説明

ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび脂肪族ジイソシアナートからのイソシアヌラート組成物を含む2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物

【課題】軟質ポリオールと1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物との組成物であって、低VOCを有する組成物を提供する。
【解決手段】一方のコンポーネントとして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物、または好ましくは、これらおよびヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラート(HDIトリマー)の2種以上の混合物を、並びに他のコンポーネントとして、2.5〜5.0のヒドロキシル官能価を有し、および500〜3,000の分子量を有する軟質ポリオールと硬質ポリオールとの混合物を含む、2コンポーネントポリウレタン組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれが1以上のイソシアヌラートを有する2種以上のポリイソシアナート組成物を一方のコンポーネントとして、および1種以上のポリオールを第2のコンポーネントとして含む、特にクリアコート用途における、2コンポーネントポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
周囲温度もしくはわずかに高い温度で硬化されるときに、特に低揮発性有機化合物(VOC)含有量組成物について、良好な膜硬度、可撓性、耐溶媒性、並びにスクラッチおよびマー耐性の組み合わせを提供するポリウレタンコーティング組成物についての必要性が依然としてある。PU塗膜の硬度を向上させるある既知の方法においては、従来のポリイソシアナート架橋剤であるヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)のトリマーの一部分が、イソホロンジイソシアナート(IPDI)のトリマーのような相対的に硬いかもしくは剛性の材料で置き換えられる。残念なことに、このIPDIトリマーは、より低い架橋密度のせいで、HDIのよりもかなり遅い硬化速度を有し、かつ周囲硬化条件下で劣った耐溶媒性の塗膜をもたらす。また、IPDIトリマーはそれを用いて製造された塗膜の可撓性、並びにスクラッチおよびマー耐性に悪影響を及ぼす。
【0003】
近年、ダウシン(Daussin)らへの米国特許出願公開第2006/0155095A1号は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物を開示する。コーティングを製造するためにアクリルポリオールとこのポリイソシアナート組成物との反応も開示される。しかし、ダウシンらにおけるこの組成物は、上記特性の全てと一緒に望まれる優れた耐溶媒性をもたらさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0155095A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、既知の組成物と同じもしくはよりも少ない量の溶媒もしくはVOCを含むコーティング組成物において、良好な硬度、可撓性、耐溶媒性、スクラッチおよびマー耐性、並びに耐候性を有する塗膜を提供する一方で、同時に低減された粘度を可能にする2コンポーネントポリウレタン組成物を提供することの問題を解決する努力をしてきた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物は、一方のコンポーネントとして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物、およびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)のイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物を、並びに別のコンポーネントとして、0℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する1種以上の硬質(hard)ポリオール、好ましくはアクリルポリオールと、−20℃以下のTg、2.5〜5.0のヒドロキシル官能価、および500〜3,000の数平均分子量を有する1種以上の軟質(soft)ポリオール、好ましくはポリエステルポリオールとのブレンドを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ポリイソシアナートコンポーネントにおいては、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの1種以上の組成物:脂肪族ジイソシアナートのイソシアヌラートの1種以上の組成物の重量比は99.9:0.1〜10:90、もしくは95:5、もしくはそれ未満、または好ましくは25:75〜75:25、またはそれより多く、好ましくは40:60〜60:40である。
【0008】
ポリオールブレンドコンポーネントにおいては、軟質ポリオール:硬質ポリオールの重量比は10:90〜99.9:0.1、または95:5以下の範囲である。
【0009】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物は、場合によっては、ビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの構造異性体の混合物、例えば、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどから、またはビス−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの幾何異性体の混合物、例えば、シスおよびトランス−1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、もしくはシス−およびトランス−1,4−(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどから形成されうる。
【0010】
好ましくは、1種以上の軟質ポリオールは−30℃以下のTgを有する。
好ましくは、1種以上の軟質ポリオールは2.9〜4.0、またはより好ましくは3.0以上のヒドロキシル官能価を有する。
【0011】
好ましくは、軟質ポリオールはポリエステルポリオールである。より好ましくは、軟質ポリオールは油ベースのポリオール、例えば、非反応性疎水性ペンダント基、例えば、6〜36個の炭素のアルキル基を有する種子油ベースのポリオールであってよい。
【0012】
さらに、本発明は2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物を含むコーティング組成物を提供する。
【0013】
別の実施形態においては、本発明はコーティング組成物から製造された塗膜、並びにその塗膜を有するコーティングされた基体を提供する。コーティングされた基体は、自動車用基体、構造基体、機械部品および重質量部品のようなプラスチック、金属および木材物品から選択されうる。ある実施形態においては、塗膜は、トップコートとして本発明のポリウレタン塗膜、ベースコート、例えば、ポリエステルもしくはアクリル塗膜、例えば、着色コート、並びに、場合によってプライマーコート、例えば、エポキシを含む多層塗膜である。
【0014】
本発明の別の形態においては、2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物は一方のコンポーネントとして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサントリマーのイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物を、並びに他のコンポーネントとして、−20℃以下のTg、2.5〜5.0のヒドロキシル官能価、および500〜3,000の数平均分子量を有する1種以上の軟質ポリオールを含む。この形態においては、この組成物は479.4g/L以下、好ましくは359.5g/L以下、もしくはより好ましくは300g/L以下のVOC含量を有しうる。この組成物は、別の脂肪族ジイソシアナートからのイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物をさらに含むことができる。
