説明

ヒンジ用カバー

【課題】施工作業が完了した後であってもピボット軸が軸受けに適正に嵌合していることを外部から確認することを可能とするヒンジ用カバーの提供。
【解決手段】軸線方向に移動して扉枠5に取り付けられた軸受け7に嵌合されるピボット軸17を備えたヒンジ本体10が外部に露出しないように扉Dに形成された切欠部50を塞ぐヒンジ用カバー60である。ヒンジ用カバー60はヒンジ本体10に向けて突出する突出部63を備えている。突出部63はピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合していない場合にはヒンジ本体10に干渉するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を扉枠に開閉可能に取り付けるためのヒンジが外部に露出しないように扉又は扉枠に取り付けられるヒンジ用カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から扉の上端部と扉枠の上辺部とを回動可能に連結するピボットヒンジとして、上下動可能なピボット軸を備えるヒンジ本体と、当該ピボット軸を回転自在に受ける軸受けを備える第2のヒンジとを備えたものが存在する。この種のピボットヒンジは、扉又は扉枠のいずれか一方にヒンジ本体を、他方に軸受けをそれぞれ装着し、扉を扉枠に対して所定の開度で保持した状態でピボット軸を突出させて軸受けに嵌合させることによって扉が扉枠に開閉可能に取り付けられる。
【0003】
そして、この種のピボットヒンジのピボット軸の突出状態を外部から確認することができるようにすることは下記特許文献1により公知である。特許文献1のピボットヒンジは、ヒンジ本体が具備するリンクに外部から視認可能なピンを設け、ヒンジ本体に形成した溝に対するピンの位置によってピボット軸の突出状態を把握可能とするものである。そして、工具を用いてピボット軸を軸受けに嵌合させ、ヒンジ本体の溝に対するピンの位置を視認するという施工作業は、扉の上端部に形成された切欠部を用いて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4278694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、扉の上端部に形成された切欠部はヒンジ用カバーによって塞がれることになる。従って、特許文献1のピボットヒンジであっても、施工作業が完了した後は扉の上端部に位置するヒンジ用カバーを取り外さない限り、ピボット軸が軸受けに適正に嵌合しているかを外部から確認することができない。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、施工作業が完了した後であってもピボット軸が軸受けに適正に嵌合していることを外部から確認することを可能とするヒンジ用カバーを提供することである。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のヒンジ用カバー60は、軸線方向に移動して扉D及び扉枠5のいずれか一方に取り付けられた軸受け7に嵌合されるピボット軸17を備えたヒンジ本体10が外部に露出しないように扉D及び扉枠5のいずれか他方に形成された切欠部50を塞ぐヒンジ用カバー60において、該ヒンジ用カバー60は該ヒンジ本体10に向けて突出する突出部63、65、66を備え、該ピボット軸17が該軸受け7に適正に嵌合していない場合には該突出部63、65、66が該ヒンジ本体10に干渉することを特徴とする。
【0008】
ここで、該ヒンジ本体10は、少なくとも一端にユーザによる回転操作を受け付ける係合部20を有する回転軸19と、該係合部20が露出されて該回転軸10が取り付けられる本体13と、該回転軸19と該ピボット軸17に対して回転可能に連結されるリンク25と、を具備することが好ましい。
【0009】
また、該突出部66は該ヒンジ用カバー60に形成された貫通孔67に該ヒンジ用カバー60の正面61a側から装着されるピン66であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のヒンジ用カバーによれば、施工作業が完了した後においてもヒンジ用カバーの状態を一見するだけでヒンジのピボット軸が軸受けに適正に嵌合しているかを確認することができる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係るピボットヒンジの取付断面図である。
【図2】吊り込み前のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の正面図である。
【図3】吊り込み前のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の左側面図である。
【図4】吊り込み前のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の内部構造図である。
【図5】吊り込み後のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の正面図である。
【図6】吊り込み後のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の左側面図である。
