説明

ビオチンおよび光親和性基を含む、マクロライド標的同定用のマクロライド化合物

本発明は、一般構造Iによって表される新たなマクロライド化合物(式中、Mは、マクロライドであり、Pは、ビオチンを含む光親和性基保持サブユニットであり、Lは、連結分子である)、ならびにそれらの医薬として許容できる塩および溶媒和物、それらを調製するためのプロセスおよび中間体、ならびにマクロライド標的同定用のこれらの化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている、2005年1月14日に出願した米国仮出願第60/644,333号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、一般構造Iによって表される新たなマクロライド化合物、それらの医薬として許容できる塩および溶媒和物、それらを調製するためのプロセスおよび中間体、ならびにマクロライド標的同定用のこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
マクロライド抗生物質は、対象の様々な細胞内、特に単核末梢血液細胞、ならびに腹腔および肺胞マクロファージなどの食細胞内に優先的に蓄積する(Gladue,R.P.他、Antimicrob.Agents Chemother.1989、33、277〜282;Olsen,K.M.他、Antimicrob.Agents Chemother.1996、40、2582〜2585)。いくつかのマクロライドの炎症効果が文献に記載されている。例えば、エリスロマイシン誘導体(J.Antimicrob.Chemother.1998、41、37〜46;WO特許出願第00/42055号)およびアジスロマイシン誘導体の抗炎症効果が記載されている(EP Pat.Br.0283055)。いくつかのマクロライドの抗炎症効果は、マウスにおけるザイモサン誘発性腹膜炎(J.Antimicrob.Chemother.1992、30、339〜348)およびラット気管におけるエンドトキシン誘発性好中球蓄積(J.Immunol.1997、159、3395〜4005)におけるなどの実験動物モデルにおけるin vitroおよびin vivo研究からも知られている。インターロイキン8(IL−8)(Am.J.Respir.Crit.Care.Med.1997、156、266〜271)およびインターロイキン5(IL−5)(EP Pat.Br.0775489およびEP Pat.Br.771564)などのサイトカインに対するマクロライドの調節効果も同様に知られている。
【0004】
マクロライドは、炎症部位に動員された免疫系細胞、特に食細胞内に蓄積する特性を有する:Pascual A.他 Clin.Microbiol.Infect.2001、7、65〜69)。(Uptake and intracellular activity of ketolide HMR3647 in human phagocytic and non−phagocytic cells);Hand W.L.他、Int.J.Antimicrob.Agents、2001、18、419〜425。(Characteristics and mechanisms of azithromycin accumulation and efflux in human polymorphonuclear leukocytes);Amsden G.W.Int.J.Antimicrob.Agents、2001、18、11〜15。(Advanced−generation macrolides:tissue−directed antibiotics);Johnson J.D.他、J.Lab.Clin.Med.1980、95、429〜439。(Antibiotic uptake by alveolar macrophages);Wildfeuer A.他、Antimicrob.Agents Chemother.1996、40、75〜79。(Uptake of azithromycin by various cells and its intracellular activity under in vivo conditions);Scorneaux B.他、Poult.Sci.1998、77、1510〜1521。(Intracellular accumulation,subcellular distribution、and efflux of tilmicosin in chicken phagocytes);Mtairag E.M.他、J.Antimicrob.Chemother.1994、33、523〜536。(Investigation of dirithromycin and erythromycylamine uptake by human neutrophils in vitro);Anderson R.他、J.Antimicrob.Chemother.1988、22、923〜933。(An in−vitro evaluation of the cellular uptake and intraphagocytic bioactivity of clarithromycin(A−56268,TE−031,a new macrolide antimicrobial agent);Tasaka Y.他、Jpn.J.Antibiot.1988、41、836〜840。(Rokitamycin uptake by alveolar macrophages);Harf R.他、J.Antimicrob.Chemother.1988、22、135〜140。(Spiramycin uptake by alveolar macrophages)。
【0005】
マクロライド抗生物質は、それらの殺菌活性から明らかに分離した慢性気道炎症の疾患の管理における有望な役割を有しているように見える。過去15年にわたり、ヒト臨床試験における、特にびまん性汎細気管支炎および嚢胞性線維症などの疾患におけるそれらの成功により、抗生物質のこのファミリーが免疫応答を調節する機序を決定するためのin vitro検討とin vivo検討の両方が促されてきた。大部分の証拠は、マクロライドが、殺菌/静菌効果と無関係に起きる炎症カスケードの複数の成分を直接標的とすることを示唆している(W.C.Tsai、Current Pharmaceutical Design、2004、10、3081〜3093)。
【0006】
肺の中で炎症を制御する機序を理解することが大いに必要である。この要請は、肺生物学者が、肺炎症の状態においてマクロライドが免疫調節効果を発揮する1つまたは複数の機序を解明し、解明された1つまたは複数の機序に基づいて可能性のある治療戦略を確立するのに必要なツールを提供するはずの細胞生物学および分子生物学における革命と一致する。例えば、アジスロマイシンは、HPLC法を組み合わせた透析法を用い、血清由来のα−酸性糖蛋白と特異的に結合することが分かった(Castearena他、J.Chemother.1995、7 Suppl 4:26〜8)。
【0007】
光親和性標識は、生体分子と特異的に関係している光化学的に反応性の分子を、通常は中間体を介し、標識を生体分子に共有結合させるために光励起する技法である(IUPAC Compendium of Chemical Terminology、第2版、1997)。光親和性標識は、標的の生物学的巨大分子系の特定の機能に関係している構造的特徴を解析するために広く使用される生物科学における重要な方法論である。この方法では、極めて反応性に富む中間体、通常は光親和性プローブの鍵構造としてのナイトレンおよびカルベンを生成する光反応性基が必要となる(Hatanaka Y.他、Heterocycles、1993、35、997〜1004)。
【0008】
マクロライド光親和性類縁体の使用により、分子レベルにおける蛋白−マクロライド相互作用の研究が可能になる。光親和性標識技法を用い、どの特異的マクロライド結合蛋白が薬物の標的であるかを決定することができる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
当技術分野の既知の状況および確立された状況によれば、本発明の対象である式Iによって表される化合物、それらの薬理学的に許容できる塩および蛋白同定のためのそれらの使用方法はこれまで記載されたことがない。
【0010】
本発明は、単一試薬の使用により、他の分子と光親和性架橋され、受容体であり、共有結合複合体中にビオチンハンドルを同時に導入する能力のあるマクロライドコンジュゲートを提供する。これにより、適当なアビジン誘導体を用いるインタクトな、または後で断片化される複合体の単離および/または同定が可能になる。
【0011】
本発明の対象であるどの化合物も、分子レベルでの蛋白−マクロライド相互作用の研究における使用について記載されたことはない。
【0012】
本発明の一態様において、式Iのコンジュゲート、ならびに医薬として許容できるそれらの塩、プロドラッグ、および溶媒和物は、以下に示すように表され、
【0013】
【化1】


