ヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラム
【課題】トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することができる、ヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラムを提供する。
【解決手段】ヒータ制御部は、被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定部と、前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるための、略均一の温度で発熱するヒータの温度を、前記偏り特定部が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御部と、を備える。トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように前記被印刷物に転写され、偏り特定部は、印刷画像情報に基づいて、所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する。
【解決手段】ヒータ制御部は、被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定部と、前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるための、略均一の温度で発熱するヒータの温度を、前記偏り特定部が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御部と、を備える。トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように前記被印刷物に転写され、偏り特定部は、印刷画像情報に基づいて、所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを被印刷物に定着させるためのヒータの温度を制御するヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷画像の一定領域のドット数に応じてトナー被覆量を算出し,そのトナー被覆量に応じて、ヒータの温度を変化させ、定着ローラの温度(定着温度)を変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−346074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、定着温度を印刷画像のトナー被覆量に応じて変化させるが、同じトナー被覆量であっても、印刷画像の内容(印刷画像における像(文字、図形、記号、絵の要素、写真の像等)の形状、色彩等)によっては、変化させた定着温度がトナーの定着にとって好適なものではない(例えば、必要以上に温度が高すぎる等)場合がある。つまり、特許文献1の技術では、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することが出来ないことがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものでなされたものであり、その目的とするところは、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することができる、ヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るヒータ制御装置は、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段と、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段と、
を備える。
【0007】
また、本発明の第2の観点に係る印刷装置は、
前記のヒータ制御装置を備える。
【0008】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1実施形態に係る印刷装置の構成図である。
【図2】図1の印刷装置の構成を示す図である。
【図3】図2のヒータ制御部のハードウェア構成を説明するための図である。
【図4】図2のヒータ制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図1の印刷装置のヒータ制御部が行うヒータ制御処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図6】印刷画像におけるドットを説明するための説明図である。
【図7】図5のヒータ制御処理において参照されるデータテーブルの内容の一例を示す図である。
【図8】印刷画像と定着温度との関係の一例を説明するための図である。
【図9】印刷画像のドットパターンを説明するための図である。
【図10】印刷画像の有効ドットの連続回数と結合率との関係を示す図である。
【図11】用紙に転写・定着されるトナーと目標温度との関係を説明するための図である。
【図12】用紙に転写・定着されるトナーと目標温度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態(図面の内容も含む。)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0012】
図1のように、本実施形態に係る印刷装置1は、コントローラ部100と、印刷部200と、を備える。なお、下記の説明では、用紙3が送られる方向を副走査方向といい、副走査方向に直交する方向を主走査方向という。
【0013】
コントローラ部100は、印刷部200を制御し、用紙3(被印刷物)に所定の印刷画像を印刷する。コントローラ部100の構成等についての詳細は後述する。印刷画像は、絵、テキスト、写真等である。
【0014】
印刷部200は、感光体ドラム201と、帯電ローラ202と、露光装置(露光ヘッド)203と、現像器204と、転写ローラ205と、定着ユニット206と、クリーニング器207と、イレーサ光源208と、を備える。
【0015】
感光体ドラム201は、帯電して静電潜像を形成する。感光体ドラム201は、印刷部200に含まれる駆動部(図示せず)によって駆動され、軸を中心に矢印方向に回転する。この感光体ドラム201は、例えば、負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体によって構成されている。
【0016】
帯電ローラ202は、感光体ドラム201を一様に帯電させる。帯電ローラ202は、例えば、負帯電器であり、帯電用電源(図示せず)から負電圧が印加されて、感光体ドラム201の周表面を一様にマイナス帯電させて初期化する。
【0017】
露光装置203は、帯電した感光体ドラム201に光書き込み(露光)を行う発光素子アレイ露光装置等であり、光書き込みによって感光体ドラム201上に静電潜像を形成する。露光装置203は、主走査方向に一列に並ぶ複数の光源(後述のドットに対応する。)を有し、各々の光源を順次発光・非発光させることによって、回転する感光体ドラム201に対してドット一列ごとに露光を順次行う。これによって、感光体ドラム201上に1画像分の静電潜像が形成されることになる。
【0018】
現像器204は、トナー収容部204aと現像ローラ204bとを含む。トナー収容部204aは、トナーを収容する。現像ローラ204bは、トナー収容部204aに収容されているトナーを感光体ドラム201側に回転搬送する。現像ローラ204bは、現像バイアス電源(図示せず)から、現像バイアスが印加される。この印加によって、回転する現像ローラ204bには、トナー収容部204aに収容されたトナーが付着し、付着したトナーは感光体ドラム201側に搬送される。現像ローラ204bによって搬送されたトナーは、感光体ドラム513における静電潜像の部分に転移する。この転移によって、感光体ドラム201には、静電潜像に応じた像のトナー像240が形成される。
【0019】
転写ローラ205は、感光体ドラム201上に形成されたトナー像240を用紙3に転写する。
【0020】
定着ユニット206は、定着ローラ206a、バックアップローラ206b、ヒータ206c、サーミスタ206dと、を備え、用紙3に転写されたトナー像240を用紙3に熱定着させる。ヒータ206cは、ハロゲンランプヒータ等からなり、略均一の温度で発熱し、定着ローラ206a(加熱対象領域)を略均一に加熱する。サーミスタ206dは、定着ローラ206aの温度を測定するために使用される。定着ローラ206a及びバックアップローラ206bによって、用紙3は挟まれる。定着ローラ206aは加熱されているので、両者に挟まれた用紙3は、加熱(これによって、トナー像240のトナーは軟化する。)及び加圧され、トナー像240は用紙3に熱定着する。
【0021】
クリーニング器207は、感光体ドラム201上に残留する転写漏れトナーを除去する。
【0022】
イレーサ光源208は、感光体ドラム201の表面を一様に除電する。
【0023】