【図7】吊り込み後のヒンジ本体の状態を示し、ヒンジ本体の内部構造図である。
【図8】本実施形態に係るヒンジ用カバーの側面図である。
【図9】本実施形態に係るヒンジ用カバーの背面図である。
【図10】本実施形態に係るヒンジ用カバーを切欠部に装着した状態を示す正面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】本発明のヒンジ用カバーの変形例を示す側面図である。
【図13】本発明のヒンジ用カバーの変形例を示す背面図である。
【図14】本発明の変形例のヒンジ用カバーを切欠部に装着した状態を示す正面図である。
【図15】図14のB−B断面図である。
【図16】本発明のヒンジ用カバーの他の変形例を示し、ヒンジ用カバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のヒンジ用カバーの一実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では本発明のヒンジ用カバーをピボットヒンジに適用した一例を示すが、オートスイングヒンジ、フロアヒンジ等に適用することも可能である。
【0013】
−ピボットヒンジの構成等−
まず、図1乃至図7を参照して、本実施形態に係るピボットヒンジの構成について説明する。図1は本実施形態に係るピボットヒンジの取付断面図、図2乃至図4は吊り込み前のヒンジ本体の状態を示し、図2は正面図、図3は左側面図、図4は内部構造図、図5乃至図7は吊り込み後のヒンジ本体の状態を示し、図5は正面図、図6は左側面図、図7は内部構造図である。
【0014】
図1に示すように、ピボットヒンジ2は、扉Dの上端部左側に取り付けられるヒンジ本体10と、扉枠5に取り付けられる軸受け7とを備えている。
【0015】
ヒンジ本体10にはピボット軸17が設けられ、軸受け7には前記ピボット軸17を挿脱可能な筒状の孔8が設けられている。当該孔8はピボット軸17と同軸上に配置され、当該ピボット軸17が孔8に挿入された時には、当該ピボット軸17を回転可能に受け止める。
【0016】
そして、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7の孔8に挿入されると、当該扉Dが扉枠5に対して吊り込まれ、扉Dが水平方向に回動可能になる。
【0017】
図2に示すように、ヒンジ本体10は、ピボット軸17の他に扉Dの上端部に沿って取り付けられる基体11と、当該基体11の幅方向において下方垂直方向に平行に延びる一対の側体12、12とを有する本体13を備えている。当該本体13は、図4に示すように、基体11の左端部側に側体12が固定具14、14によって取り付けられることによって構成される。
【0018】
また、基体11の左端部には、筒状の案内筒15が側体12、12間にあって下方に突出しカシメ止め、又は溶接等により強固に固定され設けられており、その案内筒15の孔15aにはピボット軸17が上下動可能に挿入される。ピボット軸17の下方右側方には側体12、12の間に回転軸19がその軸線をピボット軸17の軸線方向に対して直交させて設けられている。図3に示すように、当該回転軸19の両端部には十字状の操作部20が一体的に形成され、それら操作部20は回転可能に側体12、12の両端面に露出している。
【0019】
図3及び図4に示すように、回転軸19には、当該回転軸19と一体的に回転する左右一対の回転体22が設けられており。当該回転体22の周囲にはその周方向に突出する3つの突出部22a、22b、22cが形成されている。一方の突出部22aは、リンク25を介してピボット軸17と連結ピン26、27により連結される。このリンク25は、連結ピン26、27を介してピボット軸17と回転体22の一方の突出部22aとに回動可能に取り付けられる。
【0020】
また、回転軸19には、第1のコイルばね29が巻回されており、当該第1のコイルばね29は回転体22と一方の側体12との間に配置される。当該第1のコイルばね29の一端は、回転体22に形成された一方の突出部22aの根元に係合され、他端は一方の側体12の一部が内側に折り曲げられて形成された曲折体12aに係合される。当該第1のコイルばね29は、図4上における回転軸19の左回り方向への回転に対して所定の抵抗力f1aが付与されるようになっている。
【0021】
また、ピボット軸17の下方には前記第1のコイルばね29よりも弾性力が強力な第2のコイルばね30が配置される。当該第2のコイルばね30の一端は回転体22の他方の突出部22bに配置された軸体31に係合され、他端は前記回転体22の下方であって前記側体12、12に掛け渡されて取り付けられる支持軸23に係合される。当該第2のコイルバネ30は、回転軸19の軸回りにおける所定の回転角を境に、回転軸19の左回り方向への回転に対する抵抗力f1bと、右回り方向への回転に対する抵抗力F2と、が切り替えられて付与されるようになっている。具体的には、図4上における回転軸19の左回り方向への回転に対して抵抗力F1=f1a+f1bが付与され、所定の回転角に達した時に、反対方向の抵抗力F2が付与されるようになっている。
【0022】
