説明

ヒドロフルオロカーボンの製造法

高沸点副産物の形成を最少にし且つHFの消費とヒドロフルオロカーボンの収量とを改善するためにHF対ヒドロクロロカーボンの大きなモル比を用いて液相触媒反応器において、ヒドロクロロカーボンとHFとを反応させることによってヒドロフルオロカーボン(HFC)を作るための製造法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の背景
本発明は、ヒドロフルオロカーボン(HFC)の製造に関する。より詳しくは、本発明は、高沸点副産物の形成を最少にするために且つHFの消費及びヒドロフルオロカーボンの収率を向上させるために、ヒドロクロロカーボンに対してHFを大きなモル比で用いて、液相触媒反応器において、対応するヒドロクロロカーボン原料とHFとを反応させることによって、ジフルオロメタン(HFC−32)、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3,3−ヘキスフルオロプロパン(HFC−236fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)を製造する方法に関する。
【0002】
近年、クロロフルオロカーボンが、地球のオゾン層に有害かもしれないという懸念が広がっている。その結果、より少量の塩素置換基を含むハロゲン化炭素を使用しようとする努力が世界中でなされている。この点ににおいて、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン及び他のHFCは、オゾン層破壊の可能性が零であるので、多くの用途でクロロフルオロカーボンの代替として考えられている。ヒドロフルオロカーボン、すなわち炭素、水素及び弗素のみを含む化合物の製造は、溶媒、発泡剤(foam blowing agent)、冷媒、清浄剤、エアロゾル噴射剤、熱伝達媒体、誘電体、消火組成物及び発電サイクル作動流体として使用するための環境的に望ましい製品を提供してくれる興味深い対象であった。弗化水素を様々なヒドロクロロカーボン化合物と反応させることによるヒドロフルオロカーボンの製造は、当業において公知である。前記HFCは、オゾンを減少させないので、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)又はクロロフルオロカーボン(CFC)に比べてはるかに環境的に有利であると考えられるだけでなく、HFCは、塩素含有化合物と比べた場合に、不燃性且つ非毒性である。ヒドロフルオロカーボンは、それら自体公知である。例えば、HFC−245faそれ自体は、その内容を本明細書に引用したものとする米国特許第2,942,036号で説明されているように当業において公知である。ヒドロフルオロカーボンを連続製造するための経済的な方法を実施することは当業における課題であった。そのような一つの方法は、その内容を本明細書に引用したものとする米国特許第5,763,706号で開示されている。この引例は、弗素化触媒の存在下で、1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)及び1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン(HCC−230fa)を、弗化水素と反応させることを開示しているが、この方法では、弗化水素のHCC−240fa又はHCC−230faに対するモル比は比較的低い。この技術では、不都合なことに、高沸点副産物が大量に生成し、また、触媒の寿命が所望の寿命に比べて短い。しかし本発明では、HFのヒドロクロロカーボン(有機供給原料)に対する割合を大きくすることによって、すなわち、液相中少なくとも約15:1で用いることによって、前記反応において、高沸点副産物の生成を減らすことができることを見出し、また触媒寿命を延長できることも見出した。この事実は、有機富化・低HF条件を用いる従来技術に反することである。
【0003】
ヒドロフルオロカーボン、例えばHFC−32、HFC−143a、HFC−245fa、HFC−236fa、HFC−365mfc(それらに限定されない)は、ヒドロクロロカーボンを高いモル比の弗化水素と反応させることによる統合製造プロセスで連続的且つ経済的に製造できることも見出した。ヒドロクロロカーボン及びHFは、まず最初に液相又は気相で反応させるが、好ましくは、液相触媒反応で反応させ、そして、HFの過量の一部分は、例えばリサイクル塔を用いることによって反応器へと選択的に再循環させる。次に、HClは、蒸留によって選択的に除去し、余分なHFは、例えば気液抽出又は液液抽出によって回収し、そして次に、選択的に再循環させる。その後で、光塩素化によって、不飽和化合物を除去し、そして、蒸留によってヒドロフルオロカーボンを得る。
【0004】
発明の説明