式中、
Mは、炎症細胞において蓄積性を有するマクロライドサブユニットを表し、Pは、ビオチンサブユニットまたはビオチンおよび光親和性基を含むサブユニットを表し、Lは、MとPを共有結合的に連結するリンカーを表す。
【0014】
本発明のハイブリッド化合物に適しているマクロライドサブユニットは、多員(multi−member)ラクトン環分子から選択することができるが、それらに限定されるものではなく、「員(member)」は、環内の炭素原子またはヘテロ原子を指し、「多(multi)」は、約10を超える、好ましくは10〜約50の数であり、12−、14−、15−、16−、17−および18−員ラクトン環マクロライドであることがより好ましい。14−および15−員環マクロライドサブユニットが特に好ましく、アジスロマイシンおよびその誘導体ならびにエリスロマイシンおよびその誘導体が最も好ましい。
【0015】
マクロライドサブユニットを選択することができる分子のより具体的な非限定的例は、以下である。
(i)アザライドを含むマクロライド抗生物質、例えば、エリスロマイシン、ジリスロマイシン、アジスロマイシン、9−ジヒドロ−9−デオキソ−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシン、HMR3004、HMR3647、HMR3787、ジョサマイシン、エリスロマイシルアミン、ABT773フルリスロマイシン、クラリスロマイシン、タイロシン、チルミコシン、オレアンドマイシン、デスミコシン(desmycosin)、CP−163505、ロキシスロマイシン、ミオカマイシンおよびロキタマイシンならびにケトライド(例えば、3−ケトン)、ラクタム(例えば、8a−または9a−ラクタム)および1つまたは複数の糖部分を欠く誘導体などのそれらの誘導体。
(ii)FK506、シクロスポリン、アンホテリシンおよびラパマイシンなどのマクロライド免疫抑制剤。
(iii)バフィロマイシン、コンカナマイシン、ナイスタチン、ナタマイシン、カンジシジン、フィリピン、エトルスコマイシン(etruscomycin)、トリコマイシンなどの宿主細胞阻害特性のあるマクロライド抗真菌剤。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
市販されていない上記マクロライドを合成するための方法および一般的なマクロライドの合成操作は、当業者に知られているか、あるいは、Denis A.他、Bioorg.& Med.Chem.Lett 1999、9、3075〜3080;Agouridas C.他、J.Med.Chem.1998、41、4080〜4100;およびEP−00680967(1998);Sun Or Y.他、J.Med.Chem.2000、43、1045〜1049;US−05747467(1998);McFarland J.W.他、J.Med.Chem.1997、40、1041〜1045;Denis A.他、Bioorg.& Med.Chem.Lett.1998、8、2427〜2432;WO−09951616(1999);Lartey他、J Med Chem.1995、38、1793〜1798;EP0984019;WO98/56801中に見出すことができ、それらの各々は、全体として参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0017】
追加の適当なマクロライドが知られており、いくつかは、全体として参照により組み込まれているBryskier,A.J.他、Macrolides,Chemistry,Pharmacology and Clinical Use;Arnette Blackwell:Paris、1993、pp485〜491、14(R)−ヒドロキシクラリスロマイシン、エリスロマイシン−11,12−カーボネート、トリ−O−アセチルオレアンドマイシン、スピラマイシン、ロイコマイシン、ミデカマイシン、ラサラマイシン(rasaramycin);Ma,Z.他、Current Medicinal Chemistry−Anti−Infective Agents、2002、1、15〜34;全体として参照により組み込まれているピクロマイシン(pikromycin)、ナルボマイシン、HMR−3562、CP−654743、CP−605006、TE−802、TE−935、TE−943、TE−806、6,11−架橋ケトライド、CP−544372、FMA−199、A−179461;および全体として参照により組み込まれているRomo,D.他、J.Am.Chem.Soc.1998、120;12237〜12254に開示されている。特に、Bryskier,他のpp487〜491における14−および16−員環マクロライドについての構造および誘導体、ならびにMa他における、特にすべての構造表およびすべての反応スキームにおける様々なケトライドの誘導体および合成を参照されたい。サブユニットPにコンジュゲートさせた後のこれらすべてのマクロライドは、本発明の範囲内にある。上記の具体的に命名または言及したマクロライド化合物は、市販されているか、あるいはそれらの合成方法は、知られている。
【0018】
好ましい実施形態において、本発明は、式Iによって表される化合物、ならびにそれらの塩、プロドラッグおよび溶媒和物の使用に関し、式中、Mは、式IIによって表されることが最も好ましい14−または15−員ラクトン環マクロライドサブユニットを具体的に表し、
【0019】
【化2】

II
式中、
(i)ZおよびWは、独立して、
【0020】
【化3】


または結合であり、
およびRは、独立してHまたはアルキル(好ましくはメチルまたはH)であり、
は、OH、OR、アルコキシまたは置換アルコキシ(Syn配置かAnti配置のどちらか、またはそれらの混合物)、
は、H、R、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、または−C(=X)−NRであり、
Xは、OまたはSであるが、
ただし、ZおよびWは、両方が同時に
【0021】
【化4】


または結合であることはなく、
(ii)UおよびYは、独立して、H、ハロゲン、アルキル、またはヒドロキシアルキル(好ましくはH、メチル、またはヒドロキシメチル)であり、
(iii)Rは、ヒドロキシ、OR、−O−S、または=Oであり、
(iv)Sは、Hまたは式:
【0022】
【化5】


のC/5位における糖部分(例えば、デソサミン基)であり、
式中、
およびRは、両方とも水素であるか、あるいは一緒に結合を形成するか、あるいはRは、水素であり、Rは、−N(CH)Rであり、
は、R、Rまたは−C(O)Rであり、Rは、水素またはシクロアルキル(好ましくはシクロヘキシル)またはアルキル(好ましくはC〜Cアルキル)またはアルケニル(好ましくはC〜C−アルケニル)またはアルキニル(好ましくはC〜C−アルキニル)アリールまたはヘテロアリールまたはC〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、アリールもしくはヘテロアリールで置換されているアルキルであり(Rは、水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、−C(O)CH、−CH−フェニル、またはシクロヘキシルであることが好ましい)、
10は、水素またはRであり、
(v)S糖部分は、式
【0023】
【化6】

の、R3’が、Hまたはメチルであってよく、R11が、水素またはR、−C(O)(CHNRであるか、あるいはO−R11が、R12およびC/4’’炭素原子と共に>C=Oまたはエポキシ基を形成する基であり、R12が、水素またはO−R11およびC/4’’炭素原子と共に>C=Oまたはエポキシ基を形成する基であり、
qが、1〜6の整数の意味を有する(例えば、クラジノシル基であり)、
(vi)Rは、H、ヒドロキシ、OR基、アルコキシ(好ましくはC〜Cアルコキシ、最も好ましくはメトキシ)または置換アルコキシであり、
(vii)Aは、Hまたはメチルであり、
(viii)Bは、メチルまたはエポキシであり、
(ix)Eは、Hまたはハロゲン(好ましくはフッ素)であり、
(x)Rは、ヒドロキシ、OR基またはアルコキシ(好ましくはC〜Cアルコキシ、最も好ましくはメトキシ)、置換アルコキシであるか、あるいはRは、Rと結合して「架橋」(例えば、環状カーボネートまたはカルバメート)を形成することができる基であるか、あるいはWまたはZが
【0024】
【化7】