感光体ドラム201は、回転するとともに帯電ローラ202によって帯電する。露光装置203は、帯電した感光体ドラム201に光書き込みを行って感光体ドラム201上に静電潜像を形成する。現像ローラ204bは、トナー収容部204aに収容されたトナーを付着し、付着したトナーを感光体ドラム201に回転搬送する。これによって、感光体ドラム201の静電潜像にトナーが転移して、この静電潜像によって表されるトナー像240が形成される。一方、用紙3は、図示しない搬送ベルト等によって搬送される。用紙3には、転写ローラ205によって、トナー像240が転写される。定着ローラ206a(ヒータ206cによって加熱される。)及びバックアップローラ206bは、用紙3にトナー像240を熱定着させる。熱定着させた用紙3は、所定の排出手段によって印刷装置1の外へと排出する。クリーニング器207は、トナー像240を転写した後の感光体ドラム201上に残留する転写漏れトナーを除去する。イレーサ光源208は、転写漏れトナーが除去された感光体ドラム201の表面を一様に除電する。
【0024】
なお、印刷部200の構成は、上記の構成に限られず、その構成は適宜変更可能である。例えば、トナー像240の用紙3への転写は、中間転写体等を用いて行われても良い。
【0025】
図2のように、コントローラ部100は、I/F(インターフェース)コントローラ部110と、ビデオI/Fコントローラ部120と、エンジンコントローラ部130と、ヒータ制御部140と、を備える。
【0026】
I/Fコントローラ部110は、印刷装置1の外部のパーソナルコンピュータ(PC)301やプリンタサーバ302等のホスト機器300が接続される。I/Fコントローラ部110とPC301とは、セントロニクスインターフェイス、USB(Universal Serial Bus)等を介して接続され、I/Fコントローラ部110とプリンタサーバ302とは、LAN(Local Area Network)を介して接続されている。I/Fコントローラ部110とPC301とをLANを介して接続してもよい。
【0027】
PC301は、ワープロ等のアプリケーションによって印刷を行なうときは、印刷データをコマンドデータに変換しながら、プリントスプーラ(図示せず)に一旦保存する。I/Fコントローラ部110とPC301との接続がセントロニクスインターフェイス、USBの場合は、プリントスプーラから印刷装置1へ直接コマンドデータが送られる。LANで接続されているプリンタサーバ302経由で印刷が行われる場合は、PC301のプリントスプーラに保存したデータがプリンタサーバ302のプリントスプーラへ転送され、プリンタサーバ302内のプリントスプーラからI/Fコントローラ部110を介して印刷装置1へコマンドデータが送られる。
【0028】
I/Fコントローラ部110は、DSP(Digital Signal Processer)、メモリ等を含んで構成される。メモリは、DSPが処理中に生成したデータを順次一時記憶するバッファメモリとして機能する。DSPは、ホスト機器から供給されるコマンドデータを順次処理して、例えば、コマンドデータから印刷データを抽出し、抽出した印刷データに対して伸張処理等を行って印刷画像データ(例えばビットマップデータ等のビデオデータ)を生成し、メモリに格納する。DSPは、1ページ分の印刷画像データを生成すると(メモリに1画像分の印刷画像データを格納すると)、エンジンコントローラ部130に印刷の開始を指定し、メモリに格納した印刷画像データ(/VIDEO[3:0])を、エンジンコントローラ部130から供給される所定の同期信号に同期して、ビデオI/Fコントローラ部120に供給する。
【0029】
なお、同期信号は、エンジンコントローラ部130によって生成され(特に、前記の印刷の開始の指定後に生成される。)、エンジンコントローラ部130から、I/Fコントローラ部110、ビデオI/Fコントローラ部120、ヒータ制御部140等に供給される。同期信号としては、例えば、水平同期信号(/HSYNC)、垂直同期信号(/VSYNC)、及び、同期クロック(/NVCLK)がある。これらの同期信号が適宜各部に供給され、各部(エンジンコントローラ部130、I/Fコントローラ部110、ビデオI/Fコントローラ部120、ヒータ制御部140等)はこれらの同期信号に同期して動作(例えば、1ライン毎又は1画像毎のデータの供給等)する。これによって、各部が同期する。
【0030】
ビデオI/Fコントローラ部120は、ビデオDSP、ビデオメモリ等を含んで構成される。ビデオDSPは、I/Fコントローラ部110から、印刷画像データを受け取り、ビデオメモリに記録する。さらに、ビデオDSPは、ビデオメモリに記録した印刷画像データを、エンジンコントローラ部130の要求に従って、印刷画像の1ライン毎にエンジンコントローラ部130に順次転送する。
【0031】
エンジンコントローラ部130は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。エンジンコントローラ部130は、ビデオI/Fコントローラ部120から印刷画像データを1ライン毎に1画像分受け取り、所定の規則に基づいて、印刷部200を動作させ、用紙3に印刷を行わせる。特に、エンジンコントローラ部130は、印刷画像データを、この印刷画像データにおける各画素をN個の微画素(ドット)に展開したドットパターンデータに展開し(取得し)、展開したこのドットパターンデータに基づいて、露光装置203を制御し、露光を行わせる。
【0032】
ドットパターンデータは、ドットを最小単位としたパターンによって、印刷画像データの印刷画像を表すデータである。ドットパターンデータは、例えば、各ドット毎に、そのドットが有効であるかどうかを特定するデータである。有効であるドット(有効ドット)については、露光が行われ、有効でないドット(非有効ドット)については、露光が行われない。露光において、回転する感光体ドラム201に対して、有効ドットに対応する位置になる光源には、この光源を発光させるためにHigh信号が供給され、非有効ドットに対応する位置になる光源には、この光源を非発光にさせるためにLow信号が供給される。このような信号の供給は、エンジンコントローラ部130の制御のもと行われ、1画像分連続的に行われる。このようにして、有効ドットで表される像の静電潜像が感光体ドラム201に形成される。そして、この有効ドットの部分、つまり、ドットを単位とした静電潜像上にトナーが転写され、静電潜像によって表されるトナー像240が感光体ドラム201に形成される。有効ドットの密度が高い部分は、低い部分よりもトナーの転写量が多くなる。
【0033】
ヒータ制御部140は、例えば、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)141、ROM(Read Only Memory)142、RAM(Random Access Memory)143、I/O(In/Out)ポート144、D/A(デジタル/アナログ変換)145、アナログ入力146、A/D(アナログ/デジタル変換)147を備える。ヒータ制御部140には、I/Oポート144を介してエンジンコントローラ部130から前記ドットパターンデータが供給され、アナログ入力146を介してサーミスタ206dから電圧値が供給される。電圧値は、A/D147でデジタルデータに変換され、CPU141に供給される。また、CPU141は、サーミスタ206dから供給される電圧値に応じて、D/A145に制御信号を出力する。D/A145は、制御信号の内容に応じた電圧をヒータ206cに印加する。CPU141は、サーミスタ206dから供給される電圧値(つまり、定着ローラ206aの温度)に応じて、ヒータ206cに印加される電圧を制御し、ヒータ206cの温度を制御する。RAM143は、CPU141のメインメモリとして機能する。ROM142は、プログラム、データ(特に後述のテーブル)等を記憶する。CPU141は、ROM142に記憶されたプログラムに従って、また、ROM142に記憶された各種データを用いて、後述のヒータ制御処理(偏り特定部140a及び温度制御部140bが行う処理)を実行する。
【0034】
図3のようなハードウェア構成によって、ヒータ制御部140は、図4に示すように、偏り特定部140aと、温度制御部140bと、を備える。偏り特定部140aは、CPU141、ROM142、RAM143、I/Oポート144によって構成され、温度制御部140bは、CPU141、ROM142、RAM143、D/A145、アナログ入力146、A/D147によって構成される。
【0035】
ここで、偏り特定部140aと、温度制御部140bとが行うヒータ制御処理を図4及び図5等を参照して説明する。
【0036】
この処理は、エンジンコントローラ130からドットパターンデータが供給されたことを契機として始まる。
【0037】