【0015】
全ての範囲は包括的でありかつ組み合わせ可能である。例えば、2.5〜5.0、または2.9〜4.0、または3.0以上のヒドロキシル官能価は、2.5〜2.9、2.5〜3.0、2.5〜4.0、2.9〜3.0、2.9〜4.0、2.9〜5.0、3.0〜4.0、3.0〜5.0、並びに4.0〜5.0の範囲を包含する。
【0016】
他に示されない限りは、挿入語句を含む何らかの用語は、二者択一的に、括弧が存在しなかったとしてその用語全体、および挿入語句を含まない用語(すなわち、括弧書き内の事項を除く)、並びに二者択一事項のそれぞれの組み合わせをいう。よって、用語「(メタ)アクリル」とはアクリル、メタクリルおよびこれらの混合物のいずれかをいう。
【0017】
他に特定されない限りは、全ての温度単位は室温(〜20−22℃)をいい、全ての圧力単位は標準圧力をいう。
【0018】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「ガラス転移温度」もしくは「Tg」とは、10℃/分の割合で加熱しつつ−90℃〜150℃を走査する示差走査熱量測定(DSC)によって決定される材料のガラス転移温度をいう。Tgは加熱フロー対温度の曲線の変曲点、またはその微分係数のプロットにおける最大値である。
【0019】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「計算ガラス転移温度」もしくは「計算Tg」とは、Bulletin of the American Physical Society、1、3、123ページ(1956年)においてフォックス(Fox)によって説明されるフォックス式(Fox Equation)によって決定される材料のガラス転移温度をいう。
【0020】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、ポリオールの「分子量」の用語は、そのポリオールが無水フタル酸と反応させられて滴定のためのカルボキシル基を形成し、滴定剤としてメタノール中のフェノールフタレイン指示薬を用い、この式量にポリオールのヒドロキシル官能価が掛けられる、ASTM D4274(2005)に従った滴定によって決定されるヒドロキシル当量(equivalent weight)から計算される式量もしくは数平均分子量をいう。
【0021】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「ポリイソシアナート」とは、2以上のイソシアナート基を有するイソシアナート官能性分子をいう。
【0022】
本明細書において使用される場合、他に示されない限りは、用語「トリマー」とは、1以上のイソシアヌラート環構造を含む分子をいい、用語「トリマー」は「イソシアヌラート」と同義語である。本発明の目的のために、1つのイソシアヌラート環構造を含むポリイソシアナートは、本明細書においては、「IR1」と称される。2つのイソシアヌラート環構造を含む分子は、本明細書においては、「IR2」と称される。一般的なクラスとして、他に特定されない限りは、本発明のポリイソシアナートをベースにした2以上のイソシアヌラート環を含む化合物は「オリゴマー系トリマー」と称される。
【0023】
本発明者は、一方のコンポーネントとしてビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1種以上のイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物および脂肪族ジイソシアナート、例えば、HDIの1種以上のイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物、並びに第2のコンポーネントとして硬質ポリオールおよび軟質ポリオールのブレンドを有する2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物は、コーティング組成物およびコーティング組成物から製造された塗膜のVOC含量を低減させると同時に、優れた硬度、スクラッチおよびマー耐性、耐溶媒性、耐衝撃性および可撓性を有する、周囲硬化塗膜もしくはわずかに高温、例えば30〜80℃で硬化する塗膜を提供できることを見いだした。この組成物はクリアコート、例えば、自動車コーティング用途のためのおよび重質量部品もしくは基体のための周囲硬化塗膜のためのトップコートの製造に特に有用である。ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの2種以上のイソシアヌラートから製造された塗膜は、優れた光沢保持および像の鮮明さ(distinctness of Image:DoI)をさらに提供する。
【0024】
さらに、本発明者は、一方のコンポーネントが1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物を含み、および第2のコンポーネントが1種以上の軟質ポリオールを含む2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物が優れた硬度、耐衝撃性および可撓性特性、並びに向上した光沢保持を提供することを見いだした。第2のコンポーネントは軟質ポリオールを含むけれども、このようである。
【0025】
本明細書において開示されたポリイソシアナート組成物は、概して、イソシアヌラート基含有ポリイソシアナート、並びに他のポリイソシアナート、例えば、ダイマーおよびビウレット、並びにイソシアヌラート自体、並びにこれらのいずれかもしくは全てのダイマーおよびオリゴマーを含む。本明細書において使用される場合、用語、「イソシアヌラートのポリイソシアナート組成物」および「トリマー組成物」は同義語である。
【0026】
本発明に従った2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物の配合においては、1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサントリマー組成物の1種以上の脂肪族ジイソシアナートトリマー組成物に対する重量比は高Tgポリオールの低Tgポリオールに対する比率の関数として変動しうる。軟質ポリオールを単独で使用する場合は、1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物が単独で使用されうる。より多くの硬質ポリオールを組み込む場合に所望の特性を維持するために、脂肪族ジイソシアナート、例えば、HDIのトリマーのポリイソシアナート組成物をより多く組み込む。
【0027】
ポリイソシアナートコンポーネントが1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサントリマー含有混合物のみを含む場合には、ポリオールコンポーネントのために好適な組成物は100重量%以下の軟質ポリオールを含むことができる。好ましくは、軟質ポリオール:硬質ポリオールの重量比は、20:80、80:20、またはより好ましくは30:70〜70:30の範囲である。
【0028】
幾種類かの異なるトリマーを含みうるポリイソシアナートコンポーネント:ポリオールもしくはポリオールブレンドコンポーネントの好適なモル比は既知の割合、例えば、0.7:1.0〜1.4:1.0、または0.8以上:1.0、および1.2以下:1.0の範囲であり得る。
【0029】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物は、0.1〜99.9重量%の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと0.1〜99.9重量%の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの混合物、または5重量%以上の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、もしくは好ましくは、30〜80重量%の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、もしくはより好ましくは、40重量%以上、および70重量%以下の1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを含むこの混合物から製造されうる。一般的には、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから製造されるポリイソシアナートイソシアヌラート組成物はより硬く、より低い可撓性の塗膜を提供し、一方で、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを用いて製造されたイソシアヌラート組成物が、それから製造された塗膜に可撓性を付与する。
