説明

ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩、その製造方法及びそれを用いたアフィニティクロマトグラフィ用材並びにタンパク質の分離方法

【課題】抗うつ作用を有する化合物に対して親和性を有するタンパク質を分離することを特徴とする、アフィニティクロマトグラフィ用担体に結合可能な抗うつ作用を有する化合物を提供。
【解決手段】一般式(I)


[式中、Rは、置換基(ノルトリプチリン等の抗うつ作用を有する化合物)]で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩と誘導体をアビジンが固定された担体に結合させたアフィニティクロマトグラフィ用担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビオチン誘導体に関する。詳しくは、抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加した構造を有するビオチン誘導体及びそれを用いたアフィニティクロマトグラフィ用材、並びに抗うつ作用を有する化合物に親和性を有するタンパク質の分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の臨床現場で用いられている抗うつ薬は、何れも神経終末に存在するセロトニンやノルアドレナリン等のモノアミントランスポータを阻害する作用に着目して開発されたものである。このような抗うつ薬としては、モノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害薬)、三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)再取り込み阻害薬(SNRI)等が挙げられる。しかしながら、現在では、モノアミン再取り込み阻害作用だけで抗うつ薬の作用機序を説明することは困難になりつつある。
【0003】
一方、近年、抗うつ薬の効果の発現に、抗うつ薬による神経栄養因子の誘導が関与している可能性が示唆されている。すなわち、抗うつ薬には、神経細胞の周囲に存在するグリア細胞において、神経栄養因子を誘導する作用があり、その作用にモノアミントランスポータ以外の未知の作用点が関わっている可能性がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
従って、かかる未知の作用点を同定することは、抗うつ薬の作用機序の解明に繋がるだけでなく、神経栄養因子誘導作用に基づいた新規抗うつ薬の創薬に貢献する可能性がある。
【非特許文献1】Hisaoka K, Takebayashi M, Tsuchioka M, Maeda N, Nakata Y and Yamawaki S, "Antidepressants increases glial cell line−derived neurotrophic factor production through monoamine−independent activation of protein tyrosine kinase and extracellular signal−regulated kinase in glial cells", J Pharmacol Exp Ther, 2007, 321, p.148−157.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、生体内での抗うつ薬の挙動を明らかにするために、抗うつ薬に親和性を有するタンパク質の同定を行うことを着想し、抗うつ薬をリガンドとして用いるアフィニティクロマトグラフィ法の構築を試みたところ、アフィニティクロマトグラフィ用担体に結合可能な抗うつ薬は存在していなかった。
【0006】
本発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、アフィニティクロマトグラフィ用担体に結合可能な抗うつ作用を有する化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)すなわち、本発明は、抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加して得られることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩である。
【0009】
(2)本発明はまた、一般式(I)
【化53】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化54】


【化55】


【化56】


【化57】


【化58】


【化59】


【化60】


【化61】


【化62】


【化63】


【化64】


【化65】


【化66】

又は
【化67】

で示される基を表す。]で示されることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩である。
【0010】
(3)本発明はまた、式(II)
【化68】

で示されることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩である。
【0011】
(4)また、本発明は、一般式(III)
【化69】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化70】


【化71】


【化72】


【化73】


【化74】


【化75】


【化76】


【化77】


【化78】


【化79】


【化80】


【化81】


【化82】

又は
【化83】

で示される基を表す。]で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、一般式(IV)
【化84】

で示されるビオチン化試薬とを反応させることを特徴とする、一般式(I)
【化85】

[式中、Rは、前記と同義である。]で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩の製造方法である。
【0012】
(5)本発明はまた、式(V)
【化86】

で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、式(IV)
【化87】

で示されるビオチン化試薬とを反応させることを特徴とする、式(II)
【化88】

で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩の製造方法である。
【0013】
(6)また、本発明は、抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加して得られるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材である。
【0014】
(7)本発明はまた、一般式(I)
【化89】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化90】


【化91】


【化92】


【化93】


【化94】


【化95】


【化96】


【化97】


【化98】


【化99】


【化100】


【化101】


【化102】

又は
【化103】

で示される基を表す。]で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材である。
【0015】
(8)本発明はまた、式(II)
【化104】

