説明

ヒューズ装置

【課題】ヒューズ本体に溶断表示ヒューズを簡単に後付けできるようにその取付け構造を改良する。
【解決手段】両端にキャップ2,端子板3を備えたヒューズ本体1に溶断表示ヒューズ4を並列に取り付けて使用するヒューズ装置において、ヒューズ本体のキャップと溶断表示ヒューズのキャップとの間に跨がりバネ性を有する導電板で作られたS字形の取付バンド5を架け渡して連結し、かつヒューズ本体のキャップと該キャップの周面に巻き付けた取付バンドとの間を凹部/凸部で嵌め合い結合するものとし、ここで前記キャップ2の周面に凹部2aを等間隔ピッチに割り付けて形成するとともに、該凹部の配列ピッチに対応して取付バンド5には係合凸部5bを形成し、ヒューズ本体に対する溶断表示ヒューズの相対的な取付位置が変更できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒形ヒューズにその溶断動作状態を表示する溶断表示ヒューズを並列に取り付けたヒューズ装置の組立構造に関する。
【背景技術】
【0002】
低圧限流ヒューズについては、ヒューズ本体に溶断表示機構を内蔵している栓形ヒューズなどのほかに、筒形ヒューズのヒューズ本体に別部品(オプション)の溶断表示ヒューズを並列に取り付けてヒューズ本体の溶断動作状態を視認するようにしたヒューズ装置が知られている(例えば、特許文献1)。
次に、筒形ヒューズに溶断表示ヒューズを取り付けたヒューズ装置について、その従来構造を図4に示す。図4(a)〜(d)において、1はヒューズエレメント,消弧砂を内蔵したヒューズ筒(碍管)の両端に導電金属のキャップ2,端子板3を備えたヒューズ本体、4はヒューズ本体1に外付けして並列接続した溶断表示ヒューズ、4aはその溶断表示棒、5は溶断表示ヒューズ4をヒューズ本体1に取り付ける導電金属材で作られた取付バンドである。なお、溶断表示ヒューズ4の構造,溶断表示動作は特許文献1にも詳しく述べられており、碍管の両端に結合した端子兼用の金属キャップの一方にバネ付勢された溶断表示棒4aを組み込み、この溶断表示棒と他方のキャップとの間に可溶線を張架した構造になり、主回路に過電流が流れて筒形ヒューズ(ヒューズ本体)が溶断すると電流が溶断表示ヒューズに流れ、その可溶線が溶断して溶断表示棒4aがキャップから突き出す仕組みになっている。
【0003】
そして、筒形ヒューズのヒューズ本体1に溶断表示ヒューズ4を取り付けるために、従来構造ではヒューズ本体1の両端に配したキャップ2の周面上にスタッドボルト6を溶接などしてあらかじめ植設しておき、溶断表示ヒューズ4の両端のキャップに巻き付けたヘアピン状の取付バンド5を前記スタッドボルト6に嵌挿し、ナット7により締結して筒形ヒューズと並列に取り付けるようにしている。なお、溶断表示ヒューズ4には、その端部から突き出す表示棒4aでヒューズの溶断状態を視認するタイプのほか、表示棒4aの突き出し動作に応動するマイクロスイッチを組合せてヒューズの溶断を電気信号として外部に取り出すようにしたタイプも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−62588号公報
【特許文献2】特開平6−84445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、筒形ヒューズに溶断表示ヒューズを外付けする場合に、従来の組立構造では次記のような問題点がある。
すなわち、メーカーでは筒形ヒューズとして、溶断表示ヒューズの併用に対応してない標準形のヒューズと、溶断表示ヒューズの外付けに対応するヒューズとを別な機種として製作しており、溶断表示ヒューズ付きの機種には図4に示したスタッドボルト6をヒューズ本体1の導電キャップ2に溶接しておき、ユーザーの要求により溶断表示ヒューズ4をこのスタッドボルト6に取り付けて製品を出荷するようにしている。これに対して、標準形のヒューズにはスタッドボルト6は設けていない。
【0005】
このために、標準形の筒形ヒューズを購入したユーザーは、溶断表示ヒューズを後付けすることができず、溶断表示ヒューズを併用するにはスタッドボルト付きの機種を改めて購入する必要がある。さらに、ヒューズ本体に設けたスタッドボルトの向き、したがって溶断表示ヒューズの相対的な取付位置はあらかじめ決められており、この位置はユーザーが使用先現場の状況に合わせて変更することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、ユーザーの使い勝手性を考慮して標準形のヒューズに溶断表示ヒューズを簡単に後付けできるようにし、またメーカー側でも部品を共用して製作コストの低減化が図れるように取付け構造を改良した溶断表示ヒューズ付きのヒューズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、両端にキャップ,端子板を備えた筒形ヒューズの本体に溶断表示ヒューズを並列に取り付けたヒューズ装置において、
ヒューズ本体のキャップと溶断表示ヒューズのキャップとの間にバネ性の導電板で作られたS字形の取付バンドを架け渡して連結し、かつヒューズ本体のキャップと該キャップの周面に巻き付けた取付バンドとの間を凹部/凸部で嵌め合い結合する(請求項1)。
【0008】
また、前記構成の具体的な態様として、ヒューズ本体のキャップ周面に凹部を等間隔ピッチに割り付けて形成するとともに、該凹部の配列ピッチに対応して取付バンドの板面に係合凸部を形成する(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、標準形の筒形ヒューズに対してあらかじめヒューズ本体のキャップ周面に数箇所の凹部(窪み)を形成しておくだけで、この筒形ヒューズのキャップに被着したS字状の取付バンドを介して溶断表示ヒューズ(オプション)を簡単に後付けすることができる。
