説明

ビスホスホネート吸入剤及びその使用方法

本発明はビスホスホネート活性剤の有効量を主体に経肺的に投与する方法を提供する。本発明はその活性剤を1種以上の粘膜保護剤と共に、主体に投与することからなり、該粘膜保護剤は1種以上の保護酵素、及び/または保護アミノ酸、及び/または保護ペプチドを含んでいてもよい。また、本発明の方法の実施に使用のための吸入組成物も提供する。本発明方法及び組成物は、限定的でなく、骨吸収症状の治療を含む種々の症状への使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
米国特許法 35 U.S.C. § 119 (e)の規定に基づき、本願は2006年11月21日出願の米国仮特許出願 Serial No. 60/866,787の優先権を主張し、かつそこでの開示が引例としてここに合体される。
【0002】
(技術分野)
ビスホスホネート及びその薬理学的に許容される塩は、種々の異なった適用(用途)に使用されている。例えばビスホスホネートは、骨粗鬆症、パジェット病及び癌を患っている患者の治療において、骨吸収阻止剤として使用されてきた。
【背景技術】
【0003】
過去に、ビスホスホネートは経口投与や静脈内投与されていた。しかし、ビスホスホネートの経口投与や静脈内投与に伴う欠点がある。例えば、経口投与後のビスホスホネートのバイオアベイラビリティは極めて低い。更に、ビスホスホネートは胃腸管に刺激を与える。更に患者が経口投与後に横たわることを主として妨害されるので、患者のコンプライアンスは問題である。
ビスホスホネートの静脈内投与は経口投与の欠点のいくらかを克服できるが、完全には満足されない。例えば、ビスホスホネートの急激な静脈内投与は腎臓合併症を起こしかねないので、ビスホスホネートの静脈内投与は通常長時間要する。
【0004】
上記ビスホスホネートの経口投与及び静脈内投与の欠点のために、ビスホスホネートの吸入投与が提案されている(米国特許6,743,414参照)。しかし、ビスホスホネートの吸入投与は肺の粘膜組織にダメージを与えうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(発明の要約)
本発明はビスホスホネート活性剤の有効量を主体に、経肺ルートで投与する方法を提供する。本発明は主体に、一種以上の保護された酵素及び/または保護されたアミノ酸及び/または保護されたペプチドなどの粘膜保護剤と共同してその活性剤を投与することを含む。また、本発明の態様に従った方法の実施に使用するための吸入組成物が提供される。本発明の態様に従う方法及び組成物は、骨吸収症状の治療を含み、これに限定されない色んな適用への使用に関する知見である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】下記実験項で報告の如く、ラットにアレンドロネートの静脈内投与或いは経肺投与後その測定された血漿濃度プロファィルのグラフである。
【図2】下記実験項で報告の如く、ラットにパミドロネートの静脈内投与或いは経肺投与後のその測定された血漿濃度プロファィルのグラフである。
【図3】下記実験項で報告の如く、ラットにアレンドロネートと共にSOD、システイン、タウリン、或いはグルタチオンを経肺投与後4時間後のBALF中の測定されたLDH活性のグラフである。
【図4】下記実験項で報告の如く、ラットにパミドロネートと共にSOD、或いはシステインを経肺投与後4時間後のBALF中の測定されたLDH活性のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(定義)
化合物、そのような化合物を含む薬学的組成物、そのような化合物及び組成物の使用方法を記述する際に、以下の用語は特に断らない限り、以下の意味を有す。以下に定義されるモイエティ(moiety)が種々の置換基で置換されていてもよく、そしてそれぞれの定義はそのような置換されたモイエティがその範囲に含まれることが意図されていると、また理解されるべきである。
“アルキル”とは、1価の飽和脂肪族炭化水素基で、特に炭素数10まで、炭素数9まで、炭素数8まで、或いは炭素数3までを有する基である。その炭化水素鎖は、直鎖状或いは分枝鎖状のどちらでもよい。この用語はメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、n−ヘキシル、n−オクチル、tert−オクチル等の基により例示される。用語”アルキル”にはまた、ここに定義される”シクロアルキル”も含まれる。
【0008】
“シクロアルキル”は炭素数3から約10を有し、単環或いは融合及び架橋システムを含む複数縮合環であり、それらは必要に応じ、1から3個のアルキル基で置換されうる。そのようなシクロアルキル基には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロオクチル、1−メチルシクロプロピル、2−メチルシクロペンチル、2−メチルシクロオクチルなどの単環構造を含む。
【0009】
“ヘテロシクロアルキル”は、N、O及びSから独立して選択される1個以上のヘテロ原子を含む安定な異項環性非芳香族環及び融合環である。その融合異項環システムは炭化水素環を含んでいてもよく、1つの異項環を必要とするだけである。そのような異項環性非芳香族環の例には、限定的でなく、アジリジニル、アゼチジニル、ピペラジニル及びピペリジニルが含まれる。
【0010】
“ヘテロアリール”とは安定な異項環性芳香族環、及びN、O及びSから独立して選ばれる1個以上のヘテロ原子を含む融合環を意味する。その融合異項環システムは、炭化水素環を含んでいてもよく、1つの異項環を必要とするだけである。そのような異項環性芳香族環の例には、限定的でなく、ピリジン、ピリミジン及びピラジニルを含む。
【0011】
“アリール”とは、母核の芳香族環システムの1個の炭素原子から1個の水素原子を除去することから導かれる1価の芳香族炭化水素基を意味する。代表的アリ−ル基には、限定的でなく、ベンゼン、エチルベンゼン、メシチレン、トルエン、キシレン、アニリン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン等から導かれる基を含む。
【0012】
“アラルキル”または“アリールアルキル”とは、上記に定義した1個以上のアリール基で置換された、上記に定義したアルキル基を意味する。
【0013】
“ハロゲン”とは、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを意味し、いくらかの具体例では、そのハロゲンはフルオロまたはクロロである。
【0014】
“置換された”とは、1個以上の水素原子が同一または異なった置換基で独立して置き換わった基を意味する。“置換”基とは、特に1個以上の置換基を有する基群、例えば、アミノ、置換アミノ、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、アミノカルボニルオキシ、アリール、アリールオキシ、アジド、カルボキシル、シアノ、シクロアルキル、置換シクロアルキル、ハロゲン、ヒドロキシル、ケト、ニトロ、チオアルコキシ、置換チオアルコキシ、チオアリール、置換チオアリール、チオケト、チオール、アルキル−S(O)−、アリール−S(O)−、アルキル−S(O)−及びアリール−S(O)−からなる群から選ばれる1〜5個の置換基、特に1〜3個の置換基を意味する。
【0015】
(詳細な記述)
本発明はビスホスホネート活性剤の有効量を主体に肺を経由して投与する方法を提供する。本発明は保護された酵素及び/または保護されたアミノ酸及び/または保護されたペプチドのような粘膜保護剤と共同して主体にこの活性剤を投与することを含む。発明の態様に従う、方法の実施に使用される吸入組成物もまた、提供される。
