説明

ヒノキチオール水溶液及びその製造方法

【課題】ヒノキチオールを水で希釈し、以って各種分野で有効利用することが出来るヒノキチオール水溶液及びその製造方法の提供。
【解決手段】ヒノキチオール水溶液(W6)は、溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理が行われた純水(W1)を電気分解して、当該電気分解された純水のうち、陰極室側の純水(W2)に対して、安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけた水(W3、W4、W5)と、当該水(W4、W5)に対して1:3000〜1:1400の比(特に好ましくは、1:2000の比)のヒノキチオール(20)を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒノキチオールを利用する技術に関し、より詳細には、ヒノキチオールの有用な生理作用を活用するための水溶化技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒノキチオールは、多くの有用な生理作用、例えば抗菌作用を奏する。
ヒノキチオールのような樹木抽出成分を有効利用することが出来れば、未利用の森林資源を活用することが出来て、林業・林産業の活性化に寄与することが出来る。そのため、近年、ヒノキチオールの有効利用が注目されている。
【0003】
ヒノキチオールは、原料となるヒバから0.01%程度しか抽出することが出来ず、大変に貴重な成分である。
また、例えば抗菌剤としてヒノキチオールを用いる場合に、抽出したヒノキチオールそのものを人体の皮膚に塗付した場合には、ヒノキチオールの作用が強過ぎて皮膚が炎症を起こす等の悪影響が懸念される。
そのため、ヒノキチオールを利用するに際しては、希釈することが前提となる。
【0004】
ここで、ヒノキチオールは非水溶性であるため、従来技術においては、アルコールで希釈することが一般的であった。
しかし、アルコールで希釈したヒノキチオールを、例えば抗菌剤として人体の皮膚に塗付した場合には、アルコールが気化してしまい、皮膚表面には高濃度のヒノキチオールが残留してしまう。そして、高濃度のヒノキチオールの作用が強過ぎて、人体の皮膚に悪影響(例えば、炎症等)を及ぼしてしまう可能性がある。
その様な不都合を防止するためにも、ヒノキチオールを水溶化することが望ましいが、現時点で、ヒノキチオールを水溶化する技術は提案されていない。
【0005】
その他の従来技術として、消炎剤としてヒノキチオールを使用する化粧料、皮膚外用剤が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)は、ヒノキチオールを水溶化するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−206573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、ヒノキチオールを水で希釈し、以って各種分野で有効利用することが出来るヒノキチオール水溶液及びその製造方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は種々研究の結果、非水溶性のヒノキチオールであっても、いわゆる「アルカリイオン水」であって、溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理が行われた純水を電気分解して、当該電気分解された純水のうち、陰極室側の純水に対して、安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけることにより製造された水であれば、溶解させることが出来ることを見出した。
本発明は係る知見に基づいて提案されたものである。
【0009】
本発明のヒノキチオール水溶液(W6)は、溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理が行われた純水(W1)を電気分解して、当該電気分解された純水のうち、陰極室(C4)側の純水(W2)に対して、安定化槽(6)内で4kg/cm以上の圧力をかけた水(W3、W4、W5)と、当該水(W3、W4、W5)に対して1:3000〜1:1400の比(特に好ましくは、1:2000の比)のヒノキチオール(20)を含んでいる。
【0010】
ここで、前記水の温度(W4)は35℃以上、好ましくは40℃以上である。
【0011】
また、前記水(W5)とヒノキチオール(20)とを組成物として有するヒノキチオール水溶液(W6)を、純水(W0)により5倍〜10倍に希釈することが好ましい。
【0012】
さらに、前記水は磁気で処理されている(いわゆる「磁気処理水」、「磁気活性水」である)のが好ましい。
【0013】
また、本発明のヒノキチオール水溶液の製造方法は、純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行う工程(S1)と、脱酸素処理が行われた純水を電気分解する工程(S2)と、陰極室(C4)側の純水(W2)に対して安定化槽(6)内で4kg/cm以上の圧力をかける安定化工程(S3)と、安定化工程(S3)を行った水(W3、W4、W5)に対して1:3000〜1:1400の比(特に好ましくは、1:2000の比)でヒノキチオール(20)を溶解させる溶解工程(S6)とを有している。