また、第1のコイルばね29は、万が一、第2のコイルばね30が破損して抵抗力f1bが無くなった場合であっても、第1のコイルばね29の抵抗力f1aによってリンク25の位置を保持し、軸体31が下がることを防止する。
【0023】
また、回転体22とリンク25とを連結する連結ピン27の両端部は側体12、12の両端面に露出している。側体12、12の両端面には、当該回転軸19の回転にともなって前記回転軸19の周囲を扇状に上下方向に移動する連結ピン27の移動軌跡に沿って溝28が形成されており、連結ピン27は当該溝28に沿って移動する。回転体22の回転範囲は、図4に示すように回転体22の突出部22cが側体12に形成された曲折体12aに当接することと、図7に示すように回転体22の突出部22aが曲折体12aに当接することによって規制されており、回転体22の回転に応じてピボット軸17が上下方向に移動可能となる。具体的には、前記突出部22aが曲折体12aに当接する際は、ピボット軸17は、略上半分が基体11から突出するように上方向に移動し、一方、前記突出部22cが曲折体12aに当接する際は、図4に示すように上端部が基体11の上面と面一となるように下方向に移動する。
【0024】
さらに、前記案内筒15の軸線方向にあって下端部には、係止部となる溝15bが軸線方向に直交して形成されている。一方、案内筒15の孔15aに挿入されるピボット軸17の下方にはその軸線方向に対して直交して、被係止部となるピン32がその両端をピボット軸17の外周より突出して固定されている。ピン32はピボット軸17の上下方向の移動に応じて、案内筒15に形成された溝15bに係脱可能となっている。
【0025】
−ヒンジ本体の動作等−
次に、図2乃至図7を参照して、本実施形態に係るヒンジ本体の動作について説明する。
【0026】
上記のように構成されたヒンジ本体10は、操作部20による回転軸19の回転操作に応じて回転体22が一体的に回転し、その回転がリンク25によりピボット軸17の上下方向の往復運動に変換され、前記ピボット軸17が突出された状態と案内筒15に収容された状態に移動可能になっている。
【0027】
図5乃至図7に示すようにピボット軸17が基体11から突出している状態から図2乃至図4に示すようにピボット軸17を案内筒15内に引き込む場合には、図5乃至図7に示す状態において、回転軸19を左方向に回転させることで、リンク25を介してピボット軸17をその軸線方向下方に移動させる。この時、図2乃至図4に示すように、回転体22とリンク25を連結する連結ピン27は溝28に沿って下方に移動する。また、回転軸19が所定の回転角に達すると、回転体22の突出部22cが曲折体12aに当接することによって回転体22の回転が規制される。この時、回転軸19には、第2のコイルばね30の弾性力によって回転軸19の右回り方向への回転に対して抵抗力F2が付与されるため、回転体22は元の状態に戻らずにその状態が保持される。よって、ピボット軸17は、その先端部が案内筒15内に収容された状態で保持される。
【0028】
一方、図2乃至図4に示すようにピボット軸17が案内筒15内に引き込まれた状態から図5乃至図7に示すようにピボット軸17を基体11から突出させる場合には、図2乃至図4に示す状態において、回転軸19を右回り方向に回転させることで、リンク25を介してピボット軸17をその軸線方向上方に移動させる。この時、回転軸19の回転角が所定の回転角を越えると、第2のコイルばね30の弾性力及び第1のコイルばね29の作用によって、回転軸19は勢いよく右回り方向に回転する。この動作によって回転体22は突出部22aが側体12に形成された曲折体12aと当接して回転が規制されるまで回転し、ピボット軸17の先端が最大限に基体11から突出する。
【0029】
さらに、ピボット軸17に固定されたピン32は、案内筒15の孔15aに挿入されたピボット軸17の略上半分が軸受け7の孔8に挿入され、ドアDが開閉可能となった状態では、案内筒15の下端部に形成された溝15bに係合する。この溝15bとピン32の係合は、案内筒15の孔15aに対するピボット軸17の軸線回りの回転を阻止する。すなわち、ピボット軸17は案内筒15及び案内筒15が固定されたヒンジ本体10、即ち、ヒンジ本体10が取り付けられた扉Dに対しては回転することなく、軸受け7の孔8に対して回転することとなる。一方、ピボット軸17の略上半分が軸受け7の孔8から脱した場合には、溝15bとピン32の係合が解除される。
【0030】
−ピボットヒンジの取り付け等−
次に、図1乃至図7を参照して、ピボットヒンジの取り付け動作について説明する。
【0031】
まず、ヒンジ本体10は扉Dの上端左端部に例えば皿ねじなどの固定具を用いて基体11が取り付けられる。この時、ヒンジ本体10の側体12、12は扉Dの内部に埋め込まれ、基体11の上面が扉Dの上端面と略面一となるように取り付けられる。また、扉Dには、側体12、12の溝28、28が外部から視認可能であって、操作部20に対して外部から所定の工具が挿入可能なように切欠部50(図1参照)が形成されている。当該切欠部50は後述するヒンジ用カバー60によって開閉可能になっている。
【0032】
そして、ピボット軸17を案内筒15内から上方へ突出させる(扉を吊り込む)際には、当該切欠部50から工具を挿入して操作部20に係合させ、回転軸19を右回り方向へ回転させる。一方、ピボット軸17を案内筒15内へ収容する際には、回転軸19を左回り方向へ回転させればよい。