本発明の態様の従う方法及び組成物は、骨吸収症状の治療を含め、これに限定されず、種々の異なった適用の使用である。
【0016】
本発明につき詳細に記述する前に、本発明は特定の態様に限定されず、そしてそれなりに変化してよいことは理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付のクレーム(請求項)によってのみ制限されるが故に、ここに使用されている用語は特定の態様のみの記述のために用いられ、限定する目的でないと理解されるべきである。
【0017】
ある値の範囲が示されている場合、その間に存在する値のそれぞれ(その範囲の上限と下限との間において、文脈がそうでないことを明らかに示さない限り、下限の1/10の単位にまで)、及び、その言及された範囲における任意の他の言及された値または間に存在する値は本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は独立してそれらのより小さい範囲に含まれうる。従って、そのような実施形態もまた本発明に包含される。しかし、そのような実施形態は、言及された範囲における何らかの特に含まれない限界に依存する。言及された範囲が上限、下限の一方または両方を含む場合、それらの含まれる上限、下限のいずれかまたは両方を含まない範囲もまた、本範囲に含まれる。
【0018】
他に規定がなければ、ここで使用された全ての技術的、科学的用語は本発明が属する当業者によって共通的に理解される意味と同じ意味を有する。ここに記載した方法、材料と類似または均等なそれらは、また、本発明の実施または試験に使用されうるが、代表的例示の方法、材料を目下記載する。
【0019】
本文及びクレームで使用されている如く、単数形、“a”、“an”、及び“the”は、文脈が明確に他のことを指示していなければ、複数対象物を含む。クレームがいかなる任意の要素を除外するよう起案されているかもしれないことが更に注意される。従って、この記述はクレーム要素の列挙に関連して、“solely”、“only”等の排他的用語の使用、または“negative”限定の使用のための先行基礎として、使用されると意図される。
【0020】
本開示を読むとき当業者にとって明らかな様に、ここに記載の或いは例示の個々の具体例は、本発明の範囲或いは精神から逸脱することなく、他のいくつかの態様の特徴と容易に分離或いは結合しうる別個の構成及び特徴を有する。ここに挙げた方法は、事象の挙げた順番のみならず、論理的に可能な挙げた事象のいかなる順番で実施してもよい。
【0021】
本明細書で引用した全ての刊行物と特許は、ここの刊行物や特許があたかも特定的にそして個別的に引例によって合体されると指示されるが如くに、ここで引例によって合体され、そしてその刊行物が引用しているそれらに関連する方法及び/または材料を開示、記載する文献によりここに合体される。刊行物の引用は本願の出願日前の単なる開示を提供するもので、本発明が先発明の特典によりそのような刊行物に先行する権利を放棄したものであることを容認するものでない。更に、提供された刊行物の日付は現実の刊行日と異なるかもしれず、ここに確認される必要があるかもしれない。
【0022】
主題の発明を更なる記載において、主題の方法はまず詳細に記載され、ついで種々の組成物、例えば、主題の方法の使用の知見である製剤やキットのレビュー、及び主題の方法及び組成物が使用の知見である種々の代表的適用の議論を行う。
【0023】
方法
本発明はビスホスホネート活性剤の主体への投与方法を含む。主体は、例えばビスホスホネート活性剤(以下により詳細に述べる。)により、治療しうる疾病や症状の治療のためにそれを必要とするかもしれない。主題の方法はビスホスホネート活性剤を主体に、粘膜保護剤と一緒に投与することを包含する。ある態様では、粘膜保護剤は保護された酵素であり、ある態様では、粘膜保護剤は保護されたアミノ酸であり、いくつかの態様では、粘膜保護剤は保護されたペプチドである。ある態様では、本活性剤は2〜3の保護された酵素、保護されたアミノ酸及び保護されたペプチドと組み合わせて投与される。
【0024】
“組み合わせて”とは、一定量の粘膜保護剤がビスホスホネート活性剤投与前或いは投与後、同時から5時間まで、或いはそれ以上、例えば10時間、15時間、20時間或いはそれ以上、いずれかに投与されることを意味する。ある態様ではビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤は連続して投与され、例えばその際にビスホスホネート活性剤は、粘膜保護剤の前後に投与される。他の態様では、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤は主体に同時に投与され、例えばその際にはビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤は主体に2つの別々の剤形として、或いは所望により3つの別々の剤形として、同時に投与され、或いは単一製剤にして、主体に投与される。上記の通り、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤が別々に或いは同時に投与されるかは関係なく、両剤は本発明の目的のために、一緒に、或いは組み合わせて(連続して)投与されるとみなされる。2剤または所望の3剤の投与ルートは、異なっていてもよく、関心のある投与ルートは限定的でなく、以下に詳述するルートを含む。
【0025】
ビスホスホネート活性剤
主題の方法において、ビスホスホネート活性剤は主体に粘膜保護剤と組み合わせて投与される。関心のあるビスホスホネート活性剤には、骨吸収阻害能を有するビスホスホネート化合物を含む。ビスホスホネート化合物は、ジホスホネート或いはビスホスホニックアシッドとしてまた公知である。ビスホスホネート活性剤は骨組織に高い親和性を有する。ある態様では、ビスホスホネート活性剤は細胞エネルギー代謝におけるアデノシン3燐酸と競合する化合物に細胞内で代謝される。ある態様では、ビスホスホネート活性剤は、ファルネシル二燐酸合成(FPPS)酵素に結合し、FPPS酵素活性を阻害する。FPPSは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoA(HMG−CoA)リダクターゼ経路(或いはmevalonate 経路)に関与する酵素である。主題の組成物に有用なビスホスホネート活性剤には限定的でなく、米国特許4,621,077;5,183,815;5,358,941;5,462,932;5,661,174;5,681,590;5,994,329;6,015,801;6,090,410;6,225,294;6,414,006;6,482,411;及び6,743,414に開示の化合物を含み、そしてその開示は引例としてここに合体される。
【0026】
与えられたビスホスホネート活性剤が本発明に従う使用に適しているか否かは、以下の実験項で採用されている検定法を用いて容易に決定できる。ある態様においては、ビスホスホネートが以下の実験項で記載の本来の場所でのトランス−肺吸収試験を用いて決定される所望の活性を示すならば、それが主題の方法の使用に適している。
【0027】
ある態様において、関心のあるビスホスホネート活性剤は式(I)の化合物:

(I)、
またはその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、その水和物、及びそのプロドラッグ、並びにその立体異性体である。
