説明

ヒンジキャップ

【課題】煩雑な作業を経ることなく、しかも容易に容器口部から取り外すことが可能なヒンジキャップを提供する。
【解決手段】キャップ本体3と上蓋5とをヒンジ7で連結してなるヒンジキャップであって、キャップ本体3の、容器口部Cと嵌合する嵌合筒11を、ヒンジ7の配置された背面側を中央として半周未満に亘って半径方向に二分して、嵌合筒11の背面側に、半径方向の内側に位置し容器口部Cに嵌合する内側壁11aと、該内側壁11aの半径方向外側に位置しヒンジ7が配置された外側壁11bとを形成する円弧状のスリット28、およびスリット28によって切り離された内側壁11aと外側壁11bとを破断可能に連結する連結片30を備え、嵌合筒11の、スリット28の両端部に対応する部分に、その肉厚を嵌合筒11の内周面側から薄くする薄肉部32、33をそれぞれ形成したヒンジキャップ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒンジキャップ、特に容器の口部から簡単に取り外して、分別廃棄可能としたヒンジキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容液を充填した容器の口部に打栓されるヒンジキャップにおいて、内容液の使用後に、上蓋を引張ることで、キャップを容器から取り外し、分別廃棄することができるものとしては、特許文献1に提案されている。このものは、図5に示すように、容器の口部Cに嵌合する嵌合筒101の全周を取り囲むリング体102を有するとともに、このリング体102と嵌合筒101とを前面側の下端にて破断不能な連結片103で連結し、残部を破断可能な複数の弱化片で連結するものであり、キャップを容器から取り外すにあたっては、先ず、図5(a)に示すように、開放姿勢とした上蓋104を把持して引き上げて、ヒンジ側から順次周方向に沿って弱化片を破断していき、図5(b)に示すように、弱化片が全て破断されてリング体102が連結片103だけで嵌合筒101と連結された状態となった後、図5(c)に示すように、上蓋104を強く引き上げて、容器口部Cから引き抜く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−246338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたヒンジキャップは、その取り外しに際して、上述したように、上蓋104を開放した状態から上方、更には前方に引っ張って弱化片を全て破断した後、今度は、上蓋104を引っ張る方向を後方(ヒンジ側)へと変えてキャップを容器口部Cから引き抜く必要があったため、弱化片の破断とキャップの引き抜きとを一つの連続した操作で行えず、分別廃棄の作業が煩雑であった。特に、従来のヒンジキャップでは、キャップを容器口部から引き抜く際に指で把持する部分(上蓋104)が引っ張り力の作用する支点(連結片103)から遠くに位置していたため、その引っ張り力を効率良く嵌合筒に作用させることができず、引き抜きが困難となる場合があった。そのため、キャップを容器口部から最終的に引き抜くにあたって、連結片103だけで嵌合筒101と連結されたリング体102の内側に指を引っ掛けて引き抜くことがしばしば行われていた。
【0005】
この発明の目的は、煩雑な作業を経ることなく、しかも、上蓋の引張り力を効率良く嵌合筒に作用させて容易に容器口部から取り外すことが可能なヒンジキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明のヒンジキャップは、容器の口部に嵌合して保持される嵌合筒を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に被さって容器内の内容物の注出経路を閉塞する上蓋と、前記キャップ本体の嵌合筒と前記上蓋とを連結するヒンジとを備えるヒンジキャップであって、前記嵌合筒を、前記ヒンジの配置された背面側を中央として半周未満(180度未満)に亘って半径方向に二分して、前記嵌合筒の背面側に、半径方向の内側に位置し容器の口部に嵌合する内側壁と、該内側壁の半径方向外側に位置し前記ヒンジが配置された外側壁と、を形成する円弧状のスリットと、前記スリットによって切り離された前記内側壁と前記外側壁とを破断可能に連結する連結片と、を備え、前記嵌合筒の、前記スリットの両端部に対応する部分周辺に、その肉厚を前記嵌合筒の内周面側から薄くする薄肉部をそれぞれ形成したことを特徴とするものである。
【0007】
かかるヒンジキャップにあっては、開放姿勢とした上蓋を把持して引き上げると、連結片がヒンジ側から順次周方向に沿って破断され、そのまま上蓋を引っ張り続けることで、嵌合筒が薄肉部を起点として伸びて嵌合筒と容器口部との嵌合が弛み、当該嵌合がヒンジキャップの背面側から順次周方向に沿って解除されていきヒンジキャップを取り外すことができる。
【0008】