【0033】
このように構成されたヒンジ本体10は、扉Dに取り付けた状態において、扉Dの切欠部50から側体12、12に形成された溝28、28に対する連結ピン27の移動状態を視認することによりピボット軸17の移動状態を一目で把握することが可能となり、扉の吊り込み作業を確実に行なうことができ、扉の倒れなどの事故を防止できる。
【0034】
−ヒンジ用カバーの構成等−
次に、図8乃至図11を参照して、本実施形態に係るヒンジ用カバーの構成について説明する。図8及び図9はヒンジ用カバーを示し、図8はヒンジ用カバーの側面図、図9はヒンジ用カバーの背面図である。また、図10及び図11はヒンジ用カバーを切欠部50に装着した状態を示し、図10は正面図、図11は図10のA−A断面図である。なお、図11では理解を容易にするためにリンク25、回転軸19、回転体22等の図示を省略している。
【0035】
ヒンジ用カバー60は、扉Dに形成された切欠部50を開閉する為に設けられ、該ヒンジ用カバー60が切欠部50に装着されると切欠部50は塞がれ、本体13は外部に露出しないようになる。ヒンジ用カバー60は樹脂製であり、略正方形状の本体部61の背面61bには係合部62と突出部63とが形成されている。
【0036】
係合部62は、切欠部50の開口に対応して形成された立壁であり、先端面62Aから傾斜し、ヒンジ用カバー60を切欠部50に装着する際に切欠部50を画成する扉Dの部位と当接する傾斜面62Bと、該扉Dの部位が入り込む為の凹部62Cとを備えている。ヒンジ用カバー60の傾斜面62Bを扉Dに押しつけることにより係合部62を内方に撓ませ、図10及び図11に示すようにヒンジ用カバー60を切欠部50に装着することが可能に構成されている。
【0037】
突出部63は、ヒンジ本体10の側体12に形成された溝28に対応して形成された円弧状の立壁であり、本体部61の背面61bにおける係合部62により囲まれた部分から突出している。突出部63の幅はヒンジ本体10の側体12に形成された溝28の幅よりも小さく形成されている。また、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合している場合は連結ピン27は溝28内の上端に位置することになるので、突出部63の長さは溝28よりも上端側が短くなるように形成されている。図11に示すように、ヒンジ用カバー60が切欠部50に装着された場合において、突出部63は本体部61の背面61bから本体13に向かう方向(ピボット軸17の軸線に直交する方向)に突出し、本体13の一方(左側)の側体12の溝28を貫通し、先端面63Aは本体13の2つの側体12、12の間に位置する。また、突出部63の上端63aは連結ピン27と近接した位置に配置されている。
【0038】
一方、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合していない場合には、連結ピン27は溝28の上端に位置していないことになるので、切欠部50にヒンジ用カバー60を装着しようとしても、突出部63の先端面63Aが連結ピン27に干渉し、ヒンジ用カバー60の切欠部50への装着が阻止される。
【0039】
以上のように構成されたヒンジ用カバー60によれば、切欠部50にヒンジ用カバー60が装着されていれば、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合されていることになる。従って、施工作業が完了した後であってもヒンジ用カバー60の存否を一見するだけでヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合されていることを確認することができる。また、突出部63の上端63aは連結ピン27と近接した位置に配置されるようになっているので、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正嵌合していない場合には突出部63の先端面63Aが必ず連結ピン27と干渉し、ヒンジ用カバー60の装着が阻止される。また、何らかの理由で連結ピン27が溝28に沿って下方に移動しようとしても連結ピン27は突出部63の上端63aと当接して移動を阻止されるので、ピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合された状態を確実に保持することができる。
【0040】
本発明によるヒンジ用カバーは、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形や改良が可能である。例えば、上述した実施形態においてはヒンジ用カバー60の突出部63は本体13の側体12に形成された溝28に対応して円弧状の立壁として形成されていたが、ピン状として形成してもよい。
【0041】