【0014】
ここで、前記溶解工程(S6)では、前記安定化工程(S3)を行った水の温度を35℃以上、好ましくは40℃以上に昇温する加熱工程(S4)を有することが好ましい。
【0015】
また、前記溶解工程を行ったヒノキチオール水溶液(W6)を、純水(W0)により5倍〜10倍に希釈する希釈工程を有することが好ましい。
【0016】
さらに、前記安定化工程(S3)を行った水を磁気で処理(して、いわゆる「磁気処理水」、「磁気活性水」と)する工程(S5)を有するのが好ましい。
ここで、磁気で処理するに際しては、前記安定化工程(S3)を行った水を一定時間だけ磁界(10)中に配置するのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
上述した通り、溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理が行われた純水(W1)を電気分解して、当該電気分解された純水(W2、Wa)のうち、陰極室(C4)側の純水(W2)に対して、安定化槽(6)内で4kg/cm以上の圧力をかけることにより製造された水(アルカリイオン水:W3)であり、溶解する水であれば、ヒノキチオール(20)が溶解する。
そのため本発明によれば、ヒノキチオール(20)が溶解したアルカリイオン水(W6)を得ることが出来るので、当該アルカリイオン水(W6)を、例えば、抗菌剤、除菌剤、洗浄剤として用いることが出来る。
【0018】
この様な抗菌剤、すなわち、ヒノキチオール(20)が溶解したアルカリイオン水(W6)はアルコールの様に揮発してしまうことはないので、皮膚に塗布された抗菌剤におけるヒノキチオール濃度が異常に高くなってしまうことはない。
そのため、従来技術で懸念された炎症等の悪影響が生じることが防止される。
【0019】
それに加えて、ヒノキチオール(20)とアルカリイオン水の相乗効果により、本発明によるヒノキチオール水溶液(W6)を人体の皮膚に塗付した場合には、塗布された部分の皮脂や汚れを分解除去して、塗付した部分における皮脂の蓄積や、その他の汚れを長期間に亘って防止することが出来る。
さらに、アルカリイオン水(W6)自体の浸透能力に起因して、本発明によるヒノキチオール水溶液(W6)を人体の皮膚に塗付した場合には、表皮から深い領域にヒノキチオール(20)を運搬することが可能である。その結果、表皮から深い領域に存在するメラニン色素を分解して、いわゆる「美白効果」を達成することが可能である。
【0020】
また本発明によるヒノキチオール水溶液(W6)によれば、ヒノキチオール(20)が香料として機能するので、人体に塗付した場合には、塗付された者に対して、いわゆる「リラクゼーション効果」をもたらすことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、脱酸素処理を説明する態様図である。
【図2】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、脱酸素処理後に行う電気分解処理を説明する態様図である。
【図3】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、電気分解処理後に行う圧力を付与する処理を説明する態様図である。
【図4】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、圧力付与後に行う加熱昇温処理を説明する態様図である。
【図5】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、加熱昇温後に行う磁気付帯処理を説明する態様図である。
【図6】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造の際の、磁気付帯後に行うヒノキチオール溶解処理を説明する態様図である。
【図7】第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造方法を示したフローチャートである。
【図8】第2実施形態に係るヒノキチオール水溶液製造方法を示した態様図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態として、純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、安定化槽内で陰極室側の純水に4kg/cm以上の圧力をかける。
そして、圧力をかけられた水(安定化工程を行った水)の温度を35℃以上に昇温し、当該水を磁気で処理して、その水に対して1:3000〜1:1400の比でヒノキチオールの結晶を溶解させて、ヒノキチオール水溶液を製造した。
純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、陰極室側の純水を安定化槽内で4kg/cm以上に加圧する手順について、図1〜図3を参照して説明する。
【0023】