したがって、この発明のヒンジキャップによれば、連結片の破断とヒンジキャップの最終的な引き抜きを、上蓋の、一つの連続した引張り操作で完結させることができるので、煩雑な作業を経ることなくヒンジキャップを容器口部から取り外すことができる。また、スリットを半周未満としたことにより、ヒンジキャップを容器口部から引き抜く際に指で把持する部分(上蓋)を引っ張り力の作用する支点(スリットの端部近傍)から近く設定することができ、その引っ張り力を効率良く嵌合筒に作用させることができるので、従来のように、リング体の内側に指を引っ掛けて引っ張るような操作を行うことなしに、上蓋を引っ張るだけで容易にキャップを引き抜くことができる。また、スリットを半周未満としたことにより、外側壁11bの充分な引き上げ代を確保することができ、この点からもヒンジキャップの容器口部からの引き抜き性を向上させることができる。
【0009】
また、この発明のヒンジキャップにあっては、前記嵌合筒の、前記ヒンジに対応する部分に、その肉厚を該嵌合筒の内周面側から薄くして容器の口部との嵌合力を低下させる薄肉部を設けることが好ましく、これよれば、ヒンジキャップの、ヒンジの配置された背面側を始点とする引き抜きをより一層容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、スリットの端部に対応して薄肉部を設けたので、薄肉部を起点として嵌合筒を伸ばしながら容器口部との嵌合を解除でき、容器口部から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明にしたがう一実施形態のヒンジキャップを、図3のA−A線に沿って示した断面図である。
【図2】図1のヒンジキャップを、図3のB−B線に沿って示した断面図である。
【図3】図1のヒンジキャップを、上蓋を開放した状態で示した平面図である。
【図4】(a)、(b)は、図1のヒンジキャップを容器口部から取り外す手順を説明した斜視図である。
【図5】(a)〜(c)は、従来のヒンジキャップにつき、容器口部から取り外す手順を説明した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明にしたがう実施の形態を図面に基づき説明する。ここに図1は、この発明の一実施形態のヒンジキャップの軸方向に沿う断面図であり、図中、符号1は、ヒンジキャップを示し、符号Cは、容器の口部を示している。
【0013】
図1に示すように、ヒンジキャップ1は、キャップ本体3と上蓋5とをその後方側にてヒンジ7を介して開閉自在に連結したものであり、内容物の注出は、容器をヒンジ7に対向する前面側に傾けることにより行うことができる。
【0014】
キャップ本体3は、天板9と、天板9の周縁から垂下し容器の口部Cに外側からアンダーカット係合(嵌合)して保持される嵌合筒11と、天板9から垂下し容器の口部Cに差し込まれ密に係合する内筒13と、注出開口の周りを取り囲むように立設され、内溶物の注出を案内する注出筒部15と、注出筒部15の外側にて立設され、上蓋5が閉められた状態にて上蓋5に嵌合してその閉蓋姿勢を維持する環状突壁17とを有して構成される。また、キャップ本体3の注出開口は、注出筒部15の内側に一体成形され単一の破断予定溝mに沿って引きちぎり可能に構成された密閉壁19によって密閉され、この密閉壁19には支柱20を介してプルリング21が設けられている。なお、プルリング21の引き起こしにより引きちぎられる密閉壁19に代えてシール状の閉塞部材(図示省略)にて注出開口を密閉するようにしてもよい。
【0015】
上蓋5は、天面壁23と、この天面壁23から垂下し、上蓋5がキャップ本体3に被せられた状態にて注出筒部15に内側から当接(嵌合)して該注出筒部15との間に全周に亘ってシール部を形成するシール筒24と、天面壁23の周縁から垂下しシール筒24の周りを取り囲む環状側壁26と、を有して構成される。
【0016】
そして、この発明にしたがうヒンジキャップ1では、図2および3に示すように、嵌合筒11を半周未満に亘って半径方向に二分して、嵌合筒11の背面側に、半径方向の内側に位置し容器の口部Cに嵌合する内側壁11aと、該内側壁11aの半径方向外側に位置しヒンジ7が配置された外側壁11bと、を形成する円弧状のスリット28、およびスリット28によって切り離された内側壁11aと外側壁11bとをその下端にて破断可能に連結する連結片30が設けられ、さらに、嵌合筒11の、スリット28の両端部に対応する部分には、その肉厚を嵌合筒11の内周面側から薄くする薄肉部32、33がそれぞれ形成されている。スリット28は、長さ方向の中央がヒンジ7の配置された背面側(後端部)に位置するよう配置されている。なお、連結片30は内側壁11aと外側壁11bを破断可能に連結するものであればどの位置に設けてもよい。また、嵌合筒11と容器口部Cとはアンダーカット係合により連結されているが、ヒンジ7側の半周未満に設けられたアンダーカットは、ヒンジキャップ1の使用中に外れない程度の嵌合強度を有している。
【0017】