で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材である。
【0016】
(9)また、本発明は、(6)〜(8)の何れか1項に記載のアフィニティクロマトグラフィ用材を用いてアフィニティクロマトグラフィ法により抗うつ作用を有する化合物に対して親和性を有するタンパク質を分離することを特徴とする、タンパク質の分離方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明のビオチン誘導体等は、抗うつ作用を有する化合物にビオチンが付加した構造を有するので、ビオチン誘導体等を、アビジンを介してアフィニティクロマトグラフィ用担体に極めて容易に固定化することができ、アフィニティクロマトグラフィ用剤としてと利用することができる。
【0018】
また、本発明のアフィニティクロマトグラフィ用材は、抗うつ作用を有する化合物をリガンドとして有するので、抗うつ薬に親和性を有するタンパク質を極めて精度良く分離することができ、当該タンパク質の同定を行うことにより、抗うつ薬の作用点やその作用機序の解明に有用な知見を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩は、抗うつ作用を有する化合物にビオチンが付加した構造を有するものである。
【0020】
本発明におけるビオチン誘導体等で利用される抗うつ作用を有する化合物としては、ビオチン基が結合可能な置換基、例えば、第1級アミノ基、第2級アミノ基等を有しているものが好ましく、具体的には、三環系抗うつ薬の有効成分であるノルトリプチリン、アモキサピン、デシプラミン等、四環系抗うつ薬の有効成分であるマプロチリン等、SSRIの有効成分であるフルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、チアネプチン等、SNRIの有効成分であるミルナシプラン、デュロキセチン等、モノアミンオキシダーゼ阻害薬の有効成分であるモクロベミド等、その他ドパミンD2遮断薬で抗うつ作用を有する薬剤の有効成分であるスルピリド等が挙げられ、特に本発明においては、ノルトリプチリン等が好適に利用される。
【0021】
本発明のビオチン誘導体の具体例としては、下記一般式(I)
【化105】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化106】


【化107】


【化108】


【化109】


【化110】


【化111】


【化112】


【化113】


【化114】


【化115】


【化116】


【化117】


【化118】

又は
【化119】

で示される基を表す。]で示される化合物等が挙げられる。
【0022】
一般式(I)のRが採り得る置換基としては、Rの基本骨格の有する抗うつ作用を著しく阻害するものでなければ特に限定されるものではなく、例えば、直鎖状の若しくは分岐したメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、1−プロペニル基等のアルケニル基、エチニル基、プロパルギル基等のアルキニル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、o−トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フルオロ基、クロロ基等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、カルボキシ基、メトキシカルボニル基等のカルボン酸基、ホルミロキシ基、アセトキシ基等のエステル基、ホルミル基、アセチル基等のアシル基、アセトニル基、フェナシル基等のカルボニル基、メルカプト基、メチルチオ基等のチオール基、チオホルミル基、チオアセチル基等のチオカルボニル基、スルフィノ基、スルホ基等のスルホニル基、2−フリル基、2−フルフリル基等の複素環基等が挙げられる。
【0023】
本発明では、これらの中では特に、下記式(II)
【化120】

で示されるビオチン化ノルトリプチリン等が好適に利用される。
【0024】
また、本発明のビオチン誘導体の生理学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、塩酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、過酸化水素塩等の無機酸塩、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、ブロカイン塩等の脂肪族アミン塩、N,N−ジベンジルエチレンジアミン等のアラルキルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、キノリン塩、イソキノリン塩等の複素環芳香族アミン塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアモニウム塩、ベンジルトリメチルアンモニウム塩、ベンジルトリエチルアンモニウム塩、ベンジルトリブチルアンモニウム塩、メチルトリオクチルアンモニウム塩、テトラブチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩、アンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、イセチオン酸塩等の有機酸塩、又は、アスパラギン酸、グルタミン、アルギニン塩、リジン塩酸等のアミノ酸との塩等が挙げられる。なお、本発明においては、水和物等の溶媒和物の形であってもよい。
【0025】
本発明のビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩は、上述の抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加することにより得られる。
【0026】
具体的には、下記一般式(III)
【化121】

[式中、Rは、前記と同義である。]で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、下記一般式(IV)
【化122】

