説明

ヒドロフルオロカーボンの製造方法

ジクロロメタン等の反応性有機化合物をフッ素化して、少なくとも所望のC1 HFC(ジフルオロメタン(HFC−32)等)、未反応の反応性有機化合物、及び前記所望のヒドロフルオロカーボン化合物の沸点と前記反応性有機化合物の沸点の間の沸点を有する副生成物(クロロメタン(HCC−40)等)を含む反応生成物を生じること、及び、前記反応生成物から少なくとも相当部分の前記副生成物を除去して高純度の生成物ストリームを生じること、を含むフッ素化されたC1 HFCsを製造するための方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、フルオロカーボンの製造、及びジフルオロメタン等のヒドロフルオロカーボンの製造に関する。
【0002】
発明の背景
ヒドロフルオロカーボン(HFCs)及びフルオロカーボン(FCs)の製造のための多くの方法が知られている。ある種の既存の方法は、塩素化された有機化合物をフッ素化して所望のHFC化合物またはFC化合物を製造すること、及び蒸留によってその所望の化合物を回収することを含んでいる。液相方法及び気相方法の双方の方法が利用できるが、ある種の適用においては気相触媒反応が好ましい。例えば、ある種のジフルオロメタン(HFC−32)の製造方法においては、例えばジクロロメタン(HCC−30)等の塩素化された有機化合物と、例えばフッ化水素(HF)等のフッ素化剤とが、通例、予備加熱の後、フッ素化触媒の存在下で反応され、反応生成物ストリームを生じる。
【0003】
所望のHFC化合物またはFC化合物は、未反応のHF及び反応の副生成物等の他の物質をも含んでいる反応生成物ストリームからの蒸留によって回収される。蒸留は当該分野で周知であり、典型的には、反応生成物ストリームを、相対的に所望の化合物に富んだストリームと、最終生成物において望まれない化合物(未反応成分及び不要な副生成物等)に相対的に富んだストリームとに分離するように選択された圧力及び温度で操作される蒸留手段(パックドカラムまたはトレイを装備した蒸留手段等)の使用を含む。高い操作圧力が、通例、高い蒸留温度に対応するように、蒸留の圧力と温度は相互関係にある。蒸留温度が、分留塔の加熱及び冷却の要件を決定する。
【0004】
フッ素化方法の望ましさは、概して、その方法から得られる収率と生成物純度に関連している。例えば、所望の生成物がHFCジフルオロメタンの場合、反応生成物から回収されるその生成物の量は通常、できるだけ高くするべきであり、そして、最終生成物ストリームに含まれる不純物の種類と量はできるだけ低くするべきである。従来の方法は、収率及び生成物純度から判断して、一定水準の成功を達成しているが、発明者らは、先行技術のある種の特徴が生成物の収率及び純度の継続的な改良に対して障害を引き起こすことがあると認識するに至った。
【0005】
例えば、HFCs及びFCsを製造するための多くの先行技術の方法は、低い収率をもたらす、フッ素化中の触媒の失活の問題を被っている。触媒活性を維持する目的で、塩素のような再生剤が、概して、連続的、半連続的またはバッチ様式において、反応容器中に反応物質と共に送り込まれている。しかしながら、塩素の添加は、ある条件では、概して望まない副生成物の形成を増加させることがあり、そしてそのことが次に、収率及び生成物純度に負の効果を与えることがあるということを、発明者らは認識するに至った。
【0006】
発明の要旨
発明者らは、C1 HFCs及びFCsの製造において、特に塩素化された反応物質からの製造及び塩素が触媒再生剤として使用された場合の製造において、ある種の望まれない塩素置換された副生成物が生成することがあることを発見し、そして製造方法の他の特質を実質的に低下させることなくそのような望まれない副生成物のレベルを、除きまたは減少させるために利用可能な方法を発見した。本明細書において使用される“C1”の用語は、単一の炭素原子を有する化合物を表すために便宜的に使用される。
【0007】
発明者らは、そのような方法、特に所望のフルオロカーボンがHFC−32である方法において、中間的な沸騰の化合物(intermediate boiling compounds)、特にクロロメタン(CHClまたはHCC−40)の形成が、特に反応系が塩素等の触媒再生剤を使用している場合に、有害な程度で起こることがあることを発見した。便宜の目的のため、“中間的な沸騰(intermediate boiling)”の用語は、所望のHFCの沸点より高く、そして反応性有機化合物及び/またはフッ素化剤の沸点より低い沸点を有する化合物または化合物の組み合わせを意味する。発明者らは、好ましい態様において、(1)塩素化された反応物質をフッ素化して所望のC1 HFC及び/またはFC、並びに少なくとも一種の中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物(好ましくはジクロロジフルオロメタン(CFC−12)及び/またはHCC−40を含む)を含む反応生成物を生成すること、及び(2)前記反応生成物から少なくとも一種の前記副生成物の少なくとも相当部分を除去して前記反応生成物ストリームに対して相対的に低い濃度の前記副生成物を含む生成物ストリームを生成すること、によって最終の生成物ストリーム中の中間的な沸騰の塩素化された副生成物の一種以上の濃度、特にHCC−40の濃度を、低下させることによって全体の方法を改良することができることを発見した。発明者らは、そのような方法のために、特に所望の生成物がHFC−32である方法のために、本発明の除去工程は、好ましくは、(1)中間の塩素化された副生成物を少なくとも第二の反応段階でフッ素化すること、(2)好ましくは蒸留サイドストリーム(distillation side stream)を使用して反応生成物から相対的に中間の塩素化された副生成物に富むストリームを除去すること、または(3)(1)と(2)の各工程の組み合わせ、を含むということを発見した。
【0008】
好ましい態様の詳細な説明
好ましい態様において、本発明はフッ素化された有機化合物を製造するための方法を提供する。その方法は(a)好ましくはフッ素化触媒の存在下、そして好ましくは相対的に低い反応圧を維持しながら、有機化合物をフッ素化して少なくとも一種の所望のC1 FC及び/または所望のC1 HFC、並びに少なくとも一つの不要なC1副生成物を含む反応生成物を生成すること(ここで、その副生成物は、前記所望の生成物と前記フッ素化剤の間の沸点、または前記所望の生成物と前記フッ素化される有機化合物の間の沸点、または前記所望の生成物と前記フッ素化される有機化合物及び前記フッ素化剤の双方との間の沸点を有する);及び(b)反応生成物から一つ以上の副生成物を除去すること、を含む。