まず、偏り特定部140aは、エンジンコントローラ130から供給されるドットパターンデータを取得し(ステップS101)、取得したドットパターンデータに基づいて、有効ドットの面積率(%)を特定する(ステップS102)。この面積率は、例えば、ドットパターンデータにおけるドットの総数(総ドット数:有効ドットと非有効ドットとの和)をZ、有効ドット数をnとすると、下記の数式1によって求まる。偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、有効ドット数及び総ドット数を特定し、下記の数式1から面積率を算出(特定)する(本実施形態では、小数点以下は四捨五入するものとする。)。なお、偏り特定部140aは、例えば、総ドット数及び有効ドット数と、面積率と、が対応して含まれるデータテーブルを参照して、前記の面積率を特定してもよい。
【0038】
【数1】
【0039】
次に、偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、その有効ドットの印刷画像全体における偏りを特定する(ステップS103)。この偏りは、本実施形態では、結合率によって表される。結合率は、下記の数式2(本実施液体では、小数点以下は四捨五入するものとする。)によって算出(特定)される。偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、下記の数式2によって結合率を算出する(本実施形態では、小数点以下は四捨五入するものとする。)。
【0040】
【数2】
【0041】
上記の式において、nは、上記有効ドット数である。Xiは、所定のドットグループを構成する有効ドットの数である。このドットグループは、1以上の有効ドットから構成され、複数の有効ドットから構成される場合には、印刷画像における縦方向及び/又は横方向に連続している有効ドットから構成される。つまり、ドットグループが複数の有効ドットで構成される場合、このドットグループは、他の有効ドットが隣に位置している複数の有効ドットの集合であり、ドットを単位とした印刷画像上で、有効ドットによって構成される途切れの無い島を構成している(図6のドットグループ1及びドットグループ2参照)。図6では、印刷画像の一部のドットについて描かれている。図6では、有効ドットを「1」とし、非有効ドットを「0」としている。ドットグループ1を構成する有効ドットとドットグループ2を構成する有効ドットとは、途中で途切れているので、これらの有効ドットは、1つのドットグループにはならない。上記の式では、Xi=iである。Yiは、Xi=iのときの実際の印刷画像における前記のドットグループの数である。
【0042】
上記の式から分かるように、結合率は、全ての有効ドットがドットグループを構成している場合に100になる値であり、有効ドットがドットグループを構成する割合を表す値である。総有効ドットのうち、ドットグループを構成する有効ドットの数が多ければ、また、有効ドットを多く含むドットグループの数が多ければ、それだけ、有効ドットが偏っていることになり、結合率は大きくなる。ドットグループを構成する有効ドットの数が多ければ、また、有効ドットを多く含むドットグループの数が多ければ、それだけ、印刷画像全体において、有効ドットが偏って偏在することになる。このため、結合率は、印刷画像全体における、有効ドットの偏りを表すことになる。なお、有効ドットが多く或る部分には、トナーが多く転写されることになるため、有効ドットの偏りは、印刷する印刷画像全体におけるトナーの転写量の偏りでもある。
【0043】
なお、偏り特定部140aは、例えば、総ドット数及び有効ドット数と、結合率と、が対応して含まれるデータテーブルを参照して、前記の結合率を特定してもよい。
【0044】
偏り特定部140aが有効ドットの面積率及び偏りを特定すると、温度制御部140bは、偏り特定部140aが特定した有効ドットの面積率及び偏りに基づいて、定着温度についての補正値を特定する(ステップS104)。この補正値の特定は、所定の数式を用いて、有効ドットの面積率及び偏りに基づいて算出することによって行ってもよいが、ここでは、データテーブルを参照することによって行われる。
【0045】
前記のデータテーブルは、有効ドットの面積率と、有効ドットの偏りと、補正値と、をそれぞれ示すデータが対応付けられて記録されたものであり、有効ドットの面積率(1〜100パーセント)毎に、有効ドットの偏りと補正値との対応関係を示すものである。図7にこのデータテーブルの内容の一部を示す。図7では、有効ドットが50パーセントであった場合の、有効ドットの偏りと補正値との関係が示されている。ここで、補正値とは、ヒータ206cを制御するときに用いられる目標温度(定着ローラ206aの目標温度)を設定するときに用いられる値である。この補正値は、実験等によって、適宜定められるものとする。
【0046】
温度制御部140bは、前記で特定した補正値に基づいて、目標温度を設定する(ステップS104)。温度制御部140bには、予め、基準となるベース温度(例えば、155℃)が設定されている(このデータは、例えば、ROM142に記録されて用いられるものとする。)。温度制御部140bは、このベース温度に前記補正値を加算し、加算した値を目標温度として設定する。
【0047】
図7に例示されているように、ステップS104において参照されるデータテーブルでは、有効ドットの偏りが大きくなれば(上記の結合率が大きくなれば)、補正値の値も大きくなる。このため、仮に、同じ面積率で有効ドットの偏りが異なる複数のケースを考えた場合、有効ドットの偏りが大きくなるほど、目標温度が高くなる。例えば、面積率が50パーセントで、結合率が57パーセントの場合、温度制御部140bは、補正値として、+8℃を特定し、ベース温度(ここでは、155℃とする。)に、特定した補正値を加算して、目標温度として163℃を設定する。ステップS104において参照されるデータテーブルでは、面積率が大きくなれば、補正値の値も大きくなる。このため、仮に、同じ結合率で面積率が異なる複数のケースを考えた場合、面積率が大きくなるほど、目標温度が高くなる。
【0048】
温度制御部140bは、目標温度を設定すると、定着ローラ206aの温度が、この設定した目標温度になるように、1印刷画像分の熱定着の間中、ヒータ206cの温度を制御し(ステップS107)、本処理は終了する。
【0049】
温度制御部140bは、サーミスタ206dから供給される電圧値に基づいて、定着ローラ206aの温度(定着温度)を順次検出し、検出した定着ローラ206aの温度が前記で設定した目標温度になるように、ヒータ206cの温度を制御する。温度制御部140bは、上述のように、ヒータ206cへの印加電圧を制御信号によって制御することによって、ヒータ206の発熱温度を制御する。例えば、温度制御部140bは、定着ローラ206aの温度が目標温度よりも低ければ、ヒータ206cへの印加電圧を高くして、ヒータ206cの温度を上げる。これによって、このヒータ206cの温度によって加温される定着ローラ206aの温度を上げる。例えば、温度制御部140bは、定着ローラ206aの温度が目標温度よりも高ければ、ヒータ206cへの印加電圧を低くして、ヒータ206cの温度を下げる。これによって、このヒータ206cの温度によって加温される定着ローラ206aの温度を下げる。
【0050】
図8に示すように、面積率が50パーセントで、有効ドットが分散した網点50%の第1の印刷画像(結合率:0パーセント)を印刷する場合、上記の処理によって、目標温度はベース温度である155℃に設定され、定着温度が155℃になるようなヒータ制御が行われる。また、印刷画像を2分割した所定領域に有効ドットが集中したベタ塗りの第2の印刷画像(結合率:100パーセント)を印刷する場合には、上記の処理によって、目標温度はベース温度である171℃に設定され、定着温度が171℃になるようなヒータ制御が行われる。このように、結合率が大きい、つまり、有効ドットの偏りが大きい場合、目標温度は高く設定されてヒータ制御が行われる。
【0051】
ここで、本実施形態を、さらなる具体的な例に基づいて説明する。ここでは、図9及び10を参照し、説明を行う。また、ここでは、理解を容易にするために、印刷画像における一ライン分のドットを考える。さらに、この一ライン分の総ドット数を16とする(実際のドット数は、もっと多い)。また、有効ドットは、8とする。つまり、この一ラインの面積率は50パーセントになっている。このような場合の有効ドットの配置のパターンのいくつかを、図9に例示する。図9では、16個のドット(図9等のドットナンバー1〜16参照)のうち、有効ドットを黒丸で示し、非有効ドットを白丸で示している。面積率50パーセントのときの有効ドットの配置のパターンは、例えば、パターン1乃至7がある。パターン1では、8個の有効ドットが、16個の総ドットのうち、ラインの左側(ドットナンバー1〜8)に寄っている。図9において、連続している複数の有効ドットは、それぞれ、前記のドットグループを構成する(例えば、パターン1では、ドットナンバー1〜8の有効ドット)。
【0052】
