説明

ヒューズユニット及びその製造方法

【課題】バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のものを低コストで作製できるヒューズユニット及びその製造方法を提供する。
【解決手段】バッテリポストより給電を受ける給電用接続部12と負荷側に接続される負荷用接続部17を有するバスバー10A,10Bと、バスバー10A,10Bの外周に配置された絶縁樹脂部とを備えたヒューズユニットであって、バスバー10A,10Bは、給電用接続部12を有する第1バスバー部11と、負荷用接続部17を有する第2バスバー部15とに分割され、第1バスバー部11にはボルト挿通孔13aを設け、第2バスバー部15には長孔15aを設け、ボルト20とナット21を利用して第1バスバー部11と第2バスバー部15間を双方の相対的位置が異なる位置関係で固定可能に設けて、形態の異なるバスバー10A,10Bを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリに直付けされるヒューズユニット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例のヒューズユニットとしては、特許文献1に開示されたものがある。このヒューズユニット100は、図5に示すように、バッテリ101のバッテリポスト102にバッテリ接続端子103を介して固定されている。ヒューズユニット100は、図5及び図6に示すように、導電性金属板であるバスバー110と、このバスバー110の外面にインサート成形によって設けられた絶縁樹脂部120とを備えている。
【0003】
バスバー110は、バッテリ接続端子103が接続され、バッテリポスト102側から給電を受ける給電用接続部111と、スタータモータ端子130が接続されるスタータモータ用接続部112と、オルタネータ端子131が接続されるオルタネータ用接続部113と、負荷側端子(図示せず)が接続される負荷用接続部114(図6に示す)と、給電用接続部111とオルタネータ用接続部113に介在されるオルタネータ用可溶部115と、給電用接続部111と各負荷用接続部114との間にそれぞれ介在された複数の負荷用可溶部116とを有する。
【0004】
ヒューズユニット100は、図5に示すように、給電用接続部111、スタータモータ用接続部112及びオルタネータ用接続部113と、負荷用接続部114の複数の負荷用可溶部116との間で直角方向に折曲され、バッテリ101の上面101aと側面101bに沿って配置されている。これにより、ヒューズユニット100に割り当てられたバッテリ101の周辺スペースに設置されている。
【0005】
ところで、ヒューズユニット100に割り当てられるバッテリ101の周辺スペースは、バッテリ101の周辺レイアウトによって異なる場合がある。このような場合には、ヒューズユニット100の極数が同じでも割り当てスペース内に設置できるようにヒューズユニット100の形態を変更する必要がある。
【0006】
尚、上記従来例と類似技術が特許文献2にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−329457号公報
【特許文献2】特開2009−283367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来例のヒューズユニット100では、その形態を変更するには、バスバー110の金型、インサート成形の金型を新規に設計する必要があり、高コストであるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のものを低コストで作製できるヒューズユニット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、バッテリポストに固定され、前記バッテリポストより給電を受ける給電用接続部と負荷側に接続される負荷用接続部を有するバスバーと、前記バスバーの外周に配置された絶縁樹脂部とを備えたヒューズユニットであって、前記バスバーは、前記給電用接続部を有する第1バスバー部と、前記第1バスバー部とは別体で、前記負荷用接続部を有する第2バスバー部とから構成され、前記第1バスバー部と前記第2バスバー部が双方の相対的位置が異なる位置関係で固定可能に設けられたことを特徴とするヒューズユニットである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のヒューズユニットであって、前記第1バスバー部は、形態の異なる複数種類のものから選択されたことを特徴とするヒューズユニットである。
【0012】