【0030】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物は当該技術分野で知られている方法によって、例えば、(i)1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくは1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、または(ii)シス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、およびトランス−1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから選択される2種以上のイソシアナートの異性体混合物を、1種以上のトリマー化触媒、例えば、第三級アミンもしくはホスフィンまたは不均一触媒の存在下で、並びに、所望の場合には、溶媒および/または添加剤、例えば、補助触媒の存在下で、適切に高温で、所望のNCO含量が達成されるまでトリマー化し、次いで無機および有機酸、対応する酸ハロゲン化物およびアルキル化剤を使用して触媒を不活性化し、並びに好ましくは加熱することによる、ダウシン(Daussin)らへの米国特許出願公開第2006/0155095A1号に開示されるように製造されうる。脂肪族ジイソシアナートからのイソシアヌラートを含むポリイソシアナートイソシアヌラート組成物は同様に、1種以上のトリマー化触媒の存在下で脂肪族ジイソシアナートを環化し、次いで触媒を不活性化することにより形成されうる。どのイソシアヌラートも、ウレタン、尿素、ビウレット、アロファナート、イミノ−s−トリアジン、ウレトンイミン、もしくはカルボジイミド部分を含むようにさらに修飾されうる。
【0031】
好適なビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン原料は既知の方法で、例えば、ブタジエンとアクリロニトリルとのディールスアルダー(Diels−Alder)反応、その後のヒドロホルミル化、次いで還元的アミノ化して、アミンである、シス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トランス−1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、シス−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、およびトランス−1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンを形成し、次いで環式脂肪族ジイソシアナート混合物を形成するためのホスゲンとの反応によって製造されうる。ビス(アミノメチル)シクロヘキサンの製造は、例えば、アルジロポーラス(Argyropoulos)らへの米国特許第6,252,121号に記載される。
【0032】
2種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、またはこれらの1種以上と1種以上の脂肪族ジイソシアナートは、トリマー化工程の前に混合されうるか、または個々のジイソシアナートのトリマー含有ポリイソシアナート混合物が形成され、次いで一緒にブレンドされうる。例えば、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1,3−および1,4−異性体のトリマー含有混合物は個々に製造されることができ、そして生成物が混合されうるか、またはその1種以上の1,3−異性体および1種以上の1,4−異性体のそれぞれが、トリマー化工程の前に、一緒に存在することができる。同様の方法において、脂肪族ジイソシアナートを含むポリイソシアナートイソシアヌラート組成物は、トリマー化の前にこれらのジイソシアナートを存在させることにより、または個別に製造されそして、1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンから製造されたポリイソシアナートイソシアヌラート組成物とブレンドされることにより製造されうる。1,3−および1,4−異性体の双方の異性体が当初反応混合物中に存在する場合には、1,3−および1,4−異性体からイソシアヌラートポリイソシアナートを製造するのが概して好ましい。
【0033】
このようなジイソシアナートのイソシアヌラート組成物を製造するのに好適な脂肪族ジイソシアナート組成物には、例えばC2−C8アルキレンジイソシアナート、例えば、テトラメチレンジイソシアナートおよびヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)が挙げられる。
【0034】
本発明のポリイソシアナートイソシアヌラート組成物の製造は、好ましくは、有機溶媒の非存在下で行われる。
【0035】
概して、未反応モノマー含量がモノマー原料の全重量を基準にして80重量%以下、好ましくは70重量%以下、または65重量%以下、例えば、20〜40重量%となるまでトリマー化反応が行われる。好ましくは、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの組成物は組成物全体の重量を基準にして、30重量%以下、より好ましくは40重量%以下、最も好ましくは50重量%以下のIR1内容物を含む。
【0036】
本発明におけるようなイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物の別の形態においては、例えば、ダウシン(Daussin)らへの米国特許出願公開第2006/0155095A1号に開示されるように、イソシアナートに対して反応性の1種以上の基、例えば、ヒドロキシル、第一級アミン、もしくは第二級アミン基を含む化合物の添加によって、ポリイソシアナート組成物は修飾されうる。この修飾されたポリイソシアナート組成物は、1種以上のビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび/または脂肪族ジイソシアナートと、1種以上のモノオール(monol)、例えば、C1〜C8モノオールもしくはアルキルオキシポリアルキレングリコール、ジオール、ジアミン、モノアミンもしくはアミノアルコールと、トリマー化触媒をその場で(in situ)反応させて、アルカン、ポリアルキレンオキシド、ポリエステルもしくはポリテトラメチレンオキシド修飾ポリイソシアナート組成物を生じさせることを含むことができる。ポリイソシアナート組成物がモノオールもしくはイソシアナートと反応性の1つの基を含む他の化合物によって修飾される場合には、部分的もしくは完全にブロックされたイソシアナートもしくはイソシアヌラートが形成され、そしてこれらは加熱して脱ブロックすることにより活性化されうる。典型的なブロッキング基はカプロラクタム、メチルエチルケトンのオキシム、フェノールおよびフェノール系化合物、イミダゾールおよびピラゾールである。
【0037】
修飾されたトリマーは、当業者に知られている様々な手順によってさらに修飾されうる。この修飾の1つはアロファナートもしくはビウレット結合を組み込むことであり、これは最終生成物の分子量をさらに増大させる。アロファナートもしくはビウレット延長トリマーは、例えば、ダウシン(Daussin)らへの米国特許出願公開第2006/0155095A1号に開示されるように、修飾されたトリマーを攪拌下で高温に加熱することにより製造されうる。所望の場合には、アロファナートもしくはビウレット形成を促進する触媒が添加されてもよい。
【0038】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび/または脂肪族ジイソシアナートと、モノオール、ジオール、ジアミン、もしくはモノアミンとの反応により形成されるポリイソシアナートプレポリマー組成物は、さらなるイソシアナートの反応によって修飾されることができ、アロファナートもしくはビウレット修飾プレポリマーを形成することができ、次いで、このプレポリマーはトリマー化触媒と混合されることができ、アロファナートもしくはビウレット修飾ポリイソシアナートイソシアヌラート組成物を生じさせることができる。このアロファナートもしくはビウレットプレポリマーの製造と、その後のトリマー化は当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第5,663,272号および第6,028,158号を参照。