但し、Rは水素原子、−OH及びハロゲン原子から選択される基であり、そしてRはハロゲン原子、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10シクロアルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アリール基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アラルキル基、置換または非置換C−C10ヘテロシクロアルキル基、または置換または非置換C−C10ヘテロアリール基である。但しRの各炭素原子は必要に応じ、窒素原子または硫黄原子で置換されていてもよく、そしてRは合計で3個以下の窒素原子または硫黄原子である。
【0028】
ある態様では、Rはハロゲン原子、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−Cアルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−Cシクロアルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−Cアリール基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−Cアラルキル基である。但しRの各炭素原子は必要に応じ、窒素原子または硫黄原子で置換されていてもよく、そしてRは合計で2個以下の窒素原子または硫黄原子であり、Rは8個以下の炭素数である。
【0029】
ある態様では、Rは直鎖或いは分枝鎖状C−Cアルキルであり、その際のRの各炭素原子は必要により、窒素原子で置換されていてもよく、Rにおける窒素原子の総数はせいぜい1であり、その際のC−Cアルキルは必要に応じアミノ基で置換されていてもよい。
【0030】
ある態様では、Rがヒドロキシまたはフッ素原子であり、Rはフッ素原子または直鎖或いは分枝鎖状C−Cアルキルであり、該基はアミノ基及び/またはフッ素原子などの置換基で置換されていてもよく、そしてアルカリ金属、有機塩基及び塩基性アミノ酸との塩である。
【0031】
ある態様では、Rは:

である。
【0032】
但しXはハロゲンである。
【0033】
ある態様では、Rは:

である。
【0034】
但しXはハロゲンであり、Rは水素原子である。
【0035】
ある態様では、Rは−CH、−CH−CH−NH、−(CH−NH、−(CH−N(CH、−(CH−NH



、または

である。
【0036】
興味ある具体的なビスホスホネート活性剤を表1に示す(但し化合物は式(I)の化合物である。):
【表1】

【0037】
興味ある具体的なビスホスホネートには限定的でなく:(4−アミノ−1−ヒドロキシブチリデン)−ビスホスホネートまたは4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1、1−ビホスホン酸(アレンドロネート);(ジクロロメチレン)−ビスホスホネート(クロドロネート);(1−ヒドロキシエチリデン)−ビスホスホネート(エチドロネート);[1−ヒドロキシ−3−(メチルペンチルアミノ)プロピリデン]ビスホスホネート(イバンドロネート);[(シクロヘプチルアミノ)−メチレン]ビスホスホネート(インカドロネート);[1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)ピリジン−3−イルエチリデン]ビスホスホネート(ミノドロネート);(6−アミノ−1−ヒドロキシヘキシリデン)ビスホスホネート(ネリドロネート);[3−(ジメチルアミノ)−ヒドロキシプロピリデン]ビスホスホネート(オルパドロネート);(3−アミノ−1−ヒドロキシプロピリデン)ビスホスホネート(パミドロネート);[1−ヒドロキシ−2−(3−ピリジニル)−エチリデン]ビスホスホネート(リゼドロネート);[[4−クロロペンチル)チオ]−メチレン]ビスビスホスホネート(チルドレネート);[1−ヒドロキシ−2−(1H−イミダゾール−1−yl)エチリデン]ビスホスホネート(ゾレドロネート);[(シクロヘプチルアミノ)−メチレン]ビスホスホネート(インカドロネート);[1−ヒドロキシ−2−イミダゾ−(1,2−a)ピリジン−3−イルエチリデン]ビスホスホネート(ミノドロネート);5−アミノ−1−ヒドロキシペンタン−1、1−ビホスホン酸;4−アミノ−1−ヒドロキシブタン−1、1−ビホスホン酸;ジフルオロメタンビホスホン酸;及びそれらの薬理学的に許容される塩が挙げられる。
【0038】
薬理学的に許容される塩には、限定的でなく、アルカリ金属(例えばナトリウム及びカリウム)塩、アルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩、無機酸(例えばHCl)塩、及び有機酸(例えばクエン酸及びリジンなどのアミノ酸)塩が挙げられる。1つの態様としては、ビスホスホネート活性剤はナトリウム塩である。ビスホスホネート活性剤がアレンドロネートのときは、ある態様では、アレンドロネートのモノナトリウム塩で、3水和物の形で用いられる。ある態様では、ビスホスホネート活性剤は無水物形である。
【0039】
粘膜保護剤
“粘膜保護剤”とはビスホスホネート活性剤が主体に経肺的に投与されたときにビスホスホネート活性剤によって惹起される望ましくない刺激を減少させる剤を意味する。したがって、粘膜保護剤はビスホスホネート誘導肺刺激を減少させる剤である。興味ある粘膜保護剤は、以下の実験項で記載する本来の場所でのトランス−肺吸収試験及び肺炎症試験を用いて決定できるように、ビスホスホネート誘導肺刺激を約50倍以上、約100倍以上などの約2−10倍以上減少させる粘膜保護剤である。
【0040】
興味ある粘膜保護剤には、限定的でなく:保護酵素、保護アミノ酸及び保護ペプチドを含む。ある態様では、単一粘膜保護剤が使用される。更なる他の態様では、2つ以上の異なった粘膜保護剤、例えば:保護された酵素と保護されたアミノ酸;保護された酵素と保護されたペプチド;保護されたアミノ酸と保護されたペプチド;2つの異なった保護酵素;2つの異なった保護アミノ酸;2つの異なった保護酵素;2つの異なった保護ペプチド;保護された酵素、保護されたアミノ酸及び保護されたペプチド;等が用いられる。
【0041】
興味のある保護酵素には、例えばPeskin et al.,Clinica Chimica Acta,293:157−166,2000に記載の検定法を用いて決定できるように、スーパーオキシドの酸素と過酸化水素への不動変化を触媒しうる酵素を含む。
【0042】
興味ある酵素の例としては、制限的でなく、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオンリダクターゼ、カタラーゼ、その酵素的活性部分或いはその変異体が挙げられる。そのような酵素は米国公開特許公報2006/0165672に記載されている。適切なSODは、ヒトSODと子牛SODである。ある態様では、該酵素はリコンビナント酵素である。酵素の活性部は酵素の全アミノ酸配列を欠くポリペプチドであり、少なくともその酵素の酵素活性の本質部を保持する。酵素の活性変異体は、酵素のアミノ酸配列の挿入、削除、或いは置換変異を有し、少なくともその酵素の酵素活性の本質部を保持する。
【0043】
“酵素活性の本質部”は、全長酵素の酵素活性の少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも80%、或いは少なくとも90%である。
【0044】
“リコンビナント”とは、当業界の通常の意味であり、ビトロで、合成され、発現され、さもなければ操作された酵素、細胞中にその酵素を産生させるための酵素をコードするリコンビナントポリ核酸またはベクター(非天然型ポリ核酸またはベクター)の使用方法または他の生物学的システム(非天然的システム)、またはそのような方法により生産された酵素を意味する。
