説明

ヒューズ及びヒューズ装着構造

【課題】材料ロスがほとんどなく形成でき、しかも、小型化できるヒューズ、及び、このヒューズを用いたヒューズ装着構造を提供する。
【解決手段】ヒューズ1Aは、導電性の線材の両端側を平行になるよう折り曲げて形成された一対の接続端子部2aと一対の接続端子部2aの間に他の箇所より断面積を小さくして形成された可溶部2bとを有する導電性のヒューズエレメント2と、ヒューズエレメント2に固定され、ヒューズエレメント2の形態を保持する絶縁性の形態保持部材3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過電流の供給を防止するヒューズ、及び、そのヒューズを装着するヒューズ装着構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のヒューズ50は、図9(a),(b)に示すように、一対の接続端子部51aとこれらの間に配置された可溶部51bとを有するヒューズエレメント51と、一対の接続端子部51aの一部を露出するだけでヒューズエレメント51の外周を被い、ヒューズエレメント51の形態を保持する形態保持部材52とから構成されている。ヒューズエレメント51は、導電材の平板をプレスにて打ち抜くことによって形成されている。
【0003】
図10には、このようなヒューズ50を装着する従来の車載用ジャンクションボックス60が示されている(特許文献1参照)。車載用ジャンクションボックス60は、バッテリーやオルタネータからの電源を各種負荷に分岐する分岐回路を形成した基板61と、基板61に固定され、バッテリーやオルタネータ側に接続したり、各種負荷側に接続したりするためのコネクタ62、63と、基板61に固定され、各負荷への過電流供給を防止するためのヒューズ装着部64とを備えている。
【0004】
ヒューズ装着部64は、複数のキャビティ室65を有し、各キャビティ室65にヒューズ50が装着されるが、そのキャビティ室65の幅寸法W3は装着されるヒューズ50の幅W4によって決定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−333583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のヒューズ50は、平板をプレスにて打ち抜いてヒューズエレメント51を形成するため、多くの材料ロスが発生するという問題がある。具体的には、図9(b)の領域Eが材料ロスとなる。
【0007】
また、前記従来のヒューズ50は、断面積が小さい可溶部51bの両端にフラットで面積の広い接続端子部51aが連結されているので、各接続端子部51a自体の幅が広くなるため、それに伴ってヒューズエレメント51、特に一対の接続端子部51aの形態を保持する形態保持部材52も幅広で複雑な形状となり、ヒューズ50の寸法W4が大型化する。そのため、ヒューズ装着部64の各キャビティ室65が大型化し、車載用ジャンクションボックス60の最外形が大きくなる要因ともなっている。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、材料ロスがほとんどなく形成でき、しかも、小型化できるヒューズ、及び、このヒューズを用いたヒューズ装着構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、導電性の線材の両端側を折り曲げて形成された一対の接続端子部と一対の前記接続端子部の間に他の箇所より断面積を小さくして形成された可溶部とを有する導電性のヒューズエレメントと、前記ヒューズエレメントに固定され、前記ヒューズエレメントの形態を保持する絶縁性の形態保持部材とを備えたことを特徴とするヒューズである。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1記載のヒューズであって、ヒューズエレメントの可溶部は、屈曲形状であることを特徴とするヒューズである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載のヒューズであって、前記形態保持部材は、弾性変形により係止する係止部を有し、前記係止部を利用してヒューズ収容ボックス内に装着可能であることを特徴とするヒューズである。
【0012】
請求項4の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヒューズは、仕切壁によって仕切られた複数のキャビティ室を有するヒューズ収容ボックスに収容されたことを特徴とするヒューズ装着構造である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、ヒューズエレメントは、導電性の線材を所定長さにカットし、そのカットした線材を折り曲げたり、潰したりして作製できるため、導電性の線材をほとんど材料ロスなく作製できる。又、ヒューズエレメントは線材であるため、各接続端子部自体の幅が狭く、ヒューズエレメントの形態を保持する絶縁保持部材が幅狭で簡単な形態で良く、ヒューズの小型化を図ることができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、低い電流値のヒューズを作成でき、又、ヒューズエレメントの幅寸法を更に狭くできる。
【0015】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明の効果に加え、ヒューズを挿入するだけで脱落しないように確実にヒューズ収容ボックスに装着できる。
【0016】