【0039】
イソシアヌラートと水との反応により2つのイソシアヌラート環尿素が形成されることができ、得られた尿素は残っているイソシアナートとの反応を介して変換されてビウレットを形成することができる。
【0040】
本発明に従って、軟質ポリオールは−20℃以下、もしくは好ましくは−35℃以下、もしくは−50℃以下、もしくは−60℃以下、もしくは−70℃以下のガラス転移温度(Tg)を有しうる。軟質ポリオールは概してVOCを置き換えることができ、2コンポーネント組成物の全重量に基づいて75重量%もの高さの固形分量の組成物を提供することを可能にしうる。
【0041】
硬質ポリオールとのポリオールブレンドにおいては、軟質ポリオールは所望のガラス転移温度(Tg)および所望のヒドロキシル官能価を有するあらゆるポリオールであり得る。
【0042】
紫外光(UV)安定性を確実にする他の形態において、ポリオール成分が1種以上の軟質ポリオールのみを含む場合には、軟質ポリオールはポリエーテルポリオール以外のポリオールであるべきである。
【0043】
好適な軟質ポリオールは、何らかの上記例外を伴うが、例えば、必須のヒドロキシル官能価および分子量を有するポリオール、例えば、ポリエステルポリオール、カプロラクトンから選択されるポリエステルポリオール、ポリエステル/ポリエーテルハイブリッドポリオール、ポリテトラメチレングリコール(PTMEG)からのポリエーテルポリオール;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドサブユニットおよびこれらの混合物を含むポリエーテルポリオール;ポリカルボナートポリオール;ポリアセタールポリオール;ポリエステルアミドポリオール;ポリチオエーテルポリオール;並びに、ポリオレフィンポリオール、例えば、飽和もしくは不飽和ポリブタジエンポリオールが挙げられうる。
【0044】
本発明に従う軟質ポリオールの分子量は500〜3,000、好ましくは1,000以上、もしくは好ましくは2,000以下の範囲であり得る。軟質ポリオールの分子量を制御することは、組成物粘度の制御をより良好にできる。
【0045】
本発明に従う軟質ポリオールのヒドロキシル官能価は2.5〜5.0、4.5以下、もしくは好ましくは2.9以上、もしくは好ましくは3.0以上、もしくは好ましくは4.0以下の範囲であり得る。軟質ポリオールのヒドロキシル官能価は低い粘度を確実にするのに充分低くあるべきであり、それにより本発明の組成物のVOCを低下することを可能にし、同時にこの組成物から形成される塗膜および製品が適切な耐溶媒性および他の特性、例えば、良好な硬度を有することを確実にするのに充分高くあるべきである。
【0046】
軟質ポリオールは従来の手段によって、例えば、ポリエステル(アミド)を、例えば、二酸もしくは二官能性酸無水物、もしくはこれらの塩と、ヒドロキシル含有反応物質、ポリ(チオ)エーテル、ポリアセタール、ポリカルボナート、もしくはポリアセトンとから形成するバルク重合によって、またはオリゴマー系もしくはポリマー系ポリオールもしくはポリエーテル、例えば、ポリオキシアルキレン、もしくは反応性水素含有ポリオールオリゴマーを、カルボキシル、ラクトン、エステルアミドもしくはカルボナート含有反応物質の存在下で反応させることにより製造されうる。
【0047】
2.5〜5.0のヒドロキシル官能価を有する好適な軟質ポリオールは、当該技術分野において知られている方法によって、例えば、ポリオールを製造するために使用される全ての反応物質の重量を基準にして少量、例えば、0.1〜5.0重量%のトリオール、もしくはより高次のヒドロキシル官能性反応物質、例えば、グリセロールもしくはトリメチロールプロパンの存在下での重合もしくは反応、例えば、エンドキャッピングによって形成されることができ;または中間体化合物がアミン、ヒドロキシルもしくはチオール官能性である場合には、少量のトリ−もしくはより高次の酸官能性カルボン酸、例えば、クエン酸の存在下で、分岐ポリマーを形成し、次いで、この分岐ポリマーが、例えば、過剰のジオールと反応させられて、ヒドロキシル官能性末端基を確実にする反応によって形成されうる。
【0048】
本発明に従う軟質ポリオールの別の形態においては、2.5以上のヒドロキシル官能価を有し、かつ疎水性ペンダント基、例えば、4〜36個の炭素のアルキル基を有する油ベースの軟質ポリオールが製造されることができ、天然もしくは合成の動物および/または植物油、脂肪、脂肪酸もしくは脂肪グリセリド、例えば、ダイズおよびヒマシ油から、例えば、国際公開第2004/096882号および第2004/096883号に開示されるような、当該技術分野において知られている方法によって得られうる。好ましいのは、トリグリセリド中に少なくとも約70パーセントの不飽和脂肪酸を有する植物(種子)油、例えば、ダイズ、キャノーラもしくはヒマワリ油である。このような油ベースのポリオールを製造するために、いくつかの化学的方法、例えば、これに限定されないが、エポキシ化、ヒドロキシル化、オゾン分解、エステル化、ヒドロホルミル化、もしくはアルコキシル化による修飾などが使用されうる。このような修飾は当該技術分野において一般的に知られている。例えば、このような方法のあるものは脂肪酸もしくは脂肪グリセリドを好適なアルコール、例えば、メタノールでエステル交換して、脂肪酸アルキルエステルを形成し、次いで、構成脂肪酸エステルにおける炭素−炭素二重結合の還元的ヒドロホルミル化を行い、ヒドロキシメチル基を形成し、次いでこのヒドロキシメチル化脂肪酸エステルを、ポリオール、例えば、ジオールもしくはトリオール、またはポリアミンである開始剤化合物と反応させることにより、ポリエステルポリオールまたはポリエーテル/ポリエステルを形成する。このプロセスにおいては、ポリオール分子量はモノマーとグリコール開始剤との縮合、およびヒドロホルミル化脂肪酸エステルの自己縮合のいずれによっても増大する。ヒドロホルミル化脂肪酸エステルの平均官能価およびグリコール開始剤に対するその比率を制御することにより、ポリオール分子量および平均官能価の双方は体系的に制御されうる。
【0049】
好適な開始剤には、例えば、2〜36個の炭素原子を有するグリコール、例えば、エチレングリコールおよび1,2−プロピレングリコールなど;ジアミン、例えば、エチレンジアミン;トリオール、例えば、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオールおよびトリメチロールプロパンなど;並びに、他のもの、例えば、ペンタエリスリトール、スクロース、ソルビトール、およびジエチレントリアミン;並びにこれらの混合物が挙げられうる。典型的な開始剤は、反応性第一級ヒドロキシル基を含むことができ、例えば、1,6−ヘキサンジオールおよびUNOXOL商標ジオールが挙げられる。UNOXOL商標ジオールは液体環式脂肪族ジオールであり、これは1,3−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールの50:50混合物であり、これはシスおよびトランス異性体の混合物である。
【0050】
好適な開始剤は、エチレンオキシドもしくはエチレンオキシドと少なくとも1種の他のアルキレンオキシドとの混合物でアルコキシル化されて、アルコキシル化開始剤を生じさせることができる。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「ペンダント基」とは、油ベースのポリオールの骨格から延びるアルキル官能基をいい、反応性基、例えば、1以上のヒドロキシル基を含まない。ペンダント基は本発明のコーティングが形成された後は互いに自由に会合する。好ましくは、ペンダント基は6〜36個の炭素のアルキル基である。
【0052】
本発明に従って、硬質ポリオールは0℃以上、もしくは10℃以上、もしくは好ましくは20℃以上、もしくは30℃以下、もしくは70℃以下のガラス転移温度(Tg)を有する。硬質ポリオールのTgが高すぎる場合には、好適な組成物は、作業性および/または膜形成のために過剰な溶媒を必要とする。
【0053】