図9のパターン1乃至7について、前記のドットグループを構成する(つまり、連続する)有効ドットの数、及び、その数の有効ドットを有するドットグループの数を図10に示す。図10では、図9のパターン1乃至7それぞれについての、有効ドットの連続する数(ドット長)によって区別されるドットグループそれぞれについての数が、まとめられている。さらに、この各パターン1乃至7それぞれについての結合率もまとめられている。なお、有効ドットは、露光に使用される光源(図910露光ドット)の数でもある。例えば、パターン1では、8つの連続する有効ドットのドットグループが1つのみ存在するので、図10では、「8」のドット長の欄に、その数である「1」が記載され、全ての有効ドットが結合(他の有効ドットと隣接)しているので、結合率は100パーセントになっている。例えば、パターン1では、2つ以上連続する有効ドットのドットグループが1つも存在しない(つまり、1つのドット長のものが8つあることになる)ので、「1」のドット長の欄に、その数である「8」が記載され、全ての有効ドットが結合(他の有効ドットと隣接)していないので、結合率は0パーセントになっている。図9及び図10のように、同じ面積率であっても、結合率が異なれば、有効ドットの分布が異なり、有効ドットの偏りも異なることが理解できる。結合率が高ければ、有効ドットの偏りが大きい。
【0053】
次に、図9におけるパターン1及びパターン7についての、有効ドットの分布と、用紙3に転写され定着するトナーとの関係を、図11及び12の模式図を参照して説明する。図11は、パターン1についての有効ドットの分布と、トナーとの関係を示し、図12は、パターン7についての有効ドットの分布と、トナーとの関係を示す。図11及び12での露光制御は、ドットに対応する光源を発光させるときにHigh信号を供給することを示す。つまり、High信号が供給された光源に対応するドットについて、画像にトナーが転写される。
【0054】
図11では、有効ドットがドットナンバー1乃至8において全て連続している。このため、トナーは、用紙3上で図に向かって左側に集まっている(偏っている)。トナーが集まった部分は、図11のように、一塊になる。このような場合、一塊のトナーの全体量が大きくなるため、トナー全体における熱の伝導が悪くなり、トナー全体に、軟化(つまり定着)に必要な熱を行き渡らせるには、高い温度が必要になる。つまり、上記の目標温度を高くする必要がある。
【0055】
図12では、有効ドットがドットナンバー1乃至16においてとびとびに位置している。このため、トナーは、とびとびに位置している(分散している)。この場合、トナーは分散しているため、トナーが大きな一塊になることはない。このような場合、それぞれのトナーにおける熱の伝導が悪くなることは特に無く、トナー全体に、軟化(つまり定着)に必要な熱を行き渡らせるには、高い温度は必要ない場合がある。つまり、上記の目標温度を高くする必要がない。
【0056】
これらから分かるように、有効ドットが偏っているほど、目標温度を高くする必要があり、有効ドットの偏りが小さい場合には、目標温度を高くする必要はないが、従来、トナーの偏りに関係なく、面積率に応じてヒータの温度を制御していたので、トナーの偏りが大きい場合等に定着温度が適切なものでない場合(特に、定着温度が低すぎる場合)があった。上記のヒータの温度制御では、面積率が同じであっても、トナーの転写量が偏っているほど(結合率が高い程)、目標温度を高く設定する(ヒータ206cの温度を高くする)ので、目標温度が不必要に低くなりすぎる、または、不必要に高くなりすぎることが防止される。また、結合率が同じであっても、面積率が異なれば、当然連続する有効ドットの数は異なる。上記のヒータの温度制御では、結合率が同じであっても、面積率が大きければ、目標温度を高く設定するので、目標温度が不必要に低くなりすぎる、または、不必要に高くなりすぎることが防止される。以上のように、本実施形態では、適切な目標温度の設定が行われることになる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、上記の処理によって、偏り特定部140aは、用紙3の所定領域(本実施形態では、印刷画像全体を印刷する領域)におけるトナーの転写量の偏り(本実施形態では、有効ドットの結合率によって表されている)を印刷画像情報(本実施形態では、ドットパターンデータ)における有効ドットの偏りに基づいて特定する。なお、トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように用紙3に転写される。また、温度制御部140bは、前記の所定領域に転写されたトナーを用紙3に定着させるためのヒータ206bの温度を、偏り特部140aが特定した偏りに応じて制御する。これによって、目標温度、つまり、実際のトナー定着温度を、上記のように、トナーの定着に適した温度にすることができ、トナーの定着において、ヒータ206cの温度を精度良く制御することができる。特に、印刷画像の特徴に応じた、精度の良い制御を行うことができる。また、本実施形態では、ヒータ206cの温度を精度良く制御することによって、不必要な加熱を抑制するため省電力が実現される。また、必要以上な加熱も行われないため、用紙3のカールの防止、印刷装置1の温度上昇が抑えられ、印刷装置1における冷却ファンの回転数を低下させることによる静音化等が実現される。
【0058】
なお、トナーの転写量の偏りは、例えば、印刷画像全体において最も大きい面積を占めるドットグループを構成する有効ドットの数(最も多く連続する有効ドットの数)によって表されても良い。このようなドットグループの定着に目標温度を合わせれば、他のドットグループが印刷画像において存在したとしても、他のドットグループは前記の目標温度によって用紙3に定着するからである。この場合、有効ドットの数が多ければ目標温度を高くなる。偏り特定部140aは、最も多く連続する有効ドットの数を特定し、温度制御部140bは、この数に基づいて、上記と同様に目標温度を設定する。
【0059】
また、用紙3の所定領域は、印刷画像全体を印刷する領域を、画像の主走査方向(印刷画像における一ラインの方向)及び又は副走査方向(主走査方向に直交する方向)に分割した領域(分割領域)であってもよい。副走査方向に分割した領域が所定領域である場合には、例えば、偏り特定部140aは、各所定領域についてトナーの転写量の偏りを特定し、温度制御部140bは、各所定領域の偏りに基づいて、上記と同様に、トナーの定着及び加熱のときの温度制御(ヒータ206cの温度の制御)を各所定領域毎に行う。主走査方向に分割した領域が所定領域である場合には、ヒータ(ヒータ206cに対応)は、複数配置され、例えば、偏り特定部140aは、各所定領域についてトナーの転写量の偏りを特定し、温度制御部140bは、各所定領域の偏りに基づいて、上記と同様に、各ヒータの温度を制御する。このような分割領域についてヒータの温度を制御することによって、きめ細やかなヒータの制御が行われ、省電力化等がより実現される。
【0060】
上記実施形態では、ヒータ制御部140において、プログラムがメモリ等に予め記憶されているものとして説明した。しかし、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read−Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これをコンピュータにインストールし、上述の処理を実行させてもよい。
【0061】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータ(ヒータ制御部140)に、このプログラムをダウンロード等するものとしてもよい。
【0062】
なお、ヒータ制御部140は、エンジンコントローラ部130を構成するハードウェアの少なくとも一部(例えば、ASIC)によって構成されてもよい。この場合、エンジンコントローラ部130をヒータ制御装置として捉えることもできる。また、カラー印刷において、用紙3に転写された各色トナーの定着を各色トナーから構成される1つのトナー像に対して行う場合、この1つのトナー像について上記実施形態を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・印刷装置、100・・・コントローラ部、110・・・I/Fコントローラ部、120・・・ビデオI/Fコントローラ部、130・・・エンジンコントローラ部、140・・・ヒータ制御部、140a・・・偏り特定部、140b・・・温度制御部、200・・・印刷部、203・・・露光装置、206・・・定着ユニット、206a・・・定着ローラ、206c・・・ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーを被印刷物に定着させるためのヒータの温度を制御するヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、印刷画像の一定領域のドット数に応じてトナー被覆量を算出し,そのトナー被覆量に応じて、ヒータの温度を変化させ、定着ローラの温度(定着温度)を変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−346074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、定着温度を印刷画像のトナー被覆量に応じて変化させるが、同じトナー被覆量であっても、印刷画像の内容(印刷画像における像(文字、図形、記号、絵の要素、写真の像等)の形状、色彩等)によっては、変化させた定着温度がトナーの定着にとって好適なものではない(例えば、必要以上に温度が高すぎる等)場合がある。つまり、特許文献1の技術では、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することが出来ないことがある。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものでなされたものであり、その目的とするところは、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することができる、ヒータ制御装置、印刷装置、及び、プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るヒータ制御装置は、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段と、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段と、
