説明

ヒューズユニット

【課題】可溶部の溶断時に低融点金属が落下しないヒューズユニットを提供する。
【解決手段】バスバー2とバスバー2の外周を被う絶縁樹脂部10とを備え、バスバー2には通電経路として他の箇所より断面積を小さくした可溶部6,7が設けられ、可溶部6,7には低融点金属8が付設され、絶縁樹脂部10には可溶部6,7の位置に窓部9が設けられたヒューズユニット1であって、窓部9は、可溶部6,7の低融点金属8を露出し、低融点金属8の片側に位置する可溶部6,7の箇所6a,7aが絶縁樹脂部10で被われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷に過電流(定格値以上の電流)が通電されるのを防止するヒューズユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両には、電源から負荷に対し過電流の通電を防止するためヒューズユニットが搭載される。この種の従来例のヒューズユニットとしては、特許文献1に開示されたものがある。このヒューズユニット100は、図3に示すように、バッテリポスト(図示せず)にバッテリ端子(図示せず)を介して固定される。ヒューズユニット100は、導電性金属板であるバスバー101と、このバスバー101をインサート部品としてインサート成形によって設けられた絶縁樹脂部120とを備えている。
【0003】
バスバー101は、バッテリ端子(図示せず)が接続される給電用接続部102と、各外部端子が接続される複数の外部用接続部103と、給電用接続部102と各外部用接続部103の間に介在される複数の可溶部104とを有する。各可溶部104は、バスバー101の一部が幅狭で、且つ、折曲形状に形成されたバスバー幅狭部104aと、このバスバー幅狭部104aに加締め固定された低融点金属104bとを有する。バスバー幅狭部104aは、幅狭によって他の箇所よりも断面積が小さく、電気抵抗が大きく設定されている。低融点金属104bは、例えば錫である。
【0004】
絶縁樹脂部120は、給電用接続部102、各外部用接続部103、各可溶部104を除くバスバー101の外面をほぼ被覆している。絶縁樹脂部120には、各可溶部104を露出させる窓部121がそれぞれ設けられている。各窓部121は、可溶部104の全体を露出するよう大きな寸法に形成されている。この各窓部121は、絶縁樹脂部120に装着された各可溶部カバー130で塞がれている。各可溶部カバー130は、コ字形状であり、窓部121の両方の開口を閉塞し、塵挨、水等から可溶部104を保護している。各可溶部カバー130は、目視によって可溶部104の溶断の有無を確認できるように透明体にて形成されている。
【0005】
上記構成において、ヒューズユニット100は、過電流が通電されると、可溶部104が溶断する。これにより、負荷に過電流が通電されるのを防止する。
【0006】
溶断時には、
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−95214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のヒューズユニットでは、レアショートによる溶断時には、図4に示すように、バスバー幅狭部104aの全域で急激に発熱し、低融点金属104bの両側で溶断する恐れがある。低融点金属104bを挟んで両側で溶断すると、高温の低融点金属104bが可溶部カバー130の内面上に落下し、低融点金属104bの熱によって可溶部カバー130を溶損させたり、可溶部カバー130を突き破って外部に落下して他の部品を溶損させたりするような事態が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、可溶部の溶断時に低融点金属が落下しないヒューズユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、バスバーと前記バスバーの外周を被う絶縁樹脂部とを備え、前記バスバーには通電経路として他の箇所より断面積を小さくした可溶部が設けられ、前記可溶部には低融点金属が付設され、前記絶縁樹脂部には前記可溶部の位置に窓部が設けられたヒューズユニットであって、前記窓部は、前記可溶部の前記低融点金属を露出し、前記低融点金属の片側に位置する前記可溶部の箇所が前記絶縁樹脂部で被われていることを特徴とするヒューズユニットである。
【0011】
前記可溶部には、他の箇所よりも断面積を小さくしたヒートスポット部が設けられ、前記窓部は、前記低融点金属と共に前記ヒートスポット部を露出し、前記低融点金属の他方の片側に位置する前記可溶部の箇所が前記絶縁樹脂部で被われることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、可溶部の発熱は、絶縁樹脂部で被われた可溶部の箇所では絶縁樹脂部に吸収され、絶縁樹脂部で被われず露出された可溶部の箇所では絶縁樹脂部で吸収されないため、可溶部が溶断する際には、露出された可溶部の箇所でのみ溶断し、低融点金属の両側位置で溶断することがない。従って、可溶部の溶断時に低融点金属が落下しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示し、ヒューズユニットの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、(a)は可溶部の拡大平面図、(b)は可溶部の溶断箇所を示す拡大平面図である。
【図3】従来例を示し、ヒューズユニットの平面図である。
【図4】従来例を示し、可溶部の溶断箇所を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1及び図2は本発明の一実施形態を示す。図1に示すように、ヒューズユニット1は、バッテリ(図示せず)のバッテリポストに直付けされるものである。
【0016】
ヒューズユニット1は、導電性金属板であるバスバー2と、このバスバー2の外面を被う絶縁樹脂部10とを備えている。バスバー2は、端子接続部である給電用接続部3と、各外部端子(図示せず)が接続される端子接続部である複数の外部用接続部4,5と、給電用接続部3と各外部用接続部4,5間にそれぞれ介在される複数の可溶部6,7とを有する。