【0009】
ここで図1を参照すると、本発明は、好ましくは、少なくとも一つのインプットストリーム(20)を有するフッ素化工程(10)を含む。図面に示されている総てのストリームと同様に、供給ストリーム(20)は便宜のためだけの目的で、単一のストリームとして図面に示されているということを、当業者は認識するであろう。ストリーム(20)は、単一のストリームだけではなく、反応容器などの関連した単位操作に同一または異なった位置で導入される二つ以上のストリームを含みそして表すことを意図しているということが理解されるであろう。さらに、反応容器(10)は単一のブロックで表されているが、しかし、連続したまたは平行した構成、または連続した及び平行した構成の組み合わせ、に関係した二つ以上の分離した容器または単位操作の可能性をも含みそして表すことを意図しているということを、当業者は認識するであろう。今一度、単位操作のためのブロック図の利用は、図を通して、そのような総ての組み合わせを含むことを意図しているということが認識されるであろう。
【0010】
反応工程(10)からの流出は反応生成物ストリーム(30)である。その反応生成物は、所望の化合物及び少なくとも一つの中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物(好ましくはCFC−12及び/またはHCC−40及び/またはこれらの組み合わせ)を含む。反応生成物ストリーム(30)は、一般に、未反応の反応物質、触媒及び他の副生成物(その内のいくらから中間的な沸騰の化合物でも有り得る)をも含んでいるであろう。
【0011】
その反応生成物ストリームは、反応生成物から相当量の前述の副生成物を除去するために働く、図1のブロック(40)で表される、一つ以上の単位操作に導入される。本発明の除去工程は、従って、好ましくは、所望のC1 HFC及び/またはFCの望ましくは高純度及び/または望ましくは高収率の生成物ストリーム(50)を生じる。除去工程(40)からの、フッ素化工程(10)に再循環されるストリーム及び/またはさらなる加工または廃棄に送られるストリームを含む一つ以上の流出ストリーム(示していない)が存在してもよいということが、認識されるであろう。
【0012】
フッ素化工程
本発明のフッ素化工程は、広範な操作条件で実行される単位操作の多数の組み合わせのいずれか一つを含むことができ、そして、そのような総ての組み合わせ及び変法は本発明の範囲に含まれるものである。好ましい態様において、フッ素化工程は、フッ素化触媒の存在下で行なわれる気相フッ素化反応を含む。そして、ダウンストリーム操作の操作圧力に影響する、その反応の圧力範囲は、通例、不要な副生成物の形成を最小にするように選択されることが好ましい。より具体的には、反応の圧力範囲は、従来高温蒸留に使用されている圧力より低いことが好ましい。
【0013】
反応工程は、フッ素化剤及び反応性有機化合物を適切な反応容器または反応コンテナに導入することを含む。当該分野では、多数の適切なフッ素化剤が知られており、そして、そのような剤の総てが、本発明での使用に適応性がある。好ましいフッ素化剤は、フッ化水素(HF)を、そしてより好ましくは実質的に無水のフッ化水素(HF)を、例としてあげることができる。反応中の水の存在は使用することができるある種のフッ素化触媒を失活させる傾向にある。本明細書において使用される、実質的に無水、という語は、HFが約0.05質量%未満の水を含んでいることを意味する。ある好ましい態様において、HFは約0.02質量%未満の水を含んでいる。しかしながら、使用する触媒の量を増やすこと等の、触媒の水の存在を補うための工程をとることができ、そして、そのことは実質的に無水でないHFの使用を許すであろうということが理解されるべきである。
【0014】
反応性有機化合物は、反応条件下でフッ素化剤と反応してより高度にフッ素化された化合物を与えることのできる任意の化合物である。非常に好ましい態様において、反応性有機化合物は、フッ素で置換できる、炭素に結合した塩素原子または他の原子、及び/またはフッ素で飽和されることができる炭素−炭素不飽和結合、を含む。適した反応性有機化合物は、例えば、ヒドロクロロフルオロカーボン類(HCFCs:炭素、塩素、フッ素及び水素を含む化合物)、ヒドロクロロカーボン類(HCCs:炭素、塩素及び水素を含む化合物)、クロロフルオロカーボン類(CFCs:炭素、塩素及びフッ素を含む化合物)、クロロカーボン類(炭素及び塩素を含む化合物)、またはそれらの二つ以上の組み合わせを含む。好ましい態様において、特に所望のフッ素化された化合物がHFC−32を含む場合、反応性有機化合物はHCC、より好ましくはジクロロメタン(HCC−30)、を含む。
【0015】
フッ素化剤に対する有機反応物質の割合は広範に変えることができるということが考えられ、そして、所望のフッ素化された化合物を許容できる水準で生成するそのような割合の総てが本発明の範囲内である。一般に、所望の生成物を生成するために必要とされる少なくとも化学量論量のフッ素を供給するように、反応媒体中に充分な量のフッ素化剤が存在していることが好ましい。ある態様において、反応性有機化合物に対する相対的に大過剰のフッ素化剤の使用が、高い収率及び選択性をもたらす。また、大過剰のフッ素化剤の使用は、ある態様において、特に3気圧を超えた圧力で反応が実施される場合、触媒失活速度を低下させそして予熱器及び気化器でのより少ない分解をもたらすであろう。
【0016】
HFC−32の製造のための好ましい態様において、特にフッ素化剤がHFを含みそして有機反応物質がHCC−30を含む場合、HCC−30に対するHFのモル比は好ましくは約1:1乃至約10:1であり、より好ましくは約1:1乃至約4:1である。好ましい態様において、特にHFC−30のフッ素化からHFC−32を製造する好ましい方法において、フッ素化剤の量、そして好ましくはフッ素化剤の化学量論量の過剰量のHFは、副生成物(反応生成物中のクロロフルオロメタン(HCFC−31)等の中間的な沸騰のC1 HCCs及びC1 HCFCsを含む)のレベルの減少に寄与するであろう。そのような好ましい過剰なモル濃度は、また、ある態様において、有機化合物の変換速度を改良することができ、そして、そのことは反応生成物中の未反応HCC−30の濃度を減少させる効果を有するであろう。