本発明は、(a)弗素化触媒の存在下で、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が少なくとも約15:1において、少なくとも1種のヒドロクロロカーボンを弗化水素と反応させる工程;(b)未反応のHFの一部を工程(a)へと選択的に再循環させる工程;(c)工程(a)によって生成されたHClを選択的に除去する工程;及び(d)少なくとも1種のヒドロフルオロカーボンを回収する工程を含むヒドロフルオロカーボンを製造する方法を提供する。
【0005】
また、本発明は、(a)弗素化触媒の存在下で、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が少なくとも約15:1において、少なくとも1種のヒドロクロロカーボンを弗化水素と反応させる工程;(b)未反応のHFの一部を工程(a)へと選択的に再循環させる工程;(c)工程(a)によって生成されたHClを選択的に除去する工程;(d)気液抽出又は液液抽出によって工程(c)の後に存在する余分な未反応HFを選択的に回収する工程;(e)光塩素化によって、工程(d)の後に存在する不飽和化合物を選択的に除去する工程;及び(f)蒸留によって、工程(e)の結果として生じたものから少なくとも1種のヒドロフルオロカーボンを回収する工程を含むヒドロフルオロカーボンを製造する方法も提供する。
【0006】
本発明にとって有用なヒドロクロロカーボンとしては、ジフルオロエタンCH(HFC−32)製造のための塩化メチレン(CHC1);1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)製造のための1,1,1−トリクロロエタン(HCC−140a);1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)製造のための1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa);1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa)製造のための1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン(HCC−230fa);1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)製造のための1,1,1,3,3−ペンタクロロブタン(HCC−360jfa)及びそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。また、1−クロロ−3−3−3−トリフルオロプロペン(HCFC1233zd)及び1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFC−1234ze)を製造するために1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン(HCC−240fa)を用いることもできる。ペルクロロエチレンは1,1,1,3,3−ペントラフルオロエタン(HFC−125)を製造するために用いることができる。
【0007】
本発明の実施において、反応器を加熱する前に、弗素化触媒、好ましくは液相触媒を弗素化反応器に充填する。有用な弗素化触媒としては、遷移金属ハロゲン化物及び遷移金属酸化物、IVb族金属ハロゲン化物及びVb族金属ハロゲン化物及びそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。前記触媒としては、弗素化クロムハロゲン化物、弗素化クロム酸化物、SbCl、SbCl、TaCl、SnCl、NbCl、TiCl又はMoClの弗素化種、及びそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。本発明にしたがう反応器は、任意の適当な弗素化反応器であることができるが、好ましくは、弗化水素の腐食作用に抵抗性である材料から組み立てられる反応器、例えば、ハステロイ、インコネル、モネル及びフルオロポリマーで裏張りされた反応器であることができる。反応器が所望の温度に達したら、少なくとも1種のヒドロクロロカーボン及びHFを同時に反応器に供給する。本発明の重要な特徴は、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が約15:1〜約50:1であることである。
【0008】
好ましい態様では、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比は約15:1〜約40:1であり、そして更に好ましい態様では、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比は約20:1〜約30:1である。反応器は、好ましくは60℃〜約180℃;更に好ましくは70℃〜約150℃、そして最も好ましくは80℃〜約120℃の温度で運転する。反応器圧は、通常は約20〜約400psigに、好ましくは約50から約300psigに;更に好ましくは約100〜約275psigに、そして最も好ましくは約125〜約260psigの圧力に維持する。塩素の供給は、任意であるが、触媒を活性に保つために好ましい。塩化アンチモンが触媒として使われるとき、塩素の供給は特に有利である。