の場合、Rは、WまたはZと結合して「架橋」(例えば、環状カルバメート)を形成することができる基であり、
(xi)Rは、C〜Cアルキル(好ましくはメチル)であり、
(xii)Rは、H、ヒドロキシ、OR基、C〜Cアルコキシ、置換アルコキシまたはRと結合して架橋(例えば、環状カーボネートまたはカルバメート)を形成してもよい基であり、
(xiii)Rは、HまたはC〜Cアルキル(好ましくはメチルまたはエチル)であり、
サブユニットMは、連結基Lを介してサブユニットSに連結する連結部位を有し、連結部位は、以下の
、S上にある任意の反応性のヒドロキシ、N、もしくはエポキシ基、またはSまたはSが切断されている場合にはアグリコン酸素、すなわち
a.ZまたはW上にある反応性の>N−Rまたは−NRまたは=O基、
b.R、R、R、およびRのうちのいずれか1つにある反応性のヒドロキシ基、
c.ヒドロキシまたは−NR基にまず誘導体化し、次いでKと連結することができ(例えば、
【0025】
【化8】


Kは、連結分子Lの一部であるその他の基のうちの1つまたは複数にある。
【0026】
式IIのマクロライドサブユニットには、1つまたは複数のR基が独立して存在することがあり、Rは、アルキル(好ましくはメチル)、アルカノイル(好ましくはアセチル)、アルコキシカルボニル(好ましくはメトキシカルボニルまたはtert−ブトキシカルボニル)、アリールメトキシカルボニル(好ましくはベンジルオキシカルボニル)、アロイル(好ましくはベンゾイル)、アリールアルキル(好ましくはベンジル)、アルキルシリル(好ましくはトリメチルシリル)またはアルキルシリルアルコキシアルキル(好ましくはトリメチルシリルエトキシメチル)から選択することができる保護基を表す。
【0027】
およびRがヒドロキシルであり、Sが、式(R10、R、Rは、前に定義した通りである)
【0028】
【化9】

の糖部分である式IIによるセミグリコン(semiglycone)化合物も好ましい。
【0029】
が、Hであり、Rが、O−Sであり、Sが、式(R、R1112は、前に定義した通りである)
【0030】
【化10】

の糖部分である式IIによるセミグリコン化合物も好ましい。
【0031】
が、水素であり、Rが、ヒドロキシルである式IIによるアグリコン化合物も好ましい。
【0032】
リンカーL
Lは、必要な間隔を提供するどんなタイプのスペーサー分子であってもよいスペーサーまたはリンカー分子である。例えば、Lは、式IIIAまたはIIIBによって表される連結基であるように選択することができ、
IIIA X−(CH−X または
IIIB X−(CH−Q−(CH−X
式中、
は、−CH、−CH−NH−、−C(O)−、−OC(O)−、=N−O−、−OC(O)NH−または−C(O)NH−から選択され、
は、−NH−、−CH−、−NHC(O)−、−C(=O)−、−O−または−OC(O)−から選択され、
Qは、−NH−、−CH−または−S−S−であり、
各−CH−または−NH−基は、C〜C−アルキル、C〜C−アルケニル、C〜C−アルキニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NHRによって所望により置換されており、Rは、C〜C−アルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよく、
記号mおよびnは、独立して、0〜8の整数であるが、
ただし、Q=NHの場合、nは、ゼロであることはない。
【0033】
連結基の上記定義は、Pと式IIのマクロライドとのコンジュゲートにとってばかりでなく、式I内の任意のコンジュゲートにとっても好ましい。他の連結基も、必要なスペーサーを提供する限りは使用することができる。好ましいリンカー分子は、1〜60個の炭素原子(鎖内のヘテロ原子を数えずに)の長さを有する分子であり、2〜20個の炭素原子の長さを有する分子が最も好ましい。マクロライド部分に対するLの連結は、9a位の環窒素原子を介してか、11位および6位のヒドロキシ基を介してか、デソザミン(desozamine)糖部分の2’ヒドロキシまたは3’アミノ基を介してか、クラジノース糖の4’’ヒドロキシ基を介してか、M部分が、アグリコンであるか、あるいはデソザミンおよびクラジノース糖基のうちの1つを失っている場合には、マクロライド環の5または3位に作られたOH基を介してかのいずれかで行うことができる。リンカーは、当技術分野においてよく知られているように、式Iの一方のサブユニットをもう一方のサブユニットと連結する役目を果たすことができる。
【0034】
サブユニットP
Pは、電磁放射線によって化学的に架橋することができる基と、ビオチンまたはイミノビオチンとを含む光親和性サブユニットである。光親和性サブユニットに含まれているビオチンまたはイミノビオチンの知られている誘導体も本発明に企図されている。
【0035】
好ましい実施形態において、Pは、下部構造IVによって表すことができるビオチンまたはイミノビオチンサブユニットを含む光親和性基を表し、
【0036】
【化11】

IV
式中、
は、例えば、Xにおける共有結合連結鎖Lであり、
Rは、O(ビオチン)またはNH(イミノビオチン)であるか、あるいは
Pは、ビオチンおよび光親和性基を含み、下部構造Vによって表すことができるサブユニットを表し、
【0037】
【化12】

