説明

ビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法

【課題】ビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法の提供。
【解決手段】アントラニル酸誘導体と芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガス気流下、有機溶媒中で反応させ、アミド化合物を製造した後、アミド化合物を脱水剤と反応させ下記式(4)


(但し、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)で表されるビスベンゾオキサジノン化合物を製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスベンゾオキサジノン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスベンゾオキサジノン化合物は、従来から各種医薬化合物の合成中間体として知られ、また紫外線吸収剤としても知られている。
これまでビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法として、種々の方法が提案されている。例えば、特開昭58−194854号公報(特許文献1)には、アントラニル酸のアルカリ水溶液とジカルボン酸ジハロゲン化合物の有機溶媒溶液とを反応させる方法が提案されている。この方法は、原料であるアントラニル酸とジカルボン酸ジハロゲン化合物とを水、有機溶媒の混合溶媒中で反応させ、中間体であるアミド体を単離した後、無水酢酸等の脱水剤と反応させることによって、ビスベンゾオキサジノン化合物を得る方法である。この方法は、生成物の収率が高く、操作が容易であるが、反応溶媒に水を使用しているため、中間体であるアミド体の乾燥に非常に時間を要する。また反応で生成するハロゲン化水素を補足する為、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属化合物を用いる。その結果、得られるビスベンゾオキサジノン化合物にはアルカリ金属塩が含まれ、これが不純物となり、紫外線吸収剤として熱可塑性樹脂中に含有させると樹脂が加水分解し易くなる場合がある。
【0003】
また、特開昭61−291575号公報(特許文献2)には、アントラニル酸とジカルボン酸ジハロゲン化物とを、水とアセトンの混合溶媒中、反応で生成する塩化水素を補足する為、炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属の存在下で反応させ、次いでN,N−ジメチルホルムアミド溶媒中で五酸化リンを反応させて脱水閉環させる方法が提案されている。この方法も収率良く高純度でビスベンゾオキサジノン化合物を得ることができる。しかしながらこれも、アルカリ金属塩等が残存する傾向がある。
さらに、特開2003−155468号公報(特許文献3)にはアントラニル酸とジカルボン酸ジハロゲン化物とを、水とアセトンの混合溶媒中で炭酸ナトリウムのようなアルカリ金属の存在下で反応させ、次いでトルエン溶媒中で無水酢酸を反応させて脱水閉環させた後、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄することにより酸価や塩素イオン濃度を低減する方法が提案されている。しかしながらこれも、溶媒に溶けにくいビスベンゾオキサジノン化合物中の塩化ナトリウムのようなアルカリ金属塩や洗浄に用いたアルカリ金属化合物が残存する。
【0004】
特許文献1〜3のいずれの提案も、反応の脱ハロゲン化水素剤として炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のようなアルカリ金属化合物を用いるため、目的とするビスベンゾオキサジノン化合物中に塩化ナトリウム等の微量のハロゲン化アルカリ金属塩を含有する。ビスベンゾオキサジノン化合物を紫外線吸収剤として樹脂に添加する場合、残存するアルカリ金属により、樹脂の耐久性、特に耐湿熱性が著しく低下することが問題とされていた。
【特許文献1】特開昭58−194854号公報
【特許文献2】特開昭61−291575号公報
【特許文献3】特開2003−155468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の目的は、脱ハロゲン化水素剤として水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のようなアルカリ金属化合物を用いることなく、アントラニル酸誘導体からビスベンゾオキサジノン化合物を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、下記反応式で表される、アントラニル酸誘導体(1)と芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物(2)との反応を、反応に関与しない有機溶媒中で行い、かつ、反応液中もしくは反応容器内に窒素などの不活性ガスを導入して、反応で生成するハロゲン化水素(式中HX)を除去すると、反応が円滑に進行し中間体のアミド化合物(3)が高収率で得られ、その後、得られたアミド化合物を脱水剤と反応させると、純度の高いビスベンゾオキサジノン化合物(4)を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
【化1】