【0017】
反応工程は、好ましくは、一つ以上のストリームを少なくとも一つの反応装置または反応容器に導入して、反応性有機化合物、フッ素化剤、触媒、所望のフッ素置換されたC1生成物及び不要な副生成物を含む反応混合物を形成することを含む。所望により、反応装置に供給される一つ以上のストリームは、反応装置に導入される前に一つ以上の気化器内で予備加熱されることができる。ある好ましい態様において、予備加熱の工程は気化すること、及び状況に応じて反応物質の一つ以上を過熱すること、を含む。予備加熱の温度は本発明の広範囲の中で大きく変えることができるが、好ましい態様において、反応物質の一つ以上が約125℃乃至約400℃、より好ましくは約150℃乃至約350℃、そしてさらに好ましくは約175℃乃至約275℃の温度に加熱される。ある非常に好ましい態様において、反応性有機化合物を含む供給ストリームは、反応装置に導入される前に約200℃乃至約250℃の温度に予備加熱される。この方法において、気化器及び他の容器は、適切な耐腐食材料で製作されることができる。
【0018】
反応物質を反応装置に供給する前に、好ましくは反応装置にフッ素化触媒が加えられる。本明細書で使用される“フッ素化触媒”の語は、所望のフッ素化反応、例えば塩素化された有機分子中の塩素のフッ素での置換を含む反応等、を促進する触媒、好ましくは無機金属触媒、を表す。そのようなフッ素化触媒は当業者に既知である。限定されるものではないが、例となる触媒は、クロム、銅、アルミニウム、コバルト、マグネシウム、マンガン、
亜鉛、ニッケル及び鉄の酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物及びそれらの無機塩、Cr/Al、Cr/AlF、Cr/炭素、CoClCrO/Al、NiCl/Cr/Al、CoClAlF及びNiCl/AlFを含む。さらに、クロミア、マグネシアまたはアルミナ上に担持されたニッケル、コバルト、亜鉛、鉄及び銅等の、担持された金属触媒を使用することもできる。そのような酸化クロム/酸化アルミニウム触媒は既知であり、例えば米国特許第5,155,082号に記載されている。参照として米国特許第5,155,082号を本明細書に援用する。好ましくは、市販されている触媒、酸化クロムが使用される。酸化クロムは結晶性であってもアモルファスであってもよい。好ましくはアモルファスの酸化クロムが使用される。
【0019】
反応装置に反応物質を加える前に、触媒を化学的及び/または物理的に前処理して、フッ素化反応を促進する活性部位を作製することが好ましい。例えば、フッ素化反応の温度と同程度以上の温度で、窒素等の不活性ガス気流下、触媒を焼成することによって前処理することができる。そして、焼成された触媒は、約200℃乃至約450℃の温度で少なくとも約一時間、フッ素化剤単独、または約5乃至99質量%までの不活性ガスとの組み合わせのフッ素化剤にさらされることが好ましい。そして、好ましくは、触媒は、塩素等の酸化剤と接触させて触媒の反応性の特性をさらに改良する、第三の工程に暴露される。好ましくは、塩素は約60乃至75%のHF及び/または約20乃至30%の不活性ガスで希釈される。触媒の全体積に対する塩素の全体積の割合が約1:4乃至約1:3000、より好ましくは約1:4乃至約1:100、さらに好ましくは約1:10で、触媒上を塩素を通過させることができる。好ましい暴露時間は約1乃至約200時間、より好ましくは約5乃至約70時間、そしてさらに好ましくは約10乃至約30時間である。塩素暴露は、フッ素化反応に好都合な任意の温度及び圧力で行なうことができる。
【0020】
反応物質は、独立にまたは混合物として反応装置に供給されることができ、そして、適切な反応条件下で、反応媒質を形成するように反応することができる。反応が始まれば、その工程を継続するために必要な反応物質の追加量を供給するために、圧力下、反応物質が連続的に加えられることができる。反応装置への供給は、新規な反応物質に加えて、ダウンストリーム操作の結果として反応装置に再循環されるストリームを含むことができる。そのようなダウンストリーム操作は、本発明の除去工程を含むことができる。本発明の好ましい態様に従って生じた再循環ストリームについて後述する。
【0021】
フッ素化反応が行なわれる温度及び反応時間は、具体的な出発物質、使用される量、使用される触媒等の多様な要因に依存して大きく変化するであろう。そしてそのような変化の総てが本発明の範囲に含まれる。本明細書の教示及び説明を考慮して、当業者は、具体的な適用に望まれる結果を得るための反応条件を容易に調整することができるはずである。所望のフルオロカーボンがHFC−32でありフッ素化剤がHFである態様に対して。好ましい反応温度は約125℃乃至425℃であり、より好ましくは約150℃乃至約300℃であり、そしてさらに好ましくは約200℃乃至約250℃である。
【0022】
本発明の範囲内において、接触時間もまた、多くの要因、例えば触媒濃度、触媒の種類、及び反応温度等、に依存して大きく変化するであろう。好ましい態様において、反応物質が触媒床を通過するのに必要とされる時間は(100%空隙(void)の触媒床を仮定する)、約1秒乃至約120秒であり、好ましくは約2秒乃至約60秒であり、より好ましくは約4秒乃至約50秒であり、さらに好ましくは約5秒乃至約30秒である。
【0023】
本発明の方法は、触媒を再生するために反応に酸化剤を添加する随意の工程を採用することができる。適切な酸化剤は本技術分野で周知である。酸化剤は、例えば、元素状塩素または酸素を含む。酸化剤は任意の適切な方法で添加することができる。酸化剤は、例えば、酸化剤を反応物質と混合し、そして触媒活性を維持するための必要に応じてそれを供給することによって、連続的にまたは断続的に添加することができる。好ましい様式において、酸化剤は周期的に添加され、そしてそのことは、反応の監視の必要及び継続的な酸化剤の供給を減少させる。代わりとしてまたは追加として、反応の周期的な中断中に触媒を再生することによって触媒活性を維持することもできる。本発明の好ましい操作圧力下で、触媒は速やかには失活しない。
【0024】