式中、
は、例えば、Xにおける共有結合連結鎖Lである。
【0038】
他の適当な光反応性基は、例えば、参照により組み込まれているS.A.Fleming、Tetrahedron、1995、51、12479〜12520(Chemical Reagents in Photoaffinity Labeling)に記載されている。それらには、フェニルアジド、フルオロフェニルアジド、ニトロフルオロフェニルアジド、p−アジドアニリン、p−アジドベンゾイル、アリールジアジリン、ジアゾケトン、ベンゾフェノンが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
本明細書に含まれる式における肉太の結合は、紙面上に隆起した結合を示し、ダッシュ記号で描かれた結合は、紙面下の結合を示し、一方、破線は、紙面下か紙面上のどちらかであってよい結合を示す。平行な実線および破線は、単結合か二重結合のどちらかを表す。本明細書で明示的に別段の定めをした場合を除き、以下の用語は、以下でそれらに割り当てられた意味を有する。
【0040】
「アルキル」は、1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の飽和一価炭化水素基を意味する。好ましい直鎖または分岐鎖アルキルには、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチルが含まれる。メチルが最も好ましい。アルキル基は、ハロゲン(好ましくはフッ素または塩素)、ヒドロキシ、アルコキシ(好ましくはメトキシまたはエトキシ)、アシル、アシルアミノ、シアノ、アミノ、N−(C1〜C4)アルキルアミノ(好ましくはN−メチルアミノまたはN−エチルアミノ)、N,N−ジ(C1〜C4−アルキル)アミノ(好ましくはジメチルアミノまたはジエチルアミノ)、アリール(好ましくはフェニル)またはヘテロアリール、チオカルボニルアミノ、アシルオキシ、アミノ、アミジノ、アルキルアミジノ、チオアミジノ、アミノアシル、アミノカルボニルアミノ、アミノチオカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールオキシアリール、ニトロ、カルボキシル、カルボキシルアルキル、カルボキシル−置換アルキル、カルボキシル−シクロアルキル、カルボキシル−置換シクロアルキル、カルボキシルアリール、カルボキシル−置換アリール、カルボキシルヘテロアリール、カルボキシル−置換ヘテロアリール、カルボキシル複素環式、カルボキシル−置換複素環式、シクロアルキル、シクロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、ヘテロシクリルオキシ、およびオキシカルボニルアミノを含む1から5個までの置換基で置換されていてもよい。そのような置換アルキル基は、「アルキル」の本定義の範囲内にある。アルキルの本定義は、アルコキシなどのアルキル部分を有する他の基に引き継がれる。
【0041】
「アルケニル」は、少なくとも1個の二重炭素−炭素結合を有する2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を意味する。アルケニル基は、アルキルと同じ基で置換されていてもよく、そのような所望により置換されたアルケニル基は、用語「アルケニル」に包含される。エテニル、プロペニル、ブテニルおよびシクロヘキセニルが好ましい。
【0042】
「アルキニル」は、少なくとも1個、好ましくは3個程度の三重炭素−炭素結合を含む2〜10個、好ましくは2〜6個の炭素原子の直鎖または分岐鎖を有する直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を意味する。アルキニル基は、アルキルと同じ基で置換されていてもよく、置換された基は、アルキニルの本定義の範囲内にある。エチニル、プロピニルおよびブチニル基が好ましい。
【0043】
「シクロアルキル」は、アリールまたはヘテロアリール基と所望により縮合している単一の環を有する3〜8個の炭素原子を有する環状基を意味する。シクロアルキルは、飽和環と所望により縮合していてもよい。シクロアルキル基は、以下で「アリール」について規定されているように置換されていてもよく、置換シクロアルキル基は、「シクロアルキル」の本定義の範囲内にある。好ましいシクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルおよびシクロヘプチルである。シクロアルキルが1〜6個の炭素を有するアルキル鎖を介して結合しているアルキルシクロアルキルも含まれる。
【0044】
「アリール」は、フェニルなどの単一の環またはナフチルなどの複数の縮合環を有する6〜14個の炭素原子を有する不飽和芳香族炭素環式基を意味する。アリールは、脂肪族またはアリール基と所望によりさらに縮合していてもよいか、あるいは、ハロゲン(フッ素、塩素および/または臭素)、ヒドロキシ、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシもしくはアリールオキシ、C〜Cアルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、シアノ、一級もしくは非一級アミノ、ハロアルキル、またはアルキルアミノなどの1個または複数の置換基で置換されていてもよい。
【0045】
「ヘテロアリール」は、2〜10個の炭素原子およびO、SまたはNなどの1〜4個のヘテロ原子を有する単環式または二環式芳香族炭化水素環を意味する。ヘテロアリール環は、別のヘテロアリール、アリールまたは脂肪族環式基と所望により縮合していてもよい。このタイプの例は、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、インドール、ピリジン、オキサゾール、チアゾール、ピロール、ピラゾール、テトラゾール、ピリミジン、ピラジンおよびトリアジンであり、フラン、ピロール、ピリジンおよびインドールが好ましい。この用語には、上記でアリールについて規定されているのと同じ置換基で置換されている基が含まれる。
【0046】
「複素環式」は、単一または複数の環および1〜10個の炭素原子および窒素、イオウまたは酸素から選択される1〜4個のヘテロ原子を有する飽和または不飽和基を意味し、縮合環系において、他の1つまたは複数の環は、アリールまたはヘテロアリールであってよい。複素環式基は、アルキル基について規定されているように置換されていてもよく、そのように置換された複素環式基は、本定義の範囲内にある。
【0047】
本明細書で使用する「電磁放射線」は、X線、紫外、可視、赤外、遠赤外、マイクロ波、無線周波、音波および超音波を含むがこれらに限定されない電磁スペクトルのエネルギー波を指す。電磁放射線は、可視(すなわち、少なくとも約4.0×10−5cmから約7.0×10−5cmの波長を有する)または紫外(すなわち、少なくとも約1.0×10−6cmだが約4.0×10−5cm未満の波長を有する)光を含むことが好ましい。本発明は、本化合物の医薬として許容できる塩も包含する。本発明の化合物の医薬として適当な塩には、無機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸または硫酸)または有機酸(例えば酒石酸、酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、コハク酸、メタンスルホン酸、シュウ酸およびp−トルエンスルホン酸)との塩が含まれる。
【0048】
本発明は、式I化合物のプロドラッグ、すなわち、哺乳類の対象に投与された場合、in vivoで式(I)による活性な親薬物を放出する化合物も包含する。式Iの化合物のプロドラッグは、修飾がin vivoで切断されて親化合物を放出するような方法で、式Iの化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製される。プロドラッグには、式I化合物のヒドロキシ、アミノ、またはカルボキシ基が、in vivoで切断されてそれぞれ遊離のヒドロキシル、アミノまたはカルボキシ基を再生することができる任意の基と結合している式Iの化合物が含まれる。プロドラッグの例には、式Iの化合物のエステル(例えば、酢酸エステル、ギ酸エステル、および安息香酸エステル誘導体)、あるいは生理的pHにすると、または酵素作用を介して活性な親薬物に変換される他の任意の誘導体が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明は、式Iの化合物の溶媒和物(好ましくは水和物)またはそれらの塩も包含する。
【0050】
式Iの化合物は、1個または複数のキラリティー中心を有し、個々の置換基の性質に応じて、それらは、幾何異性体を有することもある。空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体は、「立体異性体」と呼ばれる。お互いに鏡像ではない立体異性体は、「ジアステレオマー」と呼ばれ、お互いに重ね合わせることができない鏡像である立体異性体は、「鏡像異性体」と呼ばれる。ある化合物がキラル中心を有する場合、一対の鏡像異性体が可能である。鏡像異性体は、その不斉中心の絶対立体配置によって特徴付けることができ、CahnおよびPrelogのR−およびS−配列ルールによって記載されるか、あるいは、分子が偏光面を回転させる様式により、右旋性または左旋性(すなわち、それぞれ(+)または(−)−異性体と)として表される。キラル化合物は、個々の鏡像異性体か鏡像異性体の混合物のどちらかとして存在することがある。均等な割合の鏡像異性体を含有する混合物は、「ラセミ混合物」と呼ばれる。本発明は、式Iの化合物のすべての個別異性体を包含する。明細書および特許請求の範囲における特定の化合物の記述または命名には、個々の鏡像異性体とそれらのラセミまたはその他の混合物の双方が含まれることを意図している。立体化学の決定および立体異性体の分割のための方法は、当技術分野においてよく知られている。
【0051】
本発明は、オキシムまたは類似の基が存在する場合に認められるシン−アンチ型の立体異性体、およびそれらの混合物も包含する。オキシムの末端二重結合原子のうちの1つに結合している最も高いCahn−Ingold−Prelog順位の基がオキシムのヒドロキシル基と比較される。立体異性体は、オキシムヒドロキシルが、最高順位の基とC=N二重結合を通過する基準面の同じ側にある場合にZ(zusammen=一緒に)またはシンで表され、もう一方の立体異性体は、E(entgegen=反対の)またはアンチで表される。
【0052】
式IのZまたはWが、>C=NRであり、Rが、OH、OR、または置換アルコキシである一実施形態において、化合物は、主にシン異性体である。別の実施形態において、化合物は、主にアンチ異性体である。さらに別の実施形態において、化合物は、2つの異性体の50/50混合物であるか、あるいはシン対アンチ、あるいはアンチ対シンの60/40、70/30、80/20、または90/10などの混合物である。
【0053】
本発明に従って使用することができる式Iの具体的コンジュゲートは、
化合物1、
【0054】
【化13】