【0008】
(R、R、Xは、前記式(1)〜(4)と同じである。)
即ち本発明は、下記式(1)で表されるアントラニル酸誘導体と下記式(2)で表される芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガス気流下、有機溶媒中で反応させ、下記式(3)で表されるアミド化合物を製造した後、
【0009】
【化2】

【0010】
(但し、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
得られた式(3)で表されるアミド化合物を脱水剤と反応させることからなる下記式(4)
【0011】
【化3】

【0012】
(但し、RおよびRは式(1)〜(3)と同じである。)
で表されるビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法である。
【0013】
また本発明は、前記製造方法により得られる式(4)で表されるビスベンゾオキサジノン化合物を包含する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法によれば、上記反応式に示したように、アミド化合物(3)を製造する際に副生するハロゲン化水素の除去に、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム等のようなアルカリ金属化合物を使用しないので、得られるビスベンゾオキサジノン化合物はアルカリ金属塩を実質的に含有することなく純度が高い。従って、得られたビスベンゾオキサジノン化合物を樹脂の紫外線吸収剤として用いても、アルカリ金属による樹脂の加水分解の促進作用は起こり難い。また本発明によれば、高い収率でビスベンゾオキサジノン化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<ビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法>
本発明の製造方法は、アミド化合物(3)を得る工程1とアミド化合物を脱水し環化しビスベンゾオキサジノン化合物(4)を得る工程2からなる。
【0016】
〈工程1〉
工程1は、アントラニル酸誘導体(1)と芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物(2)とを、不活性ガスの気流下、有機溶媒中で反応させアミド化合物(3)を得る工程である。
(アントラニル酸誘導体)
アントラニル酸誘導体は、下記式(1)で表される。
【0017】
【化4】

【0018】
式中、Rは、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基を表す。
【0019】
炭素数1〜3のアルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられる。炭素数1〜3のアルコキシ基として、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。炭素数1〜3のアシル基(R−CO−)としてアセチル基、アクリロイル基などが挙げられる。炭素数1〜3のアシルオキシ基(R−CO−O−)として、Rがメチル基、エチル基のものが挙げられる。炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基(−CO−OR)として、Rがメチル基、エチル基のものが挙げられる。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などが挙げられる。より好ましくは、Rは、水素原子である。具体的には、アントラニル酸が挙げられる。
【0020】
(芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物)
芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物は、下記式(2)で表される。
【0021】
【化5】

【0022】
式中、Xはハロゲン原子を表す。ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、好ましくは塩素原子である。Rは、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基を表す。これらの具体例は式(1)と同じである。より好ましくは、Rは、水素原子である。具体的には、テレフタル酸ジクロライドが挙げられる。
上記反応において、化合物(3)は芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物1モルに対し、アントラニル酸誘導体2モルが反応することにより得られるが、芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物1モルに対しアントラニル酸誘導体1モルが反応した下記式(5)で表わされる副生成物の生成を抑制するためにアントラニル酸誘導体を化学量論量より若干過剰に用いることが好ましい。すなわち反応に用いる芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物の量は、1モルのアントラニル酸誘導体に対し、好ましくは0.43〜0.5モル、より好ましくは0.47〜0.5モルである。
【0023】
【化6】