したがって、メーカーではヒューズ本体のキャップ周面に凹部を形成した筒形ヒューズを標準品として製作し、この筒形ヒューズに取付バンドを介して溶断表示ヒューズを取り付けることで、溶断表示ヒューズ付きのヒューズ装置として製品を出荷することができる。また、標準形のヒューズを購入したユーザーでも必要に応じて溶断表示ヒューズを簡単に後付けすることが可能である。
【0010】
これにより、ユーザーへのサービス性向上が図れるほか、メーカーでも従来のようにヒューズ本体のキャップを機種別に分けて製作,管理する必要なしに部品の共用化が図れて製品コストの低減化が図れる。
しかも、ヒューズ本体のキャップ周面に形成した凹部を等間隔ピッチに割り付けておき、該凹部の配列ピッチに対応して取付バンドの板面に係合凸部を形成することにより、ユーザーはヒューズ本体に対する溶断表示ヒューズの取付位置を使用先現場の状況に合わせて変更できて使い勝手性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図4に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、図示実施例においては、溶断表示ヒューズ4の取付バンド5が、バネ性を有する帯状導電板の両端側を筒形ヒューズのヒューズ本体1,溶断表示ヒューズ4の外形寸法に合わせてS字状に湾曲曲げ加工した形状になる。また、ヒューズ本体1の碍管両端に被着した金属製キャップ2の周面には、あらかじめ小さな窪み状の凹部2aを等間隔ピッチに割り付けて形成(図示例では周囲4箇所)されており、この凹部2aの配列に対応して取付バンド5には、ヒューズ本体に巻き付ける部位の内面に同じ間隔ピッチで係合突起となる凸部5aが形成されている。
【0012】
そして、筒形ヒューズのヒューズ本体1に溶断表示ヒューズ4を並列に取り付けるには、図示のようにヒューズ本体1の両端に配したキャップ2と溶断表示ヒューズ4のキャップとの間に跨がってS字状の取付バンド5を巻き付けるように架け渡し、この位置でキャップ2の凹部2aに取付バンド5の凸部5aを嵌合して嵌め合い結合する。これにより、取付バンド5を介して溶断表示ヒューズ4がヒューズ本体1のキャップ間に並列接続されることになる。なお、図示例ではキャップ2に凹部,取付バンド5に凸部を形成しているが、これとは逆にキャップ2の周面に凸部,取付バンド5の板面に凹部(係合穴を含む)を形成してもよい。
【0013】
また、ヒューズ本体1のキャップ2に嵌着した取付バンド5を図1の取付位置(溶断表示ヒューズ4がヒューズ本体1の右側に支持されている)から周方向へ移動し、図3の位置(溶断表示ヒューズ4がヒューズ本体1の左側に移動)でキャップ2の凹部2aに取付バンド5の凸部5aを嵌め合い結合することにより、ヒューズ本体1に対する溶断表示ヒューズ4の相対的な取付位置を使用先現場の状況に合わせて変更することかできる。
【0014】
なお、ヒューズ本体1に取り付けた溶断表示ヒューズ4を外す場合には、キャップ2の周面に巻き付けている取付バンド5の先端を広げることで簡単にヒューズ本体1から引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例による溶断表示ヒューズ付きヒューズ装置の組立図で、(a)はヒューズ本体に溶断表示ヒューズを取り付けた状態の正面図、(b),(c)は同端面図,および平面図
【図2】図1におけるヒューズ本体のキャップ周面に形成した凹部と取付バンドに形成した凸部との嵌め合い結合構造を表した一部断面拡大図
【図3】図溶断表示ヒューズを1と異なる位置に付替えた状態での組立図で、(a),(b)はそれぞれ平面図,および端面図
【図4】従来における溶断表示ヒューズ付きヒューズ装置の組立図で、(a)はヒューズ本体に溶断表示ヒューズを取り付けた状態の正面図、(b),(c)は同端面図,および平面図、(d)は溶断表示装置を取り付けてない状態でのヒューズ本体の端面図
【符号の説明】
【0016】
1 筒形ヒューズのヒューズ本体
2 キャップ
2a 凹部
3 端子板
4 溶断表示ヒューズ
5 S字状取付バンド
5a 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端にキャップ,端子板を備えた筒形ヒューズの本体に溶断表示ヒューズを並列に取り付けたヒューズ装置であって、ヒューズ本体のキャップと溶断表示ヒューズのキャップとの間に跨がりバネ性を有する導電板で作られたS字形の取付バンドを架け渡して連結し、かつヒューズ本体のキャップと該キャップの周面に巻き付けた取付バンドとの間を凹部/凸部で嵌め合い結合したことを特徴とするヒューズ装置。
【請求項2】
請求項1記載のヒューズ装置において、ヒューズ本体のキャップ周面に凹部を等間隔ピッチに割り付けて形成するとともに、該凹部の配列ピッチに対応して取付バンドの板面に係合凸部を形成したことを特徴とするヒューズ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−287458(P2007−287458A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112843(P2006−112843)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(503361927)富士電機機器制御株式会社 (402)
【Fターム(参考)】