図12乃至図15に示すように、本体部61の背面61bにおける係合部62により囲まれた部分に形成された円柱部64から突出するピン状部65を突出部としてもよい。図15に示すように、円柱部64とピン状部65は本体部61の背面61bからヒンジ本体10に向けて突出し、ピン状部65は本体13の一方(左側)の側体12の溝28と、突出部22aと突出部22bとの間の空間S(図5及び図14参照)と、他方(右側)の側体12の溝28とを貫通している。突出部22aと突出部22bとの間の空間Sには、ピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合されている場合にのみピン状部65を挿通することが可能である。ピン状部65は突出部22aの下方に近接して配置されている。ここで、ピン状部65は必ずしも2つの側体12、12の溝28、28を貫通する長さを備えている必要はなく、少なくとも空間S内に侵入することができる長さを備えていればよい。ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合していない場合、切欠部50にヒンジ用カバー60を装着しようとしても、ピン状部65の先端65aが突出部22a又は連結ピン27に必ず干渉し、ヒンジ用カバー60の切欠部50への装着が阻止されることになる。また、ヒンジ用カバー60が切欠部50に装着された状態において、何らかの理由により回転体22が回転しようとしてもピン状部65が突出部22aと当接して回転体22の回転が阻止されるので、ピボット軸17が軸受け7に嵌合された状態を確実に保持することができる。
【0042】
また、図12乃至図15のピン状部65をヒンジ用カバー60と別体のピン66とし、ヒンジ用カバー60の正面61a側から装着できるようにしてもよい。図16に示すように、ピン66は、頭部66Aと軸部66Bとを備えている。ヒンジ用カバー60の円柱状の座部64に貫通孔67が形成されており、ピン66の軸部66Bに形成された突起66Cが貫通孔67に形成された溝67Aに入り込む位置までピン66をヒンジ用カバー60の正面61a側から貫通孔67に押し込むことで、ヒンジ用カバー60にピン66を装着するように構成されている。このピン66のヒンジ用カバー60への装着は、ヒンジ用カバー60を切欠部50に装着した後に行われるが、ヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合していない場合には、ピン66を装着しようとしても、ピン66の先端66aが突出部22a又は連結ピン27に干渉し、ピン64のヒンジ用カバー60への装着が阻止される。従って、施工作業が完了した後であってもピン66の状態を一見するだけでヒンジ本体10のピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合されていることを確認することができる。
【0043】
また、上述した実施形態においては、突出部63は連結ピン27に干渉するものであったが、ピボット軸17の軸受け7への嵌合状態に応じて移動して位置が変化するヒンジ本体10の他の構成部材(リンク25、回転体22、ピボット軸17等)に干渉するように構成されていてもよい。ピボット軸17の軸線に直交する方向に突出する突出部63(ピン状部65、ピン66)を該構成部材の移動軌跡上まで突出させ、ピボット軸17が軸受け7に適正に嵌合している場合にのみ、移動軌跡の上限位置(又は下限位置)にある該構成部材に近接して配置されるようにすればよい。
【0044】
また、上述した実施形態においては、突出部63は側体12に形成された連結ピン27が移動する為の溝28を貫通するものであったが、突出部63が貫通する為の孔又は溝を側体12に別途形成するようにしてもよく、側体12を貫通しないものであってもよい。
【符号の説明】
【0045】
D 扉
2 ピボットヒンジ
5 扉枠
7 軸受け
10 ヒンジ本体
12 側体
13 本体
17 ピボット軸
19 回転軸
20 操作部(係合部)
25 リンク
28 溝
50 切欠部
60 ヒンジ用カバー
61 本体部
61a 正面
61b 背面
62 係合部
62A 先端面
62B 傾斜面
62C 凹部
63 突出部
63A 先端面
63a 上端
64 座部
65 ピン状部(突出部)
66 ピン(突出部)
67 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に移動して扉及び扉枠のいずれか一方に取り付けられた軸受けに嵌合されるピボット軸を備えたヒンジ本体が外部に露出しないように扉及び扉枠のいずれか他方に形成された切欠を塞ぐヒンジ用カバーにおいて、該ヒンジ用カバーは該ヒンジ本体に向けて突出する突出部を備え、該ピボット軸が該軸受けに適正に嵌合していない場合には該突出部が該ヒンジ本体に干渉することを特徴とするヒンジ用カバー。
【請求項2】
該ヒンジ本体は、少なくとも一端にユーザによる回転操作を受け付ける係合部を有する回転軸と、該係合部が露出されて該回転軸が取り付けられる本体と、該回転軸と該ピボット軸に対して回転可能に連結されるリンクと、を具備することを特徴とする請求項1に記載のヒンジ用カバー。
【請求項3】
該突出部は該ヒンジ用カバーに形成された孔に該ヒンジ用カバーの正面側から装着されるピンであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒンジ用カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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