【0045】
“変異体”とは、天然の酵素のアミノ酸配列を有する酵素で、但し変異酵素のアミノ酸配列が修飾されている。そのような変異酵素は天然の酵素のアミノ酸配列と必ず100%以下の同一性或いは相同性を有し、そして天然の酵素のアミノ酸配列と少なくとも75%のアミノ酸配列の同一性或いは相同性、または少なくとも80%、または少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%のアミノ酸配列の同一性或いは相同性を有する。そのように修飾されたアミノ酸配列は天然の酵素のもとのアミノ酸配列の1つ以上のアミノ酸の挿入、削除及び/または置換を含む。
【0046】
興味ある保護アミノ酸には、限定的でなく、タウリン及びシステイン、並びに薬学的に許容される塩、溶媒和物、及びその誘導体を含む。
【0047】
興味ある保護ペプチドには、限定的でなくグルタチオン、並びにその薬学的に許容される塩、その溶媒和物、及びその誘導体を含む。
【0048】
上記の通り、粘膜保護剤の有効量は主題の方法で用いられる。ある態様では、使用される粘膜保護剤の量は、使用されるビスホスホネート活性剤の量以下である。他の態様では活性剤のそれと同じであり、そしてある態様では、ビスホスホネート活性剤の量以上である。有効量は以下の実験項で提供されるデータを用いて経験則的に容易に決定できる。
【0049】
本発明のある態様では、ビスホスホネート活性剤がアレンドロネートであり、粘膜保護剤にはスーパーオキシドジスムターゼ、タウリン、システイン及びグルタチオンを含む。
【0050】
本発明のある態様では、ビスホスホネート活性剤はパミドロネートであり、粘膜保護剤にはスーパーオキシドジスムターゼ、タウリン、システイン及びグルタチオンを含む。
【0051】
剤形と投与
また、主題の方法で使用されるビスホスホネート活性剤及び/または粘膜保護剤を含有する薬学的に許容される組成物も提供される。ある態様では、ビスホスホネート活性剤及び/または粘膜保護剤は、例えば薬学的に許容される塩の形で、主体に経肺的投与用に製剤される。例えば、組成物が別々の剤形として投与される(たとえば、それらが連続して投与される態様において)ある態様では、それぞれが異なった活性剤を含有する明らかに別々の薬学的組成物が提供される。ある態様では、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の両方を含む単一剤形(即ち、両活性剤を含む1つの組成物)が提供される。
【0052】
具体的には、ビスホスホネート活性剤及び/または粘膜保護剤が通常の薬学的に許容される賦形剤やビヒクルなどの増量剤と混合され、そして経肺投与に適した剤形で使用される。適切な剤形は水溶液、懸濁液等である。そのような薬学的組成物は、ある態様では、約1から約30重量%などの約0.1から約90重量%の活性成分を含む。
【0053】
液状組成物は、例えば、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコールのような非水溶性溶媒、油、水などの適当な液状賦形剤に、懸濁化剤、保存剤、界面活性剤、湿潤剤、香料或いは着色剤と共に化合物或いは薬学的に許容される塩の懸濁液または溶液として存在してよい。代わりに、液状剤形は、再現可能な粉末から調製されうる。
【0054】
興味ある態様は、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤が両剤の有効量を含んでいる以外に、他の適切な化合物と賦形剤を含有する単一薬学製剤として投与されるか、そして他の活性剤と併用して使用してもよい。本発明は、従って、また薬学的に許容される賦形剤を含む薬学的組成物を含む。薬学的に許容される賦形剤には、例えば、適当なビヒクル、増量剤、賦形剤或いは希釈剤などで容易に入手しうるものである。本発明の薬学的組成物は更に、当業界で公知の他の活性剤を含んでもよい。
【0055】
本発明の製剤を主体に投与する種々の適切な方法が利用でき、そして、特殊な剤形を2つ以上のルートでの投与が可能であるが、特定のルートが他のルートよりも一層早急で、一層効果的反応を提供しうることが当業者にとって判るであろう。薬学的に許容される賦形剤は所望により使用されうる。賦形剤の選択は、組成物を投与するために使用される特定の方法のみならず、部分的に特定の化合物により決定されるであろう。従って、本発明の薬学的組成物の適切な広範囲な剤形が考えられる。以下の方法及び賦形剤は単なる例示であり、限定されるべきでない。
【0056】
本発明の主題の剤形は、エアロゾル製剤に調製され、吸入投与される。これらのエアロゾル製剤(即ち吸入剤)がジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの加圧許容プロペラントに注入されうる。それらはまた、ネブライザーまたはアトマイザーの形で使用するためのような、非加圧製剤用薬剤として製剤化される。
【0057】
ここに使用される用語、“単一投与形態”とは、ヒトまたは動物の主体に単一用量として適切な物理的に分離した単位であり、各単位は薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、ビヒクルと共に所望の効果を生みだすに十分な量で、予め計算され、決定された量の本発明の化合物を含む。本発明の新規単位用量のための明細は使用する特定の化合物と達成される効果、及びホストでの各化合物に伴う薬物動態に依拠する。
【0058】
投与水準は、特定の化合物の機能、投与されるビヒクルの性質等により変わりうることは、当業者が容易に理解しうる。投与される化合物の適切な用量はいろいろな方法で当業者によって容易に決定される。
【0059】
動物、特にヒトに投与される量は、本発明の文脈において、合理的時間枠を越えて、予防用、治療用の効果を奏するに十分であるべきである。用量は用いる特定の化合物の強さ、動物の状態、体重、病気の重篤さ及び病気のステージを含む種々の要素によると当業者が認識するであろう。用量のサイズはまた、特定化合物の投与に伴う副作用の存在、性質、及び程度により決定される。適切な用法用量は、骨吸収による骨のロスを減少することで公知の骨吸収阻害剤と比較して決定されうる。
【0060】
必要に応じ、本薬学的組成物は、緩衝剤、界面活性剤、粘着修正剤、保存剤などの他の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。この様な成分は当業界で公知である。例えば、米国特許5,985,310を参照のこと。そしてこの開示は引例としてここに合体される。本発明の製剤の使用に好ましい他の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)に開示されている。
【0061】
ある態様では、本発明の製剤は主体に経肺ルートで投与される。ある態様では、経肺投与は、吸入投与形態で、直接呼吸器官に、或いは呼吸気道、気管、気管支、細気管支、肺、肺胞管、肺胞嚢(alveolar sacs)及び/または肺胞に直接投与される。その製剤は常法で投与されてよく、例えば、限定的でなく、定量噴霧、ネブライザー、アトマイザー、呼吸活性化(breath activated)或いは粉末で投与される。本発明の方法はまた、ドロッパー、ピペットやカニューレを用いて製剤をホストの鼻腔や口腔に直接投与することも含む。
【0062】