上述のように、本明細書に記載の好ましい圧力で反応を実施することによって、反応をより高い圧力で実施した場合より長い時間、触媒がその活性を維持する傾向にある。従って、少ない量の酸化剤を使用することができる。ある態様において、このことは望まない副生成物の形成の減少をもたらす。しかしながら、低い反応圧力の使用のみでは、本発明の所望の結果を達成することはできない。例えば、HFC−32の気相製造において、反応生成物中に検出することのできるHCC−40の量は、所望のHFC−32と所望でないHCC−40の合計量に基づく質量百分率で表して、通例、約0.1%より大きく、ある場合では約1%より大きく、そして他の場合では約2%より大きい。そのため、発明者らは、本発明のフッ素化工程が、相当濃度の望みでない副生成物、特には望み出ない塩素化された化合物、より特には中間的な沸騰のC1 HCCs、を含む反応生成物を生ずるということを発見した。
【0025】
生成する望みでない中間的な沸騰のC1 HCC副生成物の量は、反応生成物の全有機生成物に基づいて、少なくとも約0.3wt%であり、ある場合には少なくとも約0.5wt%であり、そして他の場合には少なくとも約0.8%である。ある態様において、反応生成物中の中間的な沸騰のC1 HCC副生成物は、本質的にHCC−40からなる。本発明の多くの態様において、反応生成物中に存在する所望のHFC、特にはHFC−32、の量は、反応生成物の全有機化合物の少なくとも約55%であり、より好ましくは少なくとも約60%であり、そしてさらに好ましくは少なくとも約70%である。
【0026】
除去工程
本発明の除去工程は、本発明の反応生成物から塩素置換された副生成物、具体的にはそして好ましくは、中間的な沸騰のC1 HCCs(具体的にそして好ましくはクロロメタン(CHClまたはHCC−40))及びC1 CFCs(具体的にそして好ましくはCFC−12)を効果的に除去する条件で行なわれる一つ以上の単位操作を含む。本発明の好ましい除去工程は、少なくとも部分的には、そのような副生成物はある種のフッ素化反応では弊害をもたらす量で生じること、及びそのような副生成物は一般に、所望のHFCの沸点より高く、フッ素化剤の沸点より低く、そしてある場合には反応性有機化合物の沸点より低い、という沸点を有すること、という発明者らの発見の結果として開発された。フッ素化工程と組み合わされた、本発明の除去工程はそれゆえ、所望のHFCの収率及び純度の両方で予想外に優れた方法をもたらすことができる。本明細書において特に反対のことが示されていない限り、“沸点”の語は成分の通常の沸点、すなわち標準大気圧条件下での沸点を意味する。
【0027】
以下の表1に、反応生成物中に可変量で見られるいくつかの化合物を通常の沸点と共に示している。
【0028】
【表1】

【0029】
非常に好ましい態様において、除去工程は、生成物ストリームに含まれている中間的な沸騰のC1 HCC副生成物(例えばHCC−40)の少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.99%を除去する。除去工程が、中間的な沸騰のC1 CFCsの少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.99%を除去することも、また好ましい。本明細書の教示を考慮して、当業者は、本発明の除去工程が、相対的に高濃度の所望の化合物(HFC−32等)及び相対的に低濃度の望みでない副生成物(具体的にはそして好ましくはHCC−40及びCFC−12)を含む生成物ストリームの製造を主要目的として有するということを認識するであろう。そのため、非常に好ましい態様において、本発明の方法は、少なくとも約99%の所望の化合物HFC−32と約1%を超えない不要な副生成物HCC−40と約1%を超えない不要な副生成物CFC−12とを含む生成物ストリームを生じる。さらに、そのような態様において、通例、反応生成物(例えば反応工程(10)を出るストリーム(30))に含まれているHFC−32の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%が最終生成物ストリーム(ストリーム(50)等)に含まれることが好ましい。このようにして、本発明は高い収率、高い回収率及び低い不純物レベルを達成することができる方法を提供する。
【0030】
本発明の除去工程の二つの具体的な態様について後述する。特に、分離によって除去が達成される態様及び不要副生成物のフッ素化によって除去が達成される態様が、図面と関連して、以下で詳述される。
【0031】
分離による除去
ある好ましい態様において、本発明の除去工程は、中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物の少なくとも一部を生成物ストリームから分離する工程を含む。本明細書において、“生成物ストリームから分離する”の語は、反応生成物ストリームから直接的に副生成物を分離する方法を意味するだけではなく、反応生成物ストリームの一部から副生成物を分離する方法をも意味するために、便宜的に使用される。例えば、フッ素化反応容器(10)からの流出は、副生成物を本発明に従ってさらなる分離にさらす前に、まず、反応生成物から触媒または他の成分を除去するために、そして、できるなら副生成物の一部分でも分離するために処理することができる。本明細書において、“生成物ストリームから分離する”の語は、そのような単位操作総ての累積的効果を意味するために使用される。
【0032】
ある好ましい態様において、分離工程は、反応生成物ストリーム中の比と比較して、中間的な沸騰のC1 HCC副生成物の所望の化合物に対する相対的に高い比を有する一つ以上のストリームを形成する一つ以上の蒸留工程を含むことができる。分離工程の好ましい態様はまた、好ましくは、中間的な沸騰のC1 HCC副生成物の所望の化合物に対する比が、反応生成物ストリーム中の比と比較して相対的に低いものである、一つ以上の高い純度のストリームを生じる。例えば、ある好ましい態様において、除去工程は、反応生成物ストリームから触媒を除去してストリームを生成することを含み、そしてそのストリームは、直接またはさらなる処理の後に蒸留操作に供給される。そのような態様において、蒸留操作は、相対的に所望の生成物に富んだ少なくとも一つの高い純度のオーバーヘッドストリーム、相対的に所望の生成物に乏しい少なくとも一つのボトムストリーム、及び相対的に副生成物に富んだ少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームを有する蒸留塔(パックド(packed)またはトレイ(trayed)、または双方であってよい)を含む。好ましい態様において、オーバーヘッドストリームは、オーバーヘッドストリーム中の有機成分の全量に基づいて少なくとも約99%、より好ましくは少なくとも約99.9%、さらに好ましくは少なくとも約99.99%の量の所望のHFC(HFC−32等)から成っている。また、オーバーヘッドストリームは、オーバーヘッドストリーム中の有機成分の全量に基づいて、約1%より少ない、より好ましくは約0.1%より少ない、さらに好ましくは約0.01%より少ない中間的な沸騰のC1 HCC及びC1 CFC副生成物(具体的にはHCC−40及びCFC−12)を含むことが一般に好ましい。