化合物2、
【0055】
【化14】

化合物3、
【0056】
【化15】

化合物4、
【0057】
【化16】

化合物5、
【0058】
【化17】

化合物6、
【0059】
【化18】

化合物7、
【0060】
【化19】

化合物8、
【0061】
【化20】

化合物9、
【0062】
【化21】

化合物10、
【0063】
【化22】

化合物11、
【0064】
【化23】


化合物12、
【0065】
【化24】

化合物13、
【0066】
【化25】

化合物14である。
【0067】
【化26】

【0068】
連結部位は、C/3位において;またはS糖のC/3’位におけるアミノ基を介して、あるいはC/11位において、あるいはWもしくはZにおいて、あるいはS糖のC/4’’位を介することが好ましい。
【0069】
本発明の他の態様は、式Iによって表される化合物を調製するためのプロセスに関する。一般に、式Iの化合物は、以下の方法で得ることができる。鎖の一方の端を、マクロライドとまず連結させ、次いで、鎖のもう一方の端を、Pと連結させるか、あるいは、鎖の一方の端を、Pとまず連結させ、次いで、鎖のもう一方の端を、マクロライドと連結させるか、または最後に、鎖の一方の部分を、マクロライドと連結させ、一方、鎖のもう一方の部分をPと連結させ、次いで、鎖部分の遊離末端を、化学的に連結させて鎖Lを形成する。
【0070】
当業者には当然のことながら、式Iの化合物の調製において使用される中間体の保護された誘導体を使用することが望ましいことがある。官能基の保護および脱保護は、当技術分野において知られている方法によって行うことができる。例えば、Green,T.W.;Wuts,P.G.M.、Protective Groups in Organic Synthesis:John Wiley and Sons、New York、1999に記載されているように、ヒドロキシルまたはアミノ基を、任意のヒドロキシルまたはアミノ保護基で保護することができる。上記の式Iに関連する保護基の考察も参照されたい。アミノ保護基は、従来技法によって除去することができる。例えば、アルカノイル、アルコキシカルボニルおよびアロイル基などのアシル基は、加溶媒分解により、例えば、酸性または塩基性条件下の加水分解により除去することができる。アリールメトキシカルボニル基(例えば、ベンジルオキシカルボニル)は、パラジウム炭素などの触媒の存在下での水素化分解により切断することができる。
【0071】
より具体的には、式Iに含まれる化合物は、以下のプロセスによって調製することができる。
a)Xが−NHC(O)−である式Iの化合物は、式VIの化合物(Lは、脱離基(ヒドロキシまたはスルホン化N−ヒドロキシスクシンイミド:スルホ−NHSなど)を表す)と、
【0072】
【化27】

VI
式VIIaによって表されるマクロライド(Kは、マクロライドサブユニットと結合している連結分子Lの一部である)を反応させることによって形成させることができる。
【0073】
【化28】

VIIa
【0074】
この反応は一般に、ハロゲン化物、混合酸無水物などのカルボン酸基の活性化能を有する酸誘導体、ならびに、特に(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド(EDC)などのカルボジイミドおよびベンゾトリアゾールで行われる。この反応は、アルゴンまたは窒素などの不活性雰囲気下で室温にて、有機塩基(例えば、トリエチルアミン)などの塩基の存在下で進行する。この反応を完結させるには、数時間〜数日間を必要とすることがある。
【0075】
例えば、Lが、−K−NHである場合、式Iの化合物は、マクロライド環上の>NH基を>N−K−NH基に誘導体化し、誘導体化したマクロライドを、以下に示すような式VIの化合物と反応させることによって形成させることができる。
【0076】
【化29】

【0077】
例えば、このプロセスは、式IIのマクロライドサブユニット中の>NH基が、C/3’位またはN/9a位で結合している場合に行うことができる。
【0078】
式VIによって表される化合物は市販されているか、あるいは、それらを、付加反応として当技術分野において知られている反応により、サブユニットPから誘導することができる。
【0079】
式VIIaの出発マクロライドの調製は、全体として参照により組み込まれているPCT HR02/0001に記載されている。各々が全体として参照により組み込まれている米国特許第4,474,768号およびBright,G.M.他、J.Antibiot.1988、41、1029〜1047も参照されたい。
【0080】
b)Xが、−OC(O)−であり、Qが、−CH−またはNHであり、Xが、−NH−である式Iによって表される化合物は、アセトニトリルなどの溶媒中で、式
【0081】
【化30】

によって表されるマクロライドサブユニット(4’’は、クラジノース糖などの糖S上の4位である)と、

【0082】
【化31】

によって表される遊離アミノ基を有するサブユニットPを反応させることによって調製し、
【0083】
【化32】

を得ることができる。
【0084】
誘導体化されたサブユニットP(すなわち、P−C(O)−NH−K−NH)は、適切なアミン(連結基−K−NHを有する)を、サブユニットPのカルボン酸基と反応させることによって形成させることができる。
【0085】
c)Xが、−OC(O)NH−であり、Xが、−NH−である式Iによって表される化合物は、以下に示すようにマクロライドサブユニットと遊離アミノ基を有する誘導体化されたサブユニットPを反応させることによって調製することができる。
【0086】
【化33】

【0087】
d)Xが、−OC(O)NH−であり、Xが、−NH−である式Iによって表される化合物は、以下に示すようにマクロライドサブユニットと遊離アミノ基を有する誘導体化されたサブユニットPを反応させることによって調製することができる。
【0088】
【化34】

【0089】
式Iによって表される化合物(M−ビオチン−光親和性基)は、以下に示すようにマクロライドサブユニットVIIaとFmocビオサイチンを反応させることによっても調製することができる。
【0090】
【化35】

【0091】
Fmocビオサイチン(Nα−Fmoc−Nε−ビオチニル−L−リジン)および5−アジド−2−ニトロ安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルは、市販されている(Fluka)。
【0092】
16員環マクロライドは伝統的に、それらのアグリコンの置換パターンに基づいてサブファミリーに分類される。このファミリーの主要な基本型は、ロイコマイシン、スピラマイシンおよびタイロシンによって表すことができる。
【0093】
タイロシンは、16員マクロライドの代表であり、2個の二重結合のある高度に置換されたアグリコン(タイロノリド(tylonolide))および5−ヒドロキシル基に結合している二糖の他に第三のサッカリド置換基(β−D−マイシノース(mycinose))β−D−マイコシン(mycosine)を有する。二糖からマイカロースを加水分解すると、デスマイカロシル(desmycarosyl)−タイロシン(デスマイコシン(desmycosin))が得られた。
【0094】
デスマイコシンにおける修飾の可能な部位:
【0095】
【化36】