好適な硬質ポリオールには有機溶媒中のポリアクリラートポリオール、例えば、従来の手段、例えば、フリーラジカル開始剤、例えば、過酸もしくはその塩の存在下でのそれぞれの有機溶媒溶液重合などによって形成されるもの、または水性重合およびその後の有機溶媒への溶解によって形成されるものが挙げられうる。このポリオールにおいては、ヒドロキシル官能性はヒドロキシル官能性ビニルもしくはアクリルモノマー、例えば、ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)もしくはアリルアルコールによって提供されうる。
【0054】
0℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する他の好適なポリオールはポリエステル、ポリエステルアミドまたはポリカルボナートを含む芳香族基であることができ、このようなものは、少なくとも何らかの芳香族反応物質、例えば、テレフタル酸を使用するバルク重合を介した従来の方法で形成される。
【0055】
本発明の2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物は従来の添加剤、例えば、着色剤、顔料および充填剤、光安定化剤、UV吸収性化合物、流動剤、湿潤および分散剤、脱泡剤、レオロジー調節剤、並びに触媒、例えば、脂肪酸のジアルキルスズ塩などを、全コーティング組成物固形分に基づいて、1000ppm以下の量でさらに含むことができる
【0056】
本発明に従う塗膜は従来の手段によって所望の基体に適用されうる。このような塗膜は周囲温度で、もしくは周囲温度未満から150℃、好ましくは周囲条件から80℃の範囲の温度で硬化されうる。熱感受性プラスチックは120℃以下でコーティングされ、その塗膜が硬化されうるように、硬化温度は基体に応じて変えられうる。さらに、橋、重機械および重質量部品のコーティングおよびメンテナンスコーティングのような場に適用される塗膜は周囲温度で硬化されうる。硬化時間は概して、30分間(高温で)から1〜7日間の範囲であり、周囲温度もしくはより低い温度においてはより長い。
【0057】
本発明の2コンポーネントポリウレタン組成物は、塗料およびワニス、並びに塗膜を製造するのに特に有用である。本発明の組成物はトップコートに特に好適である。最終用途には、これに限定されないが、テーブル、キャビネットのような家具;木材床、パイプなどの建築材料;冷蔵庫の取っ手のような電化製品;自動車外装部品および内装部品、並びに消費者用製品、例えば、携帯電話、鞄、およびプラスチックケースが挙げられる。
【0058】
本発明は、前記基体のいずれかの上に2コンポーネントポリウレタンコーティング組成物から製造されたポリウレタン塗膜をさらに提供する。この塗膜はプライマー層上の多層塗膜、および場合によってはベースコートもしくはカラーコートであることができる。
【0059】
本発明に従う塗膜は、ASTM D2794−93(2004)に従って測定して、50kg−cm以上、好ましくは100kg−cm以上の直接耐衝撃性(direct impact resistance)、ASTM−D3363に従って測定された、F以上、好ましくはH以上の鉛筆硬度、ASTM−D4366に従って測定された、50秒以上、好ましくは100秒以上のKonig硬度、ASTM−D 5402−06(2006)に従って測定された100MEK以上の往復摩擦、好ましくは200MEK以上の往復摩擦の耐溶媒性、または光沢保持によって測定されるような、20%以上、好ましくは50%以上のスクラッチおよびマー耐性のいずれかまたは全てを有しうる。
【実施例】
【0060】
以下の実施例は本発明を例示するために提供される。この実施例に使用される試験方法は以下に説明される:
塗膜の膜厚さはASTM D1186に従って決定された。塗膜の直接耐衝撃性はASTM D2794−93(2004)に従って、ガードナー(Gardner)衝撃試験装置(Paul N. Gardner Co,Inc,フロリダ州ポンパノビーチ)を用いることによって決定された。塗膜についての許容可能な直接耐衝撃性レベルは50kg−cm以上である。塗膜のKonig硬度はASTM−D 4366(1995)に従って、ペンデュラム硬度試験装置を用いることによって決定され、秒単位で報告される。塗膜について許容可能な硬度レベルの範囲におけるKonig硬度は50秒〜200秒、または50秒以上である。許容できないレベルの硬度は50秒未満である。
【0061】
塗膜の鉛筆硬度はASTM D3363(2005)に従って、6B〜4Hの硬さの範囲の芯の鉛筆(Paul N.Gardner Co)を用いて測定された。塗膜に許容可能な鉛筆硬度レベルはF以上である。許容できないレベルの硬度の例はB以下である。
【0062】
塗膜の耐溶媒性はASTM−D 5402−06(2006)に従って測定され、基体に至るまで塗膜を切断するのに必要とされたメチルエチルケトン(MEK)往復摩擦の数として報告された。往復摩擦はAATCCクロックメータ(Atlas Electrical Devices Co,イリノイ州Chjcago)を使用して、スライドアームの末端のシリンダーに対してスクエアにチーズクロスを取り付けそしてMEKに浸すことによって行われた。塗膜についての許容可能な耐溶媒レベルは100往復摩擦以上、好ましくは200以上である。
【0063】
塗膜のスクラッチおよびマー耐性はブラックレネタ(Leneta)チャートをコーティングし、この塗膜を硬化させ、BYKガードナー(Gardner)マイクロ−トリ−グロスメーター(カタログ番号#4520;シリアル番号#982069)を用いて、塗膜を横切る5つの測定値を取り、各測定値について測定された平均値を報告することにより、この塗膜の60度光沢を測定することにより測定された。フェルトパッド、BonAmi商標乾燥洗浄剤、およびアトラスクロックメータ(Atlas Crockmeter;SDL Atlas LLC、Rock Hill,S.C.)を用いて、塗膜上で10往復摩擦を行い、水を用いて塗膜をすすぎ、そして乾燥させた。次いで、この塗膜の光沢を従前の通り再測定し、光沢の保持率パーセントを計算した。塗膜について許容可能なスクラッチおよびマー耐性レベルは20%以上の光沢保持率である。
【0064】
塗膜の光沢保持率はQ−U−V加速耐候性テスター(The Q−Panel Company,オハイオ州クリーブランド)およびUVB−313蛍光ランプを使用して、ASTM D6625−01(2007)に従って決定された。塗膜についての許容可能な光沢保持レベルは、12時間サイクルの繰り返し(8時間のUVおよび4時間の凝縮湿潤サイクル)での1000時間曝露後に、50%以上である。
【0065】
以下の表11、13および15における試験結果については、以下の追加のもしくは代替的な試験方法が使用された:
耐衝撃性はガードナー衝撃試験装置(Paul N. Gardner Co.)を使用して、ASTM D5420に従って測定された。
【0066】
MEK往復摩擦は、膜のブリスターもしくはブレイクスルー(breakthrough)が起こる前に報告された摩擦の数で、溶媒としてメチルエチルケトン(MEK)を用いた耐溶媒性摩擦試験ASTM D4752に従って行われた。摩擦は往復摩擦として計数され、すなわち一回の前方への摩擦および一回の後方への摩擦が往復摩擦を構成する。この試験方法は塗膜の硬化度および特定の溶媒に対するその耐性を決定するために使用される。
【0067】
光沢は、BYK マイクロ−トリ−グロスメーターを使用して、ASTM D523に従って測定された。
【0068】
DoI(像の鮮明さ;distinctness of Image)はBYKマイクロ−ウエーブ−スキャンメーターを用いてASTM D5767に従って測定された。光沢およびDoIの双方は、基体としてレネタからのブラック摩擦試験プラスチックパネルを使用した。
【0069】
ゲル含量は、アセトンを溶媒として使用するソックスレー抽出によって測定され、抽出時間は6時間である。この試験方法は、最終塗膜の架橋度を決定するために使用され、コーティング配合物に使用される組成物の反応性を反映する。測定中、定性ろ紙で造られたバッグが秤量された(Wg)。〜0.5〜1.0gの重量の塗膜片がそのバッグに入れられ、そして秤量され(Wg)、(W−Wg)のサンプル量を与えた。このバッグが密閉され、再び秤量され(Wg)、ソックスレー抽出装置に入れられた。アセトンが6時間還流された後で、そのバッグは取り出され、最初はフード内で、次いで真空オーブン内で40℃で一定の重量(Wg)になるまで乾燥させた。ゲル含量は
【数1】