図1で示す脱酸素処理槽1は、その内部に複数のイオン交換膜2を配置している。そして、脱酸素処理槽1内に純水W0を注ぎ、純水中の溶存酸素をイオン交換膜2に吸引させることによって、純水中の溶存酸素濃度を1ppm以下まで低下させている。
図1において、溶存酸素濃度1ppm以下の純水は、符号W1で示されている。
ここで、図1は、図7におけるステップS1に相当する。
【0024】
図2で示す工程では、図1で製造された溶存酸素濃度1ppm以下の純水W1を電解槽3に注ぎ、当該純水W1を電気分解する。
ここで電解槽3は、例えば半透膜45によって、左右の領域C4、C5に二分されている。そして、図2における左の領域C4には陰極4が配置され、右の領域C5には陽極5が配置されている。
純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、安定化槽内で陰極室側の純水に4kg/cm以上の圧力をかけるに際しては、図2における陰極4側の領域C4に集まった純水W2を利用する。
なお、図2は、図7のステップS2に相当する。
【0025】
図3で示す手順では、陰極4側の領域C4に集まった純水W2(図2参照)を、安定化槽(例えば、シリンダ)6に入れ替える。
安定化槽6には、ピストン7が備えられており、このピストン7によって安定化槽6に入れた純水(図2において符号W2で示す純水:図3における純水W3を王圧する以前の段階の純水)を圧力Pで押圧し、以って、当該純水を安定化する。
ここで、圧力Pの大きさは、P≧4kg/cmとすることが好ましい。
図3における符号W3は、4kg/cm以上の圧力で押圧した後の純水を示している。
図3で示す手順は、図7のステップS3に相当する。
【0026】
図4に示す手順では、4kg/cm以上の圧力が付与され、安定化した純水W3(図3参照)が加熱槽60に移し変えられ、火熱槽60内の純水W3を35℃以上、好ましくは45℃以上に加熱する。
純水W3を加熱・昇温するのは、実験例3で後述する様に、45℃以上に加熱した場合には、被験者の体感としての抗菌性と、皮膚への浸透性が優れていたという実験結果に基づいている。
図4において、加熱された純水を符号W4で示す。また、符号8は、純水を加熱するための加熱用バーナを示している。
図4は、図7のステップS4に相当する。
【0027】
図5で示す手順では、所定温度まで加熱された純水W4(図4参照)に、磁気を作用させている。
具体的には、先ず、35℃以上、好ましくは45℃以上に加熱された純水W4(図4参照)を磁気付加槽65に移し変える。
磁気付加槽65の下方には、電磁誘導コイル9が配置されており、この電磁誘導コイル9に通電することによって、コイル9回りに磁界10が発生する。そして、この磁界10に純水W4をさらすことにより、純水W4は純水W5となる。
図5は、図7のステップS5に相当する。
【0028】
図6で示す手順では、磁界10により活性化した純水W5(図5参照)を、溶解槽67に移し変える。そして、活性化した純水W5に、適量のヒノキチオールの結晶20を投入し、図示しない手段、例えば攪拌棒等で十分攪拌する。
ここで、ヒノキチオールの結晶20の純水W5に対する質量割合は、1/3000〜1/1400の範囲とする。攪拌後、1/3000〜1/1400の範囲に希釈された均一濃度のヒノキチオール水溶液W6が精製される。
図6では、ヒノキチオールの結晶20を、ガラス瓶11から溶解槽67内の磁気を帯びた純水W5に、直接投入しているように描写されている。しかし、実際には、図示しない計量手段によって、ヒノキチオールの結晶20を計量して、図示しない計量手段により、ヒノキチオールの結晶20を溶解槽67内に投入している。
図6は、図7のステップS6に相当する。
【0029】
[実験例1]
純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水W1を電気分解し(純水W2)、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけ、当該圧力をかけられた水(安定化工程を行った水W3)の温度を35℃以上に昇温し(加熱後の純水W4)、磁気で処理した水W5と、ヒノキチオール20との比を変更して、ヒノキチオール20が溶解する状態を観察して、実験例1を行った。
なお、ヒノキチオール20については、ヒバから抽出して、発明者が結晶化したものを使用した。
【0030】
実験例1の結果を、表1で示す。
表1及び実験例1に関連する記載において、「純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけ、当該圧力をかけられた水(安定化工程を行った水)の温度を35℃以上に昇温し、磁気で処理した水」W5は、「アルカリイオン水」と表現されている。
表1

【0031】
表1において、ヒノキチオールの結晶とアルカリイオン水との比が1:1250の場合では、アルカリイオン水に完全には溶解せず、残存するヒノキチオールの結晶(残渣)が存在した。
一方、ヒノキチオールの量が、アルカリイオン水に対する比が1:1400の場合以下であれば、全て溶解した。
表1で示す実験例1の結果から、ヒノキチオールのアルカリイオン水に対する比が1:1400以下(1:1600、1:2000、1:2500、1:3300、1:5000)となるようにするべき旨が明らかになった。
【0032】
