説明

ヒートシンク付リードフレーム材の製造方法

【課題】圧延成型では、薄板部に変形が発生したり、厚板部と薄板部の境界にくびれ等の欠陥が発生して厚板部のピッチがずれてしまい正常な圧延ができない。
【解決手段】下金型10に厚板部6と相補的な複数の凹溝2を所定のピッチで予め形成しておき、条材3を下金型10と平型1a,1bからなる上金型1の間に間欠的に送り込み、条材3が停止しているとき、下金型10と平型1bの押圧によって条材3に凹溝2に応じた厚板部6を形成し、上金型10と平型1aの押圧によって凹溝2で先に形成した厚板部6を拘束して厚板部6を所定のピッチに維持するようにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒートシンク付リードフレーム材の製造方法に関し、特に、ヒートシンク部の4方向にリード部を有し、ヒートシンク部となる厚板部のピッチの精度が良いヒートシンク付リードフレーム材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体の高出力化,高集積化に伴い、熱放散性に優れたヒートシンクをパッケージ中に埋め込んだ半導体装置が実用化されている。その種の半導体装置に使用されるリードフレーム材は、ヒートシンク部となる厚板部とリード部となる薄板部を一体化した異形断面条から製造される。
【0003】この異形断面条では、薄板部は板幅方向の片側または両側に設けられ、厚板部は他域または中央部に設けられる。この異形断面条の製造方法としては、成形方向に側面逃げ角を有する型溝を設けたV型ダイスおよび平ロールによる成型法や、最終成型時の異形断面条の各部の厚み比の断面を有する素材条を押出成形した後に孔型ロールによって仕上げ圧延する方法や、圧延方向に少しずつ形状を変えた複数の溝付ロールを順次配置し、これらの溝付ロールにより異形断面条を圧延する方法,等がある。
【0004】しかし、板幅の片側または両側に薄板部がある異形断面条の場合、厚板部をヒートシンクとして用い、薄板部をリード部として用いるものであるため、リード部を1方向あるいは2方向にしか出すことができず、多ピン数を必要とする近年の半導体装置の高集積化に充分に対応することができない。
【0005】そこで、ヒートシンクを中心に4方向にリード部を配した異形断面条によってリードフレーム材を製造する方法が考えられている。その方法としては、両側に薄板部がある異形断面条の厚板部を規定のピッチで切削し断続的に厚板部を残して切削部をリード部として形成する切削法、規定のピッチで□型の溝を設けたロールと平ロールを用いた圧延により圧延方向に規定のピッチで他の部分よりも厚いヒートシンク部を断続的に成型する圧延法、等がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のリードフレーム材の製造方法によると、(1)切削法では、素材を切削するため歩留りが悪く、また、リードフレームの表面に切削傷が残るため品質上リードフレーム材に適さないという問題がある。
(2)圧延法では、溝の部分から厚板部の材料が抜けるときに、ヒートシンク部のエッジを削ってしまうため、所定の形状を得ることが難しく、また、リード部とヒートシンク部の板厚比が大きいと、加工度差が大きくなるため、薄板部に波打ちが発生したり、厚板部と薄板部の境界にくびれ等の欠陥が発生して、厚板部のピッチがずれてしまい、正常な圧延ができないという問題がある。
【0007】
【発明の目的】従って、本発明の目的は、ヒートシンク部の4方向にリード部を有し、ヒートシンク部となる厚板部のピッチの精度が良いヒートシンク付リードフレーム材の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を実現するために、リードフレームの基材となる金属条材を押圧加工して前記金属条材の片面にヒートシンク部となる厚板部を島状に成形し、前記ヒートシンクの周囲にリード部となる薄板部を成形するヒートシンク付リードフレーム材の製造方法において、所定の位置に第1の金型を配置し、バネ機構で保持される弾性型と前記バネ機構で保持されない非弾性型からなる第2の金型を前記第1の金型との間に所定の空間を有するように前記第1の金型に対向して配置し、前記第1の金型あるいは前記第2の金型の前記弾性型および前記非弾性型に前記厚板部と相補的な複数の凹溝を所定のピッチで予め形成しておき、前記金属条材を前記第1の金型および前記第2の金型の前記空間に所定のピッチで間欠的に送り込み、前記金属条材が停止しているとき、前記第1の金型と前記第2の金型の前記非弾性型の押圧によって前記金属条材に前記凹溝に応じた前記厚板部を形成し、かつ、前記第1の金型と前記第2の金型の前記弾性型の押圧によって前記凹溝が先に形成された前記厚板部を拘束して前記厚板部を所定のピッチに維持することを特徴とするヒートシンク付リードフレーム材の製造方法を提供するものである。