ある態様では、剤形は粉末形である。該剤は約1から約10μmの範囲の粒子サイズ、例えば約2〜約8μm粒子サイズの散剤として使用してもよい。薬学的見地から粉末の粒子サイズは約100μm径を越えない。ある態様では、微粒子化された個体粉末粒子サイズは、約10μm或いはそれ以下の径などの約25μm以下である。吸入治療用の粒子サイズは約2から約10μmの範囲でよい。
【0063】
薬剤の濃度は所望の投与量に依拠する。正確な治療用量は、年齢、体重、性別、主体の状態、病気の性質と症状、及び他の要因に依拠される。通常の知識を有する医師はその特定の患者が必要としている薬剤の有効量を容易に決定し、処方しうる。
【0064】
ある態様では、製剤はプロペラント或いはプロペラントと溶媒に懸濁または分散させた活性剤を含む粉末化エアロソル製剤である。プロペラントは一般的には所望の気体圧と製剤の安定性を提供すべく選択された液化クロロフルオロカーボン類(CFCs)の混合物から構成される。プロペラント11、12及び114は、吸入投与用エアゾル製剤に最も広く用いられている。ほかに常用されているプロペラントはプロペラント113、142b、152a、124及びジエチルエーテルであり、これらはデュポンフルオロケミカルズカ(Wilmington,DE)から入手しうる。化合物1,1,1,2−テトラフルオロエタンも又医薬エアゾル製剤用常用プロペラントである。プロペラントは吸入総重量の40〜90%である。
【0065】
吸入組成物はまた、燐酸緩衝液(PBS)などの分散剤や溶媒を含んでいてもよい。界面活性剤はまた、分散剤としても使用されている。界面活性剤は一般的には、製剤総重量の5%を越えない量で存在する。それらは界面活性剤対ビスホスホネート活性剤の重量比は1:100から10:1で存在する。しかし製剤中の薬剤濃度が極めて低い場合には、界面活性剤は、この重量比を越えてもよい。
【0066】
本発明の吸入製剤は好都合な吸入器で配送されうり、その器にはネブライザーやアトマイザーが含まれる。
【0067】
本発明の方法及び組成物において、薬学的組成物は、適当な薬学的希釈剤、賦形剤やキャリアーと混合して投与してよい。更に所望或いは必要により、適当な賦形剤、滑沢剤、崩壊剤及び着色剤もまた、活性成分と不活性キャリアー物質の混合物に加えることもできる。
【0068】
ある態様では、薬学的組成物はビスホスホネート活性剤、或いはその薬理学的に許容される塩及び、例えばSOD、タウリン、システイン及びグルタチオンなどの1種以上の粘膜保護剤を含有する粉末製剤である。ある態様では、その薬学的組成物は更に、可塑剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、安定剤、マスク剤などの1種以上の賦形剤を含む。ある態様では、粉末製剤の粒子の表面が適当な被覆剤で被覆される。ある態様では、その薬学的組成物は更に、吸入器バルブの構成パーツの滑剤のみならず、化合物の粒子間の滑りを提供するミリスチン酸イソプロピル、軽質鉱油や他の物質などの滑剤を含む。
【0069】
ある態様では、薬学的組成物はビスホスホネート活性剤、或いはその薬学的に許容しうる塩及び例えば、SOD、タウリン、システイン及びグルタチオンなどの1種以上の粘膜保護剤を含有する液剤或いは懸濁剤である。ある態様では、液剤或いは懸濁剤は、水に溶解或いは懸濁した剤を含有する。ある態様では、液剤或いは懸濁剤は、更にエタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの1種以上の溶媒を含有する。ある態様では、液剤或いは懸濁剤は、更に1種以上の保存剤、溶解剤、緩衝剤、等張化剤、界面活性剤、吸収促進剤または増粘剤を含有する。ある態様では、薬学的組成物は懸濁剤であり、そして更に懸濁化剤を含有する。
【0070】
有用性
主題の方法は種々の適用(用途)への使用であり、ある適用においては、その方法は、骨再吸収の阻害などの少なくとも1つの細胞機能の調節方法である。主題の方法は、骨吸収、骨塊の消失、骨粗しょう症、骨減少症、尿路結石症、カルシウム過剰症、パジェット病(または変形性骨炎)、骨移転、多発性骨髄腫、腫瘍性骨病変及び骨の脆弱症の危険を惹起或いは増加する他の症状の治療、可能性の減少、或いは阻止への使用である。本発明のある態様では、主題の方法はまた、非脊椎骨骨折の可能性とリスクを減少させるために有用である。ある態様では、ビスホスホネート活性剤を必要とする主体は骨粗鬆症の者か、更年期以降の者、或いは双方である。ある態様では、主体は骨粗鬆症の、更年期以降、或いは双方である婦人である。ある態様では、主体は骨形成不全症を患っている若者である。
【0071】
この点で、主題の方法及び組成物は、ビスホスホネートを用いて治療されうるようなビスホスホネートの公知の適用への使用の知見である。本発明の主題の組成物の使用は、例えば、限定的でなく、骨吸収、骨塊の消失、骨粗鬆症、骨減少症、尿路結石症、カルシウム過剰症、パジェット病(または変形性骨炎)、骨移転、多発性骨髄腫、腫瘍性骨病変及び骨の脆弱症の危険を惹起或いは増加する他の症状を含む症状の治療に特に有用である。このような状態において、本発明の組成物を使用すると所望のビスホスホネート活性を留保しながら、望ましからざる毒性が弱められた結果となる。
【0072】
従って、主題の方法、組成物はビスホスホネート投与が指示されている治療的適用への使用である。代表的治療適用は、骨吸収と骨塊の消失で特徴づけられる例えば骨粗鬆症及びその関連症状の治療である。
【0073】
治療とは、ホストを悩ましている症状を伴う症候の少なくとも改善が達せられることを意味し、その際の改善とは、治療されている症状を伴う、例えば症候などのパラメーターの大きさの少なくとも減少に関与する広い意味で使用される。従って、治療とはまた、病理的症状、或いはそれに伴う最低の症候が完全に阻止、例えば出来事の阻止、完全な停止、例えばホストがその症状を呈しないか、或いは少なくともその症状を特徴づける症候を呈しないような終結状態を含む。
【0074】
色んなホストは主題の方法に従い治療されうる。一般に、そのようなホストは“哺乳類”または“哺乳動物”であり、これらの用語は、食肉目(犬や猫など)、齧歯目(マウス、モルモット及びラッテなど)、及び霊長目(ヒト、チンパンジー及びサルなど)を含む哺乳綱の範囲の生物体を記載すべく広く使用される。多くの事例では、そのホストはヒトである。ある態様ではそのホストは女性である。
【0075】
主題の方法は、他の適用の中で、骨粗鬆症上含む骨症状の治療への使用の知見である。そのような適用において、ビスホスホネート活性剤及び粘膜保護剤の有効量は、それを必要とする主体に投与される。治療とは上に定義の通り、広く使用され、例えば、病気の1つ以上の症候の少なくとも改善、その完全な停止、及び治療(cure)などの病状の反転及び/または完全な除去を含む。
【0076】
本発明の文脈から、動物、特にヒトに投与される量は合理的な時間枠を超えて、動物に予防または治療的応答をもたらすに十分であるべきである。用量は投与される特定の化合物の強さ、動物の状態、体重、病気の重篤さ及び病気のステージを含む種々の要素によると当業者が認識する。用量のサイズはまた、特定化合物の投与に伴う副作用の存在、性質、及び程度により決定される。適切な用法用量は、骨吸収阻害剤として公知の薬剤、特に非修飾のビスホスホネートと比較して決定されうる。適切な用量は重篤な副作用無しに、骨吸収阻害を引き起こす量である。ある化合物の適当な量と適切な投与で、本発明は、広範囲の細胞内効果、例えば骨吸収の部分的〜本質的完全阻害を提供する。
【0077】
個人個人は便利なプロトコールを用い主題の方法を必要とされると診断されるかもしれない、そして一般的に主題の方法が必要であると知られている。例えば彼らは対象の病状を患っているか、或いは主題の方法を実施する前に、対象の症状を患うリスクがあると既に決定されている。