【0096】
例えば、16員環マクロライドハイブリッドは、C−20アルデヒド基の還元的アミノ化によって調製することができよう。
【0097】
【化37】

【0098】
この反応は、8a−アザ−ホモデスマイコシンおよびその誘導体(ジヒドロおよびテトラヒドロ誘導体など)のような17員アザライドについても使用できよう。
【0099】
【化38】

【0100】
16員環マクロライド誘導体化における他の可能性には、エポキシ化による二重結合の変換、およびエポキシ基を適切な反応剤(ジアミンなど)で切断して反応剤マクロライドサブユニット(M−CH−NH−K−NH)を得ることが含まれる。
【0101】
さらに、9位のケトンをヒドロキシルアミン塩酸塩によって修飾してオキシムを取得し、次いで、アミンに還元することができる。
【0102】
ターゲティング
本発明からの化合物は、標的蛋白、すなわちこの化合物と相互作用する蛋白、ペプチドまたはポリペプチドの同定のために使用される。標的同定は、以下の手法を用いて行うことができることが知られている。
【0103】
手法の1つは、ファージディスプレーである。この手法では、それらの表面上にランダムなポリペプチド、cDNAまたは遺伝子フラグメントライブラリーを発現するファージ粒子を、固定化された化合物または可溶性の化合物と一緒にインキュベートする。個々のファージは、蛋白またはポリペプチドの化合物との相互作用を介して取り出され、それらをコードするDNA配列によって同定される。この手法では、ビオチンまたはイミノビオチンタグは、固体支持体上、例えば、ストレプトアビジンをコーティングした96ウエルプレートまたは磁気ビーズ上に化合物を固定化するため、あるいはストレプトアビジンをコーティングした固体支持体上に形成されるファージ−化合物複合体を溶液中で捕捉するために使用される。
【0104】
もう1つの手法は、親和性に基づく方法を用いる。ビオチンまたはイミノビオチンタグ付き化合物を、様々な起源、例えば、細胞ライセート、血漿、尿などからの標的蛋白と結合させる。これは、溶液中で、(すなわち、ビオチンまたはイミノビオチンタグ付き化合物を、ライセート、血漿、尿などと混合することにより)または表面上に固定化されたビオチンまたはイミノビオチンタグ付き化合物を有するストレプトアビジン含有固体マトリックスを、ライセート、血漿、尿などと混合することによって行うことができる。
【0105】
標的結合の特異性は、光反応性基、例えば、アリール−アジドによる化合物の誘導体化によって改善される。この手法では、親和結合に加え、化合物は、電磁放射線で光活性化基を刺激することにより標的蛋白と共有結合する。溶液中で形成される複合体の場合には、ストレプトアビジン含有マトリックスを、共有結合した複合体にその後加える。
【0106】
次いで、化合物−蛋白複合体を、ストレプトアビジン含有固体マトリックスに結合しているビオチンまたはイミノビオチンタグを用いて単離する。単離された蛋白は、例えば、質量分析法によって同定される。
【0107】
本発明が特に有用なのは、この結合蛋白が、マクロライド−蛋白相互作用が比較的弱い場合でさえ、洗浄工程中にマクロライド部分から解離しないからである。この利点は、洗浄工程中の標的(蛋白)の解離を防ぐ、光親和性基とマクロライド分子(プローブ)間の共有結合に起因する。この手法は、それらの結合親和性に関係なく(一定)、すべての標的を同定するための基礎を提供する。
【0108】
本発明の化合物、プロセスおよび方法は、例示としてのみであって本発明の範囲を限定することを意図していない以下の実施例との関連でより良く理解されるであろう。開示されている実施形態に対する様々な変更および改変は、当業者には明らかであろうし、本発明の化学構造、置換基、誘導体処方および/または方法に関連するものを含むが、それらに限定されないそのような変更および改変は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲を逸脱することなく行うことができる。
実験
【0109】
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【0110】
アジスロマイシンアミンM1およびM2は、国際特許出願WO02/055531A1に記載されているような手順によって調製することができる。アミンM3は、国際特許出願WO2004/09449A1に記載されているような手順によって調製することができる。アミンM4およびM6は、国際特許出願WO2004/005310A2に記載されているような手順によって調製することができる。
【0111】
アミンM5、M7およびM10は、全体として参照により本明細書に組み込まれている米国仮出願60/643,841においてそれらが調製されたのと同じ手順によって調製することができる。より詳細には、M5は、アクリロニトリル中の2’−O−アセチル−11−O−メチル−アジスロマイシンの溶液を、窒素下で0℃にて1時間、t−BuOHおよびNaHと一緒に撹拌することによって調製することができる。アクリロニトリルを蒸発させ、残渣をDCMに溶かし、水で抽出する。有機層を濾過し、乾燥し、PtO2と一緒に氷酢酸に溶かす。反応混合物を、Parr装置中で水素化し、溶媒および触媒を除去し、化合物を抽出し、乾燥し、MeOHに溶かす。混合物を50℃にて18時間撹拌し、MeOHを蒸発させた後に生成物が得られる。
【0112】
M7を得るには、11,12−カーボネート−11,12−ジデオキシ−2’−O−アセチル−6−O−メチルエリスロマイシンA9−O−(1−イソプロポキシヘキシル)オキシムを含有する溶液を、(a)残渣を、DCMの代わりに酢酸エチルに溶かし、(b)得られる生成物をCHOOHおよびNaと混合し、EtOH/HOに溶かすことを除いて、M5について記載したのと類似の条件下で反応させる。反応混合物を80℃まで温めて撹拌する。溶媒の蒸発、希釈、pH調製、有機層の抽出、乾燥、および精製後に、化合物M7が得られる。
【0113】
マクロラドM10を得るには、乾燥メタノール中の化合物2’−O−アセチル−4″−O−プロペノイル−6−O−メチル−9a−アザ−9a−ホモエリスロマイシンA(参照により組み込まれているWO03/042228に従って調製)の溶液にジエチルアミンを加える。反応混合物を、40℃にて一夜撹拌する。生成物をアクリロニトリル中で混合し、一夜還流する。2’−O−アセチル基の脱保護後、中間体をPtOの存在下で氷酢酸に溶かし、水素雰囲気下で一夜撹拌する。濾過、蒸発、および精製により、M10生成物が得られる。
【0114】
化合物M9は、国際特許出願WO03/042228A1に記載されているような手順に従って調製することができる。
【実施例1】
【0115】
化合物1:
アルゴン下で乾燥CHCl(5mL)中のビオチン(70mg;0.29mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.380mL、2.73mmol);1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(80mg、0.59mmol);アミンM1(230mg、0.29mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩(235mg、1.23mmol)を加えた。反応混合物を、アルゴンの流れの中で室温にて24時間撹拌し、次いで、少量まで蒸発させ、シリカゲルカラム(溶出液:CHCl:CHOH:NHOH=6:1:0.1)で精製すると、化合物1(166mg)が得られた。
MS(m/z):1018.40[MH]
【実施例2】
【0116】
化合物2:
化合物2は、実施例1に記載されている手順に従い、アミンM1および2−イミノビオチンから出発して調製する。
【実施例3】
【0117】
化合物3:
乾燥DMF(500μL)中のスルホ−SBED(スルホスクシンイミジル−2−[6−(ビオチンアミド)−2−(p−アジドベンズアミド)ヘキサノアミド]エチル−1,3’−ジチオプロピオネート(10mg、0.011mmol);PIERCE、Rockford、IL、USAから入手)の溶液に、アミンM1(9mg、0.011mmol)を加え、室温にて2時間、暗所で撹拌した。次いで、混合物を減圧下で濃縮した。残渣を、カラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl:MeOH:NHOH=6/1/0.1)により精製すると、化合物3(12mg)が得られた。MS(m/z):1454.60[MH]
【実施例4】
【0118】
化合物4:
化合物4(12.84mg)は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM5(9.7mg、0.011mmol)から出発して調製した。
MS(m/z):1468.34[MH]
【実施例5】
【0119】
化合物5:
化合物5は、マクロライドM9から出発して調製する。マクロライドを、メタノール中で5−(ビオチンアミド)ペンチルアミンと混合し、55℃にて一夜反応させる。次いで、混合物を減圧下で濃縮する。残渣を、カラムクロマトグラフィー(溶出液:CHCl:MeOH:NHOH=6/1/0.1)により精製すると、化合物5が得られる。
【実施例6】
【0120】
化合物6:
化合物6は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM10から出発して調製する。
【実施例7】
【0121】
化合物7:
化合物7は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM2から出発して調製する。
【実施例8】
【0122】
化合物8:
化合物8は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM3から出発して調製する。
【実施例9】
【0123】
化合物9:
化合物9(9.55mg)は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM4(9mg、0.011mmol)から出発して調製した。
MS(m/z):1455.32[MH]
【実施例10】
【0124】
化合物10:
化合物10(7.19mg)は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM6(9mg、0.011mmol)から出発して調製した。
MS(m/z):1455.37[MH]
【実施例11】
【0125】
化合物11:
アミンM11
アルゴン下で乾燥CHCl(5mL)中の12−(FMOC−アミノ)ドデカン酸(254mg、0.058mmol)の懸濁液に、トリエチルアミン(0.760mL);1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(160mg);M1(460mg、0.058mmol)および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチル−カルボジイミド塩酸塩(470mg)を加えた。反応混合物を、室温にて24時間撹拌し、次いで、少量まで蒸発させ、シリカゲルカラム(溶出液:CHCl:CHOH:NHOH=6:1:0.1)で精製した。FMOCで保護された化合物(137mg)を酢酸エチル(5mL)に溶かし、ピペリジン(2mL)を加え、得られた反応混合物を室温にて3時間撹拌し、次いで、減圧下で濃縮すると、アミンM11(140mg)が得られた。
【0126】
化合物11
化合物11(23mg)は、実施例1に記載されている手順に従い、アミンM11(100mg)から出発して調製した。
MS(m/z):1215.42[MH]
【実施例12】
【0127】
化合物12:
アミンM12
アミンM12(299mg)は、実施例11のアミンM11についての手順に従い、アミンM4から出発して調製した。
【0128】
化合物12
化合物12(36mg)は、実施例1に記載されている手順に従い、アミンM12(150mg)から出発して調製した。
MS(m/z):1215.87[MH]
【実施例13】
【0129】
化合物13:
アミンM8
【0130】
【化39】