SbCl触媒のような触媒1ポンドにつき毎時約0.002〜約0.2ポンドで塩素を反応器に供給する。塩素はバッチモード又は連続モードで充填できる。
【0009】
任意ではあるが、好ましくは、大部分の未反応HF及び触媒が反応器へと還流されるように、反応器の頂部に触媒ストリッパを用いる。触媒ストリッパは、蒸留塔及びコンデンサに取り付けてあり、そして、この工程は、コンデンサの温度を約20℃〜約200℃に調整することによって行う。触媒ストリッパからの流出液は、任意であるが、好ましくは、リサイクル塔に供給してHFの過剰量の一部を再循環させる。リサイクル塔の圧力は、反応器の圧力に合わせることが好ましい。
【0010】
リサイクル塔からの流出液は、次に、任意ではあるが、好ましくはHCl蒸留塔へと供給して、該リサイクル塔から出てくる反応混合物から比較的純粋なHClを除去する。HCl塔の圧力は、リサイクル塔の圧力に合わせることが好ましい。別の態様では、未反応HFは、プロセスのこの時点で回収でき、そして、回収された弗化水素は、工程(a)の反応器へと選択的に再循環させることができる。
【0011】
HCl塔から出る実質的にHClを含まない有機/HF混合物は、HF回収ユニットへと選択的に供給する。工程(c)から生じるフルオロカーボンの混合物には、弗化水素が混和している。ヒドロフルオロカーボン及びHFは、HF/ヒドロフルオロカーボン混合物を硫酸で抽出することによって分離できる。それにより、HFCに富む相、及び弗化水素と硫酸とに富む相が形成される。好ましくは、硫酸対弗化水素の重量比が約1:1〜約25:1となるように硫酸を加える。更に好ましくは、重量比は、約1:1〜約20:1であり、最も好ましくは約2:1〜約15:1である。好ましくは、抽出は、約−20℃〜約100℃、更に好ましくは約−10℃〜約80℃、そして最も好ましくは約0℃〜約60℃の温度で行う。しかしながら、抽出は、通常は、常気圧で行うが、当業者は、より高い又は低い圧力条件を用いることができる。圧力は、好ましくは約100psig以下であり;更に好ましくは約50psig以下であり、そして最も好ましくは約20psig以下である。
【0012】
硫酸吸収装置からの硫酸/HF混合物は、HF回収塔に供給する。次に、HF及び硫酸を再循環させることができる。すなわち、HFは、ヒドロフルオロカーボン、例えばHFC−32、HFC−143a、HFC−245fa、HFC−236fa又はHFC−365mfcを生成させるための反応を開始する工程(a)に再循環させることができ、そして、硫酸は、抽出工程で使用するために再循環させることができる。硫酸吸収塔から出る混合物の有機部分は、選択的に蒸留塔に供給する。
【0013】
蒸留塔では重質反応生成物を除去する。蒸留塔の圧力は、好ましくは約200psig以下に、更に好ましくは約150psig以下に、そして最も好ましくは約100psig以下に維持する。蒸留塔の塔頂留出物は、ヒドロフルオロカーボン、不純物の揮発性副産物及び若干の未反応HFを含む。蒸留塔の塔底留分は、再循環可能な重質分及び再循環不可能な重質分を含む。再循環可能な重質分は、工程(a)反応器へと再循環させる。再循環不可能な重質分は廃棄する。
【0014】
別法として、硫酸吸収塔の代わりに、HF/水共沸混合物吸収塔を用いることもできる。HF/水共沸混合物の重量比は、好ましくはHF約30%及び水70%に保たれる。HFは、硫酸の場合と同様な方法で、抽出し、そして反応器へと再循環させる。
【0015】
蒸留塔又は硫酸吸収塔から出るヒドロフルオロカーボン富化流は、酸性度を取り除くために、苛性アルカリスクラバ又は水スクラバに供給する。この種のスクラバは、当業において公知であり、そして、通常、残留酸性度を中和するのに充分な条件下で、水性のNaOH又はKOHによる苛性アルカリスクラビングを含む。
【0016】
次に、光塩素化ユニットを用いて、ヒドロフルオロカーボンの流れ、例えばHFC−32、HFC−143a、HFC−245fa、HFC−236fa又はHFC−365mfcの流れの中に存在する不飽和化合物を除去する。除去は、流れの中に塩素を加えて、紫外線の存在下で、不飽和化合物と反応させることによって達成される。不飽和化合物の光塩素化は、それ自体は従来技術において公知である。Cl/全不飽和化合物のモル比は、好ましくは約5以下であり、更に好ましくは約4以下であり、そして最も好ましくは3以下である。圧力は重要ではないが、好ましくは、大気圧又は大気圧よりも低い圧力下で運転する。温度は、好ましくは約60℃以下、更に好ましくは約40℃以下であり、そして最も好ましくは約25℃以下である。紫外線は好ましくは約400ナノメートル未満の波長である。不飽和化合物を約500ppm未満まで低下させるのに充分な時間とエネルギーレベルで紫外線を混合物に当てる。得られた流れの酸性度は、水スクラバ及び/又は苛性アルカリスクラバを使用して、もう一度取り除いた。