請求項3の発明は、バッテリポストに固定され、前記バッテリポストより給電を受ける給電用接続部を有する第1バスバー部と、前記第1バスバー部に相対的位置関係が異なる位置関係で固定可能で、且つ、負荷側に接続される負荷用接続部を有する第2バスバー部とを、所望の位置関係で固定するバスバー一体化工程を行い、その後、前記第1バスバー部と前記第2バスバー部の一体化により構成されたバスバーを、インサート部品としてインサート成形して絶縁樹脂部を形成するインサート成形工程を行うことを特徴とするヒューズユニットの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、第1バスバー部と第2バスバー部を双方の相対的位置が異なる位置関係で固定できるため、バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のバスバーを作製可能であり、このように形態の異なるバスバーを作製するのにバスバーの金型を新規に起こす必要がなく、又、第1バスバー部と第2バスバー部間の固定位置のみが相違するためインサート成形の金型も基本的に同じ金型が利用可能である。以上より、バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のヒューズユニットを低コストで作製できる。
【0014】
請求項2の発明によれば、第1バスバー部の変更によって、作製できるヒューズユニットの形態バリエーションが増加する。従って、バッテリの周辺レイアウトに応じたヒューズユニットの形態バリエーションが増加する。
【0015】
請求項3の発明によれば、第1バスバー部と第2バスバー部を双方の相対的位置が異なる位置関係で固定できるため、バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のバスバーを作製可能であり、このように形態の異なるバスバーを作製するのにバスバーの金型を新規に起こす必要がなく、又、第1バスバー部と第2バスバー部間の固定位置のみが相違するためインサート成形の金型も基本的に同じ金型が利用可能である。以上より、バッテリの周辺レイアウトに応じた形態のヒューズユニットを低コストで作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を示し、第1バスバー部と第2バスバー部の固定前の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は第1形態のバスバーの斜視図、(b)は第2形態のバスバーの斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、第1形態のヒューズユニットをバッテリに直付けした状態を示す斜視図、(b)は第2形態のヒューズユニットをバッテリに直付けした状態を示す斜視図である。
【図4】(a)、(b)はそれぞれ前記実施形態とは異なる形態の第1バスバー部の斜視図である。
【図5】従来例のヒューズユニットをバッテリに直付けした状態を示す分解斜視図である。
【図6】従来例のヒューズユニットの折り曲げ加工前の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
(一実施形態)
図1〜図3は本発明の一実施形態を示し、図1は第1バスバー部11と第2バスバー部15の固定前の斜視図、図2(a)は第1形態のバスバー10Aの斜視図、図2(b)は第2形態のバスバー10Bの斜視図、図3(a)は第1形態のヒューズユニット1Aをバッテリ2に直付けした状態を示す斜視図、図3(b)は第2形態のヒューズユニット1Bをバッテリ2に直付けした状態を示す斜視図である。
【0019】
ヒューズユニット1A,1Bは、この実施形態では、バッテリ2の周辺レイアウトに応じて第1形態と第2形態を作製するものとする。図3(a)に示す第1実施形態のヒューズユニット1Aは、バッテリポスト3の位置を中心としてその左右方向のバッテリ上面2a及びバッテリ側面2b近傍を設置スペースし、図3(b)に示す第2実施形態のヒューズユニット1Bは、バッテリポスト3の位置を基準としてその右側のバッテリ上面2a及びバッテリ側面2b近傍を設置スペースとする。
【0020】
図3(a)に示す第1形態のヒューズユニット1Aと図3(b)に示す第2形態のヒューズユニット1Bは、導電性金属板から形成されたバスバー10A,10Bと、バスバー10の外周を覆うように配置された絶縁樹脂部30とを備えている。第1形態のヒューズユニット1Aは、図2(a)に示す第1形態のバスバー10Aを、第2形態のヒューズユニット1Bは、図2(b)に示す第2形態のバスバー10Bをそれぞれ用いて構成されるが、第1形態及び第2形態のバスバー10A,10Bは、共に同じ第1バスバー部11と第2バスバー部15を用いて構成されている。以下、説明する。