【0009】以上の構成において、前記弾性型は、前記非弾性型より高さを高くするように構成するのが望ましく、また、前記金属条材の送り込みは、前記凹溝の前記所定のピッチの整数倍のピッチで行うように構成するのが望ましい。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0011】ここで、図1および図2は、本発明のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法を示す図であり、図3(a)は、本発明の製造方法により製造されるリードフレーム材の外観を示す斜視図であり、(b)はリードフレーム材の一部断面図である。
【0012】図1に示すように、上金型1と下金型10が一対で金型を構成しており、下金型10には、複数個の凹溝2が被加工材料となる条材3の長手方向に対してピッチP1 で設けられている。この凹溝2は、図3に示すヒートシンク部となる厚板部6の形状にあわせて設けたものである。また、上金型1は、下金型10との対向面が平面の2分割された平型1a,1bからなり、平型1aはウレタンゴム等よりなるバネ機構4を介してベース7に固定されている。従って、このバネ機構4の介在により、平型1aの高さはhだけ平型1bより高くなっている。この上金型1および下金型10は、共に適切な方法によってプレス機(図示せず)に固定されて上下に開閉運動を繰り返す。なお、複数個の凹溝2は上金型1あるいは下金型10のどちらの金型に設けてあっても良い。
【0013】以上の構成に基づいて、本発明の動作を以下説明する。まず、図1の状態で、条材3を上金型1と下金型10の間にピッチP1 だけ送り込み、次に、図2に示すように、上金型1と下金型10によって条材3をプレスする。このとき、平型1aの高さが平型1bより高い分、平型1bよりも先に平型1aが条材3に接触するが、バネ機構4のバネ定数と変位から得られる荷重により先の成形工程で成形された厚板部6を拘束する。その後、次の厚板部6の成形を平型1bが行う。
【0014】上金型1と下金型10のプレスによって、条材3を規定の押し込み量まで加工した後、再び上金型1と下金型10を開き、図1の状態に戻る。条材3の送りは、先加工と次加工の間で条材3の拘束がない間に行う。このとき、条材3の送りピッチは、ピッチP1 あるいはその整数倍である。このようにすることで、先に成形された厚板部6を下金型10に設けた凹溝2で拘束し、加工時の長手方向の伸びを抑えることができる。
【0015】次に具体的な数値をあげて説明する。まず、厚さ0.4mmの条材3を準備した。そして、図3(a)における厚板部6の大きさを7mm×7mmとし、厚さt1 を0.5mmとした。この際、図3(b)に示すように、厚板部6のエッジ角度θが5度程度になるように凹溝2の形状を決めた。この傾斜角度は、厚板部6の用途に応じて変更できるが、加工が終わったときに厚板部6が下金型10の凹溝2から抜けやすいように、適度な角度を設けるほうが望ましい。
【0016】次に、凹溝2を3つ設けた下金型10を用意し、下金型10の凹溝2のピッチP1 を25mmになるように配置した。また、条材3の送りピッチは25mmとした。そして、2分割された平型1a,1bからなる上金型1を用意し、下金型10と対向して配置した。平型1aはウレタンゴム等よりなるバネ機構4を介してベース7に固定されており、平型1bよりh=5mm程度高くしてある。ここで、厚さ10mmのウレタンゴムを用いると500kgf程度の力で2番目以降の厚板部6を拘束することになる。
