た。MeOH(3mL)に溶解したFeCl3(132mg、81mmol)の橙色溶液を配位子溶液に滴下して、紫色の反応混合物を形成し、これを室温で10分間撹拌した。次いで、ヒューニッヒ塩基(NEtiPr2、300μL、1.7mmol)を5分間滴下して、6.5のpHを有する均質な暗赤色溶液を得た。暗赤色溶液を12時間撹拌させた。脱イオン水(5mL)を添加し、生じた混合物をEt2O(3×15mL)で抽出した。水層をSephadex(登録商標)G10プラグ(2g)の上に堆積させ、2部(2×10mL)の脱イオン水、続いて2部のMeOH(2×10mL)で溶出して、均質な赤色溶液を得た。透明赤色溶液を凍結乾燥して、鉄キレートVI(式中、電荷均衡対イオンQは、NEtiPr2のプロトン化形態である。)を赤色固体(269mg、56%収率)として得た。LC−MS472m/z[M+H]+。UV−Vis(DI)λmax=492nm。
【0140】
方法13:ビスイミン15の調製
【0141】
【化60】

トリエチルアミン(2.38g、23.6mmol)及びMgSO4(2.52g、20.5mmol)を、ジクロロメタン(15mL)中のジアミンビスヒドロクロリド10(1.00g、5.23mmol)の懸濁液に添加し、混合物を室温で1.5時間撹拌した。次いで、ジクロロメタン(6mL)中の保護アルデヒド2(2.04g、10.4mmol)の溶液を添加し、反応混合物を室温で終夜撹拌した。所望されるビスイミン生成物15は、加水分解に対して感受性が高い疑いがあったため、ワークアップ及びクロマトグラフィー段階から水を排除する処置を施した。反応混合物を濾過し、減圧濃縮して、NMRで確認したところ少量の未反応アルデヒドを含有するビスイミン15を得た。1H NMR (CD2Cl2, 400 MHz) δ 1.50 (s, 3H), 1.51 (s, 3H), 1.58 (s, 6H), 3.81 (s, 3H), 3.92-4.00 (m, 1H), 4.33-4.41 (m, 1H), 4.45-4.51 (m, 1H), 4.85 (s, 4H), 6.92-6.97 (m, 2H), 7.02-7.08 (m, 2H), 7.84-7.88 (m, 1H), 7.92-7.96 (m, 1H), 8.69 (s, 1H)及び8.71 (s, 1H); 13C[1H] NMR δ 24.38, 24.43, 24.73, 24.78, 46.20, 52.00, 60.62, 63.41, 73.51, 100.04, 100.15, 119.99, 120.01, 123.62, 124.00, 125.57, 125.79, 127.12, 127.57, 130.90, 150.94, 151.21, 158.63, 159.72, 171.48及び188.59.
方法14:ジアミン16の調製
【0142】
【化61】

メタノール(5.23mL)中の水素化ホウ素ナトリウム(1.19g、31.4mmol)の溶液を、0℃のジクロロメタン(20.9mL)中のビスイミン15(2.44g、5.23mmol)の撹拌溶液に、添加漏斗を介して滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌し、次いで、飽和炭酸カリウム水溶液で希釈した。水層と有機層とを分離した。水層をジクロロメタン(3×25mL)で抽出し、合わせた有機層を飽和重炭酸ナトリウム水溶液(2×25mL)及びブライン(2×25mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥し、濾過した。濾液を減圧濃縮して、粗生成物ジアミンを淡黄色油として得、これを、下記の勾配プログラムを60mL/分で使用するフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、40gカラム)で精製した:0.5%トリエチルアミンを加えた100%ジクロロメタンで3カラム体積分、次いで0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた5%MeOH−ジクロロメタンで20カラム体積グラジエントをかけ、最終的に0.5%トリエチルアミンをそれぞれ加えた5%MeOH−ジクロロメタンで5カラム体積分保持した。カラム溶出液を285nmでモニターし、精製した生成物を含有する画分をプールし、減圧濃縮した。ジアミン16が無色油として得られ、これを高真空下で乾燥した。m/z=444[M+H]+。
【0143】
実施例12:保護配位子前駆体XXXの調製
【0144】
【化62】

ジアミン16をDMF(7.5mL)に溶解した。ヒューニッヒ塩基(0.49g、3.8mmol)を添加し、混合物を30分間撹拌した。別個のバイアル中で、ブロモ酢酸tert−ブチル(0.39g、2.0mmol)をヨウ化カリウム(0.47g、2.9mmol)のDMF(2mL)溶液に添加し、混合物を約30分間撹拌した。次いで、ヨウ化カリウム−ブロモ酢酸tert−ブチル混合物を、ジアミン16及びヒューニッヒ塩基の溶液に添加し、反応混合物を80℃で終夜撹拌した。生成物混合物をLC−MSによって分析すると、反応が完了まで進んだことを示した。反応混合物を減圧濃縮し、残留物をTHFに溶解し、濾過した。次いで、濾液をSiO2に吸着させ、カラムクロマトグラフィー(SiO2、12gカラム、17.5%EtOAc〜25%EtOAc:ヘキサンで25カラム体積(CV)、281nmで溶出液を観察)に付した。精製した生成物を含有する画分を合わせ、減圧濃縮し、真空乾燥して、保護配位子前駆体XXXを無色油として得た。LCMS m/z=672[M+H]+、693[M+Na]+。
【0145】
実施例13:鉄キレートVの調製
【0146】
【化63】