として計算された。
【0070】
合成例1および2:油ベースの軟質ポリオールNOP−1およびNOP−2
天然油ポリオール(NOP−1およびNOP−2)が、ダイズ油由来脂肪酸メチルエステルの還元的ヒドロホルミル化によって得られた天然油モノマーから製造された。天然油モノマーは、1.0〜1.9の平均ヒドロキシル官能価での分別蒸留によってストリームに分けられた。NOP−1のバッチは、1.9の平均官能価を有する62.52kgの天然油モノマー、12.3kgのUNOXOLジオール、および0.045kgのスズ(II)2−エチルへキサノアートから製造された。試薬は反応器に添加され、そのケトルは窒素ガスで不活性化された。重縮合をもたらすように、攪拌しつつ、反応温度は190℃に上げられ、乾燥窒素スイープの助けを伴ってメタノールが蒸留除去された。所望のヒドロキシル価を達成する際にこの反応は停止させられ、生成物が集められた。同じように、NOP−2のバッチが、平均官能価1.5の天然油モノマー6.67kg、1.34kgのUNOXOLジオール、および0.004kgのスズ(II)2−エチルへキサノアートから製造された。
【0071】
合成例3:トリマー1
トリマー1を製造するために、ガスバブラー、機械式攪拌装置、温度計および凝縮器を備えた1.8Lのハステロイ反応器に、各化合物のシス−およびトランス−異性体の混合物を含む1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの1:1(w/w)混合物1600gが入れられる。70℃に加熱されつつ、攪拌された反応混合物に乾燥窒素がバブリングされる。実施例35については、エチレングリコール中炭酸第四級アンモニウムの75パーセント溶液1.9グラムがこの反応混合物に添加された。反応温度は70〜75℃に維持される。反応混合物が30%のNCO含量に到達したときに、0.5gのクロロ酢酸を添加することによりこの反応は停止させられる。過剰なモノマーがショートパス蒸留ユニットにおいて分けられ、透明な生成物を提供する。得られるトリマー含有組成物は酢酸ブチルに溶解され、30重量パーセントの酢酸ブチルを含み、347のNCO当量、および0.5重量パーセント未満の遊離モノマー含量の生成物を得る。オリゴマー分布の分析は、生成物が48パーセントのIR1、22パーセントのIR2および30パーセントの高MWポリイソシアナート(トリマーオリゴマーを含む)を含んでいることを示す。
【0072】
トリマー2:バイエル(Bayer;ドイツ国、レバークーセン)からDesmodur商標N3600(NCO当量182)として市販されているヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)のトリイソシアヌラート。
【0073】
トリマー2A:バイエルからDesmodur商標N3390(NCO当量216)として市販されているヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)のトリイソシアヌラート。
【0074】
トリマー3:バイエルコーポレーションからDesmodur商標Z4470(NCO当量353)として市販されているイソホロンジイソシアナート(IPDI)のトリイソシアヌラート。
【0075】
以下の表1AはNOP−1、NOP−2、CAPA3091(トリメチロールプロパン開始カプロラクトンポリオール;Perstorp Polyols,オハイオ州トレドから入手可能)の軟質ポリオール、硬質ポリオール1(実施例において使用された溶液重合単一段階アクリルポリオール)、および軟質ポリオール1(溶液重合によって合成されたアクリルポリオール)の特性を提供する。以下の表1Bは他のポリオールの特性を提供し、Setalux商標1152 SS−60アクリルポリオール(Nuplex、ニュージャージー州アウクランド)、Desmophen商標A365B/Xアクリルポリオール(バイエル)、Desmophen商標670BAポリエステルポリオール(バイエル)、Desmophen商標A160アクリルポリオール(バイエル)は入手したまま使用された。これらポリエステルポリオールのガラス転移温度は−24℃〜−69℃で変化し、一方、アクリルポリオールのガラス転移温度は0℃より高かった。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
ジブチルスズジラウラート(Tin−12)(アルドリッチ、ワイオミング州ミルウォーキー)は、表10〜13についての触媒として使用する前に酢酸ブチル中で10重量%に希釈され、表14および15については1%に希釈された。
【0079】
以下の表2〜4、8、10、12および14はクリアコート配合物を提供し、以下の表5〜7、9、11、13および15は塗膜特性を提供する。表2〜4、8、10、12および14における全ての材料は重量部で示される。
【0080】
全ての配合物は、清浄な乾燥したガラスジャー内で、一方のコンポーネントとしてのポリオールと、および他方のコンポーネントとしてのポリイソシアナート組成物のブレンドを含む触媒溶液とを1〜3分間、均質になるまで単に混合することによって製造された。この配合物は、次いで、5分間静置されて気泡が消えるのを可能にし、次いで#52ワイヤ巻きロッドを用いて、透明で乾燥したコールドロールスチールパネル上にコーティングされ、次いで室温で7日間硬化され、約50ミクロンの乾燥膜厚さを有する塗膜を得た。
【0081】
以下の表10および12における配合物については、湿潤塗膜は室温で15分間フラッシュされ、次いでオーブン内で60℃で30分間硬化され、さらに室温で示された時間硬化された。乾燥膜厚さは45±5μmに制御された。あらゆるガラス基体は洗剤溶液で洗浄し、脱イオン水ですすぐことによりあらかじめ清浄化された。スズめっき基体は400#紙やすりであらかじめやすり掛けされ、アセトンであらかじめ清浄化された。
【0082】
以下の表2Aで示されるように、本発明のコーティング組成物は様々なアクリル硬質ポリオール/ポリエステル軟質ポリオールブレンドのポリオールブレンドを含む。
【0083】
【表3】