請求項4の発明によれば、各ヒューズは小型であり、キャビティ室を小さく形成すれば良いため、ヒューズ収容ボックスを小型化(低背化)できる。又、ヒューズ収容ボックスは、仕切壁によって仕切られた複数のキャビティ室を有するため、ヒューズの短絡を防止しつつ、ヒューズの小型化とも相まって高密度実装できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、ヒューズの斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、(a)はヒューズエレメントの正面図、(b)はヒューズエレメントの平面図、(c)はヒューズエレメントの右側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、ヒューズをヒューズ収容ボックスに装着する過程を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、ヒューズが収容されたヒューズ収容ボックスの斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、図4のA−A線断面図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、図4のB−B線断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、ヒューズの正面図である。
【図8】本発明の第3実施形態を示し、ヒューズの斜視図である。
【図9】(a)は従来例のヒューズの斜視図、(b)は従来例のヒューズの分解斜視図である。
【図10】従来例のヒューズが装着される車載用ジャンクションボックスの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態を示し、図1はヒューズ1Aの斜視図、図2(a)はヒューズエレメント2の正面図、図2(b)はヒューズエレメント2の平面図、図2(c)はヒューズエレメント2の右側面図、図3はヒューズ1Aをヒューズ収容ボックス10に装着する過程を示す分解斜視図、図4はヒューズ1Aが収容されたヒューズ収容ボックス10の斜視図、図5は図4のA−A線断面図、図6は図4のB−B線断面図である。
【0020】
図1に示すように、ヒューズ1Aは、導電性で、且つ、剛性の高い線材から形成されたヒューズエレメント2と、このヒューズエレメント2に固定された合成樹脂製の形態保持部材3とから構成されている。
【0021】
ヒューズエレメント2は、図2(a)〜(c)に詳しく示すように、例えば亜鉛合金製で、かつ、ほぼ断面形状が四角形状の線材より形成されている。ヒューズエレメント2は、所定寸法にカットした線材の両端側を平行になるよう折り曲げて形成された一対の接続端子部2aと、この一対の接続端子部2aの間に他の箇所より断面積を小さくして形成された可溶部2bを有し、ほぼU字形状に形成されている。
【0022】
可溶部2bは、潰すことによって他の箇所より断面積が小さく形成されている。可溶部2bの断面積及び長さは、許容電流の値より適宜調整される。各接続端子部2aの中間箇所には、表面より微小突起が突き出ている圧入係止部2cが形成されている。各接続端子部2aの先端部は、潰すことによって先端に向かうにしたがって細くなる先細り部2dに形成されている。
【0023】
形態保持部材3は、図1に示すように、ヒューズエレメント2の幅よりも若干だけ大きな寸法の細長い長方形状のブロック部3aを有し、このブロック部3aの底面の両端より外側方に向かって係止部3bがそれぞれ突設されている。この一対の係止部3bは、下方からの外力によってブロック部3aの幅寸法内に収まるよう弾性変形する。
【0024】
形態保持部材3は、そのブロック部3aにヒューズエレメント2の一対の接続端子部2aが圧入係止部2cの箇所まで圧入されることによって固定されている。圧入固定された形態保持部材3は、圧入係止部2cの強固な係止力によって容易には脱落しない。形態保持部材3は、ヒューズエレメント2の形態を保持する。これにより、ヒューズエレメント2は、一対の接続端子部2a間が広がったり、狭まったり等の変形をしないように形態保持されている。
【0025】
次に、このように構成されたヒューズ1Aが多数収容されるヒューズ収容ボックス10を説明する。
【0026】
図3及び図4に示すように、ヒューズ収容ボックス10は、方形状の枠体11と、この枠体11の底面に配置されたベースプレート12と、このベースプレート12上に間隔を置いて配置された複数の仕切壁13とを備えている。枠体11、ベースプレート12及び各仕切壁13は、共に絶縁性の樹脂材にて形成されている。
【0027】
ヒューズ収容ボックス10内には、仕切壁13によって仕切られた複数(この実施形態では10室)のキャビティ室14が横一列に構成されている。各キャビティ室14の幅寸法W2は、前記したヒューズ1Aの幅W1より若干だけ大きく設定されている。但し、ヒューズ1A自体が幅狭であるため、従来例のキャビティ室に比べて十二分に幅狭く設定される。
【0028】
ベースプレート12の各キャビティ室14に対応する位置には、端子挿入孔12a(図5、図6に図示)がそれぞれ形成されている。端子挿入孔12aの幅寸法は、ヒューズ1Aの一対の接続端子部2aが共に通るが、ブロック部3aが通らない幅寸法に設定されている。
【0029】
ヒューズ1Aをキャビティ室14に挿入すると、一対の接続端子部2aが端子挿入孔12a内に進入し、次に、形態保持部材3の係止部3bが端子挿入孔12aの周端に突き当たる。この位置よりさらにヒューズ1Aを挿入すると、一対の係止部3bが弾性変形して端子挿入孔12aへの挿入が許容される。一対の係止部3bが端子挿入孔12aを通り抜けると同時に、形態保持部材3のブロック部3aがベースプレート12に突き当たると共に、一対の係止部3bが弾性復帰変形して端子挿入孔12aの反対面側の周端に係止される。これによって、図4に示すように、ヒューズ1Aがヒューズ収容ボックス10のキャビティ室14に装着される。
【0030】
ヒューズ1Aが装着されたヒューズ収容ボックス10は、例えば車載用ジャンクションボックスの電源ホルダーのヒューズ装着構造に装着される。
【0031】