【0017】そこで、まず、条材3を上金型1および下金型10の間に通し、上金型1および下金型10によって条材3のプレス加工を行った。条材3は、平型1bと下金型10のプレス加工により、規定の押し込み量まで加工され、第1番目の厚板部6を形成した。その後、上金型1および下金型10を開き、条材3を25mmのピッチで送った。そして、再度、上金型1および下金型10によって条材3のプレス加工を行った。このとき、平型1aが平型1bよりも先に条材3に接触して条材3を押圧し、先に形成された厚板部6をバネ機構4の弾性力を利用して凹溝2により拘束した。遅れて平型1bが条材3に接触し、押圧して第2番目の厚板部6を成形した。同様の工程で条材3のプレス加工を繰り返した。その結果、図3(a)に示すように、7mm×7mmの大きさを有し、厚さt1 =0.5mmの厚板部6がピッチP2 =25mm(=P1 )で成形され、その周囲に厚さt2=0.25mmの薄板部5が成形された。
【0018】このように、条材3の送りピッチを厚板部6のピッチ、即ち、25mmとしたので、厚板部6は下金型10に設けた凹溝2によって2回拘束される。この拘束により、加工時の長手方向の伸びが制御され、厚板部6のピッチの精度が高くなる。
【0019】以上のような方法で、厚板部のピッチ精度がよいヒートシンク付リードフレーム材を得ることができる。
【0020】なお、以上の実施の形態においては、具体的な数値をあげて説明したが、本発明は、言うまでもなくこの数値に限定されるものではない。
【0021】
【発明の効果】以上述べたように、本発明のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法によると、第1の金型と第2の金型の非弾性型の押圧によって金属条材に厚板部を形成し、第1の金型と第2の金型の弾性型の押圧によって先に形成された厚板部を凹溝が拘束して厚板部を所定のピッチに維持するようにしたので、厚板部のピッチの精度が良いヒートシンク付リードフレーム材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法を示す図であり、上下の金型が開いて条材を長手方向に送出する状態を示す。
【図2】本発明のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法を示す図であり、上下の金型をプレスして条材を加工する状態を示す。
【図3】本発明の製造方法により製造されるヒートシンク付リードフレーム材の外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 上金型
1a 平型
1b 平型
2 凹溝
3 条材
4 バネ機構
5 薄板部
6 厚板部
7 ベース
10 下金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】リードフレームの基材となる金属条材を押圧加工して前記金属条材の片面にヒートシンク部となる厚板部を島状に成形し、前記ヒートシンクの周囲にリード部となる薄板部を成形するヒートシンク付リードフレーム材の製造方法において、所定の位置に第1の金型を配置し、バネ機構で保持される弾性型と前記バネ機構で保持されない非弾性型からなる第2の金型を前記第1の金型との間に所定の空間を有するように前記第1の金型に対向して配置し、前記第1の金型あるいは前記第2の金型の前記弾性型および前記非弾性型に前記厚板部と相補的な複数の凹溝を所定のピッチで予め形成しておき、前記金属条材を前記第1の金型および前記第2の金型の前記空間に所定のピッチで間欠的に送り込み、前記金属条材が停止しているとき、前記第1の金型と前記第2の金型の前記非弾性型の押圧によって前記金属条材に前記凹溝に応じた前記厚板部を形成し、かつ、前記第1の金型と前記第2の金型の前記弾性型の押圧によって前記凹溝が先に形成された前記厚板部を拘束して前記厚板部を所定のピッチに維持することを特徴とするヒートシンク付リードフレーム材の製造方法。
【請求項2】前記弾性型は、前記非弾性型より高さを高くした請求項1のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法。
【請求項3】前記金属条材の送り込みは、前記凹溝の前記所定のピッチの整数倍のピッチで行われる請求項1のヒートシンク付リードフレーム材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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