を備える。
【0007】
また、本発明の第2の観点に係る印刷装置は、
前記のヒータ制御装置を備える。
【0008】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段、
として機能させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナーの定着において、ヒータの温度を精度良く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の1実施形態に係る印刷装置の構成図である。
【図2】図1の印刷装置の構成を示す図である。
【図3】図2のヒータ制御部のハードウェア構成を説明するための図である。
【図4】図2のヒータ制御部の構成を説明するためのブロック図である。
【図5】図1の印刷装置のヒータ制御部が行うヒータ制御処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図6】印刷画像におけるドットを説明するための説明図である。
【図7】図5のヒータ制御処理において参照されるデータテーブルの内容の一例を示す図である。
【図8】印刷画像と定着温度との関係の一例を説明するための図である。
【図9】印刷画像のドットパターンを説明するための図である。
【図10】印刷画像の有効ドットの連続回数と結合率との関係を示す図である。
【図11】用紙に転写・定着されるトナーと目標温度との関係を説明するための図である。
【図12】用紙に転写・定着されるトナーと目標温度との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る1実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施形態(図面の内容も含む。)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0012】
図1のように、本実施形態に係る印刷装置1は、コントローラ部100と、印刷部200と、を備える。なお、下記の説明では、用紙3が送られる方向を副走査方向といい、副走査方向に直交する方向を主走査方向という。
【0013】
コントローラ部100は、印刷部200を制御し、用紙3(被印刷物)に所定の印刷画像を印刷する。コントローラ部100の構成等についての詳細は後述する。印刷画像は、絵、テキスト、写真等である。
【0014】
印刷部200は、感光体ドラム201と、帯電ローラ202と、露光装置(露光ヘッド)203と、現像器204と、転写ローラ205と、定着ユニット206と、クリーニング器207と、イレーサ光源208と、を備える。
【0015】
感光体ドラム201は、帯電して静電潜像を形成する。感光体ドラム201は、印刷部200に含まれる駆動部(図示せず)によって駆動され、軸を中心に矢印方向に回転する。この感光体ドラム201は、例えば、負帯電型OPC(Organic Photo Conductor)感光体によって構成されている。
【0016】
帯電ローラ202は、感光体ドラム201を一様に帯電させる。帯電ローラ202は、例えば、負帯電器であり、帯電用電源(図示せず)から負電圧が印加されて、感光体ドラム201の周表面を一様にマイナス帯電させて初期化する。
【0017】
露光装置203は、帯電した感光体ドラム201に光書き込み(露光)を行う発光素子アレイ露光装置等であり、光書き込みによって感光体ドラム201上に静電潜像を形成する。露光装置203は、主走査方向に一列に並ぶ複数の光源(後述のドットに対応する。)を有し、各々の光源を順次発光・非発光させることによって、回転する感光体ドラム201に対してドット一列ごとに露光を順次行う。これによって、感光体ドラム201上に1画像分の静電潜像が形成されることになる。
【0018】
現像器204は、トナー収容部204aと現像ローラ204bとを含む。トナー収容部204aは、トナーを収容する。現像ローラ204bは、トナー収容部204aに収容されているトナーを感光体ドラム201側に回転搬送する。現像ローラ204bは、現像バイアス電源(図示せず)から、現像バイアスが印加される。この印加によって、回転する現像ローラ204bには、トナー収容部204aに収容されたトナーが付着し、付着したトナーは感光体ドラム201側に搬送される。現像ローラ204bによって搬送されたトナーは、感光体ドラム513における静電潜像の部分に転移する。この転移によって、感光体ドラム201には、静電潜像に応じた像のトナー像240が形成される。
【0019】
転写ローラ205は、感光体ドラム201上に形成されたトナー像240を用紙3に転写する。
【0020】
定着ユニット206は、定着ローラ206a、バックアップローラ206b、ヒータ206c、サーミスタ206dと、を備え、用紙3に転写されたトナー像240を用紙3に熱定着させる。ヒータ206cは、ハロゲンランプヒータ等からなり、略均一の温度で発熱し、定着ローラ206a(加熱対象領域)を略均一に加熱する。サーミスタ206dは、定着ローラ206aの温度を測定するために使用される。定着ローラ206a及びバックアップローラ206bによって、用紙3は挟まれる。定着ローラ206aは加熱されているので、両者に挟まれた用紙3は、加熱(これによって、トナー像240のトナーは軟化する。)及び加圧され、トナー像240は用紙3に熱定着する。
【0021】
クリーニング器207は、感光体ドラム201上に残留する転写漏れトナーを除去する。
【0022】
イレーサ光源208は、感光体ドラム201の表面を一様に除電する。
【0023】
感光体ドラム201は、回転するとともに帯電ローラ202によって帯電する。露光装置203は、帯電した感光体ドラム201に光書き込みを行って感光体ドラム201上に静電潜像を形成する。現像ローラ204bは、トナー収容部204aに収容されたトナーを付着し、付着したトナーを感光体ドラム201に回転搬送する。これによって、感光体ドラム201の静電潜像にトナーが転移して、この静電潜像によって表されるトナー像240が形成される。一方、用紙3は、図示しない搬送ベルト等によって搬送される。用紙3には、転写ローラ205によって、トナー像240が転写される。定着ローラ206a(ヒータ206cによって加熱される。)及びバックアップローラ206bは、用紙3にトナー像240を熱定着させる。熱定着させた用紙3は、所定の排出手段によって印刷装置1の外へと排出する。クリーニング器207は、トナー像240を転写した後の感光体ドラム201上に残留する転写漏れトナーを除去する。イレーサ光源208は、転写漏れトナーが除去された感光体ドラム201の表面を一様に除電する。
【0024】
なお、印刷部200の構成は、上記の構成に限られず、その構成は適宜変更可能である。例えば、トナー像240の用紙3への転写は、中間転写体等を用いて行われても良い。
【0025】
図2のように、コントローラ部100は、I/F(インターフェース)コントローラ部110と、ビデオI/Fコントローラ部120と、エンジンコントローラ部130と、ヒータ制御部140と、を備える。
【0026】
I/Fコントローラ部110は、印刷装置1の外部のパーソナルコンピュータ(PC)301やプリンタサーバ302等のホスト機器300が接続される。I/Fコントローラ部110とPC301とは、セントロニクスインターフェイス、USB(Universal Serial Bus)等を介して接続され、I/Fコントローラ部110とプリンタサーバ302とは、LAN(Local Area Network)を介して接続されている。I/Fコントローラ部110とPC301とをLANを介して接続してもよい。
【0027】
PC301は、ワープロ等のアプリケーションによって印刷を行なうときは、印刷データをコマンドデータに変換しながら、プリントスプーラ(図示せず)に一旦保存する。I/Fコントローラ部110とPC301との接続がセントロニクスインターフェイス、USBの場合は、プリントスプーラから印刷装置1へ直接コマンドデータが送られる。LANで接続されているプリンタサーバ302経由で印刷が行われる場合は、PC301のプリントスプーラに保存したデータがプリンタサーバ302のプリントスプーラへ転送され、プリンタサーバ302内のプリントスプーラからI/Fコントローラ部110を介して印刷装置1へコマンドデータが送られる。