溶媒は酢酸ブチルとエチル3−エトキシプロピオナートとの50:50(重量)ブレンドである;
触媒溶液**は酢酸n−ブチル中のジブチルスズジラウラートの2重量%溶液である。
【0084】
【表4】

溶媒は酢酸ブチルとエチル3−エトキシプロピオナートとの50:50(重量)ブレンドである;
触媒溶液**は酢酸n−ブチル中のジブチルスズジラウラートの2重量%溶液である。
【0085】
【表5】

溶媒は酢酸ブチルとエチル3−エトキシプロピオナートとの50:50(重量)ブレンドである;
触媒溶液**は酢酸n−ブチル溶媒中のジブチルスズジラウラートの2重量%溶液である。
【0086】
【表6】

溶媒は酢酸ブチルとエチル3−エトキシプロピオナートとの50:50(重量)ブレンドである;
触媒溶液**は酢酸n−ブチル溶媒中のジブチルスズジラウラートの2重量%溶液である。
【0087】
以下の表5Aに示されるように、実施例1〜4における様々なアクリル硬質ポリマー/ポリエステル軟質ポリオールブレンドのポリオールブレンドを含む本発明のコーティング組成物は、比較例1〜4においてIPDIおよびHDIのイソシアヌラートから製造されるポリイソシアナート組成物の1:1(w/w)ブレンドを含む以下の表5Bに示される同等のコーティング組成物と比べて、同様の良好な硬度、並びに優れた耐溶媒性、およびスクラッチおよびマー耐性をもたらす。
【0088】
表5Aおよび5B:試験結果
【表7】

1.T1はトリマー1、T2はトリマー2、およびT3はトリマー3であり;全ての比率は重量比である。
【0089】
【表8】

1.T1はトリマー1、T2はトリマー2、およびT3はトリマー3であり;全ての比率は重量比である。
【0090】
以下の表6に示されるように、ポリエステル軟質ポリオールと、トリマー化ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(トリマー1)からのポリイソシアナート組成物との混合物は、トリマー2(ヘキサメチレンジイソシアナートからの)もしくはトリマー3(イソホロンジイソシアナートからの)と混合された同じポリオールと比較した場合(それぞれ、比較例5および6に表される)に、実施例5に示されるように硬度、耐溶媒性、並びにスクラッチおよびマー耐性の優れたバランスを提供する。
【0091】
【表9】

【0092】
【表10】

1.様々なポリイソシアナートイソシアヌラート組成物の重量比が与えられる;
2.全ては重量比である。
【0093】
上記表7に示されるように、様々なブレンド比のトリマー1:トリマー2と共に、1:1アクリル硬質ポリオール/ポリエステル軟質ポリオールを含む本発明のコーティング組成物は、実施例6〜8におけるように、トリマー2に対してトリマー1の比率がより高いと、より良好な硬度および耐溶媒性をもたらす。
【0094】
表8は、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンからのイソシアヌラートのポリイソシアナート組成物を含む、着色した(濃い色調の緑色)コーティング配合物を提供し、表9はこれらのコーティングの塗膜特性を提供する。
コーティング配合物は、表8に示されるように、NOP溶液、酢酸ブチル、ジブチルスズジラウラート触媒溶液、流動剤、抗シルク剤(anti−silk aid)、UV吸収剤、光安定化剤、緑色着色剤分散物、および白色着色剤分散物を、120mlのガラスジャー内で一緒にし、手作業で30秒間激しく振とうすることにより混合して製造された。次いで、表8に示されるポリイソシアナートトリマーが添加され、手作業で30秒間激しく攪拌することにより混合される。塗膜は7milの隙間の湿潤膜アプリケータで、アルミニウムパネル上に膜をキャスティングし、25℃、50%相対湿度で2週間硬化させることにより形成された。得られた塗膜は約60ミクロンの乾燥膜厚さを有していた。
【0095】
【表11】

アセトン:酢酸t−ブチル:p−クロロベンゾトリフルオリドの1:1:1ブレンド中の65重量%固形分;
**アセトン:酢酸t−ブチル:PCBTFの1:1:1ブレンド中の80重量%固形分;
1.フタロシアニドグリーン溶媒分散物;
2.TiO溶媒分散物。
【0096】
【表12】