【0078】
主題の方法及び組成物が、使用される特定の適用(用途)は、米国特許4,621,077;5,183,815;5,358,941;5,462,932;5,661,174;5,681,590;5,994,329;6,015,801;6,090,410;6,225,294;6,414,006;6,482,411;及び6,743,414に記載されている適用を含み、この開示は、引例としてここに合体される。
【0079】
キットとシステム
上記のような主題の方法の実施に使用されるキットも又、提供される。例えば、主題の方法を実施するためのキットとシステムは、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の1つか、双方を含む1つ以上の薬学的製剤を含んでいてもよい。従って、ある態様ではキットは、1つ以上の単一用量を含んでいてもよく、その組成物はビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の双方を含む。他の態様では、キットは、2つ以上の別々の薬学的組成物を含んでいてもよく、各々がビスホスホネート活性剤か或いは粘膜保護剤のいずれかを含む。
【0080】
上記の組成物に加うるに、主題のキットは、更に主題の方法を実施するための指示書を含んでいてもよい。これらの指示書は、いろいろな形の主題のキットに存し、その1つ以上はキット中でよい。これらの指示書が存する1つの形は、適当な媒体或いは代替物上に印刷された情報、例えば、情報が印刷された紙で、キットの包装、包装挿入物などの中に存する。なお他の手段としてはコンピューターが読み取りうる媒体、例えばディスケット、CDなどであり、それに情報が記録されている。なお、提示できる他の手段は、離れた場所で情報にアクセスできるインターネット経由で使用しうるウエブサイトアドレスである。いずれにしても便利な手段はキットの中にあることであるかもしれない。
【0081】
ここに使用されている用語“システム”は、単一或いは異なる組成物に存するビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の集積であり、それが主題の方法の実施の目的のために寄せ集められる。例えば、本発明に従い、主体に共に投与され、寄せ集められる、別々に得られたビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の投与形態は、本発明に従うシステムである。
【0082】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。
【実施例】
【0083】
実験
以下の実施例は、本発明を如何にして作り、使用するかの完全な開示と記述を当業者に提供するように表示され、発明者が発明と考えている発明の範囲を限定する意図でもなければ、以下の実験が全てであり、或いは実行された唯一の実験であることも意図するものでない。
使用した数値(例えば、量、温度等)に関する正確さを確保するための努力がなされてきたが、しかしいくらかの実験的エラー及び偏差は考慮されるべきである。他に指示がなければ、部は重量部、分子量は分子の平均重量、温度はセンチグレード、及び圧は大気圧或いはその近辺である。
【0084】
I.投与ルートの分析
A.投与用溶液
静脈投与用の2.5mg/mlのアレンドロネート(トロントレサーチケミカルズInc.製)と経肺投与用の12.5mg/mlのアレンドロネート(トロントレサーチケミカルズInc.製)がpH7.4の等張緩衝液(PBS)を用いて調製された。
静脈投与用の12.5mg/mlのパミドロネート(トロントレサーチケミカルズInc.製)と肺投与用の12.5mg/mlのパミドロネート(トロントレサーチケミカルズInc.製)がpH7.4の等張緩衝液(PBS)を用いて調製された。
【0085】
B.粘膜保護剤添加投与用溶液
経肺投与用12.5mg/mlのアレンドロネートとパミドロネート、16.7mg/ml(50000U/ml)のSOD、50mg/mlのシステイン、125mg/mlのタウリン、50mg/mlのグルタチオンはpH7.4の等張緩衝液(PBS)を用いて調製された。
【0086】
C.経肺投与
経肺吸収試験は、以下のようにして行った(次の方法はEnna,SJ,Schanker LS:ラッテの肺からのサッカライドと尿素の吸収、Am.J.Physiol.,222,409−414(1972)に開示の方法に基づいている)。
ウイスター系雄ラッテ(体重250〜300g)が本試験で使用された。ペントバルビタール麻酔下ラッテの首の中央が気道をさらすために、切開された。長さ2.5cmのポリエチレンチューブ(ID 1.5mm、OD 2.3cm)を4番目と5番目の間の気管支の軟骨リングの甲状軟骨から0.6cmの深さに挿入し、ついで切開した皮膚を縫い合わせた。100μlのマイクロ注入器(Microliter,no.710,Hamilton Co)を100μlの投与用液で充填した。ラッテを80°で保管した。そのマイクロ注入器の先端を上記のポリエチレンチューブを介して気管支管に1から2mmまで挿入し、その溶液は1−2秒で、ラッテの呼吸に合わせて投与された。5mg/kgのアレンドロネートと5mg/kgのパミドロネートがラットの肺から投与された。投与45秒後、ラッテを10°に保ち、250μlの血液を頸静脈から時間依存法で採血した。その血液を遠心分離し、(13000 rpm、10 min)血漿画分を得、分析のために−30°で直ちに保存した。
【0087】
D.静脈内投与
ウイスター系雄ラッテ(体重250〜300g)が本試験で使用された。1mg/kgのアレンドロネートと5mg/kgのパミドロネートをラッテの大腿部の静脈内に投与した。血液を採取し遠心分離(13000 rpm、10 min)し、血漿画分を得、分析のために−30°で直ちに保存した。
【0088】
E.分析条件
アレンドロネートとパミドロネートの分析はWong等による、“蛍光感知付逆相HPLCによるヒトの全血と尿中のパミドロネートの決定”Biomed. Chromatogy.(2004)18:98−101の報告を参照して以下の方法で行なった。ラッテから得た120μlの血漿画分を500μlの超純粋水で希釈した。75μlのトリクロロ酢酸(TCA)を加え、蛋白を除去し、混合物を遠心分離した(13000 rpm、5 min)。上澄み液はフィルター(0.45μm)で濾過した。塩化カルシウムと燐酸第一ナトリウムを600μlの濾過した上澄み液に加えた。水酸化ナトリウムを加え、pHを12にし、沈殿させた。混合物を遠心し、沈殿物を500μlの超純粋水で洗浄した。塩酸を沈殿物に加え、溶解し、ついで水酸化ナトリウムを加え、沈殿物を得た。遠心後500μlの超純粋水で洗い、沈殿物を100μlの50mM NaEDTA(pH 10)に溶解した。30μlのフルオロカミン/アセトニトリル溶液(3mgフルオロカミン/mlアセトニトリル)を添加後、100μlのジクロロメタンを加え、激しく撹拌し、ついで遠心(13,000 rpm、5 min)した。得られた上澄み液を集め、注射容量として、その10μlを以下の条件下蛍光逆相HPLCで測定した。
【0089】
使用装置:Shimadzu LC−10A system
カラム:COSMOSIL C18(4.6×150mm)
移動相:95% 1mM NaEDTA−メタノール((97:3)pH 6.5 by 1N NaOH)、5% メタノール
流速:1.0 ml/min
感知器:蛍光感知器(Ex:395nm、Em:480nm)
カラム温度:40°
【0090】
F.結果
上記分析からの結果を図1及び2に示した。
【0091】
II.肺内炎症試験