【0033】
発明者らは、中間的な沸騰の成分CFC−12と所望のHFC−32が、米国特許第5,785,822号(Cerriら)(本明細書に参照として援用する)に記載されているように、共沸混合物を形成するということに言及する。それゆえ、ある態様において、圧力スイング蒸留、液/液相分離、及び/または当業者に周知の他の技術によって、この共沸混合物の構成成分を分離する工程を本発明の方法に取り入れることが必要であることがある。
【0034】
所望のHFCsの少なくとも一つがジフルオロメタン(HFC−32)である好ましい方法を、図2と関連して述べる。反応容器(10)は、好ましくは、塩素化されたC1反応物質(好ましくはHCC−30)、及び塩素化剤(好ましくはHF)を含む少なくとも一つの供給ストリーム(20)を受け入れる。また、通例、その反応容器に、触媒活性化剤、好ましくは塩素、を含むストリーム(示していない)を導入することが好ましい。当然ながら、反応工程に使用される化合物を含むこれらのストリーム及び他のストリームが組み合わされまたは混合され、そして反応容器に一緒に導入されることができるということを、当業者は認識するであろう。反応容器はまた、好ましくは、一つ以上の再循環ストリーム(44)(その源については、具体的に後述する)を受け入れる。
【0035】
反応容器(10)からの反応生成物ストリーム(30)は、好ましくは、所望のHFC、すなわち望ましいHFC−32を含む。反応生成物ストリーム中のHFC−32の量は、本発明の適用範囲内で大きく変動することができる。しかしながら、通例、フッ素化反応からの反応生成物流出物が、少なくとも40質量%のHFC−32、より好ましくは約45wt%乃至約90wt%、そしてさらに好ましくは約50wt%乃至約85wt%のHFC−32を含むことが好ましい。さらに、本発明の反応生成物ストリームは、一つ以上の不要な副生成物、具体的には中間的な沸騰の塩素化されたC1 HCC及びCFCs、より具体的にはHCC−40及びCFC−12、を含む。そしてまた、生成物ストリーム中のそのような副生成物の量は大きく変動することができ、そしてそのような量の総てが、本発明の範囲内である。しかしながら、通例、フッ素化反応からの反応生成物流出物が、約0.01%乃至約2%のHCC−40、より具体的には約0.01%乃至約1%のHCC−40、そして約0.01%乃至約2%のCFC−12を含むことが好ましい。
【0036】
多くの態様において、反応生成物ストリームは、また、可変量のクロロフルオロメタン(HCFC−31)、ジクロロフルオロメタン(HCFC−21)、HCFC−22、HFC−23、CFC−13及びHCl、並びにHF及びHCC−30等の未反応の供給物、を含んでいるであろうということが予想される。
【0037】
フッ素化工程から出る反応生成物ストリーム(30)は、好ましくは蒸留操作(43)に導入され、そしてそこで、HF、HCC−30及びHCFC−21等のある種の重い生成物に加えて触媒の相当部分が分離されてボトムストリーム(44)を形成する。分離工程(43)が単位操作の多くの種類及びその組み合わせを含み得るということが考えられるが、好ましい態様において、分離工程は、好ましくは、相対的に冷たい液体との熱交換によって、及び/または、反応生成物(30)も受け入れる容器に相対的に低温のストリームを導入することによって、反応生成物ストリーム(30)の温度を低下させることを含む。そのような操作は、時々、冷却工程(quenching step)と呼ばれ、そしてその操作は、重いストリーム(44)に加えて、所望の生成物の大部分及び反応ストリーム中のHClの大部分を含むオーバーヘッドストリーム(45)を形成する。ボトムストリーム(44)は、好ましくは、フッ素化工程(10)に再循環される。当業者に認識されるであろうように、好ましくは蒸留塔で実施される最初の分離工程は、それと結びついた、周知の技術に従って操作される多様な加熱または冷却装置を有することができる。
【0038】
所望によりそして好ましくは、本方法は、単位操作(45B)として図に示しているように、HClを分離する工程を含む。そのような態様において、破線(45A)で示されている蒸留塔(43)からのオーバーヘッドは分離カラム(stripping column)に導入され、そしてそこで、オーバーヘッドストリーム(45C)がストリーム(45A)に含まれているHClの大部分を含む。そのような操作は、販売用のHClを製造することによって、その方法の経済的効率を高める可能性を認めるという利点を提供する。相対的に低い濃度のHClを含んでいる、分離操作からのボトムストリーム(45D)は、次いで、分離器(stripper)(45B)に導入されなかったオーバーヘッドストリーム(45)のいずれの部分と混合される。
【0039】
蒸留操作(43)からのオーバーヘッドストリーム45及び/またはHCl分離器(45B)からのボトムストリーム(45D)は、好ましくは、さらに同じスクラバー(scrubber)(46)に導入されて処理される。そのスクラバー(46)は、それと結びついた、周知技術によって作動する多様な加熱及び冷却装置を有していてもよい。スクラバーの目的は、酸成分の少なくとも相当部分、すなわち蒸留オーバーヘッド(45)に存在するHF及びHClの相当部分、を生成物ストリームから除去することである。酸スクラバー(46)は、好ましくは、酸の相当部分を含むボトムストリーム(47)と、好ましくは所望の生成物の相当部分を含むオーバーヘッドストリーム(48)を生じる。酸ストリーム(47)は、好ましくは、処分されるか、さもなければ、当業者に周知の方法で処理される。
【0040】