【0021】
図1に示すように、第1バスバー部11は、フラットで、且つ、長さがL1の板である。第1バスバー部11は、その一端側にバッテリ接続端子4(図3(a)、(b)に示す)が接続される給電用接続部12を有する。給電用接続部12には、ボルト挿通孔12aが形成されている。第1バスバー部11は、その他端側に第2バスバー部15が固定される連結用接続部13を有する。連結用接続部13には、ボルト挿通孔13aが形成されている。
【0022】
第2バスバー部15は、オルタネータ端子(図示せず)が接続されるオルタネータ用接続部16と、負荷側端子が接続される複数の負荷用接続部17と、第1バスバー部11が固定された場合に給電用接続部12とオルタネータ用接続部16との間に介在されるオルタネータ用可溶部18と、第1バスバー部11が固定された場合に給電用接続部12と各負荷用接続部17との間に介在される複数の負荷用可溶部19とを有する。
【0023】
オルタネータ用接続部16には、U字状の切欠部16aが形成されている。各負荷用接続部17には、ボルト挿通孔17aがそれぞれ形成されている。
【0024】
又、第2バスバー部15は、オルタネータ用接続部16と、オルタネータ用可溶部18及び負荷用可溶部19との間の位置でほぼ直角に折り曲げられている。そして、折り曲げられたオルタネータ用接続部16側には、第2バスバー部15の幅方向W(図1に示す)に沿って延びる長孔15aが設けられている。第2バスバー部15の長孔15aと第1バスバー部11のボルト挿通孔13aにボルト20を挿入し、挿入されたボルト20をナット21で締結することによって第1バスバー部11と第2バスバー部15間を固定できる。ボルト20とナット21は、長孔15a内の任意の位置で締結できるため、第1バスバー部11と第2バスバー部15は双方の相対的位置が異なる位置関係で固定可能である。
【0025】
次に、第1バスバー部11と第2バスバー部15を用いて第1形態と第2形態のヒューズユニット1A,1Bをそれぞれ製造する手順を説明する。
【0026】
図1に示すように、第1バスバー部11と第2バスバー部15とをボルト20とナット21で締結してバスバー10A,10Bを作製する(バスバー一体化工程)。ここで、図2(a)に示す第1形態のバスバー10Aを作製する場合には、第1バスバー部11を第2バスバー部15の長孔15aの右端位置で固定する。図2(b)に示す第2形態のバスバー10Bを作製する場合には、第1バスバー部11を第2バスバー部15の長孔15aの左端位置で固定する。
【0027】
つまり、バスバー10A,10Bは従来例のように一体品ではなく、第1バスバー部11と第2バスバー部15に分割され、分割された第1バスバー部11と第2バスバー部15を連結することによって構成される。
【0028】
次に、第2バスバー部15の各仮連結部15bをカットし、U状の切欠部16a、各ボルト挿通孔17aにスタッドボルト22を挿入してバスバー10A,10Bをインサート成形の金型(図示せず)にセットする。ここで、図2(a)の第1形態のバスバー10Aと図2(b)の第2形態のバスバー10Bは、第2バスバー部15の位置を基準として第1バスバー部11の位置が幅方向Wで相違するが、中子等を利用することによって同じ金型(図示せず)を使用することができる。
【0029】
インサート成形を行うと、バスバー10A,10Bの所定の外面に絶縁樹脂部30が形成される(インサート成形工程)。このインサート成形によって、絶縁樹脂部30内に各スタッドボルト22の少なくとも頭部が埋設され、スタッドボルト22が固定される。又、第1バスバー部11と第2バスバー部15間を固定するボルト20とナット21も絶縁樹脂部30内に埋設され、回転不能とされる。これにより、第1バスバー部11と第2バスバー部15は、強固に連結される。
【0030】
このように第1形態のヒューズユニット1Aと第2形態のヒューズユニット1Bを作製できる。作製した第1形態のヒューズユニット1Aをバッテリ接続端子4を介してバッテリポスト3に固定すれば、図3(a)に示すように、第1形態のヒューズユニット1Aの設置スペースであるバッテリ2の周辺に設置される。また、第2形態のヒューズユニット1Bをバッテリ接続端子4を介してバッテリポスト3に固定すれば、図3(b)に示すように、第2形態のヒューズユニット1Bに設置スペースであるバッテリ2の周辺に設置される。
【0031】
尚、第1バスバー部11を第2バスバー部15の長孔15aの中間位置で固定することにより、上記したヒューズユニット1A,1Bとは異なる形態のものを製造できる。
【0032】