【0028】
I/Fコントローラ部110は、DSP(Digital Signal Processer)、メモリ等を含んで構成される。メモリは、DSPが処理中に生成したデータを順次一時記憶するバッファメモリとして機能する。DSPは、ホスト機器から供給されるコマンドデータを順次処理して、例えば、コマンドデータから印刷データを抽出し、抽出した印刷データに対して伸張処理等を行って印刷画像データ(例えばビットマップデータ等のビデオデータ)を生成し、メモリに格納する。DSPは、1ページ分の印刷画像データを生成すると(メモリに1画像分の印刷画像データを格納すると)、エンジンコントローラ部130に印刷の開始を指定し、メモリに格納した印刷画像データ(/VIDEO[3:0])を、エンジンコントローラ部130から供給される所定の同期信号に同期して、ビデオI/Fコントローラ部120に供給する。
【0029】
なお、同期信号は、エンジンコントローラ部130によって生成され(特に、前記の印刷の開始の指定後に生成される。)、エンジンコントローラ部130から、I/Fコントローラ部110、ビデオI/Fコントローラ部120、ヒータ制御部140等に供給される。同期信号としては、例えば、水平同期信号(/HSYNC)、垂直同期信号(/VSYNC)、及び、同期クロック(/NVCLK)がある。これらの同期信号が適宜各部に供給され、各部(エンジンコントローラ部130、I/Fコントローラ部110、ビデオI/Fコントローラ部120、ヒータ制御部140等)はこれらの同期信号に同期して動作(例えば、1ライン毎又は1画像毎のデータの供給等)する。これによって、各部が同期する。
【0030】
ビデオI/Fコントローラ部120は、ビデオDSP、ビデオメモリ等を含んで構成される。ビデオDSPは、I/Fコントローラ部110から、印刷画像データを受け取り、ビデオメモリに記録する。さらに、ビデオDSPは、ビデオメモリに記録した印刷画像データを、エンジンコントローラ部130の要求に従って、印刷画像の1ライン毎にエンジンコントローラ部130に順次転送する。
【0031】
エンジンコントローラ部130は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等によって構成される。エンジンコントローラ部130は、ビデオI/Fコントローラ部120から印刷画像データを1ライン毎に1画像分受け取り、所定の規則に基づいて、印刷部200を動作させ、用紙3に印刷を行わせる。特に、エンジンコントローラ部130は、印刷画像データを、この印刷画像データにおける各画素をN個の微画素(ドット)に展開したドットパターンデータに展開し(取得し)、展開したこのドットパターンデータに基づいて、露光装置203を制御し、露光を行わせる。
【0032】
ドットパターンデータは、ドットを最小単位としたパターンによって、印刷画像データの印刷画像を表すデータである。ドットパターンデータは、例えば、各ドット毎に、そのドットが有効であるかどうかを特定するデータである。有効であるドット(有効ドット)については、露光が行われ、有効でないドット(非有効ドット)については、露光が行われない。露光において、回転する感光体ドラム201に対して、有効ドットに対応する位置になる光源には、この光源を発光させるためにHigh信号が供給され、非有効ドットに対応する位置になる光源には、この光源を非発光にさせるためにLow信号が供給される。このような信号の供給は、エンジンコントローラ部130の制御のもと行われ、1画像分連続的に行われる。このようにして、有効ドットで表される像の静電潜像が感光体ドラム201に形成される。そして、この有効ドットの部分、つまり、ドットを単位とした静電潜像上にトナーが転写され、静電潜像によって表されるトナー像240が感光体ドラム201に形成される。有効ドットの密度が高い部分は、低い部分よりもトナーの転写量が多くなる。
【0033】
ヒータ制御部140は、例えば、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)141、ROM(Read Only Memory)142、RAM(Random Access Memory)143、I/O(In/Out)ポート144、D/A(デジタル/アナログ変換)145、アナログ入力146、A/D(アナログ/デジタル変換)147を備える。ヒータ制御部140には、I/Oポート144を介してエンジンコントローラ部130から前記ドットパターンデータが供給され、アナログ入力146を介してサーミスタ206dから電圧値が供給される。電圧値は、A/D147でデジタルデータに変換され、CPU141に供給される。また、CPU141は、サーミスタ206dから供給される電圧値に応じて、D/A145に制御信号を出力する。D/A145は、制御信号の内容に応じた電圧をヒータ206cに印加する。CPU141は、サーミスタ206dから供給される電圧値(つまり、定着ローラ206aの温度)に応じて、ヒータ206cに印加される電圧を制御し、ヒータ206cの温度を制御する。RAM143は、CPU141のメインメモリとして機能する。ROM142は、プログラム、データ(特に後述のテーブル)等を記憶する。CPU141は、ROM142に記憶されたプログラムに従って、また、ROM142に記憶された各種データを用いて、後述のヒータ制御処理(偏り特定部140a及び温度制御部140bが行う処理)を実行する。
【0034】
図3のようなハードウェア構成によって、ヒータ制御部140は、図4に示すように、偏り特定部140aと、温度制御部140bと、を備える。偏り特定部140aは、CPU141、ROM142、RAM143、I/Oポート144によって構成され、温度制御部140bは、CPU141、ROM142、RAM143、D/A145、アナログ入力146、A/D147によって構成される。
【0035】
ここで、偏り特定部140aと、温度制御部140bとが行うヒータ制御処理を図4及び図5等を参照して説明する。
【0036】
この処理は、エンジンコントローラ130からドットパターンデータが供給されたことを契機として始まる。
【0037】
まず、偏り特定部140aは、エンジンコントローラ130から供給されるドットパターンデータを取得し(ステップS101)、取得したドットパターンデータに基づいて、有効ドットの面積率(%)を特定する(ステップS102)。この面積率は、例えば、ドットパターンデータにおけるドットの総数(総ドット数:有効ドットと非有効ドットとの和)をZ、有効ドット数をnとすると、下記の数式1によって求まる。偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、有効ドット数及び総ドット数を特定し、下記の数式1から面積率を算出(特定)する(本実施形態では、小数点以下は四捨五入するものとする。)。なお、偏り特定部140aは、例えば、総ドット数及び有効ドット数と、面積率と、が対応して含まれるデータテーブルを参照して、前記の面積率を特定してもよい。
【0038】
【数1】
【0039】
次に、偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、その有効ドットの印刷画像全体における偏りを特定する(ステップS103)。この偏りは、本実施形態では、結合率によって表される。結合率は、下記の数式2(本実施液体では、小数点以下は四捨五入するものとする。)によって算出(特定)される。偏り特定部140aは、ドットパターンデータに基づいて、下記の数式2によって結合率を算出する(本実施形態では、小数点以下は四捨五入するものとする。)。
【0040】
【数2】
【0041】
上記の式において、nは、上記有効ドット数である。Xiは、所定のドットグループを構成する有効ドットの数である。このドットグループは、1以上の有効ドットから構成され、複数の有効ドットから構成される場合には、印刷画像における縦方向及び/又は横方向に連続している有効ドットから構成される。つまり、ドットグループが複数の有効ドットで構成される場合、このドットグループは、他の有効ドットが隣に位置している複数の有効ドットの集合であり、ドットを単位とした印刷画像上で、有効ドットによって構成される途切れの無い島を構成している(図6のドットグループ1及びドットグループ2参照)。図6では、印刷画像の一部のドットについて描かれている。図6では、有効ドットを「1」とし、非有効ドットを「0」としている。ドットグループ1を構成する有効ドットとドットグループ2を構成する有効ドットとは、途中で途切れているので、これらの有効ドットは、1つのドットグループにはならない。上記の式では、Xi=iである。Yiは、Xi=iのときの実際の印刷画像における前記のドットグループの数である。
【0042】