[実験例2]
実験例2では、任意に選択した100名の被験者に対して、ヒノキチオールとアルカリイオン水との比が1:5000〜1:1400の範囲となるヒノキチオール水溶液を塗布した。そして、被験者の体感として、抗菌性と表皮に対する浸透性の有無を集計した。
実験例2の結果を、表2で示す。
なお、表2〜後述の表5において、パラメータ以外の数値は、全て該当者の人数を表している。
表2

【0033】
溶解したヒノキチオール溶液を抗菌剤として人体の皮膚に塗布した際に、ヒノキチオールとアルカリイオン水の比が1:5000の場合には、抗菌性と表皮に対する浸透性が殆ど認められなかった。
ヒノキチオールがアルカリイオン水に対して1:3300以上(1:2500、1:2000、1:1600、1:1400)であれば、抗菌性と表皮に対する浸透性は確認できた。特に、ヒノキチオールがアルカリイオン水に対して1:2000の場合には、抗菌性及び浸透性の双方について「有る」と回答した被験者数が、1:2500の場合に比較して、大幅に増大した。
ヒノキチオールがアルカリイオン水に対して1:1600、1:1400の場合には、抗菌性及び浸透性の双方について「有る」と回答した被験者数は、1:2000の場合より微増した。
表2で示す実験例2の結果から、ヒノキチオールはアルカリイオン水に対して、1:3300以上であることが好適であり、特に、1:2000とするのが好ましいことが分かった。
そして、表1で示す実験例1の結果と、表2で示す実験例2の結果とを組み合わせれば、ヒノキチオールはアルカリイオン水に対して、1:3300〜1:1400とするべきであり、特に1:2000が最適であることが判明した。
【0034】
[実験例3]
実験例3では、「純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけ、当該圧力をかけられた水(安定化工程を行った水)」W3(以下、実験例2及び表2では、「昇温前のアルカリイオン水」と記載する)を、加熱後の温度を25℃〜45℃まで5℃ずつ変更して、加熱した。そして、「昇温前のアルカリイオン水」を各種温度まで昇温した後、磁気で処理して、ヒノキチオール20を1:2000の比で添加して、ヒノキチオール溶液W6を製造した。
そして、当該ヒノキチオール溶液W6を、任意に選択した100名の被験者に対して塗布し、被験者の体感として、抗菌性と表皮に対する浸透性の有無を集計した。
【0035】
抗菌性と表皮に対する浸透性については、被験者の体感によるものとして集計した。
実験例3の結果を、表3で示す。
表3

【0036】
表3より、昇温前のアルカリイオン水を35℃以上、好ましくは40℃以上に昇温すると、抗菌性と表皮に対する浸透性が向上することが分かった。
すなわち、被験者の体感としての抗菌性と表皮に対する浸透性を向上するためには、昇温前のアルカリイオン水を35℃以上、好ましくは40℃以上に昇温することが好適であることが、実験例3より明らかになった。
【0037】
[実験例4]
実験例4では、「純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけ、当該圧力をかけられた水(安定化工程を行った水)の温度を35℃に昇温した水」W4を磁気で処理していない水W4と磁気で処理した水(以下、実験例4と表4では、「磁気で処理していない水」、「磁気で処理した水」と記載する)W5を、抗菌作用及び浸透性について比較した。
実験例4では、磁気で処理するに当たって、前記安定化工程を行った水を30秒間だけ5000ガウスの磁界中に配置した。
抗菌性及び浸透性(表皮に対する浸透性)については、被験者の体感によるものとして集計した。
実験例4の結果を、下表4で示す。
表4

【0038】
表4において、磁気処理していない水で、抗菌性が有ると感じた被験者数と、浸透性が有ると感じた被験者数の数は、表3における35℃の欄の人数に等しい。換言すれば、表4における「磁気で処理していない水」の実験結果は、表3における「35℃に昇温した水」の実験結果と同一である。
表4から、磁気で処理した場合には、磁気で処理していない場合に比較して、抗菌性が有ると感じた被験者数及び浸透性が有ると感じた被験者数の数は、有意に増加している。
すなわち、磁気で処理することにより、被験者の体感として、抗菌性及び浸透性は増加する。
【0039】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態として、第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液W6を、純水により8倍〜12倍に希釈した(W7:図8参照)。
ここで、「第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液」W6とは、「純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行い、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解し、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけ、当該圧力をかけられた水(安定化工程を行った水)の温度を35℃以上に昇温し、当該水を磁気で処理して、その水に対して1:3000〜1:1400の比でヒノキチオールの結晶を溶解させて製造したヒノキチオール水溶液」である。