以上説明したように、バスバー10A,10Bは、第1バスバー部11と第2バスバー部15に分割され、且つ、第1バスバー部11と第2バスバー部15が双方の相対的位置が異なる位置関係で固定可能に設けられている。従って、バッテリ2の周辺レイアウトに応じた位置関係のバスバー10A,10Bを作製可能であり、このように形態の異なるバスバー10A,10Bを作製するのにバスバー10A,10Bの金型(図示せず)を新規に起こす必要がなく、又、第1バスバー部11と第2バスバー部15間の固定位置のみが相違するためインサート成形の金型(図示せず)も基本的に同じ金型が利用可能である。以上より、バッテリ2の周辺レイアウトに応じた形態のヒューズユニット1A,1Bを低コストで作製できる。
【0033】
(第1バスバー部の変更例)
図4(a)、(b)は前記実施形態とはそれぞれ形態の異なる第1バスバー部11A,11Bの斜視図である。図4(a)に示す第1バスバー部11Aは、クランク状に折曲され、給電用接続部12と連結用接続部13との間に段差Hがある。図4(b)に示す第1バスバー部11Bは、第1実施形態のものと同様にフラット形状であるが、第1実施形態のものより長さL2(L2>L1)が長い。
【0034】
前記実施形態にあって、第1バスバー部11を図4(a)に示す第1バスバー部11Aや図4(b)に示す第1バスバー部11B等に変更すれば、作製できるヒューズユニット1A,1Bの形態バリエーションが増加する。従って、バッテリ2の周辺レイアウトに応じたヒューズユニット1A,1Bの形態バリエーションを増加させることができる。
【0035】
(その他)
前記実施形態では、第1バスバー部11にボルト挿通孔13aを設け、第2バスバー部15に長孔15aを設け、第1バスバー部11と第2バスバー部15間をボルト20とナット21で固定するよう構成したが、固定手段はこれに限定されるものではなく、抵抗溶接、超音波溶接などで固定しても良い。しかし、前記実施形態のように、ボルト20とナット21の固定であれば、固定作業が簡単であるという利点がある。又、長孔15aの長手方向は、第2バスバー部15の幅方向Wに設定したが、これに限定されるものではなく、作製したいヒューズユニットの形態によって適宜変更される。又、第1バスバー部11に円孔のボルト挿通孔13aを設け、第2バスバー部15の複数箇所に円孔のボルト挿通孔を設けても良い。
【符号の説明】
【0036】
1A 第1形態のヒューズユニット(ヒューズユニット)
1B 第2形態のヒューズユニット(ヒューズユニット)
2 バッテリ
3 バッテリポスト
10A 第1形態のバスバー(バスバー)
10B 第2形態のバスバー(バスバー)
11,11A,11B 第1バスバー部
12 給電用接続部
15 第2バスバー部
17 負荷用接続部
30 絶縁樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリポストに固定され、前記バッテリポストより給電を受ける給電用接続部と負荷側に接続される負荷用接続部を有するバスバーと、前記バスバーの外周に配置された絶縁樹脂部とを備えたヒューズユニットであって、
前記バスバーは、前記給電用接続部を有する第1バスバー部と、前記第1バスバー部とは別体で、前記負荷用接続部を有する第2バスバー部とから構成され、前記第1バスバー部と前記第2バスバー部が双方の相対的位置が異なる位置関係で固定可能に設けられたことを特徴とするヒューズユニット。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズユニットであって、
前記第1バスバー部は、形態の異なる複数種類のものから選択されたことを特徴とするヒューズユニット。
【請求項3】
バッテリポストに固定され、前記バッテリポストより給電を受ける給電用接続部を有する第1バスバー部と、前記第1バスバー部に相対的位置関係が異なる位置関係で固定可能で、且つ、負荷側に接続される負荷用接続部を有する第2バスバー部とを、所望の位置関係で固定するバスバー一体化工程を行い、
その後、前記第1バスバー部と前記第2バスバー部の一体化により構成されたバスバーを、インサート部品としてインサート成形して絶縁樹脂部を形成するインサート成形工程を行うことを特徴とするヒューズユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−222188(P2011−222188A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87843(P2010−87843)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】