で示されるビオチン化試薬とを反応させて得られる。
【0027】
まず、一般式(III)で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、一般式(IV)で示されるビオチン化試薬を、例えば、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide;DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)等の適当な溶媒に溶解し、ビオチン化試薬の保護基の脱離処理として、例えば、トリエチルアミン等の反応促進剤を添加して、4〜50℃の温度で1〜16時間反応させてビオチン誘導体を含む沈殿を得る。その後、溶媒を除去して得られた沈殿を乾燥し、適切な溶媒で洗浄して沈殿中に含まれる副産物を除去して本発明のビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩を得る。
【0028】
本発明のアフィニティクロマトグラフィ用材は、上記ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなるものである。
【0029】
ここで、アビジンは、ビオチンに対して極めて強い親和性(Affinity constant >1015−1)を有し、ビオチンと特異的に結合する塩基性糖たんぱく質である。本発明では、アビジンとビオチンのかかる性質を利用して、ビオチン誘導体等をアビジンが固定された担体に結合させるものである。
【0030】
具体的には、本発明のアビジン固定カラムを添加したトリスバッファ等の緩衝溶液中に本発明のビオチン誘導体等を混合することにより製造される。なお、本発明で利用されるアビジン固定担体として、例えばマグナビート社製の『Therma−Max(登録商標) LA Avidin(30)』等を用いることができる。
【0031】
次に、本発明のアフィニティクロマトグラフィ用材を用いたアフニティクロマトグラフィ法によるタンパク質の分離方法について説明する。
【0032】
図1は、本発明のアフィニティクロマトグラフィ法によるタンパク質の分離方法の概略を示す図である。図1に示す通り、本発明においては、タンパク質を分離するために、例えば、アフィニティクロマトグラフィ用カラムを使用しない免疫沈降法等が適応されてもよい。まず、グリア細胞等の中枢由来の細胞や所定組織のホモジネート等の溶解液である試料溶液中に上記のアフィニティクロマトグラフィ用材を添加し、1〜16時間反応させる。次いで、上記アフィニティクロマトグラフィ用材を沈降させた後に、免疫沈降用トリスバッファ等の緩衝溶液を用いて上記アフィニティクロマトグラフィ用材を複数回洗浄する。その後、SDS−Sample buffer等の緩衝溶液を添加して、上記アフィニティクロマトグラフィ用材に捕獲されていたタンパク質を溶離し回収する。
【0033】
なお、上記の免疫沈降用トリスバッファの基本組成は、以下に示す通りである。
1)Tris−HCl(pH7.4) 10mM
2)NaCl 150mM
3)NP−40 1%
4)EDTA・2Na 5mM
5)EGTA 1mM
6)orthovanadate 1mM
7)sodium molybdate 0.01mM
8)PMSF 2mM
9)aprotinin 2μg/mL
10)leupeptin 5μg/mL
【0034】
また、上記のSDS−Sample bufferの基本組成は、以下に示す通りである。
1)Tris−HCl(pH6.8) 0.125mM
2)SDS 4%w/v
3)glycerol 20%
4)DTT 0.1mM
5)BPB 0.025%w/v
【0035】
一方、上記アフィニティクロマトグラフィ用材の代わりにアビジン固定担体にビオチンを結合させたコントロールアフィニティクロマトグラフィ用材を用いた以外は上記と同様の操作を行い、タンパク質のみを回収する。
【0036】
次いで、それぞれのアフィニティクロマトグラフィ用材を用いて回収されたタンパク質について、上記アフィニティクロマトグラフィ用材を用いた場合のアフィニティクロマトグラフィの電気泳動のバンドパターンと、コントロールを用いた場合の電気泳動のバンドパターンとを比較する。そして、上記アフィニティクロマトグラフィ用材を用いた場合のアフィニティクロマトグラフィの電気泳動にのみ現れるバンドパターンについて、プロテオーム解析を用いてタンパク質の同定を行う。
【0037】
プロテオーム解析により同定されたタンパク質(複数の場合はタンパク質群)は、神経栄養因子誘導作用に寄与する可能性を有するものである。従って、これらのタンパク質のうち、実際に神経栄養因子誘導作用に関与することが確認できたものは、抗うつ薬の新規作用点として挙げることができ、更に抗うつ薬の作用機序解明に有益な知見を与えることができる。
【0038】
本発明のビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩、その製造方法及びそれを用いたアフィニティクロマトグラフィ用材並びにタンパク質の分離方法は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【実施例】
【0039】
[実施例1]
(1)新規化合物の合成
【0040】
塩酸ノルトリプチリン(Sigma,N7261)5.18mgと、ビオチン化試薬であるEZ−Link(登録商標)PFP−Biotin(Thermo scientific,21218)14.19mgとを、ジメチルホルムアミド(DMF)1.3mLに溶解し、トリエチルアミン2.4μLを加え、室温で一晩反応させた。次いで、凍結乾燥によりDMFを除去した後、ビオチン化ノルトリプチリンを含む化合物群の沈殿を得た。
(2)新規化合物の精製
【0041】
実施例1で得られた沈殿を0.01N塩酸0.4mLで洗浄することにより、塩基性反応副産物等を塩酸層に溶かして除去した。次いで、残った沈澱を蒸留水0.4mLで洗浄した後に10%水酸化ナトリウム0.4mLで洗浄することにより、酸性反応副産物を水酸化ナトリウム層に溶かして除去した。次いで、残った沈殿を蒸留水0.4mLで洗浄して目的物(沈殿)を得た。
(3)新規化合物の構造解析
【0042】
実施例2で得られた沈殿について、各分析機器を用いて構造解析を行った結果を以下に示した。
【0043】
(a)比旋光度
【数1】