【0017】
次に、得られた粗生成物流を蒸留する工程でヒドロフルオロカーボンを回収することができる。蒸留は、バッチ蒸留又は連続蒸留であることができる。バッチモードでは、蒸留塔は1つで充分である。連続モードでは、軽質留分を除去する蒸留塔と重質留分を除去する別の蒸留塔というように2つの蒸留塔が必要である場合がある。蒸留(単数又は複数)の圧力は、約200psig以下であり、更に好ましくは約150psig以下であり、そして最も好ましくは約100psig以下である。
【0018】
製造されるヒドロフルオロカーボン、すなわちHFC−32、HFC−143a、HFC−245fa、HFC−236fa、HFC−365mfc(それらに限定されない)は、少なくとも約99.5%の純度を有する。本発明の反応は、バッチ運転モード又は連続運転モードで行うことができるが、好ましくは連続運転である。
【0019】
以下、非限定的な実施例を掲げて、本発明を例示する。
(実施例)
実施例1
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HClを反応器から取り出した。その反応器に、塩化メチレン(CHC1)を約300ポンド/日、新鮮なHFを141ポンド/日、再循環され/回収されたHFを917ポンド/日及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給する。HF対塩化メチレンの比は約15/1である。塩素を用いて触媒の活性を維持した。反応器圧は約200psigに維持する。HFC−32(純度99.9%)が約174ポンド生成する。副産物も約9.5ポンド生成する。
【0020】
実施例2(比較)
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HCIを反応器から取り出した。その反応器に、塩化メチレン(CHCl)を約300ポンド/日、新鮮なHFを282ポンド/日、再循環され/回収されたHFは無し、及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給する。HF対塩化メチレンの比は約4/1である。塩素を用いて触媒の活性を維持する。反応器圧は約200psigに維持する。HFC−32(純度99.9%)が約156ポンド生成する。副産物も約28ポンド生成した。
【0021】
実施例3
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に無水HFを約80ポンド加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HClを反応器から取り出した。その反応器に、1,1,1−トリクロロエタン(HCC−140a)を約400ポンド/日、新鮮なHFを180ポンド/日、再循環され/回収されたHFを719ポンド/日及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給する。HF対HCC−140aの比は約15/1である。塩素を用いて触媒の活性を維持する。反応器圧は約150psigに維持する。HFC−143a(純度99.9%)が約240ポンド生成する。高沸点副産物も約12ポンド生成する。
【0022】
実施例4(比較)
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HClを反応器から取り出した。その反応器に、1,1,1−トリクロロエタン(HCC−140a)を約400ポンド/日、新鮮なHFを300ポンド/日、再循環され/回収されたHFは無し、及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給する。HF対HCC−140aの比は約5/1であった。塩素を用いて触媒の活性を維持した。反応器圧は約150psigに維持する。HFC−143a(純度99.9%)が約214ポンド生成する。高沸点副産物も約38ポンド生成する。
【0023】
実施例5
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HClを反応器から取り出した。その反応器に、HCC−240faを約605ポンド/日、新鮮なHFを280ポンド/日、再循環され/回収されたHFを684ポンド/日及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給した。HF対HCC−240faの比は約17/1であった。塩素を用いて触媒の活性を維持した。反応器圧は約150psigに維持した。HFC−245fa(純度99.9%)が約340ポンドの生成した。高沸点副産物も約36.4ポンド生成した。