【0131】
工程1:11−シアノエトキシクラリスロマイシン
2’,4’’−O−ジ−アセチルクラリスロマイシン(1.24g、1.49mmol)をアクリロニトリル(29.5ml)に溶かし、室温にて撹拌した。tert−ブタノール(0.14ml)を加え、溶液を0℃まで冷却し、次いでNaH(0.06g、2.50mmol)を加え、反応物を室温にて24時間撹拌した。反応が完結した後、アクリロニトリルを減圧下で蒸発させた。水(20ml)およびジクロロメタン(20ml)を加え、層を分離した。有機層を飽和水溶液NaHCO、水および食塩水で抽出した。有機層を無水NaSOで乾燥し、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させると、ジ−アセチルで保護されたシアノクラリスロマイシン(1.85g)が得られ、メタノール中でLiOHによる脱保護後に、11−シアノエトキシクラリスロマイシン(1.04g)が得られた。
MS:m/z=801.4[M+H]
【0132】
工程2:アミンM8
工程1で得られた化合物(0.26g、0.32mmol)を、室温にて氷酢酸(15ml)に溶かし、酸化白金(IV)(0.1g、0.44mmol)を加えた。反応混合物を、4.5バール(450kPa)の圧力下で5時間水素化し、触媒を濾過により除去し、濾液を真空中で濃縮すると、粗生成物が得られた。次いで、ジクロロメタンおよび水を粗生成物に加えた。7.6および9.5におけるグラジエント抽出を行い、pH9.5にて得られた有機層を蒸発させた後に、アミンM8(0.62g)が得られた。
MS:m/z=805.7[M+H]
【0133】
化合物13
化合物13(8.16mg)は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM8(9mg、0.011mmol)から出発して調製した。
MS(m/z):1467.80[MH]
【実施例14】
【0134】
化合物14
化合物14(5.65mg)は、実施例3に記載されている手順に従い、アミンM7(9mg、0.011mmol)から出発して調製した。
MS(m/z):1467.60[MH]
【実施例15】
【0135】
実施例9からの化合物(1mM)をジメチルスルホキシド(20μL)(Kemika、Croatia)に溶かし、暗所で室温にて60分間、ヒト血清(健常志願者の静脈血から得た)と一緒にインキュベートした。その後、混合物に、Spectroline CX−20 Ultraviolet Analysis Cabinet(Spectronics、USA)中で15分間、紫外光(365nm)を照射し、次いで、4℃にてStreptavidin Sepharoseマトリックス(Amersham Biosciences、Sweden)と一緒に一夜インキュベートした。マトリックスを、NaCl(150mM)を含有するpH7.5のリン酸緩衝液(20mM)で洗浄し、短時間遠心分離して結合してない蛋白分画を除去した。この手順を3回繰り返した。蛋白と共有結合している化合物9を、グアニジン塩酸塩、pH1.5(8M)でマトリックスから溶出した。その後、蛋白を、ProteoExtract Protein Precipitation Kit(Calbiochem、USA)を用いて沈殿させ、ポリアクリルアミドゲル上のSDS電気泳動により分離した。α−酸性糖蛋白は、モノクローナル抗体(Sigma、USA)を用いるウエスタンブロットのより検出した(図1を参照)。
【0136】
これは、ヒト血清からのα−酸性糖蛋白が、化合物9と結合する蛋白の1つであることを裏付けた。同様に、この手法を用い、本発明の化合物と相互作用する他の蛋白を同定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】α1−酸性糖蛋白の検出を示す図である。図1Aは銀染色を提供する図である。図1Bはウエスタンブロットを提供する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