スクラバーオーバーヘッド(48)は、好ましくは、分留工程(49)、好ましくは蒸留塔、に導入される。その蒸留塔は、トレイを装備している(trayed)及び/または充填物(packing)を含んでおり、そして、それと結びついた、周知技術によって作動する多様な加熱及び冷却装置を有していてもよい。
【0041】
塔(49)の主要な機能は、相対的に高純度の所望の生成物、特にはHFC−32、であるストリーム(50)を形成することである。好ましい態様において、生成物ストリーム(50)は約99乃至約99.99質量パーセントのHFC−32、より好ましくは約99.5乃至約99.99質量パーセントのHFC−32を含む。また、多くの好ましい態様において、生成物ストリーム(50)が約1質量パーセントを超えない中間的な沸騰のC1 CFCs、そしてより好ましくは約0.01質量パーセントを超えない中間的な沸騰のC1 HCCsを含むことが、非常に重要である。このことは、本発明に従って、蒸留塔から不要な副生成物、特にはHCC−40及びCFC−12、に相対的に富んだストリームを除去するように設定されたサイドストリーム(51)の措置によって主に達成される。好ましい態様において、サイドストリーム(51)は、約50乃至約85質量パーセントのHCC−40と好ましくはせいぜい約15質量パーセントのHFC−32とを含む。分留塔(49)はまた、好ましくは、供給ストリーム(48)に含まれる重い成分、より具体的には未反応のHCC−30とHF、の相当部分を含むボトムストリーム(52)を形成する。好ましい態様において、ボトムストリーム(52)は蒸留工程(43)に再循環され、そして反応生成物ストリーム(30)から触媒及び他の重い成分の除去を補助するクエンチ(quench)ストリームの役割を果たす。
【0042】
当業者は、サイドストリーム(51)がいくつかの周知の技術の任意の一つに従って処理されることができるということを認識するであろう。そして、そのような総ての処理工程も本発明の範囲に含まれる。図2に示したように、好ましい態様において、サイドストリーム(51)はさらなる分離工程にさらされる。例えば、サイドストリームは、その供給ストリーム(51)の濃度より相対的に高い副生成物濃度を有する少なくとも一つのストリーム(54)と、供給ストリーム(51)と比べて低濃度の副生成物を有する少なくとも一つのストリーム(55)とに効果的に分離する条件で操作される分留塔(53)に導入することができる。ある好ましい態様において、ストリーム(55)は、本方法の上流のフッ素化工程または他の上流の工程に望ましくは再循環される化合物を相対的に高濃度で含んでいる。例えば、分留塔(53)は、中間的な沸騰の副生成物がオーバーヘッドストリーム(54)に濃縮され、そして重い成分、未反応のHCC−30及び/またはHCFC−31、がボトムストリーム(55)に濃縮される、単一のフラッシュ蒸留を含むことができる。そのような態様において、ボトムストリーム(55)は好ましくはフッ素化工程(10)及び/または触媒除去工程(43)に再循環され、そしてオーバーヘッドストリーム(54)は好ましくはさらなる処理(処分することを含んでもよい)のためにその現場内の(on−site)または現場外の(off−site)操作に送られる。
【0043】
当業者はまた、分留工程(49)及び(53)の操作のために選択される具体的なパラメータが、本発明の教示に従って大きく変化することができるということを認識するであろう。そして、そのようなパラメータの総ての組み合わせが本発明の範囲に含まれる。例えば、本明細書の教示を考慮して、当業者は、本発明の方法の他の部分に悪い影響を与えることなく、オーバーヘッドストリーム(50)に含まれる副生成物の量を最小にするためのサイドストリーム(51)の大きさ及び配置を容易に選択することができるべきである。
【0044】
分離工程の一般にあまり好まれない他の態様において、サイドストリーム(51)は使用されないであろう。代わりに、オーバーヘッドストリーム(50)中の副生成物の濃度を効果的に減少させるような方法で、蒸留工程(49)からのボトムストリーム(52)が周期的に取り除かれるであろう。
【0045】
フッ素化による除去
本発明のある態様は、不要な副生成物の少なくとも一部をフッ素化すること、より具体的には反応生成物に含まれる中間的な沸騰のC1 HCC及び/またはC1 CFC副生成物の少なくとも一部をフッ素化すること、を含む除去工程を含む。反応生成物が中間的な沸騰のC1 CFCsを含む態様について、好ましい態様においてそのようなC1 CFC副生成物の少なくとも一部をさらなるフッ素化工程によって除去することが考えられる。副生成物のフッ素化工程が反応生成物ストリームを別の反応装置または反応容器に導入することを含むことができるということが考えられるが、当業者は、不要な副生成物をフッ素化する工程が最初のフッ素化工程で使用されたものと同じ反応容器の利用を含むことができるということを認識するであろう。そのような場合、第二のフッ素化工程は、反応容器中の反応生成物を最初のフッ素化工程の反応条件とは異なった一つ以上の反応条件にさらすことを含む。最初の反応工程の条件より、そのような変化した条件は、一つ以上の不要な中間的な沸騰の副生成物のフッ素化のために好ましい。そして、そのような条件によって、不要な副生成物の少なくとも一部の除去を達成するフッ素化の第二の相または段階を作り出す。
【0046】
前述のフッ素化の第二段階の前に、反応生成物を一つ以上の中間の単位操作にさらすことが考えられる。例えば、ある態様において、最初のフッ素化段階の後に、反応生成物を触媒除去操作に導入することができ、次いで、触媒が除去された反応生成物がフッ素化の第二の相または段階に導入され、そしてそこで一つ以上の副生成物がフッ素化され、それによって反応生成物ストリームから除かれる、ということが考えられる。
【0047】
フッ素化の第二段階に作用するために用いられる反応条件は、多くの要因の中でも特に、除去される副生成物に依存して、本発明の範囲内において、大きく変動することができる。ある好ましい態様において、除去工程は、好ましくは、反応生成物中の中間的な沸騰のC1 HCCsの少なくとも一部、好ましくは相当部分、より好ましくは大部分をより完全にフッ素化された生成物に効果的に変換する条件で操作されるフッ素化の第二段階に反応生成物を導入することを含む。この工程は、生成物ストリームから不要な中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物の少なくとも一部を効果的に除去する。
【0048】