【0024】
実施例6
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させた。HClを反応器から取り出した。その反応器に、HCC−240faを約605ポンド/日、新鮮なHFを280ポンド/日、再循環され/回収されたHFを1128ポンド/日及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給した。HF対HCC−240faの比は約25/1であった。塩素を用いて触媒の活性を維持した。反応器圧は約150psigに維持した。HFC−245fa(純度99.9%)が約345ポンド生成した。高沸点副産物も約21ポンド生成した。
【0025】
実施例7(比較)
約400ポンドの五塩化アンチモン触媒を50ガロン反応器に充填した。その反応器に約80ポンドの無水HFを加えた。反応器の温度を約95℃まで上昇させる。HClを反応器から取り出した。その反応器に、HCC−240faを約605ポンド/日、新鮮なHFを280ポンド/日、再循環され/回収されたHFを461ポンド/日及び塩素を20ポンド/日で連続的に供給した。HF対HCC−240fa比は約13/1であった。
塩素を用いて触媒の活性を維持した。反応器圧は約150psigに維持した。HFC−245fa(純度99.9%)が約320ポンド生成した。高沸点副産物も約50ポンド生成した。
【0026】
以上の実施例から分かることは、実施例1,3,5及び6の方法では、HFC−32、HFC−143a、HFC−245faの収量が実質的に多く、高沸点副産物の量ははるかに少ないということである。
【0027】
本発明を、特に、好ましい態様に関して示し且つ説明してきたが、様々な変更及び改良が、本発明の精神と範囲から逸脱することなく行い得ることは容易に了解される。請求の範囲は、開示した態様、既に上で検討したそれらの代替物、及びそれらの全ての等価物をカバーすると解釈されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)弗素化触媒の存在下で、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が少なくとも約15:1において、少なくとも1種のヒドロクロロカーボンを弗化水素と反応させる工程;
(b)未反応のHFの一部を工程(a)へと選択的に再循環させる工程;
(c)工程(a)によって生成されたHClを選択的に除去する工程;及び
(d)少なくとも1種のヒドロフルオロカーボンを回収する工程
を含むヒドロフルオロカーボンを製造する方法。
【請求項2】
工程(b)が行われる請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(c)が、蒸留によって行われる請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(a)が液相において行われる請求項1記載の方法。
【請求項5】
該ヒドロクロロカーボンが、塩化メチレン;1,1,1−トリクロロエタン;1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン;1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン;1,1,1,3,3−ペンタクロロブタン;1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン;ペルクロルエチレン又はそれらの組合せを含む請求項1記載の方法。
【請求項6】
該ヒドロクロロカーボンが1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを含み、そして該ヒドロフルオロカーボンが1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む請求項1記載の方法。
【請求項7】
該弗素化触媒が、遷移金属ハロゲン化物及び遷移金属酸化物、IVb族金属ハロゲン化物、Vb族金属ハロゲン化物及びそれらの組合せから成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項8】
該弗素化触媒が、弗素化クロムハロゲン化物、弗素化クロム酸化物、SbCl、SbCl、TaCl、SnCl、NbCl、TiCl、MoCl及びそれらの組合せから成る群より選択される請求項1記載の方法。
【請求項9】
該弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が約15:1〜約50:1である請求項1記載の方法。
【請求項10】
該弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が約15:1〜約40:1である請求項1記載の方法。
【請求項11】
該弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が約15:1〜約30:1である請求項1記載の方法。
【請求項12】
工程(a)が、約60℃〜約180℃の温度で行われる請求項1記載の方法。
【請求項13】
工程(a)が、約20〜400psigの圧力で行われる請求項1記載の方法。
【請求項14】
該触媒の触媒活性を維持するのに充分な量で反応工程(a)に塩素を供給する請求項1記載の方法。
【請求項15】
工程(b)の後に存在する弗化水素を回収することを含む請求項1記載の方法。
【請求項16】
工程(b)の後に存在する弗化水素を回収し、次いで、該回収された弗化水素を工程(a)へと再循環させることを含む請求項1記載の方法。
【請求項17】
光塩素化によって、工程(d)の後に存在する不飽和化合物を除去する次の工程(e)を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項18】
工程(d)が、蒸留によって、工程(c)の結果として生じるヒドロフルオロカーボンを回収することを含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
工程(c)の後且つ工程(d)の前に、工程(c)の結果として生じる生成物を蒸留して、ヒドロフルオロカーボン、弗化水素、不飽和化合物及び他の不純物を含む蒸留塔の塔頂留出物を生成させる追加の工程を更に含む請求項1記載の方法。
【請求項20】
工程(c)の後且つ工程(d)の前に、該追加の蒸留工程が、約200psig以下の圧力で行われる請求項19記載の方法。
【請求項21】
工程(d)が、気液抽出によって行われる請求項1記載の方法。
【請求項22】
工程(d)が、工程(c)の後に得られる生成物に硫酸を加えてHF/ヒドロフルオロカーボン流を抽出し、次いで、ヒドロフルオロカーボン、不飽和化合物及び他の不純物を含む反応マスバランスから、硫酸とHFとの混合物を分離することによって、行われる請求項1記載の方法。
【請求項23】
工程(d)の後に、該反応マスバランスから残留酸を除去する工程を含む請求項22記載の方法。
【請求項24】
工程(d)の後に、該反応マスバランスから残留酸を除去する工程が、苛性アルカリスクラバ又は水スクラバによって行われる請求項23記載の方法。
【請求項25】
硫酸とHFとの混合物から、硫酸及びHFを分離する工程を更に含む請求項22記載の方法。
【請求項26】
工程(a)〜工程(d)が、連続モードで行われる請求項1記載の方法。
【請求項27】
(a)弗素化触媒の存在下で、弗化水素対ヒドロクロロカーボンのモル比が少なくとも約15:1において、少なくとも1種のヒドロクロロカーボンを弗化水素と反応させる工程;
(b)未反応のHFの一部を工程(a)へと選択的に再循環させる工程;
(c)工程(a)によって生成されたHClを選択的に除去する工程;
(d)気液抽出又は液液抽出によって、工程(c)の後に存在する余分な未反応HFを選択的に回収する工程;
(e)光塩素化によって、工程(d)の後に存在する不飽和化合物を選択的に除去する工程;及び
(f)蒸留によって、工程(e)で生成したものから少なくとも1種のヒドロフルオロカーボンを回収する工程
を含むヒドロフルオロカーボンを製造する方法。
【請求項28】
工程(b)が行われる請求項27記載の方法。
【請求項29】
工程(c)が、蒸留によって行われる請求項27記載の方法。
【請求項30】
工程(a)が、液相において行われる請求項27記載の方法。
【請求項31】
該ヒドロクロロカーボンが、塩化メチレン;1,1,1−トリクロロエタン;1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパン;1,1,1,3,3,3−ヘキサクロロプロパン;1,1,1,3,3−ペンタクロロブタン及びそれらの組合せを含む請求項27記載の方法。
【請求項32】
該ヒドロクロロカーボンが1,1,1,3,3−ペンタクロロプロパンを含み、そして該ヒドロフルオロカーボンが1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパンを含む請求項27記載の方法。

【公表番号】特表2007−500228(P2007−500228A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533341(P2006−533341)
【出願日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/016231
【国際公開番号】WO2004/106271
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】