上記の式から分かるように、結合率は、全ての有効ドットがドットグループを構成している場合に100になる値であり、有効ドットがドットグループを構成する割合を表す値である。総有効ドットのうち、ドットグループを構成する有効ドットの数が多ければ、また、有効ドットを多く含むドットグループの数が多ければ、それだけ、有効ドットが偏っていることになり、結合率は大きくなる。ドットグループを構成する有効ドットの数が多ければ、また、有効ドットを多く含むドットグループの数が多ければ、それだけ、印刷画像全体において、有効ドットが偏って偏在することになる。このため、結合率は、印刷画像全体における、有効ドットの偏りを表すことになる。なお、有効ドットが多く或る部分には、トナーが多く転写されることになるため、有効ドットの偏りは、印刷する印刷画像全体におけるトナーの転写量の偏りでもある。
【0043】
なお、偏り特定部140aは、例えば、総ドット数及び有効ドット数と、結合率と、が対応して含まれるデータテーブルを参照して、前記の結合率を特定してもよい。
【0044】
偏り特定部140aが有効ドットの面積率及び偏りを特定すると、温度制御部140bは、偏り特定部140aが特定した有効ドットの面積率及び偏りに基づいて、定着温度についての補正値を特定する(ステップS104)。この補正値の特定は、所定の数式を用いて、有効ドットの面積率及び偏りに基づいて算出することによって行ってもよいが、ここでは、データテーブルを参照することによって行われる。
【0045】
前記のデータテーブルは、有効ドットの面積率と、有効ドットの偏りと、補正値と、をそれぞれ示すデータが対応付けられて記録されたものであり、有効ドットの面積率(1〜100パーセント)毎に、有効ドットの偏りと補正値との対応関係を示すものである。図7にこのデータテーブルの内容の一部を示す。図7では、有効ドットが50パーセントであった場合の、有効ドットの偏りと補正値との関係が示されている。ここで、補正値とは、ヒータ206cを制御するときに用いられる目標温度(定着ローラ206aの目標温度)を設定するときに用いられる値である。この補正値は、実験等によって、適宜定められるものとする。
【0046】
温度制御部140bは、前記で特定した補正値に基づいて、目標温度を設定する(ステップS104)。温度制御部140bには、予め、基準となるベース温度(例えば、155℃)が設定されている(このデータは、例えば、ROM142に記録されて用いられるものとする。)。温度制御部140bは、このベース温度に前記補正値を加算し、加算した値を目標温度として設定する。
【0047】
図7に例示されているように、ステップS104において参照されるデータテーブルでは、有効ドットの偏りが大きくなれば(上記の結合率が大きくなれば)、補正値の値も大きくなる。このため、仮に、同じ面積率で有効ドットの偏りが異なる複数のケースを考えた場合、有効ドットの偏りが大きくなるほど、目標温度が高くなる。例えば、面積率が50パーセントで、結合率が57パーセントの場合、温度制御部140bは、補正値として、+8℃を特定し、ベース温度(ここでは、155℃とする。)に、特定した補正値を加算して、目標温度として163℃を設定する。ステップS104において参照されるデータテーブルでは、面積率が大きくなれば、補正値の値も大きくなる。このため、仮に、同じ結合率で面積率が異なる複数のケースを考えた場合、面積率が大きくなるほど、目標温度が高くなる。
【0048】
温度制御部140bは、目標温度を設定すると、定着ローラ206aの温度が、この設定した目標温度になるように、1印刷画像分の熱定着の間中、ヒータ206cの温度を制御し(ステップS107)、本処理は終了する。
【0049】
温度制御部140bは、サーミスタ206dから供給される電圧値に基づいて、定着ローラ206aの温度(定着温度)を順次検出し、検出した定着ローラ206aの温度が前記で設定した目標温度になるように、ヒータ206cの温度を制御する。温度制御部140bは、上述のように、ヒータ206cへの印加電圧を制御信号によって制御することによって、ヒータ206の発熱温度を制御する。例えば、温度制御部140bは、定着ローラ206aの温度が目標温度よりも低ければ、ヒータ206cへの印加電圧を高くして、ヒータ206cの温度を上げる。これによって、このヒータ206cの温度によって加温される定着ローラ206aの温度を上げる。例えば、温度制御部140bは、定着ローラ206aの温度が目標温度よりも高ければ、ヒータ206cへの印加電圧を低くして、ヒータ206cの温度を下げる。これによって、このヒータ206cの温度によって加温される定着ローラ206aの温度を下げる。
【0050】
図8に示すように、面積率が50パーセントで、有効ドットが分散した網点50%の第1の印刷画像(結合率:0パーセント)を印刷する場合、上記の処理によって、目標温度はベース温度である155℃に設定され、定着温度が155℃になるようなヒータ制御が行われる。また、印刷画像を2分割した所定領域に有効ドットが集中したベタ塗りの第2の印刷画像(結合率:100パーセント)を印刷する場合には、上記の処理によって、目標温度はベース温度である171℃に設定され、定着温度が171℃になるようなヒータ制御が行われる。このように、結合率が大きい、つまり、有効ドットの偏りが大きい場合、目標温度は高く設定されてヒータ制御が行われる。
【0051】
ここで、本実施形態を、さらなる具体的な例に基づいて説明する。ここでは、図9及び10を参照し、説明を行う。また、ここでは、理解を容易にするために、印刷画像における一ライン分のドットを考える。さらに、この一ライン分の総ドット数を16とする(実際のドット数は、もっと多い)。また、有効ドットは、8とする。つまり、この一ラインの面積率は50パーセントになっている。このような場合の有効ドットの配置のパターンのいくつかを、図9に例示する。図9では、16個のドット(図9等のドットナンバー1〜16参照)のうち、有効ドットを黒丸で示し、非有効ドットを白丸で示している。面積率50パーセントのときの有効ドットの配置のパターンは、例えば、パターン1乃至7がある。パターン1では、8個の有効ドットが、16個の総ドットのうち、ラインの左側(ドットナンバー1〜8)に寄っている。図9において、連続している複数の有効ドットは、それぞれ、前記のドットグループを構成する(例えば、パターン1では、ドットナンバー1〜8の有効ドット)。
【0052】
図9のパターン1乃至7について、前記のドットグループを構成する(つまり、連続する)有効ドットの数、及び、その数の有効ドットを有するドットグループの数を図10に示す。図10では、図9のパターン1乃至7それぞれについての、有効ドットの連続する数(ドット長)によって区別されるドットグループそれぞれについての数が、まとめられている。さらに、この各パターン1乃至7それぞれについての結合率もまとめられている。なお、有効ドットは、露光に使用される光源(図910露光ドット)の数でもある。例えば、パターン1では、8つの連続する有効ドットのドットグループが1つのみ存在するので、図10では、「8」のドット長の欄に、その数である「1」が記載され、全ての有効ドットが結合(他の有効ドットと隣接)しているので、結合率は100パーセントになっている。例えば、パターン1では、2つ以上連続する有効ドットのドットグループが1つも存在しない(つまり、1つのドット長のものが8つあることになる)ので、「1」のドット長の欄に、その数である「8」が記載され、全ての有効ドットが結合(他の有効ドットと隣接)していないので、結合率は0パーセントになっている。図9及び図10のように、同じ面積率であっても、結合率が異なれば、有効ドットの分布が異なり、有効ドットの偏りも異なることが理解できる。結合率が高ければ、有効ドットの偏りが大きい。
【0053】
次に、図9におけるパターン1及びパターン7についての、有効ドットの分布と、用紙3に転写され定着するトナーとの関係を、図11及び12の模式図を参照して説明する。図11は、パターン1についての有効ドットの分布と、トナーとの関係を示し、図12は、パターン7についての有効ドットの分布と、トナーとの関係を示す。図11及び12での露光制御は、ドットに対応する光源を発光させるときにHigh信号を供給することを示す。つまり、High信号が供給された光源に対応するドットについて、画像にトナーが転写される。
【0054】
図11では、有効ドットがドットナンバー1乃至8において全て連続している。このため、トナーは、用紙3上で図に向かって左側に集まっている(偏っている)。トナーが集まった部分は、図11のように、一塊になる。このような場合、一塊のトナーの全体量が大きくなるため、トナー全体における熱の伝導が悪くなり、トナー全体に、軟化(つまり定着)に必要な熱を行き渡らせるには、高い温度が必要になる。つまり、上記の目標温度を高くする必要がある。
【0055】
図12では、有効ドットがドットナンバー1乃至16においてとびとびに位置している。このため、トナーは、とびとびに位置している(分散している)。この場合、トナーは分散しているため、トナーが大きな一塊になることはない。このような場合、それぞれのトナーにおける熱の伝導が悪くなることは特に無く、トナー全体に、軟化(つまり定着)に必要な熱を行き渡らせるには、高い温度は必要ない場合がある。つまり、上記の目標温度を高くする必要がない。