本試験は経肺投与により薬物を投与後の主体の肺の管への薬物による刺激の程度を測定することである。液状製剤の投与後、ラッテの大動脈から血液を除去し、生理食塩水を肺動脈から注入し、潅流下ラッテの肺を洗浄する。首の中央を切開し、気管支を露出させ、そこにポリエチレン管を挿入し、気管支を16mLの燐酸緩衝液(PBS)で洗浄する(4mLずつ4回)(気管支肺胞洗浄)。得られた気管支肺胞洗浄液(BALF)を遠心(4°C、200 x g 7分間)、上澄み液を取り、乳酸ヒドロゲナーゼ(LDH)活性を測定する。
LDH 活性はLDH−毒性試験(和光純薬、大阪、日本)を用いて行う。LDHは、全ての細胞に存在する安定な酵素である。細胞のプラスマ膜が傷害されるとLDHがその細胞から急速に放出される。血漿中のLDH活性レベルの測定は細胞毒性の研究における最も広範囲に使用されるマーカーである。LDH活性のハイレベルは刺激の度合いが高いことを示し、一方LDH活性の低レベルは刺激の度合いが低いことを示す。
この検定の結果は図3及び4に示す。
【0092】
上記の発明が理解を明確にするために、例示や実施例である程度詳細に記載しているが、添付のクレームの精神または範囲内で、ある程度の変更や修正が可能であることは、本発明の教示にてらし、当業者にとって自明である。
【0093】
したがって、前述は単なる発明の原理を例示している。当業者が、ここに明らかに記載或いは示されていなくても、発明の原理を具現し、そしてその精神及び範囲に含まれる種々の変形を考案しうることは理解されるであろう。さらに、ここに列挙した全ての例示及び条件付き用語は原則的には、発明の原理と技術を助長すべく発明者により貢献された概念を理解するために読者を手助けすることを意図されており、そしてそのような特定的に列挙した例示及び条件に限定されないと理解されるべきである。更に発明の特定の例示のみならず、発明の原理、形態及び具体例を列挙した全ての記述は構造的、機能的均等の両者を含むと意図されている。更にそのような均等は現在の均等及び将来展開される均等を含み、即ち構造に関係なく同じ機能を達成すると展開される要素を含む。従って本発明の範囲は、ここに示され、記載の具体的事例に限定されるものではなく、むしろ本発明の範囲及び精神は、添付のクレームによって具現されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A method of administering to a subject in need thereof an effective amount of a bisphosphonate active agent, said method comprising:
administering by a pulmonary route to said subject an effective amount of a bisphosphonate active agent in combination with a mucosal membrane protecting agent.
【請求項2】
The method according to Claim 1, wherein said bisphosphonate active agent is a compound of formula (I):

(I)、
or the pharmaceutically acceptable salts, solvates, hydrates, and prodrug forms thereof, and stereoisomers thereof;
wherein:
R1 is selected from the group consisting of hydrogen, -OH, and halogen; and
R2 is selected from the group consisting of halogen, a linear or branched substituted or unsubstituted C1-C10 alkyl, a linear or branched substituted or unsubstituted C1-C10 cycloalkyl, a linear or branched substituted or unsubstituted C1-C10 aryl, a linear or branched substituted or unsubstituted C1-C10 aralkyl, a substituted or unsubstituted C1-C10 heterocycloalkyl, or a substituted or unsubstituted C1-C10 heteroaryl, wherein the each carbon atom of R2 may be optionally replaced with a nitrogen or sulfur atom and R2 has no more than 3 nitrogen or sulfur atoms in total.
【請求項3】
The method according to Claim 2, wherein said compound is a compound listed in Table 1.
【請求項4】
The method according to Claim 3, wherein said compound is alendronate.
【請求項5】
The method according to Claim 4, wherein said compound is a sodium salt of alendronate.
【請求項6】
The method according to Claim 3, wherein said compound is pamidronate.
【請求項7】
The method according to Claim 6, wherein said compound is a sodium salt of pamidronate.
【請求項8】
The method according to Claim 1, wherein said bisphosphonate active agent and said mucosal membrane protecting agent are administered simultaneously to said subject.
【請求項9】
The method according to Claim 8, wherein said bisphosphonate active agent and said mucosal membrane protecting agent are administered to said subject as separate formulations.
【請求項10】
The method according to Claim 8, wherein said bisphosphonate active agent and said mucosal membrane protecting agent are administered to said subject in a single formulation.
【請求項11】
The method according to Claim 1, wherein said bisphosphonate active agent and said mucosal membrane protecting agent are administered to said subject sequentially.