不要な副生成物がHCC−40である好ましい態様において、フッ素化の第二段階の反応条件は過剰のHFの存在下、85℃より高い温度、及び180psiaより高い圧力である。この条件は非常に強力な腐食環境を生み出すことがあり、PTFEで内張りされた反応容器で行なうべきであろう。
【0049】
図3には、除去工程の一部としてフッ素化の第二段階を利用するある好ましい態様についての工程フローの形態を図式化している。より具体的には、供給ストリーム(20)がフッ素化反応工程(10)に導入され、次いで反応生成物ストリーム(30)を生じる。そして、反応生成物ストリーム(30)はフッ素化の第二段階(41)に供給され、そこで不要な中間的な沸騰のC1 HCCの少なくとも一部がフッ素化され、それによって反応生成物ストリーム(30)から効率的に除去される。この第二のフッ素化段階からのアウトプットはストリーム(42)を含む。ある態様において、そのような第二のフッ素化段階が、除去工程のために必要とされる総てである。しかしながら、図3に示された方法では、反応生成物ストリーム(42)は、最終生成物ストリームの最終的な純度及び/または収率を改良するために、追加の単位操作にさらされる。より具体的には、フッ素化の第二段階から出てくる生成物ストリーム(42)は、好ましくは、単位操作(43)、(45B)及び(46)に関連して上述したものと実質的に同様な様式で処理される。単位操作(49)は異なった様式で操作することができ、そこでは分留塔から副生成物を除去するための中間のストリームは使用されない。また、分離器(stripper)(43)からのボトムストリーム(44)を、フッ素化の第一段階(10)若しくはフッ素化の第二段型(41)に、またはその双方に再循環することができる。
【0050】
ある好ましい態様において、除去工程は、本発明に従って、さらなるフッ素化工程と分離工程との組み合わせを含む。そのような態様の一例を図4に示している。そこでは、各要素は、上述の図と同様に番号が付けられている。当然ながら、図2に示されている任意のHCl分離器(43B)を図4の方法に追加することもできる。
【0051】
実施例
以下の実施例は、本発明のある態様の実施の実例であり、本発明の範囲を必ずしも限定することを意図したものではない。
【0052】
実施例1
図2に示された方法に実質的に従った方法フローを提供する。反応容器(10)に酸化クロム触媒を加える。その触媒を標準的な前処理工程にさらす。その処理はその触媒床への約24時間の塩素導入を含む。
【0053】
実質的に安定状態の条件で、約1.2lbs/時間のHCC−30及び約0.6lbs/時間のHFからなる供給ストリーム(20)を、約260℃の温度に予備加熱して気相の供給ストリームを形成した後、反応装置(10)に導入する。予備加熱されたストリームは、気相反応を形成するために約75psigの圧力に維持されている反応装置に連続的に導入される。また、表2に記載した速度及び組成を有する再循環ストリーム(44)もその反応装置に導入される。反応装置での平均滞留時間は約30乃至45秒であり、平均反応温度は約257℃である。触媒活性を維持するに充分な量及び時間で、塩素が反応装置に供給される。
【0054】
反応装置に新規に供給されたものに基づいて、約85%乃至約95%のHCC−30がHFC−32に変換されて反応生成物ストリーム(30)を生じる。反応装置からの流出物は引き続いて蒸留塔及び酸スクラバーで処理されてストリーム(45)を生じる。
【0055】
本実施例からわかるように、本発明の分離態様に従って、少なくとも約99.0wt%の純度を有する生成物ストリームを製造することができる。さらに、反応装置からの流出物からのHFC−32の最終的な回収率も相対的に高い。より具体的には、ストリーム(30)に含まれているHFC−32の約95%が高純度の生成物ストリーム(50)に含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本発明の一つの態様による方法のブロック図である。
【図2】図2は、蒸留サイドストリームが使用された本発明の一つの態様によるより具体的な方法フローのブロック図である。
【図3】図3は、フッ素化の第二段階が使用された本発明の一つの態様によるより具体的な方法フローのブロック図である。
【図4】図4は、フッ素化の第二段階が使用され、かつ蒸留サイドストリームが使用された本発明の一つの態様によるより具体的な方法フローのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の炭素原子を有する所望のヒドロフルオロカーボン化合物を製造するための方法であって:
反応性有機化合物をフッ素化して、少なくとも所望のヒドロフルオロカーボン化合物、未反応の反応性有機化合物、及び前記所望のヒドロフルオロカーボン化合物の沸点と前記反応性有機化合物の沸点の間の沸点を有するヒドロフルオロカーボン副生成物を含む反応生成物を生じること、及び
前記反応生成物から少なくとも相当部分の前記副生成物を除去して、約2質量%以下の副生成物を含む生成物ストリームを生じること、
を含む前記方法。
【請求項2】
前記所望のヒドロフルオロカーボンがジフルオロメタン(HFC−32)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反応生成物が、当該反応生成物の全有機物に基づいて少なくとも約55質量%のHFC−32を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記反応生成物が、さらに少なくとも約0.3質量%の中間的な沸騰のC1 