保護配位子前駆体XXXをアセトニトリル(1.38mL)及び水(0.17mL)に溶解し、FeCl3(3.6mg、22.6μmol)、続いて濃HCl(12M、172μL)を添加した。反応容器を密閉し、70℃に加熱した。飽和重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチしたアリコートのLC−MS分析によって、反応の進行をモニターした。4時間後、保護配位子前駆体XXXから生成物鉄キレートへの変換が完了したように見えた。次いで、飽和重炭酸ナトリウム水溶液の添加によって反応混合物をクエンチし、減圧濃縮乾固した。残留物を必要最低限量の水に溶解し、5μmのナイロンフィルターに通して濾過した。下記の勾配プログラムを9mL/分で使用するC18官能化シリカゲル(10×100mm waters XTerra Prep(登録商標)C18 5μm)上での分取HPLCによって、粗生成物を精製した:100%水で0.5分間、次いで10%MeCN〜0.05%TFA水溶液で14.5分間グラジエントをかけ、最終的に10%MeCN〜0.05%TFA水溶液で3分間保持した。カラム溶出液を494nmでモニターし、精製した生成物鉄キレートを含有する画分をプールし、減圧濃縮し、高真空下で乾燥して、鉄キレートV(式中、Qはナトリウムカチオンである。)を赤色固体として得た。m/z=532[M+H]+、554[M+Na]+。UV−Vis(DI)λmax=494nm。
【0147】
緩和率の決定
濃度1mMのコントラスト増強剤のストック溶液を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で調製し、鉄濃度を元素分析によって検証した。別個の0.75mM、0.50mM及び0.25mMの試料を、ストックからPBS希釈によって調製し、T1及びT2緩和時間を、Bruker Minispec(登録商標)mq60機器(60MHz、40℃)で、各使用試料について3通り記録した。線形最小二乗回帰分析後、Feキレート濃度に対してプロットした1/Tx(x=1、2)の勾配として緩和率(r1及びr2)が得られた。構造III、IV、V、VI、VII及びVIIIのコントラスト増強剤並びにヒドロキシル化されていない対照コントラスト増強剤についてのデータ。データを以下の表8にまとめ、本発明が提供するコントラスト増強剤が呈した緩和率に対するヒドロキシル化の驚くべき効果を、対照試料と比べて例証する。
【0148】
【表8】

上記の実施例は、本発明の特徴の一部を例証するための例示にすぎない。添付の特許請求の範囲は考えられる限り広い範囲で本発明を特許請求するものであり、本明細書に記載した実施例は多種多様な実施形態から選択された実施形態を例示している。したがって、添付の特許請求の範囲は本発明の特徴を例示するために利用される実施例の選択によって限定されるべきでない。特許請求の範囲で用いる「含む」という用語は、論理的には、例えば特に限定されないが「から本質的になる」及び「からなる」のような様々な定義の異なる語句も包含して意味する。必要に応じて範囲を記載したが、これらの範囲は部分範囲を包含する。これらの範囲内での変動は当業者には自明であろうし、また未だ公表されていなくてもこれらの変動は可能であれば添付の特許請求の範囲に包含されると解すべきである。また、科学及び技術の進歩により、言語の不正確さのために現在では想定されていない均等物及び代替物が可能になることも予想されるが、これらの変形例も可能であれば添付の特許請求の範囲に包含されると解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の構造Iの鉄キレートを含むコントラスト増強剤。
【化1】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項2】
次の構造IIコントラスト増強剤。
【化2】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項3】
ラセミ体、単一鏡像異性体、鏡像異性的に富化された組成物、又はジアステレオマーの混合物である、請求項1又は請求項2記載のコントラスト増強剤。
【請求項4】
次の構造IIIを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化3】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項5】
次の構造IVを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化4】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項6】
次の構造Vを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化5】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項7】
次の構造VIを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化6】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項8】
次の構造VIIを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化7】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項9】
次の構造VIIIを有する、請求項2記載のコントラスト増強剤。
【化8】

式中、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項10】
次の理想構造IXの金属キレート配位子。
【化9】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【請求項11】
次の理想構造XIIIの金属キレート配位子。
【化10】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とする。
【請求項12】
次の構造Iのコントラスト増強剤を含む医薬製剤。
【化11】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R7は各々独立に水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R7の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項13】
次の構造IIのコントラスト増強剤を含む医薬製剤。
【化12】

式中、R1は各々独立にヒドロキシ基、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R2〜R4は、水素、C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R1〜R4の1以上がヒドロキシ基又はC1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、Qは電荷均衡対イオンである。
【請求項14】
次の構造XXの保護配位子前駆体。
【化13】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、bは0〜4であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であるが、R8〜R11の1以上が保護ヒドロキシ基又は保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基であることを条件とし、R12及びR13は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基である。
【請求項15】
次の構造XXIVの保護配位子前駆体。
【化14】

式中、R8は各々独立に保護ヒドロキシ基、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R9〜R11は各々独立に水素、保護C1〜C3ヒドロキシアルキル基又はC1〜C3アルキル基であり、R12は各々独立にC1〜C30脂肪族基、C3〜C30脂環式基及びC2〜C30芳香族基からなる群から選択される保護基であり、R14及びR15は各々独立にC1〜C10アルキル基、C1〜C10アルコキシ基又はアリール基であり、Mは各々独立にB、Si又は炭素であり、cは0〜3であり、dは0又は1である。

【公表番号】特表2013−506633(P2013−506633A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531405(P2012−531405)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064440
【国際公開番号】WO2011/039244
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】