【0056】
これらから分かるように、有効ドットが偏っているほど、目標温度を高くする必要があり、有効ドットの偏りが小さい場合には、目標温度を高くする必要はないが、従来、トナーの偏りに関係なく、面積率に応じてヒータの温度を制御していたので、トナーの偏りが大きい場合等に定着温度が適切なものでない場合(特に、定着温度が低すぎる場合)があった。上記のヒータの温度制御では、面積率が同じであっても、トナーの転写量が偏っているほど(結合率が高い程)、目標温度を高く設定する(ヒータ206cの温度を高くする)ので、目標温度が不必要に低くなりすぎる、または、不必要に高くなりすぎることが防止される。また、結合率が同じであっても、面積率が異なれば、当然連続する有効ドットの数は異なる。上記のヒータの温度制御では、結合率が同じであっても、面積率が大きければ、目標温度を高く設定するので、目標温度が不必要に低くなりすぎる、または、不必要に高くなりすぎることが防止される。以上のように、本実施形態では、適切な目標温度の設定が行われることになる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態では、上記の処理によって、偏り特定部140aは、用紙3の所定領域(本実施形態では、印刷画像全体を印刷する領域)におけるトナーの転写量の偏り(本実施形態では、有効ドットの結合率によって表されている)を印刷画像情報(本実施形態では、ドットパターンデータ)における有効ドットの偏りに基づいて特定する。なお、トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように用紙3に転写される。また、温度制御部140bは、前記の所定領域に転写されたトナーを用紙3に定着させるためのヒータ206bの温度を、偏り特部140aが特定した偏りに応じて制御する。これによって、目標温度、つまり、実際のトナー定着温度を、上記のように、トナーの定着に適した温度にすることができ、トナーの定着において、ヒータ206cの温度を精度良く制御することができる。特に、印刷画像の特徴に応じた、精度の良い制御を行うことができる。また、本実施形態では、ヒータ206cの温度を精度良く制御することによって、不必要な加熱を抑制するため省電力が実現される。また、必要以上な加熱も行われないため、用紙3のカールの防止、印刷装置1の温度上昇が抑えられ、印刷装置1における冷却ファンの回転数を低下させることによる静音化等が実現される。
【0058】
なお、トナーの転写量の偏りは、例えば、印刷画像全体において最も大きい面積を占めるドットグループを構成する有効ドットの数(最も多く連続する有効ドットの数)によって表されても良い。このようなドットグループの定着に目標温度を合わせれば、他のドットグループが印刷画像において存在したとしても、他のドットグループは前記の目標温度によって用紙3に定着するからである。この場合、有効ドットの数が多ければ目標温度を高くなる。偏り特定部140aは、最も多く連続する有効ドットの数を特定し、温度制御部140bは、この数に基づいて、上記と同様に目標温度を設定する。
【0059】
また、用紙3の所定領域は、印刷画像全体を印刷する領域を、画像の主走査方向(印刷画像における一ラインの方向)及び又は副走査方向(主走査方向に直交する方向)に分割した領域(分割領域)であってもよい。副走査方向に分割した領域が所定領域である場合には、例えば、偏り特定部140aは、各所定領域についてトナーの転写量の偏りを特定し、温度制御部140bは、各所定領域の偏りに基づいて、上記と同様に、トナーの定着及び加熱のときの温度制御(ヒータ206cの温度の制御)を各所定領域毎に行う。主走査方向に分割した領域が所定領域である場合には、ヒータ(ヒータ206cに対応)は、複数配置され、例えば、偏り特定部140aは、各所定領域についてトナーの転写量の偏りを特定し、温度制御部140bは、各所定領域の偏りに基づいて、上記と同様に、各ヒータの温度を制御する。このような分割領域についてヒータの温度を制御することによって、きめ細やかなヒータの制御が行われ、省電力化等がより実現される。
【0060】
上記実施形態では、ヒータ制御部140において、プログラムがメモリ等に予め記憶されているものとして説明した。しかし、上述の処理を実行させるためのプログラムを、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read−Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disk)などのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、これをコンピュータにインストールし、上述の処理を実行させてもよい。
【0061】
さらに、インターネット上のサーバ装置が有するディスク装置等にプログラムを格納しておき、例えば、搬送波に重畳させて、コンピュータ(ヒータ制御部140)に、このプログラムをダウンロード等するものとしてもよい。
【0062】
なお、ヒータ制御部140は、エンジンコントローラ部130を構成するハードウェアの少なくとも一部(例えば、ASIC)によって構成されてもよい。この場合、エンジンコントローラ部130をヒータ制御装置として捉えることもできる。また、カラー印刷において、用紙3に転写された各色トナーの定着を各色トナーから構成される1つのトナー像に対して行う場合、この1つのトナー像について上記実施形態を適用することが望ましい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・印刷装置、100・・・コントローラ部、110・・・I/Fコントローラ部、120・・・ビデオI/Fコントローラ部、130・・・エンジンコントローラ部、140・・・ヒータ制御部、140a・・・偏り特定部、140b・・・温度制御部、200・・・印刷部、203・・・露光装置、206・・・定着ユニット、206a・・・定着ローラ、206c・・・ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段と、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段と、
を備えることを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
前記ヒータは、略均一の温度で発熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように前記被印刷物に転写され、
前記偏り特定手段は、前記印刷画像情報に基づいて、前記所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記温度制御手段は、前記偏りが大きい程、前記ヒータの温度を高くする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒータ制御装置を備える印刷装置。
【請求項6】
コンピュータを、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段と、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段と、
を備えることを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
前記ヒータは、略均一の温度で発熱する、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記トナーは、印刷画像情報が表す像を形成するように前記被印刷物に転写され、
前記偏り特定手段は、前記印刷画像情報に基づいて、前記所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記温度制御手段は、前記偏りが大きい程、前記ヒータの温度を高くする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒータ制御装置を備える印刷装置。
【請求項6】
コンピュータを、
被印刷物の所定領域におけるトナーの転写量の偏りを特定する偏り特定手段、
前記所定領域に転写された前記トナーを前記被印刷物に定着させるためのヒータの温度を、前記偏り特定手段が特定した前記偏りに応じて制御する温度制御手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−48043(P2012−48043A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191080(P2010−191080)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000104124)カシオ電子工業株式会社 (601)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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