【0017】
給電用接続部3は、バッテリ(図示せず)のバッテリポスト(図示せず)にバッテリ端子(図示せず)を介して接続される。各外部用接続部4,5には、ボルト接続によって外部端子(図示せず)が接続される。
【0018】
各可溶部6,7は、各外部用接続部4,5への過電流を阻止する。各可溶部6,7は、バスバー2の一部が幅狭で、且つ、折れ曲がった形状に形成されたバスバー幅狭部6a,6b,7a,7bと、このバスバー幅狭部6a,6b,7a,7bの加締め部6d、7dによって加締め固定された低融点金属8とを有する。
【0019】
各バスバー幅狭部6a,6b,7a,7bは、幅狭とすることによって通電経路として他の箇所より断面積が小さく設定されている。各バスバー幅狭部6a,6b,7a,7bには、更に幅狭(くびれ形状)として断面積を小さくしたヒートスポット部6c,7cがそれぞれ設けられている
各低融点金属8は、バスバー幅狭部6a,6b,7a,7bの端部でなく中央位置(ここで、中央位置とは、端部以外の位置をいう。)で、且つ、ヒートスポット部6c,7cのごく近傍に配置されている。従って、各低融点金属8は、バスバー幅狭部の一方側6a,7aと、バスバー幅狭部の他方側6b,7bの間に位置している。低融点金属8は、例えば錫である。
【0020】
絶縁樹脂部10は、バスバー2をインサート部品としてインサート成形によって絶縁性の合成樹脂より形成されている。絶縁樹脂部10は、給電用接続部3、各外部用接続部4,5、各可溶部6,7を除くバスバー2の外面をほぼ被覆している。絶縁樹脂部10には、各可溶部6,7の位置に窓部9がそれぞれ設けられている。
【0021】
各窓部9は、図2(a)に詳しく示すように、可溶部6,7の低融点金属8及びヒートスポット部6c,7cのごく周辺のみを露出させるように小寸法に形成されている。つまり、各低融点金属8及びヒートスポット部6c,7cの両側に位置するバスバー幅狭部の一方側6a,7aとバスバー幅狭部の他方側6b,7bは、絶縁樹脂部10で被われている。
【0022】
各窓部9は、絶縁樹脂部10に装着された各可溶部カバー20で塞がれている。各可溶部カバー20は、コ字形状であり、窓部9の両方の開口を閉塞し、塵挨、水等から可溶部6,7を保護している。各可溶部カバー20は、目視によって可溶部6,7の溶断の有無を確認できるように透明体にて形成されている。
【0023】
上記構成において、ヒューズユニット1は、例えば給電用接続部3と外部用接続部4間に過電流が通電されると、可溶部6が溶断する。これにより、負荷に過電流が通電されるのを防止する。レアショートによる溶断時には、バスバー幅狭部6a,6bの全域で急激に発熱する。バスバー幅狭部6a,6bの発熱は、絶縁樹脂部10で被われた箇所では絶縁樹脂部10に吸収され、絶縁樹脂部10で被われず露出された箇所では絶縁樹脂部10で吸収されない。そのため、可溶部6が溶断する際には、露出された可溶部6の箇所でのみ溶断し、低融点金属8の両側位置で溶断することがない。具体的には、図2(b)に示すように、ヒートスポット部6cの一箇所でのみ溶断する。従って、可溶部6の溶断時に低融点金属8が落下しない。これにより、可溶部6の溶断時に低融点金属8が落下することに起因する不具合を防止できる。具体的には、落下した高温の低融点金属8が可溶部カバー20を溶損させたり、可溶部カバー20を突き破って外部に落下して他の部品を溶損したりするような事態を防止できる。
【0024】
この実施形態では、低融点金属8とヒートスポット部6c,7cの両側に位置するバスバー幅狭部6a,6b,7a,7bが絶縁樹脂部10で被われているが、ヒートスポット部6c,7cとは反対側であるバスバー幅狭部の一方側6a,7aのみを絶縁樹脂部10で被い、他方側6b,7bを窓部9から露出するようにしても良い。このようにしても、低融点金属8の他方側であるバスバー幅狭部6b,7bのみ(ヒートスポット部6c,7cを含む)で溶断し、低融点金属8の両側位置で溶断することがない。従って、可溶部6の溶断時に低融点金属8が落下しない。
【0025】
この実施形態では、低融点金属8と共にヒートスポット部6c、7cを設けたが、ヒートスポット部6c,7cを設けなくても良い。しかし、ヒートスポット部6c、7cを設けた方が好ましい。つまり、ヒートスポット部6c,7cの発熱は絶縁樹脂部10で吸収されず、しかも、最も抵抗の高いヒートスポット部6c,7cの発熱量が最も高いため、ヒートスポット部6c,7cの箇所で確実に溶断させることができるためである。
【符号の説明】
【0026】
1 ヒューズユニット
2 バスバー
6,7 可溶部
6a,7a,6b,7b バスバー幅狭部(可溶部の片側)
6c,7c ヒートスポット部
8 低融点金属
9 窓部
10 絶縁樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バスバーと前記バスバーの外周を被う絶縁樹脂部とを備え、前記バスバーには通電経路として他の箇所より断面積を小さくした可溶部が設けられ、前記可溶部には低融点金属が付設され、前記絶縁樹脂部には前記可溶部の位置に窓部が設けられたヒューズユニットであって、
前記窓部は、前記可溶部の前記低融点金属を露出し、前記低融点金属の片側に位置する前記可溶部の箇所が前記絶縁樹脂部で被われていることを特徴とするヒューズユニット。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズユニットであって、
前記可溶部には、他の箇所よりも断面積を小さくしたヒートスポット部が設けられ、前記窓部は、前記低融点金属と共に前記ヒートスポット部を露出し、
前記低融点金属の他方の片側に位置する前記可溶部の箇所が前記絶縁樹脂部で被われていることを特徴とするヒューズユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−37887(P2013−37887A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173016(P2011−173016)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】