【0024】
(式中、R、R、Xは上記式(1)〜(4)と同じである)
【0025】
(有機溶媒)
有機溶媒は、原料のアントラニル酸誘導体(1)と芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物(2)が可溶かつ、反応に関与しない溶媒をいう。具体的にはアセトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノンなどのケトン類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類が好ましい。このなかでも特にケトン類が原料の溶解性、反応のしやすさの面から好ましい。
反応に用いる有機溶媒の量は特に限定されないが、アントラニル酸誘導体100重量部に対し、好ましくは350〜3500重量部、より好ましくは800〜1200重量部である。
【0026】
(不活性ガス)
本発明は、反応系内に不活性ガスを導入し、反応を不活性ガス気流下に進行させ、ハロゲン化水素を除去することを特徴とする。
本発明で用いる不活性ガスとしては、窒素、アルゴンなどが挙げられ、特に窒素が好ましい。反応に用いる不活性ガスの量は、アントラニル酸誘導体1モルに対して、好ましくは1〜50L/時間であり、これを超えると不活性ガスの気流により蒸散する量が多大となり、少ない場合は反応が極めて遅くなる。より好ましくは5〜10L/時間である。なお、不活性ガスは、有機溶媒中に吹き込んでも良いし、反応容器の気相中に吹き込んでも良い。
反応装置は不活性ガス導入部、ガス導出部および環流装置を有する、通常のスラリー状態の反応液を攪拌することが可能な物であればよい。ただし通気した不活性ガス中に含まれるハロゲン化水素を除去する設備が必要である。また反応温度は室温〜140℃とするのが好ましくこれ以上の温度になる着色する傾向が強くなる、より好ましくは50〜90℃である。また反応時間は不活性ガスの流量と反応温度により変化するが、0.5〜20時間とするのが好ましく、より好ましくは8〜12時間である。また式(3)で表されるアミド化合物は特に精製することなく次工程に用いることができる。
【0027】
(アミド化合物)
工程1では、下記式(3)で表されるアミド化合物が結晶として得られる。
【0028】
【化7】

【0029】
式中、RおよびRは式(1)〜(3)と同じである。
【0030】
〈工程2〉
工程2は、工程1で得られた式(3)で表されるアミド化合物を脱水剤と反応させ、環化させ下記式(4)
【0031】
【化8】