以上説明したように、ヒューズ1Aは、導電性の線材の両端側を平行になるよう折り曲げて形成された一対の接続端子部2aと一対の接続端子部2aの間に他の箇所より断面積を小さくして形成された可溶部2bとを有する導電性のヒューズエレメント2と、ヒューズエレメント2に固定され、ヒューズエレメント2の形態を保持する絶縁性の形態保持部材3とを備えている。従って、ヒューズエレメント2は、導電性の線材を所定長さにカットし、そのカットした線材を折り曲げたり、潰したりして作製できるため、導電性の線材をほとんど材料ロスなく作製できる。特に、導電性の線材の切断加工、潰し加工、曲げ加工は一つの設備で可能であり、非常に低コストに作製できる。
【0032】
又、ヒューズエレメント2は線材であるので、各接続端子部2a自体の幅が狭く、ヒューズエレメント2の形態を保持する形態保持部材3が幅狭で簡単な形態で良いため、従来例に比べてヒューズ1Aを狭い幅W1にできる。つまり、ヒューズ1Aの小型化を図ることができる。
【0033】
形態保持部材3は、ヒューズエレメント2の圧入によってヒューズエレメント2に固定されている。従って、ヒューズエレメント2を形態保持部材3に圧入するだけで良いため、ヒューズ1Aの作製が容易である。
【0034】
形態保持部材3は、弾性変形により係止する係止部3bを有し、この係止部3bを利用してヒューズ収容ボックス10内にヒューズ1Aを装着したので、ヒューズ1Aを単に挿入するだけで脱落しないように確実にヒューズ収容ボックス10に装着できる。
【0035】
ヒューズ1Aは、仕切壁13によって仕切られた複数のキャビティ室14を有するヒューズ収容ボックス10に収容されている。各ヒューズ1Aは上記したように小型であり、これに伴ってキャビティ室14を小さく形成すれば良いため、ヒューズ収容ボックス10を小型化(低背化)できる。又、ヒューズ収容ボックス10は、仕切壁13によって仕切られた複数のキャビティ室14を有するため、ヒューズ1A間の短絡を防止しつつ、ヒューズ1Aの小型化とも相まって高密度実装できる。このようにヒューズ収容ボックス10を小型化(低背化)できることから、電源ホルダーの厚みを薄くでき、車載用ジャンクションブロックの樹脂材料の削減をもすることができる。
【0036】
また、ヒューズ1Aは、線材の折り曲げ位置を可変することによってヒューズエレメント2の幅を変更できるので、これによっても電源ホルダーの厚みを薄くでき、車載用ジャンクションブロックの樹脂材料の削減をもすることができる。
【0037】
(第2実施形態)
図8は本発明の第2実施形態に係るヒューズ1Bの正面図である。
【0038】
図8に示すように、この第2実施形態のヒューズ1Bは、そのヒューズエレメント2の可溶部2bが波型に屈曲された形状に形成されている。可溶部2bの曲線形状は、曲げ加工によって作製される。
【0039】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。尚、図面の同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0040】
このように、ヒューズエレメント2の可溶部2bが屈曲されているので、低い電流値のヒューズ1Bを作成でき、又、ヒューズエレメント2の幅寸法W1を更に狭くできる。
【0041】
(第3実施形態)
図9は本発明の第3実施形態に係るヒューズ1Cの正面図である。
【0042】
図9に示すように、この第3実施形態のヒューズ1Cは、そのヒューズエレメント2が板状の線材によって形成されている。
【0043】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。尚、図面の同一構成箇所には同一符号を付して明確化を図る。
【0044】
このようにヒューズエレメント2が板状であるため、ヒューズ1Cが強度的に強固である。又、相手端子は音叉状の端子とすることができる。
【0045】
尚、本発明では、ヒューズエレメント2は、折り曲げ加工や潰し加工ができれば良く、断面形状が角状、板状以外の線材であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B,1C ヒューズ
2 ヒューズエレメント
2a 接続端子部
2b 可溶部
3 形態保持部材
3b 係止部
10 ヒューズ収容ボックス
13 仕切壁
14 キャビティ室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の線材の両端側を折り曲げて形成された一対の接続端子部と一対の前記接続端子部の間に他の箇所より断面積を小さくして形成された可溶部とを有する導電性のヒューズエレメントと、
前記ヒューズエレメントに固定され、前記ヒューズエレメントの形態を保持する絶縁性の形態保持部材とを備えたことを特徴とするヒューズ。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズあって、
前記ヒューズエレメントの可溶部は、屈曲形状であることを特徴とするヒューズ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヒューズであって、
前記形態保持部材は、弾性変形により係止する係止部を有し、前記係止部を利用してヒューズ収容ボックス内に装着可能であることを特徴とするヒューズ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のヒューズは、仕切壁によって仕切られた複数のキャビティ室を有するヒューズ収容ボックスに収容されたことを特徴とするヒューズ装着構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−124033(P2011−124033A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279250(P2009−279250)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】