HCC副生成物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記反応生成物が、さらに少なくとも約0.3質量%のクロロメタン(HCC−40)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記除去工程が、前記反応生成物に含まれるHCC−40の少なくとも約99質量%を除去する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記除去工程が、少なくとも約99質量%のHFC−32及び約1質量%より多くないHCC−40を含む生成物ストリームを生じる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記反応生成物に含まれるHFC−32の少なくとも約80質量%が前記生成物ストリームに含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記反応生成物に含まれるHFC−32の少なくとも約98質量%が前記生成物ストリームに含まれる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記除去工程が、前記反応生成物から中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物の少なくとも一部を分離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分離工程が、少なくとも一つの蒸留工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つの蒸留工程が、相対的に前記所望のヒドロフルオロカーボン化合物に富んだ少なくとも一つの高純度ストリーム、相対的に前記所望のヒドロフルオロカーボン化合物に乏しい少なくとも一つのストリーム、及び相対的に前記中間的な沸騰の塩素化されたC1副生成物に富んだ少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームを有する蒸留塔を与えることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
相対的に前記所望のヒドロフルオロカーボン化合物に富んだ前記少なくとも一つの高純度ストリームが、当該オーバーヘッドストリームに含まれている有機物の全質量に基づいて少なくとも約99質量%のHFC−32を含むオーバーヘッドストリームであり、そして、前記少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームが少なくとも約50質量%の前記中間的な沸騰の塩素化されたC1sを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記オーバーヘッドストリームが、当該オーバーヘッドストリームの有機物の全質量に基づいて少なくとも約99.8質量%のHCC−32を含み、そして、前記少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームが少なくとも約50質量%のHCC−40を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記除去工程が、前記ヒドロフルオロカーボン副生成物の少なくとも一部をフッ素化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ジフルオロメタン(HFC−32)を製造するための方法であって:
少なくとも第一の気相反応段階において、フッ素化触媒の存在下、塩素で置換された単一炭素の化合物をフッ化水素を含むフッ素化剤と反応させて、ジフルオロメタン、未反応の塩素で置換された単一炭素の化合物、フッ素化剤及びクロロメタン(HCC−40)を含む反応生成物を生じること、
前記反応生成物ストリームを、少なくとも、相対的にジフルオロメタンに富んだ第一のストリームと相対的に未反応の塩素で置換された単一炭素の化合物に富んだ第二のストリームとに分離すること、及び
前記反応生成物ストリーム中のクロロメタンの濃度を、以下からなる群;
(i)少なくとも第二の反応装置段階で前記クロロメタンをフッ素化すること、
(ii)前記反応生成物ストリームから相対的に前記クロロメタンに富んだ第三のストリームを分離すること、及び
(iii)(i)と(ii)の組み合わせ;
から選択される一つ以上の工程によって低下させること、
を含む前記方法。
【請求項17】
ジフルオロメタン(HFC−32)を製造するための方法であって:
少なくとも第一の触媒的気相反応装置で約100psigより低い圧力でジクロロメタンをフッ化水素を含むフッ素化剤と反応させて、ジフルオロメタン、未反応のジクロロメタン、フッ素化剤、及び少なくともクロロメタンを含む副生成物、を含む反応生成物ストリームを生じること、
前記反応生成物から少なくとも相当部分の前記クロロメタンを除去して、相対的に前記ジフルオロメタンに富んだ第一のストリーム、相対的に前記未反応のジクロロメタンに富んだ第二のストリーム、及び相対的に前記クロロメタンに富んだ第三のストリームを生じること、
を含む前記方法。
【請求項18】
前記除去工程が、少なくとも一つの蒸留工程を含む、請求子17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも一つの蒸留工程が、相対的に前記HFC−32に富んだオーバーヘッドストリーム、相対的にHFC−32に乏しいボトムストリーム、及び相対的に前記クロロメタンに富んだ少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームを有する蒸留塔を与えることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記オーバーヘッドストリームが、当該オーバーヘッドストリームの有機物の全質量に基づいて少なくとも約99質量%のHFC−32を含み、そして、前記少なくとも一つの中間的な沸騰のストリームが少なくとも約50質量%のクロロメタンを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記オーバーヘッドストリームが、当該オーバーヘッドストリームの有機物の全質量に基づいて少なくとも約99.8質量%のHFC−32を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記除去工程が、さらに前記クロロメタンの少なくとも一部をフッ素化することを含む、請求項21に記載の方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−509056(P2007−509056A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−535362(P2006−535362)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/034140
【国際公開番号】WO2005/037740
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】