【0032】
で表されるビスベンゾオキサジノン化合物を得る工程である。式中、RおよびRは式(1)〜(3)と同じである。より好ましくは、RおよびRは、水素原子である。具体的には、2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)が挙げられる。
【0033】
脱水剤として、無水酢酸、五酸化リン、三酸化硫黄などが挙げられ、取り扱い易さより無水酢酸が好ましい。脱水剤は、式(3)で表されるアミド化合物1当量に対して、少なくとも2当量以上必要であり、好ましくは5当量以上、より好ましくは20当量以上である。好ましい態様として溶媒として用いることもできる。
反応装置は、還流装置を有して、スラリー状態の反応液を攪拌することが可能な物であればよい。ただし排気口には反応時に生成した酸性ガスが一部出てくるので、これを除去する設備が必要である。また反応温度は用いる溶媒の沸点によって異なるが、80℃以上とするのが好ましく、より好ましくは120〜140℃である。また、脱水反応時に副生する酸性成分を取り除く為に水洗を行うことが好ましい。また反応時間は脱水剤の当量、種類により異なるが、1〜24時間とするのが好ましく、より好ましくは8〜16時間である。
【実施例】
【0034】
以下に本発明の構成および効果をより具体的にするために実施例をあげるが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。実施例においての評価は以下の方法で行った。
【0035】
(1)HPLC純度の測定
日立製作所製L6200システムにて下記の条件で行った
カラム:GLサイエンス社製 ODS−3 4.6mm×250mm
カラム温度:45℃
溶離液:0.02Mリン酸水溶液/アセトニトリル=7/3
流速 :1ml/min
測定波長:346nm
【0036】
(2)融点の測定
SRS社製MPA100を使用して、JIS K0064に記載の方法で行った。
操作:
内径0.8〜1.2mm、壁の厚さ0.2〜0.3mm、長さ150mmで一端を閉じた硬質ガラス製の毛管に、試料を約3mmの高さになるように固く充填し測定装置に固定する。予想した融点の約10℃低い温度から加熱をはじめ、2℃/分の速度で昇温する。試料が収縮し、毛管内壁との間に明らかに隙間が生じるときを収縮点とし、さらに加熱を続け液中に残っている固体の試料が完全に液化するときを溶融終点とする。3個の試料について同じ操作を行ない、測定値の平均値をそれぞれ収縮点、溶融終点とし、収縮点から溶融終点までの温度幅を溶融範囲とする。
【0037】
〈実施例1〉2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の製造
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸25gをメチルイソブチルケトン(MIBK)150gに溶解した。次に溶液の温度を55〜60℃の範囲とし、テレフタル酸ジクロライド18gをMIBK72gに溶解したものを30分間で滴下した。その後、反応フラスコの気相部に窒素を15ml/minで流しながら80〜85℃の範囲で12時間反応させた。反応後、溶液の温度を30℃以下まで冷却し、濾過し、得られた結晶をMIBKで洗浄した。
【0038】
(工程2:脱水)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、還流液抜き取り口および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに得られた結晶と無水酢酸300gを入れ、1時間に10g程度ずつ還流液を留出させながら12時間加熱還流した。温度は徐々に上昇し最終的に130℃を超えた。その後30℃以下まで冷却し、濾過した。
この結晶とメタノール120gを温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに入れ50〜60℃の範囲で30分間撹拌洗浄した。これにイオン交換水120gを滴下し、30℃以下まで冷却したのち濾過し、得られた結晶をメタノールで洗浄した。得られた結晶を60℃で乾燥し29gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た。
表1に、収率、融点、HPLC純度を示す。
【0039】
〈実施例2〉2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の製造
(工程1:アミド化)
温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入部、およびハロゲン化水素除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコ中で、アントラニル酸25gをメチルイソブチルケトン(MIBK)150gに溶解した。次に溶液の温度を55〜60℃の範囲とし、テレフタル酸ジクロライド18gをMIBK72gに溶解したものを30分間で滴下した。その後、反応フラスコの気相部に窒素を15ml/分で流しながら80〜85℃の範囲で12時間保温して反応を完結させた。
【0040】
(工程2:脱水)
反応液に無水酢酸150gを加え、1時間に10〜20g程度ずつ還流液を留出させながら24時間加熱還流した。途中で無水酢酸を100gずつ2回追加した。温度は徐々に上昇し最終的に130℃を超えた。その後、30℃以下まで冷却し、濾過した。この結晶とメタノール120gを温度計、攪拌機、環流冷却器、滴下ロート、および酸性ガス除去設備へ接続されたガス導出部を備えた、500ml4つ口フラスコに入れ50〜60℃の範囲で30分間撹拌洗浄した。これにイオン交換水120gを滴下し、30℃以下まで冷却したのち濾過し、結晶をメタノールで洗浄した。得られた結晶を60℃で15時間乾燥し28.5gの微黄色結晶の2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)を得た。
表1に、収率、融点、HPLC純度を示す。
【0041】
<比較例1>不活性ガス通気を行わない2,2’−フェニレンビス(3,1−ベンズオキサジン−4−オン)の製造
工程1:アミド化において反応時に窒素の通気を行わなかった以外実施例1と同様に行なった。表1に、収率、融点、HPLC純度を示す。
【0042】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法は、医薬品、紫外線吸収剤としてのビスベンゾオキサジノン化合物の製造に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるアントラニル酸誘導体と下記式(2)で表される芳香族ジカルボン酸ジハロゲン化物とを、不活性ガス気流下、有機溶媒中で反応させ、下記式(3)で表されるアミド化合物を製造した後、
【化1】

(但し、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、水酸基、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、炭素数1〜3のアシル基、炭素数1〜3のアシルオキシ基、炭素数1〜3のアルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、ニトロ基、カルボキシル基を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
得られた式(3)で表されるアミド化合物を脱水剤と反応させることからなる下記式(4)
【化2】

(但し、RおよびRは式(1)〜(3)と同じである。)
で表されるビスベンゾオキサジノン化合物の製造方法。
【請求項2】
有機溶媒は、ケトン類、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類およびエーテル類からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
不活性ガスが窒素である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
脱水剤が無水酢酸である請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)〜式(4)の、Rが、水素原子、Rが水素原子、Xが塩素原子である請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の製造方法によって得られる式(4)で表されるビスベンゾオキサジノン化合物。
【請求項7】
式(4)のRが水素原子、Rが水素原子である請求項6記載のビスベンゾオキサジノン化合物。

【公開番号】特開2009−286717(P2009−286717A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139849(P2008−139849)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(508158263)錦海化学株式会社 (2)
【Fターム(参考)】