[式中:
Lは連結分子であり;および
Mは下位構造式II:
【化2】

II
(式中:
(i)ZおよびWは、独立して、
【化3】


または結合であり;
ここで、
およびRは、独立して、Hまたはアルキルであり;
はOH、OR、アルコキシまたは置換アルコキシであり;
はH、R、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキルまたは−C(=X)−NRであり;および
XはOまたはSである;
ただし、
ZおよびWの両方が、同時に、
【化4】


または結合であることはなく;
(ii)UおよびYは、独立して、H、ハロゲン、アルキルまたはヒドロキシアルキルであり;
(iii)Rはヒドロキシ、OR、−O−Sまたは=Oであり;
(iv)Sは、C/5位にある、Hまたは式:
【化5】

(式中:
およびRは共に水素であるか、一緒になって結合を形成するか、あるいはRは水素であり、Rは−N(CH)Rであり、
はR、Rまたは−C(O)Rであり、ここでRは水素、シクロアルキル、アルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアリールであるか、あるいはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、アリールまたはヘテロアリールで置換されているアルキルであり;
10は水素またはRである)
で示される糖部分であり;
(v)Sは式:
【化6】

(式中:
’はHまたはメチルであり、R11は水素、R、−C(O)(CHNRであるか、あるいはO−R11はR12およびC/4”炭素原子と一緒になって>C=Oまたはエポキシ基を形成する基であり;R12は水素またはO−R11およびC/4”炭素原子と一緒になって>C=Oまたはエポキシ基を形成する基であり;
qは1ないし6の整数である)
で示される糖部分であり;
(vi)RはH、ヒドロキシ、OR基、アルコキシまたは置換アルコキシであり;
(vii)AはHまたはメチルであり;
(viii)Bはメチルまたはエポキシであり;
(ix)EはHまたはハロゲンであり;
(x)Rはヒドロキシ、OR基またはアルコキシ、置換アルコキシであるか、あるいはRはRと一緒になって「架橋」を形成することのできる基であるか、あるいはWまたはZが
【化7】

である場合、RはWまたはZと一緒になって「架橋」を形成しうる基であり;
(xi)RはC−Cアルキルであり;
(xii)RがH、ヒドロキシ、OR基、C−Cアルコキシ、置換アルコキシまたはRと一緒になって架橋を形成しうる基であり;
(xiii)RはHまたはC−Cアルキルである)
で示されるマクロライドサブユニットを表し;
ここで、サブユニットMは連結部位を有し、その部位を通り、連結基Lを介してサブユニットPに連結され、その連結部位は1個または複数の以下の基:
a.S、S上に位置する任意の反応性ヒドロキシ、Nまたはエポキシ基、あるいはSまたはSが開裂するならば、アグリコン酸素;
b.ZまたはW上に位置する反応性>N−Rまたは−NRまたは=O基;
c.R、R、RまたはRのいずれか一つに位置する反応性ヒドロキシ基;および
d.まずヒドロキシまたは−NR基に誘導化され、ついでKに連結され得る任意の他の基であり、ここでKは連結分子Lの一部である;
にあり;
Pは光親和性基を担持するサブユニットである]
で示される化合物。
【請求項2】
Lが式IIIAまたはIIIB:
IIIA X−(CH−X
IIIB X−(CH−Q−(CH−X
[式中:
は−CH、−CH−NH−、−C(O)−、−OC(O)−、=N−O−、−OC(O)NH−または−C(O)NH−から選択され;
は−NH−、−CH−、−NHC(O)−、−C(=O)−、−O−または−OC(O)−から選択され;
Qは−NH−、−CH−または−S−S−であり;
−CH−または−NH−基の各々は、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、C(O)R、C(O)OR、C(O)NHRで置換されていてもよく、ここでRはC−Cアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってもよく;
記号のmおよびnは、独立して、0ないし8の整数である;
ただし、QがNHである場合、nは0以外の整数である]
で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Pが、下位構造式IV:
【化8】

IV
[式中:
は鎖LのXとの共有結合リンカーであり;
RはOまたはNHである]
で示されるビオチンまたはイミノビオチンサブユニットである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
Pがビオチンと光親和性基あるいはイミノビオチンと光親和性基を含有するサブユニットを表す、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
光親和性基がアリールアジドである、請求項1記載の化合物。
【請求項6】
Pが下位構造式V:
【化9】

[式中、Rは鎖LのXとの共有結合リンカーである]
で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項7】
マクロライドサブユニットMがFK506、ラパマイシンまたはゲルダナマイシンあるいはその誘導体以外の物質である、請求項1記載の化合物。
【請求項8】
以下の特徴(i)ないし(xiii):
(i)ZおよびWは、独立して、
【化10】


(ここで、RおよびRは、独立して、Hまたはメチルである)、
【化11】

(ここで、RはOH、OR、アルキルである)、
【化12】

または結合であり;
(ii)UおよびYは、独立して、H、メチルまたはヒドロキシメチルであり;
(iii)Rは水素で、Rは−N(CH)Rであり、ここでRはR、Rまたは−C(O)Rであり、Rは水素またはシクロヘキシル、C−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、アリールまたはヘテロアリール、あるいはC−Cアルキル、C−Cアルケニル、C−Cアルキニル、アリールまたはヘテロアリールで置換されているアルキルであり;
(iv)Rは水素で、Rは−N(CH)Rであり、ここでRは水素、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、−C(O)CH、−CH−フェニルまたはシクロヘキシルであり;
(v)RはC−Cアルコキシであり;
(vi)EはHまたはフッ素であり;
(vii)Rはヒドロキシ、OR基、C−Cアルコキシであり;
(viii)Rはメチルであり;
(ix)Rはメチルまたはエチルであり;
(x)Rが少なくとも1つ存在し、Rがメチル、アセチル、メトキシカルボニルまたはtert−ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、ベンゾイル、ベンジル、トリメチルシリルまたはトリメチルシリルエトキシメチルから選択される保護基を表し;
(xi)Rはヒドロキシであり、Sは式:
【化13】

[式中、Rは上記の記載と同意義である]
で示される糖部分であり;
(xii)SはHで、RはO−Sであり、ここでSが式:
【化14】

[式中、R11は上記の記載と同意義である]
で示される糖部分であり;
(xiii)Sが水素で、Rがヒドロキシルである
のうち少なくとも1つの特徴を有する、請求項1記載の化合物。
【請求項9】
マクロライド結合蛋白、ペプチドまたはポリペプチドを同定するための、請求項1記載の化合物あるいはその医薬上許容される塩または溶媒和物の使用。
【請求項10】
マクロライドについて結合親和性を有する蛋白、ペプチドまたはポリペプチドの群より選択される物質を同定する方法であって、
該物質を含有する可能性のある試料を、請求項1に記載の化合物と、該化合物の該物質への結合を可能とする条件下で接触させ;
その光親和性基を活性化させ;および
該化合物が該物質と結合したかどうかを、バックグラウンドと、あるいは予め確立された基準と比較して、該サインの強度を評価することで決定する、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526952(P2008−526952A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550882(P2007−550882)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/IB2006/001484
【国際公開番号】WO2006/106440
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】