【0044】
(b)紫外線吸収スペクトル
UV(MeOH)λmaxnm(logε):210(4.50),241(4.09)
【0045】
(c)赤外線吸収スペクトル
IR(film)cm−1:3374,2925,1689,1627,1560,1499,1006,981
【0046】
(d)核磁気共鳴吸収(1D−NMR,2D−NMR)
H−NMR(DMSO−d)δ:7.32−7.03(8H,m,H−1',2',3',4',6',7',8',9'),6.38(1H,br s,H−3'''),6.33(1H,br s,H−1'''),5.84(0.5H,t,J=8Hz,H−3),5.77(0.5H,t,J=7Hz,H−3),4.30(1H,br dd,J=12,7Hz,H−4''),4.06−4.16(1H,m,H−3'''),3.36(0.5H,m,H−1),3.31(0.5H,m,H−1),3.02−3.12(1H,m,H−2''),2.84(1.5H,s,N−Me),2.67(1.5H,s,N−Me),2.59(2H,dd,J=12,6Hz),2.31(1H,m,H−α),2.24(1H,t,J=7Hz,H−α),2.21−2.34(6H,m,H−2,10',11'),1.22−1.67(6H,m,H−β,γ,δ)
13C−NMR(DMSO−d)δ:171.7,171.5(C=O),162.6(C−2'''),144.1、142.9(C−5'),140.8,140.4,139.35,139.25(C−4a',5a'),138.9,139.0,136.5(C−9a',11a'),130.0,129.8,128.2,128.06,128.02,127.98,127.8,127.60,127.59,127.4,127.1,127.0(C−1',2',4',6',8',9'),125.94,125.90,125.7,125.6、(C−3',7'),128.4,127.3(C−3),60.96,60.94(C−3''),59.1(C−4''),55.35,55.32(C−2''),48.4,48.3(C−1),39.8(C−5''),34.7,32.7(N−Me),33.09,33.07,31.2,31.1(C−10',11'),32.4,31.7(C−α),28.23,28.17,28.08,28.03(C−γ,δ),24.9,24.5(C−β)
:geometric isomer of amide functionality
【0047】
(e)質量分析(HR−MS)
HR−ESI−TOF−MS(positive−ion mode)m/z:490.2518[M+H](Calcd for C2936S:490.2522)
【0048】
構造解析の結果から明らかな通り、得られた沈殿物は、ビオチン化ノルトリプチリンであることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0049】
上述したように、本発明のビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩は、
抗うつ作用を有する化合物にビオチンが付加した構造を有するので、ビオチン誘導体等を、アビジンを介してアフィニティグラフィ用担体に極めて容易に固定化することができるので、アフィニティクロマトグラフィ用材として極めて有用である。
【0050】
また、本発明のアフィニティクロマトグラフィ用材は、抗うつ作用を有する化合物をリガンドとして有するので、抗うつ薬に親和性を有するタンパク質を極めて精度良く単離することができ、抗うつ薬の作用点やその作用機序の解明に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明のアフィニティクロマトグラフィ法によるタンパク質の分離方法の概略を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加して得られることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
【請求項2】
一般式(I)
【化1】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化2】


【化3】


【化4】


【化5】


【化6】


【化7】


【化8】


【化9】


【化10】


【化11】


【化12】


【化13】


【化14】

又は
【化15】

で示される基を表す。]で示されることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
【請求項3】
式(II)
【化16】

で示されることを特徴とする、ビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩。
【請求項4】
一般式(III)
【化17】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化18】


【化19】


【化20】


【化21】


【化22】


【化23】


【化24】


【化25】


【化26】


【化27】


【化28】


【化29】


【化30】

又は
【化31】

で示される基を表す。]で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、一般式(IV)
【化32】

で示されるビオチン化試薬とを反応させることを特徴とする、一般式(I)
【化33】

[式中、Rは、前記と同義である。]で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩の製造方法。
【請求項5】
式(V)
【化34】

で示される化合物又はその生理学的に許容される塩と、式(IV)
【化35】

で示されるビオチン化試薬とを反応させることを特徴とする、式(II)
【化36】

で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩の製造方法。
【請求項6】
抗うつ作用を有する化合物にビオチンを付加して得られるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材。
【請求項7】
一般式(I)
【化37】

[式中、Rは、置換基を有してもよい、式
【化38】


【化39】


【化40】


【化41】


【化42】


【化43】


【化44】


【化45】


【化46】


【化47】


【化48】


【化49】


【化50】

又は
【化51】

で示される基を表す。]で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材。
【請求項8】
式(II)
【化52】

で示されるビオチン誘導体又はその生理学的に許容される塩がアビジンを介して担体に固定されてなる、アフィニティクロマトグラフィ用材。
【請求項9】
請求項6〜8の何れか1項に記載のアフィニティクロマトグラフィ用材を用いてアフィニティクロマトグラフィ法により抗うつ作用を有する化合物に対して親和性を有するタンパク質を分離することを特徴とする、タンパク質の分離方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−155806(P2010−155806A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335333(P2008−335333)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(803000056)財団法人ヒューマンサイエンス振興財団 (341)
【Fターム(参考)】