スリット28の長さは、スリット28の一端e1と該スリット28の中心(円弧の中心)Oとを通る直線n1と、スリット28の他端e2と該スリット28の中心(円弧の中心)Oとを通る直線との成す角度θで規定されるスリット28の延在角度が180度未満となるよう設定する。図示例では、スリット28の延在角度θは、ヒンジ7の配置されている背面側を中央として150度である。また、薄肉部32、33は、スリット28の端部と重複していればその配設範囲に限定はないが、図示例のように、その重複範囲と同等長さ分をもってスリット28の端e1、e2を超えて延在させることが好ましい。
【0018】
また、この実施形態では、嵌合筒11の、スリット28の端部周辺に形成した薄肉部32、33に加えて、嵌合筒11の、ヒンジ7に対応する部分にも、その肉厚を嵌合筒11の内周面側から薄くして容器口部Cとの嵌合力を低下させる薄肉部34を設けている(図1および3参照)。なお、図中、符号36は、上蓋5の前面側に設けられたリップであり、符号37は、キャップ本体3の前面側に設けられ、上蓋5を閉めた状態にてリップ36を収容するリップ収容溝である。
【0019】
上記の構成になるヒンジキャップ1にあっては、図4(a)に示すように、開放姿勢とした上蓋5を把持して引き上げると、連結片30がヒンジ7側(背面側)から破断され、そのまま上蓋5を引っ張り続けることで、嵌合筒11が薄肉部32、33を起点として伸びて嵌合筒11と容器口部Cとの嵌合が弛み、図4(b)に示すように、当該嵌合がヒンジキャップ1の背面側から順次周方向に沿って解除されていきヒンジキャップ1を引き抜くことができる。
【0020】
したがって、このヒンジキャップ1によれば、連結片30の破断とヒンジキャップ1の最終的な引き抜きを、上蓋5の、一つの連続した引張り操作で完結させることができるので、煩雑な作業を経ることなくヒンジキャップ1を容器口部Cから取り外すことができる。また、スリット28を半周未満としたことにより、ヒンジキャップ1を容器口部Cから引き抜く際に指で把持する部分(上蓋5)を引っ張り力の作用する支点(スリット28の端部近傍)から近くに設定することができ、その引っ張り力を効率良く嵌合筒11に作用させることができるので、従来のように、リング体の内側に指を引っ掛けて引っ張るような操作を行うことなしに、上蓋5を引っ張るだけで容易にヒンジキャップ1を引き抜くことができる。また、スリット28を半周未満としたことにより、外側壁11bの充分な引き上げ代を確保することができ、この点からもヒンジキャップ1の容器口部Cからの引き抜き性を向上させることができる。しかも、スリット28の端部に対応して薄肉部32、33を設けたので、薄肉部32、33を起点として嵌合筒11を伸ばしながら容器口部Cとの嵌合を解除でき、ヒンジキャップ1を容器口部Cから容易に取り外すことができる。
【0021】
さらに、この実施形態のヒンジキャップ1によれば、嵌合筒11の、スリット28の端部周辺に形成した薄肉部32、33に加えて、嵌合筒11の、ヒンジ7に対応する部分にも、その肉厚を嵌合筒11の内周面側から薄くして容器口部Cとの嵌合力を低下させる薄肉部34を設けたことから、ヒンジキャップ1の、背面側からの取り外し(嵌合の解除)をより一層容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
かくして、この発明により、煩雑な作業を経ることなく、しかも容易に容器口部から取り外すことができるヒンジキャップを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0023】
1 ヒンジキャップ
3 キャップ本体
5 上蓋
7 ヒンジ
11 嵌合筒
11a 内側壁
11b 外側壁
28 スリット
32、33、34 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に嵌合して保持される嵌合筒を有するキャップ本体と、前記キャップ本体に被さって容器内の内容物の注出経路を閉塞する上蓋と、前記キャップ本体の嵌合筒と前記上蓋とを連結するヒンジとを備えるヒンジキャップであって、
前記嵌合筒を、前記ヒンジの配置された背面側を中央として半周未満に亘って半径方向に二分して、前記嵌合筒の背面側に、半径方向の内側に位置し容器の口部に嵌合する内側壁と、該内側壁の半径方向外側に位置し前記ヒンジが配置された外側壁と、を形成する円弧状のスリットと、
前記スリットによって切り離された前記内側壁と前記外側壁とを破断可能に連結する連結片と、を備え、
前記嵌合筒の、前記スリットの両端部に対応する部分周辺に、その肉厚を前記嵌合筒の内周面側から薄くする薄肉部をそれぞれ形成したことを特徴とするヒンジキャップ。
【請求項2】
前記嵌合筒の、前記ヒンジに対応する部分に、その肉厚を該嵌合筒の内周面側から薄くして容器の口部との嵌合力を低下させる薄肉部を設けた、請求項1に記載のヒンジキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−96802(P2012−96802A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243311(P2010−243311)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】