【0097】
上記表9に示されるように、実施例9における100%NOP−1ポリエステルポリオールと100%トリマーとをベースにした本発明のコーティング組成物は、比較例7における100%トリマー3(IPDIから)を用いた同じNOP−1ポリオールと比べて、同様の硬度およびMEK摩擦耐溶媒性をもたらすが、優れた耐衝撃性および加速QUV耐候性における光沢保持をもたらす。実施例10における、より低いヒドロキシル官能価の100%NOP−2ポリエステルポリオールと100%のトリマー1とをベースにした組成物からの塗膜は、比較例8において100%IPDIトリマーを用いて製造された同じ塗膜と比較して、同等の硬度および同等の優れた耐衝撃性を示すが、100%トリマー1を含む塗膜はよりすぐれた耐溶媒性およびQUV耐候性、並びに注目すべきことに、1411時間のQUV(B)曝露後に光沢喪失を示さない。
【0098】
以下の表10においては、塗膜の違いをより良好に反映させるために、1層のクリアコートのみが基体に適用された。光沢およびDoIがレネタプラスチック基体上で測定された。レネタ基体のラフネスが高い(塗膜なしでの基体の光沢は0である)ので、光沢およびDoI値は、その下にベースコートを有する塗膜上で測定されたのよりも低かった。
【0099】
以下の表11に示されるように、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートを含む実施例11および12の本発明の組成物は、IPDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナートを有する、それぞれ同じ組成の比較例9および10よりも、高いゲル含量および鉛筆硬度を示した。
【0100】
【表13】

イソシアナート:ポリオールの当量比は1:1であり、固形分量は56%に制御され、最終コーティングシステムの固形分量に対して触媒量は100ppmである;
ポリイソシアナートにおける固形分の重量比;
キシレン/酢酸ブチルの50/50重量比;
触媒は酢酸ブチル中の10%溶液に希釈された;
1.T1はトリマー1であり、T2はトリマー2Aであり、およびT3はトリマー3である。
【0101】
【表14】

硬化条件:60℃で30分+室温で24時間;
硬化条件:60℃で30分+室温で7日間。
【0102】
上記表11においては、より硬い硬質ポリオールであるSetalux商標1152が、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートおよびHDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物と配合された場合に、実施例11の組成物も良好なKonig硬度および非常に向上した耐衝撃性を示した。
【0103】
【表15】

イソシアナート:ポリオールの当量比は1:1であり、固形分量は56%に制御され、最終コーティングシステムの固形分量に対して触媒量は100ppmである;
ポリイソシアナートにおける固形分の重量比;
キシレン/酢酸ブチルの50/50重量比;
触媒は酢酸ブチル中の10%溶液に希釈された;
1.T1はトリマー1であり、T2はトリマー2Aであり、およびT3はトリマー3であり;全ての比率は重量比である。
【0104】
【表16】

イソシアナート:ポリオールの当量比は1:1であり、固形分量は56%に制御され、最終コーティングシステムの固形分量に対して触媒量は100ppmである;
ポリイソシアナートにおける固形分の重量比;
キシレン/酢酸ブチルの50/50重量比;
触媒は酢酸ブチル中の10%溶液に希釈された;
膜は脆すぎて測定できない。
【0105】
上記表13に示されるように、軟質ポリオールと、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートおよびHDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物から製造された実施例14における塗膜は、比較例13におけるIPDIトリマーよりも、より高いゲル含量および耐衝撃性、並びにより良好なMEK耐性を示した。実施例13の塗膜の光沢は、比較例11および12(それぞれ、HDIおよびIPDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物を含む)のよりも向上されていた。実施例13の塗膜の硬度は比較例11(HDIのイソシアヌラートを含む)のよりも遙かに良好であり;並びに実施例13の塗膜におけるMEK摩擦は比較例12(IPDIのイソシアヌラートを含む)のよりも遙かに良好であった。
【0106】
【表17】

ポリイソシアナート中の固形分の重量比;
キシレン/酢酸ブチルの50/50重量比;
配合物中の全固形分を基準にして100ppm、触媒は酢酸ブチル中の1%溶液に希釈された。
【0107】
【表18】

硬化条件:60℃で30分+室温で24時間;
硬化条件:60℃で30分+室温で7日間。
【0108】
ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物とHDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物とから製造される実施例15の塗膜は、上記表15に示されるように、IPDIのイソシアヌラートおよびHDIのイソシアヌラートを含むポリイソシアナート組成物を用いて製造された比較例14の同じ組成物よりも、高いゲル含量および耐衝撃性、ならびにより良好なMEK耐性を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のコンポーネントとして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物、および1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラート(HDIトリマー)の1種以上のポリイソシアナート組成物を、並びに
別のコンポーネントとして、0℃以上のガラス転移温度(Tg)を有する1種以上の硬質ポリオールと、−20℃以下のTgを有し、2.5〜5.0のヒドロキシル官能価を有し、および500〜3,000の数平均分子量を有する1種以上の軟質ポリオールとのブレンドを含む、
2コンポーネントポリウレタン組成物。
【請求項2】
ポリイソシアナートコンポーネントにおいて、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの1種以上の組成物:1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート(HDI)のイソシアヌラートの1種以上の組成物の重量比が95:5〜10:90である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリイソシアナート組成物がビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンの異性体の混合物から形成される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ポリオールブレンドコンポーネントにおいて、軟質ポリオール:硬質ポリオールの重量比が10:90〜99.9:0.1の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
1種以上の軟質ポリオールが−30℃以下のTgを有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
1種以上の軟質ポリオールが2.9〜4.0のヒドロキシル官能価を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
軟質ポリオールがポリエステルポリオールである請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
軟質ポリオールが、非反応性疎水性ペンダント基を有する油ベースのポリエステルポリオールである請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物から製造された塗膜。
【請求項10】
一方のコンポーネントとして、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌラートの1種以上のポリイソシアナート組成物を、並びに
別のコンポーネントとして、−20℃以下のTgを有し、2.5〜5.0のヒドロキシル官能価を有し、および500〜3,000の数平均分子量を有する1種以上の軟質ポリオールを含む
2コンポーネントポリウレタン組成物であって、
前記組成物が前記組成物の全重量を基準にして479.4g/L以下のVOC含量を有する、
2コンポーネントポリウレタン組成物。

【公開番号】特開2012−111934(P2012−111934A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−231087(P2011−231087)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【出願人】(590002035)ローム アンド ハース カンパニー (524)
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
【Fターム(参考)】