【請求項12】
The method according to Claim 11, wherein said bisphosphonate active agent is administered to said subject prior to said mucosal membrane protecting agent.
【請求項13】
The method according to Claim 11, wherein said bisphosphonate active agent is administered to said subject after said mucosal membrane protecting agent.
【請求項14】
The method according to Claim 1, wherein said mucosal membrane protecting agent is a protecting enzyme.
【請求項15】
The method according to Claim 14, wherein said protecting enzyme is selected from the group consisting of: superoxide dismutase (SOD), glutathione-S-transferase, glutathione reductase, catalase, and enzymatically active portions and variants thereof, and pharmaceutically acceptable salts, solvates, hydrates, and prodrug forms thereof, and stereoisomers thereof.
【請求項16】
The method according to Claim 15, wherein said protecting enzyme is SOD.
【請求項17】
The method according to Claim 1, wherein said mucosal membrane protecting agent is a protecting amino acid.
【請求項18】
The method according to Claim 17, wherein said protecting amino acid is selected from the group consisting of taurine and cysteine, and pharmaceutically acceptable salts, solvates, and derivatives thereof.
【請求項19】
The method according to Claim 18, wherein said protecting amino acid is taurine.
【請求項20】
The method according to Claim 18, wherein said protecting amino acid is cysteine.
【請求項21】
The method according to Claim 1, wherein said mucosal membrane protecting agent is a protecting peptide.
【請求項22】
The method according to Claim 21, wherein said protecting peptide is glutathione.
【請求項23】
The method according to Claim 1, wherein said method comprises administering to said subject at least two of a protecting enzyme, a protecting amino acid and a protecting peptide.
【請求項24】
The method according to Claim 23, wherein said method comprises administering to said subject a protecting enzyme, a protecting amino acid and a protecting peptide.
【請求項25】
The method according to Claim 1, wherein said pulmonary route comprises inhalation.
【請求項26】
The method according to Claim 1, wherein said method is of treating said subject for a bone adsorption disease.
【請求項27】
The method according to Claim 26, wherein said subject has been diagnosed as suffering from said bone adsorption disease.
【請求項28】
The method according to Claim 26, wherein said subject has been diagnosed as being at risk for suffering from said bone adsorption disease.
【請求項29】
The method according to Claim 26, wherein said bone adsorption disease is osteoporosis, osteopenia, urolithiasis, hypercalcemia, Paget's disease, bone metastasis, multiple myeloma, or neoplastic bone lesion.
【請求項30】
薬学的に許容されるビヒクル中に、ビスホスホネート活性剤と粘膜保護剤の両者の有効量を含有する薬学的組成物。
【請求項31】
ビスホスホネート活性剤が下記式(I)

(I)、
(式中Rは水素原子、−OH及びハロゲン原子からなる群から選択される基であり、そしてRはハロゲン原子、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10シクロアルキル基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アリール基、直鎖或いは分枝鎖状置換または非置換C−C10アラルキル基、置換または非置換C−C10ヘテロシクロアルキル基、または置換または非置換C−C10ヘテロアリール基である。但しRの各炭素原子は必要に応じ、窒素原子または硫黄原子で置換されていてもよく、そしてRは合計で3個以下の窒素原子または硫黄原子である。)
で示される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、その水和物、そのプロドラッグ、またはその立体異性体である、請求項30の薬学的組成物。
【請求項32】
該化合物が表1に掲げる化合物である、請求項30の薬学的組成物。
【請求項33】
該化合物がアレンドロネートである、請求項32の薬学的組成物。
【請求項34】
該化合物がアレンドロネートのナトリウム塩である、請求項33の薬学的組成物。
【請求項35】
該化合物がパミドロネートである、請求項32の薬学的組成物。
【請求項36】
該化合物がパミドロネートのナトリウム塩である、請求項35の薬学的組成物。
【請求項37】
該粘膜保護剤が保護酵素である、請求項30の薬学的組成物。
【請求項38】
該保護酵素がスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオンリダクターゼ、カタラーゼ、及びその酵素的に活性部分及び変異体、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、及びそのプロドラッグ、及びその立体異性体からなる群から選択される、請求項37の薬学的組成物。
【請求項39】
該保護酵素がSODである、請求項38の薬学的組成物。
【請求項40】
該粘膜保護剤が保護アミノ酸である、請求項30の薬学的組成物。
【請求項41】
該保護アミノ酸がタウリン、システイン、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、及びその誘導体からなる群から選ばれる、請求項40の薬学的組成物。
【請求項42】
該保護アミノ酸がタウリンである請求項41の薬学的組成物。
【請求項43】
該保護アミノ酸がシステインである請求項41の薬学的組成物。
【請求項44】
該粘膜保護剤が保護ペプチドである、請求項30の薬学的組成物。
【請求項45】
該保護ペプチドがグルタチオンである、請求項44の薬学的組成物。
【請求項46】
該組成物が保護酵素、保護アミノ酸及び保護ペプチドの2種以上を含有する、請求項30の薬学的組成物。
【請求項47】
該保護酵素がSODであり、該保護アミノ酸がタウリンまたはシステインであり、そして該保護ペプチドがグルタチオンである、請求項46の薬学的組成物。
【請求項48】
該組成物が保護酵素、保護アミノ酸及び保護ペプチドを含有する、請求項30の薬学的組成物。
【請求項49】
該組成物がエアロゾルである、請求項30の薬学的組成物。
【請求項50】
該エアロゾルが液体エアロゾルである、請求項49の薬学的組成物。
【請求項51】
該エアロゾルが固体エアロゾルである、請求項49の薬学的組成物。
【請求項52】
該固体エアロゾルがドライパウダーを含む、請求項51の薬学的組成物。
【請求項53】
該パウダーが約1〜100μmサイズの粒子を含む、請求項52の薬学的組成物。
【請求項54】
骨吸収症状を患っている主体の治療に使用するキットであって、
(a)ビスホスホネート活性剤及び
(b)粘膜保護剤を含有するキット。
【請求項55】
該粘膜保護剤が保護酵素である、請求項54のキット。
【請求項56】
該粘膜保護剤が保護アミノ酸である、請求項54のキット。
【請求項57】
該粘膜保護剤が保護ペプチドである、請求項54のキット。
【請求項58】
該キットが少なくとも2種の保護酵素、保護アミノ酸及び保護ペプチドを含有する、請求項54のキット。
【請求項59】
該保護酵素がSODであり、該保護アミノ酸がタウリンまたはシステインであり、そして該保護ペプチドがグルタチオンである、請求項58のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−510230(P2010−510230A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537271(P2009−537271)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/083742
【国際公開番号】WO2008/063865
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(502346286)テイコク ファーマ ユーエスエー インコーポレーテッド (26)
【Fターム(参考)】