「第1実施形態に係るヒノキチオール水溶液」W6の製造については、図1〜図7を参照して上述した通りである。
【0040】
図8において、第1実施形態(図1〜図7参照)で得られたヒノキチオール水溶液W6を、攪拌槽69に適量注入し、純水W0によって所定の倍率に希釈している。
詳細には、希釈処理に際して、先ず、ヒノキチオール水溶液W6を計量器(例えばメスシリンダ)68で規定量(例えば100cc)計量する(図8(A)参照)。同様に、純水W0を計量器68で規定量(例えば800cc)計量する(図8(B)参照)。
次に、図8(C)で示す様に、計量した純水W0、ヒノキチオール水溶液W6を攪拌槽69に注ぎ入れ、攪拌器(例えば、ミキサ)70で十分に攪拌して、均一に希釈する。希釈後の水溶液は、図8(C)において、符号W7で示されている。
【0041】
[実験例5]
ヒノキチオール水溶液W6を、希釈率を変更しつつ、純水W0により8倍〜12倍に希釈し、希釈されたヒノキチオール水溶液W7の各々における抗菌作用及び浸透性について比較した。
抗菌性及び浸透性(表皮に対する浸透性)については、被験者の体感によるものとして集計した。
実験例5の結果については、下表5で示す。
表5

【0042】
表5から、希釈率が10倍以下であれば、被験者の体感として、抗菌性及び浸透性を有することが明らかとなった。
ここで、発明者の試算として、ヒノキチオール結晶製造の費用を考慮すると、販売数量にもよるが、希釈する場合には5倍以上に希釈しなければ採算が取れない可能性があることが判明した。
係る試算と実験例5の結果を考慮すると、ヒノキチオール水溶液W6を純水で希釈する場合には、5倍〜10倍に希釈するべきであることが判明した。
【0043】
ヒノキチオール水溶液W6、或いは純水で希釈されたヒノキチオール水溶液W7を用いて、抗菌剤、除菌剤、洗浄剤を製造したところ、抗菌性、除菌性に加えて、表皮上の皮脂を除去する効果が長期間持続した。
また、多数の被験者において、メラニン色素が除去されるという効果も確認された。
【0044】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
図示の第1実施形態では、図5において、図4で示す加熱槽60から、磁気付帯槽65に加熱昇温された純水W4を移し変えているが、図4の加熱槽60に磁気付帯手段を設けて、その磁気付帯手段を設けた加熱槽によって加熱昇温処理及び磁気付帯処理を行うことも出来る。
或いは、更にこの磁気付帯手段を設けた加熱槽において、図6で示すようなヒノキチオールの添加・溶解処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1・・・脱酸素処理槽
2・・・イオン交換膜
3・・・電解槽
4・・・陰極
5・・・陽極
6・・・安定化槽
7・・・ピストン
8・・・加熱用バーナ
9・・・電磁誘導コイル
10・・・磁界
20・・・ヒノキチオール(の結晶)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理が行われた純水を電気分解して、当該電気分解された純水のうち、陰極室側の純水に対して、安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかけた水と、当該水に対して1:3000〜1:1400の比でヒノキチオールを含んでいることを特徴とするヒノキチオール水溶液。
【請求項2】
前記水とヒノキチオールとを組成物として有するヒノキチオール水溶液は、純水により5倍〜10倍に希釈されている請求項1のヒノキチオール水溶液。
【請求項3】
前記水は磁気で処理されている請求項1、2の何れかのヒノキチオール水溶液。
【請求項4】
純水の溶存酸素が1ppm以下となる様に脱酸素処理を行う工程と、脱酸素処理が行なわれた純水を電気分解する工程と、陰極室側の純水に対して安定化槽内で4kg/cm以上の圧力をかける安定化工程と、安定化工程を行った水に対して1:3000〜1:1400の比のヒノキチオールを溶解させる溶解工程とを有しているヒノキチオール水溶液の製造方法。
【請求項5】
前記溶解工程では、前記安定化工程を行なった水の温度を35℃以上に昇温する加熱工程を有する請求項4のヒノキチオール水溶液の製造方法。
【請求項6】
前記溶融工程を行ったヒノキチオール水溶液を、純水により5倍〜10倍に希釈する希釈工程を有する請求項4、5の何れかのヒノキチオール水溶液の製造方法。
【請求項7】
前記安定化工程を行った水を磁気で処理する工程を有する請求項4〜6の何れか1項のヒノキチオール水溶液の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−74045(P2011−74045A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230084(P2009−230084)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(501048930)株式会社シームス (34)
【Fターム(参考)】